JP2024012222A - ポリマー化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】鎖状エーテル構造を含み、生体親和性を示す新規なポリマー化合物を提供すること。【解決手段】主鎖としてポリオレフィン骨格を有し、その側鎖部分に鎖状エーテル構造を含む構造を導入したポリマー化合物。【選択図】図9

Description

本発明は、新規なポリマー化合物、及び当該ポリマー化合物を含む表面処理組成物等に関する。
一般に、各種材料表面に血液等の生体成分が接触すると、当該材料表面が異物として認識されて生体組織中のタンパク質の非特異的吸着、変性、多層吸着等が生じ、その結果、凝固系、補体系、血小板系等の活性化が生じることが知られている。このため、生体と接触して使用される医療用機器の表面においては、当該機器が異物として認識され、生体成分と異物反応を起こすことを防止するために、当該機器の表面に生体親和性を付与することが望まれる。
各種医療用機器の表面に生体親和性を付与する手段として、従来から生体親和性を有する材料を人工的に合成し、これを医療用機器の表面に塗布して使用する試みがなされている。このような生体親和性材料としては、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)等が代表的に知られている。これら生体親和性材料により、医療用機器表面などの血液等の生体成分が接触する部位を構成することで、医療用機器表面が異物として認識されることが防止され、その結果、凝固系、補体系、血小板系等の活性化が抑制される等の生体親和性が発現されるため、各種の医療用機器の血液等と接触する部位を構成する素材として実用化されている。
上記のような生体親和性を示すポリマーは一般に所定の親水性を示すと共に、当該ポリマーに含水させて水和させた際に、当該水和構造内に共通に「中間水」(freezing-bound water、intermediate water)と呼ばれる形態で水分子を含有することが明らかになっている。中間水は、氷点下の温度域において水分子の規則化/ 不規則化に伴う潜熱の移動を生じることによって特徴付けられ、物質表面に強く拘束される不凍水と、物質表面によって殆ど拘束を受けていない自由水に対して、その中間的な特性を示す状態の水分子として理解されている。上記水和構造内に中間水を生成するポリマーにおいては、その構造に応じた割合で中間水を生成し、生体親和性の発現に重要な役割を担っていると考えられている(例えば、特許文献1等を参照)。
上記の各ポリマーが、それぞれ含水した際に中間水を含む水和構造を生成する理由は必ずしも明らかではないが、従来の研究により、中間水を含む水和構造を生成するポリマーに共通する構造の存在が明らかにされている。
上記PEGは、鎖状エーテル構造の一種である-(C-O)-を繰返し単位とするポリマーであって、含水時に中間水を含有し、非常に優れた生体親和性を有することが知られている。また、上記PMEAは、アクリル骨格に対して当該PEGの構成単位である-(C-O)-を主たる構造とする側鎖を結合した構造を有しており、含水時に中間水を含有して生体親和性を有することが知られている。また、特許文献2には、(メタ)アクリルアミド骨格に対して鎖状エーテル構造を側鎖として導入することにより良好な生体親和性を示すポリマーが構成可能であることが記載されている。
また、例えば、特許文献1には、側鎖部分に含まれる鎖状エーテル構造を構成する炭素数を変化させ、また鎖状エーテル構造の繰り返し数等を変化させることにより、含有可能な中間水の量や、溶解可能な溶媒が変化することが記載されている。更に、特許文献3には、鎖状エーテル構造を導入したジエン系モノマーを重合して得られるポリマーが抗血栓性等の生体親和性を示すことが記載されている。
特開2017-82174号公報 特開2004-357826号公報 特開2021-63159号公報
上記のように、ポリマー化合物の一部として-(C2x-O)-の一般式で示される鎖状エーテル構造を含むことによって、当該ポリマーを含水させた際に中間水を含む水和構造を生成可能なポリマー化合物が構成できることが明らかになっている。一方、当該鎖状エーテル構造を一部に含むポリマー化合物においては、当該鎖状エーテル構造以外の部分の構造に応じてポリマー化合物が示す特性に違いを生じるために、当該ポリマー化合物の使用される用途等に応じたポリマー化合物の提供が期待されている。
本発明は、鎖状エーテル構造を含み、生体親和性を示す新規なポリマー化合物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を提供する。
(1)下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリマー化合物。但し、式(1)において、Rは水素又はエーテル結合を有していてもよい炭素数12以下の1価の炭化水素基、Rは1~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭素鎖を含む2価の飽和炭化水素基、Rはエーテル結合を有していてもよい炭素数6以下の1価の炭化水素基、mは1又は2の自然数、nは繰り返し単位の繰り返し数を示す。
Figure 2024012222000002
(2)Rが、-CH-、-CHCH-、-CH(CH)-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CH(CHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CH(CH)(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-CH(CHCH-、-CH(CH)(CHCH-、-CH(CHC(CH-、及び-CH(CHCH-からなる群より選択される2価の飽和炭化水素基である上記のポリマー化合物。
(3)Rが、CH、-CHCH、-(CHCH、-(CHCH、-(CHCH、-(CHCHからなる群より選択される1価の炭化水素基である上記のポリマー化合物。
(4)ポリマー化合物を構成する繰り返し単位数(n)に対して、式(1)に示す構造が占める割合を51mol%以上である上記のポリマー化合物。
(5)上記(1)~(4)のいずれかのポリマー化合物を含むポリマー組成物。
(6)上記(1)~(4)のいずれかのポリマー化合物が溶媒に溶解されてなるコーティング組成物。
(7)上記(1)~(4)のいずれかのポリマー化合物によってその表面の少なくとも一部がコーティングされている医療機器。
本発明に係るポリマー化合物によれば、良好な生体親和性を示すと共に、特に基材に対する密着性に優れるポリマー化合物が提供され、各種の生体親和性の発現が求められる部材表面を形成するために好適に使用することができる。
