JP2023171294A - 熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法 Download PDF

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Toshiyuki Hiyama
裕佑 笠原
Yusuke Kasahara
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Abstract

【課題】断熱性が良好であり、ガススポットの発生および収縮が抑制された熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法を提供すること。【解決手段】基材樹脂及び物理発泡剤を含む発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20kg/m3以上50kg/m3以下、押出方向垂直断面積100cm2以上の熱可塑性樹脂押出発泡板を製造する方法であって、前記基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群より選択される1以上の共重合体(A)、又は、前記共重合体(A)とポリスチレン系樹脂(B)との混合樹脂であり、前記基材樹脂中の前記共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が5質量%以上50質量%以下であり、前記物理発泡剤が、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含み、前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量が前記基材樹脂1kgに対して0.4mol以上1.8mol以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法に関し、詳しくは、建築物の壁、床、屋根等の断熱材として好適に使用可能な熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法に関するものである。
熱可塑性樹脂押出発泡板(以下、単に「押出発泡板」ともいう)は、優れた断熱性及び機械的強度を有することから建築用断熱材として広く使用されている。押出発泡板は、一般に押出機中で熱可塑性樹脂を加熱溶融した後、得られた溶融物に物理発泡剤を圧入、混練して得られる発泡性溶融樹脂混練物を、押出機先端に付設されたフラットダイ等から低圧域に押出して発泡させ、成形具により板状に成形することで製造されている。
近年、住宅、建築物等の省エネルギー化の要求が高まっており、断熱性に優れる押出発泡板がさらに求められている。断熱性に優れる押出発泡板を製造する手法の一つとして、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)や1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)等のハイドロフルオロオレフィン(以下、単に「HFO」ともいう)からなる物理発泡剤が用いられている。これらのHFOは、不燃性で、熱伝導率が低く高い断熱性を付与することが可能となる。さらに、オゾン層破壊係数や地球温暖化係数が非常に小さいため、環境に優しい発泡剤である。
HFOの中でも、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)は、他のHFOに比べて長期間に亘って押出発泡板の熱伝導率を低く維持させる効果(長期低熱伝導率性)に優れている。たとえば、特許文献1には、HFOとして、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)を用いて製造されたポリスチレンを含む熱可塑性ポリマー発泡体が開示されている。
特表2019-515112号公報
しかし、押出発泡板を製造する際に、熱伝導率をより低く維持させようとして、HFO-1336mzzの配合量を高めた場合には、押出発泡板に過度に大きな気泡として観察されるガススポットが発生して良好な押出発泡板を得ることができない問題があった。この問題は、特に、低密度かつ断面積の大きな押出発泡板を押出発泡により製造する場合に顕著であった。また、HFO-1336mzzの配合量を高めた場合には、基材樹脂によっては製造後の押出発泡板に収縮が生じて良好な押出発泡板を得ることができない問題があった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、断熱性が良好であり、ガススポットの発生および収縮が抑制された熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明によれば、以下に示す熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法が提供される。
[1]基材樹脂及び物理発泡剤を含む発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20kg/m以上50kg/m以下、押出方向垂直断面積100cm以上の熱可塑性樹脂押出発泡板を製造する方法であって、前記基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群より選択される1以上の共重合体(A)、又は、前記共重合体(A)とポリスチレン系樹脂(B)との混合樹脂であり、前記基材樹脂中の前記共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が5質量%以上50質量%以下であり、前記物理発泡剤が、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含み、前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量が前記基材樹脂1kgに対して0.4mol以上1.8mol以下である、熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
[2]前記[1]の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記基材樹脂中の前記共重合体(A)の含有量が50質量%以上であることを特徴とする。
[3]前記[1]又は[2]の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含み、前記基材樹脂中におけるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量が50質量%以上であることを特徴とする。
[4]前記[1]から[3]のいずれかに記載の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記基材樹脂がスチレン-アクリロニトリル共重合体を含み、前記基材樹脂中におけるスチレン-アクリロニトリル共重合体の含有量が50質量%以上であることを特徴とする。
[5]前記[1]から[4]のいずれかに記載の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、発泡性溶融樹脂組成物が前記基材樹脂100質量部に対してグラファイトを0.5質量部以上5.0質量部以下含有することを特徴とする。
[6]前記[1]から[5]のいずれかに記載の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記物理発泡剤の総添加量100mol%中における、前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量の割合が、30mol%以上であることを特徴とする。
[7]前記[1]から[6]のいずれかに記載の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記物理発泡剤が、水及び/又はアルコールを含み、前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量[mol/kg]に対する前記水及び/又はアルコールの添加量[mol/kg]の比率が0.3以上2以下であることを特徴とする。
[8]前記[1]から[7]のいずれかに記載の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量が前記基材樹脂1kgに対して0.5mol以上1.8mol以下であることを特徴とする。
