JP2023167322A - 抗ストレス剤及びリラックス剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】オリゴ糖類を有効成分とする、ストレスを低減させる又はリラックスするために有用であり、安全に摂取可能な食用素材、並びに、当該食用素材を有効成分とする、抗ストレス剤及びリラックス剤の提供。【解決手段】マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とする、抗ストレス剤又はリラックス剤、マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とし、ストレスを低減させる又はリラックスするために摂取される経口用組成物、及び、飲食品又は健康補助食品である前記経口用組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ストレスを低減させる、又はリラックスするために有用な食用素材、当該食用素材を含む飲食品や健康補助食品に関する。
ヒト腸内にある腸内細菌の集団は、腸内細菌叢と呼ばれており、腸内細菌叢の維持及び健全化が、ヒトの健康に重要と考えられている。腸内細菌叢の維持及び健全化に有効な方法として、プレバイオティクスの摂取が挙げられる。プレバイオティクスとしては、イヌリンなどの食物繊維や、ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖などのオリゴ糖が知られている。
プレバイオティクスの1つとして、D-マンノースを主たる構成とするオリゴ糖が挙げられる。コーヒー抽出残渣には不溶性のマンナンが多く含まれており、酵素加水分解法(非特許文献1)、熱加水分解法(非特許文献2)などを用いて、当該オリゴ糖を産生する方法が開発されている。プレバイオティクスの特徴の1つに選択資化性を持つことがあげられているが、β-1,4-マンノビオース、β-1,4-マンノトリオ―ス、β-1,4-マンノテトラオース、及びβ-1,4-マンノペンタオースに単離精製されたものを、ヒト由来19属56種の腸内細菌を用いて純培養条件下の選択資化性試験を行った結果、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌の中ではビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)にのみ、よく資化される一方で、有害菌として挙げられるクロストリジウム・ペルフリンジェンス(Clostridiumu perfringens)や大腸菌(Escherichia coli)などの他の菌株の多くで全く資化されないこと、重合度による資化性の差はみられなかったことが報告されている(非特許文献2)。さらに、D-マンノースを主たる構成とするオリゴ糖を被験者に長期間摂取させた場合、当該オリゴ糖の摂取量に比例して、試験期間中の排便回数及び排便日数において増加する傾向が見られ、ビフィドバクテリウム属菌における占有率も有意に上昇していることが報告されている(非特許文献3)。
また、人間の糖タンパク質の糖鎖の重要な部分構造にはD-マンノースがβ-1,4結合したオリゴ糖が含まれており、飲食品原料としてのみならず、医薬品の原料としての応用も期待されている。例えば、マンノースを構成糖とするオリゴ糖類を経口摂取することにより、血清中の総コレステロールや中性脂肪の量が低下することが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
一方で、仕事や人間関係のストレスによるメンタルヘルスの悪化が社会問題となっている。メンタルヘルスの悪化により、うつ病や睡眠障害、摂食障害などの心の病気の発症リスクが高まり、各個人の幸福が損なわれることに加えて、生産性の低下など社会全体にとってもダメージが大きい。メンタルヘルスの悪化を防止するために、労働環境や人間関係などのストレス要因解決に加えて、各個人の抗ストレス耐性の向上やリラックス状態の促進などに役立つ技術の開発も求められている。例えば、テアニンと、セントジョーンズウォート、バレリアン、パッションフラワー、ホップ、ラフマ、ブラックコーホッシュ、カモミール、朝鮮人参エキス、レモンバーム、ローズマリー、GABA(gamma-aminobutyric acid)及びパラチノースからなる群より選ばれる1種又は2種以上を経口摂取することにより、α波が増強されてリラックス状態が促進されることが報告されている(特許文献2)。
特開2006-169256号公報 特許第5005879号公報
Sachslehner, et al., Journal of Biotechnology, 2000,vol.80, p.127-134. 浅野一朗ら、日本農芸化学会誌、2001年、第75巻、第10号、第1077~1083ページ。 Asano, et al., Food Science and Technology Research, 2004, vol.10(1), p.93-97. Yunes, et al., Anaerobe, 2016, vol.42, p.197-204. Abdou, et al., Biofactors, 2006, vol.26, p.201-208. Powell, et al., Biology of Sport, 2015, vol.32, p.91-95 Takagi, et al., PLoS ONE, 2016, vol.11(8), e0160533.
