JP2023178675A - 深溝玉軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】発熱を抑制すると共に保持器の強度を確保することができる深溝玉軸受を提供する。【解決手段】深溝玉軸受1は、内方部材である内輪2と、外方部材である外輪3と、これら内外輪2,3間に介在される複数の玉4と、これら玉4を保持する波形保持器5とを備える。波形保持器5の径方向寸法である帯幅hを、玉4の直径BDの30%以上44%以下とした。帯幅hの上限値を玉直径の44%以下に制限することで、グリースが容易に流れる効果およびグリースの攪拌力が減少する効果により、急加速回転時に深溝玉軸受1の温度上昇を抑制する。帯幅hの下限値を玉直径の30%以上にしたため、玉4の動きが安定化するうえ、必要な保持器強度を充足し得る。【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、鉄道車両の主たる駆動源である電動機等に用いられる深溝玉軸受に関する。
金属製の波形保持器を備えた深溝玉軸受において、波形保持器のポケット面にショットピーニング処理を施す技術が提案されている(特許文献1)。前記ポケット面にショットピーニング処理を施すことで、耐摩耗性等に優れ、発熱を低減し得る深溝玉軸受を提案している。
深溝玉軸受は幅広い用途に使用されている。この深溝玉軸受を、例えば、鉄道車両の主たる駆動源である電動機等に使用する場合、急加速回転が頻繁に起きるため、深溝玉軸受がより発熱する場合がある。
本発明の目的は、発熱を抑制すると共に保持器の強度を確保することができる深溝玉軸受を提供することである。
本発明の深溝玉軸受は、内方部材および外方部材と、内方部材の外周面および前記外方部材の内周面に形成される軌道面と、軌道面間に介在する複数の玉と、複数の玉を保持する波形保持器を備えた深溝玉軸受であって、波形保持器は、円周方向に沿って配設される半球状膨出部と、円周方向に隣合う半球状膨出部を繋ぐ平坦部と、を有する2枚の環状保持板が軸方向に組み合わされ、環状保持板は、軸方向に重なる平坦部同士を鋲で連結するための鋲孔が形成され、鋲孔の直径を、波形保持器の径方向寸法である帯幅hの25%以上35%以下とし、波形保持器の径方向寸法である帯幅hを、前記玉の直径の30%以上44%以下とした。
波形保持器の帯幅hの上限値を玉直径の44%以下に制限することで、(1)一般的な深溝玉軸受よりも波形保持器と玉との間のクリアランスが大きくなる。これにより、軸受運転中にグリース等の潤滑剤が波形保持器と玉間の空間へ容易に出入りする。(2)潤滑剤に接触する波形保持器の面積が減少し、内方部材および外方部材に付着した潤滑剤の攪拌力が低減し得る。
潤滑剤が容易に流れる効果(1)および潤滑剤の攪拌力が減少する効果(2)により、急加速回転時に深溝玉軸受の温度上昇を抑制することができる。
波形保持器の帯幅hの下限値を玉直径の30%以上にしたため、玉の動きが安定化するうえ、必要な保持器強度を充足することができる。
潤滑剤が容易に流れる効果(1)および潤滑剤の攪拌力が減少する効果(2)により、急加速回転時に深溝玉軸受の温度上昇を抑制することができる。
波形保持器の帯幅hの下限値を玉直径の30%以上にしたため、玉の動きが安定化するうえ、必要な保持器強度を充足することができる。
前記波形保持器の帯幅hを、前記玉の直径の30%以上40%以下としてもよい。帯幅hの上限値を玉直径の40%以下に制限することで、軸受の発熱を抑制すると共に保持器材料を低減し製造コストの低減を図れる。
前記波形保持器は、円周方向に沿って配設される半球状膨出部と、円周方向に隣合う前記半球状膨出部を繋ぐ平坦部と、を有する環状保持板が軸方向に2枚組み合わされたものであり、軸方向に重なる前記平坦部同士を鋲で連結するための鋲孔の直径を、前記帯幅hの25%以上35%以下としてもよい。この場合、保持器の強度をより確実に確保することができる。鋲孔の直径が帯幅hの35%を超えると、鋲で連結している部分の保持器径方向寸法が小さくなり保持器の強度上好ましくない。鋲孔の直径が帯幅hの25%未満とすると、鋲が小径になり平坦部同士の連結に耐えられない可能性がある。
