JP2024078463A - 歯付ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】プーリへの打撃音を抑制する歯付ベルトを提供する。【解決手段】歯付ベルトBは、複数の歯部本体112のそれぞれが補強布13で被覆されて歯部10Aが構成されている。歯部10Aにおける補強布13の表面の面粗さのクルトシスが2.15以上である。【選択図】図1A

Description

本発明は、歯付ベルトに関する。
種々の同期動力伝達用途において、歯付ベルトが用いられている。例えば、特許文献1には、工作機械、印刷機械、繊維機械、射出成形機等に用いられる歯付ベルトについて、プーリへの打撃音を抑制するため、歯部間の歯底部の凹凸面の算術平均粗さを5~25μmとすることが開示されている。
国際公開第2016/047052号
本発明は、平帯状部と前記平帯状部の一方側の面に一定ピッチで間隔をおいて一体に設けられた複数の歯部本体とを有するベルト本体と、前記ベルト本体の前記複数の歯部本体が設けられた側の面を被覆するように設けられた補強布とを備え、前記複数の歯部本体のそれぞれが前記補強布で被覆されて歯部が構成された歯付ベルトであって、前記歯部における前記補強布の表面の面粗さのクルトシスが2.15以上である。
実施形態の歯付ベルトの一片の斜視図である。 図1Aにおける矢視Xの正面図である。 図1Aにおける矢視Yの正面図である。 図1BにおけるID-ID断面図(歯部2個分)である。 1/3綾の綾織物の組織図である。 3/1綾の綾織物の組織図である。 5枚2飛び朱子の朱子織物の組織図である。 5枚3飛び朱子の朱子織物の組織図である。 ベルト成形型の一部分の断面図である。 実施形態の歯付ベルトの製造方法の第1の説明図である。 実施形態の歯付ベルトの製造方法の第2の説明図である。 実施形態の歯付ベルトの製造方法の第3の説明図である。 ベルト走行音を測定するためのベルト走行試験機の平面図である。 ベルト走行音を測定するためのベルト走行試験機の正面図である。
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
図1A乃至Dは、実施形態に係る歯付ベルトBを示す。実施形態に係る歯付ベルトBは、例えば自動車の電動パワーステアリング装置に組み付けられるエンドレスの噛み合い伝動ベルトである。
実施形態に係る歯付ベルトBは、複数の歯部10Aを有する。複数の歯部10Aは、ベルト長さ方向に所定ピッチで間隔をおいて配設されており、それぞれベルト内周側に突出するように形成されている。ここで、本出願において、歯部10Aは、ベルト長さ方向に相互に隣接する一対の歯部10A間の歯底部10Bを基準として、歯部10Aの突出方向に0.1mm以上突出した部分とする。
歯部10Aは、断面形状が半円形のいわゆる丸歯である。歯部10Aは、ベルト幅方向に対して傾斜する方向に延びるように形成された突条で構成されたいわゆるハス歯である。なお、歯部10Aは、ベルト幅方向に延びるように形成された突条で構成されていてもよく、また、断面形状が台形の台形歯等のその他の形状のものであってもよい。
実施形態に係る歯付ベルトBのベルト周長(ベルトピッチラインLにおけるベルト長さ)は、例えば100mm以上400mm以下である。ベルト幅は、例えば4mm以上30mm以下である。ベルト最大厚さは、例えば1.1mm以上3.0mm以下である。
歯部10AのピッチPは、例えば0.50mm以上5.0mm以下である。歯部10Aの高さは、例えば0.50mm以上2.0mm以下である。この歯部10Aの高さは、歯底部10Bから歯部10Aの先端までの寸法で規定される。歯部10Aの幅は、例えば0.8mm以上3.3mm以下である。この歯部10Aの幅は、ベルト長さ方向の歯部10Aを挟んだ相互に隣接する一対の歯底部10Bの端間の寸法で規定される。歯部10Aのベルト幅方向に対する傾斜角度θは、例えば0°より大きく15°以下である。
実施形態に係る歯付ベルトBは、ベルト本体11、心線12、及び補強布13を備える。
ベルト本体11は、平帯状部111と複数の歯部本体112とを有する。複数の歯部本体112は、平帯状部111の内周側(一方側)の面に一定ピッチで間隔をおいて一体に設けられている。平帯状部111の厚さは、例えば0.30mm以上1.8mm以下である。歯部本体112の高さは、例えば0.50mm以上2.0mm以下である。この歯部本体112の高さは、後述するように平帯状部111に埋設された心線12の最内周部から歯部本体112の先端までの寸法で規定される。