本発明は、オリゴ糖類を有効成分とする、ストレスを低減させる又はリラックスするために有用であり、安全に摂取可能な食用素材、並びに、当該食用素材を有効成分とする、抗ストレス剤及びリラックス剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、マンノースを主体とした単糖類が2~20分子結合したオリゴ糖を経口摂取することにより、運動ストレスや心理ストレスが負荷された際にストレスを低減できることを見出し、本発明を完成させた。
[1] 本発明の第一の態様に係る抗ストレス剤は、マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とする。
[2] 前記[1]の抗ストレス剤としては、前記オリゴ糖が、コーヒー豆由来であることが好ましい。
[3] 本発明の第二の態様に係るリラックス剤は、マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とする。
[4] 前記[3]のリラックス剤としては、前記オリゴ糖が、コーヒー豆由来であることが好ましい。
[5] 本発明の第三の態様に係る経口用組成物は、マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とし、ストレスを低減させる、又はリラックスするために摂取される。
[6] 前記[5]の経口用組成物としては、飲食品であることが好ましい。
[7] 前記[5]の経口用組成物としては、健康補助食品であることが好ましい。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、マンノースを主体とした単糖類が2~20分子結合したオリゴ糖を有効成分とするため、非常に安全に経口摂取可能である。したがって、本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤を含有させた飲食品や健康補助食品等は、ストレスを低減させるためや、リラックス状態を得るために摂取される経口用組成物として好適である。
参考例1において、各種糖類を含有する培地中でKUHIMを用いて再現した細菌叢を24時間培養した場合の、培養中の培地のpHの変動を示した図である。 参考例1において、KUHIMを用いて24時間培養した後の培養液の腸内細菌叢の構成を、NGSを用いて門レベルで解析した結果を示した図である。 参考例1において、KUHIMを用いて24時間培養した後の培養液の腸内細菌叢の構成を、NGSを用いてビフィドバクテリウム属菌レベルで解析した結果を示した図である。 参考例1において、KUHIMを用いて24時間培養した後の培養液中のGABA含有量を測定した結果を示した図である。 実施例1において、グルコース摂取時に行った運動負荷試験における唾液中コルチゾール量の測定結果を示した図である。 実施例1において、MOS摂取時に行った運動負荷試験における唾液中コルチゾール量の測定結果を示した図である。 実施例1において、グルコース摂取時に行ったメンタルテストにおけるアンケートのスコアの結果を示した図である。 実施例1において、MOS摂取時に行ったメンタルテストにおけるアンケートのスコアの結果を示した図である。
本発明及び本願明細書において、「オリゴ糖」とは、単糖同士がグリコシド結合によって2~20個程度結合したものをいう。本発明及び本願明細書において、「オリゴ糖」は、単一種類のオリゴ糖のみからなるもののみならず、重合度の異なる複数種のオリゴ糖の混合物(組成物)も含む。重合度の異なる複数種のオリゴ糖の混合物である場合、当該オリゴ糖の重合度は、当該混合物に含まれているオリゴ糖の平均重合度を意味する。すなわち、平均重合度が2~20の混合物は、本発明及び本願明細書における「オリゴ糖」に相当する。
本発明及び本願明細書において、オリゴ糖の重合度を表すために「DP」と記載することがある。DPとは、オリゴ糖を構成している単糖の数を意味する。4つのマンノースから構成されたオリゴ糖は重合度4、すなわち「DP4」と表される。
本発明及び本願明細書において、「マンノースを主体とした単糖類が2~20分子結合したオリゴ糖」とは、構成単糖全体に占めるマンノースの割合(オリゴ糖中のマンノース残基の割合。以下、「マンノース比率」ということがある。)が50%以上であるオリゴ糖を意味する。「マンノースを主体とした単糖類が2~20分子結合したオリゴ糖」は、「マンノオリゴ糖」ということがある。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖、すなわちマンノオリゴ糖を有効成分とする。本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤の有効成分として用いられるマンノオリゴ糖としては、マンノース比率が70質量%以上であるマンノオリゴ糖が好ましく、マンノース比率が80質量%以上であるマンノオリゴ糖がより好ましい。マンノース残基の割合が充分に高いことにより、マンノオリゴ糖による作用をより効果的に得ることができ、また、グルコース等の他の単糖類の含有割合が比較的低いことにより、甘味度等を低く抑えることができ、飲食品やサプリメント、医薬品等へ幅広く適用しやすくなる。
本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」の各単糖同士の結合様式は、特に限定されるものではなく、一分子中の結合様式が全て同種であってもよく、異種であってもよい。本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」としては、1分子中の大部分の結合様式が、ヒトの消化管上部で加水分解・吸収されない結合様式からなるものが好ましく、1分子中の大部分の結合様式がβ-1,4結合であるものがより好ましい。中でも、本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」としては、マンノース残基同士がβ-1,4結合で結合されている構造を、1分子中少なくとも1つ有するマンノオリゴ糖が好ましく、1分子中の全てのマンノース残基同士がβ-1,4結合で結合されているマンノオリゴ糖がより好ましく、マンノース比率が100%であり、かつ1分子中の全てのマンノース残基同士がβ-1,4結合で結合されているマンノオリゴ糖(β-1,4-マンノオリゴ糖)が特に好ましい。
