JP2023550807A - ルテニウム合金層及び該層の組み合わせ - Google Patents

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Abstract

金属表面、特に卑金属表面にルテニウム合金層を析出させるための水性電解液、その使用及び対応する電解プロセス、並びに該プロセスに対応して製造される積層体。

Description

本発明は、金属表面、特に卑金属表面にルテニウム合金層を析出させるための水性電解液に関する。本発明はまた、電解プロセスによって対応する表面にルテニウム合金層を生成するための本発明による電解液の使用に関し、これもまた本発明の主題である。最後に、本発明は、このようにして析出されたルテニウム合金層を有する積層体も含む。
消費財及び工業用品、宝飾品及び装飾品は、腐食から保護するため、及び/又は外観を向上させるために、薄い酸化安定性金属層で仕上げられる。これらのコーティングは、機械的に安定である必要があり、長期の使用後であっても変色又は摩耗の兆候を示さない必要がある。このような層を生成するための実績ある手段には、ガルバニックプロセスがある。該手段を使用して、多種多様な金属及び合金層を高品質な形態で得ることができる。日常生活でよく知られている例は、ドアの取っ手又はノブのガルバニック青銅及び真鍮層、ビークル部品のクロムコーティング、亜鉛めっき工具又は時計のストラップの金コーティングである。
これに関連して、ガルバニックパラジウム析出物及びパラジウム合金の析出物は、長く知られている。パラジウムは、その明るい色、優れた電気特性、硬度、接触抵抗、耐食性、及び安定性により、例えば、電気プラグイン接続、プリント回路基板、装飾用途のコーティング、並びに他の多くの産業及び商業用途に使用されることが多い。パラジウムも広範囲の用途を有するため、パラジウムは、金及び白金の代替材料として、経済的でより費用対効果の高い代替物をもたらした。パラジウムとニッケル又はコバルトなどの卑金属との合金は、純粋な貴金属よりも費用対効果が高いため、このような合金は長く使用されており、現在も使用されている。このようなパラジウム合金のコーティングは、パラジウム合金電解液からのガルバニック析出によって生成されることが多い。
今日、パラジウムの価格が極端に高騰しているため、パラジウムの使用を避けながら、他の方法で同じ特性を維持できる、より安価な代替品が求められている。この点において、当業者の注目は、とりわけ、実質的により安価なルテニウムの使用に向けられている。
先行技術に記載されたルテニウム浴及びプロセスは、多くの場合黒ルテニウム及びルテニウム合金層の析出を指し、黒化添加剤としてチオ化合物などの毒性学的に懸念される化合物を含有する場合がある(例えば独国特許第102011105207(B4)号及び該公報に引用されている刊行物)。多くの場合、その酸性特性により、これらの浴は、比較的貴な特性を有する金属上への析出のみが可能である(例えば、独国特許第1959907(A1)号)。
米国特許第4082625号によれば、明るいルテニウム析出物を塩基性範囲で得ることもできる。記載されているのは、pH範囲9~10で操作するルテニウムの析出プロセスである。ルテニウムは、アニオン(EDTA、NTA、CDTA)で錯体化することにより、このpH範囲の溶液中に保持される。ルテニウムの安定で明るい析出物が得られる。
ルテニウム電着のために、ルテニウムのニトリドクロロ錯体を、水性非酸性浴中で使用することができる。このような方法は、米国特許第4297178号に記載されている。それにはまた、シュウ酸又はシュウ酸アニオンも含有されている。該方法によれば、純粋なルテニウム析出物のみが生成されるが、これらの析出物では、不利益を生じさせることなく、パラジウム及びパラジウム合金析出物をこの形態で代替することはできない。
ルテニウム析出物は、例えば、米国特許第3692641号又はGB2101633に記載されている。前者では、特にルテニウムと他の貴金属との析出が促進されている。後者では、酸性環境におけるルテニウム合金析出物を対象としている。
国際公開第18142430(A1)号には、異なる色のルテニウム析出物、又は特にNi、Co、Cu、Snなどの金属とのルテニウム合金析出物の生成が記載されている。卑金属のサブ表面(subsurface)への析出が可能であることが言及されている。しかしながら、該公報では強酸性電解液のみが提示されており、これは、これらのサブ表面への直接析出を成功させることが確かに不可能である理由である。
