JP2024032374A - 表面処理方法、及び前記表面処理方法を用いた基材の製造方法 - Google Patents

表面処理方法、及び前記表面処理方法を用いた基材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】より高い親水性と滑水性を両立する表面処理方法、及び前記表面処理方法を用いた基材の製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している有機ケイ素化合物(A)と、金属アルコキシド(B)とを含む親水滑水化処理剤を基材の表面に接触させて親水滑水性皮膜を形成する工程、前記親水滑水性皮膜をアルカリ処理又は酸処理する工程、を含む表面処理方法、及び前記表面処理方法を用いた基材の製造方法。【選択図】図5

Description

本発明は、親水滑水化処理剤を基材に接触させて形成した親水滑水性皮膜をより親水化、滑水化するための表面処理方法、及び前記表面処理方法を用いた基材の製造方法に関する。
基材表面に親水性と同時に滑水性を付与する技術が求められている。
例えば、アルミニウムを用いた熱交換器において、フィン表面への凝縮水の付着に起因する騒音の発生、水滴の飛散、カビの発生による汚染を抑制するためには、濡れ性が大きい(親水性が高い)とともに、付着した水滴が微小なうちに速やかに滑落して除去される(滑水性が高い)表面処理を施すことが好ましい。
特許文献1には、親水滑水性を付与したい基材の表面に、少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している有機ケイ素化合物(A)と、金属アルコキシド(B)と、を所定のモル比で含む親水滑水化処理剤を接触させて親水滑水性皮膜を形成する工程を含む表面処理方法が記載されている(請求項1、9)。具体的には、前記親水滑水化処理剤中に基材を浸漬し、引き上げ後、加熱又は室温で乾燥させて、親水滑水性皮膜を作製したことが記載されている(段落[0090])。
非特許文献1には、エアコン用プレコートフィン材の初期親水性及び親水持続性の指標として、2μLの純水を滴下した水滴両端の水接触角が30°以下の目標数値が挙げられ、また、初期滑水性及び滑水性持続性の指標として、10μLの水滴を滴下したフィン材を1°/secの速度で傾け、前進端が0.2mm動いた時の角度(転落角)が13°以下の目標数値が挙げられているが、コーティング手段については、バーコータを用いたとしか記載されていない。
特開2020-117636号公報
UACJ Technical Reports. Vol.5(2018),pp.80-83
特許文献1には、親水滑水性皮膜の濡れ性及び滑水性について、親水性の指標である水滴の皮膜に対する接触角θsが40°以下であり、水滴除去性を示す転落角θtが、10μLの水滴、傾き速度1°/秒に対して30°以下であったことが記載されている。
しかしながら、非特許文献1の目標数値からみて、皮膜の親水性、滑水性は未だ十分なものでなかった。
本発明は、上記の状況に鑑み、特許文献1に記載の親水滑水性皮膜を形成する工程を含む表面処理方法に比して、より高い親水性と滑水性を両立する表面処理方法、及び前記表面処理方法を用いた基材の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、有機ケイ素化合物と金属アルコキシドとを含む親水滑水化処理剤を基材の表面に接触させて形成した親水滑水性皮膜を、アルカリ処理又は酸処理する表面処理方法により、従来よりも高い親水性と滑水性の両立が可能な皮膜(以下、「高親水滑水性皮膜」という。)が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
[1]基材の表面に、
少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している有機ケイ素化合物(A)と、金属アルコキシド(B)とを含む親水滑水化処理剤を接触させて親水滑水性皮膜を形成する工程、
前記親水滑水性皮膜をアルカリ処理又は酸処理して親水性と滑水性を向上させる工程、
を含む表面処理方法。
[2]前記アルカリ処理は、水酸化ナトリウムを使用する前記[1]の表面処理方法。
[3]前記酸処理は、硫酸を使用する前記[1]の表面処理方法。
[4]前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の一般式(1)で表される、前記[1]~[3]のいずれか1の表面処理方法。
(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、R、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基である。)
[5]前記親水滑水化処理剤は、さらに以下の一般式(2)で表される分子量が10,000以下の変性シリコーンオイル(C)を含む、[4]の表面処理方法。
(式中、Rは、親水性鎖含有基を表し、Rは、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を表し、m、nは整数であり、m/nは1~6である。)
[6]前記式(2)中、Rは、R-O(CHCHO)-CH(Rは炭素数1~5のアルキレン基、pは5~10の整数)で表される基である、前記[5]の表面処理方法。
[7]前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(3)で表される、前記[1]の表面処理方法。
