JP2024048532A - 化学強化ガラス - Google Patents

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【課題】安定した防火性能を有する化学強化ガラスを提供する。【解決手段】表面圧縮応力CSが340MPa以上であり、圧縮応力層の深さDOLが20μm以上50μm以下であり、板厚が2mm以上12mm以下であり、徐冷点以上に加熱し、1℃/分で徐冷した際の密度変化が0.0050g/cm3以下であり、ソーダライムガラスである、化学強化ガラス。【選択図】図1

Description

化学強化ガラスであって、特に、防火性能を有する化学強化ガラスに関する。
従来、延焼防止等の目的のため、遮炎性能が求められる防火ガラスとして、火災発生時にガラスが割れ、脱落することによる開口が生じないようにした網入りガラスが用いられている。また、風冷強化法によりガラス表面に表面圧縮応力を形成し、火災によって発生するガラス面内とサッシで覆われたエッジ部分との温度差により発生する引張応力(熱応力)に耐えることで割れにくくした耐熱強化ガラス(特許文献1参照)、又は透明結晶化ガラス等も防火ガラスとして用いられている。
特開2021-175704号公報
防火ガラスとして用いられる上記の網入りガラス及び耐熱強化ガラスは、適当な防火性能を有するものの、その性質上厚さが厚くなることから取り扱い性に問題がある。また、透明結晶化ガラスは、クラックにより強度が低下することなどの問題がある。
かかる問題に対して、取り扱い性を容易化し且つ適当な強度を得るために、防火ガラスとして化学強化ガラスを適用することが考えられる。しかしながら、防火ガラスの分野では、安定した防火性能を有する化学強化ガラスが提案されておらず、よって、安定した防火性能を有する化学強化ガラスの開発が望まれていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、安定した防火性能を有する化学強化ガラスを提供することを目的とする。
本発明の一態様の化学強化ガラスは、表面圧縮応力CSが340MPa以上であり、圧縮応力層の深さDOLが20μm以上50μm以下であり、板厚が2mm以上12mm以下であり、徐冷点以上に加熱し、1℃/分で徐冷した際の密度変化が0.0050g/cm3以下であり、ソーダライムガラスである。
上記の化学強化ガラスは、JIS R3206(2003)で規定される反りが0.25%以下であってもよい。
上記いずれかの化学強化ガラスのエッジ強度は、対数0.1%破壊確率の応力で190MPa以上であってもよい。
上記いずれかの化学強化ガラスは、エッジ強度の破壊応力の最小値が230MPa以上であってもよい。
上記いずれかの化学強化ガラスは、エッジ強度の破壊応力の平均値が290MPa以上であってもよい。
上記いずれかの化学強化ガラスは、端面の潜傷深さが45μm以下であってもよい。
上記いずれかの化学強化ガラスは、圧縮応力層の深さDOLに対し、潜傷深さの割合が95%以下であってもよい。
本発明の化学強化ガラスによれば、防火性能を安定化できる。
実施形態に係る化学強化ガラスの斜視図である。 化学強化ガラスの反りの測定位置を説明するための図である。 グリッドボード法評価で用いるグリッドボードを示す図である。 グリッドボード法による評価事例を示す図である。 エッジ強度を測定するための試験治具の一例を示す概略図である。 化学強化後のガラスから4枚のガラス板を切断する方法を説明した図である。 各ガラス板の密度変化を比較したグラフである。 3点曲げ試験機の概略説明である。 ビームベンディング粘度計の装置構成図である。 ビームベンディング法により6枚の試験体の変位量を測定したグラフである。 580℃付近まで加熱された耐熱強化ガラスを熱画像で示した説明図である。 580℃付近まで加熱された化学強化ガラスを熱画像で示した説明図である。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明は、以下の好ましい実施形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施形態以外の他の実施形態を利用できる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
ここで、図中、同一の記号で示す部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ ~ ”を用いて表す場合は、“ ~ ”で示す上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳説する。図1は、実施形態にかかる化学強化ガラス10の外観を示した斜視図である。
〔化学処理について〕
図1に示す本例の化学強化ガラス10は、化学処理により、ガラス表面に圧縮応力層及びガラス内部に引張り応力層を生じさせたガラスであり、ガラスの表面に圧縮応力層を形成させて強度を高めたガラスである。化学処理としては、例えば、イオン交換法等がある。イオン交換法は、ガラス板の表面及び裏面をイオン交換し、ガラスに含まれる小さなイオン半径のイオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン)を大きなイオン半径のイオン(例えば、カリウムイオン)に置換するものである。これにより、ガラス板の表面層及び裏面層に表面圧縮応力CS(Compressive Stress)が生じる。表面圧縮応力CSはガラスの表面全体に生じ、ガラスの表面全体に均一な厚みの圧縮応力層が形成される。イオン交換法では、ガラス板を高温の処理液(例えば、硝酸カリウム溶融塩)に浸漬してイオン交換を行う。なお、イオン交換時には、ガラス板のすべての端面においてもイオン交換を行い、エッジ強度を向上させることが好ましい。