独国特許第102011105207(B4)号 独国特許第1959907(A1)号 米国特許第4082625号 米国特許第4297178号 米国特許第3692641号 英国特許第2101633号 国際公開第18142430(A1)号
電解析出の実施において、パラジウム含有層をうまく回避する方法が依然として求められている。この目的のために、代替層はパラジウム含有層の特性と可能な限り類似した特性を有する必要がある。これは、特に、外観、耐食性、耐摩耗性及び亀裂形成特性に関して当てはまる必要がある。更に、卑金属表面に適切な層を析出させることが、この目的のために多くの場合使用されるPdストライクめっきを代替するために、可能である必要がある。更に、パラジウムを代替することは、当然ながら、コスト削減につながるものとなる。
当業者であれば明らかになる、これらの目的及び更なる目的は、本発明の請求項1による電解液の開示によって達成される。請求項2~7は、本発明による電解液の好ましい構成に関する。請求項8、12及び15は、それぞれ、対応する従属請求項と共に、電解液の使用、電解液からの電解析出プロセス、及び該プロセスによって得ることが可能な積層体に関する。
金属表面、特に卑金属表面へのルテニウム合金析出のために、水性電解液であって、
a)金属としてのルテニウムを基準にして0.5g/l~20g/lの濃度の、式[RuN(HO)3-(式中、Xは、例えば、ハライドイオン、ヒドロキシドイオン又は他のアニオン性配位子(例えば硫酸イオン、リン酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン)などの1つ以上の一価又は多価負電荷対イオンである)の二環式アニオン性ルテニウムニトリド錯体化合物としてのルテニウム、
b)金属を基準にして各々0.5g/l~10g/lの濃度の、イオン形態で溶解され、Cu、W、Fe、Co、Ni、In、Zn、Sn、Pd、Ptからなる群から選択される1種類以上の合金金属、
c)0.05モル/リットル~2モル/リットルの濃度の、ジ-、トリ-、又はテトラカルボン酸のうちの1種類以上のアニオン、
d)0.1mg/l~500mg/lの濃度の、1種類以上のアニオン性界面活性剤、を含み、5~10のpHを示す、水性電解液を使用することにより、驚くべきことに、上述の目的に対する解決策が得られる。本明細書に提示される電解液は、パラジウム析出物に類似した色である、高い耐食性、低い亀裂傾向、及び高い硬度、したがって高い耐摩耗性を有する、ルテニウム合金層の析出に使用することができる。
ルテニウムは、好ましくは、式[RuN(HO)3-(式中、Xはハライドイオンである)の二環式アニオン性ニトリドハロゲノ錯体化合物として当業者に公知の水溶性化合物の形態で使用される。これに関連して、クロロ錯体[RuN(HO)Cl3-が特に好ましい。本発明による電解液中の錯体化合物の量は、好ましくは、化合物が完全に溶解した後、ルテニウム濃度が、ルテニウム金属として計算して、電解液1リットル当たり1グラム~20グラムになるように選択することができる。完成した電解液は、特に好ましくは電解液1リットル当たり1グラム~10グラムのルテニウム、とりわけ特に好ましくは電解液1リットル当たり3グラム~7グラムのルテニウムを含有する。
電解液は、1つ以上のカルボン酸基を有する特定の有機化合物を含有する。特に、これらの有機化合物は、ジ-、トリ-又はテトラカルボン酸である。これらは、当業者に周知であり、例えば、文献(Beyer-Walter,Lehrbuch der Organischen Chemie,22nd Edition,S.Hirzel-Verlag,pp.324 et seqq.)に見出すことができる。これに関連して特に好ましいのは、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、マロン酸、リンゴ酸からなる群から選択される酸である。これに関連して、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は、設定するpH値において、電解液中にアニオンの形態で自然に存在する。ここで言及されたカルボン酸は、0.05モル/リットル~2モル/リットル、好ましくは0.1モル/リットル~1モル/リットル、特に好ましくは0.2モル/リットル~0.5モル/リットルの濃度で電解液に添加される。これは特に、電解液中で導電性塩としても機能すると推定されるシュウ酸の使用において当てはまる。
