JP2024098177A - 重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法 - Google Patents

重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 重合安定性の優れた重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法を提供すると共に、可塑剤に分散し調製したペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物ゾルが低粘度であり、コーティング性、スプレー特性に優れ、特に手袋用として優れた特性を有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法を提供する。【解決手段】 水性媒体中で塩化ビニル系単量体、乳化剤、重合開始剤の均質化を行った後、重合を行い重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を製造する際に、塩化ビニル系単量体100重量部に対する重合開始剤が0.1~3重量部、乳化剤が0.5~3重量部であり、重合中に重合禁止剤を50~300ppmを添加する重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、シード重合法によりペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造する際に用いられる重合開始剤を含有する塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法に関するものであり、さらに詳細には、重合開始剤の存在下において水性媒体中でペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造を行う際に、安定的に重合を行うことを可能とする重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法に関するものであると共に、得られた重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を用い、可塑剤に分散し調製したペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物ゾルが低粘度であり、コーティング性、スプレー特性に優れ、特に手袋用途として優れた特性を有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造する方法に関するものである。
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記することもある。)を製造する方法としては、一般に、重合反応器に塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で微細懸濁重合法、乳化重合法、シード微細懸濁重合法、シード乳化重合法等の重合法を行い、重合反応器内温を所定温度に維持しながら、重合反応を進め、重合転化率の増加と共に、仕込み単量体の未反応分が減少し、重合反応器内圧力が降下し始めるので、所望の重合転化率に相当する重合反応器内圧力になった時点で、重合反応を終了し、ペースト塩ビラテックスを製造し、該ラテックスを乾燥することにより、ペースト塩ビを得る製造方法が挙げられる。
このようなペースト塩ビの製造方法の中でもシード微細懸濁重合法、シード乳化重合法等のシード重合法においては、重合開始剤を多く含有するシード粒子の存在下重合を行うことから、重合中のペースト塩ビ粒子同士の凝集が発生する、粗大粒子が多く発生する、等の安定的な重合が困難となり、生産性・品質が低下するという課題が発生しやすいものであった。
そして、重合が安定にできる塩化ビニル系重合体の製造方法として、重合開始剤としてパーエステル化合物、パーカーボネート化合物を使用すると共に、重合前又は重合転化率20%になるまでの間に水溶性過酸化物、ハイドロパーオキシド系油溶性重合開始剤と、水溶性還元剤とを添加する製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
また、重合時間を大幅に短縮し、塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体の反応性比が高いペースト塩ビの製造方法として、塩化ビニル系単量体を分割添加する製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
更に、塩化ビニル系樹脂シードの製造方法として、塩化ビニル単量体100重量部に対して重合開始剤4~10重量部を用い、かつ重合反応終了後にさらに乳化剤0.5~5重量部を添加する塩化ビニル系樹脂シードの製造方法の方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
特開平10-338701号公報 特開2009-221335号公報 特開2018-24739号公報
しかし、特許文献1,2に提案の方法においては、重合速度の向上効果について提案されたものであり、塩化ビニル系樹脂シード粒子、更にはペースト塩ビゾルの粘度経時変化に優れるペースト塩ビ、特に手袋用途としてのペースト塩ビの製造方法、に関しては何ら提案・検討のなされていないものである。
また、特許文献3に提案の方法は、自動車アンダーボディコート材、自動車用シーラント材に適したものを提案するものであり、特に手袋用途としてのペースト塩ビの製造方法に関するものではない。
そこで、ペースト塩ビをシード重合により製造する際に、安定的に重合を行うことを可能とする塩化ビニル系樹脂シード粒子、更には、手袋材としての適用を可能とするペースト塩ビを効率的に製造する方法の出現が期待されてきた。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の条件下で重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造を行い、シード重合の際に該塩化ビニル系樹脂シード粒子を用いることにより、特に手袋材としての適用も可能とするペースト塩ビを安定的に製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、水性媒体中で塩化ビニル系単量体、乳化剤、重合開始剤の均質化を行った後、重合を行い重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を製造する際に、塩化ビニル系単量体100重量部に対する重合開始剤が0.1~3重量部、乳化剤が0.5~3重量部であり、重合中に重合禁止剤を50~300ppmを添加することを特徴とする重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法、また、該重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の存在下、塩化ビニル系単量体のシード重合を行うことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法に関するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法は、水性媒体中で塩化ビニル系単量体、乳化剤、重合開始剤の乳化、つまり、均質化処理を行った後、重合を行い重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を製造する際に、塩化ビニル系単量体100重量部に対して重合開始剤0.1~3重量部、乳化剤0.5~3重量部を用い、かつ重合中に重合禁止剤50~300ppmを添加し製造するものである。