JP2024006245A - シリコン合金及びそれを用いた素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的強度が高く、なおかつ、低温において高い熱電変換性能を示すシリコン合金、これを含む熱電変換素子及び該熱電変換素子を含む熱電変換モジュールの少なくとも一つを提供する。【解決手段】銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合に、銀の原子割合が9at%以上27at%以下、バリウムの原子割合が20at%以上53at%以下、及び、シリコンの原子割合が37at%以上65at%以下で、なおかつ、結晶粒径の最大値が150μm以下である、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金。【選択図】 なし

Description

本開示は、シリコン合金及びそれを用いた素子に関する。
熱電材料は熱電変換素子に組み込まれ、熱電変換モジュールとして使用されている。近年、ウェアラブルデバイスへの適用などを目的とし、熱電変換モジュールの小型化に対する需要も高くなってきている。従来、ビスマス(Bi)とテルル(Te)からなるビスマスーテルル合金が熱電材料として使用されてきた。しかしながら、低環境負荷や、低コストなどの観点から、シリコン(Si)とシリコン以外の元素を含むシリコン合金が、熱電材料として検討されている。
熱電材料として機能するシリコン合金として、MgSiのMgがAlに置換したn型の熱電材料(特許文献1)や、MgSi及びCaMgSiの2相からなるp型の熱電材料(特許文献2)などが報告されている。また、室温に対して高い熱電変換性能を得ることが可能なp型の熱電材料として機能するシリコン合金として、本発明者らは、銀、バリウム及びシリコンを主成分とするシリコン合金(珪化物系合金材料)を報告している(特許文献3)。
特開2002-368291号公報 特開2008-147261号公報 特開2021-181397号公報
特許文献3で開示された銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金は、特許文献1及び2で開示されたシリコン合金と比べて、低温(50℃)における高い熱電変換性能を示す。しかしながら、モジュールとして使用した場合の振動やヒートショックへの耐久性向上の観点より、機械的強度のより一層の向上が求められている。
本開示は、機械的強度が高く、なおかつ、低温において高い熱電変換性能を示すシリコン合金、これを含む熱電変換素子及び該熱電変換素子を含む熱電変換モジュールの少なくとも一つを提供することを目的とする。
本発明者らは銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金の機械強度の向上について検討した。その結果、複数の結晶粒子のパラメータの中で特定のものが機械強度に大きく影響することを見出した。
すなわち、本発明は特許請求の開示の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
[1] 銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合に、銀の原子割合が9at%以上27at%以下、バリウムの原子割合が20at%以上53at%以下、及び、シリコンの原子割合が37at%以上65at%以下で、なおかつ、結晶粒径の最大値が150μm以下である、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金。
[2] 平均結晶粒径が20μm以下である、上記[1]に記載のシリコン合金。
[3] 結晶粒径の最小値が5nm以上である、上記[1]又は[2]に記載のシリコン合金。
[4] 平均結晶粒径が10nm以上10μm以下である、上記[1]に記載のシリコン合金。
[5] 結晶粒径の最小値が50nm以上、最大値が140μm以下である、上記[1]又は[2]に記載のシリコン合金。
[6] 銀、バリウム及びシリコンを含む金属を、粉砕及び急冷の少なくともいずれかで処理する工程と、前記処理後の金属を650℃以上950℃以下で処理する工程を有する、上記[1]又は[2]に記載のシリコン合金の製造方法。
[7] 上記[1]又は[2]に記載のシリコン合金を含む熱電変換素子。
[8] 上記[7]に記載の熱電変換素子を含む熱電変換モジュール。
