JP2024038020A - 発酵乳並びに発酵乳の製造方法 - Google Patents

発酵乳並びに発酵乳の製造方法 Download PDF

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葵 村上
Aoi Murakami
茂樹 加田
Shigeki Kada
彰 木村
Akira Kimura
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Abstract

【課題】発酵乳の製造原料以外のものを添加する必要がなく、そして発酵乳の風味に影響を与えることなく、ビフィドバクテリウム属細菌及び特定のラクトバチルス属細菌の生残性、特に冷蔵保存時における生残性を向上させることを課題とする。【解決手段】1~10℃で15~24日目まで保存した場合に、保存最終日のビフィドバクテリウム属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上であり、ラクトバチルス属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上である発酵乳であって、前記ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガリナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群から選択される一種以上である、前記発酵乳により、前記課題を解決することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、冷蔵保存15~24日目においてビフィドバクテリウム属細菌及び特定のラ
クトバチルス属細菌の生菌数を、それぞれ、1.0E+7cfu/g以上及び1.0E+
7cfu/g以上保持した発酵乳に関する。本発明は、冷蔵保存15~24日目において
ビフィドバクテリウム属細菌及び特定のラクトバチルス属細菌の生菌数を向上させた発酵
乳の製造方法に関する。また、本発明は、発酵乳中のビフィドバクテリウム属細菌及び特
定のラクトバチルス属細菌の生残性向上方法にも関する。
近年、ビフィドバクテリウム属細菌やラクトバチルス属細菌に代表される乳酸菌が有す
る整腸作用、免疫作用等の機能性が次々と明らかとなっている。製品中でのビフィドバク
テリウム属細菌や乳酸菌の生残性を向上させることは、特定保健用食品や機能性表示食品
のような保健機能食品への活用といった産業上の大きな利点がある。しかしながら、冷蔵
保存中における発酵乳製品はビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌の生存に適した環境で
はなく、これまでに、乳中でビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌の生残性を向上させる
ための様々な解決手段が開示されている。
特許文献1は、酸性(pHが低い)環境にあるプロバイオティクスの乳酸菌及びビフィ
ドバクテリウム属細菌の生残性を向上させることができる、乳酸菌及び/又はビフィドバ
クテリウム属細菌の生残性向上剤及びそれを用いた食品組成物並びにその製造方法の提供
を課題とし、その解決手段として、アミノ酸を有効成分とする、乳酸菌および/またはビ
フィドバクテリウム属細菌の生残性向上剤を開示している。
特許文献2は、ビフィドバクテリウム属細菌を多く含有する発酵乳を得ることができる
後発酵タイプの発酵乳の製造方法の提供を課題として、乳を主成分とする培地にビフィド
バクテリウム属細菌を接種し、一次培養した後、得られた培養液に乳酸菌を接種し、容器
に充填した後に二次培養する方法を開示している。
特許文献3は、乳酸菌の発酵を促進して、発酵時間を短縮させながら、冷蔵保存中にお
ける酸度の上昇を抑制し、適度にマイルドな酸味を維持した嗜好性の高い発酵乳およびそ
の製造方法の提供を課題とし、混合スターターを用いる発酵乳の製造において、原料乳中
にラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシズ・ブルガリクスの単独培養液を配合
する方法を開示している。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ヨーグルトミックスに種々のアミノ酸を
添加する必要があり、このアミノ酸が最終製品の風味に影響を与える可能性が大きい。特
許文献2や3においては、ビフィドバクテリウム属細菌のみではなく、ビフィドバクテリ
ウム属細菌及び乳酸菌の両方の生残性を同時に向上させる方法は開示されていない。
特許第6088821号 特許第5829483号 特許第6317251号
本発明の課題は、冷蔵保存15~24日目においてビフィドバクテリウム属細菌及び特
定のラクトバチルス属細菌の生菌数を、それぞれ、1.0E+7cfu/g以上及び1.
