JP2022170719A - 複層ガラス - Google Patents

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幹通 川上
Mikimichi Kawakami
直也 小林
Naoya Kobayashi
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【課題】防火性能を安定化できる低放射膜付き複層ガラスを提供する。【解決手段】複数枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、周縁部がシール材でシールされて構成される複層ガラスであって、複数枚のガラス板のうち少なくとも一枚は放射率0.12以下の低放射膜が形成された低放射膜付きガラスであり、低放射膜付きガラス以外の複数枚のガラス板のうち少なくとも一枚は化学強化ガラスであり、化学強化ガラスの表面圧縮応力CSは340MPa以上であり、化学強化ガラスの圧縮応力層の深さDOLは20μm以上50μm以下であり、化学強化ガラスの板厚は2mm以上10mm以下であり、複数枚のガラス板は、ソーダライムガラスである。【選択図】図1

Description

複層ガラスであって、特に、防火性能を有する低放射膜付き複層ガラスに関する。
従来、延焼防止等の目的のため、遮炎性能が求められる防火ガラスとしては、火災発生時にガラスが割れ、脱落することによる開口が生じないようにした網入りガラスのほか、ガラス表面に風冷強化法により表面圧縮応力を形成し、火災によって発生するガラス面内とサッシで覆われたエッジ部分との温度差により発生する引張応力(熱応力)に耐えることで、割れにくくした耐熱強化ガラスや透明結晶化ガラスなどが用いられていた。
網入りガラスでは板厚が厚くなること、風冷強化ガラスでは板厚を厚くしないと十分な防火性能を満たさないこと、および透明結晶化ガラスではクラックにより強度が低下することなどの問題に対応するため、少なくとも2枚のガラス板を、スペーサを介して隔置し、周縁部をシール材で封止する複層ガラスにおいて、少なくとも一枚は、化学強化ガラスを用いることが提案されている(特許文献1)。
特開2014-218422号公報
しかしながら、特許文献1の複層ガラスでは、防火性能を安定化させるには十分ではなかった。また低放射膜付きガラスが非加熱側に配置された場合、低放射膜が熱を反射し加熱側のガラスがより強く加熱されるので、防火性能が安定化しなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、防火性能を安定化できる低放射膜付き複層ガラスを提供することを目的とする。
本発明の一態様の複層ガラスは、複数枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、周縁部がシール材でシールされて構成される複層ガラスであって、複数枚のガラス板のうち少なくとも一枚は放射率0.12以下の低放射膜が形成された低放射膜付きガラスであり、低放射膜付きガラス以外の複数枚のガラス板のうち少なくとも一枚は化学強化ガラスであり、化学強化ガラスの表面圧縮応力CSは340MPa以上であり、化学強化ガラスの圧縮応力層の深さDOLは20μm以上50μm以下であり、化学強化ガラスの板厚は2mm以上10mm以下であり、複数枚のガラス板は、ソーダライムガラスである。
複層ガラスの化学強化ガラスは、さらにJIS R3206(2003)で規定される反りが0.25%以下であっても良い。
上記いずれかの複層ガラスの低放射膜付きガラスは、JIS R3206(2003)で規定される反りが0.25%以下であっても良い。
上記いずれかの複層ガラスの化学強化ガラスのエッジ強度は、対数0.1%破壊確率の応力で260MPa以上であっても良い。
上記いずれかの複層ガラスの化学強化ガラスは、エッジ強度の破壊応力の最小値が300MPa以上であっても良い。
上記いずれかの複層ガラスの化学強化ガラスは、エッジ強度の破壊応力の平均値が360MPa以上であっても良い。
上記いずれかの複層ガラスの化学強化ガラスは、端面の潜傷深さが20μm以下であっても良い。
上記いずれかの複層ガラスの化学強化ガラスは、圧縮応力層の深さDOLに対し、潜傷深さの割合が95%以下であっても良い。
本発明の複層ガラスによれば、防火性能を安定化できる。
図1は、実施形態に係る複層ガラスの断面図である。 図2は、化学強化ガラスの反りの測定位置を説明するための図である。 図3はグリッドボード法評価で用いるグリッドボードを示す図である。 図4はグリッドボード法による評価事例を示す図である。 図5はエッジ強度を測定するための試験治具の一例を示す概略図である。 図6は化学強化後のガラスから4枚のガラス板を切断する方法を説明するための図である。
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
ここで、図中、同一の記号で示す部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ ~ ”を用いて表す場合は、“ ~ ”で示す上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、複層ガラスの断面図である。図1に示すように、複層ガラス10は、一定の間隔をもって対向して隔置された2枚のガラス板12Aおよび12Bと、2枚のガラス板12Aおよび12Bを隔置するスペーサ16と、を備える。