そして、重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子とは、塩化ビニル系単量体の重合能を有する重合開始剤を含有する塩化ビニル系樹脂粒子を称するものである。また、ペースト塩ビの製造方法は、該重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の存在下、塩化ビニル系単量体のシード重合を行うことにより、特に手袋材としての適用も可能とするペースト塩ビを安定的に製造することが可能となるものである。その際のシード重合法としては、例えばシード乳化重合法、シード微細懸濁重合法等によるシード重合法を挙げることができる。
その際の塩化ビニル系単量体としては、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を挙げることができ、その際の塩化ビニル単量体と共重合し得る単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物類;アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル等の不飽和カルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができ、これらは2種以上でも用いることができる。
重合開始剤としては重合開始剤と称されるものであればよく、シード乳化重合法に適用する塩化ビニル系樹脂シード粒子を製造する際であれば、通常過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等に代表される水溶性重合開始剤を挙げることができ、シード微細懸濁重合法に適用する塩化ビニル系樹脂シード粒子を製造する際であれば、通常アゾビスイソブチロニトリルに代表されるアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド,t-ブチルペルオキシピバレート,ジアシルパーオキサイド,パーオキシエステル,パーオキシジカーボネート等に代表される過酸化物、等の油溶性重合開始剤等を挙げることができる。そして、中でも効率的なペースト塩ビの製造法であるシード微細懸濁重合法への適用を可能とする塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造が可能となることから油溶性重合開始剤であることが好ましく、特に塩化ビニル系単量体に可溶し、10時間半減期温度30~70℃の油溶性重合開始剤、例えばジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイドなどが好ましく、更にジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ラウリルパーオキサイドが好ましい。重合開始剤は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.1~3重量部を添加するものである。ここで、0.1重量部未満である場合、得られたシードは重合開始剤の含有量が低く、このようなシードの存在下でペースト塩ビの製造を行ってもその製造効率が悪いものとなる。一方、3重量部を越える場合、ペースト塩ビの製造の際に凝集等が発生し易く、品質に劣るペースト塩ビの製造方法となる。
乳化剤としては、例えばラウリル硫酸エステルナトリウム,ミリスチル硫酸エステルナトリウムの如きアルキル硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムの如きアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム,ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムの如きスルホコハク酸塩類、ラウリン酸アンモニウム,ステアリン酸カリウムの如き脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類などのアニオン系界面活性剤;ソルビタンモノオレート,ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートの如きソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤;などの従来より知られているものを1種類または2種類以上用いることができ、中でも、特に品質に優れるペースト塩ビを製造することが可能となる重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を製造することが可能となることからアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、該アルキルベンゼンスルホン酸塩の具体的例示としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアンモニウム塩等を挙げることができる。乳化剤は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.5~3重量部を添加するものである。ここで、0.5重量部未満である場合、粒子径、形状の安定したシードを得ることが困難となり、このようなシードの存在下でペースト塩ビの製造を行ってもその製造効率に劣るものとなる。一方、3重量部を越える場合、品質に劣るシード粒子、ペースト塩ビの製造方法となる。
水性媒体としては、水性媒体と称される範疇に属するものであり、水、脱イオン水、蒸留水、上水等を挙げることができ、水性媒体と称される範疇に属するものであれば有機溶媒等を含むものであってもよい。また、水性媒体の添加量としては塩化ビニル系単量体100重量部に対して、50~200重量部であることが好ましい。