前記波形保持器のポケット部の内径縁部または外径縁部に、切欠き部が設けられていてもよい。この場合、軸受運転時に、静止空間に溜まったグリースが遠心力により切欠き部から軌道面へ供給される。つまり、静止空間に滞留しようとするグリースの一部が切欠き部で描き取られることで、グリースの基油が分離して切欠き部から順次、保持器内、玉表面、および軌道面へと供給され易くなる。これにより深溝玉軸受の発熱が抑えられる。ポケット部に切欠き部が設けられているため、玉とポケット部の間でのグリースせん断抵抗が低減され、深溝玉軸受の低トルク化および低発熱化を図れる。
運転開始時においては、前記切欠き部が設けられていることで、玉の表面に付着したグリースの掻き取り量が増え、グリースが動空間から静止空間に排出され易くなる。これによりグリースの慣らし時間を低減することができる。前記静止空間とは、軸受空間のうち、軸受回転時に玉および保持器が通過しない空間を指す。
前記波形保持器の内径から保持器ピッチ円直径までの径方向距離IPと、前記波形保持器の外径から前記保持器ピッチ円直径までの径方向距離OPとは、深溝玉軸受の内方部材が回転するときIP≧OP、深溝玉軸受の外方部材が回転するときOP≧IPとしてもよい。
内方部材回転型の場合:内方部材の回転によりグリースが径方向外方に飛び、外方部材の内周面にグリースが溜まる。このため、径方向距離IPよりも径方向距離OPが小さいすなわちIP≧OPの方が、外方部材の内周面に溜まったグリースと、波形保持器の外径の攪拌容積が少なくなって、深溝玉軸受が温度上昇し難くなる。
外方部材回転型の場合:グリースが内方部材の外周面に溜まるため、径方向距離OPよりも径方向距離IPが小さいすなわちOP≧IPの方が、攪拌容積が少なくなって深溝玉軸受の温度上昇を抑えられる。
外方部材回転型の場合:グリースが内方部材の外周面に溜まるため、径方向距離OPよりも径方向距離IPが小さいすなわちOP≧IPの方が、攪拌容積が少なくなって深溝玉軸受の温度上昇を抑えられる。
本発明の深溝玉軸受は、波形保持器の鋲孔の直径を、波形保持器の径方向寸法である帯幅hの25%以上35%以下としたことに加え、帯幅hを玉の直径の30%以上44%以下としたため、発熱を抑制すると共に保持器の強度を確保することができる。
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態に係る深溝玉軸受を図1ないし図4と共に説明する。本明細書において、深溝玉軸受を、単に、軸受と言う場合がある。
<深溝玉軸受の概略構成>
図1は、実施形態に係る深溝玉軸受1を軸受軸心および玉中心を通る仮想の平面で切断して見た縦断面図である。深溝玉軸受1は、例えば、鉄道車両の主たる駆動源である電動機等に用いられる。但し、深溝玉軸受1は、前記電動機以外の用途にも適用可能である。同図1に示す深溝玉軸受1は、内方部材である内輪2と、外方部材である外輪3と、玉4と、波形保持器5とを備える。内外輪2,3の軌道面間2a,3aに介在する複数の玉4が波形保持器5により周方向一定間隔おきに保持されている。内外輪2,3間の軸受空間には、グリース等の潤滑剤が封入されている。内外輪2,3および玉4は、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼またはマルテンサイト系のステンレス鋼等からなる。但し、これらの鋼に限定されるものではない。前記軸受空間を塞ぐ図示外のシール部材が外輪3に取付けられてもよい。
本発明の一実施形態に係る深溝玉軸受を図1ないし図4と共に説明する。本明細書において、深溝玉軸受を、単に、軸受と言う場合がある。
<深溝玉軸受の概略構成>