2枚のガラス板12Aおよび12Bは、例えば、それぞれ矩形形状で構成される。ガラス板12Aは、対向する2個の主面と、4個の端面と、を備える。同様に、ガラス板12Bは、対向する2個の主面と、4個の端面と、を備える。
スペーサ16は、2枚のガラス板12Aおよび12Bの間隔が一定に保持されるように、ガラス板12Aおよび12Bのそれぞれの内側主面の周縁部に沿って配置される。
中空層14が、2枚のガラス板12Aおよび12Bと、スペーサ16とにより画定される。中空層14の厚み(2枚のガラス板12Aおよび12Bの内側主面間の距離)は、2枚のガラス板12Aおよび12Bの相互間に介在配置されたスペーサ16のサイズによって定まる。中空層14の厚みは限定されるものではないが、断熱性を高める観点から4mm以上であることが好ましく、8mm以上であることがより好ましく12mm以上であることがより好ましく、16mm程度であることが更に好ましい。中空層14の厚みは20mm以下であってもよい。また、ガラス板12Aおよび12Bは2枚に限定されるものではない。複層ガラス10は、2枚以上のガラス板で構成されていればよい。したがって、複層ガラスは3枚のガラス板で構成されても、4枚のガラス板で構成されてもよい。複数枚のガラス板は、それぞれスペーサにより隔置される。また、3枚以上のガラス板は、合わせガラスと、合わせガラスに対して隔置されたガラス板、から構成される複層ガラスであってもよい。
図1に示すように、複層ガラス10は、ガラス板12Aおよび12Bがスペーサ16を介して隔置され、周縁部がシール材(1次シール材18Aおよび18Bと、2次シール材20)でシールされる構成である。
スペーサ16は、ガラス板12Aおよび12Bと対向する面が、1次シール材18Aおよび18Bによってガラス板12Aおよび12Bの内側主面に接着される。また、スペーサ16の外側(中空層14と反対側)と、ガラス板12Aおよび12Bとにより、凹状の空間が形成される。この凹状の空間に2次シール材20が、1次シール材18Aおよび18Bに接するように配置される。2次シール材20と1次シール材18Aおよび18Bとによって、中空層14が封止(密閉)される。
スペーサ16は、中空状に形成される。スペーサ16の内側(中空層14側)の面には、スペーサ16の長手方向(紙面に垂直な方向)に沿って通気孔22が一定ピッチで形成される。通気孔22は、スペーサ16の中空部24に貫通して形成され、中空部24と中空層14とを連通する。このスペーサ16の中空部24には、粒状ゼオライト等の乾燥剤26が充填される。これにより、中空層14の空気が乾燥される。
スペーサ16は、アルミニウムを主材質とする金属製のスペーサであってもよく、また、スペーサ本体を硬質の樹脂製としてその表面にアルミニウムシートを被覆したスペーサであってもよい。
1次シール材18Aおよび18Bとしては、通常架橋処理されないブチルゴム、又はポリイソブチレンをベースとし、着色と補強を目的としたカーボンブラック等のフィラーを含有せしめたものが好適である。なお、1次シール材18Aおよび18Bは固化せず、粘着性のみを有するため、いわゆる複層ガラス10におけるスペーサ16と、ガラス板12Aおよび12Bとの間の接着は、2次シール材20により確保される。
2次シール材20としては、ポリサルファイド(横浜ゴム株式会社製:商品名:ハマタイトSM9000)、シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製:商品名:SE93
6)、ウレタン(サンユレック株式会社製:商品名:SANYU IGS205)等の硬化性エラストマをベースとし、ガラス板12Aおよび12Bとの接着性を発現するために適当な変性を加えられたものが好適である。
2枚のガラス板12Aおよび12Bの内の1枚であるガラス板12Bは放射率0.12以下の低放射膜28が形成された低放射膜付きガラスである。一方、低放射膜付きのガラスで構成されるガラス板12B以外のガラス板12Aは化学強化ガラスで構成される。低放射膜28はLow-E(Low Emissivity)膜とも称する。
ガラス板12Aに適用される化学強化ガラスは、化学処理により、ガラス表面に圧縮応力層およびガラス内部に引張り応力層を生じさせたガラスであり、ガラスの表面に圧縮応力層を形成させて強度を高めたガラスである。化学処理は、例えば、イオン交換法などがある。イオン交換法は、ガラス板の表面や裏面をイオン交換し、ガラスに含まれる小さなイオン半径のイオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン)を大きなイオン半径のイオン(例えば、カリウムイオン)に置換する。これにより、ガラス板の表面層及び裏面層に表面圧縮応力CS(Compressive Stress)を生じさせる。表面圧縮応力CSはガラスの表面全体に生じ、ガラスの表面全体に均一な厚みの圧縮応力層が形成される。イオン交換法では、ガラス板を高温の処理液(例えば、硝酸カリウム溶融塩)に浸漬してイオン交換を行う。
