JP2023184443A - ローラー - Google Patents

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俊宏 鈴木
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Abstract

【課題】製造コストをより低下させることができ、かつ、ローラー基材と被焼成物に含まれる金属元素との反応を抑制でき、溶射膜の亀裂、剥がれを抑制できるローラーハース炉用のローラーを提供する。【解決手段】本発明のローラーは、炭化ケイ素質の基材と、前記基材の外表面を覆う保護膜とを有し、好適にはリチウムイオンバッテリー正極材原料の焼成用として用いられるローラーハース炉用のローラーであって、前記基材の全長に対する軸方向における中心をMとし、前記中心Mと前記ローラーの先端までの距離をLとし、前記中心Mを基準として前記軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離Cに含まれる前記基材の全表面の領域をXとしたときに、前記保護膜は前記領域Xにのみ形成され、かつ、0.33≦C/L≦0.8であり、前記保護膜の厚さが70μm以上250μm以下である。【選択図】図1

Description

本発明はローラーに関し、特に、ローラーハース炉で使用される、炭化ケイ素質からなるローラーに関するものである。
ローラーハース炉は、セラミックの粉末合成や焼結、粉末冶金焼成体の焼結や熱処理などの様々な用途で使用される。
このローラーハース炉10は、例えば、図2に示すように、炉壁11で囲繞された炉室12と、この炉室12を加熱するバーナー13と、炉室12を貫通する多数のローラー14とで構成されている。
このローラー14は、炉室12を形成する炉壁11に設けられた一方の貫通孔15を貫通し、炉室12を横切り他方の貫通孔16を貫通して回動自在に多数設けられている。
そして、このローラー14は、図示しない駆動装置により回転駆動され、このローラー14の回転によりセッター17に乗せられた被焼成物18をセッター17ごと搬送する。
前記ローラー14は、例えば、炭化ケイ素材料(炭化ケイ素質)で形成されている。
ローラー14が炭化ケイ素材料で形成されているため、炭化ケイ素材料が被焼成物の熱処理時に放出される各種金属元素と反応して、ローラーの表面に反応物の塊が形成される。
前記反応物の塊はローラー14を使用している途中でローラーの表面から欠落する。そして、ローラー14の表面には、反応物の塊が脱落したことにより、穴、凹み等のピットが形成される。
このピットはローラーの破損の起点となることから、このような現象の発生を抑制する必要がある。この抑制する方法としては、ローラーの表面に保護膜を形成することが知られている。
例えば、ローラーの表面に保護膜が形成されたローラーが特許文献1に示されている。
このローラーを図3に基づいて説明する。このローラー14は、図3に示すように、常圧焼結により製造された炭化珪素質のローラー基材14aを有する。
このローラー基材14aの外表面には、2mm以上の厚さのアルミナ質の溶射膜14bが形成されている。
このアルミナ溶射膜14bは、炭化ケイ素質のローラーが酸素と反応し酸化することを防止する。
更に、被焼成物から発生する各種金属元素と炭化ケイ素質のローラーが反応するのを抑制して、前記したピットが形成されるのを抑制する。
特開平11-323429号公報
上記特許文献1によれば、保護膜(溶射膜)の厚みが2mm以下の場合には、使用の際に溶射膜が剥離する懸念がある(特許文献1の段落(0038))との課題が示されている。
また、特許文献1に示されたローラーにあっては、その全表面がアルミナ質の保護膜(溶射膜)で覆われるため、溶射面積が広範となり、製造コストが嵩むという課題がある。
更に、ローラーに形成される保護膜(溶射膜)を厚くすると、これも製造コストが嵩むという課題がある。
ところで、近年、前記ローラーハース炉を用いて、被焼成物としてリチウムイオンバッテリー(以下、LiBともいう)正極材原料の焼成がなされている。
