JP2023547391A - 不要な副産物の低減によるアルキルメタクリレートの最適化された製造方法 - Google Patents

不要な副産物の低減によるアルキルメタクリレートの最適化された製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート(MMA)の改良された製造方法であって、該方法は、アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸とを第1の反応段階(アミド化)において反応させるステップと、第1の反応混合物を第2の反応段階(転化)において加熱して、メタクリル酸アミド(MASA)を得るステップと、次いで、第3の反応段階においてメタクリル酸アミド(MASA)をアルコールおよび水、好ましくはメタノールおよび水でエステル化させて、アルキルメタクリレートを形成するステップとを含み、使用される硫酸は、98.0重量%~100.0重量%の範囲の濃度を有し、第3の反応混合物のその後の後処理は、少なくとも2つの蒸留ステップを含み、これらの蒸留ステップでは、副産物であるメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンが、少なくとも部分的に、頂部フラクションにおいて含水異相共沸混合物として得られ、この含水異相共沸混合物を少なくとも部分的に該方法から排出して、少なくとも部分的に第3の反応段階に返送する、方法に関する。

Description

本発明は、アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート(MMA)の改良された製造方法であって、該方法は、アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸とを第1の反応段階(アミド化)において反応させるステップと、第1の反応混合物を第2の反応段階(転化)において加熱して、メタクリル酸アミド(MASA)を得るステップと、次いで、第3の反応段階(エステル化)においてメタクリル酸アミド(MASA)をアルコールおよび水、好ましくはメタノールおよび水でエステル化させて、アルキルメタクリレートを形成するステップとを含み、使用される硫酸は、98.0重量%~100.0重量%の範囲の濃度を有し、第3の反応混合物のその後の後処理は、少なくとも2つの蒸留ステップを含み、これらの蒸留ステップでは、副産物であるメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンが、少なくとも部分的に、頂部フラクションにおいて含水異相共沸混合物として得られ、この含水異相共沸混合物を少なくとも部分的に該方法から排出して、少なくとも部分的に第3の反応段階に返送する方法に関する。
特に、本発明は、アルキルメタクリレートの最適化された製造方法であって、該方法は、中間体および生成物、特にMASAおよびMMAの品質の特定の調整および制御を含み、前駆体および中間体における不要な副産物、特にメタクリロニトリル(MAN)、アセトン、メチルホルメート、メチルプロピオネートおよびイソ酪酸メチルエステル(IBSME)の形成を低減させ、中間体および生成物の収率を向上させる方法に関する。
先行技術
メチルメタクリレート(MMA)は、ポリマーや他の重合性化合物とのコポリマーの製造に大量に使用されている。さらに、メチルメタクリレートは、化学的な基材であるメタクリル酸(MAS)をベースとした様々な特定のエステルの重要な構成要素であり、これらのエステルは、MMAと対応するアルコールとのエステル交換反応により製造することも、メタクリル酸とアルコールとの縮合により得ることもできる。そのため、この出発材料の、非常に簡便で経済的で、かつ環境に優しい製造方法には大きな関心が寄せられている。
アセトンシアノヒドリン(ACH)のアミド化(加水分解)によるメタクリル酸アミドの製造は、広く採用されている方法である。例えば、先行技術ではACH加水分解とも呼ばれるこのようなアミド化は、いわゆるACHスルホ法によるメチルメタクリレートの製造の重要な中間ステップであり、このプロセスでは多量の硫酸が使用される。ACHスルホ法によるメタクリル酸(MAS)およびメチルメタクリレート(MMA)の製造は一般に知られており、先行技術、例えば国際公開第2008/068064号、国際公開第2013/143812号、欧州特許出願公開第0226724号明細書に記載されている。この場合、まず第1のステップで、シアン化水素とアセトンの反応によりアセトンシアノヒドリン(ACH)を製造し、これを次いでメタクリル酸アミド(以下、メタクリルアミドとも称する)(MASA)に変換させる。これらのステップは、特に米国特許第7,253,307号明細書、欧州特許出願公開第1666451号明細書または欧州特許出願公開第2007059092号明細書に記載されている。ACHからMASAへの反応(アミド化)は、当業者に知られている方法で濃硫酸とACHとの反応により引き起こされる。この反応は発熱性であるため、好ましくは、反応熱は系から迅速に排出される。
MASAへの反応は、典型的には2つのプロセスステップで進行する。まず、アミド化ステップでは、主にα-ヒドロキシイソ酪酸アミド(α-ヒドロキシイソブチルアミド)(HIBA)と、その硫酸エステルであるα-スルホキシイソ酪酸アミド(SIBA)と、メタクリル酸アミド(MASA)(あるいは塩状でそれぞれの硫酸水素塩の形態でプロトンを有するもの)とを含む実質的に無水の硫酸溶液が得られる。その後のいわゆる転化のステップで、この溶液は通常は、130℃~200℃の高温で、通常は短い滞留時間、例えば約15分以下で、水あるいは硫酸のβ脱離下でメタクリル酸アミド(MASA)に変換される。通常、転化後に、主生成物であるMASA・HSOは、溶液中に(使用する硫酸の過剰量に応じて)約30重量%~40重量%の濃度で存在する。
アミド化ステップと転化ステップとは通常は、プロセス工学的に、滞留時間が、そしてまた使用温度レベルも大きく異なる。化学反応に関しては、アミド化は、一般的には転化よりも短時間で行われ、一般的には転化あるいはそれに続くエステル化よりも低い温度で行われる。
米国特許第4,529,816号明細書には、ACHスルホ法によるアルキルメタクリレートの製造法が記載されており、アミド化は、化学量論量をはるかに上回る量の硫酸(ACH:HSOのモル比が約1:1.3~1:1.8)を用いて100℃前後の温度で実施される。使用される硫酸は、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99.5%の酸濃度を保証するのに十分なSOを含むことが望ましいことが指摘されている。特に、発煙硫酸(オレウム)が使用されることが望ましく、これは好ましくは、101%の硫酸、したがって遊離SOを有する。後続のエステル化ステップでは、反応混合物が100~150℃で過剰の水およびアルコールで処理される。米国特許第4,529,816号明細書には、副産物であるα-ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HIBSM)がエステル化後にメチルメタクリレート生成物から分離除去され、プロセスに返送されることが記載されている。同様の方法で、米国特許第5,393,918号明細書による方法では、副産物、特にα-ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HIBSM)が単離され、脱水されて反応に返送される。ここでの欠点は、副産物であるHIBSMを単離し、返送する必要があることである。さらに、ACHの反応における硫酸の濃度は重要ではないことが記載されている。
独国特許出願公開第3828253号明細書には、ACHスルホ法によるメタクリル酸エステルの製造において、使用済み硫酸を返送する方法が記載されており、エステル化後の使用済みの酸が富化され、新鮮な酸と混合されて返送される。独国特許出願公開第3828253号明細書には総じて、アセトンシアノヒドリンと硫酸との反応において酸濃度が96%~101%であることが記載されている。
独国特許出願公開第1618721号明細書には、アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸とを2段階で硫酸とACHとの異なる比率で反応させ、それにより反応混合物の粘度を調整することが記載されている。欧州特許出願公開第0226724号明細書に記載された方法では、反応混合物の粘度および反応のエンタルピーを調整および制御するために、反応がアルカン溶媒の存在下で行われる。
スイス国特許出願公開第239749号明細書には、110~130℃あるいは115~160℃の温度でアセトンシアノヒドリンに硫酸を作用させることによるメタクリルアミドの製造方法が記載されており、例えば100%硫酸が使用される。
米国特許第4,748,268号明細書には、栓流型反応器で高沸点有機液体の存在下にメタクリル酸をC~Cアルコールによりエステル化させる方法が記載されており、その際、反応混合物は連続して分留され、留出物流は、比較的高い割合のメタクリル酸エステルを有し、底部流は、大部分が栓流型反応器に返送される。
アミド化および転化の際の副産物として、特に一酸化炭素、アセトン、アセトンのスルホン化生成物、アセトンと各種中間体との環化縮合生成物が形成される。挙げられたこれらの副産物は通常、アルキルメタクリレート生成物から比較的効率よく分離除去することができる。しかし、反応条件によっては他の副産物も形成され、その副産物をアルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート生成物から分離除去することは、困難であるか、あるいはかなりの分離の複雑さを伴う。例えば、特定の化合物の共沸点や沸点により、分離が困難となっている。不要な副産物は、特にメタクリロニトリル(MAN)、アセトン、イソ酪酸メチルエステル(IBSME)およびプロピオン酸メチルエステル(メチルプロピオネート、MP)、ならびにジアセチル(Di-Ac、ブタン-2,3-ジオン)である。特にメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンについては、連続運転で均一な生成物品質を保証するために再循環流中のその濃度を制御する必要がある、不要な副産物である。
これらの不要な副産物の中には、アルキルメタクリレート最終生成物、特にMMAの高い色彩値の重大な原因となっているものがある。不要な低分子量副産物はさらに、ポリマーのさらなる重合や加工の際に、例えば押出成形時や射出成形時の排気により問題を引き起こすことがある。二重結合を有する不要な副産物は、アルキルメタクリレートと同様に重合してポリマー生成物を形成し、ポリマーの特性、例えば湿った空気環境で使用する場合の透明性やヘイズ特性を損なう。規格通りのアルキルメタクリレート最終生成物、特にMMAを得るためには、これらの副産物、例えばMAN、IBSMEおよび/またはMPを反応ステップで低減させるか、または後処理で除去する必要がある。
メタクリロニトリル(MAN)は通常は、アセトンシアノヒドリン(ACH)からのアミド化反応の際に、水の脱離下に副産物として生じる。
Figure 2023547391000002
メタクリロニトリル(MAN)は、メタノール(MeOH)のみならずメチルメタクリレート(MMA)とも共沸混合物を形成するか、あるいはメチルメタクリレートのいくつかの共沸混合物と同様の沸点を有するため、大抵は生成物からの分離除去は困難であり、かなりの複雑さを伴う。一般に、妥当なレベルの複雑さでMANを完全に除去することは不可能である。
したがって、ACHスルホ技術に基づく市販のMMAの品質を分析すると、そのような生成物の品質には常に多少なりともMANのわずかな痕跡があり、通常は10~500ppm(99.9重量%以上の含有量のMMAに加えて0.05重量%)のオーダーであることが注目される。また、蒸留による分離除去の際に、媒介物としてのメタノールおよびアセトンが、特定の濃度範囲および/または特定の物理条件(圧力、温度)下で純粋な分離相の形成をしばしば妨害することから、水、メタノールおよびアセトンならびに様々な副産物が同時に存在することも重大な問題となる。したがって、純粋な分離相の形成がしばしば妨げられ、その結果、相分離の後にしばしばさらなる分離および/または後処理ステップが必要となる。先行技術によれば、ACHスルホ法による後処理の場合、得られるのは通常、MMA含有有機相およびメタノール含有水相であり、これらはそれぞれ、前述の2つの相媒介物質、特にアセトンおよびメタノールを含むため、さらに複雑なプロセス工学操作を使用しなければならない。
アミド化では、反応の所望の主生成物として、スルホキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩(SIBA・HSO)およびメタクリル酸アミド硫酸水素塩(MASA・HSO)が過剰の硫酸の溶液として得られる。さらに、典型的には、アミド化溶液中にさらにα-ヒドロキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩(HIBA・HSO)が、例えばACHに対して<5%の収率で得られる。ACHがほぼ完全に反応した場合、アミド化ステップにおいて上記の中間体の典型的には約94%~96%の収率を得ることができる。このステップでは、上述の副産物がかなりの量で形成されることが多い。この方法ステップの基本的な副反応は、反応マトリックス中のACHの分解であり、これは基本的にアミド化温度にも依存する。この分解では、HCNから出発して一酸化炭素が形成され、これが反応溶液から排気される。同様に形成されたアセトンは、スルホン化され、例えばアセトンジスルホン酸(ADSA)およびこれから誘導される塩を形成する。
さらに、硫酸接触プラントでは、硫酸水素アンモニウムおよび硫酸を含有するプロセス酸が再生されることが多く、このプロセス酸からはタール状の固体縮合物が析出するが、これらはプロセス酸の搬送を妨げ、かなりの複雑さを伴って排除および廃棄する必要がある。先行技術では、タール形成と反応条件との関係についての記述はなく、したがって例えば、タール形成の量やコンシステンシーに対して、滞りなくプロセス操作を行うという意味での好影響をどのように及ぼすことができるかについての指摘はなされていない。
さらに、アセトンシアノヒドリン(ACH)から出発して鉱酸の存在下でニトリル官能基の鹸化によりヒドロキシイソ酪酸を製造できることが知られている。先行技術、例えば、国際公開第2005/077878号、特開平04-193845号公報、特開昭57-131736号公報には、ACHを水の存在下でアミド化および加水分解させる方法であって、分子複合体中のヒドロキシ官能基が、少なくとも反応の第1のステップにおいて保存される方法が記載されている。例えば、特公昭63-61932号公報には、ACHを2段法で鹸化させてヒドロキシイソ酪酸を形成することが記載されており、その際、ACHをまず、0.2~1.0モルの水および0.5~2当量の硫酸の存在下で反応させて、対応するアミド塩を形成する。この、水の存在下での代替的なアミド化の提案は、それがメタノールの存在下で行われるか、メタノールなしで行われるかに応じて、ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HIBSM)の形成または2-ヒドロキシイソ酪酸(HIBS)の形成のいずれかをもたらす。例えば、特開昭57-131736号公報によれば、ACHと0.8~1.25当量の硫酸との反応は、60℃未満で0.8当量未満の水の存在下で行われ、次いで、55℃を超える温度で1.2当量を超えるメタノールと反応させることにより、HIBSMが得られる。
不要な副産物、特にメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンは、アルキルメタクリレートおよびアルキルメタクリレートポリマーの特性を大幅に損ない、さらに、そのMMAからの効率的な分離除去は常にMMAの単離損失をも伴うことから、プロセスの総収率を低下させるが、先行技術の方法のいずれにも、これらの不要な副産物を制御および低減させる方法は記載されていない。
特に、典型的には約99.8重量%の純度を有する市販のMMAの品質は、プロセスに特有であり、かつACHスルホ技術に典型的であるとおり、MMAに加えて、分析により測定可能な痕跡範囲のメタクリロニトリル(MAN)をも含む。通常、MANは、数ppmないし数百ppmの量で存在する。MANの含有量は、しばしば30~200ppmのオーダーであり、バッチごとにある程度のばらつきがある。総括すると、先行技術では、どのような関連性が望ましくない副産物の形成を招くのか、あるいはこれらをどのように低減させることができるかについて、何の指針も与えられていないということができる。確かに、純粋なMMAから蒸留によってMANを分離する方法は当業者に原理的には知られているが、これには、必ず収率低下が付随するか、あるいは装置をより複雑にすることが求められる。したがって、既に反応の時点でこれらの不要な副産物の形成に影響を及ぼし、かつそこで低減させることにより後続の分離ステップを簡略化する工業的方法が大いに必要とされている。また、MANを含む物質流をMMA製造の意味で有価である生成物に変換させ、かつ/または方法から効果的に排出することを可能にする方法も望まれるであろう。
発明の課題
本発明の課題は、上記の欠点を克服すること、およびACHスルホ法に基づくアルキルメタクリレートの改良された製造方法であって、不要な副産物、特にメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンを低減することができる方法を提供することにある。これにより、アルキルメタクリレートならびにそれから製造されるポリマーおよび成形体の生成物品質が向上することが望ましい。特に、アルキルメタクリレートポリマーの加工性ならびに機械的特性および光学的特性が向上することが望ましい。
さらに、公知の方法と比較して、例えば後処理時のアルキルメタクリレートの損失および廃物流を同時に低減させつつ、アルキルメタクリレートの同等の、またはより高い収率が得られることが望ましい。本発明のさらなる課題は、MANをMASAに加水分解させ、ひいては所望の生成物であるMMAへと変換させることができるように、MANを含む後処理流を循環運転で連続的に処理することを可能にする方法を提供することであった。
課題の解決
