JP2022146342A - 蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】高い透過性を有しつつ、蓄電デバイス中における耐電圧性に優れ、かつ高強度を有する蓄電デバイス用セパレータを提供すること。【解決手段】ポリオレフィンを主成分とする微多孔層(A)と、上記微多孔層(A)上に積層されたポリオレフィンを主成分とする微多孔層(B)とを含む、2層以上の積層構造を有するセパレータ基材を備える、蓄電デバイス用セパレータが提供される。上記セパレータ基材のMD-ND断面において、上記微多孔層(A)の面積平均長孔径は、前記微多孔層(B)の面積平均長孔径と同一であるか、より大きい。上記セパレータ基材のMD-ND断面において、上記微多孔層(A)と上記微多孔層(B)との境界に開孔が存在し、上記開孔は、上記微多孔層(A)の上記面積平均長孔径の3倍以上の長孔径を有する。【選択図】図1

Description

本開示は、蓄電デバイス用セパレータ等に関する。
微多孔膜、特にポリオレフィン系微多孔膜は、精密濾過膜、電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ、燃料電池用材料等の多くの技術分野で使用されており、特にリチウムイオン電池に代表される二次電池用セパレータとして使用されている。リチウムイオン電池は、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ等の小型電子機器用途のほか、ハイブリッド自動車、及びプラグインハイブリッド自動車を含む電気自動車等、様々な用途へ応用されている。
近年、高エネルギー容量、高エネルギー密度、かつ高い出力特性を有するリチウムイオン電池が求められ、それに伴い、薄膜であり、電池性能に優れ、かつ電池の信頼性や安全性に優れたセパレータへの需要が高まっている。
例えば、特許文献1は、隣接する層に、異なる樹脂組成の層を配置することで、引張強度や絶縁破壊強度を改良した多層セパレータを記載している。
特表2020-512654号公報
蓄電デバイスの大電流での放電性能及び低温での放電性能を向上させるために、高透過性のセパレータが要求されているが、一方で、安全性の観点から、耐電圧性に優れたセパレータが求められている。耐電圧性とは、セパレータがどの程度の電圧まで短絡を抑制し、電極間で絶縁体として存在しうるかという、セパレータの絶縁性能を示している。一般的には、高透過性なセパレータは高気孔率であり、すなわち樹脂比率が少ないため、強度や耐電圧性が低下する傾向がある。
したがって、本開示は、高い透過性を有しつつ、蓄電デバイス中における耐電圧性に優れ、かつ高強度を有する蓄電デバイス用セパレータを提供することを目的とする。
本開示の実施形態の例を以下の項目[1]~[7]に列記する。
[1]
ポリオレフィンを主成分とする微多孔層(A)と、前記微多孔層(A)上に積層されたポリオレフィンを主成分とする微多孔層(B)とを含む、2層以上の積層構造を有するセパレータ基材を備える、蓄電デバイス用セパレータであって、
前記セパレータ基材のMD-ND断面において、前記微多孔層(A)の面積平均長孔径は、前記微多孔層(B)の面積平均長孔径と同一又はより大きく、
前記セパレータ基材のMD-ND断面において、前記微多孔層(A)と前記微多孔層(B)との境界に開孔が存在し、前記開孔は、前記微多孔層(A)の前記面積平均長孔径の3倍以上の最大長孔径を有する、蓄電デバイス用セパレータ。
[2]
前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンである、項目1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[3]
前記セパレータ基材は、前記境界に存在する前記開孔の長孔径の合計が、前記境界の長さの5%以上である、項目1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[4]
前記セパレータ基材は、3層以上の積層構造を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[5]
前記セパレータ基材のMD-ND断面における各層の面積平均長孔径が100nm以上600nm以下である、項目1~4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[6]
前記セパレータ基材は、1μm以上16μm以下の厚さを有する、項目1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[7]
正極、負極、及び項目1~6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える、蓄電デバイス。
本開示によれば、高い透過性を有しつつ、蓄電デバイス中における耐電圧性に優れ、かつ高強度を有する蓄電デバイス用セパレータが提供される。
図1は、実施例1におけるセパレータ基材のMD-ND断面のSEM画像である。
《蓄電デバイス用セパレータ》
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィンを主成分とする微多孔層(A)と、ポリオレフィンを主成分とする微多孔層(B)とを有する、少なくとも2層の積層構造を有するセパレータ基材を備える。セパレータ基材は、微多孔層(A)及び/又は微多孔層(B)上に、更に塗工層(「表面層」、「被覆層」などとも呼ばれる。以下、単に「塗工層」という。)を有してもよい。本願明細書において、「微多孔層」とは、セパレータの基材を構成する微多孔質の各層を意味し、「セパレータ基材」とは、任意の塗工層を除くセパレータの基材を意味し、「セパレータ」とは、任意の塗工層も含めたセパレータ全体を意味する。
〈微多孔層(A)〉
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(A)を有する。蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(A)を一層のみ有していても、二層以上有していてもよい。微多孔層(A)のうち少なくとも一層は、セパレータ基材の少なくとも片面の最外層を構成することが好ましい。蓄電デバイス用セパレータが微多孔層(A)を二層以上有する場合、微多孔層(A)は、セパレータ基材の両面の最外層を構成してもよい。微多孔層(A)はポリオレフィンを主成分とし、これによって、高温(130℃)保存後も良好な電池性能を維持することができる。本願明細書において、ポリオレフィンを「主成分とする」とは、当該微多孔層(A)の全質量を基準として、ポリオレフィンを50質量%以上含むことを意味する。微多孔層(A)中のポリオレフィンの含有量の下限は、セパレータの濡れ性、薄膜化、及びシャットダウン特性等の観点から、50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上である。微多孔層(A)中のポリオレフィンの含有量の上限は、限定されないが、例えば、60質量%以下、70質量%以下、80質量%以下、90質量%以下、95質量%以下、98質量%以下、又は99質量%以下であってよく、100質量%であってもよい。
〈微多孔層(A)の材料〉
ポリオレフィンとは、炭素-炭素二重結合を有するモノマーを繰り返し単位として含むポリマーである。ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、限定されないが、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数2~10のモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等が挙げられる。ポリオレフィンは、例えば、ホモポリマー、コポリマー、又は多段重合ポリマー等であり、好ましくはホモポリマーである。