ガラス表面の表面圧縮応力CSの大きさ、ガラス表面に形成される圧縮応力層の深さ(DOL:Depth of Layer)は、それぞれ、化学処理時間、および化学処理温度により調整できる。例えば、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、圧縮応力層の深さDOLが深くなる。また、化学処理温度が同じ場合、化学処理時間が長いほど、最初は表面圧縮応力CSの大きさが大きくなる。なお、途中から表面圧縮応力CSの大きさが小さくなる。化学処理時間と化学処理温度が異なるとき、圧縮応力層の深さDOLと、表面圧縮応力CSの大きさとは、一対一で対応しない場合がある。
化学強化ガラスが適用されるガラス板12Aは、表面圧縮応力CSが大きいほど割れにくくなる。したがって、ガラス板12Aの表面圧縮応力CSは、340MPa以上であり、好ましくは360MPa以上であり、更に好ましくは380MPa以上である。ガラス板12Aの表面圧縮応力CSは、製造コストを削減し、圧縮応力層の深さDOLの深さを確保して機械的強度を得るために、650MPa以下であってもよい。
ガラス板12Aの圧縮応力層の深さDOLは、外力に耐えられる強度を確保するため20μm以上であり、好ましくは24μm以上であり、更に好ましくは28μm以上である。また、表面圧縮応力CSの大きさを確保し、溶融塩への浸漬を短時間であってもよくするため、ガラス板12Aの圧縮応力層の深さDOLは50μm以下である。
化学強化ガラスが適用されるガラス板12Aの板厚は2mm以上10mm以下であり、好ましくは2mm以上5mm以下であり、更に好ましくは2mm以上4mm以下である。ガラス板12Aの板厚は、2mm以上であれば窓ガラスとして使用した際にガラス板12Aのたわみを少なくすることができる。ガラス板12Aの板厚は、10mm以下であれば、耐熱強化ガラスや網入りガラスと比較して、ガラスの薄板化により、複層ガラス10の窓ガラスとしての透過性を良好にでき、総厚、重量が大きくなるのを抑えることができ、さらに、複層ガラスの総厚が一定の際に中間層の厚みを確保して断熱性を維持できる。
2枚のガラス板12Aおよび12Bの内、化学強化ガラスが適用されるガラス板12A以外のガラス板12Bには、0.12以下の放射率の低放射膜28が形成されている。低放射膜28は、ガラス板12Bの内側主面に形成されている。放射率は、日本工業規格
JIS R3106(2019)により規定される垂直放射率の値である。放射率を0.12以下にすることにより熱割れを抑制できる。低放射膜28の放射率は、より好ましくは0.10以下であり、更に好ましくは0.04以下である。低放射膜28が形成されたガラス板12Bの放射率は、赤外分光機Perkin Elmer社製のFT/IR「Frontier Goldにより測定できる。
低放射膜28は、スパッタリング装置等を用いて成膜した銀(Ag)を主体とした低放射膜でもよいし、化学蒸着装置やスパッタリング装置等を用いて成膜した酸化スズ(SnO)を主体とした低放射膜であってもよい。
銀(Ag)を主体とした低放射膜は、銀膜を酸化物膜、窒化物膜等で積層化したタイプも含む。銀を主体とした低放射膜は、空気中の水分等によって酸化し易い性質を有するため、複層ガラス10に用いる場合は、密閉された中空層14に面するガラス板12Bの内側主面に成膜されることが好ましい。
低放射膜28が形成されるガラス板12Bとして、例えば、建築用のソーダライムガラスを適用できる。ガラス板12Bは、ガラスの製造プロセスにより得られた平板状のガラス(切断されたガラスも含む)で、化学強化処理等が施されていないガラスであってもよいし、化学強化処理等が施されたガラスであってもよい。
ガラス板12Bの板厚は、例えば、好ましくは1mm以上20mm以下の範囲であり、より好ましくは2mm以上12mmである。ガラス板12Bに適用される低放射膜を形成するガラスは防火性能を必ずしも担保する必要はない。なお、ガラス板12Bに適用されるガラスは化学強化ガラスで防火性能を有してもよい。複層ガラス10に適用される複数枚のガラス板、ここでは2枚のガラス板12Aおよび12Bはソーダライムガラスで構成される。
ソーダライムガラスは、例えば、酸化物基準のモル百分率表示でSiOを65~76%、Alを0.2~3%、NaOを10~16%、KOを0~2%、MgOを2~12%、CaOを5~15%含有することが好ましい。以降、百分率表示は、特に断らない限り、酸化物基準のモル百分率表示含有量を示す。
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分として知られており、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、65%以上であり、好ましくは67%以上、より好ましくは69%以上である。また、SiOの含有量は、76%以下であり、好ましくは74%以下、より好ましくは72%以下である。SiOの含有量が65%以上であるとガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が76%以下であると熔解性及び成形性の点で優位である。