この課題は、本発明による方法において、第一に、アルキルメタクリレート合成における最適化された反応操作により、前述の副産物の形成が最小限に抑えられ、第二に、不要な副産物が、後処理部の特定のケミカルシンクにより本方法から可能な限り早期に排出され、したがって最終生成物に混入しないことにより解決された。ケミカルシンクとは、副産物が返送される際に連続運転での継続的な増加(濃度の上昇)が抑えられるように副産物が物質的に変換される反応をいう。最良のケースでは、副産物を所望の目的生成物に変換させるようなケミカルシンクが見出される。
驚くべきことに、上記の課題は、本発明による方法によって解決されることが見出された。特に、遊離SOを含まないが、しかし特にわずかな割合の遊離水を含む硫酸をアセトンシアノヒドリンの反応の際に(アミド化および転化において)使用すると、不要な副産物、特にメタクリロニトリル(MAN)、アセトン、メチルプロピオネートおよび/またはメチルイソブチレートの量を低減させることができることが見出された。98.0重量%~100.0重量%、好ましくは99.0重量%~99.9重量%の範囲の濃度を有する硫酸を使用することが特に有利であることが判明した。
さらに、不要な副産物、特にメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンを、プロセス流の適切な排出と最適化された循環操作とを含む、エステル化後の反応混合物の最適化された後処理によって、本方法から必要な程度に効果的に排出できることが見出された。特に、少なくとも1つの共沸蒸留ステップにおいて、副産物が少なくとも部分的に頂部フラクションにおいて含水異相共沸混合物として得られ、そしてこれを任意でさらなる分離ステップの後に本方法から少なくとも部分的に排出することにより、メタクリロニトリル(MAN)およびアセトンの効果的な排出を実現できることが見出された。不要な副産物を含む異相共沸混合物は、任意で水相と有機相とに分離することができ、その際、水相および/または有機相は、少なくとも部分的に本方法から排出される。ここで、驚くべきことに、不要な副産物を、その物理化学的特性(特に水溶性および揮発性)ゆえに不要な副産物の富化が期待できない物質流と共に本方法から除去することが効果的である。さらに、複数の蒸留ステップおよび抽出ステップの組み合わせにより、不要な副産物、特にアセトンおよびメタクリロニトリルを、誘導体(例えば、スルホン化形態のアセトン)として本方法から排出することも、それらを目的生成物に(例えば、MANからMASAを経てMMAに)変換させることも可能である。
総括すると、本発明による方法により、工業的なACHスルホ法をより堅牢に、より滞りなく、より高い収率で行うことが可能であり、その際、必要な品質のアルキルメタクリレートの分離が効果的に可能である。
発明の詳細な説明
本発明は、アルキルメタクリレート、好ましくはメチルメタクリレートの製造方法であって、該方法は、
a.アセトンシアノヒドリンと硫酸とを、第1の反応段階(アミド化)において1つ以上の反応器Iで70~130℃の範囲の温度で反応させて、スルホキシイソ酪酸アミドとメタクリル酸アミドとを含む第1の反応混合物を得るステップと、
b.第1の反応混合物を第2の反応段階(転化)において1つ以上の反応器IIで転化させ、ここで、この転化は、130~200℃、好ましくは130~170℃の範囲の温度に加熱することを含むものとし、これにより、主にメタクリル酸アミドと硫酸とを含む第2の反応混合物を得るステップと、
c.第2の反応混合物とアルコールと水、好ましくはメタノールと水とを、第3の反応段階(エステル化)において1つ以上の反応器IIIで反応させて、アルキルメタクリレート、好ましくはメチルメタクリレートを含む第3の反応混合物を得るステップと、
d.第3の反応段階で得られた第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップと
を含み、ここで、
第1の反応段階において使用される硫酸は、98.0重量%~100.0重量%、好ましくは99.0重量%~99.9重量%の範囲の濃度を有し、
第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップは、少なくとも2つの蒸留ステップを含み、これらの蒸留ステップでは、副産物であるメタクリロニトリルおよびアセトンが、少なくとも部分的に、頂部フラクションにおいて含水異相共沸混合物として得られ、
これらの蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られたメタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物を、少なくとも部分的に本方法から排出し、
メタクリロニトリルとアセトンとを含む少なくとも1つの流れを、少なくとも部分的に第3の反応段階に返送する
方法に関する。
本発明の趣意において、さらなる修飾語のない「ppm」という表現は、重量ppm(例えば、mg/kg)を意味する。
反応物、生成物および/または副産物を含む流れ、相またはフラクションという表現は、本発明の趣意において、言及された1つ以上の化合物がそれぞれの流れに含まれていることを意味すると理解され、例えば、反応物、生成物および/または副産物の主要な割合を、対応する流れの中に見出すことができる。原則的に、言及された化合物だけでなく、さらなる成分が含まれていることもある。成分の名称は、しばしばそれぞれの方法ステップを説明する役割を果たす。
本発明の趣意における気化物質または気化物質流という表現は、ガス状のプロセス流、例えば蒸留塔のガス状の頂部流を意味する。好ましくは、ガス状の気化物質流は、冷却ユニット、例えば凝縮器との接触後に液化され、その後、組成に応じて、1つ以上の液相、通常は水相と、主要な有機相とを形成することができる。
第1の反応段階(アミド化)
本発明による方法は、ステップaとして、アセトンシアノヒドリンと硫酸とを、第1の反応段階(アミド化)において1つ以上の反応器Iで70~130℃、好ましくは70~120℃、特に好ましくは80~110℃の範囲の温度で反応させて、スルホキシイソ酪酸アミドとメタクリル酸アミドとを含む第1の反応混合物を得ることを含む。
本発明によれば、第1の反応段階において使用される硫酸は、98.0重量%~100.0重量%、好ましくは99.0重量%~99.9重量%、好ましくは99.3重量%~99.9重量%、殊に好ましくは99.3重量%~99.8重量%の範囲の濃度を有する。特に、使用される硫酸の記載の濃度は、硫酸フィード流(例えば(2))の全重量を基準とする。遊離SOの割合を有しない硫酸、特に0.1~0.5重量%の割合の水を有する硫酸の使用が特に有利であることが判明した。特に、これにより、アミド化収率を向上させ、かつ副産物、特にMANおよびアセトンの割合を、特に既に形成反応あるいは各反応段階において低減させることができた。
当業者は、物質流、例えば硫酸フィード流の含水量を決定する方法を原理的に知っている。例えば、物質流の含水量は、重量天秤、密度もしくは音速の測定、ガスクロマトグラフィー、カールフィッシャー滴定、またはHPLCによって求めることができる。
使用されるアセトンシアノヒドリン(ACH)は、公知の工業的方法により製造可能である(例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie, 4. Auflage, Band 7参照)。典型的には、シアン化水素とアセトンとを塩基性触媒、例えばアミンまたはアルカリ金属水酸化物の存在下で発熱反応にて反応させることにより、ACHが得られる。このような方法段階は、例えば、独国特許出願公開第102006058250号明細書および独国特許出願公開第102006059511号明細書に記載されている。
典型的には、アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸との反応(アミド化)の際に、主生成物として、α-ヒドロキシイソ酪酸アミド(HIBA)あるいはその硫酸水素塩(HIBA・HSO)、α-ヒドロキシイソ酪酸アミドの硫酸エステル(スルホキシイソ酪酸アミド、(SIBA))あるいはその硫酸水素塩(SIBA・HSO)およびメタクリル酸アミドの硫酸水素塩(MASA・HSO)が、過剰の硫酸の溶液として生じる。
好ましい一実施形態では、アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸とから構成される反応混合物は、第1の反応混合物において、第1の反応段階に供給されるACH全体に対して0.1モル%~20モル%、特に0.4モル%~10モル%の範囲の水の総量を有する。好ましくは、第1の反応段階においてアセトンシアノヒドリン(ACH)が使用され、ここで、ACHあるいは供給されるACH物質流(例えば(1a)および/または(1b))は、第1の反応段階に供給されるACHの総量に対して9,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下のアセトン含有量を有する。好ましくは、使用されるACHあるいは供給されるACH物質流(例えば(1a)および/または(1b))は、供給されるACH物質流に対して98重量%以上、特に好ましくは98.5重量%以上、殊に好ましくは99重量%以上のACH割合を有する。典型的には、供給されるACH物質流(例えば(1a)および/または(1b))は、ACH物質流に対して98.0重量%~99.8重量%、好ましくは98.3重量%~99.3重量%のアセトンシアノヒドリンと、0.1~1.5重量%、好ましくは0.2~1重量%のアセトンと、0.1~1.5重量%、好ましくは0.3~1重量%の水とを含む。
好ましくは、第1の反応段階において、アセトンシアノヒドリン(ACH)が使用され、ここで、ACHあるいは供給されるACH物質流(例えば(1a)および/または(1b))は、供給されるACH物質流中に含まれるACHに対して0.1モル%~10モル%、特に0.4モル%~5モル%の含水量を有する。
好ましくは、純物質に加えてさらに触媒をも含むACH品質が用いられるが、触媒は、ブレンステッド酸、好ましくは硫酸で中和されている。通常は、フィード流として使用されるACHのpHは、pH2~pH6である。ACH中には痕跡量のHCNも存在し得るが、ACH中のHCNの濃度が2000ppmを超えないように、好ましくは1000ppmを超えないように、特に好ましくは100ppm~800ppmとなるようにHCN含有量が制御される。これは、ストリッピングおよび蒸留によって行うことができ、その際、ACHからHCNが底部流として記載された限度内で十分に除去される。
第1の反応段階は、好ましくは、過剰の硫酸を用いて運転される。硫酸は、好ましくは溶媒としての役割を果たす。同時に、硫酸は、SIBA中間体を製造するための反応物としての、およびアミド化触媒としての役割を果たす。過剰の硫酸は、特に反応混合物の粘度を低く抑える役割を果たし、これにより、反応熱のより迅速な排出、および反応混合物のより低い温度を保証することができる。これにより特に、収率上の明確な利点を得ることができる。硫酸が多いほど粘度および溶解能が改善され、これによって最終的には収率および選択率の向上も生じるが、生じる廃酸の量を再循環またはさらに処理しなければならないため、経済的な理由から硫酸の使用量の上限が設けられる。
好ましくは、第1の反応段階であるアミド化において、硫酸およびアセトンシアノヒドリン(ACH)は、ACHに対する硫酸のモル比=1.2~2、好ましくは1.25~1.6、特に好ましくは1.4~1.45の範囲で使用される。好ましくは、第1の反応段階において2つ以上の反応器Iが使用され、その際、硫酸およびアセトンシアノヒドリン(ACH)は、第1の反応器Iで、ACHに対する硫酸のモル比=1.6~3、好ましくは1.7~2.6、特に好ましくは1.8~2.3の範囲で使用され、硫酸およびアセトンシアノヒドリン(ACH)は、最後の反応器I(例えば、第2の反応器I)で、ACHに対する硫酸のモル比=1.2~2.0、好ましくは1.2~1.8、殊に好ましくは1.3~1.7の範囲で使用される。達成可能な収率と硫酸消費量との間の最適な妥協点は、好ましくは1.25~1.6のモル比であることが判明しており、これは、最終的には経済的最適化の観点から評価することができる。典型的には、硫酸を増やすと、この原料のコストに加え、生じる廃酸混合物を廃棄する手間も増えるが、通常は、ACHを基準とする収率をさらにわずかに向上させることができる。
第1の反応段階におけるアセトンシアノヒドリンと硫酸との反応は、発熱性である。したがって、収率を向上させるには、生じた反応熱を、例えば適切な熱交換器により十分にまたは少なくとも部分的に排出することが有利である。しかし、反応混合物の粘度は温度の低下と共に著しく上昇し、したがって反応器Iでの循環、流れおよび熱交換が困難となるため、過度の冷却は避けるべきである。さらに、低温では、第1の反応混合物において熱交換器上で内容物の部分的または完全な結晶化が生じることがあり、これが、例えば反応器Iのポンプハウジング、管路および熱交換器管の磨耗を招くおそれがある。このいわゆる硫酸化は、プラントを停止して反応器を洗浄することを余儀なくされるため、何としても避けることが好ましい。
反応器循環路の冷却には、原則として公知の適切な冷媒を使用することができる。冷却水を使用することが有利である。典型的には、冷媒、特に冷却水は、選択された方法条件を下回る温度を有する。有利には、冷媒、特に冷却水は、20~90℃、好ましくは50~90℃、特に好ましくは70~80℃の範囲の温度を有する。
メタクリル酸アミドの結晶化点を下回るのを阻止するために、熱交換器(反応器の冷却器)は、典型的には温水の二次循環路を用いて運転される。この場合、装置の生成物側の入口/出口での温度差が約1~20℃、特に2~10℃であることが好ましい。
第1の反応段階(アミド化)における1つ以上の反応器Iでのアセトンシアノヒドリンと硫酸との反応は、70~130℃、好ましくは80~120℃、特に好ましくは90~110℃の範囲の温度で行われる。第1の反応段階における1つ以上の反応器Iでのアミド化は、しばしば常圧またはわずかに負圧で行われる。
典型的には、第1の反応段階(アミド化)は、バッチ式および/または連続式で行うことができる。典型的には、第1の反応段階は、撹拌槽、撹拌槽カスケードまたはループ型反応器、あるいはこれらの装置の組み合わせで実施されていてよい。第1の反応段階は、好ましくは、例えば1つ以上のループ型反応器で連続的に行われる。適切な反応器および方法は、例えば、国際公開第2013/143812号に記載されている。有利には、第1の反応段階は、2つ以上のループ型反応器のカスケードで行うことができる。殊に好ましくは、第1の反応段階における反応は、1つ以上の(好ましくは2つの)ループ型反応器で行われる。
第1のループ型反応器は、典型的には、5~110、好ましくは10~90、特に好ましくは10~70の範囲の循環比(供給体積流量に対する循環体積流量の比)で運転される。後続のループ型反応器では、循環比は有利には、5~100、好ましくは10~90、特に好ましくは10~70の範囲である。
典型的には、反応器I、特にループ型反応器Iにおける静的滞留時間は、5~35分、好ましくは8~20分の範囲である。
好適なループ型反応器は、好ましくは以下の要素を有する:ACH用の1つ以上の供給箇所、硫酸用の1つ以上の供給箇所、1つ以上のガス分離器、1つ以上の熱交換器、1つ以上のミキサー、および1つのポンプ。ミキサーは、スタティックミキサーとして実施されることが多い。
ACHは、原則的に、1つ以上の反応器I(例えばループ型反応器)の任意の箇所で供給することができる。しかし、十分な混合状態にある箇所でACHが供給されると有利であることが判明した。ACHを混合要素、例えば可動部分を有するミキサー、またはスタティックミキサーに供給することが有利である。
硫酸は、原則的に、1つ以上の反応器I(例えばループ型反応器)の任意の箇所で供給することができる。硫酸の供給は、好ましくはACHの供給の前に行われる。特に好ましくは、硫酸の供給は、各反応器ポンプの吸引側で行われる。これによって、ガス含有反応混合物のポンプ搬送性を向上させることがしばしば可能である。
反応器I(例えばループ型反応器I)は、好ましくはそれぞれ少なくとも1つのガス分離器を備える。典型的には、ガス分離器により、一方では生成物流(第1の反応混合物)を連続的に引き出すことができ、他方ではガス状の副産物を分離除去して排出することができる。通常、ガス状の副産物として、主に一酸化炭素が生成される。好ましくは、アミド化で得られるオフガス流の一部は、第2の反応段階(転化)で得られる第2の反応混合物と一緒にガス分離器に送られる。
好ましい一実施形態では、第1の反応段階は、アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸とを、少なくとも2つの別個の反応ゾーン、好ましくは少なくとも2つのループ型反応器で反応させることを含む。
アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸との反応は、反応容積が少なくとも2つの反応ゾーンに分割され、かつACHの総量が異なる反応ゾーンに別々に計量供給されるように行われることが好ましい。好ましくは、第1の反応器または第1の反応ゾーンに供給されるACHの量は、後続の反応器または後続の反応ゾーンに供給されるACHの量を上回るか、またはそれと同じである。
有利には、供給されるACHの総体積流量の50~90重量%、好ましくは60~75重量%が第1の反応器に導入される(例えば(1a))。供給されるACHの残量は、第2の反応器に導入され、任意でさらなる反応器にも導入される(例えば(1b))。典型的には、ACHの総量が、第1の反応器I(例えば(A))と第2の反応器I(例えば(B))とに、第1の反応器I:第2の反応器Iの重量比=70:30~80:20の範囲、好ましくは約75:25で分割される。
好ましくは、第1の反応器または第1の反応ゾーンで供給されるACHに対する硫酸のモル比は、後続の反応器または後続の反応ゾーンでの対応するモル比よりも大きい。
殊に好ましくは、第1の反応段階は、アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸とを、少なくとも2つの別個の反応器、好ましくは少なくとも2つのループ型反応器で反応させることを含み、その際、硫酸およびアセトンシアノヒドリン(ACH)は、第1の反応器において、ACHに対する硫酸のモル比=1.6~3、好ましくは1.7~2.6、殊に好ましくは1.8~2.3の範囲で使用され、硫酸およびアセトンシアノヒドリン(ACH)は、第2の反応器において、ACHに対する硫酸のモル比=1.2~2.0、好ましくは1.2~1.7、殊に好ましくは1.3~1.7の範囲で使用される。