0E+7cfu/g以上保持した発酵乳、並びに前記発酵乳を製造するための製造方法を
提供することである。
上記課題を解決するため、本発明には以下の構成が含まれる。
<1>1~10℃で15~24日目まで保存した場合に、保存最終日において、ビフィド
バクテリウム属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上であり、ラクトバチルス属
細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上である発酵乳であって、前記ラクトバチル
ス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチル
ス・クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガリナラム、及
びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群から選択される一種以上である、前記発酵乳

<2>ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムであり、そして
ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリである、<1>に記載の発酵乳。
<3>(A)ビフィドバクテリウム属細菌を原料ミックスに添加する工程と
(B)前記原料ミックスを発酵させ、発酵乳ミックスを得る工程と
(C)ラクトバチルス属細菌のバルクスターターを前記発酵乳ミックスに添加する工程と
(D)前記発酵乳ミックスを冷蔵及び保存し、発酵乳を得る工程と
を含む、発酵乳の製造方法であって、
前記ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィル
ス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス
・ガリナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群から選択される一種以上で
ある、前記製造方法。
<4>ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムであり、そして
ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリである、<3>に記載の発酵乳の製造
方法。
<5>(A)工程においてビフィドバクテリウム属細菌に加えて、ラクトバチルス・デル
ブルッキー・サブスピーシズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスが
添加される、<3>又は<4>に記載の発酵乳の製造方法。
<6>工程(D)が、(C)工程後6時間以内に実施される、<3>~<5>のいずれか
に記載の発酵乳の製造方法。
<7>工程(B)と(C)との間に、(E)前記発酵乳ミックスを20℃以下に冷却する
工程を含む、<3>~<6>のいずれかに記載の発酵乳の製造方法。
<8>(A)ビフィドバクテリウム属細菌を原料ミックスに添加する工程と
(B)前記原料ミックスを発酵させ、発酵乳ミックスを得る工程と
(C)ラクトバチルス属細菌のバルクスターターを発酵乳ミックスに添加する工程と
(D)前記発酵乳ミックスを冷蔵及び保存し、発酵乳を得る工程と
を含む、発酵乳中のビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバチルス属細菌の生残性向上
方法であって、
前記ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィル
ス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス
・ガリナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群から選択される一種以上で
ある、前記生残性向上方法。
<9>ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムであり、そして
ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリである、<8>に記載の発酵乳中のビ
フィドバクテリウム属細菌及びラクトバチルス属細菌の生残性向上方法。
<10>工程(D)が、(C)工程後6時間以内に実施される、<8>又は<9>に記載
の発酵乳中のビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバチルス属細菌の生残性向上方法。
<11>工程(B)と(C)との間に、(E)前記発酵乳ミックスを20℃以下に冷却す
る工程を含む、<8>~<10>のいずれかに記載の発酵乳中のビフィドバクテリウム属
細菌及びラクトバチルス属細菌の生残性向上方法。
本発明は、冷蔵保存15~24日目においてビフィドバクテリウム属細菌及び特定のラ
クトバチルス属細菌の生菌数を、それぞれ、1.0E+7cfu/g以上及び1.0E+
7cfu/g以上保持した発酵乳を提供するものである。本発明によれば、発酵乳の製造
原料以外のものを添加する必要がなく、そして発酵乳の風味に影響を与えることなく、ビ
フィドバクテリウム属細菌及び特定のラクトバチルス属細菌の生残性、特に冷蔵保存時に
おける生残性を向上させることができる。
本発明の発酵乳の製造方法の各工程を示す工程図である。 従来技術の発酵乳の製造方法の各工程を示す工程図である。 冷蔵保存1日目及び24日目における、コントロール及び本発明の発酵乳におけるビフィドバクテリウム・ロンガムの生菌数を表すグラフである。 冷蔵保存1日目及び24日目における、コントロール及び本発明の発酵乳におけるラクトバチルス・ガセリの生菌数を表すグラフである。 冷蔵保存時における、コントロール及び本発明の発酵乳におけるビフィドバクテリウム・ロンガムの生菌数の推移を表すグラフである。 冷蔵保存時における、コントロール及び本発明の発酵乳におけるラクトバチルス・ガセリの生菌数の推移を表すグラフである。
1.発酵乳
(ビフィドバクテリウム属細菌)
本明細書において「ビフィドバクテリウム属細菌」とは、ビフィドバクテリウム属に属
する細菌を意味する。ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム属に属する
細菌であれば特に限定されないが、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリ
ウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・
インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリ
ス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、
ビフィドバクテリウム・カテヌラタム、ビフィドバクテリウム・デンティウムなどが挙げ
られる。このうち、好ましい例として、ビフィドバクテリウム・ロンガムが挙げられる。