[9]前記[1]から[8]のいずれかに記載の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記基材樹脂中の前記共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が10質量%以上40質量%以下であることを特徴とする。
[10]前記[1]から[9]のいずれかに記載の発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法において、前記熱可塑性樹脂押出発泡板の見掛け密度が20kg/m以上40kg/m以下である。
本発明の製造方法によれば、断熱性が良好であり、ガススポットの発生および収縮が抑制されたポリスチレン系樹脂発泡板が製造できる。
以下、本発明の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法について詳細に説明する。本発明の熱可塑性樹脂押出発泡板(以下、単に「押出発泡板」ともいう)の製造方法は、基材樹脂及び物理発泡剤を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含み、見掛け密度20kg/m以上50kg/m以下であり、押出方向垂直断面積100cm以上の熱可塑性樹脂押出発泡板を製造する方法である。
具体的には、例えば、基材樹脂に、難燃剤、更に気泡調整剤等の添加剤を加えて押出機に供給して加熱混練する。次に、物理発泡剤を押出機中に圧入して更に混練して発泡性樹脂組成物とし、当該発泡性樹脂組成物を高圧域から低圧域(通常は大気中)に押し出して発泡させる。そして、得られた発泡体を押出機のダイ出口に連結された賦形装置(ガイダー等)を用いて板状に賦形することにより、熱可塑性樹脂押出発泡板が製造される。賦形装置としては、例えば、上下一対のポリテトラフルオロエチレン製の板で構成される装置が用いられる。
<基材樹脂>
本発明の製造方法で用いられる基材樹脂は、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群より選択される1以上の共重合体(A)、又は、共重合体(A)とポリスチレン系樹脂(B)との混合樹脂である。すなわち、共重合体(A)は基材樹脂に必須の成分である。
基材樹脂としては以下の(1)-(6)の態様が例示される。
具体的には、(1):スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(2):スチレン-アクリロニトリル共重合体、(3):スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体とスチレン-アクリロニトリル共重合体との混合樹脂、(4):スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体とポリスチレン系樹脂との混合樹脂、(5):スチレン-アクリロニトリル共重合体とポリスチレン系樹脂との混合樹脂及び(6):スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体とスチレン-アクリロニトリル共重合体とポリスチレン系樹脂との混合樹脂が例示される。
[共重合体(A)]
共重合体(A)は、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群より選択される1以上の共重合体である。共重合体(A)は、後述するポリスチレン系樹脂と比べて物理発泡剤や空気の透過係数が小さい。そのため、基材樹脂として共重合体(A)を含むことにより、長期にわたって熱伝導率の小さい押出発泡板を得ることができる。
共重合体(A)におけるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、スチレンと(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルとの共重合体であり、具体的には、例えば、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸プロピル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸プロピル共重合体などが例示される。これらの共重合体の中でも、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体が好ましく、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体がより好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用することができる。また、スチレンと(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルとの共重合比が異なる2種以上を混合して使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」とを含む概念であり、これらの一方、または双方を意味する。
共重合体(A)におけるスチレン-アクリロニトリル共重合体は、スチレンとアクリロニトリルとの共重合体である。スチレン-アクリロニトリル共重合体としては、1種でもよいし、スチレンとアクリロニトリルとの共重合比が異なる2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の製造方法は、基材樹脂として共重合体(A)、又は、共重合体(A)とポリスチレン系樹脂(B)との混合樹脂を用いることにより、物理発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを後述する添加量(配合量)の範囲内において比較的多量に配合する場合であっても、ガススポットを抑制することができる。その結果、断熱性に優れるとともに、ガススポットが抑制された良好な押出発泡板を製造することができる。
基材樹脂中の共重合体(A)の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。基材樹脂中の共重合体(A)の含有量を上記の範囲内にすることで、ガススポットの発生をより容易に抑制することができる。かかる観点から、基材樹脂中の共重合体(A)の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
基材樹脂は、共重合体(A)として、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことが好ましい。この場合には、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量を増加させた際のガススポットをより確実に抑制することができる。上記の効果をさらに顕著にする観点から、共重合体(A)中におけるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。同様の観点から、基材樹脂中におけるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量は、例えば50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
また、得られる押出発泡板の難燃性及び耐熱性をより高める観点からは、共重合体(A)として、スチレン-アクリロニトリル共重合体含むことが好ましい。共重合体(A)として、スチレン-アクリロニトリル共重合体含む場合、共重合体(A)中におけるスチレン-アクリロニトリル共重合体の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。同様の観点から、基材樹脂中におけるスチレン-アクリロニトリル共重合体の含有量は、例えば50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
[ポリスチレン系樹脂(B)]
ポリスチレン系樹脂(B)は、スチレン成分を50質量%以上含む樹脂をいう。ポリスチレン系樹脂(B)としては、スチレン単独重合体であってもよく、スチレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。スチレンと他のモノマーとの共重合体中のスチレン成分単位の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。これらの中でもポリスチレン系樹脂(B)としては、ポリスチレン単独重合体が好ましい。ポリスチレン系樹脂(B)としては、1種でもよいし、2種以上の樹脂を混合して使用してもよい。ただし、ポリスチレン系樹脂(B)は、共重合体(A)を除く。
