JP2024042784A - スパンボンド不織布、ならびに、これを用いてなる衛生材料 - Google Patents

スパンボンド不織布、ならびに、これを用いてなる衛生材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた柔軟性および力学特性を有するスパンボンド不織布を提供すること。【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂からなる繊維によって構成されたスパンボンド不織布であって、該スパンボンド不織布のメルトマスフローレートが20g/10分以上200g/10分以下の範囲にあり、前記繊維が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において、以下の(A)かつ(B)を満たす、スパンボンド不織布。(A)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下であるピークを少なくとも1つ有する(B)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下であるピークを少なくとも1つ有する【選択図】 なし

Description

本発明は、柔軟であり、かつ、優れた力学物性を有するスパンボンド不織布、ならびに、これを用いてなる衛生材料に関するものである。
ポリオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布、特に、ポリプロピレン系樹脂からなるスパンボンド不織布は低コストで加工性に優れているため、衛生材料用途を中心に幅広く用いられている。
近年、衛生材料用途に用いられるポリプロピレンスパンボンド不織布に対して、力学特性をさらに向上させるため、いくつか提案がなされている。
例えば、特許文献1には、結晶化温度、分子量分布(Mw/Mn)、メルトマスフローレートが特定の範囲にあるポリプロピレン系樹脂を含むスパンボンド不織布が提案されている。そして、このようなスパンボンド不織布によれば、耐水性および引張強度が良好なスパンボンド不織布およびスパンボンド不織布を用いた衛生材料が提供される旨が記載されている。
また、特許文献2には、メルトマスフローレートが特定の範囲のポリプロピレン系樹脂とそれよりも高いメルトマスフローレートの範囲のポリプロピレン系樹脂とを含む繊維または組成物が提案されている。そして、この繊維を含む不織布材料は優れた横方向引張り特性を有し、優れた伸び、均一性、ロフト性、白色を有する旨が記載されている。
特開2018-168509号公報 特開平6-41812号公報
特許文献1において提案されている技術では、確かに一定の引張強度を有する不織布を得ることができる。しかしながら、用いているポリプロピレン樹脂のメルトマスフローレートが低いことに起因して、スパンボンド不織布の柔軟性が悪化してしまうという課題がある。
また、特許文献2において提案されている技術では、例えば、2種類のポリプロピレン系樹脂からなる複合繊維からなる不織布とすることができるものと考えられるが、それだけでは、十分な力学特性と優れた柔軟性とを有する不織布を得ることができないという課題がある。
そこで、本発明の目的は、優れた柔軟性および力学特性を有するスパンボンド不織布を提供することにある。
本発明者らが検討を進めたところ、優れた柔軟性はポリプロピレン繊維のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの排出曲線においてピークを示すMwが小さいこと、優れた力学特性はスパンボンド不織布のメルトマスフローレートが小さいこと、および、ポリプロピレン繊維のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの排出曲線において、ピークを示すMwが大きいことで達成できることが分かった。
そこで、本発明者らは、この知見を基にして上記の課題を達成するために鋭意検討をした結果、スパンボンド不織布のメルトマスフローレートを特定の範囲とすると同時に、構成するポリプロピレン系樹脂からなる繊維が、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィーの排出曲線において、特定の範囲に少なくとも1つずつピークを示すものとすることで、優れた柔軟性と力学特性を両立したスパンボンド不織布となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] ポリプロピレン系樹脂からなる繊維によって構成されたスパンボンド不織布であって、該スパンボンド不織布のメルトマスフローレートが20g/10分以上200g/10分以下の範囲にあり、前記繊維が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において、以下の(A)かつ(B)を満たす、スパンボンド不織布。
(A)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下であるピークを少なくとも1つ有する
(B)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下であるピークを少なくとも1つ有する
[2] 前記繊維が、さらに、以下の(C)~(E)も満たす、前記[1]に記載のスパンボンド不織布。
0.80≦(S+S)/S≦1.00 ・・・(C)
0.30≦S/S≦0.70 ・・・(D)
0.30≦S/S≦0.70 ・・・(E)
ここで、
S:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、全ピークの面積、
:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下の位置に現れるピークの面積、
:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下の位置に現れるピークの面積、
である。
[3] 前記繊維の平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である、前記[1]または[2]に記載のスパンボンド不織布。
[4] 前記スパンボンド不織布の示差走査熱量測定における融点が150℃以上175℃以下であり、該融点における結晶融解熱量が90J/g以上110J/g以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載のスパンボンド不織布を用いてなる、衛生材料。
本発明のスパンボンド不織布は、スパンボンド不織布のメルトマスフローレートを特定の範囲とすると同時に、構成するポリプロピレン系樹脂からなる繊維が、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィーの排出曲線において、特定の範囲に少なくとも1つずつピークを示すものとすることで、高い柔軟性に加え、優れた力学特性を発揮するものである。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、該スパンボンド不織布のメルトマスフローレートが20g/10分以上200g/10分以下の範囲にあり、前記繊維がゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において、以下の(A)および(B)を満たす、スパンボンド不織布である。
(A)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下であるピークを少なくとも1つ有する
(B)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下であるピークを少なくとも1つ有する
以下に、本発明のスパンボンド不織布について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではなく、そして、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
[ポリプロピレン系樹脂]