Alはガラスの耐候性を向上させる成分であり、化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用がある。Alの含有量は、0.2%以上であり、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.6%以上である。また、Alの含有量は、3%以下であり、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下である。Alの含有量が0.2%以上であると、ガラスを屋外に面して使用しても十分な耐候性が得られる。一方、Alの含有量が3%以下であると、ガラスの熔解時の粘性を低く保つことができ、かつ成型時に失透が発生することがなく、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位である。
NaOはガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。また、イオン交換により圧縮応力を形成させる成分であり、圧縮応力層の深さDOLを大きくする作用がある。NaOの含有量は、10%以上であり、好ましくは11%以上、より好ましくは12%以上である。また、NaOの含有量は、16%以下であり、好ましくは15%以下、より好ましくは14%以下である。NaOの含有量が10%以上であると、イオン交換により所望の圧縮応力を形成することができる。一方、NaOの含有量が16%以下であると、充分な耐候性が得られる。
Oは必須ではないが、ガラスの熔解性を向上するため、化学耐久性を向上するため、イオン交換速度を増大するため含有してもよい。一方、KOが多くなりすぎるとガラスの熱膨張係数が大きくなり、熱割れし易く、防火性が低下する。KOを含有する場合は2%以下が好ましく、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。KOの含有量が2%以下であると、熱割れしにくく、防火ガラスに適している。
MgOは、ガラスを安定化させる成分である。MgOの含有量は、2%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上である。また、MgOの含有量は、12%以下であり、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下である。MgOの含有量が2%以上であると、ガラスの耐候性が良好になる。高温での熔解性が良好になる。一方、MgOの含有量が12%以下であると、ガラス製造時に失透が起こりにくい。
CaOは、ガラスを安定化させる成分である。耐水性、耐薬品性を向上させるために、CaOの含有量は、5%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上である。また、CaOの含有量は、15%以下であり、好ましくは13%以下、より好ましくは11%以下である。CaOの含有量が5%以上であるとガラスの耐水性、耐薬品性が良好になる。一方、CaOの含有量が15%以下であると、ガラス製造時に失透が起こりにくく、イオン交換で所望の圧縮応力が得られる。
以上述べた成分以外に、硫酸塩などの清澄剤、Fe、TiO、ZrO、SnOなどの微量成分を、合計で1%以下含有してもよい。
化学強化ガラスが適用されるガラス板12Aの、JIS R3206(2003)で規定される反りは、好ましくは0.25%以下であり、より好ましくは0.20%以下あり、更に好ましくは0.15%以下である。反りが0.25%以下であると、複層ガラスとしたとき、火災発生時にシール剤の隙間が開きにくく、炎が漏れにくくなる。また、窓ガラスとしての反射映像の歪みを防止することができる。化学強化ガラスが適用されるガラス板12Aの反りは、化学強化工程中のガラスのチルト角度を±1.0度で管理、つまり鉛直方向からの傾きを±1.0度以下に維持し、ガラスのたわみを抑えることで、小さくすることができる。
同様に、低放射膜28が形成されるガラス板12Bの、JIS R3206(2003)で規定される反りは、好ましくは0.25%以下であり、より好ましくは0.20%以下あり、更に好ましくは0.15%以下である。反りが0.25%以下であると、複層ガラスとしたとき、火災発生時にシール剤の隙間が開きにくく、炎が漏れにくくなる。また、窓ガラスとしての反射映像の歪みを防止することができる。
図2は、ガラス板の反りの測定位置を説明するための図である。図2に示すように、ガラス板の頂点を結ぶ辺(長辺AおよびB、短辺CおよびD、対角線EおよびF)に沿う位置の反りを、JIS R3206(2003年)に規定されている方法に従い測定した。測定した反り(単位:mm)を、測定した辺の長さ(mm)で割ることにより、反り(=
反り量/各辺の長さ)(単位:%)を求めた。表1は、反りを測定した結果を示す。品種
について、CT3は3mmの板厚の化学強化ガラスであり、CT5は5mmの板厚の化学強化ガラスである。FR3.3は3.3mmの板厚の耐熱強化ガラスであり、FR3は3mmの板厚の耐熱強化ガラスであり、FR5は5mmの板厚の耐熱強化ガラスである。化学強化ガラスは、化学強化工程中のガラスのチルト角度を±1.0度で管理、つまり鉛直方向からの傾きを±1.0度以下に維持し、ガラスのたわみを抑えるように製造された。耐熱強化ガラスは、化学強化ガラスと異なり、ガラスの軟化温度近くの650~700℃まで加熱し、ガラス両面に空気を一様に吹き付けて急冷することにより製造された。測定に使用した化学強化ガラスの大きさは、2000mm×900mmであった。
