JP2024062196A - 焙煎植物抽出物の風味改善方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便かつ高い効果で、焙煎植物抽出物の風味改善を行う方法を提供すること。特に、ロブスタ種の焙煎コーヒー豆抽出物の香味のロブスタ臭を低減または除去し、アラビカ種の焙煎コーヒー豆抽出物に近い風味とすること。【解決手段】焙煎植物原料を抽出して焙煎植物抽出物を調製するに際し、前記焙煎植物原料の抽出時および/または前記焙煎植物原料の抽出液に対し、ラッカーゼ処理を行う、焙煎植物抽出物の風味改善方法。【選択図】 なし

Description

本発明は焙煎植物抽出物の風味改善方法に関する。
コーヒーは世界中で最も広く愛飲されている嗜好飲料の一つである。
コーヒーは生コーヒー豆を焙煎し、熱水により抽出し飲用に供されるが、焙煎時には様々な化学反応が起こり、焙煎コーヒー豆の独特の褐色を生じさせると同時に、きわめて多くの化学物質が複雑に絡み合い、焙煎コーヒーの独特の複雑な香味を形成する。コーヒーは焙煎コーヒー豆を熱水で抽出して得られる飲料であるが、その香味は、原料生豆の品種、産地や栽培条件、生豆の焙煎条件、焙煎豆の抽出条件などにより大きく変動する。これらのうち原料である生コーヒー豆の品種の影響は特に大きいとされている。
生コーヒー豆の品種は、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種の三種に大別され、それらのうちアラビカ種が、味・香りともに良く、高品質とされており、日本では最も好まれ、広く流通している。
一方、ロブスタ種は、一般的に苦味が強く、独特なロブ臭(ロブスタ臭ともいう;麦を焦がしたような香り、煮出した漢方薬のような風味、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭、フェノール臭などと表現される)があり、低品質豆とされている。しかしながらロブスタ種は病害虫に強く、成長が早く収穫量が多いという特徴があり、比較的安価で市場に流通しているとともに、容易に入手が可能なことから、アラビカ種とのブレンドにも多く用いられている。また、味、香り、苦味等の後口が全般的に強いことから、アイスコーヒーに用いられることも多い。
このような背景にかんがみ、従来より、ロブスタ種のような低品質のコーヒー豆の品質改良のため、様々な方法が提案されている。
例えば、湿らせた生のロブスタコーヒー豆をスチーム処理し、次いで処理した豆を焙煎するに際し、特定の条件下で行うことによってロブスタコーヒー豆の品質を高める方法(特許文献1)、焙煎したコーヒー豆を酸性溶液(タンニン酸を除く)で処理した後、焙煎コーヒー豆の水分を4%以下になるようにする焙煎コーヒー豆の製造方法(特許文献2)、コーヒー生豆を表面研磨した後に、焙煎過程において水を散布するコーヒー豆の製造工程において、得られた焙煎コーヒー豆を粉砕する際に、極粗挽き後、シルバースキンを微粉粒とともに吸引除去し、さらに所定の基本粒度まで粉砕することでロブ臭を軽減するロブスタ種コーヒー挽き豆の改質方法(特許文献3)、ジテルペン化合物(パルミチン酸カーウェオールとパルミチン酸カフェストール)の濃度が特定範囲となるよう調整する容器詰めコーヒー飲料の製造方法(特許文献4)、ロブスタ種コーヒー豆抽出液に、スクラロースまたはソーマチンを添加することを特徴とする、ロブスタ種コーヒー豆抽出液の不快な風味の改善方法(特許文献5)、ロブスタ種のコーヒー豆の抽出液にオレンジフレーバーを含ませるコーヒー飲料のロブ臭の低減方法(特許文献6)、コーヒー生豆を酸性溶液と接触させて、コーヒー生豆に前記酸性溶液を吸収させ、固形分中のβ-ダマセノン含量を5ppb以上とする工程を含む、ロブスタ種のコーヒー生豆の風味改善方法(特許文献7)などが知られている。
一方、本発明とは課題は異なるが、焙煎植物原料にラッカーゼを作用させる技術として、焙煎コーヒー豆抽出液にラッカーゼを作用させることを特徴とするヒドロキシヒドロキノン含有量の低下したコーヒー飲料組成物の製造法(特許文献8)が知られている。
特開平6-303905号公報 特開2004-337061号公報 特開2013-220073号公報 特開2015-164400号公報 特開2013-208080号公報 特開2016-185121号公報 特開2018-57369号公報 特開2006-149235号公報
しかしながら、簡便かつ高い効果で、ロブスタ種のコーヒー焙煎豆の風味をアラビカ種のコーヒー焙煎豆の風味に近づける方法はいまだ開発されていない。
以上は、焙煎植物原料の一つである、焙煎コーヒー豆についての課題であるが、他の焙煎植物原料、例えば、焙煎大麦、焙煎麦芽、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽玄米、焙煎はと麦についても、簡便かつ高い効果で風味改善が可能な方法は確立されていない。
本発明の目的は、簡便かつ高い効果で、焙煎植物抽出物の風味改善を行う方法を提供することである。
本発明者らは前記課題にかんがみ、鋭意研究を行った。その結果、ロブスタ種の焙煎コーヒー豆抽出液に対し、ラッカーゼ処理を行うことで、いわゆる「ロブ臭」が低減または消失し、アラビカ種の焙煎コーヒー豆抽出液の風味に極めて良く近づくことを見出した。さらに、前記ラッカーゼ処理が、他の焙煎植物原料においても風味改善、特に香気の改善に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は以下のものを提供する。
[1]焙煎植物原料を抽出して焙煎植物抽出物を調製するに際し、前記焙煎植物原料の抽出時および/または前記焙煎植物原料の抽出液に対し、ラッカーゼ処理を行う、焙煎植物抽出物の風味改善方法。
[2]前記焙煎植物原料が、焙煎種実である、[1]に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法。
[3]前記焙煎植物原料が、焙煎コーヒー豆である、[1]に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法。
[4][1]に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法において、風味改善が、不快臭の低減である方法。
[5][1]に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法において、風味改善が、フェノール臭の低減である方法。
[6]前記焙煎植物原料が、アラビカ種以外の品種を含む焙煎コーヒー豆である、[1]に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法。
[7][6]に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法において、風味改善が、アラビカ種以外の品種の焙煎コーヒー豆の風味を、アラビカ種の焙煎コーヒー豆に近い風味とする方法。
[8]アラビカ種以外の焙煎コーヒー豆の抽出に際し、前記焙煎コーヒー豆の抽出時および/または前記焙煎コーヒー豆の抽出により得られる抽出液に対し、ラッカーゼ処理を行う、焙煎コーヒー豆抽出物の製造方法。
[9]以下の群(X)から選ばれる1種または2種以上の焙煎植物原料の抽出に際し、前記焙煎植物原料の抽出時および/または前記焙煎植物原料の抽出により得られる抽出液に対しラッカーゼ処理を行う、焙煎植物抽出物の製造方法。
群(X):焙煎大麦、焙煎麦芽、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽玄米および焙煎はと麦
[10]以下の工程(A)および(B)を含む、焙煎植物抽出物の製造方法。
工程(A):焙煎植物原料を水蒸気蒸留し、留出液を得る工程
工程(B):前記工程(A)で得られる留出液に対しラッカーゼ処理を行い、焙煎植物抽出物を得る工程
[11]以下の工程(A)~(D)を含む、焙煎植物抽出物の製造方法。
工程(A):焙煎植物原料を水蒸気蒸留し、留出液を得る工程
工程(B):前記工程(A)で得られる留出液に対しラッカーゼ処理を行い、ラッカーゼ処理された留出液を得る工程
工程(C):前記工程(A)を行う前および/または行った後の焙煎植物原料を水性溶媒にて抽出し、水性溶媒抽出液を得る工程