基材樹脂にポリスチレン系樹脂(B)を含有させる場合には、基材樹脂中のポリスチレン系樹脂(B)は、ガススポットの発生をより抑制しやすい観点から、50質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、基材樹脂中の共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量は、5質量%以上50質量%以下である。
基材樹脂中の共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が少なすぎると、物理発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを後述する添加量の範囲内において比較的多量に添加した場合には、ガススポットが発生し良好な押出発泡板が得られないおそれがある。かかる観点から、基材樹脂中の共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量は、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上である。
一方で、基材樹脂中の共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が多すぎると、著しい収縮が生じて良好な成形体を取得できないおそれがある。かかる観点から、基材樹脂中の共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体として(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が異なる2種以上を使用した場合には、基材樹脂中における各スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量(質量%)と、各スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量(質量%)とに応じて、基材樹脂全体における共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量を算出する。例えば、(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が60質量%であるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体40質量%と、(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が20質量%であるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体60質量%とで基材樹脂が構成される場合には、基材樹脂中の共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、40質量%×0.6+60質量%×0.2=36質量%である。
同様に、スチレン-アクリロニトリル共重合体としてアクリロニトリルの含有量が異なる2種以上を使用した場合には、基材樹脂中における各スチレン-アクリロニトリル共重合体の含有量(質量%)と、各スチレン-アクリロニトリル共重合体中の(メタ)アクリロニトリル成分の含有量(質量%)とに応じて、基材樹脂全体における共重合体(A)に由来するアクリロニトリル成分の含有量を算出する。
なお、(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量とは、(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との双方が共重合体(A)に含有される場合には、(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量とアクリロニトリル成分の含有量との合計量である。この場合には、基材樹脂中におけるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量(質量%)およびスチレン-アクリロニトリル共重合体の含有量(質量%)と、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量(質量%)およびスチレン-アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル成分の含有量(質量%)とに応じて、基材樹脂全体における(メタ)アクリル酸エステル成分およびアクリロニトリル成分の合計量を算出する。
スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量と、スチレン-アクリロニトリル共重合体中のアクリロニトリル成分の含有量とは、熱分解ガスクロマトグラフ分析等の公知の方法により求めることができる。
本発明に係る熱可塑樹脂押出発泡板には、本発明の目的および効果が達成される範囲内において、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の基材樹脂以外の他の樹脂やエラストマー等の他の重合体が含まれていてもよい。ただし、他の重合体の含有量は、基材樹脂100質量%に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、0(すなわち熱可塑樹脂押出発泡板を構成する重合体として基材樹脂のみを含むこと)が最も好ましい。
本発明の製造方法で用いられる基材樹脂の溶融粘度は、発泡性や成形性に優れることから、500~4000Pa・sであることが好ましく、1000~3700Pa・sであることがより好ましくは、1200~3000Pa・sであることがさらに好ましい。なお、本明細書において、溶融粘度は、JIS K7199:1999に基づき、温度200℃、せん断速度100sec-1の条件で測定した値である。
[物理発泡剤]
本発明で用いる物理発泡剤は、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)を含む。
物理発泡剤の総添加量は、基材樹脂1kgに対して、例えば0.8mol以上2.0mol以下であることが好ましい。所望される見掛け密度の押出発泡板をより容易に得る観点からは、物理発泡剤の総添加量は、基材樹脂1kgに対して、好ましくは0.9mol以上である。一方、発泡剤が押出発泡板から分離してガススポットが発生することをより容易に抑制する観点からは、物理発泡剤の総添加量は、基材樹脂1kgに対して、好ましくは1.5mol以下であり、より好ましくは1.3mol以下である。
ハイドロフルオロオレフィンの中でも1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)は、発泡体中に残存しやすい性質を有しており、長期間にわたり優れた低熱伝導率性(断熱性)を有する押出発泡板を製造することができる。また、不燃性であるため、押出発泡板製造時の静電気による着火等の危険性を低減させることができる。さらに、オゾン破壊係数が低く、地球温暖化係数も非常に小さく、環境に与える負担が小さい発泡剤である。1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、シス体であってもよく、トランス体であってもよい。
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量は、基材樹脂1kgに対して、0.4mol以上1.8mol以下である。1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量が少なすぎると断熱性の効果が十分に得られないおそれがある。かかる観点から、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量は、基材樹脂1kgに対して、好ましくは0.5mol以上であり、より好ましくは0.6mol以上である。一方、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量が多すぎると、ガススポットの発生を抑制できないおそれがある。また、得られる押出発泡板の表面状態が悪化するおそれがある。かかる観点から、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量は、基材樹脂1kgに対して、好ましくは1.5mol以下であり、より好ましくは1.2mol以下であり、さらに好ましくは1.1mol以下である。
