JP2023156459A - 加齢性認知障害の処置としての血漿画分 - Google Patents

加齢性認知障害の処置としての血漿画分 Download PDF

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Abstract

【課題】加齢性状態を処置及び/または防止するための方法及び組成物を提供する。【解決手段】認知障害と診断された対象に有効量の血漿画分を投与することを含む、認知障害を処置する方法を提供する。前記血漿画分は、血漿タンパク質画分であることが好ましい。【選択図】図5

Description

本発明は、加齢性疾患の防止及び処置に関する。本発明は、神経認知障害及び神経変性障害などの加齢に関連する状態を処置及び/または防止するための、血漿画分などの血液産物の使用に関する。
以下の内容は、背景情報として提示されるものであり、本発明の先行技術であることを容認するものではない。
加齢は、認知機能障害、がん、関節炎、視力喪失、骨粗鬆症、糖尿病、循環器疾患、及び卒中をはじめとする複数のヒト疾患の重要なリスク因子である。自然な加齢中の正常なシナプス喪失に加えて、シナプス喪失は、多くの神経変性状態に共通する早期の病理学的事象であり、これらの状態に関連する神経及び認知の機能障害と最も相関している。したがって、加齢は依然として、アルツハイマー病(AD)などの認知症関連の神経変性疾患の単一の最も支配的なリスク因子である(Bishop,N.A.et al.,Neural mechanisms of ageing and cognitive decline.Nature 464(7288),529-535(2010)、Heeden,T.et al.,Insights into the ageing mind:a view from cognitive neuroscience.Nat.Rev.Neurosci.5(2),87-96(2004)、Mattson,M.P.,et al.,Ageing and neuronal vulnerability.Nat.Rev.Neurosci.7(4),278-294(2006))。
加齢は、中枢神経系を含む身体の全ての組織及び機能に影響し、認知などの機能の低下は、生活の質に深刻な影響を及ぼし得る。認知低下及び神経変性障害の処置は、機能障害の防止及び逆転において限られた成功しか収めていない。したがって、加齢の影響を防ぐこと、それに対抗すること、またはそれを逆転させることによって認知の完全性を維持するための、新しい処置を識別することが重要である。
本発明は、認知機能障害状態、加齢性認知症、及び神経変性疾患などの加齢性障害を処置及び/または防止するための血液産物の生成及び使用に基づく。本発明は、とりわけ、認知機能障害、加齢性認知症、及び神経変性疾患の処置及び/または防止のための新しい療法の必要性を認識するものである。血液及び血漿に由来する本発明の本組成物は、認知機能障害、加齢性認知症、及び神経変性疾患の処置及び/または防止において効力を呈する血漿画分の利用による、現在の療法の失敗及び欠点の解決に関する。更に、本発明は、血漿画分中で識別されるタンパク質で、認知機能障害及び加齢性認知症の処置または予防薬としてそれ自体が効力を呈し得るもの、あるいは更なる薬剤による阻止の標的となるものに関する。
本発明はまた、異なる血漿画分(例えば、画分、流出液、「血漿画分」、血漿タンパク質画分、ヒトアルブミン溶液)の間のタンパク質含有量の差が、ある特定の認知機能障害の防止及び/または改善、ならびに神経変性疾患の緩和の一因であり得ることを認識するものである。限定としてではなく例として、本発明の実施形態は、単にヒトアルブミン溶液(Human Albumin Solution、HAS)調製物のアルブミン濃度が高いことが、アルブミン濃度がより低い血漿タンパク質画分(Plasma Protein Fraction、PPF)調製物に関連付けられる認知の改善の背景にある推進力ではないことを示す。
若年のドナーに由来する血液及び血漿は、分子、構造、機能、及び認知のレベルにおけるものを含め、既に存在する脳の加齢の影響の改善及び逆転を呈した(Saul A.Villeda,et al.Young blood reverses age-related impairments in cognitive function and synaptic plasticity in mice.Nature Medicine 20 659-663(2014))。本発明は、血漿の画分及び流出液に関し、その一部は患者のショックを処置するために従来使用されてきた。また本発明は、これらが加齢性認知機能障害の処置方法として効果的であるという発見に関する。
そこで、本発明の態様によれば、血漿の血液産物画分を使用した、加齢性認知機能障害、加齢性認知症、及び/または神経変性疾患の処置方法が提供される。本方法の態様は、加齢性認知機能障害もしくは神経変性疾患を患っているか発症するリスクがある個体に、血漿画分を投与することを含む。本方法の更なる態様は、加齢性認知機能障害を患っているか発症するリスクがある個体に、特定の年齢範囲のドナープールに由来する血漿画分を投与することを含む。また、本方法を実践する際に役立つ試薬、デバイス、及びそのキットも提供される。
一実施形態において、血漿画分は、例えば、後述するCohn分画プロセスなどの血液分画プロセスから得られたいくつかの血漿画分のうちの1つであり得る。別の実施形態では、血漿画分は、正常なヒトアルブミン、アルファ及びベータグロブリン、ガンマグロブリン、ならびに他のタンパク質を個々にあるいは複合体として含む溶液である、本明細書において「血漿画分」と呼ばれる種類のものであってもよい。別の実施形態では、血漿画分は、当業者には「血漿タンパク質画分」(PPF)として公知の種類の血漿画分であってもよい。別の実施形態では、血漿画分は、「ヒトアルブミン溶液」(HAS)画分であってもよい。更に別の実施形態では、血漿画分は、血栓症のリスク低減と共に画分の効力が保持されるように凝固因子の実質的に全てが除去されたものであってもよい。本発明の実施形態は、例えば、若年ドナーまたは若年ドナープールに由来する画分を投与することも含み得る。本発明の別の実施形態は、血漿画分で処置された対象の認知改善のモニタリングを含み得る。
本明細書で言及される公開文献及び特許出願は全て、個々の公開文献または特許出願各々が参照により援用されることが具体的かつ個々に示されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用されている。
添付の図面は本発明の実施形態を例示し、本明細書と併せて本発明の説明に役立つ。これらの図面は、限定としてではなく、例示として提示されるものである。図面の様々な特徴は縮尺通りでない場合があることが強調される。
対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢または13か月齢のNSGマウスをオープンフィールドチャンバに15分間入れたときの立ち上がり時間を示す。 対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢または13か月齢のNSGマウスをオープンフィールドチャンバに15分間入れたときの運動速度を示す。 対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢または13か月齢のNSGマウスをオープンフィールドチャンバに15分間入れたときに動いた移動距離を示す。 対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢または13か月齢のNSGマウスが、手がかり付きY迷路試験において新奇(novel)アームで過ごした時間を示す。 対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢または13か月齢のNSGマウスが、手がかり付きY迷路試験の新奇アームで過ごした時間の、非新奇(familiar)アームで過ごした時間に対する比(新奇:非新奇の比)を示す。 対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢または13か月齢のNSGマウスの手がかり付きY迷路試験における運動速度を示す。 対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢または13か月齢のNSGマウスが、手がかり付きY迷路試験において動いた移動距離を示す。 Aは、対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢及び13か月齢のNSGマウスの記憶に関する文脈的恐怖条件付け試験における、すくみ時間のパーセントを示す。Bは、対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢及び13か月齢のNSGマウスの記憶に関する聴覚的手がかり付き恐怖条件付け試験における、すくみ時間のパーセントを示す。 対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢及び13か月齢のNSGマウスの記憶に関する手がかり付き恐怖条件付け試験の最後の90秒間における、すくみ時間のパーセントを数量化したものである。 Aは、空間記憶を試験するBarnes迷路の所要時間のチャートである。対照、PPF1、またはHAS1で処置した3か月齢及び13か月齢のNSGマウスが標的の穴に達するまでの所要時間が示されている。Bは、Aに示される最後の3回の試行の平均を数量化したものである。 Aは、対照、PPF1、またはHAS1で、最長6か月にわたって1週間に2回処置した、3か月齢及び13か月齢のNSGマウスの歯状回における、新生ニューロンのマーカーであるダブルコルチン(Dcx)に対して陽性に染色する細胞の数を数量化したものである。Bは、対照、PPF1、またはHAS1で、最長6か月にわたって1週間に2回処置した、3か月齢及び13か月齢のNSGマウスの歯状回における、増殖性細胞のマーカーであるKi67に対して陽性に染色する細胞の数を数量化したものである。 対照、PPF1、1倍濃縮HAS1、または5倍濃縮HAS1で、5週間にわたって1週間に3回処置した、13か月齢のNSGマウスにおける、Dcxに対して陽性に染色する細胞の数を数量化したものである。 対照、PPF1、1倍濃縮HAS1、または5倍濃縮HAS1で、5週間にわたって1週間に3回処置した、13か月齢のNSGマウスにおける、Ki67に対して陽性に染色する細胞の数を数量化したものである。 Aは、6か月齢から開始して1週間に2回、尾静脈注射により食塩水(対照)またはPPF1のいずれかを静脈内処置したNODscidマウスの、オープンフィールドチャンバにおける立ち上がり回数を示す。