〔表面圧縮応力CS及び圧縮応力層の深さDOLについて〕
ガラス表面の表面圧縮応力CSの大きさ、ガラス表面に形成される圧縮応力層の深さ(DOL:Depth of Layer)は、それぞれ、化学処理時間、及び化学処理温度により調整できる。例えば、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、圧縮応力層の深さDOLが深くなる。また、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、最初は表面圧縮応力CSの大きさが大きくなる。なお、途中から表面圧縮応力CSの大きさが小さくなる。また、化学処理時間と化学処理温度が異なるとき、圧縮応力層の深さDOLと、表面圧縮応力CSの大きさとは、一対一で対応しない場合がある。
化学強化ガラスは、表面圧縮応力CSが大きいほど強度が高められて割れにくくなり、防火ガラスとして好ましいものとなる。このような観点から、本例の化学強化ガラス10は、表面圧縮応力CSが340MPa以上であり、好ましくは360MPa以上であり、更に好ましくは380MPa以上である。これにより、本例の化学強化ガラス10は、防火ガラスとして好適な強度を有する。なお、化学強化ガラス10の表面圧縮応力CSは、製造コストを削減し、圧縮応力層の深さDOLの深さを確保して機械的強度を得るために、650MPa以下であってもよい。
化学強化ガラスは、圧縮応力層の深さDOLが深いほど外力に対して割れにくくなり、防火ガラスとして好ましいものとなる。このような観点から、本例の化学強化ガラス10は、圧縮応力層の深さDOLが20μm以上であり、好ましくは24μm以上であり、更に好ましくは28μm以上である。これにより、本例の化学強化ガラス10は、防火ガラスとして外力に耐え得る好適な強度を有する。なお、化学強化ガラス10の圧縮応力層の深さDOLは、表面圧縮応力CSの大きさを確保し、溶融塩への浸漬を短時間であってもよくするために、50μm以下であってもよい。
〔板厚について〕
本例の化学強化ガラス10は、防火ガラスに適用するために、板厚が2mm以上12mm以下であり、好ましくは2mm以上10mm以下であり、より好ましくは2mm以上8mm以下であり、更に好ましくは2mm以上6mm以下である。化学強化ガラス10は、板厚が2mm以上であれば窓ガラスとして使用した際に化学強化ガラス10のたわみを少なくできる。また、化学強化ガラス10は、板厚が12mm以下であれば、重量は大きすぎず、従来の耐熱強化ガラス及び網入りガラスと比較して、取り扱いは困難にならない。
〔ソーダライムガラスについて〕
また、化学強化ガラス10は、ソーダライムガラスで構成される。ソーダライムガラスは、例えば、酸化物基準のモル百分率表示でSiO2を65~76%、Al23を0.2~3%、Na2Oを10~16%、K2Oを0~2%、MgOを2~12%、CaOを5~15%含有することが好ましい。以降、百分率表示は、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示含有量を示す。
SiO2は、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分として知られており、ガラスを構成する主要成分である。SiO2の含有量は、65%以上であり、好ましくは67%以上、より好ましくは69%以上である。また、SiO2の含有量は、76%以下であり、好ましくは74%以下、より好ましくは72%以下である。SiO2の含有量が65%以上であるとガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiO2の含有量が76%以下であると熔解性及び成形性の点で優位である。
Al23はガラスの耐候性を向上させる成分であり、化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用がある。Al23の含有量は、0.2%以上であり、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.6%以上である。また、Al23の含有量は、3%以下であり、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下である。Al23の含有量が0.2%以上であると、ガラスを屋外に面して使用しても十分な耐候性が得られる。一方、Al23の含有量が3%以下であると、ガラスの熔解時の粘性を低く保つことができ、かつ成型時に失透が発生することがなく、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位である。