本発明の製造方法によれば、上記したように、基材樹脂として前記特定の樹脂を用いるとともに、基材樹脂中の前記共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が所定範囲内に調整されている。したがって、物理発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを基材樹脂1kgに対して、たとえば0.5mol以上と多量に添加した場合であっても、押出発泡板の成形性を良好なものとすることができる。そのため、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを比較的多量に添加することができ、断熱性に優れる押出発泡板を安定して得ることができる。
物理発泡剤の総添加量100mol%中における、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量の割合は、断熱性を良好にする観点から、例えば30mol%以上であり、40mol%以上であることが好ましく、50mol%以上であることがさらに好ましい。物理発泡剤の総添加量100mol%中における、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量の上限は、100mol%であってもよいが、押出発泡板の表面状態を良好にする観点からは90mol%以下が好ましい。
物理発泡剤には、本発明の目的および効果を阻害しない範囲において、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン以外のその他の物理発泡剤を添加することができる。
その他の物理発泡剤としては、水、アルコール、炭素数1~3のジアルキルエーテル(例えばジメチルエーテルやジエチルエーテル、)、炭素数3~5の飽和炭化水素(例えばイソブタンやノルマルブタン)、二酸化炭素、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン以外のハイドロフルオロオレフィンなどが例示される。押出発泡板の表面状態をより良好にする観点からは、これらの中でも水及び/又はアルコールを使用することが好ましく、水およびアルコールの双方を使用することがさらに好ましい。水及びアルコールを用いる場合、両者の配合割合に制限はないが、水:アルコール=40mol%:60mol%~60mol%:40mol%が好ましい。また、水及び/又はアルコールの添加量は、基材樹脂1kgに対して、好ましくは0.1mol以上であり、より好ましくは0.2mol以上であり、また、その上限は概ね0.8molである。
アルコールとしては、炭素数1~5の脂肪族アルコールが好ましい。例えば、メチルアルコール(メタノール)、エチルアルコール(エタノール)、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、アリールアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール、n-アミルアルコール,sec-アミルアルコール,イソアミルアルコール、tert-アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。押出発泡板の表面状態をより良好にする観点からは、これらの中でもエタノールを好適に用いることができる。
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量に対する水及び/又はアルコールの添加量の比率((水及び/又はアルコール)/(1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン))は、0.3以上2以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下が好ましい。この場合には、得られる押出発泡板の表面状態がより良好になるという効果が得られる。なお、水及び/又はアルコールの添加量とは、水およびアルコールの双方を用いる場合には、水の添加量とアルコールの添加量との合計量である。
<その他の成分>
[輻射抑制剤]
本発明の製造方法においては、断熱性を向上させるために、発泡性樹脂組成物に輻射抑制剤としてグラファイトを配合することができる。本発明の製造方法によれば、上記したように、特定の樹脂を基材樹脂とし、物理発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを用いて押出発泡板を製造する。ここで、基材樹脂として前記所定の共重合体(A)を含むことにより、輻射抑制剤としてグラファイトを配合することによる断熱性向上効果が、たとえばポリスチレン系樹脂を単独で基材樹脂とした場合と比較してより一層発揮されやすいという効果を奏する。
グラファイトとしては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、人造黒鉛、土状黒鉛等が挙げられ、主成分が鱗片状黒鉛であるものを用いることが好ましい。グラファイトは、ポリスチレン系樹脂に高濃度で配合されたマスターバッチとして添加することが好ましい。マスターバッチを製造する際の作業性が良好であるとともに、得られる押出発泡板の断熱性向上効果が優れていることから、固定炭素分が80%以上のグラファイトが好ましい。また、押出発泡板の断熱性を更に高めるために、固定炭素分90%以上のものがより好ましく、95%以上のものが更に好ましい。前記固定炭素分の上限は概ね100%である。なお、グラファイトの固定炭素分は、JIS M8511:2014に準拠した方法で測定した値をいう。
グラファイトを配合する場合、グラファイトの添加量は、基材樹脂100質量部に対して、例えば0.5質量部以上5.0質量部以下である。グラファイトの添加量が上記の範囲内であると、グラファイトによる輻射抑制効果をより発揮させやすい。また、押出発泡板の見掛け密度が過度に低下することや、表面状態が悪化することを抑制することができる。以上の効果をより確実に発揮にする観点から、グラファイトの添加量は基材樹脂100質量部に対して1.0質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。一方、グラファイトの添加量の上限は、基材樹脂100質量部に対して4質量部であることがより好ましく、3質量部であることがさらに好ましい。
また、本発明の製造方法においては、断熱性をさらに向上させるために、押出発泡板にグラファイト以外の輻射抑制剤を含有させてもよい。グラファイト以外の輻射抑制剤としては、例えば、酸化チタン等の金属酸化物、アルミニウム等の金属、セラミック、カーボンブラック、黒鉛、赤外線遮蔽顔料、ハイドロタルサイト等から選択される1種又は2種以上を例示することができる。これらの中でも酸化チタンを好適に用いることができる。グラファイト以外の輻射抑制剤の添加量は、基材樹脂100質量部に対して、例えば0.5~5質量部であり、1~4質量部であることが好ましい。
[難燃剤]
本発明の製造方法により得られる押出発泡板は、主として建材用の断熱材として使用されるものであり、難燃剤を前記基材樹脂に配合することにより難燃性が付与される。本発明で用いる難燃剤は特に限定されるものではないが、臭素系難燃剤を用いることが好ましい。該臭素系難燃剤としては、例えば、臭素化ブタジエン-スチレン系共重合体等の臭素化ブタジエン系重合体、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-S-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-F-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)に代表される臭素化ビスフェノール化合物、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、モノ(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌレート、ジ(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4-トリブロモブチル)イソシアヌレートに代表される臭素化イソシアヌレート等を例示することができる。また、これら臭素系難燃剤の1種又は2種以上を混合して使用することができる。
