JP2024029810A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたPSOC寿命性能が得られる鉛蓄電池を提供する。【解決手段】鉛蓄電池1は、極板群11および電解液を含む少なくとも1つのセルを含む。前記極板群は、正極板3と、負極板2と、を含む。前記負極板は、有機繊維と硫酸バリウム粒子とを含む負極電極材料を含む。前記有機繊維は、前記有機繊維の体積固有抵抗値をRで表すとき、log10Rが、3以上13以下である。前記硫酸バリウム粒子の体積基準の粒度分布において、頻度の累積が10%、50%および90%となる粒子径をそれぞれ、D10、D50およびD90とするとき、(D90-D10)/D50で表されるスパン値が2.78以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池は、正極板および負極板と、これらの間に介在するセパレータと、電解液と、を含む。負極板に含まれる負極電極材料は、例えば、負極活物質としての鉛(または硫酸鉛)と、添加剤(有機防縮剤、炭素質材料、硫酸バリウム、補強材(有機繊維など)など)とを含む。
特許文献1は、鉛蓄電池であって、正極板と、集電体と、前記集電体に支持された負極材料と、を有する負極板と、を備え、前記負極材料は、0.05質量%以上、0.40質量%以下の割合で繊維を含有しており、前記繊維の平均長さは、1mm以上、6mm以下であり、前記繊維の平均体積固有抵抗値は、10Ω・cm以上、10Ω・cm未満である、鉛蓄電池を提案している。
特許文献2は、硫酸バリウムを含有し、前記硫酸バリウムは、少なくとも第1の粒子群と第2の粒子群とを含み、第1の粒子群の一次粒子径は10μm以下で平均値が0.3μm以上0.9μm以下であり、第2の粒子群の一次粒子径は10μm以下で平均値が2μm以上5μm以下であり、前記第1の粒子群が、体積頻度基準で硫酸バリウムの全量に対し、28%以上72%以下である鉛蓄電池用の負極板を提案している。
特開2019-61919号公報 特開2015-109171号公報
鉛蓄電池は、部分充電状態(Partial State Of Charge:PSOC)と呼ばれる充電不足状態で使用される場合がある。例えば、アイドリングストップシステム車などのアイドリングストップ(IS)(Idle Reductionとも言う。)用途または充電制御用途では、鉛蓄電池がPSOCで使用される。鉛蓄電池がPSOCで繰り返し使用されると、負極板の下部側で充放電反応が進行し難くなり、硫酸鉛の結晶が生成するサルフェーションが起こり易くなるため、寿命性能(以下、PSOC寿命性能とも言う)が低下する。
鉛蓄電池では、PSOC寿命性能の向上を目的として、様々な検討がされている。しかし、特許文献1のように、負極電極材料に使用する繊維による凝集抑制効果だけでは、PSOC寿命性能の向上効果は限定的である。
本開示の一側面は、鉛蓄電池であって、
前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を含む少なくとも1つのセルを含み、
前記極板群は、正極板と、負極板と、を含み、
前記負極板は、有機繊維と硫酸バリウム粒子とを含む負極電極材料を含み、
前記有機繊維は、前記有機繊維の体積固有抵抗値をRで表すとき、log10Rが、3以上13以下であり、
前記硫酸バリウム粒子の体積基準の粒度分布において、頻度の累積が10%、50%および90%となる粒子径をそれぞれ、D10、D50およびD90とするとき、(D90-D10)/D50で表されるスパン値が2.78以下である、鉛蓄電池に関する。
優れたPSOC寿命性能が得られる鉛蓄電池を提供できる。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の外観と内部構造を示す一部切り欠き斜視図である。
鉛蓄電池では、極板において充放電反応が不均一になると、寿命性能が低下する。例えば、正極板において、充放電反応が進行し易い部分では、正極電極材料の軟化脱落が進行し易い。また、負極板において、充放電反応が進行し難い部分では、放電時に生成した硫酸鉛が充電時に鉛に還元されにくい。特に、硫酸鉛の粒子が粗大化すると、充電時に硫酸鉛から鉛に還元され難くなるため、充電受入性が低下する。これらによって、負極板では、硫酸鉛の蓄積が顕著になり、サルフェーションが起こり易くなる。正極電極材料の軟化脱落または負極板におけるサルフェーションは、鉛蓄電池が寿命となる大きな要因である。
負極板において、放電時に生成する硫酸鉛の粗大化を抑制できれば、充電受入性が向上し、充電時に硫酸鉛から鉛への還元をスムーズに進行させることができると考えられる。負極板での充放電反応が極板全体でより均一に進行することで、正極板での充放電反応がより均一に進行し易くなる。よって、負極板におけるサルフェーションが進行し難くなるとともに正極電極材料の軟化脱落も抑制されることから、PSOC寿命性能を向上する上で有利であると考えられる。
負極電極材料に用いる有機繊維の体積固有抵抗値をRで表すとき、log10Rが3以上13以下とすることで、負極ペーストの調製時に、有機繊維と他の添加剤との摩擦が生じても、添加剤の帯電を比較的低く抑えることができ、添加剤の凝集を軽減できる。これにより、活物質や添加剤の偏在を抑制できるため、活物質の反応性の低下を抑制することができる。しかしながら、log10Rが3以上13以下の有機繊維を負極材料に添加するだけでは、硫酸鉛の粒子の粗大化を抑制することが充分ではなかった。
負極電極材料は、添加剤として硫酸バリウム粒子を含むことがある。この場合、以下のような課題が生じる場合があることを発明者らは知見した。負極電極材料が硫酸バリウム粒子を含むことで、放電時に、負極板では、硫酸バリウム粒子を核として硫酸鉛が形成される。そのため、放電時に粗大な硫酸鉛が生成することをある程度低減することができる。しかし、核となる硫酸バリウム粒子の粒子径のばらつきが大きいと、生成される硫酸鉛の粒子径のばらつきが大きくなる傾向がある。硫酸鉛の粒子径のばらつきが大きいと、充電時の反応性にばらつきが生じる。