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維(ポリプロピレン繊維)からなる。本発明において、ポリプロピレン系樹脂とは、繰り返し単位に占めるプロピレン単位のモル分率が80モル%~100モル%である樹脂を意味する。ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、低コストであり、かつ、柔軟性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。ポリプロピレン系樹脂として、プロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、各種α-オレフィンの共重合比率は、繊維をより引張強度の高いものとするため、10mol%以下が好ましく、より好ましくは5mol%以下であり、さらに好ましくは3mol%以下である。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、他成分樹脂をブレンドさせることができる。他成分樹脂としては、融点がポリプロピレンに近いポリエチレンやポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのポリオレフィン系樹脂(なお、「ポリオレフィン系樹脂」とは、前記の「ポリプロピレン系樹脂」の例と同様、繰り返し単位に占める当該ポリオレフィン単位のモル分率が80モル%~100モル%である樹脂のことを指す。特記がない限り、「・・・系樹脂との記載があるものは同様である。)の他、融点がポリプロピレンに近いポリエステル系樹脂、および、融点がポリプロピレンに近いポリアミド系樹脂が挙げられ、柔軟性付与の観点から低結晶性のポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。低結晶性のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体や、低立体規則性ポリプロピレンなどが好適に用いられる。この場合において、他成分樹脂の質量比率は、ポリプロピレン系樹脂の特性を十分に発現させるため、その上限が好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、着色のための顔料、酸化防止剤、ポリエチレンワックスや脂肪酸アミド化合物等の滑剤、および耐熱安定剤等を添加することができる。
[ポリプロピレン繊維]
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリプロピレン系樹脂からなる繊維によって構成される。そして、本発明のスパンボンド不織布は、前記の繊維が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以降、単にGPCと略記することがある)における排出曲線のピーク分離解析において、以下の(A)かつ(B)を満たす。
(A)前記のポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下であるピークを少なくとも1つ有する
(B)前記のポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下であるピークを少なくとも1つ有する
スパンボンド不織布を構成する繊維がこの2つの条件を満たす繊維であることで、優れた柔軟性、および、力学特性を有するスパンボンド不織布となる。以降、GPCの排出曲線のピーク分離解析における、前記のポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下の位置に現れるピークトップを「低分子量側ピークトップ」と称し、前記のポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下の位置に現れるピークトップを「高分子量側ピークトップ」と称することとする。
まず、条件(A)について、前記の繊維が低分子量側ピークトップを少なくとも1つ有する。中でも、重量平均分子量Mwが70000以上90000以下の範囲に、前記のポリプロピレン系樹脂に由来するピークを少なくとも1つ有することが好ましい。前記の繊維が、上記範囲内に前記のポリプロピレン系樹脂に由来するピークを少なくとも有するものであると、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
次に、条件(B)について、前記の繊維が高分子量側ピークトップを少なくとも1つ有する。中でも、重量平均分子量Mwが800000以上1400000以下の範囲に、前記のポリプロピレン系樹脂に由来するピークを少なくとも1つ有することが好ましく、重量平均分子量Mwが850000以上1300000以下の範囲に、前記のポリプロピレン系樹脂に由来するピークを少なくとも1つ有することがより好ましい。前記の繊維が、上記範囲内に前記のポリプロピレン系樹脂に由来するピークを少なくとも有するものであると、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、本発明において、前記のポリプロピレン系樹脂に由来する重量平均分子量Mwは、以下の方法で測定、算出することとする。
(1) スパンボンド不織布の幅方向の端から10cmを除いた部分から7.5mgの試験片を採取する。
(2) 試験片に1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加したもの、例えば、富士フィルム和光純薬製のものなど)の測定溶媒5mLを加え、その溶液を160℃~170℃で30分間緩やかに攪拌して試験片を溶解させる。
(3) 攪拌後の溶液を細孔径が0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のフィルターを用いて濾過を行い、試料溶液を作製する。
(4) GPCを用いて、以下の条件で測定を行う。
・装置: 例えば、Polymer Laboratories社製「PL-220」など
・検出器: 示差屈折率検出器RI
・カラム: 例えば、Shodex HT-G(ガードカラム)+Shodex HT-806M×2本(8.0mm×30cm、昭和電工株式会社製)など
・溶媒: 1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%BHT添加)
・流速: 1.0mL/分
・カラム温度: 145℃
・注入量: 0.20mL
・標準試料: 単分散ポリスチレン(例えば、東ソー株式会社製など)、ジベンジル(例えば、東京化成工業株式会社製など)。
・リファレンス:重量平均分子量が既知であるポリプロピレン系樹脂(例えば、POLYMIRAE製「HP5036」など)
(5) 分子量校正曲線は、ポリスチレン、ジベンジルの分子量の対数と溶出時間の関係を3次式で近似して作成する。
(6) リファレンスの重量平均分子量の値が既知の値(前記の「HP5036」の場合、151000)になるように、(5)の近似式を平行移動する。
(7) (6)で得られた校正曲線を用いて、測定したポリプロピレン系樹脂の排出曲線を得る。
(8) 得られたGPCにおける排出曲線のピーク分離解析を行う。具体的には、以下の(8-1)~(8-6)のようにして実施する。なお、(8-1)~(8-6)の一部、あるいは全ての工程について、例えば、マイクロソフト社製エクセル(登録商標)のビジュアル・ベーシックを用いるなどして、プログラムにより解析を行うこともできる。
(8-1)前記の(7)で得られた排出曲線の形状からピークの数を決定する。
(8-2)ピークの数に応じた数の曲線を対数正規分布として、それぞれの曲線の分散、平均値を設定する。
(8-3)対数正規分布の曲線を再合成した曲線、実測ともに面積が1となるように強度を規格化する。横軸はLog(分子量)を0.02間隔に分割して行う。
(8-4)Log(分子量)を0.02間隔で分子量が同じ時の再合成した曲線の強度(高さ)と実測の強度(高さ)の差の二乗の値を算出し、分子量40000以上2000000以下の範囲の差の二乗の和を求める。
(8-5)(8-2)~(8-4)の操作を繰り返して、再合成した曲線の強度と実測の強度の差の二乗の和が最小となる曲線を得る。
(8-6)得られたそれぞれの曲線から各分子量Mにおける分子数Nが得られる。重量平均分子量Mwは下記の式により求める
重量平均分子量Mw=Σ(N×M )/Σ(N×M)。
そして、本発明のスパンボンド不織布は、前記の繊維が、さらに、以下の(C)~(E)も満たすことが好ましい。
0.80≦(S+S)/S≦1.00 ・・・(C)
0.30≦S/S≦0.70 ・・・(D)
0.30≦S/S≦0.70 ・・・(E)
ここで、
S:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、全ピークの面積、
:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下であるピークの面積、
:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下であるピークの面積、
である。