Na2Oはガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。また、イオン交換により圧縮応力を形成させる成分であり、圧縮応力層の深さDOLを大きくする作用がある。Na2Oの含有量は、10%以上であり、好ましくは11%以上、より好ましくは12%以上である。また、Na2Oの含有量は、16%以下であり、好ましくは15%以下、より好ましくは14%以下である。Na2Oの含有量が10%以上であると、イオン交換により所望の圧縮応力を形成できる。一方、Na2Oの含有量が16%以下であると、充分な耐候性が得られる。
2Oは必須ではないが、ガラスの熔解性を向上するため、化学耐久性を向上するため、イオン交換速度を増大するため含有してもよい。一方、K2Oが多くなりすぎるとガラスの熱膨張係数が大きくなり、熱割れし易く、防火性が低下する。K2Oを含有する場合は2%以下が好ましく、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。K2Oの含有量が2%以下であると、熱割れしにくく、防火ガラスに適している。
MgOは、ガラスを安定化させる成分である。MgOの含有量は、2%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上である。また、MgOの含有量は、12%以下であり、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下である。MgOの含有量が2%以上であると、ガラスの耐候性が良好になる。高温での熔解性が良好になる。一方、MgOの含有量が12%以下であると、ガラス製造時に失透が起こりにくい。
CaOは、ガラスを安定化させる成分である。耐水性、耐薬品性を向上させるために、CaOの含有量は、5%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上である。また、CaOの含有量は、15%以下であり、好ましくは13%以下、より好ましくは11%以下である。CaOの含有量が5%以上であるとガラスの耐水性、耐薬品性が良好になる。一方、CaOの含有量が15%以下であると、ガラス製造時に失透が起こりにくく、イオン交換で所望の圧縮応力が得られる。
以上述べた成分以外に、硫酸塩等の清澄剤、Fe23、TiO2、ZrO2、SnO2等の微量成分を、合計で1%以下含有してもよい。
〔反りについて〕
また、化学強化ガラス10の、JIS R3206(2003)で規定される反りは、好ましくは0.25%以下であり、より好ましくは0.20%以下であり、更に好ましくは0.15%以下である。反りが0.25%以下であると、防火ガラス(窓ガラス)としての反射映像の歪みを防止できる。化学強化ガラス10の反りは、化学強化工程中のガラスのチルト角度を±1.0度で管理、つまり鉛直方向からの傾きを±1.0度以下に維持し、ガラスのたわみを抑えることで小さくできる。なお、本例の化学強化ガラス10を、周知構成の複層ガラスに適用した場合、反りが0.25%以下であると、火災発生時にシール剤の隙間が開きにくくなり、炎が漏れにくくなる利点がる。
図2は、ガラス板の反りの測定位置を説明するための図である。図2に示すように、ガラス板の頂点を結ぶ辺(長辺A及びB、短辺C及びD、対角線E及びF)に沿う位置の反りを、JIS R3206(2003)に規定されている方法に従い測定した。測定した反り(単位:mm)を、測定した辺の長さ(mm)で割ることにより、反り(=反り量/各辺の長さ)(単位:%)を求めた。表(1)は、反りを測定した結果を示す。
表(1)に示す品種について説明すると、CT3は3mmの板厚の化学強化ガラスであり、CT5は5mmの板厚の化学強化ガラスである。FR3.3は3.3mmの板厚の耐熱強化ガラスであり、FR3は3mmの板厚の耐熱強化ガラスであり、FR5は5mmの板厚の耐熱強化ガラスである。化学強化ガラスは、化学強化工程中のガラスのチルト角度を±1.0度で管理、つまり鉛直方向からの傾きを±1.0度以下に維持し、ガラスのたわみを抑えるように製造されたものである。耐熱強化ガラスは、化学強化ガラスと異なり、ガラスの軟化温度近くの650~700℃まで加熱し、ガラス両面に空気を一様に吹き付けて急冷することにより製造されたものである。測定に使用した化学強化ガラスの大きさは、2000mm×900mmであった。
表(1)に示すように、CT3及びCT5は0.15%以下を満たし、FR3.3、FR3は0.25%以下、FR5は0.15%以下を満たしていない辺があった。CT3及びCT5は、反りを小さくできることが理解できる。
Figure 2024048532000002
次に、ガラス板の反りと反射映像との関係について説明する。上述のCT3、CT5、FR3及びFR5について、グリッドボード法により反射映像の評価を実施した。図3はグリッド評価法で用いるグリッドボードである。図4はグリッドボード法による評価事例を示す図である。
図3に示すように、等間隔の平行線群が直交に配置された、格子状のグリッドボードを準備する。このグリッドボードを評価対象のガラス板から10m離れた延長線上に配置し、グリッドボードの0.5m手前からガラス板を観察する。その結果、図4に示すように、ガラス板にはグリッドボードの格子で囲まれた複数のコマが反射映像として視認される。反射映像の複数のコマの中から矢印Aで示す丸印で囲まれた最小面積のコマと、矢印Bで示す丸印で囲まれた最大面積のコマを抽出し、以下の式(1)から横(縦)伸縮コマ比を求めた。表2は、品種と伸縮コマ比の値を示しており、図4の長辺を横、短辺を縦としている(ガラスサイズ:2000mm×900mm)。
