JP2022051522A - 蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイス - Google Patents

蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高強度かつ蓄電デバイス内での目詰まりを抑制することができる多層構造の蓄電デバイス用セパレータを提供することを目的とする。【解決手段】ポリオレフィン(A)を主成分とする微多孔層(X)と、ポリオレフィン(B)を主成分とする微多孔層(Y)とを有する蓄電デバイス用セパレータが提供され、微多孔層(X)の荷重2.16kg及び温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が、0.9g/10min以下であり、走査型電子顕微鏡(SEM)による微多孔層(X)及び微多孔層(Y)のND-MD断面観察において、微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径が、100nm以上、400nm以下であり、かつ微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径は、微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径より大きい。【選択図】なし

Description

本発明は、蓄電デバイス用セパレータ等に関する。
微多孔膜、特にポリオレフィン系微多孔膜は、精密濾過膜、電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ、燃料電池用材料等の多くの技術分野で使用されており、特にリチウムイオン電池に代表される蓄電デバイス用セパレータとして使用されている。リチウムイオン電池は、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ等の小型電子機器用途のほか、ハイブリッド自動車、及びプラグインハイブリッド自動車を含む電気自動車等、様々な用途へ応用されている。
近年、高エネルギー容量、高エネルギー密度、かつ高い出力特性を有するリチウムイオン電池が求められ、それに伴い、薄膜でありかつ高強度(例えば、高突刺強度)なセパレータへの需要が高まっている。
例えば、特許文献1は、微多孔性フィルムの剛性、及び一定の厚みでの製品不良率の低減の観点から、ポリプロピレン樹脂(X)5~30重量%と、ポリプロピレン樹脂(Y)95~70重量%とを含む微多孔性フィルム用ポリプロピレン樹脂組成物を記載する。特許文献1に記載のポリプロピレン樹脂(X)は、特定のメルトフローレート(MFR)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による特定の分子量分布(Mw/Mn)、及び長鎖分岐構造を有する。特許文献1に記載のポリプロピレン樹脂(Y)は、特定のMFRを有し、且つポリプロピレン樹脂(X)を除く。
特許文献2には、微多孔膜の電気化学的安定性、高いメルトダウン温度、高い電解質親和性、及び低い水分保持性の改善されたバランスの観点から、次の3つの層(a)~(c)を有する微多孔膜が記述されている:
(a)6.0×10以上の重量平均分子量(Mw)を有するアイソタクチックポリプロピレン40.0~85.0重量%を含有する第一の層と、
(b)ポリオレフィンを含有する第二の層と、
(c)6.0×10以上のMwを有するアイソタクチックポリプロピレン40.0~85.0重量%を含有する第三の層。
特許文献3は、融点TmAを有する第1の樹脂組成物を含む第1の微多孔性フィルムと、前記融点TmAよりも低い融点TmBを有する第2の樹脂組成物を含む第2の微多孔性フィルムと、を備え、伸長粘度が、18000~40000Pa・sであり、せん断粘度が、5000~10000Pa・sである、積層微多孔性フィルムを記載する。
特許文献4は、分子量が5万以下の成分量が25~60重量%、分子量が70万以上の成分量が19~30重量%、重量平均分子量が35万~50万、かつ溶融張力が1.1~3.2gであるプロピレン系樹脂からなる、プロピレン系樹脂微孔フィルムを開示している。
特許文献5は、極限粘度[η]が1dl/g以上7dl/g未満であり、メソペンタッド分率が94.0~99.5%の範囲であり、昇温時の100℃までの溶出積分量が10%以下であり、融点が153~167℃であり、溶出温度-溶出量曲線において、最大ピークのピークトップ温度が105~130℃に存在し、該ピークの半値幅が7.0℃以下である、プロピレン単独重合体を必須成分とする、微多孔膜形成用ポリプロピレン樹脂組成物を記載する。
特開2018-030992号公報 特表2013-517152号公報 特開2016-022676号公報 特開2012-092286号公報 国際公開第2010/079784号
微多孔膜に高分子量のポリオレフィンを使用することで、高強度の微多孔膜を提供できることが知られている。一方、リチウムイオン二次電池の安全性の観点から、リチウムイオン二次電池用セパレータとして、少なくとも1つのシャットダウン層を有する多層構造型ポリオレフィン微多孔膜が、従来よりも求められている。
しかしながら、微多孔膜の構成材料として高分子量のポリオレフィンを用いた場合、成膜性及び延伸時の開孔性が悪化するため、得られる微多孔膜の孔径が小さくなり、リチウムイオン二次電池内でセパレータとして用いた場合、堆積物による目詰まりが発生し易いという課題がある。
特に、多層構造型ポリオレフィン微多孔膜を含むセパレータの場合、電池特性の観点からセパレータ総厚が制限されるため、多層構造型ポリオレフィン微多孔膜の各層を薄くする必要がある。多層構造における総厚と各層の厚みの制約下、高分子量のポリオレフィンを用いて形成された微多孔層の孔径は更に小さくなり、堆積物による目詰まりは顕著となる。
例えば、上記に挙げた特許文献3では、高分子量のポリオレフィンを用いて多層構造型セパレータを作製しており、当該セパレータは、高分子量のポリオレフィンを用いて形成された微多孔層の孔径が小さく、リチウムイオン二次電池内で目詰まりし易い。
したがって、本発明は、高強度かつ蓄電デバイス内での目詰まりを抑制することができる多層構造の蓄電デバイス用セパレータを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のメルトフローレート(MFR)を有するポリオレフィンを主成分とし、特定の平均長孔径を有する微多孔層を有する多層構造のセパレータを使用することが、上記課題の解決に有利であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の実施形態の例を以下の項目[1]~[10]に列記する。
[1]
ポリオレフィン(A)を主成分とする微多孔層(X)と、ポリオレフィン(B)を主成分とする微多孔層(Y)と、を有し、
前記微多孔層(X)の荷重2.16kg及び温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が、0.9g/10min以下であり、
走査型電子顕微鏡(SEM)による前記微多孔層(X)及び前記微多孔層(Y)のND-MD断面観察において、
前記微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径が、100nm以上、400nm以下であり、かつ
前記微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径は、前記微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径より大きい、
蓄電デバイス用セパレータ。
[2]
前記SEMによる前記微多孔層(X)及び前記微多孔層(Y)のND-MD断面観察において、前記微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径は、150nm以上、2000nm以下であり、かつ前記微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径の1.2倍以上10倍以下である、
項目1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[3]
前記蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した際の透気度が、250秒/100cm以下である、
項目1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[4]
前記蓄電デバイス用セパレータの気孔率が、20%以上70%以下である、
項目1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[5]
前記ポリオレフィン(A)の主成分が、ポリプロピレンである、