工程(D):前記工程(B)で得られるラッカーゼ処理された留出液を、前記工程(C)で得られる水性溶媒抽出液と混合し、焙煎植物抽出物を得る工程
[12]以下の工程(A)~(D)を含む、焙煎植物抽出物の製造方法。
工程(A):焙煎植物原料を水蒸気蒸留し、留出液を得る工程
工程(B):前記工程(A)を行う前および/または行った後の焙煎植物原料を水性溶媒にて抽出し、水性溶媒抽出液を得る工程
工程(C):前記工程(A)で得られる留出液と、前記工程(B)で得られる水性溶媒抽出液を混合し、抽出液を得る工程
工程(D):前記工程(C)で得られる抽出液に対しラッカーゼ処理を行い、焙煎植物抽出物を得る工程
本発明によれば、簡便かつ高い効果で、焙煎植物抽出物の香味を改善することができ、風味の改善された焙煎植物抽出物を提供できる。特に、ロブスタ種の焙煎コーヒー豆抽出物の風味をアラビカ種の焙煎コーヒー豆抽出物に近い風味とすることができる。
[焙煎植物原料]
本発明において使用することのできる焙煎植物原料としては、例えば、焙煎コーヒー豆、焙煎大麦、焙煎麦芽、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽玄米、焙煎はと麦、ココア、ほうじ茶、番茶、ブラックマテ茶などのいわゆる嗜好飲料に分類される原料を例示でき、その加工工程中において、焙煎処理が行われている植物原料を指す。なお、緑茶、紅茶、ウーロン茶、グリーンマテ茶などであっても、その加工工程において100℃以上の強い火入れがされ、「火入れ香」が発生しているものは、本発明でいう焙煎植物原料に含めることができる。これらのうち、本発明において使用できる焙煎植物原料として、特に焙煎コーヒー豆、焙煎大麦、焙煎麦芽、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽玄米、焙煎はと麦を好ましく例示することができ、さらに好ましくは焙煎コーヒー豆を挙げることができ、最も好ましくはロブスタ種などの、アラビカ種以外の焙煎コーヒー豆を挙げることができる。
焙煎植物原料は、焙煎の程度により異なるが、通常は焙煎により、糖質、アミノ酸その他の成分などが加熱によりメイラード反応などを起こし、好ましい香ばしい風味が生成する。一方、未焙煎の植物原料を焙煎することに伴い、好ましい風味とともに、フェノール臭、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭などのマイナス面をもたらす風味も発生する場合も多々見られる。
[原料の粉砕]
本発明で使用する焙煎植物原料は必要に応じて0.1mm~10mm程度、好ましくは1mm~5mm程度の粒径となるように粉砕を行い、後に述べる抽出やラッカーゼ処理効率の改善を行っても良い。
[焙煎コーヒー豆]
本発明の焙煎植物原料の好ましい例として焙煎コーヒー豆が挙げられる。焙煎コーヒー豆に使用しうる原料生豆の品種としてはアラビカ種、リベリカ種、ロブスタ種等いずれでも良く、その種類、産地を問わずブラジル、エチオピア、エクアドル、グァテマラ、タンザニア、イエメン、コロンビア、インドネシア、ベトナムなどいずれの産地の生コーヒー豆も使用することができる。また、生コーヒー豆は、一種類の豆のみを単独で使用しても、また二種類以上の豆をブレンドして使用してもよい。これらのうち、特に好ましくはロブスタ種の生コーヒー豆などの、アラビカ種以外の生コーヒー豆を挙げることができる。
また、焙煎コーヒー豆の焙煎の程度は、通常飲用に供される程度の焙煎であればいかなる範囲内でも良いが、L値として16~30に焙煎することを例示できる。L値とはコーヒーの焙煎の程度を表す指標で、コーヒー焙煎豆の粉砕物の明度を色差計で測定した値である。黒をL値0で、白をL値100で表す。従って、コーヒー豆の焙煎が深いほど数値は低い値となり、浅いほど高い値となる。参考までに、通常飲用に利用される焙煎豆のL値はほぼ次に示す程度である。イタリアンロースト:16~19、フレンチロースト:19~21、フルシティーロースト:21~23、シティーロースト:23~25、ハイロースト:25~27、ミディアムロースト:27~29。焙煎コーヒー豆は引き続き粉砕を行うが、粉砕方法についても特に制限はなく、いかなる粉砕方法、粉砕粒度も採用することができ、粉砕装置も、特に限定されるものではない。しかしながら、外気と接触せず、不活性気体中で適宜冷却でき短時間で粉砕できる装置を採用することにより香気の飛散が防止できるためより好ましい。
[香味]
本発明において、香味とは、香りによって変化し得る1種または複数種の感覚、代表的には嗅覚および/または味覚を含む感覚を意味し、風味という場合もある。
[ラッカーゼ]
本発明においては、焙煎植物原料を抽出して焙煎植物抽出物を調製するに際し、焙煎植物原料の抽出時および/または焙煎植物原料の抽出液に対し、ラッカーゼ処理を行う。本発明において、ラッカーゼとは、国際生化学分子生物学連合により決定された酵素番号(Enzyme Commission number)がEC1.10.3.2に分類される酵素である。また、本発明において用いるラッカーゼは、食品に用いることができるラッカーゼであればいずれでもよく、ラッカーゼを含むものであってもよい。中でも、ラッカーゼは、Trametes属に属する生物に由来するラッカーゼが好ましい。
ラッカーゼの入手方法は、特に制限されず、ウルシなどの植物由来のラッカーゼ、各種の微生物から調製された粗酵素や商業的に入手できるものを用いることができ、市販品としては、例えば、ラッカーゼ製剤であるラッカーゼY120(Trametes sp.由来;天野エンザイム株式会社製)、ラッカーゼ(Trametes versicolor由来;SIGMA-ALDRICH社製)、Denilite(登録商標) II S(Trametes villosa由来;ノボザイムズ ジャパン株式会社製)などが使用できる。
[ラッカーゼ処理]
ラッカーゼ処理は、焙煎植物原料の抽出時に、焙煎植物原料そのものに対して行っても良く、原料焙煎植物原料と溶媒の混合物に対して行っても良く、また、焙煎植物原料を抽出して得られる抽出液(後に述べる、いずれの方法・いずれの段階の抽出液)に対して行っても良い。
焙煎植物原料そのものに対して行う場合には、例えば、ラッカーゼを含む水溶液を調製し、それを焙煎植物原料に噴霧する、ニーダーなどを用いて攪拌混合する、などの方法によりラッカーゼを焙煎植物原料と接触させ、後に述べる温度および時間反応を行うことができる。
焙煎植物原料と溶媒の混合物に対して行う場合には、例えば、ラッカーゼを含む抽出溶媒を調製し、それを焙煎植物原料と混合し攪拌する、などの方法によりラッカーゼを焙煎植物原料と均一に接触させ、後に述べる温度および時間反応を行うことができる。
抽出態様が攪拌抽出である場合においては、後に述べる攪拌抽出の抽出時に、抽出系にラッカーゼを溶解させ、後に述べる温度および時間反応を行うことができる。さらにまた、例えば、抽出態様がカラム抽出である場合においては、あらかじめ抽出溶媒にラッカーゼを溶解させておき、その抽出溶媒を用いて抽出を行うことができる。
また、焙煎植物原料の抽出液に対して行う場合には、いったん、後に述べる抽出を行い、抽出液を得た後、その抽出液に対して後述の温度・時間条件にて反応を行うことができる。
本発明において、ラッカーゼの添加量は、前記処理温度および処理時間により適宜変更することができるが、例えば、酵素製剤として、焙煎植物原料を基準として、通常0.001質量%~5質量%、好ましくは0.005質量%~1質量%を例示できる。また、酵素処理の温度は、例えば、通常10~80℃、好ましくは20~70℃、より好ましくは30~65℃の範囲を例示できる。また、酵素処理の時間は、例えば、通常5分間~72時間、好ましくは10分間~48時間、より好ましくは20分間~36時間を例示できる。
また、ラッカーゼの至適pHは、通常pH2 8であり、好ましくはpH3 6である。したがって、必要に応じて、ラッカーゼ処理の前にpH調整を行ってもよい。pH調整には、pH調整剤として一般に食品に利用されているものを用いることができ、例えば、塩酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が例示できる。
