JP2023184581A - 塗装鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】低光沢で且つ意匠性が高く、遮熱性にも優れた塗装鋼板を提供する。【解決手段】上記目的を達成するべく、本発明は、溶融Al-Zn系めっき鋼板10上に、直接又は中間層11を介して、塗膜12が形成された塗装鋼板であって、前記塗膜12は、表面の算術平均高さ(Sa)が1.5以上であり、表面のスキューネス(Ssk)が0.5以上であり、且つ、日射反射率が40%以上であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、低光沢で且つ意匠性が高く、遮熱性にも優れた塗装鋼板に関するものである。
55%Al-Zn系めっき鋼板に代表される溶融Al-Zn系めっき鋼板(以下、「55%Al-Zn系めっき鋼板」ということがある。)は、優れた耐食性を示すことから、近年、建材分野を中心に需要が増加しつつある。
また、工場や商業施設及び住宅等の屋根や壁には、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に塗膜を形成し、塗装鋼板として使用されることが一般的である。
塗装鋼板としては、防錆顔料を含有したプライマー層を介して、最表層に着色顔料を含有した上塗り塗膜を設けたものが、その耐食性、強度、カラフルさ等の点から、一般的に使用されている。ここで、建材用途においては、艶の低い低光沢の外観が意匠として好まれることから、上塗り塗膜中に、シリカ、樹脂ビーズ、無機化合物等の骨材を含有させることで、低光沢性を発現させる技術が知られている。ただし、上塗り塗膜中に骨材を含有させる技術では、薄い(厚さ15μm程度)上塗り塗膜内では含有できる骨材の粒径や量に限界があり、十分な意匠性が得られないという問題があった。
そのため、薄い上塗り塗膜でも高い意匠性を実現するための技術が検討されている。そのような技術の1つとして、上塗り塗膜をちぢみ柄にする技術が挙げられる(例えば、特許文献1、2及び3を参照。)。これらの方法では、スルホン酸を硬化触媒として用い、ポリエステル-メラミン系樹脂塗膜の最表層を縮ませることで得られたちぢみ柄塗膜という独特の模様を、溶融亜鉛めっき鋼板上に形成できる技術である。このようにして得られたちぢみ柄は、上塗り塗膜表面の凹凸感によって良好な意匠性を実現できる。
しかしながら、特許文献1~3に開示したような、ちぢみ柄塗膜を形成する技術については、ちぢみ柄の凹凸により比表面積が大きくなるため、塗装鋼板を屋根等の建材に使用した場合、日射による温度上昇を招くという問題があった。屋根用の塗装鋼板では、耐久性要求の向上から、ベースとなるめっき鋼板は、55%Al-Zn系めっき鋼板を用いることが多い。ただし、この溶融55%Al-Zn系めっき鋼板は、めっき層におけるアルミニウム比率が体積比で約76%占めることから、通常の溶融亜鉛めっき鋼板と比較すると熱伝導が高く、ちぢみ柄の塗膜をめっき鋼板上に形成した場合に、室内側に熱をより伝えやすくなることが考えられ、改善が望まれていた。
特公平6-11879号公報 特許第2645494号公報 特許第3124072号公報
かかる事情を鑑み、本発明は、低光沢で且つ意匠性が高く、遮熱性にも優れた塗装鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、塗膜が形成された塗装鋼板について、上述した問題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、塗膜の表面状態について、算術平均高さ(Sa)及びスキューネス(Ssk)を一定値以上とすることで、ちぢみ柄塗膜を形成した場合と同様に、塗装鋼板の光沢を抑えつつ、意匠性を高めることを見出した。そしてさらに、塗膜中に日射反射性顔料を含有させる等の調整を行い、日射反射率を40%と高くすることによって、めっき鋼板への熱伝導を抑え、遮熱性についても高めることができることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
1.溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、塗膜が形成された塗装鋼板であって、
前記塗膜は、表面の算術平均高さ(Sa)が1.5以上であり、表面のスキューネス(Ssk)が0.5以上であり、且つ、日射反射率が40%以上であることを特徴とする、塗装鋼板。
2.前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層は、Al:20~95質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、請求項1に記載の塗装鋼板。
3.前記塗膜は、平均粒径が0.5μm以上の日射反射性着色顔料を2質量%以上含むことを特徴とする、前記1又は2に記載の塗装鋼板。
4.前記塗膜は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン変性ポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種の基体樹脂と、メラミン樹脂と、沸点80~150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸と、を含むことを特徴とする、前記1~3のいずれかに記載の塗装鋼板。
5.前記めっき層が、Al:50~60質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、前記2に記載の塗装鋼板。
6.前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層は、デンドライト相及びインターデンドライト相を有し、該デンドライト相のビッカース硬さが、10~110HV0.1であることを特徴とする、前記1~5のいずれかに記載の塗装鋼板。
本発明によれば、低光沢で且つ意匠性が高く、遮熱性にも優れた塗装鋼板を提供できる。
本発明の塗装鋼板の一実施形態を模式的に示した断面図である。
以下、必要に応じて図面を参照時ながら、本発明の塗装鋼板の実施形態について説明する。