TBS基で保護した4-pentene-1-olのH NMRスペクトルである。 TBS基で保護した4-pentene-1-ol重合体のH NMRスペクトルである。 脱保護後の4-pentene-1-ol重合体のH NMRスペクトルである。 メチル化後の重合体のH NMRスペクトルである。 メチル化後の重合体の赤外吸収スペクトルである。 ポリマー化合物をコーティングしたPP基板の外観を示す実体顕微鏡写真である。 各ポリマー化合物の表面での液滴法による接触角を示すグラフである。 各ポリマー化合物の表面での液滴法による接触角と、水中気泡法による接触角を示すグラフである。 各ポリマー化合物の表面での血小板粘着の頻度を示すグラフである。
疎水性ポリマーと水相との界面においては、当該ポリマーを構成するポリマー分子と水分子の間で実質的な相互作用が発生せず、ポリマーと水相間に明確な界面が維持されると考えられる。一方、親水性を示すポリマーを水相と平衡させた際には、当該ポリマーを構成するポリマー分子と水分子の間で水和反応等が生じることにより、複雑な界面構造(水和構造)が形成されることが知られており、当該水相(水分子)との相互作用の有無によって、各種ポリマーが疎水性/親水性に分類されるものと考えられる。
上記水相と平衡する親水性ポリマーの表面に形成される水和構造内には、一般的にポリマー分子によって強く拘束され、加熱や冷却などの温度履歴を加えた際に水分子に固有の凝固/融解等の現象を生じることのできない水分子が存在することが知られており、このような状態の水分子は一般に「不凍水」と呼ばれている。また、当該不凍水の外殻には、当該不凍水を構成する水分子との間の凝集力などによって弱く拘束され、単相の水相と同様に凝固/融解等を生じる「自由水」と呼ばれる状態の水分子が存在することが知られている。
一方、例えば、上記特許文献1~3等に記載されるポリマーが水相と水和した水和構造内には、上記不凍水や自由水とは異なる挙動を示す水分子が存在することが確認されている。つまり、特許文献1~3等に記載されるポリマーを水和させた状態で、-100℃~0℃程度の範囲で温度変化をさせた際には、水分子の規則化/不規則化の相変態に起因すると考えられる潜熱の移動が観察され、当該潜熱を生じる水分子は、凝固/融解等の相変態を生じない不凍水や、単相の水相と同様に凝固/融解等を生じる自由水とは異なる状態にある水分子であると考えられることから、当該氷点下の温度域での相変態を生じる状態の水分子は「中間水」と定義されて不凍水や自由水と区別されている。そして、当該中間水の含有量に応じて、当該ポリマーとタンパク質、細胞等の生体物質の間の相互作用が変化し、生体親和性が発現することが観察されている(特許文献1~3等を参照)。
つまり、各種のポリマーが示す生体親和性は、当該ポリマーと水分子との間に生じる親和性に起因して発現するものと推測される。そして、上記PEG等の特に親水性が高いポリマーを水相と接触させた際には、生体親和性が発現すると共に、ポリマーが水に溶解する水溶性ポリマーとしての特徴が発現する。これはポリマーの分子鎖の周囲に高密度で水分子が結合する結果、ポリマー分子間の結合が維持困難になる結果であると推察される。
当該PEGに対して、当該PEGを構成する構成単位である-(C-O)-の構造をポリマー主鎖に対する側鎖部分に有する上記PMEA等のポリマーでは、所定量の水分子と水和を生じる一方で、非水溶性を示すことが知られている。このことは、水分子との水和が主に当該側鎖部分において生じ、ポリマーの骨格部分での水和の程度が低いために、ポリマー分子間の結合が維持される結果であり、上記-(C-O)-等の鎖状エーテル構造を他のポリマー構造と組み合わせることにより、生体親和性を発現すると共に、各種の特性を有するポリマー化合物を構成可能であることを示すものと考えられる。
なお、本願明細書においては、水分子の間で水和を生じるポリマーの内で、水溶性を示さないポリマーを特に水和性ポリマーと記載することがある。また、本願明細書においては、「ポリマー」及び「重合体」との用語は、モノマー単位の繰り返しで構成された構造を有する化合物(分子)を示すものとして互換的に使用するものとする。また、当該ポリマー(重合体)において、当該ポリマーを構成する繰り返し単位をモノマーユニットと称する場合がある。また、「高分子」の用語は、ポリマーのほか、例えばタンパク質、核酸等のような多数の原子が共有結合してなる巨大分子を示すものとして使用するものとする。
また、鎖状エーテル構造の語は、アルキレン基の一端がエーテル結合(-O-)で置き換えられた単位構造が一又は複数連結した構造を意味するものとして使用する。
本発明者が、鎖状エーテル構造を側鎖部分に有する各種ポリマーについて各種の検討を行ったところ、主鎖としてポリオレフィン骨格を使用し、その側鎖部分に鎖状エーテル構造を含む構造を導入することによって、非晶質の構造を有する親水性ポリマーが生成し、更に、生体親和性を発現すると共に、各種の基材に塗布等された際に高い密着性を示すポリマー化合物が構成可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
本発明に係るポリオレフィン骨格に対して鎖状エーテル構造を含む構造を側鎖として導入したポリマー化合物を各種の樹脂製基材に塗布してなる被膜は非水溶性を示すと共に、特に、水相と長時間の接触をさせた際にも膜厚の不均一化等の形態の変化を生じ難く、医療用機器等の表面に生体親和性を付与するために好ましく使用可能である。
アクリル骨格に対して、鎖状エーテル構造を含む構造を側鎖として導入することで構成される上記PMEAを使用し、これをPET等の樹脂製基材に塗布した状態で水相中に長時間の浸漬を行った場合、樹脂製基材の表面において当該PMEAで構成される被膜の膜厚が不均一化し、微少な丘状の突起を含む斑点模様が生成される、いわゆる脱濡れを生じる傾向が観察される。
当該PMEA等に対して、本発明に係るポリマー化合物により各種の基材表面に形成された被膜は各種の基材に対して高い密着性を示すと共に、水相と長時間の接触をさせた際にも安定して形態が維持可能であり、特に長時間の連続使用が望まれる人工心肺等の医療用機器の表面に生体親和性を付与するために好ましく使用することができる。
上記のように、ポリマー化合物の主鎖構造をポリオレフィン骨格とすることにより樹脂製基材に対する密着性が向上し、特に、水相中に長時間の浸漬を行った際にも脱濡れを生じ難い理由は以下のように考察される。
つまり、上記で説明したように、PMEA等の主鎖部分であるアクリル骨格が水分子との水和が生じ難いことにより、隣接する主鎖部分間の凝集力が維持される結果、全体として非水溶性を示すものと考えられる。しかしながら、長時間の水相への浸漬等を行った際には、当該アクリル骨格部分においても一定の水和を生じるために主鎖部分に生じる凝集力が低下することにより流動性を生じ、特に、当該PMEA等と異種の樹脂製基材との界面自由エネルギーに起因して、PMEAが樹脂製基材との相互作用を減少する方向に流動する結果であると推察される。
