JP2024033645A - ポリオレフィン樹脂組成物及びポリオレフィン樹脂成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素繊維として再生炭素繊維を用いた場合であっても、炭素繊維がポリオレフィン中に均一に分散している成形体を得ることが可能なポリオレフィン樹脂組成物、及び、これを用いたポリオレフィン樹脂成形体を提供すること。【解決手段】ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と、炭素繊維の表面がエポキシ樹脂系サイジング剤で処理された被覆炭素繊維と、結晶核剤とを含む。前記炭素繊維は、再生炭素繊維が好ましい。ポリオレフィン樹脂成形体は、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物を含む。ポリオレフィン樹脂成形体は、線膨張係数が10.0×10-5/℃以下であるものが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物及びポリオレフィン樹脂成形体に関し、さらに詳しくは、ポリオレフィン樹脂と炭素繊維とを含むポリオレフィン樹脂組成物、及び、これを用いたポリオレフィン樹脂成形体に関する。
ポリエチレンに代表されるポリオレフィン樹脂は、安価で機械特性に優れているため、各種の用途に用いられている。特に、ポリオレフィンに炭素繊維を分散させた炭素繊維強化樹脂成形体は、軽量で高い剛性を有するため、建物の空調用の配管、自動車や航空機の部品、携帯機器の筐体などに用いられている。
近年、地球環境の保護の観点から、各種プラスチック製品のリサイクルが検討されている。プラスチックのリサイクル方法としては、
(a)プラスチックをそのまま再利用するマテリアルリサイクル、
(b)プラスチックを分解し、化学原料として再利用するケミカルリサイクル、
(c)プラスチックを燃料として再利用するサーマルリサイクル
などが知られている。
炭素繊維強化樹脂成形体の場合、廃棄された炭素繊維強化樹脂成形体から炭素繊維を回収し、回収された炭素繊維(再生炭素繊維)を炭素繊維強化樹脂成形体用の強化繊維として再利用することが検討されている。
しかしながら、炭素繊維強化樹脂成形体は、一般に、樹脂と炭素繊維とを2軸混練押出機により混練してペレットとし、得られたペレットを用いて射出成形や押出成形することにより製造されている。この場合、ペレットを作製する際に炭素繊維が粉砕されるために、成形体中に含まれる炭素繊維の長さが不均一となる。そのため、再生炭素繊維を用いて製造された炭素繊維強化樹脂成形体は、長さが均一な未使用の炭素繊維を用いて製造された炭素繊維強化成形体に比べて、物性及び外観が劣るという問題があった。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂と、炭素繊維と、イミン変性ポリオレフィン樹脂と、結晶核剤とを含むポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。
同文献には、炭素繊維を含むポリオレフィン樹脂組成物にイミン変性ポリオレフィン樹脂をさらに添加すると、ポリオレフィン樹脂組成物の溶融押出時におけるメルトテンションの限界速度が大きくなり、成形体表面の平滑性が良好になる点が記載されている。
特許文献2には、
(a)炭素繊維とビスフェノールA型エポキシ樹脂系サイジング剤との混合物を押出造粒することにより、直径0.8mm弱、母線長さ平均約2mmの円柱形状の炭素繊維集合体を作製し、
(b)炭素繊維集合体とポリプロピレン樹脂とを混練してペレットとし、
(c)ペレットを射出成形する
ことにより得られる成形体が開示されている。
同文献には、
(A)リサイクル又はリユースされた炭素繊維は、繊維長がブロードであるために、フィーダーを用いた押出機への安定供給が困難である点、及び、
(B)炭素繊維を円柱形状の炭素繊維集合体とすると、フィーダーを用いた押出機への安定供給が可能となる点
が記載されている。
再生炭素繊維は、長さが不均一であるために、ポリオレフィン樹脂に対する分散性が悪い。これに対し、特許文献1に記載されているように、炭素繊維を含むポリオール組成物にイミン変性ポリオレフィン樹脂を添加すると、炭素繊維が再生炭素繊維であっても、表面が比較的平滑な成形体が得られる。これは、イミン変性ポリオレフィン樹脂が、炭素繊維をポリオレフィン樹脂中に均一に分散させるための分散剤として機能するためと考えられる。しかしながら、イミン変性ポリオレフィン樹脂を使用した場合であっても、再生炭素繊維を含む成形体の表面には若干の凹凸が残る場合があった。
