JP2024049359A - ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータおよび二次電池 - Google Patents

ポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータおよび二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明により、熱的安定性と高レート特性を有するバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜を提供する。【解決手段】下記(1)~(3)の特徴を有する、ポリオレフィン微多孔膜。(1)熱機械分析装置(Thermomechanical-Analysis、TMA)で測定される、30℃における収縮応力をSα、80℃における収縮応力をSβとした場合の、下記式にて算出される収縮応力の変化率が、MDおよびTD共に10%未満であること。収縮応力の変化率(%)=|Sα-Sβ|/Sα×100(2)初期電気抵抗が0.9Ωcm2未満であること。(3)ポリプロピレンの含有率が3質量%以上であること。【選択図】なし

Description

本発明はポリオレフィン微多孔膜、電池用セパレータおよび二次電池に関する。
ポリオレフィン微多孔膜は、電池用セパレータ、電解コンデンサー用隔膜、各種フィルタ、透湿防水衣料、逆浸透濾過膜、精密濾過膜等の各種用途に用いられている。ポリオレフィン微多孔膜を、特にリチウムイオン電池用セパレータとして用いる場合、その性能は電池特性、電池生産性および電池安全性に深く関わる。
近年、電池の高エネルギー密度化や軽量化が求められる電気自動車ではパウチ型リチウムイオン電池が多く採用されている。パウチ型セルは、枚葉状に切断した電極シートの間にセパレータを挟んで積み重ねたもの(積層体)である場合が多いが、セパレータと電極のズレ防止のため、ロール状のセパレータを九十九折り(葛折り)しながら、その折り面間に正極板と負極板を交互に位置させた葛折式の積層型も多く使用されている。葛折式積層法では、セパレータには高い張力がかかるため、セパレータには、高張力を付与した際にも変形しにくい特性が求められている。
また、二次電池の製造工程において熱プレス工程がある。生産効率向上のため、熱プレス条件は高温高圧且つ短時間になる傾向がある。そのため、高温高圧条件下においても、安定な特性を持つセパレータが要求されている。
さらに、リチウムイオン透過には十分な貫通孔を持つことが要求される。近年は10Cを越えるようなハイレートの充放電も要求され、電気抵抗を低減したセパレータが要求されている。
特許文献1には、熱機械分析装置(TMA)によるTD方向の最大収縮応力温度が143℃以上、かつ最大収縮応力が1.3MPa以下であるポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
特許文献2には、ポリプロピレンおよびポリエチレンを含み、フィブリルネットワークを三次元的に密に形成することで、突刺強度とより高度な耐圧縮性、シャットダウン特性、メルトダウン特性を向上したセパレータが開示されている。
特許文献3には、40℃における単位断面積当たり収縮応力のフィルム幅方向成分が、1.2N/mm以下の大面積のフィルムにおいても電池のセパレータに求められる物性の均一性および平面性に優れるポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
特許文献4には、従来のポリオレフィン製微多孔膜と同等又はそれよりも低い膜抵抗を有すると共に、高気孔率、高出力特性をも有するポリオレフィン製微多孔膜が開示されている。
特許文献5には、膜厚方向に連通孔を有し、80℃における長手方向(機械方向:MD))の収縮応力(TMA)が15~40N/mであるポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
特許文献6には、ポリオレフィンを含むA層と、その両側にポリオレフィンを含むB層を少なくとも1層ずつ備える積層構造を有するポリオレフィン微多孔膜。上記A層に含まれるポリプロピレンは0質量%以上3質量%未満であり、上記B層に含まれるポリプロピレンは1質量%以上30質量%未満とすることにより、長手方向(機械方向:MD)及び横手方向(幅方向:TD)の熱機械分析(TMA)最大収縮応力が3.0g以下のセパレータが得られることが開示されている。
特開2021-21065号公報 国際公開2022/154069号 国際公開2014/054726号 特開2012-72263号公報 特開2009-269941号公報 特開2019-72901号公報
しかしながら、一般にセパレータが熱的に安定であるとの特性と、高いイオン透過性(高レート特性)を有するとの特性とはトレードオフの関係にあり、両特性を両立することは困難であった。
本発明により、熱的安定性と高レート特性を有するバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜を提供する。
[1]下記(1)~(3)の特徴を有する、ポリオレフィン微多孔膜。
(1)熱機械分析装置(Thermomechanical-Analysis、TMA)で測定される、30℃における収縮応力をSα、80℃における収縮応力をSβとした場合の、下記式にて算出される収縮応力の変化率が、MDおよびTD共に10%未満であること。
収縮応力の変化率(%)=|Sα-Sβ|/Sα×100
(2)初期電気抵抗が0.9Ωcm未満であること。
(3)ポリプロピレンの含有率が3質量%以上であること。
[2]初期の電気抵抗をRα、温度70℃および圧力7.8MPaで10秒間加熱圧縮した後の電気抵抗をRβとした場合の、下記式にて算出される電気抵抗の変化率が30%以下である[1]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
電気抵抗の変化率(%)=|Rα-Rβ|/Rα×100
[3]ポロメータで測定される平均流量径Daveが28nm以上であり、最大流量径Dmaxから平均流量径Daveを差し引いて得られる値Dmax-Daveが20nm以下である、[1]または[2]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[4]シャットダウン温度が141℃以上である、[1]から[3]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[5]メルトフローレート(MFR)が0.2g/10min未満である、[1]から[4]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[6]初期の膜の長さをLα、700kgf/cmのMD張力付与後の膜の長さをLβとした場合の、下記式にて算出される膜の長さの変化率が12%未満である、[1]から[5]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
膜の長さの変化率(%)=|Lα-Lβ|/Lα×100
[7]メルトダウン温度が160℃以上である、[1]から[6]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[8]ゲルパーエミーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られる微分分子量分布曲線において、重量平均分子量(Mw)が150万以上、分子量分布(Mw/Mn)が15以下である、[1]から[7]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[9]ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に、さらに1層以上の多孔質層を備える、[1]から[8]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[10][1]から[9]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を有する電池用セパレータ。
[11][10]に記載の電池用セパレータを有する二次電池。
本発明により、熱的安定性と高レート特性を有するバランスに優れたポリオレフィン微多孔膜を提供する。