[ラッカーゼ処理による香味の変化]
本発明のラッカーゼ処理を行うことにより、焙煎植物抽出物の香味が改善される。
具体的には、焙煎植物原料の好ましい風味はほとんど~あまり変化させずに、不快な風味を大きく低減することができる。
好ましい風味としては、例えば、軽やかな焙煎香、甘く軽やかな香気、香ばしい火入れ感などで、さらに具体的には、焙煎植物原料が焙煎コーヒー豆であれば、焙煎コーヒーを粉砕するときの香気、挽きたての焙煎コーヒー豆を淹れるときの香気などが例示でき、また、呈味においても、軽やかでさわやかな苦味、軽やかでさわやかな渋味、軽やかでさわやかな酸味などが例示できる。
一方不快な風味としては、フェノール臭、クレゾール臭、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭などの香気や、不快な苦味、不快な渋味、不快な酸味などが例示できる。
本発明のラッカーゼ処理による香味改善効果が特に大きくもたらされる焙煎植物抽出物としては、焙煎コーヒー豆抽出物であり、焙煎コーヒー豆を粉砕するときの香気、挽きたての焙煎コーヒー豆を淹れるときの香気はそのまま残存し、フェノール臭、クレゾール臭、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭などの香気や、不快な苦味、不快な渋味が減少する。
焙煎コーヒー豆のうち、特にロブスタ種の焙煎コーヒー豆は、いわゆる「ロブ臭」(「ロブスタ臭」ともいう)といわれる不快な香味を有するとされ、低品質のコーヒー豆とされているが、焙煎ロブスタコーヒー豆の抽出時またはその抽出液に対し本発明のラッカーゼ処理を行うことで、いわゆるコーヒーらしい挽きたて、淹れたての香味はそのままに、「ロブ臭」を低減または消失させることができる。その結果、ロブスタ種の焙煎コーヒー豆抽出物の風味を、アラビカ種の焙煎コーヒー豆の抽出物に近い風味とすることができる。なお、この効果は、ロブスタ種以外のいわゆる低品質豆である、リベリカ種やアラブスタ種(アラビカ種とロブスタ種のハイブリッド種)などを使用した場合であってももたらされる。
また、焙煎大麦、焙煎麦芽、焙煎はと麦などを水、熱水等で煮出して作られる、いわゆる麦茶には、焼け焦げたようないやらしいにおいが感じられる場合があるが、本発明のラッカーゼ処理を行うことで、麦茶らしい香ばしい香味はそのままに、前記焼け焦げたようないやらしいにおいを低減または消失させることができる。
また、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽玄米(これらは一般には緑茶との混合物として使用されることも多い)などを水、熱水等で煮出して作られる、いわゆる玄米茶にはいわゆる「フェノール臭、クレゾール臭」が強く感じられる場合があるが、本発明のラッカーゼ処理を行うことで、玄米茶の香ばしい香味はそのままに、前記「フェノール臭、クレゾール臭」を低減または消失させることができる。
[抽出]
本発明の用語において「抽出液」は、抽出工程の途中で得られる工程途中の液を意味する。また「抽出物」は本発明の目的物を意味する。
なお、ラッカーゼ処理を、焙煎植物原料の抽出時に焙煎植物原料そのものに対して行う場合や、原料焙煎植物原料と溶媒の混合物に対して行う場合は、抽出液がそのまま抽出物となる場合もあり得る。
焙煎植物原料(ラッカーゼ処理された焙煎植物原料を含む)の抽出は、公知の抽出方法により行うことができ、例えば水性溶媒抽出、水蒸気蒸留などを例示でき、これらの方法を複数組み合わせて行うこともできる。
例えば、前記水性溶媒による抽出の前または後に、焙煎植物原料を、水蒸気蒸留により抽出することによって、香気成分を主体とした抽出液(以下「水蒸気蒸留留出液」または単に「留出液」という場合もある)を得ることもできる。また、水蒸気蒸留を行った後に、その残渣を水性溶媒抽出するに際し、水蒸気蒸留留出液を使用しない(水性溶媒抽出物に混合しない)ことにより、脱臭された水性溶媒抽出液を得ることもできる。
[水性溶媒抽出]
抽出溶媒として用いることができる水性溶媒は、例えば水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールおよびこれらの混合溶媒を例示することができる。これらのうち、水、および、水とエタノールの混合溶媒が好ましく、特に水が好ましい。
水性溶媒による抽出方法は、攪拌抽出、静置抽出、カラム抽出などを例示できる。
攪拌抽出、静置抽出を具体的に示すと、例えば、焙煎植物原料1重量部あたり1~100重量部の水性溶媒を加え、攪拌もしくは静置条件下に、室温~約100℃にて、使用温度に応じて約2分~約5時間抽出を行い、冷却後、遠心分離、圧搾、濾過などのそれ自体既知の方法で固液分離することによって不溶物を除去することにより、抽出液を得ることができる。
また、カラム抽出は、例えば、焙煎植物原料をガラスまたはステンレスなど適宜な材質のカラムに充填し、該カラムの上部もしくは下部より、室温~約100℃の水性溶媒を、定量ポンプなどを用いて流し、カラム抽出することによって抽出液を得ることができる。かかるカラム抽出は所望により複数のカラムを直列に接続して行うこともできる。
[濃縮]
前記水性溶媒抽出液は濃度を高めるため、また、エタノールなどの有機溶媒を除去するため濃縮を行っても良い。濃縮方法としては例えば、減圧濃縮、逆浸透膜(RO膜)濃縮、凍結濃縮など適宜な濃縮手段を採用して濃縮することにより、水溶性溶媒抽出液の濃縮液を得ることができる。濃縮液の濃度は、一般には、Bx2°~70°、好ましくは5°~60°、さらに好ましくは8°~55°の範囲内とすることができる。
[遠心分離・濾過]
前記水性溶媒抽出時の固液分離、濃縮時・希釈時の澱の発生、また、水性溶媒抽出液と他の方法による抽出液との混合による澱の発生、加熱による澱の発生、経時変化による澱の発生などに応じて、不溶な固形物除去する工程や清澄化工程を設けることができる。遠心分離・濾過の程度(流動性、微粒子の含有の程度、清澄度)は、本発明品調整における工程の目的や、本発明品が配合される最終製品の目的・用途に応じて適宜選択することができる。このような手段としては、フィルタープレスによる加圧濾過、遠心ろ過機によるスラリーからの液体の分離、遠心分離による不溶解物の除去、ポリ塩化ビニリデンメッシュ濾布による濾過、濾紙濾過、濾紙上にセルロース粉末および/または珪藻土をコーティングしたスパークラーによる加圧濾過、濾紙上にセルロース粉末および/または珪藻土をコーティングしたヌッチェによる吸引濾過などが例示できる。
[水蒸気蒸留]
水蒸気蒸留は、原料に水蒸気を吹き込んだ際、原料中に含まれる揮発性物質の蒸気圧(分圧)と外部から加えた水蒸気の蒸気圧(分圧)の和が周囲の圧力(常圧水蒸気蒸留の場合は大気圧)と同等以上になったときに、揮発性成分が水蒸気とともに蒸留されて留出してくる現象で、水蒸気とともに留出してくる揮発性成分を冷却することにより、揮発性成分(一般的にはいわゆる香気成分である)を含んだ水溶液を留出液として得ることができる。
水蒸気蒸留による焙煎植物原料からの香気成分抽出の方法としては、焙煎植物原料をカラムなどの容器に充填し、カラムに水蒸気を送り込み、焙煎植物原料と水蒸気を接触させ、接触後の水蒸気を凝縮させ回収する方法、焙煎植物原料を水と混合しスラリーとして、それを気-液向流接触法により香気回収する方法を例示できる。
カラムによる水蒸気蒸留法は、原料に水蒸気を通気し、水蒸気に伴われて留出してくる香気成分を水蒸気とともに凝縮させる方法であり、加圧水蒸気蒸留、常圧水蒸気蒸留、減圧水蒸気蒸留のいずれかの蒸留手段を採用することができる。具体的には、例えば、焙煎植物原料を仕込んだ水蒸気蒸留釜の底部から水蒸気を吹き込み、上部の留出側に接続した冷却器で留出蒸気を冷却することにより、凝縮物として揮発性香気成分を含有する留出液を捕集することができる。必要に応じて、この香気捕集装置の先に冷媒を用いたコールドトラップ(液体窒素、ドライアイス・アセトン、ドライアイス・エタノールなど)や溶媒トラップ(水、エタノール、グリセリン、動植物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドなど)を接続することにより、より低沸点の揮発性香気成分をも確実に捕集することができる。これらのトラップによる回収物は、留出液と混合して使用することができる。また、水蒸気蒸留の際に、窒素ガスなどの不活性ガス及び/又はビタミンCなどの抗酸化剤の存在下で蒸留することにより香気成分の加熱による劣化を効果的に防止することができるので好適である。また、水蒸気蒸留する際に焙煎植物原料に対焙煎植物原料1質量部に対し0.5~2質量部程度の水にてあらかじめ湿潤させてから水蒸気蒸留を行うことにより、香気の質の改善を図ることが可能である。また、留出液の採取量としては使用した焙煎植物原料の質量を基準として10~400質量%を採用することができる。
