JP2024043166A - モータ制御装置及び車両用制動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】多相モータのロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止するモータ制御装置を提供する。【解決手段】モータ制御装置351-354は、トルク指令値Trq*を演算するトルク指令演算部40と、電流指令値I*を演算する電流指令値演算部50と、インバータ(電力変換器)55と、停止位置調整器67と、を備える。停止位置調整器67は、所定の適用除外要件を満たす場合を除き、多相モータ60の回転が停止した状態で通電するロック通電時に、所定の位置調整範囲内で回転停止位置を調整する「停止位置調整処理」を実行する。停止位置調整処理において、停止位置調整器67は、各相のうち電流絶対値が最大となる最大電流相の電流絶対値を低減するように回転停止位置を調整する。トルク指令演算部40又は電流指令演算部50は、調整後の回転停止位置が反映されたトルク指令値Trq*又は電流指令値I*を演算する。【選択図】図5
Description
本発明は、モータ制御装置及び車両用制動装置に関する。
従来、多相モータの通電を制御するモータ制御装置が知られている。また、多相モータが出力したトルクを直動機構により直動力に変換し、対応する車輪に押圧して制動力を発生させる車両の電動ブレーキ装置が知られている。
例えば特許文献1に開示された電動ブレーキ装置では、モータ制御装置は、荷重センサで検出される押圧力の大きさに基づいてモータの駆動電流を制御する。モータトルクと押圧力との関係はヒステリシス特性を有している。このモータ制御装置は、押圧力をブレーキディスクに加えて保持するとき、押圧力が目標値よりも大きい所定値に上昇するまで正効率線に沿ってモータのトルクを増加させてから、押圧力が目標値に減少するまで逆効率線に沿ってモータのトルクを減少させる。
特許文献1の従来技術によると、正効率線により目標制動力よりも少し高い制動力を発生させてから制動力を保持しつつ電流を下げ、逆効率線で動作させて目標制動力まで下げるように制御することで、電流を低減することができる。しかし、電動ブレーキのアクチュエータが多相モータで構成されている場合、制動力を保持する過程でロック通電が必要となり、特定の相に電流が集中し、発熱が偏るという問題がある。この問題は、電動ブレーキ装置に限らず、ロック通電される可能性がある多相モータ全てに共通する。
本発明の目的は、多相モータのロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止するモータ制御装置を提供することにある。また、本発明の目的は、各車輪用の電動ブレーキを構成する多相モータの通電を制御する、上記目的の複数のモータ制御装置を備えた車両用制動装置を提供することにある。
本発明のモータ制御装置は、トルク指令演算部(40)と、電流指令値演算部(50)と、電力変換器(55)と、停止位置調整器(67)と、を備える。トルク指令演算部は、多相モータ(60)のトルク指令値を演算する。電流指令演算部は、トルク指令値に基づき多相モータに通電する電流指令値を演算する。電力変換器は、入力された電力を変換し、電流指令値に応じた交流電力を多相モータに供給する。
停止位置調整器は、所定の適用除外要件を満たす場合を除き、多相モータの回転が停止した状態で通電するロック通電時に、所定の位置調整範囲内で回転停止位置を調整する「停止位置調整処理」を実行する。
停止位置調整処理において、停止位置調整器は、各相のうち電流絶対値が最大となる最大電流相の電流絶対値を低減するように回転停止位置を調整する。トルク指令演算部又は電流指令演算部は、調整後の回転停止位置が反映されたトルク指令値又は電流指令値を演算する。
これにより本発明のモータ制御装置は、多相モータのロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止することができる。好ましくは、停止位置調整処理において、多相モータの回転停止位置は、最大電流相の電流絶対値が位置調整範囲内で最小となる位置に調整される。
本発明の車両用制動装置は、前後方向に二列以上の左右対の車輪(91-94)を含む四輪以上の車両(900)に搭載される。この車両用制動装置は、多相モータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)により車両を制動する。
車両用制動装置は、各電動ブレーキにおいて多相モータの通電を制御する上記のモータ制御装置を備え、複数のモータ制御装置による停止位置調整処理を調停する。これにより、ヨーやスピンの発生を防止したり、車両全体での要求制動力に対する実制動力の変化を最小限に抑えたりすることができる。
本発明のモータ制御装置及び車両用制動装置の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の第1、第2実施形態を包括して「本実施形態」という。本実施形態のモータ制御装置は、車両に搭載され、各車輪の電動ブレーキに用いられる三相モータの通電を制御する。車両用制動装置は、各電動ブレーキにおいて「多相モータ」としての三相モータの通電を制御するモータ制御装置を備え、複数のモータ制御装置による後述の処理を調停する。