図1は、実施形態に係る深溝玉軸受1を軸受軸心および玉中心を通る仮想の平面で切断して見た縦断面図である。深溝玉軸受1は、例えば、鉄道車両の主たる駆動源である電動機等に用いられる。但し、深溝玉軸受1は、前記電動機以外の用途にも適用可能である。同図1に示す深溝玉軸受1は、内方部材である内輪2と、外方部材である外輪3と、玉4と、波形保持器5とを備える。内外輪2,3の軌道面間2a,3aに介在する複数の玉4が波形保持器5により周方向一定間隔おきに保持されている。内外輪2,3間の軸受空間には、グリース等の潤滑剤が封入されている。内外輪2,3および玉4は、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼またはマルテンサイト系のステンレス鋼等からなる。但し、これらの鋼に限定されるものではない。前記軸受空間を塞ぐ図示外のシール部材が外輪3に取付けられてもよい。
<波形保持器5>
波形保持器5は、円周方向に沿って所定間隔で配設された半球状膨出部6(図2)を有する二枚の環状保持板5a,5aが軸方向に組み合わされた波形の保持器である。波形保持器を単に保持器と言う場合がある。図2に示す各環状保持板5aは、円周方向に沿って配設される半球状膨出部6と、円周方向に隣合う半球状膨出部6を繋ぐ平坦部7とを有する。
波形保持器5は、円周方向に沿って所定間隔で配設された半球状膨出部6(図2)を有する二枚の環状保持板5a,5aが軸方向に組み合わされた波形の保持器である。波形保持器を単に保持器と言う場合がある。図2に示す各環状保持板5aは、円周方向に沿って配設される半球状膨出部6と、円周方向に隣合う半球状膨出部6を繋ぐ平坦部7とを有する。
図3のように、これら環状保持板5a,5aが組み合わされた状態で、平坦部7同士が軸方向に重ね合わされ、これら平坦部7,7が鋲Rbにより連結される。各半球状膨出部6が対向してリング状のポケット部8が形成され、各ポケット部8に玉4が保持される。図2の各環状保持板5aは、例えば、冷間圧延鋼の帯鋼のプレス加工品である。平坦部7同士を鋲Rb(図3)で連結するための鋲孔Rhの直径を、後述する帯幅hの25%以上35%以下としている。
<帯幅hについて>
波形保持器5(図1)の径方向寸法である帯幅hは、図1のように、玉4の直径BDの30%以上44%以下とし、好ましくは、玉4の直径BDの30%以上40%以下としている。帯幅hの上限値を玉4の直径BDの44%以下に狭く制限することで、一般的な深溝玉軸受よりも波形保持器5と玉4との間の図4に示すクリアランスδが大きくなる。前記クリアランスδは、ポケット部8の両側縁部と玉4との間の径方向隙間を指す。帯幅hの下限値を玉4の直径BDの30%以上にしたため、玉4の動きが安定化するうえ、必要な保持器強度を充足し得る。
波形保持器5(図1)の径方向寸法である帯幅hは、図1のように、玉4の直径BDの30%以上44%以下とし、好ましくは、玉4の直径BDの30%以上40%以下としている。帯幅hの上限値を玉4の直径BDの44%以下に狭く制限することで、一般的な深溝玉軸受よりも波形保持器5と玉4との間の図4に示すクリアランスδが大きくなる。前記クリアランスδは、ポケット部8の両側縁部と玉4との間の径方向隙間を指す。帯幅hの下限値を玉4の直径BDの30%以上にしたため、玉4の動きが安定化するうえ、必要な保持器強度を充足し得る。
帯幅hを狭くする内容は、(1)波形保持器5の内径(保持器内径)をより大きくする内径拡大か、(2)波形保持器5の外径(保持器外径)をより小さくする外径縮小か、(3)保持器内径を大きくかつ保持器外径を小さくする内径拡大かつ外径縮小、という3型式である。
<試験>
今般、帯幅hを狭くする実施例1~4の各実施例での鉄板の波形保持器、および帯幅を狭くしない比較例の波形保持器を取り付けた深溝玉軸受(呼び番号:6311)の急加速試験をそれぞれ実施した。
今般、帯幅hを狭くする実施例1~4の各実施例での鉄板の波形保持器、および帯幅を狭くしない比較例の波形保持器を取り付けた深溝玉軸受(呼び番号:6311)の急加速試験をそれぞれ実施した。
<試験条件>
潤滑方式:鉄道車両の主電動機用途のグリースによる潤滑(グリース封入量:40g)
ラジアル荷重:160kgf