しかしながら、この正極材原料の焼成に適した、ローラーの保護膜(溶射膜)については検討されていなかった。
即ち、このLiB正極材原料の熱処理温度域(1000℃程度)において、ローラーの炭化ケイ素とLiB正極材原料の主成分であるニッケルとの反応を抑制する保護膜(溶射膜)については検討されていなかった。
具体的には、LiB正極材原料を焼成する場合において、使用されるローラーの保護膜(溶射膜)に関する適正な厚み、保護膜を形成する領域などについて十分な検討がされているとはいえないものであった。
本発明者らは、ローラー基材と被焼成物に含まれる金属元素との反応、具体的には、ローラー基材の炭化ケイ素材料とLiB正極材原料の主成分であるニッケルとの反応を抑制する保護膜(溶射膜)について鋭意研究した。
その結果、保護膜(溶射膜)の厚みが従来技術では適切でないとされていた2mm未満の場合でも、炭化ケイ素とニッケルとの反応を抑制できることを知見した。
更に、前記ローラーの特定領域に保護膜(溶射膜)を形成することにより、製造コストを低減しつつ適切に保護膜(溶射膜)の剥離を抑制できることを知見した。
そして、これら知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
本発明は、上記情況に鑑みてなされたものであり、製造コストをより低下させることができ、かつ、ローラー基材と被焼成物に含まれる金属元素との反応を抑制でき、更には保護膜(溶射膜)の亀裂、剥離を抑制したローラーハース炉用のローラーを提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明にかかるローラーは、炭化ケイ素質の基材と、前記基材の外表面を覆う、溶射膜からなる保護膜とを有し、被焼成物を焼成するためのローラーハース炉用のローラーであって、前記基材の全長に対する軸方向における中心をMとし、前記中心Mと前記ローラーの先端までの距離をLとし、前記中心Mを基準として前記軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離Cに含まれる前記基材の全表面の領域をXとしたときに、前記保護膜は前記領域Xにのみ形成され、かつ、0.33≦C/L≦0.8であり、前記保護膜の厚さが70μm以上250μm以下であることを特徴とする。
このように、本発明にかかるローラーの保護膜は、基材の全長に対する軸方向における中心をMとし、前記中心Mと前記ローラーの先端までの距離(長さ寸法)をLとし、前記中心Mを基準として前記軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離(長さ寸法)Cに含まれる前記基材の全表面の領域をXとしたときに、前記保護膜は前記領域Xにのみ形成されている。
そしてまた、前記CとLは、C/Lが0.33≦C/L≦0.8の関係を満たすような長さ寸法に形成される。
以上のように、前記C/Lの範囲にある基材の全表面の領域Xにのみ保護膜(溶射膜)を形成することで、ローラー基材と被焼成物に含まれる金属元素との反応を抑制することができる。また、基材の全長の全表面の領域に保護膜(溶射膜)を形成する場合に比べて、製造コストを安価になすことができる。
尚、C/Lが0.33未満の場合、溶射膜が保護膜としての機能が不十分となり、ローラー基材と被焼成物に含まれる金属元素との反応を抑制できない箇所が生じるため、好ましくない。
一方、C/Lが0.8を超える場合には、炭化ケイ素質のローラー基材と溶射膜との熱膨張率の差によって生じる応力で、溶射膜(保護膜)に亀裂が発生し、また溶射膜(保護膜)の剥がれが生じるため好ましくない。
前記溶射膜(保護膜)の厚さは70μm以上250μm以下である。
従来(特許文献1)にあっては、前記溶射膜の厚さが2mm以上であること好ましいとされている。
しかし、本発明の場合、溶射膜の厚さが70μm以上250μm以下であっても、ローラー基材の炭化ケイ素材料と、LiB正極材原料のニッケルの反応を抑制することができる。