[車両の構成]
図1~図3(b)を参照し、本実施形態の車両用制動装置30が搭載される車両900及び電動ブレーキ81-84の構成を説明する。図1に示すように、車両900は、前後方向において二列の左右対の車輪91、92、93、94を有する四輪車両である。前列左右輪91、92に「FL、FR」、後列左右輪93、94に「RL、RR」と記す。各車輪91、92、93、94に対応して複数(この例では四つ)の電動ブレーキ81、82、83、84が設けられている。
図1~図3(b)を参照し、本実施形態の車両用制動装置30が搭載される車両900及び電動ブレーキ81-84の構成を説明する。図1に示すように、車両900は、前後方向において二列の左右対の車輪91、92、93、94を有する四輪車両である。前列左右輪91、92に「FL、FR」、後列左右輪93、94に「RL、RR」と記す。各車輪91、92、93、94に対応して複数(この例では四つ)の電動ブレーキ81、82、83、84が設けられている。
車両用制動装置30は、各電動ブレーキ81、82、83、84において三相モータ60の通電を制御する四つのモータ制御装置351、352、353、354を備える。以下、連続する四つの符号を、「車輪91-94」、「電動ブレーキ81-84」、「モータ制御装置351-354」のように省略して記す。後述の記号「負荷トルクTL1-TL4」、「モータ温度Temp1-Temp4」についても同様とする。また、車両用制動装置30は、車速センサ97から車速Vを取得する。
電動ブレーキ81-84のアクチュエータは、「多相モータ」としての三相モータ(図中「三相M」)60で構成されている。具体的に三相モータ60は、永久磁石式のブラシレスモータである。本実施形態では各電動ブレーキ81-84に対応する三相モータ60の構成、作用は同様であるものとし、単一の符号「60」を用いる。以下の明細書中、適宜、三相モータ60を単に「モータ60」と省略する。
モータ制御装置351-354は、外部から指令される要求制動力に基づき、各電動ブレーキ81-84が発生させる制動力を制御する。要求制動力は、運転者のブレーキ操作や運転支援装置からの制動信号等により指令される。破線両矢印で示すように、各モータ制御装置351-354は相互に情報を通信してもよい。
四つのモータ制御装置351-354は物理的に分離しているとは限らず、一つの基板に集約して構成されてもよい。具体的には、車両用制動装置30を構成するECUがモータ制御装置351-354として機能する。ECUは、マイコンやプリドライバ等で構成され、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、及び、これらの構成を接続するバスライン等を備えている。ECUは、ROM等の実体的なメモリ装置(すなわち、読み出し可能非一時的有形記録媒体)に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理や、専用の電子回路によるハードウェア処理による制御を実行する。
モータ制御装置351-354は、負荷トルクTL1-TL4又はモータ温度Temp1-Temp4を取得してもよい。負荷トルクTL1-TL4はインバータの消費電力から推定してもよい。モータ温度Temp1-Temp4は、例えば温度センサにより検出される。或いは、三相モータ60への通電によるジュール熱から温度上昇を推定し、外気温に加算することでモータ温度Temp1-Temp4を算出してもよい。負荷トルクTL1-TL4及びモータ温度Temp1-Temp4は、適用除外の説明で後述される。適用除外要件の判定に使用しない場合、モータ制御装置40は、負荷トルクTL1-TL4又はモータ温度Temp1-Temp4を取得しなくてもよい。
本実施形態では各電動ブレーキ81-84の制御構成は同様である。図2には、電動ブレーキ81-84のうちいずれか一つを例として、モータ制御装置351-354による電動ブレーキの制御構成を図示する。
各電動ブレーキ81-84は、モータ60、直動機構85、及びキャリパ86を含む。モータ60は、例えば永久磁石式三相ブラシレスモータで構成されており、制動力制御部400から通電される駆動電流によりトルクを出力する。直動機構85は、モータ60の出力回転を減速しつつ直線運動に変換するアクチュエータである。モータ60の回転角度θと直動機構85のストロークXとは比例する。こうして各電動ブレーキ81-84は、モータ60が出力したトルクを直動機構85により直動力に変換し、対応する車輪91-94に押圧して制動力を発生させる。
モータ60の出力トルクは、直動機構85を介してキャリパ86のパッド87を動作させる。パッド87が移動して各車輪91-94のディスク88に押し付けられることで、摩擦により制動力が発生する。また、パッド87がディスク88から離れることで、制動力が解除される。
図3(a)、(b)を参照し、図2のIIIa部に示す電動ブレーキ81-81のパッド87の特性について補足する。図3(a)に示すように、パッド87はバネのような特性を持ち、直動機構85による押し込み力Fdと、ひずみ量に応じた反力Frとが互いに反対方向に作用する。図3(b)に示すように、直動機構85のストロークに基づくパッド位置Xと、パッド荷重Fとはほぼ比例する。モータ60の回転角度の変化Δθによりパッド位置がΔX変化すれば、パッド荷重はΔF変化する。なお、図3(b)及び図8では、記号「ΔF」は荷重の変化分を示す。図5で用いられる、荷重制御における荷重指令値と実荷重との荷重偏差を示す「ΔF」とは意味が異なる。