また、これら臭素系難燃剤のほかに、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェート、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、硫酸アンモニウム、スズ酸亜鉛、シアヌル酸、ペンタブロモトルエン、イソシアヌル酸、トリアリルイソシアヌレート、メラミンシアヌレート、メラミン、メラム、メレム等の窒素含有環状化合物、シリコーン系化合物、酸化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫化亜鉛等の無機化合物、トリフェニルホスフェートに代表されるリン酸エステル系、赤リン系、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、次亜リン酸塩等のリン系化合物等を併用することができる。
これら難燃剤の中でも、高い難燃性が付与でき、かつ押出時にポリスチレン系樹脂を分解させにくく、また、低見掛け密度(高発泡倍率)で、さらに大断面積の場合であっても、安定して押出発泡板を得ることが容易となることから、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)とを併用した難燃剤、又は臭素化ブタジエン-スチレン系共重合体を含む難燃剤を使用することがより好ましい。
難燃剤の添加量は、押出発泡板に高度な難燃性を付与できるとともに、押出発泡性の低下及び機械的物性の低下を抑制することもできることから、基材樹脂100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは1~9質量部であり、さらに好ましくは1.5~7質量部である。この範囲内であれば、難燃剤が発泡性を阻害することなく、JIS A9521:2017の燃焼性試験方法に規定される「試験方法A」記載の押出法ポリスチレンフォーム断熱材を対象とする燃焼性規格のような高度な難燃性が得られる押出発泡板を得ることができる。
[難燃助剤]
また、本発明の方法においては、押出発泡板の難燃性をさらに向上させることを目的として、難燃助剤を前記難燃剤と併用することができる。難燃助剤としては、例えば2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-エチル-1-ペンテン等のジフェニルアルカンやジフェニルアルケン、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン等のポリアルキル化芳香族化合物等から選択される1種又は2種以上を例示することができる。難燃助剤の添加量は、基材樹脂100質量部に対して、例えば0.01~1質量部であり、0.05~0.5質量部であることが好ましい。
また、本発明の方法においては、必要に応じて、基材樹脂に公知のその他の添加剤を適宜配合することができる。その他の添加剤としては、例えば、気泡調整剤、顔料、染料等の着色剤、熱安定剤、充填剤等各種の添加剤を挙げることができる。
[気泡調整剤]
本発明の製造方法においては、基材樹脂に気泡調整剤を配合して、発泡性樹脂組成物を形成することが好ましい。気泡調整剤としてはタルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物粉末を用いることができる。なかでも気泡径の調整が容易であるとともに、難燃性を阻害することなく気泡径を小さくし易いタルクが好適であり、特に50%粒径(光透過遠心沈降法)が0.1~20μmの細かいタルクが好ましく、0.5~15μmの細かいタルクが好ましい。気泡調整剤の添加量は、調整剤の種類、目的とする気泡径等によっても異なるが、気泡調整剤としてタルクを使用する場合、基材樹脂100質量部当たり0.1~7質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましく、0.3~3質量部が更に好ましい。
[熱安定剤]
熱安定剤は、押出発泡板を製造する際や押出発泡板の端材等をリサイクルしてリペレット化する際などに、原料や端材等に配合することにより前記臭素系難燃剤の熱安定性を向上させることができる。該熱安定剤としては、例えば、DIC社製EPICLONシリーズ等のビスフェノール型エポキシ系化合物やノボラック型エポキシ系化合物、(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])等のヒンダードフェノール系化合物、(ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト)等のホスファイト系化合物から選択される1又は2以上の熱安定剤が挙げられる。なお、熱安定剤の添加量は、難燃剤の総量100質量部に対して、0.1~40質量部であることが好ましい。
本発明の製造方法において、難燃剤やその他の添加剤の基材樹脂への配合方法としては、所定割合の難燃剤やその他の添加剤を基材樹脂と共に押出機上流に設けられている供給部に供給し、押出機中にて混練する方法を採用することができる。その他、押出機途中に設けられた供給部より溶融樹脂中に難燃剤やその他の添加剤を供給する方法も採用することができる。具体的には、難燃剤、その他の添加剤及び基材樹脂をドライブレンドしたものを押出機に供給して溶融混練する方法、難燃剤、その他の添加剤及び基材樹脂をニーダー等により混練した溶融混練物を押出機に供給する方法、あらかじめ高濃度の難燃剤やその他の添加剤を基材樹脂に配合したマスターバッチを作製し、これを押出機に供給して基材樹脂と溶融混練する方法等を採用することができる。特に分散性の観点から難燃剤マスターバッチを作製し、押出機に供給する方法を採用することが好ましい。難燃剤マスターバッチの調整は、基材樹脂として200℃、荷重5kgにおけるメルトフローレイトが0.5~30g/10分程度のポリスチレン系樹脂を使用して、マスターバッチ中に難燃剤が10~95質量%含有されるように調整することが好ましく、30~90質量%含有されるように調整することがより好ましく、50~85質量%含有されるように調整することが更に好ましい。
<押出発泡板の物性>
次に、本発明の製造方法により得られる熱可塑性樹脂押出発泡板について説明する。
[見掛け密度]
本発明の押出発泡板の見掛け密度は、例えば20kg/m以上50kg/m以下であり、好ましくは20kg/m以上40kg/m以下である。見掛け密度が前記範囲であると、十分な機械的強度を有するとともに、軽量性に優れた断熱材として好適に使用することができる。
見掛け密度の測定は、JIS K6767(1999年)に準拠して行なった。各押出発泡板の幅方向中央部及び幅方向両端部付近の計3箇所から縦50mm×横50mm×厚み50mmの直方体のサンプルを切り出して各々のサンプルについて見掛け密度を測定し、3箇所の測定値の相加平均値を見掛け密度とした。
[独立気泡率]
押出発泡板の独立気泡率は、例えば85%以上であり、90%以上であることが好ましく、93%以上であることが好ましい。独立気泡率がこの範囲内であれば、発泡剤が気泡中に留まりやすくなり、押出発泡板の高い断熱性能を長期に亘って維持することができる。
本明細書における押出発泡板の独立気泡率は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、東芝ベックマン株式会社の空気比較式比重計930型を使用して測定(押出発泡板から25mm×25mm×20mmのサイズに切断された成形表皮を持たないカットサンプルをサンプルカップ内に収容して測定する。ただし、厚みが薄く、厚み方向に20mmのカットサンプルが切り出せない場合には、例えば、25mm×25mm×10mmのサイズのカットサンプルを2枚同時にサンプルカップ内に収容して測定すればよい。)された押出発泡板(カットサンプル)の真の体積Vxを用い、下記の式(1)により独立気泡率S(%)を計算し、N=3の平均値で求める。
S(%)=(Vx-W/ρ)×100/(V-W/ρ)・・・(1)
Vx:前記方法で測定されたカットサンプルの真の体積(cm)(押出発泡板のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全質量(g)