これは、溶射膜(保護膜)中における、LiB正極材原料のニッケルの拡散速度が遅いため、溶射膜(保護膜)の厚さを従来必要と考えられていた厚さより薄くしても、ローラー基材の炭化ケイ素材料と、LiB正極材原料のニッケルの反応を抑制することができることを見出したものである。
特に、保護膜がアルミナ質である場合には、アルミナ中のNi拡散速度が非常に遅いため、溶射膜(保護膜)の厚さをより薄くしても、ローラー基材の炭化ケイ素材料と、LiB正極材原料のニッケルの反応を抑制することができる。
溶射膜の厚さが70μm未満である場合には、ローラー基材と被焼成物に含まれる金属元素との反応を十分に抑制できないため、好ましくない。
一方、溶射膜の厚さが250μmを超える場合には、保護膜に亀裂が発生することが懸念される。
溶射膜の厚さは、より好ましくは、100μm以上200μm以下である。また、前記溶射膜の厚さが2mm以上の場合に比べて、溶射膜の厚さが70μm以上250μm以下と薄く、安価に製造することができる。
ここで、前記保護膜がアルミナ質溶射膜であることが好ましい。
尚、ローラーハースキルン炉で用いられるローラーの保護膜(溶射膜)としては、炭化ケイ素上に形成する際の親和性や耐熱性、金属元素の遮蔽性等を加味すると、アルミナ、ムライトが好適であり、さらに溶射のしやすさやコストを考慮すると、アルミナがさらに好ましい。
更に、前記保護膜が、前記アルミナ質溶射膜の下にさらに1つ以上の他のセラミックス材料からなる中間層を有していることが、よりに好ましい。
他のセラミックス材料としては、ムライト、ジルコニアなどが挙げられる。
本発明では、被焼成物がリチウムイオンバッテリー正極材材料であれば、顕著にその効果が発揮されるものである。
本発明によれば、ローラーハースキルン炉で用いられるローラーの製造コストをより低下させることができ、かつ、ローラー基材(炭化ケイ素)と、被焼成物(LiB正極材原料)に含まれる金属元素(主成分のニッケル)との反応を抑制でき、保護膜(溶射膜)の亀裂、剥がれを抑制することができる。
特に、保護膜(溶射膜)をアルミナ質溶射膜とした場合には、膜厚が薄い場合であっても、ローラー基材(炭化ケイ素)と、被焼成物(LiB正極材原料)に含まれる金属元素(主成分のニッケル)との反応を抑制でき、また保護膜(溶射膜)の亀裂、剥がれを、効果的に抑制することができる。
本発明のローラーを説明するための断面模式図である。 一般的なローラーハース炉を示す断面模式図である。 従来のローラーを説明するための断面模式図である。 本発明のより好ましい態様を説明する断面模式図である。
以下、本発明の実施形態にかかるローラーを、図1に基づいて説明する。
本発明にかかるローラーZは、炭化ケイ素質の基材1と、前記基材の外表面を覆う保護膜2とを有する。そして、このローラーZは、被焼成物の焼成用として用いられるローラーハース炉用ローラーである。
そして、前記ローラーの基材1の全長に対する軸方向における中心をMとし、前記中心Mと前記ローラーの先端(端部)までの距離(長さ寸法)をLとし、前記中心Mを基準として前記軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離(長さ寸法)Cに含まれる前記基材の全表面の領域をXとしたときに、前記保護膜2は前記領域Xにのみ形成され、かつ、0.33≦C/L≦0.8であり、前記保護膜2の厚さが70以下250μm以上である。
このローラーZは、前記したように、炭化ケイ素質の基材1と、基材1の外表面を覆う、溶射膜からなる保護膜2とを有する。基材1の材質は炭化ケイ素質である。焼成用のローラーとしては、炭化ケイ素質材料が強度や耐久性において好適である。
なお、ローラーの基材1に用いられる炭化ケイ素質は、ローラーハースキルン炉で用いられるローラーとして必要な特性を有するものであればよい。
一例として、常圧焼結により製造されSiCが96重量%以上で、開気孔率が1%以下の炭化ケイ素で構成した炭化珪素質を、ローラーの基材1に用いると、高強度でかつ耐クリープ性優れた特性を有するローラーとすることができる。