本発明による電解液では、アニオン性界面活性剤が湿潤剤として使用される。アニオン性界面活性剤は、例えば、脂肪族アルコールサルフェート、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アリールサルフェート、アルキルアリールサルフェート、ヘテロアリールサルフェート及びそれらの塩、特にそれらのアルコキシル化誘導体からなる群から選択される(Kanani,N:Galvanotechnik;Hanser Verlag,Munich Vienna,2000;pp.84 et seqq.も参照)。エトキシル化脂肪族アルコール(C12~C14)エーテル硫酸ナトリウム又は脂肪族アルコール硫酸ナトリウム(C12~C14)が特に好ましい。
電解液のpH値は、好ましくはほんのわずかに酸性からわずかにアルカリ性までの範囲である。本発明によれば、pH値は5~10の範囲に設定される。より好ましくは、電解液のpH値は、使用時に6~9であり、特に好ましくは7~8である。最も好ましくは、約7.5のpH値が設定される。電解中のpH値は、緩衝物質を添加することによって一定に保たれる。これらの緩衝物質は、当業者に周知である(Handbook of Chemistry and Physics,CRC Press,66th Edition,D-144 et seqq.)。好ましい緩衝系は、ホウ酸、リン酸及び炭酸緩衝液である。これらの緩衝系を調製するための化合物は、ホウ酸、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、炭酸水素カリウム又は炭酸二カリウムからなる群から選択することができる。緩衝系は、(アニオンを基準にして)0.08モル/リットル~1.15モル/リットル、好ましくは0.15モル/リットル~0.65モル/リットル、特に好ましくは0.2モル/リットル~0.4モル/リットルの濃度で使用される。
もちろん、ここで論じた電解液に、析出に有利である更なる物質を添加することができる。これらの物質は、当業者に周知である。好ましいのは、導電性塩及び光沢剤などからなる群から選択されるものである(Praktische Galvanotechnik,5th Edition,Eugen G.Leuze Verlag,Bad Saulgau,Germany,pp.39 et seqq.)。好ましい導電性塩は、アルカリ硫酸塩、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、シュウ酸アンモニウムからなる群から選択されるものである。
ルテニウムに加えて、他の溶解した金属も電解液中に存在する。これらの金属は、ルテニウム合金層としてルテニウムと共に電解析出される。好適な金属は、Cu、W、Fe、Co、Ni、In、Zn、Sn、Pd、Ptからなる群から選択されるものである。これらの金属は、通常、塩として、特に硫酸塩として電解液に溶解する。これに関連して、合金金属がNi、Sn、Zn、Co、Pdの群から選択される場合が特に好ましい。最も好ましくは、Niが使用される。合金金属は、各場合において、0.1g/l~10g/lの濃度で電解液中に存在する。合金金属の濃度は、好ましくは1g/l~6g/l、とりわけ特に好ましくは2g/l~5g/lである。本発明による電解液に合金金属を特定の濃度範囲で添加すると、特に耐食性及びルテニウム層の亀裂傾向を改善するのに役立つことが判明した。特にNiは、この点で良好な結果を示した。
本発明の電解液は、硫黄含有化合物、例えば、上で特定した湿潤剤又は界面活性剤を含有してもよい。しかしながら、電解液は、硫黄含有化合物であって、硫黄が≦+4の酸化状態で存在する、硫黄含有化合物を含有しない場合、有利である。特に、硫黄化合物をベースとする黒化添加剤は、本発明による電解液中に存在しない。
本発明の電解液は、黒色又は暗無煙炭色の析出物を生成せず、むしろ灰色がかった、金属様外観の析出物を生成する。したがって、該析出物は外観の点でも、代替されるPd及びPd合金析出物に似ている。析出された合金金属層は、有利には65を超えるL*値を有する。CIE Lab表色系(EN ISO 11664-4-出願日における最新版)によれば、a*値は好ましくは-3~+3であり、b*値は-7~+7である。