(式中、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基であり、R10は、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各R10は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[8]基材表面に形成された、
少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している有機ケイ素化合物(A)と、
金属アルコキシド(B)と、の加水分解・縮重合物と、を含む親水滑水性皮膜を、
アルカリ処理又は酸処理して親水性と滑水性を向上させる工程、
を含む表面処理方法。
[9]前記アルカリ処理は、水酸化ナトリウムを使用する前記[8]の表面処理方法。
[10]前記酸処理は、硫酸を使用する前記[8]の表面処理方法。
[11]前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の一般式(1)で表される、前記[8]~[10]のいずれか1の表面処理方法。
(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、R、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基である。)
[12]基材表面に形成された、
少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している、以下の一般式(1)で表される有機ケイ素化合物(A)と、
金属アルコキシド(B)と、
以下の一般式(2)で表される分子量が10,000以下の変性シリコーンオイル(C)と、の加水分解・縮重合物を含む親水滑水性皮膜を、
アルカリ処理又は酸処理して親水性と滑水性を向上させる工程、
を含む表面処理方法。
(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、R、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基である。)
(式中、Rは、親水性鎖含有基を表し、Rは、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を表し、m、nは整数であり、m/nは1~6である。)
[13]前記式(2)中、Rが、R-O(CHCHO)-CH(Rは炭素数1~5のアルキレン基、pは5~10の整数)で表される基である、前記[12]の表面処理方法。
[14]前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(3)で表される、前記[8]~[10]のいずれか1の表面処理方法。
(式中、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基であり、R10は、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各R10は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[15]前記[1]~[14]のいずれか1の表面処理方法を用いて、表面に高親水滑水性皮膜が形成された基材を製造する方法。
[16]前記基材が、金属、金属酸化物、シリコン、ガラス、又は樹脂から選ばれる少なくとも1種である、前記[15]の方法。
[17]前記基材は、熱交換器用フィン材である、前記[15]の方法。
本発明によれば、従来技術に比してより高い親水性と滑水性を両立する高親水滑水性皮膜を基材上に形成する表面処理方法、及び前記表面処理方法を用いた基材の製造方法を提供することができる。
親水性を評価する指標である、静的接触角(θ)の説明図 滑水性を評価する一つの指標である、滑落角(θ)の説明図 滑水性を評価するその他の指標である、接触角ヒステリシス(△θ)における、前進接触角(θ)の説明図 滑水性を評価するその他の指標である、接触角ヒステリシス(△θ)における、後退接触角(θ)の説明図 本実施形態に係るアルカリ処理工程を含む表面処理法の一例を示す概要図 本実施形態に係る酸処理工程を含む表面処理法の一例を示す概要図 本実施形態に係るアルカリ処理工程を経た高親水滑水性皮膜の静的接触角(θ)、前進接触角(θ)、後退接触角(θ)の経時変化を示す図 本実施形態に係るアルカリ処理工程の有無と滑落角(θ)との関係を示す図 本実施形態に係る酸処理工程を経た高親水滑水性皮膜の静的接触角(θ)、前進接触角(θ)、後退接触角(θ)の経時変化を示す図
本発明は、基材の表面に有機ケイ素化合物(A)と金属アルコキシド(B)とを含む親水滑水化処理剤を接触させて親水滑水性皮膜を形成し、該親水滑水性皮膜をアルカリ処理又は酸処理することにより、従来よりも高い親水性と滑水性の両立が可能な高親水滑水性皮膜を基材表面に形成する表面処理方法を提供するものである。
以下、本発明について、その最良の形態を含めて、さらに具体的な本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
なお、数値範囲等を「~」を用いて表す場合、その下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
まず、最初に親水性及び滑水性の指標について説明する。
<静的接触角θS
高親水滑水性皮膜の静的な親水性の指標には、皮膜に対する水の静的接触角θを用いることができる。
図1に示すように、静的接触角θは、静止している液滴の液面と固体面のなす角であり、この値が小さいほど静的親液性が高い。