これに対して、本発明に係るポリマー化合物の主鎖を構成するポリオレフィンは、単純な炭素間の結合によって構成され、水和を生じ易い極性官能基が含まれないために、水相中に長時間の浸漬を行った際にもアクリル骨格等と比較した際に当該主鎖部分での水和が生じ難く、樹脂製基材との界面での密着強度や被膜の形態が変化し難いものと推察される。
長時間の水相との接触等を行った際にも、本発明に係るポリマー化合物を含む被膜が各種の樹脂製基材との密着強度を維持可能であることを利用することにより、特に、人工心肺内において血液等の流れに接触する等して各種の力が印加され、基材の表面に設けた被膜の剥離等を生じやすい用途等においても、長期間にわたって生体親和性を発揮させることが可能となる。
また、本発明に係るポリマー化合物においては、ポリオレフィン骨格に対して鎖状エーテル構造を含む側鎖部分を導入する際の導入密度に応じて、ポリマー化合物と水を接触させた際にポリマーが水和して安定な水和構造を形成するために要する時間や、その際の含水量が変化することが見出された。つまり、主鎖に対して導入される側鎖の密度について、主鎖を構成する炭素原子2個あたり一つの側鎖、又は3個あたり一つの側鎖を導入することにより、短時間の水との接触で水和構造が形成されると共に、高い含水率で含水するポリマー化合物が形成されることが見出された。
上記で説明したように、各種ポリマーが示す生体親和性は、当該ポリマーが水和した際の水和構造内に中間水が存在することにより発現するものと考えられる。一方、当該ポリマーの水和には所定の時間が必要であり、ポリマーの構造等に応じて、水和の完了に必要とされる時間に違いがあることが知られている。そして、当該ポリマーの水和の過程においては、ポリマーと水相間の界面自由エネルギーの最小化を駆動力として、ポリマーの表面付近でポリマー化合物内の親水的な部分が水相との界面に移動する現象を伴うものと推察され、当該移動のし易さが水和の完了までの時間に影響するものと考えられる。
本発明に係るポリマー化合物においては、ポリオレフィン骨格に対して導入する側鎖の密度を高めた際に、側鎖部分の移動度が向上することにより、短時間で水和が完了するものと考えられた。ポリオレフィン系高分子では、(メタ)アクリル骨格や(メタ)アクリルアミド骨格等と比較した際に、主鎖近傍に極性官能基が存在せず炭化水素鎖で構成されているため、ポリマーマトリックスの均質性が高く、その極性がより低いと考えられる。このため、ポリオレフィン骨格を有するポリマーにおいては、鎖状エーテル構造等を含む側鎖部分の導入によるポリマー分子の凝集形態への影響が特に大きく、当該構造の側鎖部分が高密度で導入されることによって当該均質性が低下して分子鎖間の間隔が拡大する等により、側鎖部分の移動度が向上したことが推察される。
生体親和性を示すポリマー等を、血液や細胞、生体組織等と接触させて使用する際には、使用開始時の生体親和性を良好に発現させるために、予めリン酸緩衝液や生理食塩水等を使用して水和を完了させることが望まれている。一方、短時間で水和が完了するポリマー化合物を含む組成物によれば、例えば、使用の前に予め水和を行うことが困難な用途や、気相と液相が交互に接触する用途等においても良好な生体親和性を発現することが可能となる。
本発明に係るポリマー化合物は、上記式(1)で表される繰り返し単位を含むことにより特徴付けられる。式(1)において、Rは水素又はエーテル結合を有していてもよい炭素数12以下の1価の炭化水素基であり、Rは1~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭素鎖を含む2価の飽和炭化水素基、Rはエーテル結合を有していてもよい炭素数6以下の1価の炭化水素基、mは1又は2の自然数、nは繰り返し単位の繰り返し数を示す。
本発明に係るポリマー化合物は、主鎖である炭素鎖に対して、2価の飽和炭化水素基(R)の一端が結合することによって側鎖部分が導入される点で、例えば、(メタ)アクリル骨格や(メタ)アクリルアミド骨格のように、極性官能基によって側鎖部分が結合するポリマー化合物と相違する。そして、当該主鎖に結合する極性官能基が存在しないことにより、主鎖部分における水和が抑制されることで、長時間の湿潤環境下においても各種基材に対する密着性が維持されるものと考えられる。
上記2価の飽和炭化水素基(R)として、1~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭素鎖を含む2価の飽和炭化水素基を使用することが可能であり、その一例として、-CH-、-CHCH-、-CH(CH)-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CH(CHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CH(CH)(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-CH(CHCH-、-CH(CH)(CHCH-、-CH(CHC(CH-、及び-CH(CHCH-からなる群より選択される2価の飽和炭化水素基を使用することができる。
式(1)においては、エーテル結合により連結されるRとRによって鎖状エーテル構造が形成され、当該鎖状エーテル構造によって含水時に中間水が生成されることによって生体親和性が発現するものと考えられる。また、Rの内部に更にエーテル結合を有することによって、複数単位が連結された鎖状エーテル構造とすることができる。更に、Rとしてエーテル結合を有する炭化水素基を結合させることにより、実質的な側鎖密度を向上し、飽和含水時の含水量を増加等することができる。
なお、上記「エーテル結合を有してもよい炭化水素基」とは、炭化水素基を構成する2つの炭素原子がエーテル結合(-O-)を介して結合した形態を含むことを意味し、例えば、エチル基(-CH-CH)との対比において、-CH-O-CHで表される基を含みうることを意味する。また、各炭化水素基に含まれるエーテル結合は単数に限定されず、複数のエーテル結合を有してもよい。また、ポリマー化合物に含まれる各側鎖部分において、R,Rに相当する炭化水素基として相互に異なる構成の炭化水素基を含むことも可能である。
また、式(1)に示す構造において、Rとして内部にエーテル結合を有しない炭化水素基を導入した際にも十分な生体親和性の発現することから、炭素数6以下の1価の炭化水素基として、例えば、メチル(CH)、エチル(-CHCH)、プロピル(-(CHCH)、i-プロピル(-CH(CH)、n-ブチル(-(CHCH)、i-ブチル(-CHCH(CH)、tert-ブチル(-C(CH)、n -ペンチル(-(CHCH)、ネオペンチル(-CHC(CH)、イソアミル(-(CHCH(CH)、tert-アミル(-C(CHCHCH)、n-ヘキシル(-(CHCH)、及びi-ヘキシル(-(CHCH(CH)からなる群より選択される炭化水素基が挙げられ、特に、CH、-CHCH、-(CHCH、-(CHCH、-(CHCH、-(CHCH等を使用することができる。
