JP2024032009A - 共重合体組成物および架橋成形体 - Google Patents

共重合体組成物および架橋成形体 Download PDF

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裕司 野口
Yuji Noguchi
雄二 石井
Yuji Ishii
恭巨 有野
Takamasa Arino
伊織 桑田
Iori Kuwata
典久 岸本
Norihisa Kishimoto
武 吉沢
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Abstract

【課題】低温特性に優れたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物と、この共重合体組成物から得られる架橋成形体を提供する。【解決手段】エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、特定の非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有する共重合体(S)と、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、白金系触媒と、カーボンブラックとを含む共重合体組成物であって、共重合体組成物は、共重合体(S)の100質量部に対して、カーボンブラックを5~150質量部含み、共重合体(S)は、α-オレフィン(B)由来の構成単位として、1-ブテンに由来する構成単位を含む、共重合体組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物および前記共重合体組成物を架橋して得られる架橋成形体に関する。
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体をヒドロシリコーン架橋して得られる共重合体組成物は、イオウ加硫や過酸化物架橋と比較して機械的強度、耐熱老化性、圧縮永久歪み、ブルーム性に優れ、連続架橋が可能であることなどの特徴を有し、パッキン、ガスケット等シール部品への応用が期待される。
特許文献1では、混練-成形加工する際の50~130℃の比較的低い温度では、混練途中で架橋が起こらないようにスコーチタイムが長く、架橋温度である150~200℃では、短時間で架橋し得る共重合体組成物が提案されている。
特開2018-131527号公報
しかし、特許文献1の共重合体組成物は、低温下でゴム弾性等の特性が劣るという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑み、低温特性に優れたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物と、この共重合体組成物から得られる架橋成形体を提供することを課題とする。
本発明は、以下の構成を採用した。
[1]エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記要件(i)および要件(ii)を満たす共重合体(S)と、
下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
白金系触媒と、
カーボンブラックとを含む共重合体組成物であって、
前記共重合体組成物は、前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記カーボンブラックを5~150質量部含み、
前記共重合体(S)は、前記α-オレフィン(B)由来の構成単位として、1-ブテンに由来する構成単位を含む、共重合体組成物。
(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~90/10である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10.0質量%である。
Figure 2024032009000001
Figure 2024032009000002
(式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R、Rは各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Rはアラルキル基であり、RはR,R、水素原子、Rから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
[2]前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記ヒドロシリル基含有化合物(Y)を0.1~100質量部、前記白金系触媒を0.001~10質量部含む、[1]に記載の共重合体組成物。
[3]前記共重合体組成物が、さらに、反応抑制剤を含み、
前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記反応抑制剤を0~2質量部含む、[1]または[2]に記載の共重合体組成物。
[4]前記共重合体組成物が、さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、
前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.005~10質量部含む、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合体組成物。
[5]100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、5~60である、[1]~[4]のいずれかに記載の共重合体組成物。
[6]前記共重合体(S)が、下記要件(iii)~(v)のうちの1または2以上の要件を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の共重合体組成物。
(iii)下記式(1)で求められる(nC)が4.5以上80以下である。
(nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η (ω=100)(Pa・sec)との比P(η (ω=0.1)/η (ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
(v)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η (ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η (ω=10)(Pa・sec)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(3)を満たす。
Log{η*(ω=0.01)}/Log{η*(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 ・・・式(3)
[7]前記α-オレフィン(B)由来の構成単位が、1-ブテンに由来する構成単位である、[1]~[6]のいずれかに記載の共重合体組成物。
[8]前記共重合体(S)が、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位として、5-ビニル-2-ノルボルネンに由来する構成単位を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の共重合体組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の共重合体組成物を架橋して得られる架橋成形体。
本発明によれば、低温特性に優れたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物と、この共重合体組成物から得られる架橋成形体を提供できる。
<共重合体組成物>
本発明の1態様に係る共重合体組成物は、共重合体(S)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、白金系触媒と、カーボンブラックとを含む。
なお、本明細書および特許請求の範囲における「質量部」は、溶剤を含まない固形分換算の質量部である。
また、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値および上限値とする数値範囲を意味する。
[共重合体(S)]
本態様における共重合体(S)は、エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有する。
共重合体(S)を構成する全構成単位に対して、エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の合計の質量分率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、92質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