本実施形態に係る高親水滑水性皮膜の静的接触角θは、30°以下であることが好ましく、25°以下であることがより好ましく、20°以下であることがさらに好ましい。静的接触角θが30°以下であれば、建築用耐汚染の分野、及び熱交換器の分野において、十分な活用が期待できる。
<滑落角θ
高親水滑水性皮膜の滑水性の指標の一つとして、滑落角θを用いることができる。
図2に示すように、滑落角θは、徐々に固体面を傾けて液滴が滑落し始めるのに要する固体面の傾斜角であり、この値が小さいほど、滑水性に優れる。
本実施形態に係る高親水滑水性皮膜は、皮膜に対する水の滑落角θが、10μLの水滴量に対して、15°以下であることが好ましく、より好ましくは10°以下である。なお、水の滑落角θの下限値は、特に限定されるものではなく、低ければ低いほうが好ましい。
<接触角ヒステリシス(Δθ=θ-θ)>
高親水滑水性皮膜の滑水性の他の指標として、接触角ヒステリシス(Δθ)も用いることができる。
接触角ヒステリシスΔθは、固体表面に接した液滴の拡張収縮法による前進接触角θと後退接触角θの差(θ-θ)から求めることができる。
図3に示すように、前進接触角θは、固体表面に形成した液滴にシリンジの針を刺して、液量を徐々に増やしていった際に、三相接触線が前進するときの接触角である。
また、図4に示すように、後退接触角θは、液滴を徐々に吸引していった際に、三相接触線が後退するときの接触角である。
前進接触角と後退接触角は、値が小さいほど動的親水性が高いことを示し、接触角ヒステリシスは、値が小さいほど、滑水性が高いことを示す。
本実施形態に係る高親水滑水性皮膜の接触角ヒステリシスΔθは、10°以下であることが好ましく、より好ましくは5°以下である。
<親水滑水化処理剤>
本実施形態に係る親水滑水化処理剤が必須成分として含む有機ケイ素化合物(A)と金属アルコキシド(B)、及び、選択成分として含む変性シリコーンオイル[C]、並びにその他の成分について、以下、詳述する。
[有機ケイ素化合物(A)]
本実施形態において、有機ケイ素化合物(A)は、少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している化合物である。
ケイ素原子は、4価の元素であるため、最大で4つの基が結合する。本発明においては、4つのうちの少なくとも1つが親水性鎖含有基であり、かつ、少なくとも1つの加水分解性基となっている。したがって、ケイ素原子に結合している残りの2つの基は、特に限定されるものではなく、親水性鎖含有基、加水分解性基、あるいは、その他の任意の基であってよい。また、複数の親水性鎖含有基、または複数の加水分解性基を有する場合には、親水性鎖含有基および加水分解性基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
本実施形態において、好ましい有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(1)で表される、1つのケイ素原子に1つの親水性鎖含有基と3つの加水分解性基を有する有機ケイ素化合物(A1)である。
(式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、R、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基である。)
また、その他の好ましい有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(3)で表される有機ケイ素化合物(A2)である。
(式中、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基であり、R10は、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各R10は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
すなわち、有機ケイ素化合物(A2)は、両末端のケイ素原子間に親水性鎖含有基であるポリアルキレングリコール構造が結合し、両末端のケイ素原子に加水分解性基であるアルコキシ基がそれぞれ3つ結合している、いわゆる6官能タイプの化合物である。
本発明者らは、末端の加水分解性基の数が多いと反応サイトが増えるため、基材との密着性や金属アルコキシド(B)との結合性が向上する、という推測に基づいて、上記式(3)で表される化合物(A2)を用いたところ、前記式(1)で表される3官能タイプの有機ケイ素化合物(A1)を用いる場合と比較して、親水性を維持しつつ、滑水性が大幅に向上することを見出した。
(親水性鎖含有基)
上記式(1)で示される有機ケイ素化合物(A1)において、以下の式(4)で表される基が親水性鎖含有基に相当する。
また、式(3)で示される有機ケイ素化合物(A2)において、以下の式(5)で表される基が親水性鎖含有基に相当する。
式(4)における[R-O]、又は式(5)における[R10-O]の繰り返し単位の構造部分が、親水性を発揮させる役割を担う。
式(4)におけるR、又は式(5)におけるR10である炭素数1~5のアルキレン基は、エチレン基であることが特に好ましい。R又はR10がエチレン基であることにより、親水性を高くしながら、水滴除去性を確保することができる。
上記式(4)又は式(5)で示される親水性鎖含有基において、[R-O]又は[R10ーO]単位の繰り返し数qは、通常4以上の整数であり、入手容易性の観点から、4~30の整数であることが好ましい。qが4以上であることにより、親水性を発現させる鎖長が長くなり、有機ケイ素化合物(A)の親水性が高まり、その結果、形成される皮膜の親水性が十分となる。