本発明の塗装鋼板は、図1に示すように、溶融Al-Zn系めっき鋼板10上に、直接又は中間層(図1では、中間層として下塗り塗膜11)を介して、塗膜12が形成された塗装鋼板1である。
そして、本発明の塗装鋼板1では、前記塗膜12は、表面の算術平均高さ(Sa)が1.5以上であり、表面のスキューネス(Ssk)が0.5以上であり、且つ、日射反射率が40%以上であることを特徴とする。
前記塗膜12の表面の、算術平均高さ(Sa)及びスキューネス(Ssk)を大きくすることによって、前記塗膜12表面の凹凸を際立たせることができるため、光沢を低減しつつ、意匠性を高めることができる。加えて、前記塗膜12の日射反射率については40%以上と高くなっているため、めっき鋼板として55%Al-Zn系めっき鋼板を用いた場合や、塗装鋼板1を屋根材等に適用した場合であっても、優れた遮熱性を実現できる。
以下、本発明の塗装鋼板を構成する各部材について説明する。
上述したように、本発明の塗装鋼板は、溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、塗膜が形成されたものである。
(溶融Al-Zn系めっき鋼板)
本発明の塗装鋼板は、溶融Al-Zn系めっき鋼板を用いる。溶融Al-Zn系めっき鋼板を用いることで、高い耐食性を確保できる。
前記溶融Al-Zn系めっき鋼板の種類については、特に限定はされず、要求される性能や用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の塗装鋼板を建材用として用いる場合、高い耐久性が要求されるため、55%Al-Zn系めっき鋼板等を用いることができる。
前記溶融Al-Zn系めっき鋼板10は、図1に示すように、下地鋼板13上にめっき層14が形成されたものである。該めっき層の組成については、例えば、Al:20~95質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成とすることができる。前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層が、上述した組成を有することによって、めっき層中にデンドライト相及び該デンドライト相を網目状に取り囲んだインターデンドライト相を形成でき、耐食性の向上を図ることができる。
また、同様の観点から、前記めっき層は、JIS G 3321(2019年)5.1に規定された「めっき浴成分」の組成、具体的には、Al:50~60質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することが好ましい。
ここで、前記めっき層中のAl含有量は、耐食性と操業面のバランスから、20~95質量%であることが好ましく、50~60質量%であることがより好ましい。前記めっき層のAl含有量が少なくとも20質量%あれば、Alのデンドライト凝固が十分に起こる。これにより、前記主層は主としてZnを過飽和に含有し、Alがデンドライト凝固した部分(α-Alのデンドライト相)と残りのデンドライト間隙の部分(インターデンドライト相)からなり且つ該デンドライト相がめっき層の膜厚方向に積層した耐食性に優れた構造を実現できる。
また、このα-Al相のデンドライト部分が、多く積層するほど、腐食進行経路が複雑になり、腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなるので、耐食性が向上する。一方、前記めっき層中のAl含有量が95質量%を超えると、Feに対して犠牲防食作用をもつZnの含有量が少なくなり、耐食性が劣化するおそれがある。このため、前記めっき層中のAl含有量は95質量%以下とする。
また、前記めっき層中のSiは、下地鋼板との界面に生成する界面合金層の成長を抑制する目的で、耐食性や加工性の向上を目的にめっき浴中に添加され、必然的に前記主層に含有される。本発明の塗装鋼板で用いる溶融Al-Zn系めっき鋼板の場合、めっき浴中にSiを含有させて溶融めっき処理を行うと、下地鋼板がめっき浴中に浸漬されると同時に、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応し、Fe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物からなる合金を生成する。このFe-Al-Si系界面合金層の生成によって、界面合金層の成長を抑制することができる。そして、前記めっき層中のSi含有量が1質量%以上の場合には、前記界面合金層の成長を十分に抑制できる。一方、めっき層のSi含有量が、3質量%を超えた場合、めっき層において、加工性を低下させ、カソードサイトとなるSi相が析出するおそれがある。このSi相の析出は、Mg含有量を増やすことで抑制できるが、その場合、製造コストの上昇や、Mg2Siの量が多くなることに起因した加工性の低下を招き、まためっき浴の組成管理をより困難にしてしまう。このため、めっき層中のSi含有量は3質量%以下とすることが好ましい。
前記めっき層は、該めっき層の主成分としてZnを含有する。前記めっき層にZnを含有することで、犠牲防食作用を得ることができ、耐食性の向上を図ることが可能となる。一方、前記Znの含有量が80質量%以下の場合には、Al含有量を確保でき、上述したデンドライト相とインターデンドライト相による耐食性を実現できる点で好ましい。
さらに、前記めっき層は、上述したAl、Si及びZnに加えて、任意添加成分を5質量%以下含有することができる。
ここで、前記任意添加成分としては、めっき層に要求される性能に応じて適宜選択することが可能である。例えば、CaやMg等のアルカリ土類金属や、Mn、V、Cr、Mo、Ti、Sr、Ni、Co、Sb及びB等の添加成分が挙げられる。
これらの任意添加成分については、耐食性をより向上できる等の効果が得られるものの、めっき層の加工性が低下し、塗装鋼板の限界伸び率を悪化させるおそれがあるため、任意添加の含有量は5質量%以下であることが好ましい。
前記めっき層は、Mg及び/又はCaを含有することができる。前記めっき層が腐食した際、腐食生成物中にMg及び/又はCaが含まれることとなり、腐食生成物の安定性が向上し、腐食の進行が遅延する結果、耐食性が向上するという効果が得られる。前記Ca及び/又はMgの合計含有量は、5質量%以下であれば特に限定はされないが、0.01~5質量%であることが好ましい。含有量を0.01質量%以上とすることで、十分な腐食遅延効果が得られ、一方、含有量を5質量%以下とすることで、効果が飽和することなく、製造コストの上昇を抑え、めっき浴の組成管理を容易に行えるためである。