Figure 2024048532000003
式(1)に示す伸縮コマ比の値が小さいほど、反射映像が良好になる。
Figure 2024048532000004
表(2)に示すように、CT3及びCT5の伸縮コマ比の値は、FR3及びFR5の伸縮コマ比の値と比較して小さい。表(1)及び表(2)から、化学強化ガラス10を化学強化ガラスにすることにより、ガラス板の反りを小さくでき、その結果、歪みが小さい、良好な反射映像が得られることが理解できる。
次に、エッジ強度について説明する。ガラスの防火試験において、熱を受けたガラス板の中央部に発生した熱膨張によって、ガラス板は端部に引っ張り応力が付与されると、その引っ張り応力が、ガラス板に備わった端面の強度(エッジ強度)を超えることによってガラス板端面の微細なクラック又は切断時の傷等を起点として亀裂が生じ、その亀裂がガラス板内へ伝播して破壊へ至る。
このような破壊のメカニズムのため、ガラス板の防火性能を向上させる為には、エッジ強度が重要である。そこで、実施例に示すように、防火性能を安定化させるエッジ強度の範囲を検証した。
実施例では、JIS R3223(2017)に規定される試験方法に基づき、図5に示す試験治具を使用し、化学強化ガラス10のエッジ強度について、対数0.1%破壊確率の応力、エッジ強度の破壊応力の最小値及びエッジ強度の破壊応力の平均値を求めた。ここで対数0.1%破壊確率の応力は、ガラスに該応力が印加された際に、1000枚中1枚破損する可能性があることを意味する。エッジ強度の評価のためのN数は10体以上が好ましく、より好ましくは20体以上である。
図5に示すように、評価する試験片のガラスエッジが下方、すなわち支持棒側となるように試験治具に設置し、板厚t(mm)、100(mm)の高さH、1000(mm)の幅W、の試験片を、900(mm)の支持スパンl1で支持し、300(mm)の荷重スパンl2、1mm/分の荷重点速度として、エッジ強度を測定した。これらの条件の曲げ変形試験によってエッジの強度評価を行った。破壊荷重Fを式(2)に代入して破壊強度σfeを計算し、対数正規分布による統計処理からエッジの0.1%破壊確率強度を求めた。このエッジ強度評価試験において、曲げ変形でガラスが破壊した時の最大荷重を破壊荷重Fとした。なお、破壊起点が荷重スパン内にあり、かつ破壊起点がガラス板の端面にあるデータのみを統計処理した。
Figure 2024048532000005
〔エッジ強度、エッジ強度の破壊応力の最小値及び平均値について〕
さらに、破壊強度σfeからエッジ強度の破壊応力の最小値及びエッジ強度の破壊応力の平均値を求めた。防火ガラスとしての化学強化ガラス10のエッジ強度は、好ましくは対数0.1%破壊確率の応力で190MPa以上であり、より好ましくは210MPa以上であり、更に好ましくは230MPa以上である。また、防火ガラスとしての化学強化ガラス10のエッジ強度の破壊応力の最小値は、好ましくは230MPa以上であり、より好ましくは250MPa以上であり、更に好ましくは270MPa以上である。また、防火ガラスとしての化学強化ガラス10のエッジ強度の破壊応力の平均値は、好ましくは290MPa以上であり、より好ましくは310MPa以上であり、更に好ましくは330MPa以上である。
エッジ強度の評価に供される化学強化ガラスは、2000mm×900mmのガラスを面取した後、化学強化処理し、化学強化後のガラスから4枚のガラス板を切断し、試験体とした。図6は、化学強化後の化学強化ガラスから4枚のガラス板を切断する場合の図である。図6に示すように1枚のガラス板G(2000mm×900mm)から、ガラス板の周縁を含むように4枚のガラス板G1、G2、G3及びG4(1000mm×100mm)が切断される。
エッジ強度(破壊応力)の大きさは、試験体の大きさに影響を受ける。2個の試験体の破壊強度をσfe1及びσfe2とし、エッジの有効表面積をSe1及びSe2とし、形状母数をmとした場合、以下の式(3)の関係式を満たすことが知られている。形状母数mは、JIS R1625(2010)に準拠したワイブルプロットから求められる。
Figure 2024048532000006
本例の化学強化ガラス10の場合、ガラス板の板厚が一定であれば、有効表面積は有効長さの比になる。大板サイズのガラス板と小板サイズのガラス板とが同じ板厚の場合、次のように算出できる。
大板サイズのガラス板の破壊強度がσfe2(MPa)、大きさが1000mm(W)×100mm(H)、有効評価長さ(荷重スパン)が300mm(l2)で、小板サイズのガラス板の大きさが70mm(W)×20mm(H)、有効評価長さ(荷重スパン)が20mm(l2)である場合、小板サイズのガラス板の破壊強度のσfe1(MPa)を推測する場合、式(3)に基づいて、式(4)により算出できる。
Figure 2024048532000007
〔潜傷深さについて〕
防火ガラスとしての化学強化ガラス10の潜傷深さに関し、安定したエッジ強度及び防火性能を実現できる面取り後の化学強化ガラスの端面の潜傷深さは、好ましくは45μm以下であり、より好ましくは35μm以下であり、更に好ましくは20μm以下である。なお、化学強化ガラスの端面に処理される面取りは、C面取り、R面取り等、面取りの形状は、特に限定されない。ここで、潜傷とは、端面の形状付与、面取り、又は研削等の加工工程において、ガラスに生じる目に見えない微細な傷のことである。これらの潜傷は、エッチング処理を行うと傷の先端が開くため、顕微鏡による観察が可能となる。