表1に示すように、CT3およびCT5は0.15%以下を満たし、FR3.3、FR3は0.25%以下、FR5は0.15%以下を満たしていない辺があった。CT3およびCT5は、反りを小さくできることが理解できる。
Figure 2022170719000002
次に、ガラス板の反りと反射映像との関係について説明する。上述のCT3、CT5、FR3およびFR5について、グリッドボード法により反射映像の評価を実施した。図3はグリッド評価法で用いるグリッドボードである。図4はグリッドボード法による評価事例を示す図である。図3に示すように、等間隔の平行線群が直行に配置された、格子状のグリッドボードを準備する。このグリッドボードを評価対象のガラス板から10m離れた延長線上に配置し、グリッドボードの0.5m手前からガラス板を観察する。その結果、図4に示すように、ガラス板にはグリッドボードの格子で囲まれた複数のコマが反射映像として視認される。反射映像の複数のコマの中から矢印Aで示す丸印で囲まれた最小面積のコマと、矢印Bで示す丸印で囲まれた最大面積のコマを抽出し、以下の式(1)から横(縦)伸縮コマ比を求めた。表2は、品種と伸縮コマ比の値を示しており、図4の長辺を横、短辺を縦としている(ガラスサイズ:2,000mm×900mm)。
Figure 2022170719000003
式(1)に示す伸縮コマ比の値が小さいほど、反射映像が良好になる。
Figure 2022170719000004
表2に示すように、CT3およびCT5の伸縮コマ比の値は、FR3およびFR5の伸縮コマ比の値と比較して小さい。表1および表2から、ガラス板12Aを化学強化ガラスにすることにより、ガラス板の反りを小さくでき、その結果、歪みが小さい、良好な反射映像が得られることが理解できる。
複層ガラス10において、低放射膜28が形成されるガラス板12Bも、化学強化ガラスのガラス板12Aと同様に反りが小さいので、歪みが小さい、良好な反射映像が得られることが理解できる。
複層ガラス10において、反りの小さいガラス板12Aおよび12Bを用いることで、防火試験において、良好な結果が得られる。反りの小さいガラス板12Aおよび12Bでは複層ガラス10を製造する際に、ガラス板12Aおよび12Bのエッジ周辺にかかる曲げ応力を小さくできる。したがって、防火試験でガラス板12Aおよび12Bが変形しにくく、複層ガラス10のシール剤の隙間が開いて炎が漏れることを抑制し、防火性能が維持され、良好な防火試験結果を得ることができる。
次にエッジ強度について説明する。複層ガラス10の防火試験において、熱を受けたガラス板の中央部に発生した熱膨張によって、ガラス板は端部に引っ張り応力が付与されると、その引っ張り応力が、ガラス板に備わった端面の強度(エッジ強度)を超えることによってガラス板端面の微細なクラックや切断時の傷等を起点として亀裂が生じ、その亀裂がガラス板内へ伝播して破壊へ至る。
このような破壊のメカニズムのため、ガラス板の防火性能を向上させる為には、エッジ強度が重要である。そこで、実施例に示すように、防火性能を安定化させるエッジ強度の範囲を検証した。
実施例では、JIS R3223(2017)に規定される試験方法に基づき、図5に示す試験治具を使用し、化学強化ガラスのエッジ強度について、対数0.1%破壊確率の応力、エッジ強度の破壊応力の最小値およびエッジ強度の破壊応力の平均値を求めた。ここで対数0.1%破壊確率の応力は、ガラスに該応力が印加された際に、1000枚中1枚破損する可能性があることを意味する。エッジ強度の評価のためのN数は10体以上が好ましく、より好ましくは20体以上である。
図5に示すように、評価する試験片のガラスエッジが下方、すなわち支持棒側となるように試験治具に設置し、板厚t(mm)、100(mm)の高さH、1000(mm)の幅W、の試験片を、900(mm)の支持スパンlで支持し、300(mm)の荷重スパンl、1mm/分の荷重点速度として、エッジ強度を測定した。これらの条件の曲げ変形試験によってエッジの強度評価を行った。破壊荷重Fを式(2)に代入して破壊強度σfeを計算し、対数正規分布による統計処理からエッジの0.1%破壊確率強度を求めた。このエッジ強度評価試験において、曲げ変形でガラスが破壊した時の最大荷重を破壊荷重Fとした。なお、破壊起点が荷重スパン内にあり、かつ破壊起点がガラス板の端面にあるデータのみを統計処理した。
Figure 2022170719000005
さらに、破壊強度σfeからエッジ強度の破壊応力の最小値およびエッジ強度の破壊応力の平均値を求めた。化学強化ガラスのエッジ強度は、好ましくは対数0.1%破壊確率の応力で260MPa以上であり、より好ましくは280MPa以上であり、更に好ましくは300MPa以上である。また、化学強化ガラスのエッジ強度の破壊応力の最小値は、好ましくは300MPa以上であり、より好ましくは330MPa以上であり、更に好ましくは350MPa以上である。また、化学強化ガラスのエッジ強度の破壊応力の平均値は、好ましくは360MPa以上であり、より好ましくは370MPa以上であり、更に好ましくは380MPa以上である。