また、前記めっき層は、前記Mgを少なくとも含有することが好ましい。前記めっき層がMgを含有することで、上述したSiとともにMg2Siを生成できるようになり、腐食遅延効果を得ることができるからである。ここで、前記めっき層中のMgの含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、2~4.9質量%であることがより好ましい。
さらに、前記CaやMgのアルカリ土類金属と同様に、腐食生成物の安定性を向上させ、腐食の進行を遅延させる効果を奏することから、前記めっき層は、さらにMn、V、Cr、Mo、Ti、Sr、Ni、Co、Sb及びBのうちから選択される一種又は二種以上を、合計で5質量%以下、好ましくは0.01~5質量%含有することもできる。
なお、前記めっき層は、めっき処理中にめっき浴と下地鋼板の反応でめっき中に取り込まれる下地鋼板成分や、めっき浴中の不可避的不純物が含まれる。前記めっき中に取り込まれる下地鋼板成分としては、Feが最大で2%程度含まれることがある。めっき浴中の不可避的不純物の種類としては、例えば、Fe、Cu、Zr等が挙げられる。前記めっき層中のFeについては下地鋼板から取り込まれるものと、めっき浴中にあるものとを区別して定量することはできない。不可避的不純物の総含有量は特に限定はしないが、めっきの耐食性と均一な溶解性を維持するという観点から、Feを除いた不可避的不純物量は合計で1質量%以下であることが好ましい。
なお、前記界面合金層については、前記めっき層のうち、下地鋼板との界面に存在する層であり、上述したように、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応して必然的に生成するFe-Al系及び/又はFe-Al-Si系の化合物である。この界面合金層は、硬くて脆いため、厚く成長すると加工時のクラック発生の起点となることから、できるだけ薄くすることが好ましい。
なお、下地鋼板上に前記めっき層を形成する手段としては、特に限定はされず、通常の連続式溶融めっき設備を用いることができる。例えば、下地鋼板は還元性雰囲気に保持された焼鈍炉内で所定温度に加熱され、焼鈍と同時に鋼板表面に付着する圧延油等の除去、酸化膜の還元除去が行われた後、下端がめっき浴に浸漬されたスナウト内を通って所定濃度のAl及びZnを含有した溶融亜鉛めっき浴中に浸漬される。その後、めっき浴に浸漬された鋼板は、シンクロールを経由してめっき浴の上方に引き上げられた後、めっき浴上に配置されたガスワイピングノズルから鋼板の表面に向けて加圧した気体を噴射することによりめっき付着量が調整され、次いで冷却装置により冷却されることで、めっき層が形成される。
また、前記めっき層が、任意添加成分を含有しない場合、例えば200℃×12時間程度の熱処理を施すことによって、塗膜形成前の溶融Al-Zn系めっき鋼板の限界伸び率を最大25%まで向上させることができる。これは、アルミリッチなデンドライト相中に過飽和固溶したZnが上記の熱処理によって排出されることでめっき層が軟質化するためと考えられる。
一方で、任意添加成分を含んだ組成を有するめっき層の場合には、このような熱処理による加工性の向上効果は小さく、例えばMgを2~4.9%添加した場合には、熱処理後の限界伸び率は5%未満に留まる。この理由は、未だ明らかでは無いが、Al中の溶解度が高いことから熱処理後もアルミリッチなデンドライト相中に固溶元素として留まることなどが影響していると推定される。
さらに、前記めっき層の組織中には、デンドライト相及びインターデンドライト相を有するが、デンドライト相のビッカース硬さが10~110Hv0.01であることが好ましい。前記デンドライト相のビッカース硬さを10~110Hv0.01と小さくすることで、塗装鋼板の加工性を高め、加工後耐食性をより高めることができる。前記デンドライト相のビッカース硬さが110Hv0.01を超えると、加工性を十分に得られないおそれがあり、一方、前記デンドライト相のビッカース硬さが10Hv0.01未満の場合には、めっき層表面の耐傷つき性を低下させるおそれがあるためである。同様の観点から、前記デンドライト相のビッカース硬さは、20~100Hv0.01であることが好ましく、30~90Hv0.01であることがより好ましい。
なお、前記デンドライト相のビッカース硬さについては、サンプルの塗装鋼板を、常温乾燥樹脂で埋め込み研磨し、断面からめっき層のデントライト相を選択し、微小硬度計(例えば島津製作所製微小硬度計HMV-G21)を用い、選択したデンドライト相のビッカース硬さを測定できる。測定方法はJIS Z 2244に準拠し、押し込み荷重98mN(10g)の条件(Hv0.01)で試験を実施している。
(化成処理皮膜)
本発明の塗装鋼板は、前記溶融めっき鋼板のめっき層と前記塗膜との間に形成される中間層として、化成処理皮膜(図示せず)を形成することができる。前記めっき層と前記塗膜との間に化成処理皮膜を形成することで、塗装鋼板の耐食性をより高めることができる。
前記化成処理皮膜の種類や形成条件については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。
例えば、クロメート処理液又はクロムフリー化成処理液を塗布し、水洗することなく、鋼板温度として80~300℃となる乾燥処理を行うクロメート処理又はクロメートフリー化成処理により形成することが可能である。これら化成処理皮膜は、単層でも複層でもよく、複層の場合には複数の化成処理を順次行えばよい。なお、前記化成処理皮膜は、労働作業環境等に配慮する場合には、クロメートフリー処理によって形成することが好ましい。
(下塗り塗膜)
本発明の塗装鋼板は、前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層と前記塗膜との間に形成される中間層として、図1に示すように、下塗り塗膜(プライマー層)11を形成することができる。前記めっき層14と前記塗膜12との間に下塗り塗膜11を形成することで、後述する塗膜(上塗り塗膜)12と溶融めっき鋼板10との接着性をより高めることができ、耐食性や防錆性についてさらに向上させることもできる。なお、塗装鋼板において、前記溶融Al-Zn系めっき鋼板10上に前記化成処理皮膜(図示せず)が形成される場合には、前記下塗り塗膜11は前記化成処理皮膜上に形成される。
