JP2024053848A - 転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法 - Google Patents

転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】COガスの発生を抑制するとともにスロッピング発生頻度を低下させることで、歩留を向上させることができる転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法を提供する。【解決手段】本発明は、上底吹き方式の転炉型精錬容器1に装入された溶銑2に対して上吹きランス4から気体酸素ガスを吹き込むとともに上方から固体酸素である酸化鉄源を投入して脱りん処理を行う溶銑の脱りん方法において、固体酸素の脱Si反応速度定数を底吹きガスの流量から得られる撹拌動力密度を用いて予め求めておき、求めた脱Si反応速度定数と目標となる溶銑中[Si]濃度とを用いて脱Si処理に必要な気体酸素量を算出し、算出した気体酸素量の気体酸素ガスを上吹きランスから吹き込み、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度が目標となる溶銑中[Si]濃度に到達した後に、脱Si処理から脱りん処理へ移行する。【選択図】図1

Description

本発明は、上底吹き方式の転炉型精錬容器に装入された溶銑に対して、脱Si処理および脱りん処理方法に関するものである。
高炉等で製造された溶銑には、鋼の性能を低下させるSi,P等が含まれており、溶銑段階で脱りん処理を実施している。転炉の操業においては、転炉型精錬容器内に溶銑を装入し、その精錬容器の炉口に配備した吹錬用上吹きランスから、溶銑に向けて酸素ガスを吹き付けるとともに、精錬容器の底部に配備されている底吹き羽口から底吹きガスを吹き込んで溶銑を攪拌する吹錬(脱りん処理)が行われている。その脱りん処理方法としては、例えば、特許文献1~3などに開示されているものがある。
特許文献1は、溶銑中のSi濃度を調整するための操作を適切なタイミングで実施することによって転炉吹錬におけるりん濃度の制御性を向上させることを目的としている。具体的には、転炉で吹錬処理される溶銑に関する溶銑データを説明変数とする統計モデルを用いて溶銑の一次脱珪速度定数の推定値を算出する脱珪速度定数算出部と、溶銑の吹錬処理前のSi濃度および一次脱珪速度定数に基づいて吹錬処理中の所定の時刻における溶銑のSi濃度を推定するSi濃度推定部とを備える転炉吹錬制御装置が開示されている。
特許文献2は、溶銑Si濃度を適正に調整することにより、溶銑P濃度を精度高く制御し、かつ、生産効率を向上させることを目的としている。具体的には、溶銑成分の初期濃度を含む初期溶銑データを取得するデータ取得し、上吹きランスから溶銑に供給された吹込み酸素と溶銑との酸化反応である火点反応と、火点反応が進行する領域である火点領域とは異なる領域において進行する溶銑とスラグとの界面における反応であるスラグメタル界面反応とが複合された複合反応モデルを用いて、溶銑Si濃度を逐次的に推定し、推定された溶銑Si濃度と目標溶銑Si濃度との差に基づいて、溶銑Si濃度を調整するための操作を行う方法が開示されている。
特許文献3は、溶銑の脱珪処理において、気体酸素などの吹き込み条件の変化に応じて、脱珪量及びSiO生成量の推定を適切に行い、脱珪スラグの組成のばらつきを低減することを目的としている。具体的には、搬送容器内の溶銑に、気体酸素を吹き込むか、精錬剤の粉体を吹き込んで溶銑を脱珪処理する際に、見掛けの脱珪反応速度定数Kを、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さ、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度のうちの1つ以上を変数として含む関数式として求め、求めた関数式を用いて見掛けの脱珪反応速度定数Kを算出し、算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて脱珪処理後の溶銑中珪素濃度を算出し、算出した脱珪処理後の溶銑中珪素濃度と脱珪処理前の溶銑中珪素濃度との差から脱珪量を算出し、算出した脱珪量に基づいてCaO系媒溶剤の使用量を決定することとされている。
特開2021-031684号公報 特開2018-095943号公報 特開2019-173050号公報
さて、特許文献1は、脱Siおよび脱りん処理を行うにあたって、統計モデルの計算において、排ガスのデータやスラグのデータなどを踏まえて算出して計算する必要があり、排ガスのデータを取得する計器が不良である場合は処理演算を行えなくなる虞がある。また、統計モデルに用いる脱Si速度定数は、転炉吹錬におけるりん濃度の制御を踏まえて計算しており、歩留を踏まえた前提で溶銑Si濃度の推算をしていない。つまり、歩留を向上させるものとはなっていない可能性がある。