以下、本発明の本実施形態について説明する。なお、本発明は以下説明する実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の製膜する方向に平行な方向を製膜方向、長手方向あるいはMD(Machine Direction)と称し、ポリオレフィン微多孔膜面内で製膜方向に直交する方向を幅方向あるいはTD(Transverse Direction)と称する。
1.ポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「微多孔膜」とも言う)
[収縮応力]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、後述の方法により、熱機械分析装置(TMA)で測定される、初期30℃における収縮応力をSα、80℃における収縮応力をSβとした場合の、下記式にて算出される収縮応力の変化率が、MDおよびTD共に10%未満である。好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは3.0%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下である。
収縮応力の変化率(%)=|Sα-Sβ|/Sα×100
微多孔膜の収縮応力の変化率が上記範囲内であると、この範囲内の温度下における収縮が抑制され、即ち、膜の構造が変化しないため、熱プレス等の外力により微多孔膜が圧縮されてもフィルムの電気抵抗が変化しにくい。すなわち、微多孔膜の構造が熱的に安定となることで、耐圧縮性が低下することを抑制し、好適となる。
微多孔膜の収縮応力の変化率を上記範囲内とするためには、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および製膜条件を適宜設定することで達成できる。
[初期電気抵抗]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、後述の方法により測定する初期電気抵抗が0.9Ωcm未満である。好ましくは0.8Ωcm未満あり、さらに好ましくは0.7Ωcm未満である。初期電気抵抗の下限は、特に限定されないが、実質的に、0.2Ωcm以上である。初期電気抵抗が上記範囲内であると、高いイオン透過性を確保することができ、レート特性が向上する。初期電気抵抗は、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および製膜条件を適宜設定することで、均一細孔構造の形成により、上記範囲とすることができる。不適切な原料組成や製膜条件設定により、孔構造の均一性が低下した場合、電極間のイオンの流れが不均一になり、この影響で初期電気抵抗が高くなる。
[ポリプロピレン含有率]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、後述のIRを用いて測定した、ポリオレフィン100質量%中におけるポリプロピレンの含有率が3質量%以上である。4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。ポリプロピレンの含有率の上限は10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。ポリプロピレンの含有率を上記範囲とすることで微多孔膜の熱的安定性が好適となる。
また、本発明のポリオレフィン微多孔膜は積層構成を有しても良い。後述のAFM-IR測定によって、積層構成におけるポリプロピレンを含有する特定層の微多孔膜の断面におけるポリプロピレンの含有率を測定した場合の、特定層のポリオレフィンを100質量%としたときのポリプロピレンの含有率は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。特定層のポリプロピレンの含有率を上記範囲とすることで、高温高圧条件下でセパレータの細孔が潰れ、電気抵抗が大きくなることを抑制し、好適となる。また、後述の方法で測定するメルトダウン温度が高いレベルで発現し、好適となる。
[電気抵抗の変化率]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、初期の電気抵抗をRα、温度70℃および圧力7.8MPaで10秒間加熱圧縮した後の電気抵抗をRβとした場合の、下記式にて算出される電気抵抗の変化率が30%以下であることが好ましい。25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
電気抵抗の変化率(%)=|Rα-Rβ|/Rα×100
電気抵抗の変化率が上記範囲内であると、電池製造工程における高熱高圧プレス時にセパレータの孔が潰れにくく、電気抵抗変化が小さいため、電池性能低下が抑制されて好適となる。
微多孔膜の電気抵抗の変化率を上記範囲内とするためには、特定の収縮応力及び孔径分布を持つように、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および製膜条件を適宜設定することで達成できる。
[平均流量径]
以下に述べる本発明の最大流量径Dmax、及び平均流量径Daveは、PMI社のパームポロメータ(商品名、型式:CFP-1500A)を用いて後述する方法により求められる値である。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、平均流量径の下限は、28nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、32nm以上であることがさらに好ましい。平均流量径の上限は、60nm未満であることが好ましく、55nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。平均流量径が上記好ましい範囲内であると、微多孔膜の構造が緻密となるため、耐電圧特性に優れると共に、圧縮後の電気抵抗の上昇が抑制される。即ち、平均流量径が28nm以上である場合、高熱高圧加圧されても、孔が潰れにくく、結果として電気抵抗の悪化が抑制される。また、この微多孔膜を組み込んだ電池において充放電を繰り返した時のサイクル性能が向上する。
このような特性を示す微多孔膜を得るためには、後述の超高分子量ポリエチレン及びポリプロピレンの混合物の結晶化速度を制御し、ポリオレフィン樹脂の結晶を微細化すると共に、延伸温度や延伸倍率などの製造条件を設定する手法がある。
[孔径分布の値(最大流量径Dmax-平均流量径Dave)]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、最大流量径Dmaxから平均流量径Daveを差し引いて得られる値Dmax-Daveが20nm以下であることが好ましく、18nm以下であることがより好ましく、16nm以下であることがさらに好ましい。孔径分布の値が上記範囲内であると、微多孔膜の構造が均一となるため、耐電圧特性に優れた微多孔膜を得ることができる。微多孔膜の孔径分布の値を上記範囲内とするためには、後述の超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン混合物の25℃に温調した冷却ロールでの引き取り速度を制御し、ポリオレフィン樹脂の結晶を微細化すると共に、構造を均一化するように、延伸温度や延伸倍率などの製造条件を設定する手法がある。
[シャットダウン温度]
本発明のポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度は141℃以上が好ましく、142℃以上あることがより好ましく、143℃以上であることがさらに好ましい。シャットダウン温度は150℃以下が好ましく、148℃以下がより好ましく、146℃以下であることがさらに好ましい。
シャットダウン温度が前記好ましい下限値以上であると、微多孔膜の内部構造が熱的に安定となり、耐圧縮性や耐電圧特性が向上する。
シャットダウン温度が前記好ましい上限値以下であると、熱的安定性とトレードオフの関係にある初期電気抵抗とのバランスに優れ、好適となる。
上記好ましい範囲のシャットダウン温度を有する微多孔膜を得るためには、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および製膜条件を適宜設定することで達成できる。