スパンボンド不織布を構成する繊維がこれら3つの条件も満たす繊維であることで、より優れた柔軟性、および、より高い力学特性を有するスパンボンド不織布となる。以降、GPCの排出曲線のピーク分離解析における、前記のポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下の位置に現れるピークの面積を「低分子量側ピーク面積」と称し、前記のポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下の位置に現れるピークの面積を「高分子量側ピーク面積」と称することとする。
まず、条件(C)について、(S+S)/S、すなわち、全ピークの面積に占める、低分子量側ピーク面積と高分子量側ピーク面積との合計の割合が、0.80以上1.00以下であることが好ましい。この条件を満たすことで、良好なエンボス部の熱圧着と繊維強度を有するため、柔軟性、および、力学特性が良好なスパンボンド不織布となる。中でも、(S+S)/Sが0.90以上1.00以下の範囲であると、優れた柔軟性、および、力学特性を有するスパンボンド不織布となる。
次に、条件(D)について、S/S、すなわち、全ピークの面積に占める、低分子量側ピーク面積の割合が、0.30以上0.70以下であることが好ましい。この面積割合について、その下限が好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上であることにより、触感が滑らかなスパンボンド不織布となる。一方、前記の面積割合について、その上限が好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下であることにより、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。
また、条件(E)について、S/S、すなわち、全ピークの面積に占める、低分子量側ピーク面積の割合が、0.30以上0.70以下であることが好ましい。この面積割合について、その下限が好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上であることにより、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。一方、前記の面積割合について、その上限が好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下であることにより、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、本発明におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク面積は、前記の重量平均分子量を得る方法により解析される、横軸がLog(分子量)、縦軸が強度であるグラフにおけるピークの面積から算出した値を指す。
また、この繊維の平均単繊維径は、5.0μm以上20.0μm以下であることが好ましい。平均単繊維径について、その上限が20.0μm以下、好ましくは16.0μm以下であることにより、スパンボンド不織布の表面に触れたときの触感がより滑らかなものとなる。加えて、各々の繊維の繊維径が細いことにより、断面2次モーメントの低下も発現することとなり、スパンボンド不織布がより柔軟なものとなる。一方、平均単繊維径について、その下限が5.0μm以上、好ましくは8.0μm以上であることにより、引張強度などの力学特性が優れたスパンボンド不織布となる。
なお、本発明における繊維の平均単繊維径(μm)は、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)スパンボンド不織布の幅方向の端から10cmを除いた箇所からランダムに5mm×5mmの試験片を10枚切り出す。
(2)スパンボンド不織布を構成し、隣り合ったエンボス接着部間の距離に対してエンボス接着部から10%以上離れた位置に存在する繊維を、エポキシ樹脂等の包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡「SU1510」など)で10本以上の繊維が観察できる倍率にて画像を撮影する。
(3)撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維を、画像解析ソフト(例えば、ImageJなど)を用いて解析することで各繊維の断面積を測定し、真円換算で求められる繊維の単繊維径(μm)を求める。
(4)試験片1枚につき10回測定を行い、その算術平均値(μm)の小数点以下第二位を四捨五入した値を繊維の平均単繊維径(μm)とする。
また、本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の引張強度は、1.2cN/dtex以上3.0cN/dtex以下であることが好ましい。繊維の引張強度について、その下限が1.2cN/dtex以上であることにより、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。また、繊維の引張強度について、その上限が3.0cN/dtex以下であることにより、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、本発明における繊維の引張強度は、JIS L1015:2010の「8.7 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)繊維の密度を以下の(1-1)~(1-3)の手順によって測定する。
(1-1)15℃に温調された室内にて、水とエタノールを混合する。なお、エタノールの質量分率は40%~70%とし、1%の間隔で濃度の異なる31水準のエタノール水溶液を調製する。
(1-2)超音波洗浄を施して不純物を取り除いたスパンボンド不織布のうち、幅方向の端部を除いた部分から、5mm×5mmの試験片をランダムに93枚切り出す。
(1-3)切り出した試験片に気泡がつかないようにしてエタノール水溶液に浸漬させ、6時間以上放置する。
(1-4)試験片が底まで沈まなかったエタノール水溶液のうち、最もエタノール質量分率が低いエタノール水溶液の質量分率X(単位なし)を得る操作を3回実施し、得られたエタノール水溶液の質量分率の算術平均値より、下式を用いて密度を算出する。
繊維の密度(g/cm)=-0.000005×X -0.0017×X+1.0153
(2)スパンボンド不織布を構成し、隣り合ったエンボス接着部間の距離に対してエンボス接着部から10%以上離れた位置に存在する繊維を、無作為に6本取り出す。このとき、各繊維の繊維長が50mm以上となるように取り出し、取り出した繊維の繊維長が50mmを下回る場合には、再度繊維を無作為に取り出して、6本の繊維が全て50mm以上となるように取り出す。
(3)空間距離20mmとした繊維を1本ずつ区分線に緩く張った状態で両端を接着剤で紙片にはり付けて固着し、区分ごとを1試料として、6本作製する。
(4)残った繊維を、エポキシ樹脂等の包埋剤にて包埋し、繊維軸に垂直方向の繊維横断面を顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡「SU1510」など)で10本以上の繊維が観察できる倍率にて画像を撮影する。
(5)撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した繊維を、画像解析ソフトを用いて解析することで繊維断面の面積を測定し、真円換算で求められる繊維の単繊維径(円相当径、μm)を求め、(1)で算出した密度とともに、次の式に基づいて正味繊度(dtex)を算出して、小数点以下第三位を四捨五入する
正味繊度(dtex)=π×(繊維の単繊維径(μm)/2)×密度(g/cm)×100000(cm)
(6)試料を引張試験機(例えば、株式会社島津製作所製オートグラフ「AG-IS」など)のつかみに取り付け、つかみ間隔20mm、引張速度20mm/分の速度で引っ張り、試料が切断したときの荷重(cN)を測定する。
(7)(6)で得られた荷重を(5)で得られた正味繊度(dtex)で除して引張強度(cN/dtex)を算出し、各試料で算出した引張強度の平均値(cN/dtex)を求め、小数点以下第二位を四捨五入する。
本発明のスパンボンド不織布を構成するポリプロピレン繊維の断面形状は、扁平断面や異形断面であってもよいが、丸断面であることがより好ましい。丸断面とすることにより、紡糸時の糸切れが少なくなり不織布の欠点が減少する。さらに、スパンボンド不織布とした際に柔軟性に優れた不織布とすることができる。