本発明はまた、金属表面、特に卑金属表面に電解析出された合金金属層を有する物品を製造するための、先述の電解液の使用であって、該電解液が、金属ルテニウムと、イオン形態で溶解したCu、W、Fe、Co、Ni、In、Zn、Sn、Pd、Ptからなる群から選択される1種類以上の合金金属とを含み、該合金金属層が、対応するパラジウム含有層の耐食性に類似した耐食性を有する、使用に関する。列挙された金属の添加はまた、純粋なルテニウム析出物と比較して、電解析出中の亀裂傾向の実質的な低減につながる。亀裂傾向は、好ましくは光学顕微鏡を使用し、20倍の倍率で目視検査することによって決定される。ルテニウム合金層を析出させることができる貴金属下地層は、当業者に公知である。本発明によれば、卑金属表面は、酸性又はより塩基性の環境において不安定であり、溶解する傾向があるものである。ルテニウム合金層に好ましい卑金属層は、銅、銅合金、ニッケル又はニッケル合金の群から選択されるものである。
本発明による電解液を使用することにより得ることが可能なルテニウム合金層は、当業者が指定する特定の厚さを有することができる。合金金属層の厚さは、好ましくは0.05μm~5μm、より好ましくは0.05μm~2μm、非常に好ましくは0.05μm~1μmである。更に好ましくは、合金金属層は、例えばPd層又はPd-Ni層の場合と同様に、電解析出される、更なる金属層のための下地層として使用される。例えば、ルテニウム合金層上に析出される金属層は、例えば、Ag、Au、Pt、Rh又はそれらの合金などの貴金属からなってもよく、概ね0.03μm~10μm、好ましくは0.05μm~3μm、非常に好ましくは0.1μm~1μmの厚さを有する。
ここで説明した(ルテニウム合金層自体、及び積層体のための)金属析出物は、非常に高い耐摩耗性を有することが判明しており、これは、宝飾品分野及び工業用途(例えば、接点材料として)の両方において特に有利である。いわゆるBosch-Weinmann試験(Bosch-Weinmann,A.M.Erichsen GmbH,Publication 317/D-V/63,or Weinmann K.,Farbe und Lack 65(1959),pp.647-651)において、本発明による電解液を用いたルテニウム合金の金属析出物は0.25μm/1000ストローク未満の値を達成している。更に有利には、0.1μm/1000ストローク未満、非常に有利には0.08μm/1000ストローク未満も、実現可能な範囲内である。このような耐摩耗性金属析出物の場合、ルテニウム合金層の組成は、ルテニウムと他の金属との重量比を基準にして、非常に好ましくは95:5~80:20、最も好ましくは90:10~80:20である。
本発明はまた、金属表面、特に卑金属表面に合金金属層を析出させるプロセスであって、
a)金属表面を陰極として、先述の水性電解液と接触させること、
b)陽極を電解液と接触させること、及び
c)十分な電流を、陽極と陰極との間に流すこと、を含む、プロセスにも関する。
電解液及びその使用について好ましいと記載された実施形態は、本明細書で取り扱うプロセスにも、必要な変更を加えた上で当てはまることに留意されたい。析出プロセス中の、陰極と陽極との間にある電解質で確立される電流密度は、析出効率及び析出の質に従って、当業者が選択することができる。用途及びコーティングシステムの種類に応じて、電解液中の電流密度は、有利には0.1A/dm~50A/dmに設定される。必要に応じて、コーティングセルの設計、流量、陽極又は陰極の関係などのシステムパラメータを調整することにより、電流密度を増加又は減少させることができる。0.2A/dm~25A/dmの電流密度が典型的には有利であり、0.25A/dm~15A/dmが好ましく、0.25A/dm~10A/dmがとりわけ特に好ましい。最も好ましくは、電流密度は0.25A/dm~5A/dmである。選択される電流密度の値は、コーティングプロセスの種類によっても決定される。ドラムコーティングプロセスでは、ここで好ましい電流密度は0.25A/dm~5A/dmである。ラックコーティングプロセスでは、0.5A/dm~10A/dmの電流密度がより良好な結果をもたらす。