項目1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[6]
前記ポリオレフィン(A)の主成分が、ポリプロピレンであり、かつ
前記ポリオレフィン(B)の主成分が、ポリエチレンである、
項目1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[7]
前記ポリプロピレンのペンタッド分率が、94.0%以上である、
項目5又は6に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[8]
前記ポリプロピレンの荷重2.16kg及び温度230℃におけるMFRが、0.6g/10min以下である、
項目5~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[9]
前記蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した際の突刺強度が、300gf以上である、
項目1~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[10]
項目1~9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える、
蓄電デバイス。
本発明によれば、高強度であり、かつ、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイス内での目詰まりを抑制できる蓄電デバイス用セパレータを提供することができる。なお、上述の記載は、本発明の全ての実施形態及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。本発明の更なる実施形態及びその利点は、以下の記載を参照することにより明らかとなる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を例示する目的で詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態のポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、およびMw/Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグロフィー)測定により得られるポリスチレン換算の分子量である。
《蓄電デバイス用セパレータ》
〈微多孔層〉
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィンを主成分とする微多孔層を備える。本実施形態において、微多孔層とは、蓄電デバイス用セパレータを構成する一層の微多孔層を指し、二層以上を積層して多層で用いてもよい。一態様において、蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン(A)を主成分とする微多孔層(X)と、ポリオレフィン(B)を主成分とする微多孔層(Y)とを有する。
なお、セパレータが多層の微多孔層からなる場合も、粘着テープをセパレータ端部に貼り引っ張ることにより、容易に各微多孔層を剥がして回収し、後述される溶融張力、メルトフローレート(MFR)、分子量、長孔径、気孔率、厚み等の物性を測定することが可能である。
〈微多孔層(X)〉
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(X)を有する。蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(X)を一層のみ有していても、二層以上有していてもよい。本実施形態における、ポリオレフィン(A)を主成分とするとは、当該微多孔層(X)の全質量を基準として、ポリオレフィン(A)を50質量%以上含むものをいう。微多孔層(X)中のポリオレフィン(A)の含有量の下限は、セパレータの電解液に対する濡れ性、薄膜化、及びシャットダウン特性等の観点から、好ましくは55質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上である。微多孔層(X)中のポリオレフィン(A)の含有量の上限は、例えば、60質量%以下、70質量%以下、80質量%以下、90質量%以下、95質量%以下、98質量%以下、又は99質量%以下でよく、100質量%でもよい。
〈ポリオレフィン(A)〉
本実施形態におけるポリオレフィン(A)は、炭素-炭素二重結合を有するモノマーを繰り返し単位として含むポリマーである。ポリオレフィン(A)を構成するモノマーとしては、限定されないが、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数1以上10未満のモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等が挙げられる。ポリオレフィン(A)は、例えば、ホモポリマー、コポリマー、又は多段重合ポリマー等であり、好ましくはホモポリマーである。
ポリオレフィン(A)としては、具体的には、シャットダウン特性等の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンの共重合体、及びこれらの混合物が好ましい。ポリオレフィン(A)は、より好ましくはポリプロピレンである。
ポリプロピレンの立体規則性としては、限定されないが、例えば、アタクチック、アイソタクチック、又はシンジオタクチックのポリプロピレン等が挙げられる。本実施形態に係るポリプロピレンは、好ましくは高結晶性のアイソタクチック、又はシンジオタクチックのホモポリマーである。
ポリオレフィン(A)として使用可能なポリプロピレンは、好ましくはホモポリマーであり、プロピレン以外の少量のコモノマー、例えばα-オレフィンコモノマーを共重合したコポリマー、例えばブロックポリマーであってもよい。ポリプロピレンの繰り返し単位として含まれるプロピレン構造の量の下限は、例えば70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、又は99モル%以上でよい。ポリプロピレンには、プロピレン構造以外の繰り返し単位が含まれる場合がある。その場合、コモノマーに由来する繰り返し単位(ただし、プロピレン構造を除く)の量の上限は、例えば30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、5モル%以下、又は1モル%以下でよい。ポリプロピレンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)の下限は、微多孔層(X)の強度等の観点から、好ましくは300,000以上、より好ましくは500,000以上、さらに好ましくは600,000以上、より更に好ましくは700,000以上、特に好ましくは800,000以上である。ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)の上限は、微多孔層(X)の孔径を大きくして目詰まりを抑制する観点から、好ましくは1,500,000以下、より好ましくは1,300,000以下、さらに好ましくは1,100,000以下、より更に好ましくは1,000,000以下、特に好ましくは960,000以下である。
ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)の上限値は、好ましくは7以下、6.5以下、6以下、5.5以下、又は5以下であってよい。Mw/Mnの値が小さいほど、分子同士の絡み合いが少なくなるため、得られる微多孔層(X)の溶融張力も小さくなる傾向にある。したがって、ポリオレフィン(A)のMw/Mnの値が7以下であることは、微多孔層(X)の溶融張力を低く制御し、微多孔層(X)をより薄膜で安定的に作製できるため、好ましい。また、ポリオレフィン(A)のMw/Mnの下限値は、好ましくは1以上、1.3以上、1.5以上、2.0以上、又は2.5以上である。Mw/Mnが1以上であることにより、適度な分子の絡み合いが維持され、成膜時の安定性が良好となる傾向がある。
ポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合、ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)の下限は、微多孔層(X)の強度等の観点から、好ましくは300,000以上、より好ましくは500,000以上、さらに好ましくは600,000以上、より更に好ましくは700,000以上、特に好ましくは800,000以上である。ポリプロピレンのMwの上限は、微多孔層(X)の孔径を大きくし、目詰まりを抑制する観点から、好ましくは1,500,000以下、より好ましくは1,300,000以下、さらに好ましくは1,100,000以下、より更に好ましくは1,000,000以下、特に好ましくは960,000以下である。
ポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合、ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)の上限値は、好ましくは7以下、6.5以下、6以下、5.5以下、又は5以下である。ポリプロピレンのMw/Mnの値が小さいほど、得られる微多孔層(X)の溶融張力も小さくなる傾向にある。したがって、ポリプロピレンのMw/Mnの値が7以下であることは、微多孔層(X)の溶融張力を30mN以下に制御するために好ましい。また、ポリプロピレンのMw/Mnの下限値は、好ましくは1以上、1.3以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上である。ポリプロピレンのMw/Mnが1以上であることにより、適度な分子の絡み合いが維持され、成膜時の安定性が良好となる傾向がある。
ポリオレフィン(A)の密度の下限は、好ましくは0.85g/cm以上、0.88g/cm以上、0.89g/cm以上、又は0.90g/cm以上である。ポリオレフィン(A)の密度の上限は、好ましくは1.1g/cm以下、1.0g/cm以下、0.98g/cm以下、0.97g/cm以下、0.96g/cm以下、0.95g/cm以下、0.94g/cm以下、0.93g/cm以下、又は0.92g/cm以下である。ポリオレフィン(A)の密度は、ポリオレフィン(A)の結晶性に関連し、ポリオレフィン(A)の密度が0.85g/cm以上であれば微多孔層(X)の生産性が向上し、特に、乾式で樹脂原反を多孔化する方法(以下、乾式法という)において有利である。
〈微多孔層(X)の溶融張力〉
温度230℃で測定した際の微多孔層(X)の溶融張力(単層の溶融張力)の上限値は、微多孔層(X)の成形性の観点から、好ましくは30mN以下、より好ましくは25mN以下である。微多孔層(X)の溶融張力(単層の溶融張力)の下限値は、微多孔層(X)又は微多孔膜の強度等の観点から、好ましくは10mN以上、より好ましくは15mN以上、更に好ましくは20mN以上である。
ポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合、温度230℃で測定した際のポリプロピレンの溶融張力の上限値は、微多孔層(X)の成形性の観点から、好ましくは30mN以下、より好ましくは25mN以下である。ポリプロピレンの溶融張力の下限値は、微多孔層(X)の強度等の観点から、好ましくは10mN以上、より好ましくは15mN以上、更に好ましくは20mN以上である。
〈微多孔層(X)のメルトフローレート(MFR)〉
本実施形態の微多孔層(X)のメルトフローレート(MFR)(すなわち単層のMFR)の上限値は、より高強度の微多孔層(X)を得る観点から、一態様において0.9g/10min以下であり、例えば0.85g/10min以下、0.7g/10min以下、0.65g/10min以下、又は0.5g/10min以下であってよい。微多孔層(X)のMFR(単層のMFR)の下限値は、微多孔層(X)の成形性等の観点から、限定されないが、例えば0.15g/10min以上、0.2g/10min以上、0.25g/10min以上、0.3g/10min以上、0.35g/10min以上、0.38g/10min以上、0.4g/10min以上、0.45g/10min以上、0.5g/10min以上、0.55g/10min以上、0.6g/10min以上、0.65g/10min以上、又は0.7g/10min以上でよい。
本実施形態のMFRは、荷重2.16kg、及び温度230℃の条件下で測定する。
微多孔層(X)のMFRが0.9g/10min以下であることは、微多孔層(X)に含まれるポリオレフィンの分子量が高いことを意味する。ポリオレフィンの分子量が高いことにより、結晶質同士を結合するタイ分子が多くなるため、高強度の微多孔層(X)が得られる傾向にある。微多孔層(X)のMFRが0.2g/10min以上であることにより、微多孔層(X)の溶融張力が低くなり過ぎず、高強度かつ薄膜の微多孔層(X)または微多孔膜が得られる傾向にある。
ポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合、高強度の微多孔層(X)を得る観点から、荷重2.16kg、及び温度230℃の条件下で測定した際のポリプロピレンのMFRの上限値は、より高強度の微多孔層(X)を得る観点から、好ましくは0.9g/10min以下、0.85g/10min以下、0.7g/10min以下、0.65g/10min以下、0.6g/10min以下、0.55g/10min以下、又は0.5g/10min以下である。ポリプロピレンのMFRの下限値は、微多孔層(X)の成形性等の観点から、好ましくは0.3g/10min以上、0.35g/10min以上、0.4g/10min以上、0.45g/10min以上、0.5g/10min以上、0.55g/10min以上、0.6g/10min以上、0.65g/10min以上、又は0.7g/10min以上である。
〈ペンタッド分率〉
ポリオレフィン(A)がポリプロピレンである場合、本実施形態において、13C-NMR(核磁気共鳴法)で測定されるポリプロピレンのペンタッド分率の下限値は、低透気度の微多孔層(X)を得る観点から、好ましくは94.0%以上、95.0%以上、96.0%以上、96.5%以上、97.0%以上、97.5%以上、98.0%以上、98.5%以上、又は99.0%以上である。ポリプロピレンのペンタッド分率の上限値は、限定されないが、例えば99.9%以下、99.8%以下、又は99.5%以下でよい。
ポリプロピレンのペンタッド分率が94.0%以上であると、ポリプロピレンの結晶性が高くなる。延伸開孔法、特に乾式法で得られるセパレータは、複数の結晶質部分の間にある非晶質部分が延伸されることにより開孔するため、ポリプロピレンの結晶性が高いと、微多孔層(X)を有するセパレータの開孔性が良好となる。それにより、走査型電子顕微鏡(SEM)によるND-MD断面観察においては微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径を大きくすることができるため、微多孔層(X)を有するセパレータは、目詰まりを抑制することができる。また、SEMによるND-MD断面観察において微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径を大きくすると、透気度を低く抑えることもできるため、蓄電デバイスの高出力化が可能となる。
〈微多孔層(X)の平均長孔径〉
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータにおいて、SEMによるND-MD断面観察の場合には、微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径が100nm以上、400nm以下である。
ここで、法線方向(ND)とは、微多孔層の厚み方向を示し、機械方向(MD)とは微多孔層の成膜方向を示す。微多孔層を有するセパレータのMDは、ロールであれば長手方向である。本発明者らは、このND-MD断面に存在する孔の平均長孔径が、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイス内での目詰まりの抑制、及びセパレータの透気度の調整に影響することを見出した。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータに使用される場合、SEMによるND-MD断面観察において微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径は、リチウムイオン二次電池内での目詰まり抑制の観点から100nm以上であり、リチウムイオン二次電池内での短絡抑制の観点から400nm以下である。SEMによるND-MD断面観察において微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径の下限は、好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上である。SEMによるND-MD断面観察において微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径の上限は、好ましくは350nm以下、より好ましくは300nm以下である。
平均長孔径は、SEMによる微多孔層のND-MD断面観察において、微多孔層に存在する各孔の面積に基づき算出された長径の面積平均値である。平均長孔径は、セパレータから微多孔層のMD-ND断面を切り出して作製した試料の断面SEM観察を行い、得られた断面SEM画像の4μm×4μmの範囲の画像解析により測定することができる。詳細の条件は実施例に示す。