また、上記式(4)で示される親水性鎖含有基において、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基であることがより好ましい。末端にメチル基と酸素が結合したメトキシ基が存在することにより、RがHの場合と比較して、水との水素結合を抑制することができる。
上記式(4)又は式(5)で示される親水性鎖含有基において、R又はRはケイ素原子に結合する部分であり、炭素数1~5のアルキレン基である。R又はRとなる炭素数1~5のアルキレン基は、通常、直鎖状であり、直鎖状であれば、水滴除去性をより良好なものとすることができる。
(加水分解性基)
有機ケイ素化合物(A)における加水分解性基は、加水分解によりヒドロキシ基(シラノール基)を与える基であれば、特に限定されるものではない。また、本発明の有機ケイ素化合物(A)においては、少なくとも1つの加水分解性基が1つのケイ素原子に結合していればよいが、3つの加水分解性基が1つのケイ素原子に結合していることが好ましい。2つまたは3つの加水分解性基がケイ素原子に結合する場合には、加水分解性基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
有機ケイ素化合物(A)における加水分解性基は、金属アルコキシド(B)と反応する部位であるとともに、親水滑水化処理剤が適用される基材と反応する部位ともなる。したがって、有機ケイ素化合物(A)における加水分解性基は、形成される皮膜内部と反応しつつ、皮膜を形成する基材とも反応し、形成される皮膜の基材への密着強度を高めることができる。
本実施形態における有機ケイ素化合物(A1)の加水分解性基は、式(1)におけるO-Rであり、有機ケイ素化合物(A2)の加水分解性基は、式(3)におけるO-Rである。これらの基は炭素数1~5のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることがより好ましく、メトキシ基、エトキシ基であることが特に好ましい。加水分解性基がメトキシ基またはエトキシ基であることにより、加水分解後に生じるアルコールが低分子となるため、基材に接触せしめた親水滑水化処理剤をより低温で乾燥し、皮膜化することができる。
有機ケイ素化合物(A)の含有量は、本実施形態に係る親水滑水化処理剤において、処理剤全体に対して0.01~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。
[金属アルコキシド(B)]
本発明における金属アルコキシド(B)は、アルコキシ基が金属原子に結合している化合物であり、前記金属アルコキシドは、基材だけでなく、有機ケイ素化合物(A)やPEGシリコーンオイル(C)との密着/結合を向上させるバインダーの役割を果たす。また、親水性鎖含有基の間に金属アルコキシド(B)がスペースを形成することで親水性鎖含有基の運動性を向上させる役割も果たす。
本実施形態における金属アルコキシド(B)は、以下の一般式(6)で表される構造を有していることが好ましい。
(式中、Mは、3価または4価の金属原子であり、Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい、炭素数1~5のアルキル基であり、rは、Mの価数に応じて、3または4の整数である。)
また、本実施形態における金属アルコキシド(B)は、上記式(6)で表される化合物の加水分解縮合物であってもよい。ここで、加水分解縮合物とは、金属アルコキシド(B)に含まれる全部または一部のアルコキシ基が、加水分解により縮合した化合物を意味する。
金属アルコキシド(B)を構成する金属Mとしては、例えば、Al、Fe、In等の3価金属、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等の4価金属等が挙げられる。なかでは、入手容易性および貯蔵安定性の観点から、Siであることが好ましい。
また、アルコキシ基R-Oは、金属Mが3価金属の場合には3個が結合し、すなわち、上記式(6)におけるrは3となる。また、金属Mが4価金属の場合には、アルコキシ基R―Oは4個が結合し、すなわち、上記式(6)におけるrは4となる。
アルコキシ基R-Oの炭素数は、1~4であることが好ましく、基材に接触した処理剤の乾燥をより低温で行い、皮膜化を容易とするためには、炭素数が1,又は2のメトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましい。
また、有機ケイ素化合物(A)の加水分解性基がアルコキシ基である場合には、有機ケイ素化合物(A)のアルコキシ基と、金属アルコキシド(B)のアルコキシ基は、同一であっても異なっていてもよい。
金属アルコキシド(B)の含有量は、本実施形態に係る親水滑水化処理剤において、処理剤全体に対して0.01~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.05~20質量%であり、さらに好ましくは1.0~10質量%である。
有機ケイ素化合物(A)に対しては、モル比(A/B)で0.01~0.5あることが好ましく、0 .03~0.3の範囲であることがさらに好ましい。本実施形態においては、有機ケイ素化合物(A)の鎖状の親水性鎖含有基の間に、金属アルコキシド(B)がスペースを形成することで、親水性鎖含有基の運動性が向上し、両立が困難であった親水性と水滴除去性とをバランスよく備える皮膜を形成することができる。有機ケイ素化合物(A)と金属アルコキシド(B)とのモル比(A/B)が、0.01~0.5の範囲であれば、鎖状の親水性鎖含有基の間に適切なスペースを形成することができ、その結果、親水性と水滴除去性との両立をバランスよく発現することができる。
