JP2024061530A - イノシトール脂肪酸エステル - Google Patents

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【課題】新規な脂肪酸エステルを提供する。【解決手段】脂肪酸エステルを、イノシトールと炭素数2以上18以下の脂肪酸で形成されたイノシトール脂肪酸エステルとする。【選択図】なし

Description

本発明は、イノシトール脂肪酸エステル等に関する。
嵩高いアルコール等を用いた脂肪酸エステルは、潤滑油等の種々の用途に使用されている。
例えば、特許文献1には、ネオペンチル型ポリオール脂肪酸エステルが開示されている。
特開平1―32814号公報
本発明の目的は、新規な脂肪酸エステル等を提供することにある。
本発明者らは、種々の脂肪酸エステルの中でも、イノシトール脂肪酸エステルは、潤滑性が優れる等の優れた物性を有すること等を見出し、さらに鋭意研究を重ね、本発明を完成させた。
本発明は、以下のイノシトール脂肪酸エステル等に関する。
[1]
イノシトールと炭素数2以上18以下の脂肪酸で形成されたイノシトール脂肪酸エステル(イノシトールと炭素数2以上18以下の脂肪酸とのエステル)。
[2]
イノシトールが、米ぬか由来のイノシトールを含む、[1]記載のイノシトール脂肪酸エステル。
[3]
イノシトールが、myo-イノシトールを含む、[1]又は[2]記載のイノシトール脂肪酸エステル。
[4]
エステル化率が50%以上である、[1]~[3]のいずれか記載のイノシトール脂肪酸エステル。
[5]
[1]~[4]のいずれか記載のイノシトール脂肪酸エステルを含む組成物。
[6]
潤滑油用である、[5]記載の組成物。
本発明によれば、新規な脂肪酸エステルを提供できる。
このような脂肪酸エステル(イノシトール脂肪酸エステル)は、優れた潤滑性を奏しうる。
本発明のイノシトール脂肪酸エステルの一態様によれば、優れた耐加水分解性を奏しうる。
本発明のイノシトール脂肪酸エステルの一態様によれば、優れた耐熱性を奏しうる。
本発明のイノシトール脂肪酸エステルの一態様によれば、使用する脂肪酸の種類やエステル化率等を変更することにより、イノシトール脂肪酸エステルの粘度(動粘度等)を効率よく調整しうる。
本発明のイノシトール脂肪酸エステルの一態様によれば、非常に高いバイオマス度(例えば、95%以上、100%等)を奏しうる。
[イノシトール脂肪酸エステル]
本発明のイノシトール脂肪酸エステルは、通常、イノシトールと脂肪酸とのエステル(イノシトール脂肪酸エステル)である。
イノシトール
イノシトール(エステルを構成するイノシトール、エステルの原料となるイノシトール)としては、特に限定されず、例えば、allo-イノシトール(1,2,3,4/5,6-イノシトール)、chiro-イノシトール(1,2,4/3,5,6-イノシトール)(例えば、D-chiro-イノシトール、L-chiro-イノシトール)、cis-イノシトール(1,2,3,4,5,6/0-イノシトール)、epi-イノシトール(1,2,3,4,5/6-イノシトール)、myo-イノシトール(1,2,3,5/4,6-イノシトール)、muco-イノシトール(1,2,4,5/3,6-イノシトール)、neo-イノシトール(1,2,3/4,5,6-イノシトール)、scyllo-イノシトール(1,3,5/2,4,6-イノシトール)等が挙げられ、好ましくは、myo-イノシトールであってもよい。
イノシトールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、イノシトールは、市販品を使用してもよく、合成(製造)したものを使用してもよい。イノシトールは、米ぬか由来のものを好適に使用してもよい。米ぬか由来のイノシトールは、植物由来であり環境問題の観点から好ましい。代表的な米ぬか由来のイノシトールは、myo-イノシトールである。
市販品の例としては、例えば、築野食品工業株式会社製のイノシトール等を使用してもよい。合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。
脂肪酸
脂肪酸(エステルを構成する脂肪酸、エステルの原料となる脂肪酸)は、一価であってもよく、多価(二価以上)であってもよい。
なお、脂肪酸は、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)、環状などのいずれであってもよく、飽和、不飽和のいずれであってもよい。不飽和脂肪酸において、不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合等)の数は、特に限定されず、例えば、1以上(例えば、1~21、1~10、1~5、1~4、1~3等程度)であればよい。
脂肪酸の炭素数は、特に限定されないが、通常、2以上であってよく、例えば、3以上(例えば、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上)等であってよい。
脂肪酸の炭素数の上限値は、特に限定されないが、例えば、50(例えば、45、40、35、30、25、22、20、18)等であってもよい。
脂肪酸の炭素数は、これらの範囲(上限値と下限値)を適宜組み合わせて範囲を選択してもよい(例えば、2~18等)。