ρ:押出発泡板を構成する樹脂の密度(g/cm
[厚み方向平均気泡径]
押出発泡板の厚み方向の平均気泡径は、好ましくは50~200μmであり、より好ましくは70~170μmであり、さらに好ましくは80~150μmである。平均気泡径が前記範囲内にあることにより、より一層高い断熱性を有するとともに、より優れた機械的強度を有する押出発泡板となる。
前記厚み方向の平均気泡径の測定方法は次の通りである。厚み方向の平均気泡径は、押出発泡板の幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計3箇所において、写真中のセル数が200から500個程度になるように拡大倍率を50倍から200倍程度の範囲で調整した拡大写真を得て、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-prоを用いて個々の気泡の厚み方向の最大径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めることができる。
[気泡変形率]
更に押出発泡板においては、気泡変形率が0.7~1.5であることが好ましい。気泡変形率とは、前記測定方法により求められた厚み方向の平均気泡径を、厚み方向の平均気泡径と同様に、気泡の拡大写真について、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-prоを用いて個々の気泡の幅方向の最大径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより幅方向の平均気泡径を求め、厚み方向の平均気泡径を幅方向の平均気泡径で除すことにより算出される値であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が前記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ、より高い断熱性を有する押出発泡板となる。また、押出発泡板の収縮がより抑制されやすく、寸法安定性により優れる押出発泡板となる。気泡変形率の下限は、押出発泡板の寸法安定性の観点から、0.8であることがより好ましい。また、該気泡変形率の上限は、断熱性向上効果の観点から、1.3であることがより好ましく、1.2であることがさらに好ましい。
[1日後熱伝導率]
本発明の押出発泡板においては、製造1日後における熱伝導率は、例えば0.024W/m・K以下であり、0.023W/(m・K)以下であることが好ましく、W/(m・K)以下であることがより好ましく、0.022W/(m・K)以下であることがさらに好ましく、0.021W/(m・K)以下であることが特に好ましい。
[1000日後熱伝導率]
また、製造1000日後における熱伝導率は、例えば0.028W/m・K以下であり、0.027W/m・K以下が好ましく、0.026W/m・K以下がより好ましい。なお、押出発泡板が安定した長期断熱性を発揮するためには、製造後1000日経過後の熱伝導率と製造後1日経過後の熱伝導率との差は小さいほど好ましい。
熱伝導率は、製造直後の押出発泡板から縦200mm×横200mm×厚み任意の表皮が存在しない試験片を切り出し、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で保存した試験片について、JIS A1412-2:1999記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定される。
なお、製造後1000日経過後の熱伝導率は、JIS A1486:2014に準拠し、促進試験を行ったサンプルを用いて測定する。この方法によれば、例えば、厚さ50mmの押出発泡板を厚さ10mmにスライスしたサンプルにより、製造後40日経過後に測定された熱伝導率は、押出発泡板の製造後約1000日経過後の熱伝導率に相当する。
[断面積、寸法等]
本発明の押出発泡板は、板状であり、その押出方向垂直断面積が100cm以上であり、200cm以上であることが好ましく、300cm以上であることがより好ましく、400cm以上であることがさらに好ましい。その断面積の上限は概ね1500cmである。なお、本明細書において押出方向垂直断面積とは、押出発泡板の押出方向と直交する断面の面積をいう。
一般に、押出発泡板の製造においては、見掛け密度が小さく、断面積が大きいほど発泡、成形が難しくなる傾向がある。本発明の製造方法によれば、製造安定性に優れるため厚みや幅が大きく、断面積が大きい押出発泡板を製造する場合であっても、外観が良好な押出発泡板を安定して製造することができる。発泡状態が良好で表面平滑性に優れる押出発泡板は、厚み方向の表面を切削せずに成形スキン付きの押出発泡板としても好適に用いることができる。
断熱材として使用する押出発泡板の場合、その厚みは20mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることがさらに好ましい。一方、厚みの上限は、概ね150mm程度である。
また、幅は800mm以上であることが好ましく、より好ましくは900mm以上である。その上限は、概ね1200mmである。一般に、幅の広い押出発泡板を製造する場合には、得られる押出発泡板の気泡の異方性が高くなりやすいためか、押出発泡板の収縮がより生じやすい傾向がある。本発明の製造方法によれば、製造安定性に優れるため、幅がたとえば上記範囲内にあるような広幅の押出発泡板を製造する場合であっても、安定して製造することができる。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例において、以下に示す押出装置及び原料を用いた。
[押出装置]
内径180mmの第1押出機と内径225mmの第2押出機とを直列に連結し、第1押出機の終端付近に物理発泡剤の注入口を設け、第2押出機の出口に間隙2.5mm×幅400mmの横断面が長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイを連結した押出装置を用いた。フラットダイの樹脂出口には上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂板からなる賦形装置(ガイダー)を上下の該樹脂板が平行となるように付設した。
<1>基材樹脂
表1に使用した基材樹脂の詳細を示す。表1における熱可塑性樹脂の溶融粘度は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを使用して、以下の方法により測定した。シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーの先端に穴径1.0mm、長さ10.0mmのキャピラリーを取り付け、シリンダー及びキャピラリーを200℃に昇温した後、シリンダー内に測定試料(樹脂ペレット)を充填し、4分間の予備加熱にて十分に溶融させ、剪断速度100sec-1の条件にて樹脂の溶融粘度を測定した。
Figure 2023171294000001
<2>難燃剤
臭素化ブタジエン-スチレンブロック共重合体(ランクセス(株)製「Emerald innovation 3000」)
<3>気泡調整剤
タルク(松村産業(株)製、製品名「ハイフィラー#12」、粒子径(d50)7.5μm)
<4>輻射抑制剤
グラファイト(日本黒鉛工業(株)製「CP-N」(鱗片状黒鉛)、一次粒径(d50)=13.5μm)、固定炭素分99%
<5>物理発泡剤
シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz):三井・ケマーズフロロプロダクツ社製
トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze):ハネウェル社製
イソブタン(i―Bu)

エタノール(EtOH)
[実施例1~16、比較例1~6]
表1~表5に示す種類、量の基材樹脂、難燃剤、気泡調整剤を第1押出機に供給し、200℃まで加熱して混練し、第1押出機に設けられた物理発泡剤注入口から、表1~表5に示す種類、量の物理発泡剤を供給し、更に混練して発泡性樹脂溶融物を形成した。次に、得られた発泡性樹脂溶融物を第2押出機に移送して樹脂温度を調整した後、吐出量700kg/hrでガイダー内に押出し、発泡させながらガイダー内を通過させて板状に成形(賦形)して押出発泡板の厚み55mmの原板を得た。その後、原板の両面の成形スキンを均等に切削して、板状の押出発泡板(幅:910mm、長さ:2000mm、厚み:50mm、押出方向に直交する断面の面積:455cm)を製造した。
