JP2024039320A - ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法 - Google Patents

ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む発泡剤を用いた場合において、無機輻射抑制粉体を添加していても発泡性および製造安定性が良好であり、熱伝導率が低いポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法を提供する。【解決手段】無機輻射抑制粉体の添加量が基材樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であり、物理発泡剤が、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンからなる発泡剤(a)と、アルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテルからなる発泡剤(b)とを含み、基材樹脂1kgに対して、発泡剤(a)の添加量が0.5mol以上1.1mol以下であり、発泡剤(b)の添加量が0.2mol以上であり、物理発泡剤の総添加量が0.8mol以上2mol以下であり、物理発泡剤中における、発泡剤(a)の添加量と発泡剤(b)の添加量との合計割合が70質量%以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法に関し、具体的には、建築物の壁、床、屋根等の断熱材として好適に使用可能なポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法に関する。
ポリスチレン系樹脂押出発泡板(以下、単に「押出発泡板」ともいう)は、優れた断熱性および機械的強度を有することから断熱材として広く使用されている。このような板状の押出発泡板は、一般に押出機中でポリスチレン系樹脂を加熱溶融した後、得られた溶融物に物理発泡剤を圧入および混練して得られる発泡性溶融樹脂混練物を、押出機先端に付設されたフラットダイ等から低圧域に押出して発泡させて、成形具により板状に成形することにより製造されている。
近年、住宅、建築物等の省エネルギー化の要求が高まっており、断熱性に優れる押出発泡板がさらに求められている。押出発泡板の断熱性を良好にするには、押出発泡板の熱伝導率を低くする必要がある。
そこで、断熱性に優れる押出発泡板を製造する手法の一つとして、ハイドロフルオロオレフィンの1種である1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを発泡剤として用いることが検討されている。1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、ポリスチレン系樹脂に対して溶解性を有するとともに発泡性を有するため、低見掛け密度の押出発泡板の製造を可能としている。それだけでなく、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、不燃性であり、熱伝導率が低く断熱性に優れ、長期に亘って発泡板内に残存することから、長期断熱性を付与することが可能となる。さらに、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、オゾン層破壊係数や地球温暖化係数が非常に小さいため、環境に優しい発泡剤である
例えば、特許文献1および特許文献2には、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1224yd)を使用する押出発泡板が開示されている。
さらに、特許文献1および特許文献2には、グラファイト等の輻射抑制剤を用いることが開示されている。輻射抑制剤を添加することで赤外線の輻射による伝熱が抑制され、押出発泡板をさらに低熱伝導率化することが可能になる。
特開2022-044963号公報 特開2022-032685号公報
しかし、特許文献1および特許文献2の技術のように、HFO-1224ydを含む発泡剤を使用する構成において、輻射抑制剤を添加した場合、HFO-1224ydの添加量によっては、気泡が微細化して発泡性に劣るおそれや、製造安定性が劣るというおそれがあった。以上の事情を考慮して、本発明では、HFO-1224ydを含む発泡剤を用いた場合において、無機輻射抑制粉体を添加していても発泡性および製造安定性が良好であり、熱伝導率が低いポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、以下の[1]~[4]に示す形態のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法が提供される。
[1]ポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法は、ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂、無機輻射抑制粉体、難燃剤、物理発泡剤および気泡調整剤を混練してなる発泡性樹脂溶融組成物を押出し発泡させて成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20~50kg/mのポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する方法であって、前記無機輻射抑制粉体の添加量が前記基材樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であり、前記物理発泡剤の総添加量が基材樹脂1kgに対して0.8mol以上2mol以下であり、前記物理発泡剤が、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンからなる発泡剤(a)と、アルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテルからなる発泡剤(b)とを含み、前記発泡剤(a)の添加量が基材樹脂1kgに対して0.5mol以上1.1mol以下であり、前記発泡剤(b)の添加量が基材樹脂1kgに対して0.2mol以上であり、前記物理発泡剤中における、前記発泡剤(a)の添加量と前記発泡剤(b)の添加量との合計割合が70質量%以上であることを特徴とする。
[2][1]のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法において、前記発泡剤(a)の添加量と前記発泡剤(b)の添加量とのmol比(a:b)が50:50~90:10であることを特徴とする。