具体的な脂肪酸としては、例えば、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、イソノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソステアリン酸、cis-9-オクタデセン酸(オレイン酸)、11-オクタデセン酸(バクセン酸)、cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸(リノール酸)、9,12,15-オクタデカントリエン酸((9,12,15)-リノレン酸)、6,9,12-オクタデカトリエン酸((6,9,12)-リノレン酸)、9,11,13-オクタデカトリエン酸(エレオステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、8,11-エイコサジエン酸、5,8,11-エイコサトリエン酸(ミード酸)、5,8,11-エイコサテトラエン酸(アラキドン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、cis-15-テトラコサン酸(ネルボン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)、トリアコンタン酸(メリシン酸)等の一価脂肪酸[例えば、炭素数2~30(好ましくは2~18)飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐の一価脂肪酸];シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の多価脂肪酸[例えば、炭素数2~30飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐の多価脂肪酸(例えば、二価脂肪酸)]等が挙げられる。
脂肪酸は、通常は、一価脂肪酸を少なくとも使用すればよく、一価脂肪酸と多価脂肪酸の両方を使用してもよい。
脂肪酸は、市販品を使用してもよく、合成(製造)したものを使用してもよい。合成方法は、特に限定されず、慣用の方法を使用することができる。
脂肪酸の中でも、イノシトール脂肪酸エステルのバイオマス度向上等の観点から、植物由来の脂肪酸を好適に使用してもよい。
また、脂肪酸には、モノマー酸、ダイマー酸、トリマー酸等も含まれる。
なお、脂肪酸は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
イノシトール脂肪酸エステル
イノシトール脂肪酸エステルは、全エステルであってもよく、部分エステルであってもよい。
イノシトール脂肪酸エステルのエステル化率は、例えば、100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下、88%以下、86%以下、84%以下、82%以下、80%以下等であってよい。
イノシトール脂肪酸エステルのエステル化率の下限値は、特に限定されず、例えば、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%等であってもよい。
エステル化率は、これらの範囲(上限値と下限値)を適宜組み合わせて範囲を選択してもよい(例えば、30~100%等)。
エステル化率の測定方法としては、特に限定されず、慣用の方法(例えば、JIS K 0070-1992)を使用してもよい。
エステル化率は、下記式により算出することができる。なお、下記式中のエステル価は、JIS K 0070-1992に基づいて算出される。
エステル化率(%)={エステル価/(エステル価+水酸基価)}×100
イノシトール脂肪酸エステルの酸価は、例えば、30mgKOH/g以下(例えば、28mgKOH/g以下、25mgKOH/g以下、22mgKOH/g以下)、好ましくは20mgKOH/g以下(例えば、18mgKOH/g以下、15mgKOH/g以下、13mgKOH/g以下)、より好ましくは10mgKOH/g以下(例えば、8mgKOH/g以下、5mgKOH/g以下、3mgKOH/g以下、1mgKOH/g以下、0.5mgKOH/g以下)であってよい。
イノシトール脂肪酸エステルの酸価の下限値は、特に限定されず、0mgKOH/gであってもよく、有限値(例えば、0.01mgKOH/g、0.02mgKOH/g、0.03mgKOH/g、0.04mgKOH/g、0.05mgKOH/g、0.06mgKOH/g、0.07mgKOH/g、0.08mgKOH/g、0.09mgKOH/g、0.1mgKOH/g)であってもよい。
酸価は、これらの範囲(上限値と下限値)を適宜組み合わせて範囲を選択してもよい(例えば、0.01~0.5mgKOH/g等)。
酸価の測定方法としては、特に限定されず、慣用の方法(例えば、JIS K 0070-1992)を使用してもよい。
イノシトール脂肪酸エステルの水酸基価は、例えば、45mgKOH/g以下(例えば、43mgKOH/g以下)、好ましくは40mgKOH/g以下(例えば、38mgKOH/g以下)、さらに好ましくは35mgKOH/g以下(例えば、33mgKOH/g以下、30mgKOH/g以下、28mgKOH/g以下、25mgKOH/g以下、22mgKOH/g以下、20mgKOH/g、18mgKOH/g以下、15mgKOH/g以下、13mgKOH/g以下、10mgKOH/g以下)であってよい。
イノシトール脂肪酸エステル水酸基価の下限値は、特に限定されず、0mgKOH/gであってもよく、有限値(例えば、0.01mgKOH/g、0.02mgKOH/g、0.03mgKOH/g、0.04mgKOH/g、0.05mgKOH/g、0.1mgKOH/g、0.3mgKOH/g、0.5mgKOH/g等)であってもよい。
水酸基価は、これらの範囲(上限値と下限値)を適宜組み合わせて範囲を選択してもよい(例えば、0.01~30mgKOH/g等)。