図2に戻り、モータ制御装置351-354は、トルク指令演算部40、電流指令演算部50及びインバータ55を含む。トルク指令演算部40は、外部から指令される要求制動力に基づきモータ60のトルク指令値Trq*を演算する。電流指令演算部50は、トルク指令値に基づきモータ60に通電する電流指令値I*を演算する。
インバータ55は、入力されたバッテリ15の直流電力を交流電力に変換し、電流指令値I*に応じた交流電力をモータ60に供給する。なお、電流指令演算部50からインバータ55までの電流フィードバック等の構成や、本実施形態に特有の停止位置調整器については図5を参照して後述する。
また電動ブレーキ81-84は、角度センサ72又はストロークセンサ73のうち少なくとも一方を備えている。角度センサ72は、モータ60の実際の回転角度である実角度θを検出する。本実施形態では、実角度θはモータ電気角で定義される。ストロークセンサ73は、直動機構85の実際のストロークである実ストロークXを検出する。ストロークセンサ73は、直動機構85の移動部分の位置変化を検出してもよく、パッド87の位置変化を検出してもよい。
角度センサ72及びストロークセンサ73を包括して「位置センサ」という。位置センサ72、73は、例えばホール素子や磁気抵抗素子等で構成され、比較的高い精度で位置を検出可能である。また、実角度θ及び実ストロークXを包括して「実位置」という。位置センサ72、73が検出した実位置θ、Xはトルク指令演算部40に入力される。本実施形態では、主に角度センサ72を備える構成を想定し、以下の説明では「位置センサ72」の符号、及び「実位置θ」の記号のみを用いる。ストロークセンサ73を備える構成は、その他の実施形態に記載する。
第1実施形態では、電動ブレーキ81-84は、荷重センサ71をさらに備えている。荷重センサ71は、車輪91-94に実際に押圧される制動荷重である実荷重Fを検出する。荷重センサ71が検出した実荷重Fはトルク指令演算部40に入力される。第2実施形態では、電動ブレーキ81-84は、そもそも荷重センサ71を備えていないか、或いは、荷重センサ71が検出した実荷重Fがトルク指令演算部40の演算に使用されない。
次に図4を参照し、この構成の電動ブレーキにおけるモータトルクと制動力との関係について説明する。制動力はブレーキパッド荷重に相関する。以下、単に「トルク」とはモータ60が出力するトルクを意味し、単に「荷重」とはパッド87による押圧荷重を意味する。図4は、特許文献1(特許第6080682号公報)の図10に対応する。
モータ60のトルクと電動ブレーキ81-84に発生する制動力との関係はヒステリシス特性を有している。トルクが増加するとき、制動力は正効率線に沿って増加する。トルクが増加から減少に転じる転向値Tconvから保持臨界値Tcrまで減少するとき、制動力は一定に保持される。トルクが保持臨界値Tcrから減少するとき、制動力は逆効率線に沿って減少する。ここで、トルクはモータ60の駆動電流に相関する。
特許文献1の従来技術では、荷重センサで検出される荷重の大きさが「目標値F*よりも所定のオフセット値dF大きい値」に到達するまでモータのトルクを増加させる。その後、荷重センサで検出される荷重の大きさが目標値F*に到達するまでモータのトルクを減少させるようにモータの駆動電流を制御する。モータのトルクを減少させる過程で荷重Fは保持される。これにより、制動力保持中の電流を低減することができる。
しかし、電動ブレーキのアクチュエータが多相モータで構成されている場合、制動力を保持する過程で、モータの回転が停止した状態で通電する「ロック通電」が必要となり、特定の相に電流が集中し、発熱が偏るという問題がある。その結果、インバータの素子やモータ巻線の故障を招いたり、耐熱性の高い部品を使用することが必要になったりする。そこで本実施形態のモータ制御装置351-354は、電動ブレーキ81-84の制動力保持動作において生じる三相モータ60のロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止することを目的とする。
続いて、実施形態毎に詳細な構成について説明する。第1実施形態及び第2実施形態のモータ制御装置は、停止位置調整処理の実行、非実行を切り替える部分の制御構成のみが異なり、作用効果は同じである。停止位置調整処理の実行、非実行の切替部分が含まれるトルク指令演算部の符号について、第1実施形態のトルク指令演算部には「401」、第2実施形態のトルク指令演算部には「402」の符号を付して区別する。
(第1実施形態)
図5~図16を参照し、第1実施形態について説明する。第1実施形態では、停止位置調整処理を実行する場合、実位置θを位置指令値θ*に追従させる位置制御が実行され、停止位置調整処理を実行しない場合、実荷重Fを荷重指令値F*に追従させる荷重制御が実行される。制動力が正効率線に沿って増加する過程、及び、逆効率線に沿って減少する過程では荷重制御が実行される。制動力を保持しつつトルクを減少させる過程において、必要に応じて位置制御により停止位置調整処理が実行される。なお、停止位置調整処理の調整量をゼロとすることで、実質的に停止位置調整処理の実行を中止してもよい。