[3][1]または[2]のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法において、前記無機輻射抑制粉体がグラファイトを含み、前記グラファイトの添加量が前記基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上3質量部以下であることを特徴とする。
[4][1]から[3]の何れかのポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法において、前記気泡調整剤がタルクを含み、前記タルクの添加量に対する前記グラファイトの添加量の比が3以上30以下であることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む発泡剤を用いた場合において、無機輻射抑制粉体を添加していても発泡性および製造安定性が良好であり、熱伝導率が低いポリスチレン系樹脂押出発泡板を提供することが可能である。
本発明の製造方法は、ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂、無機輻射抑制粉体、難燃剤、物理発泡剤および気泡調整剤を混練してなる発泡性樹脂溶融組成物を押出し発泡させて成形具により板状に成形する工程(以下「成形工程」という)を含み、見掛け密度20~50kg/mのポリスチレン系樹脂押出発泡板(以下、単に「押出発泡板」ともいう)を製造する方法である。
具体的には、本発明に係る成型工程では、まず、ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂と、無機輻射抑制粉体と、難燃剤と、必要に応じて配合されるその他の添加剤とを押出機内において加熱下で溶融および混練して得られた溶融混練物に、物理発泡剤を圧入し、さらに混練して発泡性樹脂溶融組成物を得る。次に、発泡性樹脂溶融組成物を発泡適正温度に調整し、フラットダイを通して高圧の押出機内から低圧域に押出して発泡させて、フラットダイの出口に配置された成形具(例えば成形型や成形ロール)を通過させることによって板状の押出発泡板が成形される。なお、成形型は、例えば、平行または入り口から出口方向に向かって緩やかに拡大するように設置された上下二枚のポリテトラフルオロエチレン樹脂等の板で構成される型(ガイダー)である。
<基材樹脂>
[1]ポリスチレン系樹脂
本発明の製造方法で用いられるポリスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレンや、スチレン単位成分を50mol%以上含むスチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メチルスチレン共重合体、スチレン-ジメチルスチレン共重合体、スチレン-エチルスチレン共重合体、スチレン-ジエチルスチレン共重合体等から選択される1種又は2種以上を例示することができる。これらの中では、ポリスチレンを好適に用いることができる。なお、ポリスチレンには、スチレン単位成分以外に、多官能性単量体や多官能性マクロモノマー等の分岐化剤による単位成分が含まれていてもよい。上記共重合体中のスチレン成分単位の含有量は、好ましくは60mol%以上、より好ましくは80mol%以上、さらに好ましくは90mol%以上である。
基材樹脂は、押出発泡板の断熱性を高めるために非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体を含んでもよい。なお、該非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体においては、JIS K7122に基づく樹脂の融解に伴う融解熱量が5J/g未満である。該融解熱量は、JIS K7122(1987)に記載の「一定の熱処理を行った後、融解熱を測定する場合」(試験片の状態調節における加熱速度と冷却速度は、いずれも10℃/分とする。)を採用し、熱流束示差走査熱量測定装置を使用して得られるDSC曲線に基づいて測定されるものである。
また、本発明の製造方法で用いられるポリスチレン系樹脂の溶融粘度は、発泡性や製造安定性に優れることから、200℃、剪断速度100sec-1の条件下で、500~3000Pa・sであることが好ましく、より好ましくは1000~2500Pa・s、さらに好ましくは1500~2300Pa・sである。
[2]その他の重合体
基材樹脂は、本発明の目的および効果が達成される範囲内において、ポリスチレン系樹脂および非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体以外の重合体を含むことができる。その他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂(エチレン単独重合体およびエチレン単位成分含有量が50mol%以上のエチレン系共重合体の群から選択される1種又は2種以上の混合物)、ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体およびプロピレン単位成分含有量が50mol%以上のプロピレン系共重合体の群から選択される1種又は2種以上の混合物)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂や、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体水添物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体水添物、スチレン-エチレン共重合体等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
なお、本発明の製造方法において、ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂とは、基材樹脂の50質量%以上がポリスチレン系樹脂であることをいい、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上がポリスチレン系樹脂である。
<物理発泡剤>
本発明で用いる物理発泡剤は、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(以下、「HFO-1224yd」ともいう)からなる発泡剤(a)と、炭素数3~5の飽和炭化水素からなる発泡剤(b)とを必須の成分として含む。
[1]発泡剤(a)
