JP2024033232A - 変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂、その製造方法、硬化性樹脂組成物及び硬化物 - Google Patents

変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂、その製造方法、硬化性樹脂組成物及び硬化物 Download PDF

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Daiki Sugiyama
侑司 三角
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航 深山
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Abstract

【課題】他のエポキシ樹脂や硬化剤との混和性が良好であり、難燃性と耐熱性のバランスに優れた硬化物を与える変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される構造を有し、標準ポリスチレン検量線とRI検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、下記式(2)で表されるP-H結合含有化合物の溶出ピークの面積比率が10面積%以下であって、且つ前記化合物を除く溶出ピークの多分散度(Mw/Mn)が1.00~4.00である、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。TIFF2024033232000027.tif21170TIFF2024033232000028.tif21170(上記式(1)、(2)中、R1、R2は水素原子又は炭化水素基を示し、それぞれ異なっていても同一でもよく、R1とR2が結合し、環を形成していてもよい。nは0又は1の整数を示す。)【選択図】図1

Description

本発明は、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂及びその製造方法、並びに、この変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。本発明はまた、該硬化性樹脂組成物を含む塗料、プリプレグ及び半導体封止剤、並びに該硬化物を含む塗膜、繊維強化プラスチック及び電気・電子材料に関する。
エポキシ樹脂は、電気特性、接着性、耐熱性、成形性等に優れることから主に塗料分野、土木分野、電気分野、スポーツ分野等の多くの用途で使用されている。中でも、グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、低分子量でありながら多官能であるために硬化物の耐熱性が良好であり、さらに、同一分子量帯のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に比べて粘度が低いことから、広く用いられている。特に、低粘度を生かした半導体のアンダーフィル材や、炭素繊維との良好な濡れ性を生かした炭素繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂に好適な材料である。
エポキシ樹脂は電子部品の一部や航空・自動車の構造材として用いられることから、安全性を担保するために難燃性が求められる。過去に、難燃性エポキシ樹脂を開発するために、テトラブロモビスフェノールA誘導体のような臭素を導入した化合物や、アンチモン系の添加剤を樹脂原料に混合する検討がなされてきた。近年、環境や人体への安全性について関心が高まっていることから、難燃性に加えて低有害性も求められている。そこで、リン原子を導入した難燃化手法が検討されてきた。
例えば、非特許文献1には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンと9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(DOPO)とを無触媒下180℃で反応させた難燃性エポキシ樹脂が開示されている。特許文献1には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとDOPOとをトリアルキルホスフィン系触媒存在下、160℃で反応させた難燃性エポキシ樹脂が開示されている。いずれの反応生成物も難燃性に関しては良好であった。
特開2011-213870号公報
HUSSAIN, Manwar, et al. Effect of organo-phosphorus and nano-clay materials on the thermal and fire performance of epoxy resins. Journal of applied polymer science, 2004, 91.2:1233-1253.
しかしながら、非特許文献1ではDOPOとの反応率を高めるために180℃もの高温で反応させた結果、グリシジルアミン型エポキシ樹脂同士の自己重合反応が進行してしまい、品質が安定しない懸念があった。さらに、自己重合によりゲル化してしまうことで、他のエポキシ樹脂や硬化剤との混和性が不十分となり、ハンドリング性の悪化が懸念され
た。特許文献1では、非特許文献1に比べて低温で反応させるためにトリアルキルホスフィン系触媒を使用したものの、付加反応と触媒の相性が悪く、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて反応生成物を確認すると未反応DOPOが過剰に残っていた。未反応DOPOは可塑剤として振舞い、耐熱性や機械物性を悪化させるおそれがある。そのため、単なる難燃性の向上のみならず、耐熱性とのバランスがとれ、さらに混和性が良好な難燃性エポキシ樹脂の開発が望まれている。
本発明は、上記従来技術に鑑みなされたものであり、他のエポキシ樹脂や硬化剤との混和性が良好であり、難燃性と耐熱性のバランスに優れた硬化物を与える変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を提供することを課題とする。また、本発明の他の課題はこの変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含んでなる硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することである。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、P-H結合含有化合物に由来する構造を有する変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂であって、標準ポリスチレン検量線とRI検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、P-H結合含有化合物の溶出ピークの面積比率が10面積%以下であって、且つ前記P-H結合含有化合物を除く多分散度(Mw/Mn)が1.00~4.00である、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[14]に存する。
[1] 下記式(1)で表される構造を有する変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂であって、標準ポリスチレン検量線とRI検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、下記式(2)で表されるP-H結合含有化合物の溶出ピークの面積比率が10面積%以下であって、且つ前記P-H結合含有化合物を除く溶出ピークの多分散度(Mw/Mn)が1.00~4.00である、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
Figure 2024033232000002
(上記式(1)中、R、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、それぞれ異なっていても同一でもよく、RとRが結合し、環を形成していてもよい。nは0又は1の整数を示す。)
Figure 2024033232000003