図5~図16を参照し、第1実施形態について説明する。第1実施形態では、停止位置調整処理を実行する場合、実位置θを位置指令値θ*に追従させる位置制御が実行され、停止位置調整処理を実行しない場合、実荷重Fを荷重指令値F*に追従させる荷重制御が実行される。制動力が正効率線に沿って増加する過程、及び、逆効率線に沿って減少する過程では荷重制御が実行される。制動力を保持しつつトルクを減少させる過程において、必要に応じて位置制御により停止位置調整処理が実行される。なお、停止位置調整処理の調整量をゼロとすることで、実質的に停止位置調整処理の実行を中止してもよい。
図5に第1実施形態のモータ制御装置のブロック図を示す。各モータ制御装置351-354を包括し、モータ制御装置の符号を「35」と記す。トルク指令演算部401は、荷重指令演算部41、荷重偏差算出器42、荷重制御器43、位置偏差算出器45、位置制御器46及び切替器48を有する。
荷重指令演算部41は、要求制動力に基づき荷重指令値F*を演算する。荷重偏差算出器42は、荷重センサ71により検出された実荷重Fと荷重指令値F*との荷重偏差ΔF(=F*-F)を算出する。荷重制御器43は、荷重偏差ΔFをゼロに近づけるように、すなわち実荷重Fを荷重指令値F*に近づけるようにトルク指令値Trq*(f)を演算する。
位置偏差算出器45は、位置センサ72により検出された実位置θと停止位置調整器67が出力した位置指令値θ*との位置偏差Δθ(=θ*-θ)を算出する。位置制御器46は、位置偏差Δθをゼロに近づけるように、すなわち実位置θを位置指令値θ*に近づけるようにトルク指令値Trq*(θ)を演算する。
切替器48は、停止位置調整器67からの切替信号に従い、トルク指令演算部401が出力するトルク指令値Trq*としてTrq*(f)又はTrq*(θ)を切り替える。図5に示す構成例では各制御器43、46の出力側に切替器48が設けられているが、この構成に限らず、例えば荷重制御器43又は位置制御器46の一方の動作をマスクするように切替機能が実現されてもよい。
さらにモータ制御装置35は、電流指令値演算部50及びインバータ(図中「INV」)55に加え、図2で省略された電流フィードバック制御部53、ロック通電判定部69及び停止位置調整器67を含む。
電流指令値演算部50は、電流指令値I*として具体的にはベクトル制御によるdq軸電流指令値Id*、Iq*を演算し、電流フィードバック制御部53に出力する。電流フィードバック制御部53は、電流センサ57が検出した三相電流Iu、Iv、Iw、及び、位置センサ72が検出したモータ電気角、すなわち実位置θを取得し、三相電流Iu、Iv、Iwをdq軸電流Id、Iqに変換する。電流フィードバック制御部53は、dq軸電流Id、Iqを電流指令値Id*、Iq*に追従させるように電圧指令値を演算し、さらにPWM制御等によりスイッチング信号を生成してインバータ55に出力する。
ロック通電判定部69は、実位置θの変動幅や時間微分等から、モータ60の回転が停止した状態で通電する「ロック通電時」であるか否かを判定し、ロック通電時であると判定したとき、ロック通電信号を停止位置調整器67に出力する。なお、回転の「停止」には、例えば数rpm程度の超低回転状態を含む。
停止位置調整器67は、対応する電動ブレーキ81-84から、負荷トルクTL1-TL4及びモータ温度Temp1-Temp4を取得し、後述する適用除外要件の成否を判定する。停止位置調整器67は、適用除外要件を満たす場合を除き、ロック通電時に、所定の位置調整範囲内で回転停止位置を調整する「停止位置調整処理」を実行する。以下の明細書中、「停止位置」は回転停止位置を意味する。
本実施形態のモータ制御装置35は、ロック通電時におけるモータ60の回転停止位置に応じて負荷に作用する荷重が変化するシステムに適用される。次に図6~図10を参照し、ロック通電時に停止位置調整処理を実行しない比較例と対比しつつ、停止位置調整処理の技術的意義を説明する。
図6、図7に、比較例での要求荷重に対する停止位置、及び、ロック通電位置の例を示す。比較例では、負荷に作用する荷重の目標値である要求荷重が決まると停止位置は一意に決まり、特定の相に電流が集中する位置で停止する可能性がある。各相のうち電流絶対値が最大となる相を「最大電流相」と定義する。図7の例では、ロック通電位置でV相電流Ivの絶対値が最大であり、V相が最大電流相に相当する。
図8、図9に、本実施形態での要求荷重に対する停止位置、及び、ロック通電位置の例を示す。停止位置調整処理において、モータ60の回転停止位置は、要求荷重の変動許容範囲に対応する範囲に調整される。図8では、位置調整による荷重変化をΔFと表す。位置調整方向は、例えば荷重が増加する側が正方向、荷重が減少する側が負方向と定義される。図8には、位置θの調整と荷重Fの調整とが互いに相関関係にあることが表されている。図9の例では、調整前の位置から、V相電流IvとU相電流Iuとの符号が反対で絶対値が等しい位置に停止位置が調整される。
図10にロック通電時の各相電流を示す。比較例では調整前の状態が継続し、最大電流相のインバータ55の素子やモータ60の巻線で発熱が偏る。それに対し本実施形態の停止位置調整処理では、最大電流相であるV相の電流絶対値を低減するように停止位置が調整される。トルク指令演算部401は、調整後の回転停止位置が反映されたトルク指令値Trq*を演算する。
