JP2023178094A - 照明制御システムおよび照明制御方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023178094000001
【課題】エリアごとでの明るさの制御を可能にした上で、室内の光環境が不安定になる影響を抑制できる照明制御システムおよび照明制御方法を提供する。
【解決手段】室内の照明制御システム1であって、調光可能であり、前記室内に設定される各々のエリアに設置される照明器具2と、各エリアの明るさを検出可能な明るさセンサとしての窓面輝度センサ3、天井面輝度センサ4および机上面照度センサ7と、前記明るさセンサの検出結果に基づいて、照明器具2を目標となる明るさに制御する制御装置8と、を備える。制御装置8は、前記目標となる明るさに応じた調光速度で照明器具2を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、照明制御システムおよび照明制御方法に関する。
従来から、省エネルギーでありながらも快適な環境を実現するための照明装置の開発が進められている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1,2に記載される技術は、室内の照明装置に関するものである。
特許文献1に記載される技術では、照明の調光率を減光させる際、人が不快に感じない調光速度に制御する。
特許文献2に記載される技術では、人検知センサにより検出された対象の照明について、照明負荷の点灯を開始した時点から徐々に照明負荷の出力を低下させ、設定した光量まで減光させる。
特開2012-146625号公報 特開平11-204271号公報
特許文献1,2に記載される技術では、オフィスのような広い空間での照明制御について検討がされていなかった。例えば、オフィス空間のように照明器具が規則正しく配置されていて、照度センサを用いた制御によって室内の光環境を制御する場合を想定する。この場合、あるエリアの照明器具の調光を行うことで当該照明器具の影響によって隣接するエリアの照明器具にハンチング現象が発生し、室内の光環境が不安定になる恐れがある。
なお、オフィスでは様々な作業が行われ、作業内容によって必要とする明るさが異なる場合がある。例えば、ディスプレイ作業と紙面作業とを考えた場合、前者ではディスプレイ自体が発光するので、ディスプレイ作業で必要とする照度は紙面作業で必要とする照度(例えば、日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)では、紙面を中心とした執務作業に対し、「500lx~1000lx(ルクス)」が必要と定められている。)に比べて低くなっている。その為、執務者の作業に応じた明るさをエリアごとに提供することが望ましい。
このような観点から、本発明は、エリアごとでの明るさの制御を可能にした上で、室内の光環境が不安定になる影響を抑制できる照明制御システムおよび照明制御方法を提供する。
本発明に係る照明制御システムは、室内の照明制御システムである。この照明制御システムは、照明器具と、明るさセンサと、制御装置とを備える。照明器具は、調光可能であり、前記室内に設定される各々のエリアに設置される。明るさセンサは、各エリアの明るさを検出可能である。制御装置は、前記明るさセンサの検出結果に基づいて、前記照明器具を目標となる明るさに制御する。前記制御装置は、前記目標となる明るさに応じた調光速度で前記照明器具を制御する。
本発明に係る照明制御システムによれば、目標となる明るさに応じた調光速度で制御することで、明るいエリアとそれ以外のエリアとが干渉して室内の光環境が不安定になることを避けることができる。その為、室内の光環境の快適性が向上する。
照明制御システムは、前記各エリアの執務者を検知可能な人検知センサと、前記執務者の作業内容を申告する作業申告手段とを備えるものであってもよい。前記制御装置は、前記人検知センサの検知情報および前記作業申告手段の申告情報に基づいて、前記目標となる明るさを設定する。
このようにすると、作業内容によって必要とする明るさが異なる場合に、作業内容に適した明るさを提供することができる。
前記作業内容は、紙面作業およびディスプレイ作業を含むものであってもよい。その場合、前記目標となる明るさは、前記執務者が不在のエリア、前記執務者がディスプレイ作業を行うエリア、前記執務者が紙面作業を行うエリアの順番で高くするのがよい。また、前記調光速度は、前記執務者が不在のエリア、前記執務者がディスプレイ作業を行うエリア、前記執務者が紙面作業を行うエリアの順番で速くするのがよい。
このようにすると、高い照度を必要とする紙面作業を行う場合に、他の作業に比べてより速く目標とする照度に到達する。その為、早期に紙面作業を開始することが可能であり、執務者の利便性が向上する。
前記照明器具は、前記執務者が不在の場合にアンビエント照明として制御され、前記執務者が在席の場合にタスク照明として制御されてもよい。前記調光速度は、前記アンビエント照明のエリアよりも前記タスク照明のエリアが速くなっているのがよい。
このようにすると、執務者が在席しているエリアの明るさを、執務者が在席していないエリアに比べて速く目標とする明るさにすることができる。その為、執務者は早期に作業を開始することが可能であり、執務者の利便性が向上する。
前記明るさセンサは、照度センサを含むものであってもよい。前記制御装置は、前記照明器具をタスク照明として制御する場合に、前記照度センサの検出結果に基づいて、前記目標となる明るさの指標となる目標照度を設定する。
前記明るさセンサは、窓面の輝度または当該輝度に相関する光の量を第一検出値として検出する窓面輝度センサと、天井面の輝度または当該輝度に相関する光の量を第二検出値として検出する天井面輝度センサとを含むものであってもよい。前記制御装置は、前記照明器具をアンビエント照明として制御する場合に、前記室内の空間の明るさ評価を目的変数とする数式を用いて、前記第一検出値および前記第二検出値から前記室内の空間の現状の明るさを算出し、算出した現状の明るさに基づいて、前記目標となる明るさを設定する。
このようにすると、時々刻々と変化する窓や天井面の輝度を考慮した上で、目標となるBR値に準じた明るさに室内空間を保つことが可能になる。
本発明に係る照明制御方法は、室内の照明制御方法である。前記室内には、照明器具および明るさセンサが設置されており、前記照明器具は、調光可能であり、前記室内に設定される各々のエリアに設置され、前記明るさセンサは、各エリアの明るさを検出可能である。前記明るさセンサを用いて、前記エリアの明るさを検出する検出ステップと、前記明るさセンサの検出結果に基づいて、前記照明器具を目標となる明るさに制御する制御ステップとを有する。前記制御ステップでは、前記目標となる明るさに応じた調光速度で前記照明器具を制御する。