発泡剤(a)であるHFO-1224ydは、ハイドロフルオロオレフィンの中では、ポリスチレン系樹脂に対して適度な溶解性と優れた発泡性を有しており、低見掛け密度の押出発泡板を製造しやすくなる。また、HFO-1224ydは不燃性であるため、押出発泡板製造時の静電気による着火等の危険性を低減させることができる。さらに、HFO-1224ydは、オゾン破壊係数が低く、地球温暖化係数も非常に小さく、環境に与える負担が小さい。
[2]発泡剤(b)
発泡剤(b)であるアルキル鎖の炭素数1~3のジアルキルエーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチルメチルエーテル等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。製造安定性を良好にする観点からは、これらの中でもジメチルエーテルを好適に用いることができる。
発泡剤(b)を発泡剤(a)と併用することで、長期間にわたり優れた低熱伝導率性を維持しつつ、発泡性および製造安定性に優れた押出発泡板を製造することができる。
[3]その他の発泡剤(c)
本発明で用いられる物理発泡剤としては、発泡剤(a)および発泡剤(b)の他に、水、二酸化炭素、塩化アルキル、炭素数1~5の脂肪族アルコール、炭素数3~5の飽和炭化水素、および、HFO-1224yd以外の炭素数3又は4のハイドロフルオロオレフィンから選択される1種以上のその他の発泡剤(c)を用いることができる。
発泡剤(c)を発泡剤(a)および発泡剤(b)と併用することで、得られる押出発泡板の発泡倍率を向上させ、見掛け密度が小さく、外観の良好な押出発泡板を得ることが容易になる。
水や二酸化炭素は、環境負荷の低減を可能とし、押出発泡板から早期に散逸していくため、得られた押出発泡板の寸法を早期に安定させることができる。
塩化アルキルとしては、例えば、塩化メチル、塩化エチル等が挙げられる。塩化アルキルは、ポリスチレン系樹脂を発泡させやすく、発泡剤(a)および発泡剤(b)と併用することで、所望される見掛け密度の押出発泡板を得ることができる。さらに、塩化アルキルは、ポリスチレン系樹脂に対する透過速度が速く、押出発泡板の製造後早期に逸散することから、得られた押出発泡板の寸法を早期に安定させることができる。
炭素数1~5の脂肪族アルコールは、オゾン層を破壊することがなく、地球を温暖化させることもない上に、押出発泡板から早期に逸散することから、押出発泡板の形状を早期に安定化させることができる。脂肪族アルコールは、発泡剤(a)および発泡剤(b)と併用することで、低見掛け密度(高発泡倍率)の押出発泡板を得ることに寄与できるものである。
炭素数1~5の脂肪族アルコールとしては、例えば、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール、n-アミルアルコール,sec-アミルアルコール,イソアミルアルコール、tert-アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、環境、人体への安全性の観点からエタノールを好適に用いることができる。
炭素数3~5の飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン(2-メチルプロパン)、ノルマルペンタン、イソペンタン(2-メチルブタン)、シクロブタン、ネオペンタン(2,2-ジメチルプロパン)、シクロペンタン等が挙げられる。また、これらを2種以上併用することもできる。これらの中でもイソブタンを好適に用いることができる。
発泡剤(a)のHFO-1224ydの他、炭素数3又は4のハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランスHFO-1234ze)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シスHFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)等を用いることができる。なお、これらのハイドロフルオロオレフィンには一部塩化物イオンで置換されたハイドロクロロフルオロオレフィンも含まれる。これらの発泡剤は単独でまたは2種以上を用いることもできる。
発泡剤(c)を用いる場合には、発泡剤(c)は、押出発泡板から早期に散逸し、得られた押出発泡板の寸法を早期に安定させるという観点から、水、二酸化炭素、塩化アルキル、炭素数1~5の脂肪族アルコールから選択される1種以上であることが好ましく、水、二酸化炭素、炭素数1~5の脂肪族アルコールから選択される1種以上であることがより好ましい。
<発泡剤の添加量>
物理発泡剤の総添加量は、基材樹脂1kgに対して0.8mol以上2mol以下である。物理発泡剤の添加量が少なすぎると、得られる押出発泡板の見掛け密度が大きくなり、所望する低見掛け密度の押出発泡板を得ることができない場合がある。一方で、物理発泡剤の添加量が多すぎると、見掛け密度が小さくなりすぎて、得られる押出発泡板の強度が低下して、建材用の断熱材として使用できなくなる場合や、ガススポットが多数発生し、得られる押出発泡板の外観が低下する場合がある。以上の理由から、物理発泡剤の総添加量は、1mol以上であることが好ましく、より好ましくは1.1mol以上であり、物理発泡剤の総添加量は、1.8mol以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mol以下である。
発泡剤(a)の添加量は、基材樹脂1kgに対して0.5mol以上1.1mol以下である。発泡剤(a)の添加量が少なすぎると、押出発泡板の熱伝導率を低く維持できないおそれがある。以上の観点から、発泡剤(a)の添加量は、基材樹脂1kgに対して0.6mol以上であることが好ましく、基材樹脂1kgに対して0.7mol以上であることがより好ましい。一方で、発泡剤(a)の添加量が多すぎると、ガススポットが多数発生し、得られる押出発泡板の外観が低下するおそれがある。以上の観点から、発泡剤(a)の添加量は、基材樹脂1kgに対して1.0mol以下であることが好ましく、基材樹脂1kgに対して0.9mol以下であることがより好ましい。
なお、発泡剤(a)の添加量が多い条件において、押出発泡板の製造が困難な場合、スクリューの直径に対するスクリューの軸方向長さの比が大きいスクリューや二軸スクリューなどの高混練タイプのスクリューを必要に応じて使用することにより押出発泡板を製造しやすくなる。