[参考例1,2]
また、参考例1として、基材樹脂をポリスチレン(PS)100質量%とした以外は実施例4と同様の方法により押出発泡板を製造した。また、参考例2として、輻射抑制剤としてグラファイトを1.76質量部配合した以外は参考例1と同様の方法により押出発泡板を製造した。
参考例1により得られた押出発泡板の熱伝導率は、0.0213W/m・K(1日後)、0.0260W/m・K(1000日後)であった。また、参考例2により得られた押出発泡板の熱伝導率は、0.0211W/m・K(1日後)、0.0254W/m・K(1000日後)であった。参考例1の押出発泡板の熱伝導率の値から参考例2の熱伝導率の値を引いた値は、それぞれ0.00019W/m・K(1日後)、0.00062W/m・K(1000日後)であった。
Figure 2023171294000002
Figure 2023171294000003
Figure 2023171294000004
実施例および比較例の条件で得られた押出発泡板について見掛け密度、発泡倍率、独立気泡率、厚み方向平均気泡径、気泡変形率、熱伝導率(1日後及び1000日後)を以下の方法で測定した。そして、表面状態、ガススポットおよび収縮について以下の基準で評価した。なお、本明細書において、表面状態、ガススポットおよび収縮の評価をまとめて成形性ということがある。
[見掛け密度]
見掛け密度の測定は、JIS K6767(1999年)に準拠して行なった。各押出発泡板の幅方向中央部及び幅方向両端部付近の計3箇所から縦50mm×横50mm×厚み50mmの直方体のサンプルを切り出して各サンプルについて見掛け密度を測定し、3箇所の測定値の相加平均値を見掛け密度とした。
[発泡倍率]
押出発泡板の発泡倍率は、基材樹脂の密度[kg/m]を、押出発泡板の見掛け密度[kg/m]で除することにより求めた。
[独立気泡率]
押出発泡板の独立気泡率は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、空気比較式比重計(東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定される押出発泡板の真の体積Vxを用いて、上述した式(1)から求めた。
[厚み方向平均気泡径]
厚み方向平均気泡径を次の方法で求めた。得られた押出発泡板の幅方向垂直断面の中央部及び両端部付近の計3箇所において、拡大倍率を100倍に調整した拡大写真を得て、各々の写真上において、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-proを用いて個々の気泡の厚み方向の最大径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより求めた。
[気泡変形率]
気泡変形率は、前記厚み方向気泡径の測定方法と同様に、気泡の拡大写真について、ナノシステム株式会社製の画像処理ソフトNS2K-prоを用いて個々の気泡の幅方向の最大径を計測し、それらの値を各々算術平均することにより幅方向の平均気泡径を求め、厚み方向の平均気泡径を幅方向の平均気泡径で除することにより求めた。
[熱伝導率:製造1日後]
製造直後の押出発泡板の幅方向の中央部から縦200mm×横200mm×厚み10mmの試験片を切り出し、該試験片を温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造1日後に、JIS A1412-2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて各々の熱伝導率を測定した。
[熱伝導率:製造1000日後]
製造1000日後の熱伝導率は、JIS A1486:2014に準拠し、熱抵抗の長期変化促進試験の試験方法Aを行った押出発泡板に対して熱伝導率の測定を行って得られた値である。具体的には、製造直後の押出発泡板の幅方向の中央部から、縦200mm×横200mm×厚み10mmの試験片を切り出し、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に保管し、製造40日後(50mm厚みの押出発泡板の製造1000日後に相当)の試験片を用いてJIS A1412-2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて熱伝導率を測定した。
[グラファイトの配合効果]
表3に示す実施例12~15は、輻射抑制剤としてグラファイトを配合した例である。グラファイトを配合することによる熱伝導率の低下の程度を見積もるために、それぞれの例において得られた押出発泡板の熱伝導率(1日後)、熱伝導率(1000日後)の値を、グラファイトを配合しないこと以外は同様の条件により製造された実施例において得られた押出発泡板の熱伝導率(1日後)、熱伝導率(1000日後)の値からそれぞれ引いた値を表3に示した。この値が大きいほど、グラファイトを配合することによる熱伝導率の低下効果が大きいことを意味する。なお、実施例12は実施例4(グラファイトなし)に対応し、実施例13は実施例1(グラファイトなし)に対応し、実施例14は実施例9(グラファイトなし)に対応し、実施例15は実施例10(グラファイトなし)に対応する。
[表面状態]
得られた原板の表面を目視にて観察し、以下の基準により評価した。
◎:原板の表面にざらつきや波模様などが全く見られない
○:原板の表面にざらつきや波模様などがほとんど見られない
△:原板の表面にざらつきや波模様などが見られる
×:原板の表面にざらつきや波模様が多数見られる
なお、波模様は押出発泡板の表面に押出方向に沿って形成される。
[ガススポット]
得られた原板の表面を目視にて観察し、ガススポット(押出発泡時に生じた発泡剤の分離による押出発泡板表面及び押出発泡板の断面に見られる直径2mm以上の過度に大きな気泡)を以下の基準により評価した。
◎:原板の表面及び押出方向垂直断面にガススポットが全く見られない
○:原板の表面及び押出方向垂直断面にガススポットがほとんど見られない
△:原板の表面及び押出方向垂直断面にガススポットが見られる
×:原板の表面及び押出方向垂直断面にガススポットが多数見られる
[収縮]
得られた押出発泡板を23℃の環境下で12時間静置した。その後、静置後の押出発泡板の各方向の寸法を計測し、各方向(VD、MD、TD)の静置前の押出発泡板の寸法に対する変化率を算出し、その値をもとに以下の基準で評価した。VDは厚み方向であり、MDは押出方向であり、TDは幅方向である。寸法変化率は、(静置前の寸法-静置後の寸法)/(静置前の寸法)×100で求められる値である。
◎:VD、MD、TDのいずれの方向に対しても寸法変化率が1%未満
○:VD、MD、TDの各方向における寸法変化率のうち最大となる値が1%以上5%未満
×:VD、MD、TDの各方向における寸法変化率のうち最大となる値が5%以上
本発明の条件を充足する実施例1~16は、熱伝導率(1日後及び1000日後)における熱伝導率が低く、長期間にわたり優れた断熱性を示すことが確認できた。さらに、実施例1~16では、成形性の指標である表面状態、ガススポットおよび収縮の全てについて良好(「〇」以上)であることも確認できた。
また、所定の樹脂を基材樹脂とした実施例12及び実施例14において示される、グラファイトなしとの熱伝導率の差が、ポリスチレンを単独で基材樹脂とした参考例において示される、参考例1の押出発泡板の熱伝導率の値から参考例2の押出発泡板の熱伝導率の値を引いた値よりも顕著に大きな値を示していた。これは、グラファイトによる断熱性向上効果が、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とした場合と比較して顕著に発揮されやすいということを示している。この理由は明らかではないが、上記所定の樹脂を基材樹脂とし、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを用いて押出発泡板を製造することにより、グラファイトが配合された場合であっても、良好な発泡性、成形性を示し、見掛け密度が低く維持されやすいことなどが考えられる。
実施例2は、物理発泡剤としてHFO-1336mzzに加えて水及びエタノールを用いた例である。一方で、実施例3は、物理発泡剤としてHFO-1336mzzのみを使用した例である。実施例2と実施例3との比較から、物理発泡剤としてHFO-1336mzzに加えて所定以上の水及び/又はアルコールを配合すると、HFO-1336mzz単独で使用した場合よりも表面状態がさらに良好になることが把握できる。