前記下塗り塗膜の膜厚については、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜調整することが可能である。
例えば、防錆性と加工性との両立を図る観点から、前記下塗り塗膜の膜厚を、2~15μmとすることができる。膜厚が2μm以上の場合には十分な防錆性が得られ、一方、15μm以下の場合には十分な加工性を確保できる。
ここで、前記下塗り塗膜は、塗装鋼板の防錆性を向上させる観点から、防錆剤を含有することができる。前記防錆剤については、クロム酸塩を含むクロメートタイプ又はクロム酸塩を用いないクロメートフリータイプのどちらを用いることもできる。ただし、労働作業環境等に配慮する場合は、クロメートフリータイプの方が好ましく、以下は、クロメートフリータイプの下塗り塗膜について説明する。
前記下塗り塗膜のマトリックス成分を構成する樹脂としては、特に限定はされないが、作業性、耐食性、防錆性等の観点から、ポリエステル系樹脂及び/又はエポキシ系樹脂を用いることが好ましい。
また、前記ポリエステル系樹脂については、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。
ここで、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂としては、ポリエステルポリオールと、イソシアネート基を2個以上もつ、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとの反応によって得られる樹脂など、公知のものが使用できる。
また、ポリエステルポリオールと、イソシアネート基を2個以上もつ、ジイソシアネート又はポリイソシアネートとを水酸基過剰な状態で反応させた樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂)を、ブロック化ポリイソシアネートで硬化させた樹脂も使用できる。
前記ポリエステルポリオールは、多価アルコール成分と多塩基酸成分との脱水縮合反応を利用した、公知の方法により得ることができる。
前記多価アルコールは、グリコール及び3価以上の多価アルコールが挙げられる。グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、メチルプロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、3,3-ジエチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられる。また、3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で使用することもでき、二種以上組み合わせて使用することもできる。
前記多塩基酸は、通常、多価カルボン酸が使用されるが、必要に応じて1価の脂肪酸などを併用することができる。多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ピロメリット酸、ダイマー酸等及びこれらの酸無水物や、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等が挙げられる。これらの多塩基酸は、単独で使用することもでき、二種以上組み合わせて使用することもできる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、そして、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族ジイソシアネート、さらに、イソホロンジイソシアネート、水素化XDI、水素化TDI、水素化MDIなどの環状脂肪族ジイソシアネート、及び、これらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用することもでき、二種以上組み合わせて使用することもできる
前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂は、可撓性と強度を兼ね備えており、加工を受けた際、前記下塗り塗膜にクラックが発生するのを抑えることができる等の効果が得られる。また、ウレタン樹脂を含有する化成処理皮膜との親和性が高く、特に加工部の耐食性向上に寄与する。
ここで、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂の水酸基価は、耐溶剤性、加工性等の点から、好ましくは5~120mgKOH/gであり、より好ましくは、7~100mgKOH/gであり、さらに好ましくは10~80mgKOH/gである。
また、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂の数平均分子量は、耐溶剤性、加工性等の点から、好ましくは500~15,000であり、より好ましくは、700~12,000であり、さらに好ましくは800~10,000である。
なお、前記ポリエステル樹脂は、下塗り塗膜中に、40~88質量%含まれることが好ましい。40質量%未満では、下塗り塗膜としてのバインダー機能が低下し、88質量%を超えると、下記に示す無機物による機能、例えばインヒビター作用が低下することがあるためである。なお、前記下塗り塗膜に含有する無機物は、インヒビターとして機能するバナジウム化合物、リン酸化合物、マグネシウム酸化物等が含まれてもよい。
前記インヒビターとして作用するバナジウム化合物の種類については、例えば、五酸化バナジウム、メタバナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、オキシ三塩化バナジウム、三酸化バナジウム、二酸化バナジウム、バナジン酸マグネシウム、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの中でも、前記バナジウム化合物として、4価のバナジウム化合物又は還元若しくは酸化することによって得られる4価のバナジウム化合物を用いることが好ましい。前記下塗り塗膜中に添加するバナジウム化合物は、化成処理皮膜に添加するバナジウム化合物と同種であっても異種であってもよい。前記バナジン酸化合物は、外部から侵入してくる水分に徐々に溶出するバナジン酸イオンと亜鉛系めっき鋼板表面のイオンが反応し、密着性の良い不働態皮膜を形成し、金属露出部を保護し防錆作用が現れると考えられている。