本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」の重合度は、2~20の範囲内であれば特に限定されるものではない。本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤の有効成分としては、重合度が2~15の範囲内のマンノオリゴ糖が好ましく、重合度が2~10の範囲内のマンノオリゴ糖がより好ましく、重合度が2~6の範囲内のマンノオリゴ糖がさらに好ましい。
本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」が、マンノース比率が100%未満である場合、マンノース以外の構成単糖としては、特に限定されるものではなく、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、トレオース、リボース、キシロース、アラビノース、アルドヘキソース、リブロース、プシコース、及びソルボース等の各種の単糖を適宜組み合わせて用いることができる。本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」としては、マンノース以外の構成単糖が、グルコース、ガラクトース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上であるマンノオリゴ糖が好ましい。
本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」としては、構成単糖がマンノースのみからなる(マンノースのみを構成単位とする)マンノオリゴ糖類、すなわち、マンノースのみが2~20分子結合したオリゴ糖であることも好ましい。この場合には、2~20分子の全てのマンノースがβ-1,4結合で結合したβ-1,4-マンノオリゴ糖であることがより好ましい。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、マンノオリゴ糖のみからなるものであってもよく、他の成分を含むものであってもよい。当該他の成分としては、マンノオリゴ糖以外のオリゴ糖や単糖、多糖類等が挙げられる。本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤におけるマンノオリゴ糖の含量は、総固形分に対して30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがよりさらに好ましい。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤としては、単糖のマンノース由来の苦味を抑えることができるため、遊離のマンノース含量が50質量%以下に抑えられたものが好ましく、30質量%以下に抑えられたものより好ましい。
本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」としては、マンナンを加水分解処理することによって得られるものが好ましい。なお、本発明及び本願明細書において、単に「マンナン」という場合は、D-マンノースのみを構成単位とする多糖であるマンナンの他、マンノースとガラクトース又はグルコースと構成単位とした多糖であるガラクトマンナン、グルコマンナンも広義に含めるものとする。D-マンノースはアルドヘキソースであり、D-グルコース中のカルボキシル基に隣接する炭素に結合している水酸基の立体配置が逆になっているものである。
ここで、原料のマンナンは、例えばココナッツ椰子から得られるコプラミール、フーク、南アフリカ産椰子科植物HuacraPalm、ツクネイモマンナン、ヤマイモマンナンより抽出することにより得ることができる。このように得たマンナンを、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、好ましくは活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製して、糖混合物を得ることができる。かかる当混合物中には、上述した「マンノオリゴ糖」が含まれている。したがって、このようにして得た組成物は、本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤の有効成分として用いられる。さらに、「マンノオリゴ糖」は、コンニャクイモ、ユリ、スイセン、ヒガンバナ等に含まれるグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム等に含まれるガラクトマンナンを酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で分離精製し構成糖としてマンノースの比率を高めることにより製造したものであってもよい。