ベルト本体11は、ゴム成分に架橋剤を含む各種のゴム配合剤が配合された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されてゴム成分が架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。
ベルト本体11を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、水素化ニトリルゴム(H-NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エチレン-α-オレフィンエラストマー(エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)など)等が挙げられる。架橋剤としては、有機過酸化物や硫黄が挙げられる。架橋剤以外のゴム配合剤としては、加硫促進助剤、老化防止剤、補強材、可塑剤、共架橋剤等が挙げられる。
心線12は、ベルト本体11の平帯状部111の内周側の部分に埋設されている。心線12は、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配されている。心線12の外径は、例えば0.15mm以上0.80mm以下である。
心線12は、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、金属繊維等で形成された撚り糸で構成されている。心線12は、S撚り糸及びZ撚り糸が二重螺旋を形成するように設けられている。なお、心線12は、単一のS撚り糸又はZ撚り糸のみで構成されていてもよい。心線12には、ベルト本体11との接着のため、いわゆるRFL水溶液に浸漬した後に加熱するRFL処理及びゴム糊に浸漬した後に乾燥させるゴム糊処理のうちの少なくとも一方の接着処理が施されていることが好ましい。心線12には、接着処理の前に、エポキシ溶液又はイソシアネート溶液に浸漬した後に加熱する下地処理が施されていてもよい。
補強布13は、ベルト本体11の複数の歯部本体112が設けられた側の面を被覆するように設けられている。補強布13の厚さは、例えば0.050mm以上0.55mm以下である。
実施形態に係る歯付ベルトBにおいて、歯部10Aは、ベルト本体11の複数の歯部本体112のそれぞれが、この補強布13で被覆されて構成されている。歯底部10Bでは、ベルト本体11の平帯状部111の内周側の部分に埋設された心線12が、この補強布13のすぐ内側に配置されている。
実施形態に係る歯付ベルトBでは、歯部10Aにおける補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuが2.15以上である。面粗さのクルトシスSkuは、表面の凹凸における凸部の尖り度の指標であり、ISO25178において定義されている通り、凹凸表面平均面からの高さの4乗平均を、2乗平均平方根値の4乗で除して正規化したものである。面粗さのクルトシスSkuは、接触式・非接触式形状測定器を用いて測定することができる。
実施形態に係る歯付ベルトBによれば、歯部10Aにおける補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuが2.15以上であることにより、ベルト走行音を小さく抑えることができる。これは、補強布13の表面の凹凸における凸部の尖り度が高いと、気柱音がでにくくなるためであると推測される。一般に、歯付ベルトがプーリと噛合して打撃するとき、それらの間から拍手と同様の原理で、特定の振動数で空気が吐き出されてベルト走行音が発せられる。これに対し、実施形態に係る歯付ベルトBでは、プーリに接触する補強布13の表面の凹凸における凸部の尖り度が高いことにより、ブラシの先端でプーリを打撃するような形態となり、振動数が分散されながら空気が出ていくため、ベルト走行音が小さく抑えられるものと考えられる。ベルト走行音を小さく抑える観点からは、歯部10Aにおける補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuは、好ましくは2.20以上、より好ましくは2.25以上である。
補強布13は、織布、編物、不織布等で構成されている。補強布13は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、織布で構成されていることが好ましい。補強布13を構成する織布は、経糸及び緯糸により織製される。補強布13を構成する織布は、同様の観点から、経糸及び緯糸の交差角度が90°であるとともに、経糸の延びる方向がベルト幅方向で且つ緯糸の延びる方向がベルト長さ方向となるように設けられていることが好ましい。なお、経糸及び緯糸の交差角度は90°以外であってもよい。また、経糸の延びる方向は、ベルト幅方向に対して傾斜していてもよい。緯糸の延びる方向は、ベルト長さ方向に対して傾斜していてもよい。