上記に鑑み、(1)本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、極板群および電解液を含む少なくとも1つのセルを含む。極板群は、正極板と、負極板と、を含む。負極板は、有機繊維と硫酸バリウム粒子とを含む負極電極材料を含む。有機繊維は、有機繊維の体積固有抵抗値をRで表すとき、log10Rが、3以上13以下である。硫酸バリウム粒子の体積基準の粒度分布において、頻度の累積が10%、50%および90%となる粒子径をそれぞれ、D10、D50およびD90とするとき、(D90-D10)/D50で表されるスパン値が2.78以下である。
当該鉛蓄電池は、優れたPSOC寿命性能が得られる。この理由は定かではないが、以下のような理由が推測される。硫酸バリウム粒子のスパン値は、粒子径のばらつきの程度を表す。硫酸バリウム粒子の粒子径のばらつきが大きくなると、放電時に生成する硫酸鉛の粒子径のばらつきが大きくなりやすい。そのため、粗大な硫酸鉛粒子と小さな硫酸鉛粒子とが混在することとなる。粒子径が大きな硫酸鉛では、硫酸鉛から鉛への還元が起こり難い一方で、粒子径が小さな硫酸鉛では、還元がスムーズに起こる。硫酸鉛の粒子径のばらつきが大きい場合は、小さい場合に比べると、同じ時間充電を行っても、鉛に還元された硫酸鉛の量が少なくなるため、充電容量が低下する。その結果、放電反応にもばらつきが生じ、放電容量も低下する。この状態で、PSOCでの充放電を繰り返すと、充放電反応のばらつきが大きくなり、PSOC寿命性能が低下する。
ところが、本発明の上記側面に係る鉛蓄電池では、負極電極材料における硫酸バリウム粒子のスパン値が2.78以下である場合に、log10Rが3以上13以下の有機繊維を組み合わせると、PSOC寿命性能が格段に向上することが明らかとなった。
より具体的に説明すると、まず、負極電極材料に用いる有機繊維のlog10Rを3以上13以下とすることで、負極ペーストの調製時に、有機繊維と他の添加剤との摩擦が生じても、添加剤の帯電を比較的低く抑えることができ、添加剤の凝集を軽減できる。そして、硫酸バリウム粒子のスパン値が2.78以下であることで、放電時に形成される硫酸鉛の粒子径のばらつきが比較的小さくなる。そのため、充電時に、硫酸鉛から鉛への還元反応の進行のばらつきが少なくなり、充電受入性が向上し、充電反応がより均一に起こる。同じ時間充電を行った場合に、スパン値が2.78を超える場合に比べて、より多くの硫酸鉛を鉛に還元することができる。また、負極板における充電反応のばらつきが少なくなることで正極板での充電反応もばらつきが少なくなり、全体として充電反応が進行し易くなる。すなわち、log10Rが特定の範囲であることにより負極電極材料中の構成成分の分布状態がより均一になった状態で、硫酸鉛のスパン値を小さくすることにより充電特性が向上することで、負極板における充放電反応がさらにスムーズに進行する。よって、スパン値が小さいことによるPSOC寿命性能の向上効果が十分に発揮される。これらの結果として、優れたPSOC寿命性能を確保することができる。なお、log10Rが3未満の繊維としては、炭素繊維などが挙げられるが、補強材として十分な強度が得られ難い。
(2)上記(1)において、有機繊維のlog10Rは3以上9以下であってもよい。硫酸バリウム粒子のスパン値が2.78以下の場合に、log10Rがこのような範囲である場合、比較的高いPSOC寿命性能が得られ易い。
(3)上記(1)または(2)において、硫酸バリウム粒子のスパン値は2.50以下であってもよい。硫酸バリウム粒子のスパン値が小さくなると、log10Rが比較的幅広い範囲でも高いPSOC寿命性能を確保することができる。スパン値が2.50以下の場合、log10Rが3以上13以下でもPSOC寿命性能のより高い向上効果が得られる。スパン値が2.50以下の場合、特に、log10Rが3以上9以下の範囲では、PSOC寿命性能を顕著に向上することができる。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つにおいて、硫酸バリウム粒子のスパン値が2.50を超え2.78以下である場合には、log10Rは3以上8以下であることが好ましい。この場合、PSOC寿命性能の顕著な向上効果を得ることができる。log10Rがこのような範囲であることで、負極電極材料中の構成成分の分散性が高まり、充放電反応がより均一になるため、スパン値が上記の範囲でも、サルフェーションの抑制効果が十分に発揮されるためと考えられる。
有機繊維の体積固有抵抗値は、有機繊維の単位体積当たりの抵抗値(Ω・m)である。
なお、硫酸バリウム粒子の体積基準の粒度分布とは、レーザー回折または散乱式の粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布である。この体積基準の粒度分布における頻度の累積(積算値)が、10%、50%および90%のときの粒子径が、それぞれ、D10、D50、およびD90である。体積基準の粒度分布における積算値の50%に相当する粒子径D50は、メディアン径とも呼ばれる。なお、本明細書中、硫酸バリウム粒子の粒子径は、いずれも一次粒子の粒子径を意味する。
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つにおいて、有機繊維の平均繊維長は、1mm以上6mm以下であってもよい。この場合、有機繊維が負極ペースト中に分散し易く、負極ペースト中の構成成分の凝集をさらに抑制し易い。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つにおいて、有機繊維は、アクリル系繊維を含むことが好ましい。アクリル系繊維は、適度な親水性を有し、電解液との高い親和性を確保し易い。また、他の構成成分の帯電及び凝集を抑制する効果が高く、構成成分の凝集をさらに抑制することができる。よって、充放電反応がより均一に進行し易く、より高いPSOC寿命性能が得られ易い。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つにおいて、負極電極材料中の有機繊維の含有率は、0.03質量%以上0.6質量%以下であってもよい。この場合、有機繊維による高い補強効果を確保しながら、負極電極材料の抵抗が過度に大きくなることを抑制でき、高い容量が得られ易い。