エッジ強度の評価に供される化学強化ガラスは、2000mm×900mmのガラスを面取した後、化学強化処理し、化学強化後のガラスから4枚のガラス板を切断し、試験体とした。図6は、化学強化後の化学強化ガラスから4枚のガラス板を切断する場合の図である。図6に示すように1枚のガラス板G(2000mm×900mm)から、ガラス板の周縁を含むように4枚のガラス板G1,G2,G3およびG4(1000mm×100mm)が切断される。
エッジ強度(破壊応力)の大きさは、試験体の大きさに影響を受ける。2個の試験体の破壊強度をσfe1およびσfe2とし、エッジの有効表面積をSe1およびSe2とし、形状母数をmとした場合、以下の式(3)の関係式を満たすことが知られている。形状母数mは、JIS R1625(2010)に準拠したワイブルプロットから求めることができる。
Figure 2022170719000006
実施形態のガラス板の場合、ガラス板の板厚が一定であれば、有効表面積は有効長さの比になる。大板サイズのガラス板と小板サイズのガラス板とが同じ板厚の場合、次のように算出できる。
大板サイズのガラス板の破壊強度がσfe2(MPa)、大きさが1000mm(W)×100mm(H)、有効評価長さ(荷重スパン)が300mm(l)で、小板サイズのガラス板の大きさが70mm(W)×20mm(H)、有効評価長さ(荷重スパン)が20mm(l)である場合、小板サイズのガラス板の破壊強度のσfe1(MPa)を推測する場合、式(3)に基づいて、式(4)により算出できる。
Figure 2022170719000007
化学強化ガラスの潜傷深さに関し、安定したエッジ強度および防火性能を実現できる面取り後の化学強化ガラスの端面の潜傷深さは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは18μm以下であり、更に好ましくは15μm以下である。なお、化学強化ガラスの端面に処理される面取りは、C面取り、R面取りなど、面取りの形状は、特に限定されない。ここで、潜傷とは、端面の形状付与、面取り、又は研削等の加工工程において、ガラスに生じる目に見えない微細な傷のことである。これらの潜傷は、エッチング処理を行うと傷の先端が開くため、顕微鏡による観察が可能となる。
化学強化ガラスの圧縮応力層の深さDOLに対する潜傷深さの割合は、好ましくは95%以下であり、より好ましくは70%以下であり、更に好ましくは50%以下である。圧縮応力層の深さDOLに対する潜傷深さの割合を上述の範囲とすることで、防火性能を向上できる。
次に、潜傷の深さを測定する方法について説明する。
まず化学強化ガラスのエッジ端面を所定量研磨する。この際、評価に影響する新たな潜傷が発生しないように注意深く研磨する。その後エッチング処理して洗浄と乾燥を行い、光学顕微鏡で観察する。例えば、光学顕微鏡の対物レンズは20倍を使用し、観察視野635μm×480μmで観察を行う。この観察で潜傷が5つ以上の場合、別の新たなサンプルについて、研磨量を調整し、同様の操作を行う。潜傷が5つ未満の場合、残った潜傷深さをレーザー顕微鏡にて観察し、研磨後の潜傷深さを測定する。研磨後の潜傷深さと研磨量の和を、化学強化ガラスのオリジナルの潜傷深さとする。
「エッチング」は、化学強化ガラスの全体をエッチング液に浸漬して室温(25℃)で行われる。エッチング液としては、46質量%のフッ酸(HF)13mLとクエン酸12gを混合し、純水を所定量混合して、HF3%溶液を作成する。エッチング液は化学強化ガラスの表面や内部に形成される潜傷に浸入し、潜傷を拡げて明瞭化するために実施される。
「エッチング量」は、浸漬時間で制御される。具体的には、あらかじめ同一組成のガラスを用いて所定時間エッチングを行ってエッチングレートを算出した後、所望のエッチング量となるように浸漬時間を調整してエッチングを行う。なお、ガラスの種類によっては、エッチングレートを調整するためにフッ酸濃度を変更してもよい。
潜傷深さの大きさは観察視野の大きさに影響を受ける。ここで、潜傷深さと観察視野の関係は、式(3)の関係式における破壊強度σfeとエッジの有効表面積Sの関係から推算することができる。ガラスの破壊強度σfe(σ)は式(5)に示すように傷の深さcの平方根に反比例することが知られている。ここで、KICはガラスの破壊靭性値、Yは傷の形状で決まる係数である。観察視野635μm×480μmで観察した場合に潜傷深さが20μm以下であるという条件に対し、観察視野が変化した場合は適切な潜傷深さの上限値は、KICとYの値を一定として、式(3)と式(5)から求めることができる。
Figure 2022170719000008
[実施例]
[試験]
試験では複数の複層ガラス(試験体)を準備し、防火試験を実施した。
<試験体>
試験体1から試験体7の複層ガラスを準備した。試験体1から試験体7は、2枚のガラス板と、2枚のガラス板を隔置するスペーサと、2枚のガラスとスペーサとをシールするシール材とを備えている。2枚のガラス板は、それぞれ幅900mm×高さ2000mmのガラスサイズとした。少なくとも2枚のガラスの内、一方のガラスには化学強化ガラスを用い、化学強化ガラスの端面には化学強化処理前に面取りを行った。化学強化ガラスおよび他方のガラスには、以下の組成のソーダライムガラスを用いた。