本発明において用いられる「マンノオリゴ糖」としては、コーヒー豆由来のものが好ましい。具体的には、例えば、コーヒー生豆又は焙煎したコーヒー豆を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。あるいは、使用済みのコーヒー抽出残渣を、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解、微生物発酵の中から選択される1種又は2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることも可能である。一般に、焙煎粉砕コーヒーを商業用の抽出器にて抽出すると、その際に焙煎コーヒーに含まれるガラクトマンナンの側鎖であるガラクトースが可溶化したり、アラビノガラクタンが加水分解によって可溶化する。従って、コーヒー抽出残渣中にはマンナンが豊富であり、しかも直鎖構造をとっているものと推定される。一方、セルロースは分解されにくく残渣として残っているが、セルロースを分解せずにマンナンを特異的に加水分解する条件を適宜選択することにより、マンノオリゴ糖を得ることができる。
特にコーヒー抽出残渣を分解する方法としては、酸及び/又は高温により加水分解する方法、酵素により分解する方法、微生物発酵により分解する方法が挙げられるが、これらに限定されない。酸及び/又は高温により加水分解する方法としては特開昭61-96947号公報、特開平2-200147号公報等に開示されている。商業用のコーヒー多段式抽出系において出てくる使用済みのコーヒー抽出残渣を反応容器中において酸触媒を添加して加水分解することもでき、酸触媒を添加せずに高温で短時間処理して加水分解することによっても得ることができる。管形栓流反応器を使用する方法が便利であるが、比較的高温で短時間の反応を行わせる方法に向いているものであれば、いかなる反応器を使用しても良好な結果が得られる。反応時間と反応温度を調節し、可溶化して加水分解させることによってDP10~40のマンナンをDP2~20のマンノオリゴ糖に分解し、その後コーヒー抽出残渣と分離してマンノオリゴ糖を得ることができる。なお、ここでコーヒー抽出残査とは、大気中あるいは加圧条件下で焙煎粉砕コーヒーを水などの溶媒で抽出した後の、いわゆるコーヒー抽出粕を意味する。
「マンノオリゴ糖」として、コーヒー豆由来のもの、すなわち、コーヒー豆(焙煎コーヒー豆、及び焙煎粉砕コーヒー豆を含む。)及び/又はコーヒー抽出残渣の加水分解処理により得られたものを用いる場合、使用するコーヒー豆の種類や産地に特に制限はなく、アラビカ種、ロバスタ種、リベリカ種等いずれのコーヒー豆でもよく、さらにブラジル、コロンビア産等いずれの産地のコーヒー豆も使用することができ、1種類の豆のみを単独で使用してもよく、ブレンドした2種以上の豆を使用してもよい。通常、商品価値がないとして廃棄処分されるような品質の悪いコーヒー豆又は小粒のコーヒー豆であっても使用することができる。上記コーヒー豆を一般的に用いられている焙煎機(直火、熱風、遠赤、炭火式など)による極浅炒り、浅炒り、中炒り、深炒りに焙煎したコーヒー豆、及びこの焙煎コーヒー豆を、一般的な粉砕機、ロールミルなどを用いて粉砕することにより得た、焙煎粉砕コーヒー(粗挽き、中粗挽き、中挽き、中細挽き、細挽きなどの種々の形状のものを含む)を用いることもできる。
また、コーヒー抽出残渣としては、通常の液体コーヒーあるいはインスタントコーヒー製造工程において、焙煎粉砕コーヒーを抽出処理した後のものであれば、常圧下、加圧下抽出であろうと、またいかなる起源、製法のコーヒー抽出残渣であっても使用することができる。
ここで、上記加水分解処理について、いくつか詳細に説明する。酵素により分解する方法としては、例えばコーヒー抽出残渣を水性媒体に懸濁させ、ここへ、例えば市販のセルラーゼ及びヘミセルラーゼ等を加えて撹拌しながら懸濁させればよい。酵素の量、作用させる温度及びその他の条件としては、通常の酵素反応に用いられる量、温度、条件であれば特に問題はなく、使用する酵素の最適作用量、温度、条件及びその他の要因によって適宜選択すればよい。
微生物発酵により分解する方法としては、例えば水性媒体に懸濁させたコーヒー抽出残渣にセルラーゼ、ヘミセルラーゼなどを産出する微生物を植菌して培養させればよい。使用する微生物は、細菌類や担子菌類などコーヒー抽出残渣中のマンナンを分解する酵素を産出するものであれば良く、使用する微生物によって培養条件などは適宜選択すればよい。
その他、単にコーヒー抽出残渣を180~250℃で加熱処理した後に得られたオリゴ糖組成物を、本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤の有効成分であるマンノオリゴ糖とすることもできる。
上記の方法によって得られた「マンノオリゴ糖」を含む反応液は、必要に応じて精製することができる。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法、溶剤抽出法等で脱色・脱臭を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行うことが挙げられる。精製法の組み合わせ及び精製条件としては、マンノオリゴ糖を含む反応液中の色素、塩、及び酸等の量や、その他の要因に応じて適宜選択すればよい。
マンノオリゴ糖は、ビフィドバクテリウム属菌の中ではビフィドバクテリウム・アドレセンティスにのみ、よく資化される一方で、有害菌として挙げられるクロストリジウム・ペルフリンジェンスや大腸菌などの他の菌株の多くで全く資化されない(非特許文献2)。さらに、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスは、GABAの生産量が高い(非特許文献4)。このため、マンノオリゴ糖を経口摂取すると、腸内細菌叢ではビフィドバクテリウム・アドレセンティスの占有率が上昇し、さらにビフィドバクテリウム・アドレセンティスにより産生されるGABA量も増大する。ここで、GABAは、グルタミン酸がグルタミン酸デカルボキシラーゼによって脱炭酸されて産生される、中枢神経の代表的な抑制性神経伝達物質である。GABAを経口摂取することにより、リラックス効果が獲得できることが知られている(非特許文献5)。本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、マンノオリゴ糖を有効成分とするため、経口摂取により、ストレス環境下で感じられるストレスの低減効果や、リラックス状態の促進効果が獲得できる。