立ち上がりは、マウスをオープンフィールドチャンバに入れてから15分のスパンにわたって測定した。Bは、6か月齢から開始して1週間に2回、尾静脈注射により食塩水(対照)またはPPF1のいずれかを静脈内処置したマウスの、オープンフィールドチャンバにおける運動速度を示す。速度は、マウスをオープンフィールドチャンバに入れてから15分のスパンにわたって測定した。Cは、6か月齢から開始して1週間に2回、尾静脈注射により食塩水(対照)またはPPF1のいずれかを静脈内処置したマウスが、オープンフィールドチャンバにおいて移動した距離を示す。速度は、マウスをオープンフィールドチャンバに入れてから15分のスパンにわたって測定した。 Barnes迷路の所要時間、ならびに海馬依存的な空間学習及び記憶を示す。150μLの食塩水対照、若年血漿、流出液I、または流出液II/IIIで処置した老齢NSGマウス(12か月齢)が標的の穴に達するまでの所要時間が示されている。 雄の老齢NSGマウス(12か月齢)の海馬依存的な空間学習及び記憶に対する、若年ヒト血漿、PPF1、及び食塩水対照の影響を示す。マウスは、4週間にわたって1週間に3回(i.v.)、そして報告されている試験が行われた週である第5週及び第6週の間は1週間に2回、150μLの浄化した若年ヒト血漿(若年血漿)、PPF1、または食塩水で処置した。各処置群について、Barnes迷路の穴に達するまでの所要時間が示されている。 各試験日の最後の3回の試行においてBarnes迷路の標的の穴を見つけるまでの平均所要時間に対する、若年ヒト血漿、PPF1、及び食塩水対照の影響を示す。老齢NSGマウス(12か月齢)を、150μLの浄化した若年ヒト血漿(若年血漿)、PPF1、または食塩水で、4週間にわたって1週間に3回(i.v.)処置し、その後、試験が行われた週である第5週及び第6週の間は1週間に2回処置した。 BrdU検出により判定される細胞生存率に対する、若年ヒト血漿、PPF1、及び食塩水対照の影響を示す。老齢NSGマウス(12か月齢)を、150μLの浄化した若年ヒト血漿(若年血漿)、PPF1、または食塩水で、4週間にわたって1週間に3回(i.v.)処置し、その後、行動試験が行われた週である第5週及び第6週の間は1週間に2回処置した。殺処分後に海馬切片を解析した。 皮質培養物中の神経球の増殖に対する、対照、PPF1、及びHAS1の影響を示す。Tuj1、DAPI、またはTuj1及びDAPIに関して画像化した、21日間のインビトロ培養後の皮質培養物における神経球の画像例を示す。 皮質培養物における正味の神経突起長に対する、対照、PPF1、及びHAS1の影響を示す。 皮質培養物中の球体及び突起の成長に対する、ビヒクル、PPF1、及びHAS1の影響を示す。IncuCyteソフトウェアアルゴリズム(Essen BioScience,Inc.,Ann Arbor,MI)により判定された黄色の陰影は、球体をハイライトし、ピンク色の陰影は神経突起をハイライトする。 Aは、B27及び2mM Glutamaxを補充した神経基本培地(ビヒクル)、PPF1(10%の5%原液)、またはHAS1(10%の5%原液)に懸濁した、E14-15マウス胚の皮質における神経球数を、ビヒクルに対するパーセントとして数量化したものを示す。Bは、B27及び2mM Glutamaxを補充した神経基本培地(ビヒクル)、PPF1(10%の5%原液)、またはHAS1(10%の5%原液)に懸濁した、E14-15マウス胚の皮質における神経突起長を、ビヒクルに対するパーセントとして数量化したものを示す。Cは、B27及び2mM Glutamaxを補充した神経基本培地(ビヒクル)、PPF1(10%の5%原液)、またはHAS1(10%の5%原液)に懸濁した、E14-15マウス胚の皮質における神経突起分岐点を、ビヒクルに対するパーセントとして数量化したものを示す。Dは、B27及び2mM Glutamaxを補充した神経基本培地(ビヒクル)、PPF1(10%の5%原液)、またはHAS1(10%の5%原液)に懸濁した、E14-15マウス胚の皮質における神経球サイズを、ビヒクルに対するパーセントとして数量化したものを示す。 対照ビヒクル(B27及び2mM Glutamaxを補充した神経基本培地)、PPF1(10%の5%原液)、またはHAS1(10%の5%原液)で処置した、Sox2に対して陽性に染色する神経球の数を数量化したものを示す。Sox2染色は、神経球の神経発生の可能性の指標である。
1.導入
本発明は、加齢に伴う認知症及び神経変性疾患を含む、認知機能障害の処置及び/または防止のための方法及び組成物の識別及び発見に関する。本明細書には、本発明の態様である、このような障害を患う対象を処置するための方法及び組成物が記載される。本明細書に記載の方法及び組成物は、認知機能障害、加齢に伴う認知症、及び神経変性疾患の防止、認知機能障害、加齢に伴う認知症、及び神経変性疾患の症状の寛解、加齢性認知機能障害、加齢に伴う認知症、及び神経変性疾患の進行の減速、及び/または加齢性認知機能障害、加齢に伴う認知症、及び神経変性疾患の進行の逆転において有用である。本発明の一実施態様は、血液分画プロセス、例えば、後述するCohn分画プロセスなどから得られた、1つ以上の画分または流出液などの血漿画分を、処置として使用することを含む。本発明の一実施形態は、血漿画分(正常なヒトアルブミン、アルファ及びベータグロブリン、ガンマグロブリン、ならびに他のタンパク質を個々にあるいは複合体として含む溶液、以降「血漿画分」と呼ぶ)を使用することを含む。本発明の別の実施形態は、血漿タンパク質画分(PPF)を処置として使用することを含む。本発明の別の実施形態は、ヒトアルブミン溶液(HAS)画分を処置として使用することを含む。更に別の実施形態は、血液分画プロセスに由来する流出液、例えば後述の流出液Iまたは流出液II/IIIを使用することを含む。更なる実施形態は、効力を保持しつつ血栓症のリスクを低減させるために実質的に全ての凝固因子が除去されている血漿画分を含む(例えば、全体が参照により本明細書に援用されている米国特許出願第62/236,710号を参照されたい)。
本発明を詳細に説明する前に、記載される特定の方法または組成物は当然ながら様々であり得るため、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、限定を意図するものではないことが理解される。
本明細書において論じる公開文献は、本出願の出願日以前のそれらの開示内容のためだけに提供されている。本明細書におけるいかなる記載も、本発明が先行発明によるそのような公開に先行する権利を有しないことの容認として解釈されるべきでない。更に、提供される公開文献の日付は実際の公開日とは異なる場合があり、実際の公開日は個々に確認する必要があり得る。
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある各介在値もまた、文脈上他の意味を示すことが明らかでない限り、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されるものと理解される。規定の範囲内の任意の規定値または介在値と、その規定の範囲内の任意の他の規定値または介在値との間のより小さな範囲は各々、本発明に包含される。こうしたより小さな範囲の上限及び下限は、独立してその範囲に含まれてもその範囲から除外されてもよく、かつ、いずれかもしくは両方の限界値がこうしたより小さな範囲に含まれる場合の各範囲、またはいずれの限界値もこうしたより小さな範囲に含まれない場合の各範囲も、規定の範囲内に具体的に除外される限界値がない限り、本発明に包含される。規定の範囲が限界値の一方または両方を含む場合、含まれるこれらの限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
ただし、特許請求の範囲は、いずれかの任意選択の要素を除外するように起草されている場合がある。したがって、この記述は、請求項の要素の列挙と関連した「単に(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な用語の使用、または「否定的」限定の使用に関する先行基礎となることを意図するものである。
本開示を読めば当業者には明らかになるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離したりそれらと組み合わせたりすることができる、個別の構成要素及び特徴を有する。列挙される方法はいずれも、列挙される事象の順序で行われても、論理的に可能な任意の他の順序で行われてもよい。
2.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の実践または試験においては本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法及び材料を使用してもよいが、いくつかの潜在的で好ましい方法及び材料をこれより記載する。本明細書で言及される公開文献は全て、引用されるこれらの公開文献との関連で方法及び/または材料を開示ならびに説明するために、参照により本明細書に援用されている。矛盾がある場合、援用されている公開文献のあらゆる開示内容に本開示が優先するものと理解される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈上他の意味を示すことが明らかでない限り、複数の参照対象を含むことに留意すべきである。よって、例えば「細胞(a cell)」への言及は、そのような細胞の複数形を含み、「ペプチド(the peptide)」への言及は、当業者に公知の1つ以上のペプチド及びその同等物、例えばポリペプチドへの言及を含むなどということである。
本発明の方法を説明するにあたり、「宿主」、「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は交換可能に使用され、本開示の方法に従うそのような処置を必要とする任意の哺乳動物を指す。そのような哺乳動物としては、例えば、ヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類動物、マウス、及びラットが挙げられる。ある特定の実施形態では、対象は非ヒト哺乳動物である。一部の実施形態では、対象は家畜である。他の実施形態では、対象はペットである。一部の実施形態では、対象は哺乳動物である。ある特定の事例では、対象はヒトである。他の対象としては、家庭用ペット(例えば、イヌ及びネコ)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマなど)、齧歯類動物(例えば、マウス、モルモット、及びラット、例えば、疾患の動物モデルにおけるもの)、ならびに非ヒト霊長類動物(例えば、チンパンジー及びサル)を挙げることができる。したがって、本発明の対象としては、哺乳動物、例えば、ヒト及び他の霊長類動物、例えばチンパンジー及び他の類人猿ならびにサル種などが挙げられるがこれらに限定されず、ある特定の実施形態では、対象はヒトである。対象という用語は、任意の齢、体重、または他の身体的特徴をもつ個人または生物を含むことも意図し、この対象は、成人、小児、乳児、または新生児であってもよい。