ソーダライムガラス組成(モル%表示):SiO 71.1%、Al 1.1%、NaO 12.5%、KO 0.3%、MgO 6.4%、CaO 8.5%
試験体1の複層ガラスにおいて、化学強化ガラスは、5mmの板厚、460MPaの表面圧縮応力CSおよび30μmの圧縮応力層の深さDOLであった。また、低放射膜付きガラスは、0.03以下の垂直放射率の低放射膜を備える5mmの板厚のソーダライムガラスであった。試験体1のエッジ強度の評価のN数は40体であり、防火試験のN数は6体であった。
試験体2の複層ガラスにおいて、化学強化ガラスは、5mmの板厚、437MPaの表面圧縮応力CSおよび27μmの圧縮応力層の深さDOLであった。また、低放射膜付きガラスは、0.03以下の垂直放射率の低放射膜を備える5mmの板厚のソーダライムガラスであった。試験体2のエッジ強度の評価のN数は19体であり、防火試験のN数は6体であった。
試験体3の複層ガラスにおいて、化学強化ガラスは、3mmの板厚、368MPaの表面圧縮応力CSおよび40μmの圧縮応力層の深さDOLであった。また、低放射膜付きガラスは、0.03以下の垂直放射率の低放射膜を備える3mmの板厚のソーダライムガラスであった。試験体3のエッジ強度の評価のN数は20体であり、防火試験のN数は5体であった。
試験体4の複層ガラスにおいて、化学強化ガラスは、3~4mmの板厚、300MPaの表面圧縮応力CSおよび33μmの圧縮応力層の深さDOLであった。また、低放射膜付きガラスは、0.03以下の垂直放射率の低放射膜を備える5mmの板厚のソーダライムガラスであった。試験体4のエッジ強度の評価のN数は17体であり、防火試験のN数は4体であった。
試験体5は単板のガラスで、使用される化学強化ガラスは、3mmの板厚、519MPaの表面圧縮応力CSおよび15μmの圧縮応力層の深さDOLであった。試験体5のエッジ強度の評価のN数は10体であった。なお、試験体5は防火性能がでないことが予想されるため防火試験を実施していない。
試験体6の複層ガラスにおいて、化学強化ガラスは、3mmの板厚、437MPaの表面圧縮応力CSおよび27μmの圧縮応力層の深さDOLであった。また、低放射膜付きガラスは、0.03以下の垂直放射率の低放射膜を備える5mm又は3mmの板厚のソーダライムガラスであった。試験体6のエッジ強度の評価のN数は11体であり、防火試験のN数は4体であった。
試験体7の複層ガラスにおいて、化学強化ガラスは、3mmの板厚、437MPaの表面圧縮応力CSおよび27μmの圧縮応力層の深さDOLであった。また、低放射膜付きガラスは、0.03以下の垂直放射率の低放射膜を備える5mmの板厚のソーダライムガラスであった。試験体7のエッジ強度の評価のN数は12体であり、防火試験のN数は6体であった。
試験体1~7の化学強化ガラスの反りは、表1に示したCT5、CT3と同等であった。低放射膜付きガラスの反りはCT5、CT3と同等以下であった。
<防火試験>
試験体1から試験体7について、JIS R3223(2017)の試験内容に則って防火試験を実施し、各試験体の合格率を求めた。
試験条件:炉内熱電対によって測定した温度経過が、以下の式で表される数値になるように加熱した。
T=345log10(8t+1)+20
上式において、Tは平均炉内温度(℃)、tは試験の経過時間(分)である。試験時間は20分間であった。
また、各試験体の取付において、押縁のかかり代は10mmであった。
防火試験においては、試験体に供される複層ガラスの化学強化ガラスを加熱側に配置し、化学強化ガラスに対向する低放射膜付きガラスを非加熱側に配置した。その理由を以下に示す。
複層ガラスの低放射膜付きガラスが加熱側に配置され、化学強化ガラスが非加熱側に配置される場合、防火性を有する化学強化ガラスが非加熱側にあるため、低放射膜付きガラスが崩落したとしても、非加熱側の化学強化ガラスが耐え抜いて合格する場合が多い。一方で、複層ガラスの低放射膜付きガラスが非加熱側に配置され、化学強化ガラスが加熱側に配置されるように複層ガラスが配置された場合、低放射膜が熱を炉の内側に反射するので、化学強化ガラスの加熱ペースが前述の場合よりも速くなる。そして、化学強化ガラスにより大きな熱応力が生じて化学強化ガラスが破損する、もしくは、複層ガラスのシール材がより早く加熱されて接着力が消失して化学強化ガラスが崩落すると、低放射膜付きガラスは化学強化ガラスほどの防火性は無いので、火炎が貫通する場合が多くなる。つまり、構成上、後者の配置パターンで不合格となりやすい。
実施例では、より条件の厳しい後者の配置パターンで防火試験を実施することで、合格する試験体が高い防火性能を備えることが理解できる。
合格基準:加熱開始から20分間の時間経過中に以下の(1)から(3)を満足する場合を合格とし、満足しない場合を不合格とした。
(1)非加熱側へ10秒を超えて継続する火炎の噴出がない。
(2)非加熱側で10秒を超えて継続する発炎がない。
(3)破損又は火炎が通る亀裂などの損傷および隙間を生じない。