〈微多孔層(X)のMFRと平均長孔径の両立〉
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータにおいて、微多孔層(X)は、MFRが、0.9g/10min以下であり、かつ、断面SEM観察時にND-MD断面に存在する孔の平均長孔径が100nm以上、400nm以下である。従来、多層構造を有するセパレータ、特に乾式法により得られた多層セパレータにおいて、乾式法は可塑剤を有さないため、MFRを0.9g/10分以下に低くし、かつ、平均長孔径を100nm以上に大きくすることは非常に困難であった。MFRが0.9g/10分以下と低い、すなわちポリオレフィンの分子量が高い場合には、延伸開孔時に非常に孔が開き難く、開孔しても平均長孔径が小さくなる傾向があった。また、セパレータの透気度を200sec程度に調整した従来の技術においても、セパレータの平均長孔径が小さいと蓄電デバイス内での目詰まりを抑制し難い傾向にあった。さらに、多層構造においては、各層の膜厚をさらに薄くする必要がある。例えば、18μmの三層構造のセパレータであれば、各層の厚み比を1:1:1とする場合、各層の厚みは6μmと非常に薄くする必要がある。このように各層を薄く成膜をし、延伸開孔させる場合、MFRが低い層の開孔性は非常に悪くなり、平均長孔径は非常に小さいものしか得られなかった。
本実施形態においては、特定の物性を有するポリオレフィン(A)を用い、かつ従来法よりも精密に成膜および延伸条件を制御することにより、微多孔層(X)のMFRが0.9g/10分以下と低くても、SEMによるND-MD断面観察時に微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径が100nm以上である大孔径のセパレータを得ることができるものである。
〈微多孔層(X)の気孔率〉
本実施形態に係る微多孔層(X)の気孔率の下限は、蓄電デバイス内での目詰まり抑制の観点、およびセパレータの透気度を制御する観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは35%以上である。微多孔層(X)の気孔率の上限は、セパレータの強度保持の観点から、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下、特に好ましくは55%以下である。気孔率は、実施例に記載の方法で測定される。
〈微多孔層(X)の厚み〉
本実施形態に係る微多孔層(X)の厚みの上限値は、蓄電デバイスの高エネルギー密度化等の観点から、好ましくは10μm以下、8μm以下、7μm以下、6m以下、5μm以下、4.5μm以下、又は4μm以下である。微多孔層(X)の厚みの下限値は、強度等の観点から、好ましくは1μm以上、2μm以上、3μm以上、3.5m以上、4μm以上、又は4.5μm以上である。
〈添加剤〉
本実施形態において、ポリオレフィン(A)を主成分とする微多孔層(X)は、ポリオレフィン(A)以外に、エラストマー、フッ素系流動改質材、ワックス類、結晶核剤、酸化防止剤、脂肪族カルボン酸金属塩等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料、フィラーなどの添加剤を必要に応じて更に含有してもよい。
〈微多孔層(Y)〉
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン(B)を主成分とする微多孔層(Y)を有する。本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(Y)を一層のみ有していても、二層以上有していてもよい。本実施形態における、ポリオレフィン(B)を主成分とするとは、当該微多孔層(Y)の全質量を基準として、ポリオレフィン(B)を50質量%以上含むものをいう。微多孔層(Y)中のポリオレフィン(B)の含有量の下限は、セパレータの電解液に対する濡れ性、薄膜化、及びシャットダウン特性等の観点から、好ましくは55質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上である。微多孔層(Y)中のポリオレフィン(B)の含有量の上限は、例えば60質量%以下、70質量%以下、80質量%以下、90質量%以下、95質量%以下、98質量%以下、又は99質量%以下でよく、100質量%でもよい。
〈ポリオレフィン(B)〉
本実施形態におけるポリオレフィン(B)は、炭素-炭素二重結合を有するモノマーを繰り返し単位として含むポリマーである。ポリオレフィン(B)を構成するモノマーとしては、限定されないが、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数1~10のモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等が挙げられる。ポリオレフィン(B)は、例えば、ホモポリマー、コポリマー、又は多段重合ポリマー等であり、好ましくはホモポリマーである。
ポリオレフィン(B)としては、具体的には、シャットダウン特性等の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとの共重合体、及びこれらの混合物が好ましい。ポリオレフィン(B)は、より好ましくはポリエチレンである。
ポリオレフィン(B)としてポリエチレンを用いる場合、ポリエチレンのMFRの下限は、良好な開孔性、および目詰まり抑制の観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.18以上、特に好ましくは0.2以上である。ポリエチレンのMFRの上限は、セパレータの強度の観点から、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.5以下である。
〈微多孔層(Y)の平均長孔径〉
本実施形態において、SEMによるND-MD断面観察の場合には、微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径の下限は、目詰まり抑制およびセパレータの良好な透気度の観点から、好ましくは150nm以上、より好ましくは200nm以上である。SEMによるND-MD断面観察において、微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径の上限は、蓄電デバイス内での短絡抑制の観点から、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下である。
〈微多孔層(X)と微多孔層(Y)の平均長孔径の比率〉
本実施形態において、SEMによる微多孔層(X)および微多孔層(Y)のND-MD断面観察の場合には、微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径は、微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径の1.2倍以上10倍以下であることが好ましい。これは、すなわち、微多孔層(Y)のND-MD断面に存在する孔の平均長孔径が、微多孔層(X)のND-MD断面に存在する孔の平均長孔径に対し、ある特定の範囲で大きいことを示す。SEMによるND-MD断面観察において、微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径より1.2倍以上大きい平均長孔径を有する微多孔層(Y)をセパレータに備えることにより、より効果的に目詰まりを抑制することが可能となる。蓄電デバイス内での接触短絡を抑制する観点から、SEMによるND-MD断面観察において、微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径は、微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径の10倍以下であることが好ましい。SEMによるND-MD断面観察において、微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径に対する微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径の比率は、より好ましくは1.4倍以上8倍以下である。
〈微多孔層(Y)の厚み〉
本実施形態に係る微多孔層(Y)の厚みの上限値は、蓄電デバイスの高エネルギー密度化等の観点から、好ましくは10μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4.5μm以下、又は4μm以下である。微多孔層(Y)の厚みの下限値は、強度等の観点から、好ましくは1μm以上、2μm以上、3μm以上、3.5μm以上、4μm以上、又は4.5μm以上である。