〔圧縮応力層の深さDOLに対する潜傷深さの割合について〕
防火ガラスとしての化学強化ガラス10の圧縮応力層の深さDOLに対する潜傷深さの割合は、好ましくは95%以下であり、より好ましくは70%以下であり、更に好ましくは50%以下である。圧縮応力層の深さDOLに対する潜傷深さの割合を上述の範囲とすることで、防火性能を向上できる。
次に、潜傷の深さを測定する方法について説明する。
まず、化学強化ガラスのエッジ端面を所定量研磨する。この際、評価に影響する新たな潜傷が発生しないように注意深く研磨する。その後エッチング処理して洗浄と乾燥を行い、光学顕微鏡で観察する。例えば、光学顕微鏡の対物レンズは20倍を使用し、観察視野635μm×480μmで観察を行う。この観察で潜傷が5つ以上の場合、別の新たなサンプルについて、研磨量を調整し、同様の操作を行う。潜傷が5つ未満の場合、残った潜傷深さをレーザー顕微鏡にて観察し、研磨後の潜傷深さを測定する。研磨後の潜傷深さと研磨量の和を、化学強化ガラスのオリジナルの潜傷深さとする。
「エッチング」は、化学強化ガラスの全体をエッチング液に浸漬して室温(25℃)で行われる。エッチング液としては、46質量%のフッ酸(HF)13mLとクエン酸12gを混合し、純水を所定量混合して、HF3%溶液を作成する。エッチング液は化学強化ガラスの表面や内部に形成される潜傷に浸入し、潜傷を拡げて明瞭化するために実施される。
「エッチング量」は、浸漬時間で制御される。具体的には、あらかじめ同一組成のガラスを用いて所定時間エッチングを行ってエッチングレートを算出した後、所望のエッチング量となるように浸漬時間を調整してエッチングを行う。なお、ガラスの種類によっては、エッチングレートを調整するためにフッ酸濃度を変更してもよい。
潜傷深さの大きさは観察視野の大きさに影響を受ける。ここで、潜傷深さと観察視野の関係は、式(3)の関係式における破壊強度σfeとエッジの有効表面積Seの関係から推算する。ガラスの破壊強度σfe(σc)は式(5)に示すように傷の深さcの平方根に反比例することが知られている。ここで、KICはガラスの破壊靭性値、Yは傷の形状で決まる係数である。観察視野635μm×480μmで観察した場合に潜傷深さが45μm以下であるという条件に対し、観察視野が変化した場合は適切な潜傷深さの上限値は、KICとYの値を一定として、式(3)と式(5)から求める。
Figure 2024048532000008
〔密度変化について〕
ガラスは、ガラス板に成形し、室温に冷却した後にガラスの仮想温度(構造温度Tfともいう)が低くなっていることが好ましい。仮想温度とは、ガラス構造が、何度の過冷却液体の安定構造((準)熱平衡状態)に対応しているかを示す温度であり、ガラスの徐冷点から200℃付近までの冷却速度によって決定される。ガラスの冷却速度が早いと構造緩和する時間が不十分になるため、同じ組成のガラスでも密度は低くなり、仮想温度は高くなる。ガラスの仮想温度の変化は、ガラスの密度変化によって見積もることができる。成形したガラスの密度を室温で測定し、そのガラスを徐冷点以上に加熱してから1℃/分の速度で200℃以下に徐冷して、再び室温でガラスの密度を測定する。再徐冷処理前後で測定される密度の差によって、成形されたガラスの仮想温度が、1℃/分の速度で徐冷したときの仮想温度に対してどの程度高い状態であったかを知ることができる。
防火ガラスとして防火性能を安定して発揮するための化学強化ガラス10においては、密度変化(徐冷点以上に加熱し、1℃/分で200℃以下に徐冷した際の密度変化。以下、同じ。)が、0.0050g/cm3以下であることがよい。また、後述するように、密度変化は、好ましくは0.0040g/cm3以下であり、より好ましくは0.0030g/cm3以下であり、更に好ましくは0.0025g/cm3以下である。密度変化が小さいことは、ガラスの密度が高いことを示している。本例の化学強化ガラス10は、一例として、ガラスの徐冷点から200℃付近までの徐冷時間を調整することで製造可能である。具体的には、ガラスを溶融塩から取り出し、425℃で20分間保持した後、105℃/時以下の速度で徐冷することで、密度変化が小さいガラスを得ることができる。
後述するように、密度変化が小さいガラスほど、高温下におけるガラス板の熱だれ開始時間(曲がり始め時間とも言う。)が遅延し、且つ熱だれ量(熱変位量とも言う。)も抑制できる。つまり、防火ガラスとして化学強化ガラスを採用する場合、既述した各要素(表面圧縮応力CS、圧縮応力層の深さDOL、板厚、ソーダライムガラス)に加え、密度変化を規定することが重要な要素となる。以下、耐熱試験等を説明しつつ密度変化を規定した本例の化学強化ガラス10について説明する。
[実施例]
〔密度変化〕
〔試験体〕