また、前記下塗り塗膜中のバナジウム化合物の含有量は、4~20質量%であることが好ましい。4質量%未満ではインヒビター効果が低下して耐食性の低下を招くおそれがあり、20質量%を超えると下塗り塗膜の耐湿性の低下を招くおそれがあるからである。
前記インヒビターとして作用するリン酸化合物の種類については、例えば、リン酸、リン酸のアンモニウム塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩等を使用できる。これらの中でも、リン酸カルシウム等の、リン酸のアルカリ金属塩を用いることが好適である。
また、前記下塗り塗膜中のリン酸化合物の含有量は、4~20質量%であることが好ましい。4質量%未満ではインヒビター効果が低下して耐食性の低下を招くおそれがあり、20質量%を超えると下塗り塗膜の耐湿性の低下を招くおそれがあるからである。
前記インヒビターとして作用する酸化マグネシウムは、初期の腐食によって生じた生成物を難溶性のマグネシウム塩として、安定化する効果がある。前記下塗り塗膜中の酸化マグネシウムの添加量は、4~20質量%であることが好ましい。4質量%未満では上記効果が低下して耐食性の低下を招くおそれがあり、20質量%を超えると下塗り塗膜の可撓性が低下することにより特に加工部の耐食性が低下するおそれがあるからである。
なお、前記下塗り塗膜を形成する際に用いられる架橋剤は、前記ウレタン結合を有するポリエステル樹脂と反応して架橋塗膜を形成するものであり、ブロック化ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。前記ブロック化ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、例えば、ブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム類、ε-カプロラクタム類などのラクタム類、アセト酢酸ジエステルなどのジケトン類、イミダゾール、2-エチルイミダゾールなどのイミダゾール類、又はm-クレゾールなどのフェノール類等によりブロックしたものが挙げられる。
(塗膜)
本発明の塗装鋼板は、図1に示すように、上述した溶融Al-Zn系めっき鋼板10及び中間層11に加えて、塗膜(以下、「上塗り塗膜」ということもある。)12をさらに備える。
そして前記塗膜12は、表面の算術平均高さ(Sa)が1.5以上であり、表面のスキューネス(Ssk)が0.5以上であり、且つ、日射反射率が40%以上であることを要する。前記塗膜表面の、算術平均高さ(Sa)及びスキューネス(Ssk)を大きくしつつ、日射反射率を高めることによって、光沢を低減しつつ、意匠性を高めることができることに加え、優れた遮熱性も実現できる。
ここで、前記算術平均高さ(Sa)とは、Ra(線の算術平均高さ)を面に拡張したパラメータであり、塗膜表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を示したものである。また、前記スキューネス(Ssk)は、高さの分布の対称性を表すパラメータである。これらのパラメータは、いずれもISO 25178に規定されている。
本発明の塗装鋼板では、前記塗膜表面の、Saを1.5以上としつつ、Sskを0.5以上とすることで、図1に示すように塗膜12表面の凹凸が際立つようになり、高い意匠性が得られる。前記塗膜のSaが1.5未満の場合や、Sskが0.5未満の場合には、十分な意匠性が得られないことに加え、コイル開梱時に前記塗膜表面にプレッシャーマークが発生しやすくなるため、外観性が低下するおそれがある。同様の観点から、前記塗膜表面の、Saは2.0以上であることが好ましく、Sskは0.8以上であることが好ましい。
なお、前記塗膜の表面が粗くなり過ぎると、生産時におけるコイル巻き取りの際に合わせ面を疵付けたり、コイルの巻きを緩めるおそれがある。そのため、前記塗膜表面のSaは5.0以下であることが好ましく、Sskは2.0以下であることが好ましい。
前記塗膜の表面のSaを1.5以上とし、Sskを0.5以上とするための方法については、特に限定はされない。例えば、前記塗膜の樹脂成分を調整し、前記塗膜の表面に所定のちぢみ柄を形成することによって、上述したSa及びSskを得ることができる。
前記塗膜の表面にちぢみ柄を形成する手段については、特に限定はされない。例えば、前記塗膜が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン変性ポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種の基体樹脂と、メラミン樹脂と、沸点80~150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸と、を含むことが好ましい。前記塗膜が上記成分を含有することによって、より確実にちぢみ柄を形成できるためである。
前記基体樹脂については、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン変性ポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種であり、後述するメラミン樹脂と反応する樹脂である。前記ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン変性ポリエステル樹脂については、通常の塗装鋼板の塗膜として用いられるものであればよく、水酸基(JIS K 2501による酸価が100mgKOH/g程度)を有することが好ましい。