特許文献2は、脱Siおよび脱りん処理を行うにあたって、排ガスのデータを用いて溶銑Si濃度を逐次的に推定する必要があり、排ガスのデータを取得する計器が不良である場合は、溶銑Si濃度の推定が非常に困難になる虞がある。
特許文献3は、搬送容器(混銑車)の操業に関する技術であり、気体酸素ないしは、精錬剤の粉体を吹き込んだ脱Si処理操業を踏まえて、反応速度定数を推算している。本発明が対象とする転炉型精錬容器における脱Siおよび脱りん処理を行うにあたっては、反応効率の面や精錬剤の投入方法の違いから、同文献の技術を用いることができない。また、特許文献3は、主に脱Siスラグの組成のバラつきを低減することを目的としており、歩留を踏まえた前提で溶銑Si濃度の推算をしていない。つまり、歩留を向上させるものとはなっていない可能性がある。
ところで、脱りん反応が進行する前に、脱Si反応が優先的に進行し、その後脱C反応と脱P反応が進行を開始する。このとき、スロッピング現象(溶銑中[C]濃度と酸素ガスが反応することで、COガスが発生し、溶銑やスラグを系外に押しのける現象)が生じやすくなる。すなわち、気体酸素ガスを溶銑に多く吹き込むと、脱Si反応時に脱C反応が始まるので、スロッピング現象に繋がるCOガスが発生する可能性があった。
このスロッピング現象が生じてしまうと、精錬容器の炉内中の溶銑が系外に排出されて歩留が低下してしまう。そのため、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度の目標値を決定し、その目標の溶銑中[Si]濃度となるように、ランスから吹き込む気体酸素ガスの量を予め決定する必要がある。
また近年では、鋼材の高付加価値化や環境に対する配慮等に伴い、ユーザーからの品質要求も高まってきている。このような状況の中で、歩留の向上を図りつつ環境に対して低負荷で鋼中のSiやP等を除去すること、すなわち処理条件の適正化が求められている。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、転炉型精錬容器における脱Si処理および脱りん処理において、COガスの発生を抑制するとともにスロッピング発生頻度を低下させることで、歩留を向上させることができる転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法は、上底吹き方式の転炉型精錬容器に装入された溶銑に対して、上吹きランスから気体酸素ガスを吹き込むとともに上方から固体酸素である酸化鉄源を投入して、脱りん処理を行う溶銑の脱りん方法において、前記固体酸素の脱Si反応速度定数を、底吹きガスの流量から得られる撹拌動力密度を用いて予め求めておき、求めた脱Si反応速度定数と、目標となる溶銑中[Si]濃度とを用いて、脱Si処理に必要な気体酸素量を算出し、算出した気体酸素量の気体酸素ガスを前記上吹きランスから吹き込み、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度が目標となる溶銑中[Si]濃度に到達した後に、脱Si処理から脱りん処理へ移行することを特徴とする。
本発明によれば、転炉型精錬容器における脱Si処理および脱りん処理において、COガスの発生を抑制するとともにスロッピング発生頻度を低下させることで、歩留を向上させることができる。
転炉型精錬容器における転炉精錬の概要を模式的に示した図である。 脱Si反応に寄与する固体酸素量の反応速度定数を踏まえて、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度を予め決定して処理したときの歩留と、その溶銑中[Si]濃度を決定しないで処理したときの歩留を比較した図である。
以下、本発明にかかる転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
本発明にかかる転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法は、上底吹き方式の転炉型精錬容器1に装入された溶銑2に対して、上吹きランス4から気体酸素ガスを吹き込むとともに、上方の炉口から固体酸素である酸化鉄源を投入して、脱りん処理を行う溶銑2の脱りん方法において、固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidを、撹拌動力密度εを用いて(式(1)より)予め求めておき、この脱Si反応速度定数ksi-solidを用いて、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度([Si]f)を(式(2)より)算出し、所定の溶銑中[Si]濃度に到達後、脱Si処理から脱りん処理へ移行することを特徴とする。なお、実操業では、上記で求めた固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidと、目標となる溶銑中[Si]濃度とを用いて、脱Si反応に必要な気体酸素量O2-gasを事前に算出する。