また、式(1)に示す構造において、ポリマー主鎖において側鎖が導入されない炭素原子の繰り返し数(m値)を1又は2とすることにより、側鎖の導入密度が高められ、水と接触した際の水和に要する時間を短縮することができる。
本発明に係るポリマー化合物においては、ポリマー化合物の全体について、上記m値を1又は2とする他、m=1及びm=2の各繰り返し単位を構成するモノマーを共重合した共重合体とすることにより、m値が1の繰り返し単位とm値が2の繰り返し単位が混在するようにすることも可能である。
また、本発明に係るポリマー化合物に各種の特徴を付与する等の目的により、上記式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を導入することもできる。例えば、-R-O-Rの構造に代えて、エーテル結合を有しない炭化水素基を導入することにより、水相と接触した際の含水量を抑制することが可能である。
また、上記m値が1又は2である繰り返し単位で構成される群を、他の繰り返し単位で構成される群との間でブロック共重合体とすることによっても、本発明に係るポリマー化合物に各種の特徴を付与することが可能である。
本発明に係るポリマー化合物においては、ポリマー化合物を構成する全繰り返し単位数(n)に対して、式(1)に示す構造が占める割合を51mol%以上とすることが望ましく、特に、式(1)に示す構造が占める割合が70mol%以上、或いは90mol%以上、95mol%以上とし、又は、実質的に式(1)に示す構造のみによって構成されるポリマー化合物とすることにより、良好に生体親和性を発現することが可能となる。
本発明に係るポリマー化合物の数平均分子量は、例えば、10,000~500,000の範囲とすることが望ましく、さらに好ましくは30,000~100,000の範囲とすることが望ましい。本発明に係るポリマー化合物は、水和によって不凍水や中間水等から構成される水和構造を生成するものであり、所定の親水性を示すものであるところ、数平均分子量を10,000以上、或いは30,000以上とすることにより、良好な耐水溶性を付与することができる。また、数平均分子量を500,000以下、或いは100,000以下とすることにより、本発明に係るポリマー化合物をコーティング等の手段によって基材表面に適用する際の流動性を確保することができる。
また、分子量分布(Mw/Mn)を、1.0~2.5の範囲、より好ましくは1.0~1.5の範囲とすることにより、各種特性のばらつきを防止できる点で望ましい。
本発明に係るポリマー化合物は、その使用目的等に応じて、他のポリマー化合物やフィラー成分、溶媒、分散媒等と混合した組成物として使用することができる。特に、適宜の溶媒に溶解することでコーティング用組成物とし、これを塗布法、スプレー法、ディップ法等によって各種基材の表面にコーティングして使用することができる。当該コーティングは、例えば、生体親和性を付与したい各種の基材表面にコーティング用組成物塗布した後に、その溶媒を蒸発除去等することによって行うことができる。
本発明に係るポリマー化合物を各種溶媒に溶解してなるコーティング組成物においては、その生体親和性等を顕著に損なわない範囲で、コーティングの目的に応じて、例えば、抗菌剤、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を混合して使用することができる。
また、コーティング用組成物を使用して各種部材の表面をコーティングした後、当該コーティング被膜において、各種の架橋剤を使用したり、電子線等のエネルギー照射等によってポリマー分子を架橋することで、当該被膜の耐性の向上等を行うことができる。
本発明に係るポリマー化合物は、上記式(1)における-R-O-Rに相当する構造を導入したα-オレフィン、又は上記式(1)におけるRを構成する構造を導入したα,α-二置換オレフィンをモノマーとして、適宜の触媒を重合開始剤として重合させることにより合成することができる。又は、重合後に当該構造を導入可能とする保護基を導入したα-オレフィン等を適宜の触媒の存在下で重合させた後、当該保護基を所望の構造で置換することによっても合成することができる。
α-オレフィン等を重合する際の触媒としては、当該使用されるオレフィンの構造等に応じて、オレフィンの重合に使用されるチーグラー・ナッタ触媒等の不均一系触媒を使用することができるが、重合されるポリマーの構造の均一性や分子量分布等の点から特にメタロセン触媒等の均一系遷移金属錯体触媒が好ましく使用できる。
本発明に係るポリマー化合物は、その側鎖部分に極性基であるエーテル結合を含むために、当該エーテル結合の周囲の構造によっては極性基の影響によって触媒が失活し所定の分子量を有するポリマー化合物の重合が困難となる場合がある。そのような場合においては、エーテル結合の近傍に保護基を導入したモノマーを使用してα-オレフィン等の重合を行った後、当該保護基を所定の構造で置換することにより本発明に係るポリマー化合物とすることも可能である。
また、本発明に係るポリマー化合物は、上記式(1)における-R-O-Rに相当する構造を導入したジエン系モノマーを原料としてアニオン重合を行うことによっても合成することができる。つまり、ジエン系モノマーを原料として、極性溶媒や炭化水素溶媒中でアニオン重合を行うことにより、ジエン系モノマー間で1,2-付加反応、又は3,4-付加反応が進行することで、主鎖を構成する炭素原子の2個当たり一つの側鎖が導入された構造のポリマー化合物を合成することができる。
上記ジエン系モノマーを原料としたアニオン重合によって得られるポリマー化合物においては、上記式(1)におけるRの部分に分岐アルカン鎖が含まれる。当該、Rの部分に分岐アルカン鎖を含むポリマー化合物も本発明に係るポリマー化合物に包含される。
更に式(1)において、m=2とした構造を有するポリマー化合物は、上記式(1)における-R-O-Rに相当する構造を予め導入した炭素-炭素不飽和結合を有する3員環の環状化合物をモノマーとした開環メタセシス重合や、同様に上記式(1)における-R-O-Rに相当する構造を予め導入した1,4-ペンタジエンをモノマーとした非環式ジエンのメタセシス重合(ADMET重合)によって得られる重合体に対して水素添加を行うことに合成することができる。また、両端に塩素原子等のハロゲンを結合し、上記式(1)における-R-O-Rに相当する構造等により水素原子を置換したトリメチレン基をモノマーとして、アルカリ金属存在下でウルツ型のカップリング重合を行うことによっても、式(1)においてm=2であるポリマー化合物を合成することができる。
本発明に係るポリマー化合物の重合は、ヘキサン、ヘプタン、ブタン、オクタン、イソブタンなどの飽和炭化水素系溶媒や、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒を反応溶媒とした、いわゆる溶液重合等によって行うことができる。