以下、補強布13が織布で構成され、交差角度が90°の経糸及び緯糸が、それぞれベルト幅方向及びベルト長さ方向に延びるように設けられている場合について説明する。
この場合、補強布13を構成する織布の織組織としては、例えば、平織、綾織、朱子織、及びこれらの変化組織、並びに特殊組織が挙げられる。補強布13を構成する織布の織組織は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、綾織及び朱子織が好ましい。綾織としては、例えば、図2Aに示す1/3綾、図2Bに示す3/1綾等が挙げられる。朱子織としては、図3Aに示す5枚2飛び朱子、図3Bに示す5枚3飛び朱子等が挙げられる。なお、図2A及びB並びに図3A及びBの組織図において、経糸が黒色及び緯糸が白色である。
経糸を形成する繊維材料としては、例えば、ナイロン繊維(脂肪族ポリアミド繊維)、ポリエステル繊維、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、綿等が挙げられる。経糸を形成する繊維材料は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、ナイロン繊維が好ましく、ナイロン6,6繊維がより好ましい。
経糸の繊度は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、好ましくは30dtex以上300dtex以下、より好ましくは90dtex以上170dtex以下である。5cm幅当たりの経糸の糸本数は、同様の観点から、好ましくは200本以上500本以下、より好ましくは220本以上275本以下、更に好ましくは240本以上260本以下である。5cm幅当たりの経糸の総繊度は、同様の観点から、好ましくは15000dtex以上60000dtex以下、より好ましくは20000dtex以上30000dtex以下、更に好ましくは25000dtex以上29000dtex以下である。
緯糸を形成する繊維材料としては、例えば、ナイロン繊維(脂肪族ポリアミド繊維)、ポリエステル繊維、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、綿等が挙げられる。緯糸を形成する繊維材料は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、ナイロン繊維が好ましく、ナイロン6,6繊維がより好ましい。緯糸を形成する繊維材料は、同様の観点から、経糸を形成する繊維材料と同一であることが好ましく、緯糸及び緯糸を形成する繊維材料は、いずれもナイロン繊維であることが好ましく、ナイロン6,6繊維であることがより好ましい。
緯糸は、ベルト長さ方向に延びるように設けられて歯部10Aを形成するので、伸縮性を有することが好ましい。緯糸は、ウーリー加工糸やポリウレタン弾性糸の芯材に巻き付けられたカバーリング糸であることが好ましい。
緯糸の繊度は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、好ましくは40dtex以上300dtex以下、より好ましくは150dtex以上160dtex以下である。緯糸の繊度の経糸の繊度に対する比は、同様の観点から、好ましくは0.5以上2以下、より好ましくは1以上1.5以下である。緯糸の繊度は、同様の観点から、経糸の繊度よりも大きいことが好ましい。
5cm幅当たりの緯糸の糸本数は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、好ましくは120本以上350本以下、より好ましくは170本以上190本以下である。5cm幅当たりの緯糸の糸本数の経糸の糸本数に対する比は、同様の観点から、好ましくは0.5以上0.9以下、より好ましくは0.6以上0.85以下、更に好ましくは0.65以上0.8以下である。5cm幅当たりの緯糸の糸本数は、同様の観点から、経糸の糸本数よりも少ないことが好ましい。
5cm幅当たりの緯糸の総繊度は、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、好ましくは15000dtex以上50000dtex以下、より好ましくは20000dtex以上29000dtex以下、更に好ましくは27000dtex以上28000dtex以下である。5cm幅当たりの緯糸の総繊度の経糸の総繊度に対する比は、同様の観点から、好ましくは0.5以上1.5以下、より好ましくは0.7以上1.2以下、更に好ましくは0.95以上1.1以下である。
