JP2024033881A - 衛生陶器 - Google Patents

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朝規 新崎
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Abstract

【課題】 良好な防汚性と、光沢感およびマット感双方を兼ね備えた優れた質感と、を併せ持つ衛生陶器の提供。【解決手段】 基材と、表面層とを備える衛生陶器であって、前記表面層の表面の60°光沢度は、95以上190以下であり、前記表面層の表面粗さ(Sa)は、0.04μm以上0.23μm以下である、衛生陶器。【選択図】 図4

Description

本発明は、衛生陶器に関する。詳細には、良好な光沢感およびマット感を併せ持つ衛生陶器に関する。
便器や洗面器などの衛生陶器は、トイレや洗面所などの住空間を構成する要素であるため、防汚性または易清掃性、強度などの本来的な性能に加え、近年ではそのデザイン性も求められている。一般に、衛生陶器の表面には釉薬層が設けられ、これにより表面に艶感、すなわち光沢感を付与している。一方、光沢感を抑え、マット感を表面に付与した衛生陶器も提案されている。
例えば、特開2018-104272号公報(特許文献1)には、基材の表面に設けられたガラス質層の表面性状を特定の粗さとすることで、60°光沢度が20以下の艶消し調の(すなわち、光沢感の低い)外観を有しながらも、良好な防汚性を有するマット調部材が開示されている。
昨今、衛生陶器のデザインの多様化、とりわけ美観に対する要求の増加に伴い、防汚性等の本来的性能とともに、美感に訴える新たなデザイン性を備えた衛生陶器の開発が進められている。
特開2018-104272号公報
本発明者らは、今般、衛生陶器に本来的に求められる防汚性等の性能と、新規で優れた質感(美観)とを併せ持つ衛生陶器を見出した。とりわけ、光沢感を有しながらも、同時にマット感を有する衛生陶器の新規な構成を見出した。すなわち、表面の60°光沢度および表面粗さ(Sa)各々を特定範囲に制御することで、良好な防汚性と、光沢感およびマット感双方を兼ね備えた新規で優れた質感と、を併せ持つ衛生陶器が得られることを見出した。本発明は斯かる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、良好な防汚性と、光沢感およびマット感双方を兼ね備えた優れた質感と、を併せ持つ衛生陶器を提供することを目的とする。
そして、本発明による衛生陶器は、
基材と、表面層とを備え、
前記表面層の表面の60°光沢度は、95以上190以下であり、
前記表面層の表面粗さ(Sa)は、0.04μm以上0.23μm以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、良好な防汚性と、光沢感およびマット感双方を兼ね備えた優れた質感と、を併せ持つ衛生陶器が提供される。
本発明による衛生陶器の例を示す模式図である。 実施例7の衛生陶器の表面のFE-SEM画像である。 比較例2の衛生陶器の表面のFE-SEM画像である。 実施例7の衛生陶器の表面のX線回折スペクトル図である。 比較例2の衛生陶器の表面のX線回折スペクトル図である。
衛生陶器
本発明において、「衛生陶器」とは、バスルーム、トイレ空間、化粧室、洗面所、または台所などで用いられる陶器製品を意味する。具体的には、大便器、小便器、便器のサナ、便器タンク、洗面器、手洗い器などを意味する。
本発明による衛生陶器について、図1を参照しつつ説明する。本発明による衛生陶器10は、図1(a)に示すように、基材1と、表面層2とを備える。表面層2は、基材1の表面に設けられている。なお、図1(b)、図1(c)はそれぞれ本発明による衛生陶器の一例を示す(詳細は後述する)。
基材
本発明において、基材1は、例えば、公知の衛生陶器用の素地であってよい。つまり、珪砂、長石、石灰石、粘土などを原料として素地泥漿を調製し、これを成形し、焼成することにより得られる公知の衛生陶器用の素地を基材1として使用することができる。
表面層
<表面性状>
本発明において、表面層2は、その表面の60°光沢度(以下、「表面光沢度」と略称することもある)が、95以上190以下であり、かつ、その表面粗さ(Sa)が、0.04μm以上0.23μm以下である(表面層2が有するこの特徴を、「特定表面性状」ということもある)。これにより、衛生陶器10は良好な光沢感とマット感を同時に発現することができる。