特に好ましい一実施形態では、第1の反応段階における反応は、2つ以上のループ型反応器(例えば(A)および(B))で行われ、その際、ACHの総量が、第1のループ型反応器および少なくとも1つのさらなるループ型反応器に計量供給される。殊に好ましくは、各ループ型反応器は、少なくとも1つのポンプ、水を媒体として冷却される熱交換器、ガス分離装置、ガス分離装置に接続される少なくとも1つのオフガス管、および液体形態のACH用の少なくとも1つの供給管を備える。好ましくは、少なくとも2つのループ型反応器は、第1の反応器から得られる反応混合物全体が後続の反応器に送られ、この反応混合物が後続の反応器でさらなる液状のACHおよび任意でさらなる量の硫酸と混合されるように互いに接続されている。
典型的には、第1の反応段階(アミド化)により第1の反応混合物が得られ、該反応混合物は、硫酸の反応マトリックスに溶解した状態で、該反応混合物全体に対してそれぞれ5~25重量%のスルホキシイソ酪酸アミド(SIBA)と、5~25重量%のメタクリル酸アミド(MASA)と、<3%のヒドロキシイソ酪酸アミド(HIBA)とを含む。
第2の反応段階(転化)
本発明による方法は、ステップ(b)において、第1の反応混合物を第2の反応段階(転化)において1つ以上の反応器IIで転化させ、ここで、この転化は、130~200℃、好ましくは130~180℃、好ましくは130~170℃、特に好ましくは140~170℃の範囲の温度に加熱することを含むものとし、これにより、主にメタクリル酸アミド(MASA)と硫酸とを含む第2の反応混合物を得ることを含む。
典型的には、SIBA、HIBAおよびMASAをそれぞれ主に硫酸水素塩の形態で含む硫酸溶液である第1の反応混合物を130~200℃、好ましくは130~180℃の範囲の温度に加熱すると(転化)、HIBAあるいはSIBAの脱水によってMASAあるいはMASA・HSOの量が高められる。
殊に好ましくは、第2の反応段階における転化は、130~200℃、好ましくは130~180℃、特に好ましくは140~170℃の範囲の温度で、2~30分、好ましくは3~20分、殊に好ましくは5~20分の範囲の滞留時間で行われる。
転化反応は、典型的には2つのセクションに分けることができ、第1の部分では、アミド化混合物を転化に必要な温度まで比較的迅速に昇温させ、第2の部分では、反応温度に達した後、所望の転化率が達成されるまでこの混合物をほぼ断熱的に保つ。この反応は通常は、MASAの収率が最大となり、SIBAが痕跡量を除いて完全に反応し、HIBAも同様に数百あるいは数千ppmの痕跡範囲でしか存在しないように最適化される。
好ましくは、第2の反応段階(転化)における加熱は、可能な限り短い期間で行われる。特に、第2の反応段階における加熱は、1~30分、好ましくは1~20分、特に好ましくは2~15分、非常に特に好ましくは2~10分の期間にわたって行われる。好ましい一実施形態では、第2の反応段階(転化)は、反応混合物を例えば1つ以上の予熱器セグメントで加熱し、反応混合物をほぼ断熱的な条件で例えば1つ以上の滞留時間セグメントに送ることを含む。
転化は、言及された期間内に言及された温度を達成することを可能にする公知の反応器で行うことができる。この場合、エネルギーの供給は、公知の方法で、例えば水蒸気、熱水、適切な熱媒、電気エネルギーまたはマイクロ波放射線のような電磁放射線によって行うことができる。好ましくは、第2の反応段階における転化は、1つ以上の熱交換器で行われる。
好ましい一実施形態では、第2の反応段階における転化は、コイルチューブの2段または多段配置を含む熱交換器で行われる。有利には、多段コイルチューブは、対向配置で存在する。
熱交換器は、例えば1つ以上のガス分離器と組み合わせることができる。例えば、反応混合物を、熱交換器の第1のコイルチューブから出た後、および/または熱交換器の第2のコイルチューブから出た後にガス分離器に通すことができる。この場合特に、反応混合物からガス状の副産物を分離除去することができる。
典型的には、第1の反応段階で得られた第1の反応混合物は、第2の反応段階の反応器IIに完全に送られる。任意で、アミド化ステップと転化ステップとを交互に実施することができ、ここで、転化とは好ましくは、後続の第3の反応段階(例えば、エステル化)の前の最後のステップを表す。好ましくは、本実施形態は、2つのアミド化ステップの間の中間転化と最終転化とを含む。好ましくは、第2の反応段階で得られた第2の反応混合物は、さらなるアミド化ステップのために第2の反応器Iに送られる。
好ましくは、転化により得られる第2の反応混合物は、ガス分離器(例えば(D))に送られ、その際、ガス状の副産物を、第2の反応混合物から少なくとも部分的に分離除去することができる。典型的には、脱気された第2の反応混合物はすべて、第3の反応段階(エステル化)に送られる。好ましくは、転化の後にガス分離器内で得られるオフガスは、本方法から完全にまたは部分的に排出される。あるいは転化の後にガス分離器内で得られるオフガスは、完全にまたは部分的に第3の反応段階(エステル化)に送られる。本変形例では、アミド化および転化の主要な副産物、すなわちCOと共に存在するガス状の有機成分がエステル化反応に導入され、このようにして、このガスは、粗製MMAのストリッピング媒体としての役割を果たすことができる。MANは、このようにガス状でエステル化反応に達することができ、そこで部分的に反応してMASAを形成する成分である。
特に、本発明による方法によって、(アミド化および転化の後の)第2の反応混合物中の不要な副産物の量、好ましくはMAN、アセトン、MASおよび/またはHIBAの量を低減させることができる。好ましくは、第2の反応混合物は、第2の反応混合物全体に対してそれぞれ3重量%以下、好ましくは2重量%以下のMASと、1.5重量%以下、好ましくは1重量%以下のHIBAと、0.3重量%以下のMANとを含む。
好ましくは、(アミド化および転化の後の)第2の反応混合物は、第2の反応混合物全体に対して30~40重量%のメタクリル酸アミド(MASA)を含む。好ましくは、(アミド化および転化の後の)第2の反応混合物は、第2の反応混合物全体に対してそれぞれ30~40重量%のMASAと、0~3重量%のMASと、0.2~1.5重量%、好ましくは0.2~1重量%のHIBAと、0.01~0.3重量%のMANとを含む。したがって、第2の反応混合物(すなわち転化の後)は、第1の反応混合物(すなわち、アミド化の直後)よりも著しく低いHIBA濃度を有する。
第3の反応段階(エステル化)
本発明による方法は、ステップcにおいて、主にメタクリル酸アミドを含む第2の反応混合物とアルコールと水とを、好ましくはメタノールと水とを、第3の反応段階(エステル化)において1つ以上の反応器IIIで反応させて、アルキルメタクリレートを含む第3の反応混合物を得ることを含む。
工業的規模でのエステル化の条件は、当業者に知られており、例えば米国特許第5,393,918号明細書に記載されている。
第3の反応段階(エステル化)における反応は、好ましくは1つ以上の適切な反応器、例えば加熱槽で行われる。特に、水蒸気で加熱される槽を使用することができる。好ましい一実施形態では、エステル化は、2つ以上、例えば3つまたは4つの連続槽(カスケード槽)で行われる。
典型的には、エステル化は、90~180℃、好ましくは100~150℃の範囲の温度で、7baraまでの、好ましくは2bara以下の圧力で、硫酸を触媒として使用して行われる。第2の反応混合物の硫酸を触媒として使用し、この量を超えて追加の酸を使用しないことが特に好ましい。
好ましくは、第2の反応混合物と、少なくとも等モル量あるいは過剰のアルコールと水との、好ましくは過剰のメタノールと水との反応が行われる。主にメタクリル酸アミドを含む第2の反応混合物の添加およびアルコールの添加は、好ましくは、メタクリル酸アミド対アルコールのモル比が1:0.7~1:1.6の範囲となるように行われる。好ましい一実施形態では、第3の反応段階における反応は、2つ以上の反応器IIIで行われ、その際、第1の反応器IIIにおいて、メタクリル酸アミド対アルコールのモル比は、1:0.7~1:1.4の範囲、好ましくは1:0.9~1:1.3の範囲となり、第2のおよび可能な後続の反応器IIIにおいて、メタクリル酸アミド対アルコールのモル比は、1:1.0~1:1.3の範囲となる。
好ましくは、第3の反応段階(エステル化)に供給されるアルコールは、本方法に新たに供給されるアルコール(新鮮なアルコール)と、本発明による方法の返送流(再循環流)に含まれているアルコールとから構成される。さらに、本発明による方法では、後続の下流プロセスからの再循環流に含まれているアルコールを使用することも可能である。
アルコールは、特に、直鎖状、分岐状、飽和および不飽和C~Cアルコール、好ましくはC~Cアルコールから選択されていてよい。特に、アルコールは、飽和C~Cアルコールである。好ましくは、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選択されている。特に好ましくは、アルコールはメタノールである。
典型的には、第3の反応段階の1つ以上の反応器IIIへの水の添加は、水の濃度が、反応器IIIの反応混合物全体に対してそれぞれ10~30重量%、好ましくは15~25重量%の範囲となるように行われる。
原則として、第3の反応段階(エステル化)に供給される水は、エステル化または後続の方法段階に悪影響を及ぼす化合物が含まれていないことを条件として、任意の供給源に由来することができ、各種有機化合物を含むことができる。好ましくは、第3の反応段階に供給される水は、本発明による方法の返送流(再循環流)に由来し、例えばアルキルメタクリレートの精製に由来する。さらに、第3の反応段階(エステル化)に、新鮮水、特に完全脱塩水または井戸水を供給することも可能である。
メタノールによるエステル化では、典型的には、アルキルメタクリレート(特にMMA)と、ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HIBSM)と、上述の副産物と、著量の水と、未反応のアルコール(特にメタノール)とを含む第3の反応混合物が得られる。
好ましい一実施形態では、エステル化は、2つ以上(特に3つまたは4つ)の連続する槽(カスケード槽)で行われ、その際、オーバーフロー液およびガス状生成物は、第1の槽から第2の槽へ送られる。典型的には、可能な後続の槽で相応して処理される。特に、このような運転様式により、槽内での泡の形成を低減させることができる。第2の槽および可能な後続の槽では、同様にアルコールを添加することができる。この場合、好ましくは、アルコールの添加量は、先行する槽と比較して少なくとも10%少ない。典型的には、添加されるアルコールは、新鮮なアルコールおよび/または返送された(再循環された)アルコール含有材料流であってよい。各種槽における水の濃度は、典型的には互いに異なることができる。典型的には、第1の槽に供給される第2の反応混合物の温度は、100~180℃の範囲である。典型的には、第1の槽内の温度は、90~180℃の範囲であり、第2の槽および可能な後続の槽内の温度は、100~150℃の範囲である。
好ましい一実施形態では、第3の反応段階で得られる第3の反応混合物の蒸発可能な部分は、ガス状(気化物質)で反応器IIIから排出され、さらなる後処理、例えば蒸留ステップに供給される。特に、第3の反応混合物の蒸発可能な部分を、気化物質の形態で後続の蒸留塔K1(粗製物塔K1)の底部に送ることができる。複数の反応器III、例えば複数の槽から構成されるカスケードが使用される場合、各槽において、生じる反応混合物の蒸発可能な部分を気化物質流として排出し、さらなる後処理に送ることができる。任意で、最後の槽で生じる反応混合物の蒸発可能な部分(第3の反応混合物として)のみが、気化物質流として排出され、さらなる後処理に送られる。エステル化の際に生じるこの気化物質流(第3の反応混合物)は典型的には、水と、アルキルメタクリレートと、アルコールと、記載された副産物、例えばメタクリロニトリルと、アセトンとを含む共沸混合物である。典型的には、エステル化の際に生じるこの気化物質流(第3の反応混合物)は、60~120℃の範囲の温度を有し、この温度は、使用されるアルコールに依存する。典型的には、エステル化の際に生じるこの気化物質流は、アルコールとしてメタノールが使用される場合、70~90℃の範囲の温度を有する。
有利には、アルキルメタクリレートの重合を防止または低減させるために、本発明による方法の各種物質流に1つ以上の安定剤を添加することができる。例えば、エステル化により得られた第3の反応混合物に安定剤を添加することができる。さらに有利には、第1の蒸留ステップK1(粗製物塔K1)の頂部フラクションに安定剤を添加することができる。好ましくは、フェノチアジンおよび他の適切に作用する安定剤を、例えば第1の反応段階(アミド化)および/または第2の反応段階(転化)において使用することができる。好ましくは、さらに、フェノール系化合物、キノンおよびカテコールを、第3の反応段階(エステル化)および/または後処理部において使用することができる。さらに、アミンN-オキシド、例えばTEMPOLあるいは言及された安定剤の組み合わせも使用される。本方法の各種箇所で添加されるこれらの少なくとも2つの安定剤の混合物が特に好ましい。
第3の反応段階(エステル化)から、好ましくは、実質的に希硫酸と硫酸水素アンモニウムとからなる廃物流(例えば(11))が排出される。この廃物流は、典型的には本方法から排出される。好ましくは、この廃物流は、特に本発明による方法の1つ以上の水性廃物流と一緒に、硫酸再生プロセスまたは硫酸アンモニウム取得プロセスに供給される。
第3の反応混合物の後処理
本発明による方法は、ステップdにおいて、第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離することを含み、ここで、第3の反応混合物からのアルキルメタクリレートの分離(後処理)は、少なくとも2つの蒸留ステップを含み、これらの蒸留ステップでは、副産物であるメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンが、少なくとも部分的に、頂部フラクションにおいて含水異相共沸混合物として得られ、ここで特に、アルキルメタクリレートから少なくとも部分的に分離除去し、これらの蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られたメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンを含む含水異相共沸混合物を、少なくとも部分的に本方法から排出し、メタクリロニトリルとアセトンとを含む少なくとも1つの流れを、少なくとも部分的に第3の反応段階に返送する。
好ましくは、少なくとも部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送されるメタクリロニトリルとアセトンとを含む少なくとも1つの流れは、上記の蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られたメタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物である。
例えば、少なくとも1つの蒸留ステップで得られた含水異相共沸混合物の水相および/もしくは有機相ならびに/またはこの混合物を、任意でさらなる後処理ステップ、例えば、凝縮ステップ、相分離ステップ、抽出ステップおよびスクラビングステップの後に本方法から排出することができる。
好ましくは、蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物の凝縮および相分離によって得られる少なくとも1つの水相を、完全にまたは部分的に、任意で抽出ステップの後に第3の反応段階(エステル化)に返送し、そこで主にメタクリル酸アミドと硫酸とを含む第2の反応混合物と接触させる。
好ましくは、蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物の凝縮および相分離によって得られる少なくとも1つの水相は、完全にまたは部分的に、任意で抽出ステップの後に本方法から排出される。
好ましくは、第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップ(ステップd)は、少なくとも1つの相分離ステップを含み、この相分離ステップでは、蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物が、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相と、主にアルキルメタクリレートを含む有機相とに分離され、水相は、完全にまたは部分的に本方法から排出される。
さらなる好ましい一実施形態では、蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物は、少なくとも部分的に、任意でスクラビングステップの後に、ガス状流の形態で完全にまたは部分的に本方法から排出される。例えば、少なくとも1つの蒸留ステップで得られた含水異相共沸混合物を気化物質流の形態で排出し、任意で、例えば凝縮ステップ、相分離ステップ、抽出ステップおよびスクラビングステップから選択されるさらなる処理ステップの後にガス状の形態で(オフガス流として)本方法から排出することができる。
好ましくは、第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップ(ステップd)は、少なくとも1つの相分離ステップを含み、この相分離ステップでは、蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物が、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相と、主にアルキルメタクリレートを含む有機相とに分離され、水相は、部分的に本方法から排出され、かつ/または部分的に第3の反応段階に返送され、主にアルキルメタクリレートを含む有機相は、完全にまたは部分的に少なくとも1つの蒸留ステップに返送される。