「若年」または「若年個体」とは、暦年齢で40歳以下、例えば35歳以下、例えば30歳以下、例えば25歳以下、または22歳以下の個体を意味する。一部の事例では、若年血漿を含む血液産物の源となる個体は、10歳以下、例えば5歳以下、例えば1歳以下のものである。一部の事例では、血漿産物が新生児の臍帯から採取される場合、対象は新生児であり、血漿産物の源は臍帯である。したがって、「若年」及び「若年個体」は、0~40歳、例えば、0歳、1歳、5歳、10歳、15歳、20歳、25歳、30歳、35歳、または40歳の対象を指し得る。他の事例では、「若年」及び「若年個体」は、比較的高齢の個体において呈される血漿中の炎症性サイトカインのレベルを呈していない個体のような、生物学的年齢(暦年齢とは対照的に)を指し得る。反対に、これらの「若年」及び「若年個体」は、比較的高齢の個体におけるレベルと比較して高い、血漿中の抗炎症性サイトカインレベルを呈する個体のような、生物学的年齢(暦年齢とは対照的に)を指す場合がある。限定としてではなく例として、炎症性サイトカインはエオタキシンであり、若年対象または若年個体と高齢の個体との間の倍率差は、少なくとも20%である。同様に、高齢の個体と若年の個体との間の、他の炎症性サイトカインの倍率差が、生物学的年齢を指すために使用されてもよい(参照により本明細書に援用されている米国特許出願第13/575,437号を参照されたい)。通常、個体は健常である。例えば、個体は、採取時に血液悪性腫瘍または自己免疫疾患を有しない。
「加齢性認知機能障害を患っているか患うリスクがある個体」とは、その平均寿命の約50%超を過ぎている、例えば、その平均寿命の60%超、例えば70%超、例えば75%、80%、85%、90%、95%、または更には99%超を過ぎている個体を意味する。個体の年齢は、対象となる種に左右される。よって、この百分率は、対象となる種の予想される平均余命に基づく。例えばヒトでは、そのような個体は、更に後述する加齢性状態、例えば、自然な加齢プロセスに関連する認知機能障害を患う、50歳以上、例えば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、かつ通常100歳以下、例えば90歳、すなわち、約50~100歳、例えば、50…55…60…65…70…75…80…85…90…95…100歳以上、または50~1000のあらゆる年齢、加齢性状態、例えば認知機能障害の症状を未だ示し始めていない、約50歳以上、例えば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、かつ通常100歳以下、すなわち、約50~100歳、例えば、50…55…60…65…70…75…80…85…90…95…100歳の個体、更に後述する加齢性疾患に起因する認知機能障害を患うあらゆる年齢の個体、及び、一般的に認知機能障害が付随する加齢性疾患と診断されたあらゆる年齢の個体で、認知機能障害の症状を未だ示し始めていない個体である。非ヒト対象の対応する年齢は公知であり、本明細書において適用されることが意図される。
本明細書で使用される「処置」とは、(i)疾患もしくは障害の防止、または(ii)疾患もしくは障害の症状の低減もしくは排除のいずれかを指す。処置は、予防的に(疾患の発病前に)もたらされても、治療的に(疾患の発病後に)もたらされてもよい。その効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に防止するという意味で予防的である場合、及び/または、疾患及び/または疾患に起因し得る有害作用の部分的もしくは完全な治癒という意味で治療的である場合がある。よって、本明細書で使用される「処置」という用語は、哺乳動物における加齢性の疾患または障害のあらゆる処置を対象とし、かつ、(a)疾患の素因を有し得るがそれを有するとは未だ診断されていない対象において、その疾患の発生を防止すること、(b)疾患を阻止すること、すなわち、その発症を止めること、または(c)疾患を軽減すること、すなわち疾患の退行をもたらすことを含む。処置は、種々の異なる身体的徴候、例えば、遺伝子発現の調整、組織または臓器の再生などをもたらし得る。治療剤は、疾患発病の前、その間、またはその後に投与してもよい。処置によって患者の望まれない臨床症状が安定化または低減するような、進行中の疾患の処置が特に関心の対象である。そのような処置は、患部組織の機能が完全に失われる前に行われ得る。本療法は、疾患の症候性段階中に施されてもよく、場合によっては疾患の症候性段階後に施されてもよい。
一部の実施形態では、処置される加齢性状態は、個体の認知能力における加齢性機能障害である。認知能力、または「認知」とは、注意及び集中、複雑なタスク及び概念の学習、記憶(短期及び/または長期で新しい情報を獲得し、保持し、想起すること)、情報処理(五感によって集められた情報を扱うこと)、視空間機能(視知覚、奥行き知覚、心的イメージの使用、図面の模写、物体または形状の構築)、言語の生成及び理解、発語流暢性(喚語)、問題解決、意思決定、ならびに実行機能(計画及び優先付け)を含む、精神的プロセスを意味する。「認知低下」とは、これらの能力のうちの1つ以上の進行性減少、例えば、記憶、言語、思考、判断力などの低下を意味する。「認知能力の機能障害」及び「認知機能障害」とは、健常な個体、例えば同齢の健常な個体と比べた、または、過去のある時点、例えば、2週間、1か月、2か月、3か月、6か月、1年、2年、5年、もしくは10年以上前における個体の能力と比べた、認知能力の低減を意味する。「加齢性認知機能障害」とは、例えば、自然な加齢プロセスに関連する認知機能障害、例えば、軽度認知機能障害(M.C.I.)を含む、一般的に加齢と関連付けられる認知能力の機能障害、及び、加齢性障害、つまり老化の進行と共に増加する頻度で見られる障害、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、緑内障、筋強直性ジストロフィー、血管性認知症などの神経変性状態に関連する認知機能障害を意味する。
血漿成分を含む血液産物。本方法の実践において、血漿成分を含む血液産物が、それを必要とする個体、例えば、認知機能障害及び/または加齢性認知症を患っているか患うリスクがある個体に投与される。したがって、本発明の実施形態に従う方法は、ある個体(「ドナー個体」または「ドナー」)の血漿成分を含む血液産物を、認知機能障害及び/または加齢性認知症を患うリスクが少なくともあるか、または患っている個体(「レシピエント個体」または「レシピエント」)に投与することを含む。「血漿成分を含む血液産物」とは、血漿を含む血液由来の任意の産物(例えば、全血、血漿、またはそれらの画分)を意味する。「血漿」という用語は、その従来の意味で使用され、約92%の水、7%のタンパク質、例えばアルブミン、ガンマグロブリン、抗血友病因子、及び他の凝固因子、ならびに1%の無機塩、糖類、脂肪、ホルモン、及びビタミンから構成される血液のわら色/淡黄色の液体成分を指す。本方法で使用するために好適な血漿を含む血液産物の非限定的な例には、抗凝固薬(例えば、EDTA、クエン酸塩、シュウ酸塩、ヘパリンなど)で処置された全血、全血を濾過して白血球細胞の除去(「白血球低減(leukoreduction)」)を行うことにより生成された血液産物、プラスマフェレーシス由来(plasmapheretically-derived)またはアフェレーシス由来(apheretically-derived)の血漿からなる血液産物、新鮮凍結血漿、精製された血漿から本質的になる血液産物、及び血漿画分から本質的になる血液産物が含まれる。一部の事例では、用いられる血漿産物は、非全血血漿産物である。これが意味するのは、産物が全血ではなく、したがって、全血に見られる1つ以上の成分、例えば赤血球、白血球などが、少なくともこれらの成分が全血中に存在する限りにおいて欠如しているということである。一部の事例では、血漿産物は、完全ではないにしても実質的に無細胞性であり、そのような事例では、細胞含有量は、5体積%以下、例えば1体積%以下、例えば0.5体積%以下であり得、一部の事例では、無細胞性血漿画分は、細胞が完全に欠如している組成物である。すなわち、それらは細胞を含まない。
血漿成分を含む血液産物の収集。本明細書に記載される方法の実施形態には、ヒトの志願者などのドナーに由来し得る血漿成分を含む血液産物の投与が含まれる。「ヒト由来」という用語は、そのような産物を指し得る。血漿を含む血液産物をドナーから収集する方法は、当技術分野で周知である(例えば、参照により本明細書に援用されているAABB TECHNICAL MANUAL,(Mark A.Fung,et al.,eds.,18th ed.2014)を参照されたい)。
一実施形態において、静脈穿刺による寄付が得られる。別の実施形態では、静脈穿刺は、単回のみの静脈穿刺である。別の実施形態では、食塩水の補液は用いられない。一実施形態において、血漿を含む血液産物を得るために、プラスマフェレーシスのプロセスが使用される。プラスマフェレーシスは、用量調節した体積の血漿を取り出し、細胞成分をドナーに戻すことを含み得る。この実施形態では、細胞の凝固を防止するために、クエン酸ナトリウムをプラスマフェレーシス中に使用する。ドナーから収集される血漿の体積は、好ましくは、クエン酸投与後に690~880mLであり、好ましくは、ドナーの体重と同調する。
3.血漿画分
第二次世界大戦中、戦場で兵士が大量の血液を失った際に用いることができる安定な血漿増量剤の必要性が生じた。結果として、凍結乾燥血漿を調製する方法が開発された。しかしながら、再構成に滅菌水が必要であったため、戦闘状況下での凍結乾燥血漿の使用は困難であった。E.J.Cohn博士は、代替策としてアルブミンが使用され得ることを提案し、ショックの処置のために直ちに導入され得る使用準備済の安定な溶液を調製した(JOHAN VANDERSANDE,CURRENT APPROACHES TO THE PREPARATION OF PLASMA FRACTIONS in(BIOTECHNOLOGY OF BLOOD)165(Jack Goldstein ed.,1st ed.1991)を参照されたい)。Cohn博士の血漿画分精製手順は、冷エタノールをその変性効果のために利用し、分離を実現するためにpH及び温度の変化を用いる。