炭素数3~20のα-オレフィン(B)(以下、単に「α-オレフィン(B)」という場合がある。)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、特に1-ブテンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られる共重合体(S)が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持った成形体を得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
共重合体(S)は、前記α-オレフィン(B)由来の構成単位として、1-ブテンに由来する構成単位を含む。このような共重合体(S)を含む共重合体組成物は、低温特性に優れている。
前記α-オレフィン(B)由来の構成単位に対して、1-ブテンに由来する構成単位の質量分率は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%であることがさらに好ましく、100質量%であること(前記α-オレフィン(B)由来の構成単位が、1-ブテンに由来する構成単位であること)が特に好ましい。
前記1-ブテンに由来する構成単位の質量分率が好ましい下限値以上であれば、より優れた低温特性を得やすい。
非共役ポリエン(C)は、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエンである。
Figure 2024032009000003
非共役ポリエン(C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋が良好で、重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
本態様における共重合体(S)は、さらに、本態様の効果を損なわない範囲で、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位(CX)をさらに含んでいてもよい。
このような非共役ポリエン(CX)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
これらのうちでは、入手容易性が高く、ヒドロシリコーン架橋時の架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(CX)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
本態様における共重合体(S)が、非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位を含む場合、その質量分率は、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して、0~20質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましく、0.01~8質量%がさらに好ましい。
本態様における共重合体(S)は、前述したエチレン(A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)、非共役ポリエン(C)、および非共役ポリエン(CX)から選ばれる少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位として、バイオマス由来のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
共重合体(S)の100℃におけるムーニー粘度「ML(1+4)100℃」は、5~60であることが好ましく、7~55であることがより好ましく、20~50であることがさらに好ましい。
共重合体(S)の「ML(1+4)100℃」が好ましい下限値以上であれば、より優れた混錬加工性を得やすい。共重合体(S)の「ML(1+4)100℃」が好ましい上限値以下であれば、より優れた押出加工性、射出成形性等の成形時加工性を得やすい。
なお、共重合体(S)の「ML(1+4)100℃」において、Mはムーニー単位、Lはロータの形状、(1+4)は予熱1分、ロータ回転4分を意味し、100℃は測定温度を示す。測定には、例えば、ムーニー粘度計SMV-202((株)島津製作所製)を用いることができる。
共重合体(S)の極限粘度[η]は、0.5~4.0dL/gが好ましく、0.6~3.0dL/gがより好ましく、0.7~2.0L/gがさらに好ましい。
共重合体(S)の極限粘度[η]が好ましい下限値以上であれば、より優れた物性を得やすい。共重合体(S)の極限粘度[η]が好ましい上限値以下であれば、より優れた加工性を得やすい。
なお、共重合体(S)の極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値であり、後述の要件(iv)についての説明で詳述する方法と同様である。
共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)は、10,000~600,000が好ましく、30,000~500,000がより好ましく、50,000~400,000がさらに好ましい。
共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)が好ましい下限値以上であれば、より優れた物性を得やすい。共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)が好ましい上限値以下であれば、より優れた加工性を得やすい。
なお、共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)は、3D-GPCで測定される重量平均分子量を意味する。
本態様における共重合体(S)は、下記要件(i)~要件(ii)を満たす。また、下記要件(i)、要件(ii)に加えて、下記要件(iii)~要件(v)のうちの1または2以上の要件を満たすことが好ましく、下記要件(i)~要件(v)の総てを満たすことが特に好ましい。
(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~90/10である。
(ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10.0質量%である。
(iii)下記式(1)で求められる(nC)が4.5以上80以下である。
(nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η (ω=100)(Pa・sec)との比P(η (ω=0.1)/η (ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
(v)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η (ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η (ω=10)(Pa・sec)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(3)を満たす。
Log{η*(ω=0.01)}/Log{η*(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 ・・・式(3)
要件(i)は、本態様における共重合体(S)中の(i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~90/10を満たすことを特定する。
[A]/[B]は50/50~90/10が好ましく、55/45~85/15がより好ましく、55/45~78/22がさらに好ましい。共重合体(S)が要件(i)を満たすことにより、共重合体(S)をヒドロシリコーン架橋して得られる成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
なお、共重合体(S)中のエチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]とα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]の比[A]/[B]は13C-NMRにより求めることができる。
要件(ii)は、共重合体(S)中において、非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10.0質量%であることを特定する。
この非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率は、0.1~8.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%であることがより好ましい。