前記基材1は、いわゆる中空の円筒管であり、ローラーハース炉で用いられる公知の形状が適用される。本発明では、特にその形状を厳密に限定するものではない。
被焼成物は、無機材料、金属材料、その他各種のセラミックス材料などである。
ここで、本発明は、焼成時に被焼成物から外方に拡散する各種金属元素を有する材料に対して特にその効果を発揮するものであり、具体的な例としてLiB正極材原料が挙げられる。
以下、被焼成物とこれに含まれる金属元素を、LiB正極材原料とニッケルを例にとって説明する。
尚、本発明は、LiB正極材原料が被焼成物である場合に用いられるローラーに限定されるものではなく、他の被焼成物である場合にも用いることができる。
前記保護膜2は、基材1が酸素や各種金属元素と反応するのを防止するために設けられる。
ローラーハース炉用のローラーZとしては、ムライト質あるいはアルミナ質の材料を溶射によって保護膜が形成される態様が好ましい。これは、ムライト層内あるいはアルミナ層内への金属元素の侵入(拡散)が起こり難いためである。
なお、溶射のしやすさやコストの面から、本発明の保護膜の材料としては、アルミナがより好ましい。
ところで、LiB正極材原料の主成分であるニッケルと、ローラーの基材1である炭化ケイ素が反応し、欠陥が生じることで、ローラーZの基材1の耐荷重強度が低下し折損する。また、ローラーの基材1である炭化ケイ素が、炉内の酸素と反応し、ローラーZの基材1の耐荷重強度が低下し折損する。
そのため、本発明の炭化ケイ素質のローラーZにあっては、前記したように、ローラーZの表面に、ムライト質あるいはアルミナ質の保護膜(溶射膜)2を付加している。
これにより、LiB正極材原料の熱処理温度域で炭化ケイ素とニッケルの反応、および、炭化ケイ素と酸素の反応を防止することができる。
ここで、本発明のローラーZでは、図1に示すように、基材1の全長に対する軸方向における中心をMとし、中心MとローラーZの先端(端部)までの距離(長さ寸法)をLとし、中心Mを基準として軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離(長さ寸法)Cに含まれる基材1の全表面の領域をXとしたときに、保護膜(溶射膜)2は領域Xにのみ形成され、かつ、C/Lが0.33≦C/L≦0.8である。
なお、このLはローラーハース炉の炉壁内に挿入されている部分を含む。
保護膜(溶射膜)2が形成された領域Xが基材1の全ての表面(両端部までの全ての表面)に相当する場合、保護膜(溶射膜)2を形成するコストが嵩むという問題が生じる。
また、ローラーハース炉の炉壁内部に収容され、この炉壁内部に位置するローラーZの両端部に保護膜(溶射膜)2を形成しても、正極材原料との接触は起こらず、好ましいものといえない。
なお、本発明では、LiB正極材原料は必ず領域Xと接触するように設計され、被焼成物が載置されるローラーZの箇所をPS(前記Cと同様に、等分かつ互いに反対方向の距離(長さ寸法)PSとする)は、0.5≦PS/L≦0.7程度(中心Mの近辺)となることが好ましい。
また保護膜2(溶射膜)は、基材1と熱膨張率が異なるので、高温で繰り返し使用を重ねていくに従い、保護膜(溶射膜)2と基材1の接触する境界付近において、基材1または保護膜2に亀裂が発生する。
これは、接触面積が大きいほど、亀裂の発生するリスクが大きくなる。また、保護膜(溶射膜)2の厚さが厚いと、やはり熱膨張率の差により亀裂が生じやすくなる。なお、保護膜2が薄すぎると反応の抑制が困難となる。
そこで、本発明のより好ましい一態様として、例えば、アルミナ質溶射膜の下にさらに1つ以上の他のセラミックス材料からなる中間層を有しているものが挙げられる。
即ち、基材1の上に、前記中間層が積層され、この中間層に更に前記アルミナ質溶射膜が積層されるのが好ましい。
前記他のセラミックス材料は、ムライト等の熱膨張率が炭化ケイ素とアルミナの中間にあるものが好ましい。
このような中間層があれば、基材と保護膜と熱応力に起因する亀裂や膜剥がれの発生をさらに低減でき、好適である。この中間層は、単層でもよく、2種類以上の材料が用いられた多層構造であってもよい。