補強布13には、ベルト本体11との接着のための接着処理が施されていることが好ましい。その接着処理としては、RFL処理、ソーキング処理、及びコーティング処理が挙げられる。
RFL処理は、補強布13をRFL水溶液に浸漬した後に加熱する処理である。このRFL水溶液は、レゾルシン(R)とホルマリン(F)との初期縮合物(RF)とゴムラテックス(L)とを混合したものである。ゴムラテックス(L)としては、例えば、ビニルピリジン・スチレンブタジエン共重合体ゴム(VP-SBR)ラテックス、クロロプレンゴム(CR)ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)ラテックス、2,3-ジクロロブタジエン重合体ゴム(2,3-DCB)ラテックス、ニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス等が挙げられる。
ソーキング処理は、RFL処理した補強布13を低粘度のゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理である。コーティング処理は、RFL処理又はソーキング処理した補強布13について、高粘度のゴム糊をベルト本体11側の表面に塗布して乾燥させる処理である。ソーキング処理やコーティング処理で用いられるゴム糊は、未架橋ゴム組成物をトルエンやメチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解させたものである。未架橋ゴム組成物は、例えば、ベルト本体11を形成するゴム組成物とゴム成分が共通するもの、クロロプレンゴム(CR)やクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)といった塩素系ゴムをゴム成分とするものである。
補強布13には、補強布13の表面の面粗さのクルトシスSkuを大きくしてベルト走行音を小さく抑える観点から、これらのうちのソーキング処理が施されていないことが好ましい。補強布13には、ソーキング処理を除くRFL処理及びコーティング処理が施されていることが好ましい。したがって、補強布13の表面には、RFL処理により繊維表面に付着したRFL被膜が露出していることが好ましい。
なお、補強布13には、RFL処理の前に下地処理が施されていてもよい。下地処理は、RFL処理の前の無処理の補強布13をエポキシ溶液又はイソシアネート溶液に浸漬した後に加熱する処理である。
次に、実施形態に係る歯付ベルトBの製造方法について図4及び図5A乃至Cに基づいて説明する。実施形態に係る歯付ベルトBの製造方法は、材料準備工程、成形工程、架橋工程、及び仕上げ工程を有する。
<材料準備工程>
所定のゴム成分を素練りし、そこに各種のゴム配合剤を投入して混練することにより相対的にゴム硬さの高い未架橋ゴム組成物を得る。そして、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等することにより未架橋ゴム組成物シート11’を作製する。
心線12に接触処理を施す。補強布13に接触処理を施す。このとき、上記の通り、ソーキング処理を行わず、RFL処理及びコーティング処理を行うことが好ましい。また、必要に応じて下地処理を行うことが好ましい。接着処理後、補強布13を筒状に成形する。このとき、経糸がベルト幅方向に対応する軸方向及び緯糸がベルト長さ方向に対応する周方向となるようにする。
<成形工程>
図4はベルト成形型20を示す。このベルト成形型20は、円筒状であって、各々、軸方向に対して傾斜する方向に延びるように形成された複数の歯部形成溝21が周方向に間隔をおいて配設された外周面を有する。
図5Aに示すように、ベルト成形型20の外周面上に筒状の補強布13を被せ、その上から心線12を螺旋状に巻き付ける。
そして、その上に未架橋ゴム組成物シート11’を巻き付け、ベルト成形型20上に未架橋スラブS’を成形する。なお、未架橋ゴム組成物シート11’は、列理方向がベルト長さ方向に対応するように使用することが好ましい。
<架橋工程>
図5Bに示すように、ベルト成形型20上の未架橋スラブS’にゴムスリーブ22を被せ、それを加硫缶内に配置して密閉するとともに、加硫缶内に高温及び高圧の蒸気を充填して所定の成型時間だけ保持する。こうして未架橋スラブS’をベルト成形型20側に押圧するとともに加熱することにより、未架橋ゴム組成物シート11’を心線12間に通して補強布13を押圧させながらベルト成形型20の複数の歯部形成溝21のそれぞれに流入させるとともに架橋させる。それと同時に、心線12及び補強布13を複合一体化させ、最終的に、図5Cに示すように、円筒状のベルトスラブSを成型する。