〈多層構造〉
本実施形態における蓄電デバイス用セパレータは、少なくとも、微多孔層(X)と微多孔層(Y)と、を有する。ここで、本実施形態のセパレータは、微多孔層(X)と微多孔層(Y)とを少なくとも1層ずつ有している。また、本実施形態のセパレータは、微多孔層(X)および微多孔層(Y)をそれぞれ1層ずつ有してよい。さらに、微多孔層(X)および/または、微多孔層(Y)を2層以上有するセパレータとしては、3層以上の構成であってもよい。例えば、微多孔層(X)/微多孔層(Y)の二層構造、微多孔層(X)/微多孔層(Y)/微多孔層(X)の三層構造、微多孔層(Y)/微多孔層(X)/微多孔層(Y)の三層構造、などを好ましく挙げることができる。また、蓄電デバイス用セパレータは、微多孔層(X)及び微多孔層(Y)以外の層を有していてもよい。微多孔層(X)及び微多孔層(Y)以外の層としては、例えば、無機物を含む層、又は耐熱樹脂を含む層を挙げることができる。
〈微多孔層(X)と微多孔層(Y)〉
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータにおいては、SEMによるND-MD断面観察の場合に、平均長孔径が小さい層が微多孔層(X)であり、平均長孔径が大きい層が微多孔層(Y)である。微多孔層(Y)のND-MD断面に存在する孔の平均長孔径を、微多孔層(X)のND-MD断面に存在する孔の平均長孔径よりも大きくすることで、より効果的に目詰まりを抑制することが可能となる。また、微多孔層(X)や微多孔層(Y)が二層以上ある場合は、二層以上の層厚の相加平均値に換算した微多孔層(XまたはY)のND-MD断面に存在する孔の平均長孔径を採用してよい。それにより、二層以上の微多孔層(XまたはY)の場合でさえも、SEMによるND-MD断面観察において、微多孔層(X)と微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径を適切に比較することができる。
〈セパレータの厚み〉
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータの厚みの上限値は、蓄電デバイスの高エネルギー密度化等の観点から、好ましくは25μm以下、22μm以下、20μm以下、18μm以下、17μm以下、16.5μm以下、16μm以下、15.5μm以下、15μm以下、14.5μm以下、14μm以下、又は12μm以下である。本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータの厚みの下限値は、強度等の観点から、好ましくは6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、又は11μm以上である。
〈透気度(透気抵抗度)〉
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータの透気度の上限値は、蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した場合に、好ましくは250秒/100cm以下、240秒/100cm以下、230秒/100cm以下、200秒/100cm以下、又は180秒/100cm以下である。多層構造を有する蓄電デバイス用セパレータの透気度の下限値は、限定されないが、蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した場合に、例えば50秒/100cm以上、60秒/100cm以上、又は70秒/100cm以上でよい。
〈突刺強度〉
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータの突刺強度の下限値は、蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した場合に、好ましくは230gf以上、240gf以上、250gf以上、260gf以上、280gf以上、300gf以上、又は320gf以上である。蓄電デバイス用セパレータの突刺強度の上限値は、蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した場合に、好ましくは550gf以下、500gf以下、又は480gf以下である。
《蓄電デバイス用セパレータの製造方法》
ポリオレフィンを主成分とする微多孔層の製造方法は、一般に、上記で説明されたポリオレフィンを含む樹脂組成物(以下、ポリオレフィン樹脂組成物という)を溶融押出して樹脂フィルムを得る溶融押出工程、及び得られた樹脂フィルムを開孔して多孔化する孔形成工程を含み、必要に応じて孔形成工程後にアニーリング工程、延伸工程、及び熱緩和工程等を更に含む。微多孔層の製造方法は、孔形成工程に溶剤を使用しない乾式法と、溶剤を使用する湿式法とに大別される。上記溶融押出の方法としては、Tダイ法によるものとインフレーション法によるもの等が挙げられる。
乾式法としては、ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してフィルム状に成形した後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させる方法などが挙げられる。
湿式法としては、ポリオレフィン樹脂組成物と孔形成材とを溶融混練してフィルム状に成形し、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出する方法、ポリオレフィン樹脂組成物の溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させてポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去する方法などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂組成物の溶融混練には、単軸押出機、及び二軸押出機を使用することができ、これら以外にも、例えばニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、及びバンバリーミキサー等を使用することもできる。
ポリオレフィン樹脂組成物は、微多孔層の製造方法に応じて、又は目的の微多孔層の物性に応じて、任意に、ポリオレフィン以外の樹脂、及び添加剤等を含有してもよい。添加剤としては、例えば、孔形成材、フッ素系流動改質材、エラストマー、ワックス、結晶核材、酸化防止剤、脂肪族カルボン酸金属塩等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、及び着色顔料等が挙げられる。孔形成材としては、可塑剤、無機充填材又はそれらの組み合わせが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
無機充填材としては、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維が挙げられる。
本実施形態に係る蓄電デバイス用セパレータの製造方法としては、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させる乾式ラメラ晶開孔プロセスが好ましい。ここで、微多孔層(X)と微多孔層(Y)を有するセパレータの製造方法としては、次の方法(ア)及び(イ)の少なくとも一方を用いることが好ましい:
(ア)微多孔層(X)と微多孔層(Y)を共押出成膜し、アニール、冷延伸、熱延伸、熱緩和工程に供する、共押出成膜によるセパレータの製造方法;及び
(イ)微多孔層(X)と微多孔層(Y)をそれぞれ別々に押出成膜し、ラミネートにより貼り合わせて、その後、アニール、冷延伸、熱延伸、熱緩和工程に供する、ラミネートによるセパレータの製造方法。
微多孔層(X)と微多孔層(Y)の十分な平均長孔径、微多孔層(X)と微多孔層(Y)の孔径比を付与し、蓄電デバイス内での目詰まりを抑制する観点から、ラミネートプロセス(イ)がより好ましい。理論に拘束されることを望まないが、ラミネートプロセスでは、微多孔層(X)、微多孔層(Y)を個別に成膜出来ることから、より厳密な温度管理、成膜時の配向付与が可能となると考えられ、その結果、良好な平均長孔径と孔径比を達成し、目詰まりを抑制できる傾向にある。