[メルトダウン温度]
本発明のポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度は160℃以上が好ましく、165℃以上あることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。メルトダウン温度は200℃以下が好ましく、195℃以下あることがより好ましく、190℃以下であることがさらに好ましい。
メルトダウン温度が上記好ましい範囲内であると、本発明の微多孔膜を組み込んだ電池の高温安定性が高く、好適となる。
上記好ましい範囲のメルトダウン温度を有する微多孔膜を得るためには、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および製膜条件を適宜設定することで達成できる。
[メルトフローレート(MFR)]
本発明のポリオレフィン微多孔膜のメルトフローレート(MFR)は0.2g/10min未満であることが好ましい。0.15g/10min以下であることがより好ましく、0.1g/10min以下であることがさらに好ましい。メルトフローレート(MFR)は0.02g/10min以上が好ましく、0.05g/10min以上であることがより好ましく、0.08g/10min以上であることがさらに好ましい。
微多孔膜のメルトフローレートが前記好ましい上限値以下であると、この微多孔膜を組み込んだ電池において適切な粘度となり、原料融点以上の高温時において樹脂が流動しにくくなるため、安全性を確保できる。
微多孔膜のメルトフローレートが前記好ましい下限値以上であると、製膜時に工程で発生し得る問題、例えば高粘度樹脂による押出し機中でのベントアップやフィードネック、またダイ出口でのスウェルなどを抑制できる。
上記好ましい範囲内にあるメルトフローレートを有する微多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成を適宜設定することで達成できる。
[膜の長さの変化率]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、初期の膜の長さをLα、700kgf/cmのMD張力付与後の膜の長さをLβとした場合の、下記式にて算出される膜の長さの変化率が12%未満であることが好ましく、11%以下あることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが最も好ましい。
膜の長さの変化率(%)=|Lα-Lβ|/Lα×100
微多孔膜の長さの変化率が上記好ましい範囲である場合、微多孔膜に高い張力が加えられた場合においても破断しにくく、高い耐久性が要求される用途に用いることができる。例えば、上記のような強度に優れた微多孔膜をセパレータとして用いた場合、電池作製時や電池使用時における短絡を抑制するとともに、高い張力を加えながらセパレータを捲回可能となるので、負極、セパレータ及び陽極からなる3層膜の捲回密度を高めることができ、従って電池の高容量化を図ることができる。また、微多孔膜の少なくとも一方の表面にコーティング層を形成する場合、微多孔膜にはより高い耐久性が要求される。よって、コーティング層の塗工性を向上させるという観点から、膜の長さの変化率が上記範囲である場合、塗工用の基材として微多孔膜を好適に用いることができる。
上記好ましい範囲の膜の長さの変化率を有する微多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および製膜条件を適宜設定することで達成できる。
[MD引張弾性率]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、MD引張弾性率が600MPa以上であることが好ましく、900MPa以上あることがより好ましく、120MPa以上であることがさらに好ましく、140MPa以上であることが最も好ましい。MD引張弾性率が5000MPa以下であることが好ましく、4000MPa以下であることがより好ましく、3000MPa以下であることがさらに好ましい。
微多孔膜のMD引張弾性率が上記好ましい範囲である場合、フィムル巻き取り工程やその後のスリット等二次加工における張力による変形が少なく、フィルムの搬送折れや皺が発生しにくい。従って、変形応力が残せず、二次加工後再度ロールからの巻き出し際、フィムル端部タルミの悪化が抑制される。
上記好ましい範囲の膜の長さの変化率を有する微多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および製膜条件を適宜設定することで達成できる。
[耐電圧]
微多孔膜の耐電圧は、膜厚9μmの微多孔膜として換算したときに1.2kV以上であることが好ましく、1.3kV以上であることがより好ましく、1.5kV以上であることがさらに好ましい。耐電圧を上記範囲とすることで、電池に使用した場合、高電圧でもショート発生確率が抑制されるため、工程適性が向上できる。このような耐電圧性能を微多孔膜に持たせるためには、孔径を既述の範囲とすると共に、機械強度を調整することによって達成される。
[重量平均分子量(Mw)]
以下に述べる本発明の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて後述する方法により求められる。
本発明のポリオレフィン微多孔膜のMwは100万以上であることが好ましい。125万以上であることがより好ましく、150万以上であることがさらに好ましい。Mwは400万以下が好ましく、350万以下であることがより好ましく、300万以下であることがさらに好ましい。
微多孔膜のMwが上記好ましい範囲である場合、微多孔膜が高い機械的強度を得ることができ、フィルム面に対して垂直方向からの衝撃や圧力に対する耐性が高くなる。
上記好ましい範囲内にあるMwを有する微多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成および混錬条件を適宜設定することで達成できる。
[分子量分布(Mw/Mn)]
本発明のポリオレフィン微多孔膜の分子量分布(Mw/Mn)は20以下であることが好ましい。17以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。
微多孔膜の分子量分布(Mw/Mn)が上記好ましい範囲である場合、原料の混錬膨潤が均一となり、微多孔膜が均一なフィブリルネットワークを得ることができ、孔径分布が好適となる。
上記好ましい範囲内にある分子量分布(Mw/Mn)を有する微多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜に使用する原料やその組成を適宜設定することで達成できる。
2.ポリオレフィン微多孔膜の層構成及び樹脂組成
(A)[層構成]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、第1の微多孔層と第2の微多孔層を積層してなることが好ましい。以下、必要に応じ、第1の微多孔層により構成される層をA層、第2の微多孔層により構成される層をB層として説明する。一例として、以下説明するA層を中間層(コア層)としてその両側にB層がスキン層として配置された積層膜の形態が好ましい。なお、中間層をB層、スキン層をA層としても良い。また、更にA層やB層を積層しても良い。
(B)[ポリオレフィン樹脂]
ポリオレフィン微多孔膜を構成する、後述する第1および第2のポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィンを主成分とする。「主成分」とは、各々の層におけるポリオレフィン樹脂全量に対してポリオレフィンを70質量%以上含むことであり、好ましくは80質量%以上含むことであり、更に好ましくは90質量%以上含むことである。第1および第2のポリオレフィン樹脂は、必要に応じて、ポリオレフィン以外のその他の樹脂成分を含むことができる。その他の樹脂成分としては、例えば、耐熱性樹脂等を用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤や充填剤、結晶造核剤、結晶化遅延剤等の各種添加剤を含有させてもよい。以下、本実施形態のポリオレフィン微多孔膜について説明する。
(1)[第1のポリオレフィン樹脂]