本発明に係る照明制御方法によれば、目標となる明るさに応じた調光速度で制御することで、明るいエリアとそれ以外のエリアとが干渉して室内の光環境が不安定になることを避けることができる。その為、室内の光環境の快適性が向上する。
本発明によれば、エリアごとでの明るさの制御を可能にした上で、室内の光環境が不安定になる影響を抑制できる。
本発明の実施形態に係る照明制御システムの全体構成図である。 窓面輝度センサの外観図である。 天井面輝度センサおよび机上面照度センサの外観図である。 窓面輝度センサにおけるアタッチメントを説明するための図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。 窓面輝度センサにおけるアタッチメントの機能を説明するための図である。 天井面輝度センサおよび机上面照度センサにおけるカバーの機能を説明するための図である。 明るさセンサが光を検知する場合のイメージ図であり、(a)は窓面輝度センサおよび天井面輝度センサの検知イメージであり、(b)は机上面照度センサの検知イメージである。 本発明の実施形態に係る照明制御に使用する明るさ概算式を説明するための図である。 本発明の実施形態に係る照明制御方法の概要を説明するための図であり、(a)は在席状況や作業種類に対応して設定する目標照度の一例であり、(b)は目標照度と調光速度との対応を示した表である。 本発明の実施形態に係る照明制御方法のフローチャートの例示である。 シミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)はシミュレーションで用いた部屋の平面図であり、(b)は部屋の断面図であり、(c)は照明器具の設定条件である。 比較例としての第1ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)は設定した調光速度の一覧表であり、(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。 比較例としての第2ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)は設定した調光速度の一覧表であり、(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。 本発明に係る第3ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)は設定した調光速度の一覧表であり、(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。 調光率を説明するための図である。 本発明に係る第4ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)は設定した調光速度の一覧表であり、(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。 本発明に係る第5ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)は設定した調光速度の一覧表であり、(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。 本発明に係る第6ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、(a)は設定した調光速度の一覧表であり、(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。 光環境が安定する調光速度の範囲の一例を示す表である。
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
<実施形態に係る照明制御システムの構成について>
図1を参照して、実施形態に係る照明制御システム1について説明する。図1は、照明制御システム1の全体構成図である。照明制御システム1は、室内の照明を制御するシステムである。照明制御システム1における室の用途や形状は特に限定されず、様々な室の照明制御に照明制御システム1を適用できる。本実施形態では、室内としてオフィスの空間を想定し、当該空間で執務者が作業を行う。執務者は、例えばディスプレイを用いた「ディスプレイ作業」や紙面を用いた「紙面作業」などを行う。図1に示すように、室の壁には窓が形成されており、自然光が窓から室内に入射する。
照明制御システム1は、照明器具2と、窓面輝度センサ3と、天井面輝度センサ4と、人検知センサ5と、作業申告手段6と、机上面照度センサ7と、制御装置8とを備える。本実施形態では、天井面輝度センサ4と机上面照度センサ7とは一つの装置であり、検知対象を切り替えることによって、明るさ制御のための天井面輝度および机上面照度の何れかの検知が可能となっている。なお、天井面輝度センサ4と机上面照度センサ7とが別々の装置として構成されてもよい。作業申告手段6は、送信機6Aと、受信機6Bとで構成される。なお、窓面輝度センサ3、天井面輝度センサ4および机上面照度センサ7は、「明るさセンサ」の一例である。
照明器具2、窓面輝度センサ3、天井面輝度センサ4、人検知センサ5、作業申告手段6および机上面照度センサ7は室内に設置され、制御装置8の設置場所は特に限定されない。本実施形態では、照明器具2、窓面輝度センサ3、天井面輝度センサ4、人検知センサ5、受信機6Bおよび机上面照度センサ7が天井に設置され、執務者が作業を行う各座席に送信機6Aが設置される。一方、制御装置8は室外(例えば、ビルの制御室)に設置される。
照明器具2は、光で室内を照らす器具である。本実施形態での照明器具2は、天井面に設置されており、天井面から床面側を照らすようになっている。照明器具2は、室内に設定される各々のエリアに設置される。エリアは、照明制御を行う最小単位の範囲であり、各エリアには少なくとも一つ以上の座席が配置される。本実施形態では、座席に対する照明器具2の数が「1対1」あるいは「1対1」に近い状況である場合を想定し、各エリアには座席と同数の照明器具2が配置される。照明器具2は、例えば各座席の真上(またはその周囲)に配置される。なお、照明器具2の数を座席数に対応させない構成にすることも可能であり、その場合には複数の照明器具2で一つの座席を照らす(または、一つの照明器具2で複数の座席を照らす)ことになる。