次に図11~図13を参照し、停止位置調整処理の実施例について説明する。図11には一般的な三相モータ、すなわち一系統の三相モータの例を示す。三相モータでは、電気角60°毎にいずれかの相の電流振幅絶対値が最大となり、その中間の60°毎の電気角で、二つの相の電流振幅絶対値が等しくなる。この位置が、最大電流相の電流絶対値が最小となるターゲット位置θtgtとなる。
最大電流相の電流振幅絶対値が最大となる位置からターゲット位置θtgtまでの調整量は電気角±30°である。したがって、任意の停止位置からの位置調整範囲は電気角±30°以内に設定される。ここで、停止位置の調整に伴う荷重変化ΔFを最小とするため、調整量は最小に設定されることが好ましい。そのため、調整前の停止位置から最も近いターゲット位置θtgtに向かう方向に調整されることが好ましい。
続いて三相二系統モータの例を説明する。図12に示すように、三相二系統モータは、二組の三相巻線組601、602を有する二重巻線モータである。この例では第1系統と第2系統との系統間位相差は電気角30°に設定されている。つまり、第1系統の三相巻線組601と第2系統の三相巻線組602とは、共通のステータに互いに電気角30°ずらして配置されている。ここで、二系統の反転及び三相の対称性を考慮すると、図12と等価な系統間位相差は、電気角30±(60×n)°(nは整数)と表される。
図13に、系統間位相差が電気角30°の三相二系統モータにおける停止位置調整処理の実施例を示す。図中、Iu1、Iv1、Iw1は第1系統、Iu2、Iv2、Iw2は第2系統の三相電流を示す。電気角30°毎にいずれかの相の電流振幅絶対値が最大となり、その中間の30°毎の電気角で、二つの相の電流振幅絶対値が等しくなる。この位置が、最大電流相の電流絶対値が最小となるターゲット位置θtgtとなる。したがって、任意の停止位置からの位相調整範囲は電気角±15°以内に設定される。
例えば停止位置調整器67は、調整前の実位置θとターゲット位置θtgtとの関係をマップとして記憶してもよいし、三相モータの場合、実位置θを60°で除した余りが特定の値となるように位置を調整してもよい。また、停止位置調整器67は、位置を直接調整するのでなく、ターゲット位置θtgtに対応する荷重のマップを記憶し、実荷重Fが適正範囲に入るように調整してもよい。
このように、停止位置調整処理において、モータ60の回転停止位置は、最大電流相の電流絶対値が最小となるターゲット位置θtgtに調整されることが好ましい。ただし、要求荷重の変動許容範囲に基づいて制限される位置調整範囲が、三相モータでの電気角±30°や、系統間位相差が電気角30°の三相二系統モータでの電気角±15°より小さくなる場合がある。その場合、モータ60の回転停止位置は、最大電流相の電流絶対値が位置調整範囲内で最小となる位置、すなわち位置調整範囲内でターゲット位置θtgtに最も近い位置に調整される。
さらに、例えば電流指令演算部50は、dq軸座標におけるdq軸電流指令値Id*、Iq*の電流位相について、同じ電流位相での通電を所定時間以上継続しないように、時間に応じて電流指令値Id*、Iq*の位相を変更する位相調整処理を行ってもよい。この位相調整処理と本実施形態の停止位置調整処理とを併用してもよい。位置調整範囲の制限によりターゲット位置θtgtまでの位置調整ができない場合に特に効果的である。
図14のフローチャートを参照し、停止位置調整器67による停止位置調整処理について説明する。以下のフローチャートの説明で記号「S」はステップを意味する。S10で停止位置調整器67は、ロック通電信号の入力有無により、ロック通電時であるか否か判断する。S10でYESの場合、S20で停止位置調整器67は、適用除外要件を満たすか判断する。適用除外要件の具体例については図15を参照する。
S20でNOの場合、S30で停止位置調整器67は、位相調整範囲内で停止位置調整処理を実行する。S10でNO、又は、S20でYESの場合、S25で停止位置調整器67は、停止位置調整処理の実行を中止する。例えば切替器48により位置制御から荷重制御に切り替えてもよいし、停止位置調整器67が調整量をゼロとして位置制御を実行してもよい。
(適用除外)
本実施形態において、停止位置調整器67は停止位置調整処理を常に実行するとは限らず、ロック通電しても特定の相の発熱が問題にならないような状況では停止位置調整処理を実行する必要はよい。そこで、所定の適用除外要件を満たす場合、停止位置調整器67は停止位置調整処理を実行しない。
本実施形態において、停止位置調整器67は停止位置調整処理を常に実行するとは限らず、ロック通電しても特定の相の発熱が問題にならないような状況では停止位置調整処理を実行する必要はよい。そこで、所定の適用除外要件を満たす場合、停止位置調整器67は停止位置調整処理を実行しない。
図15のフローチャートに、適用除外要件の成否判定の例を示す。この例では3項目の要件についてS21~S23で順に成否を判断する。S21~S23のうち少なくともいずれか一つでYESと判断されたとき、S24で適用除外要件を満たすと判定される。