鉛蓄電池は、制御弁式電池であってもよいが、液式電池が好ましい。液式電池はベント型電池と呼ばれることがある。制御弁式鉛蓄電池は、VRLA(Valve Regulated Lead-Acid Battery)と呼ばれることがある。
本明細書中、鉛蓄電池または鉛蓄電池の構成要素(極板、電槽、セパレータなど)の上下方向は、鉛蓄電池が使用される状態において、鉛蓄電池の鉛直方向における上下方向を意味する。なお、正極板および負極板の各極板は、外部端子と接続するための耳部を備えており、液式電池では、耳部は、極板の上部に上方に突出するように設けられている。
以下、本発明の一側面に係る鉛蓄電池について、主要な構成要件ごとにより具体的に説明する。しかし、本発明は以下に記載する構成要件のみに限定されない。本明細書中に記載の構成要素は、任意に組み合わせられる。本明細書中に記載の少なくとも1つの構成要素を、上記(1)~(7)の少なくとも1つと組み合わせてもよい。
(負極板)
負極板としては、ペースト式負極板が用いられる。ペースト式負極板は、負極集電体と、負極電極材料とを備える。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いた部分である。なお、負極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材を、以下、「貼付部材」とも称する。貼付部材は負極板と一体として使用されるため、負極板に含まれる。負極板が貼付部材を含む場合には、負極電極材料は、負極板から負極集電体および貼付部材を除いた部分である。
(負極集電体)
負極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛または鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工または打ち抜き加工が挙げられる。打抜き加工はパンチング加工とも称される。負極集電体として格子状の集電体を用いると、正極電極材料を担持させ易いため好ましい。
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。負極集電体は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は1層であってもよく、複数層でもよい。
(負極電極材料)
負極板に含まれる負極電極材料は、有機繊維と、硫酸バリウム粒子とを含んでいる。有機繊維は、通常、補強材としての機能を有する。負極電極材料は、通常、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、鉛もしくは硫酸鉛が挙げられる。負極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、有機防縮剤および炭素質材料が挙げられる。
(有機繊維)
有機繊維のlog10Rは13以下であり、9以下であってもよく、8以下であってもよい。有機繊維のlog10Rは、3以上である。有機繊維のlog10Rがこのような範囲であることで、硫酸バリウム粒子のスパン値が小さいことによる効果と合わせて、サルフェーションを抑制する高い効果が得られ、高いPSOC寿命性能が得られる。なお、本明細書において、有機繊維のlog10Rまたは体積固有抵抗値Rは、負極電極材料から取り出した有機繊維について測定される値の平均値である。
有機繊維のlog10Rおよび体積固有抵抗値Rは、例えば、有機繊維を構成する材料によって調節される。例えば、有機繊維を構成する樹脂の種類および配合比、導電性材料などの添加剤の種類および含有率、並びに二種以上の有機繊維の組合せおよび各有機繊維の配合比の少なくとも1つを変更することによって、有機繊維のlog10Rおよび体積固有抵抗値Rを調節してもよい。
有機繊維を構成する樹脂または高分子としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリアルキレンアリーレートが挙げられる。ポリアルキレンアリーレートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。セルロース化合物としては、例えば、セルロース、セルロース誘導体が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、セルロースエーテル、セルロースエステルが挙げられる。セルロース化合物には、レーヨンも含まれる。鉛蓄電池内において、電解液との高い親和性が得られ易い観点からは、有機繊維を構成する樹脂は、ある程度の親水性を有することが好ましい。このような親水性を有する有機繊維としては、アクリル系繊維、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、セルロース系繊維などが挙げられる。中でも、アクリル系繊維は、適度な親水性を有するとともに、log10Rを、3以上13以下、特に3以上9以下または3以上8以下に調節し易いため好ましい。
有機繊維は、添加剤を含んでもよい。有機繊維が導電性材料を添加剤として含む場合、log10Rまたは体積固有抵抗値Rを低い値に調節し易い。導電性材料としては、導電性炭素粒子、金属粉、導電性金属化合物の粒子などが挙げられる。導電性炭素粒子としては、カーボンブラックなどが挙げられる。有機繊維は、導電性材料を一種含んでもよく、二種以上組み合わせて含んでもよい。有機繊維中の導電性材料の含有率を多くすると、log10Rおよび体積固有抵抗値Rのそれぞれは小さくなる。
高い補強効果を得られ易い観点からは、有機繊維の平均繊維長は、例えば、1mm以上である。負極ペースト中の高い分散性を確保し易い観点からは、有機繊維の平均繊維長は、例えば、6mm以下であり、5mm以下であってもよい。
負極電極材料中の有機繊維の含有率は、例えば、0.03質量%以上であり、0.05質量%以上であってもよい。また、負極電極材料中の補強材の含有率は、例えば、0.6質量%以下であり、0.4質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の有機繊維の含有率は、0.03質量%以上(または0.05質量%以上)0.6質量%以下であってもよく、0.03質量%以上(または0.05質量%以上)0.4質量%以下であってもよい。
