JP2013194768A - 保持器及び転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】玉軸受において、軸受が回転する際に保持器と玉が軸受内の潤滑油中を公転することにより潤滑油が攪拌されるため、この攪拌に必要なエネルギが軸受トルクの発生原因となっていた。保持器の転動体保持部分と玉との間で生じる摩擦抵抗や油膜せん断抵抗の低減が可能となる保持器形状を提案する。
【解決手段】保持器の転動体保持部分を、保持器の回転方向に対して縦長な回転楕円体形状とし、かつ玉1の大部分を保持器で覆うことで潤滑油の攪拌抵抗を減少させる。また、幅の狭い柱部3で保持部分を円環状に連結することで、保持器として機能させつつ柱部3と内外輪との間に潤滑油が貫流する空間を確保する。
【選択図】図4
【解決手段】保持器の転動体保持部分を、保持器の回転方向に対して縦長な回転楕円体形状とし、かつ玉1の大部分を保持器で覆うことで潤滑油の攪拌抵抗を減少させる。また、幅の狭い柱部3で保持部分を円環状に連結することで、保持器として機能させつつ柱部3と内外輪との間に潤滑油が貫流する空間を確保する。
【選択図】図4
Description
本発明は、転がり軸受用の保持器に関し、より詳細には潤滑油の攪拌抵抗の少ない保持器の形状及び構造に関する。また、本発明は前記保持器を備える転がり軸受に関する。
一般的な転がり軸受は、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、プレス加工または樹脂の成形加工により製造され前記複数の転動体を円周方向に略等間隔で保持する保持器を備える。上記の転動体が玉である場合を特に玉軸受と呼び、サイズや種類が豊富に揃っていることから、工業製品に広く利用されている。
この玉軸受においては、軸受が回転する際に保持器と玉が軸受内の潤滑油中を移動することにより潤滑油が攪拌される。このため攪拌に必要なエネルギーが軸受の回転抵抗、いわゆる軸受トルクの発生原因の1つとなっている。また転動体である玉は、かなりの部分が露出した状態で潤滑油中を公転および自転運動しているため、大きな攪拌抵抗を発生させている。加えて、従来の波形プレス保持器(図1参照)や冠型保持器(図2参照)は転動体保持部と玉との接触面積が大きいため、この部分での摩擦抵抗や油膜のせん断抵抗も大きく、これらについても軸受トルクが生じる原因となっている。
また、工作機械等に用いられる高速スピンドルでは、軸受をグリースではなく潤滑油によって潤滑及び冷却を行う場合が多い。この場合は軸受の内部を潤滑油が貫流する必要があるが、従来の保持器では潤滑油の通路を遮ってしまうため、十分な潤滑や冷却が行えないという問題があった。
昨今の省エネルギー化の流れから軸受にも低トルク化が求められており、玉軸受における軸受トルクの主因である潤滑油の攪拌抵抗や、玉と保持器との間に発生する摩擦抵抗及び油膜のせん断抵抗を減少させる技術が求められている。
これらの問題に対しては、例えば特許文献1にあるように、波形プレス保持器の凹部(玉を抱える凸部と凸部の間)に樹脂製の部材を取り付けることで保持器の段差を小さくし、潤滑油の攪拌抵抗を減らす発明が提案されている。また、特許文献2には保持器に溝を設け、軸受内部に流入した潤滑油を外部に流出し易くして攪拌抵抗を減らす発明が記載されている。さらに、特許文献3においては、転動体の形状を回転楕円体とすることで、転動体の流体抵抗を減少させる発明がなされている。
しかしながら、特許文献1の発明では従来型保持器と同様に玉が露出しているので玉が発生させる攪拌抵抗が大きい。また従来と同様に玉と保持器の接触面積が大きいため摩擦抵抗、油膜せん断抵抗が大きい。特許文献2の発明では転動体の攪拌抵抗を減らすことはできるが、保持器形状は従来の樹脂製保持器とほぼ同じなので摩擦抵抗等も従来型保持器と同レベルとなる。加えて樹脂製保持器は幅、厚みとも大きいので軸受を貫流する潤滑油の量(以下、「貫通油量」と呼ぶ)を増やし難いという問題もある。特許文献3の発明の実施においては、回転楕円体形状の転動体の製造が高コストとなる。
本発明は、一定の貫通油量を維持しながらも軸受内部の攪拌抵抗を減少させることを目的とする。また、保持器の転動体保持部分と玉との間で生じる摩擦抵抗や油膜せん断抵抗の低減が可能となる保持器形状を提案する。
上記の目的を達成するため本発明では保持器の転動体保持部分を、保持器の回転方向に対して縦長な回転楕円体形状とする。また、転動体保持部分には玉と内外輪とが接触できるよう、該保持部分の長手方向中央付近であって対向する2箇所に開口部を設ける。さらに該保持部分の前後に設けた保持部分よりも幅の狭い柱部で該保持部分を円環状に連結することで保持器として機能させ、かつ該柱部と内外輪との間に潤滑油が貫流する空間を確保する。
保持器が玉の大部分を覆っており、玉は内外輪との接触部分において最小限の露出しかしていないので玉の回転に伴う攪拌抵抗を減少させることができる。また、転動体保持部分が回転楕円体であるため、潤滑油中で移動する際の流体抵抗が小さくなり、これによって玉の公転と保持器の回転に起因する攪拌抵抗が減少する。さらに保持器による玉の保持が従来の面接触から線接触となるため、従来型保持器で問題となる玉と保持器の摩擦抵抗や油膜のせん断抵抗を減らすことが可能になる。
また、幅の狭い柱部で転動体保持部分を連結した構造となるため、内外輪と保持器の間に潤滑油が貫流するための空間を確保することができる。この様な形状とすることで、軸受内を潤滑油が多量に貫流した場合においても攪拌抵抗を小さくすることができ、貫通油量を制限することなく軸受トルクを小さくすることができる。
以下、本発明に係る保持器について、金属のプレス成形にて製造された場合を例に挙げて、図面を参照しつつ説明する。
転動体として玉を用いる転がり軸受において、保持器2の転動体保持部分21を保持器2の回転方向に対して縦長な回転楕円体形状とする(図3、4参照)。玉1と内外輪6、7との接触を妨げないよう、転動体保持部分21の長手方向中央付近であって、軸受の半径方向に対向する位置に2箇所の開口部5を設ける(図6参照)。開口部5の形状は丸形でも矩形でも良く、また開口部5の大きさは玉1と内外輪6、7の接触が可能となる範囲で最小限の大きさとするのが望ましい。