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、油変性ポリエステル樹脂や、オイルフリーポリエステル樹脂が挙げられる。前記オイルフリーポリエステル樹脂としては、例えば、DIC(株)製のベッコライトM-6205-50、ベッコライトM-6401-52、ベッコライトM-6402-50、ベッコライト46-118、ベッコライト46-119、ベッコライトM-6007-60、ベッコライト54-707、三井化学(株)製アルマテックスP-645、アルマテックスP-646、アルマテックスP-647BC、アルマテックスHMP15、アルマテックスHMP25、アルマテックスHMP90、エボニック社製のダイナポール829、ダイナポールLH830、ダイナポールLH832、ダイナポールLH898(いずれも商標)等が挙げられる。
また、前記アクリル樹脂については、自己架橋性である必要はないが、自己架橋性とする場合には、分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有するいわゆる架橋性モノマーを含有させる。ラジカル重合可能なモノマーとしては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリエスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の重合性不飽和化合物が挙げられる。架橋性モノマーは、アクリル樹脂の20質量%まで添加することができる。
また、前記アクリル樹脂については、上記モノマー成分を溶液重合、塊状重合などの常法により重合することによってアクリル樹脂を製造できる。
アクリル樹脂の数平均分子量については、特に制限されるものではないが、塗膜硬度、耐候性に優れた塗膜を得る観点から、好ましくは1,000~200,000、より好ましくは5,000~100,000、更に好ましくは10,000~50,000である。
さらに、前記シリコーン変性ポリエステル樹脂としては、例えば、日触アロー化学(株)製のアロプラッツ1710、アロプラッツ1711、アロプラッツ7323、ディエスエムレジン社製のシンレサイトD-9960W、シンネドール1515UF、ウララックS-2655-A1-60(いずれも商標)等が挙げられる。
また、前記メラミン樹脂については、前記基体樹脂と反応し、硬化させるための樹脂である。前記メラミン樹脂としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、一種のみ用いることもでき、複数種を混合して用いることもできる。ただし、より効率的にちぢみ柄を形成できる観点からは、前記メラミン樹脂として、前記メチル化メラミン樹脂を少なくとも含有することが好ましい。
前記メチル化メラミン樹脂としては、メトキシ基を3個以上含むもの、特にヘキサメトキシメチロールメラミンが好ましいが、一般に市販されているメチル化メラミン樹脂が使用でき、例えば、オルネクス(株)製のサイメル303LF、サイメル325、サイメル1130、三和ケミカル(株)製のニカラックMW-30M、ニカラックMW-30、ニカラックMX-40、ニカラックMX-750、ニカラックMW-22(いずれも商標)等が挙げられる。
さらに、前記沸点80~150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸(以下、単に「スルホン酸」ということがある。)については、スルホン酸を沸点80~150℃の3級アミンでブロックしたもの(スルホン酸を上記3級アミンの塩としたもの)である。3級アミンによってブロックされているため、スルホン酸の触媒としての作用が一時的にブロックされている。
触媒となるスルホン酸が沸点80~150℃の3級アミンでブロックされた状態で塗料に含まれるため、触媒としての作用が一時抑えられ、貯蔵安定性が良い。そして塗装後200~300℃の高温度で焼付を行うと、表面に近い塗膜中からブロックした3級アミンが遊離して揮発し、同時に遊離したスルホン酸が触媒作用を回復して、表面層だけ速く硬化反応を起こす結果、表面にちぢみ模様を有する塗膜が得られる。
前記スルホン酸としては、たとえば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上の混合使用が可能である。
また、前記沸点80~150℃の3級アミンとしては、たとえばN-メチルモルホリン、N,N-ジメチルアリルアミン、N-メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチルピペリジン、ピリジン等があげられ、これらは1種単独又は2種以上の混合使用が可能である。
なお、前記3級アミンでブロックしたスルホン酸は、過剰の3級アミンとスルホン酸を、容器に仕込んだ後、常温で10~20分間かきまぜて未反応のスルホン酸基を完全に塩の形にすることで得られる。
前記塗膜における、基体樹脂、メラミン樹脂及び80~150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸の含有量については、特に限定はされないが、意匠性の高いちぢみ柄をより確実に形成できる観点からは、前記塗膜を構成する塗料中のそれぞれの成分の含有量を調整することが好ましい。
具体的には、前記塗料中の、基体樹脂、メラミン樹脂及び80~150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸の含有量100質量部に対して、前記基体樹脂が60~90質量部、前記メラミン樹脂が5~39質量部、前記スルホン酸の含有量が1~5質量部含有されることが好ましい。
また、本発明の塗装鋼板における塗膜の日射反射率は、40%であることを要する。前記塗膜の日射反射率が40%以上であることで、所望の遮熱性を得ることができる。ここで、日射反射率とは、可視光線と近赤外線を反射する能力を示す数値であり、数値が大きいほど遮熱能力が高いことを意味する。
前記塗膜の日射反射率については、市販の分光光度計を用い、JIS K 5602(2008年)に準拠して測定することができる。
また、前記塗膜の日射反射率を調整する条件については、特に限定はされない。例えば、前記塗膜中に含有する材料を制御することによって、40%以上の日射反射率を得ることができる。
前記塗膜中に含有する材料の制御については、具体的には、塗膜中に日射反射性着色顔料を含有させる方法等が挙げあれる。