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリプロピレン系樹脂からなる繊維(ポリプロピレン繊維)によって構成されたものである。そして、本発明のスパンボンド不織布のメルトマスフローレートは、20g/10分以上200g/10分以下である。スパンボンド不織布のメルトマスフローレートについて、その下限が20g/10分以上であることにより、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。また、スパンボンド不織布のメルトマスフローレートについて、その上限が200g/10分以下、好ましくは170g/10分以下であることにより、優れた力学物性を有するスパンボンド不織布となる。
本発明におけるスパンボンド不織布のメルトマスフローレートは、JIS K7210-1:2014「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法」の「8章 A法:質量測定法」に準じて、スパンボンド不織布の幅方向の端から10cmを除いた部分から5gの試験片を5枚採取し、採取した試験片について、荷重が2160gで、温度が230℃の条件で測定して得られた値の算術平均値を指すこととする。測定には、例えば、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ「F-F01」などを用いることができる。
なお、スパンボンド不織布のメルトマスフローレートは、前記のポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量により制御することができる。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が高いほど、メルトマスフローレートの値は小さくなる。
本発明のスパンボンド不織布は、その示差走査熱量測定における融点が150℃以上175℃以下であり、該融点における結晶融解熱量が90J/g以上110J/g以下であることが好ましい。このようにすることで、優れた柔軟性、および、力学特性を有するスパンボンド不織布となる。
まず、スパンボンド不織布の融点について、その下限が150℃以上、好ましくは155℃以上であることにより、実用に耐え得る耐熱性が得られ、かつ、スパンボンド不織布の寸法安定性が向上するため柔軟性に優れたスパンボンド不織布となる。また、スパンボンド不織布の融点について、その上限が175℃以下であることにより、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、前記の融点は、ポリプロピレン系樹脂の各種α-オレフィンの共重合比率などにより制御することができる。例えば、各種α-オレフィンの共重合比率が小さいほど、融点が高くなる。
そして、本発明のスパンボンド不織布の、前記の融点における結晶融解熱量は、90J/g以上110J/g以下であることが好ましい。前記の結晶融解熱量について、その下限が90J/g以上であることにより、良好な力学物性を有するスパンボンド不織布となる。また、前記の結晶融解熱量について、その上限が110J/g以下であることにより、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、前記の結晶融解熱量は、ポリプロピレン系樹脂の各種α-オレフィンの共重合比率や他成分樹脂の質量比率、紡糸速度などにより制御することができる。例えば、各種α-オレフィンの共重合比率や他成分樹脂の質量比率が小さいほど結晶融解熱量は大きくなる。
本発明において、スパンボンド不織布の融点(℃)、結晶融解熱量(J/g)とは、示差走査熱量計(例えば、TA Instruments社製DSC「Q2000」など)に、スパンボンド不織布の幅方向の端から10cmを除いた部分から採取した試験片約2mgをセットし、窒素下、昇温速度16℃/分の条件で示差走査熱量測定を3回行った際の値のことを指し、吸熱ピークの温度の算術平均値が融点、この吸熱ピークの面積から求められる吸熱量を結晶融解熱量とする。
本発明のスパンボンド不織布の目付は、5g/m以上100g/m以下であることが好ましい。スパンボンド不織布の目付について、その下限が好ましくは5g/m以上、より好ましくは10g/m以上であることにより目付斑の少ないスパンボンド不織布となる。また、スパンボンド不織布の目付について、その上限が好ましくは100g/m以下、より好ましくは50g/m以下であることにより、不織布の柔軟性を好適に発現させることができる。
本発明におけるスパンボンド不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)」に準じて、20cm×25cmの試験片を、スパンボンド不織布の幅方向にて端から10cmを除いた部分から幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した値を指すこととする。ただし、スパンボンド不織布の幅が1mに満たない場合、あるいは、20cm×25cmの試験片が採取できない場合には、試験片の合計面積が1500cmとなるようにスパンボンド不織布から試験片を複数枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した値を指すこととする。
本発明のスパンボンド不織布の目付当たりの引張強力は、1.05(N/25mm)/(g/m)以上2.00(N/25mm)/(g/m)以下であることが好ましい。目付当たりの引張強力について、その下限が好ましくは1.05(N/25mm)/(g/m)以上、より好ましくは1.07(N/25mm)/(g/m)以上であることにより、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。また、目付当たりの引張強力について、その上限が好ましくは2.00(N/25mm)/(g/m)以下、より好ましくは1.90(N/25mm)/(g/m)以下であることにより、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、本発明において、スパンボンド不織布の目付当たりの引張強力は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)25mm×40mmの試験片を、不織布の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)それぞれについて、スパンボンド不織布の端から10cmを除いた部分から無作為に幅1m当たり3枚採取する。
(2)試験片をつかみ間隔20mmで引張試験機(例えば、株式会社島津製作所製オートグラフ「AG-IS」など)のつかみにセットする。
(3)引張速度20mm/分で引張試験を実施し、最大点の荷重を測定する。
(4)各試験片で測定した縦方向と横方向の最大点の荷重の平均値を求め、次の式に基づいて目付当たりの引張強力を算出し、小数点以下第三位を四捨五入する
目付あたりの引張強力((N/25mm)/(g/m))=引張強力の平均値(N/25mm)/目付(g/m)。
本発明のスパンボンド不織布は、剛軟度が10mm以上40mm以下であることが好ましい。剛軟度について、その下限が好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であることにより、優れた取り扱い性を有するスパンボンド不織布となる。また、剛軟度について、その上限が好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下であることにより、衛生材料用の不織布としての使用に適した柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、スパンボンド不織布の剛軟度は、ポリプロピレン繊維のメルトマスフローレートや平均単繊維径、製造時の熱接着の条件(圧着率、温度、および線圧など)などを適切に調整することにより制御することができる。例えば、メルトマスフローレートを高くする、平均単繊維径を小さくする、圧着率を小さくする、温度を低くする、線圧を低くすることで、スパンボンド不織布の剛軟度を低くすることができる。
本発明において、スパンボンド不織布の剛軟度(mm)とは、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.7 剛軟度(JIS法及びISO法)」の「6.7.3 41.5°カンチレバー法」に準じて、スパンボンド不織布の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)それぞれについて3回測定を行い、さらに縦方向、横方向の全ての値の算術平均値(mm)について、小数点以下第1位で四捨五入した値である。
本発明のスパンボンド不織布は、上記の技術を適用することにより、良好な力学物性に加え、これまでにない優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
[スパンボンド不織布の製造方法]