発泡剤(b)の添加量は、基材樹脂1kgに対して0.2mol以上である。発泡剤(b)の添加量が少なすぎると、表面平滑性の低下やガススポットの発生のおそれがある。以上の観点から、発泡剤(b)の添加量は、基材樹脂1kgに対して0.3mol以上であることが好ましく、基材樹脂1kgに対して0.4mol以上であることがより好ましい。一方で、押出発泡直後における成形時の着火抑制及び優れた製造安定性を維持する観点から、発泡剤(b)の添加量は、基材樹脂1kgに対して0.8mol以下であることが好ましく、基材樹脂1kgに対して0.7mol以下であることがより好ましく、基材樹脂1kgに対して0.6mol以下であることが更に好ましい。
物理発泡剤中における、発泡剤(a)の添加量と発泡剤(b)の添加量との合計割合は、70質量%以上である。製造安定性と長期間にわたる低熱伝導率とを維持する観点から、発泡剤(a)の添加量と発泡剤(b)の添加量との合計割合は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
なお、発泡剤(a)の添加量と発泡剤(b)の添加量との合計割合の上限は、特に限定されず、例えば、100質量%である。
発泡剤(a)の添加量と発泡剤(b)の添加量とのmol比(a:b)は、40:60~95:5であることが好ましい。押出発泡板の連続成形性を良好にする観点からは、50:50~90:10であることがより好ましく、60:40~80:20であることがさらに好ましい。
発泡剤(a)および発泡剤(b)に加えて、その他の発泡剤(c)として、水、二酸化炭素、塩化アルキル、炭素数1~5の脂肪族アルコール、炭素数3~5の飽和炭化水素およびHFO-1224yd以外の炭素数3又は4のハイドロフルオロオレフィンから選択される1種以上の発泡剤を添加する場合には、基材樹脂1kgに対して、それぞれ0.5mol以下が好ましく、0.3mol以下がより好ましく、0.2mol以下がさらに好ましい。
<無機輻射抑制粉体>
本発明の製造方法においては、赤外線の輻射による伝熱を抑制することで断熱性を向上させるために、発泡性樹脂溶融組成物に無機輻射抑制粉体を配合する。
無機輻射抑制粉体の添加量は、押出発泡板の製造安定性に影響を与えることなく、断熱性を良好にする観点からは、基材樹脂100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であり、1.1質量部以上7質量部以下であることが好ましく、1.2質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
無機輻射抑制粉体は、例えばグラファイトを含む。グラファイトとしては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、人造黒鉛、土状黒鉛等が挙げられ、主成分が鱗片状黒鉛であるものを用いることが好ましい。後述するように、グラファイトは、ポリスチレン系樹脂に高濃度で配合されたマスターバッチとして用いることが好ましい。マスターバッチを製造する際の作業性が良好であるとともに、得られる押出発泡板の断熱性向上効果が優れていることから、固定炭素分が90%以上のグラファイトが好ましい。押出発泡板の断熱性を更に高めるために、グラファイトとしては固定炭素分93%以上のものがより好ましく、95%以上のものが更に好ましい。なお、グラファイトの固定炭素分は、JIS M8511:2014記載の方法で測定した値をいう。
グラファイトの配合量は、基材樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上4質量部以下であることが好ましい。グラファイトの配合量が上記の範囲内であると、断熱性が向上し、所望する低熱伝導率の押出発泡板を得ることができる。以上の観点から、グラファイトの配合量は、押出発泡板の基材樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上3質量部以下であることがより好ましく、0.4質量部以上2.5質量部以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の製造方法においては、断熱性をさらに向上させるために、押出発泡板にグラファイト以外の成分を無機輻射抑制粉体として含有させてもよい。
グラファイト以外の成分としては、例えば、酸化チタン等の金属酸化物、アルミニウム等の金属、セラミック、カーボンブラック、赤外線遮蔽顔料、ハイドロタルサイト等から選択される1種又は2種以上を例示することができる。これらの各成分の配合量は、基材樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であることが好ましく、1質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
ここで、発泡剤としてHFO-1224ydを含むポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法において、無機輻射抑制粉体を添加すると、気泡が微細化して発泡性が低下するおそれや製造安定性が低下するおそれがあった。特に、押出発泡板を低熱伝導率化する目的でHFO-1224ydを多量に添加した場合にはその傾向が顕著であった。本発明においては、無機輻射抑制粉体を添加する構成において、HFO-1224ydからなる発泡剤(a)およびアルキル鎖の炭素数1~3のジアルキルエーテルからなる発泡剤(b)を上述した所定の割合で使用することで、無機輻射抑制粉体を添加しているにもかかわらず押出発泡板の表面性および製造安定性が良好であり、熱伝導率が低い押出発泡板を製造することができる。特に、無機輻射抑制粉体がグラファイトを含む場合において、押出発泡板の表面性および製造安定性が良好な押出発泡板をすることができる。
<その他の成分>
[1]難燃剤
本発明の製造方法により得られる押出発泡板は、主として建材用の断熱材として使用されるものであり、難燃剤を基材樹脂に配合することにより難燃性が付与される。
難燃剤は、特に限定されるものではないが、臭素系難燃剤が好ましい。臭素系難燃剤としては、臭素化ブタジエン-スチレン系共重合体等の臭素化ブタジエン系重合体、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)に代表される臭素化ビスフェノール化合物、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、モノ(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌレート、ジ(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌレートに代表される臭素化イソシアヌレート等が挙げられる。これら臭素系難燃剤の1種又は2種以上を混合して使用することができる。