不要な副産物であるMANおよびアセトンの他に、少なくとも1つの蒸留ステップで頂部フラクションとして得られる含水異相共沸混合物は、典型的には、アルコール、例えばメタノール、水、ジメチルエーテルおよびメチルホルメートを含む。
メタクリロニトリル(MAN)は、メタノール(MeOH)のみならずメチルメタクリレート(MMA)とも共沸混合物を形成するか、あるいはメチルメタクリレートのいくつかの共沸混合物と同様の沸点を有するため、大抵は生成物からの分離除去は困難であり、かなりの複雑さを伴う。したがって典型的には、不要な副産物であるMANは、上記のような少なくとも1つの蒸留ステップにおいて、頂部フラクションにおいて含水異相共沸混合物として得られ、また底部フラクションでも得られる。
粗製物塔(K1)および予備精製
好ましくは、本発明による方法のステップdにおけるアルキルメタクリレートの分離は、エステル化で得られる第3の反応混合物の予備精製を含む。特に、予備精製は、少なくとも1つの蒸留ステップK1(例えば、粗製物塔(F))と、少なくとも1つの相分離ステップ(例えば、相分離器I、(G))と、少なくとも1つの抽出ステップ(例えば、抽出ステップ(H))とを含む。さらなる一実施形態では、予備精製は、少なくとも2つの蒸留ステップ、例えば、粗製物塔K1と、粗製物ストリッパー塔K4(例えば(I))と、少なくとも1つの相分離ステップ(例えば、相分離器(K))とを含む。
好ましくは、第3の反応段階で得られた第3の反応混合物は、連続的に蒸発され、この際に生じる気化物質流(例えば(12))は、第1の蒸留ステップK1(例えば、粗製物塔(F))に供給され、この第1の蒸留ステップK1では、アルキルメタクリレートと水とアルコールとを含む頂部フラクション(例えば(14a)または(14b))と、より沸点の高い成分を含む底部フラクション(例えば(13))とが得られ、底部フラクションは、完全にまたは部分的に第3の反応段階に返送される。特に、蒸留ステップK1の頂部フラクション(例えば(14a)または(14b))は、メタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物である。
好ましい一実施形態(変形例A)では、アルキルメタクリレートと水とアルコールとを含む蒸留ステップK1の頂部フラクション(例えば(14a))は、相分離ステップ(相分離器I、例えば(G))において、アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相OP-1(例えば(15a))と、アルコールとさらなる水溶性化合物とを含む水相WP-1(例えば(15b))とに分離され、典型的には、水相は、完全にまたは部分的に第3の反応段階に返送される。さらに好ましくは、アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相OP-1は、好ましくは抽出剤として水を使用する抽出(例えば(H))に供され、典型的にはこの抽出の水相(例えば17b)は、完全にまたは部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送される。
さらなる好ましい一実施形態(変形例B)では、アルキルメタクリレートと水とアルコールとを含む蒸留ステップK1の頂部フラクション(例えば(14b))が、気化物質流としてさらなる蒸留ステップK4(例えば、粗製物ストリッパー塔(I))に送られ、その際、メタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物(例えば(19a))が頂部フラクションとして得られ、アルキルメタクリレートを含む底部フラクションが得られる。好ましくは、蒸留ステップK4の頂部フラクション(例えば(19a))は、任意でスクラビングステップ(例えば(J))の後に、好ましくはアルコール(例えばメタノール)によるスクラビングステップの後に、ガス状流(例えば(21a))の形態で完全にまたは部分的に本方法から排出される。好ましくは、蒸留ステップK4の底部フラクションは、相分離ステップ(相分離器II、例えば(K))で、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2(例えば(20b))と、アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相OP-2(例えば(20a))とに分離される。典型的には、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2は、完全にまたは部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送される。
共沸塔(K2)および純粋物塔(K3)
好ましくは、第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップ(ステップd)は、アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相(例えば、抽出部(H)で得られた(17a)または相分離器(K)で得られた(20a))を蒸留ステップK2(共沸塔、例えば(L))に送り、メタクリロニトリルとアセトンを含む含水異相共沸混合物が頂部フラクション(例えば(22a))として得られ、アルキルメタクリレート粗生成物が底部フラクション(例えば(22b))として得られることを含む。
好ましくは、蒸留ステップK2(共沸塔、例えば(L))は、負圧で実施される。好ましくは、蒸留ステップK2の有機フィード(例えば(17a)または(20a))は、予熱されて、蒸留塔K2の頂部に送られる。典型的には、塔頂部を、蒸発器によって低圧蒸気で間接的に加熱することができる。
好ましくは、アルキルメタクリレート(特にMMA)と、水と、アルコール(特にメタノール)と、アセトンと、メタクリロニトリルと、さらなる低沸点物質とを含む含水異相共沸混合物(例えば(22a))が、蒸留塔K2(共沸塔、例えば(L))の頂部で分離除去される。
典型的には、蒸留ステップK2(共沸塔、例えば(L))において、アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレートの主要な部分を含み、低沸点物質をほとんど含まないが高沸点物質、例えばメタクリル酸(MAS)およびヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HIBSM)が混入している底部フラクション(例えば(22b))が得られる。好ましくは、蒸留ステップK2(共沸蒸留、例えば(L))の底部フラクションとして得られるアルキルメタクリレート粗生成物(例えば(22b))は、少なくとも99.0重量%のアルキルメタクリレートを含む。好ましくは、蒸留ステップK2(共沸蒸留、例えば(L))の底部フラクションとして得られるアルキルメタクリレート粗生成物(例えば(22b))は、20~2000ppmのMAN含有量を有する。
好ましい一実施形態では、蒸留ステップK2(共沸塔、例えば(L))の頂部フラクション(例えば(22a))は、まず気化物質流として凝縮器(例えば(M))に送られ、真空中で段階的に凝縮される。好ましくは、この段階的な凝縮において、第1の段階(凝縮器の吸引側)で二相凝縮物I(例えば(23a))が生じ、第2の段階(凝縮器の吐出側)でさらなる凝縮物II(例えば23(d))が生じる。好ましくは、段階的な凝縮の際に(特に吐出側での凝縮の際に)生じるオフガス(例えば(23e)または(23b))は、任意でスクラビングステップ(例えば(J))の後に本方法から排出される。
好ましい一実施形態(変形例A)では、凝縮の第1の段階で得られた二相凝縮物I(例えば(23a))は、相分離器(例えば(N))に送られ、凝縮の第2の段階で得られたさらなる凝縮物II(例えば23(d))は、後続の抽出ステップで抽出剤として使用される。
別の好ましい一実施形態(変形例B)では、段階的な凝縮(例えば(M))の液相を合流させ、これが液体二相流(例えば(23c))の形態で相分離器(例えば(K))に送られる。
好ましくは、蒸留ステップK2(例えば(L))において頂部フラクションとして得られる含水異相共沸混合物は、典型的には(例えば(M)における)凝縮の後に、相分離器IIにおいて(例えば、相分離器(N)または(K)において)、アルキルメタクリレートを含む少なくとも1つの有機相OP-2と、MANとアセトンとメタノールとを含む少なくとも1つの水相WP-2とに分離される。好ましくは、水相WP-2および/または有機相OP-2は、完全にまたは部分的に本方法から排出される。特に、水相WP-2(例えば(20b)または(24b))は、典型的には(例えば(N)または(K)における)相分離の後に、完全にまたは部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送される(例えば(26c)または(20b))。特に好ましくは、メタクリロニトリル(MAN)とアセトンとを含む水相WP-2は、部分的に本方法から排出され、部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送される。
しばしば、水相WP-2(例えば(20b)または(24b))は、水相WP-2全体に対して10~10,000ppmのMANを含む。
好ましくは、蒸留ステップK2において頂部フラクションとして得られる含水異相共沸混合物の有機相OP-2は、典型的には(例えば(N)または(K)における)相分離の後に、完全にまたは部分的に、特に好ましくは完全に、蒸留ステップK2に返送される(例えば(24a)または(20a))。特に、有機相OP-2(例えば(24a)または(20a))は、アルキルメタクリレートとメタクリロニトリル(MAN)とを含む。
典型的には、蒸留ステップK2の頂部フラクションに含まれるMANの主要な部分は、異相共沸混合物の有機相(OP-2)中に認めることができる。好ましくは、蒸留ステップK2(例えば(L))への異相共沸混合物の有機相(OP-2)の完全なまたは部分的な返送によって、不要な副産物、特にMANの富化、ひいては例えば異相共沸混合物の水相(WP-2)に対するより効率的な分離除去を達成することができる。
好ましい一実施形態では、(例えば(28b)を通じて)本方法から排出されるMANの総量に対する、(例えば(28a)を通じて)本方法、好ましくは第3の反応段階(エステル化)に返送されるMANの総量の重量比は、7未満、好ましくは5未満、特に3未満である。この特性値は、MANの化学反応または除去には返送あるいは循環が重要であることを示している。典型的には、そうでなければ、最終生成物(例えば、MMA)中のMAN濃度の増加が生じ、その結果、さらなるプロセス工学的ステップ、例えば、さらなる蒸留を実施しなければならなくなるが、これは好ましくない。
好ましい一実施形態では、蒸留ステップK2で得られたアルキルメタクリレート粗生成物(例えば(22b))は、さらなる蒸留ステップK3(純粋物塔)に送られ、その際、アルキルメタクリレートが、より沸点の高い化合物から分離され、頂部フラクション(例えば(25a))としてアルキルメタクリレート純生成物が得られる。好ましくは、蒸留ステップK3で得られたアルキルメタクリレート純生成物(例えば(25a))は、アルキルメタクリレート純生成物に対して少なくとも99.9重量%、好ましくは少なくとも99.95重量%のアルキルメタクリレートを含む。好ましくは、蒸留ステップK3で得られたアルキルメタクリレート純生成物(例えば(25a))は、アルキルメタクリレート純生成物に対して10~300ppm、好ましくは10~100ppm、特に好ましくは10~80ppm、殊に好ましくは50~80ppmの範囲のメタクリロニトリル(MAN)含有量を有する。好ましくは、アルキルメタクリレート純生成物は、アルキルメタクリレート純生成物に対して10ppm以下、好ましくは2ppm以下、特に好ましくは1ppm以下のアセトン含有量を有する。
好ましい一実施形態では、第2の蒸留ステップK2(共沸塔)(例えば(L))において、底部フラクションとしてアルキルメタクリレート粗生成物(例えば(22b))が得られ、このアルキルメタクリレート粗生成物は、好ましくはアルキルメタクリレートを少なくとも99.0重量%含み、このアルキルメタクリレート粗生成物は、さらなる蒸留ステップK3(純粋物塔)(例えば(O))で精製され、その際、頂部フラクション(例えば(25a))としてアルキルメタクリレート純生成物が得られ、このアルキルメタクリレート純生成物は、アルキルメタクリレート純生成物に対して10~300ppm、好ましくは10~100ppm、特に好ましくは10~80ppm、殊に好ましくは50~80ppmの範囲のメタクリロニトリル含有量を有する。
好ましくは、蒸留ステップK2で得られたアルキルメタクリレート粗生成物(例えば(22b))は、液状で、組成物の沸点をかろうじて下回って、蒸留ステップK3(純粋物塔)に送られる。好ましくは、蒸留ステップK3への供給(例えば(22b))は、純粋物塔K3の中央で行われる。典型的には、蒸留塔K3へのエネルギー投入は、低圧蒸気で加熱される蒸発器によって行われる。好ましくは、蒸留ステップK3(純粋物塔、例えば(O))は、蒸留ステップK2と同様に負圧で実施される。
典型的には、塔K3(例えば(O))の頂部で完全に凝縮された留出物流は、生成物流(例えば(25a))と塔への還流とに分割される。アルキルメタクリレート純生成物(例えば(25a))の品質は、例えば還流比によって制御することができる。底部流(25b)は、好ましくはエステル化(例えば(E))に返送されるか、あるいは共沸塔に直接的または間接的に戻ってフィード流として供給されるかまたは共沸塔の凝縮物に供給され、その際、一部を塔還流として使用することができる。
典型的には、蒸留ステップK3(純粋物塔)(例えば(O))の底部フラクションは、完全にまたは部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送することができる。特に、これにより、含まれるアルキルメタクリレートを回収することができる。
変形例A
本発明の好ましい一実施形態(変形例Aともいう)では、第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップは、
(i)第3の反応段階(エステル化)で得られた第3の反応混合物を、まず第1の蒸留ステップK1(粗製物塔)(例えば(F))で蒸留して、メタクリロニトリルとアセトンとを含む第1の含水異相共沸混合物(例えば(14a))を頂部フラクションとして得る;
(ii)凝縮物としての第1の含水異相共沸混合物を、相分離ステップ(相分離器I)(例えば(G))で、水相WP-1(例えば(15b))と、アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相OP-1(例えば(15a))とに分離する;
(iii)有機相OP-1(例えば(15a))を、任意で抽出ステップの後に第2の蒸留ステップK2(共沸塔)(例えば(L))に送り、頂部フラクションとしてメタクリロニトリルとアセトンとを含む第2の含水異相共沸混合物(例えば(22a))を得る;
(iv)凝縮された第2の含水異相共沸混合物(例えば(22a))の少なくとも一部(例えば23a))を、相分離ステップ(相分離器II)(例えばN)で、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2(例えば(24b))と有機相OP-2(例えば(24a))とに分離し、その際、特に水(例えば(16c))を付加的に添加することによってこの相分離を有利にし、
有機相OP-2(例えば(24a))を完全にまたは部分的に第2の蒸留ステップK2に返送し、
メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2(例えば(24b))を部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送し、部分的に任意で抽出ステップ(例えば(P))の後に本方法から排出する
ことを含む。
好ましくは、(iv)は、凝縮された含水異相共沸混合物(例えば(23a))を相分離ステップ(相分離器II)(例えばN)で、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2(例えば(24b))と有機相OP-2(例えば(24a))とに分離し、その際、水(例えば(16c))を付加的に添加することによってこの相分離を有利にすることを含む。
好ましい一実施形態(変形例A)では、水相WP-1(例えば(15b))は、完全にまたは部分的に第3の反応段階(エステル化)に返送され、アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相OP-1(例えば(15a))は、抽出剤として水を用いた抽出(例えば(H))に供され、この抽出の水相(例えば(17b))は、第3の反応段階に返送され、この抽出の有機相(例えば(17a))は、第2の蒸留ステップK2(共沸塔、例えば(L))に送られる。
好ましくは、水、典型的には完全脱塩水または井戸水を、相分離ステップ(相分離器II)(例えばN)において添加することができ、その際、第2の含水異相共沸混合物(例えば(22a))の少なくとも一部(例えば23a))が、水相WP-2と有機相OP-2とに分離され、それにより、典型的には相分離が改善される。
好ましい一実施形態(変形例A)では、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2(例えば(24b))の一部(例えば(26b))が抽出(例えば(P))に供され、その際、水相WP-3(例えば(28b))および有機相OP-3(例えば(28a))が得られ、ここで、水相WP-3は、完全にまたは部分的に本方法から排出され、有機相OP-3は、完全にまたは部分的に第3の反応段階に返送される。任意で、有機相OP-3を、少なくとも部分的に本方法から排出することができる。好ましくは、有機相OP-3は、廃硫酸(例えば(27))としてエステル化の廃酸(例えば(11))と共に本方法から排出される。特に、水相WP-3は、例えばエステル化の廃酸(例えば(11))と共に、後続の硫酸再生プロセスに、または後続の硫酸アンモニウム取得プロセスに(例えば(27)を通じて)供給することができる。