共重合体(S)は、要件(ii)を満たすことにより、本態様に係る共重合体組成物から得られる架橋成形体が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましい。また、共重合体(S)をヒドロシリコーン架橋すると、早い架橋速度を示すため、効率的に架橋成形体を製造できるので好ましい。
なお、共重合体(S)中の非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率は、13C-NMRにより求めることができる。
非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率は、共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)と、下記式(4)を満たすことが好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(C)の質量分率≦10 ・・・式(4)
要件(iii)は、下記式(1)で求められる(nC)の範囲を4.5以上80以下に特定する。
(nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、3D-GPCで測定される重量平均分子量を意味する。
(nC)は4.5以上78以下であることが好ましく、4.5以上75以下であることがより好ましい。
上記式(1)で求められる(nC)は、共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数である。
(nC)が下限値以上であることにより、ヒドロシリコーン架橋する際に充分な架橋速度を得やすい。また上限値以下であることにより、過度な架橋が生じにくく、得られる架橋成形体がより優れた機械特性を示す。
共重合体(S)が要件(iii)を満たす場合、各共重合体の長鎖分岐含有量が適切な範囲となる。その結果、ヒドロシリコーン架橋速度が速く、得られる架橋成形体の機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
共重合体(S)が構成単位(CX)を含む場合は、下記式(1’)で求められる(nC+cx)が4.5以上80以下であることが好ましく、4.5以上78以下であることがより好ましく、4.5以上75以下であることがさらに好ましい。
(nC+cx)=(Mw)×[{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量
+{(CX)の質量分率/100}/(CX)の分子量] ・・・(1’)
上記式(’1)で求められる(nC+cx)は、共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数と非共役ポリエン(CX)に由来する構成単位の数の合計数である。
要件(iv)は、共重合体(S)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η (ω=100)(Pa・sec)との比P(η (ω=0.1)/η (ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率:質量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定する。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6・・・式(2)
レオメーターとしては、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%で、周波数を変化させて測定を行った。 極限粘度[η](135℃デカリン中)は、135℃のデカリン中で測定される値である。
共重合体(S)は、下記式(2')を満たすことがより好ましい。
P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×5.7・・・式(2')
比P(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)および式(2')の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。
一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本態様における共重合体(S)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。
要件(v)は、共重合体(S)の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η (ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η (ω=10)(Pa・sec)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(3)を満たすことを特定する。
Log{η*(ω=0.01)}/Log{η*(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 ・・・式(3)
式(3)において、η*(ω=0.01)は、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られる、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*(Pa・sec)である。
また、η*(ω=10)は、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られる、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*(Pa・sec)である。
ここで、η*(ω=0.01)およびη*(ω=10)は、要件(iv)における複素粘度η (ω=0.1)および複素粘度η (ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。
式(3)において、非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(C)に由来する見かけのヨウ素価=(C)の質量分率×253.81/(C)の分子量
上記式(3)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(C)の含有量の指標を表す。
要件(v)を満たす場合には、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。要件(v)を満たさないことは、共重合した非共役ポリエン(C)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いことを示す。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の共重合体(S)を含んでいてもよい。例えば、(イ)エチレン/炭素数3~20のα-オレフィンのモル比、(ロ)ヨウ素価が異なる重合体同士を2種以上混合して用いることもできる。
本態様において、共重合体(S)の製造方法に特に限定はないが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
具体的には、例えば、国際公開第2015/122495号パンフレット記載の方法で製造することができる。
[ヒドロシリル基含有化合物(Y)]
本発明におけるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
本態様の共重合体組成物は、2種以上のヒドロシリル基含有化合物(Y)を含んでいてもよい。
Figure 2024032009000004
式(a)において、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R、Rは各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Rはアラルキル基であり、RはR,R、水素原子、Rから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。
このようなヒドロシリル基含有化合物(Y)は、そのシロキサン重合度が比較的小さく、かつ、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有する、直鎖構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
ヒドロシリル基含有化合物(Y)を共重合体(S)と選択的に併用することで、得られる成型物の耐スコーチ性、成型性、破断時の伸び、圧縮成型ひずみ等の物理的性質に特に優れる成形体を得ることができ、特に、ウェザーストリップスポンジ材等への適用可能性が改善されるものである。
式(a)において、mは、ケイ素原子結合アラルキル基を有するジオルガノシロキシ単位の数であり、1~20の範囲の数であり、2~10の範囲の数であってよく、3~6の範囲の数であることが特に好ましい。