[変性シリコーンオイル(C)]
本実施形態に係る親水滑水化処理剤は、必須成分である有機ケイ素化合物(A)として、式(1)で表される(A1)と、金属アルコキシド(B)に加えて、以下の一般式(2)で表される分子量が10,000以下の変性シリコーンオイル(C)を含んでいてよい。分子量10,000以下の変性シリコーンを添加した親水滑水化処理剤を用いて形成した親水滑水性皮膜にアルカリ処理又は酸処理を施すと、前記変性シリコーンオイル(C)を加えない場合の従来の親水滑水性皮膜よりも、親水性及び滑水性を向上させることができる。
(式中、Rは、親水性鎖含有基を表し、Rは、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を表し、m、nは整数であり、m/nは1~6である。)
本実施形態において、分子量が10,000以下の変性シリコーンオイル(C)の式(2)におけるRは、親水性鎖含有基R-O(CHCHO)-CH(Rは炭素数1~5のアルキレン基、pは5~10の整数)であることが好ましい。以下、このシリコーンオイルをPEG変性シリコーンオイルともいう。PEG変性シリコーンオイルの分子量が10,000を超えると、親水性鎖含有基の運動性が低下するために動的な親水性が低下する。また、分子量が10,000以下であっても、親水性鎖含有基の運動性を維持するためには、添加量は少ない方が好ましい。
分子量が10,000以下であるPEGシリコーンオイルとしては、例えば、Gelest, Inc.のDBE-712(分子量600、PEG比率60~70%)、DBE-814(分子量1,000、PEG比率80~85%)、DBE-224(分子量10,000、PEG比率25~30%)等が好ましい。また、その添加量は、親水滑水化処理剤の固形分である有機ケイ素化合物(A)と金属アルコキシド(B))の合計質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
[その他の成分]
本実施形態において、親水滑水化処理剤は、上記の有機ケイ素化合物(A)と金属アルコキシド(B)以外に、任意に他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、溶剤、触媒、添加剤等を挙げることができる。
溶剤としては、例えば、水、または、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤等の親水性有機溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、飽和炭化水素系溶剤等の疎水性有機溶剤が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
触媒としては、加水分解触媒として作用するものが好ましく、例えば、塩酸、硝酸、酢酸等の酸性化合物、アンモニア、アミン等の塩基性化合物、金属元素を中心金属とする有機金属化合物等が挙げられる。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、生物付着防止剤、消臭剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤等、付与したい機能を発現するものを、本発明の効果を阻害しない範囲で任意に選択して配合することができる。
なお、本実施形態において、親水滑水化処理剤は、処理剤全体における固形分の全質量を10%程度とすることが好ましい。
<親水滑水性皮膜の形成工程>
本実施形態に係る親水滑水性皮膜工程は、必要に応じて前処理された基材の表面に、有機ケイ素化合物(A)と、金属アルコキシド(B)とを含む親水滑水化処理剤を接触させて、加水分解、縮重合反応(ゾルゲル反応)を行い、成膜する工程である。
親水滑水化処理剤を基材に接触させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等が挙げられる。
親水滑水化処理剤を接触させる際の温度、時間等の条件についても、特に限定されるものではなく、ゾルゲル反応の進行に必要な公知の条件を適用することができる。
図5に、本実施形態に係る親水滑水性皮膜の形成工程、及びその後のアルカリ処理の手順の一例を、後述する実施例1に基づいて示す。
本例では、有機ケイ素化合物(A)、金属アルコキシド(B)に、その他の成分として、溶剤と、加水分解触媒等を加えて十分に攪拌・混合した処理剤を、親水滑水性を付与したい基材表面にコーティングし、加熱処理を施し、加水分解・縮重合反応を生起せしめ、水リンスすることにより、親水滑水性皮膜を形成することができる。
<親水滑水性皮膜>
本実施形態に係る上記の工程により、有機ケイ素化合物(A)の加水分解性基が、金属アルコキシド(B)と反応して、有機ケイ素化合物(A)と金属アルコキシド(B)との加水分解・縮重合物を含む親水滑水性皮膜を形成するとともに、皮膜が形成される基材とも反応するので、基材への密着強度を高めた親水滑水性皮膜を形成することができる。
また、分子量が10,000以下の変性シリコーンオイル(C)は、反応性の官能基は含まないが、加水分解により生起する水酸基(-OH)がゾルゲル反応に寄与する。したがって、有機ケイ素化合物(A1)と金属アルコキシド(B)に、前記変性シリコーンオイル(C)が含まれる親水滑水化処理剤を用いる場合は、前記変性シリコーンオイル(C)が加水分解・縮重合物に含まれる親水滑水性皮膜が形成される。