なお、水酸基価は、試料1g中の水酸基に相当する水酸化カリウムのmg数(mgKOH/g)とされている。
水酸基価の測定方法は、特に限定されず、慣用の方法(例えば、JIS K 0070-1992)を使用してもよい。
イノシトール脂肪酸エステルの流動点は、潤滑油等の用途に好適に使用できる等の観点から、例えば、10℃以下(例えば、8℃以下)、好ましくは5℃以下(例えば、3℃以下)、より好ましくは0℃以下(例えば、―5℃以下、―10℃以下、―15℃以下、―20℃以下、―25℃以下)であってよく、取り扱い性等の観点から、常温で液体となる流動点(例えば、10℃以下等)であってもよい。
イノシトール脂肪酸エステルの流動点の下限値は、特に限定されないが、例えば、―100℃(例えば、―90℃、―80℃、―70℃、―60℃、―50℃)であってもよい。
流動点は、これらの範囲(上限値と下限値)を適宜組み合わせて範囲を選択してもよい(例えば、―60~0℃等)。
流動点の測定方法は、特に限定されず、慣用の方法を使用してもよい。具体的には後述の方法(自動流動点・曇り点試験器 mpc-6形(田中科学機器製作株式会社製)を用いた方法)にて流動点を測定してもよい。
イノシトール脂肪酸エステルの100℃における動粘度は、脂肪酸の種類等にもよるが、例えば、500mm/s以下(例えば、300mm/s以下)、好ましくは100mm/s以下(例えば、80mm/s以下、50mm/s以下)であってよい。
イノシトール脂肪酸エステルの100℃における動粘度の下限値は、特に限定されないが、例えば、1mm/s、3mm/s、5mm/s、8mm/s等であってもよい。
動粘度は、これらの範囲(上限値と下限値)を適宜組み合わせて範囲を選択してもよい(例えば、1~50mm/s等)。
動粘度の測定方法としては、特に限定されず、慣用の方法(例えば、JIS K-2283)を使用してもよい。
イノシトール脂肪酸エステルの合成(製造)方法は、特に限定されず、公知のエステル化方法(脂肪酸とアルコールを用いたエステル化方法)を使用することができる。
イノシトール脂肪酸エステルは、イノシトール脂肪酸エステル以外の他の成分(例えば、イノシトール、脂肪酸等の未反応物等)を一部含有していてもよく、このような場合も、イノシトール脂肪酸エステルの範疇に含まれる。
他の成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
イノシトール脂肪酸エステルが他の成分を含有する場合も、ほとんど含有していないことが好ましく、イノシトール脂肪酸エステル中の他の成分全体の割合は、例えば、5モル%以下(例えば、4モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下、0.5モル%以下等)であり、例えば、5質量%以下(例えば、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下等)である。
[イノシトール脂肪酸エステルの用途等]
本発明のイノシトール脂肪酸エステルは、種々の用途[例えば、潤滑油、樹脂用添加剤、化粧品、界面活性剤、加工油、グリース等]に使用できる。なお、イノシトール脂肪酸エステルは、何らかの主剤や添加剤を含む組成物を形成してもよい。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
[酸価]
JIS K 0070-1992に従って測定した。
[水酸基価]
JIS K 0070-1992に従って測定した。
[エステル化率]
JIS K 0070-1992に従って測定及び算出した。
なお、エステル化率(%)は、下記式により算出される値である。
エステル化率(%)={エステル価/(エステル価+水酸基価)}×100
[流動点]
自動流動点・曇り点試験器 mpc-6形(田中科学機器製作株式会社製)を用いて、取扱説明書に記載の方法に従って、各種脂肪酸エステルの流動点を測定し、評価を行った。尚、この測定方法は米国規格(ASTM D6749-02(2018) 石油製品の流動点(自動エア圧力法)のための標準試験方法)に従っており、また、日本工業規格(JIS 2269:1987 原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に対応している測定方法である。具体的には、当該試験器の測定用セルに各種脂肪酸エステルを標線まで入れ、45℃まで予備加熱した後、予期点+40℃までは4℃/分、それ以降は試験終了まで1℃/分の速度で冷却した。
[動粘度]
JIS K-2283に従って測定した。
[4球試験(潤滑性試験)]
ASTM D4172に従い、摩擦磨耗試験機(神鋼造機株式会社製)を使用し、脂肪酸エステルの耐摩耗性を評価した。ボールとして、径1/2インチ(SUJ2)を用い、荷重30kgf、回転速度1500rpm、温度50℃、試験時間30分の条件下でシェル四球摩耗試験での摩耗痕径(mm)を測定して評価した。本評価においては、摩耗痕径が小さいほど、耐摩耗性に優れる(すなわち、潤滑性に優れる)ことを意味する。
[耐加水分解性試験]
試料(脂肪酸エステル)5gと水1gを混合して70℃の恒温槽に48時間静置後、上層の酸価を上記方法で測定した。本評価においては、試験前の脂肪酸エステルの酸価との差異が小さいほど、耐加水分解性に優れることを意味する。
[耐熱性試験]