図1に、転炉型精錬容器1(転炉型反応容器1)における転炉精錬の概要を模式的に示す。
一般に転炉の操業においては、転炉型精錬容器1内に装入されている溶銑2に対して、脱りん反応に必要なCaO源を含む石灰と、石灰の溶融に寄与する酸化鉄源を投入し、溶銑2とスラグ3を均一に混合するため、精錬容器1上部の炉口から内部に挿入された吹錬用上吹きランス4より、溶銑2に向けて気体酸素を吹き付けるとともに、転炉型精錬容器1の底部に配備されている底吹き羽口5から、底吹きガスを噴出させながら溶銑2を攪拌する吹錬(脱りん処理)を行っている。
図1に示すように、本実施形態では、転炉型精錬容器1に溶銑2を約220~270tほど装入し、上方の炉口から内部に挿入されている上吹きランス4から気体酸素ガスを溶銑2に吹き付けるとともに、容器1の炉口から石灰や固体酸素である酸化鉄源を投入することで、スラグ3を生成させ、溶銑温度を1300~1400℃に保ちながら、不活性のN2ガスを炉底の底吹き羽口5から吹き込むことで、溶銑2とスラグ3を攪拌させ、以下の脱りん反応を促進させる。
2[P]+5(FeO)+3(CaO)→3(CaO・P2O5)+5[Fe]
上記の脱りん処理を実施する際には、温度調整と脱りんに必要な酸素量P_O2を事前に導出する必要がある。それを導出するあたり、脱りん反応に必要な気体酸素量P_O2_gasおよび固体酸素量P_O2_solidを脱りん反応に必要な酸素量のバランスと、転炉型精錬容器1内の溶銑2への入熱と出熱の熱バランスの連立方程式から導出する。
以下の(1)~(3)に、温度調整と脱りんに必要な酸素量P_O2の導出方法を示す。
(1)事前に転炉型精錬容器1に装入する溶銑量、溶銑2の情報(溶銑中[Si]濃度、溶銑中[P]濃度、溶銑温度など)等を取得する。
(2)脱りん反応に必要な酸素量P_O2を、以下に示す式から導出する。
P_O2={(ln([P]i/[P]t)-β)/α}/Wi
ただし、
・P_O2:脱りん反応に必要な酸素量(Nm3)
・Wi:溶銑量(t)
・[P]i:溶銑中[P]濃度(mass%)
・[P]t:脱りん後の目標[P]濃度(mass%)
・α:定数値α(t/Nm3)
・β:定数値β(t)
なお、脱りん後の目標[P]濃度については、鋼の規格条件や次工程の転炉での脱りん効率を踏まえて任意の値とする。また、定数値であるα,βについては、過去の実機実験の結果を踏まえて算出した値を用いる。
(3)脱りん反応に必要な気体酸素量P_O2_gasと、固体酸素量P_O2_solidを導出する。
以下に示す、脱りん反応における酸素量、および、入熱と出熱の熱バランスの連立方程式を用いて導出する。
P_O2_gas+P_O2_solid=P_O2
Ti+H_P_O2_gas×P_O2_gas+H_P_O2_solid×P_O2_solid+H_Si×[Si]i+ΔH=Tt
ただし、
・P_O2_gas:脱りん反応に必要な気体酸素量(Nm3)
・P_O2_solid:脱りん反応に必要な固体酸素量(Nm3)
・Ti:溶銑温度(℃)
・H_P_O2_gas:気酸における脱P酸素量の熱係数(℃/Nm3)
・H_P_O2_solid:固酸における脱P酸素量の熱係数(℃/Nm3)
・H_Si:脱Si反応熱係数(℃/%)
・ΔH:その他反応熱(スラグ顕熱、二次燃焼熱など)(℃)
・Tt:目標温度(℃)
まず、固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidを、精錬容器1底部の底吹き羽口5から吹き込む底吹きガスの流量から得られる撹拌動力密度εを用いて(以下の式(1)より)予め求めておく。本実施形態では、固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidを、撹拌動力密度εの関数として予め(吹錬前)求めておいた。
詳しくは、従来では、脱Si反応に寄与する気体酸素量および固体酸素量の寄与度を一定値とおいていた。しかし、本実施形態では、脱Si反応に寄与する固体酸素量の寄与度を表現することを目的に、攪拌動力密度εおよび、上方から投入した固体酸素量を基に導出される固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidを、以下の式(1)にて示すことにした。
なお、攪拌動力密度εおよび、上方から投入する酸化鉄源量については、溶銑処理条件に応じて変動するため、固体酸素の脱Si反応速度は処理毎に、予め算出する。
Figure 2024053848000002
ここで、
・ksi-solid:脱Si反応速度定数(1/min.)