本発明のポリオレフィン微多孔膜において、第1の微多孔層は第1のポリオレフィン樹脂から構成される。第1のポリオレフィン樹脂はポリエチレンとポリプロピレンを含むことが好ましい。以下に各成分について詳細を示す。
ポリエチレンとしては、超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、分岐ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が用いられる。ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。α-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。
ここで、第1のポリオレフィン樹脂は超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)を含むことが好ましい。原料として用いられる超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が1×10以上であり、好ましくは1×10以上8×10以下である。Mwが上記範囲である場合、成形性が良好となる。ポリエチレンは1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができ、Mwの異なる二種以上のポリエチレン同士を混合して用いてもよい。
超高分子量ポリエチレンは、第1のポリオレフィン樹脂100質量%に対して、85質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上100質量%以下含むのがより好ましい。超高分子量ポリエチレンの含有率が上記範囲内である場合、得られる微多孔膜のMwを特定の範囲に容易に制御しやすく、かつ押出し混練性などの生産性に優れ、好適となる。また、超高分子量ポリエチレンを含有した場合、微多孔膜を薄膜化した際にも高い機械的強度且つ高いタフネスを得ることができる。
ポリプロピレンは、Mwが5.0×10より大きく4.0×10未満であることが好ましく、1.0×10より大きく3.5×10未満であることがより好ましい。ポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は1.01~100であることが好ましく、1.1~50であることがより好ましい。ポリプロピレンは単独物でもよいし、2種以上のポリプロピレンを含む組成物であってもよい。
ポリプロピレンは、第1のポリオレフィン樹脂全体の質量を100質量%とした場合、5質量%以上15質量%以下含むのが好ましい。ポリプロピレンの第1のポリオレフィン樹脂全体の質量に占める割合の上限値は、好ましくは10質量%以下である。下限値は、好ましくは7質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。上記範囲内であるとメルトダウン特性が向上する。
ポリプロピレンの融点は150~175℃であることが好ましく、より好ましくは、155~165℃である。ポリプロピレンとしては単独重合体のみならず、他のα-オレフィン又はジオレフィンを含むブロック共重合体およびランダム共重合体の少なくとも一方でもよい。
他のオレフィンとしてはエチレン又は炭素数が4~8のα-オレフィンが好ましい。炭素数4~8のα-オレフィンとして、例えば1-ブテン、1-へキセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。ジオレフィンの炭素数は4~14が好ましい。炭素数4~14のジオレフィンとして、例えばブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン等が挙げられる。他のオレフィン又はジオレフィンの含有率は、プロピレン共重合体を100質量%として10質量%未満であることが好ましい。
(2)[第2のポリオレフィン樹脂]
第2の微多孔層を構成する第2のポリオレフィン樹脂の態様は以下のとおりである。
第2のポリオレフィン樹脂はポリエチレンを含む。ポリエチレンは、Mwが1.0×10以上の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)からなる組成物であることが好ましい。
超高分子量ポリエチレンの含有率は、第2のポリオレフィン樹脂全体の質量を100質量%として、90質量%以上とすることが好ましく、100質量%とすることが最も好ましい。含有率が上記範囲内であると、成形時の圧力上昇が抑制され、生産性が向上し、好適となる。
3.ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
次に、本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法を説明する。なお、本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、これに限定されるものではない。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法の一例は、以下の通りである。
(a)ポリオレフィン溶液の調製
(b)ゲル状多層シートの成形
(c)第一の延伸
(d)可塑剤の除去
(e)乾燥
(f)第二の延伸
(g)熱処理
(h)多孔質層の形成。
(a)A層およびB層の溶液の調整
二軸押出し機中にてポリオレフィン樹脂組成物に可塑剤を添加し、溶融混練し、A層およびB層の溶液をそれぞれ調整する。A層は第1のポリオレフィン樹脂組成物、B層は第2のポリオレフィン樹脂組成物とする。
各層のポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との配合割合は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との合計を100質量%として、ポリオレフィン樹脂組成物の含有率を20質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物の濃度を上記の範囲内にすることで、ポリオレフィン溶液を押出す際に、ダイ出口でスウェルやネックインが防止でき、押出し成形体の成形性及び自己支持性を良好にできる。
A層およびB層の溶液をそれぞれ押出機から1つのダイに送給し、そこで例えばA層がコア層となり、B層がその両側を挟み込むスキン層となるように両溶液を層状シート状に押し出し、成形体を得る。押出方法はフラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。いずれの方法でも、溶液を別々のマニホールドに供給して多層用ダイのリップ入口で層状に積層する方法(多数マニホールド法)、又は溶液を予め層状の流れにしてダイに供給する方法(ブロック法)を用いることができる。多数マニホールド法及びブロック法は通常の方法を適用できる。多層用フラットダイのギャップは0.1mm以上5mm以下に設定できる。押出し温度は140℃以上250℃以下が好ましく、押出速度は0.2~15m/分が好ましい。各層の溶液の押出量を調節することにより、層の膜厚比を調節することができる。
(b)ゲル状多層シートの成形
得られた押出し成形体を冷却することによりゲル状多層シートを成形する。冷却により、成膜用溶剤によって分離されたポリオレフィンのミクロ相を固定化することができる。冷却速度が下に記載の範囲内であると結晶化度が適度な範囲に保たれ、延伸に適したゲル状シートとなる。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。冷却は少なくともゲル化温度までは50℃/分以上の速度で行うことが好ましい。冷却は25℃以下まで行うことが好ましい。
(c)第一の延伸
次いで、ゲル状シートを延伸する。ゲル状シートの延伸は、湿式延伸ともいう。ゲル状シートは溶剤を含むので、均一に延伸できる。ゲル状シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸することが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。