本実施形態に係る親水滑水性皮膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.05g/m以上であり、より好ましくは0.1~2g/mである。皮膜の膜厚を0.05g/m以上とすることにより、アルカリ処理又は酸処理を経ても、皮膜の親水滑水性の持続性や耐食性を保つことができる。
<アルカリ処理、酸処理>
本実施形態に係るアルカリ処理又は酸処理は、前記の親水滑水性皮膜に、より優れた親水性、滑水性を付与するために施される後処理工程である。
[アルカリ処理]
本実施形態に係るアルカリ処理は、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性溶液を用い、親水滑水性皮膜が形成された基材表面とアルカリ性溶液とを一定時間接触させて行うことが好ましい。
具体的には、図5に示すように、親水滑水性皮膜が形成された基材をアルカリ性溶液中に浸漬する、あるいは前記基材表面にアルカリ性溶液を塗布又は噴射することにより行うことが好ましい。
1Mの水酸化ナトリウムに基材を浸漬する場合、処理時間は長いほど親水性は高くなるので、1分以上処理することが好ましいが、親水性が上がりすぎると、水滴がテールを引きθ、Δθが測定できなくなる。そのため、処理時間は6分以下であることが好ましい。
[酸処理]
本実施形態に係る酸処理は、濃硫酸等の酸性溶液を用い、基材の親水滑水性皮膜が形成された面と酸性溶液とが一定時間接触させることにより行うことが好ましい。
具体的には、図6に示すように、親水滑水性皮膜が形成された基材を酸性溶液中に浸漬する、あるいは前記基材面に酸性溶液を塗布又は噴射することにより行うことが好ましい。
濃硫酸に基材を浸漬する場合、処理時間は、親水性が向上する10分以上であることが好ましい。また、滑水性を維持するためには、処理時間は8時間以内であることが好ましく、より好ましくは2時間以内である。
<基材>
本実施形態に係る基材は、前記親水滑水化処理剤を接触させることにより、前記の有機ケイ素化合物(A)、金属アルコキシド(B)、又は前記有機ケイ素化合物(A1)、金属アルコキシド(B)、及び分子量が10,000以下のシリコーンオイル(C)の加水分解・縮重合物含む親水滑水性皮膜を生成でき、その後のアルカリ処理、又は酸処理に対してダメージを受けないものであれば、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等の樹脂製の基材が挙げられる。
また、セラミックスやガラス、鉄、シリコン、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属、さらには、前記した金属を含む合金等が挙げられる。
なお、親水滑水性皮膜形成工程の前に、基材に対して、脱脂処理および脱脂後の水洗処理を行う脱脂処理工程を実施してもよい。
あるいは、樹脂基材には、易接着処理等の前処理を実施してもよい。易接着処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、シラン系化合物、シリカ(SiO)皮膜や樹脂によるプライマー処理等が挙げられる。また、金属や合金基材には、SiO皮膜を被覆してもよい。これにより親水滑水性皮膜と基材との密着性が向上し、アルカリ処理、又は酸処理に対して皮膜の耐久性、金属や合金基材の防食性を向上させることができる。
例えば、親水性と水滴除去性との両者が要求され、また、セルフクリーニング機能が望まれる用途として、熱交換器用フィン材が挙げられるが、熱交換器用フィン材の基材となるアルミニウムに対しても、本実施形態に係る表面処理方法は、好適に適用することができる。
また、基材の形状としても、特に限定されるもではなく、例えば、平面、曲面、あるいは、多数の面が組み合わさった三次元的構造であってもよい。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
<アルカリ処理>
(実施例1)
有機ケイ素化合物(A)として、以下の式(7)に示す化合物PEG9-12-Si(Gelest,Inc.)(A1)を2.35g、金属アルコキシド(B)として、テトラエトキシシランTEOS(和光純薬工業(現富士フィルム和光純薬)社)を5.17g(モル比A/B=0.15)秤量し、これらとエタノール44.5mL、0.01M塩酸14.8mLとを室温で一晩攪拌して、実施例1に係る親水滑水化処理剤を作製した。
この処理剤を40mm×40mmのガラス基材にスピンコートし、80℃、3時間加熱して親水滑水性皮膜を作製した。親水滑水性皮膜を水リンスした。その後、1Mの水酸化ナトリウム溶液に3分間浸漬するアルカリ処理を行って、実施例1に係る高親水滑水性皮膜を形成した。
(比較例1)
アルカリ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る親水滑水性皮膜を形成した。なお、比較例1に係る親水滑水性皮膜は、先行技術文献の特許文献1に記載された従来例に相当する。
実施例1に係る高親水滑水性皮膜と、比較例1に係る親水滑水性皮膜の静的接触角θ、前進接触角θ、後退接触角θ、接触角ヒステリシスΔθ、及び10μLの水滴に対する滑落角θを測定した。結果を表1に示す。
表1からは、アルカリ処理工程を経ることにより、親水性の指標である静的接触角θ、及び滑水性の指標である接触角ヒステリシスΔθ、滑落角θが大幅に低下し、親水性及び滑水性が向上したことがわかった。
(実施例2、3、比較例2、3)
