JP7452769B1 - スパンボンド不織布、および、その製造方法、積層不織布ならびに、これらを用いてなる衛生材料、衣料 - Google Patents

スパンボンド不織布、および、その製造方法、積層不織布ならびに、これらを用いてなる衛生材料、衣料 Download PDF

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Abstract

柔軟性に加えて、優れた力学物性とプリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすいスパンボンド不織布を提供するために、本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記スパンボンド不織布が以下の条件(1)~(3)を満たし、前記繊維の平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である。(1)有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である(2)メルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である(3)ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である

Description

本発明は、柔軟性に加えて、優れた力学物性と高次加工性を有するスパンボンド不織布、および、その製造方法、ならびに、これを用いてなる衛生材料、衣料に関するものである。
ポリオレフィンからなるスパンボンド不織布、特にポリプロピレンスパンボンド不織布は低コストで加工性に優れているため、衛生材料用途を中心に幅広く用いられている。
近年、衛生材料用途に用いられるポリプロピレンスパンボンド不織布に対して、更なる柔軟性の向上が求められている。この手段について、これまでにいくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、処理したポリマーの反応体粒子から形成された微小繊維の不織ウェブであって、前記ポリマーは特定の分子量分布と一定以上のメルトフローレートとを有する不織ウェブが提案されている。
また、特許文献2には、プロピレン系重合体と有機過酸化物とをクロスソー及びユニメルトを備えるスクリューを備える押出機内に供給し、押出機内のプロピレン系重合体と有機過酸化物とを含むプロピレン系重合体樹脂組成物を溶融混練し、溶融混練したプロピレン系重合体樹脂組成物を紡糸成形して不織布を製造する不織布の製造方法が提案されている。そして、このような不織布の製造方法によれば、糸切れが抑制され、紡糸性に優れた不織布が得られる旨が記載されている。
そして、特許文献3には、メタロセン触媒によって重合され、一定の特性を有するプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体に有機過酸化物を一定量配合した樹脂組成物であって、樹脂組成物のメルトフローレートと該樹脂組成物の真空定温乾燥処理を行った後のメルトフローレートの比が一定値以下であることを特徴とする有機過酸化物含有ポリプロピレン系樹脂組成物が提案されている。そして、このような樹脂組成物によれば、単体あるいはマスターバッチとして他のポリプロピレン樹脂と併用することにより、成形加工時時に溶融粘度を調製することが可能な有用な樹脂組成物として用いることができる旨が記載されている。
特開平7-119014号公報 特許6599078号公報 特開2003-138075号公報
特許文献1では、その技術によれば、前記ポリマーの分子量分布を狭めるように、かつ、また、ポリマーの分子量を減少させる、つまりメルトフローレートを増加させるように処理される旨が記載されており、この結果、本発明に係る不織ウェブはメルトブロー法によって高い効率で製造することが可能になる旨が記載されている。しかしながら、メルトフローレートを低く調整することにより、スパンボンド不織布を得ようとした場合には、繊維強度が低下することとなり、不織布の力学特性が大きく低下し、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしにくくなったり、最終製品そのものの力学特性が悪化したりするという課題がある。
また、特許文献2や3で提案されているような技術では、樹脂のメルトフローレートを高くすることにより、紡糸性はある程度向上することができるものの、不織布を構成する繊維の強度が低下することとなる。そのため、不織布の力学特性が大きく低下し、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしにくくなったり、最終製品そのものの力学特性が悪化したりするという課題がある。
そこで、本発明の目的は、柔軟性に加えて、優れた力学物性とプリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすいスパンボンド不織布を提供することにある。
本発明者らが検討を進めたところ、スパンボンド不織布をより柔軟なものとするためには、繊維径をより細くし、優れた力学物性については繊維そのものの強度をより高くすることで達成できることが分かった。
ところで、繊維径をより細くするには、高いメルトフローレートの原料を用いて、紡糸速度(牽引速度)を高めることが有効である。しかしながら、高いメルトフローレートの原料を用いた場合には、上記のように、得られる繊維の強度は低下するため、両者は相反する傾向である。
そこで、本発明者らがさらに検討を進めた結果、原料のメルトフローレートをより高くするためにラジカル発生剤として用いられる過酸化物をスパンボンド不織布中に一定量残存させることにより、結晶核剤として利用すること、さらに、分岐度λを特定の範囲とすることを着想した。
そして、本発明者らは、この知見を基にして上記の課題を達成するために鋭意検討した結果、スパンボンド不織布を構成する繊維のポリプロピレン系樹脂について、有機過酸化物量および分岐度λを特定の範囲とし、さらに、スパンボンド不織布のメルトフローレートを特定の範囲とすることで、繊維径をより細くすることによって柔軟性が向上することに加えて、繊維の糸切れによって不織布に発生する欠点を抑制することで、高品位のスパンボンド不織布となり、そして、得られる繊維の配向緩和を抑制して分子配向(Δn)を高め、その結果として繊維の強度を高められることにより、優れた力学物性を有し、さらには、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすいスパンボンド不織布となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記スパンボンド不織布が以下の条件(1)~(3)を満たし、前記繊維の平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である、スパンボンド不織布。
(1)体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である
(2)前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、前記ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である
[2] 前記ポリプロピレン系樹脂がさらに以下の条件(4)および(5)も満たす、前記[1]に記載のスパンボンド不織布。
(4)2.50≦Mw/Mn≦3.20
(5)1.82≦Mz/Mw≦2.20
ここで、Mw、Mn、Mzは、それぞれゲル浸透クロマトグラフィー法により求められる重量平均分子量、数平均分子量、z平均分子量である。
[3] 原料樹脂に有機過酸化物を添加し、該原料樹脂を分解して、以下の条件(1)~(3)を満たすように調製されたポリプロピレン系樹脂を得る工程と、
前記ポリプロピレン系樹脂を紡出して、平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である繊維を得る工程と、
前記繊維を捕集する工程と、を有する、前記[1]または[2]に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
(1)体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物残量が100ppm以上1000ppm以下である
(2)前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、前記ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である
[4] 前記原料樹脂が、リサイクル樹脂である、前記[3]に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
[5] 前記[1]または[2]に記載のスパンボンド不織布を含む、積層不織布。
[6] 前記[1]または[2]に記載のスパンボンド不織布、または、前記[5]に記載の積層不織布を用いてなる、衛生材料。
[7] 前記[1]または[2]に記載のスパンボンド不織布、または、前記[5]に記載の積層不織布を用いてなる、衣料。
本発明のスパンボンド不織布は、高い品位と柔軟性とを有することに加え、不織布中に有機過酸化物が一定量残存することで、結晶核剤としての効果による配向結晶化が促進され、さらに、1分子当たりの分岐度λを特定の範囲とすることで、スパンボンド工程における牽引後の繊維の配向緩和を抑えることができ、優れた力学物性を示す。また、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工のしやすさにも優れた特性を発揮するものである。
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記スパンボンド不織布が以下の条件(1)~(3)を満たし、前記繊維の平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である。
(1)体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である
(2)メルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、前記ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である
以下に、本発明のスパンボンド不織布について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではなく、そして、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
[ポリプロピレン系樹脂]