モータ制御装置351-354は、各モータ60の負荷トルクTL1-TL4又はモータ温度Temp1-Temp4を取得する。S21では、モータ60の負荷トルクTL1-TL4が所定のトルク閾値未満であるか判断される。低負荷の領域ではロック通電時に流れる電流が小さいため、発熱は問題とならない。
S22では、モータ60の負荷トルクTL1-TL4の変動が所定のトルク変動閾値より大きいか判断される。S22でYESの場合、モータ60が回転するため、そもそもロック通電状態にならない。S23では、モータ60の温度Temp1-Temp4が所定の温度閾値未満であるか判断される。たとえロック通電が行われても、許容上限温度に対して十分に余裕がある状況では、停止位置調整処理を行う必要はない。
このように、そもそもロック通電にならない場合や、ロック通電しても特定の相の発熱が問題とならない場合、停止位置調整器67は停止位置調整処理を実行しない。これにより、位置調整による荷重変化ΔFが不必要に生じることを回避することができる。
(停止位置調整処理の調停)
各電動ブレーキ81-84についてモータ制御装置351-354が個別に停止位置調整処理を行ったとき、車両全体での制動力バランスの観点から、各モータ制御装置351-354での位置調整方向の組み合わせが不適切となる場合が生じる可能性がある。そこで車両用制動装置30は、各モータ制御装置351-354の停止位置調整処理を調停する。各モータ制御装置351-354は、図1に示すように相互に情報を通信してもよいし、各モータ制御装置351-35を統括する調停部が別に設けられてもよい。
各電動ブレーキ81-84についてモータ制御装置351-354が個別に停止位置調整処理を行ったとき、車両全体での制動力バランスの観点から、各モータ制御装置351-354での位置調整方向の組み合わせが不適切となる場合が生じる可能性がある。そこで車両用制動装置30は、各モータ制御装置351-354の停止位置調整処理を調停する。各モータ制御装置351-354は、図1に示すように相互に情報を通信してもよいし、各モータ制御装置351-35を統括する調停部が別に設けられてもよい。
図16のフローチャートを参照し、停止位置調整処理の調停について説明する。S27では、車両全体での適用除外要件として、車速Vが車速閾値以上であるか判断される。S27でYESの場合、S28で各モータ制御装置351-354は、停止位置調整処理の実行を中止する。
S27でNOの場合、S30では、各モータ制御装置351-354で停止位置調整処理を実行すると判定されたか判断される。S30でYESの場合、S31で各モータ制御装置351-354は位置調整方向を仮決定する。この段階では停止位置調整処理はまだ実行されない。
車両用制動装置30は、各モータ制御装置351-354による停止位置調整処理を次のポイントで調停する。第1の調停ポイントでは、車両用制動装置30は、各左右対の車輪について、複数のモータ制御装置351-354の停止位置調整処理によって生じる制動力の増加又は減少の方向が一致するように停止位置調整処理を調停する。これにより、車両900にヨーが発生したり、スピンしたりすることを抑制しつつ、ロック通電時における発熱の偏りを抑制できる。
第2の調停ポイントでは、車両用制動装置30は、複数の車輪について、複数のモータ制御装置351-354の停止位置調整処理によって生じる制動力の増加又は減少の方向が打ち消し合うように停止位置調整処理を調停する。これにより、車両全体での要求制動力に対する実制動力の変化を最小限に抑えることができる。
第1の調停ポイントとの両立を図る場合、調停対象である「複数の車輪」から左右対の車輪が除外される。つまり、前後方向に配置された複数の車輪について、制動力の増減方向が打ち消し合うように調停される。一方、ヨーやスピンが発生してもよく、第1の調停ポイントとの両立が求められない場合、制動力の増減方向が打ち消し合うように調停される「複数の車輪」の対象に左右対の車輪が含まれてもよい。
具体的にS40で車両用制動装置30は、仮決定された位置調整方向を評価する。第1の調停ポイントにつき、左前輪91及び右前輪92に対応するモータ制御装置351、352の位置調整方向が一致しているか、左後輪93及び右後輪94に対応するモータ制御装置353、354の位置調整方向が一致しているか評価される。第2の調停ポイントにつき、例えば左前輪91及び左後輪93に対応するモータ制御装置351、353の位置調整方向が打ち消し合うか、右前輪92及び右後輪94に対応するモータ制御装置352、354の位置調整方向が打ち消し合うか評価される。
S41では、これらの調停条件を充足するか判断される。S41でNOの場合、S42で、一部のモータ制御装置の位置調整方向が変更される。ここで、どのモータ制御装置で仮決定された位置調整方向を優先するか等の詳細は、適宜決定されてよい。41でYESの場合、又は、S42で位置調整方向が変更された後、S43で、各モータ制御装置351-354は、停止位置調整処理を実行する。
このように車両用制動装置30は、各電動ブレーキにおいてモータ60の通電を制御する複数のモータ制御装置351-354を備え、複数のモータ制御装置351-354による停止位置調整処理を調停する。これにより、ヨーやスピンの発生を防止したり、車両全体での要求制動力に対する実制動力の変化を最小限に抑えたりすることができる。
(第2実施形態)