・a:定数(t/(min.・W・Nm3)
・ε:攪拌動力密度(W/t)
・O2-solid:上方から投入する酸化鉄源量(Nm3)
・b:定数(1/min.)
また、以下の(4)~(6)に、脱りん処理の実施前に固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidの導出方法を示す。
(4)攪拌動力密度εを、(参考文献:佐野氏らの式:K.Mori and M.Sano:Tetsu-to-Hagane,67(1981),672)に記載された式を用いて算出する。
ε=371×(Qbot/Wi)×Ti×(ln(1+ρL×g×h/P)+(1-Tbot/Tl)
ただし、
・ε:攪拌動力密度(W/t)
・Qbot:底吹きガス流量(Nm3/s)
・Wi:溶銑量量(t)
・Ti:溶銑温度(K)
・ρL:溶銑密度(kg/m3)
・g:重力加速度(m/s2)
・h:底吹きガス吹込み深さ(m)
・P:雰囲気圧力(Pa)
・Tbot:底吹きガス温度(℃)
(5)上方から投入する酸化鉄源量O2-solidについては、上記の(3)にて導出したP_O2_solidを用いる。
(6)定数値a,bにおいては、過去の実機実験の結果を踏まえて算出した値を用いる。
上記したように、固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidを、撹拌動力密度εの関数として予め(吹錬前)求めておく、すなわちksi-solidを可変にすることで、脱Si処理の精度が向上した。
上記で求めた脱Si反応速度定数ksi-solidを用いて、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度を(以下の式(2)より)算出する。実操業では、上記で求めた固体酸素の脱Si反応速度定数ksi-solidと、目標となる溶銑中[Si]濃度とを用いて、脱Si反応に必要な気体酸素量O2-gasを事前に算出する。すなわち、脱Si反応に必要な気体酸素量O2-gasは、目標となる脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度にするために必要な量である。
詳しくは、熱力学的に、脱りん反応が進行する前に、脱Si反応が優先的に進行し、特に、溶銑中[Si]濃度=0.10mass%あたりから、脱C反応と脱P反応が進行を開始する。その際、
スロッピング現象(溶銑中[C]濃度と酸素ガスが反応することで、COガスが発生し、溶銑2やスラグ3を系外に押しのける現象)が生じやすくなる。すなわち、気体酸素ガスを溶銑2に多く吹き込むと、脱Si反応時に脱C反応が始まるので、スロッピング現象に繋がるCOガスが発生する可能性があった。
このスロッピング現象が生じてしまうと、精錬容器1の炉内中の溶銑2が系外に排出されて歩留が低下することとなる。そのため、溶銑中[Si]濃度≦0.09mass%にならないように、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度の目標値を予め決定する必要がある。すなわち、目標の溶銑中[Si]濃度となるように、上吹きランス4から吹き込む気体酸素ガスの量O2-gasを予め決定する必要がある。なお、本実施形態では、脱Si反応が終了したことを示す目標値を、溶銑中[Si]濃度([Si]f)=0.10mass%とした。
目標となる溶銑中[Si]濃度([Si]f)に到達するために必要な気体酸素量の決定方法として、以下の式(2)を用いて算出する。
Figure 2024053848000003
ただし、
・O2-gasblow:脱Si処理中の上吹き酸素流量(Nm3/min.)