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂で構成されてなる繊維(ポリプロピレン繊維)で構成されてなる。本発明において、ポリプロピレン系樹脂とは、繰り返し単位に占めるプロピレン単位のモル分率が80モル%~100モル%である樹脂を意味する。ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、低コストであり、かつ、柔軟性に優れたスパンボンド不織布とすることができる。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。ポリプロピレン系樹脂として、プロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、各種α-オレフィンの共重合比率は、繊維をより引張強度の高いものとするため、10mol%以下が好ましく、より好ましくは5mol%以下であり、さらに好ましくは3mol%以下である。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、他成分樹脂をブレンドさせることができる。他成分樹脂としては、融点がポリプロピレンに近いポリエチレンやポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのポリオレフィン系樹脂の他、低融点ポリエステル樹脂および低融点ポリアミド樹脂が挙げられ、柔軟性付与の観点から低結晶性のオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。低結晶性のオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体などが好適に用いられる。この場合において、他成分樹脂の質量比率は、ポリプロピレン系樹脂の特性を十分に発現させるため、ポリプロピレン系樹脂と他成分樹脂の合計の質量比率を100質量%としたとき、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、着色のための顔料、酸化防止剤、ポリエチレンワックスや脂肪酸アミド化合物等の滑剤、および耐熱安定剤等を添加することができる。
さらに、本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記ポリプロピレン系樹脂がさらに以下の条件(4)および(5)も満たす。
(4)2.50≦Mw/Mn≦3.20
(5)1.82≦Mz/Mw≦2.20
本発明者らはMw/Mn、Mz/Mwが小さくなるほど、同一紡糸速度でも得られる繊維の分子配向(Δn)が高くなり、さらに繊維強度が高まることを見出した。この観点からはより好ましくは、Mw/Mn≦2.95、Mz/Mw≦1.98である。一方、好ましくは、2.50≦Mw/Mn、1.82≦Mz/Mwとすることで、繊維の分子配向を適度なものとし、糸切れが抑制されることで、シート欠点の少ない高品位のスパンボンド不織布となる。
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)により求められるMwは、120000以上350000以下が好ましい。MwはMFRと相関があり、Mwが350000以下であることでポリプロピレン系樹脂の流動性が高くなり紡糸性が向上するため糸切れ欠点が減少する。この観点からはMwは小さいほど好ましく、250000以下がより好ましく、210000以下がさらに好ましく、180000以下が特に好ましい。一方で、Mwを好ましくは120000以上、より好ましくは130000以上、さらに好ましくは150000以上、特に好ましくは200000以上とすることで、繊維強度を向上させ、糸切れによるシート欠点を抑制することができる。
なお、本発明において、Mw、Mn、Mzは、以下の方法によって測定、算出される値のことを指す。
(1) スパンボンド不織布の端部を除いた領域から試験片を5mgずつランダムに5点採取する。なお、スパンボンド不織布の端部とは、スパンボンド不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
(2) (1)で得られた試験片に対して、1,2,4-トリクロロベンゼン(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製など)5mLを加える。試料の性質に依存して、前記の溶液を165℃で20分間加熱して溶解を容易にすることができる。次いで、前記の溶液をPTFEフィルター(孔径:0.45μm)を用いて濾過を行い、試料溶液を作製する。ここで、PTFEフィルターは、例えば、アドバンテック東洋株式会社製「T010A」など)を用いることができる。
(3) (2)で得られた試料溶液については、GPCを用いて、以下の条件で測定を行い、例えば、Wyatt Technology製「Empower」などを用いて、GPCにおける排出曲線についての解析を行うことで、Mw、Mn、Mzを求めることができる。
・装置:例えば、Polymer Laboratories社製「PL-220」など
・検出器:示差屈折率検出器RI
・カラム:Shodex HT-G(ガードカラム)+Shodex HT-806M×2本(8.0mm×30cm、例えば、昭和電工株式会社製など)
・溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%BHT添加)
・流速:1.0mL/分
・カラム温度:145℃
・注入量:0.20mL
・標準試料:単分散ポリスチレン(例えば、東ソー株式会社製のものなど)、ジベンジル(例えば、東京化成工業株式会社製のものなど)。
[繊維]
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなる。そして、この繊維の平均単繊維径は、5.0μm以上20.0μm以下である。平均単繊維径の範囲について、その上限が20.0μm以下、好ましくは16.0μm以下であることにより、スパンボンド不織布の表面に触れたときの触感が滑らかなものとなる。加えて、繊維径が細いことによる断面2次モーメントの低下も発現することにより、優れた柔軟性を有するスパンボンド不織布となる。一方、平均単繊維径の範囲について、その下限が5.0μm以上、好ましくは8.0μm以上であることにより、引張強度が高く、欠点の少ないスパンボンド不織布となる。
なお、本発明における繊維の平均単繊維径(μm)は、スパンボンド不織布の端部を除いた領域から5mm×5mmの試験片をランダムに10箇所採取し、各試験片のエンボス接着部以外の部分において、スパンボンド不織布を構成する繊維の側面をデジタルマイクロスコープ(例えば、株式会社キーエンス製「VHX-2000」など)を用いて観察し、繊維の直径を求め、各試験片で測定した繊維の直径の算術平均値(μm)の小数点以下第2位を四捨五入し、得られる値のことを指す。なお、スパンボンド不織布の端部とは、スパンボンド不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の分子配向の指標となるΔnは0.020以上が好ましい。Δnが0.020以上であることで、繊維の配向が高まり、繊維強度およびシートの強度が高くなる他、耐熱性も高まるためエンボス等の熱接着を高温で実施することができ、繊維の熱接着が容易となり良好な力学物性とプリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすいスパンボンド不織布となる。
なお、本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維のΔnは、前記の平均単繊維径の測定方法と同様の方法で試験片をランダムに10箇所採取し、試験片のエンボス接着部以外の部分から、単糸を10本抜き出し、偏光顕微鏡(例えば、オリンパス株式会社製「BH2」など)を用いて試料を流動パラフィン浸漬下で、コンペンセータ法からレターデーションを求めて算出した値の算術平均値(単位なし)の小数点以下第4位を四捨五入して得られる値のことを指す。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の引張強度は2.0cN/dtex以上が好ましい。繊維の引張強度が2.0cN/dtex以上であることで、シートの強度が高くなるため、良好な力学物性とプリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすいスパンボンド不織布となる。
なお、本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の引張強度は、以下の方法によって測定、算出される値のことを指す。
(1) 前記の平均単繊維径の測定と同様の方法で試験片をランダムに10箇所採取し、試験片のエンボス接着部以外の部分から、単糸を10本抜き出す。
(2) JIS L1015:2010「化学繊維ステープル試験方法」」の「8.7 引張強さ及び伸び率」に準じて、引張試験機(例えば、株式会社オリエンテック製「UTM-III-100」など)につかみ間隔20mmで単糸をセットし、引張速度20mm/分で引張試験を実施し、最大点荷重(cN)を測定する。
(3) 次いで、前記の最大点荷重を以下式より求めた単糸繊度(dtex)で除した値の算術平均値(cN/dtex)の小数点以下第2位を四捨五入する。
単糸繊度(dtex)=π×(繊維の平均単繊維径(μm)/2)×0.91(g/cm)×100000(cm)。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の断面形状は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではなく、丸断面はもとより、三角形や楕円形、六角形、中空などの異形断面であっても良いが、生産性が高く、かつ柔軟性に優れることから、丸断面が好ましい。すなわち、本発明のスパンボンド不織布を構成するポリプロピレン繊維の断面形状が異形断面では、同一断面積の断面2次モーメントが丸断面よりも大きくなる曲げ方向があることから、スパンボンド不織布とした際に高剛性となる可能性があるが、丸断面ではそのような曲げ方向が存在せず、柔軟性に特に優れるためである。
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、2種類以上の樹脂を複合した複合繊維であることが好ましい。複合繊維とは、芯鞘型や海島型、サイドバイサイド型、偏心芯鞘型、などから適宜選択することができるが、中でも、紡糸性に優れ、熱接着により繊維同士を均一に接着させることができることから、芯鞘型、特に同心の芯鞘型の複合形態とすることが好ましい。
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布は、前記のポリプロピレン系樹脂からなる、前記の繊維で構成されてなるスパンボンド不織布である。このようにすることで、前記のとおり、柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすいスパンボンド不織布となる。
本発明のスパンボンド不織布は、以下の条件(1)~(3)を満たす。
(1)体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である
(2)メルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、前記ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である
この(1)~(3)の条件をすべて満たすことで、柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすいスパンボンド不織布となる。これらについて、さらに詳細を説明する。