<仕上げ工程>
加硫缶の内部を減圧して密閉を解き、ベルト成形型20とゴムスリーブ22との間に成型されたベルトスラブSを取り出して脱型し、所定幅に輪切りすることにより実施形態に係る歯付ベルトBを得る。
(歯付ベルト)
以下の実施例1乃至3及び比較例の歯付ベルトを作製した。それぞれの補強布の構成については表1に示す。
<実施例1>
実施例1の歯付ベルトでは、補強布を3/1綾織の織布で構成し、その補強布を、経糸の延びる方向がベルト幅方向で且つ緯糸の延びる方向がベルト長さ方向となるように設けた。補強布を構成する3/1綾織の織布では、経糸を、繊度が110dtexのナイロン6,6繊維で構成した。緯糸を、繊度が156dtex(78dtex×2)のナイロン6,6繊維のウーリー加工糸で構成した。5cm幅当たりの経糸及び緯糸の糸本数を、それぞれ253本及び178本とした。
補強布には、接着処理として、RFL処理及びコーティング処理を順に施した。RFL処理では、CSMラテックスを含むRFL水溶液を用いた。コーティング処理では、H-NBRをゴム成分とする未架橋ゴム組成物をメチルエチルケトンに溶解させたゴム糊を用いた。なお、補強布には、ソーキング処理を施さなかった。
実施例1の歯付ベルトは、ベルト周長を364mm、ベルト幅を22mm、及びベルト最大厚さを2.1mmとした。ベルト本体は、ゴム成分がEPDMのゴム組成物で形成した。心線には、ガラス繊維の撚り糸を用いた。
<実施例2>
実施例2の歯付ベルトでは、補強布を5枚2飛び朱子の織布で構成した。補強布を構成する5枚2飛び朱子の織布では、経糸を、繊度が110dtexのナイロン6,6繊維で構成した。緯糸を、繊度が78dtexのナイロン6,6繊維のウーリー加工糸で構成した。5cm幅当たりの経糸及び緯糸の糸本数を、それぞれ270本及び240本とした。その他の構成は実施例1と同一とした。
<実施例3>
実施例3の歯付ベルトでは、補強布を1/3綾織の織布で構成した。補強布を構成する1/3綾織の織布では、経糸を、繊度が110dtexのナイロン6,6繊維で構成した。緯糸を、繊度が156dtex(78dtex×2)のナイロン6,6繊維のウーリー加工糸で構成した。5cm幅当たりの経糸及び緯糸の糸本数を、それぞれ276本及び178本とした。その他の構成は実施例1と同一とした。
<比較例>
比較例の歯付ベルトでは、補強布を3/1綾織の織布で構成した。補強布を構成する3/1綾織の織布では、経糸を、繊度が44dtexのナイロン6,6繊維で構成した。緯糸を、繊度が156dtex(78dtex×2)のナイロン6,6繊維のウーリー加工糸で構成した。5cm幅当たりの経糸及び緯糸の糸本数を、それぞれ393本及び168本とした。その他の構成は実施例1と同一とした。
Figure 2024078463000002
(試験方法)
<歯部における補強布の表面の面粗さのクルトシスSku>
実施例1乃至3及び比較例のそれぞれの歯付ベルトについて、接触式・非接触式形状測定器(デジタルマイクロスコープVHX-6000 キーエンス社製)を用いて歯部における補強布の表面の面粗さのクルトシスSkuを測定した。
<ベルト走行音>
図6A及びBは、ベルト走行音を測定するためのベルト走行試験機30のプーリレイアウトを示す。このベルト走行試験機30は、歯数が41個の駆動プーリ31と、その側方に左右可動に設けられた歯数が117個の従動プーリ32と、集音マイク33とを備える。従動プーリ32は、駆動プーリ31から離間する方向に定荷重(SW)を負荷できるとともに、回転トルクを負荷できるように構成されている。集音マイク33は、駆動プーリ31の軸中心から従動プーリ32側に30mm離間し且つ駆動プーリ31の前端面から20mm離間した位置に中心が位置付けられるように設けられている。
実施例1乃至3及び比較例のそれぞれの歯付ベルトBについて、ベルト走行試験機30の駆動プーリ31と従動プーリ32との間に巻き掛けた。従動プーリに対し、歯付ベルトBに100Nのベルト張力が生じるように定荷重(SW)を負荷するとともに、7N・mの回転トルクを負荷した。駆動プーリ31の回転数を10秒間で200rpmから3000rpmまで上昇させ、そのときのベルト走行音を集音マイク33で集音し、それについてFFT解析による次数分析を行って平均音圧レベルを求めた。
(試験結果)
試験結果を表1に示す。これによれば、歯部における補強布の表面の面粗さのクルトシスSkuが2.15以上である実施例1乃至3は、歯部における補強布の表面の面粗さのクルトシスSkuが2.14である比較例と比べて平均音圧レベルが低く、したがって、ベルト走行音が小さいことが分かる。