また、菌株としては、ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2928株(受託番号:F
ERM P-10657,寄託日:1989年4月13日,独立行政法人 産業技術総合
研究所 特許生物寄託センター)、及びビフィドバクテリウム・シュードロンガムSBT
2908株(受託番号:FERM P-10138,寄託日:1988年7月20日,独
立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)を例示できる。
(ラクトバチルス属細菌)
本明細書において「ラクトバチルス属細菌」とは、ラクトバチルス属に属する細菌を意
味する。本発明において使用されるラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・ガセリ、
ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・
アミロボラス、ラクトバチルス・ガリナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーである
。本明細書では、これら6種のラクトバチルス属細菌を「特定のラクトバチルス属細菌」
と称することがある。ラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・ガセリが最も好ましい
。また、ラクトバチルス・ガセリの菌株としては、ラクトバチルス・ガセリSBT205
5株(受託番号:FERM BP-10953,寄託日:2008年2月26日,独立行
政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)を例示できる。
(生菌数)
本発明の発酵乳は、1~10℃で、好ましくは5~10℃で、より好ましくは8~10
℃で15~24日目まで保存した場合に、保存最終日において、ビフィドバクテリウム属
細菌の生菌数及び特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が、それぞれ、1.0E+7cf
u/g以上及び1.0E+7cfu/g以上である。本明細書において特定の温度の記載
、例えば「10℃」とは、微小な温度の変化を許容する概念であり、例えば、保存又は冷
蔵温度が「10±1℃」となることを許容する。本発明の発酵乳を冷蔵庫等において保存
開始した日が冷蔵保存0日目であり、保存開始した次の日を冷蔵保存1日目とする。「1
.0E+7cfu/g」とは1.0×10cfu/gを意味する。1~10℃で15~
24日目までの保存は、冷蔵庫等において、プラスチックなどの酸素透過性を有する容器
に充填された状態で行うことができる。
保存最終日におけるビフィドバクテリウム属細菌の生菌数の上限は、本発明の効果が得
られる限りにおいて特に限定されるものではないが、1.0E+11cfu/g、1.0
E+10cfu/g、1.0E+9cfu/g、5.0E+8cfu/g、1.5E+8
cfu/g、又は1.4E+8cfu/gであることができる。
保存最終日における特定のラクトバチルス属細菌の生菌数の上限は、本発明の効果が得
られる限りにおいて特に限定されるものではないが、1.0E+11cfu/g、1.0
E+10cfu/g、1.0E+9cfu/g、5.0E+8cfu/g、1.0E+8
cfu/g、3.0E+7cfu/g、又は2.3E+7cfu/gであることができる

ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数及び特定のラクトバチルス属細菌の生菌数は、プ
レートカウント法により測定することができる。
具体的には、滅菌した希釈水(0.6% リン酸水素二ナトリウム,0.45% リン
酸二水素カリウム,0.05% L-システイン塩酸塩一水和物,0.05% Twe
en80,0.05% 寒天)を用いて発酵乳を段階希釈する。ビフィドバクテリウム属
細菌の生菌数測定ではムピロシン添加TOSプロピオン酸寒天培地を用いて希釈試料を混
釈し、ラクトバチルス属細菌の生菌数測定ではMRS/CL/CIP寒天培地の平板培地
に希釈試料を塗抹し、段階希釈した発酵乳における生菌数を測定する。MRS/CL/C
IP寒天培地としては、滅菌したMRS培地にクリンダマイシンを0.1μg/mL、シ
プロフロキサシンを10μg/mL添加し、シャーレに流し固めた平板培地を使用する。
嫌気培養システムを用いて37℃、72時間嫌気培養する。培養終了後、コロニー数を計
数して生菌数を測定する。
本明細書において、「1~10℃で15~24日目まで保存した場合に、保存最終日に
おいて、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上であり、
特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上である」とは、1
~10℃で15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24日目まで
保存した場合に、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24日
目の各々の日の、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上
であり、特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上であるこ
とを意味する
本発明の発酵乳は、1~10℃で15~24日目まで保存した場合に、保存最終日にお
いて、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数及び特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が
、好ましくは1.2E+7cfu/g以上及び1.2E+7cfu/g以上であり、さら
に好ましくは1.5E+7cfu/g以上及び1.5E+7cfu/g以上である。
本発明の発酵乳は、1~10℃で21~24日目まで保存した場合に、保存最終日にお
いて、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数及び特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が
、1.0E+7cfu/g以上及び1.0E+7cfu/g以上であり、好ましくは1.
2E+7cfu/g以上及び1.2E+7cfu/g以上であり、さらに好ましくは1.
5E+7cfu/g以上及び1.5E+7cfu/g以上であることができる。
本発明の発酵乳では、1~10℃で24日目まで保存した場合に、保存最終日において
、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数は、保存開始から1日目の生菌数に対して10.
0%以上であることが好ましく、10.5%以上であることがさらに好ましい。
本発明の発酵乳では、1~10℃で24日目まで保存した場合に、保存最終日において
、特定のラクトバチルス属細菌の生菌数は、保存開始から1日目の生菌数に対して80%
以上であることが好ましく、82%以上であることがさらに好ましい。