(上記式(2)中、R、R、nは式(1)と同義である。)
[2] 上記式(1)で表される構造が下記式(3)で表される構造である、[1]に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
Figure 2024033232000004

(上記式(3)中、R、R、nは式(1)と同義であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
[3] 前記式(1)で表される構造が下記式(4)で表される構造である、[1]に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
Figure 2024033232000005

(上記式(4)中、R、R、nは式(1)と同義である。)
[4] エポキシ当量が50~1000g/eqである、[1]~[3]のいずれかに記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
[5] リン含有率が1.0~8.0wt%である、[1]~[4]のいずれかに記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
[6] 下記式(9)で表される構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂と、前記式(2)で示されるP-H結合含有化合物とを、反応温度100~130℃、第三級アミン又は第四級アンモニウム塩の存在下で反応させる工程を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の製造方法。
Figure 2024033232000006

[7] [1]~[5]のいずれかに記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂と硬化剤とを含んでなる、硬化性樹脂組成物。
[8] [7]に記載の硬化性樹脂組成物を含む、塗料。
[9] [7]に記載の硬化性樹脂組成物を含む、プリプレグ。
[10] [7]に記載の硬化性樹脂組成物を含む、半導体封止剤。
[11] [7]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる、硬化物。
[12] [11]に記載の硬化物を含む、塗膜。
[13] [11]に記載の硬化物を含む、繊維強化プラスチック。
[14] [11]に記載の硬化物を含む、電気・電子材料。
本発明によれば、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂であって、他のエポキシ樹脂や硬化剤との混和性が良好であり、難燃性に優れる一方で、硬化物のガラス転移温度の低下を抑えられ、バランスの取れた物性のエポキシ樹脂を提供することができる。また、本発明によれば、この変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含んでなる硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することができる。
実施例3のクロマトグラムである。丸いシンボルで示される曲線は標準ポリスチレン検量線を示す。 比較例1のクロマトグラムである。丸いシンボルで示される曲線は標準ポリスチレン検量線を示す。 比較例2のクロマトグラムである。丸いシンボルで示される曲線は標準ポリスチレン検量線を示す。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、本明細書において、数値範囲の下限値及び上限値を分けて記載する場合、当該数値範囲は、それらのうち任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせたものとすることができる。
〔変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂〕
本発明の第1の実施形態である変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂(以降、単に変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂と称する。)は、下記式(1)で表される構造を有する変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂である。本実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、標準ポリスチレン検量線とRI検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と称することがある。)において、P-H結合含有化合物(以下、「成分P」と称することがある。)の溶出ピークの面積比率が10面積%以下であって、且つ前記成分Pを除く溶出ピークの多分散度(Mw/Mn)が1.00~4.00である。なお、本明細書において、エポキシ樹脂は、エポキシ化合物を含む概念であるものとする。また、本明細書において変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂とは、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を変性させたエポキシ樹脂であって、平均2官能以上のエポキシ樹脂であることが好ましい。
Figure 2024033232000007

上記式(1)中、R、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、それぞれ異なっていても同一でもよく、RとRが結合し、環を形成していてもよい。nは0又は1の整数を示す。
上記式(1)で表される構造は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂のグリシジルアミン部分と、下記式(2)で表されるP-H結合含有化合物(成分P)に由来する構造である。
Figure 2024033232000008

上記式(2)中、R、R、nは式(1)と同義である。
前記式(1)及び式(2)中のR、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、それぞれ異なっていても同一でもよく、RとRが結合し、環を形成していてもよい。炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tertブチル基、フェニル基、トリル基、及びシクロオクチル基、並びにこれらが結合し、環を形成した構造が例示されるが、チャー形成能が高い官能基であれば例示したもの以外であってもよい。チャー形成能が高く、難燃性が向上する観点から、フェニル基、トリル基、シクロオクチル基、又はこれらが結合し、環を形成した構造が好ましい。中でもR及びRがフェニル基であり、且つ、当該フェニル基同士が直接結合することでビフェニル骨格を形成している構造はチャー形成能が特に高く、難燃性が向上する観点から特に好ましい。
[式(1)の窒素原子に結合する構造]
前記式(1)の窒素原子に結合する構造は、グリシジル基、グリシジル基と式(2)で表される化合物が反応した基、又は、炭化水素基が好ましく、それぞれ異なっていても同一でもよい。これらはさらに置換基を有していてもよく、ヘテロ原子を有していてもよい。
炭化水素基としてはアルキル基、フェニル基、アルキル置換されたアルキル基、アルキル置換されたフェニル基が好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、及びtertブチル基が挙げられる。アルキル置換されたアルキル基としては、これらがさらにアルキル基で置換された構造が挙げられる。アルキル置換されたフェニル基としては、上記アルキル基で置換されたフェニル基が挙げられる。
ヘテロ原子としては、特に限定されないが、窒素、酸素、硫黄、リン、珪素、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素等が挙げられる。
上記式(1)で表される構造は、硬化物のガラス転移温度を高められる観点から、下記式(3)又は下記式(4)で表される、アルキル置換されたフェニル基をもつ構造が好ましい。
Figure 2024033232000009