転動体保持部分21の前後に柱部3を設け、該保持部分を連結して円環状とする。また、柱部3の幅Dは転動体保持部分21の幅Cよりも狭くする(図7参照)。これによって柱部3と内外輪6、7との間に空間が生まれ、大量の潤滑油を貫流させることが可能となる。
転動体保持部分21が回転楕円体形状となることで、保持器2が回転する際の流体抵抗を減少させる効果がある。また玉1と保持器2の接触が線接触となるため、この接触部で生じる摩擦抵抗や油膜せん断抵抗を低減させることができる。
転動体保持部分21の形状は、図7に示す長径Aと短径Bを用いて表される縦横比F(=A/B)において、F=1.5〜7の範囲とするのが好ましく、特にF=4となる回転楕円体が最も好ましい。
保持器2の表面に対して、特開2003-232362号公報で提示された細溝、または特開2002-372052号公報で提示された微小な凹凸部を設けることで更なる攪拌抵抗の減少が期待できる。また特開2010-236621号公報に示される撥水撥油層を保持器2の表面に形成することによっても一層の低トルク化が可能である。
本発明に係る保持器の製造方法は、樹脂の溶融成形または金属板のプレス成形のいずれであっても良い。本発明に係る保持器をプレス成形にて製造する場合は図5に例示するように、保持器を上下に分割し、転動体保持部分24、25及び柱部31、32を有する円環状の一体成形部材22、23を製造し、柱部31、32に設けた穴をリベット4で加締めて上下の部品を一体化させれば良い。この製造方法は従来型の波形プレス保持器と同じであるため、従来と同等のコストで本発明に係る保持器を製造することが可能である。
本発明に係る転動体保持部分21は保持器2の回転方向に直角な断面が楕円もしくは長円であっても良い。
1 転動体(玉)
2 保持器
21 転動体保持部分
22 上側保持器
23 下側保持器
24 上側保持器の転動体保持部分
25 下側保持器の転動体保持部分
3 柱部
31 上側柱部
32 下側柱部
4 リベット
5 開口部
6 内輪
7 外輪
A 回転楕円体の長径
B 回転楕円体の短径
C 転動体保持部分の幅
D 柱部の幅
2 保持器
21 転動体保持部分
22 上側保持器
23 下側保持器
24 上側保持器の転動体保持部分
25 下側保持器の転動体保持部分
3 柱部
31 上側柱部
32 下側柱部
4 リベット
5 開口部
6 内輪
7 外輪
A 回転楕円体の長径
B 回転楕円体の短径
C 転動体保持部分の幅
D 柱部の幅
Claims (2)
- 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、該転動体を円周方向に略等間隔で保持する保持器を備えた転がり軸受であって、転動体として玉を用いる転がり軸受において、保持器の転動体保持部分を、保持器の回転方向に対して縦長な回転楕円体形状とし、該転動体保持部分には長手方向中央付近であって軸受の半径方向に対向する2箇所に転動体と内外輪とが接触するための開口部を設け、該保持部分の前後に設けた該保持部分よりも幅の狭い柱部で該保持部分を円環状に連結したことを特徴とする転がり軸受の保持器。
- 請求項1に記載した保持器を有する転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012059952A JP2013194768A (ja) | 2012-03-16 | 2012-03-16 | 保持器及び転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012059952A JP2013194768A (ja) | 2012-03-16 | 2012-03-16 | 保持器及び転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013194768A true JP2013194768A (ja) | 2013-09-30 |
Family
ID=49394004
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012059952A Pending JP2013194768A (ja) | 2012-03-16 | 2012-03-16 | 保持器及び転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2013194768A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108757737A (zh) * | 2018-08-10 | 2018-11-06 | 江苏天驰轴承有限公司 | 一种轴承及其纺锤形的滚动体 |
CN114001094A (zh) * | 2021-11-23 | 2022-02-01 | 苏州汇智精保持架科技有限公司 | 一种多功能玻纤注塑轴承保持架及其制备方法 |
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2012
- 2012-03-16 JP JP2012059952A patent/JP2013194768A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN114001094A (zh) * | 2021-11-23 | 2022-02-01 | 苏州汇智精保持架科技有限公司 | 一种多功能玻纤注塑轴承保持架及其制备方法 |
CN114001094B (zh) * | 2021-11-23 | 2024-05-24 | 苏州汇智精保持架科技有限公司 | 一种多功能玻纤注塑轴承保持架及其制备方法 |
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