延伸倍率(面延伸倍率)は、一軸延伸の場合、2倍以上が好ましく、3倍以上30倍以下がより好ましい。二軸延伸の場合は、倍率は9倍以上が好ましく、16倍以上がより好ましく、25倍以上40倍以下が特に好ましい。また、長手方向(機械方向:MD)及び横手方向(幅方向:TD)のいずれも延伸倍率は3倍以上が好ましく、MDおよびTDでの延伸倍率は互いに同じでも異なってもよい。なお、本工程における延伸倍率とは、本工程直前の微多孔膜を基準として、次工程に供される直前の微多孔膜の面積延伸倍率のことをいう。延伸倍率が上記範囲内であると、得られた微多孔膜が高強度を達成しつつ、高伸度を維持することができる。
延伸温度は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。また、この延伸温度は、好ましくは120℃以下である。延伸温度が上記範囲内であると、低融点成分のポリオレフィン樹脂の延伸による破膜が抑制され、高倍率の延伸ができる。
(d)可塑剤の除去
洗浄溶媒を用いて、可塑剤の除去を行う。洗浄溶媒およびこれを用いた可塑剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば日本国特許第2132327号明細書や特開2002-256099号公報に開示の方法を利用することができる。
(e)乾燥
可塑剤を除去したポリオレフィン微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えば国際公開WO2008/016174号および国際公開WO2007/132942号に開示されているものと同じであってもよい。
(f)第二の延伸
次いで、乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を延伸する。乾燥後の微多孔膜の延伸は、第二の延伸ともいう。具体的には、乾燥後の微多孔膜フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸する。ポリオレフィン微多孔膜の第二の延伸は、加熱しながら上記と同様にテンター法等により行うことができる。本発明のポリオレフィン微多孔膜におけるA層は同時にポリエチレンとポリプロピレンの2種のポリオレフィン樹脂を含有しているため、ラメラ構造の均一性の観点から第二の延伸は一軸延伸が好ましい。
延伸倍率は、MDに1.2倍以上であることが好ましい。第二の延伸のMD延伸を1.2倍以上で行うと、MDに結晶分子鎖が高度に配向し、MDに張力付与しても変形しにくい。延伸倍率は、TD延伸が1.5倍以上であることが好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。第二の延伸のTD延伸を1.5倍以上で行うと、TDに結晶分子鎖が高度に配向する。
ここで第二の延伸における延伸倍率とは、第二の延伸前のポリオレフィン微多孔膜のMD/TDの長さを基準として、第二の延伸後のポリオレフィン微多孔膜のMD/TDの長さの倍率をいう。
(g)熱処理
第二の延伸後のポリオレフィン微多孔膜は熱処理することが好ましい。具体的には、ポリオレフィン微多孔膜のTD両端部をクリップで把持した状態で、幅を固定したまま熱処理を施す(TD熱固定処理工程)。熱処理の温度は115℃以上135℃以下とすることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物、前記の第一の延伸工程、第二の延伸工程、熱処理工程を上記好ましい範囲で適宜調整することで、ポリオレフィン樹脂の均一なフィブリルネットワークが三次元的に密に形成され、微細な細孔構造を有するポリオレフィン微多孔膜を得られる。
(h)多孔質層の形成
本発明の積層ポリオレフィン微多孔膜は、本発明のポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に、さらに1層以上の多孔質層を備えるものであることが好ましい。すなわち、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、第1の微多孔層と第2の微多孔層以外の多孔質層を少なくとも一方の表面に積層して積層ポリオレフィン多孔質膜としてもよい。
多孔質層としては、特に限定されないが、例えば、バインダー成分と無機粒子とを含むコーティング層を積層して多孔質化してもよい。後述の通り、バインダー成分の溶媒を乾燥させて、抽出することで、バインダー樹脂が収縮し、多孔質化する。バインダー成分としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコールなどがあげられる。これらの樹脂を有機溶剤や水等の溶媒により溶解あるいは希釈して用いることができる。無機粒子としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、アルミナ、ベーマイト、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ素などを用いることができる。
多孔層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、以下の工程で得ることができる。
(i)バインダー樹脂、無機粒子、溶媒を用いて多孔質層用塗工分散液を作製する工程。
(ii)ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面、又は両面に前記多孔質層用塗工分散液をコーティングする工程。
(iii)溶媒を乾燥させ、多孔質層を形成する工程。
前記(iii)工程に代えて、(iv)前記溶媒が溶解すると共にバインダー樹脂が溶解しない有機溶媒により多孔質層を形成し、次いで前記有機溶媒を除去する工程、であっても良い。
本発明の電池用セパレータは、本発明のポリオレフィン微多孔膜を備えることが好ましい。本発明のポリオレフィン微多孔膜は、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル-水素二次電池、ニッケル-カドミウム二次電池、ニッケル-亜鉛二次電池、銀-亜鉛二次電池等の二次電池用のセパレータに用いるのが好ましいが、特にリチウムイオン二次電池用セパレータへの適用が好ましい。本発明のポリオレフィン微多孔膜からなるセパレータを用いたリチウムイオン二次電池には、公知の電極及び電解液を用いることができる。また本発明のポリオレフィン微多孔膜からなるセパレータを用いたリチウムイオン二次電池は、公知の構造を用いることができる
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
また、特に断りの無い限り、以下測定は常温且つ結露が生じない湿度環境にて実施したものとする。
[測定方法]
(1)[膜厚(μm)]
微多孔膜の95mm×95mmの範囲内において10cmずつ離れた5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製、“ライトマチック”(登録商標)、接触圧0.01N、10.5mmφプローブを用いた)により測定し、それら測定値の平均値を膜厚(μm)とした。
(2)[空孔率(%)]
微多孔膜を95mm×95mmの大きさに切り出し、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
式:空孔率=((体積-質量/膜密度)/体積)×100
ここで、膜密度は0.99とした。また、体積の算出には、前述の(1)で測定した膜厚を使用した。
(3)[透気抵抗度(sec/100cm)]
微多孔膜について、JIS P-8117:2009に準拠して、透気抵抗度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いて透気抵抗度(sec/100cm)を測定した。
(4)[突刺強度(mN)]
突刺強度は、IMADA製デジタルフォースゲージ(Model DS2-20N)を用い、直径1mm(先端は0.5mmR)の針(カトーテック製 P-3000S-102G-10)を用い、速度2mm/secで把持された膜厚T1(μm)の微多孔膜を突刺したときの最大荷重値(P1)とした。下記の式により、膜厚を9μmとして換算したときの9μm換算突刺強度(P2)を算出した。
式:P2=(P1×9)/T1。
(5)[収縮応力]
試料を、MD及びTDのそれぞれ測定する方向に合わせて、測定する方向に15mm×3mmの矩形に切り出して評価用サンプルを作製した。日立ハイテクノロジー社製「TMA7100」を用いて、チャック間距離が10mmになるように評価用サンプルをチャックに固定し、定長モードで30℃から200℃まで5℃/分の速度で昇温させた。200℃まで昇温させた際の温度と収縮力を1秒間隔で測定し、収縮力(gf)を評価用サンプルの断面積で除した値を、各温度における収縮応力S(MPa)とした。