上記式(3)中、R、R、nは式(1)と同義であり、Rは水素原子又はメチル基である。
式(3)の窒素原子に結合する構造は、式(1)の窒素原子に結合する構造と同様である。
式(3)のベンゼン環に結合する構造は、特に限定されないが、グリシジルエーテル基、ジグリシジルアミノ基、又はこれらと式(2)で表される化合物が反応した基が好ましい。
式(1)で表される構造は、経済性の観点から、下記式(4)で表される構造であることがより好ましい。
Figure 2024033232000010

上記式(4)中、R、R、nは式(1)と同義である。
式(1)で表される構造を有する変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、式(1)で表される構造を有する化合物であれば特に限定されないが、具体例として、下記式(5)のXが、それぞれ独立して下記式(7)及び/又は下記式(8)のZと結合した構造、並びに、下記式(6)のYが、それぞれ独立して下記式(7)及び/又は下記式(8)のZと結合した構造が例示される。
Figure 2024033232000011

上記式(5)中、Rは式(3)と同義である。
Figure 2024033232000012

Figure 2024033232000013

上記式(7)中、R、R、nは式(1)と同義である。
Figure 2024033232000014
[下記式(2)で表されるP-H結合含有化合物(成分P)]
上記式(1)で表される構造は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂のグリシジルアミン部分と、下記式(2)で表されるP-H結合含有化合物(成分P)と、に由来する構造であるため、本実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、不純物として、成分Pを含みうる。成分Pの具体例としては、ジメチルホスフィンオキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジプロピルホスフィンオキシド、ジイソプロピルホスフィンオキシド、ジブチルホスフィンオキシド、ジtertブチルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフ
ィンオキシド、ビス(4-メチルフェニル)ホスフィンオキシド、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、1,4-シクロオクチレンホスフィンオキシド、1,5-シクロオクチレンホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの化合物のうち1種が含まれていてもよく、2種類以上が任意の組み合わせ及び比率で含まれていてもよい。
[変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のリン含有率]
本実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のリン含有率としては、特に限定されないが、難燃性を向上できる点で、下限値としては1.0wt%以上が好ましく、2.0wt%以上がより好ましく、3.0wt%以上がさらに好ましく、4.0wt%以上が特に好ましい。一方、反応を円滑に進行でき、品質が安定する点で、上限値としては8.0wt%以下が好ましく、7.0wt%以下がより好ましく、6.5wt%以下がさらに好ましく、6.0wt%以下が特に好ましい。
変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のリン含有率は、後述するグリシジルアミン型エポキシ樹脂と成分Pの付加反応によって変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を製造している場合、製造時の仕込み比率から算出することができる。その他の任意の製造方法の場合であっても仕込み比率から算出すればよい。仕込み比率から算出することが困難な場合、適切な方法で元素分析をすればリン含有率を定量することができる。
[変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の物性・特性]
変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、50g/eq以上であり、好ましくは100g/eq以上であり、より好ましくは150g/eq以上であり、さらに好ましくは200g/eq以上であり、特に好ましくは250g/eq以上である。エポキシ当量が上記下限値以上であることにより、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のリン含有率を高めることができ、難燃性を向上させることができる。
一方、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限値は、1,000g/eq以下であり、好ましくは800g/eq以下であり、より好ましくは500g/eq以下であり、さらに好ましくは450g/eq以下である。エポキシ当量が上記上限値以下であることにより、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の単位重量当たりのエポキシ基数が多くなるため、硬化させたときに架橋密度が高くなり、ガラス転移温度を高めることができる。
変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定される。
標準ポリスチレン検量線とRI検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂に含まれる成分Pの溶出ピークの面積比率の下限値は、0.01面積%以上であることが好ましく、0.1面積%以上がより好ましく、0.3面積%以上であることがより好ましく、0.5面積%以上であることが特に好ましい。成分Pの面積比率が上記下限値未満の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を製造するためには、熱履歴が大きくなることが予想され、品質の不安定化を起こす懸念がある。さらに、残存成分Pを除くための精製操作をする場合には多くの時間と多額のコストが必要となるため、経済的、環境的に好ましくない。これに対し、成分Pの面積比率が上記下限値以上であれば、このような問題の発生を回避することができる。
変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂に含まれる成分Pの溶出ピークの面積比率の上限値は、10.0面積%以下であり、5.0面積%以下であることが好ましく、3.0面積%以下であることがより好ましく、2.0面積%以下であることがさらに好ましく、1.0面積%以下であることが特に好ましい。成分Pの面積比率が上記上限以下であれば、残存する成分Pが硬化阻害を起こしたり、貯蔵安定性を悪化させたり、可塑剤として振舞うためにガラス転移温度が低下するといった問題の発生を回避することができる。
標準ポリスチレン検量線とRI検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、成分Pを除く溶出ピークの多分散度(=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))の下限値は、1.00以上であり、1.02以上であることが好ましく、1.05以上であることがより好ましく、1.08以上であることがさらに好ましい。一方、多分散度(Mw/Mn)の上限値は、4.00以下であり、3.00以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましく、1.50以下であることがさらに好ましい。
成分Pを除く溶出ピークの多分散度は、後述の触媒を用いたり、後述の反応条件における反応温度で反応することで小さくすることができる。
多分散度の値を上記範囲内に調整することで、再現性良く変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を合成できる。また、上記上限値超である場合、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の一部が三次元架橋をしていることが予想され、他のエポキシ樹脂や硬化剤との混和性が著しく低下する。これに対し、上記上限値以下であれば、このような問題の発生を回避することができる。
なお、成分Pを除く変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の多分散度(Mw/Mn)及び変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂に含まれる成分Pの面積比率はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。より詳細な方法の例については、後掲の実施例の項において説明する。
〔変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の製造方法〕