前記保護膜(溶射膜)2は、基材1の全長の全表面に付与するのではなく、ローラーZの軸方向における中心Mを基準とした所定の範囲内に形成される。即ち、保護膜2は領域Xにのみ形成され、0.33≦C/L≦0.8の範囲に形成される。
保護膜(溶射膜)2は領域Xにのみ形成され、0.33≦C/L≦0.8の範囲に形成されるのは、以下の理由による。
ローラーハース炉内部に載置されたローラーZにあっては、中心Mが加熱のためのヒーターに最も近く、集中的に加熱される。
また前記中心Mの周辺部にLiB正極材原料が載置される。載置したLiB正極材原料から発生したニッケルは、被焼成物からあまり遠くない領域(ローラー表面)に付着する。
即ち、温度が低く、LiB正極材原料から離れた箇所であるローラーZの両端部ではニッケルは付着しづらく、その影響(ローラー(炭化ケイ素)とニッケルの反応および強度劣化による折損の発生)は想定していたよりはるかに低い。
なお、保護膜(溶射膜)2が形成されていない箇所ではニッケルと基材1との反応が生じる。しかしながら、被焼成物の荷重によって生じるローラーの応力が最大となるローラーZの軸方向の中央部付近には、保護膜(溶射膜)2が形成され、ニッケルと基材1との反応が抑制される。
このように、ローラーの応力が最大となるローラーZの軸方向の中央部付近には、保護膜(溶射膜)2が形成されているため、反応によって生じる基材の強度低下による折損のリスクは大幅に低減される。
また、上記したように、ローラーZの破損は最も発生応力の大きい長手中央部の中心Mの近傍にて発生することが大半であることから、基材1の全領域に設けることなく、中心Mを含むその周辺に保護膜(溶射膜)2を設けることで、低コストにて長寿命のローラーの提供が可能となる。
ここで、ローラーZの先端までの距離(長さ寸法)をLとし、中心をMとして、中心Mを基準として、軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離(長さ寸法)Cに含まれる基材1の全表面の領域をXとする。
尚、距離(長さ寸法)Cの2倍の距離(長さ寸法)が領域Xの長さとなる。領域Xは前記長さを有し、基材1の前記長さの全表面(全周囲)の領域を意味している。また、この領域Xの表面にのみ保護膜2が均一に形成される。
そして、保護膜(溶射膜)が、0.33≦C/L≦0.8が成立するように形成される。
前記C/Lが0.33未満の場合には、保護膜としての機能が不十分となり、基材1が前記C/Lが0.8を超える場合には、熱膨張率の差による応力で発生する保護膜(溶射膜)2の膜剥がれが懸念される。
なお、亀裂が発生してこれが進行する場合には膜剥がれに至り、金属汚染の抑制効果が得られ難くなる。一方、亀裂が進行せず、膜剥がれに至らない軽微な亀裂の場合には、基材1への金属元素の侵入し難いため、本発明の金属汚染の抑制効果が得られる。
また、前記保護膜(溶射膜)2の厚さTは70μm以上250μm以下である。
このような、従来の保護膜と比べて厚さが薄い場合であっても、LiB正極材原料の熱処理温度域(1000℃程度)で炭化ケイ素とニッケルの反応を防止できる。
なお、処理時の酸素と炭化ケイ素との反応は、この温度域(1000℃程度)で使用する限りは、炭化ケイ素の酸化反応で生成された酸化膜はごく薄く、炭化ケイ素が酸化されることによる基材への悪影響である剥離や強度低下等は、さほど問題とするには及ばないものといえる。
保護膜(溶射膜)2の厚さTが70μm未満の場合、保護膜としての効果が得られず、保護膜(溶射膜)2の厚さTが250μmを超える場合、亀裂の発生が懸念される。保護膜(溶射膜)2の厚さTは、より好ましくは、100μm以上200μm以下である。
このように、基材1に常圧焼結により製造されSiCが96重量%以上で開気孔率が1%以下の炭化珪素で構成した炭化ケイ素質を用い、さらに基材1に70μm以上250μm以下の保護膜(溶射膜)2を、特定の領域Xに形成することで、酸化による減肉を防止するほか、基材1と溶射膜2間の熱膨張率差による、膜の亀裂もしくは剥離を防止することが可能となる。