次に、本発明のスパンボンド不織布の製造方法について、説明する。本発明のスパンボンド不織布は、下記の(a)~(c)の工程を順次施すことによって製造されることが好ましい。
(a)ポリプロピレン系樹脂を紡糸口金から溶融押出し、紡出された該ポリプロピレン系樹脂を牽引、延伸して繊維を形成する工程。
(b)該繊維を堆積させ、繊維ウェブを形成する工程。
(c)得られた繊維ウェブを接着加工する工程。
以下に、上記の各工程について、さらに詳細を説明する。
(a)繊維を形成する工程
まず、この工程では、前記のポリプロピレン系樹脂を紡糸口金から溶融押出する。この際に用いられるポリプロピレン系樹脂は、メルトマスフローレートの異なる2種類以上のポリプロピレン系樹脂を任意の割合で混合して、スパンボンド不織布のメルトマスフローレートが上記の範囲となるように調整されたものであることが好ましい。具体的には、メルトマスフローレートが0.03g/10分以上0.50g/10分以下のポリプロピレン系樹脂Aと、メルトマスフローレートが1000g/10分以上6000g/10分以下のポリプロピレン系樹脂Bとが少なくとも含まれるように混合して、スパンボンド不織布のメルトマスフローレートが上記の範囲となるように調整することがより好ましい。
前記のポリプロピレン系樹脂Aに関し、そのメルトマスフローレートの範囲について、その下限を好ましくは0.03g/10分以上、より好ましくは0.10g/10分以上とすることで、混合されて得られるポリプロピレン系樹脂の中で部分的な粘度差が生じてしまう、繊維径の不均一化や紡糸性悪化を抑制することができる。一方、前記のメルトマスフローレートの範囲について、その上限を好ましくは0.50g/10分以下、より好ましくは0.49g/10分以下とすることで、スパンボンド不織布の力学特性をさらに高いものとすることができる。
他方、前記のポリプロピレン系樹脂Bに関し、そのメルトマスフローレートの範囲について、その下限を好ましくは1000g/10分以上、より好ましくは1050g/10分以上とすることで、スパンボンド不織布の柔軟性をさらに高いものとすることができる。一方、前記のメルトマスフローレートの範囲について、その上限を好ましくは6000g/10分以下、より好ましくは3500g/10分以下とすることで、スパンボンド不織布の力学特性をさらに高いものとすることができる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂A、ポリプロピレン系樹脂Bを含む、原料としてのポリプロピレン系樹脂(以降、これを単に「ポリプロピレン系樹脂」と略記することがある)のメルトマスフローレートは、スパンボンド不織布のメルトマスフローレートの測定方法と同様に、JIS K7210-1:2014「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法」の「8章 A法:質量測定法」により、荷重が2160gで、温度が230℃の条件で測定された値を指すこととする。測定には、例えば、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ「F-F01」などを用いることができる。
なお、ポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレートは、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量により制御することができる。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が高いほど、メルトマスフローレートの値は小さくなる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂Aとポリプロピレン系樹脂Bとを混合する際の混合割合は、質量割合で、ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=30:70~70:30とすることが好ましい。前記の混合割合について、ポリプロピレン系樹脂Aの質量割合が、好ましくは30質量%(ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=30:70)以上、より好ましくは40質量%(ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=40:60)以上とすることで、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。一方、前記の混合割合について、ポリプロピレン系樹脂Aの質量割合が、好ましくは70質量%(ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=70:30)以下、より好ましくは60質量%(ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=60:40)以下とすることで、高分子量成分を使用することによる、紡糸性の悪化を抑制することができる。
前記のポリプロピレン系樹脂Aに関し、その重量平均分子量の範囲を、750000以上1500000以下とすることが好ましい。前記の範囲について、その下限を好ましくは750000以上、より好ましくは800000以上とすることで、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。一方、前記の範囲について、その上限を好ましくは1500000以下、より好ましくは1400000とすることで、紡糸性を向上することができる。
また、前記のポリプロピレン系樹脂Bに関し、その重量平均分子量の範囲を、60000以上95000以下とすることが好ましい。前記の範囲について、その下限を好ましくは60000以上、より好ましくは70000以上とすることで、優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。一方、前記の範囲について、その上限を好ましくは95000以下、より好ましくは90000以下とすることで、良好な熱接着により優れた力学特性を有するスパンボンド不織布となる。
なお、ポリプロピレン系樹脂A、ポリプロピレン系樹脂Bの重量平均分子量は、以下の方法で測定、算出することとする。
(1) ポリプロピレン系樹脂AまたはBについて、7.5mgの試験片を採取する。
(2) 試験片に1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加したもの、例えば、富士フィルム和光純薬製のものなど)の測定溶媒5mLを加え、その溶液を160℃~170℃で30分間緩やかに攪拌して試験片を溶解させる。
(3) 攪拌後の溶液を細孔径が0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のフィルターを用いて濾過を行い、試料溶液を作製する。
(4) GPCを用いて、以下の条件で測定を行う。
・装置: 例えば、Polymer Laboratories社製「PL-220」など
・検出器: 示差屈折率検出器RI
・カラム: 例えば、Shodex HT-G(ガードカラム)+Shodex HT-806M×2本(8.0mm×30cm、昭和電工株式会社製)など
・溶媒: 1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%BHT添加)
・流速: 1.0mL/分
・カラム温度: 145℃
・注入量: 0.20mL
・標準試料: 単分散ポリスチレン(例えば、東ソー株式会社製など)、ジベンジル(例えば、東京化成工業株式会社製など)。
・リファレンス:重量平均分子量が既知であるポリプロピレン系樹脂(例えば、POLYMIRAE製「HP5036」など)
(5) 分子量校正曲線は、ポリスチレン、ジベンジルの分子量の対数と溶出時間の関係を3次式で近似して作成する。
(6) リファレンスの重量平均分子量の値が既知の値(前記の「HP5036」の場合、151000)になるように、(5)の近似式を平行移動する。
(7) (6)で得られた校正曲線を用いて、測定したポリプロピレン系樹脂の排出曲線を得る。
(8) 得られたGPCにおける排出曲線から各分子量Mにおける分子数Nが得られる。重量平均分子量Mwは下記の式により求める
重量平均分子量Mw=Σ(N×M )/Σ(N×M)。
そして、前記のポリプロピレン系樹脂を溶融紡糸する際には、単軸エクストルーダー型や2軸エクストルーダー型などの押出機を用いた溶融紡糸手法を適用することができる。この際、前記のポリプロピレン系樹脂について、乾燥などの前処理を行って溶融紡糸してもよいし、特段、前処理を行わなくともよい。