まず、本発明のスパンボンド不織布を構成するポリプロピレン系樹脂は、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHzの条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である。前記の有機過酸化物量の範囲について、その下限が100ppm以上、好ましくは200ppm以上、より好ましくは300ppm以上であることで、紡糸時の冷却固化過程において、結晶核剤として作用することで、分子の配向結晶化が促進される。これにより、スパンボンド不織布を構成する繊維の分子配向(Δn)および繊維強度を高めることができ、力学物性に優れたスパンボンド不織布が得られる。一方、前記の有機過酸化物量について、その上限が1000ppm以下、好ましくは800ppm以下であることで、衛生材料や防護服等の人体に直接触れる用途として利用された際に、有機過酸化物によってかぶれ等の肌トラブルが生じるリスクを最小限に抑えることができる。
なお、本発明において、前記の有機過酸化物量は、以下の方法によって、測定、算出される値のことを指す。
(1) スパンボンド不織布の端部を除いた領域から試験片を25mgずつランダムに5点採取する。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
(2) (1)で得られた試験片を、体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させ、15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理する。この超音波処理には、例えば、アズワン株式会社製超音波洗浄器「VS-100III」などを用いることができる。また、試験片の質量に対する前記の溶媒の量は、試験片1mgに対し溶媒0.8mLで行うものとし、溶液温度が30℃に保たれるよう、保冷剤などで冷却しながら抽出する。
(3) (2)で得られた超音波処理後の溶液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のフィルター(以降、単に「PTFEフィルター」と略記することがある。孔径:0.45μm)で濾過を行い、試料溶液とする。ここで、PTFEフィルターは、例えば、アドバンテック東洋株式会社製「T010A」など)を用いることができる。
(4) 有機過酸化物0.1gを、体積比率1:1としたクロロホルム/メタノール溶液10mLに溶解させ、標準原液(10μg/mL)を調製する。そして、この標準原液を前記のクロロホルム/メタノール溶液で希釈することにより、各濃度(0.1μg/mL、0.2μg/mL、0.5μg/mL、1.0μg/mL)の標準溶液を調製する。このとき、上記の有機過酸化物としては、下記のものが挙げられ、それぞれについて、各濃度の標準溶液を調製する。また、他の方法(例えば、ヨウ素滴定法、ポーラログラフ法など)によって、下記の有機過酸化物以外の有機過酸化物を含有していることが明らかな場合、あるいは、少なくとも含有していることが推測される場合には、当該有機過酸化物の標準溶液も調製する。
・メチルエチルケトンパーオキシド
・メチルイソブチルケトンパーオキシド
・ジベンゾイルパーオキシド
・ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド
・ジラウロイルパーオキシド
・ジデカノイルパーオキシド
・ジ-(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシド
・t-ブチルヒドロパーオキシド
・クメンヒドロパーオキシド
・ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド
・2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシド
・ジ-t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド
・2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン
・2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン
・1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン
・2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン
・t-ブチルパーオキシオクトエート
・t-ブチルパーオキシピバレート
・t-ブチルパーオキシネオデカノエート
・t-ブチルパーオキシベンゾエート
・ジ-(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート
・ジイソプロピルパーオキシジカーボネート
・ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート
・ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート
・t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート
(5) 前記の試料溶液を用いて、以下の条件で液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS/MS)に供する。
・高速液体クロマトグラフィー(HPLC): 例えば、株式会社島津製作所製「LC-20A」など
・質量分析計(MS): 例えば、Sciex製「API4000」など
・カラム: ODS系カラム(例えば、株式会社住化分析センター製「SUMIPAX ODS Aシリーズ」など)
・移動相: 0.1%ギ酸水溶液+メタノール(グラジエント抽出条件)
・注入量: 5μL
・イオン化: エレクトロスプレーイオン化法(ESI)
(6) 各試料溶液のマススペクトル(MS)より有機過酸化物を同定し、前記の有機過酸化物の標準溶液より得られた検量線を用いて、ピーク面積より有機過酸化物量(ppm)を定量する。
(7) 各試験片について測定した値の算術平均値(ppm)の小数点以下第1位を四捨五入し、有機過酸化物量(ppm)を求める。
また、本発明のスパンボンド不織布を構成するポリプロピレン系樹脂中の有機過酸化物量は、原料樹脂への有機過酸化物の添加形態および添加温度により制御することができる。
本発明に用いられる有機過酸化物としては、「メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド」等のケトンパーオキシド類、「ジベンゾイルパーオキシド、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ジ-(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシド」等のジアシルパーオキシド類、「t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシド」等のヒドロパーオキシド類、「ジ-t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン」等のジアルキルパーオキシド類、「1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン」等のパーオキシケタール類、「t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート」等のアルキルパーエステル類、「ジ-(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート」等のパーオキシカーボネート類が挙げられるが、中でも少量の添加量でメルトフローレートおよびMw/Mn、Mz/Mwの制御が容易なジアルキルパーオキシド類が好ましい。
次に、本発明のスパンボンド不織布のメルトフローレート(以降、単にMFRと記載することがある)は20g/10分以上400g/10分以下である。前記のMFRの範囲について、その下限が20g/10分以上、好ましくは60g/10分以上、より好ましくは100g/10分以上であることで、柔軟性に優れたスパンボンド不織布となる。一方で、前記のMFRの範囲について、その上限が400g/10分以下、好ましくは300g/10分以下であることで、スパンボンド不織布のエンボス部の機械強度が高まり、引張強度の高いスパンボンド不織布となる。
なお、本発明におけるスパンボンド不織布のMFRは、JIS K7210-1:2014「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法」の「8章 A法:質量測定法」に準じて、スパンボンド不織布の端部を除いた領域から試験片を20gずつランダムに5箇所採取し、各試験片について、荷重が2160gで、温度が230℃の条件で測定した値(g/10分)の算術平均値の小数点以下第1位を四捨五入し、MFR(g/10分)を求める。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。また、測定には、例えば、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ「F-F01」などを用いることができる。
また、スパンボンド不織布のMFRは、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量により制御することができる。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が高いほど、メルトフローレートは小さくなる。重量平均分子量は、原料樹脂の重量平均分子量と有機過酸化物の添加量により、制御することができる。
そして、本発明のスパンボンド不織布は、ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定(以降、単に「GPC-MALS」と略記することがある。)により求められる、分子量および回転半径より3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λ(以降、単に「1分子当たりの分岐度λ」と略記することがある。)が1.0×10-7以上1.0×10-3以下である。1分子当たりの分岐度λの範囲について、その下限が1.0×10-7以上、好ましくは1.0×10-6以上、より好ましくは5.0×10-6以上であることで、ポリプロピレン系樹脂の分子がより分岐構造を有するものであることになり、より繊維強度の高い、力学物性に優れたスパンボンド不織布となる。一方で、前記の範囲について、その上限が1.0×10-3以下、好ましくは1.0×10-4以下、より好ましくは、5.0×10-5以下であることにより、過度な分岐構造による紡糸時の糸切れを抑えることができ、欠点の少ない高品位のスパンボンド不織布となる。
なお、本発明において、前記の1分子当たりの分岐度λは、以下の方法によって測定、算出される値のことを指す。
(1) スパンボンド不織布の端部を除いた領域から試験片を5mgずつランダムに5点採取する。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
(2) (1)で得られた試験片に対して、1,2,4-トリクロロベンゼン(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製など)5mLを加える。試料が溶解しにくい場合には、前記溶液を165℃で20分間加熱して溶解させても良い。次いで、前記溶液をPTFEフィルター(孔径:0.45μm、例えば、アドバンテック東洋株式会社製「T010A」など)を用いて濾過を行い、試料溶液を作製する。
(3) (2)で得られた試料溶液について、GPC-MALSを用いて、以下の条件で測定を行う。
・ゲル浸透クロマトグラフ(GPC): 例えば、東ソー株式会社製「HLC-8321GPC/HT」など
・示差屈折率検出器: 例えば、東ソー株式会社製「HL-8321GPC/HT」など