硼珪酸ガラス製で口内径φ21.5mm、胴径φ24mm、全長40mmのカップに、脂肪酸エステル2gを投入し、220℃、96時間の条件下で加熱試験を行った。24時間毎の脂肪酸エステル量を測定した。加熱前の脂肪酸エステル量に対する蒸発量を質量減少率(%)として算出することにより、耐熱性を評価した。本評価においては、蒸発量が少ないほど、耐熱性が良好であることを意味する。
(実施例1)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、ヘプタン酸(東京化成)530g(4.1モル)、米糠由来のイノシトール(築野食品工業製)100g(0.56モル)、及び触媒としての亜鉛末(東京化成)を総量に対し0.05質量%、還元剤として次亜燐酸ソーダ(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。水酸基価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は、99.7%であった。
(実施例2)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、ヘプタン酸(東京化成)405g(3.1モル)、米糠由来のイノシトール(築野食品工業製)100g(0.56モル)、及び触媒としての酸化スズ(東京化成)を総量に対し0.05質量%、還元剤として次亜燐酸ソーダ(東京化成)を総量に対し0.02質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が0.5mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は、94.2%であった。
(実施例3)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、ヘプタン酸(東京化成)334g(2.6モル)、酢酸(東京化成)66g(1.1モル)、米糠由来のイノシトール(築野食品工業製)100g(0.56モル)、及び触媒としての亜鉛末(東京化成)を総量に対し0.05質量%、還元剤として次亜燐酸ソーダ(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。水酸基価が5.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を150~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対してそれぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、80℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は、98.7%であった。
(実施例4)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、イソステアリン酸(築野食品工業製)587g(2.1モル)、米糠由来のイノシトール(築野食品工業製)70g(0.39モル)、還元剤として次亜燐酸ソーダ(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が4.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対して、50%水酸化ナトリウム水溶液4.0gを投入し、40℃で1時間攪拌した。その後、それぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、40℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は86.7%であった。
(実施例5)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、イソステアリン酸(築野食品工業製)328g(1.2モル)、米糠由来のイノシトール(築野食品工業製)60g(0.33モル)、触媒として亜鉛末(東京化成)を総量に対し0.05質量%、還元剤として次亜燐酸ソーダ(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対して、50%水酸化ナトリウム水溶液4.0gを投入し、40℃で1時間攪拌した。その後、それぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、40℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は59.4%であった。
(実施例6)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、ヘプタン酸(東京化成)252.9g(1.9モル)、米糠由来のイノシトール(築野食品工業製)100g(0.56モル)、触媒として亜鉛末(東京化成)を総量に対し0.05質量%、還元剤として次亜燐酸ソーダ(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が2.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対して、50%水酸化ナトリウム水溶液4.0gを投入し、40℃で1時間攪拌した。その後、それぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、40℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は58.4%であった。