また、気-液向流接触抽出法はそれ自体既知の各種の方法で実施することができ、例えば、特公平7-22646号公報に記載の装置を用いて抽出する方法を採用することができる。この装置を用いて香気を回収する手段を具体的に説明すると、回転円錐と固定円錐が交互に組み合わせられた構造を有する気-液向流接触抽出装置の回転円錐上に、液状またはペースト状の焙煎植物原料を上部から流下させると共に、下部から蒸気を上昇させ、該原料に本来的に存在している香気成分を回収する方法を例示することができる。この気-液向流接触抽出装置の操作条件としては、該装置の処理能力、原料の種類および濃度、香気の強度その他によって任意に選択することができる。焙煎植物原料スラリーの焙煎植物原料と水の比率は、焙煎植物原料スラリーが流動性をもつ状態となる量であればいかなる比率も採用することができるが、おおよそ、焙煎植物原料1重量部に対し水5倍量~30倍量を例示することができる。水が、この範囲を下回る場合、流動性が出にくく、また、水がこの範囲をはずれて多い場合、得られる留出液の香気が弱くなる傾向がある。
気-液向流接触抽出装置の操作条件の一例を示せば、下記のごとくである。
原料供給速度:300~700L/hr
蒸気流量:5~50kg/hr
蒸発量:3~35kg/hr
カラム底部温度:40~100℃
カラム上部温度:40~100℃
真空度:大気圧~-100kPa(大気圧基準)
前記水蒸気蒸留留出液は、上述した方法で得られる留出液そのものでも使用することができるが、該留出液を任意の濃縮手段を用いて香気濃縮液の形態とすることもできる。かかる濃縮手段としては、例えば、該留出液を合成吸着剤に吸着せしめ、次いでエタノールで脱着することにより得ることができる。合成吸着剤としては、特に限定されないが、例えば、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼン共重合体、2,6-ジフェニル-9-フェニルオキサイドの重合体、メタアクリル酸とジオールの重縮合ポリマー及びシリカゲル表面のシラノール基の反応性を利用して、これに例えば、アルコール類、アミン類、シラン類などを化学結合させた化学結合型シリカゲル(修飾シリカゲル)などを例示することができる。かかる合成吸着剤の好ましい例としては、その表面積が、例えば、約300m/g以上、より好ましくは約500m/g以上及び細孔分布が好ましくは約1nm~約50nmである多孔性重合樹脂を例示することができる。この条件に該当する多孔性重合樹脂としては、例えば、HP樹脂(三菱化学社製)、SP樹脂(三菱化学社製)、XAD-4(ローム・ハース社製)などがあり、市場で容易に入手することができる。また、メタアクリル酸エステル系樹脂も、例えば、XAD-7およびXAD-8(ローム・ハース社製)などの商品として入手することができる。また、上述の留出液を合成吸着剤に吸着させる処理手段としては、バッチ方式あるいはカラム方式のいずれも採用できるが、作業性の点からカラム方式を好ましく採用することができる。カラム方式で吸着させる方法としては、例えば、上記のような合成吸着剤を充填したカラムに、該吸着剤の10倍~1000倍の回収香をSV=1~100の流速で通液することにより、香気成分を吸着させることができる。次いで、該吸着剤を水洗した後、50~95重量%のエタノール溶液をSV=0.1~10の流速で通液し、該吸着剤に吸着されている香気成分を溶出させることにより水溶性の香気濃縮液とすることができる。
この様にして得られる水蒸気蒸留留出液またはその香気濃縮液は、いずれも本発明の抽出液の1種であり、焙煎植物抽出液と混合し、本発明の焙煎植物抽出物の香気を強めることに使用することができる。
[抽出液の混合の時期とラッカーゼ処理の時期]
前記水性溶媒抽出液(またはその濃縮液)と水蒸気蒸留留出液(またはその濃縮液)は両者を混合して使用することができる。また、その際のラッカーゼ処理は前記水性溶媒抽出液単独に対して行っても良く、水蒸気蒸留留出液(またはその濃縮液)単独に対して行っても良く、また、水性溶媒抽出液と水蒸気蒸留留出液(またはその濃縮液)の混合液に対して行っても良い。
[他の酵素処理]
本発明では、ラッカーゼ処理とともにおよび/またはラッカーゼ処理とは独立して、ラッカーゼ以外の酵素を、焙煎植物原料の抽出時および/または焙煎植物原料の抽出液に対し作用させても良い。
このような酵素としては、例えば焙煎植物原料がコーヒーであれば、ガラクトマンナン分解酵素、グルコアミラーゼ、リパーゼなど、焙煎植物原料が茶類であればタンナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、へミセルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼなど、焙煎植物原料が焙煎大麦や焙煎米であれば、アミラーゼ、プロテアーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼなどが例示できる。
[酵素失活・加熱殺菌]
本発明の焙煎植物抽出物は、ラッカーゼ処理の後および/または前記工程のいずれかの段階で加熱処理を行うことで、ラッカーゼを失活させ、また、加熱殺菌することにより微生物的に安定な焙煎植物抽出物とすることができる。
加熱処理を行う好ましい箇所としては、通常は、前記焙煎植物抽出液に対してラッカーゼ処理を行った後、容器への充填を行う前または後が例示できるが、これらの工程に限られるものではなく、ラッカーゼの失活および/または加熱殺菌の目的を達成することができれば、いずれの工程で行うこともできる。
加熱殺菌は、バッチ式、プレート式いずれの方法で行っても良く、バッチ式であれば温度としては通常80℃~110℃、好ましくは85℃~105℃、より好ましくは90℃~100℃で、加熱時間は通常30秒~60分、好ましくは1分~30分、より好ましくは2分~15分を例示することができる。また、プレート式では加熱温度としては通常80℃~140℃、好ましくは85℃~135℃、より好ましくは90℃~130℃で、加熱時間は通常達温(即冷却)~5分、好ましくは15秒~3分、より好ましくは30秒~2分を例示することができる。
このようにして得られる本発明の焙煎植物抽出物は、冷却後容器に充填するか、熱いまま容器に充填した後冷却し、さらに冷蔵または冷凍して保存することもできる。
[飲食品への添加]
上記のようにして得られた本発明の焙煎植物抽出物は、各種飲食品に配合し、飲食品に対し、焙煎植物原料の不快な香味を含まない、または、不快な香味の低減した、焙煎植物原料の好ましい風味(軽やかな焙煎香、甘く軽やかな香気、香ばしい火入れ感、軽やかでさわやかな苦味、軽やかでさわやかな渋味、軽やかでさわやかな酸味)を付与することができる。
発明の焙煎植物抽出物を添加することで発酵風味や素材の持つ植物原料本来の風味を付与、改良、または増強することができる飲食品としては、例えば、飲料、調味料、ドレッシング、冷菓、デザート、レトルト食品、畜肉加工食品、水産加工食品などを挙げることができる。これら飲食品に配合される本発明の焙煎植物抽出物の量は、飲食品の種類、形態などにより異なるが、一般的には飲食品全量に対して0.01質量%~20質量%の範囲を例示することができる。これら飲食品の具体例として、コーラ飲料、果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料などの炭酸飲料類;果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料類;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料などの嗜好飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;バター、チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品;アイスクリーム、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類およびそれらを製造するためのミックス類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナックなどの菓子類およびそれらを製造するためのケーキミックスなどのミックス類;パン、スープ、各種インスタント食品などの一般食品類;歯磨きなどの口腔用組成物;などを挙げることができる。