本発明の発酵乳では、発酵スターター乳酸菌として他の細菌、例えばラクトバチルス・
デルブルッキー・サブスピーシズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィル
スを含むこともできる。
本発明の発酵乳を充填するための容器としては、本発明の効果が得られる限りにおいて
特に限定されることはなく、プラスチック製の容器、紙製の容器等が挙げられる。本発明
の発酵乳は、好ましくは、容器入りの発酵乳である。
(発酵乳)
本明細書において「発酵乳」は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)
の発酵乳を指し、いわゆる撹拌型ヨーグルト、静置型ヨーグルト、前発酵ヨーグルト、後
発酵ヨーグルト、ソフトヨーグルト、ハードヨーグルトを例示できる。
本発明の発酵乳の製造のために用いられる乳原料は、通常の発酵乳の製造で用いられる
ものであれば良く、特に限定されない。
例えば、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、
低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエ
ー、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖
脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエーパウダー、たんぱく質濃縮ホエ
ーパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、ホエーたんぱく質濃縮物(Whey P
rotein Concentrate:WPC)、ホエーたんぱく質分離物(Whey
Protein Isolate:WPI)、乳たんぱく質濃縮物(Milk Pro
tein Concentrate:MPC)、乳たんぱく質分離物(Milk Pro
tein Isolate:MPI)、トータルミルクプロテイン(Total Mil
k Protein:TMP)、脱乳糖パーミエイト粉末(牛乳の限外濾過膜透過成分)
、変性たんぱく質球状粒子(Microparticulated Whey)、酸カゼ
イン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等を挙げることがで
きる。これらの乳原料のいずれでも使用することができ、これらの乳原料を二種以上組み
合わせたものであっても使用することができる。また、油脂、オリゴ糖、甘味料、酸味料
、香料、果汁、果肉、乳化剤等を配合してもよい。
本発明の発酵乳のpHは、好ましくは4.00~4.80、より好ましくは4.20~
4.60である。
2.発酵乳の製造方法
(工程(A))
本発明の発酵乳の製造方法は、ビフィドバクテリウム属細菌を原料ミックスに添加する
工程を含む。原料ミックスは、上述の乳原料を含む、ビフィドバクテリウム属細菌及びラ
クトバチルス属細菌等の培養に適したミックスである。乳原料を溶媒に溶解させて溶液と
する方法としては特に限定されず、通常用いられている方法により行なうことができる。
原料ミックスは、ビフィドバクテリウム属細菌を添加する時点において、バッチ殺菌等に
より殺菌済みであることが好ましい。
ビフィドバクテリウム属細菌は、ビフィドバクテリウム属に属する細菌であれば特に限
定されないが、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードロン
ガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、
ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテ
リウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウ
ム・カテヌラタム、ビフィドバクテリウム・デンティウムなどが挙げられる。このうち、
好ましい例として、ビフィドバクテリウム・ロンガムが挙げられる。また、菌株としては
、ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2928株、及びビフィドバクテリウム・シュ
ードロンガムSBT2908株を例示できる。ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2
928株、及び/又はビフィドバクテリウム・シュードロンガムSBT2908株を用い
る場合、ラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・ガセリが好ましく、ラクトバチルス
・ガセリSBT2055株が更に好ましい。
ビフィドバクテリウム属細菌は、バルクスターターの形態で添加されることが好ましい
。本明細書において、「バルクスターター」とは、濃縮菌体または培養物等の菌体サンプ
ルを培地で培養し、中間発酵を経て調製されたスターターである。すなわち、バルクスタ
ーターは、菌体と培養培地とを含むものである。これに対して、本明細書においては、濃
縮菌体または培養物等の菌体サンプルそのものである乳酸菌スターターを「菌体スタータ
ー」と称する。
ビフィドバクテリウム属細菌をバルクスターターとして添加する場合、原料ミックス基
準で0.10~20%、好ましくは0.50~15%、より好ましくは1.0~10%、
さらに好ましくは2.0~8.0%添加することができる。ビフィドバクテリウム属細菌
をバルクスターターとして添加する場合、原料ミックスでの培養中に生菌数の変化が少な
いことを考慮して、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数が、原料ミックス基準で1.0
E+8cfu/g~1.0E+9cfu/g、より好ましくは1.2E+8cfu/g~
5.0E+8cfu/g、さらに好ましくは1.4E+8cfu/g~3.0E+8cf
u/gとなるように添加することができる。バルクスターターは、本発明の効果が得られ
る限りにおいて特に限定されることはなく、菌体サンプルを培養培地に添加して独自で調
製したものが使用できる。ビフィドバクテリウム属細菌のバルクスターターを調製する場
合、必要に応じて、酵母エキス、ペプトン、及びアミノ酸などのビフィドバクテリウム属
細菌生育のための外部添加物質を添加することができる。
本発明の発酵乳の製造方法では、ビフィドバクテリウム属細菌に加えて、ラクトバチル
ス・デルブルッキー・サブスピーシズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフ
ィルスを発酵スターター乳酸菌として添加することが好ましい。ラクトバチルス・デルブ
ルッキー・サブスピーシズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスは、
菌体スターターの形態で添加されることが好ましい。ビフィドバクテリウム属細菌をバル
クスターターで添加し、さらにラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシズ・ブル
ガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスを菌体スターターの形態で添加するこ
とがさらに好ましい。菌体スターターの投与量としては、原料ミックス基準で、0.01
0~10%、好ましくは0.010~3.0%、より好ましくは0.020~1.0%、最
も好ましくは0.050~0.50%である。ラクトバチルス・デルブルッキー・サブス
ピーシズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスは、単独で添加しても
よく、予め混合して添加してもよい。工程(A)の完了後、速やかに工程(B)を開始す
ることが好ましい。
(工程(B))
本発明の発酵乳の製造方法では、ビフィドバクテリウム属細菌を原料ミックスに添加し
た後発酵させ、発酵乳ミックスを得る。本明細書において発酵とは、適切な温度において
原料ミックスをインキュベートして、原料ミックスに含まれる細菌を増殖させることであ
る。
発酵温度は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されることはなく、例えば
30~50℃、好ましくは35~45℃で行うことができる。発酵時間は、3~24時間
程度、好ましくは3~12時間程度である。
工程(B)は、好ましくは、原料ミックスの酸度が0.75、好ましくは0.80にな
るまで行うことができる。
本発明の発酵乳の製造方法では、工程(B)の後に、(E)発酵乳ミックスを20℃以
下に冷却する工程を含むことが好ましい。発酵乳ミックスを冷却することにより、ラクト
バチルス・ガセリ又はビフィドバクテリウム属細菌の存在がもう一方の存在に影響される
ことを、より効果的に防止することができる。発酵乳ミックスは、より好ましくは15℃
以下に、さらに好ましくは10±5℃に冷却される。
(工程(C))
本発明の発酵乳の製造方法では、工程(B)の後に特定のラクトバチルス属細菌のバル
クスターターを発酵乳ミックスに添加する(図1参照)。特定のラクトバチルス属細菌の
バルクスターターは、20℃以下に、好ましくは15℃以下に、より好ましくは10±5
℃に冷却して発酵乳ミックスに添加する。本発明において使用されるラクトバチルス属細
菌は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチ
ルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガリナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニー
である。ラクトバチルス属細菌は、ラクトバチルス・ガセリが最も好ましい。また、ラク
トバチルス・ガセリの菌株としては、ラクトバチルス・ガセリSBT2055株を例示で
きる。ラクトバチルス・ガセリSBT2055株を用いる場合、ビフィドバクテリウム属
細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガムが好ましく、ビフィドバクテリウム・ロンガム
SBT2928株及び/又はビフィドバクテリウム・シュードロンガムSBT2908株
が更に好ましい。
工程(C)では、特定のラクトバチルス属細菌のバルクスターターを添加する。発酵乳
ミックス基準で0.010~10%、好ましくは0.10~5.0%、より好ましくは0
.20~3.0%、さらに好ましくは0.30~2.0%のバルクスターターを添加する
ことができる。また、特定のラクトバチルス属細菌のバルクスターターを、発酵乳ミック
ス基準で、2.0E+7cfu/g~1.0E+9cfu/g、2.0E+7cfu/g
~5.0E+8cfu/g、2.0E+7cfu/g~1.0E+8cfu/gとなるよ
うに添加することができる。バルクスターターは、本発明の効果が得られる限りにおいて
特に限定されることはなく、菌体サンプルを培養培地に添加して独自で調製したものが使
用できる。ラクトバチルス属細菌のバルクスターターを調製する場合、必要に応じて、酵
母エキス、ペプトン、及びアミノ酸などのラクトバチルス属細菌生育のための外部添加物
質を添加することができる。
(工程(D))
本発明の発酵乳の製造方法では、特定のラクトバチルス属細菌のバルクスターターを発
酵乳ミックスに添加した後に、発酵乳ミックスを冷蔵及び保存する。特定のラクトバチル
ス属細菌のバルクスターターを発酵乳ミックスに添加した後、速やかに冷蔵及び保存を行
うことが好ましく、具体的には、添加後6時間以内、好ましくは5時間以内、より好まし
くは3時間以内、最も好ましくは1時間以内に、発酵乳ミックスを冷蔵及び保存する。
本明細書において、「冷蔵」とは、冷蔵庫等において10℃以下の温度で発酵乳ミック
スを保存することを意味する。発酵乳ミックスは、好ましくは1℃~10℃で保存され、
より好ましくは5℃~10℃で保存され、さらに好ましくは8~10℃で保存される。
本発明の発酵乳の製造方法では、工程(D)の開始から15~24日目まで保存した場
合に(あるいは、21~24日目まで保存した場合に)、保存最終日において、ビフィド
バクテリウム属細菌の生菌数及び特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が、それぞれ、1
.0E+7cfu/以上及び1.0E+7cfu/以上であることが好ましい。
本発明の発酵乳の製造方法では、工程(C)ではなく工程(A)においてラクトバチル
ス属細菌の菌体スターターを投与した場合と比較して、ビフィドバクテリウム属細菌の生
残率が1.5倍以上、好ましくは2倍以上であることができ、特定のラクトバチルス属細
菌の生残率が、5倍以上、好ましくは8倍以上であることができる。
(その他の工程)
本発明の発酵乳の製造方法では、本発明の効果が得られる限りにおいて、(F)安定剤
、添加剤、香料、フルーツ、フルーツソース等を添加して撹拌する工程、(G)容器への
充填工程を含むことができる。(F)安定剤、添加剤、香料、フルーツ、フルーツソース
等の添加撹拌工程、(G)容器への充填工程は、工程(C)と工程(D)との間に含まれ
ることが好ましい。本発明の発酵乳の製造方法では、工程(C)と工程(D)との間に(
G)容器への充填工程を含み、工程(D)を容器に充填された状態で行うことが好ましい
。容器としては、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されることはなく、プラ
スチック製の容器、紙製の容器等が挙げられる。
3.生残性向上方法
(生残性向上)
本発明における「生残性向上」とは、菌体の死滅を抑え、生き残っている菌体数を維持
すること(減少抑制)を意味する。本発明において「生残性向上」は、特定の条件下、例
えば1~10℃、好ましくは5~10℃、より好ましくは8~10℃の保存条件で、一定
期間保存した場合に、菌体数の減少を抑制することを含む。本発明において「生残性向上
」は、1~10℃で15~24日目まで保存した場合に(あるいは、21~24日目まで
保存した場合に)、保存最終日において、ビフィドバクテリウム属細菌の生菌数及び特定
のラクトバチルス属細菌の生菌数が、それぞれ、例えば、1.0E+7cfu/g以上及
び1.0E+7cfu/g以上、さらに好ましくは1.2E+7cfu/g以上及び1.