典型的には、0.1μm~0.3μmの範囲の薄い層厚さがラック操作で生成される。ここでは、0.25A/dm~5A/dmの範囲の低電流密度が有利に使用される。低電流密度の更なる適用が、ドラム又は振動技術、例えばコンタクトピンのコーティングにおいて使用される。ここでは、厚さ約0.25μm~0.5μmの層が0.25A/dm~0.75A/dmの電流密度の範囲で適用される。0.1μm~1.0μmの範囲の層厚さは、典型的には、0.25A/dm~5A/dmの範囲の電流密度で、主に装飾用途のためのラック操作において析出される。
直流電流の代わりに、パルス直流電流を印加することもできる。これにより、電流が一定時間遮断される(パルスめっき)。逆パルスめっきでは、電極の極性を切り替えることにより、コーティングの一部を陽極酸化的に剥離させる。この陽極酸的剥離及び陰極パルスを一定して交互に繰り返すことにより、層の蓄積を制御する。単純なパルス条件、例えば、中程度の電流密度で1秒の通電(ton)及び0.5秒のパルス休止(toff)を加えると、より均質なコーティングが得られる(Pulse-Plating,J.-C.Puippe,F.Leaman,Eugen G.Leuzeverlag,Bad Saulgau,1990)。
本発明による電解液を使用する場合、好ましくは不溶性陽極を使用することができる。不溶性陽極として好ましいのは、白金めっきチタン、グラファイト、混合金属酸化物、ガラス炭素陽極、及び特殊炭素材料(「ダイヤモンド状炭素(diamond-like carbon)」、DLC)からなる群から選択される材料で作製されたもの、又はこれらの陽極の組み合わせである。白金めっきチタン又は混合金属酸化物でコーティングされたチタンの不溶性陽極が有利であり、該混合金属酸化物は、好ましくは、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル及びこれらの混合物から選択される。イリジウム-ルテニウム混合酸化物、イリジウム-ルテニウム-チタン混合酸化物、又はイリジウム-タンタル混合酸化物で構成されるイリジウム-遷移金属混合酸化物陽極も、本発明の実施において有利に使用される。更なる情報は、Cobley,A.J et al.(The use of insoluble anodes in acid sulphate copper electrodeposition solutions,Trans IMF,2001,79(3),pp.113 and 114)で見出すことができる。
本発明による金属物体、特に卑金属物体へのルテニウム合金層の析出は、上記を考慮して、一例として、以下のように実施することができる。
ルテニウム合金層をガルバニック的に形成するために、コーティングする宝飾品、装飾品、消費財又は工業的物体(一括して基材と呼ばれる)を、本発明による電解液中に浸漬する。これらは陰極を形成する。例えば白金めっきチタン製の陽極(Umicore Galvanotechnik GmbHの製品情報-PLATINODE(登録商標))も電解液中に浸漬する。これにより、陽極と陰極との間に適切な電流が確保される。10アンペア/平方デシメートル[A/dm]の最大電流密度が、接着性の高い均一な層を得るために有利であることが証明された。
析出中の電解液の温度は、当業者が適宜設定することができる。有利には、設定される温度範囲は、20℃~80℃である。好ましくは、50℃~75℃、特に好ましくは60℃~70℃の温度が設定される。検討中の電解液を析出中に撹拌する場合、有利であることがある。
ここで有利に用いられる好適な基材材料は、純銅、真鍮又は青銅などの銅ベース材料、例えば鉄又はステンレス鋼などの鉄系材料、ニッケル、金及び銀である。基材材料はまた、ガルバニックコーティングされた、又は他のコーティング技術を使用してコーティングされた多層系であってもよい。これは、例えば、プリント回路基板ベース材料や、ニッケルめっき又は銅めっきを施した後、任意で金めっき又はプレシルバー(pre-silver)でコーティングした鉄系材料に当てはまる。更なる基材材料は、例えば、銀導電性ラッカーで予めコーティングされたワックスコアである(いわゆる電鋳)。
本発明の更なる主題は、金属積層体であって、金属表面、特に卑金属表面を設けた基材と、該表面に電解析出された、本発明によるプロセスによって生成され、上述のような厚さを有する合金金属層と、該層上に電解析出された、例えばAg、Au、Pt又はRhなどの貴金属及びその合金から形成され、同じく上述のような厚さを有する金属層と、を備える、金属積層体である。層の厚さは、上で特定した好ましい範囲内で変えることができる。本発明による電解液、その使用及びプロセスについて記載した好ましい実施形態は、本明細書に記載される積層体にも、必要な変更を加えた上で当てはまる。