具体例を示すと、各種焙煎植物原料(例えばコーヒー)の風味を有する飲料、冷菓、クリーム、ムース、パン、ケーキなどに、適宜調合香料も併用のうえ、本発明の焙煎植物抽出物を0.01~20質量%、好ましくは0.05~5%程度配合することにより、その焙煎植物原料に由来する好ましい焙煎風味を付与することができる。
以下に実施例および比較例を挙げて本発明の具体的態様を詳しく説明するが、本発明の本質は前記開示した技術的思想にあるのであり、実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の記載中に割合を示す数字がある場合は、質量基準の割合を意味する。
(実施例1)ロブスタ種焙煎コーヒー豆の水抽出液のラッカーゼ処理
ロブスタ種のコーヒー生豆(ベトナム産、G1)の焙煎豆(L値18)粉砕物(中挽き)1000gを、5本のカラム(内径7cm、長さ25cm)にそれぞれ200gずつ詰め、各カラムに上から常温の軟水各80gをふりかけてコーヒー豆を湿潤させた後、カラムジャケットをスチームで加温しながら、カラム上部から下部へ98℃(±2℃)に加温した軟水を送り込み、カラム内が完全に浸った時点で30分間静置し、その後、カラム下部から抽出液を抜取った。Bx20°以上の抽出液はそのまま回収抽出液として30℃以下に冷却後貯蔵し、抜取られる抽出液がBx20°を下回った時点で、抜取り液を次のカラムの上部へ順次送り込み、また、抜取られる抽出液がBx1.0°を下回った時点でそのカラムの抽出は終了する方法にて、5本目のカラムまで抽出を行い、5本目より最終的な回収抽出液を抜取る方法にて連続抽出を行った。回収抽出液全体のBxが20.0°となった時点で抽出終了(所要時間約3時間)とし、回収抽出液(コーヒー抽出液1)1568g(Bx20.0°、pH5.01)を得た。
コーヒー抽出液1(350g)を、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を55℃とした後、ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)0.35g(コーヒー抽出液1の0.1%)を溶解し、55℃にて30分間攪拌して反応した。30分間経過後、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、本発明品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(本発明品1、Bx20.3°、pH4.98)
(比較例1)
実施例1における、前記コーヒー抽出液1を、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を90℃まで上昇させて加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、比較品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(比較品1、Bx20.0°、pH5.03)
(参考例1)
アラビカ種の焙煎コーヒー豆としてブラジル4/5(L値18)とコロンビアエキセルソ(L値18)の1:1ブレンド品を用いて、比較例1と同様に操作を行い、焙煎コーヒー豆抽出物を得た(参考品1、Bx20.0°、pH5.02)
(官能評価1)
本発明品1、比較品1、参考品1のそれぞれを純水にて20倍に希釈し、10名のよく訓練されたパネリストにより口腔内で味わうことにより香味評価することで、それぞれのサンプルを官能評価した。
官能評価項目は、(1)香りの軽やかさ、香ばしさ、(2)香りの甘さ、(3)ロブスタ臭(麦を焦がしたような香り、煮出した漢方薬のような風味、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭、フェノール臭などのロブスタ種に特有の香味)の少なさ、(4)苦味・渋味の軽やかさ(軽やかで、さわやかであり、重く不快な苦味・渋味を伴わない)、(5)酸味のさわやかさ(さわやかであり、重い後残りを伴わない)について、参考品1のそれぞれの項目を3点(基準)として1~5点(香味の良好な方を大きい点数とする)の5段階で評価した(1点:明らかに劣る、2点:やや劣る、3点:ほぼ同等、4点:やや良い、5点:きわめて良い)。また、自由項目として総合的な評価を記入させた。その結果の平均値および平均的な内容を表1に示す。
Figure 2024062196000001
表1に示した通り、本発明品1はロブスタ臭が緩和され、まろやかになった。そして、不快な風味が緩和されたことで、アラビカ種のコーヒー豆に近い風味となった。
(実施例2)アラビカ種焙煎コーヒー豆の水抽出液のラッカーゼ処理
アラビカ種の焙煎コーヒー豆としてブラジル4/5(L値18)とコロンビアエキセルソ(L値18)の1:1ブレンド品の粉砕物(中挽き)1000gを、5本のカラム(内径7cm、長さ25cm)にそれぞれ200gずつ詰め、各カラムに上から常温の軟水各80gをふりかけてコーヒー豆を湿潤させた後、カラムジャケットをスチームで加温しながら、カラム上部から下部へ98℃(±2℃)に加温した軟水を送り込み、カラム内が完全に浸った時点で30分間静置し、その後、カラム下部から抽出液を抜取った。Bx20°以上の抽出液はそのまま回収抽出液として30℃以下に冷却後貯蔵し、抜取られる抽出液がBx20°を下回った時点で、抜取り液を次のカラムの上部へ順次送り込み、また、抜取られる抽出液がBx1.0°を下回った時点でそのカラムの抽出は終了する方法にて、5本目のカラムまで抽出を行い、5本目より最終的な回収抽出液を抜取る方法にて連続抽出を行った。回収抽出液全体のBxが20.0°となった時点で抽出終了(所要時間約3時間)とし、回収抽出液(コーヒー抽出液2)1559g(Bx20.1°、pH5.01)を得た。
コーヒー抽出液2(350g)を、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を55℃とした後、ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)0.35g(コーヒー抽出液2の0.1%)を溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応した後、55℃にて16時間静置した。その後、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、本発明品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(本発明品2、Bx20.4°、pH4.99)
(比較例2)
コーヒー抽出液2(350g)を、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を90℃まで上昇させ加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、比較品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(比較品2、Bx20.0°、pH5.02)。
(官能評価2)
本発明品2と比較品2のそれぞれを純水にて20倍に希釈し、10名のよく訓練されたパネリストにより口腔内で味わうことにより香味評価することで、それぞれのサンプルを官能評価した。