合格率が70%以上の場合を〇と、30%以上70%未満の場合を△と、30%未満の場合を×と評価した。
なお、防火試験は、JIS R 3223の試験内容に基本的に則るが、ガラスサイズは、幅900mm×高さ2000mm若しくは幅1200mm×高さ2400mmとすることができる。また、押縁のかかり代は複層ガラスの場合、10mm~13mmとすることができる。
<エッジ強度>
図5に示す試験治具を用いて、試験体1から試験体7に用いられる化学強化ガラスについて、図6に示される1000mm×100mmの試験片を準備しエッジ強度として、対数0.1%破壊確率の応力、破壊応力の最小値、破壊応力の平均値を求めた。
<評価結果>
表3は、試験体1から試験体7の構成と、防火試験に対する合格率および評価、各エッジ強度の値を示している。
Figure 2022170719000009
表3に示すように、試験体4に関し、化学強化ガラスの表面圧縮応力CSが300MPaであり、表面圧縮応力CSが340MPa以上を満たしていないため合格率は0%で評価は×であった。また、試験体5に関し、圧縮応力層の深さDOLが15μmであり、圧縮応力層の深さDOLが20μm以上50μm以下を満たしておらず、防火試験に合格しないので、評価は×とした。試験体5は、化学強化ガラスの圧縮応力層の深さDOLが20μm未満であり、潜傷深さに対して圧縮応力層の深さDOLが不十分であることから、防火試験に合格しないと想定される。試験体5~7を比較すると、試験体5のエッジ強度が試験体6~7よりも小さくなっていることからも、試験体5は防火試験に合格しないと想定される。
試験体1~3および試験体6、7は、表面圧縮応力CSが340MPa以上であり、圧縮応力層の深さDOLは20μm以上50μm以下であるため、△以上の評価であった。評価が〇である試験体1、3および6のエッジ強度に関し、対数0.1%破壊確率の応力で260MPa以上であり、破壊応力の最小値は300MPa以上であり、さらに破壊応力の平均値は360MPa以上であった。エッジ強度がこの範囲を満たす場合、合格率が非常に高いことが理解できる。
また、試験体2と試験体7とを比較すると、エッジ強度が上述の範囲に近い試験体7の合格率が試験体2より合格率が高いことが理解できる。
さらに、試験体1から7の内、試験体3、4および5に関して、圧縮応力層の深さDOLと潜傷深さcとの関係を確認した。表4は、試験体3、4および5の圧縮応力層の深さDOL、潜傷深さc、c/DOL、各エッジ強度および防火試験の評価を示している。
Figure 2022170719000010
表4に示すように、防火試験の評価が×である試験体4,5では、圧縮応力層の深さDOLに対し、潜傷深さcの割合が100%を超えていた。防火試験の評価が〇である試験体3では、圧縮応力層の深さDOLに対し、潜傷深さcの割合が36.9%であった。圧縮応力層の深さDOLに対する潜傷深さcの割合が小さいほど評価が高くなる。したがって、圧縮応力層の深さDOLに対する潜傷深さの割合は、好ましくは95%以下であり、より好ましくは70%以下であり、更に好ましくは50%以下であると推測できる。
10…複層ガラス、12A、12B…ガラス板、14…中空層、16…スペーサ、18A、18B…1次シール材、20…2次シール材、22…通気孔、24…中空部、26…乾燥剤、28…低放射膜

Claims (8)

  1. 複数枚のガラス板がスペーサを介して隔置され、周縁部がシール材でシールされて構成される複層ガラスであって、
    前記複数枚のガラス板のうち少なくとも一枚は放射率0.12以下の低放射膜が形成された低放射膜付きガラスであり、
    前記低放射膜付きガラス以外の前記複数枚のガラス板のうち少なくとも一枚は化学強化ガラスであり、
    前記化学強化ガラスの表面圧縮応力CSは340MPa以上であり、
    前記化学強化ガラスの圧縮応力層の深さDOLは20μm以上50μm以下であり、
    前記化学強化ガラスの板厚は2mm以上10mm以下であり、
    前記複数枚のガラス板は、ソーダライムガラスである、複層ガラス。
  2. 前記化学強化ガラスは、JIS R3206(2003)で規定される反りが0.25%以下である、請求項1に記載の複層ガラス。
  3. 前記低放射膜付きガラスは、JIS R3206(2003)で規定される反りが0.25%以下である、請求項1又は2に記載の複層ガラス。
  4. 前記化学強化ガラスのエッジ強度は、対数0.1%破壊確率の応力で260MPa以上である、請求項1又は2に記載の複層ガラス。
  5. 前記化学強化ガラスのエッジ強度の破壊応力の最小値は300MPa以上である、請求項1又は2に記載の複層ガラス。
  6. 前記化学強化ガラスのエッジ強度の破壊応力の平均値は360MPa以上である、請求項1又は2に記載の複層ガラス。
  7. 前記化学強化ガラスの端面の潜傷深さは20μm以下である、請求項1又は2に記載の複層ガラス。
  8. 前記化学強化ガラスは、前記圧縮応力層の深さDOLに対し、潜傷深さの割合が95%以下である、請求項1又は2に記載の複層ガラス。
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