・多角度光散乱検出器(MALS): 例えば、Wyatt Technology製「DAWNNEON」など
・カラム: 例えば、昭和電工株式会社製「Shodex HT-806M」など
・溶媒: 1,2,4-トリクロロベンゼン(0.1%BHT添加、例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製など)
・カラム温度/検出器温度: 145℃/145℃
・試料溶液注入量: 0.300mL
・データ処理部: GPC:例えば、Wyatt Technology製「Empower」など、MALS:例えば、Wyatt Technology製「ASTRA 8.0.1.21」など
(4) 各試料溶液について、得られたGPC-MALS曲線より、前記のデータ処理ソフトウェアを用いて、各溶出時間における、分子量および回転半径を算出する。ここで、分子量と回転半径の関係について、分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂では、分岐構造を有さない直鎖状のポリプロピレン系樹脂(例えば、日本ポリプロ株式会社製「「ノバテック」(登録商標)PP FY6」など)と比較して、同一分子量における回転半径が小さくなることが知られている。3官能ランダム分岐理論では、回転半径Sと各分子量における分岐点数λとの間に以下の式が成り立つ。
Figure 0007452769000001
(ここで、g=(試料の回転半径S)/(直鎖ポリプロピレンの回転半径S)である。)
(5) 上式を用いて、各試料の分岐点数λを求める。次いで、前記の分岐点数λを対応する絶対分子量で除した値(単位なし)の有効数字の小数点以下第2位を四捨五入し、1分子あたりの分岐点数(単位なし)を算出する。
(6) (5)で算出した1分子あたりの分岐点数の内、絶対分子量10万以上の領域での最大値を1分子当たりの分岐度λとする。なお、1分子当たりの分岐度λは、1.0×10-8以下の場合は、検出下限以下であるため、0とみなす。
また、前記の1分子当たりの分岐度λは、使用する原料樹脂の1分子当たりの分岐度λにより制御することができる。例えば、原料樹脂の1分子当たりの分岐度λが大きいほど、前記のポリプロピレン系樹脂の分岐度λも大きくなる。
また、本発明のスパンボンド不織布の目付は、3g/m以上50g/m以下であることが好ましい。前記の目付の範囲について、その下限が好ましくは3g/m以上、より好ましくは5g/m以上であることにより、十分な強力を有し、後工程での破れが減少し、加工性に優れたスパンボンド不織布となる。また、前記の目付の範囲について、その上限が好ましくは50g/m以下、30g/m以下であることにより、スパンボンド不織布の柔軟性を好適に発現させることができる。
本発明におけるスパンボンド不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量(ISO法)」に準じて、20cm×25cmの試験片を、スパンボンド不織布の端部を除いた部分から幅1m当たり3枚ランダムに採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その算術平均値を(g)を求め、1m当たりの質量(g/m)に換算し、小数点以下第1位を四捨五入する。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
本発明のスパンボンド不織布は、単位目付当たりの引張強度が、0.30(N/25mm)/(g/m)以上5.00(N/25mm)/(g/m)以下であることが好ましい。単位目付当たりの引張強度の範囲について、その下限が好ましくは0.3(N/25mm)/(g/m)以上、より好ましくは、0.50(N/25mm)/(g/m)以上、さらに好ましくは、0.70(N/25mm)/(g/m)以上であることによって、紙おむつ等を製造する際の工程通過性や製品としての使用に耐え得るものとなり、前記の範囲について、その上限が好ましくは5.00(N/25mm)/(g/m)以下であることによって、柔軟性を兼ね備えられるためである。
なお、本発明において、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を指す。
(1) スパンボンド不織布の端部を除いた領域から25mm×30mmの試験片を、不織布の長さ方向と不織布の幅方向のそれぞれについて、ランダムに3枚採取する。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
(2) 試験片をつかみ間隔20mmで引張試験機にセットする。
(3) 引張速度20mm/分で引張試験を実施し、最大点荷重(N/25mm)を測定し、各試験片で測定した長さ方向と幅方向のすべての最大点荷重の算術平均値(N/25mm)を求める。
(4) 前述の方法で測定した目付(g/m)、最大点荷重の算術平均値(N/25mm)から、下記式に従って目付当たりの引張強度を算出し、小数点以下第3位を四捨五入する。
目付あたりの引張強度(N/25mm)/(g/m))=最大点荷重の算術平均値(N/25mm)/目付(g/m)。
本発明のスパンボンド不織布の剛軟度は、0.5mN・cm以上、3.0mN・cm以下が好ましい。剛軟度は柔軟性の指標であり3.0mN・cm以下であることで高い柔軟性が得られる。剛軟度が低いほど柔軟性に優れるため、剛軟度は2.0mN・cm以下であることがより好ましい。一方で剛軟度が低すぎるとロールに取られやすくなり、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしにくくなるため、剛軟度は0.5mN・cm以上が好ましく、1.0mN・cm以上がより好ましい。
なお、本発明のスパンボンド不織布の剛軟度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.7.3 41.5°カンチレバー法」に準じ、以下の手順によって測定される値を指す。
(1) スパンボンド不織布の端部を除いた領域から25mm×250mmの試験片を、不織布の長さ方向と不織布の幅方向のそれぞれについて、ランダムに3枚採取する。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
(2) 試験片を41.5°カンチレバー形試験機にセットし、鋼製定規と試験片とを一緒に斜面の方向に緩やかに一定速度で押し出す。
(3) 試験片が斜面に接触するまで鋼製定規を移動し、試験片の突き出た長さを1mmまで鋼製定規から読み取る。1つの試験片について表裏及び両端の4回測定を行い、それらの算術平均値の半分を曲げ長さ(cm)とする。
(4) さらに長さ方向、幅方向それぞれについて、すべての試験片の曲げ長さの算術平均値(cm)を求め、小数点以下第2位を四捨五入して全平均の曲げ長さ(cm)とする。
(5) 前述の方法で測定した目付(g/m)、全平均の曲げ長さ(cm)から、下記式に従って剛軟度(mN・cm)を算出し、小数点以下第2位を四捨五入する。
・剛軟度(mN・cm)=目付(g/m)×[全平均の曲げ長さ(cm)]×10-3
[スパンボンド不織布の製造方法]
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、原料樹脂に有機過酸化物を添加し、該原料樹脂を分解して、以下の条件(1)~(3)を満たすように調製されたポリプロピレン系樹脂を得る工程と、前記ポリプロピレン系樹脂を紡出して、平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である繊維を得る工程と、前記繊維を捕集する工程と、を有する。
(1)体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHzの条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物残量が100ppm以上1000ppm以下である
(2)前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である
(3)ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、前記ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である
これについて、具体例を説明する。
(a)ポリプロピレン系樹脂を得る工程
本発明のスパンボンド不織布の製造方法において、まず、原料樹脂に有機過酸化物を添加し、該原料樹脂を分解する。このとき用いられる原料樹脂とは、繰り返し単位に占めるプロピレン単位のモル分率が80モル%~100モル%である樹脂を意味する。そのため、原料樹脂の具体例としては、プロピレンの単独重合体、もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。原料樹脂として、プロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、各種α-オレフィンの共重合比率は、スパンボンド不織布の引張強度を高めるため、10mol%以下が好ましく、より好ましくは5mol%以下であり、さらに好ましくは3mol%以下である。
あるいは、この原料樹脂がリサイクル樹脂であることも、好ましい態様の一つである。本発明において、リサイクル樹脂とは、樹脂の10質量%以上が製品製造時に発生する工程屑や使用済み製品からなる樹脂のことを指す。製品製造時に発生する工程屑の一例としては、フイルムの端材や織物、不織布の端切れ等が挙げられる。本技術は特定条件を満たすように原料樹脂を分解するものであり、原料樹脂としては幅広い範囲のMFRのものを適用することができるため、リサイクル樹脂の使用には適している。このようにすることで、バージン石化原料の使用量を削減でき、スパンボンド不織布の製造時における環境負荷を低減することができる。
本発明で用いられる原料樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、着色のための顔料、酸化防止剤、ポリエチレンワックスや脂肪酸アミド化合物等の滑剤、および耐熱安定剤等を添加することができる。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法で用いられる有機過酸化物としては、[スパンボンド不織布]で記載の有機過酸化物が挙げられる。
前記のように、原料樹脂に前記の有機過酸化物を添加し、該原料樹脂を分解させることで、前記の条件(1)~(3)を満たすように調製されたポリプロピレン系樹脂は、特に乾燥等を行うことなく、そのまま後述する紡出に供することもできる。なお、この有機過酸化物は、後述する紡糸に供する前に、エクストルーダーで混練してペレット化してポリプロピレン系樹脂としておいても良いが、紡糸時に用いる押出機を用いて、紡糸時に有機過酸化物とポリプロピレン系樹脂を混練し、溶融紡糸と同時に前記のポリプロピレン系樹脂を得る方法を採っても良い。
ここで、ポリプロピレン系樹脂のMFRの調整方法については、有機過酸化物の添加量を多くすることにより、得られるポリプロピレン系樹脂のMFRを高めることができる。また、添加量が一定であれば、原料樹脂のMFRが高いほど、得られるポリプロピレン系樹脂のMFRも高くなる。また、原料樹脂のMFRの測定は、前記のスパンボンド不織布のMFRの測定方法と同様に、JIS K7210-1:2014「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法」の「8章 A法:質量測定法」に準じて、原料樹脂を20gずつ5サンプル用意し、各サンプルについて、荷重が2160gで、温度が230℃の条件で測定した値(g/10分)の算術平均値の小数点以下第1位を四捨五入し、MFR(g/10分)を求める。また、測定には、例えば、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ「F-F01」などを用いることができる。