回転速度:内輪回転とし、前記主電動機の実機使用条件に相当する回転速度を仮定した急加速回転および一定の回転速度とした。
温度:固定輪である外輪または外輪が設置されるハウジングの温度を温度センサ等により測定し温度上昇分を記録した。
潤滑方式:鉄道車両の主電動機用途のグリースによる潤滑(グリース封入量:40g)
ラジアル荷重:160kgf
回転速度:内輪回転とし、前記主電動機の実機使用条件に相当する回転速度を仮定した急加速回転および一定の回転速度とした。
温度:固定輪である外輪または外輪が設置されるハウジングの温度を温度センサ等により測定し温度上昇分を記録した。
<試験データ>
比較例の帯幅に対する各実施例の帯幅の比率は、各実施例の帯幅を比較例の帯幅で除した値である。比率として、例えば、実施例1では、この実施例1の帯幅9.05を比較例の帯幅9.1で除し小数点3桁目を四捨五入することで0.99の比率が得られる。
<試験結果>
試験より、下記のことが判明した。
・実施例1~4は、比較例に対し保持器の帯幅をより小さくすることで、軸受の温度上昇が抑えられる。
・内輪回転の軸受に対し、保持器外径を小さくする実施例3は、保持器内径を大きくする実施例2より軸受の温度上昇を抑えられる。
・最も効果があったのは、保持器内径を拡大し、かつ保持器外径を縮小する実施例4の深溝玉軸受である。
試験より、下記のことが判明した。
・実施例1~4は、比較例に対し保持器の帯幅をより小さくすることで、軸受の温度上昇が抑えられる。
・内輪回転の軸受に対し、保持器外径を小さくする実施例3は、保持器内径を大きくする実施例2より軸受の温度上昇を抑えられる。
・最も効果があったのは、保持器内径を拡大し、かつ保持器外径を縮小する実施例4の深溝玉軸受である。
<作用効果>
以上説明した図1の深溝玉軸受1によると、波形保持器5の帯幅hの上限値を玉4の直径BDの44%以下に制限することで、(1)一般的な深溝玉軸受よりも波形保持器5と玉4との間のクリアランスδ(図4)が大きくなる。これにより、軸受運転中にグリースが波形保持器5と玉4間の空間へ容易に出入りする。(2)グリースに接触する波形保持器5の面積が減少し、内外輪2,3に付着したグリースの攪拌力が低減し得る。
グリースが容易に流れる効果(1)およびグリースの攪拌力が減少する効果(2)により、急加速回転時に深溝玉軸受1の温度上昇を抑制することができる。
波形保持器5の帯幅hの下限値を玉4の直径BDの30%以上にしたため、玉4の動きが安定化するうえ、必要な保持器強度を充足することができる。
以上説明した図1の深溝玉軸受1によると、波形保持器5の帯幅hの上限値を玉4の直径BDの44%以下に制限することで、(1)一般的な深溝玉軸受よりも波形保持器5と玉4との間のクリアランスδ(図4)が大きくなる。これにより、軸受運転中にグリースが波形保持器5と玉4間の空間へ容易に出入りする。(2)グリースに接触する波形保持器5の面積が減少し、内外輪2,3に付着したグリースの攪拌力が低減し得る。
グリースが容易に流れる効果(1)およびグリースの攪拌力が減少する効果(2)により、急加速回転時に深溝玉軸受1の温度上昇を抑制することができる。
波形保持器5の帯幅hの下限値を玉4の直径BDの30%以上にしたため、玉4の動きが安定化するうえ、必要な保持器強度を充足することができる。
帯幅hの上限値を玉4の直径BDの40%以下に制限した場合には、軸受1の発熱を抑制すると共に保持器材料を低減し製造コストの低減を図れる。
軸方向に重なる図2の平坦部7同士を鋲Rb(図3)で連結するための鋲孔Rhの直径を、帯幅hの25%以上35%以下としている。この場合、保持器の強度をより確実に確保することができる。鋲孔Rhの直径が帯幅hの35%を超えると、鋲で連結している部分の保持器径方向寸法が小さくなり保持器の強度上よくない。鋲孔Rhの直径が帯幅hの25%未満とすると、鋲が小径になり平坦部7同士の連結に耐えられない可能性がある。