本発明に係るポリマー化合物の重合は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、例えば、-80~150℃の範囲で行うことが可能であり、より望ましくは-50~50℃の温度範囲で行うことが可能である。
各種基材の表面に設けられる本発明に係るポリマー化合物を含むコーティング皮膜の膜厚は、当該基材が使用される用途等に応じて、例えば、数nm~1mmの範囲とすることにより良好な生体親和性を発現する被膜を構成することができる。
また、本発明に係るポリマー化合物が各種基材に対して高い密着性を示すことを利用して、本発明に係るポリマー化合物を含むコーティング組成物を、いわゆるプライマとして使用し、そのコーティング膜表面に各種のポリマーを積層して使用することも可能である。
また、本発明に係るポリマー化合物によって被覆された表面に血液などの生体物質を接触させる際には、予め当該表面に含水させることで、中間水の含有に寄与する構造を含むポリマー部分を水和等しておくことが好ましい。
本発明に係るポリマー化合物を含むコーティング組成物は、生体内組織や細胞、血液等と接して使用される表面の少なくとも一部分を被覆していればよく、医療機器等を成す基材の表面に対して、本発明に係るコーティング組成物を表面処理剤として用いることができる。
なお、本明細書において、医療機器とは、生体内組織や細胞、血液等に接して使用される機器であり、例えば、当該生体内組織や血液等が示す生理的な活性を害さない目的で使用される機器を意味する。当該医療機器には、例えば、生体内に入れられた形態、生体内組織が露出した状態で当該組織や血液と接して使用される形態、骨組織等の生体内組織に埋入された状態で当該組織に接して使用される形態、および体外循環医用材料において体外に取り出した生体内成分である血液と接して使用される形態などを当然に含むものとする。また、「医療用途に使用され」とは、上記「生体内組織や血液に接して使用され」、又は、それを予定して使用されることを含むものである。
本発明に係るコーティング組成物によりコーティングされる医療機器等を構成する部材の材質や形状は特に制限されることなく、例えば、多孔質体、繊維、不織布、粒子、フィルム、シート、チューブ、中空糸や粉末等いずれでも良い。その材質としては木錦、麻等の天然高分子、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(メタ) アクリレート、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体等の合成高分子あるいはこれらの混合物が挙げられる。特に、金属、セラミクス、ガラス、およびそれらの複合材料等のように、高分子材料との密着性を確保し難い表面に対して、本発明に係るポリマー化合物を含むコーティング組成物が望ましく使用することができる。
本発明に係るコーティング組成物は、生体内組織や血液と接して使用される医療機器に用いることができ、体内埋め込み型の人工器官や治療器具、体外循環型の人工臓器類、さらにカテーテル類(血管造影用カテーテル、ガイドワイヤー、PTCA用カテーテル等の循環器用カテーテル、胃管カテーテル、胃腸カテーテル、食道チューブ等の消化器用カテーテル、チューブ、尿道カテーテル、尿菅カテーテル等の泌尿器科用カテーテル) 等の医療機器の生体内組織や血液と接する表面の少なくとも一部、好ましくは血液と接する表面のほぼ全部に用いられることが望ましい。
また、多数のガス交換用多孔質中空糸膜をハウジングに収納し、中空糸膜の外面側に血液が流れ、中空糸膜の内部に酸素含有ガスが流れるタイプの中空糸膜外部血液灌流型人工肺の、中空糸膜の外面もしくは外面層に、本発明に係るコーティング組成物が被覆されている人工肺としてもよい。
また、透析液が充填された少なくとも一つの透析液容器と、透析液を回収する少なくとも一つの排液容器とを含む透析液回路と、前記透析液容器を起点とし、または、前記排液容器を終点として、透析液を送液する送液手段とを有する透析装置であって、その血液と接する表面の少なくとも一部が本発明に係るコーティング組成物でコーティングされても また、本発明に係るコーティング組成物は、所定量の中間水を有する表面が示すタンパク質や細胞等との選択的吸着性を活かして、各種タンパク質や細胞等が存在する水溶液に接する基材表面や粒子表面にコーティングされることにより、各種の診断用チップを構成する目的で使用されてもよい。
また、本発明に係るコーティング組成物が塗布される等によって、本発明に係るポリマー化合物によって構成される表面は、細胞を好ましい形態で接着して維持可能な細胞培養用支持体として好ましく使用することができる。つまり、本発明に係るポリマー化合物により表面が構成される細胞培養用支持体は、基質に接着して生きる細胞であれば特に限定されず、表皮細胞や、血管内皮細胞、口腔内皮細胞、食道上皮細胞、胃上皮細胞、腸管上皮細胞等の消化管上皮細胞、鼻腔粘膜上皮細胞、気管上皮細胞、肺胞上皮細胞等の呼吸器上皮細胞、汗腺細胞、皮脂腺細胞、アポクリン腺細胞、乳腺細胞等の外分泌腺細胞、唾液腺上皮細胞、涙腺細胞、膵臓ランゲルハンス島細胞、副腎髄質細胞、副腎皮質細胞、松果体細胞、脳下垂体細胞、甲状腺細胞等の内分泌腺細胞、肝細胞、腎上皮細胞、膵臓細胞、副腎細胞等の内臓実質細胞、味蕾細胞、嗅上皮細胞、有毛細胞等の感覚器細胞、神経細胞と、星状膠細胞、シュワン細胞等のグリア細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞等の筋細胞、線維芽細胞、間質細胞、結合織細胞、軟骨細胞、骨芽細胞等の間葉細胞、胸腺上皮細胞、子宮上皮細胞、卵巣ろ胞細胞、輸卵管上皮細胞、精細管上皮細胞、ライディッヒ細胞等の細胞培養に適用することができる。
また、本発明に係るポリマー化合物により表面が構成される細胞培養用支持体は、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、核移植ES細胞、体細胞由来ES細胞等の分化多能性を有する幹細胞、造血幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞、その他間質由来幹細胞、Muse細胞、神経幹細胞等の組織幹細胞、多分化能を有する幹細胞、肝臓、膵臓、脂肪組織、骨組織、軟骨組織等の各種組織における前駆細胞等の各種の幹細胞の培養に使用することが可能である。本発明に係るポリマー化合物により表面が構成される細胞培養用支持体を用いた幹細胞の培養においては、細胞を好ましい形態で接着して維持可能であること等に起因して、培養される幹細胞の特性に応じて分化の促進や抑制等が生じるため、培養の目的に則した細胞培養が可能である。
以下、本発明について実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は当該実施例等に限定して理解されるものではない。
1,ポリマー化合物の合成
以下の例で用いた薬品等について、特に断りのない場合は市販品をそのまま使用した。