ラミネートプロセス(イ)において、微多孔層(X)の押出成膜条件としては、可能な限り低速で樹脂を吐出し、低温のエアを吹き付けることにより効果的に急冷させることが好ましい。通常、成膜時には高吐出量で成膜をすることが好まれるが、敢えて、低吐出量で成膜をし、かつ、15℃以下のエアを膜に吹き付けて急冷させることにより、微多孔層(X)は良好な平均長孔径と、高強度の両立が可能となると考えられる。吐出量の上限値としては、良好な平均長孔径を付与する観点から、ダイ幅1m当たり、好ましくは20kg/h以下、より好ましくは15kg/h以下、更に好ましくは10kg/h以下、特に好ましくは8kg/h以下である。吐出量の下限値としては、成膜時の安定性の観点から、4kg/h以上が好ましい。成膜後にはエアにより急冷させることが好ましく、吹き付けるエアの温度の上限としては、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下である。このような低温に制御した冷風を吹き付けることにより、成膜後の樹脂が急冷しながら均一にMDに配向する。その結果、荷重2.16kg及び温度230℃におけるMFRが0.9g/10分以下という比較的高い分子量の樹脂を用いても、微多孔層(X)に良好な開孔性が発現し、かつ上記で説明された範囲内の平均長孔径を得ることが可能となると考えられる。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータの製造方法としては、押出成膜後にラミネート工程を用いても良い。ここで、微多孔層(X)と微多孔層(Y)を貼り合わせることが出来ればどのようなラミネート工程でも行うことができ、少なくとも1回の熱ラミネート工程を行うことが好ましい。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータの製造方法としては、押出成膜後、またはラミネート工程後に、アニーリング工程を付与しても良い。アニーリング工程を付与することにより、微多孔層(X)および微多孔層(Y)の結晶構造が成長し、開孔性が改善する傾向にある。特に、本実施形態においては、特定の温度で、長時間アニール処理することにより、結晶構造が乱れることなく結晶が成長するため、高い開孔性が発現し、結果、微多孔層(X)および微多孔層(Y)ともに良好な平均長孔径を得ることが可能となる傾向にある。アニーリング工程では、良好な平均長孔径を得て、蓄電デバイスの目詰まりを抑制する観点から、好ましくは、115℃以上、130℃以下の温度範囲で、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上に亘って、アニール処理を行なう。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータの製造方法において、アニーリング工程の後に、孔形成工程中、又は孔形成工程の前若しくは後に、延伸工程を行ってもよい。延伸処理としては、一軸延伸、又は二軸延伸のいずれも用いることができる。限定されないが、乾式法を使用する際の製造コスト等の観点では、一軸延伸が好ましい。得られるセパレータの強度等を向上させる観点では、二軸延伸が好ましい。二軸延伸としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、およびシャットダウン性の観点からは同時二軸延伸が好ましい。また、面配向の制御容易性の観点からは遂次二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向するため、裂け難く、高い突刺強度を有するセパレータが得られる傾向にある。
セパレータの収縮を抑制するために、延伸工程後又は孔形成工程後に熱固定を目的として熱処理工程を行ってもよい。熱処理工程は、物性の調整を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作を含んでもよい。延伸操作を行った後に緩和操作を行ってもよい。これらの熱処理工程は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。
《蓄電デバイス》
本実施形態の蓄電デバイスは、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを備える。本実施形態の蓄電デバイスは正極と負極とを有する。蓄電デバイス用セパレータは、好ましくは、正極と負極との間に積層されるか、電池外装内で正極若しくは負極の外側に位置するか、又は電極を包んでいる。所望により、正極および負極が外部の機器等と接続可能なように、正極および負極にリード体をそれぞれ接続してよい。
蓄電デバイスとしては、限定されないが、例えばリチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ナトリウム二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウム二次電池、カルシウムイオン二次電池、アルミニウム二次電池、アルミニウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスフロー電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、及び亜鉛空気電池などが挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係るセパレータとの適合性の観点から、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、又はリチウムイオンキャパシタが好ましく、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
蓄電デバイスは、例えば、次の方法により作製することができる:
正極と負極とを、上記で説明されたセパレータを介して重ね合わせて、必要に応じて捲回して、積層電極体又は捲回電極体を形成する。その後、積層電極体又は捲回電極体を外装体に装填する。その際に、外装体内の正負極は、それぞれにリード体が接続され、かつリード体の端部が外装体の外側に出るように配置されることできる。正極および負極がそれぞれ複数の場合には、同一極のタブ同士を溶接等により接合して1つのリード体に接合して外装体の外側に出してよい。同一極のタブは、集電体の露出部から構成されることができ、又は集電体の露出部に金属片を溶接して構成されることができる。正負極と、外装体の正負極端子とを、リード体などを介して接続する。その際に、リード体の一部と外装体の一部とを熱融着等により接合してよい。さらに、鎖状及び/又は環状カーボネート等の非水溶媒とリチウム塩等の電解質を含む非水電解液を外装体内に注入する。その後に、外装体を封止して蓄電デバイスを作製することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
《測定及び評価方法》
[メルトフローレート(MFR)の測定]
微多孔層(X)のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した(単位はg/10分である)。ポリプロピレンのMFRは、JIS K 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した。ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠し、温度190℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した。
[GPC(ゲルパーミエーションクロマトグロフィー)の測定]
アジレントテクノロジー株式会社のアジレント PL-GPC220を用い、標準ポリスチレンを以下の条件で測定して較正曲線を作成した。試料のポリマーについても同様の条件でクロマトグラフを測定し、較正曲線に基づいて、下記条件によりポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)を算出した。
カラム :TSKgel GMHHR-H(20) HT(7.8mmI.D.×30 cm)2本
移動相 :1,2,4-トリクロロベンゼン
検出器 :RI
カラム温度:160℃
試料濃度 :1mg/ml
較正曲線 :ポリスチレン
[溶融張力の測定]
株式会社東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で微多孔層の溶融張力(mN)を測定した。
・キャピラリー:直径1.0mm、長さ20mm
・シリンダー押出速度:2mm/分
・引き取り速度:60m/分
・温度:230℃
[ペンタッド分率の測定]
ポリプロピレンのペンタッド分率は、高分子分析ハンドブック(日本分析化学会編集)の記載に基づいて帰属した13C-NMRスペクトルから、ピーク高さ法によって算出した。13C-NMRスペクトルの測定は、日本電子株式会社のJEOL-ECZ500を使用して、ポリプロピレンペレットをo-ジクロロベンゼン-dに溶解させ、測定温度145℃、積算回数25000回の条件で行った。
[厚み(μm)の測定]
株式会社ミツトヨ製のデジマチックインジケータIDC112を用いて、室温23±2℃で、セパレータの厚み(μm)を測定した。
[気孔率(%)の測定]
10cm×10cm角の寸法を有する試料をセパレータから切り取り、その体積(cm3)と質量(g)を求め、それらと密度(g/cm3)より、気孔率を計算した。