さらに、炭素繊維強化樹脂成形体を温度変化が生じる環境下において安定して使用するためには、炭素繊維強化樹脂成形体の線膨張係数は小さいほど良い。しかし、単に樹脂中に炭素繊維を分散させる方法では、線膨張係数の低減に限界がある。
特開2022-040726号公報 特開2020-196882号公報
本発明が解決しようとする課題は、炭素繊維として再生炭素繊維を用いた場合であっても、炭素繊維がポリオレフィン中に均一に分散している成形体を得ることが可能なポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
本発明が解決しようとする他の課題は、表面の平滑性が高く、線膨張係数が小さく、かつ、機械的特性に優れた成形体を得ることが可能なポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなポリオレフィン樹脂組成物を用いたポリオレフィン樹脂成形体を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、
ポリオレフィン樹脂と、
炭素繊維の表面がエポキシ樹脂系サイジング剤で処理された被覆炭素繊維と、
結晶核剤と
を含む。
本発明に係るポリオレフィン樹脂成形体は、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物を含む。
ポリオレフィン樹脂成形体は、線膨張係数が10.0×10-5/℃以下であるものが好ましい。
炭素繊維の表面をエポキシ樹脂系サイジング剤で処理し、これをポリオレフィン樹脂に添加すると、炭素繊維が再生炭素繊維であっても、炭素繊維がポリオレフィン樹脂中に均一に分散しているポリオレフィン樹脂組成物が得られる。このような組成物を用いて成形体を作製すると、再生炭素繊維の分散剤としてイミン変性ポリオレフィン樹脂を用いた場合に比べて、表面がより平滑な成形体が得られる。
また、本発明に係るポリオレフィン樹脂成形体は、炭素繊維がポリオレフィン樹脂中に均一に分散しているために、同量の炭素繊維が不均一に分散している成形体に比べて線膨張係数が小さくなる。これに加えて、ポリオレフィン樹脂中に適量の結晶核剤を添加すると、ポリオレフィン樹脂の結晶が小さくなり、成形体の線膨張係数がさらに小さくなる。
さらに、このようなポリオレフィン樹脂組成物を用いて、炭素繊維が一方向に配向するように成形すると、配向方向の機械的特性に優れた成形体が得られる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. ポリオレフィン樹脂組成物]
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物(以下、単に「組成物」ともいう)は、
ポリオレフィン樹脂と、
炭素繊維の表面がエポキシ樹脂系サイジング剤で処理された被覆炭素繊維と、
結晶核剤と
を含む。
[1.1. ポリオレフィン樹脂]
ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂成形体(以下、単に「成形体」ともいう)のマトリックスを構成する。本発明において、ポリオレフィン樹脂の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、
(a)ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル)との共重合体、
(b)上記樹脂の塩素化物
などがある。
組成物には、これらのいずれか1種のポリオレフィン樹脂が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
[1.2. 被覆炭素繊維]
被覆炭素繊維は、
炭素繊維と、
炭素繊維の表面を被覆するエポキシ樹脂系サイジング剤と
を含む。
[1.2.1. 炭素繊維]
[A. 材料]
本発明において、炭素繊維の種類は特に限定されない。炭素繊維は、未使用の炭素繊維であっても良く、あるいは、炭素繊維強化樹脂成形体から回収された炭素繊維(すなわち、再生炭素繊維)であっても良い。
炭素繊維は、長繊維を裁断することにより得られるチョップドファイバーであっても良く、あるいは、長繊維を粉砕することにより得られるミルドファイバーであっても良い。
[B. 平均繊維長]
「平均繊維長」とは、無作為に選択された10本以上の炭素繊維について測定された繊維長さの平均値をいう。
炭素繊維の平均繊維長は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。
例えば、未使用のチョップドファイバーの場合、平均繊維長は、3mm~24mm程度である。また、未使用のミルドファイバーの場合、平均繊維長は、20μm~500μm程度である。未使用の炭素繊維は、通常、繊維長のばらつきが小さく、ポリオレフィン樹脂中に均一に分散しやすい。