本開示により、高い機械強度を有する銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金及びその製造方法、該シリコン合金を含む熱電材料、該熱電材料を含む熱電素子及び該熱電素子を含む熱電モジュールの少なくとも1つを提供することができる。
以下、本開示について実施形態の一例を示して説明する。
[シリコン合金]
本実施形態おいて、「シリコン合金」はシリコン(Si)と、1種以上のシリコン以外の元素と、からなる金属である。更に、本実施形態のシリコン合金は、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金(以下、「Ag-Ba-Si系合金」ともいう。)であり、これは、シリコンと、銀及びバリウムと、からなる金属であり、上記シリコン以外の元素として銀及びバリウムを含む。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、これに含まれる銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合に、銀の原子割合が9at%以上27at%以下、バリウムの原子割合が20at%以上53at%以下、及び、シリコンの原子割合が37at%以上65at%以下で、各原子の好ましい原子割合は以下のとおりである。
銀 :9at%以上又は15at%以上、かつ、
27at%以下
バリウム :20at%以上又は30at%以上、かつ、
53at%以下又は45at%以下
シリコン :37at%以上又は43at%以上、かつ、
65at%以下又は55at%以下
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、不可避的な微量の不純物を含んでいてもよい。不可避不純物としては、Si、Ag及びBa以外の金属元素並びにこれらの酸化物が例示できる。金属元素の例としては、Ge、Sn及びPbの群から選ばれる1つ以上の金属元素が挙げられる。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金の結晶粒径の最大値は150μm以下である。結晶粒径の最大値がこの値を超えると、機械強度が低下しやすくなる。結晶粒径の最大値は140μm以下又は120μm以下であればよい。結晶粒径の最小値は任意の値であればよく、例えば、1nm以上、50nm以上又は100nm以上(0.1μm以上)であることが挙げられる。
また、本実施形態のAg-Ba-Si系合金の平均結晶粒径は、20μm以下であることが好ましい。5nm以上20μm以下が好ましく、10nm以上10μm以下がさらに好ましく、100nm以上5μm以下がより好ましく、300nm以上4μmがより好ましく、400nm以上1μm以下が更により好ましい。平均結晶粒径がこの範囲を外れると、Ag-Ba-Si系合金の機械強度が低下しやすくなる。
「結晶粒径」は、以下の条件による電子線後方散乱分析(EBSD分析)により観測されるSEM観察図において、結晶界面における結晶方位の差が5°以上となる部分を結晶粒界とみなして該結晶粒界で囲まれた領域を結晶粒子とみなし、その最長径をもって結晶粒径とする。5000±100個の結晶粒子について結晶粒径を測定し、その平均をもって平均結晶粒径とすればよく、最大径を「結晶粒子の最大値」及び最小径を「結晶粒子の最小値」とすればよい。
加速電圧 : 15kV
観察倍率 : 300倍又は1000倍
試料傾斜 : 70°
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は相対密度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。この様な相対密度を有することで、ゼーベック係数が高くなりやすく、なおかつ、電気抵抗率が低くなりやすくなる。これに加え、本実施形態のAg-Ba-Si系合金を熱電変換材料として使用又は加工に適した強度を有しやすくなる。熱伝導率が低下しやすくなるため、相対密度は99.5%以下又は99.0%以下であればよい。
本実施形態における相対密度は、理論密度[g/cm]に対する実測密度[g/cm]の割合[%]である。理論密度は、AgBaSiの理論密度4.777[g/cm]から組成変化を考慮した以下の(1)式から求まる値である。実測密度は、JIS R 1634に準じた方法で測定される値である。
理論密度[g/cm] = 4.777×{M/MAgBa2Si3} (1)