軸方向に重なる図2の平坦部7同士を鋲Rb(図3)で連結するための鋲孔Rhの直径を、帯幅hの25%以上35%以下としている。この場合、保持器の強度をより確実に確保することができる。鋲孔Rhの直径が帯幅hの35%を超えると、鋲で連結している部分の保持器径方向寸法が小さくなり保持器の強度上よくない。鋲孔Rhの直径が帯幅hの25%未満とすると、鋲が小径になり平坦部7同士の連結に耐えられない可能性がある。
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
[第2の実施形態:図5A(内径縁部に切欠き部)]
図5Aに示すように、波形保持器5のポケット部8の内径縁部に、切欠き部9が設けられていてもよい。具体的には、各ポケット部8の内径縁部を外径側に凹ませるように切欠き部9が設けられている。切欠き部9は、軸方向から見て凹曲面となる曲面形状である。切欠き部9は、ポケット部8の円周方向中間部の帯幅hが最も小さく、円周方向中間部から円周方向両側に向かうに従って帯幅hが前記曲面形状に沿って次第に大きくなるように形成されている。この切欠き部9は、例えば、帯鋼をプレスにより打ち抜きおよび成形加工した後機械加工等により形成してもよく、プレス加工時に成形してもよい。
図5Aに示すように、波形保持器5のポケット部8の内径縁部に、切欠き部9が設けられていてもよい。具体的には、各ポケット部8の内径縁部を外径側に凹ませるように切欠き部9が設けられている。切欠き部9は、軸方向から見て凹曲面となる曲面形状である。切欠き部9は、ポケット部8の円周方向中間部の帯幅hが最も小さく、円周方向中間部から円周方向両側に向かうに従って帯幅hが前記曲面形状に沿って次第に大きくなるように形成されている。この切欠き部9は、例えば、帯鋼をプレスにより打ち抜きおよび成形加工した後機械加工等により形成してもよく、プレス加工時に成形してもよい。
この構成によると、軸受運転時に、静止空間に溜まったグリースが遠心力により切欠き部9から軌道面へ供給される。つまり、静止空間に滞留しようとするグリースの一部が切欠き部9で描き取られることで、グリースの基油が分離して切欠き部から順次、保持器5内、玉表面、および軌道面へと供給され易くなる。これにより深溝玉軸受の発熱が抑えられる。ポケット部8に切欠き部9が設けられているため、玉とポケット部8の間でのグリースせん断抵抗が低減され、深溝玉軸受の低トルク化および低発熱化を図れる。
運転開始時においては、前記切欠き部9が設けられていることで、玉の表面に付着したグリースの掻き取り量が増え、グリースが動空間から静止空間に排出され易くなる。これによりグリースの慣らし時間を低減することができる。
[第3の実施形態:図5B(外径縁部に切欠き部)]
図5Bに示すように、波形保持器5のポケット部8の外径縁部に、切欠き部10が設けられていてもよい。各ポケット部8の外径縁部を内径側に凹ませるように切欠き部10が設けられている。切欠き部10は、軸方向から見て凹曲面となる曲面形状である。その他前述の第2の実施形態と同様の構成、作用効果を有する。
内径縁部、外径縁部の切欠き部9,10は、それぞれ各ポケット部8に複数の凹曲面が形成されたものでもよい。また切欠き部9,10は、凹曲面に限定されず、角形状、多角形状に形成されたものであってもよい。内径縁部および外径縁部それぞれに切欠き部9,10が設けられてもよい。
図5Bに示すように、波形保持器5のポケット部8の外径縁部に、切欠き部10が設けられていてもよい。各ポケット部8の外径縁部を内径側に凹ませるように切欠き部10が設けられている。切欠き部10は、軸方向から見て凹曲面となる曲面形状である。その他前述の第2の実施形態と同様の構成、作用効果を有する。
内径縁部、外径縁部の切欠き部9,10は、それぞれ各ポケット部8に複数の凹曲面が形成されたものでもよい。また切欠き部9,10は、凹曲面に限定されず、角形状、多角形状に形成されたものであってもよい。内径縁部および外径縁部それぞれに切欠き部9,10が設けられてもよい。
[第4の実施形態:図6A(内輪回転型)]