本発明による衛生陶器10が良好な光沢感とマット感を同時に発現することができるメカニズムは、以下のように考えられる。表面層2の表面粗さが上記範囲内であることにより、表面層2の表面に光が入射した際、入射光の多くが表面にて全反射することにより、表面に高い光沢が生じると考えられる。同時に、入射光の一部が表面でミー散乱により拡散することにより、表面に良好なマット感が生じると考えられる。これらの2つの現象が同時に起こることで、良好な光沢感とマット感を併せ持つ表面層の実現が可能になると考えられる。なお、上記説明はあくまで仮説であって、本発明はこの仮説によって何ら制限されるものではない。
本発明において、表面層2の表面の60°光沢度は、JIS Z 8741:1997に従って測定することができる。測定装置として、例えば光沢計(コニカミノルタ社製GM-268plus)を使用することができる。
本発明において、表面層2の表面粗さ(Sa)は、JIS B 0681-2:2019に従って測定することができる。
<組成>
本発明において、表面層2は、その表面光沢度かつ表面粗さ(Sa)が上記の特定範囲内にある限りにおいて、その組成は特に制限されない。
本発明において、表面層2は、多結晶体を含むことが好ましい。多結晶体とは、複数種類の単結晶が集まっているものを意味する。この多結晶体に含まれる単結晶は分離できないものである。多結晶体は、複数種類の金属酸化物の単結晶を含むことが好ましい。多結晶体に含まれる金属酸化物の単結晶として、例えば、酸化チタン(TiO)の単結晶、酸化ジルコニウム(ZrO)の単結晶、チタンとジルコニウムの複合酸化物の単結晶が挙げられる。本発明において、チタンとジルコニウムの複合酸化物の単結晶は、TiZr(ここで、x=1,2 y=1 z=4,6)で表されるものが好ましい。具体的には、TiZrOまたはTiZrOであることが好ましく、TiZrOであることがさらに好ましい。
本発明において、多結晶体は、下記(i)、(ii)および(iii)から選択される2つ以上の組み合わせを含むものであってよい。
(i)酸化チタンの単結晶、
(ii)酸化ジルコニウムの単結晶、
(iii)チタンとジルコニウムの複合酸化物の単結晶、
また、表面層2は、多結晶体を含む限りにおいて、単結晶またはアモルファスのいずれかをさらに含んでいてもよく、単結晶およびアモルファス双方をさらに含んでいてもよい。つまり、表面層2は、上記(i)、(ii)および(iii)から選択される少なくとも2つ以上を含む多結晶体に加え、酸化チタンの単結晶またはアモルファス、酸化ジルコニウムの単結晶またはアモルファス、およびチタンとジルコニウムの複合酸化物の単結晶またはアモルファスから選択される少なくとも1つの単結晶またはアモルファスをさらに含んでもよい。また酸化チタンの単結晶およびアモルファス、酸化ジルコニウムの単結晶およびアモルファス、ならびにチタンとジルコニウムの複合酸化物の単結晶およびアモルファスから選択される少なくとも1つの単結晶およびアモルファスをさらに含んでもよい。
表面層2が多結晶体を含むことは、例えば以下の方法により確認することができる。まず、衛生陶器10の表面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて適切な倍率で撮影し、画像(以下、「FE-SEM画像」という。)を得る。FE-SEM画像中における複数の単結晶の集まりの有無を確認する。次に、この確認された単結晶の集まりをX線回折法(XRD)で評価する。
衛生陶器10の表面をXRD測定することにより、FE-SEM画像中に確認された単結晶の集まりが複数種類の単結晶を含むこと、つまり多結晶体であることを確認することができる。XRD測定によって得られるX線回折スペクトルを解析することにより、表面層に含まれる結晶相を同定できる。XRD測定は、XRD装置として、利用可能なものを用い、薄膜の結晶相が同定できる程度の電圧値および電流値の条件を設定し、行う。また、得られたX線回折スペクトルの解析には、粉末解析データベースである「ICDDデータベース PDF-2」(LightStone社製)を用いて、結晶相の同定を行う。得られたX線回折スペクトルと、当該データベースを比較することにより、表面層に含まれる結晶相を同定できる。
XRD装置として、利用可能なものを用いる。例えば、SmartLab(株式会社リガク製)を用いることが可能である。測定条件は以下を用いることができる。X線発生装置:CuKα線、電圧:45kv、電流値:200mA、スキャン軸:2θ、X線入射角:0.5°、スキャン範囲:20~40°、ステップ幅:0.02°、スキャン速度:0.5°/分。これにより、X線回折スペクトルを得ることができる。得られたX線回折スペクトルに対し、粉末解析データベースである「ICDDデータベース PDF-2」(LightStone社製)を用いて、結晶相の同定を行う。