再生炭素繊維の場合、平均繊維長は、その炭素繊維を回収した炭素繊維強化樹脂成形体の種類や製造履歴により異なる。再生炭素繊維の場合、平均繊維長は、通常、100μm~500μm程度である。平均繊維長は、好ましくは、100μm~400μmである。再生炭素繊維は、通常、繊維長のばらつきが大きく、ポリオレフィン樹脂中に均一に分散しにくい。しかしながら、本発明に係る方法を用いると、繊維長のばらつきが大きい再生炭素繊維であっても、ポリオレフィン樹脂中に均一に分散させることができる。
[1.2.2. エポキシ樹脂系サイジング剤]
[A. 材料]
「エポキシ樹脂系サイジング剤」とは、エポキシ樹脂を分散媒に分散させた液状樹脂をいう。
サイジング剤は、一般に、炭素繊維を被覆して収束し、炭素繊維の損傷を抑え、炭素繊維を取り扱いやすくするためのものである。
これに対し、ポリオレフィン樹脂を補強するための炭素繊維の表面をエポキシ樹脂系サイジング剤で処理すると、炭素繊維の表面のポリオレフィン樹脂に対する濡れ性が向上する。そのため、エポキシ樹脂系サイジング剤で処理された炭素繊維(被覆炭素繊維)を用いて炭素繊維強化樹脂成形体を作製すると、炭素繊維がポリオレフィン樹脂中に均一に分散し、表面が平滑な成形体を得ることができる。また、補強材として長さが不均一な再生炭素繊維を用いた場合であっても、ポリオレフィン樹脂中に再生炭素繊維を均一に分散させることができる。
本発明において、サイジング剤に含まれるエポキシ樹脂の種類、サイジング剤中に含まれるエポキシ樹脂の濃度等は、特に限定されない。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などがある。
また、サイジング剤に含まれるエポキシ樹脂の濃度は、通常、0.1mass%~5.0mass%程度である。
[B. 被覆量]
「エポキシ樹脂の被覆量(mass%)」とは、被覆炭素繊維の総質量に対する、エポキシ樹脂の質量の割合をいう。
本発明において、エポキシ樹脂の被覆量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。一般に、エポキシ樹脂の被覆量が少なくなりすぎると、ポリオレフィン樹脂中における被覆炭素繊維の分散性が低下する場合がある。一方、エポキシ樹脂の被覆量を必要以上に多くしても、効果に差がなく、実益がない。エポキシ樹脂の被覆量は、通常、1.0mass%~5.0mass%程度であり、好ましくは、1.5mass%~4.0mass%である。
[1.3. 結晶核剤]
「結晶核剤」とは、少量で結晶性樹脂の結晶化を著しく促進し、均一で微細な結晶を生成させる作用がある添加剤をいう。
ポリオレフィン樹脂に結晶核剤を添加し、溶融及び固化させると、ポリオレフィン樹脂からなる微細な結晶が生成する。その結果、結晶核剤を添加しない場合に比べて、成形品外観と物性品質が改善でき、また、成形体の線膨張係数が小さくなる。
本発明において、結晶核剤の種類は、特に限定されない。結晶核剤としては、例えば、
(a)オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、
(b)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪族金属塩
などがある。
組成物には、これらのいずれか1種の結晶核剤が含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
[1.4. 含有量]
[1.4.1. 被覆炭素繊維の含有量]
「被覆炭素繊維の含有量」とは、ポリオレフィン樹脂の質量を100とした時の、被覆炭素繊維の質量をいう。
一般に、被覆炭素繊維の含有量が多くなるほど、組成物から得られる成形体の機械的特性が向上する。このような効果を得るためには、被覆炭素繊維の含有量は、0.5質量部以上が好ましい。含有量は、より好ましくは、1.0質量部以上、さらに好ましくは、2.0質量部以上、特に好ましくは、3.0質量部以上である。
一方、被覆炭素繊維の含有量が過剰になると、組成物の成形性が低下する場合がある。従って、被覆炭素繊維の含有量は、15質量部以下が好ましい。含有量は、より好ましくは、13質量部以下、さらに好ましくは、11質量部以下、特に好ましくは、10質量部以下である。
[1.4.2. 結晶核剤の含有量]
「結晶核剤の含有量」とは、ポリオレフィン樹脂の質量を100とした時の、結晶核剤の質量をいう。
一般に、結晶核剤の含有量が多くなるほど、ポリオレフィン樹脂の結晶が微細となる。このような効果を得るためには、結晶核剤の含有量は、0.01質量部以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.02質量部以上である。