また、高い引張強度を有するスパンボンド不織布を得る観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、原料樹脂の1分子当たりの分岐度λは大きいほど好ましく、1.0×10-7以上が好ましい。一方で、原料樹脂の1分子当たりの分岐度λを好ましくは、1.0×10-3以下とすることにより、得られるポリプロピレン系樹脂の伸長粘度増大による、紡糸時の糸切れを抑制することができる。
なお、原料樹脂の1分子当たりの分岐度λは、前記のポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λと同様の方法で、測定、算出することができる。
また、本発明で用いられる原料樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、他成分樹脂をブレンドさせることができる。他成分樹脂としては、融点がポリプロピレンに近いポリエチレンやポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのポリオレフィン系樹脂の他、低融点ポリエステル樹脂および低融点ポリアミド樹脂が挙げられ、柔軟性付与の観点から低結晶性のオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。低結晶性のオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体などが好適に用いられる。この場合において、他成分樹脂の質量比率は、ポリプロピレン系樹脂の特性、特に、スパンボンド不織布の耐熱性が損なわれないようにするために、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
そして、ポリプロピレン系樹脂に残存する有機過酸化物量は、原料樹脂に対して有機過酸化物を添加する際の温度および過酸化物の形態により制御することができる。
まず、押出機内で原料樹脂に有機過酸化物を添加する場合には、押出温度を高くすることにより、残存する有機過酸化物量は少なくなる。一方で、前記の押出温度を低くすると、残存する有機過酸化物量は多くなる。押出温度は、原料樹脂であるポリプロピレン系樹脂の融点を鑑みると、好ましくは、180℃以上、より好ましくは、200℃以上である。一方、ポリプロピレン系樹脂の酸化分解による黄変や発火のリスクを防ぐ目的で、押出温度は、好ましくは、280℃以下、より好ましくは、260℃以下である。
有機過酸化物の形態としては、有機過酸化物をポリプロピレン系樹脂のマスターバッチの形態で添加することにより、添加量および押出温度が一定の条件において、押出機内での自己分解が抑制されることから、多くの有機過酸化物をポリプロピレン系樹脂中に残存させることができる。
(b) 繊維を得る工程
本工程では、前記のポリプロピレン系樹脂を紡出して、平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である繊維を得る。
この紡出では、単軸や2軸エクストルーダー型などの押出機を用いた溶融紡糸手法を適用することができる。そして、押出機から押し出されたポリプロピレン系樹脂は、配管を経由し、ギアーポンプなどの計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、紡糸口金へと導かれる。このとき、樹脂配管から紡糸口金までの温度(紡糸温度)は、流動性を高めるため180℃以上280℃以下とすることが好ましい。
吐出に使用される紡糸口金は、口金孔の孔径Dを0.1mm以上1.0mm以下とすることが好ましく、また、口金孔のランド長L(口金孔の孔径と同一の直管部の長さ)を孔径Dで除した商で定義されるL/Dは、1以上10以下であることが好ましい態様である。
口金孔から吐出された糸条は、空気を吹き付けることにより冷却固化を促進しても良い。この場合の冷却風の温度は、冷却効率の観点から冷却風速とのバランスで決定することができるが、繊度の均一性の観点から0℃以上20℃以下であることが好ましい。冷却風の温度を好ましくは0℃以上、より好ましくは2℃以上とすることにより、空気の配管や冷却風放出部の結露や凍結を防止することができ、安定した冷却風の供給が可能となる。また、冷却風の温度を好ましくは20℃以下、より好ましくは16℃以下、さらに好ましくは12℃以下とすることにより、繊維の冷却効果が高まり、均一性が増し、糸切れ欠点の少ないスパンボンド不織布となる。
冷却気体は、糸条にほぼ垂直方向(上下に繊維が走行しているときは、地面と平行方向のことを指す)に流すことにより、糸条を冷却させる。その際、冷却風の速度は、10m/分以上100m/分以下であることが好ましい。冷却風の速度を好ましくは10m/分以上とすることにより、冷却効果が高まり、均一性が増し、糸切れ欠点の少ないスパンボンド不織布となる。また、冷却風の速度を好ましくは100m/分以下とすることにより、冷却風による糸ゆれを抑制することができるため紡糸時の糸切れが減少する。
紡糸口金の口金孔から冷却が開始される位置までの距離は、20mm以上800mm以下とすることが好ましい。前記の距離の範囲について、その下限を好ましくは20mm以上とすることにより、口金表面温度が過度に低下せず、吐出が安定するため、紡糸時の糸切れが減少する。また、前記の距離の範囲について、その上限を好ましくは800mm以下とすることにより、冷却効果が高まり、均一性が増し、糸切れ欠点の少ないスパンボンド不織布となる。
口金孔から吐出された糸条は、冷却風の吹きつけの有無に関わらず、紡糸口金から好ましくは400mm以上7000mm以内の位置で空気牽引(加速した空気流により牽引)される。加速空気流は、冷却風を吹かせる領域を密閉とし、紡糸線下流に向かうにしたがって、徐々に密閉領域の断面積を小さくすることにより空気流速を加速させるようにすることができるが、より高い空気流速を得るためには、エジェクターを用いることが好ましい態様である。この空気流速によって糸条は加速され、繊維の走行速度である紡糸速度も空気流速と近い速度に到達する。なお、本発明において、空気牽引に用いられる気体は、通常の空気に限られず、窒素であってもよいし、湿度100%RH以下であれば水蒸気であってもよい。
紡糸速度は3km/分以上であることが、平均単繊維径の細径化のためには好ましく、より好ましくは4km/分である。また、空気流速も同様に、3km/分以上であることが好ましい。また、紡糸速度の上限は、12km/分程度である。
紡糸速度は、次の式により算出する値を指す
紡糸速度(km/分)=Q・1000/((W/2)×π×ρ)
(式中、Qは単孔吐出量(g/分)を表し、Wは平均単繊維径(μm)を表し、ρは密度(g/cm)を表す。本発明に用いるポリプロピレン系樹脂においては密度の値は0.91を用いる。また、平均単繊維径の値は、前記の[繊維]で記載した方法によって測定、算出される値を用いる)。
このようにして、平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である繊維を形成する。
(c) 繊維を捕集する工程
空気牽引された糸条(繊維)は、周囲の空気流速を減じるような開繊部を通過することにより開繊され、その後、裏面から空気吸引されるネットコンベアーに着地し、繊維ウェブとして捕集される方法をとることができる。
(d) 後加工工程
そして、捕集された繊維ウェブは、そのままスパンボンド不織布としてもよいが、より好ましくは、10m/分以上1000m/分以下の速度でコンベア搬送して、繊維ウェブに熱接着加工などを行うことによりスパンボンド不織布を得ることである。上記の繊維ウェブを構成する繊維を熱接着により一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種のロールにより熱接着する方法が挙げられる。
熱接着時のエンボス接着面積率は、5%以上30%以下であることが好ましい。接着面積を好ましくは5%以上とすることにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る高い引張強度を有し、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしやすくなる。一方、接着面積を好ましくは30%以下とすることにより、特に衛生材料用のスパンボンド不織布として用いる場合に、十分な柔軟性を得ることができる。
本発明における接着面積とは、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が繊維ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。
熱エンボスロールに施される彫刻の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形、および正八角形などを用いることができる。
本発明のスパンボンド不織布の製造においてプロセス上の重要なポイントは、高速紡糸による平均単繊維径の細径化、およびその安定生産が可能であることにある。このメカニズムについては明らかでないものの、本発明のスパンボンド不織布は、原料としてMFRの高いポリプロピレン系樹脂が用いられるため、紡糸工程中の細化挙動におけるポリプロピレン系樹脂の変形追従性が向上することにより、糸切れ欠点が著しく減少する。
一方、上記のポイントのみを考慮した場合、得られたスパンボンド不織布は、MFRが高いことに起因して、引張強度が低くなったり、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工がしにくくなったりすることが課題となる。そこで、本発明のスパンボンド不織布の製造におけるもう1つのプロセス上の重要なポイントとして、有機過酸化物による結晶核剤効果および分岐構造により配向緩和を抑制する効果により、繊維の分子配向の指標となるΔnを高めることができ、繊維の強度を高めることができるのである。
このようにして得られたスパンボンド不織布は、優れた柔軟性に加え、スパンボンド不織布に使用するのに十分な引張強度を有し、プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工もしやすいスパンボンド不織布となる。
[積層不織布]
本発明の積層不織布は、前記のスパンボンド不織布を含む。本発明のスパンボンド不織布は、単独でも引張強度に優れるが、熱融着性不織布と積層することにより、さらに優れた力学物性を発現する。熱融着性不織布とは、例えば、軟化温度が低く熱融着性に優れたメルトブロー不織布や、メタロセン触媒により重合された低融点のポリプロピレン系樹脂からなるスパンボンド不織布が挙げられる。そして、積層不織布の積層構成としては、スパンボンド不織布をS、メルトブロー不織布をMとして、例えば、S/M、S/S、S/M/M、M/S/M、S/S/M、S/M/S、S/M/M/S、S/M/M/M/Sなどが挙げられる。また、前記の積層不織布の好ましい製造方法としては、複数の紡糸口金から吐出された、各不織布層をコンベア上で積層し、得られた積層ウェブを、エンボスロール等を用いて部分接着させる方法が挙げられる。
[衛生材料、衣料]