(硫酸バリウム粒子)
硫酸バリウム粒子の(D90-D10)/D50で表されるスパン値は、2.78以下である。スパン値が2.78を超えると、log10Rを調節しても、PSOC寿命性能の向上効果がほとんど得られないか、または向上効果が小さい。スパン値は小さいほど、PSOC寿命性能が高くなる傾向があるため、より高いPSOC寿命性能が得られる観点からは、スパン値を2.60以下または2.50以下にしてもよく、2.42以下にしてもよい。スパン値が小さくなると、優れたPSOC寿命性能が得られるlog10Rの範囲が広がる傾向がある。例えば、スパン値が2.50以下の場合には、log10Rが3以上13以下で高いPSOC寿命性能が得られ、特にlog10Rが3以上9以下の範囲ではPSOC寿命性能の顕著な向上効果が得られる。負極電極材料中の硫酸バリウム粒子のスパン値は小さいほど、PSOC寿命性能が高くなる傾向がある。しかし、スパン値を小さくすることは技術的に難易度が高い。スパン値の下限は特に制限されず、例えば、2以上であってもよい。スパン値が2.50を超え2.78以下のときに、より高いPSOC寿命性能を確保し易い観点からは、log10Rは3以上9以下であってもよく、3以上8以下であってもよい。
負極電極材料において、硫酸バリウム粒子の平均粒子径D50は、1μm以下であり、0.7μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。D50がこのような範囲である場合、硫酸バリウム粒子を核として硫酸鉛が成長し易いことでスパン値をほどよい範囲に調節し易い。加えて、硫酸バリウム粒子の凝集を抑制し易く、取り扱い性を向上できる。硫酸バリウム粒子のD50は、例えば、0.01μm以上である。
負極電極材料において、硫酸バリウム粒子のD90は、2.5μm以下であってもよく、2.0μm以下であってもよく、1.7μm以下であってもよい。D90がこのような範囲である場合、スパン値を小さくし易い。また、硫酸バリウム粒子のD90は、1.0μm以上であってよい。
負極電極材料において、硫酸バリウム粒子のD10は、0.25μm以下であってもよく、0.24μm以下であってもよく、0.22μm以下であってもよい。D10がこのような範囲である場合、スパン値を適度な範囲に調節し易い。また、硫酸バリウム粒子のD10は、0.01μm以上であってよい。
負極電極材料中の硫酸バリウム粒子の含有量は、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上または1質量%以上である。硫酸バリウム粒子の含有量がこのような範囲である場合、放電時に硫酸鉛の核となる硫酸バリウムが適度に存在することになるため、より均一な放電反応が進行し易い。また、負極電極材料中の硫酸バリウム粒子の含有量は、例えば、7.5質量%以下であり、好ましくは5.3質量%以下である。この場合、高い初期容量を確保することができる。
負極電極材料中の硫酸バリウム粒子の含有量は、0.1質量%以上7.5質量%以下または5.3質量%以下、0.5質量%以上7.5質量%以下または5.3質量%以下、あるいは1質量%以上7.5質量%以下または5.3質量%以下であってもよい。
有機防縮剤としては、リグニン、リグニンスルホン酸、合成有機防縮剤などが挙げられる。合成有機防縮剤としては、例えば、フェノール化合物のホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。負極電極材料は、有機防縮剤を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
負極電極材料中の有機防縮剤の含有率は、例えば、0.01質量%以上である。有機防縮剤の含有率は、例えば、1.2質量%以下である。
炭素質材料としては、カーボンブラック、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛など)、ハードカーボン、ソフトカーボンなどが挙げられる。負極電極材料は、炭素質材料を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
負極電極材料中の炭素質材料の含有率は、例えば、0.1質量%以上である。炭素質材料の含有率は、例えば、3.5質量%以下であってもよい。
(負極電極材料またはその構成成分の分析)
以下、負極電極材料中の有機防縮剤、炭素質材料、硫酸バリウム粒子、および補強材(有機繊維)の定量方法、硫酸バリウム粒子および補強材のサイズの計測、並びに補強材の体積固有抵抗値Rの測定について記載する。負極電極材料の構成成分の定量分析は、満充電状態の鉛蓄電池から取り出した負極板から採取した負極電極材料を用いて行われる。
負極電極材料は、次の手順で負極板から回収される。まず、満充電状態の鉛蓄電池を解体して分析対象の負極板を入手する。入手した負極板を水洗し、負極板から硫酸分を除去する。水洗は、水洗した負極板表面にpH試験紙を押し当て、試験紙の色が変化しないことが確認されるまで行う。ただし、水洗を行う時間は、2時間以内とする。水洗した負極板は、減圧環境下、60±5℃で6時間程度乾燥する。乾燥後に、負極板に貼付部材が含まれる場合には、剥離により負極板から貼付部材が除去される。次に、負極板から負極電極材料を分離してすることによりサンプル(以下、サンプルAと称する)を得る。サンプルAは、必要に応じて粉砕され、分析に供される。
本明細書中、液式の鉛蓄電池の満充電状態とは、JIS D 5301:2019の定義によって定められる。より具体的には、25℃±2℃の水槽中で、鉛蓄電池を、定格容量として記載の数値の1/10の電流(A)で、15分ごとに測定した充電中の端子電圧(V)または20℃に温度換算した電解液密度が3回連続して有効数字3桁で一定値を示すまで充電した状態が満充電状態である。また、制御弁式の鉛蓄電池の場合、満充電状態とは、25℃±2℃の気槽中で、定格容量に記載の数値(単位をAhとする数値)の0.2倍の電流(A)で、2.23V/セルの定電流定電圧充電を行い、定電圧充電時の充電電流が定格容量に記載の数値(単位をAhとする数値)の0.005倍の値(A)になった時点で充電を終了した状態である。定格容量として記載の数値は、単位をAhとした数値である。定格容量として記載の数値を元に設定される電流の単位はAとする。
