JPWO2019193881A1 - 摩擦伝動ベルト - Google Patents

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Abstract

ゴム製の摩擦伝動ベルト(B)は、表面被覆布(14)で被覆されて構成されたプーリ接触面を有する。表面被覆布(14)が、低吸水性フィラメント繊維と、高吸水性ステープル繊維とを含む複合紡績糸で形成されている。

Description

本発明は、摩擦伝動ベルトに関する。
表面被覆布で被覆されて構成されたベルト表面を有するゴム製の摩擦伝動ベルトが知られている。特許文献1には、吸水性糸及び非吸水性糸で形成された経編布の表面被覆布で被覆されて構成されたVリブ表面を有するVリブドベルトが開示されている。特許文献2には、綿繊維と合成繊維との混紡糸で形成された織布の表面被覆布で被覆されて構成されたベルト背面を有するVリブドベルトが開示されている。
特開2015−127590公報 特開平10−9344号公報
本発明は、表面被覆布で被覆されて構成されたプーリ接触面を有するゴム製の摩擦伝動ベルトであって、前記表面被覆布が、低吸水性フィラメント繊維と、高吸水性ステープル繊維とを含む複合紡績糸で形成されている。
実施形態に係るVリブドベルトのベルト片の斜視図である。 実施形態に係るVリブドベルトのVリブ1個分の断面図である。 表面被覆布を形成する複合紡績糸の斜視図である。 補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。 架橋装置の断面図である。 架橋装置の一部分の断面拡大図である。 実施形態に係るVリブドベルトの製造方法を示す第1の説明図である。 実施形態に係るVリブドベルトの製造方法を示す第2の説明図である。 実施形態に係るVリブドベルトの製造方法を示す第3の説明図である。 注水伝動能力試験のベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。 耐摩耗性試験のベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。 実施例及び比較例1及び2の発生トルクの最大値を示すグラフである。 実施例及び比較例1及び2の摩耗率を示すグラフである。
以下、実施形態について詳細に説明する。
図1A及びBは、実施形態に係るVリブドベルトBを示す。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置等に用いられるゴム製の摩擦伝動ベルトである。実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト周長が700mm以上3000mm以下、ベルト幅が10mm以上36mm以下、及びベルト厚さが4.0mm以上5.0mm以下である。
実施形態に係るVリブドベルトBは、各々、ゴム組成物で形成された内周側の圧縮ゴム層11、中間の接着ゴム層12、及び外周側の伸張ゴム層13の三層で構成されたベルト本体10を備えている。
圧縮ゴム層11には、内周側に複数のVリブ形成ゴム部11aが垂下するように形成されている。複数のVリブ形成ゴム部11aは、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形状の突条で構成されているとともに、ベルト幅方向に並設されている。圧縮ゴム層11の厚さは、例えば2.2mm以上3.2mm以下である。
接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に形成されている。接着ゴム層12の厚さは、例えば1.0mm以上2.5mm以下である。
伸張ゴム層13も、断面横長矩形の帯状に構成されており、その厚さが例えば0.4mm以上0.8mm以下である。伸張ゴム層13の表面には、背面駆動時の音発生を抑制する観点から、織布パターンが設けられていることが好ましい。なお、伸張ゴム層13に代えて、背面補強布が設けられていてもよい。
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び伸張ゴム層13を形成するゴム組成物は、ゴム成分に架橋剤を含む種々のゴム配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されることによりゴム成分が架橋剤により架橋したものである。
ゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー(以下「EPDM」という。)、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−ブテンコポリマー(EDM)、エチレン−オクテンコポリマー(EOM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー;クロロプレンゴム(CR);クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM);水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、エチレン−α−オレフィンエラストマーを用いることがより好ましく、EPDMを用いることが更に好ましい。