モノマー及びポリマーの構造解析については、NMR測定装置(Bruker社製、AVANCE III 400MHzもしくは600MHz)を用い、H NMR測定を行った。なお、ケミカルシフトはCDClH:7.26ppm)を基準とした。
[合成例1]
合成例1では、以下の式(2)に示す繰り返し単位から構成されるポリマー化合物を合成した。式(2)に示す繰り返し単位は、式(1)において、Rを水素原子、Rをトリメチレン基、Rをメチル基、m値をm=1とした構造に相当する。合成例1では、重合されるポリマー化合物の分子量分布等の観点から、使用するモノマーに対して保護基を導入した状態で重合反応を生じさせ、その後、重合物に含まれる保護基を置換して式(2)の構造とする手法によりポリマー化合物を合成した。
Figure 2024012222000003
以下のスキームに示すように、出発原料の4-pentene-1-olのヒドロキシ基に対してシリル保護基であるTBS(tert-butyldimethylsilyl)基を設けた。
Figure 2024012222000004
三口フラスコ内で4-pentene-1-ol(>98.0%(GC)、東京化成工業株式会社)を17.77g(206.3mmol)、imidazole(>99.0%(GC)(Titration)、東京化成工業株式会社)を20.55g(301.9mmol)、反応溶媒としてのジクロロメタン(DCM)(dehydrated, Super、>99.5%(GC)、関東化学株式会社)を400mL混合し、0℃で10min撹拌した。更に、36.93g(245.0mmol)のtert-butyldimethylsilyl chloride(>98.0%(GC)、東京化成工業株式会社)を加えた後、室温で3h撹拌した。
その後、反応溶液に水を加えて希釈した後、分液漏斗を用いて有機層を回収し、回収した有機層をMgSOで水分を除去した後、吸引濾過を行って回収した濾液をエバポレータで濃縮し、更にカラムクロマトグラフィー(充填剤:Silica gel 60N、展開溶媒:hexane、TLC:Rf = 0.30 (4-pentene-1-OTBS))を使用して高極性成分を除去した後に再度エバポレータで濃縮し、CaHの存在下で減圧蒸留(34℃/1mmHg)を行うことで無色透明の液体を得た(収量:35.08g、収率:87.5%)。
図1には、上記で得られた生成物のH-NMRスペクトルを示す。図1に示すように、上記生成物においてはTBS基に由来するピークが観察され、4-pentene-1-OTBSを生成したものと考えられた。保護基の付加に係る転化率は、99%以上であると見積もられた。
上記で得られた生成物をモノマーとして使用して、以下のスキームにより、メタロセン錯体であるCp ZrMe(bis (pentamethylcyclopentadienyl) dimethylzirconium(IV)、99%, Strem Chemicals, Inc.)、及び、助触媒としてのB(C(>98.0%(NMR)東京化成化学工業)を使用して重合を行った。
Figure 2024012222000005
上記で得られた4-pentene-1-OTBS(24.02g/120.0mmol)にトルエン(5mL)を加えた溶液Aと、Cp ZrMe(158.2mg/0.404mmol)と、B(C(102.6mg/0.200mmol)をトルエン(15mL)に加えた溶液Bを準備し、当該溶液A,Bを-78℃に冷却した状態で混合し、-78℃に20min静置した後、-20℃の環境に移して撹拌することで6時間の重合反応を行った。
その後、反応溶液を過剰量のメタノールと混合して反応を停止すると共に、生成物を沈殿させた。分離した当該沈殿物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた後に、過剰量のメタノールと混合して再沈殿させる操作を繰り返すことで沈殿精製を行い、最後にTHFを蒸発除去することで無色透明の粘稠体を得た(収量:22.43g、収率:93.4%)。
図2には、上記で得られた生成物のH NMRスペクトルを示す。図2に示すように、上記生成物においてはモノマーの二重結合に由来するシグナルが消失し、重合が進行したことが確認された。また、GPC測定の結果から、数平均分子量(Mn)は43400g/mol、重量平均分子量(Mw)との比(分子量分布)はMn/Mw=2.1と見積もられた。
次に、以下のスキームにより、TBAF(tetrabutylammonium fluoride)を使用して上記生成物の脱保護を行った。
Figure 2024012222000006
上記生成物(1.14g、モノマーユニット換算 5.69mmol)に対して、TBAFのTHF溶液(1.0M、Sigma-Aldrich Corporation)を30mL加えて室温で17時間の撹拌をした後、過剰量の脱イオン水を加えて1時間撹拌を行った。反応溶液をTHFに滴下して撹拌することでポリマー成分を沈殿させ、THFに溶出したTBAF等をデカンテーションによって分離した。
沈殿物をメタノールで回収した後、残留するTBAF等を除去するために大過剰の陽イオン交換樹脂(Amberlyst15(登録商標))とCaCOを加えて室温で6時間の撹拌をしてTBAF等をイオン交換樹脂にイオン結合させた。反応溶液を濾過して得られた濾液をエバポレータを用いて濃縮し、60℃の真空オーブンで3時間乾燥させることで無色透明の粘稠体を得た(粗収率85.7%)。
図3には、上記で得られた生成物のH NMRスペクトルを示す。図3に示すように、上記処理によりTBS基に由来するピークが消失すると共にヒドロキシ基に由来するピークが出現したことが観察され、脱保護が行われたことが確認された。
次に、以下のスキームにより、上記で導入したヒドロキシ基をメチル化して、上記式(2)に示す構造とした。本スキームでは、エーテルを与えるアルコキシドを生成するための塩基としてNaHを使用し、NaHが存在する環境でヨウ化メチルとの反応によりヒドロキシ基の水素原子をメチル化した。
Figure 2024012222000007
パラフィン中に分散したNaH(Sigma-Aldrich Corporation)を使用し、NaHの含有量が44.00mmolになるようにヘキサン(Super dehydrated,>96.0%(Capillary GC),富士フィルム和光純薬株式会社)と混合することでパラフィンを分離した後、10mLのDMF(N,N-dimethylformamide)(>99.5%(GC),関東化学株式会社)と混合して、窒素雰囲気下で撹拌して分散液とした。
上記ヒドロキシ基を有する粘稠体(0.97g)を20mLのDMFに溶解した溶液を、上記NaHを含む分散液に滴下した後、60℃で1時間の撹拌を行い、その後に室温まで冷却した。その後、9.2g(64.82mmol)のヨウ化メチル(>95%(GC),富士フィルム和光純薬株式会社)を滴下して混合し、再度、60℃で3時間の撹拌を行ってヒドロキシ基の水素原子をメチル化した。