微多孔層(A)のポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、微多孔層の強度等の観点から、300,000以上が好ましく、微多孔層の孔径を大きくし目詰まりを回避して高出力を得る観点から、1,500,000以下が好ましい。ポリオレフィンのMwは、より好ましくは、500,000以上、1,300,000以下、さらに好ましくは、600,000以上、1,100,000以下、より更に好ましくは、700,000以上、1,000,000以下、特に好ましくは、800,000以上、960,000以下である。
微多孔層(A)のポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)の上限値は、好ましくは7以下、より好ましくは、6.5以下、6以下、5.5以下、又は5以下である。Mw/Mnの値が小さくなるほど、分子同士の絡み合いが少なくなるため、得られる微多孔層の溶融張力も小さくなる傾向にある。したがって、ポリオレフィンのMw/Mnの値が7以下であることは、微多孔層(A)の溶融張力を低く制御し、より薄膜にすることができるため好ましい。また、微多孔層(A)のポリオレフィンのMw/Mnは、好ましくは1以上、例えば1.3以上、1.5以上、2.0以上、又は2.5以上であってよい。Mw/Mnが1以上であることにより、適度な分子の絡み合いが維持され、成膜時の安定性が良好となることがある。
ポリオレフィンとしては、具体的には、シャットダウン特性等の観点から、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
ポリプロピレンの立体規則性としては、限定されないが、例えば、アタクチック、アイソタクチック、又はシンジオタクチックのホモポリマー等が挙げられる。本開示に係るポリプロピレンは、好ましくはアイソタクチック、又はシンジオタクチックの高結晶性ホモポリマーである。
微多孔層(A)のポリプロピレンは、好ましくはホモポリマーであり、プロピレン以外の少量のコモノマー、例えばα-オレフィンコモノマーを共重合したコポリマー、例えばブロックポリマーであってもよい。ポリプロピレンに繰り返し単位として含まれるプロピレン構造の量は、限定されないが、例えば70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、又は99モル%以上であってよい。ポリプロピレンに含まれる、プロピレン構造以外のコモノマーに由来する繰り返し単位の量としては、限定されないが、例えば30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、又は1モル%以下であってよい。ポリプロピレンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
微多孔層(A)のポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は、微多孔層の強度等の観点から、300,000以上であることが好ましく、微多孔層の孔径を大きくし、目詰まりを回避する観点から、1,500,000以下であることが好ましい。ポリプロピレンとしてのポリプロピレンのMwは、より好ましくは、500,000以上、1,300,000以下、さらに好ましくは、600,000以上、1,100,000以下、より更に好ましくは、700,000以上、1,050,000以下、特に好ましくは、800,000以上、1,000,000以下である。
微多孔層(A)のポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)の上限値は、好ましくは7以下であり、より好ましくは、6.5以下、6以下、5.5以下、又は5以下である。ポリプロピレンのMw/Mnの値が小さくなるほど、得られる微多孔層の溶融張力も小さくなる傾向にある。したがって、ポリプロピレンのMw/Mnの値が7以下であることは、微多孔層(A)の溶融張力を30mN以下に制御するために好ましい。また、Mw/Mnは、好ましくは1以上、例えば1.3以上、1.5以上、2.0以上、又は2.5以上であってよい。Mw/Mnが1以上であることにより、適度な分子の絡み合いが維持され、成膜時の安定性が良好となることがある。なお、本開示のポリオレフィンの重量平均分子量、数平均分子量、Mw/Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグロフィー)測定により得られるポリスチレン換算の分子量である。
微多孔層(A)のポリプロピレンの密度は、好ましくは0.85g/cm以上、例えば0.88g/cm以上、0.89g/cm以上、又は0.90g/cm以上であってよい。ポリプロピレンの密度は、好ましくは1.1g/cm以下、例えば1.0g/cm以下、0.98g/cm以下、0.97g/cm以下、0.96g/cm以下、0.95g/cm以下、0.94g/cm以下、0.93g/cm以下、又は0.92g/cm以下であってよい。ポリオレフィンの密度は、ポリプロピレンの結晶性に関連し、ポリプロピレンの密度を0.85g/cm以上とすることで微多孔層の生産性が向上し、特に乾式法において有利である。
〈微多孔層(A)のメルトフローレート(MFR)〉
微多孔層(A)のメルトフローレート(MFR)(単層のMFR)の上限値は、より高強度の微多孔層(A)を得る観点から、4.0g/10分以下が好ましく、例えば3.0g/10分以下、2.0g/10分以下、1.5g/10分以下、又は1.1g/10分以下であってよい。微多孔層(A)のMFR(単層のMFR)の下限値は、微多孔層(A)の成形性等の観点から、限定されないが、例えば0.3g/10分以上、0.35g/10分以上、0.4g/10分以上、0.45g/10分以上、又は0.5g/10分以上であってよい。微多孔層(A)のMFRは、荷重2.16kg、及び温度230℃の条件下で測定する。
微多孔層(A)のMFRが4.0g/10分以下であることは、微多孔層(A)に含まれるポリオレフィンの分子量がある程度高いことを意味する。ポリオレフィンの分子量が高いことにより、結晶質同士を結合するタイ分子が多くなるため、高強度の微多孔層(A)が得られる傾向にある。微多孔層(A)のMFRが0.3g/10分以上であることにより、微多孔層(A)の溶融張力が低くなり過ぎず、高強度かつ薄膜の微多孔層がより得られ易い。
微多孔層(A)のポリプロピレンのMFRは、高強度の微多孔層(A)を得る観点から、荷重2.16kg、及び温度230℃の条件下で測定した際に、0.3~4.0g/10分であることが好ましい。ポリプロピレンのMFRの上限値は、より高強度の微多孔層を得る観点から、例えば、3.0g/10分以下、2.0g/10分以下、1.5g/10分以下、又は1.1g/10分以下であってよい。ポリプロピレンのMFRの下限値は、限定されないが、微多孔層(A)の成形性等の観点から、例えば0.3g/10分以上、0.35g/10分以上、0.4g/10分以上、又は0.45g/10分以上であってよい。
〈微多孔層(A)のペンタッド分率〉
微多孔層(A)のポリプロピレンのペンタッド分率の下限値は、低透気度の微多孔層を得る観点から、好ましくは94.0%以上、例えば、95.0%以上、96.0%以上、96.5%以上、97.0%以上、97.5%以上、98.0%以上、98.5%以上、又は99.0%以上であってよい。ポリプロピレンのペンタッド分率の上限値は、限定されないが、99.9%以下、99.8%以下、又は99.5%以下であってよい。ポリプロピレンのペンタッド分率は、13C-NMR(核磁気共鳴法)で測定する。
ポリプロピレンのペンタッド分率が94.0%以上であるとは、ポリプロピレンの結晶性が高いことを示す。延伸開孔法、特に乾式法で得られるセパレータは、結晶質同士の間の非晶質部分が延伸されることにより開孔するため、ポリプロピレンの結晶性が高いと、開孔性が良好となり、透気度を低く抑えることもできるため、電池の高出力化が可能となる。
〈微多孔層(A)の面積平均長孔径〉
微多孔層(A)のND-MD断面での面積平均長孔径(以下、単に「面積平均長孔径」ともいう。)は、後述する微多孔層(B)の面積平均長孔径と同一であるか、又はより大きい。本願明細書において、「ND」とは、微多孔層の厚み方向を示し、「MD」とは、微多孔層の成膜方向を示す。例えば、微多孔層を有するセパレータのMD方向は、ロールであれば長手方向である。「長孔径」とは、MD方向の孔径を意味する。また、微多孔層(A)及び/又は微多孔層(B)が二層以上ある場合は、各層の平均の面積平均長孔径値に基づいて、微多孔層(A)と微多孔層(B)の面積平均長孔径を比較する。