上式において、Mは実測密度を測定したAg-Ba-Si系合金の物質量[g/mol]、及び、MAgBa2Si3はAgBaSiの物質量(=466.8[g/mol])である。Mの算出において、Ag-Ba-Si系合金の組成はICP-MS質量分析法により得られる組成を用いればよく、また、各元素の物質量は、Agが107.9[g/mol]、Baが137.3[g/mol]、及び、Siが28.1[g/mol]とすればよい。
モジュールとして使用したときの振動やヒートショックへの耐性が向上しやすいため、本実施形態のAg-Ba-Si系合金は機械強度が高いことが好ましく、ビッカース硬度が高いことがより好ましく、ビッカース硬度及び破壊靭性が高いことが更に好ましい。
例えば、熱電材料として使用されているビスマスーテルル合金のビッカース硬度は100HV程度である。これに対し、本実施形態のAg-Ba-Si系合金のビッカース硬度は250HV以上又は300HV以上であることが好ましく、また、1000HV以下又は500HV以下であることが好ましい。
また、本実施形態のAg-Ba-Si系合金の破壊靭性値は0.9MPa・m1/2以上3.0MPa・m1/2以下であることが好ましく、また、1.0MPa・m1/2以上2.0MPa・m1/2以下であることがさらに好ましい。
ビッカース硬度はJIS B7725に準じた方法により測定される値である。1kgfの力で合金材料に角錐形圧子を押し付け、形成された圧痕を顕微鏡により観察し、対角線の水平距離から圧痕の表面積を算出して、ビッカース硬度を計算すればよい。
圧痕の頂点部分に形成された亀裂の長さを測定し、以下の式を用いて破壊靭性Kcを算出する。
Kc=0.026×E1/2×P1/2×C-3/2×a
E:弾性率(JIS R1602に記載の方法で測定)
P:押込み加重=1kgf
C:圧痕の対角線長さの半分
a:き裂の長さの半分
本実施形態のAg-Ba-Si系合金のゼーベック係数は、絶対値が120μV/Kを超え、130μV/K以上又は200μV/K以上であることが好ましく、また、500μV/K以下又は300μV/K以下であることが挙げられる。この様なゼーベック係数を有し、なおかつ、上述の相対密度を兼備することで、小型の熱電変換モジュールとしてより適用しやすくなる。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金の電気抵抗率は1.00×10-3Ω・cm以上であることが好ましく、また、1.00×10-1Ω・cm以下又は1.00×10-2Ω・cm以下であることが好ましい。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金の熱伝導率は0.1W/mK以上又は0.5W/mK以上であることが好ましく、また、20W/mK以下又は5W/mK以下であることが好ましい。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、Ag-Ba-Si系のシリコン合金が有する高い熱電変換性能を示すことが好ましい。本実施形態における熱電変換性能は、以下の(1)式により求めることができる。
ZT=ST/ρκ (1)
(1)式において、Zは性能指数、Tは絶対温度[K]、Sはゼーベック係数[V/K]、ρは電気抵抗率[Ω・m]及びκは熱伝導率[W/K・m]である。さらに、S/ρはパワーファクター[W/K・m]である。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、低温における熱電変換性能が高いことが好ましく、T=323[K](=50℃)における熱電変換性能(ZT)が0.04以上、0.05以上又は0.10以上であることが挙げられる。T=323[K]における熱電変換性能(ZT)は、例えば、0.25以下、0.20以下又は0.18以下であることが挙げられる。
本実施形態において、銀、バリウム及びシリコンそれぞれの含有割合、平均結晶粒径、結晶粒径分布、相対密度、ビッカース硬度、破壊靭性、ゼーベック係数、電気抵抗率並びに熱伝導率は、それぞれ、上述の上限下限の任意の組合せであればよい。
[シリコン合金の製造方法]
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、上述の構成を満たすシリコン合金であればその製造方法は任意である。本実施形態のAg-Ba-Si系合金の好ましい製造方法として、銀、バリウム、及びシリコンを含む金属を、粉砕及び急冷の少なくともいずれかで処理する工程と、前記処理後の金属を650℃以上950℃以下で処理する工程と、を有する製造方法が挙げられる。