式(a)において、nは側鎖におけるケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシロキシ単位の数であり、0または1であってもよいが、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子であり、分子内に少なくとも2のケイ素原子結合水素原子を有する構造となる。
なお、nが0または1以外の数であっても、分子鎖両末端のRの一方または両方がケイ素原子結合水素原子であることは妨げられない。さらに、nは0または1以外の数であることが好ましく、かつ、n≧mとなる数であることがより好ましい。より具体的には、nは3~10の範囲の数であってよく、3~9の範囲の数であることが特に好ましい。
式(a)において、pは、アラルキル基またはケイ素原子結合水素原子を含まないジオルガノシロキシ単位の数であり、0であってよく、後述するnとmとpの総和の値で表されるジオルガノシロキサン単位の総重合度から、nおよびmの値を除した数の範囲であってよい。例えば、pは0~12の範囲の数でよく、0~10の範囲の数でよく、0~5の範囲の数でよく、0~2であってよく、かつ、好ましい。
ヒドロシリル基含有化合物(Y)は、シロキサン重合度が比較的小さく、上記のnとmとpの値の総和が5~50であり、好ましくは5~20であってよく、5~15であってよい。
本発明の架橋剤であるヒドロシリル基含有化合物(Y)は、特に好適には、mが3~6の範囲の数であり、nが3~9の範囲の数であり、かつ、pが0~2の範囲の数である。
式(a)において、RはR,R、水素原子、Rから選ばれる基のいずれであってよい。ただし、n=0または1の場合は、Rの両方または一方は水素原子である。
式中のR,Rは一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよく、一部の炭素原子結合水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよい。このようなアルキル基は、炭素数1~20のアルキル基であってよく、工業的には、メチル基であってよい。
式(a)において、Rはアラルキル基であり、炭素数7~20のアラルキル基、好適には、炭素数7~15のアラルキル基であってよい。このようなアラルキル基として、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を例示することができ、特に、フェニル基等のアリール基とケイ素原子間のアルキレン構造中に-CH(CH)-で表される分岐単位を少なくとも一つ含むことが好ましい。本発明において、特に好適には、Rは-CH-CH(CH)-Cで表されるアラルキル基である。
当該アラルキル基は、ヒドロシリル基含有化合物(Y)に架橋剤としての有用性を与える特徴的な官能基であり、特に、n、m、pが上記の範囲にある本成分中にアラルキル基がケイ素原子結合水素原子と共に存在することで、得られる成型物の物理的性質が著しく改善されるものである。
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S)の100質量部に対するヒドロシリル基含有化合物(Y)の配合量は、0.1~100質量部が好ましく、0.5~90質量部がより好ましく、1.0~80質量部がさらに好ましい。
[白金系触媒]
白金系触媒は、付加反応触媒であり、共重合体(S)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば、特に制限はなく使用することができる。白金系触媒としては、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の白金系触媒を含んでいてもよい。
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S)の100質量部に対する白金系触媒の配合量は、0.001~10質量部が好ましく、0.005~9質量部がより好ましく、0.01~8質量部がさらに好ましい。
[カーボンブラック]
本態様の共重合体組成物はカーボンブラックを含む。カーボンブラックは補強剤として機能し、これを含有することにより、共重合体組成物の加工性が向上し、しかも引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質が向上した共重合体組成物を得ることができる。
カーボンブラックとしては、例えば、旭#50HG、旭#55G、旭#60UG(以上、旭カーボン(株)製)、シーストSVH、シーストV、シーストG-SO(以上、東海カーボン(株)製)などの公知のものを使用することができる。これらは、単独で使用することもできるし、併用することもできる。また、シランカップリング剤などで表面処理したものを使用することもできる。
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S)の100質量部に対するカーボンブラックの配合量は、5~150質量部である。前記配合量は、10~100質量部が好ましく、20~100質量部がより好ましい。
カーボンブラックの配合量が前記範囲内にあれば、動倍率(動的弾性率/静的弾性率)、加工性、機械的性質等に優れた共重合体組成物を得ることができる。
本態様の共重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、引張破断点応力、引張破断点伸びなどの物性を向上させるため、カーボンブラック以外の補強剤を含んでいてもよい。
カーボンブラック以外の補強剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微分ケイ酸などが挙げられる。カーボンブラック以外の補強剤は、2種以上配合してもよい。
[反応抑制剤]
本態様の共重合体組成物は反応抑制剤を含むことが好ましい。反応抑制剤は、共重合体(S)が有するアルケニル基と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)のヒドロシリル基との架橋反応(アルケンへのヒドロシリル化付加反応)を抑制する機能を有する化合物である。反応抑制剤を配合した場合は、組成物の混練時および成形時での加工性を安定にする点で好ましい。
反応抑制剤の具体例としては、例えば、ベンゾトリアゾール;1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール類;、アクリロニトリル;N,N-ジアリルアセトアミド、N,N-ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-o-フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-m-フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’-テトラアリル-p-フタル酸ジアミドなどアミド化合物);その他、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
これら化合物の中でも3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールが特に好ましい。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の反応抑制剤を含んでいてもよい。
本態様の共重合体組成物において、共重合体(S)の100質量部に対する反応抑制剤の配合量は、0.05~5質量部が好ましく、0.08~4質量部がより好ましく、0.1~3質量部がさらに好ましい。
[酸化防止剤]
本態様の共重合体組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
本態様の共重合体組成物は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むことにより、さらに、吸水率が高く、圧縮永久歪みが優れる架橋成形体を得ることができる。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の酸化防止剤を含んでいてもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,4,6-トリス(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシベンジル)メシチレン〔((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-330、融点:243~245℃)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-20、融点:220~222℃)、4,4'-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール) ((株ADEKA製、商品名:アデカスタブAO-40、融点:210~214℃)、N,N’-ビス{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン(BASF・ジャパン(株)製、商品名:Irganox MD1024、融点:224~229℃)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)製、商品名:Irganox1010、融点:110~130℃)、ジブチルヒドロキシトルエン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン(大内新興化学工業(株)製、商品名:ノクラックNS―7、融点:200℃以上)などが挙げられる。