前記の押出機より吐出されたポリプロピレン系樹脂は、配管を経由し、ギアーポンプなどの計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、紡糸口金へと導かれる。このとき、樹脂配管から紡糸口金までの温度(紡糸温度)は、流動性を高めるため180℃以上280℃以下とすることが好ましい。
吐出に使用される紡糸口金は、口金孔の孔径Dを0.1mm以上0.6mm以下とすることが好ましく、また、口金孔のランド長L(口金孔の孔径と同一の直管部の長さ)を孔径Dで除した商で定義されるL/Dは、1以上10以下であることが好ましい態様である。
そして、口金孔から吐出されたポリプロピレン繊維を、冷却風(空気)を吹き付けることにより冷却固化する。冷却風の温度は、冷却効率の観点から冷却風速とのバランスで決定することができるが、30℃以下であることが好ましい。冷却風の温度の上限を、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは15℃以下とすることにより、ポリプロピレン繊維の冷却効率が高くなり、紡糸性を向上することができる。また、冷却風の温度の下限は、空気の冷却コストの観点、および、冷却による水分の繊維への付着を防ぐ観点から0℃以上とすることが好ましい。
冷却風は、口金から吐出された繊維に対し、ほぼ垂直方向(上下に繊維が走行しているときは、地面と平行方向のことを指す)に流すことが好ましい。その際、冷却風の速度は、冷却効率および繊度の均一性の観点から、10m/分以上とすることが好ましく、製糸安定性の点から100m/分以下とすることが好ましい。
また、紡糸口金の口金孔から下流に向かって0mm以上300mm以内で冷却を開始することが好ましい。紡糸口金から冷却開始までの距離について、その下限を好ましくは0mm以上、より好ましくは5mmとすることにより、口金表面温度の低下を引き起こさずに吐出を安定させることができる。また、紡糸口金から冷却開始までの距離について、その上限を好ましくは300mm以内、より好ましくは100mm以内とすることにより、繊維の細化挙動が安定させることができ、紡糸性を向上させることができる。
口金孔から吐出された繊維は、冷却固化後に加速した空気流により牽引される。加速空気流は、冷却風を吹かせる領域を密閉とし、紡糸線下流に向かうにしたがって、徐々に密閉領域の断面積を小さくすることにより空気流速を加速させるようにすることができるが、高い冷却効率や空気流速を得るためには、冷却風を吹かせる領域を密閉せず、エジェクターを用いることが好ましい態様である。
この際、紡糸口金からエジェクター入口までの距離を400mm以上3000mm以内とすることが好ましい。紡糸口金からエジェクター入口までの距離について、その下限を400mm以上とすることで、ポリプロピレン繊維が冷却後にエジェクターに入るため良好な製糸性となり、その上限を3000mm以下とすることで、適切な紡糸応力となるため優れた紡糸性となる。
エジェクターに入った繊維は加速空気流によって加速され、繊維の走行速度である紡糸速度も空気流速と近い速度に到達する。
紡糸速度は2.0km/分以上とすることが好ましい。紡糸速度を好ましくは2.0km/分以上とすることにより、繊維が細径化するとともに、スパンボンド不織布をより柔軟なものとすることができる。さらに、紡糸中に分子配向がより高いものとなって配向誘起結晶化が進むため、良好な力学物性および高次加工性を有したスパンボンド不織布とすることができる。また、紡糸速度の上限は、8.0km/分程度である。
なお、紡糸速度は、次の手順により算出する値を指す。
(1)繊維の平均単繊維径W(μm)、および、繊維の密度ρ(g/cm)は、前記の手順によって測定される値を採用するものとする。
(2)口金から吐出された繊維を1分間採取して秤量をし、これにより得られた値を吐出量(g/分)とする。この操作を3回実施し、算術平均値を口金孔数で除した値を、単孔吐出量Q(g/分)として採用する。
(3)紡糸速度を次の式により算出し、小数点以下第2位を四捨五入する
紡糸速度(km/分)=Q×1000/((W/2)×π×ρ)
(式中、Qは単孔吐出量(g/分)を表し、Wは平均単繊維径(μm)を表し、ρは密度(g/cm)を表す。)。
(b)繊維ウェブを形成する工程
この工程では、前記(a)で得られた繊維を堆積させ、繊維ウェブを形成する。具体的には、前記の繊維は、周囲の空気流速が減じられるような開繊部を通過することにより開繊され、その後、裏面から空気吸引されるネットコンベアー上に着地させ、繊維ウェブとして捕集する。
捕集された繊維ウェブは、好ましくは10m/分以上1200m/分以下の速度で搬送し、後述する接着加工を行う。
(c)得られた繊維ウェブを接着加工する工程
この工程では、前記(b)で得られた繊維ウェブを接着加工する。この接着加工は、加熱ロールや熱風による熱接着、超音波による接着、水流交絡などにより行うことができ、これにより繊維ウェブを構成する繊維が一体化され不織布となる。生産性の観点から加熱ロールを用いることが好ましい。
繊維ウェブを加熱ロールにより一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種のロールにより熱接着する方法が挙げられる。
熱接着時のエンボス接着面積率は、5%以上30%以下であることが好ましい。接着面積率について、その下限を好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上とすることにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る引張強度を得ることができる。また、接着面積率について、その上限を好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下とすることにより、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。
本発明における接着面積とは、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。
熱エンボスロールに施される彫刻の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形、および正八角形などを用いることができる。
熱接着時の熱エンボスロールの表面温度は、100℃以上145℃以下とすることが好ましく、110℃以上140℃以下とすることがより好ましい。熱エンボスロールの表面温度について、その下限を好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上とすることにより、適度に熱融着させ不織布形態を保持することができる。また、熱エンボスロールの表面温度について、その上限を好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下とすることにより、過度な熱融着を抑制し、十分な柔軟性を得ることができる。
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、50N/cm以上500N/cm以下とすることが好ましい。前記の線圧について、その下限を好ましくは50N/cm以上、より好ましくは100N/cm以上、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、十分に熱接着させることができ、良好な力学物性を有したスパンボンド不織布となる。また、前記の線圧を好ましくは500N/cm以下、より好ましくは400N/cm以下、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、過度な熱接着を防止することができ、柔軟性が損なわれにくくなる。
本発明のスパンボンド不織布の製造におけるプロセス上の重要なポイントは、特定のポリプロピレン系樹脂を用い、口金孔から吐出されたポリプロピレン繊維の冷却固化および紡糸速度を制御することにある。紡糸速度の高速化は、配向誘起結晶化を促進するため、得られたスパンボンド不織布は優れた力学物性や高次加工性を有するものとなる。
このようにして得られたスパンボンド不織布は、良好な力学物性および高次加工性に加え、優れた柔軟性を有する。
[衛生材料]
本発明の衛生材料は、前記のスパンボンド不織布を少なくとも一部に具備してなる。前記のスパンボンド不織布は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な引張強度を有していることから、着用時の快適性に優れた衛生材料が得られる。なお、ここで言う衛生材料とは、例えば、医療・介護など健康に関わる目的で使用される、主に使い捨ての物品である。本発明の衛生材料は、紙おむつ、生理用ナプキン、ガーゼ、包帯、マスク、手袋、絆創膏等が挙げられ、その構成部材、例えば、紙おむつにおいては、そのトップシート、バックシート、サイドギャザー等も含まれる。中でも、高い引張強度と柔軟性を必要とする紙おむつのバックシートに好適に用いられる。