一方、結晶核剤を必要以上に添加しても、効果に差がなく、実益がない。従って、結晶核剤の含有量は、0.05質量部以下が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、0.04質量部以下である。
[2. ポリオレフィン樹脂成形体]
本発明に係るポリオレフィン樹脂成形体は、本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物を含む。
[2.1. ポリオレフィン樹脂組成物]
ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と、被覆炭素繊維と、結晶核剤とを含む。ポリオレフィン樹脂組成物の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
[2.2. 成形方法]
本発明に係る成形体は、本発明に係る組成物を種々の方法を用いて成形することにより製造することができる。本発明において、成形体の成形方法は、特に限定されない。成型方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法などがある。特に、押出成形法は、炭素繊維が一方向に配向しやすいので、成形方法として好適である。
[2.3. 特性]
[2.3.1. 線膨張係数]
本発明において、「線膨張係数α(/℃)」とは、次の式(1)を用いて算出される値をいう。
α=(Lh-Lc)/{Lc(60-20)} …(1)
但し、
hは、60℃における線膨張係数測定用試料の長さ、
cは、20℃における線膨張係数測定用試料の長さ。
本発明に係る成形体は、ポリオレフィン樹脂中に炭素繊維が分散しており、かつ、結晶核剤により結晶粒が微細化されているために、ポリオレフィン樹脂のみからなる成形体に比べて線膨張係数が小さい。製造条件を最適化すると、成形体の線膨張係数は、10.0×10-5/℃以下(1.0×10-4/℃以下)、8.0×10-5/℃以下、6.0×10-5/℃以下、あるいは、5.0×10-5/℃以下となる。
製造条件をさらに最適化すると、線膨張係数が1.0×10-5/℃程度である成形体であっても製造することができる。
[2.3.2. 表面粗さ]
本発明に係る成形体は、エポキシ樹脂系サイジング剤で処理された炭素繊維(=被覆炭素繊維)を用いて製造されるため、炭素繊維が再生炭素繊維である場合であっても、炭素繊維がポリオレフィン樹脂中に均一に分散しやすい。そのため、本発明に係る成形体の表面粗さは、従来の方法を用いて製造された成形体のそれより小さい。
製造条件を最適化すると、成形体の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、35μm以下となる。Raは、好まくは、25μm以下、より好ましくは、15μm以下である。
[2.3.3. 配向度]
本発明に係る成形体を製造する場合において、製造方法を最適化すると、炭素繊維が一方向に配向している成形体を得ることができる。特に、押出成形法は、炭素繊維が一方向に配向しやすい。そのため、押出成形法を用いて製造された成形体は、押出方向の機械的特性に優れている。
[3. 作用]
炭素繊維の表面をエポキシ樹脂系サイジング剤で処理し、これをポリオレフィン樹脂に添加すると、炭素繊維が再生炭素繊維であっても、炭素繊維がポリオレフィン樹脂中に均一に分散しているポリオレフィン樹脂組成物が得られる。このような組成物を用いて成形体を作製すると、再生炭素繊維の分散剤としてイミン変性ポリオレフィン樹脂を用いた場合に比べて、表面がより平滑な成形体が得られる。
また、本発明に係るポリオレフィン樹脂成形体は、炭素繊維がポリオレフィン樹脂中に均一に分散しているために、同量の炭素繊維が不均一に分散している成形体に比べて線膨張係数が小さくなる。これに加えて、ポリオレフィン樹脂中に適量の結晶核剤を添加すると、ポリオレフィン樹脂の結晶が小さくなり、成形体の線膨張係数がさらに小さくなる。
さらに、このようなポリオレフィン樹脂組成物を用いて、炭素繊維が一方向に配向するように成形すると、配向方向の機械的特性に優れた成形体が得られる。
(実施例1~5、比較例1~6)
[1. 試料の作製]
[1.1. 原料]
ポリオレフィン樹脂には、高密度ポリエチレン(HDPE)((株)プライムポリマー製、ハイゼックス(登録商標)5000H)を用いた。
炭素繊維には、廃棄された炭素繊維強化樹脂から回収した再生炭素繊維(チョップドファイバー)を用いた。再生炭素繊維の平均繊維長は、290μmであった。再生炭素繊維は、エポキシ樹脂系サイジング剤で処理したものと、未処理のものとを準備した。
結晶核剤には、結晶核剤含有マスターバッチ(理研ビタミン(株)製、リケマスター(登録商標)CN-002、(結晶核剤)ステアリン酸亜鉛1.36%/(主成分)高密度ポリエチレン(HDPE))を用いた。