実施例1および実施例6と、実施例3および実施例7とは、基材樹脂中の(メタ)アクリル酸成分の含有割合を相違させた例である。実施例1および実施例6の比較と、実施例3および実施例7の比較とから、基材樹脂中の共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が40質量%以下であると、収縮がさらに抑制できることが把握できる。
実施例1は、基材樹脂としてスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体単独で使用した例である。一方で、実施例8は、基材樹脂としてスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に加えてポリスチレン系樹脂を使用した例示である。実施例1と実施例8との比較から、共重合体(A)の含有量が50質量%以上であると、ガススポットの発生がより確実に抑制できることが把握できる。
また、実施例1はスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を単体で基材樹脂とした例であり、実施例10はスチレン-アクリロニトリル共重合体を単体で基材樹脂とした例である。実施例1と実施例10との比較から、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を基材樹脂とすることにより、スチレン-アクリロニトリル共重合体を基材樹脂とした場合よりもガススポットの発生をより確実に抑制できることが確認できた。また、実施例4と実施例9との対比を併せて考慮すると、この効果は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量がより多い場合に特に有効であった。
比較例1および比較例2は、共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が本発明の範囲外である(少なすぎる)例である。比較例1および比較例2では、ガススポットが発生してしまうことが把握できる。
比較例3および比較例4は、共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が本発明の条件の範囲外である(多すぎる)例である。比較例3および比較例4では、収縮が発生してしまうことが把握できる。
比較例5は、物理発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)に代えて1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を使用した例である。比較例5では、成形性が著しく悪化し、良好な成形体を得ること自体が不可能であった。
比較例6は、物理発泡剤としての1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)の添加量が本発明の条件の範囲外である(多すぎる)例である。比較例6では、樹脂から発泡剤が著しく分離し、成形すること自体が不可能であった。
以上の説明から理解される通り、本発明に係る熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法によれば、断熱性が良好であり、ガススポットの発生および収縮が抑制された熱可塑性樹脂押出発泡板が製造できる。なお、本発明に係る熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法は、見掛け密度20kg/m以上50kg/m以下であり、押出方向垂直断面積100cm以上であるといった低密度で、断面積の大きな板状の熱可塑性樹脂押出発泡板を製造する場合において、特に有効である。また、物理発泡剤として1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを基材樹脂1kgに対して、たとえば0.5mol以上と多量に配合した場合において、特に有効である。

Claims (10)

  1. 基材樹脂及び物理発泡剤を含む発泡性溶融樹脂組成物を押出発泡させ成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20kg/m以上50kg/m以下、押出方向垂直断面積100cm以上の熱可塑性樹脂押出発泡板を製造する方法であって、
    前記基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群より選択される1以上の共重合体(A)、又は、前記共重合体(A)とポリスチレン系樹脂(B)との混合樹脂であり、
    前記基材樹脂中の前記共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が5質量%以上50質量%以下であり、
    前記物理発泡剤が、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを含み、
    前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量が前記基材樹脂1kgに対して0.4mol以上1.8mol以下である、熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  2. 前記基材樹脂中において、前記共重合体(A)の含有量が50質量%以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  3. 前記基材樹脂がスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含み、
    前記基材樹脂中におけるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の含有量が50質量%以上である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  4. 前記基材樹脂がスチレン-アクリロニトリル共重合体を含み、
    前記基材樹脂中におけるスチレン-アクリロニトリル共重合体の含有量が50質量%以上である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  5. 前記発泡性溶融樹脂組成物が基材樹脂100質量部に対してグラファイトを0.5質量部以上5.0質量部以下含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  6. 前記物理発泡剤の総添加量100mol%中における、前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量の割合が30mol%以上である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  7. 前記物理発泡剤が、水及び/又はアルコールを含み、
    前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量[mol/kg]に対する前記水及び/又はアルコールの添加量[mol/kg]の比率が0.3以上2以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  8. 前記1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの添加量が前記基材樹脂1kgに対して0.5mol以上1.8mol以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  9. 前記基材樹脂中の前記共重合体(A)に由来する(メタ)アクリル酸エステル成分とアクリロニトリル成分との合計含有量が10質量%以上40質量%以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。
  10. 前記熱可塑性樹脂押出発泡板の見掛け密度が20kg/m以上40kg/m以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂押出発泡板の製造方法。


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