収縮応力の変化率は、30℃における収縮応力をSα(MPa)、80℃における収縮応力をSβ(MPa)とし、下記式にて算出した。
収縮応力の変化率(%)=|Sα-Sβ|/Sα×100
(6)[初期電気抵抗]
CR2032用電池部材ケース、キャップ、ウェーブワッシャー、スペーサー、PPガスケットを準備し、次に、微多孔膜を直径19mmにダンベルで打ち抜いた。準備したコイン電池と部材は真空乾燥機を用いて室温で一晩、真空乾燥し、電池部材とセパレータに吸着した水分を除去した。下から微多孔膜、PPガスケットの順に重ね、ケースに収納した。片面コート品の場合は、コート面を上にして積層する。ドラフトで電解液1M-LiPF6/EC:EMC(4:6体積%)をケースに0.15ml注入し、スペーサーをセパレータの上に配置した。真空乾燥機にコイン電池を入れ、圧力50kPa、静置時間1分を2回で真空含浸を実施した。ウェーブワッシャーをスペーサーの上に配置し、キャップをはめ、密閉し、コイン電池を作製した。微多孔膜を3枚、4枚、5枚重ねたコイン電池をそれぞれ作製した。測定温度は25±5℃以内、露点は-35℃以下で、インピーダンスアナライザ(IM3590、solartron)を用い、コイン電池の電気抵抗を測定した。微多孔膜の3枚、4枚、5枚の電気抵抗結果から線形近似曲線を作成し、その曲線の傾きから1枚当りの抵抗を算出し、本発明における微多孔膜の初期電気抵抗Rαとした。
(7)[耐圧縮性/加熱圧縮後の電気抵抗変化率]
微多孔膜から40mm×40mm(MD×TD)サイズのサンプルを12枚切り出す。切り出したサンプル片12枚の4辺をそろえて積層したものを測定サンプルとする。その測定サンプルを、水平な板の間に静置し、圧縮装置(新東工業株式会社製、CYPT-20特)により10秒間、70℃で7.8MPaの圧力下で加熱圧縮した。
加熱圧縮後の微多孔膜を用い、上記(6)測定方法で1枚当りの抵抗を算出し、本発明における微多孔膜の加熱圧縮後の電気抵抗Rβとした。下記式にて電気抵抗の変化率を算出した。
電気抵抗の変化率(%)=|Rα-Rβ|/Rα×100。
(8)[シャットダウン温度(℃)およびメルトダウン温度(℃)]
微多孔膜を30℃の雰囲気中にさらして、5℃/分の速度で昇温しながら透気抵抗度を測定する。ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度が100,000秒/100cmに到達した時の温度をシャットダウン温度と定義した。メルトダウン温度は、前記シャットダウン温度に到達後さらに昇温を継続し、透気抵抗度が100,000秒/100cm未満となる温度と定義した。透気抵抗度は、JIS P8117:2009に準拠して、透気抵抗度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いて測定した。
(9)[引張破断強度(MPa)、引張破断伸度(%)、MD張力付与後の膜の長さの変化率(%)、MD引張弾性率(MPa)]
MD及びTDに対応する引張破断強度(MPa)及び引張破断伸度(%)については、インストロン製の引張試験機、インストロン5543を用いて、ASTM D882に準拠し、下記の条件で測定した。
・サンプル形状:縦100mm×横10mmの矩形
・測定方向:MD(長さ方向)、TD(幅方向)
・チャック間距離:20mm
・引張速度:100mm/min
・グリップ:インストロン製 2702-018 Jaw Faces for Fla
ts(Rubber Coated,50×38mm)
・ロードセル:500N
・チャック圧:0.50MPa
・温度:23℃
引張破断強度(MPa)は、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除すことで求めた。引張破断伸度(%)は、サンプル破断に至るまでの伸び量(mm)をチャック間距離(20mm)で除して、100を乗じることにより求めた。引張破断強度及び引張破断伸度として、各方向のサンプルを5点測定した値の平均値を算出した。
膜の長さの変化率(%)は、初期の膜の長さをLα、700kgf/cmのMD張力付与後の膜の長さをLβとし、下記式にて算出した。
膜の長さの変化率(%)=|Lα-Lβ|/Lα×100
MD引張弾性率(MPa)はMD引張張力2~3N間での曲線の傾きを、試験前の断面積で除することで求めた。MD引張弾性率として、MD方向のサンプルを5点測定した値の平均値を算出した。
(10)[孔径(nm)]
微多孔膜の平均流量径Dave(nm)及び最大流量径Dmax(nm)は下記のように測定した。PMI社のパームポロメータ(商品名、型式:CFP-1500A)を用いて、Dry-up、Wet-upの順で測定した。Dry-upでは、ポリオレフィン微多孔膜に圧力をかけ、貫通した空気流量を測定する。Wet-upでは表面張力が既知のGalwick(商品名)で十分に浸したポリオレフィン微多孔膜に圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径を最大流量径とした。Dry-up測定で得られる圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet-up測定で得られる曲線が交わる点の圧力から平均流量径を換算した。圧力と孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P
(式中、d(μm)は微多孔膜の孔径、γ(dynes/cm)は液体の表面張力、P(Pa)は圧力、Cは圧力定数(2860)である。)。
(11)[ポリプロピレンの含有率(質量%)]
[1]微多孔膜全体におけるポリプロピレンの含有率の測定:IR測定
微多孔膜から切り出した50mm×50mmの試料片を、顕微赤外線分光光度計(日本分光製、FT/IR-6600)を用いて、下記条件で透過測定を行った。
・測定波数範囲 600cm-1~4000cm-1
・分解能 4cm-1
・積算回数 16回
横軸及び縦軸としてそれぞれ波数及び吸光度をプロットしたグラフにおいて、-CH変角由来の1377cm-1における、ピークの頂点からベースラインまでの高さを吸光度として求めた。ベースラインは1330cm-1における吸光度と1400cm-1における吸光度との間を直線で引いた線を用いた。次に、-CH変角由来の1463cm-1における、ピークの頂点からベースラインまでの高さを吸光度として求めた。ベースラインは1400cm-1における吸光度と1530cm-1における吸光度との間を直線で引いた線を用いた。その吸光度割合からポリプロピレン含有率(質量%)を求めた。即ち、1463cm-1のレーザー照射でポリエチレンとポリプロピレンのCH変角由来の吸光度、1377cm-1レーザー照射でポリプロピレンのCH変角由来の吸光度を測定することでポリプロピレンの含有率を求めた。
[2]ポリプロピレン含有層におけるポリプロピレンの含有率の測定:AFM-IR測定
ポリオレフィン微多孔膜を50mm×50mmサイズで切り出してミクロトームによりMDの断面が得られるよう切削し、断面切片を試料とした。試料をAFM-IR用ZnSe製プリズムに固定してプリズム側から赤外レーザー光を全反射(ATR)条件で微多孔膜の断面に照射し、光吸収に伴う試料の熱膨張をAFMカンチレバーの変位として検出した。
下記の条件で赤外レーザーを試料に照射し、測定を行った。
・測定装置:NanoIR Spectroscopy System(Anasys Instruments社製)
・光源:Tunable Pulsed Laser(1kHz)
・AFMモード:コンタクトモード
・測定波数範囲:1200~1575cm-1
・波数分解能:2cm-1
・Coaverages:32
・積算回数:2回以上
・偏光角度:45度
多層微多孔膜の断面におけるポリプロピレンの分布を可視化するため、AFM-IRを用いて以下の条件で測定した。測定範囲は、フィルム幅方向中央部において長手方向(MD方向)に10μmとして、フィルム表層部から厚み方向にポリプロピレンを含有する層がすべて含まれる領域をAFM-IR測定した。AFM-IR測定時に試料へ1465cm-1のレーザー照射時と1376cm-1のレーザー照射時のAFMカンチレバーの変位を測定し、その強度割合からポリピロピレン含有量を求めてマッピングを行った。即ち、1465cm-1のレーザー照射でポリエチレンとポリプロピレンのCH変角、1376cm-1レーザー照射でポリプロピレンのCH変角を測定することでポリエチレンとポリプロピレンの含有量を求めた。