次に、前記ローラーZの製造方法を説明する。
まず、SiC粉末96重量%以上で残部がB-C系助剤よりなる原料を混練、成形して基材1の成形体を作り、この成形体を不活性ガス雰囲気下にて2000~2300℃で焼成する。
次に、焼成された基材1にアルミナの保護膜(溶射膜)2を形成する。保護膜(溶射膜)2を形成する溶射方法としては、周知のプラズマ溶射または水プラズマ法を用いることができる。
溶射材は30μm以上75μm以下に粒度調整された電融アルミナで、その純度は99.3%である。溶射膜2の厚さは、前記したように、70μm以上250μm以下に形成される。
また、保護膜(溶射膜)2として、ムライトを形成する場合も、アルミナの時と同様に、周知のプラズマ溶射または水プラズマ法を用いることができる。
以上のように、従来のローラーにあっては、保護膜を必要以上に厚く、広い領域に形成していたことにより、特性の低下および高コスト化を招いていた。
これに対して、本発明にかかるローラーZにあっては、例えばLiB正極材原料の焼成用ローラーとして、必要にして十分な保護膜(溶射膜)2の形成を行うことができる。
その結果、ローラーの製造コスト低減化を図ることができる。また、ローラーの基材と被焼成物に含まれる金属元素との反応が抑制されることによる溶射膜の亀裂、剥がれの発生を低減することができる。
より好ましい本発明のローラーは、さらに以下の特徴を有している。
すなわち、このローラー保護膜(溶射膜)2は、中心Mから先端(端部)に向かう境界Pまでの間に存在する保護膜2aと、境界Pから距離Cの間に存在する保護膜2bで構成されている。前記保護膜2aの厚さは一定であり、保護膜2bの厚さは先端(端部)に向かって減少している。
図4に、上記したより好ましい態様に係るローラーの模式図を示す。まず、図の通り、距離Cの間に存在する保護膜2は、中心Mから先端に向かう境界Pまでの間に存在する保護膜2aと、境界Pから距離Cの間に存在する保護膜2bで構成されている。
そして、保護膜aの厚さは一定であり、保護膜2bの厚さは先端に向かって減少している。すなわち、保護膜2全体としては、ローラーの中心部Cで厚さが略一定であり、境界Pから先端部に向かって厚さが減少する形態に構成されている。
このような形態にあっては、保護膜2aの領域が炉からの熱を主に受けている領域であり、当該領域での熱的ダメージに対しての耐久性が確保されている。
一方、保護膜2bの領域は炉の外方へ熱が逃げる方向に存在するので温度勾配がつきやすい。そして、この保護膜2bの膜厚が大きいと、基材1と熱膨張係数の異なる保護膜2に亀裂等が発生しやすい。
そこで、保護膜2bは、その厚さが徐々に薄くなる形態を採用し、保護膜のある箇所と保護膜の無い箇所との境界Pで顕著に発生する応力を、より抑制した。この形態は、図1に示す形態よりも応力を緩和することが出来るという点で、より好ましい態様といえる。
ここで、保護膜2bの距離(長さ寸法)Lbは、保護膜2aの平均厚さTの4倍から12倍程度であると好ましい。
この範囲であれば、本発明の主たる効果(炭化ケイ素とニッケルの反応を防止)に加えて、保護膜の端部での応力緩和効果も適切に得られる。傾斜が急峻(距離が短い)と、応力緩和効果が得られにくい。
一方、傾斜が過度に緩やか(距離が長すぎる)であると、傾斜部の膜厚が薄い箇所で膜の剥離が懸念され、またこのような緩やかな傾斜を作る製造コストが著しくかさみ、実用的でない。
尚、図4に示すように、保護膜2aの距離(長さ寸法)Laと保護膜2bの距離(長さ寸法)Lbの和が、境界Pから距離(長さ寸法)Cとなる。
保護膜2aと保護膜2bを溶射膜で形成する場合には、境界P付近での原料粉の吹付時にその吐出量を徐々に減らしていく、あるいは、境界P付近に遮蔽板を設けて溶射を行い、遮蔽板と基材1の表面との隙間からもれる原料粉の流れで傾斜をつける、等の方法が挙げられる。
この遮蔽板とは、基材1の上にかぶせるようにして載せられる細長い板状の部材である。この遮蔽板には、保護膜2aが形成される部分が露出するような窓(開口部)が設けられている。