満充電状態の鉛蓄電池は、既化成の鉛蓄電池を満充電した鉛蓄電池である。鉛蓄電池の満充電は、化成後であれば、化成直後でもよく、化成から時間が経過した後に行ってもよい。例えば、化成後で、使用中、好ましくは使用初期の鉛蓄電池を満充電してもよい。
本明細書中、使用初期の電池とは、使用開始後、それほど時間が経過しておらず、ほとんど劣化していない電池である。
《有機防縮剤の定量》
粉砕されたサンプルAを1mol/LのNaOH水溶液に浸漬し、有機防縮剤を抽出する。抽出された有機防縮剤を含むNaOH水溶液から不溶成分を濾過で除き、濾液(以下、「濾液B」とも称する。)を回収する。
濾液Bの所定量を測り取り、脱塩した後、濃縮し、乾燥することにより、有機防縮剤の粉末(以下、「サンプルC」とも称する。)が得られる。脱塩は、脱塩カラムを用いて行うか、濾液Bをイオン交換膜に通すことにより行うか、もしくは、濾液Bを透析チューブに入れて蒸留水中に浸すことにより行われる。
サンプルCの赤外分光スペクトル、サンプルEを蒸留水等に溶解して得られる溶液の紫外可視吸収スペクトル、サンプルFを重水等の溶媒に溶解して得られる溶液のNMRスペクトル、または物質を構成している個々の化合物の情報を得ることができる熱分解GC-MSなどから得た情報を組み合わせて、有機防縮剤を特定する。
上記濾液Bの紫外可視吸収スペクトルを測定する。スペクトル強度と予め作成した検量線と測り取った濾液Bの量とサンプルAの質量とから、負極電極材料中の有機防縮剤の含有率を定量する。分析対象の有機防縮剤の構造式の厳密な特定ができず、同一の有機防縮剤の検量線を使用できない場合は、分析対象の有機防縮剤と類似の紫外可視吸収スペクトル、赤外分光スペクトル、NMRスペクトルなどを示す、入手可能な有機防縮剤を使用して検量線を作成する。
《炭素質材料および硫酸バリウム粒子の定量》
粉砕されたサンプルA10gに対し、20質量%濃度の硝酸を50mL加え、約20分加熱し、鉛成分を鉛イオンとして溶解させる。次に、得られた溶液を濾過して、炭素質材料、硫酸バリウム等の固形分を濾別する。得られた固形分を水中に分散させて分散液とした後、篩いを用いて分散液から補強材(有機繊維)を回収する。
補強材を除去した後の分散液に対し、予め質量を測定したメンブレンフィルターを用いて吸引ろ過を施し、濾別された試料とともにメンブレンフィルターを110℃±5℃の乾燥器で乾燥する。得られる試料は、炭素質材料と硫酸バリウムとの混合試料(以下、サンプルDとも称する)である。乾燥後のサンプルDとメンブレンフィルターとの合計質量からメンブレンフィルターの質量を差し引いて、サンプルDの質量(M)を測定する。その後、乾燥後のサンプルDをメンブレンフィルターとともに坩堝に入れ、1300℃以上で灼熱灰化させる。残った残渣は酸化バリウムである。酸化バリウムの質量を硫酸バリウムの質量に変換して硫酸バリウムの質量(M)を求める。質量Mから質量Mを差し引いて炭素質材料の質量を算出する。
《硫酸バリウム粒子の粒度分布》
サンプルDの所定量を坩堝に入れ、酸素雰囲気下、500℃で加熱することにより炭素質材料を二酸化炭素に変換して除去する。これにより、残渣として硫酸バリウムを回収する。回収された硫酸バリウムを、以下、「サンプルE」とも称する。サンプルEを用いて、硫酸バリウム粒子の体積基準の粒度分布を、レーザー回折式の粒度分布測定装置により測定する。レーザー回折式の粒度分布測定装置としては、Malvern Panalytical社製のマスターサイザー3000を用いる。硫酸バリウム粒子の体積基準の粒度分布は、サンプルEをヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に添加し、1分間の超音波分散を行うことにより得られた分散液を用いて測定される。得られる粒度分布から、D10、D50およびD90を求める。これらの値から、上記式を用いてスパン値が求められる。なお、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中のヘキサメタリン酸ナトリウムNaHMPの濃度は0.05質量%である。
《補強材(有機繊維)の定量》
未粉砕のサンプルAを一部採取し、計量する。計量後のサンプルAを、硝酸と過酸化水素とを含む水溶液と混合し、可溶分を溶解させ、固形分を水溶液中に分散させて分散液とする。篩いを用いて分散液から補強材(有機繊維)を回収した後、水洗し、乾燥する。乾燥後の繊維(以下、「サンプルF」とも称する。)から一部を採取し、質量を正確に計量する。採取する量は、例えば、0.4gである。この繊維の質量が、上記のサンプルAの質量に占める比率(質量%)を求める。得られる比率が、負極電極材料中の繊維の含有率に相当する。なお、硝酸と過酸化水素とを含む水溶液としては、濃度60質量%の硝酸水溶液と、濃度35質量%の過酸化水素水とを6:4の質量比で混合した水溶液を用いる。
《補強材(有機繊維)の平均繊維長》
上記で得られたサンプルFから、任意に10本採取し、顕微鏡観察により、各繊維の長さを計測する。各繊維の長さを平均化することによって、補強材(有機繊維の平均繊維長)が求められる。
《補強材の体積固有抵抗値R》
上記で得られたサンプルFから、約0.25gの繊維を採取し、繊維をサンプルホルダに入れ、5.0Nmのトルクで加圧することにより、体積固有抵抗値計測用のサンプルGを作製する。サンプルホルダは、東陽テクニカ社製のSH2-Z型4端子サンプルホルダを用いる。サンプルホルダの上下電極としては、直径が0.8cmである電極を用いる。サンプルGは合計10個作製する。アジレント・テクノロジー社製のマルチメータ3458Aを用いて、25℃における各サンプルGの抵抗値(Ω)を測定する。サンプルGの厚さを計測し、次式によって、体積固有抵抗値R(Ω・cm)を求め、全てのサンプルについて平均化する。
体積固有抵抗値R(Ω・cm)=抵抗値(Ω)×サンプルGの断面積(cm)/サンプルGの厚さ(cm)
このようにして求められる体積固有抵抗値Rの平均値が、log10Rの算出に利用される。なお、サンプルGの断面積は、サンプルホルダの上下電極の面積に等しいと仮定する。
(負極板の製造方法)