本実施形態の製造方法は、銀、バリウム及びシリコンを含む金属を、粉砕及び急冷の少なくともいずれかで処理する工程(以下、「微細化工程」ともいう。)と、前記工程後の金属を650℃以上950℃以下で処理する工程(以下、「焼成工程」ともいう。)を有する。微細化工程と焼成工程を経ることにより、本実施形態のAg-Ba-Si系合金が得られる。
微細化工程及び焼成工程には、銀、バリウム及びシリコンを含む金属(以下、「原料金属」ともいう。)を供する。
原料金属は、目的とするAg-Ba-Si系合金と同様な銀、バリウム及びシリコンを含む組成を有していればよく、上述の本実施形態のAg-Ba-Si系合金と同様な組成を有していればよい。
微細化工程に供する原料金属の形状は任意であり、不定形状及び粉末状の少なくともいずれかが挙げられる。具体的な原料金属の形状として、粒径200μm以下又は150μm以下の粉末状であることが例示できる。操作性(ハンドリング性)が向上するため、原料金属の粒径は10μm以上又は50μm以上であればよい。
微細化工程に供する原料金属の製造方法は任意であるが、例えば、銀源、バリウム源、及びシリコン源を含む組成物を溶融する工程(以下、「溶融工程」ともいう。)、を含む製造方法、が挙げられる。
銀源は、銀及び銀含有化合物の少なくともいずれかであればよい。銀源は、銀の純度が3N以上又は4N以上であることが好ましい。好ましい銀源として、金属銀(純銀)が挙げられる。
バリウム源は、バリウム及びバリウム含有化合物の少なくともいずれかであればよい。バリウム源は、バリウムの純度が3N以上又は4N以上であることが好ましい。好ましいバリウム源として、金属バリウム(純バリウム)が挙げられる。
シリコン源は、シリコン及びシリコン含有化合物の少なくともいずれかであればよい。シリコン源は、シリコンの純度が3N以上又は4N以上であることが好ましい。好ましいシリコン源として、金属シリコン(純シリコン)、更には不定形シリコンが挙げられる。
銀源等の出発原料の形状は任意であり、例えば、不定形、粉末及び顆粒の群から選ばれる1以上であることが挙げられる。
溶融工程に供する組成物は、目的とするAg-Ba-Si系合金の銀、バリウム及びシリコンの原子量比となるように、銀源等の出発原料を含んでいればよく、必要に応じ、任意の方法で出発原料を混合してもよい。
混合方法は任意であり、湿式混合及び乾式混合の少なくともいずれかが例示できる。
溶融工程では、該組成物を溶融する。これにより原料金属が得られる。溶融方法はアーク溶融法、大気溶融法、高周波溶融法、プラズマ溶融法、スカル溶融法、ゾーンメルティング法、及び、電子ビーム溶融法の群から選ばれる1以上の方法であればよい。短時間で溶融が可能、雰囲気制御が可能、るつぼ(銅の鋳型)からの汚染が少ないため、溶融方法はアーク溶融であることが好ましい。
アーク溶融は、処理に供する組成物の単位質量当たりの電流値(以下、単に「電流値」ともいう。)が30A/g以上又は50A/g以上であることが好ましい。これにより、短時間で溶融処理することができる。アーク溶融中の組成物の組成変動を抑制するため、電流値は150A/g以下又は120A/g以下であることが好ましい。
上述の電流値での保持時間は、処理に供する組成物の量や、使用するアーク溶融炉の性能に合わせて適宜調整すればよいが、例えば、0.5分以上又は1分以上であり、かつ5分以下又は3分以下であることが挙げられる。
組成物を効率よく溶融させるため、上述の電流値及び保持時間による処理を複数回施してもよく、該処理を2回以上又は3回以上行ってもよい。該処理は必要以上に行う必要はなく5回以下又は4回以下であればよい。
微細化工程では、原料金属を粉砕及び急冷の少なくともいずれか、好ましくは粉砕で処理する。これにより、原料金属の形状及びサイズを任意のものにすることができる。
粉砕は、湿式粉砕及び乾式粉砕の少なくともいずれかであればよく、ボールミル、ジェットミル及びビーズミルの群から選ばれる1以上の粉砕方法が挙げられる。粉砕は酸素(O)の混入が生じない方法で行うことが好ましく、不活性雰囲気での粉砕が好ましく、酸素濃度が0.001ppm以上1.0ppm以下の不活性雰囲気がより好ましく、酸素濃度が0.001ppm以上1.0ppm以下、なおかつ水分濃度が露点-100℃以上-70℃以下の不活性雰囲気がさらに好ましい。これにより、原料金属の表面酸化が抑制され、その結果、酸素含有量が増加しにくくなる。
急冷は、流動性を有する状態(いわゆる溶融状態)の原料金属を瞬間的に凝固させる処理である。これにより、溶融混合物が急冷薄帯として得られる。急冷方法は公知の方法を使用することができ、例えば、冷却速度が1×10K/s以上1×10K/s以下となるような冷却方法が挙げられる。具体的な冷却方法として、流動性を有する状態の原料金属と水冷ローラーとを接触させることが例示できる。