また、XRD装置として、Rint TTR III(株式会社リガク製)を用いることが可能である。測定条件は以下を用いることができる。X線発生装置:CuKα線、電圧:50kv、電流値:300mA、スキャン軸:2θ、X線入射角:0.5°、スキャン範囲:20~40°、ステップ幅:0.02°、スキャン速度:0.5°/分。これにより、X線回折スペクトルを得ることができる。得られたX線回折スペクトルに対し、上記と同様、粉末解析データベースである「ICDDデータベース PDF-2」(LightStone社製)を用いて、結晶相の同定を行う。
これにより、FE-SEM画像中に確認された単結晶の集まりが複数種類の単結晶を含むこと、つまり多結晶体であることを確認することができる。さらに、多結晶体がTiOの単結晶、ZrOの単結晶、およびTiZrOの単結晶を含むことを確認することができる。
本発明において、多結晶体のサイズは、50nm以上100nm以下であることが好ましい。これにより、衛生陶器10の表面にて入射光のミー散乱が起こりやすくなると考えられ、その結果、マット感を発現しやすくなると考えられる。本発明において、多結晶体のサイズは、以下の方法により測定される。すなわち、上記のFE-SEM画像を画像解析ソフトにて解析し、目視でFE-SEM画像中にランダムに10個の多結晶体を特定する。10個の多結晶体各々の長辺および短辺の長さ(nm)を測定する。測定された10通りの長辺の長さおよび10通りの短辺の長さ計20個の測定値の平均値を、多結晶体のサイズとする。
表面層2に含まれる多結晶体の含有割合は、表面層2が良好な光沢感とマット感を併せ持つよう適宜決定されてよいが、例えば50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。また、多結晶体に含まれる酸化チタン(TiO)の単結晶、酸化ジルコニウム(ZrO)の単結晶、およびチタンとジルコニウムの複合酸化物の単結晶の各含有割合は、表面層2が良好な光沢感とマット感を併せ持つよう適宜決定されてよいが、例えば酸化チタン(TiO)の単結晶を、好ましくは60質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは67質量%以上83質量%以下、酸化ジルコニウム(ZrO)の単結晶を、好ましくは1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上17質量%以下、およびチタンとジルコニウムの複合酸化物の単結晶を、好ましくは10質量%以上20質量%、さらに好ましくは12質量%以上17質量%以下含むことが好ましい。
表面層2に含まれる酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、およびチタンとジルコニウムの複合酸化物の各含有割合は、表面層2が特定表面性状を有する限りにおいて、特に制限されない。本発明の好ましい態様によれば表面層2は、酸化チタン(TiO)を、好ましくは60質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは67質量%以上83質量%以下、酸化ジルコニウム(ZrO)を、好ましくは1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上17質量%以下、およびチタンとジルコニウムの複合酸化物を、好ましくは10質量%以上20質量%、さらに好ましくは12質量%以上17質量%以下含む。
本発明において、表面層2や多結晶体に含まれる酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、およびチタンとジルコニウムの複合酸化物の各含有割合は、上述のXRD測定から得ることが可能である。
本発明において、酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、又はこれらの組み合わせであってよい。組み合わせの場合のアナターゼ型およびルチル型酸化チタンの含有比は、99:1~75:25(アナターゼ型:ルチル型)であることが好ましく、95:5~80:20であることがより好ましい。
本発明において、ZrOは斜方晶であることが好ましい。これにより、衛生陶器10は良好な光沢感とマット感を両立し易くなる。
<突出谷部の空間容積(Vvv)>
本発明において、表面層2の表面は、JIS B 0681-2:2018に規定される突出谷部の空間容積(Vvv)が0.06ml/m以下であることが好ましい。これにより、衛生陶器の表面において光の反射が起こりやすくなると考えられ、その結果、衛生陶器の表面は高い光沢感を発現しやすくなると考えられる。
Vvvは、物体の表面性状を3次元で表したパラメータであり、具体的には物体表面の突出谷部の大きさを定量化した体積パラメータである。なお、Vvvの測定においては、コア部と突出谷部を分離する負荷面積率を適切な%に指定する。
<膜厚>