そして、均質化を行う際には水性媒体、塩化ビニル系単量体、重合開始剤、乳化剤の均質化が可能であれば如何なる方法を用いもよく、例えばホモジナーザー等の均質化処理装置により行う方法を挙げることができ、その際の処理時間としては、例えば1~5時間を挙げることができる。
本発明の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法においては、重合中の安定性を向上させるために重合禁止剤を重合反応中に50~300ppmの範囲で添加するものであり、その際の重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン,パラベンゾキノン,クロロパラベンゾキノン,2,5-ジクロロパラベンゾキノン,2,6-ジクロロパラベンゾキノン,2,3-ジメチルパラベンゾキノン,2,5-ジメチルパラベンゾキノン,メトキシパラベンゾキノン,メチルパラベンゾキノン,テトラブロモパラベンゾキノン,テトラクロロパラベンゾキノンのようなキノン類、オルトジニトロベンゼン,2,4-ジニトロトルエンのようなニトロ化合物、オルトニトロフェノール,2,4-ジニトロフェノールのようなニトロフェノール類、塩化鉄(III)のような金属塩、その他、酸素、硫黄、ジフェニルアミン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも重合安定性にすぐれることからキノン類が好ましく、特にパラベンゾキノンが好ましい。ここで、重合禁止剤の添加時期が重合開始前である場合、安定的な重合反応が進行しなくなる。一方、重合終了後である場合、重合禁止剤を添加してもその効果が発現しなくなる。また、重合禁止剤の添加量が50ppm未満である場合、禁止剤効果の発現が困難となり、重合安定性が低下し、塩化ビニル系樹脂シード粒子の凝集および粗大粒子の生成を抑制することが困難となる。添加する重合禁止剤が300ppmを越える場合、塩化ビニル系樹脂シードの重合が遅延し、大幅に生産性が低下する。
本発明の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法における重合条件としては、重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造が可能であれば如何なる条件であってもよく、特に効率的な製造方法となることから重合温度30~50℃で行い、重合系の圧力が低下し始めるまでとすることが好ましい。また、その際の重合時間としては300~800分を挙げることができる。
本発明の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法においては、界面活性剤、緩衝剤等の重合助剤、乳化補助剤、連鎖移動剤等を用いてもよく、該乳化補助剤としては、例えばセチルアルコール,ラウリルアルコール等の高級アルコール、ラウリン酸,パルミチン酸,ステアリン酸等の高級脂肪酸又はそのエステル、芳香族炭化水素、高級脂肪酸炭化水素、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素、等が挙げられる。また、連鎖移動剤としては、例えばトリクロロエチレン,四塩化炭素等のハロゲン系炭化水素、2-メルカプトエタノール,3-メルカプトプロピオン酸オクチル,ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、アセトン,n-ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、等が挙げられ、これらは、単独でも、2種類以上混合して用いても良い。また、その添加量としては塩化ビニル系単量体100重量部に対して、0.5~5重量部であることが好ましい。
本発明により得られる重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子は、粒子自体又はそれを含むラテックスであってもよく、その際の平均粒子径としては、特に取扱い性に優れ、形状に優れるペースト塩ビを安定的に供給できるものとなることから0.2~0.8μmであることが好ましい。
そして、本発明により得られた重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子は、その存在下で、塩化ビニル系単量体をシード乳化重合法,シード微細懸濁重合法に代表されるシード重合法を行うことによりペースト塩ビ又はペースト塩ビラテックスを製造することができる。その際のシード乳化重合法、シード微細懸濁重合法に代表されるシード重合法としては、特に制限はなく、一般的にシード重合法と称される方法を挙げることができ、その際の塩化ビニル系単量体、乳化剤、連鎖移動剤、水性媒体、重合助剤、乳化補助剤に関しては上記したものと同様のものを例示することができる。その際の重合条件としては、例えば重合温度20~70℃で行い、重合系の圧力が0.2~0.8MPaまで低下し始めるまでとすることが好ましい。また、その際の重合時間としては200~800分を挙げることができる。
得られたペースト塩ビの水性媒体分散液(微細懸濁液、乳化液)であるペースト塩ビラテックスよりペースト塩ビを得る方法としては、いかなる方法を用いてもよく、中でも、効率よく該ラテックスから水分を除去することができることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。噴霧乾燥に使用する乾燥機は、一般的に使用されているものでよく、例えば「SPRAY DAYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、George godwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種のスプレー乾燥機(例えば、Standard chamber,Tall-form nozzlechamber等)があげられる。その際の乾燥温度は、乾燥機の入口で一般的に80~200℃に、また出口では40~70℃、好ましくは45℃~65℃がよい。乾燥後、得られたペースト塩ビは、塩化ビニル系樹脂ラテックスを構成する粒子の凝集体であり、通常10~150μmの顆粒状である。乾燥出口温度が52℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト塩ビを粉砕した方が可塑剤への分散性の点から好ましく、乾燥出口温度が52℃以下であれば、顆粒状のままでも粉砕して使用してもどちらでもよい。
得られたペースト塩ビは、可塑剤に分散し調製したペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物ゾルが低粘度であると共に経時変化が少なく、コーティング性、スプレー特性に優れ、コート剤、シーラント剤、消しゴム、壁紙、タイル、履物等の各種用途、特に手袋用途として適用できるものとなる。