本明細書に記載される方法の一実施形態は、対象への血漿画分の投与を含む。分画は、ある特定のタンパク質のサブセットが血漿から分離されるプロセスである。分画技術は当技術分野で公知であり、1940年代にCohnらによって開発されたステップに依拠する(E.Cohn,Preparation and properties of serum and plasma proteins.IV.A system for the separation into fractions of the protein and lipoprotein components of biological tissues and fluids.68 J Am Chem Soc 459(1946)。参照により本明細書に援用されている)。このプロセスにはいくつかのステップが含まれ、各ステップは、選択的なタンパク質の沈殿をもたらす特定のエタノール濃度、ならびにpH、温度、及び浸透圧の変化を用いる。沈殿物はまた、遠心分離または沈殿によって分離される。元々の「Cohn分画プロセス」には、沈殿により、画分I、画分II+III、画分IV-1、画分IV-4、及び画分Vと呼称される5つの画分にタンパク質を分離することが含まれた。アルブミンは、このプロセスの最初に識別されたエンドポイント(画分V)産物であった。本発明の実施形態によれば、各画分(または先行する分離ステップからの流出液)は、治療上有用なタンパク質画分を含有するか、または含有する可能性がある(Thierry Burnouf,Modern Plasma Fractionation,21(2)Transfusion Medicine Reviews 101(2007)、Adil Denizli,Plasma fractionation:conventional and chromatographic methods for albumin purification,4 J.Biol.&Chem.315,(2011)、及びT.Brodniewicz-Proba,Human Plasma Fractionation and the Impact of New Technologies on the Use and Quality of Plasma-derived Products,5 Blood Reviews 245(1991)、ならびに米国特許第3869431号、同第5110907号、同第5219995号、同第7531513号、及び同第8772461号を参照されたい。これらは参照により本明細書に援用されている)。上記の実験パラメータは、特定のタンパク質画分を得るために調節してもよい。
より近年では、分画は更なる複雑さに達し、したがって本発明の更なる実施形態を構成する。こうした近年における複雑さの増加は、寒冷沈降物、脱クリオ血漿(cryo-poor plasma)、及びCohn画分のような既存の画分からの新しいタンパク質の単離をもたらすクロマトグラフィの導入、クロマトグラフィ及びエタノール分画プロセスの統合によるIgG回収量の増加、ならびにウイルスの低減/不活性化/除去を通じて起こった(同上)。生理学的なpH及びイオン強度でタンパク質を捕捉するためには、アニオン交換クロマトグラフィを利用することができる。これは、タンパク質及び/またはタンパク質画分の機能活性を保つ。ヘパリン及びモノクローナル抗体も親和性クロマトグラフィに使用される。当業者には、特に所望される血漿タンパク質を含有する画分が得られるように上記のパラメータが調節され得ることが認識される。
本発明の一実施形態では、工業的環境で血漿を分画する。凍結血漿は、1℃~4℃で解凍する。解凍された血漿に持続的な冷却遠心分離を適用し、寒冷沈降物を単離する。回収した寒冷沈降物を-30℃以下で凍結させ、保管する。寒冷沈降物欠乏(cryoprecipitate-poor)(「脱クリオ」)血漿は、不安定な凝固因子、例えば第IX因子複合体及びその成分、ならびにアンチトロンビン及びC1エステラーゼ阻害剤などのプロテアーゼ阻害剤の(例えば、一次クロマトグラフィによる)捕捉のために、直ちに処理する。後続ステップでは、連続的な遠心分離及び沈殿物の単離を適用することができる。このような技術は当業者に公知であり、例えば、開示内容の全体が参照により本明細書に援用されている、米国特許第4624780号、同第5219995号、同第5288853号、ならびに米国特許出願第20140343255号及び同第20150343025号に記載されている。
本発明の一実施形態では、血漿画分は、相当な濃度のアルブミンを含有する血漿画分を含み得る。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、相当な濃度のIgGまたは静注用免疫グロブリン(IGIV)(例えばGamunex-C(登録商標))を含有する血漿画分を含み得る。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、例えばプロテインA媒介性枯渇といった当業者に周知の方法によって、免疫グロブリン(IgG)が実質的に枯渇している、Gamunex-C(登録商標)などのIGIV血漿画分を含み得る(Keshishian,H.,et al.,Multiplexed,Quantitative Workflow for Sensitive Biomarker Discovery in Plasma Yields Novel Candidates for Early Myocardial Injury,Molecular&Cellular Proteomics,14 at 2375-93(2015)を参照されたい)。更なる一形態では、血漿画分は、血栓症のリスク低減と共に画分の効力が保持されるように実質的に全ての凝固因子が除去されたものであってもよい。例えば、血漿画分は、開示内容の全体が参照により本明細書に援用されている、2016年8月18日に出願された米国特許第62/376,529号に記載の血漿画分であり得る。
4.アルブミン産物
当業者にとって、アルブミン血漿産物(Albumin Plasma Product、「APP」)には、血漿タンパク質画分(PPF)及びヒトアルブミン溶液(HAS)という、大きく分けて2つの分類がある。PPFは、HASよりも収率は高いがHASよりも低いアルブミンの最低純度(PPFでは>83%、HASでは>95%)を有するプロセスに由来する(Production of human albumin solution:a continually developing colloid,P.Matejtschuk et al.,British J.of Anaesthesia 85(6):887-95,at 888(2000))。更に、PPFは、PKAなどのタンパク質「混入物」の存在のために不利な点を有すると一部では指摘されている(同上)。結果として、PPF調製物はアルブミン血漿産物としての人気を失い、更にはある特定の国々の薬局方から外されている(同上)。これらの懸念に反して、本発明は、これらの「混入物」を有効利用する。前出のPKAはもちろん、αグロブリン、βグロブリン、及びγグロブリンに加えて、本発明の方法は、神経発生などのプロセス、神経細胞の生存、及び認知の改善を促進する、「混入物」中の更なるタンパク質または他の因子を利用する。
当業者には、いくつかの商業的なPPF源(「商業的PPF調製物」)が存在すること、または存在したことが認識される。これには、Plasma-Plex(商標)PPF(Armour Pharmaceutical Co.,Tarrytown,NY)、Plasmanate(商標)PPF(Grifols,Clayton,NC)、Plasmatein(商標)(Alpha Therapeutics,Los Angeles,CA)、及びProtenate(商標)PPF(Baxter Labs,Inc.Deerfield,IL)が含まれる。
当業者には、いくつかの商業的なHAS源(「商業的HAS調製物」)が存在すること、または存在したことも認識される。これには、Albuminar(商標)(CSL Behring)、AlbuRx(商標)(CSL Behring)、Albutein(商標)(Grifols,Clayton,NC)、Buminate(商標)(Baxatla,Inc.,Bannockburn,IL)、Flexbumin(商標)(Baxatla,Inc.,Bannockburn,IL)、及びPlasbumin(商標)(Grifols,Clayton,NC)が含まれる。
A.血漿タンパク質画分(ヒト)(PPF)
United States Food and Drug Administration(「FDA」)によれば、「血漿タンパク質画分(ヒト)」、すなわちPPFは、「ヒトの血漿に由来するアルブミン及びグロブリンから構成されるタンパク質の滅菌溶液」と定義される産物の正式名称である(Code of Federal Regulations“CFR”21 CFR 640.90。これは参照により本明細書に援用されている)。PPFの原材料は、21 CFR 640.1-640.5(参照により本明細書に援用されている)に規定の通りに調製された全血から回収された血漿、または21 CFR 640.60-640.76(参照により本明細書に援用されている)に規定の通りに調製された原料血漿である。
PPFは、21 CFR 640.92(参照により本明細書に援用されている)により、以下の基準を満たすことを判定するために試験される。
(a)最終産物がタンパク質の5.0±0.30パーセント溶液であること、ならびに
(b)最終産物中の全タンパク質が、少なくとも83パーセントのアルブミン、及び17パーセント以下のグロブリンからなること。全タンパク質の1パーセント超がガンマグロブリンであってはならない。タンパク質の組成は、Food and Drug AdministrationのCenter for Biologics Evaluation and Researchのディレクターにより各製造元に対して認可された方法によって判定される。
本明細書で使用される「血漿タンパク質画分」すなわち「PPF」は、電気泳動により判定して、アルブミン含有量が少なくとも83%、グロブリン(α1グロブリン、α2グロブリン、βグロブリン、及びγグロブリンを含む)及び他の血漿タンパク質が17%以下、そしてガンマグロブリンが1%以下の、ヒトの血漿に由来するアルブミン及びグロブリンから構成されるタンパク質の滅菌溶液を指す(Hink,J.H.,Jr.,et al.,Preparation and Properties of a Heat-Treated Human Plasma Protein Fraction,Vox Sanguinis 2(174)(1957))。PPFは、溶媒に懸濁した場合に同様の組成を有する固体形態を指す場合もある。全グロブリン画分は、全タンパク質からアルブミンを差し引くことによって判定され得る(Busher,J.,Serum Albumin and Globulin,CLINICAL METHODS:THE HISTORY,PHYSICAL,AND LABORATORY EXAMINATIONS,Chapter 10,Walker HK,Hall WD,Hurst JD,eds.(1990))。