微多孔層(A)の面積平均長孔径が微多孔層(B)よりも大きい場合、微多孔層(A)が、微多孔層(B)よりも大孔径の微多孔層であることを意味する。微多孔層(A)の面積平均長孔径は、微多孔層(B)の、1.1倍以上5.0倍以下、1.2倍以上3倍以下であってもよい。大孔径の微多孔層(A)と小孔径の微多孔層(B)とを組み合わせることによって、高い透過性を有しつつ、高強度を有する蓄電デバイス用セパレータを提供することができる。
微多孔層(A)のND-MD断面での面積平均長孔径は、好ましくは100nm以上600nm以下である。微多孔層(A)の面積平均長孔径が100nm以上であることで、より高い透過性を有する蓄電デバイス用セパレータを提供することができ、600nm以下であることで、セパレータの強度を更に向上させることができる。微多孔層(A)のND-MD断面での面積平均長孔径は、より好ましくは120nm以上550nm以下、更に好ましくは130nm以上500nm以下、より更に好ましくは140nm以上450nm以下である。
面積平均長孔径は、セパレータのMD-ND断面の断面SEM観察を行い、得られた画像からMD方向に20μm×ND方向に3μmの範囲の画像解析により測定することができる。詳細の条件は実施例に示す。なお、断面SEM画像から平均孔径を測定する際には、数平均孔径、及び面積平均孔径を算出することができるが、数平均孔径は、非常に小さい孔も1つの孔と数えてしまい、セパレータの物性と十分な相関がとりにくい。そのため、よりセパレータの物性との相関が取れるよう、本願明細書では、平均孔径として面積平均孔径を用いる。
〈微多孔層(A)の気孔率〉
微多孔層(A)の気孔率は、セパレータの良好な透気度を得る観点から、20%以上が好ましく、セパレータの強度保持の観点から70%以下であることが好ましい。微多孔層(A)の気孔率は、より好ましくは、25%以上、65%以下、さらに好ましくは、30%以上、60%以下、特に好ましくは、35%以上、55%以下である。
〈微多孔層(A)の厚み〉
微多孔層(A)の厚みは、蓄電デバイスの高エネルギー密度化等の観点から、好ましくは10μm以下、例えば8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4.5μm以下、又は4μm以下であってよい。微多孔層(A)の厚みの下限値は、強度等の観点から、好ましくは1μm以上、例えば2μm以上、3μm以上、又は3.5μm以上であってよい。
〈微多孔層(A)の添加剤〉
ポリオレフィンを主成分とする微多孔層(A)は、ポリオレフィン以外に、エラストマー、結晶核剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤を必要に応じて更に含有してもよい。添加剤の量は、特に限定されないが、微多孔層(A)の合計質量を基準として、例えば、0.01質量%以上、0.1質量%以上又は1質量%以上、20質量%以下、10質量%以下又は7質量%以下であってよい。
〈微多孔層(B)〉
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(B)を有する。微多孔層(B)を形成する微多孔膜は、微多孔層(A)を形成する微多孔膜と同一、すなわち、化学的に同一の材料からなる、構造的に同一の微多孔層であってよい。蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(B)を一層のみ有していても、二層以上有していてもよい。微多孔層(B)もまたポリオレフィンを主成分とし、これによって、高温(130℃)保存後も良好な電池性能を維持することができる。本願明細書において、ポリオレフィンを「主成分とする」とは、当該微多孔層(B)の全質量を基準として、ポリオレフィンを50質量%以上含むことを意味する。微多孔層(B)中のポリオレフィンの含有量の下限は、セパレータの濡れ性、薄膜化、及びシャットダウン特性等の観点から、好ましくは55質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってもよい。微多孔層(B)中のポリオレフィンの含有量の上限は、限定されないが、例えば60質量%以下、70質量%以下、80質量%以下、90質量%以下、95質量%以下、98質量%以下、又は99質量%以下であってよく、100質量%であってもよい。
〈微多孔層(B)の材料〉
ポリオレフィンとは、炭素-炭素二重結合を有するモノマーを繰り返し単位として含むポリマーである。ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、限定されないが、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数2~10のモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等が挙げられる。ポリオレフィンは、例えば、ホモポリマー、コポリマー、又は多段重合ポリマー等であり、好ましくはホモポリマーである。
微多孔層(B)のポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、微多孔層の強度等の観点から、300,000以上が好ましく、微多孔層の孔径を大きくし目詰まりを回避して高出力を得る観点から、1,500,000以下が好ましい。ポリオレフィンのMwは、より好ましくは、500,000以上、1,300,000以下、さらに好ましくは、600,000以上、1,100,000以下、より更に好ましくは、700,000以上、1,000,000以下、特に好ましくは、800,000以上、960,000以下である。
微多孔層(B)のポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)の上限値は、好ましくは7以下、より好ましくは、6.5以下、6以下、5.5以下、又は5以下である。Mw/Mnの値が小さくなるほど、分子同士の絡み合いが少なくなるため、得られる微多孔層の溶融張力も小さくなる傾向にある。したがって、ポリオレフィンのMw/Mnの値が7以下であることは、微多孔層(B)の溶融張力を低く制御し、より薄膜にすることができるため好ましい。また、微多孔層(B)のポリオレフィンのMw/Mnは、好ましくは1以上、例えば1.3以上、1.5以上、2.0以上、又は2.5以上であってよい。Mw/Mnが1以上であることにより、適度な分子の絡み合いが維持され、成膜時の安定性が良好となることがある。
ポリオレフィンとしては、具体的には、シャットダウン特性等の観点から、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
微多孔層(B)のポリプロピレンの立体規則性としては、限定されないが、例えば、アタクチック、アイソタクチック、又はシンジオタクチックのホモポリマー等が挙げられる。本開示に係るポリプロピレンは、好ましくはアイソタクチック、又はシンジオタクチックの高結晶性ホモポリマーである。
微多孔層(B)のポリプロピレンは、好ましくはホモポリマーであり、プロピレン以外の少量のコモノマー、例えばα-オレフィンコモノマーを共重合したコポリマー、例えばブロックポリマーであってもよい。ポリプロピレンに繰り返し単位として含まれるプロピレン構造の量は、限定されないが、例えば70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、又は99モル%以上であってよい。ポリプロピレンに含まれる、プロピレン構造以外のコモノマーに由来する繰り返し単位の量としては、限定されないが、例えば30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、又は1モル%以下であってよい。ポリプロピレンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