照明器具2は、照度の調整(調光)が可能であり、照射する光の量を変更できる。照明器具2は、制御装置8から制御信号を受信し、例えば調光率によって照射する光の量を調整する。また、照明器具2は、目標となる明るさに応じた調光速度で調光を行うように制御される。照明器具2は、これらの制御によって、状況に応じてタスク照明またはアンビエント照明として利用される。タスク照明は、執務者の手元の作業性を担うものであり、アンビエント照明は、空間全体の明るさの印象を担うものである。例えば、執務者が不在のエリアの照明器具2はアンビエント照明として制御され、執務者が在席しているエリアの照明器具2はタスク照明として制御される。照明器具2の制御の詳細については後記する。
窓面輝度センサ3は、窓面の輝度を検出するセンサ(検出手段)である。窓面輝度センサ3で取得した情報(窓面の輝度)は、照明器具2をアンビエント照明として利用する場合の制御に用いられる。「人が感じる明るさ」は、「照度」ではなく「輝度」によって表され、丁度よい空間の明るさを保つためにはアンビエント照明の適切な制御が必要であることが一般的に知られている。窓面輝度センサ3は、窓面の輝度を検出できる場所に設置される。窓面輝度センサ3が窓面の輝度を検出する方法に限定はない。窓面輝度センサ3は、窓面の輝度に相関する光の量を検出し、検出した光の量により窓面の輝度を算出してもよい。輝度の算出を行う場所は限定されず、例えば制御装置8が輝度の算出を行ってよい。窓面輝度センサ3は、検出した検出値(「第一検出値」と称する)を制御装置8に送信する。
図2に示すように、本実施形態では、窓面輝度センサ3を照度センサで代用することを想定し、照度センサによって検出した検出値に基づいて窓面の輝度を算出する。図2は、窓面輝度センサ3の外観図である。詳細は後記するが、天井面輝度センサ4も同様であり、天井面輝度センサ4を照度センサで代用することを想定する(図3参照)。図3は、天井面輝度センサ4および机上面照度センサ7の外観図である。つまり、本実施形態では、天井に一般的に設置される照度センサに対して検出対象ごとに工夫した付属品を取り付けることで、窓面および天井面の輝度を算出できるようにしている。なお、照度センサに輝度算出用の付属品を取り付けた場合でも、机上面の照度を検出することが可能である。
図2を参照して、窓面輝度センサ3の構成を説明する。窓面輝度センサ3は、センサ本体31と、アタッチメント32とを備える。センサ本体31は、アタッチメント32を取り付けずに単体で使用する場合には、床面方向の照度を検出することが可能である。
センサ本体31は、円盤状のハウジング31aと、受光部31c(第一照度センサ素子)とを有する。ハウジング31aの床側の面には、ハウジング31a内に光を取り込む凹部31bが形成されており、受光部31cは、凹部31b内に配置されている。受光部31cは、受けた光を電気信号に変換する電子部品である。受光部31cには、凹部31bに取り込まれた光が到達する。
アタッチメント32は、受光部31cが受け取る光の方向を窓側に変更する部品であり、凹部31bに嵌め込めむようにして設置される。
図4を参照してアタッチメント32の構成を説明する。図4はアタッチメント32を説明するための図であり、(a)は斜視図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。ここで、アタッチメント32の説明における「上下」、「前後」、「左右」は、図4の矢印に従う。なお、当該方向は、説明の便宜上定めるものであり、本発明を限定するものではない。
アタッチメント32は、光が通過する貫通孔32aを有する。貫通孔32aの一方の開口部32aaは正面に形成されており、他方の開口部32abは上部に形成されている。正面の開口部32aaは、光を取り込む入口の役割を担い、上部の開口部32abは、光を放出する出口の役割を担う。貫通孔32aには、光反射部32mが設置されている。光反射部32mは、例えば鏡であり、図5に示すように、正面の開口部32aaから入ってきた光を上方に反射するように設置されている。図5は、アタッチメント32の機能を説明するための図である。光反射部32mによって反射された光は、上部の開口部32abを介して受光部31cに到達する。アタッチメント32は、入口となる開口部32aaが窓面を向くように設置される。これにより、光反射部32mは、窓面の方向から到来する光を受光部31cに導く役割を担う。
図3を参照して、天井面輝度センサ4の構成を説明する。天井面輝度センサ4は、天井面の輝度を検出するセンサ(検出手段)である。天井面輝度センサ4で取得した情報(天井面の輝度)は、照明器具2をアンビエント照明として利用する場合の制御に用いられる。天井面輝度センサ4は、天井面の輝度を検出できる場所に設置される。天井面輝度センサ4が天井面の輝度を検出する方法に限定はない。天井面輝度センサ4は、天井面の輝度に相関する光の量を検出し、検出した光の量により天井面の輝度を算出してもよい。輝度の算出を行う場所は限定されず、例えば制御装置8が輝度の算出を行ってよい。天井面輝度センサ4は、検出した検出値(「第二検出値」と称する)を制御装置8に送信する。前述した通り、本実施形態では、天井面輝度センサ4を照度センサで代用することを想定し、照度センサによって検出した検出値に基づいて天井面の輝度を算出する。
図3に示すように、天井面輝度センサ4は、センサ本体41と、カバー42とを備える。センサ本体41は、窓面輝度センサ3のセンサ本体31と同じものであり、カバー42を取り付けずに単体で使用する場合には、床面方向の照度を検出することが可能である。窓面輝度センサ3と天井面輝度センサ4とでは、付属品であるカバー42が異なる。
センサ本体41は、円盤状のハウジング41aと、受光部41c(第二照度センサ素子)とを有する。ハウジング41aの床側の面には、ハウジング41a内に光を取り込む凹部41bが形成されており、受光部は、凹部41b内に配置されている。受光部41cは、受けた光を電気信号に変換する電子部品である。受光部41cには、凹部41bによって取り込まれた光が到達する。
カバー42は、天井面の輝度を算出しやすいように受光部41cが受け取る光をならすための部品である。本実施形態におけるカバー42は、板状(またはシート状)を呈しており、凹部41bを覆う(閉塞する)ように設置される。カバー42は、例えば白色半透明であり、通過する光を拡散させる。カバー42を通過する光は、拡散されることによりならされ、天井面の輝度を算出するのに適した光となる(図6参照)。図6は、カバー42の機能を説明するための図である。図6に示すように、カバー42によってならされた光が受光部41cに到達する。