反応の終了後に室温まで冷却し、メタノールを滴下することで残留するNaHを失活させた後、過剰量の純水中に滴下してポリマー成分を沈殿させ、その後に塩酸によって中和した。上澄み液を除去した後、クロロホルムを混合して目的とするポリマー化合物を含む可溶成分を溶解させた後、当該液を濾過して沈殿物を分離し、更に大過剰の純水に混合して目的とするポリマー化合物を沈殿させて水溶性成分を分離した。当該混合物の上澄みの水を除去した後、クロロホルムで目的とするポリマー化合物を回収し、その後にクロロホルムを蒸発除去して0.39gの生成物を回収した(収率:34.6%)。
図4には、上記で得られた生成物のH NMRスペクトルを示す。また、図5には、上記で得られた生成物の赤外吸収(IR)スペクトルを示す。図4に示すように、当該生成物は、式(2)で示される繰り返し単位により構成されると考えられた。また、図5に示すIRスペクトルにおいて、3000~3700(cm-1)付近に存在するOH伸縮振動に由来する吸収ピークが観察されないことからも、上記スキームによりヒドロキシ基がメチル化されたものと考えられた。上記脱保護前の分子量に基づいて、上記生成物の分子量(Mn)は21700g/molと見積もられた。
また、得られた生成物では、-57℃(乾燥状態)、-61℃(含水状態)のガラス転移温度(Tg)が観察され、融点(Tm)が観察されなかったことから、低結晶化度、もしくは非晶質構造を有するポリマーであると推察された。
合成例1で合成されたポリマー化合物は、繰り返し単位の主鎖部分に2個の炭素を含むことから、本明細書において当該ポリマー化合物を「P2」と記載する場合がある。
[合成例2]
合成例2では、特許文献3に記載の方法により、以下の式(3)に示す繰り返し単位から構成されるポリマー化合物を合成した。式(3)に示す繰り返し単位は、式(1)において、Rを水素原子、Rをトリメチレン基、Rをメチル基、m値をm=2とした構造に相当する。
合成例2で合成されたポリマー化合物は、繰り返し単位の主鎖部分に4個の炭素を含むことから、本明細書において当該ポリマー化合物を「P4」と記載する場合がある。
Figure 2024012222000008
[合成例3]
従来から生体親和性を示すことで知られているPMEAを、以下の方法により合成して使用した。(4)式には、PMEAの構造を示す。
Figure 2024012222000009
2-メトキシエチルアクリレート15.2g(117mmol)、1,4-ジオキサン60.5g、及びアゾビスイソブチロニトリル15.4mg(0.094mmol)を混合した反応溶液中に乾燥窒素ガスを通しながら30分間攪拌し、反応系を窒素置換した。その後、75℃に設定したオイルバス内で窒素気流下、6時間攪拌することで重合を行い、メトキシメチルアクリレート重合体13.8g(収率92%)を得た。得られた重合体は、数平均分子量(Mn)33000g/mol及び分子量分布(Mw/Mn)3.2であった。
2,ポリマー化合物の評価
(1)サンプル基板の作製
以下に説明する方法で、上記で合成した各ポリマー化合物を溶媒に溶解してなるコーティング組成物を用いて、樹脂基材の表面に各ポリマー化合物のコーティング被膜を形成し、その後の評価に使用した。
上記合成例1で合成したポリマー化合物(P2)、及び、合成例2で合成したポリマー化合物(P4)を、THFを溶媒として、100mLの溶液のポリマー含有量が0.2g(0.2(wt/vol%))となるように溶解させたポリマー溶液とした。また、PMEAを、メタノールを溶媒として0.2(wt/vol%)となるように溶解させたポリマー溶液とした。
メタノールで洗浄後の直径14mmの樹脂基材(ポリプロピレン(PP)樹脂、表面を窒素プラズマにより粗面化したPET樹脂)に対して、各基材に各ポリマー溶液を40μL滴下して、スピンコーターを使用して500rpm(5s)、2000rpm(10s)、SLOPE(5s)、4000rpm(5s)、SLOPE(4s)の条件で上記各ポリマー溶液をコーティングした後、室内で15分間静置して溶媒を蒸発させ、再度、同じ条件でコーティングを行った後に25℃で24時間以上乾燥させたものを試料として以下の評価を行った。
(2)ポリマー化合物の樹脂基板への密着性の評価
図6には、PP樹脂基板上に各ポリマー化合物を塗布した際の外観、及び、各ポリマー化合物を塗布したPP樹脂基板を室温でリン酸緩衝液(PBS(-))中に20時間浸漬した後の外観の実体顕微鏡写真を示す。
合成例3で合成したPMEAをコーティングした基板では、製膜後において斑点模様が確認され、スピンコーターによりコーティング組成物を塗布した後、溶媒が乾燥する迄の間にPMEAが微細に凝集したことが推察された。また、PBS(-)に浸漬した後に乾燥させた状態では、当該斑点模様の範囲や程度が拡大したことから、PBS(-)中で水和したPMEAが流動することで被膜の不均一性が高まったと推察された。また、このことは基材であるPPとPMEA間の界面エネルギーが高く、PMEAがいわゆる脱濡れを生じているものと考えられた。
一方、合成例1,2で合成したP2,P4をコーティングした基板においては、製膜後、及び、PBS(-)に浸漬した後に乾燥させた状態においても均一な被膜が維持されることが観察され、基材であるPPとの間で密着性に優れることが観察された。
他方、表面を窒素プラズマにより親水化したPET樹脂を基材として、同様に各ポリマー化合物を被覆した基板においては、P2,P4,PMEAのいずれのポリマー化合物についても、製膜後、及び、PBS(-)に浸漬した後に乾燥させた状態においても均一な被膜が維持された。この結果は、P2,P4は、特に極性の小さい樹脂に対して良好な密着性を発揮することを示唆するものと推察された。
(3)ポリマー化合物が示す親水性の評価
上記でPET樹脂を基材として、各ポリマー化合物をコーティングした基板を使用して、気相中で滴下した水滴の接触角を測定した(液滴法)。測定は、全自動接触角計(Drop Master, DMo-501SA, Kyowa Interface Science, Japan)を使用し、各基板表面に純水(2μL)を滴下し、着滴後から60秒間液滴の接触角をθ/2法により測定した。
図7には、各ポリマー化合物の表面、及びコーティングを行わないPET基板表面での接触角(θ)を示す。図7に示すように、合成例1に係るP2では、液滴が接した直後から接触角が急速に縮小し、60秒後に55度程度の接触角を示した。一方、合成例2に係るP4では、60秒後に67度程度の接触角を示した。また、高い生体親和性を示すPMEAでは、35度程度の接触角が観察された。
図7に示すように液滴の接触後に接触角が縮小する現象は、液滴とポリマー化合物の界面の界面自由エネルギーを極小にしてエネルギー的に安定化するために、ポリマー化合物内の親水的な側鎖官能基等が界面に配向するためであると推察される。そして、当該親水的な側鎖官能基等が界面に配向する速度や度合いは、高分子が有する親水性官能基の極性や密度、及びポリマー内での側鎖官能基等の易動度に応じて変化するものと推察される。