変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、下記式(9)で表される構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A)と上記式(2)で表される成分P(B)とを反応させることで製造することができる。好ましくは、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、下記式(9)で表される構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A)と上記式(2)で表される成分P(B)とを、触媒(C)の共存下において、好適な仕込み比のもと反応させることより製造される。
Figure 2024033232000015
[グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A)]
上記式(9)で表される構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A)(以下、「エポキシ樹脂(A)」と称することがある。)は、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基等、任意の結合でオキシラン環をさらに含んでもよい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A)としては、以下のアミン化合物群のグリシジル化体が挙げられる。例えば、ジアミノジフェニルメタンのグリシジル化体は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを意味する。アミン化合物としては、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、トリジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ジアミノナフタレン、アセトグアナミン等のメラミン誘導体類、アミノフェノール、アミノフェノール、これらの化合物の異性体、これらの化合物のベンゼン環に結合する水素原子の一部又は全部がメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、フェニル基で置換された化合物が例示される。入手性や経済性の観点から、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(A)は、アニリン、ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、又はこれらの異性体のグリシジル化体が好ましく、ガラス転移温度を高められる観点から、ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、又はこれらの異性体のグリシジル化体が特に好ましい。
以上に挙げたエポキシ樹脂(A)は1種のみでも複数種を任意の組み合わせ及び比率で使用することもでき、目的とする変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂又はその硬化物のガラス転移温度(Tg)、難燃性、混和性、軟化点、弾性率等の要求性能と、用途に応じた要求性能を鑑みて設定すればよい。
[成分P(B)]
成分P(B)は、式(2)で表される化合物であれば特に限定されないが、具体例として、ジメチルホスフィンオキシド、ジエチルホスフィンオキシド、ジプロピルホスフィンオキシド、ジイソプロピルホスフィンオキシド、ジブチルホスフィンオキシド、ジtertブチルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(4-メチルフェニル)ホスフィンオキシド、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、1,4-シクロオクチレンホスフィンオキシド、1,5-シクロオクチレンホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの化合物は単独でも2種類以上を混合して使用してもよく、これらに限定されない。入手性の観点からジフェニルホスフィンオキシド、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、1,4-シクロオクチレンホスフィンオキシド、又は1,5-シクロオクチレンホスフィンオキシドが好ましく、チャー形成能が高く難燃性が向上する観点からジフェニルホスフィンオキシド、又は9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドが特に好ましい。
[触媒(C)]
本実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を製造するための反応工程は触媒(C)の存在下で行うことができる。触媒(C)としては、通常、エポキシ樹脂の製法におけるアドバンス法の触媒として用いられるものであれば特に制限されない。
触媒(C)としては、例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第三級アミン、第四級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属の水素化物;酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。
有機リン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリ-2,4-キシリルホスフィン、トリ-2,5-キシリルホスフィン、トリ-3,5-キシリルホスフィン、トリス(p-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p-n-オクチルフェニル)ホスフィン、トリ(p-n-ノニルフェニル)ホスフィン、トリアリルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィン、ジ-tert-ブチルメチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、シクロヘキシルジ-tert-ブチルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジ-n-ブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
第三級アミンの具体例としては、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
環状アミン類の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン等が挙げられる。
イミダゾール類の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
これらのうち、触媒(C)は、第三級アミン又は第四級アンモニウム塩を使用することが、低温で反応を完結させられる点で好ましい。この結果、多分散度を小さくでき、混和性が向上する。さらに、可塑剤として振舞う恐れがある未反応の成分Pが減少するために耐熱性が向上する。以上に挙げた触媒(C)は1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
触媒(C)を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、通常エポキシ樹脂(A)の使用量に対して50000wtppm以下であり、例えば10~10000wtppmとすることが好ましい。
[反応溶媒(D)]
本実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を製造するための反応工程において、反応溶媒(D)を用いてもよい。この反応溶媒(D)としては、原料を溶解するものであれば特に限定されないが、通常は有機溶媒である。
有機溶媒としては例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。
芳香族系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
ケトン系溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等が挙げられる。
アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
以上に挙げた反応溶媒(D)は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
なお、反応途中で高粘性生成物が生じたときは反応溶媒(D)を更に加えて反応を続けることもできる。
[反応条件]
エポキシ樹脂(A)と成分P(B)との反応は、常圧、加圧、減圧いずれの条件で行うこともできる。
反応温度は、通常60~200℃、好ましくは80~170℃、特に好ましくは100~130℃である。反応温度が上記下限以上であると反応速度を確保でき、さらに生成物の軟化点以上であるために円滑に撹拌できる点で好ましい。また、反応温度が上記上限以下であるとグリシジルアミン型エポキシ樹脂の三次元架橋を伴う副反応が進行しにくく、高純度の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を得られ、混和性が向上する観点から好ましい。