焼成工程では、前記処理後の原料金属を650℃以上950℃以下で処理する。焼成工程の処理温度は650℃以上であり、700℃以上又は750℃以上であることが好ましい。650℃未満では、原料金属の緻密化が進行しない。また、該処理温度は950℃以下であり、900℃以下であることが好ましい。処理温度が950℃を超えると、処理に供する焼成装置の部材(例えば、ホットプレスの型)と原料金属が融着し、本実施形態のAg-Ba-Si系合金の歩留まりが著しく低下する、又は、本実施形態のAg-Ba-Si系合金が得られなくなる。
焼成工程における処理は、原料金属が焼成される処理であればよく、加圧焼成であることが好ましく、ホットプレス処理、熱間静水圧プレス処理及び放電プラズマ焼成処理の少なくともいずれかであることがより好ましく、放電プラズマ焼成処理であることが更に好ましい。
以下、放電プラズマ焼成(以下、「SPS」ともいう。)処理を一例として示して焼成工程について説明する。
SPS処理は原料金属を加圧しながら、該原料金属に直接通電することで、これを焼成する処理である。加圧しながら焼成することにより、短時間で高温加熱できる。これにより、粒径の粗大化を伴うことなく、緻密なAg-Ba-Si系合金が得られる。
SPS処理において原料金属に印加する圧力は10MPa以上又は25MPa以上であり、また、100MPa以下又は75MPa以下であることが好ましい。
SPS処理における雰囲気は真空雰囲気であればよく、真空度が5.0×10-3Pa以下の真空雰囲気、更には真空度が1.0×10-3Pa以上5.0×10-3Pa以下の真空雰囲気であることが好ましい。
SPS処理における処理温度は、650℃以上950℃以下であり、700℃以上又は750℃以上であることが好ましく、また、950℃以下又は900℃以下であることが好ましい。
処理温度への昇温速度は任意であるが、例えば、50℃/min以上、300℃/min以下であることが挙げられる。
上述の処理温度における保持時間は処理に供する原料金属の量や、使用するSPS炉の性能により適宜調整すればよいが、例えば、15分以下又は12分以下が挙げられる。原料金属の内部まで均一に加熱するため、該保持時間は1分以上又は5分以上であることが挙げられる。
本実施形態の製造方法は、Ag-Ba-Si系合金を加工する工程(以下、「加工工程」ともいう。)を含んでいてもよい。加工工程では、熱電変換素子など、Ag-Ba-Si系合金を目的に応じた形状に加工する。加工方法は合金の加工に適用される公知の方法が適用でき、例えば、平面研削法、ロータリー研削法及び円筒研削法の群から選ばれる1以上の研削加工方法が挙げられる。
[熱電変換材料及び熱電変換素子]
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、これを含む熱電変換材料として使用することができ、更にはn型の熱電変換材料として使用することが好ましい。さらに、本実施形態のAg-Ba-Si系合金を備えた熱電変換素子として使用することができる。本実施形態において「熱電変換材料」とは、熱エネルギーの電気エネルギーへの直接変換を可能とする材料であり、「熱電変換素子」とはp型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料を備え、一方の熱電変換材料に高温の物質を接触させ、なおかつ、他方の熱電変換材料に低温の物質を接触させた場合に起電力が生じる素子である。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金を備えた熱電変換素子は、本実施形態のAg-Ba-Si系合金と、これと対になるp型又はn型の熱電変換材料とが接触しないように平行に設置され、それぞれの熱電変換材料を電極で繋いだ構造を有していればよい。
本実施形態のAg-Ba-Si系合金を備えた熱電変換素子は、これを集積した熱電変換モジュールとして使用することができる。熱電変換モジュールは、目的に応じて、任意の形式のモジュールであればよく、例えば、一段型熱電変換モジュール、カスケード式モジュール及びセグメント型モジュールの群から選ばれる1以上、更には一段型熱電変換モジュールであることが挙げられる。なお、「熱電変換モジュール」とは、2以上の熱電変換素子を集積したモジュールである。