微多孔層(B)のポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は、微多孔層の強度等の観点から、300,000以上であることが好ましく、微多孔層の孔径を大きくし、目詰まりを回避する観点から、1,500,000以下であることが好ましい。ポリプロピレンとしてのポリプロピレンのMwは、より好ましくは、500,000以上、1,300,000以下、さらに好ましくは、600,000以上、1,100,000以下、より更に好ましくは、700,000以上、1,050,000以下、特に好ましくは、800,000以上、1,000,000以下である。
微多孔層(B)のポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)の上限値は、好ましくは7以下であり、より好ましくは、6.5以下、6以下、5.5以下、又は5以下である。ポリプロピレンのMw/Mnの値が小さくなるほど、得られる微多孔層の溶融張力も小さくなる傾向にある。したがって、ポリプロピレンのMw/Mnの値が7以下であることは、微多孔層(B)の溶融張力を30mN以下に制御するために好ましい。また、Mw/Mnは、好ましくは1以上、例えば1.3以上、1.5以上、2.0以上、又は2.5以上であってよい。Mw/Mnが1以上であることにより、適度な分子の絡み合いが維持され、成膜時の安定性が良好となることがある。なお、本開示のポリオレフィンの重量平均分子量、数平均分子量、Mw/Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグロフィー)測定により得られるポリスチレン換算の分子量である。
微多孔層(B)のポリプロピレンの密度は、好ましくは0.85g/cm以上、例えば0.88g/cm以上、0.89g/cm以上、又は0.90g/cm以上であってよい。ポリプロピレンの密度は、好ましくは1.1g/cm以下、例えば1.0g/cm以下、0.98g/cm以下、0.97g/cm以下、0.96g/cm以下、0.95g/cm以下、0.94g/cm以下、0.93g/cm以下、又は0.92g/cm以下であってよい。ポリオレフィンの密度は、ポリプロピレンの結晶性に関連し、ポリプロピレンの密度を0.85g/cm以上とすることで微多孔層の生産性が向上し、特に乾式法において有利である。
微多孔層(B)はポリプロピレンを主成分とする限り、その他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン以外のポリオレフィン(「その他のポリオレフィン」ともいう。)が挙げられる。ポリオレフィンとは、炭素-炭素二重結合を有するモノマーを繰り返し単位として含むポリマーである。ポリプロピレン以外のポリオレフィンを構成するモノマーとしては、限定されないが、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数2又は4~10のモノマー、例えば、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等が挙げられる。ポリオレフィンは、例えば、ホモポリマー、コポリマー、又は多段重合ポリマー等であり、好ましくはホモポリマーである。その他のポリオレフィンとしては、具体的には、シャットダウン特性等の観点から、ポリエチレンが好ましい。
その他のポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、微多孔層の強度等の観点から、300,000以上が好ましく、微多孔層の孔径を大きくし目詰まりを回避して高出力を得る観点から、1,500,000以下が好ましい。ポリオレフィンのMwは、より好ましくは、500,000以上、1,300,000以下、さらに好ましくは、600,000以上、1,100,000以下、より更に好ましくは、700,000以上、1,000,000以下、特に好ましくは、800,000以上、960,000以下である。
その他のポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)の上限値は、好ましくは7以下、より好ましくは、6.5以下、6以下、5.5以下、又は5以下である。Mw/Mnの値が小さくなるほど、分子同士の絡み合いが少なくなるため、得られる微多孔層の溶融張力も小さくなる傾向にある。したがって、微多孔層(B)のポリオレフィンのMw/Mnの値が7以下であることは、微多孔層(B)の溶融張力を低く制御し、より薄膜にすることができるため好ましい。また、微多孔層(B)のポリオレフィンのMw/Mnは、好ましくは1以上、例えば1.3以上、1.5以上、2.0以上、又は2.5以上であってよい。Mw/Mnが1以上であることにより、適度な分子の絡み合いが維持され、成膜時の安定性が良好となることがある。
〈微多孔層(B)のメルトフローレート(MFR)〉
微多孔層(B)のメルトフローレート(MFR)(単層のMFR)の上限値は、より高強度の微多孔層(B)を得る観点から、4.0g/10分以下が好ましく、例えば3.0g/10分以下、2.0g/10分以下、1.5g/10分以下、1.4g/10分以下、1.3g/10分以下、1.2g/10分以下、又は1.1g/10分以下であってよい。微多孔層(B)のMFR(単層のMFR)の下限値は、微多孔層(B)の成形性等の観点から、限定されないが、例えば0.2g/10分以上、0.25g/10分以上、0.3g/10分以上、0.35g/10分以上、0.4g/10分以上、0.45g/10分以上、又は0.5g/10分以上であってよい。微多孔層(B)のMFRは、荷重2.16kg、及び温度230℃の条件下で測定する。
微多孔層(B)のMFRが4.0g/10分以下であることは、微多孔層(B)に含まれるポリオレフィンの分子量がある程度高いことを意味する。ポリオレフィンの分子量が高いことにより、結晶質同士を結合するタイ分子が多くなるため、高強度の微多孔層(B)が得られる傾向にある。微多孔層(B)のMFRが0.2g/10分以上であることにより、微多孔層(B)の溶融張力が低くなり過ぎず、高強度かつ薄膜の微多孔層がより得られ易い。
微多孔層(B)のポリプロピレンのMFRは、高強度の微多孔層(B)を得る観点から、荷重2.16kg、及び温度230℃の条件下で測定した際に、好ましくは0.2~4.0、より好ましくは0.2~1.5g/10分であることが好ましい。ポリプロピレンのMFRの上限値は、より高強度の微多孔層を得る観点から、例えば、1.4g/10分以下、1.3g/10分以下、1.2g/10分以下、又は1.1g/10分以下であってよい。ポリプロピレンのMFRの下限値は、限定されないが、微多孔層(B)の成形性等の観点から、例えば0.25g/10分以上、0.3g/10分以上、0.35g/10分以上、又は0.4g/10分以上であってよい。微多孔層(B)のMFRは、微多孔層(A)のMFRより低いことが好ましい。微多孔層(B)のMFRを微多孔層(A)のMFRより低くすることにより、得られたセパレータの微多孔層(A)の孔径を微多孔層(B)の孔径より大きく制御することができる。
〈微多孔層(B)のペンタッド分率〉
微多孔層(B)のポリプロピレンのペンタッド分率の下限値は、低透気度の微多孔層を得る観点から、好ましくは94.0%以上、例えば、95.0%以上、96.0%以上、96.5%以上、97.0%以上、97.5%以上、98.0%以上、98.5%以上、又は99.0%以上であってよい。ポリプロピレンのペンタッド分率の上限値は、限定されないが、99.9%以下、99.8%以下、又は99.5%以下であってよい。ポリプロピレンのペンタッド分率は、13C-NMR(核磁気共鳴法)で測定する。
ポリプロピレンのペンタッド分率が94.0%以上であるとは、ポリプロピレンの結晶性が高いことを示す。延伸開孔法、特に乾式法で得られるセパレータは、結晶質同士の間の非晶質部分が延伸されることにより開孔するため、ポリプロピレンの結晶性が高いと、開孔性が良好となり、透気度を低く抑えることもできるため、電池の高出力化が可能となる。
〈微多孔層(B)の面積平均長孔径〉
微多孔層(B)のND-MD断面での面積平均長孔径(以下、単に「面積平均長孔径」ともいう。)は、微多孔層(A)の面積平均長孔径と同一であるか、又はより小さい。微多孔層(A)の面積平均長孔径との関係について詳細は、〈微多孔層(A)の面積平均長孔径〉の欄を参照されたい。