本態様の共重合体組成物が酸化防止剤を含む場合は、共重合体(S)の100質量部に対する酸化防止剤の配合量は、0.001~10質量部が好ましく、0.005~10質量部がより好ましく、0.1~10質量部がさらに好ましく、0.5~8質量部が特に好ましい。
[老化防止剤]
本態様の共重合体組成物は老化防止剤を含んでいてもよい。
老化防止剤としては、一般的なゴム組成物に用いられる公知の老化防止剤を用いることができる。具体的には、フェノール系老化防止剤、およびアミン系老化防止剤などが挙げられる。
老化防止剤は、単独で用いてもよいが、高温下で、長時間の耐熱老化性を維持する点で、2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
本態様の共重合体組成物がイオウ系老化防止剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.2~8質量部、特に好ましくは0.2~6質量部の範囲で用いることができる。前記範囲でイオウ系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きい。
本態様の共重合体組成物がフェノール系老化防止剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~4質量部、特に好ましくは0.5~3質量部の範囲で用いることができる。前記範囲でフェノール系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きい。
本態様の共重合体組成物がアミン系老化防止剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、特に好ましくは0.2~3質量部の範囲で用いられる。前記範囲でアミン系老化防止剤を用いると、耐熱老化性の向上効果が大きい。
[軟化剤]
本態様の共重合体組成物は軟化剤を含んでいてもよい。
軟化剤は、ゴム組成物に配合される公知の軟化剤である。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、パラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の軟化剤を含んでいてもよい。
本態様の共重合体組成物が軟化剤を含む場合は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは5~150質量部、より好ましくは10~150質量部、特に好ましくは10~120質量部の範囲で用いられる。軟化剤の配合量が前記範囲内にあれば、タックが少なく、加工性、耐熱老化性、機械的性質等に優れた共重合体組成物を得ることができる。
[吸湿剤]
本態様の共重合体組成物は吸湿剤を含んでいてもよい。
吸湿剤としては、例えば、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらの中では酸化カルシウムが好ましい。吸湿剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1.0~12質量部、さらに好ましくは1.0~10質量部である。
本態様の共重合体組成物は、2種以上の吸湿剤を含んでいてもよい。
[有機過酸化物]
本態様の共重合体組成物は有機過酸化物を含んでいてもよい。
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
本態様の共重合体組成物が有機過酸化物を含む場合、共重合体(S)の100質量部に対する有機過酸化物の配合量は、0.2~6質量部が好ましく、0.2~4.8質量部がより好ましく、0.2~4質量部がさらに好ましい。
また、共重合体(S)の100質量部に対するヒドロシリル基含有化合物(Y)と有機過酸化物の合計配合量は、0.01~0.15当量が好ましく、0.01~0.1当量がより好ましく、0.02~0.1がさらに好ましい。
また、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と有機過酸化物(Z)の配合量の当量比[Y/Z]は、23/77~99/1が好ましく、47/53~99/1がより好ましい。
[架橋助剤]
本態様の共重合体組成物は架橋助剤を含んでいてもよい。
架橋助剤としては、具体的には、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用するヒドロシリル基含有化合物(Y)1モルに対して好ましくは0.5~2モル、より好ましくは約等モルの量で用いられる。
[充填剤]
本態様の共重合体組成物は、配合コストを下げるため、充填剤を含んでいてもよい。
充填剤としては、例えば、タルク、クレーなどが挙げられる。これらの充填剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような充填剤は、共重合体(S)100質量部に対し、好ましくは1~500質量部、より好ましくは1~400質量部、さらに好ましくは1~300質量部の範囲で用いられる。充填剤の配合量が前記範囲内であると、得られる成形体の引張強度、引裂強度、耐摩耗性等の機械的性質を向上させることができる。
[加工助剤]
本態様の共重合体組成物は加工助剤を含んでいてもよい。
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
加工助剤は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れる。
[活性剤]
本態様の共重合体組成物は活性剤を含んでいてもよい。
活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;ジ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類などが挙げられる。これらの活性剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。活性剤は、共重合体(S)100質量部に対して、好ましくは0.2~15質量部、好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部の範囲で適宜配合することができる。
[その他の配合剤等]
本態様の共重合体組成物は、上記成分に加え、本態様の目的が損なわれない限り、それ自体公知のゴム配合剤、例えば、α,β-不飽和有機酸の金属塩、架橋促進剤、可塑剤、粘着付与剤等を適宜配合することができる。
[その他の樹脂]
本態様の共重合体組成物は、本態様の効果を損なわない範囲で、共重合体(S)以外の樹脂ないしゴムを含んでいてもよい。共重合体(S)以外の樹脂ないしゴムは、共重合体(S)の100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、配合しないことが好ましい。
共重合体(S)以外の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの汎用樹脂が挙げられる。
ゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴムが挙げられる。
[発泡剤]
本態様の共重合体組成物は発泡した架橋成形体を得るため、発泡剤を含んでいてもよい。 発泡剤としては、酸化炭素、窒素、空気、水等の物理型発泡剤;重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、OBSH(4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4-ジフェニルジスルホニルアジド、p-トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。中でも発泡成形体の低比重化、高架橋密度化が可能であることから無機系発泡剤が好ましく、なかでも重曹が好ましい。