溶射を行う際、保護膜2aを形成する基材1の領域に、遮蔽板の窓(開口部)を対向させ、前記境界Pから基材1の端部までを、遮蔽板の窓のない部分で覆い、溶射粉を吹き付ける。
その際、基材1の表面と板状の部材のわずかな隙間から溶射粉が侵入し、基材に付着する。
このため、図4に示すように、保護膜(溶射膜)2bは、端部に向かって傾斜した膜厚になる。
傾斜は溶射粉の噴射量や噴射時間などで調整可能である。また、遮蔽板の材質はセラミックスであり、アルミナ等が用いられる。その他、特に、保護膜の形成とその厚さの変更を行う方法については、格別制限されるものではない。
以上、本発明のより好ましい態様は、本発明の保護膜が比較的薄くてもよい、という特徴を活かしつつ、保護膜があることによる不具合(熱応力による亀裂発生)をさらに低減できる、という効果を呈するものといえる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記に示す実施例により制限されるものではない。
基材は、全長3000mm、外径40mm、内径25mmの円筒状である。また、この基材の材質として、クアーズテック株式会社製のCERASIC-Bを用いた。これは、常圧焼結法により製造され、炭化ケイ素が98重量%、開気孔率0.1%のものである。また、保護膜(溶射膜)は、市販のアルミナ粉を用いて、ガスプラズマ法による公知の条件にて溶射することで形成した。
[評価]
公知のローラーハース炉を用いて焼成試験を行った。被焼成物として粉末状のLiB正極材原料(三元系)を用いる。
熱処理条件は1000℃とした。そして、各実施例及び各比較例のローラーについて、保護膜(溶射膜)の表面状態を目視観察して、ローラーの折損の発生が確認されたらライフ到達(寿命)と判断し、このライフ到達日が200日以上である場合に合格とした。
また、ローラーの中心部Mの表面について、折損部のローラー基材表面と保護膜(溶射膜)の界面の微小X線回折分析を行い、ニッケルが前記分析装置の検出限界(1%)を超えて検出されたものを不合格とした。
さらに、保護膜(溶射膜)の表面状態を目視観察して剥離の発生が認められたものを不合格とした。
[実施例1]
図1に示す、保護膜の領域XをC/L=0.8、保護膜の厚さをT=100μmとした。ライフは200日を超えたので合格、ニッケルは検出限界を下回り合格であった。また、全体に亀裂、膜剥がれも観察されなかった。
[実施例2]
同様に、保護膜の領域XをC/L=0.8、保護膜の厚さをT=200μmとした。ライフは200日を超えたので合格、ニッケルは検出限界を下回り合格であった。ただし、保護膜の厚さTが大きいので、中心部M近傍の保護膜2と基材1の界面に微小な亀裂が確認され、この点において実施例1には劣るものであった。
[実施例3]
保護膜の領域XをC/L=0.5、保護膜の厚さをT=100μmとした。ライフは200日を超えたので合格、ニッケルは検出されず合格であった。
[実施例4]
保護膜の領域XをC/L=0.5、保護膜の厚さをT=250μmとした。ライフは合格、ニッケルは検出されず合格であった。ただし、中心部M近傍の保護膜2と基材1の界面に微小な亀裂が実施例2よりも多めに観察された。
[実施例5]
保護膜の領域XをC/L=0.5、保護膜の厚さをT=70μmとした。ライフは200日を超えたので合格、ニッケルは検出されず合格であった。
[実施例6]
保護膜の領域XをC/L=0.33、保護膜の厚さをT=100μmとした。ライフは200日を超えたので合格、ニッケルは検出されず合格であった。
ただし、目視で判別できる程度のピットの発生が認められ、合格ではあるがこの点で実施例1,3,5よりは劣るものであった。
[実施例7]
保護膜として、厚さ100μmのムライトからなる層を形成し、その他の条件は実施例4と同様にした。このとき、前記ムライトの保護層もアルミナと同様の方法で形成した。すなわち、ガスプラズマ法による公知の条件にて溶射することで形成した。