図3および図6を参照して、机上面照度センサ7について説明する。机上面照度センサ7で取得した情報(机上面の照度)は、照明器具2をタスク照明として利用する場合の制御に用いられる。前述した通り、本実施形態における机上面照度センサ7は、天井面輝度センサ4と同様の構成である。その為、机上面照度センサ7は、センサ本体41と、カバー42とを備える。カバー42は、通過する光を拡散させるので、カバー42を設けない状態と比べて広い範囲の机上面照度を検知することが可能である。その為、本実施形態における机上面照度センサ7は、エリアの設定の自由度が高く、また、コストの面で優れている。机上面照度センサ7は、少なくとも一つ以上のエリアでの机上面輝度を算出することが可能であり、エリア単位で明るさを検出可能である。なお、机上面照度センサ7は、カバー42を備えずにセンサ本体41のみを備える構成であってもよい。また、机上面の照度に代えて、または照度と共に他の物理量を検出する構成にすることもできる。
ここまで説明した窓面輝度センサ3、天井面輝度センサ4および机上面照度センサ7が光を検知するイメージを図7に示す。図7は、明るさセンサが光を検知する場合のイメージ図であり、(a)は窓面輝度センサ3および天井面輝度センサ4の検知イメージであり、(b)は机上面照度センサ7の検知イメージである。
図7(a)に示すように、窓面輝度センサ3の検知範囲K1は、窓が設けられた壁面となる。また、図7(a)に示すように、天井面輝度センサ4の検知範囲K2は、天井面となる。また、図7(b)に示すように、机上面照度センサ7の検知範囲K3は、机上面となる。
図1に示す人検知センサ5は、人間(本実施形態では執務者)を検出するセンサ(検出手段)である。本実施形態では、執務者の在席(または不在)の情報の取得に人検知センサ5を用いる。人検知センサ5によって検知された座席/不在に関する情報は、照明器具2をタスク照明およびアンビエント照明の何れとして利用するかの判定に用いられる。人検知センサ5が執務者を検知する方法に限定はない。人検知センサ5は、例えば赤外線によって人間を検知する「赤外線センサ」であってよい。人検知センサ5は、各エリアの執務者を検知可能なように設置される。人検知センサ5は、例えば各エリアに一つずつ設置される。照明器具2に対応した数の人検知センサ5が、各々の照明器具2の近くに設置されてもよい。
図1に示す作業申告手段6は、執務者が行っている作業の内容を申告する手段である。作業申告手段6は、光環境の制御を行う明るさの段階に対応した情報を申告するものであればよく、例えば作業の種類を申告可能なものである。本実施形態では、執務者がディスプレイを用いた「ディスプレイ作業」および紙面を用いた「紙面作業」の何れかを行うことにし、紙面作業を行う執務者のみが作業申告手段6を用いて作業内容を申告する場合を想定する(つまり、ディスプレイ作業を行う執務者は申告が不要である)。近年のオフィスでは、資料の電子化が進んでいるため、ディスプレイ作業を行うのが一般的である。その為、多数派であるディスプレイ作業を行う執務者に出来るだけ手間をかけさせず、快適に作業を行ってもらえるように考慮されている。なお、ディスプレイ作業を行う執務者のみが、または紙面作業およびディスプレイ作業を行う執務者の両方が作業の申告を行うようにしてもよい。また、パーソナルコンピュータ(PC)の操作状況に関する情報を当該PCから取得し、PCを操作していることを示す情報に基づいてディスプレイ作業の申告を自動的に行うように構成してもよい。本実施形態における作業申告手段6は、送信機6Aと受信機6Bとで構成され、送信機6Aは、執務者が作業を行う各座席に設置される。送信機6Aは、例えばスイッチを有しており、紙面作業を行う執務者が送信機6Aのスイッチを押す運用である。送信機6Aは、スイッチを押された場合にスイッチ「ON」信号を受信機6Bに送信する。受信機6Bは、送信機6Aから送信される信号を受信可能な位置(ここでは天井)に設置されており、送信機6Aから送信される信号は受信機6Bを介して制御装置8に送られる。受信機6Bは、例えば部屋に対して一つ設置される。送信機6Aは、紙面作業を行っている執務者が在席するエリアを特定可能な情報を、スイッチ「ON」信号に対応付けて送信するのがよい。送信機6Aは、執務者が所持するPCや携帯型端末(例えばスマートフォン)などであってもよく、その場合にはこれらのデバイスから作業内容を申告する。
図1に示す制御装置8は、照明器具2を制御して室内の光環境を実現する装置である。制御装置8は、例えば大型のビルや病院・工場などに設置されるサーバである。制御装置8は、複数の装置(例えば、エリアコントローラとフロアコントローラなど)で構成されていてもよい。
制御装置8は、記憶部と制御部とを備える。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の記憶媒体から構成される。記憶部には、照明の制御に必要な情報が格納されている。制御部は、CPU(Central Processing Unit)によるプログラム実行処理や、専用回路等により実現される。制御部がプログラム実行処理により実現する場合、制御装置8は、照明制御を実現するために必要なプログラム(照明制御プログラム)を有する。制御部は、記憶部に代えてまたは記憶部に加えて、例えばネットワークを介して照明の制御に必要な情報を取得してもよい。
制御装置8は、照明器具2、窓面輝度センサ3、天井面輝度センサ4、机上面照度センサ7、人検知センサ5および作業申告手段6と、データを送受信可能に接続されている。接続形態は、有線、無線の何れであってもよい。
制御装置8は、明るさセンサ(窓面輝度センサ3、天井面輝度センサ4、机上面照度センサ7など)の検出結果に基づいて、照明器具2を目標となる明るさに制御する。
制御装置8は、執務者が不在のエリアの照明器具2をアンビエント照明として動作させる。制御装置8は、窓面輝度センサ3の検出値および天井面輝度センサ4の検出値に基づいて、空間の明るさが保たれるように照明器具2を調光する。例えば、制御装置8は、窓面輝度センサ3の検出値および天井面輝度センサ4の検出値に基づいて現状の空間の明るさの感覚値(BR値)を求め、目標とするBR値との比較によって照明器具2の調光率を増大または減少する。人の明るさの感覚は、視野に入る光の量(輝度)の影響を受けることが知られている。また、室内で人が感じる明るさにおいて、影響を受けやすいのは「窓面」と「天井面」の明るさであるということが実験から分かってきた。本実施形態では、空間の明るさの感覚値(BR値)を目的変数とし、窓面の輝度、天井面の輝度ならびに当該窓面および当該天井面の立体角を説明変数とする以下の式(A)を用いて、現状の室内の空間の明るさを算出する。