また、発泡剤に加えて、必要に応じて発泡助剤を添加してもよい。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進または気泡の均一化などの作用を示す。発泡助剤としては、例えば、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸およびクエン酸などの有機酸またはその塩;尿素またはその誘導体などが挙げられる。市販品としては、例えば、セルペーストK5(商品名;永和化成工業社製、尿素)およびFE-507(商品名;永和化成工業社製、重曹)などが挙げられる。発泡助剤の配合量は、共重合体(S)100質量部に対して、通常0.1~5質量部、好ましくは0.5~4質量部である。
また、高圧ガスによる物理発泡も可能である。すなわち、例えば樹脂の融点付近の温度で押出する際に、押出機の途中に設けられた圧入孔から揮発性又は無機ガス系発泡剤を圧入して、口金から押し出すことにより発泡体を連続的に得ることができる。物理型発泡剤の具体例としては、フロン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の揮発性発泡剤、窒素、空気、水、炭酸ガス等の無機ガス系発泡剤が挙げられる。また、押出発泡に際し、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム等の気泡核形成剤を添加してもよい。物理型発泡剤の配合割合は、共重合体(S)100質量部に対し、通常5~60質量部、好ましくは10~50質量部である。物理的発泡剤の配合割合が少なすぎると、発泡体の発泡性が低下し、逆に多すぎると、発泡体の強度が低下する。
[共重合体組成物の製造]
本態様の共重合体組成物を得るには、公知の一般的なゴム組成物と同様の方法を採用し得る。具体的には、以下の通りである。
バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、例えば、共重合体(S)、カーボンブラック、必要に応じて老化防止剤等の他の成分を80~170℃の温度で3~10分間混練(第一混練)した後、ヒドロシリル基含有化合物(Y)、白金系触媒、必要に応じて、反応抑制剤等の他の配合剤や他のゴムや樹脂などを加えて、オープンロールなどのロール類あるいはニーダーを用いて、ロール温度50~130℃で5~30分間混練(第二混練)した後、分出しすることにより調製することができる。このようにして通常リボン状またはシート状の共重合体組成物が得られる。
本態様の共重合体組成物を得るには、共重合体(S)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、必要に応じてその他の成分を混練(第一混練)した後、得られた混練物に、白金系触媒と、必要に応じて反応抑制剤と、必要に応じてその他の成分を加えて混練(第二混練)することも好ましい。
具体的には、共重合体(S)と、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、必要に応じてその他の成分を、80~170℃で1~10分間混練、好ましくは110~170℃の温度で3~8分間混練(第一混練)した後、得られた混練物に、白金系触媒と、必要に応じて反応抑制剤と、必要に応じてその他の成分を加え、10~100℃で1~10分間混練、好ましくは20~80℃の温度で3~7分間混練(第二混練)する方法が採用できる。
カーボンブラックは、第一混練時と第二混練時のいずれで加えてもよいが、第一混練時に加えることが好ましい。カーボンブラック以外の補強剤、軟化剤などを加える場合も同様である。
その他のゴム配合剤、例えば、α,β-不飽和有機酸の金属塩、吸湿剤、老化防止剤、充填剤、加工助剤、活性剤、可塑剤、粘着付与剤等の配合剤を加える場合は、第一混練時時に加えることが好ましく、架橋助剤および架橋促進剤は第二混練時に加えることが好ましい。
第一混練に用いる混練装置は、高温で処理できる装置であれば、種々公知の混練装置を使用し得る。具体的には、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などが挙げられる。
第二混練に用いる混練装置は、温度制御が容易なロール、ニーダー、押出機が挙げられる。
各成分の混練を、第一混練と第二混練に分けて混練すると、全成分を分けずに混練する場合と比べて混練時間の短縮が可能である。かつ、第一混練時に架橋が進行することを抑制できるため第一混練時の温度を上げることができ、より短時間で水分を除去することが可能である。
<架橋成形体>
本発明の1態様に係る架橋成形体は、本発明の共重合体組成物を架橋して得られる架橋成形体である。
架橋成形体は、本発明の共重合体組成物を、例えば、押出成形機、カレンダーロール、プレス成形機、射出成形機、トランスファー成形機など種々の成形機を用いた成形法によって所望形状に予備成形後、あるは成形と同時に、成形物を架橋槽内に導入し、加熱して架橋することにより得ることができる。本発明の共重合体組成物が発泡剤を含む場合は、架橋と共に発泡も進行し、発泡した架橋成形体(発泡成形体)が得られる。
加熱する方法としては、公知の方法が制限無く用いることができるが、特に、遠赤外線加熱炉、熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチーム、LCM(熱溶融塩槽)などの加熱形態の加熱槽を用いて、150~200℃の温度で1~30分間加熱することが好ましい。成形、架橋に際しては、金型を用いてもよく、また金型を用いないでもよい。金型を用いない場合は、ゴム組成物は通常連続的に成形、架橋される。
本発明の共重合体組成物をプレス成形して一次架橋を行い、金型から取り出すことにより一次成形体を得、得られた一次成形体を熱媒体中で二次架橋することも好ましい。
具体的には、本発明の共重合体組成物を、120~200℃で1~20分間、好ましくは150~200℃で10~18分間、プレス成形して一次架橋を行って金型から取り出すことにより一次成形体を得、得られた一次成形体を熱媒体中で120~160℃で10~24時間、好ましくは140~160℃で15~20分間、二次架橋する方法が採用できる。
二次架橋に用いる熱媒体は、空気、水蒸気、パラフィン系プロセスオイルや溶融塩等である。
一次架橋をプレス成形で行うと、せん断発熱によって架橋体が高温になることがない。そのため、低分子シロキサンの発生およびポリマーの劣化を抑えることが可能である。
また、密閉状態で架橋するプレス成形では、ある程度発生した低分子シロキサンが架橋体内部に残存するが、その後、熱媒体中で二次架橋を行うことで低分子シロキサンを揮発させ、低分子シロキサン量の少ない架橋体を得ることが可能である。
本態様の架橋成形体は、様々な用途に用いることができる。具体的には、タイヤ用ゴム、O-リング、工業用ロール、パッキン(例えばコンデンサーパッキン)、ガスケット、ベルト(例えば、断熱ベルト、複写機ベルト、搬送ベルト)、自動車用ホースなどのホース類(例えば、ウォーターホース、ブレーキリザーバーホース、ラジエターホース、エアーホース)、防振ゴム、防振材あるいは制振材(例えば、エンジンマウント、モーターマウント)、マフラーハンガー、スポンジ(例えば、ウェザーストリップスポンジ、断熱スポンジ、プロテクトスポンジ、微発泡スポンジ)、ケーブル(イグニッションケーブル、キャブタイヤケーブル、ハイテンションケーブル)、電線被覆材(高圧電線被覆材、低電圧電線被覆材、舶用電線被覆材)、グラスランチャネル、カラー表皮材、給紙ロール、ルーフィングシート等に好適に用いられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<測定方法・評価方法>
各例の共重合体、未架橋の共重合体組成物(後述の第二段階の混練を終了した直後の共重合体組成物、以下同じ)および架橋成形体の物性の測定や評価は以下の方法で行った。
[共重合体の組成]
共重合体の、各構成単位の質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
[共重合体のヨウ素価]
共重合体のヨウ素価は、滴定法により求めた。具体的には、以下の方法で測定した。
共重合体0.5gを四塩化炭素60mlに溶解し、少量のウィス試薬および20%ヨウ化カリウム溶液を加え、0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で適定した。終点付近では澱粉指示薬を加え、よく攪拌しながら薄紫色が消えるところまで適定し、試料100gに対する消費されるハロゲンの量としてヨウ素のg数を算出した。
[共重合体のムーニー粘度]
共重合体のムーニー粘度ML(1+4)100℃は、ムーニー粘度計「SMV-202」((株)島津製作所製)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて100℃で測定した。
[共重合体の極限粘度]
共重合体の極限粘度[η]は、(株)離合社製全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
[共重合体の分子量]
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、3D-GPCで測定される重量平均分子量を意味する。測定装置および条件は、以下のとおりである。
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型