ここで、前記日射反射性着色顔料とは、色を発現し且つ可視光線と近赤外線を反射する能力を有する顔料のことである。なお、前記日射反射性着色顔料の色の種類については特に限定はされず、塗装鋼板に要求される仕様に基づいて適宜設定することができる。
また、前記塗膜は、遮熱性をより高めることができるとともに、意匠性も高めることができる観点から、平均粒径が0.5μm以上の日射反射性着色顔料を2質量%以上含むことが好ましい。
前記日射性着色顔料の平均粒径を0.5μm以上と大きくすることで、日射反射効率を高めることができるため、遮熱性をより向上できる。加えて、前記スルホン酸がちぢみ柄を形成する先行硬化時に、前記日射性着色顔料が核となるため、より凸模様を顕著に形成でき、意匠性をより高めることが可能である。同様の観点から、前記日射反射性着色顔料の平均粒径は、0.5μm以上であることがより好ましく、0.8μm以上であることがさらに好ましい。ただし、塗膜の成膜性の観点からは、前記日射反射性着色顔料の平均粒径が10μm以下であることが好ましい。
前記日射性着色顔料の含有量を2質量%以上とすることで、日射反射効率を高めることができるため、遮熱性をより向上できることに加え、前記スルホン酸がちぢみ柄を形成する先行硬化時に、前記日射性着色顔料が核となるため、より凸模様を顕著に形成でき、意匠性をより高めることが可能である。同様の観点から、前記日射反射性着色顔料の含有量は、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。ただし、塗膜の成膜性の観点からは、前記日射反射性着色顔料の含有量が30質量%以下であることが好ましく、22質量%以下であることがより好ましい。
ここで、前記日射反射性着色顔料の種類については、特に限定はされず、要求される色の種類や日射反射能力に応じて適宜選択できる。例えば、前記日射反射性着色顔料として、鉄-クロム系焼成顔料、マンガン-ビスマス系焼成顔料、銅-マンガン系焼成顔料等が挙げられる。
なお、前記塗膜を形成するための塗料中には、目的、用途に応じて、酸化チタン、弁柄、マイカ、カーボンブラック、その他の各種着色顔料、アルミニウム粉やマイカ等のメタリック顔料、炭酸塩や硫酸塩等の顔料、シリカ微粒子、ナイロン樹脂ビーズ、アクリル樹脂ビーズ、ガラス繊維、ガラスビーズ等の各種微粒子、p-トルエンスルホン酸、ジブチル錫ジラウレート等の硬化触媒、ワックス、消泡剤、レベリング剤等、その他の添加剤を適量(10質量%以下)配合することもできる。
前記塗膜を形成するための塗料の塗装方法は、特に限定されない。例えば、塗膜の材料となる塗料組成物を、ロールコーター塗装、カーテンフロー塗装などの方法で塗布することができる。前記塗料組成物を塗装後、熱風加熱、赤外線加熱、誘導加熱等の加熱手段により焼き付け、上塗り塗膜を形成することができる。焼付処理の温度は、通常、最高到達板温を180~270℃程度とする。また、熱風加熱の場合、熱風風速は、板表面で1~10m/秒、好ましくは5~10m/秒と早くすることが好ましい。これによって、前記塗膜表面のSa、SsKをより大きくできるためである。
また、前記塗膜の平均膜厚については、特に限定されものではないが、10~30μmであることが好ましく、12~22μmであることがより好ましい。前記塗膜の平均膜厚10μm以下の場合、前記塗膜表面のSa及びSsKが小さくなる傾向があり、前記塗膜の平均膜厚が30μmを超えると焼付時にワキという塗料中のシンナーの突沸によりピンホール状の欠陥を生じやすくなるおそれがある。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<本発明例1~5、比較例1~6>
(本発明例1)
板厚0.35mm、めっき付着量が片面あたり150g/m2、Zn-55%Al-1.6%Siの組成を有するめっき層を備えた溶融Al-Zn系めっき鋼板を用意した。
上記溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、バナジウム系のクロメートフリー化成処理液(樹脂成分としてウレタン樹脂を用い、防錆成分として、アセチルアセトンでキレート化した有機バナジウム化合物を含んだ化成処理液)を、溶融Al-Zn系めっき鋼板上にバーコータで塗布し、鋼板の到達温度90℃、焼き付け時間10秒で乾燥させ、付着量0.2g/m2になるように、化成処理皮膜を形成した。
その後、エポキシ変性ウレタン系樹脂を基体とし、リン酸バナジウムを防錆顔料とした下塗り塗膜用塗料を、上記化成処理皮膜上にロールコーターで塗布し、鋼板の到達温度210℃、焼き付け時間25秒で焼き付け、焼き付け後の膜厚が5μmになるように下塗り塗膜を形成した。
そして、下塗り塗膜を形成した鋼板を、水冷及び乾燥させた後、酸価80mgで平均分子量3000のポリエステル樹脂72質量部と、メチル化メラミン樹脂25質量部と、N,N-ジメチルアリルアミンでブロックされたメタンスルホン酸中和物3質量部と、を合計100質量部とした樹脂基体に対して、20質量部の日射反射性黒色顔料としての鉄-クロム系複合酸化物(シェファードカラー社製「Black411」)(平均粒径1.1μm)、1質量部の酸化チタン(平均粒子径500nm)、0.1質量部の酸化ポリエチレン(平均粒径5μm)、及び、シリコーン系消泡剤を配合した上塗り塗膜用塗料を用意した。その後、下塗り塗膜上に上塗り塗膜用塗料を塗布し、乾燥後の平均膜厚が18μmとなるよう、雰囲気温度400℃、板面の平均熱風風速5m/秒のオーブン内にて到達板温度220℃で35秒で焼付けて上塗塗膜(塗膜)を形成し、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(本発明例2)
上塗り塗膜用塗料に、さらに弁柄(赤色酸化鉄:平均粒径0.5μm)を3質量部加えたこと以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(茶色塗装鋼板)を作製した。
(本発明例3)
上塗り塗膜用塗料に、さらにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(平均粒径8μm)を3質量部追加した以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(本発明例4)