架橋剤としては、硫黄及び有機過酸化物が挙げられる。架橋剤以外のゴム配合剤としては、例えば、カーボンブラックなどの補強材、充填剤、老化防止剤、軟化剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等が挙げられる。
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び伸張ゴム層13は、同一のゴム組成物で形成されていても、また、異なるゴム組成物で形成されていても、どちらでもよい。
圧縮ゴム層11の複数のVリブ形成ゴム部11aの表面は、表面被覆布14で被覆されている。表面被覆布14の厚さは、例えば0.3mm以上1.5mm以下である。そして、表面被覆布14で被覆されたVリブ形成ゴム部11aによってVリブ15が構成されている。この表面被覆布14で被覆されたVリブ15の表面がプーリ接触面となる。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0mm以上3.0mm以下、及び基端間の幅が1.0mm以上3.6mm以下である。Vリブ15の個数は、例えば3個以上6個以下である(図1では6個)。
表面被覆布14は、織布で構成されていても、また、編布で構成されていても、どちらでもよい。織布の織物組織としては、例えば、平織、斜文織、朱子織、及びこれらの変化組織等が挙げられる。編布の編物組織としては、例えば、よこ編みでは、平編、ゴム編、パール編、その他の変化組織など、たて編みでは、シングルデンビー編、シングルバンダイク編、その他の変化組織等が挙げられる。圧縮ゴム層11の複数のVリブ形成ゴム部11aの凹凸表面を被覆する観点からは、表面被覆布14は、伸縮性の高い編布で構成されていることが好ましく、たて編みの編布で構成されていることがより好ましい。
表面被覆布14は、接着剤に浸漬する接着処理が施されておらず、露出表面に接着剤が付着していないことが好ましい。その一方、表面被覆布14は、接着剤に浸漬する接着処理が施されていてもよい。本出願における「接着剤に浸漬する接着処理」は、エポキシ樹脂溶液又はイソシアネート樹脂溶液に浸漬して加熱する処理、RFL水溶液に浸漬して加熱する処理、及びゴム糊に浸漬して乾燥させる処理である。ベルト本体10側となる面にゴム糊をコーティングして乾燥させる処理は除かれる。
表面被覆布14は、図2に示すような複合紡績糸20で形成されている。つまり、表面被覆布14は、織布の経糸及び緯糸として、或いは、編布の編糸として、この複合紡績糸20が用いられている。ここで、本出願における「複合紡績糸20」は、相対的に吸水性の低い低吸水性フィラメント繊維21と、相対的に吸水性の高い高吸水性ステープル繊維22とを含み、低吸水性フィラメント繊維21間に高吸水性ステープル繊維22が分散して撚糸された糸である。また、本出願における「フィラメント繊維」とは、長尺の連続繊維をいう。本出願における「ステープル繊維」とは、繊維長が50mm以下の短尺の繊維をいう。
複合紡績糸20に含まれる低吸水性フィラメント繊維21は、合成繊維を含むことが好ましい。低吸水性フィラメント繊維21としては、例えば、ナイロン66繊維、ナイロン6繊維などの脂肪族ポリアミド繊維;ポリエステル繊維等が挙げられる。低吸水性フィラメント繊維21は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、高い耐摩耗性を得る観点から、脂肪族ポリアミド繊維を含むことがより好ましく、ナイロン66繊維を含むことが更に好ましい。
複合紡績糸20に含まれる高吸水性ステープル繊維22は、セルロース系繊維を含むことが好ましい。高吸水性ステープル繊維22としては、例えば、綿、麻などのセルロース系天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセルなどの再生繊維等が挙げられる。高吸水性ステープル繊維22は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、後述するように被水環境下での優れたベルト走行性を得る観点から、セルロース系天然繊維を含むことがより好ましく、綿を含むことが更に好ましい。
複合紡績糸20における低吸水性フィラメント繊維21の含有量は、高吸水性ステープル繊維22の含有量よりも少ないことが好ましいが、多くてもよく、また、同一であってもよい。複合紡績糸20における低吸水性フィラメント繊維21の含有量に対する高吸水性ステープル繊維22の含有量の質量比は、好ましくは30/70以上90/10以下、より好ましくは50/50以上80/20以下である。
複合紡績糸20では、糸断面において、低吸水性フィラメント繊維21及び高吸水性ステープル繊維22がランダムに配設されていても、また、例えば中央部に低吸水性フィラメント繊維21及び外周部に高吸水性ステープル繊維22のように、それらが偏在して配設されていても、どちらでもよい。但し、後述するように被水環境下での優れたベルト走行性を得る観点からは、低吸水性フィラメント繊維21及び高吸水性ステープル繊維22がランダムに配設されていることが好ましい。