図6Aに示すように、内輪回転型に限定した深溝玉軸受1Aとしてもよい。具体的には、波形保持器5の内径から保持器ピッチ円直径PCDまでの径方向距離IPと、波形保持器5の外径から保持器ピッチ円直径PCDまでの径方向距離OPとは、深溝玉軸受1Aの内輪2が回転するときIP≧OPとする。
内輪回転型の場合、内輪2の回転によりグリースが径方向外方に飛び、外輪3の内周面にグリースが溜まる。このため、径方向距離IPよりも径方向距離OPが小さいすなわちIP≧OPの方が、外輪3の内周面に溜まったグリースと、波形保持器5の外径の攪拌容積が少なくなって、深溝玉軸受1Aが温度上昇し難くなる。
図6Aに示すように、内輪回転型に限定した深溝玉軸受1Aとしてもよい。具体的には、波形保持器5の内径から保持器ピッチ円直径PCDまでの径方向距離IPと、波形保持器5の外径から保持器ピッチ円直径PCDまでの径方向距離OPとは、深溝玉軸受1Aの内輪2が回転するときIP≧OPとする。
内輪回転型の場合、内輪2の回転によりグリースが径方向外方に飛び、外輪3の内周面にグリースが溜まる。このため、径方向距離IPよりも径方向距離OPが小さいすなわちIP≧OPの方が、外輪3の内周面に溜まったグリースと、波形保持器5の外径の攪拌容積が少なくなって、深溝玉軸受1Aが温度上昇し難くなる。
[第5の実施形態:図6B(外輪回転型)]
図6Bに示すように、外輪回転型に限定した深溝玉軸受1Bとしてもよい。具体的には、深溝玉軸受1Bの外輪2が回転するときOP≧IPとする。
外輪回転型の場合、グリースが内輪2の外周面に溜まるため、径方向距離OPよりも径方向距離IPが小さいすなわちOP≧IPの方が、攪拌容積が少なくなって深溝玉軸受1Bの温度上昇を抑えられる。
図6Bに示すように、外輪回転型に限定した深溝玉軸受1Bとしてもよい。具体的には、深溝玉軸受1Bの外輪2が回転するときOP≧IPとする。
外輪回転型の場合、グリースが内輪2の外周面に溜まるため、径方向距離OPよりも径方向距離IPが小さいすなわちOP≧IPの方が、攪拌容積が少なくなって深溝玉軸受1Bの温度上昇を抑えられる。
波形保持器5は、二枚の環状保持板5a,5aの平坦部同士が係合爪等を介して連結されてもよい。
波形保持器は市場において独立して取引可能である。この波形保持器は、以下のように記載される。
内方部材と、外方部材と、これら内方部材、外方部材間に介在される複数の玉と、これら玉を保持する波形保持器とを備える深溝玉軸受の波形保持器であって、
前記波形保持器の径方向寸法である帯幅hを、前記玉の直径の30%以上44%以下とした波形保持器。
波形保持器は市場において独立して取引可能である。この波形保持器は、以下のように記載される。
内方部材と、外方部材と、これら内方部材、外方部材間に介在される複数の玉と、これら玉を保持する波形保持器とを備える深溝玉軸受の波形保持器であって、
前記波形保持器の径方向寸法である帯幅hを、前記玉の直径の30%以上44%以下とした波形保持器。
内方部材は、例えば、内輪と軸が一体のもの、および内輪内周面等にギヤが形成されたものを含む。外方部材は、外輪とハウジングが一体のもの、および外輪外周面等にギヤ、フランジ等が形成されたものを含む。前記一体とは、軌道輪と対象物とが複数の要素を結合したものではなく単一の材料から例えば鍛造、機械加工等により単独の物の一部または全体として成形されたことを意味する。
深溝玉軸受において、前記軸受空間を塞ぐ図示外のシール部材は、片側のみに設けられてもよい。
深溝玉軸受に潤滑剤としてグリース以外の潤滑油を使用してもよい。
鉄道車両以外の車両、産業機械、工作機械、ロボット、搬送機械等に深溝玉軸受を適用し得る。
深溝玉軸受に潤滑剤としてグリース以外の潤滑油を使用してもよい。
鉄道車両以外の車両、産業機械、工作機械、ロボット、搬送機械等に深溝玉軸受を適用し得る。
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,1A,1B…深溝玉軸受、2…内輪(内方部材)、3…外輪(外方部材)、4…玉、5…波形保持器、6…半球状膨出部、7…平坦部、9,10…切欠き部、Rb…鋲
Claims (4)
- 内方部材および外方部材と、