微多孔層(B)のND-MD断面での面積平均長孔径は、好ましくは100nm以上600nm以下である。微多孔層(B)の面積平均長孔径が100nm以上であることで、より高い透過性を有する蓄電デバイス用セパレータを提供することができ、600nm以下であることで、セパレータの強度を更に向上させることができる。微多孔層(B)のND-MD断面での面積平均長孔径は、より好ましくは120nm以上550nm以下、更に好ましくは130nm以上500nm以下、より更に好ましくは140nm以上450nm以下である。
〈微多孔層(B)の気孔率〉
微多孔層(B)の気孔率は、セパレータの良好な透気度を得る観点から、20%以上が好ましく、セパレータの強度保持の観点から70%以下であることが好ましい。微多孔層(B)の気孔率は、より好ましくは、25%以上、65%以下、さらに好ましくは、30%以上、60%以下、特に好ましくは、35%以上、55%以下である。
〈微多孔層(B)の厚み〉
本開示に係る微多孔層(B)の厚みは、蓄電デバイスの高エネルギー密度化等の観点から、好ましくは10μm以下、例えば8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4.5μm以下、又は4μm以下であってよい。微多孔層(B)の厚みの下限値は、強度等の観点から、好ましくは1μm以上、例えば2μm以上、3μm以上、又は3.5μm以上であってよい。
〈微多孔層(B)の添加剤〉
ポリプロピレンを主成分とする微多孔層(B)は、ポリプロピレン以外に、エラストマー、結晶核剤、酸化防止剤、フィラーなどの添加剤を必要に応じて更に含有してもよい。添加剤の量は、特に限定されないが、微多孔層(B)の合計質量を基準として、例えば、0.01質量%以上、0.1質量%以上又は1質量%以上、10質量%以下、7質量%以下又は5質量%以下であってよい。
〈境界の開孔〉
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、セパレータ基材のMD-ND断面において、微多孔層(A)と微多孔層(B)との境界に開孔が存在する。そして、開孔は、微多孔層(A)の面積平均長孔径の3倍以上の最大長孔径を有する。開孔の最大長孔径は、微多孔層(A)の面積平均長孔径の、好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上である。開孔の最大長孔径の上限値は、限定されないが、好ましくは30倍以下、より好ましくは25倍以下、更に好ましくは20倍以下である。微多孔層(A)と微多孔層(B)の面積平均長孔径が同一である場合、いずれの微多孔膜の面積平均長孔径を基準としてもよい。
本願明細書において、開孔が「境界に存在する」とは、セパレータ基材の任意のMD-ND断面を、後述する実施例の「開孔の長孔径の測定」に記載の方法で、境界をMD方向に500μmの長さに渡って観察したとき、微多孔層(A)と微多孔層(B)との間に少なくとも一つの空隙が存在することを意味する。「最大長孔径」とは、観察される長孔径の中で最も大きい長孔径を意味する。セパレータ基材が三層以上の積層構造を有する場合、すなわち、境界が二つ以上存在する場合には、「最大長孔径」とは、全ての境界について実施例に記載の方法で観察し、観察される長孔径の中で最も大きい長孔径を意味する。
理論に限定されないが、本開示の蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(A)と微多孔層(B)との境界で、開孔が膜のMD方向に延在するため、ND方向に電流が流れる速度が遅くなり、高い耐電圧性を有すると考えられる。また、本開示の蓄電デバイス用セパレータは、セパレータにかかる応力が境界の開孔の空間へも働いて分散するため、高い強度を有すると考えられる。例えば、突刺強度試験の場合、セパレータに針を刺した際に、針による応力が、樹脂が裂ける方向だけでなく境界の開孔の空間への方向にも働いて、応力を分散させることができ、突刺強度が改善されると考えられる。境界における開孔の長孔径は、MD方向に配向していることが好ましく、これによって、耐電圧性向上、強度向上の効果がより顕著になる。開孔の最大長孔径が3倍以上であれば、電流がND方向だけでなく、MD方向にも流れやすくなり、耐電圧性向上につながる。開孔の最大長孔径が30倍以下であれば、曲路率が高すぎないので低抵抗を維持することができ、耐電圧性とのバランスが良好である。
開孔は、境界に少なくとも一つ存在すればよく、複数存在することが好ましい。開口は、その長孔径の合計が、境界の長さの5%以上であることが好ましく、より好ましくは6%以上、更に好ましくは7%、より更に好ましくは8%以上である。開孔の長孔径の合計の上限値は、限定されないが、好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下、より更に好ましくは15%以下である。5%以上であれば、耐電圧性と突刺強度をより向上させることができる。また、25%以下であれば、電池組み立て時にセパレータに張力をかけた際、隣接する層から剥離しにくい。長孔径の合計の割合は、セパレータ基材が三層以上の積層構造を有する場合、すなわち、境界が二つ以上存在する場合には、最大長孔径を有する境界について測定・算出した値を採用する。
〈各層の面積平均長孔径〉
セパレータ基材を構成する各層のND-MD断面での面積平均長孔径が、それぞれ100nm以上600nm以下であることが好ましい。各層の面積平均長孔径が100μm以上であれば、抵抗をより低くし、電池運転中の堆積物による目詰まりを防ぐことができる。また、500μm以下であれば、十分な強度を有し、抵抗とのバランスが良好なセパレータ基材を得ることができる。
〈セパレータ基材の層構造〉
蓄電デバイス用セパレータの基材(本願明細書において、単に「セパレータ基材」ともいう。)は、微多孔層(A)と微多孔層(B)とを少なくとも一層ずつ有する。セパレータ基材は、微多孔層(A)および/または微多孔層(B)を2層以上有する3層以上の多層構造であってもよい。例えば、微多孔層(A)/微多孔層(B)の二層構造、微多孔層(A)/微多孔層(B)/微多孔層(A)の三層構造等が挙げられる。また、セパレータ基材は、微多孔層(A)及び微多孔層(B)以外の層を有していてもよい。例えば、微多孔層(A)及び微多孔層(B)以外の層としては、例えば、他の微多孔層(C)、無機物を含む層、及び耐熱樹脂を含む層等を挙げることができる。
3層以上であると、各層の境界に開孔を多く形成しやすく、開孔の含有率が向上し、これによって耐電圧性と強度がさらに向上すると考えられる。ただし、3層以上である場合、必ずしも全ての層の境界に開孔が存在する必要はなく、いずれか一つの境界に少なくとも一つの開孔があればよい。例えば、A/B/Cの三層構造である場合、A/Bの境界にのみ開孔を有し、B/Cの境界には開孔を有しなくともよい。
〈セパレータ基材の厚み〉
セパレータ基材の厚みの上限値は、蓄電デバイスの高エネルギー密度化等の観点から、好ましくは16μm以下、より好ましくは14μm以下、更に好ましくは12μm以下であってよい。セパレータ基材の厚みの下限値は、強度等の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは3μm以上である。1μm以上であれば、強度をより高めることができ、16μm以下であれば、蓄電デバイスのエネルギー密度を高めることができる。
〈セパレータ基材の透気度(透気抵抗度)〉
セパレータ基材の透気度の上限値は、セパレータ基材の厚みを16μmに換算した場合に、好ましくは290秒/100cm以下であり、例えば280秒/100cm以下、270秒/100cm以下、260秒/100cm以下、又は250秒/100cm以下であってよい。セパレータ基材の透気度の下限値は、限定されないが、セパレータ基材の厚みを16μmに換算した場合に、例えば50秒/100cm以上、60秒/100cm以上、又は70秒/100cm以上であってよい。
〈セパレータ基材の気孔率〉