フロートガラス、第1化学強化ガラス、第2化学強化ガラス、倍強度ガラス、耐熱強化ガラスを準備した。なお、倍強化ガラスはJIS R3222で規定されるガラスであり、耐熱強化ガラスは社団法人カーテンウォール・防火開口部協会によって定められた「耐熱板ガラス品質規格」で規定されるガラスである。なお、第1化学強化ガラスは、ガラスを溶融塩から取り出し、425℃で20分間保持した後、105℃/時以下の速度で徐冷することで製造した。第2化学強化ガラスは、第1化学強化ガラスと比較して密度変化が大きいことから、第1化学強化ガラスよりも短い徐冷時間で製造されたと推定される。
図7は、フロートガラス、第1化学強化ガラス、第2化学強化ガラス、倍強度ガラス、耐熱強化ガラスの各々の(精密徐冷前後の)密度変化を比較したグラフを示す。図7のグラフによれば、フロートガラスの密度変化は0.0074g/cm3であり、第1化学強化ガラスの密度変化は0.0008g/cm3であり、第2化学強化ガラスの密度変化は0.0044g/cm3であり、倍強度ガラスの密度変化は0.0099g/cm3であり、耐熱強化ガラスの密度変化は0.0112g/cm3であった。
〔耐熱試験〕
〔試験体〕
次に、試験体1~6のガラスを準備した。試験体1、2、3は第1化学強化ガラスであり、試験体4、5、6は倍強度ガラスである。試験体1~6の形状は、平面視でそれぞれ70mm(±1.0mm)×5mm(±0.025mm)の矩形状であり、厚さは、試験体1~3がそれぞれ3mm、試験体4~6がそれぞれ6mmである。また、それぞれの試験体1~6は、端面を#1000の砥石で研磨仕上げしたものである。
[測定方法]
ビームベンディング法により試験体1~6の変位量を測定した。本試験では、ビームベンディング粘度計を用いて、図8に示すように一定荷重下にて3点曲げ試験を行い、試験体1~6の曲がり始めの温度を決定する。図8中、符号30は試験体であり、符号32は試験体30が載置される一対のブロックであり、符号34は押金具である。次に、図9に本試験で用いたビームベンディング粘度計の装置構成を示す。サーボモータ36は物体の位置、方位、姿勢などを制御量として目標値に追従するように自動で作動する。ロードセル38は力(質量、トルク)を検出するセンサーであり、それを電気信号に変換する。制御部40はサーボモータ36を制御し、サーボモータ36はロードセル38の状態を確認して制御部40へフィードバックする。また、制御部40は熱電対42を制御し、熱電対42は温度を制御部40へフィードバックする。3点曲げ試験機は、熱電対42によって加熱される電気炉44内に設置されている。また、制御部40によって測定されたデータはパーソナルコンピューター46に記録される。ここで、試験体1~6を2点支持するためのスパン(ブロック32、32間の距離)を30mmに設定し、試験体1~6に付加する荷重を30gfに設定した。温度条件としては、室温から30分かけて360℃に上昇させた後、+5℃/分の加熱速度で650℃まで上昇させる温度環境に設定し、375℃に上昇したときに上記の荷重を試験体1~6に付加した。
〔試験結果〕
図10に試験結果を示す。図10に示すグラフの横軸は温度(℃)(経過時間に相当)を示し、縦軸は変位量(mm)を示している。
図10では、試験体1の結果がライン1で示すグラフで示され、試験体2の結果がライン2で示すグラフで示され、試験体3の結果がライン3で示すグラフで示され、試験体4の結果がライン4で示すグラフで示され、試験体5の結果がライン5で示すグラフで示され、試験体6の結果がライン6で示すグラフで示されている。
図10のグラフによれば、倍強度ガラスである試験体4~6は、ライン4~6のグラフに示すように、「曲がり始め温度(熱だれ開始時間)」が584℃付近である。これに対し、化学強化ガラスである試験体1~3は、ライン1~3のグラフに示すように、「曲がり始め温度(熱だれ開始時間)」が593℃付近である。したがって、本件の耐熱試験によれば、密度変化が小さい化学強化ガラスは、密度変化が大きい倍強度ガラスよりも、約10℃高い高温環境化(593℃)で曲がり始めることから、防火ガラスとして優位性があることが理解できる。ここで、図10に示した各グラフは、時間の経過とともにマイナス側に変位したものとなっているが、これは熱によって生じた試験体1~6の反り量を示しており、熱だれとは異なるものである。
なお、フロートガラス、第2化学強化ガラス、耐熱強化ガラスについては、以下の方法により「曲がり始め温度」を規定した。すなわち、曲がり始めの温度が密度変化(0.011g/cm3)と線形関係にあると仮定した際の推定値を「曲がり始め温度」とみなした。
ここで、曲がり始めの温度と密度変化を線形関係にあると仮定できる理由を説明する。密度変化は、仮想温度と線形に近い関係にあることが示されている(原守久・末利志郎、旭硝子研究報告、Vol.5、P126(1995)、転移域におけるガラスの密度変化)。先述の通り、ガラスの冷却速度が早いと、同じ組成のガラスでも密度は低くなり、仮想温度は高くなる。また、仮想温度が高いほど、つまり構造緩和が不十分なガラスほど、より安定な状態へ変化しようとするため、曲がり始めの温度は低くなる。このように、仮想温度は密度変化と線形に近い関係にあり、仮想温度と曲がり始めの温度には一定の関係があることから、曲がり始めの温度と密度変化を線形関係にあると仮定した。
フロートガラス、第1化学強化ガラス、第2化学強化ガラス、倍強度ガラス、耐熱強化ガラスのそれぞれの密度変化と曲がり始め温度をまとめると以下の表(3)となる。なお、密度変化の値は、小数点第四位を四捨五入した値として示している。また、第2化学強化ガラス、耐熱強化ガラス、およびフロートガラスの「曲がり始め温度」は、先述した推定値である。