Figure 2023178094000002
上記式(A)において、「BR」は「空間の明るさの感覚値」であり、「a,b」は係数(定数)であり、「L」は輝度であり、「ω」は立体角である。また、下付き文字で使用される「w」は窓面であることを示し、「c」は天井面であることを示している。
上記式(A)における説明変数の具体例を図8に示す。図8では、執務者が座席に座って執務を行う場合を想定している。そのため、執務者の視点の高さは、座った状態での一般的な目線の高さ(例えば、床から「1.2m」)である。図8は、本実施形態に係る照明制御に使用する明るさ概算式を説明するための図である。
なお、ここで説明したBR値に基づいて空間の明るさを保つ制御を行った場合、照明器具2の目標照度が「200lx」程度になると経験から予測できる。その為、説明を簡単にするために、BR値に基づく制御を目標照度「200lx」による制御に置き換えて説明する場合がある。後記するシミュレーションにおいても同様であり、空間の明るさを保つための制御として目標照度「200lx」を用いている。
また、制御装置8は、執務者が在席のエリアの照明器具2をタスク照明として動作させる。制御装置8は、作業申告手段6から取得した執務者の作業種類に基づいて、ディスプレイ作業に適した照度(例えば「300~400lx」)または紙面作業に適した照度(例えば「500lx」)を目標照度に設定し、照明器具2を調光する。制御装置8は、机上面照度センサ7の検出値を用いて、照明器具2を目標照度まで調光する。
本実施形態に係る照明制御方法の概要を図9に示す。図9は、本実施形態に係る照明制御方法の概要を説明するための図であり、(a)は在席状況や作業種類に対応して設定する目標照度の一例であり、(b)は目標照度と調光速度との対応を示した表である。図9では、執務者が不在時の目標となる明るさを、便宜上「200lx」と表記している。
また、制御装置8は、目標となる明るさに応じた調光速度で照明器具2を制御する(図9(b)参照)。図9(b)に示すように、例えば紙面作業に適した照度「500lx」に照明器具2を調光する場合、調光速度「4%/秒」により調光率を増大または減少する。また、ディスプレイ作業に適した照度「300~400lx」に照明器具2を調光する場合、調光速度「2%/秒」により調光率を増大または減少する。また、執務者が不在のエリアの照明器具2を空間の明るさを保つ照度(例えば「200lx」相当)に調光する場合、調光速度「1%/秒」により調光率を増大または減少する。
このように、調光速度は、高い照度を必要とする作業種類ほど速い調光速度が割り当てられ、低い照度で作業可能な作業種類ほど遅い調光速度が割り当てられる。また、タスク照明として照明器具2を動作する場合の調光速度は、アンビエント照明として照明器具2を動作する場合の調光速度に比べて速い調光速度が割り当てられる。
<実施形態に係る照明制御システムの動作について>
図10を参照して、実施形態に係る照明制御システム1の動作について説明する。図10は、照明制御システム1における照明制御方法のフローチャートの例示である。図10に示すフローチャートの処理は、各々のエリアごとに実行され、例えば所定の間隔(「0.1」秒間隔など)で繰り返し行われる。以下では、ある一つのエリアに着目して制御を説明する。
最初に、制御装置8は、人検知センサ5から取得した執務者の在席情報を判定する(ステップS10)。在席である場合(ステップS10で“Yes”)に処理をステップS20に進め、不在である場合(ステップS10で“No”)に処理をステップS50に進める。
執務者が在席である場合(ステップS10で“Yes”)、照明器具2をタスク照明として制御する。タスク照明は、執務者の手元の作業性を担うものである。制御装置8は、作業申告手段6から取得した作業内容の申告情報が「紙面作業」であるか否かを判定する(ステップS20)。紙面作業である場合(ステップS20で“Yes”)に処理をステップS30に進め、ディスプレイ作業である場合(ステップS20で“No”)に処理をステップS40に進める。
執務者から紙面作業の申告を受けている場合(ステップS20で“Yes”)、制御装置8は、対象のエリアを調光速度「4%/秒」により「500lx」に調光する(ステップS30)。具体的には、紙面作業に必要な照度である「500lx」を目標照度とし(ステップS31)、ステップS31で設定した目標照度に対応した調光速度「4%/秒」に変更して調光を行う(ステップS32)。執務者から紙面作業の申告を受けていない場合(ステップS20で“No”)、制御装置8は、対象のエリアを調光速度「2%/秒」により「300lx」に調光する(ステップS40)。具体的には、ディスプレイ作業に必要な照度である「300lx」を目標照度とし(ステップS41)、ステップS41で設定した目標照度に対応した調光速度「2%/秒」に変更して調光を行う(ステップS32)。そして、制御装置8は、ステップS32またはステップS42に基づく制御信号を照明器具2に送信する。
一方、ステップS10の判定で執務者が不在である場合(ステップS10で“No”)、制御装置8は、照明器具2をアンビエント照明として制御する(ステップS50)。例えば、制御装置8は、空間の明るさを保つ制御を開始し(ステップS51)、窓面輝度センサ3から検出値(「第一検出値」と称する)を取得し(ステップS52A)、また、天井面輝度センサ4から検出値(「第二検出値」と称する)を取得する(ステップS52B)。ここでの検出値は、例えば窓面や天井面の輝度に相関する光の量である。制御装置8は、窓面輝度センサ3によって検出された検出値に基づいて窓面輝度を算出し、また、天井面輝度センサ4によって検出された検出値に基づいて天井面輝度を算出する。制御装置8は、例えば窓面輝度センサ3によって検出された光の量と、窓面輝度とを関連付けた情報(または、窓面輝度センサ3によって検出された光の量から窓面輝度を算出する計算式など)を有している。また同様に、制御装置8は、例えば天井面輝度センサ4によって検出された光の量と、天井面輝度とを関連付けた情報(または、天井面輝度センサ4によって検出された光の量から天井面輝度を算出する計算式など)を有している。
次に、制御装置8は、上述した式(A)を用いて、現状の空間の明るさの感覚値(BR値)を算出する(ステップS53)。続いて、制御装置8は、算出した現状のBR値と目標とするBR値との関係に基づいて調光率を制御する。具体的には、現状のBR値が目標とするBR値よりも大きくない場合(ステップS54で“Yes”)、制御装置8は、対象のエリアを調光速度「1%/秒」によって調光率を増大させる(ステップS55A)。また、現状のBR値が目標とするBR値よりも大きい場合(ステップS54で“No”)、制御装置8は、対象のエリアを調光速度「1%/秒」によって調光率を減少させる(ステップS55B)。そして、制御装置8は、ステップS55AまたはステップS55Bに基づく制御信号を照明器具2に送信する。