(参考例1)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、イソステアリン酸(築野食品工業製)497g(1.8モル)、トリメチロールプロパン(東京化成)70g(0.52モル)、触媒としてメタンスルホン酸(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、還元剤として次亜燐酸ソーダ(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。水酸基価が5.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対して、50%水酸化ナトリウム水溶液5.0gを投入し、40℃で1時間攪拌した。その後、それぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、40℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は、98.8%であった。
(参考例2)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、イソステアリン酸(築野食品工業製)280g(1.0モル)、イソノナン酸(東京化成)185g(1.2モル)、トリメチロールプロパン(東京化成)100g(0.75モル)、触媒としてメタンスルホン酸(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。酸価が7.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対して、50%水酸化ナトリウム水溶液4.0gを投入し、40℃で1時間攪拌した。その後、それぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、40℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は、93.2%であった。
(参考例3)
攪拌器、温度計及び冷却管付きディーンスターク管を備えた1Lの4つ口フラスコに、ヘプタン酸(東京化成)31.5g(0.24モル)、カプリル酸(東京化成)116g(0.8モル)、イソノナン酸(東京化成)455g(2.9モル)、カプリン酸(東京化成)98g(0.57モル)、ペンタエリスリトール(東京化成)32g(0.24モル)、ジペンタエリスリトール(東京化成)120g(0.47モル)、触媒として亜鉛末(東京化成)を総量に対し0.05質量%仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温した。230℃到達後、減圧し、留出してくる生成水をディーンスターク管で除去しながら、エステル化反応を行った。水酸基価が1.0mgKOH/g以下になったところで反応を終了した。反応終了後、過剰の脂肪酸を230~250℃真空条件下にて留去して粗脂肪酸エステルを得た。粗脂肪酸エステルに対して、50%水酸化ナトリウム水溶液2.0gを投入し、40℃で1時間攪拌した。その後、それぞれ0.2質量%の活性炭と活性白土を投入し、40℃で30分攪拌した後、1時間減圧下で攪拌した。その後、常圧に戻し、ろ過してそれらを除去し、脂肪酸エステルを得た。得られた脂肪酸エステルのエステル化率は、99.5%であった。
実施例1~6及び参考例1~3の評価結果を、表1及び表2に示す。
表1が示すように、実施例のイノシトール脂肪酸エステルは、付加する脂肪酸の種類やエステル化率を変えても流動点を10.0℃以下に保つ事ができた。これは、通常の使用であれば液体を保持し、取り扱いが容易であることを示す。
また、実施例のイノシトール脂肪酸エステルは、付加する脂肪酸の種類やエステル化率を変えることで、動粘度を上下に調整することができた。よって、本発明のイノシトール脂肪酸エステルは、使用環境に適切な動粘度に効率良く調整することができる。
また、実施例のイノシトール脂肪酸エステルは、水酸基価を幅広く調整することができた。よって、実施例のイノシトール脂肪酸エステルは、極性の調整も効率良く行えることが示唆され、乳化性や溶解性を効率良く調整することができる可能性が示された。
また、表2が示すように、実施例のイノシトール脂肪酸エステルは、参考例の脂肪酸エステルと比較して、潤滑性、耐加水分解性、耐熱性が優れていた。
なお、同じ脂肪酸のエステルである実施例4と参考例1から、トリメチロールプロパンよりもイノシトールの方が、潤滑性、耐加水分解性、耐熱性が優れていた。
本発明によれば、新規な脂肪酸エステル(イノシトール脂肪酸エステル)を提供できる。このようなイノシトール脂肪酸エステルは、種々の用途、例えば、潤滑油等に使用できる。

Claims (7)

  1. イノシトールと炭素数2以上18以下の脂肪酸で形成されたイノシトール脂肪酸エステル。
  2. イノシトールが、米ぬか由来のイノシトールを含む、請求項1記載のイノシトール脂肪酸エステル。
  3. イノシトールが、myo-イノシトールを含む、請求項1又は2記載のイノシトール脂肪酸エステル。
  4. エステル化率が50%以上である、請求項1又は2記載のイノシトール脂肪酸エステル。
  5. エステル化率が50%以上であり、イノシトールがmyo-イノシトールを含む、請求項1又は2記載のイノシトール脂肪酸エステル。
  6. 請求項1又は2記載のイノシトール脂肪酸エステルを含む組成物。
  7. 潤滑油用である、請求項6記載の組成物。
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