B.アルブミン(ヒト)(HAS)
FDAによれば、「アルブミン(ヒト)」(本明細書では「HAS」とも呼ばれる)は、「ヒトの血漿に由来するアルブミンの滅菌溶液」と定義される産物の正式名称である(Code of Federal Regulations“CFR”21 CFR 640.80。これは参照により本明細書に援用されている)。アルブミン(ヒト)の原材料は、21 CFR 640.1-640.5(参照により本明細書に援用されている)に規定の通りに調製された全血から回収された血漿、または21 CFR 640.60-640.76(参照により本明細書に援用されている)に規定の通りに調製された原料血漿である。アルブミン(ヒト)に関する他の要件は、21 CFR 640.80-640.84(参照により本明細書に援用されている)に列記されている。
アルブミン(ヒト)は、21 CFR 640.82により、以下の基準を満たすかどうかを判定するために試験される。
(a)タンパク質の濃度。最終産物は、タンパク質の4.0±0.25パーセント、5.0±0.30パーセント、20.0±1.2パーセント、及び25.0±1.5パーセント溶液のうちの1つの濃度に一致するものとする。
(b)タンパク質の組成。Food and Drug AdministrationのCenter for Biologics Evaluation and Researchのディレクターにより各製造元に対して認可された方法により判定したとき、最終産物中の全タンパク質の少なくとも96パーセントはアルブミンでなければならない。
本明細書で使用される「アルブミン(ヒト)」または「HAS」とは、アルブミン含有量が少なくとも95%で、グロブリン(α1グロブリン、α2グロブリン、βグロブリン、及びγグロブリンを含む)及び他の血漿タンパク質が5%以下の、ヒトの血漿に由来するアルブミン及びグロブリンから構成されるタンパク質の滅菌溶液を指す。HASは、溶媒に懸濁した場合に同様の組成を有する固体形態を指す場合もある。全グロブリン画分は、全タンパク質からアルブミンを差し引くことによって判定され得る。
当業者には認識され得るように、PPF及びHAS画分は、凍結乾燥形態または他の固体形態であってもよい。そのような調製物を適切な添加剤と共に使用して、例えば、錠剤、粉末、顆粒、またはカプセルを作ることができる。固体形態は、水性または非水性の溶媒、例えば植物油または他の同様の油類、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸またはプロピレングリコールのエステルにおいて、また所望される場合は、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤、及び保存剤といった従来の添加剤と共に、それらを溶解、懸濁、または乳化させることにより、注射用調製物に製剤化することができる。
5.凝固因子が低減した画分
本発明の別の実施形態は、血栓症のリスク低減と共に画分の効力が保持されるように凝固因子の実質的に全てが除去された血漿画分を使用する。簡便なことに、血液産物は若年ドナーまたは若年ドナープールに由来してもよく、かつ、ABO適合性である若年血液産物をもたらすためにIgMを欠いたものにすることができる。A及びB抗原に対する天然に存在する抗体の存在は輸血反応をもたらし得るため、現在、輸血される血漿は、ABO血液型に適合されている。IgMは、ABO適合でない血漿を患者に与えたときの輸血反応の一因であると思われる。血液産物または画分からのIgMの除去は、本発明の血液産物及び血漿画分が投与される対象の輸血反応を回避することに役立つ。
したがって、一実施形態において、本発明は、対象の認知機能障害または神経変性などの加齢性状態を処置または防止する方法に関する。本方法は、個体または個体プールの全血に由来する血液産物または血液画分を対象に投与することを含み、ここで血液産物または血液画分は、(a)少なくとも1つの凝固因子及び/または(b)IgMを実質的に欠いている。一部の実施形態では、血液産物または血液画分が由来する個体(複数可)は、若年個体である。一部の実施形態では、血液産物は、少なくとも1つの凝固因子及びIgMを実質的に欠いている。ある特定の実施形態では、血液産物は、フィブリノーゲン(第I因子)を実質的に欠いている。更なる実施形態において、血液産物は、赤血球及び/または白血球が実質的に欠如している。更なる実施形態では、血液産物は、実質的に無細胞性である。他の実施形態では、血液産物は、血漿に由来する。本発明のこのような実施形態は、2016年8月18日に出願された米国特許出願第62/376,529号によって更に裏付けられている。この米国特許出願の全体は、参照により本明細書に援用されている。
6.タンパク質濃縮血漿タンパク質産物
本発明の更なる実施形態では、PPFと比較してアルブミン濃度は低減しているが、グロブリン及び他の血漿タンパク質(一部には「混入物」と呼ばれるもの)の量は増加している血漿画分を使用する。こうした実施形態は、PPF、HAS、流出液I、及び流出液II/IIIと同様に、全て効果的に凝固因子を欠いている。以降、このような血漿画分を「タンパク質濃縮血漿タンパク質産物」と呼ぶ。例えば、本発明の一実施形態は、82%のアルブミンと、18%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の別の実施形態は、81%のアルブミンと、19%のα、β、及びγグロブリン、及び/または他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の別の実施形態は、80%のアルブミンと、20%のα、β、及びγグロブリン、及び/または他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、70~79%のアルブミンと、対応する21~30%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、60~69%のアルブミンと、対応する31~40%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、50~59%のアルブミンと、対応する41~50%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、40~49%のアルブミンと、対応する51~60%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、30~39%のアルブミンと、対応する61~70%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、20~29%のアルブミンと、対応する71~80%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、10~19%のアルブミンと、対応する81~90%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、1~9%のアルブミンと、対応する91~99%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。本発明の更なる実施形態は、0~1%のアルブミンと、99~100%のα、β、及びγグロブリン、ならびに他の血漿タンパク質とからなる、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物を使用し得る。
上記の本発明の実施形態は、0~5%の全ガンマグロブリン濃度を有してもよい。
血漿画分中のタンパク質の具体的な濃度は、関連技術分野の当業者に周知の技術を使用して判定することができる。限定としてではなく例として、そのような技術としては、電気泳動、質量分析、ELISA解析、及びウェスタンブロット解析が挙げられる。
7.血漿画分の調製
PPF及び他の血漿画分を調製する方法は、当業者には周知である。本発明の一実施形態によれば、ヒト血漿タンパク質画分の調製に使用される血液を、凝固の阻止のためにクエン酸塩または抗凝固性クエン酸デキストロース溶液が入ったフラスコに収集し、Hinkらによって開示された方法に従って画分I、II+III、IV、及びPPFを更に分離することができる(参照により本明細書に援用されている、Hink,J.H.,Jr.,et al.,Preparation and Properties of a Heat-Treated Human Plasma Protein Fraction,VOX SANGUINIS 2(174)(1957)を参照されたい)。この方法によれば、2~8℃で混合物を収集してもよい。その後、血漿を遠心分離により7℃で分離し、取り出し、-20℃で保管してもよい。次にこの血漿は、好ましくは-20℃の保管場所から取り出してから8時間以内に、37℃で解凍し、分画してもよい。
5.1~5.6パーセントのタンパク質濃度で、pH7.2及び温度-2~-2.5℃の8%エタノールを使用して、画分Iから血漿を分離することができる。血漿温度を-2℃に低下させながら、例えば450mL/分の速度でジェットを使用して、53.3パーセントの冷エタノール(176mL/血漿1L)を、酢酸緩衝液(200mLの4M酢酸ナトリウム、230mLの氷酢酸、1Lまで適量のH2 O)と共に添加してもよい。超遠心分離により、流出液(流出液I)から画分Iを分離し、取り出すことができる。当業者に周知の方法に従い、画分Iからフィブリノーゲンを得ることができる。
4.3パーセントのタンパク質濃度で、pH6.8、温度-6℃で21パーセントのエタノールに対して流出液を調節することにより、流出液Iから画分II+IIIを分離することができる。流出液Iの温度を-6℃に低下させながら、例えば500mL/分の速度でジェットを使用して、95パーセントの冷エタノール(176mL/流出液I 1L)を、pH調節のために使用される10M酢酸と共に添加してもよい。結果として得られる沈殿物(画分II+III)は、-6℃での遠心分離によって取り出すことができる。当業者に周知の方法を使用し、画分II+IIIからガンマグロブリンを得ることができる。