本発明の衛生材料および衣料は、スパンボンド不織布または前記の積層不織布を少なくとも一部に具備してなる。前記のスパンボンド不織布および前記の積層不織布は、柔軟性や肌触りに優れ、地合が均一であり、実用に供しうる十分な引張強度を有していることから、着用時の快適性に優れた衛生材料および衣料が得られる。
なお、ここで言う衛生材料および衣料とは、例えば、医療・介護など健康に関わる目的で使用される、主に使い捨ての物品である。
本発明の衛生材料は、紙おむつ、生理用ナプキン、ガーゼ、包帯、マスク、手袋、絆創膏等が挙げられ、その構成部材、例えば、紙おむつにおいては、そのトップシート、バックシート、サイドギャザー等も含まれる。中でも、高い引張強度と柔軟性を必要とする紙おむつのバックシートに好適に用いられる。
本発明の衣料は、医療現場で用いられる防護服、検査衣、手術用外衣、クリーンルームで用いられる作業服や防塵服等が挙げられ、その構成部材、例えば、防護服においては、素肌に直接触れる内層部材、バリア機能を要する中間層部材、外層部材も含まれる。中でも高い引張強度と柔軟性を必要とする防護服の内層部に好適に用いられる。
次に、実施例により本発明のスパンボンド不織布について、より具体的に説明する。
[測定・評価方法]
実施例中の各特性値は、次の方法で求めた。なお、測定方法について特段記載のないものについては、前記された方法によって測定されたものとする。
A.原料樹脂、スパンボンド不織布のMFR:
スパンボンド不織布のMFRは、前記の方法に従って、株式会社東洋精機製作所製メルトインデックサ「F-F01」を用いて測定した。
B.原料樹脂中、スパンボンド不織布中の有機過酸化物の定量:
スパンボンド不織布中の有機過酸化物量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)として、株式会社島津製作所製「LC-20A」、質量分析計(MS)として、Sciex製「API4000」、カラムとして、株式会社住化分析センター製「SUMIPAX ODS Aシリーズ」を用いて測定、算出を行った。
上記測定における検出下限は5ppmであるので、有機過酸化物が検出されない場合については、表中<5[ppm]と表記した。
C.原料樹脂、スパンボンド不織布の分岐度λ:
スパンボンド不織布の分岐度λは、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)として、東ソー株式会社製「HLC-8321GPC/HT」、示差屈折率検出器として、東ソー株式会社製「HL-8321GPC/HT」、多角度光散乱検出器(MALS)として、Wyatt Technology製「DAWNNEON」、カラムとして、昭和電工株式会社製「Shodex HT-806M」を用いて測定し、排出曲線のデータ解析は、Wyatt Technology製「Empower」およびWyatt Technology製「ASTRA 8.0.1.21」を用い、分岐構造を有さない直鎖状のポリプロピレン系樹脂として、日本ポリプロ株式会社製「「ノバテック」(登録商標)PP FY6」を用いて、前記の方法で測定、算出を行った。
D.原料樹脂、スパンボンド不織布のMn、Mw、Mz:
ポリプロピレン系樹脂のMn、Mw、Mzは、PTFEフィルターとして、アドバンテック東洋株式会社製「T010A」を、装置として、Polymer Laboratories社製「PL-220」を、カラムとして、Shodex HT-G(ガードカラム)+Shodex HT-806M×2本(8.0mm×30cm、昭和電工株式会社製)を、標準試料として、東ソー株式会社製単分散ポリスチレン、東京化成工業株式会社製ジベンジルを用い、前記の方法で測定し、排出曲線のデータ解析は、Wyatt Technology製「Empower」を用いた。
E.平均単繊維径および紡糸速度:
繊維の平均単繊維径の測定には、株式会社キーエンス製「VHX-2000」を用いた。また、得られた平均単繊維径より前述の式より紡糸速度(km/分)を求めた。
F.繊維の分子配向Δn:
繊維の分子配向Δnは、偏光顕微鏡として、オリンパス株式会社製「BH2」を用いて、前記の方法で測定した。
G.繊維の引張強度:
繊維の引張強度(cN/dtex)は、引張試験機として、株式会社オリエンテック製「UTM-III-100」を用いて、前記の方法で測定した。
H.スパンボンド不織布の目付:
スパンボンド不織布の目付は、前記の方法で測定、算出した。
I.スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度:
スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度の測定には、引張試験機として、株式会社オリエンテック製「UTM-III-100」を用いて、前記の方法で測定、算出した。
J.スパンボンド不織布の剛軟度:
スパンボンド不織布の剛軟度は、前記の方法で測定した。
K.スパンボンド不織布の欠点数:
スパンボンド不織布の端部以外の領域の10cm角の領域をルーペで目視観察し、糸切れに起因して繊維径が平均の繊維直径よりも2倍以上太くなっているもの、また繊維の切れ端が丸くなって平均の繊維直径よりも2倍以上太く見えるものを欠点として扱い、その個数を数えた。この観察を不織布の長手(MD)方向に5回繰り返し、合計の個数をスパンボンド不織布の欠点数(個)とした。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
L.スパンボンド不織布の高次加工性:
プリーツ加工や他部材との接合などの高次加工のしやすさを把握するために、スパンボンド不織布の端部を除いたシート状の試験片(幅:100mm、長さ:300m)を用意し、線圧を300N/cmに設定した、1対のシリコンゴム製(硬度:12°)ローラー(ゴム部外径:15cm、表面粗さRa: 6.3μm)間を20m/分で10分間走行させた。このときのロールへの繊維などの付着の有無と、スパンボンド不織布の状態を観察し、次の基準で点数付けを行い加工性(点)とした。4点以上のものを加工性に優れるスパンボンド不織布と判断した。なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
・5点:ロールに繊維の付着がなく、不織布の毛羽、破れも見られない。
・4点:ロールに繊維の付着があるが、不織布の毛羽、破れは見られない。
・3点:ロールに繊維の付着があり、不織布の毛羽もあるが、破れは見られない。
・2点:ロールに繊維の付着があり、不織布の毛羽もあり、破れがある。
・1点:シートの破れによりロールに不織布が巻きつく。
M.スパンボンド不織布の肌への影響:
スパンボンド不織布の端部を除いた領域から採取した10cm角の試験片を、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社製「LabCyte EPI-MODEL24well 6日培養品」(敏感肌想定ヒト表皮モデル)とともに、培地内で、37℃で24時間培養した。培養後、ISO 10993-5:2009「医療機器の生物学的評価」 AnnexCに基づき、3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを添加して色素検出を行い、OD570の吸光度を測定することで、細胞生存率(%)を算出し、次の基準(〇、△、×)で評価した。
・〇:細胞生存率が99%以上
・△:細胞生存率が95%以上99%未満
・×:細胞生存率が95%未満
なお、不織布の端部とは、不織布の幅方向の長さに対して、両端の10%の領域のことを指す。
[原料樹脂、ポリプロピレンマスターバッチ、有機過酸化物]
実施例、比較例で使用した原料樹脂、ポリプロピレンマスターバッチ、有機過酸化物は、以下のとおりである。
(原料樹脂A)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが6g/10分、Mwが458000、Mw/Mnが5.31、Mz/Mwが2.79、分岐度λが1.0×10-6であるポリプロピレン。
(原料樹脂B)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが0.3g/10分、Mwが1319362、Mw/Mnが6.31、Mz/Mwが3.06、分岐度λが1.0×10-6であるポリプロピレン。
(原料樹脂C)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが0.05g/10分、Mwが2483427、Mw/Mnが7.55、Mz/Mwが4.79、分岐度λが1.0×10-6であるポリプロピレン。
(原料樹脂D)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが10g/10分、Mwが382638、Mw/Mnが4.90、Mz/Mwが2.54、分岐度λが1.0×10-6であるポリプロピレン。
(原料樹脂E)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが15g/10分、Mwが331610、Mw/Mnが4.55、Mz/Mwが2.45、分岐度λが1.0×10-6であるポリプロピレン。
(原料樹脂F)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが0.01g/10分、Mwが4383165、Mw/Mnが7.98、Mz/Mwが5.11、分岐度λが1.0×10-6であるポリプロピレン。
(原料樹脂G)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが0.3g/10分、Mwが1319362、Mw/Mnが6.31、Mz/Mwが3.06、分岐度λが1.0×10-5であるポリプロピレン。
(原料樹脂H)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが0.3g/10分、Mwが1319362、Mw/Mnが6.31、Mz/Mwが3.06、分岐度λが1.0×10-7であるポリプロピレン。
(原料樹脂I)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが60g/10分、Mwが204987、Mw/Mnが7.98、Mz/Mwが5.11、融点が160℃、分岐度λが1.0×10-6であるポリプロピレン。
(原料樹脂J)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが230g/10分、Mwが151000、Mw/Mnが5.31、Mz/Mwが2.70、分岐度λが0であるポリプロピレン。
(原料樹脂K)
ジーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン単独重合体であり、MFRが3.3g/10分、Mwが575000、Mw/Mnが6.69、Mz/Mwが3.20、分岐度λが0であるポリプロピレン。
(ポリプロピレンマスターバッチα)
Polytechs社製「VMPP10X」(ポリプロピレンマスターバッチ:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン10質量%含有)。
(有機過酸化物β)
日油株式会社製「パーヘキサ25B」(有機過酸化物:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン)。
[実施例1]
(a)ポリプロピレン系樹脂を得る工程
原料樹脂A100質量部に対し、ポリプロピレンマスターバッチαを2.5質量部チップブレンドした。そして、前記でブレンドしたチップを単軸エクストルーダーによって230℃で溶融押出しし、ギアーポンプで計量しつつ紡糸口金に溶融樹脂を供給した。得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが200g/10分、Mwが132899、Mw/Mnが2.95、Mz/Mwが1.85、分岐度λが1.0×10-6であった。