2E+7cfu/g以上、最も好ましくは1.5E+7cfu/g以上及び1.5E+7
cfu/g以上に保持することである。
本発明において「生残性向上」は、好ましくは、1~10℃で24日目まで保存した場
合に、保存最終日においてビフィドバクテリウム属細菌の生菌数が、保存開始から1日目
の生菌数に対して5.5%以上であり、且つ1~10℃で24日目まで保存した場合に、
保存最終日において特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が、保存開始から1日目の生菌
数に対して30%以上であることを含む。本発明において「生残性向上」は、より好まし
くは、1~10℃で24日目まで保存した場合に、保存最終日においてビフィドバクテリ
ウム属細菌の生菌数が、保存開始から1日目の生菌数に対して6%以上であり、且つ1~
10℃で24日目まで保存した場合に、保存最終日において特定のラクトバチルス属細菌
の生菌数が、保存開始から1日目の生菌数に対して50%以上であることを含む。本発明
において「生残性向上」は、さらに好ましくは、1~10℃で24日目まで保存した場合
に、保存最終日においてビフィドバクテリウム属細菌の生菌数が、保存開始から1日目の
生菌数に対して10%以上であり、且つ1~10℃で24日目まで保存した場合に、保存
最終日において特定のラクトバチルス属細菌の生菌数が、保存開始から1日目の生菌数に
対して80%以上であることを含む。
(作用)
本発明の発酵乳は、製造時における特定のラクトバチルス属細菌の添加形態及び添加タ
イミングの変更を特徴とする。添加タイミングの変更により、ビフィドバクテリウム属細
菌と特定のラクトバチルス属細菌の同時培養を避けることができる。また、特定のラクト
バチルス属細菌と発酵スターターとなる乳酸菌の同時培養を避け個別に培養することが、
特定のラクトバチルス属細菌の生残性に好ましい影響を与えると考えられる。
本発明において効果が得られる理由としては以下のように推論することができる。しか
しながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
ラクトバチルス・ガセリとビフィドバクテリウム属細菌とを混在させると、一方の存在
がもう一方の存在に影響され、いずれか一方または両方の生育が阻害されると考えられる
。ラクトバチルス属細菌の投与形態及び投与タイミングを変更することで、ラクトバチル
ス属細菌とビフィドバクテリウム属細菌とが互いに大きく影響し合う生育ステージをずら
すことができると考えられる。
なお、上記作用を考慮すると、ラクトバチルス・ガセリのみならず、ラクトバチルス・
ガセリの近縁種であり、同様の生物学的性質を有するラクトバチルス・アシドフィルス、
ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガ
リナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーにおいても効果が得られると考えられる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない
。なお、本明細書において特に明示しない場合、%表示は重量%を示す。
〔実施例1〕
(1) ビフィドバクテリウム・ロンガムのバルクスターター培地調製及び培養
0.5%の酵母エキスを添加した15%還元脱脂乳培地を調製し、95℃、30分間の
加熱処理にて培地の殺菌を実施した。そこへ、ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2
928(受託番号:FERM P-10657,寄託日:1989年4月13日,独立行
政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)の菌体スターターを還元脱脂乳培
地基準で1%添加し、36℃、16時間培養した。この操作により、生菌数1.0E+9
cfu/g程度のバルクスターターを得た。
(2) ラクトバチルス・ガセリのバルクスターター培地調製及び培養
0.50%の酵母エキスを添加した12%還元脱脂乳培地を調製し、95℃、30分間
の加熱処理にて培地の殺菌を実施した。そこへ、ラクトバチルス・ガセリSBT2055
(受託番号:FERM BP-10953,寄託日:2008年2月26日,独立行政法
人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)の菌体スターターを還元脱脂乳培地基
準で1%添加し、36℃、16時間培養した。この操作により、生菌数1.0E+9cf
u/g程度のバルクスターターを得た。
(3) 発酵乳の調製・保存
脱脂粉乳12%、無塩バター2%を混合溶解し、60℃で加温して、均質後、95℃で
5分間保持して加熱殺菌し、40℃に冷却して原料ミックスを調製した。原料ミックスを