本発明及び本願明細書において、「ストレス低減効果」及び「リラックス促進効果」は、唾液中のコルチゾール量を指標として図ることができる。コルチゾールはストレスホルモンの一種であり、運動ストレスや心理的ストレスをうけると唾液中の存在量が増加する(非特許文献6)。本発明に係る抗ストレス剤を摂取した場合の方が、摂取しなかった場合よりも、唾液中のコルチゾール量が低下している場合に、当該抗ストレス剤の摂取によりストレス低減効果が得られたと評価できる。同様に、本発明に係るリラックス剤を摂取した場合の方が、摂取しなかった場合よりも、唾液中のコルチゾール量が低下している場合に、当該リラックス剤の摂取によりリラックス促進効果が得られたと評価できる。なお、ヒトのストレス量やリラックス状態は、官能評価によって評価することもできる。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、マンノオリゴ糖によるストレス低減効果やリラックス状態促進効果を損なわない限り、その他の成分を含有していてもよい。例えば、賦形剤、結合剤、流動性改良剤(固結防止剤)、安定剤、保存剤、pH調整剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤、矯味剤、甘味料、酸味料、香料、着色料等として用いられている各種物質を、所望の製品品質に応じて適宜含有させてもよい。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤の剤型は、特に限定されるものではなく、各種の剤型を適用できる。本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、経口摂取することによってその効果を奏するため、経口投与に適したものが好ましい。当該剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等が挙げられる。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、マンノオリゴ糖を主成分とするものであり、非常に安全に経口接種可能である。そこで、本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、ストレスを低減させるためや、リラックス状態を得るために摂取する飲食品や健康補助食品(サプリメント)等の経口用組成物に含有させることができる。例えば、本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤を配合させた飲食品や健康補助食品を継続的に摂取することにより、運動ストレスや心理ストレスが負荷された際のストレス状態を低減させ、リラックス状態を促進させることができる。本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤は、その他、飼料や医薬品、化粧品の原料とすることも好ましい。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤を配合する飲料としては、例えば、嗜好性飲料、果汁飲料、清涼飲料、乳酸菌飲料、乳飲料等が挙げられる。なお、嗜好性飲料とは、紅茶、緑茶、ウーロン茶、抹茶等の茶飲料、ハーブティー、コーヒー、ココア、又はこれらの混合飲料を意味する。ハーブティーの原料としては、ハイビスカス、ローズヒップ、ペパーミント、カモミール、レモングラス、レモンバーム、ラベンダー等が挙げられる。
本発明に係る抗ストレス剤及びリラックス剤を配合する食品としては、例えば、コンソメスープ、ポタージュスープ、クリームスープ等のスープ類;チョコレート、クッキー、ビスケット、クラッカー、ウェハース、アイスクリーム、ゼリー等の菓子類等が挙げられる。
例えば、コーヒー抽出残渣を酸及び/又は熱により加水分解してマンノオリゴ糖を高純度に含むように調製した組成物をそのまま、又は必要に応じて活性炭、イオン交換樹脂、溶剤等で脱色、脱臭、脱酸等の精製処理をした後に、液体コーヒー、インスタントコーヒー等に添加することによって、運動ストレスや心理ストレスが負荷される前にストレス低減を目的に摂取するために好適なコーヒー飲料や、休憩時によりリラックスすることを目的に摂取するために好適なコーヒー飲料を製造できる。ここで、液体コーヒーとしては、缶又はいわゆるペットボトル容器に入れられて市販されているコーヒー飲料(若しくはコーヒー入り飲料と呼ばれるもの)が挙げられる。また、インスタントコーヒーとしては、焙煎粉砕コーヒーを熱湯で抽出した抽出液を噴霧又は凍結乾燥方法により水分を除去した可溶性粉末コーヒーと呼ばれるものが挙げられる。コーヒーミックス飲料としては、可溶性粉末コーヒーに砂糖、クリーミングパウダーなどを添加して混合した飲料などが挙げられる。
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
<マンノオリゴ糖の調製>
粉砕して粒径を約1mmにしたコーヒー抽出残渣を、総固形分濃度が約14質量%の水と粉砕物からなるスラリーに調製した後、4mの熱栓流反応器内において熱処理した。当該熱処理においては、当該スラリーを、滞留時間8分間に対応する速度で高圧蒸気とともに栓流反応器にポンプ輸送し、6.35mmφオリフィスを用いて約210℃に維持した。その後、当該スラリーを大気圧下に噴出することによって、反応を急止した。得られたスラリーを濾過して、不溶性固形分から可溶性固形分を含む液を分離した。この可溶性固形分含有液を、活性炭、次いで吸着樹脂で脱色し、さらにイオン交換樹脂で脱塩した後、濃縮することによって、マンノースを主体とする単糖類とこれらが2~10分子結合したオリゴ糖の混合物を含む糖液(固形分20質量%:以下、「MOS糖液」ということがある。)を得た。得られたMOS糖液の固形分のうち、25質量%がマンノースであり、75質量%がDP2~DP10のβ-1,4-マンノオリゴ糖であった。