以下、本実施形態の実施例を説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
(結晶粒径の測定方法)
電子線後方散乱回折(EBSD)を備えたショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(装置名:JSM-IT800SHL、日本電子社製)を使用し、以下の条件で合金試料内部のSEM観察図を得た。
加速電圧 : 15kV
観察倍率 : 300倍又は1000倍
試料傾斜 : 70°
得られたSEM観察図において、結晶界面における結晶方位の差が5°以上となる部分を結晶粒界とみなして結晶粒子を確認した。各結晶粒子の最長径を測定し、これを結晶粒径とした。5000±100個の結晶粒径を測定し、その平均をもって平均結晶粒径を求め、最大径を結晶粒径の最大値、最小径を結晶粒径の最小値とした。SEM観察に先立ち、合金試料は乾式研磨とアルゴンイオンミリング加工により前処理を行った。
(結晶相の測定方法)
一般的な粉末X線回折装置(装置名:RINT UltimaIII、RIGAKU社製)を使用し、合金試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 5°/分
測定範囲 : 2θ=20°から50°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : D/teX Ultra
Niフィルター使用
得られたX線回折パターンを、X線回折装置付属の解析プログラム(ソフト名:PDLX2、RIGAKU製)を使用し、X線回折パターンを平滑化処理及びバックグラウンド除去し、これらの処理後のX線回折パターンを、分割擬Voigt関数によりプロファイルフィッティングした。該フィッティング後のX線回折パターンと、PDFカード(01-086-0810)のX線回折パターンとを対比することにより、合金試料の結晶相の同定を行った。
(組成の測定方法)
一般的なICP-MS装置(装置名:Vista-PRO、セイコーインストゥルメンツ製)を使用し、ICP-MS質量分析法により試料の組成を測定した。前処理として、合金試料をフッ酸及び硫酸で溶解し、得られた酸溶液を測定に供した。
(相対密度)
理論密度[g/cm]に対する実測密度[g/cm]の割合[%]から、合金試料の理論密度を求めた。理論密度は、上述の方法で測定された組成を使用し、上述の(1)式から求めた。実測密度はJIS R 1634に準じた方法で測定された嵩密度の値を使用した。なお、実測密度に先立ち、合金試料は溶媒にケロシンを使用した真空法で前処理を行った。
(機械強度)
硬度試験機(装置名:HV-115、ミツトヨ製)を用いて、1kgfの力で合金材料に角錐形圧子を押し付け、形成された圧痕を顕微鏡により観察し、顕微鏡で見た圧痕における対角線の水平距離から圧痕の表面積を算出して、ビッカース硬度を計算した。さらに、圧痕の頂点部分に形成された亀裂の長さを測定し、以下の式を用いて破壊靭性Kcを算出した。
Kc=0.026×E1/2×P1/2×C-3/2×a
E:弾性率(JIS R1602に記載の方法で測定)
P:押込み加重=1kgf
C:圧痕の対角線長さの半分
a:き裂の長さの半分
(電気抵抗)
比抵抗/ホール測定システム(装置名:ResiTest8400、東陽テクニカ製)を使用し、以下の条件で電気抵抗を測定した。
サンプル形状 :直径10mm×厚み1mmの円板状
電極 :白金電極
測定雰囲気 :真空雰囲気
測定温度 :50℃
(ゼーベック係数)
ゼーベック係数測定オプションを備えた比抵抗/ホール測定システム(装置名:ResiTest8400、東陽テクニカ製)を使用して、以下の条件でゼーベック係数を測定した。
サンプル形状 :直径10mm×厚み1mmの円板状
測定雰囲気 :真空雰囲気
測定温度 :50℃
(熱伝導率)
レーザーフラッシュ法熱伝導測定装置(装置名:TC-1200RH、アドバンス理工製)を使用し、以下の条件で熱伝導率を測定した。
サンプル形状 :直径10mm×厚み1mmの円板状
測定雰囲気 :真空雰囲気
測定温度 :50℃
(実施例1)
原子量比でAg:Ba:Si=17:33:50となるように、金属シリコン(不定形シリコン;純度4N、平均サイズ1cm、製品名:SIE01GB、高純度化学社製)、金属銀(純銀;純度3N、平均粒径1mm、製品名:AGE08PB、高純度化学社製)、及び、金属バリウム(バリウム;純度99.9%、平均サイズ:25mm-35mmの塊状、フルウチ化学製)を秤量した。秤量した原料を水冷鋳型に充填した後、アーク溶融炉(装置名:ACM-S01、大亜真空製)を使用し、以下の条件でアーク溶融して原料金属を得た。