(12)[耐電圧(kV)]
微多孔膜の耐電圧については以下の方法にて評価した。一辺150mmの正方形のアルミニウム板上に、直径60mmの円状に切り出した微多孔膜を置き、その上に真鍮製の直径50mm、高さ30mm、重さ500gの円柱電極を置いて、菊水電子工業製TOS9201耐絶縁破壊特性試験器を接続した。0.1kV/秒の昇圧速度で電圧を加え、絶縁破壊したときの電圧値を耐電圧とした。サンプルを交換して10回繰り返してそれら結果の平均値を(1)で求めた厚みに比例配分すると共に9μm当たりの値に換算して当該微多孔膜の耐電圧とした。例えば10μm厚みの微多孔膜を測定し、耐電圧1.0kVであった場合、9μm換算値は0.9kVである。
なお、耐電圧の測定に於いては、露点の影響を受けるので露点は-15~0℃条件下で上記方法により測定を行った。
(13)[メルトフローレート]
JISK7210-1(2014)のA法に準じて、微多孔膜のメルトフローレートを測定した。190℃、21.6kgfの荷重を膜に加えて、5分間溶融した後、10分で流出した樹脂量(g)を測定した。5回測定した平均値を算出し、小数点以下第二位を四捨五入し、測定値とした。
(14)[層比]
ポリオレフィン微多孔膜の層比は、以下の測定条件で透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。
(測定条件)
・試料調整:ポリオレフィン微多孔膜を四酸化ルテニウムにより染色し、ウルトラマイクロトームで断面切断する。
・測定装置:透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM1400Plus型)
・観察条件:加速電圧100kV
・観察方向:TD/ZD(ZD:膜厚方向)。
(15)[重量平均分子量(Mw)/分子量分布(Mw/Mn)]
ポリオレフィン樹脂又は、ポリオレフィン微多孔膜の重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:AMR製高温GPC装置PL-GPC220
・カラム:PL1110-6200、PLgel 20um MIXED-A 7.5×7300mm
・カラム温度:160℃(昇温速度0.5℃/min)
・溶媒(移動相):1,2,4-Trichlorobenzene(TCB)
シグマアルドリッチ256412-2L HPLC用
・添加剤(酸化防止剤):4,4‘-Thiobis(6-tert-butyl-methyl-cresol)、TCB(2L)に対し添加剤250mgを添加する。
・溶媒流速:1ml/min
・試料濃度: 0.067mg/ml(溶解条件:160℃/30min)
・インジェクション量:500μl
・検出器:アジレント社製「1260 Infinity 2 Multi-Detector GPC/SEC System」 (RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、ポリエチレン換算係数(0.46)を用いて作成した。
(16)[ポリオレフィン微多孔膜のMDまたはTDの分析]
ポリオレフィン微多孔膜は以下の手法によりMDまたはTDを見分ける。
電池からポリオレフィン微多孔膜を得た場合は、電池捲回方向(長手方向)がMD、スタックタイプでも長手方向がMDである。
また、方形のカットフィルムの場合は、熱収縮率を測定し、カットフィルムの4辺のうち互いに平行な2辺が向く方向と、それら2辺に直交する2辺が向く方向のうち、熱収縮率が高い方向がMDである。円形のカットフィルムの場合は、円の中心から放射状の延びる径方向のうち熱収縮率が最も高い方向がMDである。これはポリオレフィン微多孔膜の製造過程においては、MDに張力をかけて製膜を行うため最後の熱処理工程を経てもMDにはより大きな残留応力が残るためである。なお、熱収縮率は下記手法により測定した。
(熱収縮率)
ポリオレフィン微多孔膜を95×95mmに切り出し、40℃のオーブンに24時間投入した。オーブン投入前後のポリオレフィン微多孔膜について、MD、TDの2辺の長さをそれぞれ測定し、下記式により算出した。
式:熱収縮率=[(オーブン投入前の1辺の長さ-オーブン投入後の1辺の長さ)/(オーブン投入前の1辺の長さ)]×100。
(17)[融点]
試料の融点はJIS K7121:2012に基づき、示差走査熱量分析(DSC)法により測定した。アルミパンに6.0mgの試料を封入し、ParkinElmer製 PYRIS Diamond DSCを用いて、窒素雰囲気下、30℃から230℃まで10℃/minで昇温し、30℃から230℃まで10℃/minで昇温(1回目の昇温)後、230℃で5分間保持し、10℃/分の速度で冷却し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から230℃まで昇温し(2回目の昇温)、各融解吸熱曲線を得た。2回目の昇温で得られた融解吸熱曲線上のピークトップの温度をポリオレフィン原料の融点(℃)とした。
(18)[積層ポリオレフィン微多孔膜の多孔質層の除去]
ポリオレフィン微多孔膜に多孔質層が積層された電池用セパレータの多孔質層中の樹脂成分が可溶な場合、その樹脂成分を可溶な溶媒で洗浄、乾燥して、多孔質層が除去されたことを確認し、ポリオレフィン微多孔膜を得て各物性を測定してもよい。例えば、ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度は、電池用セパレータの断面SEMを撮像して電池用セパレータにおける多孔質層の厚みを測定し、電子線を用いたエッチングなどで物理的に当該多孔質層の厚みの分だけ除去し、その後洗浄した上でポリオレフィン微多孔膜を得て測定しても良い。
[実施例1]
(1)A層の溶液調整
表1に示す重量平均分子量Mw1.5×10の超高分子量ポリエチレン90質量%と、重量平均分子量Mw2.6×10、分子量分布(Mw/Mn)=6のポリプロピレン10質量%からなるポリオレフィン組成物100質量部に対し、酸化防止剤としてテトラキス(メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)メタン0.2質量部をドライブレンドして得られた原料を二軸押出機に投入し、さらに二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィンを供給し、二軸押出機内でポリオレフィン組成物が17質量%、流動パラフィンが83質量%となるように混合したものを溶融混練して、A層のポリオレフィン溶液を調製した。
(2)B層の溶液調整
表1に示す重量平均分子量Mw1.5×10の超高分子量ポリエチレン100質量%からなるポリオレフィン組成物100質量部に対し、酸化防止剤としてテトラキス(メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート)メタン0.2質量部をドライブレンドして得られた原料を二軸押出機に投入し、さらに二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィンを供給し、二軸押出機内でポリオレフィン組成物が17質量%、流動パラフィンが83質量%となるように混合したものを溶融混練して、B層のポリオレフィン溶液を調製した。
(3)ゲル状多層シートの成形
各溶液を二軸押出機から三層用Tダイに供給し、B層の溶液/A層の溶液/B層の溶液が層厚比35/30/35となるように押し出した。押出し成形体を、25℃に温調した冷却ロールで引き取り速度4m/分で引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。
(4)第一の延伸、成膜用剤の除去、乾燥
ゲル状三層シートを、テンター延伸機により115℃でMD及びTDともに5倍に同時二軸延伸し、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、110℃の温度で熱固定した。次いで延伸したゲル状三層シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去し、室温で風乾した。