反応時間としては特に限定されないが、通常0.5~24時間であり、好ましくは1~22時間であり、より好ましくは1.5~20時間である。反応時間が上記上限以下であると、生産効率向上の点で好ましく、上記下限以上であると、未反応成分を削減できる点で好ましい。
[希釈溶剤(E)]
本実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、反応終了後に希釈溶剤(E)を混合して固形分濃度を調整してもよい。その希釈溶剤(E)としては、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を溶解するものであれば特に限定されないが、通常は有機溶剤である。有機溶剤の具体例としては前述の反応溶媒(D)として挙げたものと同様のものを用いることができる。
なお、本実施形態において、「溶媒」と「溶剤」という語は、反応時に用いるものを「溶媒」、反応終了後に用いるものを「溶剤」として用いることとするが、同種のものを用いても、異種のものを用いてもよい。
[仕込み変性率]
変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、上記式(9)で表される構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂(A)と上記式(2)で表される成分P(B)とを好適な仕込み比のもと反応させることより製造される。エポキシ化合物(A)が持つエポキシ基のうち、成分P(B)と反応した割合を変性率と称す。下記式に従って原料のエポキシ当量、分子量及び仕込み量から仕込み変性率、すなわち反応設計上の変性率を算出することができる。
式:仕込み変性率(%)=(成分Pの仕込み量(g)÷成分Pの分子量(g/mol))÷(エポキシ樹脂(A)の仕込み量(g)÷エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量(g/eq))×100
仕込み変性率の下限値としては、リン含有率を高められ、難燃性が向上できる観点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましく、30%以上が特に好ましい。仕込み変性率の上限値としては、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の軟化点がハンドリング性のよい温度域になる観点から、90%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、45%以下が特に好ましい。
〔硬化性樹脂組成物〕
本発明の第2の実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、少なくとも前述した本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂と硬化剤とを含むものである。また、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物(以下、「他のエポキシ化合物」と称することがある。)、硬化促進剤、その他の成分等を適宜配合することができる。
[硬化剤]
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物に用いる硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質である。なお、本明細書においては、通常「硬化促進剤」と呼ばれるものであっても、エポキシ樹脂のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物において、硬化剤としては多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、酸末端ポリエステル樹脂、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類;4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等のジヒドロキベンゼン類;ジヒドロキシナフタレン類;これらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素等のヘテロ原子を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの;等が挙げられる。
更に、これらの多官能フェノール類;フェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。
ポリイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。さらに、これらのポリイソシアネート系化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、前記ポリイソシアネート化合物の3~5量体等を挙げることができる。
アミン系化合物の例としては、脂肪族一級アミン、脂肪族二級アミン、脂肪族三級アミン、芳香族一級アミン、芳香族二級アミン、芳香族三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等が挙げられる。具体的なアミン系化合物としては、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物との縮合物等が挙げられる。
イミダゾール系化合物の例としては、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本実施形態においては硬化剤に分類するものとする。
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的な芳香族オニウム塩としては、SbF 、BF 、AsF 、PF 、CFSO 2-、B(C 等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族オニウム成分とからなる化合物等が挙げられ、特にジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩等が好ましい。
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示される。
ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が例示される。
テトラフェニルボロン塩としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が例示される。
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物における硬化剤の含有量は、本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上であり、より好ましくは0.5重量部以上であり、また、好ましくは1000重量部以下であり、より好ましくは100重量部以下であり、更に好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
また、本実施形態に係る硬化性樹脂組成物に他のエポキシ化合物が含まれる場合、硬化剤の含有量は、固形分としての全エポキシ成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上であり、より好ましくは0.5重量部以上であり、また、好ましくは1000重量部以下であり、より好ましくは100重量部以下であり、更に好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
なお、本実施形態において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体のエポキシ樹脂ないしはエポキシ化合物のみならず、半固形や粘稠な液状物をも含むものとする。また、「全エポキシ成分」とは、本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂と他のエポキシ化合物との合計を意味する。
硬化剤のより好ましい量は、硬化剤の種類に応じてそれぞれ以下に記載する通りである。
硬化剤として多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物、又は酸末端ポリエステル樹脂を用いる場合は、硬化性樹脂組成物の全エポキシ基に対する硬化剤中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基、酸無水物系化合物の酸無水物基、又は酸末端ポリエステル樹脂のカルボキシル基)の当量比で0.2~1.5の範囲となるように用いることが好ましい。
硬化剤としてポリイソシアネート系化合物を用いる場合、硬化性樹脂組成物中の水酸基数に対してポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基数が、当量比で1:0.01~1:1.5の範囲で用いることが好ましい。
硬化剤としてイミダゾール系化合物を用いる場合、硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分100重量部に対して0.5~10重量部の範囲で用いることが好ましい。