ライフは200日を超えたので合格、ニッケルは検出限界を下回り合格であった。さらに実施例4との比較で、微小な亀裂の発生も確認されなかった。
[比較例1]
保護膜の領域XをC/L=0.9、保護膜の厚さをT=100μmとした。保護膜2が165日後に剥がれが見られ、ライフが不合格であった。
[比較例2]
保護膜の領域XをC/L=0.3、保護膜の厚さをT=100μmとした。80日後に非保護膜部より折損が見られ、ライフが不合格であった。
[比較例3]
保護膜の領域XをC/L=0.5、保護膜の厚さをT=50μmとした。ローラーの中心部Mの表面からニッケルが検出され、不合格であった。
[比較例4]
保護膜の領域XをC/L=0.5、保護膜の厚さをT=280μmとした。ローラーの中心部Mの近傍にける保護膜2と基材1の界面に、大きな亀裂が確認され、製品としての使用が不適切と判断し、不合格とした。
[実施例8]
実施例1の態様において、境界P近辺を機械研磨して、保護膜2が基材の表面に対して略垂直になるようにした。その他の条件は実施例1と同様である。なお、実施例1では、Lbは1mm程度である。
そして、前述の評価を行った後、さらに、ローラーを1000℃に加熱後室温で放置するという加速試験を3回行ってから、寿命、ニッケルの検出限界、保護膜2(特に保護膜bと保護膜の無い箇所の境界部)の表面状態を実施例1と同様に判断した。
その結果、実施例1は、保護膜2bと保護膜の無い箇所の境界付近(前記境界から中心Mに向かって1~2mm程度の領域)において、保護膜2bの表面に、軽微な亀裂は観察されなかった。一方で、実施例8は、上記した実施例1と同じ領域において、保護膜2bの表面に微小な亀裂が見られた。
すなわち、実施例1は実施例8と比較すると、通常よりさらに過酷な条件を想定した場合において、保護膜に発生する亀裂をより効果的に防止することができることを示すものといえる。なお、その他の項目は、実施例1および実施例8は合格であった。
なお、実施例1と実施例8の比較は、あくまで加速試験を追加した場合に差が生じるものであるので、通常の使用環境においては、効果の差異は出にくいものといえる。そのため、保護膜2bの厚さを基材1の軸方向に傾斜を設けることは、使用目的や環境、保護膜bの製造コスト、その他求められる性能、等の事情を総合的に勘案して、必要に応じて採用するのが好ましい。
Z ローラー
1 基材
2 保護膜(溶射膜)
M 基材(ローラー)の全長に対する軸方向における中心
L 基材(ローラー)の中心から基材(ローラー)の先端までの距離(長さ寸法)
C Mを基準として軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離(長さ寸法)
X Cに含まれる基材1の全表面の領域
2a 膜の厚さが略一定である距離(長さ寸法)
2b 膜の厚さが端部に向かって減少している距離(長さ寸法)

Claims (5)

  1. 炭化ケイ素質の基材と、前記基材の外表面を覆う、溶射膜からなる保護膜とを有し、被焼成物を焼成するローラーハース炉用のローラーであって、
    前記基材の全長に対する軸方向における中心をMとし、前記中心Mと前記ローラーの先端までの距離をLとし、前記中心Mを基準として前記軸方向に沿って等分かつ互いに反対方向の距離Cに含まれる前記基材の全表面の領域をXとしたときに、
    前記保護膜は前記領域Xにのみ形成され、かつ、0.33≦C/L≦0.8であり、前記保護膜の厚さが70μm以上250μm以下であることを特徴とするローラー。
  2. 前記保護膜がアルミナ質溶射膜であることを特徴とする請求項1に記載のローラー。
  3. 前記保護膜が、前記アルミナ質溶射膜の下にさらに1つ以上の他のセラミックス材料からなる中間層を有していることを特徴とする請求項2に記載のローラー。
  4. 前記被焼成物がリチウムイオンバッテリー正極材原料である請求項2に記載のローラー。
  5. 前記被焼成物がリチウムイオンバッテリー正極材原料である請求項3に記載のローラー。
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