図17に第2実施形態のモータ制御装置のブロック図を示す。図5に示す第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第2実施形態のトルク指令演算部402は、制動力の増加、保持、減少の全過程で、位置センサ72により検出された実位置θに基づく位置制御を実行する。トルク指令演算部402は、位置指令演算部44、位置偏差算出器45、位置制御器46及び切替器68を有する。位置指令演算部44は、要求制動力に基づき基本の位置指令値θ*0を演算する。
図17に第2実施形態のモータ制御装置のブロック図を示す。図5に示す第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第2実施形態のトルク指令演算部402は、制動力の増加、保持、減少の全過程で、位置センサ72により検出された実位置θに基づく位置制御を実行する。トルク指令演算部402は、位置指令演算部44、位置偏差算出器45、位置制御器46及び切替器68を有する。位置指令演算部44は、要求制動力に基づき基本の位置指令値θ*0を演算する。
第1実施形態と同様に、モータ制御装置35はロック通電判定部69及び停止位置調整器67を含む。停止位置調整器67は「停止位置調整処理」を実行すると判定したとき、調整後の位置指令値θ*aを演算するとともに切替信号を切替器68に出力する。切替器68には、位置指令演算部44が演算した基本の位置指令値θ*0、及び、停止位置調整器67が演算した調整後の位置指令値θ*aが入力される。
切替器68は、停止位置調整処理を実行しない時、基本の位置指令値θ*0を選択し、停止位置調整処理を実行する時、調整後の位置指令値θ*aを選択するように切り替えられる。切替器68が選択した位置指令値θ*が位置偏差算出器45に入力される。位置偏差算出器45及び位置制御器46は、図5の構成と同じであるため説明を省略する。
第2実施形態のモータ制御装置においても停止位置調整処理の具体的な構成や作用効果は第1実施形態と同様であり、モータ60のロック通電時に特定の相に発熱が偏ることを防止することができる。
(その他の実施形態)
(a)本発明の車両用制動装置が搭載される車両は、車両前後方向において二列の左右対の車輪を有する四輪車両に限らず、車両前後方向において三列以上の車輪を有する六輪以上の車両であってもよい。例えば六輪車両でヨーやスピンを抑えるニーズがある場合、車両用制動装置30による停止位置調整処理の調停において、前輪及び後輪に加え、真ん中の列の左右対の車輪についても制動力の増減方向を一致させることが好ましい。
(a)本発明の車両用制動装置が搭載される車両は、車両前後方向において二列の左右対の車輪を有する四輪車両に限らず、車両前後方向において三列以上の車輪を有する六輪以上の車両であってもよい。例えば六輪車両でヨーやスピンを抑えるニーズがある場合、車両用制動装置30による停止位置調整処理の調停において、前輪及び後輪に加え、真ん中の列の左右対の車輪についても制動力の増減方向を一致させることが好ましい。
(b)第1実施形態、第2実施形態のモータ制御装置35では、停止位置調整処理において、トルク指令演算部401、402が、調整後の回転停止位置が反映されたトルク指令値Trq*を演算する。他の実施形態では、停止位置調整処理において、電流指令演算部50が、調整後の回転停止位置が反映された電流指令値I*を演算してもよい。
(c)上記実施形態では、位置センサとして、主にモータ60の角度センサ72が用いられることを想定しているが、位置センサとして直動機構85のストロークセンサ73が用いられてもよい。その場合、位置制御器46は、位置偏差ΔXをゼロに近づけるように、すなわち実位置Xを位置指令値X*に近づけるようにトルク指令値を演算する。停止位置調整処理の位置調整範囲は、ストロークから換算された回転角度により上記実施形態と同様に設定される。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
「前記多相モータは三相モータであり、前記停止位置調整処理の前記位置調整範囲は、電気角±30°以内に設定される請求項1に記載のモータ制御装置。」及び「前記多相モータは、二組の三相巻線組(601、602)を有する系統間位相差が電気角30±(60×n)°(nは整数)の三相二系統モータであり、前記停止位置調整処理の前記位置調整範囲は、電気角±15°以内に設定される請求項1に記載のモータ制御装置。」の発明は、記載要件が許容される場合、請求項1または2を引用してもよい。
「前記ロック通電時における前記多相モータの回転停止位置に応じて負荷に作用する荷重が変化するシステムに適用され、前記停止位置調整処理において、前記多相モータの回転停止位置は、前記負荷に作用する荷重の目標値である要求荷重の変動許容範囲に対応する範囲に調整される請求項1に記載のモータ制御装置。」の発明は、記載要件が許容される場合、請求項1から直前請求項までのいずれか一項を引用してもよい。
「前記適用除外要件として、・・・のうち少なくともいずれか一つの要件が満たされたとき、前記停止位置調整器は、前記停止位置調整処理の実行を中止する請求項1に記載のモータ制御装置。」の発明は、記載要件が許容される場合、請求項1から直前請求項までのいずれか一項を引用してもよい。