<実施形態に係る照明制御システムの効果について>
図11ないし図19を参照して(適宜、図1ないし図10を参照)、実施形態に係る照明制御システム1の効果について説明する。発明者は、目標照度によらず同一の調光速度で照明器具2を調光した場合(従来の照明制御)と、目標照度に応じて異なる調光速度で照明器具2を調光した場合(本発明の照明制御)とで、それぞれシミュレーションを行い、その結果を比較検討した。シミュレーションでは、図11に示す簡易な構造の部屋で執務者が作業を行う場合を想定した。
図11は、シミュレーションの内容を説明するための図であり、図11(a)はシミュレーションで用いた部屋Dの平面図であり、図11(b)は部屋Dの断面図であり、図11(c)は照明器具2の設定条件である。図11(a)に示すように、部屋Dは平面視で正方形であり、各壁面Eの横幅は「6.6m」である。また、図11(b)に示すように、部屋Dの高さは「2.8m」である。
図11(a),(b)に示す符号PA,PBは、エリアAの座席(「A席」と称す)およびエリアBの座席(「B席」と称す)における机上面の代表点であり、代表点PA,PBを用いて解析を行った。図11(a)に示すように、「A席」の代表点PAおよび「B席」の代表点PBは、壁面E1,E2の中間に配置される。図11(b)に示すように、壁面E3から代表点PAまでの距離は「2.48m」であり、壁面E4から代表点PBまでの距離は「2.48m」であり、代表点PA,PBの距離は「1.65m」である。床面Fから代表点PA,PBまでの距離は、「0.8m」である。図示は省略しているが、照明器具2は、天井面Gであって各々のエリアA,Bの中央に一つずつ配置されている。
照明器具2の照明制御に関する設定条件は、図11(c)に示す通りである。紙面作業を行う場合の目標照度は「500lx(ルクス)」であり、ディスプレイ作業を行う場合の目標照度は「400lx」であり、執務者が不在の場合の目標照度は「200lx」である。なお、執務者が不在の場合の目標照度は、便宜上の値である。また、照明制御における許容範囲を「10lx」、照明器具2の最大調光率を「100%」、最小調光率を「0%」とした。許容範囲は、目標照度に対して現状の照度を許容する誤差範囲(±)を示しており、例えば、目標照度が400lxの場合、現状の照度が「390~410lx」の範囲であれば許容され(OKとなり)、それ以外の範囲では許容されない(NGとなる)。
以下では、第1ケース~第6ケースの合計で六つのシミュレーション結果を説明する。第1ケースおよび第2ケースは、従来の照明制御によるシミュレーション結果であり、本発明のシミュレーション結果に対する比較例として記載している。一方、第3ケースないし第6ケースは、本発明の照明制御によるシミュレーション結果である。
<第1ケースのシミュレーション結果(従来の照明制御)>
図12を参照して、第1ケースのシミュレーション結果について説明する。図12は、第1ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、図12(a)は設定した調光速度の一覧表であり、図12(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。図12(b)における横軸は経過時間(秒)であり、横軸は照度(lx「ルクス」)である。第1ケースは、目標照度によらず同一の調光速度で照明器具2を調光する場合を想定する。図12(a)に示すように、紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」、ディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」、執務者が不在の場合の目標照度「200lx」の何れに調光する場合でも、調光速度が「1%」で同一である。
図12(b)に示す細い点線は、「A席」での目標照度を示し、太い点線は、「B席」での目標照度を示している。第1ケースのシミュレーションでは、「60秒後」に「A席」および「B席」の直上の照明器具2を点灯させ、「180秒後」に「A席」に執務者が着席して紙面作業を開始し、「300秒後」に「B席」に執務者が着席してディスプレイ作業を開始する場合を想定している。その為、「60秒後」に「A席」および「B席」の目標照度が「200lx」となり、「180秒後」に「A席」の目標照度が「500lx」となり、「300秒後」に「B席」の目標照度が「400lx」に変更されている。
図12(b)に示す細い実線は、「A席」での机上面照度を示し、太い実線は、「B席」での机上面照度を示している。照明器具2を点灯させた「60秒後」から「A席」および「B席」の照度が徐々に上がって「約90秒後」に執務者が不在の場合の目標照度「200lx」に到達している。また、紙面作業を開始した「180秒後」から「A席」の照度が徐々に上がって「約250秒後」に紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」に到達している。また、ディスプレイ作業を開始した「300秒後」から「B席」の照度が徐々に上がって「約340秒後」にディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」に到達している。
第1ケースでは、「A席」で紙面作業を開始した「180秒」から照度が安定する「250秒」までの期間M1aで、「B席」の光環境が安定していない(波を打ったように照度が繰り返し上下している)。また、「B席」でディスプレイ作業を開始した「300秒」から照度が安定する「340秒」までの期間M1bで、「A席」の光環境が安定していない。
<第2ケースのシミュレーション結果(従来の照明制御)>
図13を参照して、第2ケースのシミュレーション結果について説明する。図13は、第2ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、図13(a)は設定した調光速度の一覧表であり、図13(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。図13(b)における横軸は経過時間(秒)であり、横軸は照度(lx「ルクス」)である。第2ケースは、目標照度によらず同一の調光速度で照明器具2を調光する場合を想定する。図13(a)に示すように、紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」、ディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」、執務者が不在の場合の目標照度「200lx」の何れに調光する場合でも、調光速度が「4%」で同一である。第2ケースは、調光速度が変更されている以外は、第1ケースと同じ条件である。