セパレータ基材の気孔率は、蓄電デバイス中での目詰まり回避の観点、およびセパレータの良好な透気度を得る観点から、20%以上が好ましく、セパレータの強度保持の観点から70%以下であることが好ましい。セパレータ基材の気孔率は、より好ましくは、25%以上、65%以下、さらに好ましくは、30%以上、60%以下、特に好ましくは、35%以上、55%以下である。
〈セパレータ基材の突刺強度〉
セパレータ基材の突刺強度の下限値は、セパレータ基材の厚みを16μmに換算した場合に、好ましくは230gf以上、より好ましくは、240gf以上、250gf以上、260gf以上、又は280gf以上であり、更に好ましくは300gf以上であり、特に好ましくは320gf以上である。セパレータ基材の突刺強度の上限値は、限定されないが、セパレータ基材の厚みを16μmに換算した場合に、好ましくは550gf以下、例えば500gf以下、又は480gf以下であってよい。
〈セパレータ基材の熱収縮率〉
セパレータ基材は、150℃で1時間熱処理した後の幅方向(TD方向)の熱収縮率が、-1.0%以上3.0%以下であることが好ましい。すなわち、セパレータ基材は、高温においても、幅方向の熱収縮が非常に小さいことを意味する。当該熱収縮率が3.0%以下であることで、高温での短絡を効果的に抑制できる。当該熱収縮率が-1.0%以上である理由は、熱収縮率の測定時、基材が幅方向に少し膨らんで、熱収縮率が0%より小さくマイナスの値になることがあるからである。当該熱収縮率は、0%以上、又は0%より大きくてもよい。当該熱収縮率が-1.0%以上3.0%以下であるセパレータ基材を製造する方法としては、例えば、一軸延伸の乾式法で製造する方法が挙げられる。湿式セパレータでは、一般的に、幅方向の熱収縮が非常に大きくなるのに対して、内外層の孔径比ではなく、一軸延伸の乾式セパレータでは、当該熱収縮率が-1.0%以上3.0%以下であるセパレータ基材を得られやすい。
《蓄電デバイス用セパレータの製造方法》
蓄電デバイス用セパレータの製造方法は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物(以下、「ポリプロピレン系樹脂組成物」ともいう。)を溶融押出して樹脂フィルムを得る溶融押出工程、及び得られた樹脂フィルムを開孔して多孔化する孔形成工程を含む。微多孔層の製造方法は、孔形成工程に溶剤を使用しない乾式法と、溶剤を使用する湿式法とに大別される。
乾式法としては、ポリプロピレン系樹脂組成物を溶融混練して押出した後、熱処理と延伸によってポリプロピレン結晶界面を剥離させる方法、ポリプロピレン系樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してフィルム状に成形した後、延伸によってポリプロピレンと無機充填材との界面を剥離させる方法などが挙げられる。
湿式法としては、ポリプロピレン系樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してフィルム状に成形し、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出する方法、ポリプロピレン系樹脂組成物の溶解後、ポリプロピレンに対する貧溶媒に浸漬させてポリプロピレンを凝固させると同時に溶剤を除去する方法などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融混練には、単軸押出機、及び二軸押出機を使用することができ、これら以外にも、例えばニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、及びバンバリーミキサー等を使用することもできる。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、微多孔層の製造方法に応じて、又は目的の微多孔層の物性に応じて、任意に、ポリプロピレン以外の樹脂、及び添加剤等を含有してもよい。添加剤としては、例えば、孔形成材、フッ素系流動改質材、ワックス、結晶核材、酸化防止剤、脂肪族カルボン酸金属塩等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、及び着色顔料等が挙げられる。孔形成材としては、可塑剤、無機充填材又はそれらの組み合わせが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
無機充填材としては、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。
セパレータ基材の製造方法としては、熱処理と延伸によってポリプロピレン結晶界面を剥離させる乾式ラメラ晶開孔プロセスが好ましい。ここで、微多孔層(A)と微多孔層(B)を有するセパレータ基材の製造方法としては、次の方法(ア)及び(イ)の少なくとも一方を用いることが好ましい:
(i)微多孔層(A)と微多孔層(B)を共押出成膜し、アニール、冷延伸、熱延伸、熱緩和工程に供する、共押出成膜によるセパレータ基材の製造方法;及び
(ii)微多孔層(A)と微多孔層(B)をそれぞれ別々に押出成膜し、ラミネートにより貼り合わせて、その後、アニール、冷延伸、熱延伸、熱緩和工程に供する、ラミネートによるセパレータ基材の製造方法。
セパレータ基材のMD-ND断面において、微多孔層(A)と微多孔層(B)との境界に、微多孔層(A)の面積平均長孔径の3倍以上の長孔径を有する開孔を形成するためには、共押出プロセス(i)及びラミネートプロセス(ii)のうち、ラミネートプロセス(ii)が好ましい。例えば、ラミネータの圧着ロールの温度を下げる(比較例として温度の高い条件を記載)、ラミネータの圧着ロールの圧力を下げる、ラミネータのライン速度を上げる、樹脂組成や成膜条件を変更して樹脂の非晶部を減らす、といった方法が挙げられる。
セパレータ基材の製造方法は、押出成膜後にアニール工程を含んでもよい。アニール工程を行うことにより、微多孔層(A)及び(B)の結晶構造が成長し、開孔性が改善する傾向にある。特定の温度で、長時間アニールを付与することにより、微多孔層(A)及び(B)ともに良好な面積平均長孔径を得ることが可能となる傾向にある。その理由は、結晶構造が乱れることなく結晶が成長し、高い開孔性が得られるからであると考えられる。アニール工程では、好ましくは、115℃以上、160℃以下の温度範囲で、好ましくは20分以上、より好ましくは60分以上アニール処理をすることが、良好な面積平均長孔径を得て、蓄電デバイスの目詰まりを防ぐ観点から好ましい。
セパレータ基材の製造方法は、アニール工程の後に、孔形成工程中、又は孔形成工程の前若しくは後に、延伸工程を含んでもよい。延伸処理としては、一軸延伸、又は二軸延伸のいずれも用いることができる。限定されないが、乾式法を使用する際の製造コスト等の観点では、一軸延伸が好ましい。得られるセパレータ基材の強度等を向上させる観点では、二軸延伸が好ましい。二軸延伸としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点からは同時二軸延伸が好ましい。また、面配向の制御容易性の観点からは遂次二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向するため、裂け難く、高い突刺強度を有するセパレータ基材が得られる傾向にある。
セパレータ基材の熱収縮を抑制するために、延伸工程後又は孔形成工程後に熱固定を目的として熱処理工程を行ってもよい。熱処理工程は、物性の調整を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作を含んでもよい。延伸操作を行った後に緩和操作を行ってもよい。これらの熱処理工程は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。
得られたセパレータ基材は、それ自体をそのまま蓄電デバイス用セパレータとして使用することができる。任意に、セパレータ基材の片面又は両面に、塗工層の更なる層を提供してもよい。
《蓄電デバイス》