官能評価項目は、(1)香りの軽やかさ、香ばしさ、(2)香りの甘さ、(3)不快臭(主にフェノール臭)の少なさ、(4)苦味・渋味の軽やかさ(軽やかで、さわやかであり、重く不快な苦味・渋味を伴わない)、(5)酸味のさわやかさ(さわやかであり、重い後残りを伴わない)について、比較品2のそれぞれの項目を3点(基準)として1~5点(香味の良好な方を大きい点数とする)の5段階で評価した(1点:明らかに劣る、2点:やや劣る、3点:ほぼ同等、4点:やや良い、5点:きわめて良い)。また、自由項目として総合的な評価を記入させた。その結果の平均値および平均的な内容を表2に示す。
Figure 2024062196000002
表2に示した通り、アラビカ種焙煎コーヒー豆の水抽出液に対しラッカーゼ処理を行った場合でも、不快臭が低減し、まろやかになり、かつ、香りの軽やかさ、香ばしさは特に変化はなかった。また、香りの甘さは若干低下したが、呈味が軽くなり全体に飲みやすくなったとの評価であった。
(実施例3)市販インスタントコーヒーのラッカーゼ処理
市販インスタントコーヒー(アラビカ、ロブスタブレンド)を40℃イオン交換水にて溶解・希釈しBx20°の溶液(Bx20.0°、pH4.68)を調製した。
この溶液350gを、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を55℃とした後、ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)1.75g(Bx20°溶液の0.5%)を溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応した。その後、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、本発明品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(本発明品3、Bx20.4°、pH4.59)
(比較例3)
前記実施例3で使用したものと同じインスタントコーヒー40℃イオン交換水にて溶解・希釈しBx20°の溶液(Bx20.0°、pH4.68)を調製した。この溶液350gを、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を90℃まで上昇させ加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、比較品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(比較品3、Bx20.3°、pH4.61)
(官能評価3)
本発明品3、比較品3のそれぞれを純水にて20倍に希釈し、10名のよく訓練されたパネリストにより口腔内で味わうことにより香味評価することで、それぞれのサンプルを官能評価した。
官能評価項目は、(1)香りの軽やかさ、香ばしさ、(2)香りの甘さ、(3)ロブスタ臭(麦を焦がしたような香り、煮出した漢方薬のような風味、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭、フェノール臭などのロブスタ種に特有の香味)の少なさ、(4)苦味・渋味の軽やかさ(軽やかで、さわやかであり、重く不快な苦味・渋味を伴わない)、(5)酸味のさわやかさ(さわやかであり、重い後残りを伴わない)について、比較品3のそれぞれの項目を3点(基準)として1~5点(香味の良好な方を大きい点数とする)の5段階で評価した(1点:明らかに劣る、2点:やや劣る、3点:ほぼ同等、4点:やや良い、5点:きわめて良い)。また、自由項目として総合的な評価を記入させた。その結果の平均値および平均的な内容を表3に示す。
Figure 2024062196000003
表3に示した通り、アラビカ、ロブスタブレンド焙煎コーヒー豆から抽出したインスタントコーヒーを用いても、ラッカーゼ処理によりロブスタ臭が低減され、アラビカ種のコーヒーの風味に近づくことが確認できた。
(実施例4)水蒸気蒸留留出液のラッカーゼ処理
ロブスタ種のコーヒー生豆(ベトナム産)の焙煎豆(G1、L値24)粉砕物(粗挽き)500gを、3Lカラム(内径15cm、長さ20cm)に仕込み、カラムに上から常温の軟水(アスコルビン酸ナトリウム0.05%含有)200gをふりかけてコーヒー豆を湿潤させた後、カラム内部を窒素置換し、カラム下部より常圧の窒素ガス混合水蒸気(100℃)を吹き込み、カラム上部から噴出する水蒸気を冷却管(水道水冷却)にて冷却し、45分間水蒸気蒸留を行い留出液375g(pH3.43)を得た。この留出液に炭酸水素ナトリウム(1.7g)を加えpH5.24としたものをコーヒー抽出液3とした。
コーヒー抽出液3(150g)を、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を55℃とした後、L-アスコルビン酸ナトリウム0.6g(コーヒー抽出液3の0.4%)およびラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)0.3g(コーヒー抽出液3の0.2%)を溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応した。その後、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、95%エタノール37.5gを添加混合し、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(200メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、本発明品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(本発明品4、pH4.98)
(比較例4)
前記コーヒー抽出液3(150g)を、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、L-アスコルビン酸ナトリウム0.6g(コーヒー抽出液3の0.4%)を加え、品温を90℃まで上昇させ加熱殺菌し、30℃まで冷却後、95%エタノール37.5gを添加混合し、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(200メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、比較品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(比較品4、pH5.03)
(官能評価4)
本発明品4、比較品4のそれぞれを純水に0.2%添加し、10名のよく訓練されたパネリストにより口腔内で味わうことにより香味評価することで、それぞれのサンプルを官能評価した。
官能評価項目は、(1)香りの軽やかさ、香ばしさ、(2)香りの甘さ、(3)ロブスタ臭(麦を焦がしたような香り、煮出した漢方薬のような風味、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭、フェノール臭などのロブスタ種に特有の香味)の少なさについて、比較品4のそれぞれの項目を3点(基準)として1~5点(香味の良好な方を大きい点数とする)の5段階で評価した(1点:明らかに劣る、2点:やや劣る、3点:ほぼ同等、4点:やや良い、5点:きわめて良い)。また、自由項目として総合的な評価を記入させた。その結果の平均値および平均的な内容を表4に示す。
Figure 2024062196000004
表4に示した通り、ロブスタ種の焙煎コーヒー豆の水蒸気蒸留留出液に対しラッカーゼ処理を行った場合においても、ロブスタ臭が緩和され、まろやかな風味となった。また、ロブスタ特有の不快な風味が緩和されたことで、アラビカ種コーヒー豆に似た風味になった
(実施例5)水蒸気蒸留留出液を含む抽出液のラッカーゼ処理(ロブスタ種)
ロブスタ種のコーヒー生豆(ベトナム産)の焙煎豆(G1、L値24)粉砕物(粗挽き)1000gを、3Lカラム(内径15cm、長さ20cm)に仕込み、カラムに上から常温の軟水(アスコルビン酸ナトリウム0.05%含有)400gをふりかけてコーヒー豆を湿潤させた後、カラム内部を窒素置換し、カラム下部より常圧の水蒸気(100℃)を吹き込み、カラム上部から噴出する水蒸気を冷却管(水道水冷却)にて冷却し、2時間水蒸気蒸留を行い留出液2000gを得た。