図13(b)に示す細い実線は、「A席」での机上面照度を示し、太い実線は、「B席」での机上面照度を示している。照明器具2を点灯させた「60秒後」から「A席」および「B席」の照度が徐々に上がって「約70秒後」に執務者が不在の場合の目標照度「200lx」に到達している。また、紙面作業を開始した「180秒後」から「A席」の照度が徐々に上がって「約200秒後」に紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」に到達している。また、ディスプレイ作業を開始した「300秒後」から「B席」の照度が徐々に上がって「約310秒後」にディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」に到達している。
ここで、第2ケースのシミュレーションでは、「B席」でディスプレイ作業を開始した後の期間M2aで、「A席」および「B席」の光環境が安定していない。以上の結果から、調光速度を一律に上げた場合には、目標照度までの到達時間が短くなるものの、照度の安定性が低くなる傾向があることが分かった。
なお、「A席」および「B席」の照明器具2を点灯させた後の期間M2bで「A席」および「B席」の光環境が安定していない。この原因は、調光速度に対して机上面照度センサ7の検知時間が長いことが考えられる。なお、第1ケース~第3ケースのシミュレーショでは、机上面照度センサ7の検知時間を「5秒」に設定している。机上面照度センサ7の検知時間「5秒」は、シミュレーションで設定した任意の数値であり、あくまで例示である。
図15に示すように、調光率の増減は、ある時刻t2での照度Q(t2)と、検知時間T内の平均照度Q(ave)との差により判断される。検知時間Tは、時刻t2と当該時刻t2よりも過去の時刻t1との間の期間である。検知時間Tが長い、または、調光速度が速いほど、照度Q(t2)と平均照度Q(ave)との差が大きくなるため、照度が安定し難くなったと考えられる。
<第3ケースのシミュレーション結果(本発明の照明制御)>
図14を参照して、第3ケースのシミュレーション結果について説明する。図14は、第3ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、図14(a)は設定した調光速度の一覧表であり、図14(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。図14(b)における横軸は経過時間(秒)であり、横軸は照度(lx「ルクス」)である。第3ケースは、目標照度に応じて異なる調光速度で照明器具2を調光する場合を想定する。図14(a)に示すように、紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」のときには調光速度が「4%」であり、ディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」のときには調光速度が「2%」であり、執務者が不在の場合の目標照度「200lx」のときには調光速度が「1%」である。第3ケースは、調光速度が変更されている以外は、第1ケースと同じ条件である。
図14(b)に示す細い実線は、「A席」での机上面照度を示し、太い実線は、「B席」での机上面照度を示している。照明器具2を点灯させた「60秒後」から「A席」および「B席」の照度が徐々に上がって「約90秒後」に執務者が不在の場合の目標照度「200lx」に到達している。また、紙面作業を開始した「180秒後」から「A席」の照度が徐々に上がって「約200秒後」に紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」に到達している。また、ディスプレイ作業を開始した「300秒後」から「B席」の照度が徐々に上がって「約320秒後」にディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」に到達している。
第3ケースでは、「A席」で紙面作業を開始した「180秒」から照度が安定する「200秒」までの期間M3aで、「B席」の光環境が安定していない。また、「B席」でディスプレイ作業を開始した「300秒」から照度が安定する「340秒」までの期間M3bで、「A席」の光環境が安定していない。期間M3aは、第1ケースの期間M1a(図12参照)よりも明らかに短く、第1ケースに比べて紙面作業での照度が安定するまでの期間が早い。以上の結果から、目標照度に応じて調光速度を設定した場合には、目標照度によらずに一定の調光速度を設定した場合に比べて、紙面作業での照度が安定するまでの期間が短くなる(第1ケースとの比較)。また、調光速度を一律に上げる場合に比べて、照度の安定性が高い傾向があることが分かった(第2ケースとの比較)。
続いて、安定する調光速度の組合せ(調光速度の幅)を検討するために、調光速度が「4%,2%,1%」の他、調光速度を「0.5」倍、「2」倍にした条件のシミュレーションを行った(第4ケースないし第6ケース)。
<第4ケースないし第6ケースのシミュレーション結果(本発明の照明制御)>
図16ないし図18を参照して、第4ケース~第6ケースのシミュレーション結果について説明する。図16ないし図18は、第4ケース~第6ケースのシミュレーションの内容を説明するための図であり、それぞれの図の(a)は設定した調光速度の一覧表であり、(b)は経過時間に伴う照度を示したグラフである。図16ないし図18の(b)における横軸は経過時間(秒)であり、横軸は照度(lx「ルクス」)である。第4ケース~第6ケースは、目標照度に応じて異なる調光速度で照明器具2を調光する場合を想定する。
図16(a)に示すように、第4ケースでは、紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」のときには調光速度が「2%」であり、ディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」のときには調光速度が「1%」であり、執務者が不在の場合の目標照度「200lx」のときには調光速度が「0.5%」である。