本開示の蓄電デバイスは、本開示の蓄電デバイス用セパレータを備える。本開示の蓄電デバイスは正極と負極とを有し、蓄電デバイス用セパレータは、正極と負極との間に積層されることが好ましい。セパレータ基材の微多孔層(A)は、負極側に対向して配置されることが好ましい。蓄電デバイス中でのセパレータの目詰まりは、負極表面での堆積物に起因することがほとんどであるため、比較的大孔径である微多孔層(A)を負極側に対向させることにより、セパレータの目詰まりを効果的に低減することができる。
蓄電デバイスとしては、限定されないが、例えば、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ナトリウム二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウム二次電池、カルシウムイオン二次電池、アルミニウム二次電池、アルミニウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスフロー電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、及び亜鉛空気電池等が挙げられる。これらの中でも、実用性の観点から、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、又はリチウムイオンキャパシタが好ましく、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
蓄電デバイスは、例えば、正極と負極とを、上記で説明されたセパレータを介して重ね合わせて、必要に応じて捲回して、積層電極体又は捲回電極体を形成した後、これを外装体に装填し、正負極と外装体の正負極端子とをリード体などを介して接続し、さらに、鎖状又は環状カーボネート等の非水溶媒とリチウム塩等の電解質を含む非水電解液を外装体内に注入した後に外装体を封止して作製することができる。
《測定及び評価方法》
[メルトフローレート(MFR)の測定]
微多孔層(A)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した(単位はg/10分である)。ポリプロピレンのMFRは、JIS K 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した。ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠し、温度190℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した。
[GPC(ゲルパーミエーションクロマトグロフィー)によるMw及びMnの測定]
アジレント PL-GPC220を用い、標準ポリスチレンを以下の条件で測定して較正曲線を作成した。試料のポリマーについても同様の条件でクロマトグラフを測定し、較正曲線に基づいて、下記条件によりポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)を算出した。
カラム :TSKgel GMHHR-H(20) HT(7.8mmI.D.×30 cm)2本
移動相 :1,2,4-トリクロロベンゼン
検出器 :RI
カラム温度:160℃
試料濃度 :1mg/ml
較正曲線 :ポリスチレン
[溶融張力の測定]
東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で微多孔膜の溶融張力(mN)を測定した。
・キャピラリー:直径1.0mm、長さ20mm
・シリンダー押出速度:2mm/分
・引き取り速度:60m/分
・温度:230℃
[ペンタッド分率の測定]
ポリプロピレンのペンタッド分率は、高分子分析ハンドブック(日本分析化学会編集)の記載に基づいて帰属した13C-NMRスペクトルから、ピーク高さ法によって算出した。13C-NMRスペクトルの測定は、JEOL-ECZ500を使用して、ポリプロピレンペレットをo-ジクロロベンゼン-dに溶解させ、測定温度145℃、積算回数25000回の条件で行った。
[厚み(μm)の測定]
ミツトヨ社製のデジマチックインジケータIDC112を用いて、室温23±2℃で、セパレータ基材の厚み(μm)を測定した。各微多孔層の厚みは、後述する面積平均長孔径の評価方法で取得した断面SEMによる画像データから算出した。
[気孔率(%)の測定]
10cm×10cm角の寸法を有する試料をセパレータ又は微多孔層から切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらと密度(g/cm3)より、次式を用いて気孔率を計算した。
気孔率(%)=(体積-質量/密度)/体積×100
[透気度(秒/100cm、厚み16μm換算)]
JIS P-8117に準拠したガーレー式透気度計を用いて、セパレータ基材の透気抵抗度(秒/100cm)を測定し、厚みで除した後16をかけることにより、厚み16μm換算の透気度を算出した。
[130℃熱処理後透気度(秒/100cm、厚み16μm換算)]
セパレータ基材をMD/TDそれぞれ100mmの方形に切り出して得たサンプルを、130℃に加熱してある熱風乾燥機(ヤマト科学社製、DF1032)に入れ、常圧、大気中で熱処理した。30分後に熱風乾燥機よりサンプルを取り出し、室温で10分間放冷し、その後、JIS P-8117に準拠したガーレー式透気度計を用いて、セパレータ基材の透気抵抗度(秒/100cm)を測定し、厚みで除した後16をかけることにより、130℃熱処理後透気度(秒/100cm、厚み16μm換算)を算出した。
[TD熱収縮率(%)]
セパレータ基材をMD/TDそれぞれ50mmの方形に切り出して得たサンプルを、150℃に加熱してある熱風乾燥機(ヤマト科学社製、DF1032)に入れ、常圧、大気中で熱処理した。1時間後に熱風乾燥機よりサンプルを取り出し、室温で10分間放冷し、その後、寸法収縮率を求めた。サンプルは、乾燥機の内壁等に付着しないように、かつサンプル同士が融着しないように、コピー紙等の上に乗せた。
熱収縮率(%):(加熱前の寸法(mm)-加熱後の寸法(mm))/(加熱前の寸法(mm))×100
[突刺強度(gf、厚み16μm換算)]
先端が半径0.5mmの半球状である針を用意し、直径(dia.)11mmの開口部を有するプレート2つの間にセパレータを挟み、針、セパレータ及びプレートをセットした。株式会社イマダ製「MX2-50N」を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、セパレータ保持プレートの開口部直径11mm及び突刺速度25mm/分の条件下で突刺試験を行った。針とセパレータを接触させ、最大突刺荷重(すなわち、突刺強度(gf))を測定した。得られた突刺強度を厚みで除した後16をかけることにより、厚み16μm換算の突刺強度を算出した。
[耐電圧試験(kV、厚み16μm換算)]
直径5mmのアルミニウム製電極でセパレータを挟んで荷重をかけ、これを菊水電子工業製の耐電圧測定機に繋いで測定を実施した。測定条件は、交流電圧(60Hz)を25V/secの速度で高めていき、0.2mAの電流が流れて短絡した電圧値を微多孔膜の耐電圧測定値とする。この操作で10回測定し、平均値を耐電圧とした。得られた耐電圧を厚みで除した後16をかけることにより、厚み16μm換算の耐電圧を算出した。
[面積平均長孔径の評価]
面積平均長孔径は断面SEM観察での画像解析により測定を行った。前処理として、セパレータにルテニウム染色を行い、凍結割断により、断面はMD-ND断面試料を作製した。上記断面試料を導電性接着剤(カーボン系)により断面観察用SEM試料台に固定、乾燥した。乾燥後、導電処理としてオスミウムコーター(HPC-30W、株式会社真空デバイス製)を用いて、印加電圧調整つまみ設定4.5、放電時間0.5秒の条件でオスミウムコーティングを実施し、検鏡試料とした。次に、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 S-4800)を用い、断面はMD-ND断面の任意の25点を加速電圧1kV、検出信号LA10、作動距離5mm、倍率5000倍の条件で観察した。