留出液2000gをセパビーズSP-207(三菱ケミカル(株)社製のスチレンジビニルベンゼン系合成吸着剤)8mlを充填したカラムにSV=50で通液し、95%エタノールにてSV=2にて脱着し、脱着液40gを得た。
一方、前記カラム内の水蒸気蒸留残渣に上部から90℃熱水4000gを2000g/hrの速度で送り込み、カラム内の原料が熱水で浸った後、カラム下部より抽出液を冷却管にて冷却しながら抜き取り、抽出液3661g(Bx9.0°)を得た。抽出液を攪拌釜に移し、45℃加温後、セルロシンGM5(HBIエンザイム社製のガラクトマンナン分解酵素)20g(対コーヒー豆2%)およびスミチーム(新日本化学工業株式会社製のグルコアミラーゼ)20g(対コーヒー豆2%)を添加し、45℃にて30分間攪拌した後、同温度にて16時間静置した。静置後、90℃1分間加熱殺菌した後、25℃まで冷却し、ケイソウ土をコーティングしたヌッチェを用いて濾過を行い、清澄な濾液3580kgを得た。得られた濾液をロータリーエバポレーターにてBx30°まで濃縮し、濃縮液1070g(Bx30.0°、pH5.55)を得た。
この濃縮液500gと前記脱着液20gを、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を55℃とした後、ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)0.52g(前記混合液の0.1%)を溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応し後、その後、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、比較品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(本発明品5、Bx30.4°、pH5.45)。
(比較例5)
前記実施例5の工程途中の濃縮液500gと脱着液20gを、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を90℃まで上昇させて加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、本発明品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(比較品5、Bx30.2°、pH5.48)。
(官能評価5)
本発明品5、比較品5のそれぞれを純水にて100倍に希釈し、10名のよく訓練されたパネリストにより口腔内で味わうことにより香味評価することで、それぞれのサンプルを官能評価した。
官能評価項目は、(1)香りの軽やかさ、香ばしさ、(2)香りの甘さ、(3)ロブスタ臭(麦を焦がしたような香り、煮出した漢方薬のような風味、薬品臭、硫黄臭、土臭、カビ臭、煙臭、フェノール臭などのロブスタ種に特有の香味)の少なさ、(4)苦味・渋味の軽やかさ(軽やかで、さわやかであり、重く不快な苦味・渋味を伴わない)、(5)酸味のさわやかさ(さわやかであり、重い後残りを伴わない)について、比較品5のそれぞれの項目を3点(基準)として1~5点(香味の良好な方を大きい点数とする)の5段階で評価した(1点:明らかに劣る、2点:やや劣る、3点:ほぼ同等、4点:やや良い、5点:きわめて良い)。また、自由項目として総合的な評価を記入させた。その結果の平均値および平均的な内容を表5に示す。
Figure 2024062196000005
表5に示した通り、本発明品5はロブスタ臭が緩和され、まろやかになった。そして、不快な風味が緩和されたことで、アラビカ種のコーヒー豆に近い風味となった。
(実施例6)水蒸気蒸留留出液を含む抽出液のラッカーゼ処理(アラビカ種)
実施例5において、焙煎コーヒー豆をロブスタ種(ベトナム産)の焙煎コーヒー豆(G1、L値24)粉砕物(粗挽き)に替えて、アラビカ種の焙煎コーヒー豆(ブラジル4/5(L値24)とコロンビアエキセルソ(L値24)の1:1ブレンド品の粉砕物(粗挽き))を使用する以外は、実施例5と同様の操作を行い、本発明品6を得た。
(比較例6)
比較例5において、焙煎コーヒー豆をロブスタ種(ベトナム産)の焙煎コーヒー豆(G1、L値24)粉砕物(粗挽き)に替えて、アラビカ種の焙煎コーヒー豆(ブラジル4/5(L値24)とコロンビアエキセルソ(L値24)の1:1ブレンド品の粉砕物(粗挽き))を使用する以外は、比較例5と同様の操作を行い、比較品6を得た。
(官能評価6)
本発明品6と比較品6のそれぞれを純水にて100倍に希釈し、10名のよく訓練されたパネリストにより口腔内で味わうことにより香味評価することで、それぞれのサンプルを官能評価した。
官能評価項目は、(1)香りの軽やかさ、香ばしさ、(2)香りの甘さ、(3)不快臭(主にフェノール臭)の少なさ、(4)苦味・渋味の軽やかさ(軽やかで、さわやかであり、重く不快な苦味・渋味を伴わない)、(5)酸味のさわやかさ(さわやかであり、重い後残りを伴わない)について、比較品6のそれぞれの項目を3点(基準)として1~5点(香味の良好な方を大きい点数とする)の5段階で評価した(1点:明らかに劣る、2点:やや劣る、3点:ほぼ同等、4点:やや良い、5点:きわめて良い)。また、自由項目として総合的な評価を記入させた。その結果の平均値および平均的な内容を表6に示す。
Figure 2024062196000006
表6に示した通り、アラビカ種の焙煎コーヒー豆の水蒸気蒸留留出液を含む抽出液に対してラッカーゼ処理を行った場合においても、不快臭が低減し、まろやかになり、一方、香りの軽やかさ、香ばしさは特に変化はなかった。また、香りの甘さは若干低下したが、呈味が軽くなり全体に飲みやすくなった。
(実施例7)脱臭ロブスタエキスのラッカーゼ処理物(苦味・渋味の呈味増強用エキス)
ロブスタ種のコーヒー生豆(ベトナム産)の焙煎豆(G1、L値20)粉砕物(粗挽き)1000gを、3Lカラム(内径15cm、長さ20cm)に仕込み、カラムに上から常温の軟水(アスコルビン酸ナトリウム0.05%含有)400gをふりかけてコーヒー豆を湿潤させた後、カラム内部を窒素置換し、カラム下部より常圧の水蒸気(100℃)を吹き込み、カラム上部から噴出する水蒸気を冷却管(水道水冷却)にて冷却し、2時間水蒸気蒸留を行い留出液2000gを得た。
一方、前記カラム内の水蒸気蒸留残渣に上部から90℃熱水4000gを2000g/hrの速度で送り込み、カラム内の原料が熱水で浸った後、カラム下部より抽出液を冷却管にて冷却しながら抜き取り、抽出液3661g(Bx9.0°)を得た。抽出液を攪拌釜に移し、45℃加温後、セルロシンGM5(HBIエンザイム社製のガラクトマンナン分解酵素)20g(対コーヒー豆2%)およびスミチーム(新日本化学工業株式会社製のグルコアミラーゼ)20g(対コーヒー豆2%)を添加し、45℃にて30分間攪拌した後、同温度にて16時間静置した。静置後、90℃1分間加熱殺菌した後、25℃まで冷却し、ケイソウ土をコーティングしたヌッチェを用いて濾過を行い、清澄な濾液3580kgを得た。得られた濾液をロータリーエバポレーターにてBx30°まで濃縮し、濃縮液1070g(Bx30.0°、pH5.55)を得た。
この濃縮液500gを、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を55℃とした後、ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)0.52g(前記混合液の0.1%)を溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応し後、その後、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、本発明品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(本発明品7、Bx30.4°、pH5.45)。
(比較品7)
前記実施例7の工程途中の濃縮液(Bx30.0、pH5.55)500gを、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、比較品の焙煎コーヒー豆抽出物を得た(比較品7、Bx30.2°、pH5.48)。