上記の各基板について、純水中に浸漬して24時間の保持を行った状態で、気泡(2μL)を付着させる水中気泡法により気泡の接触角を測定した。図8には、水中気泡法による気泡の接触角(θ’)について、θ”=180-θ’により換算した値(θ”)を、液滴法で測定した接触角(θ)を対比して示す。各接触角(θ,θ’)は、液滴又は気泡が接触してから30秒後の値を示す。
固体表面の状態が気相中と液相中で同一の状態にある表面について液滴法と水中気泡法の測定をおこなった場合には、液滴法による接触角(θ)と水中気泡法による接触角(θ’)の間には、理論的にθ+θ’=180度の関係が成り立つ。つまり、液滴法による接触角の測定時の表面変化(乾燥状態→水和状態)と、水中気泡法による接触角の測定時の表面変化(水和状態→乾燥状態)のそれぞれの速度が十分に速ければ、図8に示すθとθ”の値は等しくなるものと考えられる。
図8に示すように、P2(合成例1)及びPMEA(合成例3)では、θ,θ”の値がほぼ等しいのに対して、P4(合成例2)では両者間に違いを生じることが観察された。当該純水との接触角の挙動に違いを生じる原因として、P2では、親水性を示す側鎖部分のポリマー中での運動性が高いために、空気中において水滴が接触し、又は水中で気泡が接触した際の応答性が高いことが考えられた。
(4)ポリマー化合物が示す生体親和性の評価
血液が外来の異物と接触した際には血液中の血小板の作用によって血栓が生成されるのに対して、中間水を有する物質の表面においては、当該血小板の粘着が抑制されることによって血栓の生成が抑制されることが知られている。そして、当該血小板粘着の抑制の程度により、当該物質が有する生体親和性の程度を評価することが可能である。
以下に説明する方法により、各ポリマー化合物をコーティングした基板の表面において生じる血小板粘着の評価を行った。
アメリカ合衆国で採血され、採血後4日以内のヒト全血(3.2%のクエン酸ナトリウム含有)を均一に混和した後、400rcf(1500rpm)で5分間遠心分離し、血漿成分である上澄みを回収して多血小板血漿(PRP: Platelet Rich Plasma)とした。また、残りの血液を2500rcf(4000rpm)10分間遠心分離して、上澄みを回収して少血小板血漿(PPP:Platelet Poor Plasma)とした。血球計算版を用いてPRP中に存在する血小板の濃度を計測し、基板上における播種密度が4×10cells/cmとなるようPRPをPPPで希釈して血小板懸濁液を調製した。
上記で合成例1~3の各ポリマー化合物をコーティングしたPET基板、及び、コーティングを行わないPET基板を各3枚ずつ使用し(n=3)、8mm角にした各基板を走査型電子顕微鏡(SEM)用試料台に導電テープで固定した状態で、200μLのPBS(-)を使用して37℃、20時間のインキュベートすることで各表面を十分に水和させた。
上記で調製した血小板懸濁液を各基板上に200μLずつ播種し、37℃で1時間インキュベートした後に懸濁液を取り除き、PBS(-)を用いて洗浄を2回行い、その後に1%のグルタルアルデヒドを含むPBS(-)に室温で2時間浸漬することで血小板を固定した。固定後、基板をPBS(-)に10分、PBS(-):純水=1:1に8分、純水に8分の順に浸漬させることで洗浄を行った。洗浄後の基板を数日風乾した後、SEM(TM3030Plus, HITACHI)を用いて基板表面を各5か所(倍率1500倍)観察し、各視野内で観察される血小板を、その活性化度(I型~III型)毎にカウントした。活性化度は、活性化の度合いが小さく、血液中と同様の円形状の形態を維持したままで粘着する形態(I型)と、活性化の度合いが中程度であり、偽足形成が見られる粘着形態(II型)、活性化の度合いが大きく、伸展した粘着形態(III型)に分類にしてカウントを行った。
図9には、各ポリマー化合物でコーティングした基板表面での血小板粘着の評価結果を示す。図9に示すように、上記P2(合成例1)、P4(合成例2)の表面では、高い生体親和性を有するPMEA(合成例3)と同程度まで血小板粘着が抑制され、高い生体親和性を有することが示された。
本発明に係るポリマー化合物は、高い生体親和性を示すと共に、各種の基材に対して良好な密着性を示すことから、医療機器の表面等の生体親和性の付与が望まれる表面を形成するための材料として好ましく使用することができる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とするポリマー化合物。但し、式(1)において、Rは水素又はエーテル結合を有していてもよい炭素数12以下の1価の炭化水素基、Rは1~6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭素鎖を含む2価の飽和炭化水素基、Rはエーテル結合を有していてもよい炭素数6以下の1価の炭化水素基、mは1又は2の自然数、nは繰り返し単位の繰り返し数を示す。
    Figure 2024012222000010
  2. が、-CH-、-CHCH-、-CH(CH)-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CH(CHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CH(CH)(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-CH(CHCH-、-CH(CH)(CHCH-、-CH(CHC(CH-、及び-CH(CHCH-からなる群より選択される2価の飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー化合物。
  3. が、CH、-CHCH、-(CHCH、-(CHCH、-(CHCH、-(CHCHからなる群より選択される1価の炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー化合物。
  4. ポリマー化合物を構成する繰り返し単位数(n)に対して、式(1)に示す構造が占める割合を51mol%以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー化合物。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のポリマー化合物を含むことを特徴とするポリマー組成物。
  6. 請求項1~4のいずれかに記載のポリマー化合物が溶媒に溶解されてなることを特徴とするコーティング組成物。
  7. 請求項1~4のいずれかに記載のポリマー化合物によってその表面の少なくとも一部がコーティングされていることを特徴とする医療機器。
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