アーク溶融時間:1分間×3回
出力 :60A/g
得られた原料金属を直径10mmのステンレスボール500gとともにポリ容器(容量250ml)へ入れ、酸素濃度が0.04ppm、露点が-83℃でポリ容器を封印および70rpmで20時間回転して粉砕した。粉砕後の原料金属を、篩目サイズ50μmの篩に通した。その後、篩を通過した原料金属を10mmφサイズの円形カーボン型に充填した。その後、円形カーボン型の放電プラズマ焼成を行った。温度の測定は放射温度計(製品名:IR-AHS、株式会社チノー製)を使用して測定した。
昇温速度 :60℃/min(~600℃)
100℃/min(600℃~保持温度)
真空度 :5.0×10-3Pa
保持温度 :900℃
保持時間 :10分
保持圧力 :75MPa
得られたAg-Ba-Si系合金は、平均結晶粒径が2900nmであり、相対密度が95.2%であり、電気抵抗率は3.1×10-3Ω・cm、ゼーベック係数は-213μV/K、熱伝導率は2.6W/mKであった。
(実施例2)
表1に示す組成となるように金属シリコン、金属銀及び金属バリウムを秤量及び混合して組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを本実施例のAg-Ba-Si系合金とした。
得られたAg-Ba-Si系合金は、平均結晶粒径が500nmであり、相対密度が95.4%であり、電気抵抗率は2.2×10-3Ω・cm、ゼーベック係数は-163μV/K、熱伝導率は2.8W/mKであった。
(実施例3)
表1に示す組成となるように金属シリコン、金属銀及び金属バリウムを秤量及び混合して組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを本実施例のAg-Ba-Si系合金とした。
得られたAg-Ba-Si系合金は、平均結晶粒径が1760nmであり、相対密度が96.0%であり、電気抵抗率は3.0×10-3Ω・cm、ゼーベック係数は-206μV/K、熱伝導率は2.2W/mKであった。
(実施例4及び5)
表1に示す組成となるように金属シリコン、金属銀及び金属バリウムを秤量及び混合して組成物を得たこと、ボールミル後に篩目150μmの篩を通したこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを各実施例のAg-Ba-Si系合金とした。
(比較例1)
表1に示す組成となるように金属シリコン、金属銀及び金属バリウムを秤量及び混合して組成物を得たこと、アーク溶融後に得られた原料金属を、大気中において瑪瑙乳鉢で粉砕し、得られた粉末を150μmの篩を通したこと以外は実施例1と同様の方法で、合金を得、これを比較例1のAg-Ba-Si系合合金とした。
Figure 2024006245000001
本実施形態の結晶粒径である実施例1乃至5の合金材料を用いると高い機械強度を示すのに対して、本実施形態の範囲外の結晶粒径である比較例1の合金材料では、低い機械強度のものしか得られなかった。

Claims (8)

  1. 銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合に、銀の原子割合が9at%以上27at%以下、バリウムの原子割合が20at%以上53at%以下、及び、シリコンの原子割合が37at%以上65at%以下で、なおかつ、結晶粒径の最大値が150μm以下である、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金。
  2. 平均結晶粒径が20μm以下である、請求項1に記載のシリコン合金。
  3. 結晶粒径の最小値が5nm以上である、請求項1又は2に記載のシリコン合金。
  4. 平均結晶粒径が10nm以上10μm以下である、請求項1に記載のシリコン合金。
  5. 結晶粒径の最小値が50nm以上、最大値が140μm以下である、請求項1又は2に記載のシリコン合金。
  6. 銀、バリウム、及びシリコンを含む金属を、粉砕及び急冷の少なくともいずれかで処理する工程と、前記処理後の金属を650℃以上950℃以下で処理する工程を有する、請求項1又は2に記載のシリコン合金の製造方法。
  7. 請求項1又は2に記載のシリコン合金を含む熱電変換素子。
  8. 請求項7に記載の熱電変換素子を含む熱電変換モジュール。
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