(Polymer Laboratories社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel
GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.0mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
[共重合体のP値]
レオメーターとして、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%の条件で、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η* (ω=0.1)、および周波数ω=100rad/sでの複素粘度η* (ω=100)(いずれも単位はPa・sec)を測定した。また、得られた結果より、η* (ω=0.1)とη* (ω=100)との複素粘度の比(η*比)である共重合体のP値(η* (ω=0.1)/η* (ω=100))を算出した。
[硬さ試験(デュロ-A硬度)]
各例における未架橋の共重合体組成物を、プレス成形機を用いて、金型内にて180℃で10分間プレス成形して、厚さ2mmのシート状の架橋成形体を得た。得られた各例の架橋成形体6枚を積みかねて、厚さ12mmの試験片とし、JIS K 6253-3に従い、硬度(Duro-A)を測定した。なお、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
[引張試験]
各例における未架橋の共重合体組成物を、プレス成形機を用いて、金型内にて180℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのシート状の架橋成形体を得た。得られた各例の架橋成形体を打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いて同JIS K 6251第3項に規定される方法に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力TB(MPa)、引張破断点伸びEB(%)、25%伸張時のモジュラスM25(MPa)、50%伸張時のモジュラスM50(MPa)、および100%伸張時のモジュラスM100(MPa)を測定した。
[T-R試験(低温弾性回復試験)]
各例における未架橋の共重合体組成物を、プレス成形機を用いて、金型内にて180℃で10分間プレス成形して、厚さ2mmのシート状の架橋成形体を得た。
得られたシートについて、JIS K 6261に従い、T-R試験(低温弾性回復試験)を行い、耐寒性を測定した。
該試験では、伸長させたシートを凍結させ、温度を連続的に上昇させることによって伸長されていたシートの回復性を測定する。(昇温により試験片の長さが10%、70%収縮(回復)する時の温度を、それぞれTR10、TR70と表示する。)
TR10およびTR70(単位:℃)が低いほど、耐寒性に優れると判断できる。
[圧縮永久歪み(CS)]
各例における未架橋の共重合体組成物を、円柱状の金型がセットされたプレス成形機を用いて180℃で15分間架橋して、JIS K 6262に従い、直径29mm、高さ(厚さ)12.5mmの架橋成形体を得、この架橋成形体を試験片とした。荷重をかける前の試験片高さ(12.5mm)に対して25%圧縮し、150℃で72時間、23℃で22時間、または、-40℃で22時間処理した。次いで試験片を取出し、室温で30分間放置後、試験片の高さを測定し下記の計算式で圧縮永久歪み(%)を算出した。
圧縮永久歪み(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ。
t1:試験片を前記条件で熱処理した後、室温で30分間放置した後の高さ。
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ。
<共重合体の製造>
各例で用いた共重合体は以下の製造例の方法で製造した。各製造例で得られた共重合体の要件(i)~要件(v)に関する数値を表1および表2に示す。
[製造例1:エチレン・1-ブテン・VNB共重合体(S-1)の製造]
攪拌翼を備えた容積300Lの重合器を用いて、連続的に、エチレン、1-ブテン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)の重合反応を95℃にて行った。重合溶媒としてはヘキサン(フィード量:30.5L/h)を用いて、連続的に、エチレンフィード量が5.3kg/h、1-ブテン量が21.5kg/h、VNBフィード量が566g/hおよび水素フィード量が10NL/hとなるように、重合器に連続供給した。
重合圧力を1.6MPaG、重合温度を95℃に保ちながら、主触媒としてジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用いて、フィード量0.00903mmol/hとなるよう、重合器に連続的に供給した。また、共触媒として(CCB(Cをフィード量0.045mmol/h、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウム(TIBA)をフィード量30mmol/hとなるように、それぞれ重合器に連続的に供給した。
このようにして、エチレン、1-ブテンおよびVNBから形成されたエチレン・1-ブテン・VNB共重合体を20質量%含む溶液が得られた。重合器下部から抜き出した重合反応液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリッピング処理にてエチレン・1-ブテン・VNB共重合体を溶媒から分離した後、80℃で一昼夜減圧乾燥した。
以上の操作によって、エチレン・1-ブテン・VNB共重合体(S-1)が、毎時8.5kgの速度で得られた。得られた共重合体(S-1)の物性を前記に記載の方法で測定した。
共重合体(S-1)は、要件(i)~(v)を全て満たしていた。
Figure 2024032009000005
[製造例2:エチレン・プロピレン・VNB共重合体(E-1)の製造]
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を58.3L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を4.5mmol/hr、(C)CB(C)を0.150mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.030mmol/hrで連続的に供給した。
同時に前記重合反応器内に、エチレンを6.6kg/hr、プロピレンを9.3kg/hr、水素を18リットル/hr、VNBを340g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度87℃、全圧1.6MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で共重合を行ない、共重合体(E-1)を得た。
表2に示すように、共重合体(E-1)の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、2.8dL/gであった。また、共重合体(E-1)は、要件(i)~(v)を全て満たしていた。
[製造例3:エチレン・プロピレン・VNB共重合体(E-2)の製造]
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を25.4L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を20mmol/hr、(CCB(Cを0.075mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.015mmol/hrで連続的に供給した。
同時に前記重合反応器内に、エチレンを4.7kg/hr、プロピレンを4.3kg/hr、水素を220リットル/hr、VNBを240g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度110℃、全圧1.7MPaG、滞留時間40分の条件下で共重合を行ない、共重合体(E-2)を得た。
表2に示すように、共重合体(E-2)の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、1.2dL/gであった。また、共重合体(E-2)は、要件(i)~(v)を全て満たしていた。
Figure 2024032009000006
<ヒドロシリル基含有化合物>
各例で用いたヒドロシリル基含有化合物は下記のとおりである。
[ヒドロシリル基含有化合物(Y-1)]
反応器に下記式(a-1-1)で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン536gを仕込み、窒素流通下で攪拌しながら40℃まで加温した。