本明細書に記載されるルテニウム合金層は、高価なPd層又はPd合金層、特にPd-Ni層の適切な代替物である。後者が有利に使用される場合は常に、本明細書に記載されるルテニウム合金層は、より費用対効果の高い代替物であり得る。特に宝飾品の場合、本発明によるルテニウム合金層の仕上げとして、貴金属層を適用することができる。特に、ロジウム、白金、金及び銀が貴金属として好適である。当業者であれば、そのような仕上げを行う方法を知っている。
しかしながら、電子的に使用される物品におけるPd又はPd-Niの代替物としてルテニウム合金層を設けることも可能である。ここではロジウム、ロジウム合金(例えばRhRu)、白金、白金合金(PtRh、PtRu)又は金は、好ましい最上層を形成する。薄いパラジウム又はパラジウム-ニッケル層を最上層として適用することもできる。適用される最上層及びその厚さは、意図された用途に応じて異なり、当業者には公知である。
本発明は、ドラム及びラックコーティングプロセスにおいて好ましく使用することができる。本明細書に記載される電解液を使用することにより、適切な基材上に、特に亀裂のない、耐腐食性及び耐摩耗性のルテニウム合金析出物を得ることが可能であり、該析出物はPd析出物に類似している。更に、中性域の電解液を用いて作業することが可能であり、これにより、最初に貴金属中間層を卑金属上に設ける必要なく、ルテニウム合金コーティングを卑金属上に析出させることが初めて可能になる。公知の先行技術を鑑みると、このことは決して自明ではなかった。
[実施例]
それぞれの例示的実施形態で特定される電解液1リットルを、長さ60mmの円柱形磁気撹拌棒を用いて少なくとも200rpmで撹拌しながら、磁気撹拌機によって例示的実施形態で特定される温度まで加熱する。この撹拌及び温度は、コーティング中も維持される。
所望の温度に達した後、電解液のpH値を、KOH溶液(c=0.5g/ml)及び硫酸(c=25%)を使用して、例示的実施形態で特定される値に設定する。
白金めっきチタン製の展伸金属部が陽極として機能する。
少なくとも0.2dmの表面積を有する、機械的に研磨された真鍮板が陰極として機能する。真鍮板は、電解液からの、高光沢層を生成するニッケル(少なくとも5μm)で予めコーティングすることができる。また、ニッケル層上に厚さ約0.1μmの金層を析出させてもよい。
電解液への導入前に、これらの陰極は、電解脱脂(5V~7V)及び硫酸含有酸浸漬(c=5%硫酸)を用いて洗浄される。各洗浄工程の間、及び電解液への導入前に、陰極を脱イオン水ですすぐ。
陰極は、陽極間の電解液中に配置され、少なくとも5cm/秒で陽極に平行に移動する。陽極と陰極との間の距離は変化しないようにする。
電解液中で、陽極と陰極との間に直流電流を印加することによって、陰極をコーティングする。電流強度は、表面領域で少なくとも0.5A/dmが達成されるように選択される。適用例において特定される電解液が、技術的及び装飾的な目的で使用できる層を生成することを意図している場合、より高い電流密度を選択することができる。
電流の持続時間は、少なくとも0.5μm~1μmの層厚さが表面領域にわたって平均して得られるように選択される。適用例において特定される電解液が、技術的及び装飾的な目的で使用できる品質の層を生成することを意図している場合、より大きい層厚さを生成することができる。
コーティング後、陰極を電解液から取り出し、脱イオン水ですすぐ。
陰極の乾燥は、圧縮空気、熱風、又は遠心分離によって行うことができる。
陰極の表面積、印加電流のレベル及び持続時間、並びにコーティング前後の陰極の重量を記録し、平均層厚さ、及び析出効率を決定するために使用する。

Claims (15)

  1. 金属表面、特に卑金属表面にルテニウム合金を析出させるための水性電解液であって、
    a)金属としてのルテニウムを基準にして0.5g/l~20g/lの濃度の、式[RuN(HO)3-(式中、Xは、1つ以上の一価又は多価負電荷対イオンである)の二環式アニオン性ルテニウムニトリド錯体化合物としてのルテニウムと、