殺菌した後、調製したビフィドバクテリウム・ロンガムのバルクスターターを原料ミック
ス基準で4%添加した。さらに、発酵スターター乳酸菌としてラクトバチルス・デルブリ
ッキー・サブスピーシズ・ブルガリカス、ストレプトコッカス・サーモフィルスの菌体ス
ターターを原料基準で0.1%添加した。コントロールの原料ミックスには、これに加え
てラクトバチルス・ガセリの菌体スターターを原料ミックス基準で0.005%添加した
。添加後、酸度が0.8に達するまで39℃で発酵させた。
発酵終了後、本発明の発酵乳を調製するための発酵乳ミックスにおいては、ラクトバチ
ルス・ガセリのバルクスターターを発酵乳ミックス基準で1.0%(コントロールに添加
した菌体スターター0.005%と培養終了時の菌数が同程度になるように調整した量)
添加した。発酵乳を酸素透過性を有する保存用容器に分注し、アルミ蓋のシールを施した
。24日目まで冷蔵(10℃)保存した。
(4) 生菌数および生残性の確認
滅菌した希釈水(0.6% リン酸水素二ナトリウム,0.45% リン酸二水素カリ
ウム,0.05% L-システイン塩酸塩一水和物,0.05% Tween80,0
.05% 寒天)を用いて発酵乳を段階希釈した。ビフィドバクテリウム・ロンガムの生
菌数測定ではムピロシン添加TOSプロピオン酸寒天培地を用いて希釈試料を混釈し、ラ
クトバチルス・ガセリの生菌数測定ではMRS/CL/CIP寒天培地の平板培地に希釈
試料を塗抹し、段階希釈した発酵乳における生菌数を測定した。MRS/CL/CIP寒
天培地は、滅菌したMRS培地にクリンダマイシンを0.1μg/mL、シプロフロキサ
シンを10μg/mL添加し、シャーレに流し固めた平板培地を使用した。嫌気培養シス
テム(商品名:アネロパック,三菱ガス化学株式会社)を用いて37℃、72時間嫌気培
養した。培養終了後、プレートカウント法により生菌数を測定し、冷蔵保存24日目の生
菌数を1日目の生菌数で除算し、商を%に換算して生残率を求めた。結果を図3及び4、
表1及び2に示す。冷蔵保存中の生菌数の推移を図5及び6に示す。図5及び6の各々に
おいて、生菌数をプロットしているのは、冷蔵保存1、14、21、及び24日目である
結果、ビフィドバクテリウム・ロンガムに関しては、コントロールの発酵乳の冷蔵保存
1日目の生菌数が1.4E+8cfu/g、冷蔵保存24日目の生菌数が7.0E+6c
fu/gであったことに対して、本発明の発酵乳では冷蔵保存1日目の生菌数が1.5E
+8cfu/g、冷蔵保存24日目の生菌数が1.6E+7cfu/gであった(図3)
。冷蔵保存24日目における生残率は、コントロールの発酵乳では5.0%であったこと
に対して、本発明の発酵乳では10.7%であった(表1)。
また、ラクトバチルス・ガセリに関しては、コントロールの発酵乳の冷蔵保存1日目の
生菌数が3.0E+7cfu/g、冷蔵保存24日目の生菌数が2.6E+6cfu/g
であったことに対して、本発明の発酵乳では冷蔵保存1日目の生菌数が2.3E+7cf
u/g、冷蔵保存24日目の生菌数が1.9E+7cfu/gであった(図4)。冷蔵保
存24日目における生残率は、コントロールの発酵乳では8.7%であったことに対して
、本発明の発酵乳では82.6%であった(表2)。
以上、ビフィドバクテリウム・ロンガム及びラクトバチルス・ガセリ両者について、冷
蔵保存24日目における生菌数及び生残率ともに本発明の発酵乳のほうが高値であった。
また、冷蔵保存24日目におけるビフィドバクテリウム・ロンガム及びラクトバチルス・
ガセリの生菌数が、1.0E+7cfu/g及び1.0E+7cfu/gを上回った。
また、本発明の発酵乳では冷蔵保存15~24日目の全ての期間にわたり、ビフィドバ
クテリウム・ロンガム及びラクトバチルス・ガセリ両者について、1.0E+7cfu/
g及び1.0E+7cfu/gを上回った(図5および図6)。一方で、コントロールの
発酵乳では、保存15日目に、ラクトバチルス・ガセリの生菌数が1.0E+7cfu/
gを下回る結果となった。
Figure 2024038020000002
Figure 2024038020000003
〔比較例1〕
発酵終了後にラクトバチルス・ガセリのバルクスターターを発酵乳ミックス基準で1.
0%添加する代わりに、発酵終了後にラクトバチルス・ガセリの菌体スターターを発酵乳
ミックス基準で0.5%添加したこと(ラクトバチルス・ガセリの発酵後(冷蔵保存1日
目)の菌数が1.0E+7cfu/g以上となるように調整)以外は実施例1と同様の操
作を行い、発酵乳を製造した。製造した発酵乳に関して、冷蔵保存24日目のラクトバチ
ルス・ガセリの生菌数を計測した。
その結果、ラクトバチルス・ガセリの冷蔵保存24日目の生菌数は1.0E+3cfu
/g未満であり、ラクトバチルス・ガセリの生残性は非常に低い結果となった。
〔比較例2〕
発酵終了後にラクトバチルス・ガセリのバルクスターターを発酵乳ミックス基準で1.