本発明において、表面層2の膜厚は、衛生陶器10に求められる諸特性を勘案して適宜決定されてよいが、50nm以上100nm以下であることが好ましい。これにより、緻密であり、耐久性の高い表面層とすることができる。表面層2の膜厚は、より好ましくは、50nm以上70nm以下である。
表面層2の膜厚は、例えば以下の方法により測定することができる。衛生陶器の断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて適切な倍率で撮影し、FE-SEM画像を得る。FE-SEM画像を画像解析ソフトにて解析し、目視でFE-SEM画像中にランダムに10点の表面層の厚さ部分を特定する。10点の部分の厚さの平均値を、衛生陶器の表面層の膜厚とすることができる。
釉薬層
本発明において、基材1と表面層2との間に別の層を設けてもよい。例えば、図1(b)に示すように、基材1と表面層2との間に、釉薬層3を設けてもよい。すなわち、本発明の一つの態様において、衛生陶器10は、基材1と、釉薬層3と、表面層2とを備える。つまり、基材1と、基材1の表面に設けられた釉薬層3と、釉薬層3の表面に設けられた表面層2とを備える。
本発明において、釉薬層3の組成は、例えば、下記表に記載の組成とすることができる。
Figure 2024033881000002
中間層
本発明において、釉薬層3と表面層2との間に別の層を設けてもよい。例えば、図1(c)に示すように、釉薬層3と表面層2との間に、中間層4を設けてもよい。すなわち、本発明の一つの態様において、衛生陶器10は、基材1と、釉薬層3と、中間層4と、表面層2とを備える。つまり、基材1と、基材1の表面に設けられた釉薬層3と、釉薬層3の表面に設けられた中間層4と、中間層4の表面に設けられた表面層2とを備える。中間層4は、例えば、表面層2の耐久性を高めるためのものであってよい。あるいは、中間層4は、釉薬層3とは別の釉薬層であってもよい。
中間層4は、釉薬層3や表面層2が含む金属酸化物のいくつかを含むものであってよく、例えば、シリカと、酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムとを含んでいてよい。この場合、シリカの含有割合は98質量%~85質量%の範囲であり、その好ましい上限は95質量%であり、好ましい下限は90質量%である。また、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの含有割合は、その両方を含む場合その合計として、2質量%~15質量%の範囲であり、その好ましい上限は10質量%であり、好ましい下限は5質量%である。
本発明において、中間層4の膜厚は、例えば表面層2の耐久性を高める範囲で適宜決定されてよく、10nm以上100nm以下が好ましい。
衛生陶器の製造方法
<基材の準備>
まず、基材1を準備する。基材1は、上述したとおり、公知の衛生陶器用の素地であってよい。例えば、珪砂、長石、石灰石、粘土などを原料として素地泥漿を調製し、これを例えば鋳込み成形法にて成形し、その後焼成することにより、基材1を得る。
<表面層の形成>
次いで、基材1の表面に表面層2を形成する。
本発明の一つの態様によれば、表面層2は、酸化チタンと、酸化ジルコニウムと、チタンとジルコニウムの複合酸化物とを含むか、または、これらの前駆体を含むコーティング液を基材1の表面に適用、好ましくは塗布し、その後焼成することにより形成することができる。
焼成条件は適宜決定されてよいが、焼成温度は、例えば900℃以上940℃未満が好ましく、901℃以上938℃以下がより好ましい。上記温度範囲で焼成することにより、多結晶体の成長を促し、すなわち結晶粒の大きさを制御することができ、これにより表面層2の特定表面性状を実現することが可能となる。焼成時間は、上記焼成温度の範囲において適宜決定されてよいが、例えば、10~45時間が好ましい。
酸化チタンの前駆体としては、チタンアルコキシドおよびチタンキレートが好適に利用できる。チタンアルコキシドは、一般式:Ti(OR)で基本的に表されるものであり、加水分解によって酸化チタンを生じさせるものであれば限定されない。式中の(OR)の一部がアセチルアセトネート(C)やエチルアセトアセテート(C)で置換されていてもよい。本発明の好ましい態様によれば、チタンアルコキシドは、アルコキシド(RO-)の有機基R部分が低級(好ましくはC1-6)アルキル基であるものである。その好ましい具体例としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn-プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)およびそれらの混合物が挙げられる。また、チタンキレートとしては、例えばチタンテトラアセチルアセトネートが挙げられる。