典型的には、上述の変形例Aにおいて、不要な副産物、特にMANおよびアセトンの排出は、水相WP-2(例えば(24b))の一部(例えば(26b))を通じて行われ、その際、後続の抽出ステップ(例えば(P))によって、アルキルメタクリレートの損失を低減させることができる。
好ましくは、蒸留ステップK2の頂部フラクション(第2の含水異相共沸混合物、例えば(22a))は、まず気化物質流として凝縮器(例えば(M))に供給され、真空中で段階的に凝縮される。好ましくは、ここで、凝縮の第1の段階(凝縮器の吸引側)で二相凝縮物I(例えば(23a))が得られ、これが相分離器(例えば(N))に送られる。さらに、好ましくは、凝縮の第2の段階(凝縮器の吐出側)でさらなる凝縮物II(例えば23(d))が得られ、これが、水相WP-2(例えば(24b))または水相WP-2の一部(例えば(26b))の抽出(例えば(P))で抽出剤として使用される。
さらなる一実施形態では、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2の一部(例えば26b))は、抽出(例えば(P))に供され、その際、水相WP-3(例えば(28b))および有機相OP-3(例えば(28a))が得られ、水相WP-3は、さらなる蒸留ステップK5に供され、この蒸留ステップK5では、メタクリロニトリルを含む頂部フラクションが得られ、これは本方法から排出され、また蒸留ステップK5では、水を含む底部フラクションが得られ、これは完全にまたは部分的に抽出(例えば(P))に返送され、有機相OP-3は、完全にまたは部分的に第3の反応段階に返送される。典型的には、蒸留ステップK5で得られた水性底部フラクションは、メタクリロニトリルを実質的に含まない。典型的には、さらなる蒸留ステップK5により、排出された廃水流(例えば28b)を精製し、廃物流の廃棄を簡略化することができる。
変形例B
本発明の好ましい一実施形態(変形例Bともいう)では、第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップは、
(i)第3の反応段階で得られた第3の反応混合物を、まず第1の蒸留ステップK1(粗製物塔)(例えば(F))で蒸留して、メタクリロニトリルとアセトンとを含む第1の含水異相共沸混合物(例えば(14b))を頂部フラクションとして得る;
(ii)気化物質流としての第1の含水異相共沸混合物をさらなる蒸留ステップK4(粗製物ストリッパー、例えば(I))に送り、このさらなる蒸留ステップKで、頂部フラクション(例えば(19a))としてのメタクリロニトリルとアセトンとを含むさらなる含水異相共沸混合物と、アルキルメタクリレートを含む底部フラクション(例えば(19b))とを得る、
(iii)蒸留ステップK4で得られた頂部フラクション(例えば(19a))を、任意でスクラビングステップ(例えば(J))の後に、ガス状流(例えば(21a))の形態で完全にまたは部分的に本方法から排出する;
(iv)蒸留ステップK4で得られた底部フラクション(例えば(19b))を、相分離ステップ(相分離器II、例えば(K))で、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2(例えば(20b))と、有機相OP-2(例えば(20a))とに分離し、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2を、完全にまたは部分的に第3の反応段階に返送する、
(v)有機相OP-2を、完全にまたは部分的に第2の蒸留ステップK2(共沸塔、例えば(L))に送り、この第2の蒸留ステップK2で、頂部フラクションとしてメタクリロニトリルとアセトンとを含む第2の含水異相共沸混合物が得られ、これを(例えば(M)で)完全にまたは部分的に凝縮させ、(iv)による相分離ステップ(相分離器II、例えばK)に送る(例えば(23c))
ことを含む。
典型的には、蒸留ステップK4(粗製物ストリッパー、例えば(I))において、頂部フラクション(例えば(19a))として、メタノールとアセトンとメタクリル酸エステルと水とを含む低沸点混合物が得られ、底部フラクション(19b)として、アルキルメタクリレートと水とを含む共沸混合物が得られる。
好ましい一実施形態(変形例B)では、還流は、蒸留ステップK4(粗製物ストリッパー)(例えば(I))において部分凝縮器により生成され、この部分凝縮器は、頂部フラクション(例えば(19a))が気化物質の形態で塔K4から排出され、アルキルメタクリレートを含む液体凝縮物が還流として塔に返送されるように設定されている。蒸留塔K4の還流の一部は、好ましくは液体の側流(例えば(19c))の形態で排出され、還流として蒸留ステップK1(粗製物塔、例えば(F))に送られる。
典型的には、蒸留ステップK4(粗製物ストリッパー、例えば(I))の底部フラクション(例えば(19b))は、アルキルメタクリレートと水と少量の低沸点物質(例えば、メタノール、アセトン)と高沸点物質(例えば、ヒドロキシイソ酪酸エステル)とを含む共沸混合物である。
好ましくは、蒸留ステップK4で得られた底部フラクションは冷却され、相分離器II(例えば(K))において、好ましくはさらなる還流(例えば(23c))と共に、有機相OP-2(例えば(20a))と水相WP-2(例えば(20b))とに分離される。典型的には、水相WP-2は、水、アルコール、アセトンおよびアルキルメタクリレートを含む。好ましくは、水相WP-2(例えば(20b))を、新鮮水、例えば完全脱塩水と混合し(例えば(16b))、合流された還流(例えば(20c))の形態でエステル化(例えば(E))に供給することができる。典型的には、これにより、エステル化の水の必要量を満たすことができ、かつ反応物を回収することができる。
好ましくは、蒸留ステップK4で得られた頂部フラクション(例えば(19a))は、気化物質流としてオフガススクラビング塔(例えば(J))に送られ、そこでスクラビング媒体としての新鮮なアルコール(例えば(10b))、例えばメタノールでスクラビングされる。好ましくは、スクラビングされたオフガス流(例えば(21a))は、完全にまたは部分的に本方法から排出される。好ましくは、メタノールとアルキルメタクリレートとを含む有機流(例えば(21b))がオフガススクラビング塔(例えば(J))の底部で得られ、これはエステル化(E)に返送される。ここで、この有機還流を、異なるエステル化反応器に分割することができる。
さらなるステップ
好ましい一実施形態では、本発明による方法は、硫酸の再生を含み、第3の反応段階で得られた第3の反応混合物の一部と、少なくとも1つの水性または有機廃物流とを熱的な再生ステップに供給し、ここで、この少なくとも1つの水性または有機廃物流は、メタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物の排出により生じ、硫酸と硫酸水素アンモニウムとスルホン化アセトン誘導体とを含むものとし、この熱的な再生ステップで硫酸が得られ、この硫酸を第1の反応段階に返送する。本方法は、気相で900℃を上回る温度で進行し、硫酸水素塩の熱分解を含み、この硫酸水素塩は、この場合、窒素に酸化される。
好ましい一実施形態では、本発明による方法は、硫酸アンモニウムの取得を含み、第3の反応段階で得られた第3の反応混合物の一部と、少なくとも1つの水性または有機廃物流とを熱的な再生ステップに供給し、ここで、この少なくとも1つの水性または有機廃物流は、メタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物の排出により生じ、硫酸と硫酸水素アンモニウムとスルホン化アセトン誘導体とを含むものとし、この熱的な再生ステップで結晶化により硫酸アンモニウムが得られ、この硫酸アンモニウムを副産物として分離除去する。この場合、典型的には中和が必要となり、これは、水性アンモニアやアンモニア自体を添加することにより行われる。均一系触媒(例えば硫酸銅)の存在下でのいわゆる湿式酸化による廃酸の後処理は、典型的には加工およびプロセス処理のためのさらなる方法である。
好ましくは、エステル化の反応器IIIから排出される、実質的に希硫酸からなる廃物流(例えば(11))、および/または本方法の1つ以上の水性廃物流(例えば(28b)または(26a))は、硫酸再生プロセスまたは硫酸アンモニウム取得プロセスに供給される。好ましくは、図1~図3による廃硫酸(27)は、硫酸再生プロセスまたは硫酸アンモニウム取得プロセスに供給される。
硫酸再生プロセスおよび廃硫酸からの硫酸アンモニウム取得プロセスは、当業者に知られており、例えば、国際公開第02/23088号および国際公開第02/23089号に記載されている。ACHスルホ法によるアルキルメタクリレートの製造方法への硫酸再生プロセスの導入は、例えば、独国特許出願公開第102006059513号明細書または独国特許出願公開第102006058250号明細書に記載されている。
さらに、アミド化および転化の反応段階で生じるオフガスも同様に、熱による硫酸再生ステップに供給することが好ましい。
本発明による方法の好ましい実施形態のフローチャートを示す図である。 本発明による方法の第1の好ましい実施形態(変形例A)の概略的なフローチャートを示す図である。 本発明による方法の第2の好ましい実施形態(変形例B)の概略的なフローチャートを示す図である。 メタンおよびアンモニアならびにアセトンから出発してメタクリル酸およびメチルメタクリレートを形成する反応ネットワークを示す図である。
図1は、本発明による方法の好ましい実施形態のフローチャートを示す。図1に、アルキルメタクリレート、特にメチルメタクリレート(MMA)の連続的な製造および精製のためのプラント複合体の好ましい要素を示す。図示のプラント複合体は、この複合体の要素として、通常は流体連通によって互いに接続された各種プラントを備える。このプラント複合体には、アミド化(A,B)および転化(C,D)、次いでエステル化(E)、次いで反応生成物の後処理(F,G,H,I,J,K)、さらに次いで精密精製(L,M,N,O)の方法ステップからなるメタクリル酸アミドあるいはその硫酸溶液の製造が含まれる。実線は、好ましくは、変形例Aによるプロセスの物質流経路を示し、破線は、好ましくは、変形例Bによる代替的方法の物質流経路を示す。両変形例の装置および物質流の組み合わせも同様に可能である。
図2は、本発明による方法の第1の好ましい実施形態(変形例A)の概略的なフローチャートを示す。
図3は、本発明による方法の第2の好ましい実施形態(変形例B)の概略的なフローチャートを示す。
図1~図3において、参照符号は、以下の意味を有する:
装置
(A)アミド化反応器 段階1
(B)アミド化反応器 段階2
(C)加熱装置
(D)ガス分離器/中間容器
(E)エステル化反応器/エステル化反応器カスケード
(F)粗製物塔(塔K1)
(G)相分離器I
(H)スクラビング塔(抽出I)
(I)粗製物ストリッパー塔(塔K4)
(J)オフガススクラビング塔
(K)相分離器 粗製MMA
(L)共沸塔(塔K2)
(M)凝縮器/真空システム
(N)相分離器II
(O)純粋物塔(塔K3)
(P)抽出塔II(ポンプ搬送凝縮物の抽出)
物質流
(1a)アセトンシアノヒドリンフィード 段階1
(1b)アセトンシアノヒドリンフィード 段階2
(2)硫酸フィード
(3)アミド混合物排出 段階1
(4a)オフガスアミド化反応器 段階1
(4b)オフガスアミド化反応器 段階2
(5a)任意のオフガスアミド化反応器 段階1および段階2
(5b)オフガスアミド化反応器 段階1および段階2
(6)アミド混合物排出 段階2
(7)転化されたアミド混合物
(8)脱気されたアミド混合物
(9a)エステル化に送られるガス分離器のオフガス
(9b)本方法から排出された任意のオフガス
(10a)アルコールフィード(MMAの場合、メタノール)
(10b)オフガススクラビング塔のアルコールフィード
(11)エステル化で得られた廃硫酸
(12)エステル化で得られた気化物質流
(13)粗製物塔の液体還流
(14a)粗製物塔の留出液流
(14b)粗製物塔の気化物質流
(15a)相分離器Iの有機相(OP-1)
(15b)相分離器Iの水相(WP-1)
(16a)抽出の完全脱塩水フィード
(16b)完全脱塩水フィード
(16c)相分離器II(N)の完全脱塩水フィード
(16d)生蒸気
(17a)スクラビングされた有機相(OP-1)
(17b)抽出の水相
(18)合流された水相
(19a)粗製物ストリッパー塔の気化物質流
(19b)粗製物ストリッパー塔の底部流
(19c)粗製物ストリッパー塔の有機側流/粗製物塔の還流
(20a)有機相分離I(OP-1)
(20b)水相分離I(WP-1)
(20c)合流された還流/生成物水
(21a)オフガススクラビング塔で得られたオフガス
(21b)オフガススクラビング塔の底部流
(22a)共沸塔の気化物質
(22b)共沸塔の底部生成物/アルキルメタクリレート粗生成物
(23a)相分離器IIに送られる凝縮物I
(23b)共沸塔のオフガス/真空システム
(23c)凝縮物循環流
(23d)凝縮物II、真空ポンプ搬送凝縮物
(23e)凝縮システム/真空システムのオフガス/不活性部分
(24a)相分離器IIの有機相(OP-2)
(24b)相分離器IIの水相(WP-2)
(25a)純粋物塔の頂部生成物/アルキルメタクリレート純生成物
(25b)純粋物塔の底部生成物
(26a)相分離器IIで得られた水相の排出物
(26b)ポンプ搬送凝縮物の抽出に送られる水相
(26c)エステル化に送られる水相(再循環)
(27)廃硫酸
(28a)ポンプ搬送凝縮物の抽出の有機相(OP-3)
(28b)ポンプ搬送凝縮物の抽出の水相(WP-3)/廃硫酸に送られる抽残液
(29)メタノール/メチルメタクリレート混合物
(30)真空ポンプ搬送凝縮物
図4は、メタンおよびアンモニアならびにアセトンから出発してメタクリル酸および/またはメチルメタクリレートを形成する反応ネットワークを示す。メタン(CH)およびアンモニア(NH)から出発して、接触脱水素によるBMA法(メタンおよびアンモニアからのシアン化水素)によりシアン化水素を製造することができる(CH+NH→HCN+3H)(変形例1)。また、メタンおよびアンモニアから出発してアンドルソフ法により酸素の添加下にシアン化水素を製造することもできる(CH+NH+1.5O→HCN+3HO)(変形例2)。次のステップでは、アセトンおよびシアン化水素から出発して、塩基性触媒(例えば、ジエチルアミンEtNHまたはさらにはアルカリ金属水酸化物)の添加によりアセトンシアノヒドリン(ACH)が製造される。その後、アセトンシアノヒドリンのヒドロキシ基が硫酸でエステル化されることで、最初にスルホキシイソブチロニトリル(SIBN)が得られる。スルホキシイソブチロニトリル(SIBN)のニトリル基を、次のステップで硫酸および水の作用下で鹸化させることができ、それによりスルホキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩(SIBA・HSO)が得られる。副反応として、SIBNからの硫酸の脱離下にメタクリロニトリル(MAN)が生じ得る。スルホキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩(SIBA・HSO)をさらに部分的に加水分解することで、α-ヒドロキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩(α-ヒドロキシイソブチルアミド硫酸水素塩、HIBA・HSO)を得ることができる。同様に、逆の反応も可能であり、硫酸エステルSIBA・HSOが得られる。副産物として、HIBA・HSOのさらなる加水分解により、α-ヒドロキシイソ酪酸(HIBS)が形成されることがある。SIBA・HSOから出発して、硫酸の脱離下にメタクリルアミド硫酸水素塩(MASA・HSO)が形成される(転化)。同様に、HIBAまたはHIBSからMASまたはMASAへのゆっくりとした反応が、NHHSOまたは水の脱離下での脱離反応として進行することも可能である。その後、メタクリルアミド硫酸水素塩(MASA・HSO)を加水分解によりメタクリル酸(MAS)に、またはメタノール(MeOH)とのエステル化によりメチルメタクリレート(MMA)に変換させることができる。エステル化にα-ヒドロキシイソ酪酸(HIBS)が導入されると、これをα-ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル(HIBSM)に変換させることができる。
図4における略号は、以下の意味を有する:
ACH アセトンシアノヒドリン;
SIBN α-スルホキシイソ酪酸ニトリル、
スルホキシイソブチロニトリルとも称される;
SIBA α-スルホキシイソ酪酸アミド、
スルホキシイソ酪酸アミドまたはスルホキシイソブチルアミドとも称される;
SIBA・HSO α-スルホキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩、
スルホキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩とも称される;
MAN メタクリロニトリル;
HIBA α-ヒドロキシイソ酪酸アミド;α-ヒドロキシイソブチルアミド;
HIBA・HSO α-ヒドロキシイソ酪酸アミド硫酸水素塩、α-ヒドロキシイソブチルアミド硫酸水素塩;
MASA メタクリル酸アミド/メタクリルアミド;
MASA・HSO メタクリル酸アミド硫酸水素塩;
MAS メタクリル酸;
MMA メチルメタクリレート;
HIBS α-ヒドロキシイソ酪酸;
HIBSM α-ヒドロキシイソ酪酸メチルエステル。
図2による本方法の実施形態(変形例A)
図2のフローチャートによるアルキルメタクリレート、特にMMAの製造に関する方法の可能な一実施形態(変形例A)につき、以下に説明する:
ループ型反応器として形成されているアミド化反応器(A)および(B)において、ACHと硫酸との反応による、SIBAとHIBAとMASAとを(主にそれぞれ硫酸水素塩の形態で)含む硫酸溶液の形成が行われる。反応条件によっては、特に反応器(A)および(B)において、副産物としてMANがACHから水の放出下に生じることがある。ループ型反応器(A)および(B)はそれぞれ、循環ポンプ、スタティックミキサー、熱交換器およびガス分離器の要素を備える。
段階1のアミド化反応器(A)は、ACHフィード(1a)および硫酸フィード(2)を備える。ACHフィード(1a)は、循環ポンプの吐出側でスタティックミキサーの上流でループ型反応器(A)の循環部に流入する。硫酸フィード(2)は、ACHフィード(1a)の上流で循環ポンプの吸引側でループ型反応器(A)の循環部に流入し、それにより、好ましくはガス含有反応混合物のポンプ搬送性を向上させることができる。