[参考例1]
近年、新しいプレバイオティクスの評価方法として、培養系ヒト大腸フローラモデルであるKobe University Human Intestinal Model(KUHIM)が開発された(非特許文献7)。腸内細菌叢はその特性上、個人ごとに異なっており、同一人物においても、食事、運動、その時の体調によって、腸内細菌叢の構成及び腸内細菌が産生する代謝産物は変動するが、KUHIMはこれらを排除した形でプレバイオティクスの腸内フローラに対する影響を評価することができる。そこで、KUHIMを用いてマンノオリゴ糖のヒト腸内フローラに対する影響を調べた。
<糖液>
前記の通り調製したMOS糖液と、難消化性デキストリン(Dex)溶液、フルクトオリゴ糖(FOS)溶液を用いた。いずれの糖液も、滅菌水で溶解して最終濃度を0.5質量%に調整した糖液を、KUHIMに供した。
<糞便サンプル>
抗生物質及びプレバイオティクスを含むサプリメント等を摂取していない健常成人ボランティア8名から採取した糞便(サンプル1~8)を用いた。糞便は、市販の採取具(「BD BBL カルチャースワブプラス」、Becton Dickinson社製)を用いて採取した後、直ちに研究が始まるまで4℃で保存した。各糞便は、2mLの生理食塩水に溶解した糞便懸濁液を、KUHIMに供した。
<KUHIMを用いた混合培養>
嫌気性菌の一般的培養・感受性試験用であるGAMブイヨン(Code:05422、日水製薬社製)5.9gに、超純水90mLを加え、スターラーを用いて攪拌し、消泡剤5μLを加え、培地を調製した。その後、当該培地をKUHIMの培養槽に移し、オートクレーブ(115℃、15分間)を行い、オートクレーブ後の培養槽をKUHIMに供した。糖液10mLを添加した培養槽と無添加の培養槽を準備した。糞便懸濁液100μLを各培養槽に添加した。嫌気的条件として、0.2μmのPTFE膜(Pall corporation社製)を通して濾過滅菌を行ったNとCOの混合ガス(80:20(容量比))を15mL/分の条件で流し、24時間培養を行った。培養は、37℃、回転数300rpmで行い、培養中は継続してpHをモニタリングした。24時間培養後、培養液を採取し、-20℃で保存した。
<DNA抽出>
24時間培養した培養液を、1.5mL容チューブに1mL移し、13.2×1000rpm、5分間で遠心を行った後、市販の抽出用キット(ISOFECAL for Beads Beating、ニッポンジーン社製)を用いて、DNA抽出を行った。
<次世代シーケンサー(NGS)を用いた16Sメタゲノム解析>
培養液中に含まれる、細菌の16S rRNAをNGSで測定することにより、細菌の構成比を求めた。
(1)Amplicon PCR
微生物の16S rRNA V3-V4領域を、1μMであるForward Primer (5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3’:配列番号1)とReverse Primer(5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3’:配列番号2)を各5μL、5ng/μLに調整したDNA溶液2.5μL、2×KAPA HiFi HotStart ReadyMix (Sigma-Aldrich社製)12.5μLを混合したものを、サーマルサイクラー(T100、Bio Rad社製)を用いてPCRを行い増幅させた。この時の増幅プログラムは、95℃で3分間反応させた後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を25サイクル行った。その後、72℃で5分間反応させ、12℃で保持した。
16S rRNA V3-V4領域が十分に増幅されていることを確認するため、アガロースゲル電気泳動(1.5%)を行った。分子量マーカーとして「Gene Ladder 100」(ニッポンジーン社製)を用いた。
(2)PCR Clean-Up
増幅が確認できたPCR産物に、30秒間攪拌した吸着用ビーズ(Ampure XP ビーズ、Agencourt社製)20μLを加えて核酸(PCR産物)を吸着させた後、当該ビーズを80%エタノールで洗浄して風乾させた。その後、トリスバッファー(10 mM Tris、pH8.5)を添加して、当該ビーズから核酸を乖離させて、50μLのPCR産物溶液を回収した。
(3)Index PCR
96ウェルPCRプレートにPCR産物溶液5μLを分注した。「Nextera XT index 1 primers (N7XX) from the Nextera XT index kit」のプライマーチューブを横方向(column1~12)、「Nextera XT index 2 primers (N5XX) from the Nextera XT index kit」のプライマーチューブを縦方向(row A~H)にセットした「TruSeq Index Plate Fixture」に、当該96ウェルPCRプレートを置いた。そこに「Nextera XT index 1 primers (N7XX)」5μL、「Nextera XT index 2 primers (N5XX)」5μL、「2×KAPA HiFi HotStart ReadyMix」25μL、PCRグレードの滅菌水10μLを加え、粘着シールでふたをし、プレート自体を1,000×g、20℃で1分間遠心した。当該プレートをPCR装置にセットし、95℃で3分間反応させた後、95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間、計8サイクル反応させた。その後、72℃で5分間反応させ、最終的に4℃で保持させた。