    b)金属を基準にして各々0.1g/l~10g/lの濃度の、イオン形態で溶解され、Cu、W、Fe、Co、Ni、In、Zn、Sn、Pd、Ptからなる群から選択される1種類以上の合金金属と、
    c)0.05モル/リットル~2モル/リットルの濃度の、ジ-、トリ-、又はテトラカルボン酸のうちの1種類以上のアニオンと、
    d)0.1mg/l~500mg/lの濃度の、1種類以上のアニオン性界面活性剤と、を含み、
    5.0~10.0のpH値を示す、水性電解液。
  2. 前記カルボン酸が、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、マロン酸、及びリンゴ酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
  3. 前記界面活性剤が、脂肪族アルコールサルフェート、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アリールサルフェート、アルキルアリールサルフェート、ヘテロアリールサルフェート、及びそれらの塩、並びにそれらのアルコキシル化誘導体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電解液。
  4. 前記電解液のpH値が7~8の範囲であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解液。
  5. 前記電解液が、ホウ酸、リン酸、及び炭酸緩衝液からなる群から選択される緩衝系を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解液。
  6. 前記合金金属が、Ni、Pd、Pt、Sn、Zn、及びCoの群から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の電解液。
  7. 前記電解液が、硫黄含有化合物であって、前記硫黄が≦+4の酸化状態で存在する、硫黄含有化合物を含有しないことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電解液。
  8. 金属表面、特に卑金属表面に電解析出された、前記金属ルテニウムと、イオン形態で溶解したCu、W、Fe、Co、Ni、In、Zn、Sn、Pd、及びPtからなる群から選択される1種類以上の前記合金金属とを含む、合金金属層を有する物品を製造するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性電解液の使用。
  9. 前記合金金属層が、0.05μm~5μmの厚さを有することを特徴とする、請求項8に記載の使用。
  10. 前記合金金属層が、貴金属又はその合金の更なる電解析出金属層のための下地層として機能し、前記電解析出金属層が、0.05μm~5μmの厚さを有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の使用。
  11. 生成された前記金属層が、(Bosch-Weinmann試験において)0.25μm/1000ストローク未満の耐摩耗性を有することを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用。
  12. 金属表面、特に卑金属表面に合金金属層を電解析出させるプロセスであって、
    a)前記金属表面を陰極として、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性電解液と接触させること、
    b)陽極を前記電解液と接触させること、及び
    c)十分な電流を、前記陽極と前記陰極との間に流すこと、
    を含む、プロセス。
  13. 前記電解液中の電流密度が0.1A/dm~50.0A/dmであることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
  14. 電解中の温度が20℃~80℃であることを特徴とする、請求項12又は13に記載のプロセス。
  15. 金属表面、特に卑金属表面を設けた基材と、前記表面に電解析出され、請求項12~14のいずれか一項に記載のプロセスによって生成された合金金属層と、
    を備える、金属積層体。
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