Figure 2024048532000009
上記の表(3)に示すように、密度変化が小さいほど「曲がり始め温度」が高温になる。つまり、曲がり始めの時間が遅延する。よって、他のガラスよりも密度変化の小さい第1化学強化ガラスは、安定した防火性能を有することが理解できる。なお、密度変化が0.0044g/cm3である第2化学強化ガラスにおいても、曲がり始めの時間が、倍強度ガラス及び耐熱強化ガラスよりも遅延する。このような観点から、密度変化が0.0050g/cm3以下の化学強化ガラスであれば、安定した防火性能を有する。また、密度変化は、好ましくは0.0040g/cm3以下であり、より好ましくは0.0030g/cm3以下であり、更に好ましくは0.0025g/cm3以下である。
なお、密度変化が0.0050g/cm3以下を満たす化学強化ガラスであっても、例えば圧縮応力層の深さDOLが20μm以上を満たさない化学強化ガラスや、表面圧縮応力CSが340MPa以上を満たさない化学強化ガラスは、防火ガラスとしての強度を有していないため防火ガラスとして安定した防火性能を発揮しない。
[実施例]
[防火試験]
<試験体仕様>
耐熱強化ガラス(No.7、No.8) 板厚:8mm
密度変化:0.011g/cm3
耐熱強化ガラスの他の仕様は下記の表(4)を参照。
Figure 2024048532000010
化学強化ガラス(No.9、No.10、No.11、No.12) 板厚:8mm
密度変化:0.002g/cm3
化学強化ガラスの他の仕様は下記の表(5)を参照。
Figure 2024048532000011
ガラスサイズ(共通):(W)2030mm×(H)3030mm
試験枠開口:(W)2000mm×(H)3000mm(押縁の掛代15mm)
試験枠:鉄枠(4辺嵌め殺し)
試験体の背面側から試験体を加熱して、試験体の熱だれ開始温度を測定し、両者を比較した。
図11は、580℃付近まで加熱された、試験体No.8の耐熱強化ガラス20を熱画像で示した説明図である。図11に示すように、耐熱強化ガラス20は、上辺部20Aの大部分(破線Cで示す部分)に熱だれが確認され、上辺部20Aの厚さが薄くなって上辺部20Aと上枠(不図示)との間に開口が確認された。また、左右の縦辺部20B、20Cの付近に皺22が多く確認された。更に、下辺部20D付近の厚さが他の部分の厚さよりも厚くなったことが確認された。
図12は、580℃付近まで加熱された、試験体No.9の化学強化ガラス10を熱画像で示した説明図である。図12に示すように、化学強化ガラス10は、左右の縦辺部10B、10Cの近傍に皺12が確認されたものの、その皺12の数は580℃での耐熱強化ガラス20の皺22(図11参照)の数よりも少なかった。また、上辺部10Aには熱だれが確認されず、上辺部10Aと上枠(不図示)との間の開口も確認されなかった。
なお、図12にて説明した化学強化ガラス10は、595℃付近まで加熱した際に上辺部10Aの一部分に熱だれが若干確認されたが、上辺部10Aと上枠(不図示)との間の開口は確認されなかった。また、左右の縦辺部10B、10Cの付近の皺が増えたことが確認され、また、下辺部10D付近の厚さが他の部分の厚さよりも若干厚くなったことが確認された。
化学強化ガラス10は、密度変化が0.0050g/cm3以下(好ましくは0.0040g/cm3以下、より好ましくは0.0030g/cm3以下、更に好ましくは0.0025g/cm3以下)であり、耐熱強化ガラスよりも密度変化が小さい(換言すれば密度が高い)。これにより、曲がり始め温度が耐熱強化ガラスよりも高くなる。その結果、化学強化ガラス10は、防火ガラスとして耐熱強化ガラスよりも優位性があり、安定した防火性能を有する。
また、図11の耐熱強化ガラス20と図12の化学強化ガラス10は、どちらもエッジ強度が190MPaより大きく、ガラス板端面からの割れは生じなかった。化学強化ガラス10のエッジ強度は、対数0.1%破壊確率が190MPa以上が好ましく、破壊応力の最小値が230MPa以上が好ましく、破壊応力の平均値が290MPa以上が好ましい。これにより、熱を受けたガラス板の熱膨張によって、ガラス板は端部に引っ張り応力が付与されても、ガラス板端面の微細なクラック又は切断時の傷等を起点として亀裂が生じ、その亀裂がガラス板内へ伝播して破壊へ至ることを抑制できる。
以上説明したように、本例の化学強化ガラス10によれば、表面圧縮応力CSが340MPa以上であり、圧縮応力層の深さDOLが20μm以上50μm以下であり、板厚が2mm以上12mm以下であり、密度変化が0.0050g/cm3以下であり、ソーダライムガラスである構成を採用したので、安定した防火性能を有する。
[実施例]
[エッジ強度試験]
<試験体仕様>
化学強化ガラス(No.13、No.14) 板厚:8mm
化学強化ガラスの他の仕様は下記の表(6)を参照。
Figure 2024048532000012
JIS R3223(2017)に規定される試験方法に基づき、図5に示す試験治具を使用し、化学強化ガラス10のエッジ強度を求めた。なお、破壊起点が荷重スパン内にあり、かつ破壊起点がガラス板の端面にあるデータのみを統計処理した。