酸化ジルコニウムの前駆体としては、ジルコニウムアルコキシドおよびジルコニウムキレートが好適に利用できる。ジルコニウムアルコキシドは、一般式:Zr(OR)で基本的に表されるものであり、加水分解によって酸化ジルコニウムを生じさせるものであれば限定されない。式中の(OR)の一部がアセチルアセトネート(C)やエチルアセトアセテート(C)で置換されていてもよい。本発明の好ましい態様によれば、ジルコニウムアルコキシドは、アルコキシド(RO)の有機基R部分が低級(好ましくはC2-6)アルキル基であるものである。その好ましい具体例としては、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキド、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)およびそれらの混合物が挙げられる。また、ルコニウムキレートとしては、例えばジルコニウムテトラアセチルアセトネートが挙げられる。
コーティング液の溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、や酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられるが、チタンアルコキシドおよびジルコニウムアルコキシドが溶解する溶媒であれば特に限定されない。
コーティング液の基材1の表面への適用は、好ましくは、刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷等、一般に広く行われている方法により行われてよい。
<釉薬層の形成>
基材1と表面層2との間に、釉薬層3を設ける場合、衛生陶器10は、基材1上に、釉薬層3、そして表面層2を形成して製造される。釉薬層3は、基材1上に、既に説明した釉薬を適用、好ましくは塗布し、その後焼成することにより形成することができる。表面層2は、釉薬層3上に、酸化チタンと、酸化ジルコニウムと、チタンとジルコニウムの複合酸化物とを含むか、または、これらの前駆体を含むコーティング液を適用、好ましくは塗布し、その後焼成することにより形成することができる。ここで、釉薬層3と表面層2の形成のための焼成は、都度行われてもよく、また同時に行われてもよい。本発明において、釉薬層3および表面層2は、基材1上に釉薬および上記コーティング液を適用し、その後一体焼成することにより形成されることが好ましい。焼成条件は、既に説明した表面層の形成における焼成条件を用いることが好ましい。
釉薬層3を形成するための釉薬は、表面層2の表面光沢度および表面粗さが実現できる限り、その組成は限定されない。本発明において、釉薬原料として、珪砂、長石、石灰石等の天然鉱物粒子の混合物を用いることができる。釉薬層3は、顔料、例えば、コバルト化合物、鉄化合物等を含んでいてもよい。釉薬層3は、乳濁剤、例えば、珪酸ジルコニウム、酸化錫等を含んでいてもよい。
本発明において、釉薬原料として、例えば、長石が10wt%~30wt%、珪砂が15wt%~40wt%、炭酸カルシウムが10wt%~25wt%、コランダム、タルク、ドロマイト、亜鉛華が、それぞれ10wt%以下、乳濁剤および顔料が合計15wt%以下のものが挙げられる。
本発明において、釉薬として、例えば、下記組成のものを用いることができる。
Figure 2024033881000003
<中間層の形成>
釉薬層3と表面層2との間に、中間層4を設ける場合、衛生陶器10は、基材1上に、釉薬層3、中間層4、そして表面層2を形成して製造される。中間層4は、釉薬層3上に、シリカと酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウムとを含むか、またはこれらの前駆体を含むコーティング液を適用、好ましくは塗布し、その後焼成することにより製造することができる。本発明の好ましい態様によれば、シリカ前駆体としては、メチルシリケート、エチルシリケートなどのアルキルシリケート、それらの重合体が挙げられる。また、酸化チタンの前駆体および酸化ジルコニウムの前駆体としては、表面層について例示したものを好ましく用いることができる。基材1への釉薬層3の形成は既に説明したとおりである。表面層2は、中間層4上に、酸化チタンと、酸化ジルコニウムと、チタンとジルコニウムの複合酸化物とを含むか、または、これらの前駆体を含むコーティング液を適用、好ましくは塗布し、その後焼成することにより形成することができる。ここで、釉薬層3、中間層4および表面層2の形成のための焼成は、都度行われてもよく、また同時に行われてもよい。本発明において、釉薬層3、中間層4および表面層2は、基材1上に釉薬、上記中間層4形成用コーティング液、および上記表面層2形成用コーティング液を適用し、その後一体焼成することにより形成されることが好ましい。焼成条件は、既に説明した表面層の形成における焼成条件を用いることが好ましい。