[透気度(秒/100cm)]
JIS P-8117に準拠したガーレー式透気度計を用いて、セパレータの透気抵抗度(秒/100cm)を測定し、単位がμmである厚みで除した後16をかけることにより、厚み16μm換算の透気度を算出した。
[突刺強度の評価]
先端が半径0.5mmの半球状である針を用意し、直径(dia.)11mmの開口部を有するプレート2つの間にセパレータを挟み、針、セパレータ及びプレートをセットした。株式会社イマダ製「MX2-50N」を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、セパレータ保持プレートの開口部直径11mm及び突刺速度25mm/分の条件下で突刺試験を行った。針とセパレータを接触させ、最大突刺荷重(すなわち、突刺強度(gf))を測定した。得られた突刺強度を厚みで除した後16をかけることにより、厚み16μm換算の突刺強度を算出した。
[平均長孔径の評価]
平均長孔径は断面SEM観察での画像解析により測定を行った。前処理として、セパレータにルテニウム染色を行い、その後、エポキシ樹脂に含浸し、60℃で12時間以上硬化させることによって、上記ルテニウム染色されたセパレータをエポキシ樹脂で包埋した。エポキシ樹脂で包埋した後、カミソリで粗く断面加工し、その後、イオンミリング装置(E3500 Plus、株式会社日立ハイテク製)を用いて断面ミリング加工し、断面試料を作製した。断面はND-MD面とする。上記断面試料を導電性接着剤(カーボン系)で断面観察用SEM試料台に固定、乾燥した後、オスミウムコーター(HPC-30W、株式会社真空デバイス製)を用いて導電処理を行った後、印加電圧調整つまみ設定4.5、放電時間0.5秒の条件でオスミウムコーティングを実施し、検鏡試料とした。次に、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 S-4800)を用い、微多孔層の断面を切り出して作製した試料の4μm×4μmの範囲について任意の3点を加速電圧1kV、作動距離5mm、倍率3万倍で断面SEM観察を行った。
得られた断面SEM観察画像を、画像処理ソフトImageJを使い、Otsu法を用いて2値化処理し、樹脂部と孔部とを分け、孔部の平均長径を算出した。この際、撮影範囲と撮影範囲外に跨って存在している微小孔、及び孔面積が0.001μm以下の孔については、測定対象から除外した。平均長孔径は、孔の面積加重平均により算出した。
得られた断面SEM画像4μm×4μmの範囲の各孔の最も長い孔径を測定し、それらの面積加重平均値を算出することで、平均長孔径の値を得た。
[電池性能評価および目詰まりの観察]
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合したものに、リチウム塩としてのLiPFを1mol/L含有させることにより電池性能評価および目詰まりの観察のための電解液を調製した。
正極活物質としてリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3)と、導電助剤としてカーボンブラック粉末(Timcal株式会社製、商品名:SuperP Li)と、バインダーとしてPVDFとを、複合酸化物:導電助剤:バインダー=100:3.5:3の質量比で混合した。得られた混合物を、N-メチルピロリドン溶剤に分散させ、分散体を形成した。厚み15μmの正極集電体としてのアルミニウム箔の両面に分散体を塗布し、溶剤を乾燥除去後、ロールプレスでプレスして、両面塗工正極を作製した。
負極活物質として粒子径22μm(D50)の黒鉛粉末(日立化成株式会社製、商品名:MAG)と、バインダー(日本ゼオン株式会社製、商品名:BM400B)と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセル株式会社製、商品名:#2200)とを、黒鉛粉末:バインダー:増粘剤=100:1.5:1.1の質量比で混合したものを、水に分散させて、水分散体を作製した。水分散体を厚み10μmの負極集電体としての銅箔の片面に塗布して、片面塗工体を作製した。片面塗工体とは別に、水分散体を厚み10μmの負極集電体としての銅箔の両面に塗布して、両面塗工体を作製した。片面塗工体および両面塗工体から溶剤(水)を乾燥除去し、その後、塗布された銅箔をロールプレスでプレスして、それぞれ片面塗工負極と両面塗工負極を作製した。
得られた正極及び負極を、それぞれの活物質の対向面に、下記で作製したセパレータを挟みながら、片面塗工負極/両面塗工正極/両面塗工負極/両面塗工正極/片面塗工負極の順に積層した。次いで、得られた積層体を、アルミニウム箔(厚み40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムで形成された袋(電池外装)の内部に挿入した。電池外装からは、挿入された電極の端子が突設されている。その後、上述のようにして作製した電解液0.8mLを袋内に注入し、袋に真空封止を行うことによってシート状リチウムイオン二次電池を作製した。
得られたシート状リチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名:PLM-73S)に収容し、充放電装置(アスカ電子株式会社製、商品名:ACD-01)に接続し、16時間静置した。次いで、その電池を、0.05Cの定電流で充電して、電圧が4.35Vに到達してから4.35Vの定電圧で2時間充電した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電するという充放電サイクルを、3回繰り返すことによって、電池の初期充放電を行った。なお、1Cとは、電池の全容量を1時間で放電させる場合の電流値を示す。
上記初期充放電後、50℃に設定した恒温槽に上記電池を収容し、その電池を、1Cの定電流で充電して、電圧が4.35Vに到達してから4.35Vの定電圧で1時間充電した後、1Cの定電流で3.0Vまで放電するという充放電サイクルを、100回繰り返した。電池のサイクル試験は、上記の充放電サイクルを100回繰り返す試験である。
100サイクル目の放電容量(mAh)を1サイクル目の放電容量(mAh)で除した値(百分率)をサイクル容量維持率とした。また、100サイクル終了後のシート状リチウムイオン二次電池をアルゴン雰囲気下で解体し、セパレータを取り出した。セパレータをエチルメチルカーボネート含有槽に30秒間浸漬して取り出すことにより1回目の浸漬洗浄を行った。計3回の浸漬洗浄を行った。2回目と3回目の浸漬洗浄では槽内のエチルメチルカーボネートを入れ替えた。その後、光学顕微鏡にて倍率100~1000倍の条件下でセパレータ負極側表面を1mm角の範囲で観察し、セパレータ表面の目詰まりの有無を確認した。表1に、目詰まりの有無を示す。
《実施例1》
[微多孔層の作製]
ポリオレフィン(A)として、高分子量のポリプロピレン樹脂(PP、MFR(230℃)=0.51g/10分、密度=0.91g/cm、Mw/Mn=5.2、ペンタッド分率=99.3%)を2.5インチの押出機で溶融し、ギアポンプを使ってTダイへ供給した。Tダイの温度は230℃に設定した。溶融したポリマーをTダイから吐出した。その後、チラーにより10℃に冷却した800L/minの吹込空気によって吐出樹脂を急冷しながら、ロール速度25m/minでロールに巻き取ることで約6μm厚みの前駆体(X’)(微多孔層(X)の前駆体)を得た。ここで、TダイのTDのリップ幅は500mm、Tダイのリップ間距離(リップクリアランス)は、2.4mmに設定し、3.8kg/hの吐出量で吐出した。
同様にして、ポリオレフィン(B)として、ポリエチレン樹脂(PE、MFR(190℃)=0.38g/10分、密度=0.96g/cm)を2.5インチの押出機で溶融し、ギアポンプを使ってTダイへ供給した。Tダイの温度は210℃に設定した。溶融したポリマーをTダイから吐出した。その後、チラーにより10℃に冷却した800L/minの吹込空気によって吐出樹脂を急冷しながら、ロール速度25m/minでロールに巻き取ることで約6μm厚みの前駆体(Y’)(微多孔層(Y)の前駆体)を得た。ここで、TダイのTDのリップ幅は500mm、Tダイのリップ間距離(リップクリアランス)は、2.4mmに設定し、3.8kg/hの吐出量で吐出した。
次いで、得られた前駆体(X’)および前駆体(Y’)を、前駆体(X’)/前駆体(Y’)/前駆体(X’)となるように、熱圧着ラミネータを用いて120℃で、4m/minで熱圧着処理を行なうことにより、三層構造の前駆体(Z)を得た。次いで、得られた前駆体(Z)を乾燥機に投入し、120℃で、1時間アニール処理を実施した。その後、アニールされた前駆体(Z)を室温にて8%冷間延伸を行い、延伸後の膜を収縮させることなく125℃のオーブン中に投入し、140%まで熱間延伸を行い、その後、15%緩和させることにより、微多孔層(X)/微多孔層(Y)/微多孔層(X)から成る三層構造を有するセパレータを得た。得られたセパレータの構造、物性及び電池性能評価結果を表1に示す。