実施例1に係る親水滑水化処理剤に、さらに分子量600のPEG変性シリコーンオイル(Gelest,Inc. DBE-712)を0.16g(皮膜化後に残るAとBの成分由来の質量に対して3質量%に相当))を混合した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る親水滑水化処理剤を作製し、実施例1と同様に親水滑水性皮膜を作製後、アルカリ処理を行って、実施例2に係る高親水滑水性皮膜を形成した。
また、PEG変性シリコーンオイルを、分子量10,000の製品(Gelest,Inc. DBE-224)に変更した以外は、実施例2と同様にして実施例3に係る親水滑水化処理剤を作製し、これを用いて親水滑水性皮膜を作製し、アルカリ処理を行って、実施例3に係る高親水滑水性皮膜を形成した。
比較対象として、実施例2及び実施例3と同様の親水滑水化処理剤を用いて親水滑水性皮膜を作製し、その後のアルカリ処理を行わなかった親水滑水性皮膜を比較例2及び比較例3に係る皮膜とした。
実施例2及び実施例3に係る皮膜と、比較例2に係る皮膜の静的接触角θ、前進接触角θ、後退接触角θ、接触角ヒステリシスΔθ、及び10μLの水滴に対する滑落角θの測定結果を表2に示す。なお、「-」は未測定を表す(以下、同様)。
表2によれば、有機ケイ素化合物(A1)と金属アルコキシド(B)に分子量10,000以下のPEG変性シリコーンオイル(C)を加えた親水滑水化処理剤を用いて親水滑水性皮膜を作製した場合も、アルカリ処理工程を加えることにより、親水性及び滑水性が向上することがわかった。
[浸漬時間の検討]
(実施例4、比較例4)
有機ケイ素化合物(A)として、以下の式(8)に示すポリエチレングリコールを有するシラン(Gelest,Inc.:以下、「PEG25-30-Si2」という。)(A2)を用い、金属アルコキシド(B)として、テトラエトキシシランTEOSを用い、A/Bのモル比0.075で混合し、固形分が約12%となるようにエタノールと0.01M塩酸を加え、室温で一晩攪拌して、親水滑水化処理剤を作製した。
この親水滑水化処理剤を実施例1と同様にして、ガラス基材上に比較例4に係る親水滑水性皮膜を作製した。
この親水滑水性皮膜に対して、水酸化ナトリウム溶液中に浸漬するアルカリ処理を以下の表3に示す時間で施し、実施例4に係る高親水滑水性皮膜を形成した。
実施例4及び比較例4に係る皮膜の静的接触角θ、前進接触角θ、後退接触角θ、接触角ヒステリシスΔθ、及び10μLの水滴に対する滑落角θを測定した結果を、従来例に相当する比較例1とともに表3及び図7に示す。なお、「-」は未測定を表す。
表3の比較例4と比較例1(従来例)とを対比すると、アルカリ処理なしでも、有機ケイ素化合物として(A2)を用いた場合、(A1)を用いた場合よりも、親水性及び滑水性が向上することが分かった。
さらに、表3及び図7からは、有機ケイ素化合物(A)として、有機ケイ素化合物(A2)を用いた場合、アルカリ処理工程を加えると、親水性が顕著に向上し、滑水性も1分以上のアルカリ処理でより向上する傾向を示し、30秒の短時間でも比較例1(従来例)より向上することがわかった。
ただし、処理時間が6分を超えると親水性が向上しすぎて水滴がテールを引き、前進接触角θ、後退接触角θ、接触角ヒステリシスΔθ、及び滑落角θの測定ができなかった。そのため、滑水性の評価をすることができなかった。
[滑落角θと水滴サイズの検討]
アルカリ処理を4分間行った実施例4に係る高親水滑水性皮膜と、アルカリ処理を行わなかった比較例4に係る皮膜において、載置する水滴サイズを1~50μLに変更して滑落角θの変化を測定した。
結果を表4及び図8に示す。
表4及び図8からは、アルカリ処理により、2μL又は1μLの小さな水滴であっても、9°又は14°というわずかな傾きで滑落が可能であることがわかり、親水性の向上だけでなく、滑水性も大幅に向上していることが確かめられた。
<酸処理>
(実施例5)
実施例4と同様にして、有機ケイ素化合物(A2)を用いて作製した親水滑水性皮膜に、アルカリ処理に替えて、以下の表5に示す時間で濃硫酸(95%HSO)に浸漬する酸処理を行い、実施例5に係る高親水滑水性皮膜を作製した。
実施例5に係る高親水滑水性皮膜の静的接触角θ、前進接触角θ、後退接触角θ、接触角ヒステリシスΔθ、及び10μLの水滴に対する滑落角θを測定した結果を、有機ケイ素化合物として(A2)を用い、酸処理及びアルカリ処理を行わなかった比較例4、及び有機ケイ素化合物として(A1)を用い、酸処理及びアルカリ処理を行わなかった従来例に相当する比較例1の結果と共に、表5に示す。
表5からは、親水滑水性皮膜に酸処理の後工程を加えると、アルカリ処理よりも時間を要するが、10分以上の処理で、滑水性を大きく変化させずに、親水性を向上させることができることがわかった。
ただし、処理時間が2時間を超えると親水性の向上にはあまり効果が見られない一方、滑水性は低下する傾向にあるので、10分以上2時間以内の酸処理が好ましいことがわかった。
本実施形態に係る表面処理方法は、従来の親水滑水性皮膜にアルカリ又は酸による後処理を施すことによって、親水性の向上と、滑水性の維持または向上をもたらすため、親水性と滑水性との両立が要求され、特にセルフクリーニング機能が望まれる用途、例えば、空気を熱源とするヒートポンプシステムや輸送用機器等に使用される熱交換器の部材、とりわけ、熱交換器用フィン材の製造に、好適に用いることができる。
また、冷凍設備、送電設備、通信設備、道路周辺設備等の各種部材、あるいは、自動車や車両、建築物等の窓ガラス等、水に接する環境中において親水性と水滴除去性との両者が要求され、セルフクリーニング機能が望まれる分野に、幅広く適用することが可能である。

Claims (17)

  1. 基材の表面に、