図17(a)に示すように、第5ケースでは、紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」のときには調光速度が「4%」であり、ディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」のときには調光速度が「2%」であり、執務者が不在の場合の目標照度「200lx」のときには調光速度が「1%」である。
図18(a)に示すように、第6ケースでは、紙面作業を行う場合の目標照度「500lx」のときには調光速度が「8%」であり、ディスプレイ作業を行う場合の目標照度「400lx」のときには調光速度が「4%」であり、執務者が不在の場合の目標照度「200lx」のときには調光速度が「2%」である。
図16ないし図18の(b)に示す細い点線は、「A席」での目標照度を示し、太い点線は、「B席」での目標照度を示している。第4ケース~第6ケースのシミュレーションでは、「60秒後」に「A席」および「B席」の直上の照明器具2を点灯させ、「180秒後」に「A席」に執務者が着席してディスプレイ作業を開始し、「300秒後」に「A席」に執務者が紙面作業を開始する場合を想定している。その為、「60秒後」に「A席」および「B席」の目標照度が「200lx」となり、「180秒後」に「A席」の目標照度が「400lx」となり、「300秒後」に「A席」の目標照度が「500lx」に変更されている。なお、第4ケース~第6ケースのシミュレーショでは、机上面照度センサ7の検知時間を「5秒」に設定している。
図16(b)および図17(b)に示すように、第4ケースおよび第5ケースのシミュレーションでは、「A席」および「B席」の光環境が比較的安定している(波の幅が小さく、所定時間が経過することで一定となっている)。一方、図18(b)に示す第6ケースのシミュレーションでは、「A席」および「B席」の光環境が安定していない(波を打ったように照度が繰り返し上下している)。
以上の結果からも分かるように、第4ケースおよび第5ケースにおける調光速度「2%,1%,0.5%」および「4%,2%,1%」の組合せでは、室内の照度が安定した。一方、第6ケースにおける調光速度「8%,4%,2%」の組合せでは、室内の照度が安定しなかった。安定しなかった理由は、前述した通り、今回の条件では、机上面照度センサ7の検知時間に対する調光速度が速いためと推察される。
発明者は、ここまで説明したシミュレーションの他に、様々な検知時間や調光速度を条件としてシミュレーションを行った。その結果、机上面照度センサ7の検知時間が「5秒」においては、図19に示す表の調光速度の範囲において室内の照度が安定することを確認した。なお、図19に示す調光速度の範囲については、シミュレーションの条件の範囲内での結果であり、例えば、室の大きさ、照明の数、照明の出力、エリア間の距離などによって安定する調光速度の範囲が変わってくることが予想される。
1 照明制御システム
2 照明器具
3 窓面輝度センサ
4 天井面輝度センサ
5 人検知センサ
6 作業申告手段
6A 送信機
6B 受信機
7 机上面照度センサ(照度センサ)
8 制御装置

Claims (7)

  1. 室内の照明制御システムであって、
    調光可能であり、前記室内に設定される各々のエリアに設置される照明器具と、
    各エリアの明るさを検出可能な明るさセンサと、
    前記明るさセンサの検出結果に基づいて、前記照明器具を目標となる明るさに制御する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、前記目標となる明るさに応じた調光速度で前記照明器具を制御する、
    ことを特徴とする照明制御システム。
  2. 前記各エリアの執務者を検知可能な人検知センサと、
    前記執務者の作業内容を申告する作業申告手段と、を備え、
    前記制御装置は、前記人検知センサの検知情報および前記作業申告手段の申告情報に基づいて、前記目標となる明るさを設定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の照明制御システム。
  3. 前記作業内容は、紙面作業およびディスプレイ作業を含み、
    前記目標となる明るさは、前記執務者が不在のエリア、前記執務者がディスプレイ作業を行うエリア、前記執務者が紙面作業を行うエリアの順番で高くなっており、
    前記調光速度は、前記執務者が不在のエリア、前記執務者がディスプレイ作業を行うエリア、前記執務者が紙面作業を行うエリアの順番で速くなっている、
    ことを特徴とする請求項2に記載の照明制御システム。
  4. 前記照明器具は、前記執務者が不在の場合にアンビエント照明として制御され、前記執務者が在席の場合にタスク照明として制御され、
    前記調光速度は、前記アンビエント照明のエリアよりも前記タスク照明のエリアが速くなっている、
    ことを特徴とする請求項2に記載の照明制御システム。
  5. 前記明るさセンサは、照度センサを含み、
    前記制御装置は、前記照明器具をタスク照明として制御する場合に、前記照度センサの検出結果に基づいて、前記目標となる明るさの指標となる目標照度を設定する、
    ことを特徴とする請求項4に記載の照明制御システム。
  6. 前記明るさセンサは、窓面の輝度または当該輝度に相関する光の量を第一検出値として検出する窓面輝度センサと、天井面の輝度または当該輝度に相関する光の量を第二検出値として検出する天井面輝度センサと、を含み、
    前記制御装置は、前記照明器具をアンビエント照明として制御する場合に、前記室内の空間の明るさ評価を目的変数とする数式を用いて、前記第一検出値および前記第二検出値から前記室内の空間の現状の明るさを算出し、算出した現状の明るさに基づいて、前記目標となる明るさを設定する、
    ことを特徴とする請求項4に記載の照明制御システム。
  7. 室内の照明制御方法であって、
    前記室内には、照明器具および明るさセンサが設置されており、
    前記照明器具は、調光可能であり、前記室内に設定される各々のエリアに設置され、
    前記明るさセンサは、各エリアの明るさを検出可能であり、
    前記明るさセンサを用いて、前記エリアの明るさを検出する検出ステップと、
    前記明るさセンサの検出結果に基づいて、前記照明器具を目標となる明るさに制御する制御ステップと、を有し、
    前記制御ステップでは、前記目標となる明るさに応じた調光速度で前記照明器具を制御する、
    ことを特徴とする照明制御方法。
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