接着ゴム層12のベルト厚さ方向の中間部には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線16が埋設されている。心線16は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維等の撚り糸で構成されている。心線16の直径は例えば0.5mm以上2.5mm以下であり、断面における相互に隣接する心線16中心間の寸法は例えば0.05mm以上0.20mm以下である。心線16には、エポキシ樹脂溶液又はイソシアネート樹脂溶液に浸漬して加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、及びゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理のうちの1種又は2種以上の接着処理が施されていることが好ましい。
以上の構成の実施形態に係るVリブドベルトBによれば、プーリ接触面であるVリブ15の表面の表面被覆布14が、低吸水性フィラメント繊維21と高吸水性ステープル繊維22とを含む複合紡績糸20で形成されていることにより、被水環境下での優れたベルト走行性を得ることができる。
図3は、実施形態に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置30のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置30は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
この補機駆動ベルト伝動装置30では、最上位置にリブプーリのパワーステアリングプーリ31が設けられ、そのパワーステアリングプーリ31の下方にリブプーリのACジェネレータプーリ32が設けられている。また、パワーステアリングプーリ31の左下方には平プーリのテンショナプーリ33が設けられており、そのテンショナプーリ33の下方には平プーリのウォーターポンププーリ34が設けられている。さらに、テンショナプーリ33の左下方にはリブプーリのクランクシャフトプーリ35が設けられており、そのクランクシャフトプーリ35の右下方にリブプーリのエアコンプーリ36が設けられている。これらのプーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、或いは、ナイロン樹脂、フェノール樹脂等の樹脂成形品で構成されており、プーリ径が例えば50mm以上150mm以下である。
この補機駆動ベルト伝動装置30において、VリブドベルトBは、圧縮ゴム層11側のVリブ15が接触するようにパワーステアリングプーリ31に巻き掛けられ、次いで、伸張ゴム層13側のベルト背面が接触するようにテンショナプーリ33に巻き掛けられた後、Vリブ15が接触するようにクランクシャフトプーリ35及びエアコンプーリ36に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ34に巻き掛けられ、そして、Vリブ15が接触するようにACジェネレータプーリ32に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ31に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50mm以上300mm以下である。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0°以上2°以下である。
次に、実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法について説明する。
図4A及びBは、実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法で用いる架橋装置40を示す。
この架橋装置40は、基台41と、その上に立設された円柱状の膨張ドラム42と、その外側に設けられた円筒状の円筒金型43とを備えている。
膨張ドラム42は、中空円柱状に形成されたドラム本体42aと、その外周に外嵌めされた円筒状のゴム製の膨張スリーブ42bとを有する。ドラム本体42aの外周部には、各々、内部に連通した多数の通気孔42cが形成されている。膨張スリーブ42bの両端部は、それぞれドラム本体42aとの間で固定リング44,45によって封止されている。架橋装置40には、ドラム本体42aの内部に高圧空気を導入して加圧する加圧手段(不図示)が設けられており、この加圧手段によりドラム本体42aの内部に高圧空気が導入されると、高圧空気が通気孔42cを通ってドラム本体42aと膨張スリーブ42bとの間に入って膨張スリーブ42bを径方向外向きに膨張させるように構成されている。
円筒金型43は、基台41に脱着可能に構成されている。基台41に取り付けられた円筒金型43は、膨張ドラム42との間に間隔をおいて同心状に設けられる。円筒金型43は、内周面に、各々、周方向に延びる複数のVリブ形成溝43aが軸方向(溝幅方向)に連設されている。各Vリブ形成溝43aは、溝底側に向かうに従って幅狭に形成されており、具体的には、断面形状が、製造するVリブドベルトBのVリブ15と同一形状に形成されている。架橋装置40には、円筒金型43の加熱手段及び冷却手段(いずれも不図示)が設けられており、これらの加熱手段及び冷却手段により円筒金型43の温度制御が可能となるように構成されている。