ループ型反応器(A)内の反応混合物は、70~130℃の温度範囲で、5~110の範囲の循環比(供給体積流量に対する循環体積流量の比)でポンプにより循環搬送され、二次水冷式多管式熱交換器によって調温される。特に、アセトンシアノヒドリンと硫酸との高発熱反応の反応熱が排出される。アミド化反応器(A)の反応器循環部における静的滞留時間は、5~35分の範囲である。アミド化反応器(A)は、常圧で運転される。
この混合および調温された反応混合物は、次いで、ガス分離器に導入される。ここで、アミド循環流からガス状の二次成分(一酸化炭素や他の不活性物質/低沸点物質など)が狙いどおりに分離され、オフガス流(4a)が排出される。
ポンプにより循環搬送された反応混合物の部分流(3)は、排出ポンプにより、重量測定により、または反応器循環ポンプ自体の上流圧力で第2のループ型反応器(B)に供給され、必要に応じて追加の熱交換器により加熱される。反応混合物(3)のさらなる反応のために、新鮮なアセトンシアノヒドリンが、ACHフィード(1b)を通じてアミド化反応器(B)に供給される。ループ型反応器(B)は、温度、圧力、滞留時間および材料流経路に関して、ループ型反応器(A)と同様に構成されている。
ガス状の副産物は、オフガス流(4b)の形態で反応器(B)から除去される。
得られたオフガス流(4a,4b)は、接続によって合流して(5)となり、これを利用するために後続のガス分離器/中間容器(D)に供給される。また、反応オフガス(4a,4b)を、まとめられたオフガス流(5a)として本方法から除去することもできる。
得られた液体反応混合物(6)は、MASAへの最大の変換のために転化(C)に供される。転化は、典型的には1つ以上の熱交換器で構成され、転化されたアミド混合物(7)における流出するアミド化生成物流中のMASAの濃度は、流入する反応混合物(6)の加熱および後続の滞留を狙いどおりに行うことによって最大化される。
転化されたアミド混合物(7)は、例えば重量測定によりガス分離器/中間容器(D)に供給される。ここで、生じるオフガスは、粘性で高温の転化されたアミド混合物(7)から分離除去される。放出されたオフガスは主に、分解反応によって生じる一酸化炭素を含み、さらに、メタクリル酸アミドを含む反応混合物の微細な液滴を含む。そのため、ガス分離器/中間容器(D)からの反応物含有オフガス全体(9a)が、エステル化(E)にさらに送られる。次いで、脱気されたアミド混合物(8)は、ポンプ搬送または重量測定によりエステル化(E)に供給される。
アミド化段階のオフガス流(5b)は、ガス側がガス分離容器(D)に接続されていてよく、方法ステップ(A,B,C,D)のオフガス全体(9a)は、エステル化(E)の蒸気チャンバに接続されていてよい。また、(D)で得られたオフガスを、少なくとも部分的にオフガス流(9b)として本方法から除去することもできる。
エステル化(E)において、メタクリル酸アミドを反応させて対応するエステルを生成するのに必要な反応物は、対応するアルコール(10a,10b)および完全脱塩水(16a,16b,16c)の形態で直接的または間接的に供給される。ここで、脱気されたアミド混合物(8)は、供給管または浸漬管を通じて、ポンプ搬送または重量測定により反応(E)に供給される。ここで、アルコール(10a)(例えば、MMAの製造ではメタノール)の直接的な供給は、大抵は、エステル化(E)へのフィードにおいて浸漬供給管またはスタティックミキサーにより行われる。
さらに、図2に示すように、熱による後処理(F,G,H,L,M,N,O,P)で得られた種々の循環流が、エステル化反応器(E)に接続される。
エステル化は、典型的には1つ以上のエステル化反応器(E)で行われ、これらのエステル化反応器(E)は、撹拌機またはポンプによって混合され、かつ重量測定されるように互いに接続されている。混合のもう1つの形態は、蒸発可能な反応物の供給によって生じる対流によるものである。エステル化反応器には、エステル化反応器への熱の投入を保証するために熱交換器が装備されていることが多い。例えば、熱の投入は、ジャケット加熱、強制循環式蒸発器、または蒸気の直接的な注入によって実現される。
エステル化(E)で生じる反応混合物(粗製エステル)は、連続的な気化物質流(12)として蒸留によりエステル化反応器(E)から導出される。ここで、気化物質流(12)は、複数の反応器(E)から合流されていてもよい。エステル化反応器に残った酸混合物(11)は、蒸留によって残留生成物を集中的に除去した後にエステル化から排出される。
エステル化(12)の気化物質流は、粗製物塔(F)で向流蒸留に供される。粗製物塔(F)の還流として、気化物質流を塔(F)の頂部で凝縮させて、部分的に返送することができる。凝縮の下流で得られたオフガス(30)は、特に物質流(9a)の供給により発生するが、このオフガス(30)を本方法から除去し、例えば燃焼に供給することができる。
MASを含む底部生成物(13)は、エステル化反応器(E)に連続的に返送される。底部生成物(13)をエステル化(E)の複数のエステル化槽に分配することが可能である。
塔(F)の頂部の気化物質流(14a)は、アルキルメタクリレートの主要な部分と水とアルコールとアセトンとMANとを含む。メタクリル酸は、水と低沸点共沸混合物を形成し、また同様に気化物質流(12)にも含まれている。
塔(F)の頂部の凝縮された水性気化物質流(14a)は、相分離器Iでの相分離(G)に供され、その際、アルキルメタクリレートとメタノールとアセトンとMANとを含む有機相(15a)と水相(15b)とが得られる。
有機相(15a)は、特に含まれるメタノールの大部分をエステル化(E)に返送するために、液/液抽出(H)に供される。この目的のために、有機相(15a)は、撹拌抽出塔(H)において完全脱塩水(16a)と向流で抽出される。得られた水相(17b)は、相分離器(G)の水相(15b)と合流されることで物質流(18)となり、これがエステル化(E)に返送される。抽出ステップ(H)で得られた有機相(17a)は、アルキルメタクリレートの主要な部分と、かなりの割合の低沸点物質および高沸点物質とを含み、この有機相(17a)は、熱によるさらなる後処理(L,M,N,O)に供給される。
抽出ステップ(H)で得られた有機相(17a)は、さらなるステップで、負圧での共沸蒸留(L)に供される。共沸塔はストリッピング塔として実現されており、その際、有機フィード(17a)は、予熱された状態で塔(L)の頂部に送られ、この塔(L)は、蒸発器によって低圧蒸気で間接的に加熱される。塔(L)の頂部では、MMAと水とメタノールとアセトンとMANとさらなる低沸点物質とを含む異相共沸混合物(22a)が得られる。底部生成物(22b)として、精製されたアルキルメタクリレート(粗製アルキルメタクリレート)が分離される。気化物質流(22a)は、蒸気状で塔(L)から出て、真空中で後続の凝縮器(M)で段階的に凝縮される。
(M)における主要な凝縮は、真空ユニットの吸引側で進行し、その際に液体凝縮物(23a)が生じ、この液体凝縮物(23a)は、相分離器II(N)において相分離に供される。凝縮ユニット(M)の吐出側では、さらなる液体物質流(23d、真空ポンプ搬送凝縮物)が生成され、これは抽出ステップ(P)において抽出剤として利用される。吐出側での凝縮時に生じる不活性ガスを含むオフガス(23e)は、本方法から除去される。
(M)で得られた液体凝縮物(23a)は、完全脱塩水(16c)を加えて相分離(N)に供給され、有機相(24a)と水相(24b)とに分離される。有機相(24a)は、ある程度の割合のアルキルメタクリレートを含み、塔(L)の頂部を通じて蒸留ステップ(L)に返送される。
(N)で得られた水相(24b)は、添加された新鮮水(16c)に応じてメタノール、アセトンおよびMANなどの水溶性成分が飽和しており、副産物の富化を避けるために2つの物質流に分割される。一方の部分流(26c)は、循環流の形態でエステル化反応器(E)に返送される。一方の部分流(26b)は、抽出ステップ(P)の後に(28b)を通じて本方法から排出される。
物質流(26b,26c)に代えて、物質流(24b)を完全に物質流(26a)の形態で廃棄し、本方法から排出することも同様に可能である。アルキルメタクリレートを回収する目的で抽出塔(P)(PK抽出塔)に供給される物質流(26b)は、富化された二次成分の排出先としての役割を果たす。抽出ステップ(P)では、凝縮器(M)で得られた凝縮物(23d)が抽出剤として使用され、その際、物質流(23d)と(26b)とが向流で導かれる。抽出ステップ(P)では、水相(28b)および有機相(28a)が得られ、ここで、水相(28b)は、廃酸(11)と混合され、廃硫酸(27)として本方法から完全に除去され、有機相(28a)は、アルキルメタクリレートを含む有価物流としてエステル化(E)に供給される。
図3による本方法の実施形態(変形例B)
図3のフローチャートによるアルキルメタクリレート、特にMMAの製造に関する方法の可能な実施形態(変形例B)につき、以下に説明する。
(A)および(B)のアミド化、(C)の転化、(D)のガス分離および(E)のエステル化は、図2による実施形態(変形例A)で説明したとおりに実施される。さらに、図3に示すように、熱による後処理(F,I,J,K,L,M,O)で得られた各種循環流が、エステル化反応器(E)に接続される。
変形例Bによる実施形態(図3)では、粗製物塔(F)で生じる気化物質流は、気化物質流(14b)として、さらなる蒸留ステップ(I)(粗製物ストリッパー塔)に未凝縮の状態で供給される。粗製物ストリッパー塔(I)では、メタノールとアセトンとメタクリロニトリルとメタクリル酸エステルと水とを含む低沸点混合物が頂部フラクション(19a)として得られ、エステル/水の共沸粗製混合物が底部フラクション(19b)として得られる。塔(I)の還流は、メタノールとアセトンとアルキルメタクリレートと水との低沸点混合物(19a)が気化物質の形態で排出され、アルキルメタクリレートに富む混合物を塔に返送できるように設定された部分凝縮器によって生成される。
粗製物ストリッパー塔(I)において流出する液体の一部は、塔(I)の上部領域で液体の側流(19c)の形態で引き抜かれ、粗製物塔(F)への還流として使用される。
粗製物ストリッパー塔(I)の底部で引き抜かれた、メタクリル酸エステルと水と少量の低沸点物質(例えば、メタノール、アセトン)と高沸点物質(例えば、ヒドロキシイソ酪酸エステル)とを含む共沸混合物(19b)は、冷却されて相分離器II(K)に供給される。底部生成物(19b)は、相分離器(K)において有機相(20a)と水相(20b)とに分離される。さらに、凝縮器(M)からおよび共沸塔(L)の頂部生成物から生じる還流(23c)は、相分離器(K)において有機相(20a)と水相(20b)とに分離される。
メタノールとアセトンとメタクリル酸エステルとが飽和した水を含む相分離(K)の水相(20b)は、完全脱塩水(16b)と混合され、合流された還流(20c)の形態でエステル化(E)に供給される。還流(20c)は特に、エステル化の水の必要量を満たし、かつ反応物を回収するために使用することができる。
粗製物ストリッパー塔(I)から出る気化物質流(19a)は、スクラビングステップ(J)(オフガススクラビング塔)に送られ、スクラビング媒体としての新鮮なアルコール(10b)、例えばメタノールでスクラビングされ、それによって、ガス流からアルキルメタクリレートが十分に除去される。オフガススクラビング塔(J)は、向流で運転される。凝縮器(M)で生じたアルキルメタクリレート含有排気(23b)も、アルキルメタクリレートを回収するためにオフガススクラビング塔(J)へ供給される。
オフガススクラビング塔(J)の底部では、メタノールとアルキルメタクリレートとを含む有機流(21b)が得られ、これはエステル化(E)に返送される。この場合、有機還流(21b)を、異なるエステル化反応器に分配することができる。
オフガススクラビング塔(J)の頂部では、MANとジメチルエーテルとメチルホルメートと飽和濃度のメタノールおよびアセトンと少量のアルキルメタクリレートとを含むオフガス流(21a)が得られる。気化物質(19a)に対するメタノール(10b)の比率および(J)の頂部温度を調整することにより、オフガス流(21a)の組成を変化させることができる。メタノールとアセトンとMANとを含むオフガス流(19a)は、完全に本方法から排出される。
相分離(K)の有機相(20a)は、共沸塔(L)に送られる。有機相(20a)は、主要な割合のアルキルメタクリレートと、かなりの割合の低沸点物質および高沸点物質とを含み、熱によるさらなる後処理(L,M,N,O)に供給される。
熱による後処理(L,M,N,O)は、実質的に変形例Aによる実施形態(図2)において上述したとおりに行われる。変形例Aとは異なり、凝縮器(M)で生じる物質流(23b)および(23c)は、方法ステップ(J)および(K)に返送される。共沸塔(L)の頂部フラクションから凝縮器(M)を通じて得られ、典型的には2つの液相を有する、完全に凝縮された低沸点の共沸混合物(23c)は、上流ステップの相分離(K)に送られる。物質流(23c)は、変形例Aの物質流(23a)および(23d)から構成される。凝縮/真空ユニット(M)で生じるオフガス(23b)は、スクラビング塔(J)に送られ、その際、特にアルキルメタクリレートなどの有価物が回収される。
本発明を、以下の実施例によりさらに説明する。ここで、例A1(比較例)は、本発明によらない硫酸濃度(100.3重量%)を用い、かつ相分離器IIで得られたメタクリロニトリルを含む水相をわずかにしか排出せず、それに伴って、MMAの総収率が低く、得られるMMA生成物において副産物であるMANの含有量が多いメチルメタクリレートの製造方法の運転について、具体的に説明するものである。
本発明による例A2は、高いMMA総収率の達成下での、特許請求の範囲に記載の特徴を有するメチルメタクリレートの製造であって、アミド化および転化におけるMAN形成の低減、ならびに制御された排出による後処理部での定常的なMAN濃度の緩和を特徴とし、それに伴って、目的生成物であるMMAにおけるMANの含有量を少なくする製造について説明するものである。
例A3(比較例)は、比較例1に類似しているが、さらに、排出されたMAN含有水性流の抽出を行わない運転を示すものであり、これは、さらに高度のMMA損失を招くものである。
さらに、例B1(本発明による)は、高いMMA総収率の達成下での、特許請求の範囲に記載の特徴を有するメチルメタクリレートの製造であって、アミド化および転化におけるMAN形成の低減、ならびに蒸留のみによる(気化物質としての)副産物の分離除去を特徴とする製造について説明するものである。
実施例
図2による例A1、A2およびA3(変形例A)
アミド化/転化におけるアセトンシアノヒドリンと硫酸との反応((A),(B),(C),(D))と、後続のメタノールによるエステル化(E)と、メチルメタクリレート生成物の蒸留および抽出による後処理((F),(G),(H),(L),(O),(M),(N),(P))とを含むメチルメタクリレートの製造を、上述のとおり図2による実施形態(変形例A)に基づいて実施した。
(28b)、排気流(30)および(23e)、ならびにMMA生成物(25a)を通じたメタクリロニトリル(MAN)およびアセトンの排出の物質収支を取り、かつ考察を行った(図2によるフローチャート参照)。
濃度100.3重量%の硫酸(正式には0.3重量%の遊離SO)を用いた比較例(例A1およびA3)、および濃度99.7重量%の硫酸(0.3重量%の水)を用いた本発明による例(例A2)について、以下に説明する。
ACHフィード流(1a)および(1b)の含水量を、HPLCによって、あるいは(熱伝導度検出器を用いた)ガスクロマトグラフィーによる特に水に対して定量的かつ選択的な分析によって求められるACH含有量との差から算出する。
硫酸フィード(2)の含水量を、密度および音速の測定により求められる硫酸含有量との差から算出する。
図2による方法(変形例A)の全般的な実施について以下に説明し、相違点および結果を表1~表3に示す。
全般的な方法実施
1a. 反応段階(A),(B),(C),(D)および(E)
5000kg/hのアセトンシアノヒドリンであって、98.8重量%のアセトンシアノヒドリン;0.25重量%のアセトン;0.65重量%の水および遊離硫酸の組成を有するものを75/25の重量比で分割して、3750kg/hの流れ(1a)および1250kg/hの流れ(1b)を得た。次に、フィード流(1a)を第1のアミド化反応器(A)に供給した。
ループ型反応器(A)は、循環ポンプ、スタティックミキサー、熱交換器、冷却器およびガス分離器の要素を配管で接続して構成されたものであった。反応器(A)において、循環体積流量を350m/hに設定して、効率的な熱伝達、ならびに効率的な混合およびガス分離が可能となるようにした。反応器循環部全体を、約95℃、990mbar(a)のわずかな負圧で運転した。
フィード流(1a)を、約20℃の温度で、記載された反応器循環部(A)へ連続的に供給し、混ぜ入れた。
表1による濃度を有する、反応器(A)および(B)における反応混合物の最適な反応に必要な量の硫酸(2)を、負荷に応じて、ACH(1a+1b)の総量に対して示された重量比で反応器(A)に供給した。これにより、反応器(A)において硫酸の過剰(硫酸/ACH比=2.6kg/kg)を実現した。
その後、スルホキシイソ酪酸アミドとメタクリル酸アミドと硫酸とを含む得られた撹拌混合物(3)を第2のアミド化反応器(B)に移送し、一方で、反応器(A)で分離除去されたオフガス(4a)を、転化(D)の方向に送った。
反応器(B)は、反応器(A)と同様に構成されており、同一の物理的条件およびパラメータで運転した。副反応によって形成されたオフガス(4b)を、ガス分離器により反応混合物から分離した。次いで、アミド化のオフガス(4a)および(4b)を合流させて、オフガス流(5b)の形態でさらなるガス分離器/中間容器(D)に供給し、その際、このオフガス流(5b)の量は、約60m/hであった。次いで、ACH流(1b)を第2の反応器(B)の反応混合物に供給した。反応混合物中で生じる重量比HSO/ACHを、表1に示す。