硬化剤としてアミド系化合物を用いる場合、硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1~20重量%の範囲で用いることが好ましい。
硬化剤としてカチオン重合開始剤を用いる場合、硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分100重量部に対して0.01~15重量部の範囲で用いることが好ましい。
硬化剤として有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、又はテトラフェニルボロン塩を用い
る場合、硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分と有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩との合計量に対して0.1~20重量%の範囲で用いることが好ましい。
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物には以上に挙げた硬化剤の他、例えば、メルカプタン系化合物、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等も硬化剤として用いることができる。
これらの硬化剤は1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
[他のエポキシ化合物]
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ化合物(他のエポキシ化合物)を含むことができる。
他のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、その他の多官能フェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型芳香族エポキシ樹脂;上記グリシジルエーテル型芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素添加したエポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;鎖状脂肪族エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂等のエポキシ化合物;等が挙げられる。これら以外にグリシジル(メタ)アクリレートを含む重合物等のグリシジル基を有する樹脂;イソシアヌル酸トリグリシジル;等も他のエポキシ化合物として用いることができる。以上に挙げた他のエポキシ化合物は1種のみを含んでもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含んでもよい。
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物が、本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂と他のエポキシ化合物とを含有する場合、硬化性樹脂組成物中の固形分としての全エポキシ成分中の他のエポキシ化合物の割合は、好ましくは1wt%以上であり、より好ましくは5wt%以上であり、一方、好ましくは99wt%以下であり、より好ましくは95wt%以下である。他のエポキシ化合物の割合が上記下限値以上であることにより、他のエポキシ化合物を配合することによる物性向上効果を十分に得ることができる。一方、他のエポキシ化合物の割合が上記上限値以下であることにより、本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂による衝撃強度や耐屈曲性の向上効果を得ることができる。
[溶剤]
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物には、塗膜形成時等の取り扱い時に、硬化性樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合してもよい。本実施形態に係る硬化性樹脂組成物において、溶剤は、硬化性樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、前述の通り、本実施形態においては「溶剤」という語と「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物が含み得る溶剤としては、本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の製造に用いる反応溶媒(D)として例示した有機溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。
[その他の成分]
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填剤、有機充填剤等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分は硬化性樹脂組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
[配合成分の確認]
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物に本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂、その他の成分が配合されていることは、硬化性樹脂組成物の分離精製を行った後に、核磁気共鳴装置、質量分析装置及び/又はクロマトグラフにて、定性分析及び/又は定量分析を実施し、確認することができる。
〔硬化物〕
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ樹脂を意図的に硬化させることを意味するものである。前記硬化の程度は所望の物性、用途等により制御すればよい。
本実施形態に係る硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物とする際の硬化方法は、硬化性樹脂組成物中の配合成分や配合量、配合物の形状等によっても異なるが、通常、50~200℃で5秒~180分の加熱条件が挙げられる。この加熱は50~160℃で5秒~30分の一次加熱と、一次加熱温度よりも40~120℃高い90~200℃で1分~150分の二次加熱との二段処理で行うことが、硬化不良を少なくするという点で好ましい。
硬化物を半硬化物として製造する際には、加熱等により形状が保てる程度に硬化性樹脂組成物の硬化反応を進行させればよい。硬化性樹脂組成物が溶剤を含んでいる場合には、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去することができるが、半硬化物中に5重量%以下の溶剤を残留させてもよい。
硬化物に本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂が含まれていることは、この硬化物を適切な方法で分解した後、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法、各種クロマトグラフィー等の適切な分析方法により解析することで、硬化物から本発明の第1の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を特定することで確認することができる。
〔用途〕
本発明の第1の実施形態は、P-H結合含有化合物に由来する構造を有する変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂であって、他のエポキシ樹脂や硬化剤との混和性が良好であり、難燃性と耐熱性のバランスに優れた硬化物を与える変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂に関する。本発明の第2の実施形態は、この変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含んでなる硬化性樹脂組成物及びその硬化物等に関する。
本発明の実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、及び硬化物は、混和性、難燃性、耐熱性等に優れることから、主に塗料分野、土木分野、電気分野等の多くの用途で使用することができる。本実施形態に係る変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、とりわけ、塗料組成物;接着剤のバインダ;プリプレグの母材;積層板の母材;半導体封止剤;塗膜;繊維強化プラスチック(FRP)の母材;電気・電子材料;等に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔使用原料〕
以下の実施例及び比較例においては、エポキシ樹脂(A)、成分P(B)及び触媒(C)として、以下のものを用いた。
[エポキシ樹脂(A)]
エポキシ樹脂(A)として、以下のA-1~A-3を用いた。
A-1:テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(三菱ケミカル社製 jER(登録商標)604、エポキシ当量:118g/eq)
Figure 2024033232000016