実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法では、まず、ゴム成分に、架橋剤を含む各ゴム配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシートを作製する。同様に、接着ゴム層12用及び伸張ゴム層13用の未架橋ゴムシートも作製する。また、表面被覆布14を準備し、必要に応じて接着処理を施す。表面被覆布14は、筒状に形成することが好ましい。さらに、心線16を準備し、必要に応じて接着処理を施す。
次いで、図5Aに示すように、表面が平滑な円筒ドラム46上にゴムスリーブ47を被せ、その上に、伸張ゴム層13用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線16を螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層12用の未架橋ゴムシート12’、及び圧縮ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付け、最後に、その上を表面被覆布14で被覆して未架橋スラブS’を成形する。
次いで、円筒ドラム46から未架橋スラブS’を設けたゴムスリーブ47を外し、図5Bに示すように、円筒金型43の内周面側に内嵌めした後、その未架橋スラブS’を設けた円筒金型43を、膨張ドラム42を覆うように設けて基台41に取り付ける。
続いて、円筒金型43を加熱すると共に、図5Cに示すように、膨張ドラム42のドラム本体42aと膨張スリーブ42bとの間に通気孔42cを介して高圧空気を注入して膨張スリーブ42bを膨張させる。このとき、未架橋スラブS’が円筒金型43に対して押し付けられ、未架橋ゴムシート11’,12’,13’が表面被覆布14を押圧して伸張させながらVリブ形成溝43aに流入するとともに、それらのゴム成分の架橋が進行して一体化し、且つ表面被覆布14及び心線16が複合し、最終的に、円筒状のベルトスラブSが成型される。このベルトスラブSの成型温度は例えば100℃以上180℃以下、成型圧力は例えば0.5MPa以上2.0MPa以下、成型時間は例えば10分以上60分以下である。
そして、膨張ドラム42のドラム本体42aと膨張スリーブ42bとの間から高圧空気を抜いた後、円筒金型43の内周面上に成型されたベルトスラブSを取り出し、ベルトスラブSを所定のVリブ15の個数に輪切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。
なお、上記実施形態では、VリブドベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、表面被覆布で被覆されたプーリ接触面を有する摩擦伝動ベルトであれば、ラップドVベルトや平ベルト等であってもよい。
(Vリブドベルト)
以下の実施例並びに比較例1及び2のVリブドベルトを作製した。
<実施例>
上記実施形態と同様の構成であって、表面被覆布として、低吸水性フィラメント繊維のナイロン66繊維と高吸水性ステープル繊維の綿との複合紡績糸を編糸として形成されたたて編の編布で且つ接着剤に浸漬する接着処理を施していないものを用いたVリブドベルトを作製し、それを実施例とした。実施例のVリブドベルトは、Vリブの個数が6個のものと3個のものとを作製した。
ここで、複合紡績糸には、糸断面において、ナイロン66繊維及び綿がランダムに配設されたものを用いた。複合紡績糸におけるナイロン66繊維の含有量に対する綿の含有量の質量比は62/38である。
なお、ベルト本体は、EPDM組成物で形成し、心線は、ポリエステル繊維の撚り糸で構成した。
<比較例1>
表面被覆布の編糸として、ナイロン66繊維のウーリー加工糸を用いたことを除いて実施例と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例1とした。
<比較例2>
表面被覆布の編糸として、綿の紡績糸を用いたことを除いて実施例と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例2とした。
(試験方法)
<注水伝動能力試験>
図6Aは、注水伝動能力試験のベルト走行試験機50のプーリレイアウトを示す。
このベルト走行試験機50は、向かって左下にプーリ径が121.6mmのリブプーリの第1駆動プーリ51が設けられ、その右方にプーリ径が141.5mmのリブプーリの第2駆動プーリ52が設けられている。第2駆動プーリ52の右斜め上方にはプーリ径が77.0mmのリブプーリの第1従動プーリ53が設けられ、第2駆動プーリ52の上方にはプーリ径が61.0mmのリブプーリの第2従動プーリ54が設けられている。第1駆動プーリ51と第2従動プーリ54との間にはプーリ径が76.2mmの平プーリの第1アイドラプーリ55が設けられ、第1従動プーリ53と第2従動プーリ54との間にはプーリ径が76.2mmの平プーリの第2アイドラプーリ56が設けられている。第2従動プーリ54は、上下に可動に設けられており、軸荷重を負荷できるように構成されている。