化学強化ガラスは、表面圧縮応力CSが340MPa以上であり、かつ圧縮応力層の深さDOLが20μm以上50μm以下を満たしており、エッジ強度は、対数0.1%破壊確率の応力が190MPa以上を満たし、破壊応力の最小値が230MPa以上を満たし、破壊応力の平均値が290MPa以上を満たしていた。
〔変形例〕
本例の化学強化ガラス10は、1枚の化学強化ガラス10を防火ガラスとして用いることを前提としたものであるが、例えば、2枚以上のガラス板を有する周知構成の複層ガラスに本例の化学強化ガラス10を適用した複層ガラスを防火ガラスとして用いてもよい。この場合、2枚以上の全てのガラス板に本例の化学強化ガラス10を適用してもよく、また、少なくとも1枚のガラス板に本例の化学強化ガラス10を適用してもよい。
化学強化ガラス10と低放射膜付きガラスを有する複層ガラスを防火ガラスとして用いてもよい。このとき、低放射膜はガラスの内側(密閉された中空層側)主面に形成されており、Low-E(Low Emissivity)膜とも称する。低放射膜の放射率は好ましくは0.12以下であり、より好ましくは0.10以下であり、更に好ましくは0.04以下である。放射率は、日本工業規格JIS R3106(2019)により規定される垂直放射率の値である。低放射膜付きたガラス板の放射率は、赤外分光機Perkin Elmer社製のFT/IR「Frontier Goldにより測定できる。
低放射膜は、スパッタリング装置等を用いて成膜した銀(Ag)を主体とした低放射膜でもよいし、化学蒸着装置やスパッタリング装置等を用いて成膜した酸化スズ(SnO2)を主体とした低放射膜であってもよい。銀(Ag)を主体とした低放射膜は、銀膜を酸化物膜、窒化物膜等で積層化したタイプも含む。
低放射膜が形成されるガラスとしては、例えば、建築用のソーダライムガラスを適用できる。低放射膜が形成されるガラスは、ガラスの製造プロセスにより得られた平板状のガラス(切断されたガラスも含む)で、化学強化処理等が施されていないガラスであってもよいし、化学強化処理等が施されたガラスであってもよい。
複層ガラスの防火試験において、低放射膜付きガラスが非加熱側に配置され、化学強化ガラスが加熱側に配置されるように複層ガラスが配置された場合、低放射膜が熱を炉の内側に反射するので、化学強化ガラスの加熱ペースが単板の場合に比べて速くなる。
したがって、化学強化ガラス10と低放射膜付きガラスを有する複層ガラスにおいて化学強化ガラス10は、単板で使用する場合よりも高いエッジ強度が求められる。複層ガラスに用いる化学強化ガラス10のエッジ強度は、好ましくは対数0.1%破壊確率の応力で260MPa以上であり、より好ましくは280MPa以上であり、更に好ましくは300MPa以上である。また、化学強化ガラス10のエッジ強度の破壊応力の最小値は、好ましくは300MPa以上であり、より好ましくは330MPa以上であり、更に好ましくは350MPa以上である。また、化学強化ガラスのエッジ強度10の破壊応力の平均値は、好ましくは360MPa以上であり、より好ましくは370MPa以上であり、更に好ましくは380MPa以上である。また、複層ガラスに用いる化学強化ガラス10の端面の潜傷深さは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、更に好ましくは15μm以下である。
10…化学強化ガラス、10A…上辺部、10B…縦辺部、10C…縦辺部、10D…下辺部、12…皺、20…耐熱強化ガラス、20A…上辺部、20B…縦辺部、20C…縦辺部、20D…下辺部、22…皺、30…試験体、32…ブロック、34…押金具、36…サーボモータ、38…ロードセル、40…制御部、42…熱電対、44…電気炉、46…パーソナルコンピューター

Claims (7)

  1. 化学強化ガラスであって、
    表面圧縮応力CSが340MPa以上であり、
    圧縮応力層の深さDOLが20μm以上50μm以下であり、
    板厚が2mm以上12mm以下であり、
    徐冷点以上に加熱し、1℃/分で徐冷した際の密度変化が0.0050g/cm3以下であり、
    ソーダライムガラスである、化学強化ガラス。
  2. 前記化学強化ガラスは、JIS R3206(2003)で規定される反りが0.25%以下である、請求項1に記載の化学強化ガラス。
  3. 前記化学強化ガラスのエッジ強度は、対数0.1%破壊確率の応力で190MPa以上である、請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  4. 前記化学強化ガラスのエッジ強度の破壊応力の最小値が230MPa以上である、請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  5. 前記化学強化ガラスのエッジ強度の破壊応力の平均値が290MPa以上である、請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  6. 前記化学強化ガラスの端面の潜傷深さが45μm以下である、請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
  7. 前記化学強化ガラスは、前記圧縮応力層の深さDOLに対し、潜傷深さの割合が95%以下である、請求項1又は2に記載の化学強化ガラス。
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