3パーセントのタンパク質濃度で、pH5.2、温度-6℃の19パーセントエタノールに対して流出液を調節することにより、流出液II+III(「流出液II/III」)から画分IV-1を分離することができる。流出液II/IIIを6時間-6℃に維持しながら、ジェットを使用して、H2 Oと、pH調節のために使用される10M酢酸とを添加することができる。沈殿した画分VI-1を-6℃で6時間にわたって落ち着かせ、その後、同じ温度で遠心分離によって流出液から分離してもよい。pH4.65、温度-7℃、及び2.5パーセントのタンパク質濃度で、30パーセントとなるようにエタノール濃度を調節することにより、流出液IV-1から安定な血漿タンパク質画分を回収することができる。これは、冷酸・アルコール(2M酢酸2部及び95パーセントエタノール1部)によって流出液IV-1のpHを調節することにより達成され得る。-7℃の温度を維持しながら、調節後の流出液IV-1 1リットル毎に170mLの冷エタノール(95%)を添加する。沈殿するタンパク質は、36時間にわたって落ち着かせた後、-7℃での遠心分離によって取り出すことができる。
回収されたタンパク質(安定な血漿タンパク質画分)を乾燥させて(例えば凍結乾燥により)、アルコール及びH2 Oを除去することができる。結果として得られる乾燥した粉末は、例えば水15リットル/粉末1kgを使用して、滅菌蒸留水に溶解させ、この溶液を1MのNaOHでpH7.0に調節してもよい。タンパク質5パーセントの最終濃度は、アセチルトリプトファンナトリウム、カプリル酸ナトリウム、及びNaClを含有する滅菌蒸留水を添加し、アセチルトリプトファン塩0.004M、カプリル酸塩0.004M、及びナトリウム0.112Mの最終濃度になるように調節することによって実現され得る。最後に、この溶液を10℃で濾過して透明な溶液を得た後、60℃で少なくとも10時間熱処理することにより、病原体を不活性化することができる。
上記の様々な画分及び流出液の各々が、疾患を処置するために本発明の方法と共に使用され得ることは、当業者には認識される。限定としてではなく、例えば、流出液Iまたは流出液II/IIIは、認知障害及び神経変性障害などの疾患を処置するために利用することができ、これらは本発明の実施形態である。
前述の血漿画分及び血漿タンパク質画分(PPF)の調製方法は単なる例示であり、本発明の実施形態に関するものに過ぎない。当業者には、これらの方法は変更可能であることが認識される。例えば、本発明の様々な実施形態及び方法において、とりわけpH、温度、及びエタノール濃度を調節することで、様々なバリエーションの血漿画分及び血漿タンパク質画分を生成することができる。別の例では、本発明の更なる実施形態は、血漿画分及び血漿タンパク質画分中の病原体の除去/不活性化のためのナノ濾過の使用を想定する。
本発明の更なる実施形態は、更なる血漿画分を使用する及び/または含む、方法及び組成物を想定する。例えば、本発明は、とりわけ、認知活動を改善するために特定の濃度のアルブミンが必須ではないことを示す。したがって、低減したアルブミン濃度を有する画分、例えば83%未満のアルブミンを有する画分が、本発明により想定される。
8.処置
本明細書に記載される本発明の方法の態様は、例えば上記のような、血漿を含む血液産物、例えば血漿画分による、対象の処置を含む。一実施形態は、血漿を含む血液産物によるヒト対象の処置を含む。血漿を含む血液産物で対象を処置する方法が当技術分野で知られていることを当業者は認識している。限定としてではなく例として、本明細書に記載の本発明の方法の一実施形態は、認知機能障害及び/または加齢性認知症の処置及び/または防止のために対象に新鮮凍結血漿を投与することを含む。一実施形態において、血漿を含む血液産物は、直ちに、例えば、ドナーから収集されてから約12~48時間以内に、認知機能障害及び/または加齢性認知症を患っているかそのリスクがある個体に投与される。そのような事例では、この産物は、冷蔵下、例えば、0~10℃で保管され得る。別の実施形態では、新鮮凍結血漿は、-18℃以下で冷凍保存(凍結保存)されているものである。新鮮凍結血漿は、投与前に解凍され、解凍され次第、解凍プロセスが開始してから60~75分後に対象に投与される。各対象は、好ましくは、単一単位の新鮮凍結血漿(200~250mL)を受ける。この新鮮凍結血漿は、好ましくは、所定の年齢範囲のドナーに由来するものである。本発明の一実施形態において、新鮮凍結血漿は、若年個体から寄付される(それらに由来する)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は、同じ性別のドナーから寄付される(それらに由来する)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は、18~22歳の年齢範囲のドナーから寄付される(それらに由来する)。一実施形態において、対象は、1週間に2回、注入間に3~4日間おいて処置される。本発明の一実施形態では、処置は、特定のエンドポイントに達するまで持続する。
本発明の一実施形態では、血漿を含む血液産物は、寄付後に血液型によってスクリーニングされる。本発明の別の実施形態では、血漿を含む血液産物は、21 CFR 640.33の要件及びFDAの指針書に含まれている勧告に従い、HIV I&II、HBV、HCV、HTLV I&II、抗HBcなどの感染性病因物質についてスクリーニングされる。
本発明の更に別の実施形態では、対象は、「血漿画分」で処置される。本発明の一実施形態では、血漿画分は、PPFまたはHASである。本発明の更なる実施形態では、血漿画分は、商業的PPF調製物または商業的HAS調製物のうちの1つである。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、若年個体などの特定の年齢範囲の個体のプールに由来するPPFもしくはHASであるか、または、更なる分画もしくは処理に供された、改変されたPPFもしくはHAS画分(例えば、1つ以上の特定のタンパク質が部分的または実質的に除去されたPPFまたはHAS)である。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、免疫グロブリン(IgG)が実質的に枯渇しているIGIV血漿画分である。IgGなどの特定のタンパク質が「実質的に枯渇している」または「実質的に除去されている」血液画分とは、当技術分野で周知の標準的なアッセイを使用して測定した場合に、基準産物または全血血漿中で生じる量の約50%未満、例えば45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%未満、検出不可能なレベル、またはこれらの値の間の任意の整数を含有する、血液画分を指す。
9.モニタリング
本発明の別の態様は、認知機能障害及び/または加齢性認知症の処置に関する、対象に対する薬物の影響をモニタリングする方法であって、処置の前及び後の認知機能を比較することを含む方法に関する。当業者は、認知機能を評価する周知の方法があることを認識している。限定としてではなく、例えば、本法は、診療歴、家族歴、認知症及び認知機能を専門にする臨床医による身体検査及び神経学的検査、臨床検査、ならびに神経心理学的鑑定に基づく認知機能の評価を含み得る。本発明により想定される更なる実施形態には、例えばGlasgow昏睡尺度(EMV)を使用した意識状態の鑑定、簡易メンタルテストスコア(AMTS)またはミニメンタルステート検査(MMSE)(Folstein et al.,J.Psychiatr.Res 1975;12:1289-198)を含む精神状態の検査、高次機能の包括的評価、眼底検査などによる頭蓋内圧の推定が含まれる。
一実施形態では、末梢神経系の検査を使用して、嗅覚、視野及び視力、眼球運動及び瞳孔(交感神経性及び副交感神経性)、顔の感覚機能、顔及び肩帯の筋肉の強度、聴覚、味覚、咽頭の運動及び反射、舌運動[これらは個々に試験することができる(例えば、視力はSnellen視力表によって試験することができ、反射ハンマーの使用により、咬筋、二頭筋、及び三頭筋の腱、膝の腱、アキレス腱反射及び足底反射(すなわちBabinski兆候)を含む反射が試験される)]、高頻度でMRCスケール1~5の筋力、筋緊張及び固縮の兆候のうちのいずれか1つを含む認知機能を評価することができる。
10.投与
本発明の方法の実践において、血漿画分が対象に投与される。一実施形態において、血漿画分は、静脈内注入によって投与される。注入の速度は様々であり得るが、本発明の一実施形態では、注入速度は5~8mL/分である。当業者には、注入速度が対象の状態及び投与への応答に左右され得ることが認識される。
有効量の活性剤が成体哺乳動物に投与される実施形態では、その量または投与量は、好適な期間、例えば1週間以上、例えば2週間以上、例えば3週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上などにわたって投与され、その結果、この成体哺乳動物の状態、例えば、認知機能障害の低減、または認知機能障害の遅延及び/または認知改善が証明された場合、有効である。例えば、有効用量は、好適な期間にわたって投与されたとき、例えば、約20%以上、例えば、30%以上、40%以上、または50%以上、一部の事例では60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上減速する、用量である。例えば、自然な老化または加齢性の障害を患う患者の認知低下を停止させる。一部の事例では、有効量または有効用量の血液産物は、病状の進行を減速または停止するのみならず、その状態の逆転も誘導する。すなわち、認知能力の改善をもたらす。例えば、一部の事例では、有効量とは、好適な期間、通常は少なくとも約1週間、ことによると約2週間以上、個人次第で約3週間、4週間、8週間またはそれ以上にわたって投与されたとき、加齢性認知機能障害を患う個体の認知能力を、血液産物または画分の投与前の認知と比べて、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、一部の事例では6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上改善する量である。一部の事例では、有効量または有効用量の活性剤は、病状の進行を減速または停止するのみならず、その状態の逆転も誘導する。すなわち、認知機能の改善をもたらす。例えば、一部の事例では、有効量とは、好適な期間にわたって投与されたとき、認知低下または機能障害を患う個体の症状を、薬剤の投与前の処置されていない個体と比べて、例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、一部の事例では6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍以上改善する量である。