次に、実施例により本発明のスパンボンド不織布について、より具体的に説明する。
[測定・評価方法]
実施例中の各特性値は、次の方法で求めた。なお、特段の記載がない事項については、前記の方法に従って測定を実施したものである。
A.ポリプロピレン系樹脂およびスパンボンド不織布のメルトマスフローレート:
ポリプロピレン系樹脂およびスパンボンド不織布のメルトマスフローレートは、前記の方法に従って、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ「F-F01」を使用して測定した。
B.繊維の平均単繊維径および紡糸速度:
繊維の平均単繊維径の測定には、株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡「SU1510」を使用した。また、得られた平均単繊維径、前記の方法によって測定された密度、単孔吐出量から、前記の式により紡糸速度(km/分)を求めた。
C.繊維の引張強度:
繊維の引張強度(cN/dtex)は、オートグラフとして株式会社島津製作所製「AG-IS」を使用し、前記の方法で測定、算出した。
D.ポリプロピレン系樹脂A、Bの重量平均分子量、ならびに、繊維の重量平均分子量Mw、ピーク面積:
ポリプロピレン系樹脂A、Bの重量平均分子量、ならびに、繊維の重量平均分子量Mw、ピーク面積は、装置としてPolymer Laboratories社製「PL-220」を、カラムとしてShodex HT-G(ガードカラム)+Shodex HT-806M×2本(8.0mm×30cm、昭和電工株式会社製)を、標準試料として、東ソー株式会社製単分散ポリスチレン、東京化成工業株式会社製ジベンジル、リファレンスとして、POLYMIRAE製「HP5036」を用い、前記の方法で測定、算出を行った。また、重量平均分子量Mwの測定、算出において、排出曲線のピーク分離解析には、マイクロソフト社製エクセル(登録商標)のビジュアル・ベーシックを用いた。
E.スパンボンド不織布の融点、結晶融解熱量:
示差走査熱量計として、TA Instruments社製DSC「Q2000」を用い、前記の方法で結晶融解熱量(J/g)を測定、算出した。
F.スパンボンド不織布の目付、剛軟度:
スパンボンド不織布の剛軟度は、前記の方法で測定、算出した。
G.スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度:
スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度の測定には、引張試験機として株式会社島津製作所製オートグラフ「AG-IS」を使用し、前記の方法で測定、算出した。
[ポリプロピレン系樹脂]
次に、実施例、比較例で使用したポリプロピレン系樹脂は、以下のとおりである。
[ポリプロピレン系樹脂A1]
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体である。このポリプロピレン系樹脂A1のメルトマスフローレート(MFR)は0.45g/10分、重量平均分子量は1100000である。
[ポリプロピレン系樹脂A2]
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体である。このポリプロピレン系樹脂A2のメルトマスフローレート(MFR)は0.10g/10分、重量平均分子量は1300000である。
[ポリプロピレン系樹脂A3]
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体である。このポリプロピレン系樹脂A3のメルトマスフローレート(MFR)は36g/10分、重量平均分子量は260000である。
[ポリプロピレン系樹脂A4]
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体である。このポリプロピレン系樹脂A4のメルトマスフローレート(MFR)は34g/10分、重量平均分子量は270000である。
[ポリプロピレン系樹脂B1]
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体である。このポリプロピレン系樹脂B1のメルトマスフローレート(MFR)は1110g/10分、重量平均分子量は80000である。
[ポリプロピレン系樹脂B2]
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体である。このポリプロピレン系樹脂B2のメルトマスフローレート(MFR)は3000g/10分、重量平均分子量は72000である。
[ポリプロピレン系樹脂B3]
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体である。このポリプロピレン系樹脂B3のメルトマスフローレート(MFR)は60g/10分、重量平均分子量は270000である。
[実施例1]
(a)繊維を形成する工程
ポリプロピレン系樹脂として、前記のポリプロピレン系樹脂A1と前記のポリプロピレン系樹脂B1とを、ポリプロピレン系樹脂A1とポリプロピレン系樹脂B1の混合割合が、質量割合で、ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=50:50となるように混合したものを用いた。このポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は60g/10分である。
続いて、このポリプロピレン系樹脂を単軸エクストルーダーによって溶融押し出しし、ギアーポンプで計量しつつ、紡糸口金にポリプロピレン系樹脂を供給した。このとき、紡糸口金の温度は230℃とし、孔径Dが0.3mmで、ランド長Lが0.6mmの口金孔から、単孔吐出量0.40g/分の条件でポリプロピレン系樹脂を吐出させた。なお、口金孔の直上に位置する導入孔はストレート孔とし、導入孔と口金孔の接続部分はテーパーとした紡糸口金を用いた。
そして、吐出された繊維状樹脂に外側から温度10℃、速度60m/分の冷却風を当てて冷却固化した後、矩形エジェクターを用い、空気流によって、紡糸速度2.1km/分で牽引して繊維を得た。この際、紡糸口金からエジェクター入口までの距離は550mmとした。
(b)繊維ウェブを形成する工程
続いて、前記で得られた繊維を、周囲の空気流速が減じられるような開繊部を通過することにより開繊され、その後、裏面から空気吸引されるネットコンベアー上に着地させ、繊維ウェブを得た。この後、捕集された繊維ウェブは、11m/分の速度で搬送した。
(c)得られた繊維ウェブを接着加工する工程
引き続き、上記のようにして得られたポリプロピレン繊維からなる繊維ウェブを、上ロールに金属製で水玉柄の彫刻がなされた接着面積率11%のエンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、140℃の温度で熱接着し、目付が30g/mのスパンボンド不織布を得た。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は16.0μm、スパンボンド不織布の融点は163℃、結晶融解熱量は91J/g、メルトマスフローレートは60g/10分、単位目付当たりの引張強度は1.10(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は28mmであり、得られた不織布は柔軟性および力学物性に優れていることが分かる。
[実施例2]
工程(a)において、ポリプロピレン系樹脂B1を用いていたところ、ポリプロピレン系樹脂B2を用いることとし、紡糸速度が2.1km/分であったところ、2.9km/分と変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。
評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は14.0μm、スパンボンド不織布の融点は163℃、結晶融解熱量は91J/g、メルトマスフローレートは150g/10分、単位目付当たりの引張強度は1.08(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は25mmであり、得られた不織布は柔軟性および力学物性に優れていることが分かる。
[実施例3]
工程(a)において、ポリプロピレン系樹脂A1を用いていたところ、ポリプロピレン系樹脂A2を用いることとした以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。