A-2:トリグリシジルp‐アミノフェノール(三菱ケミカル社製 jER(登録商標)630、エポキシ当量:96g/eq)
Figure 2024033232000017

A-3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製 jER(登録商標)828、エポキシ当量:185g/eq)
Figure 2024033232000018
[成分P(B)]
成分P(B)として、以下のB-1を用いた。
B-1:9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキ
シド(三光社製 HCA、以下、「DOPO」と称することがある。エポキシ当量:118g/eq)
Figure 2024033232000019
[触媒(C)]
触媒(C)として、以下のC-1~C-3を用いた。
C-1:N,N-ジメチルベンジルアミン
C-2:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
C-3:トリ(p-トリル)ホスフィン
〔変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の製造と評価〕
[変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の製造]
{実施例1~5、比較例1~2}
表1に記載の仕込み量に従い、エポキシ樹脂(A)及び成分P(B)と、触媒(C)(エポキシ樹脂(A)の仕込み量に対して1000wtppm)とを、セパラブルフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下、表1に記載の反応温度、反応時間で変性反応を行うことで、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を得た。
[変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の評価]
得られた変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂について、以下の方法でエポキシ当量、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける成分Pの溶出ピークの面積、成分Pを除く多分散度(Mw/Mn)の測定を行い、結果を表1にまとめた。
<エポキシ当量>
変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236に基づき、グリシジルアミンの補正法を用いて、電位差滴定法により測定を行った。具体的には、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂のクロロホルム溶液に対して0.1mol/L過塩素酸酢酸溶液を滴下することにより、アミンと過塩素酸の塩を生成させ、その滴定終点の滴定量V2を得た。その後、系中に臭化テトラエチルアンモニウムを追添加し、0.1mol/L過塩素酸酢酸溶液の滴下を継続し、その滴定終点の滴定量V1から滴定量V2を差分した値を基にエポキシ当量を算出した。
<成分Pの面積及び多分散度(Mw/Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の成分Pの面積及び多分散度(Mw/Mn)は、以下の方法により測定した。成分Pの溶出ピークは、事前に成分Pを単独で測定を行うことで同定した。成分Pの溶出ピークの面積比率は、測定で得られた溶出ピークの全面積のうち、成分Pの溶出ピーク面積の割合を算出し、面積%で表記した。成分Pを除く多分散度は、成分Pより保持時間の短いピーク群に対して、標準ポリスチレン検量線を利用してMwとMnを解析し、それらを除算することで算出した。図1~3に実施例3、比較例1、2のクロマトグラムを示す。GPCの測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
装置:GPC
機種:HLC-8120GPC(東ソー製)
カラム:TSKGEL HM-H+H4000+H4000+H3000+H2000(東ソー製)
検出器:示差屈折計(RI検出器とも称す)
溶離液:テトラヒドロフラン(0.5mL/min、40℃)
サンプル:1%テトラヒドロフラン溶液(10μLインジェクション)
検量線:標準ポリスチレン(東ソー製)
Figure 2024033232000020
〔硬化性樹脂組成物及び硬化物の製造と評価〕
{実施例6~9、比較例3~5}
実施例6~9及び比較例4~5においては、それぞれ、実施例1~5及び比較例1~2で製造された変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いた。比較例3では、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の代わりに、エポキシ樹脂A-1を用いた。硬化剤にはジシアンジアミド(DICY)、硬化促進剤には3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(DCMU)を使用した。
実施例及び比較例に係る硬化物は、表2の配合比に従って配合して作製し、混和性を評価した。その後、80℃で1時間予備加熱をした後、130℃で1.5時間加熱して硬化させ、厚さ3mmの硬化物の板を作製した。作製した硬化物について中間点ガラス転移温度及び600℃残炭率を測定することで難燃性と耐熱性を総合的に判定した。
<混和性>
混和性は配合時に各成分を均一に混ぜやすいか否かを下記の通り評価し、指標とした。混和性の評価がBの場合、以降の評価は実施しなかった。
≪評価基準≫
A:容易に混和できる。
B:変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の粘度が著しく高く、さらにゲル状であるために、均一に混和することが困難である。
<耐熱性(中間点ガラス転移温度)>
実施例及び比較例における中間点ガラス転移温度(Tg)は、SIIナノテクノロジー株式会社製 示差走査熱量計「DSC7020」を使用し、30~220℃まで10℃/minで一回目の昇温をしたのち、30℃まで降温し、30~220℃まで10℃/minで二回目の昇温をして測定を行った。中間点ガラス転移温度は2回目昇温チャートの各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とした。
<難燃性(600℃残炭率)>
熱分析装置(TG/DTA:セイコーインスツルメント社製「EXSTAR 7200」)を用いて、熱分析を行った(昇温速度:10℃/min、測定温度範囲:30℃から700℃、空気:流量200mL/min)。600℃時点での残存重量比率を残炭率とし、難燃性の指標とした。
<物性バランス値>
難燃性と耐熱性を両立できていることを数値として表現するために、物性バランス値を定義し、下記式に従って算出した。値が大きいほど物性のバランスが良好である。
物性バランス値=(中間点ガラス転移温度(℃)-100)×(600℃残炭率(%)-7.22)
<総合評価>
混和性、耐熱性及び難燃性の試験結果を基に総合評価を行った。C評価以上であれば実用水準であり、B評価以上では特に優れた水準であると判断した。
≪評価基準≫
A:混和性がA評価且つ物性バランス値が600以上である。
B:混和性がA評価且つ物性バランス値が500以上600未満である。
C:混和性がA評価且つ物性バランス値が300以上500未満である。
D:混和性がA評価且つ物性バランス値が100以上300未満である。
E:混和性がA評価且つ物性バランス値が100未満である。
F:混和性がB評価である。
Figure 2024033232000021
[評価結果]
本実施例及び比較例から分かるように、P-H結合含有化合物に由来する構造を有する変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂であって、標準ポリスチレン検量線とRI検出器を
用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、P-H結合含有化合物の溶出ピークの面積比率が10面積%以下であって、且つ前記P-H結合含有化合物を除く溶出ピークの多分散度(Mw/Mn)が1.00~4.00である、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂や硬化剤との混和性が良好であり、難燃性と耐熱性のバランスに優れた性能を発現することが分かる。