負極板は、負極集電体に、負極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉、有機繊維、硫酸バリウム粉末、および必要に応じて各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで調製する。添加剤としては、有機防縮剤および炭素質材料などが挙げられる。例えば、硫酸バリウム粉末を分級するなどして、粒子径の大きな硫酸バリウム粒子および粒子径の小さな硫酸バリウム粒子を除去した硫酸バリウム粉末を原料に用いると、負極電極材料中の硫酸バリウム粒子のスパン値を小さくすることができる。また、硫酸バリウム粉末を合成する場合には、反応条件を調節して、粉末の粒子径および粒子径分布を調節してもよい。なお、充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。熟成工程では、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
(正極板)
正極板としては、ペースト式正極板が用いられる。ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを備える。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いた部分である。なお、正極板には、上述のような貼付部材が貼り付けられている場合がある。正極板が貼付部材を含む場合には、正極電極材料は、正極板から正極集電体および貼付部材を除いた部分である。
正極板に含まれる正極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛または鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工または打ち抜き加工が挙げられる。正極集電体として格子状の集電体を用いると、正極電極材料を担持させ易いため好ましい。
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金が好ましい。正極集電体は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は1層であってもよく、複数層でもよい。
正極板に含まれる正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質を含む。正極活物質には、二酸化鉛および硫酸鉛の少なくとも一方が含まれる。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、補強材が挙げられる。
補強材としては、例えば、繊維が挙げられる。繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維が挙げられる。有機繊維は、負極電極材料の有機繊維について例示した材料から選択できる。
正極電極材料中の補強材の含有率は、例えば、0.03質量%以上である。また、正極電極材料中の補強材の含有率は、例えば、0.5質量%以下である。
未化成のペースト式正極板は、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより得られる。正極ペーストは、鉛粉、アンチモン化合物、および必要に応じて他の添加剤に、水および硫酸を加えて混練することで調製される。
未化成の正極板を化成することにより正極板が得られる。化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の正極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。
(セパレータ)
負極板と正極板との間には、通常、セパレータが配置される。セパレータには、不織布、微多孔膜などが用いられる。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする。例えば、不織布の60質量%以上が繊維で形成されている。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維、パルプ繊維などを用いることができる。不織布は、繊維以外の成分、例えば耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマーなどを含んでもよい。微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤を含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。造孔剤としては、ポリマー粉末、オイルなどが挙げられる。組成物に、無機粒子を含ませてもよい。無機粒子としては、セラミックス粒子などが好ましい。セラミック粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニアが挙げられる。微多孔膜としては、ポリマー成分を主体とする微多孔膜が好ましい。ポリマー成分としては、ポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
セパレータは、リブを有してもよく、リブを有さなくてもよい。リブは、セパレータの表面の正極板または負極板と対向し得る領域に立設される。この領域をベース部と称することがある。リブは、セパレータの一方の表面のみに設けてもよく、両方の表面にそれぞれ設けてもよい。セパレータは袋状に形成してもよく、正極板または負極板のうちのいずれか一方を袋状のセパレータに包んでもよい。比重の重い硫酸根が下部に沈降する成層化を抑制し易い観点からは、負極板を袋状のセパレータに収容してもよい。なお、PSOCで充放電を繰り返す場合、成層化が起こり易く、成層化が進行するとサルフェーションが進行し易くなる。
(繊維マット)
鉛蓄電池は、さらに、正極板と負極板との間に介在する繊維マットを備えていてもよい。繊維マットは、セパレータとは異なる部材である。繊維マットは、シート状の繊維集合体を含む。このような繊維集合体としては、電解液に不溶な繊維が絡み合ったシートが使用される。このようなシートには、例えば、不織布、織布、編み物などがある。繊維マットの例えば60質量%以上が繊維で形成されている。
繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維、パルプ繊維などを用いることができる。ポリマー繊維の中では、ポリオレフィン繊維が好ましい。
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液である。電解液は、必要に応じてゲル化させてもよい。
電解液は、さらに、Naイオン、Liイオン、Mgイオン、およびAlイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオンなどを含んでもよい。
電解液の20℃における比重は、例えば、1.10以上である。電解液の20℃における比重は、1.35以下であってもよい。なお、これらの比重は、満充電状態の鉛蓄電池の電解液についての値である。
(その他)
鉛蓄電池は、1つのセルを含んでいてもよく、2つ以上のセルを含んでもよい。鉛蓄電池が、複数のセル(換言すると、複数の極板群)を含む場合、複数の極板群を直列で接続してもよい。
鉛蓄電池は、例えば、電槽のセル室に極板群と電解液とを収容する工程を含む製造方法によって得ることができる。鉛蓄電池の各セルは、各セル室に収容された極板群および電解液を含む。極板群は、例えば、セル室への収容に先立って、正極板、負極板、およびセパレータを、正極板と負極板との間にセパレータが介在するように積層することによって組み立てられる。正極板、負極板、およびセパレータのそれぞれは、通常、極板群の組み立てに先立って準備される。電解液は、セル室への収容に先立って調製される。鉛蓄電池が1つの極板群を有する場合、電槽は複数のセル室に分かれている必要はなく、電槽に極板群および電解液を収容してもよい。鉛蓄電池の製造方法は、極板群および電解液をセル室に収容する工程の後、必要に応じて、正極板および負極板の少なくとも一方を化成する工程を含んでもよい。
組み合わせが可能である限り、添付の特許請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項を組み合わせることができる。
以下、PSOC寿命性能の評価方法について説明する。
SBA S 0101:2014に基づき、下記の手順でPSOC寿命試験を行う。
a)全試験期間を通して、蓄電池を25±2℃の気相中に置く。蓄電池近傍の風速は、2.0m/s以下とする。
b)蓄電池を寿命試験装置に接続し、次に示す放電(放電1および放電2)および充電を行う。この放電および充電を、放電および充電のサイクルの1回とする。そして、放電および充電のサイクルを連続的に繰り返す。
放電:放電1 放電電流I±1Aで59.0±0.2秒(ここで、Iは、次の換算式を用いて算出し、小数点以下第1位で四捨五入する。I=18.3×I20
放電2 放電電流300±1Aで1.0±0.2秒
充電:充電電圧14.00±0.03V(制限電流100.0±0.5A)で60.0±0.3秒
放電および充電のサイクルの3600回ごとに40~48時間放置した後、再び放電および充電のサイクルを開始する。補水は、放電および充電のサイクルが30000回となるまでは行わない。
放電2の放電終期電圧(端子電圧)を測定し、7.2Vに達するまでのサイクル数を求め、PSOC寿命性能の指標とする。
図1に、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池の一例の外観を示す。しかし、本開示の一側面に係る鉛蓄電池は以下の実施形態のみに限定されない。
鉛蓄電池1は、極板群11と図示しない電解液とを収容する電槽12を具備する。電槽12内は、隔壁13により、複数のセル室14に仕切られている。各セル室14には、極板群11が1つずつ収納されている。電槽12の開口部は、負極端子16および正極端子17を具備する蓋15で閉じられる。蓋15には、セル室毎に液口栓18が設けられている。補水の際には、液口栓18を外して補水液が補給される。液口栓18は、セル室14内で発生したガスを電池外に排出する機能を有してもよい。
極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。ここでは、負極板2を収容する袋状のセパレータ4を示すが、セパレータの形態は特に限定されない。電槽12の一方の端部に位置するセル室14では、複数の負極板2を並列接続する負極棚部6が貫通接続体8に接続され、複数の正極板3を並列接続する正極棚部5が正極柱7に接続されている。正極柱7は蓋15の外部の正極端子17に接続されている。電槽12の他方の端部に位置するセル室14では、負極棚部6に負極柱9が接続され、正極棚部5に貫通接続体8が接続される。負極柱9は蓋15の外部の負極端子16と接続されている。各々の貫通接続体8は、隔壁13に設けられた貫通孔を通過して、隣接するセル室14の極板群11同士を直列に接続している。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
《鉛蓄電池E1~E15およびC1~C10》
下記の手順で各鉛蓄電池を作製した。
(1)負極板の作製
鉛酸化物、カーボンブラック、硫酸バリウム粉末、リグニン、補強材、水および硫酸を混合して負極ペーストを調製した。硫酸バリウム粉末としては、平均粒子径D50が0.6μmであり、必要に応じて、分級によって粒子径が小さな粒子および粒子径が大きな粒子を除去した硫酸バリウム粒子を用いた。除去する粒子の粒子径を調節することによって、スパン値を調節した。
負極ペーストをPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成、乾燥して、幅100mm、高さ115mm、厚さ1.2mmの未化成の負極板を得た。カーボンブラック、リグニンおよび補強材の量は、既化成の満充電の状態で測定したときに、それぞれ0.3質量%、0.1質量%および0.07質量%になるように調節した。分散液の添加量は、鉛酸化物を主成分とする粉末100質量部に対する硫酸バリウムの量が2.1質量部となるように調節した。補強材としては、既述の手順で求められるlog10Rが表1に示す値となるような繊維を用いた。なお、C1には、補強材としてポリエチレンテレフタレート繊維を用い、C7~C10には、補強材としてlog10R=1の炭素繊維を用いた。他の実施例および比較例では、補強材としてアクリル系繊維を用いた。アクリル系繊維のlog10Rは、アクリル繊維の材料の組成を変更することによって調整した。材料の組成の変更には、導電材の含有率の変更なども含まれる。各繊維の平均繊維長は約3mmであった。