他の実施形態では、血漿画分または血漿画分は、全体が参照により本明細書に援用されている米国特許出願第62/490,519号に記載の1つ以上の投薬レジメンに従って投与される。したがって、本発明の一実施形態は、有効量の血漿または血漿画分を対象に投与することにより、認知機能障害と診断された対象を処置することを含み、ここで血漿または血漿画分は、直近の投与量と比べて、血漿タンパク質または血漿画分タンパク質の半減期の平均または中央値に達した後に改善された認知機能または神経発生がもたらされるように投与される(本明細書では「パルス投薬」または「パルス投薬される」と呼ぶ)。本発明の別の実施形態は、少なくとも2日連続の投薬レジメンによって血漿または血漿画分を投与することと、最後の投与日から少なくとも3日後に認知機能の改善について対象をモニタリングすることとを含む。本発明の更なる実施形態は、少なくとも3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日連続の投薬レジメンによって血漿または血漿画分を投与することと、最後の投与日から少なくとも3日後に認知機能の改善について対象をモニタリングすることとを含む。本発明の更に別の実施形態は、少なくとも2日連続の投薬レジメンによって血漿または血漿画分を投与することと、最後の投与日の後に、血漿または血漿画分中のタンパク質の平均半減期に達してからの認知改善についてモニタリングすることとを含む。本発明の別の実施形態は、2~14日連続の投薬レジメンによって血漿または血漿画分を投与することを含み、ここで投薬間の各間隔は、各々0~3日間であってもよい。一部の事例では、本発明によるパルス投薬は、例えば上記のように、第1の用量セットの投与を含み、この後に投薬なしの期間、例えば「無投薬期間」が続き、次に、別の用量または用量セットの投与が続く。この「無投薬」期間の長さは様々であり得るが、一部の実施形態では、7日以上、例えば10日以上、例えば14日以上であり、一部の事例では、無投薬期間は、15~365日間、例えば30~90日間、例えば30~60日間に及ぶ。したがって、本方法の実施形態は、非慢性的(すなわち、非持続的)な投薬、例えば、血漿産物の非慢性的な投与を含む。一部の実施形態では、パルス投薬の後に無投薬期間が続くパターンは、所望により何回か繰り返され、一部の事例では、このパターンは、1年以上、例えば2年以上、最長で対象の生涯を含めて継続される。本発明の別の実施形態は、5日連続の投薬レジメンによって血漿または血漿画分を投与することを含み、これには、2~3日の無投薬期間の後に、2~14日連続の投与が続く。
生物化学的に、活性剤の「有効量」または「有効用量」とは、認知機能障害または加齢に伴う認知症を、約20%以上、例えば、30%以上、40%以上、または50%以上、一部の事例では60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、場合によっては約100%、すなわち無視できる程度まで、阻止、拮抗、減少、低減、または抑制し、一部の事例では、その進行を逆転させる、活性剤の量を意味する。
11.血漿タンパク質画分
本発明の方法の実践において、血漿画分が対象に投与される。一実施形態において、血漿画分は、血漿タンパク質画分(PPF)である。更なる実施形態において、PPFは、商業的PPF調製物から選択される。
別の実施形態では、PPFは、電気泳動により判定して、88%の正常なヒトアルブミン、12%のアルファ及びベータグロブリン、ならびに1%以下のガンマグロブリンを含む。本発明の方法の実践において使用される本実施形態の実施形態には、例えば、炭酸ナトリウムで緩衝し、0.004Mカプリル酸ナトリウム及び0.004Mアセチルトリプトファンで安定化した、PPFの5%溶液としての本実施形態が含まれる。更なる製剤、例えば、溶媒及び安定剤の濃度だけでなく溶液中のPPFの百分率を(例えば約1%から約10%に、約10%から約20%に、約20%から25%に、約25%から30%に)改変するものを、本発明の方法の実践において利用してもよい。
12.特定のドナー年齢の血漿画分
本発明の一実施形態は、ある特定の年齢範囲の個体の血漿に由来する血漿画分または血漿画分を投与することを含む。更なる実施形態は、ある特定の年齢範囲の個体の血漿に由来する血漿タンパク質画分を投与することを含む。一実施形態は、若年個体の血漿に由来しているPPFまたはHASを投与することを含む。本発明の別の実施形態では、若年個体は、単一の特定の年齢または特定の年齢範囲のものである。更に別の実施形態では、ドナーの平均年齢は、対象の年齢未満、または処置されている対象の平均年齢未満である。
本発明のある特定の実施形態は、特定の年齢範囲の個体に由来する血液または血漿をプールし、上記のように血漿を分画して、PPFまたはHASなどの血漿タンパク質画分産物を取得することを含む。本発明の代替的な実施形態では、血漿タンパク質画分または特定の血漿タンパク質画分は、指定された年齢範囲に当てはまる特定の個体から取得される。本発明の別の実施形態では、血漿画分、血漿画分、または特定の血漿タンパク質画分産物は、若年個体のプールから取得され、この「若年」は、上記のように暦年齢によって決定される場合も生物学的年齢によって決定される場合もあり、個体の年齢(複数可)は、特定の年齢または年齢範囲であってもよい。
13.適応症
本方法ならびに血漿を含む血液産物及び画分は、加齢性状態、例えば、個体の認知能力の機能障害、例えば、加齢に伴う認知症を含む(しかしこれに限定されない)認知障害、免疫学的状態、がん、ならびに身体及び機能の衰えの処置、例えば防止に役立つ。加齢性認知機能障害を患っているか発症するリスクがあり、例えば、本明細書に開示される方法による、本発明の血漿を含む血液産物による処置の恩恵を受ける個体としては、約50歳以上、例えば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、及び100歳以上、すなわち、約50~100歳、例えば、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、または約100歳で、自然な加齢プロセスに関連する認知機能障害、例えば、軽度認知機能障害(M.C.I.)を患っている個体、及び、約50歳以上、例えば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、かつ通常100歳以下、すなわち、約50~90歳、例えば、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、または約100歳で、認知機能障害の症状を未だ示し始めていない個体が挙げられる。自然な加齢に起因する認知機能障害の例としては、以下のものが挙げられる。
A.軽度認知機能障害。軽度認知機能障害(M.C.I.)は、全体的な精神機能及び日常的な活動は損なわれない一方で、記憶、または計画、指示の遵守、もしくは意思決定といった他の精神機能の経時的な悪化という問題として顕在化する、認知の中程度の混乱である。よって、著しいニューロン死は一般的には生じないものの、加齢している脳のニューロンは、構造、シナプスの完全性、及びシナプスにおける分子のプロセシングの致死量以下の加齢性変化を受けやすく、これらは全て認知機能を損なう。
加齢性認知機能障害を患っているか発症するリスクがあり、例えば、本明細書に開示される方法による、本発明の血漿を含む血液産物または画分による処置の恩恵を受ける個体としては、加齢性障害に起因する認知機能障害を患うあらゆる年齢の個体、及び、一般的に認知機能障害が付随する加齢性障害と診断されたあらゆる年齢の個体で、認知機能障害の症状を未だ提示し始めていない個体も挙げられる。そのような加齢性障害の例としては、以下のものが挙げられる。
B.アルツハイマー病。アルツハイマー病は、大脳皮質及び皮質下灰白質内の過剰な数の老人斑に関連し、b-アミロイド及びタウタンパク質からなる神経原線維濃縮体も含む、認知機能の進行性で止められない喪失である。一般的な形態は60歳を超える人々に影響し、その発生率は年齢が上がるにつれて上昇する。アルツハイマー病は、高齢者の認知症の65%超を占める。
アルツハイマー病の原因は分かっていない。この疾患は、症例の約15~20%において家族性である。残りのいわゆる孤発性症例は、何らかの遺伝的決定因子を有する。この疾患は、ほとんどの早発症例及び一部の遅発症例で常染色体優性の遺伝子パターンを有するが、晩年における浸透度は様々である。環境要因が活発な調査の焦点である。
この疾患の過程において、シナプス、そして最終的にはニューロンの喪失が、大脳皮質、海馬、及び皮質下構造(Meynert基底核内の選択的な細胞の喪失を含む)、青斑核、ならびに背側縫線核内で生じる。脳の一部の領域(早期疾患では頭頂葉及び側頭皮質、後期疾患では前頭前皮質)では、脳におけるグルコースの使用及び灌流が低減する。アルツハイマー病の病理発生には、神経突起斑または老人斑(アミロイドコアの周りの神経突起、星状膠細胞、及びグリア細胞から構成される)、及び神経原線維濃縮体(対らせん状細線維から構成される)が関与する。老人斑及び神経原線維濃縮体は正常な加齢と共に生じるが、アルツハイマー病を患う人々にはるかに多く見られる。
C.パーキンソン病。パーキンソン病(PD)は、緩慢な動作、筋固縮、静止時振戦、及び姿勢の不安定を特徴とする、特発性で緩徐進行性の変性CNS障害である。元々は主に運動性障害とみなされていたが、PDは現在、認知、行動、睡眠、自律神経機能、及び感覚機能にも影響することが認識されている。最も一般的な認知機能障害には、注意及び集中、作業記憶、実行機能、言語の生成、ならびに視空間機能の機能障害が含まれる。
原発性パーキンソン病では、黒質、青斑核、及び他の脳幹ドーパミン作動性細胞群の色素性ニューロンが喪失する。原因は分かっていない。尾状核及び被殻に対して突出する黒質ニューロンの喪失により、これらの領域において神経伝達物質のドーパミンが枯渇する。発病は一般に40歳以降であり、より高齢の集団では発生率が上昇する。
続発性パーキンソン症候群は、他の特発性変性疾患、薬物、または外因性毒素に起因する大脳基底核内のドーパミン作用の喪失または妨害から生じる。続発性パーキンソン症候群の最も一般的な原因は、ドーパミン受容体を遮断することによりパーキンソン症をもたらす、統合失調症治療薬またはレセルピンの摂取である。さほど一般的でない原因としては、一酸化炭素中毒またはマンガン中毒、水頭症、構造的病変(腫瘍、中脳または大脳基底核に影響する梗塞)、硬膜下血腫、及び線条体黒質変性症を含む変性障害が挙げられる。
D.前頭側頭型認知症。前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉の進行性劣化から生じる状態である。変性は経時的に側頭葉に進行する場合がある。有病率がアルツハイマー病(AD)に次いで第2位であるFTDは、初老期認知症の症例の20%を占める。症状は、前頭葉及び側頭葉の機能に基づいて3つの群に分類される。