(5)第二の延伸、熱処理
その後、127℃で予熱してからテンター延伸機によりTDに1.7倍延伸をした後、TDに14%の緩和を施し、テンターに保持しながら128℃で熱固定し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜の各特性を表1に示す。
[実施例2]
押出し成形体を、25℃に温調した冷却ロールで引き取り速度12m/分で引き取りながら冷却した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[実施例3]
A層のポリオレフィン溶液を、表1に示す重量平均分子量Mw1.6×10の超高分子量ポリエチレン90質量%、ポリオレフィン組成物が20質量%に調製した。B層のポリオレフィン溶液を、表1に示す重量平均分子量Mw1.6×10の超高分子量ポリエチレン100質量%に調整した。
ゲル状三層シートを、テンター延伸機により112℃でMD及びTDともに5倍に同時二軸延伸した。その後、123℃で予熱してからテンター延伸機によりTDに1.9倍延伸をした後、テンターに保持しながら125℃で熱固定した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[実施例4]
押出し成形体を、冷却ロールで引き取り速度9.7m/分で引き取りながら冷却した。第一の延伸、成膜用剤の除去、乾燥した後に、100℃で予熱してからロール延伸機によりMDに1.45倍延伸をした。その後、130℃で予熱してからテンター延伸機によりTDに2.13倍延伸をした後、テンターに保持しながら132℃で熱固定した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[実施例5]
A層のポリオレフィン溶液を、表1に示す超高分子量ポリエチレン87.5質量%とポリプロピレン12.5質量%からなるポリオレフィン組成物が20質量%に調製した以外は、実施例4と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例1]
B層の溶液調整において、Mw1.5×10の超高分子量ポリエチレン80質量%、Mw1.0×105の高密度ポリエチレン20質量%からなるポリオレフィン組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例2]
A層の溶液調整において、Mw1.5×10の超高分子量ポリエチレン70質量%、Mw2.6×10のポリプロピレン30質量%からなるポリオレフィン組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例3]
A層の溶液調整において、Mw1.5×10の超高分子量ポリエチレン100質量%からなるポリオレフィン組成物を用い、A層層比100%とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例4]
ゲル状三層シートを、ロール延伸機により115℃でMDに8.9倍、その後テンター延伸機により115℃でTDに8.2倍に逐次二軸延伸し、そのままテンター延伸機内でシート幅を固定し、110℃の温度で熱固定した。次いで延伸したゲル状三層シートを洗浄槽で塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去し、室温で風乾した。
その後、131℃で予熱してからテンター延伸機によりTDに1.9倍延伸をした後、TDに14%の緩和を施し、テンターに保持しながら135℃で熱固定した以外は、比較例3と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例5]
A層のポリオレフィン溶液を、表1に示す超高分子量ポリエチレン97質量%とポリプロピレン3質量%からなるポリオレフィン組成物を用い、A層層比40%とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例6]
A層のポリオレフィン溶液を、表1に示す重量平均分子量Mw9×10の超高分子量ポリエチレン90質量%、ポリオレフィン組成物が23質量%に調製した。B層のポリオレフィン溶液を、表1に示す重量平均分子量Mw9×10の超高分子量ポリエチレン100質量%、ポリオレフィン組成物が23質量%に調整した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例7]
第一の延伸温度を121℃にした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
[比較例8]
第一の延伸、成膜用剤の除去、乾燥した後に、テンターに保持しながら136℃で熱固定した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜の各成分の配合割合、製造条件、物性評価結果等を表1に示す。
Figure 2024049359000001
Figure 2024049359000002

Claims (11)

  1. 下記(1)~(3)の特徴を有する、ポリオレフィン微多孔膜。
    (1)熱機械分析装置(Thermomechanical-Analysis、TMA)で測定される、30℃における収縮応力をSα、80℃における収縮応力をSβとした場合の、下記式にて算出される収縮応力の変化率が、MDおよびTD共に10%未満であること。
    収縮応力の変化率(%)=|Sα-Sβ|/Sα×100
    (2)初期電気抵抗が0.9Ωcm未満であること。
    (3)ポリプロピレンの含有率が3質量%以上であること。
  2. 初期の電気抵抗をRα、温度70℃および圧力7.8MPaで10秒間加熱圧縮した後の電気抵抗をRβとした場合の、下記式にて算出される電気抵抗の変化率が30%以下である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
    電気抵抗の変化率(%)=|Rα-Rβ|/Rα×100
  3. ポロメータで測定される平均流量径Daveが28nm以上であり、最大流量径Dmaxから平均流量径Daveを差し引いて得られる値Dmax-Daveが20nm以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. シャットダウン温度が141℃以上である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. メルトフローレート(MFR)が0.2g/10min未満である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  6. 初期の膜の長さをLα、700kgf/cmのMD張力付与後の膜の長さをLβとした場合の、下記式にて算出される膜の長さの変化率が12%未満である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
    膜の長さの変化率(%)=|Lα-Lβ|/Lα×100
  7. メルトダウン温度が160℃以上である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  8. ゲルパーエミーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られる微分分子量分布曲線において、重量平均分子量(Mw)が150万以上、分子量分布(Mw/Mn)が15以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  9. ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に、さらに1層以上の多孔質層を備える、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  10. 請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜を有する電池用セパレータ。
  11. 請求項10に記載の電池用セパレータを有する二次電池。
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