「前記適用除外要件として、車速が車速閾値以上であるとき、複数の前記モータ制御装置の前記停止位置調整器は、前記停止位置調整処理の実行を中止する請求項7に記載の車両用制動装置。」の発明は、記載要件が許容される場合、請求項7から直前請求項までのいずれか一項を引用してもよい。
本開示に記載のモータ制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のモータ制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のモータ制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
30・・・車両用制動装置、
35(351-354)・・・モータ制御装置、
40・・・トルク指令演算部、
50・・・電流指令演算部、
55・・・インバータ(電力変換器)、
60・・・多相モータ、
67・・・停止位置調整器、
81-84・・・電動ブレーキ、 85・・・直動機構、
900・・・車両、 91-94・・・車輪。
35(351-354)・・・モータ制御装置、
40・・・トルク指令演算部、
50・・・電流指令演算部、
55・・・インバータ(電力変換器)、
60・・・多相モータ、
67・・・停止位置調整器、
81-84・・・電動ブレーキ、 85・・・直動機構、
900・・・車両、 91-94・・・車輪。
Claims (10)
- 多相モータ(60)のトルク指令値を演算するトルク指令演算部(40)と、
前記トルク指令値に基づき前記多相モータに通電する電流指令値を演算する電流指令演算部(50)と、
入力された電力を変換し、前記電流指令値に応じた交流電力を前記多相モータに供給する電力変換器(55)と、
所定の適用除外要件を満たす場合を除き、前記多相モータの回転が停止した状態で通電するロック通電時に、所定の位置調整範囲内で回転停止位置を調整する停止位置調整処理を実行する停止位置調整器(67)と、
を備え、
前記停止位置調整処理において、前記停止位置調整器は、各相のうち電流絶対値が最大となる最大電流相の電流絶対値を低減するように回転停止位置を調整し、
前記トルク指令演算部又は前記電流指令演算部は、調整後の回転停止位置が反映された前記トルク指令値又は前記電流指令値を演算するモータ制御装置。 - 前記停止位置調整処理において、
前記多相モータの回転停止位置は、前記最大電流相の電流絶対値が前記位置調整範囲内で最小となる位置に調整される請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記多相モータは三相モータであり、
前記停止位置調整処理の前記位置調整範囲は、電気角±30°以内に設定される請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記多相モータは、二組の三相巻線組(601、602)を有する系統間位相差が電気角30±(60×n)°(nは整数)の三相二系統モータであり、
前記停止位置調整処理の前記位置調整範囲は、電気角±15°以内に設定される請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記ロック通電時における前記多相モータの回転停止位置に応じて負荷に作用する荷重が変化するシステムに適用され、
前記停止位置調整処理において、
前記多相モータの回転停止位置は、前記負荷に作用する荷重の目標値である要求荷重の変動許容範囲に対応する範囲に調整される請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前記適用除外要件として、
前記多相モータの負荷トルクが所定のトルク閾値未満である、
前記多相モータの負荷トルクの変動が所定のトルク変動閾値より大きい、
前記多相モータの温度が所定の温度閾値未満である、
のうち少なくともいずれか一つの要件が満たされたとき、
前記停止位置調整器は、前記停止位置調整処理の実行を中止する請求項1に記載のモータ制御装置。 - 前後方向に二列以上の左右対の車輪(91-94)を含む四輪以上の車両(900)に搭載され、多相モータ(60)が出力したトルクを直動機構(85)により直動力に変換し、対応する車輪に押圧して制動力を発生させる複数の電動ブレーキ(81-84)により車両を制動する車両用制動装置であって、
各前記電動ブレーキにおいて前記多相モータの通電を制御する請求項1~6のいずれか一項に記載のモータ制御装置(351-354)を備え、
複数の前記モータ制御装置による前記停止位置調整処理を調停する車両用制動装置。 - 各左右対の車輪について、複数の前記モータ制御装置の前記停止位置調整処理によって生じる制動力の増加又は減少の方向が一致するように前記停止位置調整処理を調停する請求項7に記載の車両用制動装置。
- 複数の車輪について、複数の前記モータ制御装置の前記停止位置調整処理によって生じる制動力の増加又は減少の方向が打ち消し合うように前記停止位置調整処理を調停する請求項7に記載の車両用制動装置。
- 前記適用除外要件として、車速が車速閾値以上であるとき、複数の前記モータ制御装置の前記停止位置調整器は、前記停止位置調整処理の実行を中止する請求項7に記載の車両用制動装置。
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