《実施例2、実施例3、実施例6、比較例1、比較例3》
表1に示すとおりに原料を変更したこと以外は実施例1と同じ方法に従って微多孔層を得て、微多孔層、及びそれを用いて得られたセパレータを評価した。
《実施例4》
表1に示すとおりに原料を変更し、前駆体(X’)の成膜において、吹き込み空気の温度を25℃に変更し、かつ、吹き込み空気量を600L/minに変更し、成膜をして前駆体(X’)を得た。その他の条件は、実施例1に記載の条件と同じである。
《実施例5》
表1に示すとおりに原料を変更し、前駆体(X’)の成膜において、吹き込み空気の温度を0℃に変更し、かつ、吹き込み空気量を1000L/minに変更し、成膜をして前駆体(X’)を得た。また、実施例5のアニーリング工程において、125℃で、3時間アニール処理を行った。その他の条件は、実施例1に記載の条件と同じである。
《比較例4》
ポリオレフィン(A)として、高分子量のポリプロピレン樹脂(PP、MFR(230℃)=0.25g/10分、密度=0.91g/cm、Mw/Mn=5.0、ペンタッド分率=97.5%)を2.5インチの押出機で溶融し、ギアポンプを使ってTダイへ供給した。Tダイの温度は230℃に設定した。溶融したポリマーをTダイから吐出した。その後、チラーにより10℃に冷却した800L/minの吹込空気によって吐出樹脂を急冷しながら、ロール速度25m/minでロールに巻き取ることで約6μm厚みの前駆体(X’)(微多孔層(X)の前駆体)を得た。ここで、TダイのTDのリップ幅は500mm、Tダイのリップ間距離(リップクリアランス)は、2.4mmに設定し、3.8kg/hの吐出量で吐出した。
同様にして、ポリオレフィン樹脂(B)として、高分子量のポリプロピレン樹脂(PP、MFR(230℃)=0.25g/10分、密度=0.91g/cm、Mw/Mn=5.0、ペンタッド分率=97.5%)を2.5インチの押出機で溶融し、ギアポンプを使ってTダイへ供給した。Tダイの温度は230℃に設定した。溶融したポリマーをTダイから吐出した。その後、チラーにより10℃に冷却した800L/minの吹込空気によって吐出樹脂を急冷しながら、ロール速度25m/minでロールに巻き取ることで約6μm厚みの前駆体(Y’)(微多孔層(Y)の前駆体)を得た。ここで、TダイのTDのリップ幅は500mm、Tダイのリップ間距離(リップクリアランス)は、2.4mmに設定し、3.8kg/hの吐出量で吐出した。
次いで、得られた前駆体(X’)および前駆体(Y’)を、前駆体(X’)/前駆体(Y’)/前駆体(X’)となるように、熱圧着ラミネータを用いて135℃で、2m/minで熱圧着処理を行なうことにより、三層構造の前駆体(Z)を得た。次いで、得られた前駆体(Z)を乾燥機に投入し、120℃で、1時間アニール処理を実施した。その後、アニールされた前駆体(Z)を室温にて8%冷間延伸を行い、延伸後の膜を収縮させることなく125℃のオーブン中に投入し、140%まで熱間延伸を行い、その後、15%緩和させることにより、微多孔層(X)/微多孔層(Y)/微多孔層(X)から成る三層構造を有するセパレータを得た。得られたセパレータの構造、物性及び電池性能評価結果を表1に示す。
《比較例2》
表1に示すとおりに原料を変更し、ラミネートプロセスではなく、共押出プロセスにより成膜を行った。具体的には、2.5インチの押出機を用い、表1に示すポリプロピレン樹脂を220℃で、表1に示すポリエチレン樹脂を200℃で、それぞれ溶融した。次いで、ポリプロピレン溶融樹脂およびポリエチレン溶融樹脂を、ポリプロピレン樹脂/ポリエチレン樹脂/ポリプロピレン樹脂の三層構造となるように吐出量比1:1:1で共押出用のTダイ(220℃)に供給した。さらに、溶融したポリマーをTダイから11.4kg/hで吐出した。その後、チラーにより10℃に冷却した800L/minの吹込空気によって吐出樹脂を急冷しながら、ロール速度25m/minでロールに巻き取ることで約16μm厚みの三層構造の前駆体(Z)(微多孔膜(Z)の前駆体)を得た。得られた前駆体(Z)を乾燥機に投入し、120℃で、1時間アニール処理を行った。その後、アニールされた前駆体(Z)を室温にて8%冷間延伸を行い、延伸後の膜を収縮させることなく125℃のオーブン中に投入し、140%まで熱間延伸を行い、その後、15%緩和させて、微多孔層(X)/微多孔層(Y)/微多孔層(X)から成る三層構造を有するセパレータを得た。得られたセパレータの構造、物性及び電池性能評価結果を表1に示す。
表1から、微多孔層(X)に、荷重2.16kg及び温度230℃でのMFRが0.9g/10分以下のポリオレフィン樹脂を用い、成膜条件を厳密に制御することにより、平均長孔径が十分に大きく、透気度も十分に低く、かつ、高い突刺強度を両立するセパレータを作製することができることが分かる。また、十分な平均長孔径、および微多孔層(X)と微多孔層(Y)の対比において平均長孔径の十分な比率を有するセパレータを用いることにより、リチウムイオン二次電池内でのセパレータの目詰まりを抑制し、サイクル性能を改善することが分かる。
Figure 2022051522000001
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、高強度かつ低透気度であり、蓄電デバイス内での目詰まりを抑制することが可能であり、蓄電デバイス、例えばリチウムイオン二次電池等のセパレータとして好適に利用することができる。

Claims (10)

  1. ポリオレフィン(A)を主成分とする微多孔層(X)と、ポリオレフィン(B)を主成分とする微多孔層(Y)と、を有し、
    前記微多孔層(X)の荷重2.16kg及び温度230℃におけるメルトフローレート(MFR)が、0.9g/10min以下であり、
    走査型電子顕微鏡(SEM)による前記微多孔層(X)及び前記微多孔層(Y)のND-MD断面観察において、
    前記微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径が、100nm以上、400nm以下であり、かつ
    前記微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径は、前記微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径より大きい、
    蓄電デバイス用セパレータ。
  2. 前記SEMによる前記微多孔層(X)及び前記微多孔層(Y)のND-MD断面観察において、前記微多孔層(Y)に存在する孔の平均長孔径は、150nm以上、2000nm以下であり、かつ前記微多孔層(X)に存在する孔の平均長孔径の1.2倍以上10倍以下である、
    請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  3. 前記蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した際の透気度が、250秒/100cm以下である、
    請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  4. 前記蓄電デバイス用セパレータの気孔率が、20%以上70%以下である、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  5. 前記ポリオレフィン(A)の主成分が、ポリプロピレンである、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  6. 前記ポリオレフィン(A)の主成分が、ポリプロピレンであり、かつ
    前記ポリオレフィン(B)の主成分が、ポリエチレンである、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  7. 前記ポリプロピレンのペンタッド分率が、94.0%以上である、
    請求項5又は6に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  8. 前記ポリプロピレンの荷重2.16kg及び温度230℃におけるMFRが、0.6g/10min以下である、
    請求項5~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  9. 前記蓄電デバイス用セパレータの厚みを16μmに換算した際の突刺強度が、300gf以上である、
    請求項1~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータを備える、
    蓄電デバイス。
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