本発明の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法は、ペースト塩ビを製造する際の重合の安定化が可能な重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を提供するものであり、該塩化ビニル系樹脂シード粒子を用いて得られるペースト塩ビは、可塑剤に分散し調製したペースト塩ビゾルの粘度が低粘度で経時変化が少なく、特に手袋材として優れた特性を有するものとなる。
以下に、実施例及び比較例により本発明の内容を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下に実施例における評価・測定方法を示す。
<粘度の測定方法>
ペースト塩ビ100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部(株式会社ジェイプラス製)を混練し、ペースト塩ビゾルを得た。得られたペースト塩ビゾルを23℃にて2時間保管した後、B8H型回転粘度計で23℃、20rpm条件にて測定した粘度を測定した。
<重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の平均粒子径の測定法>
重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の平均粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、(商品名)LA-920)により屈折率0.45の条件にて得られた重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の粒子径分布を測定し、その結果より平均粒子径を測定した。
実施例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水290kg、塩化ビニル単量体300kg、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルOPP、重合開始剤濃度70重量%)6.6kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し1.6重量部)、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液22kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し1.5重量部)を仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2.5時間循環し、均質化処理後、温度を30℃に上げて、重合を進めた。重合中に重合禁止剤としてパラベンゾキノンを90ppm添加した。オートクレーブの圧力が0.2MPaまで低下した点で重合反応を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シード粒子を含有するラテックスを得た。その際の重合時間は580分であった。
得られたラテックスは平均粒子径0.45μmを有する重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シード粒子を含有するものであった。
実施例2
1mオートクレーブ中に脱イオン水290kg、塩化ビニル単量体300kg、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルOPP、重合開始剤濃度70重量%)6.6kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し1.6重量部)、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液22kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し1.5重量部)を仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2.5時間循環し、均質化処理後、温度を35℃に上げて、重合を進めた。重合中に重合禁止剤としてパラベンゾキノンを250ppmを添加した。オートクレーブの圧力が0.2MPaまで低下した点で重合反応を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シード粒子を含有するラテックスを得た。その際の重合時間は457分であった。
得られたラテックスは平均粒子径0.42μmを有する重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シード粒子を含有するものであった。
実施例3
1mオートクレーブ中に脱イオン水410kg、塩化ビニル単量体を400kgと25%水溶液ラウリル硫酸ナトリウムを1.0kg、実施例1により得られた重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シード粒子ラテックスを55kg、0.1%水溶液硫酸銅を1kg仕込み、その後、この反応混合物の温度を48℃に上げてシード微細懸濁重合を進めた。重合開始から重合終了までの間、25%水溶液ラウリル硫酸ナトリウム30kg、0.1%水溶液アスコルビン酸を連続的に添加し、オートクレーブの圧力が0.50MPaまで低下した時に重合反応を停止した。その際の重合時間は286分であった。
そして、未反応単量体を回収し、ペースト塩ビラテックスを得た。得られたペースト塩ビラテックスをスプレードライヤーにて、熱風入口温度160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、塩化ビニル重合体であるペースト塩ビを得た。
得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビゾルを作製した。その粘度は2820mPa・sと低粘度を示し、手袋用材料として適したものであった。
実施例4
1mオートクレーブ中に脱イオン水410kg、塩化ビニル単量体を400kgと25%水溶液ラウリル硫酸ナトリウムを2.5kg、実施例1により得られた重合開始剤含有塩化ビニル樹脂シード粒子ラテックスを55kg、0.1%水溶液硫酸銅を1kg仕込み、その後、この反応混合物の温度を48℃に上げてシード微細懸濁重合を進めた。重合開始から重合終了までの間、25%水溶液ラウリル硫酸ナトリウム30kg、0.1%水溶液アスコルビン酸、パラベンゾキノンを連続的に添加し、オートクレーブの圧力が0.50MPaまで低下した時に重合反応を停止した。その際の重合時間は456分であった。
そして、未反応単量体を回収し、ペースト塩ビラテックスを得た。得られたペースト塩ビラテックスをスプレードライヤーにて、熱風入口温度160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、塩化ビニル重合体であるペースト塩ビを得た。