臭素系難燃剤のほかに、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、シアヌル酸、ペンタブロモトルエン、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛等の無機化合物、トリフェニルホスフェートに代表されるリン酸エステル系、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、次亜リン酸塩等のリン系化合物等を併用することができる。
これら難燃剤の中でも、押出発泡板に高い難燃性を付与できることから、臭素化ブタジエン-スチレン系共重合体、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートの1種又は2種以上を含む難燃剤を使用することが好ましい。また、これらの中でも、高い難燃性が付与でき、かつ押出時にポリスチレン系樹脂を分解させにくく、また、低見掛け密度(高発泡倍率)で、さらに大断面積の場合であっても、安定して押出発泡板を得ることが容易となることから、臭素化ブタジエン-スチレン系共重合体を含む難燃剤、または、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)とを併用した難燃剤を使用することがより好ましい。
難燃剤の配合量は、押出発泡板に高い難燃性を付与できるとともに、押出発泡性の低下および機械的物性の低下を抑制することもできることから、基材樹脂100質量部に対して、例えば0.1質量部以上10質量部以下であり、好ましくは1質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上7質量部以下である。この範囲内であれば、難燃剤が発泡性を阻害することなく、JIS A9521:2022の附属書Cの試験方法に規定される「試験方法A」記載の押出法ポリスチレンフォーム断熱材を対象とする燃焼性規格のような高度な難燃性が得られる押出発泡板を得ることができる。
[2]難燃助剤
本発明の製造方法においては、押出発泡板の難燃性をさらに向上させることを目的として、難燃助剤を上記難燃剤と併用することができる。難燃助剤としては、例えば2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-エチル-1-ペンテン等のジフェニルアルカンやジフェニルアルケン、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン等のポリアルキル化芳香族化合物等から選択される1種又は2種以上を例示することができる。
難燃助剤の配合量は、基材樹脂100質量部に対して、例えば0.01質量部以上1質量部以下であり、好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下である。
本発明の方法においては、必要に応じて、基材樹脂に公知のその他の添加剤を適宜配合することができる。その他の添加剤としては、例えば、気泡調整剤、顔料または染料等の着色剤、熱安定剤、充填剤等の各種の添加剤を挙げることができる。その他の添加剤の合計配合量としては、基材樹脂100質量部に対して50質量部以下が好ましい。
[3]気泡調整剤
本発明の製造方法においては、基材樹脂に気泡調整剤を配合して、発泡性樹脂溶融組成物を形成することが好ましい。
気泡調整剤としては、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末から1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、気泡径の調整が容易であるとともに、難燃性を阻害することなく気泡径を小さくし易いタルクが好適であり、特に50%粒径(光透過遠心沈降法)が0.1~20μmの細かいタルクが好ましく、0.5~15μmの細かいタルクが好ましい。
気泡調整剤の添加量は、調整剤の種類、目的とする気泡径等によっても異なるが、気泡調整剤としてタルクを使用する場合、基材樹脂100質量部に対して、例えば0.02質量部以上7質量部以下であり、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上3重量部以下がより好ましい。
気泡調整剤としてタルクを含み、無機輻射抑制粉体としてグラファイトを含む場合においては、タルクの添加量に対するグラファイトの添加量の比(グラファイト/タルク)は、1以上70以下であることが好ましい。均一な気泡を形成させ、厚み均一性に優れた押出発泡板とする観点からは、タルクの添加量に対するグラファイトの添加量の比(グラファイト/タルク)は、3以上30以下であることがより好ましく、3以上10以下であることがさらに好ましい。上記タルクの添加量に対するグラファイトの添加量の比(グラファイト/タルク)の範囲を満足すると、例えば0.7mol以上のようなHFO-1224ydからなる発泡剤(a)を多量に添加した場合であっても厚み均一性に優れた押出発泡板とすることができる。
[4]熱安定剤
熱安定剤は、押出発泡板を製造する際や押出発泡板の端材等をリサイクルしてリペレット化する際などに、原料や端材等に配合することにより臭素系難燃剤の熱安定性を向上させることができる。熱安定剤としては、例えば、DIC製EPICLONシリーズ等のビスフェノール型エポキシ系化合物やノボラック型エポキシ系化合物、(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])等のヒンダードフェノール系化合物、(ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト)等のホスファイト系化合物から選択される1又は2以上の熱安定剤が挙げられる。なお、熱安定剤の配合量は、難燃剤の総量100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。
本発明の製造方法において、難燃剤やその他の添加剤を基材樹脂に配合する方法としては、所定割合の難燃剤やその他の添加剤を基材樹脂と共に押出機上流に設けられている供給部に供給し、押出機中にて混練する方法を採用することができる。その他、押出機途中に設けられた供給部より溶融ポリスチレン樹脂中に難燃剤やその他の添加剤を供給する方法も採用することができる。具体的には、難燃剤、その他の添加剤および基材樹脂をドライブレンドしたものを押出機に供給して溶融混練する方法、難燃剤、その他の添加剤および基材樹脂をニーダー等により混練した溶融混練物を押出機に供給する方法、あらかじめ高濃度の難燃剤やその他の添加剤をポリスチレン系樹脂に配合したマスターバッチを作製し、これを押出機に供給して基材樹脂と溶融混練する方法等を採用することができ、特に分散性の観点から難燃剤マスターバッチを作製し、押出機に供給する方法を採用することが好ましい。難燃剤マスターバッチの調整は、基材樹脂としてMFR0.5~30g/10分程度のポリスチレン系樹脂を使用して、マスターバッチ中に難燃剤が10~95質量%含有されるように調整することが好ましく、30~90質量%含有されるように調整することがより好ましく、50~85質量%含有されるように調整することが更に好ましい。