白金-1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン錯体のトルエン溶液(Pt濃度0.3wt%)を0.4g添加し、α-メチルスチレン265gを反応温度40~90℃に保つように滴下した。
Figure 2024032009000007
滴下終了後に85℃で攪拌を2時間継続した後、反応液を0.5g採取し、アルカリ分解ガス発生法(残存したSi-H基をKOHのエタノール/水溶液によって分解し、発生した水素ガスの体積からSi-H基の反応率を計算する)によりSi-H基の反応率が約36%であることを確認した。次に反応液を減圧下で135℃に加熱して2時間低沸分を溜去し、ヒドロシリル基含有化合物(Y-1)を673g得た。
得られたヒドロシリル基含有化合物(Y-1)は、29Si-NMRにより、下記式(a-1)で示される化合物であることを確認した。
得られたヒドロシリル基含有化合物(Y-1)について、25℃においてウベローデ型粘度管を使用してJIS-Z-8803に沿って粘度を測定したところ、26mm/sであった。
Figure 2024032009000008
<その他の成分>
各例で用いたその他の成分は下記のとおりである。
カーボンブラック:旭カーボン(株)社製、旭#60UG。
酸化防止剤:BASFジャパン(株)製、イルガノックス1010。
反応抑制剤:日信化学工業(株)製、1-エチニル-1-シクロヘキサノール。
触媒:ダウ・東レ製、SRX212Catalyst、塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯塩。
<実施例1、比較例1>
各例の共重合体組成物は、以下のように調製した。
第一段階として、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、表3の原料1に示す原料を140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、第一段階の配合物を得た。
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、表3の原料2に示す原料を加え、10分間混練して各例の未架橋組成物を得た。
[評価]
各例の架橋成形体の物性等を測定・評価した。結果を表3に示す。
Figure 2024032009000009
表3に示すように、エチレン・1-ブテン・VNB共重合体(S-1)を含む、実施例1の共重合体組成物から得られた架橋成形体は、T-R試験におけるTR10及びTR70が、それぞれ、-66℃及び-35℃と低く、低温特性に優れていた。また、圧縮永久歪み(CS)(-40℃で22時間処理)も49%と低く、低温特性に優れていた。
これに対して、エチレン・プロピレン・VNB共重合体(E-1)および(E-2)を含む、比較例1の共重合体組成物から得られた架橋成形体は、T-R試験におけるTR10及びTR70が、それぞれ、-35℃及び-8℃と高く、耐寒性に劣っていた。また、圧縮永久歪み(CS)(-40℃で22時間処理)も97%と高く、低温特性に劣っていた。

Claims (9)

  1. エチレン(A)由来の構成単位と、炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位と、下記式(I)および下記式(II)から選ばれる少なくとも一種の部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)に由来する構成単位とを有し、下記要件(i)および要件(ii)を満たす共重合体(S)と、
    下記式(a)で示され、分子内に少なくとも1つのケイ素原子結合アラルキル基および少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、ヒドロシリル基含有化合物(Y)と、
    白金系触媒と、
    カーボンブラックとを含む共重合体組成物であって、
    前記共重合体組成物は、前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記カーボンブラックを5~150質量部含み、
    前記共重合体(S)は、前記α-オレフィン(B)由来の構成単位として、1-ブテンに由来する構成単位を含む、共重合体組成物。
    (i)エチレン(A)由来の構成単位のモル数[A]の炭素数3~20のα-オレフィン(B)由来の構成単位のモル数[B]に対する比である[A]/[B]が、40/60~90/10である。
    (ii)非共役ポリエン(C)由来の構成単位の質量分率が、共重合体(S)を構成する全構成単位に対して0.07~10.0質量%である。
    Figure 2024032009000010
    Figure 2024032009000011
    (式(a)中、nおよびpは、0または正の数であり、mは1~20の範囲の数であり、nとmとpの総和は5~50である。R、Rは各々独立して一価のアルキル基であり、同一でも異なってもよい。Rはアラルキル基であり、RはR,R、水素原子、Rから選ばれる基である。ただし、n=1の時はRの少なくとも一方が水素原子であり、n=0の時はRの両方が水素原子である。)
  2. 前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記ヒドロシリル基含有化合物(Y)を0.1~100質量部、前記白金系触媒を0.001~10質量部含む、請求項1に記載の共重合体組成物。
  3. 前記共重合体組成物が、さらに、反応抑制剤を含み、
    前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記反応抑制剤を0~2質量部含む、請求項1に記載の共重合体組成物。
  4. 前記共重合体組成物が、さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、
    前記共重合体(S)の100質量部に対して、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.005~10質量部含む、請求項1に記載の共重合体組成物。
  5. 100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、5~60である、請求項1に記載の共重合体組成物。
  6. 前記共重合体(S)が、下記要件(iii)~(v)のうちの1または2以上の要件を満たす、請求項1に記載の共重合体組成物。
    (iii)下記式(1)で求められる(nC)が4.5以上80以下である。
    (nC)=(Mw)×{(C)の質量分率/100}/(C)の分子量 ・・・(1)
    但し、式(1)において、(Mw)は共重合体(S)の重量平均分子量であり、(C)の質量分率は非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率であり、(C)の分子量は非共役ポリエン(C)の分子量である。
    (iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η (ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η (ω=100)(Pa・sec)との比P(η (ω=0.1)/η (ω=100))と、極限粘度[η](135℃デカリン中)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の質量分率((C)の質量分率)とが、下記式(2)を満たす。
    P/([η]2.9)≦(C)の質量分率×6 ・・・式(2)
    (v)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η (ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η (ω=10)(Pa・sec)と、前記非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(3)を満たす。
    Log{η*(ω=0.01)}/Log{η*(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42 ・・・式(3)
  7. 前記α-オレフィン(B)由来の構成単位が、1-ブテンに由来する構成単位である、請求項1に記載の共重合体組成物。
  8. 前記共重合体(S)が、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位として、5-ビニル-2-ノルボルネンに由来する構成単位を含む、請求項1に記載の共重合体組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の共重合体組成物を架橋して得られる架橋成形体。
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