得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビゾルを作製した。その粘度は2720mPa・sと低粘度を示し、手袋用材料として適したものであった。
比較例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水450kg、塩化ビニル単量体170kg、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルOPP、重合開始剤濃度70重量%)9.0kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し3.7重量部)、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液13kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し1.5重量部)を仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2.5時間循環し、均質化処理後、温度を30℃に上げて、重合を進めた。重合中に重合禁止剤としてパラベンゾキノンを80ppm添加した。オートクレーブの圧力が0.2MPaまで低下した点で重合反応を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル樹脂シードを得た。その際の重合時間は292分であった。
得られたラテックスは平均粒子径0.39μmを有する塩化ビニル樹脂シード粒子を含有するものであった。
比較例2
1mオートクレーブ中に脱イオン水290kg、塩化ビニル単量体300kg、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルOPP、重合開始剤濃度70重量%)6.6kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し1.5重量部)、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液22kg(塩化ビニル単量体100重量部に対し1.5重量部)を仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2.5時間循環し、均質化処理後、温度を35℃に上げて、重合を進めた。重合中に重合禁止剤としてパラベンゾキノンを310ppm添加した。オートクレーブの圧力が0.2MPaまで低下せず重合が遅延したため、重合を停止した。このため、塩化ビニル樹脂シードを含むラテックスを得ることができなかった。
比較例3
1mオートクレーブ中に脱イオン水410kg、塩化ビニル単量体を400kgと25%水溶液ラウリル硫酸ナトリウムを1.0kg、比較例1により得られた塩化ビニル樹脂シードラテックスを60kg、0.1%水溶液硫酸銅を1kg仕込み、その後、この反応混合物の温度を48℃に上げてシード微細懸濁重合を進めた。重合開始から重合終了までの間、25%水溶液ラウリル硫酸ナトリウム30kg、0.1%水溶液アスコルビン酸、パラベンゾキノンを連続的に添加し、オートクレーブの圧力が0.5MPaまで低下した点で重合反応を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル樹脂ラテックスの製造を試みたが、凝集が発生し、塩化ビニル樹脂を粒子として得ることができなかった。
本発明の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法は、ペースト塩ビを製造する際の重合の安定化が可能な重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を提供するものであり、該塩化ビニル系樹脂シード粒子を用いて得られるペースト塩ビは、可塑剤に分散し調製したペースト塩ビゾルの粘度が低粘度で経時変化が少なく、特に手袋材として優れた特性を有するものであり、その産業的価値は高いものである。

Claims (7)

  1. 水性媒体中で塩化ビニル系単量体、乳化剤、重合開始剤の均質化を行った後、重合を行い重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を製造する際に、塩化ビニル系単量体100重量部に対する重合開始剤が0.1~3重量部、乳化剤が0.5~3重量部であり、重合中に重合禁止剤を50~300ppmを添加することを特徴とする重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法。
  2. 前記重合開始剤が、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド及びコハク酸パーオキサイドからなる群より選択される1種以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法。
  3. 前記乳化剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法。
  4. 前記重合禁止剤が、ヒドロキノン、パラベンゾキノン、クロロパラベンゾキノン、2,5-ジクロロパラベンゾキノン、2,6-ジクロロパラベンゾキノン、2,3-ジメチルパラベンゾキノン、2,5-ジメチルパラベンゾキノン、メトキシパラベンゾキノン、メチルパラベンゾキノン、テトラブロモパラベンゾキノン及びテトラクロロパラベンゾキノンからなる群より選択される1種以上のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法。
  5. 重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子が、平均粒子径0.2~0.8μmの重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子を含むラテックスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載の重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の製造方法により得られた重合開始剤含有塩化ビニル系樹脂シード粒子の存在下、塩化ビニル系単量体のシード重合を行うことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  7. シード重合が、シード微細懸濁重合であることを特徴とする請求項6に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
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