本発明の製造方法の成形工程においては、上述した通り、基材樹脂、無機輻射抑制粉体、難燃剤等の添加剤および物理発泡剤を溶融した発泡性樹脂溶融組成物を、大気圧下に押出し発泡させて成形具により板状に賦型することにより、ポリスチレン系樹脂押出発泡板を得ることができる。
<発泡板の物性>
次に、本発明の製造方法により得られるポリスチレン系樹脂押出発泡板について説明する。
[断面積および寸法]
本発明に係る押出発泡板は、板状である。押出発泡板の押出方向垂直断面積は、100cm以上であることが好ましく、200cm以上であることがより好ましい。押出発泡板の押出方向垂直断面積の上限は、例えば1500cmである。押出方向垂直断面積とは、押出発泡板の押出方向と直交する断面の面積をいう。なお、押出発泡板は、通常、所望のサイズよりも一回り以上大きなサイズの原板を作製し、原板を切削加工して、幅と長さ、場合によっては厚みを調整することにより製造される。
押出発泡板を断熱材として使用する場合には、押出発泡板の厚みは、10mm以上150mm以下が好ましく、15mm以上120mm以下がより好ましい。
押出発泡板の幅は、800mm以上であることが好ましく、より好ましくは900mm以上である。押出発泡板の幅の上限は、例えば1200mmである。
[見掛け密度]
押出発泡板の見掛け密度は、20~50kg/mであり、好ましくは30~45kg/mである。見掛け密度が以上の範囲内であると、十分な機械的強度を有するとともに、軽量性に優れ、例えば断熱材として好適に使用することができる。見掛け密度は、押出発泡板から試料を切り出して質量を測定し、当該質量を体積で割算することにより求めることができる。
[独立気泡率]
押出発泡板の独立気泡率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。独立気泡率が上記の範囲内であると、発泡剤(a)および発泡剤(b)が気泡中に留まりやすくなり、押出発泡板の高い断熱性能を長期に亘って維持することができる。また、機械的強度にも優れた押出発泡板とすることができる。
押出発泡板の独立気泡率は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用して測定(押出発泡板から25mm×25mm×20mmのサイズに切断された成形表皮を持たないカットサンプルをサンプルカップ内に収容して測定する。ただし、厚みが薄く、厚み方向に20mmのカットサンプルが切り出せない場合には、例えば、25mm×25mm×10mmのサイズのカットサンプルを2枚同時にサンプルカップ内に収容して測定すればよい。)された押出発泡板(カットサンプル)の真の体積Vxを用い、下記(1)式により独立気泡率S(%)を計算し、N=3の平均値で求める。
S(%)=(Vx-W/ρ)×100/(V-W/ρ)・・・(1)
Vx:カットサンプルの真の体積(cm)(押出発泡板のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡板を構成する樹脂の密度(g/cm
[熱伝導率]
(7日後)
押出発泡板における製造7日後における熱伝導率は、0.025W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.023W/m・K以下であり、さらに好ましくは0.021W/m・K以下である。
(100日後)
押出発泡板における製造100日後における熱伝導率は、0.027W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.026W/m・K以下であり、さらに好ましくは0.025W/m・K以下である。
(300日後)
押出発泡板における製造300日後における熱伝導率は、0.030W/m・K以下が好ましく、より好ましくは0.028W/m・K以下であり、さらに好ましくは0.026W/m・K以下である。
押出発泡板の熱伝導率は、JIS A1412-2:1999記載の熱流計法(試験体1枚・対称構成方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定することができる。具体的な測定方法については実施例で説明する。
押出発泡板の長期熱伝導率(100日後および300日後)は、JIS A1486:2014に準拠し、熱抵抗の長期変化促進試験の試験方法Aに記載の促進試験を行ったサンプルに対して測定される。この方法によれば、例えば、厚さ25mmの押出発泡板を厚さ10mmにスライスしたサンプルにより、製造後16日後に測定された熱伝導率は、押出発泡板の製造後約100日経過後の熱伝導率に相当し、製造後48日後に測定された熱伝導率は、押出発泡板の製造後約300日経過後の熱伝導率に相当する。
[平均気泡径]
押出発泡板の平均気泡径は、好ましくは65μm以上200μm以下であり、より好ましくは78μm以上190μm以下であり、さらに好ましくは85μm以上180μm以下である。平均気泡径が上記の範囲内にあることで、断熱性をさらに向上させるとともに、機械的強度をさらに良好にすることができる。
押出発泡板の平均気泡径は、押出発泡板を幅方向及び厚み方向に垂直となるように切断し、切断した断面の中央部における円相当平均気泡径から求められる。平均気泡径は、上記断面において、幅方向及び厚み方向の中央が中心となるように厚み方向1.5mm×幅方向1.5mmの範囲を指定した拡大写真を得、写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の気泡の面積を測定し、得られた個々の気泡の面積を気泡が円であると換算し、更にその円に換算した場合の直径を求め、それらの値を算術平均して求める。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1~9および比較例1~6において、以下に示す装置および原料を用いた。