    少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している有機ケイ素化合物(A)と、金属アルコキシド(B)とを含む親水滑水化処理剤を接触させて親水滑水性皮膜を形成する工程、
    前記親水滑水性皮膜をアルカリ処理又は酸処理して親水性と滑水性を向上させる工程、
    を含む表面処理方法。
  2. 前記アルカリ処理は、水酸化ナトリウムを使用する請求項1に記載の表面処理方法。
  3. 前記酸処理は、硫酸を使用する請求項1に記載の表面処理方法。
  4. 前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の一般式(1)で表される有機ケイ素化合物(A1)である、請求項1に記載の表面処理方法。
    (式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、R、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基である。)
  5. 前記親水滑水化処理剤は、さらに以下の一般式(2)で表される分子量が10,000以下の変性シリコーンオイル(C)を含む、請求項4に記載の表面処理方法。
    (式中、Rは、親水性鎖含有基を表し、Rは、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を表し、m、nは整数であり、m/nは1~6である。)
  6. 前記式(2)中、Rは、R-O(CHCHO)-CH(Rは炭素数1~5のアルキレン基、pは5~10の整数)で表される基である、請求項5に記載の表面処理方法。
  7. 前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(3)で表される有機ケイ素化合物(A2)である、請求項1に記載の表面処理方法。
    (式中、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基であり、R10は、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各R10は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
  8. 基材表面に形成された、
    少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している有機ケイ素化合物(A)と、
    金属アルコキシド(B)と、の加水分解・縮重合物と、を含む親水滑水性皮膜を、
    アルカリ処理又は酸処理して親水性と滑水性を向上させる工程、
    を含む表面処理方法。
  9. 前記アルカリ処理は、水酸化ナトリウムを使用する請求項8に記載の表面処理方法。
  10. 前記酸処理は、硫酸を使用する請求項8に記載の表面処理方法。
  11. 前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の一般式(1)で表される有機ケイ素化合物(A1)である、請求項8に記載の表面処理方法。
    (式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、R、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基である。)
  12. 基材表面に形成された、
    少なくとも1つのケイ素原子に、少なくとも1つの親水性鎖含有基と、少なくとも1つの加水分解性基とが結合している、以下の一般式(1)で表される有機ケイ素化合物(A1)と、
    金属アルコキシド(B)と、
    以下の一般式(2)で表される分子量が10,000以下の変性シリコーンオイル(C)と、の加水分解・縮重合物を含む親水滑水性皮膜を、
    アルカリ処理又は酸処理して親水性と滑水性を向上させる工程、
    を含む表面処理方法。
    (式中、Rは、炭素数1~5のアルキル基であり、R、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基である。)
    (式中、Rは、親水性鎖含有基を表し、Rは、それぞれ独立に炭素数1~5のアルキル基を表し、m、nは整数であり、m/nは1~6である。)
  13. 前記式(2)中、Rが、R-O(CHCHO)-CH(Rは炭素数1~5のアルキレン基、pは5~10の整数)で表される基である、請求項12に記載の表面処理方法。
  14. 前記有機ケイ素化合物(A)は、以下の式(3)で表される有機ケイ素化合物(A2)である、請求項8に記載の表面処理方法。
    (式中、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキル基であり、各Rは、それぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基であり、R10は、炭素数1~5のアルキレン基であり、qは、4以上の整数であり、各R10は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載の表面処理方法を用いて、表面に高親水滑水性皮膜が形成された基材を製造する方法。
  16. 前記基材が、金属、金属酸化物、シリコン、ガラス、又は樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記基材は、熱交換器用フィン材である、請求項15に記載の方法。
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