・O2-gas:推定される脱Si処理終点の[Si]濃度(脱Si処理)に必要な気体酸素量(Nm3)
・[Si]i:吹錬初期の溶銑中[Si]濃度(mass%)
・[Si]f:脱Si処理における推定終点の溶銑中[Si]濃度(mass%)
・ksi-gas:脱Si反応に寄与する気体酸素量の反応速度定数(1/min.)
・ksi-solid:脱Si反応に寄与する固体酸素量の反応速度定数(1/min.)
本発明では、上記のように、脱Si処理において目標となる溶銑中[Si]濃度にするための、適正な脱Si処理に必要な気体酸素量O2-gasを事前に算出することで、脱Si反応時には脱Si反応のみとなるようにするとともに、脱P反応時に脱C反応が始まるようにすることで、COガスの発生を抑え、スロッピング現象を防止することができるようになる。
次いで、脱Si処理における溶銑中[Si]濃度が、算出した所定の溶銑中[Si]濃度に到達した後に、脱Si処理から脱りん処理へ移行する。すなわち、算出した脱Si処理に必要な気体酸素量O2-gasの気体酸素ガスを上吹きランス4から溶銑2に吹き込み、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度が、目標となる溶銑中[Si]濃度に到達した後に、脱Si処理から脱りん処理へ移行する。
詳しくは、処理工程においては、まず、所定の溶銑中[Si]濃度に到達させるために、脱Si反応に必要な気体酸素量O2-gasを溶銑2に吹き付ける。脱Si処理工程では、限られた処理時間の中で早期に終了させたいため、気体酸素流量が大きい条件で行う。その後、脱Si処理工程から脱りん処理工程へ移行させる。
脱りん処理工程では、ソフトブロー吹錬(上吹き酸素流量を低くし、上吹きランス4の高さを高くするなど)の条件で行い、気体酸素と溶銑中[C]濃度の反応を遅らせて、COガスの発生を抑制し、スロッピング発生頻度を低下させる。
脱Si処理における溶銑中[Si]濃度が、算出した所定(目標)の溶銑中[Si]濃度よりも低い状態で、気体酸素流量O2-gasが高位のまま溶銑2に吹き付けられると、COガスの発生速度が増大し、スロッピング現象が生じてしまい、歩留の低下を引き起こすこととなる。
一方で、脱Si処理における溶銑中[Si]濃度が、算出した所定の溶銑中[Si]濃度よりも高い状態で、脱りん処理工程へ移行して気体酸素流量O2-gasを低位化させると、脱Si反応の進行が遅れることで処理工程に時間がかかってしまい、鋼の生産ロスに繋がる。
つまり、脱Si反応に必要な気体酸素量O2-gasを溶銑2に吹き込んだら、目標の溶銑中[Si]濃度になるので、その溶銑中[Si]濃度に到達したら脱りん処理に移行する。
このように、脱Si反応に寄与する気体酸素量と、固体酸素量の寄与度を算出することで、COガスの発生を抑制してスロッピング現象の発生頻度を低下した状態で、脱P吹錬を行うことができるとともに、歩留を向上させることができる。
ここで、歩留を以下のように定義する。
歩留(%)=Wf-Fe/Wi-Fe×100
ただし、
・Wi-Fe:処理前に炉内に装入したFe源(t)
・Wf-Fe:処理後の溶銑量(t)
・Wi-Fe=Wi×(100-[C]i-[Si]i-[P]i)+固体酸素中Fe源
・Wf-Fe=Wf×(100-[C]f-[Si]f-[P]f)
また、
・Wi:処理前の溶銑量(t)
・[C]i:処理前の溶銑中[C]濃度(mass%)
・[Si]i:処理前の溶銑中[Si]濃度(mass%)
・[P]i:処理前の溶銑中[P]濃度(mass%)
・Wf:処理後の溶銑量(t)
・[C]f:処理後の溶銑中[C]濃度(mass%)
・[Si]f:処理後の溶銑中[Si]濃度(mass%)
・[P]f:処理後の溶銑中[P]濃度(mass%)
ここで、表1に、本実施形態でのパラメータの定義をまとめたものを示す。
Figure 2024053848000004
[実施例]
以下に、本発明の転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法に従って実施した実施例及び、本発明と比較するために実施した比較例について、説明する。
本実施例における実施条件については、以下の通りである。
Figure 2024053848000005