アミド化反応器(A,B)の流出部で、スルホキシイソ酪酸アミド(SIBA)とメタクリル酸アミド(MASA)とヒドロキシイソ酪酸アミド(HIBA)とを硫酸反応マトリックスに溶解した状態で含む95℃の高温の反応混合物(6)を得た。次いで、この混合物を転化ステップ(C)に供した。このステップでは、反応混合物を短時間で155℃に加熱し、その後、滞留時間区間で熱変換させた。
転化(C)の後、メタクリル酸アミドに富む反応混合物(7)を、重量測定によりさらなるガス分離器あるいは中間容器(D)に供給し、このガス分離器あるいは中間容器(D)を、約950mbaraのわずかな負圧および155℃の温度で運転した。
ガス分離器/中間容器(D)において、反応混合物に含まれるガスを分離除去してオフガス(5b)と合流させた。オフガス全体(9a)が得られ、このガスをガス状でエステル化(E)に供給した。副産物であるアセトンおよびMANに関する(9a)の量および組成を、表1にまとめた。
さらに、ガス分離(D)後に物質流(8)が得られ、その質量流量および組成を表1に示す。エステル化に送られた反応可能な反応物(MASA+MAS)の得られた量、およびACHに対するアミド化収率(MASA+MAS)を表1に示す。
メタクリル酸アミド含有物質流(8)には、前述の主成分に加え、問題となる副産物として、表1に示す量のアセトンおよびMANが含まれていた。(8)およびガス状のフィード流(9a)を通じてエステル化(E)に供給されたアセトンおよびMANの物質流全体を表1に示す。
150℃を超える高温の液体反応混合物(8)をエステル化(E)に供給し、その際、ほぼ理想的な混合が行われるジャケット加熱式の3つの反応容器からなる反応器カスケードへの供給を、浸漬管による自由排出によって行った。方法ステップ(E)において、物質流(8)を、合計1540kg/hのメタノール(10a)、590kg/hのMMA/MeOH混合物(29)、500kg/hの生蒸気(16d)および1700kg/hの水(フィード流(16a)および(16c))と、約120±5℃で、50~150mbargのわずかな正圧で反応させた。定常状態の物質混合物(29)は、平均して25重量%のメチルメタクリレートと75重量%のメタノールおよび水とからなっており、メタノールをエステル化反応の反応物として利用し、メチルメタクリレートを生成物(E)として利用するために、この物質混合物(29)を供給した。
反応物流(10a),(16a),(16c);(16d),(29)とエステル化(E)における循環流(13),(18),(25b),(26c),(28a)とを適切に接続することにより、各エステル化槽において、メチルメタクリレートに変換可能な物質であるアクリル酸アミドおよびメタクリル酸に対するメタノールおよび水の局所的な化学量論的過剰を達成した。
エステル化の副反応で、MANの供給量の一部を加水分解によりメタクリル酸アミドに変換させ、それによりプロセスから引き抜いた。MANの供給濃度が高いほど、加水分解の程度も高くなる。このようにして、表1に示す量のMAN(MAN(加水分解))を(E)において加水分解させた。
反応器ユニット(E)の出口では、生蒸気を用いて運転される後蒸発が接続されており、これにより、酸混合物中のモノマーの割合が、表1に従って、<0.1重量%のMMA、<0.1重量%のMAS、<0.1重量%のMASAならびにMANおよびアセトンの含有量にまで減少し、一方で、流出する酸混合物の含水量をほぼ一定に保持した。廃酸(11)には、同様にさらなる難揮発性有機副産物が含まれており、これらを、TOC(total organic carbon、全有機炭素)として溶解した状態で、またある程度はポリマー固体として排出する。エステル化(E)の副反応により、表1に示す量のスルホン化アセトン(スルホアセトン)が、プロセス酸(11)中にTOCの形態で含まれていた。廃酸には主に、NHHSO、HSOおよび水が含まれていた。(11)のTOC含有量は、平均で2~3重量%であった。廃酸(11)の量および組成を、表1にまとめた。
(E)で得られた生成物の連続蒸発のための(E)へのエネルギー投入を、10bargの加熱蒸気により行った。
1b. 予備精製(F),(G),(H)
エステル化反応時に形成された粗生成物、および(29)を通じて導入したメチルメタクリレート(MMA)を、気化物質流(12)の形態でエステル化カスケード(E)から連続的に引き抜いた。この目的のために、エステル化反応器は蒸気側で気化物質管と互いに接続されており、それにより、気化物質流(12)を反応器IIの全体流として得た。反応混合物の蒸気/液体平衡に従って、気化物質流(12)は、表2に示すようなMMAと水とMeOHとMASとアセトンとMANとを含む異相共沸混合物組成物であった。
気化物質流(12)に加えて、アミド化のオフガス流(9a)も粗製物塔(F)の底部に供給した。次に、蒸気状流(12)およびガス流(9a)を塔(F)の底部領域に供給することによって、気化物質流(12)を向流蒸留に供した。塔(F)の頂部では、冷却水および冷水によって運転される凝縮器で完全に凝縮を行った。二相の留出物を合流させ、部分流を還流として粗製物塔(F)に送った。
特に物質流(9a)を供給することにより発生した、凝縮後に得られたオフガス(30)を除去し、燃焼に供給した。MANおよびアセトンを、表2に示す量で、(30)を通じてプロセスから排出した。
還流比に従って、塔(F)の頂部で液体留出物流(14a)が得られ、また液体底部流(13)が得られた。底部流(13)を、エステル化反応に連続的に返送した。異相共沸混合物である留出物流(14a)を、液/液相分離のために相分離器(G)に供給し、その中で2つの生成物流が得られた。MMAと水とメタノールとアセトンとMASとMANと高沸点物質および低沸点物質とを含む有機低沸点相(15a)を、液/液抽出(H)に供した。
高沸点の水相(15b)を、まず水性抽残液相(17b)と合わせて、水とメタノールとMMAとアセトンとMASとMANと高沸点物質および低沸点物質とを含む還流(18)を形成した。物質流(18)を、物質流(13)と同様にエステル化反応(E)に連続的に返送した。(13),(14a),(15a),(15b)および(18)の量および組成を、表2にまとめた。
抽出ステップ(H)では、完全脱塩水(16a)を物質流(15a)に供給して、存在する粗製MMAからさらなる水溶性成分を除去した。この目的のために、完全脱塩水をディスク型抽出塔(H)の頂部で物質流(15a)と向流で連続的に供給して、塔(H)の底部で、水性流出流(17b)および予備精製された粗製MMA(17a)が得られた。粗製MMA流(17a)には、MMAと水とメタノールとアセトンとMASとMANと高沸点物質および低沸点物質とが含まれていた。(17a)および(17b)の量および組成を、表2にまとめた。
1c. 精密精製(L),(O),(M),(N),(P)
次に、物質流(17a)を、蒸留による後処理(L)に供した。高沸点物質および低沸点物質の除去のために、物質流(17a)を、真空(300mbara)で運転される共沸塔(L)の頂部領域に供給し、この共沸塔(L)を加熱蒸気で間接的に加熱した。低沸点物質に富む異相共沸混合物の気化物質流(22a)を、メチルメタクリレートに富む底部流(22b)から分離除去した。気化物質流(22a)には、MMAと水とMANとアセトンとさらなる低沸点物質とが含まれていた。底部流(22b)には、MMAとMASと高沸点物質とMANとアセトンとが含まれていた。量および組成を、表3にまとめた。
気化物質流(22a)を、塔の出口の管側で凝縮/真空ユニット(M)に供給し、この凝縮/真空ユニット(M)では、気化物質流(22a)をまず真空側で主凝縮に供し、次に真空ポンプで残留ガスを圧縮し、圧縮プロセスの吐出側で再び後凝縮させた。
主凝縮後に得られた異相共沸混合物の留出物(23a)を相分離(N)に供してさらに処理し、吐出側で得られたポンプ搬送留出物(23d)をエステル化反応(E)に供給した。ポンプ搬送留出物(23d)には、低沸点物質とMMAとアセトンとメタノールと水とMANとが含まれていた。量および組成は、表3に記載されている。
ガス側で後凝縮の下流で得られたプロセスオフガス(23e)を、プロセスから連続的に排出した。プロセスオフガス(23e)には、低沸点物質や、所与の条件下では化学的に反応しない不活性物質に加えて、MANおよびアセトンが含まれていた。量および組成は、表3に記載されている。
相分離を改善するために、相分離器(N)において、留出物流(23a)に完全脱塩水(16c)を供給して、有機相(24a)および水相(24b)を得た。ここで、低沸点有機相(24a)を還流として塔(L)の頂部に連続的に循環させ、一方で、アセトンとMANとを含む水相(24b)を、次のプロセスステップに供給した。量および組成は、表3に記載されている。
比較例A1では、次に、物質流(24b)を、80/20の固定重量比で物質流(26b)および物質流(26c)として分割した。物質流(24b)の80%を、(26c)としてエステル化反応に直接返送した。物質流(24b)の20%を、MMA回収のための液/液抽出(P)の中間ステップを経て物質流(28b)の形態でプロセスから排出した。このようにして、MANおよびアセトンをプロセスから排出し、それにより、プロセスにおけるそれらの富化を低減、制御および管理した。量および組成は、表3および表4に記載されている。
本発明による例A2では、物質流(24b)を、まず50/50の重量比で物質流(26b)と物質流(26c)とに分割した。物質流(26c)を、エステル化反応(E)に直接返送した。物質流(26b)を、液/液抽出(P)の中間ステップを経て(28b)として部分的にプロセスから排出した。
比較例A3では、物質流(24b)を、80/20の固定重量比で物質流(26a)および物質流(26c)として分割した。物質流(24b)の80%を、(26c)としてエステル化反応に直接返送した。物質流(24b)の20%を、流れ(26a)としてプロセスから直接除去し、MMA回収のための抽出ステップ(P)に供給しなかった。このようにして、MANおよびアセトンをプロセスから排出した。量および組成は、表3に記載されている。
しかしまた、物質流(24b)を、(26b)/(26c)に分割する前に、排出流(26a)の形態でプロセスから完全にまたは部分的に除去することも可能である。この場合には、導入されたMANおよびアセトンが、後述の場合よりもさらにより高い割合でプロセスから除去されることになる。抽出(P)において、有機ポンプ搬送留出物(23d)を抽出剤として用いて水性生成物流(26b)を処理することにより、排出前の物質流(26b)中のMMAの残留含有量を低減させた。この目的のために、物質流(26b)をディスク型抽出塔(P)の頂部で供給し、物質流(23d)を底部で供給した。(P)では、塔(P)の底部での水性抽残液(28b)と、メチルメタクリレートに富む有機抽出物流(28a)とが得られた。抽残液流(28b)には、水とメタノールとアセトンとメチルメタクリレートとMANと低沸点物質および高沸点物質とが含まれていた。その後、抽残液流(28b)を廃酸流(11)と混合し、生じる物質流(27)の形態でプロセスから排出した。(28b)を通じて、MANおよびアセトンをプロセスから排出した。抽出物流(28a)は、メチルメタクリレートとアセトンとメタノールとMANとさらなる低沸点物質および高沸点物質とを含んでおり、これをエステル化(E)の反応ゾーンに連続的に返送した。量および組成は、表3に記載されている。
共沸塔(L)で得られた底部生成物(22b)のさらなる後処理を、例A1、A2およびA3において同様に実施した。
共沸塔(L)で得られた低沸点物質不含の底部生成物(22b)を、さらなる精製のために減圧精留部(O)に供し、この減圧精留部(O)は、180mbar(a)で動作し、濃縮部とストリッピング部とを備えていた。物質流(22b)を純粋物塔(O)の中央に供給し、その際、この物質流(22b)を、確立された平衡に従って、純粋な留出物相(25a)と、高沸点物質に富む底部流(25b)とに分離した。
メチルメタクリレートとメタクリル酸と高沸点物質とを含む底部流(25b)を、エステル化反応ステップ(E)に連続的に返送した。
(O)で得られた気化物質流を、完全に凝縮させた。この際に得られた約2m/hのオフガスを、方法ステップ(M)に供給した。留出物を必要な還流比に従って分割して、純度99.9重量%超のMMA純生成物(25a)を表3に示す量で得た。MMA純生成物(25a)には、アセトンおよびMANが表3に示す量で含まれていた。このMMA生成物流において、MANおよびアセトンをプロセスから除去した。
1d. 方法条件および結果
Figure 2023547391000003
Figure 2023547391000004
Figure 2023547391000005
Figure 2023547391000006
Figure 2023547391000007
Figure 2023547391000008
表1~表3の結果から、濃度99.7重量%の硫酸(水0.3重量%)を用いた本発明による例A2では、濃度100.3重量%の硫酸(遊離SO)を用いた例A1および例A3と比較して、アミド化および転化において得られ(表1の物質流(8)参照)、エステル化に供給されるMANおよびアセトンの割合がより低いことがわかる。
硫酸濃度の低下に加えて、本発明による例A2では、より多くの量の水相が相分離器(N)から排出される(比26c/26bは50:50であり、これに対して比較例A1では80:20である)。
さらに、例A2の本発明による運転様式によって、先行技術による比較例の場合と比較して、MMA純生成物へのMANの混入が著しく少なくなる。例A2の最終MMA生成物(25a)中のMANおよびアセトンの量は、例A1と比較して著しく減少している(表3参照)。
以下の表4には、表3の物質流が、ステップ(L)、(M)および(N)におけるMANの富化に関して、ならびにMANの返送ならびに(M)および(P)によるMANの排出に関して、例A1およびA3(比較例)ならびにA2(本発明による)についてまとめられている。
Figure 2023547391000009
表4の値から、比較例A1では、不要な副産物としてのMANが((28a)を通じて)プロセス(エステル化反応器E)に返送される量が、本発明による例A2よりも多いことや、((28b)を通じて)本方法から排出することのできる不要なMANの量が、本発明による例A2よりも少ないことがわかる。したがって、MAN(排出)に対するMAN(返送)の比は、本発明による例A2では著しく低く、したがって、比較例A1よりも有利である。水相(28b)の排出によるMMAの損失量は、比較例A1およびA3では本発明による比較例A2よりも著しく増加しており、その際、抽出の使用によるMMAの損失量は、比較例A3よりも比較例A1の方が少ない。本発明による例A2では、アセトンおよびMANの富化量がより少ないため、比較例A1およびA3と比較して水相の排出量が多いにもかかわらず、MMAの損失量は最も少ない。
さらに、排出されて任意でさらなる利用へと供給された廃硫酸(11)は、スルホン化アセトンの負荷がより少ないことが実験的に判明した(表1参照)。
図3による例B1(変形例B)
アミド化/転化におけるアセトンシアノヒドリンと硫酸との反応(A,B,C,D)と、後続のメタノールによるエステル化(E)と、メチルメタクリレート生成物の蒸留および抽出による後処理(F,I,J,K,L,O,M)とを含むメチルメタクリレートの製造を、上述のとおりに図3による実施形態(変形例B)により実施した。
オフガス全体(11)、排気流(21a)および(9b)、ならびにMMA生成物(25a)を通じたMANおよびアセトンの排出の物質収支を取り、かつ考察を行った(図3によるフローチャート参照)。
以下に、99.7重量%の範囲の濃度を有する硫酸(水0.3重量%)を用いた本発明による例(例B1)について説明する。本例は、アミド化および転化におけるMAN形成の低減を特徴とする、高いMMA総収率の達成下での、特許請求の範囲に記載の特徴を有するメチルメタクリレートの製造について説明するものである。MMA生成物を蒸留のみによって(抽出を行わずに)後処理してオフガス中のアセトンなどの副産物を除去することによって、例2Aと同様に、適度なMAN含有量で高い総MMA収率を実現することが可能である。
図3による本発明による方法(変形例B)の実施について、以下に説明する。
2a. 反応段階(A),(B),(C),(D)および(E)
アミド化(A)および(B)、転化(C)およびガス分離(D)を、以下に述べる相違点を除いて、上記例1と同様に実施した。
アミド化反応器(A)および(B)のガスチャンバを、約970mbaraで、わずかな負圧で運転した。
中間容器(D)を、100℃の温度で運転した。混合物(7)の冷却を、容器(D)の領域で水冷式熱交換器によって行い、この水冷式熱交換器に、容器(D)に接続されたアミド循環流を通した。
反応物流(10a,10b,16b,16d,29)と循環流(13,20c,21b,25b)とを適切に接続することにより、6つの各エステル化槽において、メタクリル酸アミドおよびメタクリル酸に対するメタノールおよび水の局所的な化学量論的過剰を達成した。
ガス分離器(D)において、アセトンとメタクリル酸アミドとを含むオフガス全体(9b)が得られ、これをプロセスから連続的に除去した。
量および組成を、表5にまとめた。
2b. 予備精製(F),(I),(J)
反応混合物の蒸気/液体平衡に従って、気化物質流(12)を、表6に示すようなMMAと水とMeOHとMASとアセトンとMANとを含む異相共沸混合物組成でエステル化から排出した。
次に、気化物質流(12)を向流蒸留(F)に供し、その際、蒸気状流(12)を塔(F)の底部領域に供給した。蒸留(F)を、100mbar(g)のわずかな正圧で運転した。
気化物質流(12)を塔の頂部で部分的に凝縮させ、塔(I)の液体の有機側流(19c)を、過度に冷却された還流として供給した。この手順により、メタクリル酸を含む底部流(13)が得られ、これをエステル化(E)に直接返送した。底部流は、表6に従って、MMAとMASとさらなる高沸点物質とを含む。塔(F)の頂部では、蒸気状の異相共沸混合物の気化物質流(14b)が得られ、これを蒸留によるさらなる分離のために精留塔(I)の中央に供給した。この異相共沸混合物流(14b)には、表6に従って、MMAとMeOHと水とアセトンとMANとが含まれていた。
粗製物ストリッパー塔(I)を、加熱蒸気で加熱し、100mbargのわずかな正圧で運転した。底部流(19b)における、メチルメタクリレートと水とメタノールとアセトンとMANとから構成される、低沸点物質が欠乏した異相共沸混合物を、低沸点物質に富む頂部流(19a)から分離除去した。低沸点物質の含有量、ひいては特にアセトンおよびMANの含有量も、蒸発器のエネルギー投入量により制御することが可能であった。