イミン変性ポリオレフィン樹脂には、三井化学(株)製、アトマー(登録商標)IPを用いた。
[1.2. ペレットの作製]
上記原料を所定の比率で配合し、混練押出機((株)神戸製鋼所製、KTX-30)で溶融混練した。溶融させた組成物を、直径3mmのストランド状で水中冷却層に押し出し、ペレタイザー((株)タナカ製、ストランドカッター)で長さ3~4mmに切断し、ペレットを得た。溶融混練条件は、以下の通りである。
バレル及びダイ温度:200℃、
スクリュー回転数:400rpm、
吐出量:20kg/h。
[1.3. 成形体の作製]
得られたペレットを、押出成形機((株)池貝製、GS90)に投入し、押出成形によって、外径30mm、内径25mmからなるチューブ状の成形体を製造した。成形条件は、以下の通りである。
ダイ温度:200℃、
スクリュー回転数:30rpm、
引取速度:2.0m/min。
[2. 試験方法]
[2.1. 成形性(外観評価)]
成形性は、目視による成形体の外観で評価した。
[2.2. 耐熱膨張性(線膨張係数)]
耐熱膨張性は、線膨張係数で評価した。線膨張係数測定用の試料には、長さ1000mmのチューブ状成形体を用いた。試料を20℃の恒温槽において8時間保持した後、試料の長さLcを測定した。次に、試料を60℃の恒温槽において8時間保持した後、試料の長さLhを測定した。得られたLc及びLhを式(1)に代入し、線膨張係数を算出した。
[2.3. 表面粗さ]
JIS B 0601に準拠して、算術平均粗さRaを測定した。
[3. 結果]
表1に、結果を示す。なお、表1には、各試料の組成も併せて示した。
表1中、外観に関し、
「◎」は、内外面が滑らかであること(Raが15μm以下であること)を表し、
「○」は、使用上支障とならない流れ痕が目視で確認できること(Raが15μm超25μm以下であること)を表し、
「△」は、使用上支障とならない浅い溝が目視で確認できること(Raが25μm超35μm以下であること)を表し、
「×」は、表面にサメ肌が現れ、手触りがガタガタであること(Raが35μmを超えていること)を表す。
表1より、以下のことが分かる。
(1)比較例1は、未処理の再生炭素繊維とイオン変性ポリオレフィン樹脂とを含む成形体である。イオン変性ポリオレフィン樹脂は、未処理の再生炭素繊維をポリエチレン中に均一分散させる作用はあるが、その効果は不十分であった。そのため、比較例1の外観はやや劣っていた。
(2)比較例2~5は、未処理の再生炭素繊維を含み、イオン変性ポリオレフィン樹脂を含まない成形体である。そのため、比較例2~5は、再生炭素繊維の分散状態が悪く、外観が劣っていた。
(3)比較例6は、ポリエチレンのみからなる成形体である。比較例6は、外観は良好であったが、線膨張係数が10×10-5/℃を超えていた。
(4)実施例1~5は、いずれも外観が良好であった。これは、再生炭素繊維の表面がエポキシ樹脂系サイジング剤で処理されているために、ポリエチレン中に再生炭素繊維が均一に分散したためである。
(5)実施例2は、再生炭素繊維の含有量が比較例3と同一であるにも関わらず、比較例3に比べて線膨張係数が小さくなった。これは、再生炭素繊維が均一分散していることに加え、結晶核剤によってポリエチレンの結晶粒が微細化したためと考えられる。
これと同様の傾向が、実施例3と比較例4の間、実施例4と比較例5の間、及び、実施例5と比較例2の間にも認められた。
Figure 2024033645000001
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るポリオレフィン樹脂組成物は、建物の空調用の配管、自動車や航空機の部品、携帯機器の筐体などの原料として用いることができる。

Claims (5)

  1. ポリオレフィン樹脂と、
    炭素繊維の表面がエポキシ樹脂系サイジング剤で処理された被覆炭素繊維と、
    結晶核剤と
    を含むポリオレフィン樹脂組成物。
  2. 前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、前記被覆炭素繊維の含有量が15質量部以下である請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
  3. 前記炭素繊維は、再生炭素繊維である請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂組成物を含むポリオレフィン樹脂成形体。
  5. 線膨張係数が10.0×10-5/℃以下である請求項4に記載のポリオレフィン樹脂成形体。
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