評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は16.0μm、スパンボンド不織布の融点は163℃、結晶融解熱量は98J/g、メルトマスフローレートは30g/10分、単位目付当たりの引張強度は1.12(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は30mmであり、得られた不織布は柔軟性および力学物性に優れていることが分かる。
[実施例4]
工程(a)において、ポリプロピレン系樹脂B1を用いていたところ、ポリプロピレン系樹脂B2を用いることとした以外は、実施例3と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。
評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は16.0μm、スパンボンド不織布の融点は163℃、結晶融解熱量は98J/g、メルトマスフローレートは60g/10分、単位目付当たりの引張強度は1.10(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は28mmであり、得られた不織布は柔軟性および力学物性に優れていることが分かる。
Figure 2024042784000001
[比較例1]
工程(a)において、ポリプロピレン系樹脂A1を用いていたところ、ポリプロピレン系樹脂A3を用いることとし、ポリプロピレン系樹脂A1とポリプロピレン系樹脂B1の混合割合が、質量割合で、ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=50:50となるように混合したものであったところをポリプロピレン系樹脂A3とポリプロピレン系樹脂B1の混合割合が、質量割合で、ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=70:30となるように混合したものとし、さらに、紡糸速度が2.1km/分であったところ、2.9km/分と変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。
評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は14.0μm、スパンボンド不織布の融点は163℃、結晶融解熱量は101J/g、メルトマスフローレートは150g/10分、単位目付当たりの引張強度は0.89(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は25mmであり、得られた不織布は柔軟性に優れているものの、高分子量ポリプロピレンのメルトマスフローレートが高く、力学特性が劣っていることが分かる。
[比較例2]
工程(a)において、ポリプロピレン系樹脂A1を用いていたところ、ポリプロピレン系樹脂A4を用いることとし、ポリプロピレン系樹脂B1を用いていたところ、ポリプロピレン系樹脂B3を用いることとし、さらに、ポリプロピレン系樹脂A1とポリプロピレン系樹脂B1の混合割合が、質量割合で、ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=50:50となるように混合したものであったところをポリプロピレン系樹脂A4とポリプロピレン系樹脂B3の混合割合が、質量割合で、ポリプロピレン系樹脂A:ポリプロピレン系樹脂B=70:30となるように混合したものとした以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。
評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は16.0μm、スパンボンド不織布の融点は164℃、結晶融解熱量は102J/g、メルトマスフローレートは45g/10分、単位目付当たりの引張強度は1.03(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は30mmであり、得られた不織布は柔軟性に優れているものの、高分子量ポリプロピレンのメルトマスフローレートが高く、力学特性は劣っていることが分かる。
[比較例3]
工程(a)において、ポリプロピレン系樹脂B1を用いず、ポリプロピレン系樹脂A3のみを用いることとし、紡糸速度が2.9km/分であったところ、2.4km/分と変更したこと以外は、比較例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。
評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は15.4μm、スパンボンド不織布の融点は165℃、結晶融解熱量は103J/g、メルトマスフローレートは36g/10分、単位目付当たりの引張強度は1.15(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は33mmであり、得られた不織布は力学特性に優れているものの、低分子量ポリプロピレンを使用していないため、柔軟性が劣っていることが分かる。
[比較例4]
工程(a)において、ポリプロピレン系樹脂A4を用いず、ポリプロピレン系樹脂B3のみを用いることとし、紡糸速度が2.1km/分であったところ、2.6km/分と変更したこと以外は、比較例2と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。
評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は14.8μm、スパンボンド不織布の融点は164℃、結晶融解熱量は99J/g、メルトマスフローレートは60g/10分、単位目付当たりの引張強度は0.98(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は33mmであり、低分子量ポリプロピレンを使用していないため、得られた不織布は柔軟性が劣っており、また、高分子量ポリプロピレンのメルトマスフローレートが高く、力学特性が劣っていることが分かる。
Figure 2024042784000002

Claims (5)

  1. ポリプロピレン系樹脂からなる繊維によって構成されたスパンボンド不織布であって、該スパンボンド不織布のメルトマスフローレートが20g/10分以上200g/10分以下の範囲にあり、前記繊維が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において、以下の(A)かつ(B)を満たす、スパンボンド不織布。
    (A)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下であるピークを少なくとも1つ有する
    (B)前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下であるピークを少なくとも1つ有する
  2. 前記繊維が、さらに、以下の(C)~(E)も満たす、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
    0.80≦(S+S)/S≦1.00 ・・・(C)
    0.30≦S/S≦0.70 ・・・(D)
    0.30≦S/S≦0.70 ・・・(E)
    ここで、
    S:ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、全ピークの面積、
    :ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが60000以上95000以下の位置に現れるピークの面積、
    :ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける排出曲線のピーク分離解析において得られた、前記ポリプロピレン系樹脂に由来する、重量平均分子量Mwが750000以上1500000以下の位置に現れるピークの面積、
    である。
  3. 前記繊維の平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
  4. 前記スパンボンド不織布の示差走査熱量測定における融点が150℃以上175℃以下であり、該融点における結晶融解熱量が90J/g以上110J/g以下である、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
  5. 請求項1または2に記載のスパンボンド不織布を用いてなる、衛生材料。
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