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
準備
<中間層形成用コーティング液の調製>
シリカアルコキシド(アルコキシシラン加水分解液、コルコート株式会社製)と、チタンアルコキシド(チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、NDH-510C、日本曹達株式会社製)とを、焼成後の固形分の重量比が酸化チタン5%、シリカ95%となるように混合した。次いで、この混合物を、2-プロパノール(80%)とメチルセロソルブ(20%)の混合溶媒で、焼成後の固形分が0.5%になるように希釈し、希釈液を攪拌機で混合した。得られた混合液を1時間以上放置して、これを中間層形成用コーティング液とした。
<表面層形成用コーティング液の調製>
チタンアルコキシド(化合物名:チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)商品名:NDH-510C、日本曹達株式会社製)と、ジルコニウムアルコキシド(化合物名:ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート 商品名:オルガチックスZC-540、マツモトファインケミカル株式会社製)とを、焼成後の固形分の重量比が酸化チタン60質量%以上90質量%以下、酸化ジルコニウム1質量%以上20質量%以下、チタンとジルコニウムの複合酸化物10質量%以上20質量%以下となるように混合した。次いで、この混合物を、2-プロパノール(80%)とメチルセロソルブ(20%)の混合溶媒で、焼成後の固形分が0.5%になるように希釈し、希釈液を攪拌機で混合した。得られた混合液を1時間以上放置して、これを表面層形成用コーティング液とした。
衛生陶器の作製
準備した陶器原料を鋳込み成形して素地を得て、この素地の表面にハンドスプレーガン(F100 明治機械製作所株式会社製)を使用して釉薬を塗布した。続いて、徐々に昇温および降温しながら最高温度1180℃に設定されたトンネル窯を24時間通過させて焼成して、陶器タイルを得た。なお、釉薬は、以下の範囲の組成のものを用いた。
Figure 2024033881000004
中間層の形成
陶器タイルの表面に、ハンドスプレーガン(F100 明治機械製作所株式会社製)を用いて、中間層形成用コーティング液を、焼成後の膜厚が50nmになるように塗布量を制御して塗布した。
表面層の形成
中間層形成用コーティング液を塗布した陶器タイル表面に、ハンドスプレーガン(F100 明治機械製作所株式会社製)を用いて、表面層形成用コーティング液を焼成後の膜厚が50~100nmになるように塗布量を制御して塗布した。
焼成
上記のようにして得られた、陶器タイルの表面に中間層形成用コーティング液および表面層形成用コーティング液を塗布したものを、徐々に昇温および降温しながら最高温度が900℃~950℃に設定された高温電気炉(FUH732DA ADVANTEC株式会社製)で24~27時間かけて焼成して、実施例1~15および比較例1~3の衛生陶器を得た。電気炉内の温度は、実施例1~15の衛生陶器の作製においては、901~940℃未満とし、比較例1~3の衛生陶器の作製においては、この温度範囲外とした。
評価
実施例1~15および比較例1~3の衛生陶器について、下記評価を行った。
光沢度の測定
各衛生陶器の表面の60°光沢度を、JIS Z 8741:2017に従って、光沢計(コニカミノルタ社製GM-268plus)により測定した。結果を表4に示す。
表面粗さ(Sa)の測定
各衛生陶器の表面粗さ(Sa)を、JIS B 0681-2:2019に従って測定した。測定条件は、S-フィルタ0.00025mm、L-フィルタ0.8mmとした。結果を表4に示す。
突出谷部の空間の容積(Vvv)の測定
各衛生陶器の表面の突出谷部の空間容積(Vvv)は、JIS B 0681-2:2019に従って測定した。コア部と突出谷部を分離する負荷面積率を80%に指定し、測定条件はS-フィルタ0.00025mm、L-フィルタ0.8mmとした。結果を表4に示す。
表面層の膜厚の測定
各衛生陶器の断面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、日立ハイテクノロジーズ製S-4800)にて5~10万倍で撮影し、FE-SEM画像を得た。各FE-SEM画像を画像解析ソフトWinROOF(三谷商事株式会社製)にて解析し、目視でFE-SEM画像中にランダムに10点の表面層の厚さ部分を特定した。10点の部分の厚さの平均値を、実施例1~15および比較例1~3の衛生陶器の表面層の膜厚とした。得られた各衛生陶器の膜厚は、50~100nmであった。
表面層が多結晶体を含むことの確認