Claims (14)

  1. 下記式(1)で表される構造を有する変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂であって、標準ポリスチレン検量線とRI検出器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいて、下記式(2)で表されるP-H結合含有化合物の溶出ピークの面積比率が10面積%以下であって、且つ前記P-H結合含有化合物を除く溶出ピークの多分散度(Mw/Mn)が1.00~4.00である、変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
    Figure 2024033232000022

    (上記式(1)中、R、Rは水素原子又は炭化水素基を示し、それぞれ異なっていても同一でもよく、RとRが結合し、環を形成していてもよい。nは0又は1の整数を示す。)
    Figure 2024033232000023

    (上記式(2)中、R、R、nは式(1)と同義である。)
  2. 上記式(1)で表される構造が下記式(3)で表される構造である、請求項1に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
    Figure 2024033232000024

    (上記式(3)中、R、R、nは式(1)と同義であり、Rは水素原子又はメチル基である。)
  3. 前記式(1)で表される構造が下記式(4)で表される構造である、請求項1に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
    Figure 2024033232000025

    (上記式(4)中、R、R、nは式(1)と同義である。)
  4. エポキシ当量が50~1000g/eqである、請求項1に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
  5. リン含有率が1.0~8.0wt%である、請求項1に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂。
  6. 下記式(9)で表される構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂と、前記式(2)で示されるP-H結合含有化合物とを、反応温度100~130℃、第三級アミン又は第四級アンモニウム塩の存在下で反応させる工程を含む、請求項1に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂の製造方法。
    Figure 2024033232000026
  7. 請求項1に記載の変性グリシジルアミン型エポキシ樹脂と硬化剤とを含んでなる、硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項7に記載の硬化性樹脂組成物を含む、塗料。
  9. 請求項7に記載の硬化性樹脂組成物を含む、プリプレグ。
  10. 請求項7に記載の硬化性樹脂組成物を含む、半導体封止剤。
  11. 請求項7に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる、硬化物。
  12. 請求項11に記載の硬化物を含む、塗膜。
  13. 請求項11に記載の硬化物を含む、繊維強化プラスチック。
  14. 請求項11に記載の硬化物を含む、電気・電子材料。
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