0%添加する代わりに、発酵スターター乳酸菌の添加直後にラクトバチルス・ガセリのバ
ルクスターターを原料ミックス基準で0.05%添加したこと(ラクトバチルス・ガセリ
の発酵後(冷蔵保存1日目)の菌数が1.0E+7cfu/g以上となるように調整)以
外は実施例1と同様の操作を行い、発酵乳を製造した。製造した発酵乳に関して、冷蔵保
存24日目のビフィドバクテリウム・ロンガム及びラクトバチルス・ガセリの生菌数を計
測した。
その結果、ラクトバチルス・ガセリの冷蔵保存24日目の生菌数は2.1E+6cfu
/gであり、ラクトバチルス・ガセリの生残性は低い結果となった。また、ビフィドバク
テリウム・ロンガムの冷蔵保存24日目の生菌数は9.9E+6cfu/gで、ビフィド
バクテリウム・ロンガムの生残性向上は確認できなかった。
したがって、ラクトバチルス・ガセリの投与形態及び投与タイミングのいずれか一方の
変更では、ラクトバチルス・ガセリの生残性を改善することはできず、投与形態及び投与
タイミングの両方をコントロールから変更することが必要であった。
本発明によれば、発酵乳の製造原料以外のものを添加する必要がなく、そして発酵乳の
風味に影響を与えることなく、ビフィドバクテリウム属細菌及び特定のラクトバチルス属
細菌の生残性、特に冷蔵保存時における生残性を向上させることができる。

Claims (11)

  1. 1~10℃で15~24日目まで保存した場合に、保存最終日において、ビフィドバク
    テリウム属細菌の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上であり、ラクトバチルス属細菌
    の生菌数が、1.0E+7cfu/g以上である発酵乳であって、前記ラクトバチルス属
    細菌が、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・
    クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガリナラム、及びラ
    クトバチルス・ジョンソニーからなる群から選択される一種以上である、前記発酵乳。
  2. ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムであり、そしてラク
    トバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリである、請求項1に記載の発酵乳。
  3. (A)ビフィドバクテリウム属細菌を原料ミックスに添加する工程と
    (B)前記原料ミックスを発酵させ、発酵乳ミックスを得る工程と
    (C)ラクトバチルス属細菌のバルクスターターを前記発酵乳ミックスに添加する工程と
    (D)前記発酵乳ミックスを冷蔵及び保存し、発酵乳を得る工程と
    を含む、発酵乳の製造方法であって、
    前記ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィル
    ス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス
    ・ガリナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群から選択される一種以上で
    ある、前記製造方法。
  4. ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムであり、そしてラク
    トバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリである、請求項3に記載の発酵乳の製造方
    法。
  5. (A)工程においてビフィドバクテリウム属細菌に加えて、ラクトバチルス・デルブル
    ッキー・サブスピーシズ・ブルガリクス及びストレプトコッカス・サーモフィルスが添加
    される、請求項3又は4に記載の発酵乳の製造方法。
  6. 工程(D)が、(C)工程後6時間以内に実施される、請求項3~5のいずれかに記載
    の発酵乳の製造方法。
  7. 工程(B)と(C)との間に、(E)前記発酵乳ミックスを20℃以下に冷却する工程
    を含む、請求項3~6のいずれかに記載の発酵乳の製造方法。
  8. (A)ビフィドバクテリウム属細菌を原料ミックスに添加する工程と
    (B)前記原料ミックスを発酵させ、発酵乳ミックスを得る工程と
    (C)ラクトバチルス属細菌のバルクスターターを発酵乳ミックスに添加する工程と
    (D)前記発酵乳ミックスを冷蔵及び保存し、発酵乳を得る工程と
    を含む、発酵乳中のビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバチルス属細菌の生残性向上
    方法であって、
    前記ラクトバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アシドフィル
    ス、ラクトバチルス・クリスパータス、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス
    ・ガリナラム、及びラクトバチルス・ジョンソニーからなる群から選択される一種以上で
    ある、前記生残性向上方法。
  9. ビフィドバクテリウム属細菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムであり、そしてラク
    トバチルス属細菌が、ラクトバチルス・ガセリである、請求項8に記載の発酵乳中のビフ
    ィドバクテリウム属細菌及びラクトバチルス属細菌の生残性向上方法。
  10. 工程(D)が、(C)工程後6時間以内に実施される、請求項8又は9に記載の発酵乳
    中のビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバチルス属細菌の生残性向上方法。
  11. 工程(B)と(C)との間に、(E)前記発酵乳ミックスを20℃以下に冷却する工程
    を含む、請求項8~10のいずれかに記載の発酵乳中のビフィドバクテリウム属細菌及び
    ラクトバチルス属細菌の生残性向上方法。
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