内径115mmの高混練型の第1押出機と内径180mmの第2押出機を直列に連結し、第1押出機の終端付近に物理発泡剤注入口を設け、間隙1mm×幅440mmの横断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイを第2押出機の出口に連結した押出装置を用いた。また、第2押出機の樹脂出口には上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板が、略一定の間隔を隔てて水平に設置された成形具(ガイダー)を付設した。
(1)基材樹脂
ポリスチレン系樹脂(略称PS):DIC(株)製ポリスチレン「HP780AN」、溶融粘度(温度200℃、せん断速度100s-1)=1950Pa・s
(2)難燃剤
GR-134BG:[テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル):第一工業製薬「SR-130」]/[テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル):第一工業製薬「SR-720」]=60質量%/40質量%の混合難燃剤を含有する難燃剤マスターバッチ(第一工業製薬(株)製GR-134BG)
E3000:臭素化ブタジエン-スチレンブロック共重合体(ランクセス(株)製「Emerald innovation 3000」)
(3)気泡調整剤
タルク:(松村産業(株)製、製品名「ハイフィラー#12」、粒子径(d50)7.5μm)
(4)無機輻射抑制粉体
グラファイト:(レジノカラー工業株式会社社製、商品名:SBF-T-1683、鱗片状黒鉛粉末、平均粒径17μm 40%マスターバッチ)
酸化チタン:(テイカ(株)製「JR-405」、一次粒径(d50)=0.2μm)
(5)物理発泡剤
1-クロロ-2, 3,3,3-テトラフルオロプロペン(略称1224yd):ハネウェルジャパン社製
ジメチルエーテル(DME):三菱ガス化学社製
アルコール(エタノール/イソプロピルアルコール/1-プロパノール=90重量%/6重量%/4重量%):山一化学工業社製

イソブタン(略称Bu):三井化学社製
実施例1~9および比較例1~6は、以下の通り、製造した。
表1に示す基材樹脂、無機輻射抑制粉体および気泡調整剤と、難燃剤マスターバッチとを第1押出機に供給し、200℃まで加熱して混練し、第1押出機に設けられた物理発泡剤注入口から、表1に示す添加量で物理発泡剤を各発泡剤注入圧力で供給し、更に混練して発泡性樹脂溶融物を形成した。
次に、得られた発泡性樹脂溶融物を第2押出機に移送して樹脂温度を調整した後、吐出量400kg/hrでガイダー内に押出し、発泡させながらガイダー内を通過させて板状に成形(賦形)して発泡板の厚み30mmの原板を作製し、さらに、切削加工により原板の幅及び長さを調整すると共に、両面の成形スキンを均等に切削して、成形スキンを有しない直方体状のポリスチレン系樹脂発泡板(幅:910mm、長さ:1820mm、厚み:25mm、押出方向に直交する断面の面積:227.5cm)を製造した。
Figure 2024039320000001
実施例1~9および比較例1~6で得られた押出発泡板について、独立気泡率、見掛け密度、熱伝導率(7日後、100日後、300日後)、平均気泡率を以下の方法で測定した。そして、燃焼性、厚み均一性、表面性および連続形成性について、以下の通り、評価を行った。なお、独立気泡率と平均気泡径とについては、押出発泡板の発泡性を評価するための指標である。厚み均一性、表面性および連続成形性は、押出発泡板の製造安定性を把握するための評価である。
[見掛け密度]
押出発泡板の見掛け密度は、以下の通り求めた。得られた押出発泡板の幅方向の中央部および両端部付近から縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体の試料を各々切り出して質量を測定し、当該質量を体積で割算することにより夫々の試料の見掛け密度を求め、それらの算術平均値を見掛け密度とした。
[独立気泡率]
発泡板の独立気泡率は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、空気比較式比重計(東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定される押出発泡板の真の体積Vxを用いて、下記式(1)から求めた。
具体的には、押出発泡板の幅方向の中央部および幅方向両端部付近の計3箇所からカットサンプルを切り出して、各々のカットサンプルを測定試料とし、各々の測定試料について独立気泡率を測定し、3箇所の独立気泡率の算術平均値を求めた。なお、カットサンプルとして、押出発泡板から縦25mm×横25mm×厚み25mmの大きさに切断されたものを用いた。
S(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
式(1)中のVx、Va、W、ρは以下の通りである。
Vx:カットサンプルの真の体積(cm)(押出発泡板のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:押出発泡板を構成する樹脂の密度(g/cm
[製造7日後の熱伝導率]
製造直後の押出発泡板の幅方向の中央部から縦200mm×横200mm×厚み25mmの試験片を切り出し、該試験片を温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造7日後に、JIS A1412-2:1999記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて熱伝導率を測定した。
[製造100日後、300日後の熱伝導率]
製造100日後および300日後の熱伝導率は、JIS A1486:2014に準拠し、熱抵抗の長期変化促進試験の試験方法Aを行った押出発泡板に対して熱伝導率の測定を行って得られた値である。具体的には、製造直後の押出発泡板の幅方向の中央部から、縦200mm×横200mm×厚み25mmの直方体を切り出し、さらに両面側から均等に削ることにより縦200mm×横200mm×厚み10mmの試験片を切り出し、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造16日後(25mm厚みの押出発泡板の製造100日後に相当)および製造48日後(25mm厚みの押出発泡板の製造300日後に相当)の試験片を用いてJIS A1412-2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて熱伝導率を測定した。
[平均気泡径]