表3に、本発明の転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法に従って、実施した実施例、および、本発明と比較するために実施した比較例を示す。なお、表3は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
Figure 2024053848000006
本実施例1は、式(1)よりksi-solid=0.40(1/min.)と求められ、式(2)より適切に算出したO2-gas=466Nm3で[Si]f=0.10mass%に到達し、歩留(Wf-Fe/Wi-Fe×100)=99.1%とな
り、良好な結果が得られた。
本実施例2は、式(1)よりksi-solid=0.61(1/min.)と求められ、式(2)より適切に算出したO2-gas=393Nm3で[Si]f=0.10mass%に到達し、歩留(Wf-Fe/Wi-Fe×100)=99.3%となり、良好な結果が得られた。
本実施例3は、式(1)よりksi-solid=0.20(1/min.) と求められ、式(2)より適切に算出したO2-gas=650Nm3で[Si]f=0.10mass%に到達し、歩留(Wf-Fe/Wi-Fe×100)=99.0%となり、良好な結果が得られた。
本実施例4は、式(1)よりksi-solid=0.06(1/min.) と求められ、式(2)より適切に算出したO2-gas=866Nm3で[Si]f=0.10mass%に到達し、歩留(Wf-Fe/Wi-Fe×100)=99.1%となり、良好な結果が得られた。
本実施例5は、式(1)よりksi-solid=0.51(1/min.) と求められ、式(2)より適切に算出したO2-gas=493Nm3で[Si]f=0.10mass%に到達し、歩留(Wf-Fe/Wi-Fe×100)=99.1%となり、良好な結果が得られた。
本実施例6は、式(1)よりksi-solid=0.77(1/min.) と求められ、式(2)より適切に算出したO2-gas=422Nm3で[Si]f=0.10mass%に到達し、歩留(Wf-Fe/Wi-Fe×100)=99.1%となり、良好な結果が得られた。
一方、比較例7~12は、ksi-solid=0で、[Si]f=0.10mass%に到達するためのO2-gasが多く(必要以上に気体酸素を吹き込んでいるため)、歩留(Wf-Fe/Wi-Fe×100)=98.5~98.8%となり、歩留が低下した。
図2は、脱Si反応に寄与する固体酸素量の反応速度定数を踏まえて、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度を予め決定して処理したときの歩留と、その溶銑中[Si]濃度を決定しないで処理したときの歩留を比較した図である。
図2に示すように、本実施例1~6は、歩留が平均で99.1%となり、良好な結果が得られた。一方、比較例7~12は、歩留が大幅に下回るものとなり、歩留の低下が見られた。このように、固体酸素量の反応速度定数を考慮することで、スロッピングの発生頻度を低下させ、歩留を向上させることができる。
以上、本発明の転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法によれば、転炉型精錬容器における脱りん処理において、COガスの発生を抑制するとともにスロッピング発生頻度を低下させることで、歩留を向上させることができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
1 転炉型精錬容器
2 溶銑
3 スラグ
4 上吹きランス
5 底吹き羽口

Claims (1)

  1. 上底吹き方式の転炉型精錬容器に装入された溶銑に対して、上吹きランスから気体酸素ガスを吹き込むとともに上方から固体酸素である酸化鉄源を投入して、脱りん処理を行う溶銑の脱りん方法において、
    前記固体酸素の脱Si反応速度定数を、底吹きガスの流量から得られる撹拌動力密度を用いて予め求めておき、
    求めた脱Si反応速度定数と、目標となる溶銑中[Si]濃度とを用いて、脱Si処理に必要な気体酸素量を算出し、
    算出した気体酸素量の気体酸素ガスを前記上吹きランスから吹き込み、脱Si処理中の溶銑中[Si]濃度が目標となる溶銑中[Si]濃度に到達した後に、脱Si処理から脱りん処理へ移行する
    ことを特徴とする転炉型精錬容器における溶銑の脱Si処理および脱りん処理方法。
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