(4)PCR Clean-Up 2
前記プレートを280×g、20℃で1分間遠心し、30秒間攪拌した吸着用ビーズ(Ampure XP ビーズ、Agencourt社製)56μLを加えて核酸(PCR産物)を吸着させた後、当該ビーズを80%エタノールで2回洗浄して風乾させた。その後トリスバッファーを添加して、当該ビーズから核酸を乖離させて、25μLの核酸溶液を回収した。その後、核酸濃度をトリスバッファーで4nMに調整したものを、ライブラリー溶液とした。
(5)ライブラリーの変性とMiseqサンプルのローディング
4nM ライブラリー溶液5μLと0.2N NaOH 5μLを混合し、ボルテックスで攪拌した後、280×g、20℃で1分間遠心した。室温で5分間静置した後、氷冷したハイブリダイゼーションバッファーを990μL加え、20pMの変性ライブラリー溶液を得た。当該変性ライブラリー溶液は、クラスター密度800~1000K/mmになるように希釈した。トリスバッファーを用いて4nMまで希釈したPhiX(Illumina社製)5μLと0.2N NaOH 5μLを混合し、ボルテックスを用いて軽く攪拌した。室温に5分間静置した後、氷冷したハイブリダイゼーションバッファーを990μL加え、20pMのPhiX溶液を得た。当該PhiX溶液は、解析する変性ライブラリー溶液と同じ濃度に調整した。調整したライブラリー570μLに、濃度調整したPhiX溶液30μLを混合し、96℃に予熱したヒートブロックで2分間インキュベートした。その後、氷上で5分間静置し、全量600μLを試薬カートリッジに分注した。MiSeqを用いて16Sメタゲノム解析を行った。
<GABA含有量の測定>
24時間培養した培養液1mLをチューブに移し、13.2×1000rpm、5分間遠心分離を行い、上清を回収した後、5倍に希釈した溶液を、GABA含有量測定のサンプルとした。
ホウ酸0.618gと水酸化ナトリウム0.200gを超純水10mLに加えて超音波処理を行い、完全に溶解させた。その後、500mLにメスアップし、3-メルカプトプロピオン酸50μLを加えて混合し、反応液Aとした。また、o-フタルアルデヒド(OPA)15mgをエタノール4.5mLに加えて超音波処理を行い、完全に溶解させた。その後、反応液A10.5mLに超純水60mLを加え混合し、反応液Bとした。
サンプル100μL、反応液A600μL、及び反応液B300μLを混合した後、2分間静置し、誘導体化を行った後、次の条件でHPLCと測定を行った。
HPLC条件:
HPLC装置:GL-7400(ジーエルサイエンス社製)
カラム:Inertsil(登録商標) ODS-4(3.0×150mm、ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:35℃
検出器:GL-7453 FL Detector(FL Ex 350 nm EM 450 nm(0~29分間)、EX 266 nm Em 305 nm(29~35分間)、ジーエルサイエンス社製)
移動相A:CHCN/CHOH/HO(45/40/15(容量比))
移動相B:20mM KHPO(pH6.9、HPO
流速:0.7mL/分
測定時間:15分間(測定時間15分間中の移動相は、0~5分までは、移動相B:100%で流しており、5分から15分までは、移動相A:11%、移動相B:89%の割合で流し、GABAの測定を行った。
<KUHIMの培養結果>
KUHIMを用いて細菌叢を再現し、そこに0.5質量%濃度となるようにオリゴ糖を添加して24時間培養した。培養中における平均pHの変動と標準誤差を図1に示す。
コントロール(図中、「Cont.」)のpHは、5時間付近を起点として下がり始めたが、13時間付近から緩やかな上昇に転じ、最終pHは6程度に収束した。また、図1に示すように、培養24時間後のpHにおいて、オリゴ糖添加群はコントロールと比較して優位にpHの低下がみられた。特にMOS及びFOSにおいて、pHの低下は顕著であった。
NGSを用いて、24時間培養したコントロール及びオリゴ糖添加群の培養液の腸内細菌叢の構成を、門レベル及びビフィドバクテリウム属菌レベルで解析した結果をそれぞれ図2及び図3に示す。図2及び3中、1~8は、それぞれ、糞便サンプル1~8を添加して調製された培養液の結果を示す。図2に示すように、コントロールに比べて、MOS、Dex、FOSを添加した群は、代表的な有用菌として知られるビフィドバクテリウム属菌が属するアクチノバクテリア(Actinobacteria)門の占有率が、全てにおいて増加していることが確認された。さらに、図3に示すように、アクチノバクテリア門のほとんどがビフィドバクテリウム属菌であることが確認された。このことから、今回用いた3種類のオリゴ糖は、体調や食事といった要因を排除できるKUHIMを用いた試験でも、ビフィドバクテリウム属菌を増加させ、腸内環境を改善することができるプレバイオティクスであることが示唆された。
HPLCを用いて、24時間培養したコントロール及びオリゴ糖添加群の培養液中のGABA含有量を測定した結果を図4に示す。図4中、1~8は、それぞれ、糞便サンプル1~8を添加して調製された培養液の結果を示す。オリゴ糖添加群は、GABAの含有量が増加される傾向にあることが確認された。
[実施例1]
マンノオリゴ糖を経口摂取することによる影響を調べた。対照として、グルコースを経口摂取した場合と比較した。
<ボランティアによるマンノオリゴ糖(MOS)及びグルコース摂取>