(b)繊維を得る工程
続いて、紡糸温度(口金温度)は230℃とし、孔径Dが0.30mmで、ランド長Lが0.75mmの口金孔から、単孔吐出量0.4g/分の条件でポリプロピレン系樹脂を吐出させた。口金孔の直上に位置する導入孔はストレート孔とし、導入孔と口金孔の接続部分はテーパーとした紡糸口金を用いた。
そして、吐出された繊維状樹脂に外側から温度12℃、速度30m/分の冷却風を当てて冷却固化した後、矩形エジェクターを用い、空気流によって、紡糸速度4.0km/分で牽引して繊維を得た。この際、紡糸口金の口金孔から上記の冷却が開始される位置であるエジェクター入口までの距離は550mmとした。
(c)繊維を捕集する工程
続いて、前記で得られた繊維を、周囲の空気流速が減じられるような開繊部を通過することにより開繊させ、その後、裏面から空気吸引されるネットコンベアー上に着地させることで捕集し、繊維ウェブを得た。この後、繊維ウェブを、11m/分の速度で搬送した。
(d)後加工工程
引き続き、上記のようにして得られた繊維ウェブを、上ロールに金属製で水玉柄の彫刻がなされた接着面積率16%のエンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、130℃の温度で熱接着し、目付が30g/mのスパンボンド不織布を得た。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は12.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.89(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.6mN・cmであり、欠点数は2個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性についても問題なかった。
[実施例2]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Bに変えたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から3.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209623、Mw/Mnが2.97、Mz/Mwが1.91、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は13.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.91(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.8mN・cmであり、欠点数は3個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性についても問題なかった。
[実施例3]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Cに変えたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から2.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが20g/10分、Mwが299587、Mw/Mnが2.98、Mz/Mwが1.93、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は15.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.89(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は2.0mN・cmであり、欠点数は5個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性についても問題なかった。
[実施例4]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Dに変えたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から4.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが380g/10分、Mwが105955、Mw/Mnが2.92、Mz/Mwが1.83、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表1に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は11.2μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.79(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.2mN・cmであり、欠点数は1個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性についても問題なかった。
Figure 0007452769000002
[比較例1]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Eに変えたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から4.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが500g/10分、Mwが96173、Mw/Mnが2.90、Mz/Mwが1.81、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は11.4μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.45(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は0.9mN・cmであり、欠点数は1個であり、得られた不織布は柔軟性に優れ、欠点も少ないものの、実施例1と比較して力学物性に劣り、高次加工性にも問題があった。
[比較例2]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Fに変えたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から2.0km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが10g/10分、Mwが382637、Mw/Mnが3.00、Mz/Mwが1.95、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は16.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.70(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は3.5mN・cmであり、欠点数は20個以上であり、得られた不織布は力学物性には優れ、高次加工性に問題はないものの、柔軟性に劣り、欠点が多いものであった。
[実施例5]
工程(a)において、原料樹脂A100質量部に対し、ポリプロピレンマスターバッチαを2.5質量部チップブレンドしていたところ、原料樹脂B100質量部に対し、有機過酸化物βを0.25質量部チップブレンドすることとしたこと、そして、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から3.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209623、Mw/Mnが2.97、Mz/Mwが1.91、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は13.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.87(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.8mN・cmであり、欠点数は3個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がなかった。
[実施例6]
工程(a)において、溶融押出する際の温度が230℃であったところ、200℃に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209623、Mw/Mnが2.97、Mz/Mwが1.96、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表2に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は13.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.93(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.8mN・cmであり、欠点数は2個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がなかった。
Figure 0007452769000003
[実施例7]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Gに変えたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から1.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209623、Mw/Mnが2.97、Mz/Mwが1.91、分岐度λが1.0×10-5であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表3に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は16.4μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.71(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.8mN・cmであり、欠点数は8個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がなかった。
[実施例8]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Hに変えたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から3.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209623、Mw/Mnが2.96、Mz/Mwが1.91、分岐度λが1.0×10-7であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表3に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は13.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.85(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は3.0mN・cmであり、欠点数は3個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がなかった。