塔(I)の頂部で、得られた気化物質流を部分的に凝縮させ、凝縮物を液体還流として塔(I)に戻し、表6に従ってMeOHとMMAと水とアセトンとMANとさらなる低沸点物質とを含む残りの低沸点物質含有蒸気相(19a)を、オフガススクラビング部(J)に供給した。ここで、塔(I)の頂部領域における低沸点物質の富化を、部分凝縮器内の温度によって制御した。
塔(I)の頂部の液体の低沸点物質混合物の一部を、液体の側流排出物(19c)の形態で塔(I)から連続的に除去した。側流排出物(19c)には、表6に従って、MMAとMeOHと水とアセトンとMANとが含まれており、この側流排出物(19c)を、過度に冷却された状態でスクラビング塔(F)への還流として使用した。
次に、気化物質流(19a)を、共沸塔(L)からのオフガス(23b)と共に、頂部に部分凝縮器を備えたオフガススクラビング塔(J)の底部領域に供給した。供給された気化物質(19a)は、塔(J)内で上昇し、この気化物質(19a)を、頂部での凝縮によって生じる高沸点物質を含む還流によってスクラビングすることにより、塔(J)の頂部では、MMAが欠乏したオフガス(21a)が得られ、塔(J)の底部では、MMAに富む液体混合物(21b)が得られた。塔(J)の頂部で供給された新鮮なメタノール(10b)の添加によって、(J)のスクラビングプロセスを支援した。(J)で得られたMeOHとMMAとを含む底部流(21b)を、エステル化(E)に供給した。オフガス(21a)には、低沸点物質と不活性物質とMeOHとアセトンとMANとが含まれており、このオフガス(21a)を燃焼に供給した。量および組成を、表6に示す。
粗製物ストリッパー(I)で得られた異相共沸混合物の底部流(19b)を、液相分離のためにまず30℃まで冷却し、次に相分離容器(K)に供給した。物質流(19b)に加えて、相分離器(K)に、凝縮/真空ユニット(M)のMMAを含む異相共沸混合物の留出物(23c)を供給した。高沸点水相(20b)には、表6に従って、水とメタノールとMMAとアセトンとMASと高沸点物質と低沸点物質とが含まれており、この高沸点水相(20b)を、混合セクションに連続的に供給した。ここで、完全脱塩水(16b)の添加により希釈流(20c)が得られ、この希釈流(20c)を、完全にエステル化(E)に供給した。低沸点有機相(20a)には、表6に従って、MMAと水とメタノールとアセトンとMASとMANと高沸点物質と低沸点物質とが含まれており、この低沸点有機相(20a)を、精密精製のために共沸塔(L)に供給した。
2c. 精密精製(L),(O),(M)
低沸点物質を除去するために、真空中で運転される共沸塔(L)の頂部領域に低沸点有機相(20a)を供給し、この共沸塔(L)を、加熱蒸気で間接的に加熱し、この共沸塔(L)により、低沸点物質に富む異相共沸混合物の気化物質流(22a)を、メチルメタクリレートに富む底部流(22b)から分離した。
気化物質流(22a)には、表7に従って、MMAと水とMeOHとアセトンとMANとが含まれていた。望ましい態様で低沸点物質が除去された底部流(22b)には、表7に従って、MMAとMASと高沸点物質と副産物であるMANとアセトンとが含まれていた。
共沸塔(L)で得られた底部生成物(22b)を、さらなる精製のために減圧精留(O)に供し、この減圧精留(O)は、180mbar(a)で実施し、濃縮部およびストリッピング部を特徴とするものであった。物質流(22b)を純粋物塔(O)の中央に供給し、その際、確立された平衡に従って、MMA純生成物(25a)と、高沸点物質に富む底部流(25b)とが得られた。得られた気化物質流を完全に凝縮させ、得られた4m/hのオフガスを完全に方法ステップ(M)に供給し、留出物を必要な還流比に従って分割して、エステル化フロー(E)に関して純度99.9重量%超のMMAを表7に示す量で得た。アセトンおよびMANの割合、ならびに排出量を、表7に示す。
表7に従ってMMAとMASと高沸点物質とを含む得られた底部流(25b)を、反応ステップ(E)に連続的に返送した。
2d. 方法条件および結果
Figure 2023547391000010
Figure 2023547391000011
Figure 2023547391000012
Figure 2023547391000013
Figure 2023547391000014
表4~表6の結果から、濃度99.7重量%の硫酸(水0.3重量%)を用いた本発明による例B1では、アミド化および転化において得られ、エステル化に供給されるMANおよびアセトンの割合が低いことがわかる。粗生成物を蒸留のみにより精製することと、二次成分をガス状で排出することとによる相乗効果によって、本運転様式では、MMA純生成物へのMANの混入が著しく少なくなる。

Claims (20)

  1. アルキルメタクリレート、好ましくはメチルメタクリレートの製造方法であって、前記方法は、
    a.アセトンシアノヒドリンと硫酸とを、第1の反応段階(アミド化)において1つ以上の反応器Iで70~130℃の範囲の温度で反応させて、スルホキシイソ酪酸アミドとメタクリル酸アミドとを含む第1の反応混合物を得るステップと、
    b.前記第1の反応混合物を第2の反応段階(転化)において1つ以上の反応器IIで転化させ、ここで、前記転化は、130~200℃の範囲の温度に加熱することを含むものとし、これにより、主にメタクリル酸アミドと硫酸とを含む第2の反応混合物を得るステップと、
    c.前記第2の反応混合物とアルコールと水、好ましくはメタノールと水とを、第3の反応段階(エステル化)において1つ以上の反応器IIIで反応させて、アルキルメタクリレートを含む第3の反応混合物を得るステップと、
    d.前記第3の反応段階で得られた前記第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップと
    を含み、ここで、
    前記第1の反応段階において使用される硫酸は、98.0重量%~100.0重量%の範囲の濃度を有し、
    前記第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップは、少なくとも2つの蒸留ステップを含み、前記蒸留ステップでは、副産物であるメタクリロニトリルおよびアセトンが、少なくとも部分的に、頂部フラクションにおいて含水異相共沸混合物として得られ、
    前記蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られたメタクリロニトリルとアセトンとを含む前記含水異相共沸混合物を、少なくとも部分的に前記方法から排出し、
    メタクリロニトリルとアセトンとを含む少なくとも1つの流れを、少なくとも部分的に前記第3の反応段階に返送する方法。
  2. 少なくとも部分的に前記第3の反応段階に返送される前記メタクリロニトリルとアセトンとを含む少なくとも1つの流れは、前記蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られたメタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物である、請求項1記載の方法。
  3. 前記蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物の凝縮および相分離によって得られる少なくとも1つの水相を、完全にまたは部分的に前記第3の反応段階に返送し、そこで主にメタクリル酸アミドと硫酸とを含む前記第2の反応混合物と接触させる、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物の凝縮および相分離によって得られる少なくとも1つの水相を、完全にまたは部分的に、任意で抽出ステップの後に前記方法から排出する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. 前記蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物を、少なくとも部分的に、任意でスクラビングステップの後に、ガス状流の形態で完全にまたは部分的に前記方法から排出する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. 前記第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップは、少なくとも1つの相分離ステップを含み、前記相分離ステップでは、前記蒸留ステップのうち少なくとも1つで得られた含水異相共沸混合物を、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相と、主にアルキルメタクリレートを含む有機相とに分離し、前記水相を、部分的に前記方法から排出し、かつ/または部分的に前記第3の反応段階に返送し、前記主にアルキルメタクリレートを含む有機相を、完全にまたは部分的に前記少なくとも1つの蒸留ステップに返送する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
  7. 前記第3の反応段階で得られた前記第3の反応混合物を連続的に蒸発させ、この際に生じる気化物質流を第1の蒸留ステップK1に供給し、前記第1の蒸留ステップK1では、アルキルメタクリレートと水とアルコールとを含む頂部フラクションと、より沸点の高い成分を含む底部フラクションとが得られ、前記底部フラクションを、完全にまたは部分的に前記第3の反応段階に返送する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
  8. 前記第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップは、
    (i)前記第3の反応段階で得られた前記第3の反応混合物を、まず第1の蒸留ステップK1で蒸留して、メタクリロニトリルとアセトンとを含む第1の含水異相共沸混合物を頂部フラクションとして得ること、
    (ii)凝縮物としての前記第1の含水異相共沸混合物を、相分離ステップ(相分離器I)で、水相WP-1と、アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相OP-1とに分離すること、
    (iii)前記有機相OP-1を第2の蒸留ステップK2に送り、前記第2の蒸留ステップK2で、頂部フラクションとしてメタクリロニトリルとアセトンとを含む第2の含水異相共沸混合物を得ること、
    (iv)前記第2の含水異相共沸混合物の少なくとも一部を、相分離ステップ(相分離器II)で、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2と有機相OP-2とに分離し、
    前記有機相OP-2を、完全にまたは部分的に前記第2の蒸留ステップK2に返送し、
    前記メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2を、部分的に前記第3の反応段階に返送し、部分的に任意で抽出ステップの後に本方法から排出すること
    を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
  9. 前記水相WP-1を、完全にまたは部分的に前記第3の反応段階に返送し、前記アルキルメタクリレートの主要な部分を含む有機相OP-1を、抽出剤として水を用いた抽出に供し、前記抽出の水相を前記第3の反応段階に返送し、前記抽出の有機相を前記第2の蒸留ステップK2に送る、請求項8記載の方法。
  10. 前記メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2の一部を抽出に供し、その際、水相WP-3および有機相OP-3が得られ、前記水相WP-3を、完全にまたは部分的に本方法から排出し、前記有機相OP-3を、完全にまたは部分的に前記第3の反応段階に返送する、請求項8または9記載の方法。
  11. 前記メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2の一部を抽出に供し、その際、水相WP-3および有機相OP-3が得られ、前記水相WP-3をさらなる蒸留ステップK4に供し、前記蒸留ステップK4において、メタクリロニトリルを含む頂部フラクションが得られ、前記頂部フラクションを本方法から排出し、前記蒸留ステップK4において、水を含む底部フラクションが得られ、前記底部フラクションを、完全にまたは部分的に前記抽出に返送し、前記有機相OP-3を、完全にまたは部分的に前記第3の反応段階に返送する、請求項8または9記載の方法。
  12. 前記第3の反応混合物からアルキルメタクリレートを分離するステップは、
    (i)前記第3の反応段階で得られた前記第3の反応混合物を、まず第1の蒸留ステップK1で蒸留して、メタクリロニトリルとアセトンとを含む第1の含水異相共沸混合物を頂部フラクションとして得ること、
    (ii)気化物質流としての前記第1の含水異相共沸混合物をさらなる蒸留ステップK4に送り、前記さらなる蒸留ステップK4で、頂部フラクションとしてのメタクリロニトリルとアセトンとを含むさらなる含水異相共沸混合物と、アルキルメタクリレートを含む底部フラクションとを得ること、
    (iii)蒸留ステップK4で得られた前記頂部フラクションを、任意でスクラビングステップの後に、ガス状流の形態で完全にまたは部分的に本方法から排出すること、
    (iv)蒸留ステップK4で得られた前記底部フラクションを、相分離ステップ(相分離器II)で、メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2と、有機相OP-2とに分離し、前記メタクリロニトリルとアセトンとを含む水相WP-2を、完全にまたは部分的に前記第3の反応段階に返送すること、
    (v)前記有機相OP-2を、完全にまたは部分的に第2の蒸留ステップK2に送り、前記第2の蒸留ステップK2で、頂部フラクションとしてメタクリロニトリルとアセトンとを含む第2の含水異相共沸混合物が得られ、前記含水異相共沸混合物を、完全にまたは部分的に凝縮させ、前記(iv)による相分離ステップ(相分離器II)に送ること
    を含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
  13. 前記第2の反応混合物は、前記第2の反応混合物全体に対してそれぞれ3重量%以下のメタクリル酸と、1.5重量%以下のα-ヒドロキシイソ酪酸アミドと、0.3重量%以下のメタクリロニトリルとを含む、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
  14. 前記第2の反応混合物は、前記第2の反応混合物全体に対して30~40重量%のメタクリル酸アミドを含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
  15. 前記第1の反応段階において、前記アセトンシアノヒドリンと硫酸との反応を、少なくとも2つの別個の反応ゾーンまたは少なくとも2つの互いに別個の反応器で行う、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
  16. 前記第1の反応段階において、前記アセトンシアノヒドリンと硫酸との反応を、少なくとも2つの互いに別個の反応器で行い、硫酸およびアセトンシアノヒドリンを、第1の反応器において、ACHに対する硫酸のモル比=1.6~3.0の範囲で使用し、硫酸およびアセトンシアノヒドリンを、第2の反応器において、ACHに対する硫酸のモル比=1.2~2.0の範囲で使用する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
  17. アセトンシアノヒドリン(ACH)と硫酸とから構成される前記反応混合物は、前記第1の反応混合物において、前記第1の反応段階に供給されるACH全体に対して0.1モル%~20モル%の範囲の水の総量を有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
  18. 前記第2の蒸留ステップK2において、底部フラクションとしてアルキルメタクリレート粗生成物が得られ、前記アルキルメタクリレート粗生成物は、好ましくはアルキルメタクリレートを少なくとも99重量%含み、前記アルキルメタクリレート粗生成物を、さらなる蒸留ステップK3で精製し、その際、頂部フラクションとしてアルキルメタクリレート純生成物が得られ、前記アルキルメタクリレート純生成物は、前記アルキルメタクリレート純生成物に対して10~300ppmの範囲のメタクリロニトリル含有量を有する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
  19. 前記方法は、硫酸の再生を含み、前記第3の反応段階で得られた前記第3の反応混合物の一部と、少なくとも1つの水性または有機廃物流とを熱的な再生ステップに供給し、ここで、前記少なくとも1つの水性または有機廃物流は、前記メタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物の排出により生じ、硫酸と硫酸水素アンモニウムとスルホン化アセトン誘導体とを含むものとし、前記熱的な再生ステップで硫酸が得られ、前記硫酸を前記第1の反応段階に返送する、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
  20. 前記方法は、硫酸アンモニウムの取得を含み、前記第3の反応段階で得られた前記第3の反応混合物の一部と、少なくとも1つの水性または有機廃物流とを熱的な再生ステップに供給し、ここで、前記少なくとも1つの水性または有機廃物流は、前記メタクリロニトリルとアセトンとを含む含水異相共沸混合物の排出により生じ、硫酸と硫酸水素アンモニウムとスルホン化アセトン誘導体とを含むものとし、前記熱的な再生ステップで結晶化により硫酸アンモニウムが得られ、前記硫酸アンモニウムを副産物として分離除去する、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
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