上塗り塗膜用塗料に、さらに合成シリカ(平均粒径8μm)を0.5質量部追加した以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(本発明例5)
化成処理皮膜の形成に先立って、溶融Al-Zn系めっき鋼板を、雰囲気温度200℃で12時間アニール処理を施したこと以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(比較例1)
上塗り塗膜用塗料が、日射反射性黒色顔料を含有せず、カーボンブラック(平均粒径0.05μm)5質量部含有すること以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(比較例2)
上塗り塗膜用塗料中に、日射反射性黒色顔料の含有量が1質量部であること以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(比較例3)
上塗り塗膜用塗料を塗布した後の焼き付けにおける、平均熱風風速を0.5m/秒としたこと以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(比較例4)
上塗り塗膜用塗料中に、N,N-ジメチルアリルアミンでブロックされたメタンスルホン酸中和物を含有しないこと以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(比較例5)
上塗り塗膜用塗料の樹脂基体として、ポリエステル-ウレタン系樹脂(ポリエステル樹脂とウレタン樹脂の混合物をブロック化イソシアネートで硬化させたもの)を用い、さらにアクリル樹脂ビーズ(平均粒径12μm)2質量部含有すること以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
(比較例6)
上塗り塗膜用塗料の樹脂基体として、ポリエステル-ウレタン系樹脂を用い、さらにガラスビーズ(平均粒径20μm)3質量部含有すること以外は、本発明例1と同様の条件で、サンプルとなる塗装鋼板(黒色塗装鋼板)を作製した。
<評価>
上記のように得られた塗装鋼板の各サンプルについて、以下の通り塗膜表面の条件を測定し、評価を行った。
(1)算術平均高さ(Sa)、スキューネス(SsK)
ISO 25178に準拠し、キーエンス製3D形状測定装置「VR-5200」を用い、各サンプルの塗膜表面の任意の18mm×24mmエリアを選択し、算術平均高さ(Sa)及びスキューネス(SsK)を測定した。測定結果を表1に示す。
(2)表面意匠評価
各サンプルの塗膜を目視で評価した。独特の凹凸感のある意匠性が見受けられる場合は〇(合格)とし、凹凸感のある意匠性が見受けられない場合には×(不合格)とし、評価を行った。評価結果を表1に示す。
(3)日射反射率評価
各サンプルの塗装鋼板の表面について、JIS K 5602に準拠し、日本分光製分光光度計「V-770」を用い、780~2500nmの近赤外波長域の分光反射率を測定することで、日射反射率(%)を得た。得られた結果を表1に示す。
評価については、日射反射率が40%以上である場合には、〇(合格)とし、日射反射率が40%未満である場合には、×(不合格)とした。
(4)耐プレッシャーマーク性評価
ポリエステル-メラミン樹脂100質量部に対し、5質量部の合成シリカ(平均粒径4μm)を加え、光沢5%に調整した相手材を作製した。テーブル加温できる油圧プレスに、各サンプルの塗装鋼板の表面と、相手材とを重ね合わせ、テーブル温度50℃、圧力8MPaの条件で12時間保持した。その後、取り出した各サンプルの塗装鋼板の表面の光沢を測定し、耐プレッシャーマーク性を評価した。
評価については、試験前後の光沢変化率が±10%以内の場合には、耐プレッシャーマーク性〇(合格)とし、試験前後の光沢変化率が±10%を超えるものは×(不合格)とした。
Figure 2023184581000002
表1の結果から、本発明例の各サンプルは、比較例の各サンプルに比べて、評価項目のいずれについてもバランスよく優れていることがわかる。
本発明によれば、低光沢で且つ意匠性が高く、遮熱性にも優れた塗装鋼板を提供できる。

Claims (6)

  1. 溶融Al-Zn系めっき鋼板上に、直接又は中間層を介して、塗膜が形成された塗装鋼板であって、
    前記塗膜は、表面の算術平均高さ(Sa)が1.5以上であり、表面のスキューネス(Ssk)が0.5以上であり、且つ、日射反射率が40%以上であることを特徴とする、塗装鋼板。
  2. 前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層は、Al:20~95質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、請求項1に記載の塗装鋼板。
  3. 前記塗膜は、平均粒径が0.5μm以上の日射反射性着色顔料を2質量%以上含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の塗装鋼板。
  4. 前記塗膜は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン変性ポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種の基体樹脂と、メラミン樹脂と、沸点80~150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸と、を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗装鋼板。
  5. 前記めっき層が、Al:50~60質量%、Si:1~3質量%及び任意添加成分:5質量%以下を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする、請求項2に記載の溶融塗装鋼板。
  6. 前記溶融Al-Zn系めっき鋼板のめっき層は、デンドライト相及びインターデンドライト相を有し、該デンドライト相のビッカース硬さが、10~110HV0.1であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の溶融塗装鋼板。
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