[比較例3]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Iに変え、ポリプロピレンマスターバッチαを用いないこととした(有機過酸化物を添加しないこととした)こと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から3.5km/分と変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209623、Mw/Mnが3.22、Mz/Mwが2.36、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表3に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は13.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.52(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.8mN・cmであり、欠点数は3個であり、得られた不織布は柔軟性に優れ、欠点も少ないものの、実施例2と比較して力学物性に劣り、高次加工性にも問題があった。
[比較例4]
工程(a)において、溶融押出する際の温度が230℃であったところ、180℃に変更したこと以外は、実施例2と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209623、Mw/Mnが2.97、Mz/Mwが1.96、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表3に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は13.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.89(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.6mN・cmであり、欠点数は3個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がないものの、肌への影響については、敏感肌想定ヒト表皮モデルを用いた評価において、培養後の細胞生存率が95%未満となった。
Figure 0007452769000004
[比較例5]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Jに変え、ポリプロピレンマスターバッチαを用いないこととした(有機過酸化物を添加しないこととした)こと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から4.2km/分と変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが230g/10分、Mwが151000、Mw/Mnが5.31、Mz/Mwが2.70、分岐度λが0であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表4に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は11.7μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.90(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は0.8mN・cmであり、欠点数は1個であり、得られた不織布は力学物性に優れ、欠点も少ないものの、高次加工性に問題があった。
[実施例9]
工程(a)において、原料樹脂A100質量部に対し、ポリプロピレンマスターバッチαを2.5質量部チップブレンドしていたところ、1.1質量部チップブレンドすることとしたこと、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から3.5km/分に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが55g/10分、Mwが209000、Mw/Mnが3.71、Mz/Mwが2.26、分岐度λが5.0×10-7であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表4に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は12.8μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.90(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は2.0mN・cmであり、欠点数は3個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がなかった。
[実施例10]
工程(a)において、原料樹脂A100質量部に対し、ポリプロピレンマスターバッチαを2.5質量部チップブレンドしていたところ、3.5質量部チップブレンドすることとしたこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが380g/10分、Mwが105000、Mw/Mnが2.80、Mz/Mwが1.80、分岐度λが5.0×10-5であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表4に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は12.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.85(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.5mN・cmであり、欠点数は2個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がなかった。
[比較例6]
工程(a)において、原料樹脂Aを原料樹脂Kに変え、工程(b)において、紡糸速度を4.0km/分から3.6km/分と変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが220g/10分、Mwが147000、Mw/Mnが2.96、Mz/Mwが1.91、分岐度λが0であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表4に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は12.5μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は0.90(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は0.7mN・cmであり、欠点数は1個であり、得られた不織布は力学物性に優れ、欠点も少ないものの、高次加工性に問題があった。
Figure 0007452769000005
[実施例11]
工程(c)において、熱エンボスロールでの接着温度を130℃から135℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織布を得た。なお、工程(a)において得られたポリプロピレン系樹脂のMFRが200g/10分、Mwが132899、Mw/Mnが2.95、Mz/Mwが1.85、分岐度λが1.0×10-6であった。
得られたスパンボンド不織布の評価結果を、表5に示す。得られたスパンボンド不織布について、繊維の平均単繊維径は12.0μm、スパンボンド不織布の単位目付当たりの引張強度は1.09(N/25mm)/(g/m)、剛軟度は1.9mN・cmであり、欠点数は2個であり、得られた不織布は柔軟性に加えて、優れた力学物性を有し、欠点も少なく、高次加工性にも問題がなかった。
Figure 0007452769000006

Claims (7)

  1. ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記スパンボンド不織布が以下の条件(1)~(3)を満たし、前記繊維の平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である、スパンボンド不織布。
    (1)体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である
    (2)メルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である
    (3)ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、前記ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である
  2. 前記ポリプロピレン系樹脂がさらに以下の条件(4)および(5)も満たす、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
    (4)2.50≦Mw/Mn≦3.20
    (5)1.82≦Mz/Mw≦2.20
    ここで、Mw、Mn、Mzは、それぞれゲル浸透クロマトグラフィー法により求められる重量平均分子量、数平均分子量、z平均分子量である。
  3. 原料樹脂に有機過酸化物を添加し、該原料樹脂を分解して、以下の条件(1)~(3)を満たすように調製されたポリプロピレン系樹脂を得る工程と、
    前記ポリプロピレン系樹脂を紡出して、平均単繊維径が5.0μm以上20.0μm以下である繊維を得る工程と、
    前記繊維を捕集する工程と、を有する、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
    (1)体積比率を1:1としたクロロホルム/メタノール溶媒中に浸漬させた前記スパンボンド不織布を15分間、45kHz、溶液温度が30℃の条件で超音波処理することで抽出される、有機過酸化物量が100ppm以上1000ppm以下である
    (2)メルトフローレートが20g/10分以上400g/10分以下である
    (3)ゲル浸透クロマトグラフィー法/多角度光散乱測定器により求められる分子量および回転半径より、3官能ランダム分岐理論を用いて算出される、前記ポリプロピレン系樹脂の1分子当たりの分岐度λが1.0×10-7以上1.0×10-3以下である
  4. 前記原料樹脂が、リサイクル樹脂である、請求項3に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
  5. 請求項1に記載のスパンボンド不織布を含む、積層不織布。
  6. 請求項1に記載のスパンボンド不織布、または、請求項5に記載の積層不織布を用いてなる、衛生材料。
  7. 請求項1に記載のスパンボンド不織布、または、請求項5に記載の積層不織布を用いてなる、衣料。
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