抗生物質及びプレバイオティクスを含むサプリメント等を摂取していない健常成人ボランティア4名に対して、MOSとグルコースを糖サンプルとして、ダブルブラインドクロスオーバー試験を行った。具体的には、ボランティアに、摂取開始から2週間、MOSとグルコースのいずれか一方の糖サンプルを摂取させ、その後、腸内環境を通常時に戻すために2週間以上のウォッシュ期間を置いた後、さらに2週間、前半に摂取した糖サンプルとは別の糖サンプルを経口摂取させた。各糖サンプルは、1日当たり3gを100mLの水に溶解させた水溶液として経口摂取させた。各ボランティアには、摂取している糖サンプルがMOSとグルコースのいずれであるかは知らせずに試験を行った。
<運動負荷試験>
各糖サンプルを摂取開始から0日目、7日目、及び14日目に、エアロバイクを用いて一定の運動負荷(VO2max 75%)で30分間の運動を行うことで、運動ストレスを負荷した。その際、運動開始から0分(運動開始前)、15分、及び30分の時点に唾液の採取を行った。唾液採取は、サリベットコットン(ザルスタット社製)を用いて行った。唾液を回収したサリベットは、4000rpm、5分間の遠心分離を行い、サリベット内のコットンに含まれた唾液を分離して回収し、-80℃で保存した。
<唾液中コルチゾール測定>
唾液中のコルチゾール量を、市販の測定キット(Cortisol Salivary Immunoassay Kit、Salimetrics社製)を用いて測定した。唾液中のコルチゾール量は、3回測定した。
グルコース摂取時に行った運動負荷試験における唾液中コルチゾール量の測定結果を図5に示す。MOS摂取時に行った運動負荷試験における唾液中コルチゾール量の測定結果を図6に示す。図5及び6中、1~4は、各健常人ボランティアから採取された唾液の結果を示す。各図における唾液中コルチゾール量は、運動開始前(図中、「0min」)にける唾液中コルチゾール量を100%とした相対値(%)として表した。図5に示すように、グルコース摂取期間における運動負荷試験では、唾液中コルチゾール量は、グルコース摂取期間に依存する変化は観察されなかった。一方で、図6によれば、MOS摂取期間における運動負荷試験では、4名のボランティア全員において、唾液中コルチゾール量は、MOS摂取前(図中、「0day」)よりも、MOS摂取から7日目や14日目(図中、「7day」及び「14day」)のほうが減少する傾向が確認された。これらの結果から、MOS摂取により、運動ストレスを低減して運動ストレスに対するリラックス効果が得られることがわかった。
<メンタルテスト>
各糖サンプルを摂取開始から0日目、7日目、及び14日目に、メンタル負荷をかけるテストを行った。具体的には、4桁の数値から指定した数を引き続ける計算を15分間実施させた。各ボランティアには、できるだけ早く正確に答えることを要求し、途中で間違えた場合や、最後まで引き続けて答えが0以下になった際は、最初からやり直させた。
各ボランティアに対して、Visual Analogue Scale(VAS)を用いたアンケートを行い、ストレス前後で、疲労、リラックス、気分の3項目について評価した。各項目について、ボランティアには、10cmの直線の左端と右端を、それぞれ0及び100の程度として、現在どれくらいの割合で、疲労しているのか(0がまったく疲れていない、100が大変疲れている)、リラックスしているのか(0が大変リラックスしている、100がまったくリラックスしていない)、心理的な気分がどの程度か(0が大変気分が良い、100が大変気分が悪い)を、直線と交差するように斜線を引くことで評価させた。10cmの評価用の直線における、左端からボランティアが引いた斜線との交点までの距離を「回答距離(cm)」とした。メンタルテストの前後にアンケートを行い、回答距離の差([メンタルテストの後の回答距離(cm)]-[メンタルテストの前の回答距離(cm)])をスコアとした。
グルコース摂取時に行ったメンタルテストにおけるアンケートのスコアの結果を図7に示す。MOS摂取時に行ったメンタルテストにおけるアンケートのスコアの結果を図8に示す。図7及び8中、1~4は、各健常人ボランティアのメンタルテストの結果を示す。図7及び図8に示すように、疲労及び気分の低下に関するVASを用いた項目において、グルコース及びMOSの両方において、変化はみられなかったが、リラックスの項目において、MOSの摂取によるリラックス効果の獲得傾向にあることが観察された。
これらの結果から、マンノオリゴ糖の経口摂取により、運動ストレスやメンタルストレスが低減されたり、リラックス状態が促進されることがわかった。参考例1で示すように、MOSにより腸内細菌叢中のビフィドバクテリウム属菌の占有率が向上し、GABA産生量が増大することから、MOS経口摂取により得られる抗ストレス効果やリラックス促進効果は、腸内に届いたMOSによりビフィドバクテリウム属菌が増加し、これにより増加した腸内のGABAが神経系を通して脳に影響を及ぼすことによって得られることが示唆された。

Claims (7)

  1. マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とする、抗ストレス剤。
  2. 前記オリゴ糖が、コーヒー豆由来である、請求項1に記載の抗ストレス剤。
  3. マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とする、リラックス剤。
  4. 前記オリゴ糖が、コーヒー豆由来である、請求項3に記載のリラックス剤。
  5. マンノースの割合が50質量%以上であるオリゴ糖を有効成分とし、ストレスを低減させる、又はリラックスするために摂取される、経口用組成物。
  6. 飲食品である、請求項5に記載の経口用組成物。
  7. 健康補助食品である、請求項5に記載の経口用組成物。
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