本発明は、歯付ベルトの技術分野について有用である。
B 歯付ベルト
S’ 未架橋スラブ
S ベルトスラブ
10A 歯部
10B 歯底部
11 ベルト本体
11’ 未架橋ゴム組成物シート
111 平帯状部
112 歯部本体
12 心線
13 補強布
20 ベルト成形型
21 歯部形成溝
22 ゴムスリーブ
30 ベルト走行試験機
31 駆動プーリ
32 従動プーリ
33 集音マイク

Claims (15)

  1. 平帯状部と、前記平帯状部の一方側の面に一定ピッチで間隔をおいて一体に設けられた複数の歯部本体と、を有するベルト本体と、
    前記ベルト本体の前記複数の歯部本体が設けられた側の面を被覆するように設けられた補強布と、
    を備え、前記複数の歯部本体のそれぞれが前記補強布で被覆されて歯部が構成された歯付ベルトであって、
    前記歯部における前記補強布の表面の面粗さのクルトシスが2.15以上である歯付ベルト。
  2. 請求項1に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記補強布が織布で構成されている歯付ベルト。
  3. 請求項2に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記補強布を構成する前記織布の織組織が綾織又は朱子織である歯付ベルト。
  4. 請求項2に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記補強布を構成する織布が、経糸及び緯糸の交差角度が90°であるとともに、前記経糸の延びる方向がベルト幅方向で且つ前記緯糸の延びる方向がベルト長さ方向となるように設けられている歯付ベルト。
  5. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記経糸及び前記緯糸を形成する繊維材料がナイロン6,6繊維である歯付ベルト。
  6. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記経糸の繊度が30dtex以上300dtex以下であり且つ前記緯糸の繊度が40dtex以上300dtex以下である歯付ベルト。
  7. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記緯糸の繊度の前記経糸の繊度に対する比が0.5以上2以下である歯付ベルト。
  8. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記緯糸の繊度が前記経糸の繊度よりも大きい歯付ベルト。
  9. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    5cm幅当たりの前記経糸の糸本数が200本以上500本以下であり且つ5cm幅当たりの前記緯糸の糸本数が120本以上350本以下である歯付ベルト。
  10. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    5cm幅当たりの前記緯糸の糸本数の前記経糸の糸本数に対する比が0.5以上0.9以下である歯付ベルト。
  11. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    5cm幅当たりの前記緯糸の糸本数が前記経糸の糸本数よりも少ない歯付ベルト。
  12. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    5cm幅当たりの前記経糸の総繊度が15000dtex以上60000dtex以下であり且つ5cm幅当たりの前記緯糸の総繊度が15000dtex以上50000dtex以下である歯付ベルト。
  13. 請求項4に記載された歯付ベルトにおいて、
    5cm幅当たりの前記緯糸の総繊度の前記経糸の総繊度に対する比が0.5以上1.5以下である歯付ベルト。
  14. 請求項1に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記補強布には、ゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理であるソーキング処理が施されていない歯付ベルト。
  15. 請求項1に記載された歯付ベルトにおいて、
    前記補強布の表面にRFL処理により繊維表面に付着したRFL被膜が露出している歯付ベルト。
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