(官能評価7)
市販缶入りミルクコーヒーに、本発明品7および比較品7を、それぞれ0.1%ずつ添加し、10名のパネリストにより官能評価した。
その結果、比較品7を添加したものは、苦味・渋味が強くなるものの、しつこい後残りのある苦味・渋味となり、またロブ臭が強く感じられるという評価であったが、本発明品7を添加したものは、軽やかな苦味・渋味が強くなり、ロブ臭は感じられなかった。
(実施例8)焙煎大麦(麦茶)の水蒸気蒸留留出液を含む抽出液のラッカーゼ処理
焙煎大麦(L値32、丸粒)1000gを、3Lカラム(内径15cm、長さ20cm)に仕込み、カラム内部を窒素置換し、カラム下部より常圧の水蒸気(100℃)を吹き込み、カラム上部から噴出する水蒸気を冷却管(水道水冷却)にて冷却し、1時間水蒸気蒸留を行い留出液1000gを得た。
一方、前記カラム内の水蒸気蒸留残渣に上部から90℃熱水を2000g/hrの速度で送り込み、カラム内の原料が熱水で浸った後、カラム下部より抽出液を冷却管にて冷却しながら抜き取り、全体のBxが20°となるよう抽出液を抜き取った(抽出液収量 1585g)。
前記留出液500gと抽出液500gを混合し、品温を55℃とした後、ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)0.5g(前記混合液の0.05%)およびコクラーゼ(三菱ケミカル株式会社製のアミラーゼ製剤)0.5g(前記混合液の0.05%)を添加し溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応した。品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、本発明品の焙煎大麦抽出物を得た(本発明品8、Bx10.5°、pH5.53)
(比較例8)
前記実施例8中の留出液500gと抽出液500gを混合し品温を55℃とした後、コクラーゼ(三菱ケミカル株式会社製のアミラーゼ製剤)0.5g(前記混合液の0.05%)を添加し溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応した。品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、容器に充填し、比較品の焙煎大麦抽出物を得た(比較品8、Bx10.3°、pH5.51)
(官能評価8)
本発明品8および比較品8を、それぞれイオン交換水にて20倍に希釈し、10名のパネリストにより官能評価した。
その結果、全員が、本発明品8は比較品8と比べて、焦げ臭い香味、フェノール臭が明らかに少なく、香味良好であるとの評価であった。
(実施例9)焙煎米の水蒸気蒸留留出液のラッカーゼ処理
焙煎米(コシヒカリ、L値34、丸粒)1000gを、3Lカラム(内径15cm、長さ20cm)に仕込み、カラム内部を窒素置換し、カラム下部より常圧の水蒸気(100℃)を吹き込み、カラム上部から噴出する水蒸気を冷却管(水道水冷却)にて冷却し、2時間水蒸気蒸留を行い留出液2000gを得た。
この留出液を、攪拌羽を備えた3径フラスコに取り、品温を55℃とした後、ラッカーゼY120(天野エンザイム株式会社製)0.2g(対留出液0.01%)を溶解し、55℃にて60分間攪拌して反応し後、その後、品温を90℃まで上昇させ酵素失活および加熱殺菌し、30℃まで冷却後、ポリ塩化ビニリデン製のメッシュ濾布(100メッシュ)にて濾過し、ラッカーゼ処理留出液2000gを得た。
このラッカーゼ処理留出液2000gをセパビーズSP-207(三菱ケミカル(株)社製のスチレンジビニルベンゼン系合成吸着剤)8mlを充填したカラムにSV=50で通液し、95%エタノールにてSV=2にて脱着し、脱着液40g(本発明品9)を得た。
(比較例9)
焙煎米(コシヒカリ、L値34、丸粒)1000gを、3Lカラム(内径15cm、長さ20cm)に仕込み、カラム内部を窒素置換し、カラム下部より常圧の水蒸気(100℃)を吹き込み、カラム上部から噴出する水蒸気を冷却管(水道水冷却)にて冷却し、2時間水蒸気蒸留を行い留出液2000gを得た。
この留出液2000gをセパビーズSP-207(三菱ケミカル(株)社製のスチレンジビニルベンゼン系合成吸着剤)8mlを充填したカラムにSV=50で通液し、95%エタノールにてSV=2にて脱着し、脱着液40g(比較品9)を得た。
(官能評価9)
本発明品9および比較品9を、それぞれイオン交換水にて1000倍に希釈し、10名のパネリストにより官能評価した。
その結果、全員が、本発明品9は比較品9と比べて、フェノール臭、クレゾール臭が明らかに少なく、香味良好であるとの評価であった。

Claims (12)

  1. 焙煎植物原料を抽出して焙煎植物抽出物を調製するに際し、前記焙煎植物原料の抽出時および/または前記焙煎植物原料の抽出液に対し、ラッカーゼ処理を行う、焙煎植物抽出物の風味改善方法。
  2. 前記焙煎植物原料が、焙煎種実である、請求項1に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法。
  3. 前記焙煎植物原料が、焙煎コーヒー豆である、請求項1に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法。
  4. 請求項1に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法において、風味改善が、不快臭の低減である方法。
  5. 請求項1に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法において、風味改善が、フェノール臭の低減である方法。
  6. 前記焙煎植物原料が、アラビカ種以外の品種を含む焙煎コーヒー豆である、請求項1に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法。
  7. 請求項6に記載の焙煎植物抽出物の風味改善方法において、風味改善が、アラビカ種以外の品種の焙煎コーヒー豆の風味を、アラビカ種の焙煎コーヒー豆に近い風味とする方法。
  8. アラビカ種以外の焙煎コーヒー豆の抽出に際し、前記焙煎コーヒー豆の抽出時および/または前記焙煎コーヒー豆の抽出により得られる抽出液に対し、ラッカーゼ処理を行う、焙煎コーヒー豆抽出物の製造方法。
  9. 以下の群(X)から選ばれる1種または2種以上の焙煎植物原料の抽出に際し、前記焙煎植物原料の抽出時および/または前記焙煎植物原料の抽出により得られる抽出液に対しラッカーゼ処理を行う、焙煎植物抽出物の製造方法。
    群(X):焙煎大麦、焙煎麦芽、焙煎米、焙煎玄米、焙煎発芽玄米および焙煎はと麦
  10. 以下の工程(A)および(B)を含む、焙煎植物抽出物の製造方法。
    工程(A):焙煎植物原料を水蒸気蒸留し、留出液を得る工程
    工程(B):前記工程(A)で得られる留出液に対しラッカーゼ処理を行い、焙煎植物抽出物を得る工程
  11. 以下の工程(A)~(D)を含む、焙煎植物抽出物の製造方法。
    工程(A):焙煎植物原料を水蒸気蒸留し、留出液を得る工程
    工程(B):前記工程(A)で得られる留出液に対しラッカーゼ処理を行い、ラッカーゼ処理された留出液を得る工程
    工程(C):前記工程(A)を行う前および/または行った後の焙煎植物原料を水性溶媒にて抽出し、水性溶媒抽出液を得る工程
    工程(D):前記工程(B)で得られるラッカーゼ処理された留出液を、前記工程(C)で得られる水性溶媒抽出液と混合し、焙煎植物抽出物を得る工程
  12. 以下の工程(A)~(D)を含む、焙煎植物抽出物の製造方法。
    工程(A):焙煎植物原料を水蒸気蒸留し、留出液を得る工程
    工程(B):前記工程(A)を行う前および/または行った後の焙煎植物原料を水性溶媒にて抽出し、水性溶媒抽出液を得る工程
    工程(C):前記工程(A)で得られる留出液と、前記工程(B)で得られる水性溶媒抽出液を混合し、抽出液を得る工程
    工程(D):前記工程(C)で得られる抽出液に対しラッカーゼ処理を行い、焙煎植物抽出物を得る工程
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