前記内方部材の外周面および前記外方部材の内周面に形成される軌道面と、
前記軌道面間に介在する複数の玉と、
前記複数の玉を保持する波形保持器を備えた深溝玉軸受であって、
前記波形保持器は、円周方向に沿って配設される半球状膨出部と、円周方向に隣合う前記半球状膨出部を繋ぐ平坦部と、を有する2枚の環状保持板が軸方向に組み合わされ、
前記環状保持板は、軸方向に重なる前記平坦部同士を鋲で連結するための鋲孔が形成され、前記鋲孔の直径を、前記波形保持器の径方向寸法である帯幅hの25%以上35%以下とし、
前記帯幅hを、前記玉の直径の30%以上44%以下とした深溝玉軸受。 - 請求項1に記載の深溝玉軸受において、前記波形保持器の帯幅hを、前記玉の直径の30%以上40%以下とした深溝玉軸受。
- 請求項1または請求項2に記載の深溝玉軸受において、前記波形保持器のポケット部の内径縁部または外径縁部に、切欠き部が設けられている深溝玉軸受。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の深溝玉軸受において、前記波形保持器の内径から保持器ピッチ円直径までの径方向距離IPと、前記波形保持器の外径から前記保持器ピッチ円直径までの径方向距離OPとは、深溝玉軸受の前記内方部材が回転するときIP≧OP、深溝玉軸受の前記外方部材が回転するときOP≧IPとした深溝玉軸受。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
JP2022091491A JP2023178675A (ja) | 2022-06-06 | 2022-06-06 | 深溝玉軸受 |
PCT/JP2023/020516 WO2023238774A1 (ja) | 2022-06-06 | 2023-06-01 | 深溝玉軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022091491A JP2023178675A (ja) | 2022-06-06 | 2022-06-06 | 深溝玉軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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Family
ID=89118307
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022091491A Pending JP2023178675A (ja) | 2022-06-06 | 2022-06-06 | 深溝玉軸受 |
Country Status (2)
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JP (1) | JP2023178675A (ja) |
WO (1) | WO2023238774A1 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019060394A (ja) * | 2017-09-26 | 2019-04-18 | Ntn株式会社 | 玉軸受用保持器及び玉軸受 |
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-
2022
- 2022-06-06 JP JP2022091491A patent/JP2023178675A/ja active Pending
-
2023
- 2023-06-01 WO PCT/JP2023/020516 patent/WO2023238774A1/ja unknown
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2023238774A1 (ja) | 2023-12-14 |
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