(2)正極板の作製
鉛酸化物、補強材としての合成樹脂繊維、水および硫酸を混合して正極ペーストを調製した。正極ペーストを、アンチモンを含まないPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成および乾燥を行うことによって、幅100mm、高さ115mm、厚さ1.6mmの未化成の正極板を得た。
(3)鉛蓄電池の作製
未化成の負極板を、袋状セパレータに収容し、正極板と積層し、未化成の負極板7枚と未化成の正極板6枚とで極板群を形成した。セパレータとしては、正極板側に高さ0.6mmのリブを有する、厚さ(ベース部の厚さ)0.2mmのポリエチレン製の微多孔膜で形成された袋状セパレータを用いた。
正極板の耳部同士および負極板の耳部同士をそれぞれキャストオンストラップ方式で正極棚部および負極棚部と溶接した。極板群をポリプロピレン製の電槽に挿入し、電解液を注液して、電槽内で化成を施して、定格電圧12Vおよび定格容量が30Ahの液式の鉛蓄電池を組み立てた。なお、電槽内では6個の極板群が直列に接続されている。ここでいう「定格容量」とは5時間率容量を指す。5時間率容量は、定格容量に記載のAhの数値の1/5の電流(A)で放電するときの容量である。
電解液としては、硫酸水溶液を用いた。化成後の電解液の20℃における比重は1.285であった。
(4)評価
得られた鉛蓄電池を用いて、既述の手順でPSOC寿命性能を評価するとともに、負極電極材料中の硫酸バリウム粒子のスパン値を既述の手順で測定した。PSOC寿命性能は、鉛蓄電池C4のサイクル数を100(%)としたときの各鉛蓄電池のサイクル数の比率(%)によって評価した。
PSOC寿命性能の評価結果を表1に示す。表中のE1~E15は実施例である。C1~C10は比較例である。
Figure 2024029810000002
表1に示されるように、C1からC6を比較すると、負極電極材料中の硫酸バリウム粒子のスパン値が2.78より大きい場合には、負極電極材料中の補強材である有機繊維のlog10Rが3以上13以下の場合と、13超の場合とで、PSOC寿命性能はそれほど大きな変化は見られなかった。log10Rが3未満の繊維である炭素繊維を補強材として用いたC7~C10では、繊維が脆く、十分な補強効果が得られず、PSOC寿命性能が低くなった。
それに対し、C2からC6と、E1からE15との比較から分かるように、硫酸バリウム粒子のスパン値が2.78以下の場合、同じlog10Rである有機繊維を用いた鉛蓄電池同士で比較すると、PSOC寿命性能が向上した。実施例では、log10Rが3以上13以下の範囲では、総じて、比較的高いPSOC寿命性能が得られた。
硫酸バリウム粒子のスパン値が小さくなると、PSOC寿命性能の向上効果は大きくなる傾向がある。硫酸バリウム粒子のスパン値が小さくなると高いPSOC寿命性能が得られるlog10Rの範囲が広くなる傾向がある。例えば、スパン値が2.50以下の場合には、log10Rが3以上13以下の範囲全体で優れたPSOC寿命性能が確保でき、特に、log10Rが3以上9以下の範囲では、PSOC寿命性能の顕著な向上効果が得られた。また、スパン値が2.50を超え2.78以下のときには、log10Rが3以上8以下の場合に特に高いPSOC寿命性能が得られた。
本発明の上記側面に係る鉛蓄電池は、例えば、アイドリングストップシステム車用の鉛蓄電池などのIS用途、自動車、バイクなどの様々な車両の始動用電源などに適している。また、鉛蓄電池は、産業用蓄電装置などの電源にも好適に利用できる。産業用蓄電装置としては、例えば、フォークリフトなどの電動車両の電源が挙げられる。なお、これらの用途は単なる例示である。本発明の上記側面に係る鉛蓄電池の用途は、これらに限定されない。
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
4:セパレータ
5:正極棚部
6:負極棚部
7:正極柱
8:貫通接続体
9:負極柱
11:極板群
12:電槽
13:隔壁
14:セル室
15:蓋
16:負極端子
17:正極端子
18:液口栓

Claims (7)

  1. 鉛蓄電池であって、
    前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を含む少なくとも1つのセルを含み、
    前記極板群は、正極板と、負極板と、を含み、
    前記負極板は、有機繊維と硫酸バリウム粒子とを含む負極電極材料を含み、
    前記有機繊維は、前記有機繊維の体積固有抵抗値をRで表すとき、log10Rが、3以上13以下であり、
    前記硫酸バリウム粒子の体積基準の粒度分布において、頻度の累積が10%、50%および90%となる粒子径をそれぞれ、D10、D50およびD90とするとき、(D90-D10)/D50で表されるスパン値が2.78以下である、鉛蓄電池。
  2. log10Rは、3以上9以下である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記スパン値は、2.50以下である、請求項1または2に記載の鉛蓄電池。
  4. 前記スパン値が2.50を超え2.78以下であるとき、log10Rは、3以上8以下である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  5. 前記有機繊維の平均繊維長は、1mm以上6mm以下である、請求項1、2または4に記載の鉛蓄電池。
  6. 前記有機繊維は、アクリル系繊維を含む請求項1、2または4に記載の鉛蓄電池。
  7. 前記負極電極材料中の前記有機繊維の含有率は、0.03質量%以上0.6質量%以下である、請求項1、2または4に記載の鉛蓄電池。
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