観察画像を、画像処理ソフトImageJを使い、Otsu法を用いて2値化処理し、樹脂部と孔部を分け、孔部の平均長径を算出した。この際、撮影範囲と撮影範囲外に跨って存在している微小孔部、及び孔面積が0.001μm以下の孔については、測定対象から除外した。平均径は、各孔の面積から、面積平均により算出した。
[開孔の最大長孔径の測定、及び長孔径の合計が占める割合の算出]
上記面積平均長孔径の評価に従い、MD方向に20μm×ND方向に3μm(境界を含む範囲)の範囲で25枚(MD方向に20μm×25枚、合計でMD方向に500μmの長さ分)観察し、境界の開孔の最大長孔径(MD方向の長さ、μm)を測定した。また、当該500μmの観察範囲において観察される全ての開孔の長孔径を合計し、当該合計値が500μm当たりに占める割合(%)を算出した。なお、観察範囲と観察範囲外に跨って存在している開孔は、測定対象から除外した。
《実施例1》
[セパレータ基材の作製]
ポリオレフィン樹脂として、高分子量のポリプロピレン樹脂(PP、MFR(230℃)=0.5g/10分、密度=0.91g/cm)を、2.5インチの押出機で溶融し、単層Tダイへとギアポンプを使って供給した。Tダイの温度は230℃に設定し、溶融したポリマーをTダイから吐出後、吹込空気によって吐出樹脂を急冷しながら、ロール速度25m/minでロールに巻き取ることで約6μm厚みの微多孔膜(X)を得た。ここで、TダイのTD方向のリップ幅は500mm、Tダイのリップ間距離(リップクリアランス)は、2.4mmに設定し、3.8kg/hの吐出量で吐出した。
次いで、得られた微多孔膜(X)を3枚重ね合わせ、熱圧着ラミネータを用いて130℃で、6m/minで熱圧着処理を施すことにより、三層構造の前駆体を得た。次いで、得られた前駆体を乾燥機に投入し、120℃で、1時間アニール処理を実施した。その後、アニールされた前駆体を室温にて8%冷間延伸を行い、延伸後の膜を収縮させることなく125℃のオーブン中に投入し、140%まで熱間延伸を行い、その後、15%緩和させることにより、微多孔膜(X)/微多孔膜(X)/微多孔膜(X)(PP/PP/PP)から成る三層構造を有するセパレータ基材を得た。得られたセパレータの構造、物性を表1に示す。本実施例では、微多孔層(A)と微多孔層(B)は、同一の微多孔膜(X)から形成されるため、微多孔層(A)と微多孔層(B)の面積平均長孔径は実質的に同一であるが、「より大孔径の層の面積平均孔径」は、外側に位置する微多孔膜(X)の値を示す。「境界の開孔の最大長孔径(a)」は、2つある境界を両方観測し、観測された全ての開孔のうち最も大きい開孔の長孔径を示す。また、「境界の開孔の長孔径の合計」は、当該最も大きい開孔が観測された境界における、全ての開孔の長孔径の合計である。図1は、実施例1におけるセパレータ基材のMD-ND断面のSEM画像である。破線で示す位置に、微多孔層(A)と微多孔層(B)の境界(1)、破線丸枠で示す位置に、境界にある開孔(2)を確認することができる。
《実施例2》
ロール速度を17m/minに変更したことと、得られた微多孔膜A’を2枚重ね合わせて二層構造の前駆体を得たこと以外は実施例1と同じ方法に従って、二層構造を有するセパレータを得て評価した。本実施例では、微多孔層(A)と微多孔層(B)は、同一の微多孔膜(X)から形成されるため、微多孔層(A)と微多孔層(B)の面積平均長孔径は実質的に同一である。「より大孔径の層の面積平均孔径」は、いずれの微多孔膜(X)の値を測定してもよい。
《実施例3》
ポリオレフィン樹脂として、ポリエチレン樹脂(PE、MFR(190℃)=0.38g/10分、密度=0.96g/cm)を2.5インチの押出機で溶融し、単層Tダイへとギアポンプを使って供給した。Tダイの温度は210℃に設定し、溶融したポリマーをTダイから吐出後、吹込空気によって吐出樹脂を急冷しながら、ロール速度25m/minでロールに巻き取ることで約6μm厚みの微多孔膜(Y)を得た。ここで、TダイのTD方向のリップ幅は500mm、Tダイのリップ間距離(リップクリアランス)は、2.4mmに設定し、3.8kg/hの吐出量で吐出した。
次いで、実施例1と同じ方法により得られた微多孔膜(X)、および微多孔膜(Y)を、微多孔膜(X)/微多孔膜(Y)/微多孔膜(X)となるように、熱圧着ラミネータを用いて120℃で熱圧着したこと以外は実施例1と同じ方法に従って、セパレータを得て評価した。本実施例では、微多孔膜(X)の方が、微多孔膜(Y)よりも面積平均長孔径が大きい。そのため、微多孔膜(X)が微多孔層(A)、すなわち「より大孔径の層」に相当し、微多孔膜(Y)が、微多孔層(B)に相当する。「境界開孔の最大長孔径(a)」は、2つある境界を両方観測し、観測された全ての開孔のうち最も大きい開孔の長孔径を示す。また、「境界の開孔の長孔径の合計」は、当該最も大きい開孔が観測された境界における、全ての開孔の長孔径の合計である。
《実施例4》
熱間延伸倍率を125%に変更したこと以外は実施例1と同じ方法に従ってセパレータを得て評価した。
《実施例5》
ロール速度を19m/minに変更したこと以外は実施例1と同じ方法に従ってセパレータを得て評価した。
《比較例1》
ロール速度を14m/minに変更したことと、6kg/hの吐出量に変更し、得られた微多孔膜(X)を熱圧着ラミネートせずに単層のまま用い、アニール処理を実施したこと以外は実施例1と同じ方法に従って、セパレータを得て評価した。
《比較例2》
熱圧着ラミネータを用いて133℃で熱圧着したこと以外は実施例1と同じ方法に従ってセパレータを得て評価した。境界に開孔は観察されなかった。
《比較例3》
単層Tダイの代わりに二種三層の共押出Tダイを用いて、微多孔膜(X)/微多孔膜(Y)/微多孔膜(X)の三層構造の前駆体を得て、その後熱圧着ラミネートを行わずにアニール処理を実施したこと以外は実施例1と同じ方法に従ってセパレータを得て評価した。境界に開孔は観察されなかった。
Figure 2022146342000002
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、蓄電デバイス、例えばリチウムイオン二次電池等のセパレータとして好適に利用することができる。
1 境界
2 開孔

Claims (7)

  1. ポリオレフィンを主成分とする微多孔層(A)と、前記微多孔層(A)上に積層されたポリオレフィンを主成分とする微多孔層(B)とを含む、2層以上の積層構造を有するセパレータ基材を備える、蓄電デバイス用セパレータであって、
    前記セパレータ基材のMD-ND断面において、前記微多孔層(A)の面積平均長孔径は、前記微多孔層(B)の面積平均長孔径と同一又はより大きく、
    前記セパレータ基材のMD-ND断面において、前記微多孔層(A)と前記微多孔層(B)との境界に開孔が存在し、前記開孔は、前記微多孔層(A)の面積平均長孔径の3倍以上の最大長孔径を有する、蓄電デバイス用セパレータ。
  2. 前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンである、請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  3. 前記セパレータ基材は、前記境界に存在する前記開孔の長孔径の合計が、前記境界の長さの5%以上である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  4. 前記セパレータ基材は、3層以上の積層構造を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  5. 前記セパレータ基材のMD-ND断面における各層の面積平均長孔径が100nm以上600nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  6. 前記セパレータ基材は、1μm以上16μm以下の厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  7. 正極、負極、及び請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える、蓄電デバイス。
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