平均気泡径は、押出発泡板を幅方向及び厚み方向に垂直となるように切断し、切断した断面の中央部における円相当平均気泡径から求めた。平均気泡径は、上記断面において、幅方向及び厚み方向の中央が中心となるように厚み方向1.5mm×幅方向1.5mmの範囲を指定した拡大写真を得、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いることにより個々の気泡の面積を測定し、得られた個々の気泡の面積を気泡が円であると換算し、更にその円に換算した場合の直径を求め、それらの値を算術平均して求めた。
[燃焼性]
製造直後の押出発泡板を気温23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造4週間後に、押出発泡板から試験片を無作為に5個切り出して(N=5)、JIS A9521:2022の附属書Cの試験方法に規定される「試験方法A」に基づいて燃焼性を測定した。そして、以下の基準により難燃性を評価した。
◎:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒以内である。
×:5個の試験片の平均燃焼時間が3秒を超える。
[厚み均一性]
厚み均一性は、原板を幅方向及び厚み方向に垂直となるようにして切断した切断面について以下の基準により評価した。
◎:原板の厚みの変動(最大値-最小値)が3mm未満
〇:原板の厚みの変動(最大値-最小値)が3mm以上5mm未満
×:原板の厚みの変動(最大値-最小値)が5mm以上
[表面性]
原板と押出発泡板の上下面及び側面の表面性は、目視にて以下の基準により評価した。
◎:原板と押出発泡板の上下面及び側面が極めて良好であった
○:原板の上下面又は側面にざらつき,スポットが稀に発生するものの、押出発泡板の上下面及び側面は極めて良好であった
△:原板の上下面又は側面にざらつき,スポットが発生し、原板を切削しても押出発泡板の上下面又は側面にざらつき,スポットが稀に残存していた
×:原板の上下面又は側面にざらつき,スポットが多数発生し、原板を切削しても押出発泡板の上下面又は側面にざらつき,スポットが多数残存していた
[連続成形性]
連続成形性は、目視にて以下の基準により評価した。
◎:原板の幅変動が見られず、連続して安定して製造可能であった
〇:原板の幅変動がやや見られるが、連続して製造は可能であった
×:原板を成形することが困難で、連続して製造が困難であった
表1から把握される通り、比較例1~6では、良好な押出発泡板が得られなかった。なお、比較例1~5については、特に良好でなかったため、独立気泡率、見掛け密度、熱伝導率、平均気泡径、および、燃焼性(比較例4,5除く)については、評価を行わなかった。比較例1~6について、具体的な評価は、以下の通りである。
比較例1では、ジメチルエーテルを添加せず、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの添加量が1.1molより大きかったため、厚み均一性、表面性および連続成形性の全てが低かった。
比較例2では、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの含有量が0.5mol未満であったことで、相対的にジメチルエーテルの添加量が高くなり、その結果、厚み均一性および連続成形性が低下した。
比較例3では、ジメチルエーテルに代えて水およびアルコールを使用したことで、厚み均一性、表面性および連続成形性の全てが低くなった。
比較例4では、燃焼性や厚み均一性に問題はなかったものの、ジメチルエーテルの添加量が0.2mol未満であり、さらに、物理発泡剤中における1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとジメチルエーテルとの合計割合が70質量%未満であったため、表面性および連続成形性が低かった。
比較例5では、燃焼性や厚み均一性に問題はなかったものの、物理発泡剤中における1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとジメチルエーテルとの合計割合が70質量%未満であったため、表面性および連続成形性が低かった。
比較例6では、独立気泡率、見掛け密度、熱伝導率、平均気泡径、燃焼性、厚み均一性および連続成形性に問題はなかったものの、ジメチルエーテルの添加量が0.2mol未満であったため、表面性が低下した。
それに対して、実施例1~9は、熱伝導率も低く、発泡性(独立気泡率、平均気泡径)および製造安定性(厚み均一性、表面性および連続成形性)の全てが良好であった。さらに、実施例1~9は、燃焼性や見掛け密度も良好であった。

Claims (4)

  1. ポリスチレン系樹脂を主成分とする基材樹脂、無機輻射抑制粉体、難燃剤、物理発泡剤および気泡調整剤を混練してなる発泡性樹脂溶融組成物を押出し発泡させて成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20~50kg/mのポリスチレン系樹脂押出発泡板を製造する方法であって、
    前記無機輻射抑制粉体の添加量が前記基材樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であり、前記物理発泡剤の総添加量が基材樹脂1kgに対して0.8mol以上2mol以下であり、前記物理発泡剤が、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンからなる発泡剤(a)と、アルキル鎖の炭素数が1~3のジアルキルエーテルからなる発泡剤(b)とを含み、前記発泡剤(a)の添加量が基材樹脂1kgに対して0.5mol以上1.1mol以下であり、前記発泡剤(b)の添加量が基材樹脂1kgに対して0.2mol以上であり、前記物理発泡剤中における、前記発泡剤(a)の添加量と前記発泡剤(b)の添加量との合計割合が70質量%以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
  2. 前記発泡剤(a)の添加量と前記発泡剤(b)の添加量とのmol比(a:b)が50:50~90:10であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
  3. 前記無機輻射抑制粉体がグラファイトを含み、前記グラファイトの添加量が前記基材樹脂100質量部に対して0.3質量部以上3質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
  4. 前記気泡調整剤がタルクを含み、前記タルクの添加量に対する前記グラファイトの添加量の比が3以上30以下であることを特徴とする請求項3に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
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