実施例並びに比較例1及び2のそれぞれのVリブの個数が6個のVリブドベルトBについて、Vリブ側が接触するように、第1及び第2駆動プーリ51,52並びに第1及び第2従動プーリ53,54に巻き掛けるとともに、伸張ゴム層側が接触するように、第1及び第2アイドラプーリ55,56に巻き掛け、第2従動プーリ54に上方に706Nの軸荷重をかけてベルト張力を与えた。VリブドベルトBの第2駆動プーリ52への巻き掛かり角度は39°であった。次いで、21℃の温度雰囲気下、第1駆動プーリ51を800rpm及び第2駆動プーリ52を931rpmのそれぞれの回転数で同一方向に回転させ、それにより第2駆動プーリ52上においてVリブドベルトBを強制的にスリップさせた。また、第1駆動プーリ51の右側のVリブドベルトBの巻き掛かり始めの部分のVリブ表面には1分間に300mlの割合で水滴を滴下した。そして、第2駆動プーリ52に設けたトルクメータにより、発生トルクの最大値を計測した。
<耐摩耗性試験>
図6Bは、耐摩耗性試験のベルト走行試験機60のプーリレイアウトを示す。
このベルト走行試験機60は、向かって右側にプーリ径が60mmのリブプーリの駆動プーリ61が設けられ、向かって左側にプーリ径が60mmのリブプーリの従動プーリ62が設けられている。駆動プーリ61は、左右に可動に設けられており、軸荷重を負荷できるように構成されている。従動プーリ62には3.8kW(5.2PS)の回転負荷が与えられている。
実施例並びに比較例1及び2のそれぞれのVリブの個数が3個のVリブドベルトBについて、Vリブ側が接触するように、駆動プーリ61及び従動プーリ62に巻き掛けるとともに、駆動プーリ61に右方に1176Nの軸荷重をかけてベルト張力を与え、室温下、駆動プーリ61を3500rpmの回転数で回転させて170時間ベルト走行させた。そして、ベルト走行前後の質量変化を求め、それを摩耗減量として摩耗率を算出した。
(試験結果)
図7Aは、実施例並びに比較例1及び2の発生トルクの最大値を示す。図7Bは、実施例並びに比較例1及び2の摩耗率を示す。
図7A及びBによれば、ナイロン66繊維と綿との複合紡績糸で形成された表面被覆布を用いた実施例では、発生トルクの最大値が高く、したがって、被水環境下での伝動能力が高く且つ摩耗率が低いことが分かる。
一方、ナイロン66繊維の撚り糸で形成された表面被覆布を用いた比較例1では、摩耗率は低いものの、発生トルクの最大値が低く、したがって、被水環境下での伝動能力が低いことが分かる。また、綿の紡績糸で形成された表面被覆布を用いた比較例2では、発生トルクの最大値が高く、したがって、被水環境下での伝動能力は高いものの、摩耗率が高いことが分かる。
本発明は、摩擦伝動ベルトの技術分野について有用である。
B Vリブドベルト(摩擦伝動ベルト)
14 表面被覆布
20 複合紡績糸
21 低吸水性フィラメント繊維
22 高吸水性ステープル繊維

Claims (10)

  1. 表面被覆布で被覆されて構成されたプーリ接触面を有するゴム製の摩擦伝動ベルトであって、
    前記表面被覆布が、低吸水性フィラメント繊維と、高吸水性ステープル繊維と、を含む複合紡績糸で形成されている摩擦伝動ベルト。
  2. 請求項1に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記低吸水性フィラメント繊維が合成繊維を含む摩擦伝動ベルト。
  3. 請求項2に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記低吸水性フィラメント繊維が脂肪族ポリアミド繊維を含む摩擦伝動ベルト。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記高吸水性ステープル繊維がセルロース系繊維を含む摩擦伝動ベルト。
  5. 請求項4に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記高吸水性ステープル繊維がセルロース系天然繊維を含む摩擦伝動ベルト。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記複合紡績糸における前記低吸水性フィラメント繊維の含有量に対する前記高吸水性ステープル繊維の含有量の質量比が30/70以上90/10以下である摩擦伝動ベルト。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記複合紡績糸における前記低吸水性フィラメント繊維の含有量が、前記高吸水性ステープル繊維の含有量よりも少ない摩擦伝動ベルト。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記複合紡績糸は、糸断面において、前記低吸水性フィラメント繊維及び前記高吸水性ステープル繊維がランダムに配設されている摩擦伝動ベルト。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記表面被覆布がたて編みの編布で構成されている摩擦伝動ベルト。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
    前記表面被覆布は、接着剤に浸漬する接着処理が施されていない摩擦伝動ベルト。
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