各衛生陶器の表面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、日立ハイテクノロジーズ製S-4800)にて5~10万倍で撮影し、画像(以下、「FE-SEM画像」という。)を得た。FE-SEM画像中における複数の単結晶の集まりの有無を確認し、確認された単結晶の集まりを多結晶体と判断した。実施例7および比較例2の衛生陶器の表面のFE-SEM画像を図2、3に示す。
多結晶体がTiO 、ZrO およびTi ZrO を含むことの確認
<XRD測定>
実施例7および比較例2の衛生陶器の表面をXRD測定した。XRD装置として、SmartLab(株式会社リガク製)を用いた。測定条件は以下を用いた。X線発生装置:CuKα線、電圧:45kv、電流値:200mA、スキャン軸:2θ、X線入射角:0.5°、スキャン範囲:20~40°、ステップ幅:0.02°、スキャン速度:0.5°/分。これにより、X線回折スペクトルを得た。
<結晶相の同定>
得られたX線回折スペクトルに対し、粉末解析データベースである「ICDDデータベース PDF-2」(LightStone社製)を用いて、結晶相の同定を行った。これにより、FE-SEM画像中に確認された単結晶の集まりが複数種類の単結晶を含むこと、つまり多結晶体であることを確認した。さらに、多結晶体がTiOの単結晶、ZrOの単結晶、およびTiZrOの単結晶を含むことを確認した。
実施例7および比較例2の衛生陶器の表面のX線回折スペクトル図を、図4、5に示す。
光沢感およびマット感の官能評価
10人が目視にて各衛生陶器の表面を確認し、光沢感とマット感の有無について評価した。光沢感があると評価した人の数が6人以上であったとき、光沢感ありと判断し、またマット感があると評価した人の数が6人以上であったとき、マット感ありと判断した。結果を表4に示す。
清掃性の評価
以下の方法によって、実施例13~15、比較例3の衛生陶器の表面の防汚性を評価した。色差計として、SPECTROPHOTOMETER CM-2600d(コニカミノルタ製)を用いた。測定条件は以下のとおりとした。表色系:L、マスク/グロス:S/I+E、UV設定:UV100%、光源:D65、観察視野:10度、モード:SCI。各衛生陶器につき同一箇所の色値L、a、bを3回測定し、その平均値を用いた。具体的には、
(i)各衛生陶器の表面における所定の測定場所(すなわち、後にクレパスで線を描く場所)の色値L、a、bを測定した。測定値をL(1)、a(1)、b(1)とした。
(ii)上記測定場所に、クレパスで、約20~30g/cmの荷重をかけながら、幅約1mmの線を描いた。
(iii)その後、市販のトイレ掃除シート(商品名:トイレクイックル、花王製)を、クレパス線と垂直な方向に100g/cmの荷重をかけた状態で30往復摺動させて、クレパス線を拭き取った。次に、クレパス線を拭き取った領域にマスクを被せ、各衛生陶器の表面に水道水をかけて、上記掃除シートに含まれる界面活性剤を取り除いた。次に、エアブローで表面から水道水を取り除いた。
(iv)マスクを取り外し、クレパス線を拭き取った測定場所の色値L、a、bを測定した。測定値をL(2)、a(2)、b(2)とした。
(v)下記式から、クレパス線を描く前後における測定場所の色差ΔE abを求めた。結果を表4に示す。
ΔE ab=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
(式中、ΔL=L(1)-L(2)、Δa=a(1)-a(2)、Δb=b(1)-b(2)である。)
表4に示す結果より、実施例13~15の衛生陶器の表面の色差はいずれも1以下であり、一方比較例3の衛生陶器の表面の色差は1より大きいことが確認された。つまり、実施例13~15の衛生陶器の表面に描かれたクレパス線(汚れ)は十分拭き取られ、これら衛生陶器が良好な防汚性を有することが確認された。これに対し、比較例3の衛生陶器の表面のクレパス線は十分に拭き取られず、この衛生陶器が良好な防汚性を有さないことが確認された。
Figure 2024033881000005
10:衛生陶器
1:基材
2:表面層
3:釉薬層
4:中間層

Claims (3)

  1. 基材と、表面層とを備える衛生陶器であって、
    前記表面層の表面の60°光沢度は、95以上190以下であり、
    前記表面層の表面粗さ(Sa)は、0.04μm以上0.23μm以下である、衛生陶器。
  2. 前記表面層の表面は、JIS B 0681-2:2018に規定される突出谷部の空間容積(Vvv)が0.06ml/m以下である、請求項1に記載の衛生陶器。
  3. 前記表面層の膜厚は、50nm以上100nm以下である、請求項1に記載の衛生陶器。
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