行動障害型FTD(bvFTD)の症状には、一方では嗜眠及び自発性喪失、他方では脱抑制が含まれる。進行性非流暢性失語(PNFA)では、構音困難、音韻及び/または文法の誤りによる発話流暢性の破綻が観察されるが、言葉の理解は保たれる。意味性認知症(SD)では、患者は、正常な音韻及び文法を用いて流暢性を保つが、呼称及び言葉の理解が次第に困難になる。全てのFTD患者に共通する他の認知症状としては、実行機能及び集中力の機能障害が挙げられる。知覚、空間能力、記憶、及び実行を含む他の認知能力は、一般的には損なわれないままである。FTDは、構造的MRIスキャンにより明らかになる前頭葉及び/または前部側頭葉の萎縮の観察によって診断され得る。
FTDにはいくつかの形態が存在し、そのいずれもが本方法及び組成物を使用して処置または防止され得る。例えば、前頭側頭型認知症の一形態は意味性認知症(SD)である。SDは、言語性及び非言語性の両方のドメインにおける意味記憶の喪失を特徴とする。SD患者は、喚語困難の訴えを提示することが多い。臨床徴候としては、流暢性失語症、失名詞症、言葉の意味の理解力低下、及び連合性視覚失認(意味的に関連する絵または物体を一致させる能力の欠如)が挙げられる。後の行動症状がほとんどない「純粋な」意味性認知症の症例が記述されているものの、この疾患が進行すると、多くの場合、前頭側頭型認知症に見られるものと同様の行動変化及び人格変化が見られる。構造的MRI造影は、下方の障害が上方の障害より大きく、前部側頭葉の萎縮が後部側頭葉の萎縮より大きい、側頭葉(主に左側)の萎縮の特徴的なパターンを示す。
別の例として、別の形態の前頭側頭型認知症は、Pick病(PiD、別称PcD)である。この疾患を定義する特徴は、ニューロンに蓄積し、「Pick体」として知られる銀に染まる球状の凝集物になった、タウタンパク質の集積物である。症状としては、発話喪失(失語症)及び認知症が挙げられる。眼窩前頭機能不全の患者は、攻撃的で社会的に不適切になり得る。こうした患者は、盗みを働いたり、強迫性または反復性の常同行動を示したりする場合がある。背内側または背外側の前頭部機能不全を有する患者は、無関心、感情鈍麻、または自発性の低下を示し得る。患者は、自己モニタリングの欠如、異常な自己認識、及び意味を理解する能力の欠如を示す場合がある。両側の後外側の眼窩前頭皮質及び右前島の灰白質が喪失している患者は、病的な甘味嗜好といった摂食行動の変化を示し得る。前外側の眼窩前頭皮質でより限局的に灰白質が喪失している患者は、過食症を発症する場合がある。症状の一部は初期に緩和される場合があるが、疾患は進行し、患者は2~10年以内に死亡することが多い。
E.ハンチントン病。ハンチントン病(HD)は、情緒異常、行動異常、及び精神異常の発生、知的機能または認知機能の喪失、ならびに運動異常(運動障害)を特徴とする遺伝性進行性神経変性障害である。HDの代表的徴候としては、舞踏病(顔、腕、脚、または体幹に影響し得る不随意性で急速かつ不規則な痙攣様運動)の発症、ならびに思考処理及び後天的知能の漸進的喪失を含む認知低下が挙げられる。記憶、抽象思考、及び判断の機能障害、時間、場所、またはアイデンティティの知覚不全(失見当識)、動揺の高まり、ならびに人格変化(人格崩壊)がある場合がある。症状は一般的には40代または50代の間に明らかになるが、発病時の年齢は様々であり、幼児期から後期成人期(例えば、70代または80代)までに及ぶ。
HDは、常染色体優性形質として家族内で伝えられる。この障害は、第4染色体のある遺伝子(4p16.3)中にあるコードされた命令の異常に長い配列すなわち「リピート」の結果として起こる。HDに関連する神経系機能の進行性喪失は、大脳基底核及び大脳皮質を含む脳のある特定の領域におけるニューロンの喪失から生じる。
F.筋萎縮性側索硬化症。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンを襲う急速進行性で常に致命的な神経疾患である。筋肉の衰弱及び萎縮ならびに前角細胞機能不全の徴候は、初期にはほとんどの場合で手に認められ、足に認められることは少ない。発病の部位はランダムであり、進行は非対称である。筋痙攣がよく見られ、衰弱の前に生じる場合がある。患者が30年間生存することは稀であり、50%は発病の3年以内に死亡し、20%は5年間生存し、10%は10年間生存する。
診断上の特徴としては、成人中期または後期での発病、及び感覚異常を伴わない進行性の全身性運動障害が挙げられる。神経伝導速度は疾患後期まで正常である。近年の研究では、同様に認知機能障害の症状、特に即時言語記憶、視覚記憶、言語、及び実行機能の低減が記録されている。
ALS患者では、正常に見えるニューロンにおいてでさえ、細胞体面積、シナプスの数、及びシナプス全長の減少が報告されている。活性帯の可塑性がその限界に達すると、シナプスの継続的な喪失により機能障害が起こり得ることが示唆されている。新しいシナプスの形成の促進またはシナプス喪失の防止により、これらの患者のニューロン機能が維持される可能性がある。
G.多発性硬化症。多発性硬化症(MS)は、寛解及び増悪の再発を伴うCNS機能不全の様々な症状及び徴候を特徴とする。最も一般的な主症状は、四肢の1つ以上、体幹、または顔の片側における錯感覚、脚または手の衰弱もしくは失調、または視覚障害、例えば、部分的な失明及び片眼の疼痛(球後視神経炎)、視覚の薄暗さ、もしくは暗点である。一般的な認知機能障害としては、記憶(新しい情報を獲得し、保持し、想起すること)、注意及び集中(特に分割的注意)、情報処理、実行機能、視空間機能、ならびに発語流暢性の機能障害が挙げられる。一般的な早期症状は、複視(二重視)をもたらす眼球麻痺、四肢の1つ以上の一過性の衰弱、手足のわずかな硬直または異常な易疲労感、軽微な歩行障害、膀胱制御困難、めまい、及び軽度情緒障害であり、これらは全て、散在性のCNS障害を示し、疾患が認識される数か月前または数年前に生じることが多い。過剰な熱は症状及び徴候を際立たせる場合がある。
経過はばらつきが大きく予測不能であり、ほとんどの患者において弛張性である。初めは、疾患が球後視神経炎から始まった場合は特に、発症間には数か月または数年の寛解期がある場合がある。しかしながら、一部の患者は頻繁な発作を起こし、急速に無能力になり、少数の患者では経過が急速に進行し得る。
H.緑内障。緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)に影響する一般的な神経変性疾患である。区画化された変性プログラムがシナプス及びRGCを含む樹状突起に存在することを裏付ける証拠がある。近年の証拠により、高齢者の認知機能障害と緑内障との間の相関性も示されている(Yochim BP,et al.Prevalence of cognitive impairment,depression,and anxiety symptoms among older adults with glaucoma.J Glaucoma.2012;21(4):250-254)。
I.筋強直性ジストロフィー。筋強直性ジストロフィー(DM)は、ジストロフィー性の筋衰弱及び筋強直症を特徴とする常染色体優性の多系統障害である。この分子欠損は、染色体19qにあるミオトニンプロテインキナーゼ遺伝子の3’非翻訳領域におけるトリヌクレオチド(CTG)リピートの伸長である。症状はあらゆる年齢で生じる可能性があり、臨床的重症度の範囲は広い。筋強直症は手の筋肉に顕著であり、軽度の症例でも下垂が一般的である。重度の症例では、著しい末梢筋の衰弱が生じ、白内障、早期の脱毛、斧状顔貌、不整脈、精巣萎縮、及び内分泌異常(例えば、真性糖尿病)を伴うことが多い。重度先天型では精神遅滞が一般的であり、より軽度の成人型の障害では、前頭部及び側頭部の認知機能、特に言語及び実行機能の加齢性の低下が観察される。重度の罹患者は50代前半までに死亡する。
J.認知症。認知症とは、日常的に機能する妨げとなるほど重度に思考及び社会的能力に影響を及ぼす症状を有する障害のクラスのことである。認知症の他の事例には、上記で論じた加齢性障害の後期に観察される認知症に加えて、後述する血管性認知症、及びLewy小体型認知症が含まれる。
血管性認知症または「多発脳梗塞性認知症」において、認知機能障害は、脳への血液供給の問題によって、一般的には一連の軽微な卒中によって、または場合によっては他のより軽度な卒中が先または後に起こる1つの重度な卒中によって引き起こされる。血管病変は、小血管疾患などのびまん性脳血管疾患、もしくは限局性病変、またはこれらの両方の結果であり得る。血管性認知症を患う患者は、急性脳血管イベントの後に急性または亜急性に認知機能障害を提示し、その後、進行性の認知低下が観察される。認知機能障害は、言語、記憶、複雑な視覚処理、または実行機能の機能障害を含め、アルツハイマー病で観察されるものと同様であるが、関連する脳内の変化は、ADの病理ではなく、最終的に認知症をもたらす脳内の血流の慢性的な低減に起因するものである。多発脳梗塞性認知症の診断を確定するには、精神状態の検査を伴う評価と併せて、単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)及びポジトロン放射断層撮影(PET)による神経画像処理が使用され得る。
Lewy小体型認知症(DLB、また、Lewy小体認知症、びまん性Lewy小体病、皮質性Lewy小体病、及びLewy型老年性認知症を含め、種々の他の名称でも知られている)は、死後脳の組織学的検査において検出可能な、ニューロンにおけるLewy小体(アルファ-シヌクレイン及びユビキチンタンパク質の塊)の存在によって解剖学的に特徴付けられる認知症の一種である。その主な特徴は、特に実行機能の認知低下である。注意力及び短期記憶に起伏がある。
鮮明かつ詳細な描写を伴う持続性または再発性の幻視が早期の診断症状であることが多い。DLBは、その早期にはアルツハイマー病及び/または血管性認知症と混同されることが多いが、アルツハイマー病がかなり漸進的に始まるのに対し、DLBは多くの場合、急速または急性に発病する。DLBの症状には、パーキンソン病のものと同様の運動症状も含まれる。DLBは、パーキンソン病の症状に対して認知症の症状が現れる時間枠によって、パーキンソン病において時に生じる認知症と区別される。認知症を伴うパーキンソン病(POD)は、認知症の発病がパーキンソン病の発病から1年を超える場合に診断される。DLBは、認知症状がパーキンソン病の症状と同時またはその1年以内に始まる場合に診断される。
K.進行性核上性麻痺。進行性核上性麻痺(PSP)は、複雑な眼球運動及び思考の問題と併せて歩行及びバランスの制御に関する深刻で進行性の問題を引き起こす脳障害である。この疾患の代表的徴候の1つは、脳のうち眼球運動を協調させる領域に病変があるために起こる、眼の狙いを適切に定める能力の欠如である。一部の個体はこの影響をぼやけと説明する。罹患した個体は、抑うつ及び感情鈍麻ならびに進行性の軽度認知症を含め、気分及び行動の変化を示すことが多い。この障害の長い名称は、疾患がゆっくり始まり悪化し続け(進行性)、脳のうち眼球運動を制御する核と呼ばれる豆粒大の構造体の上方のある特定の部分(核上)を損傷することにより衰弱(麻痺)を引き起こすことを示す。PSPは、3名の科学者がこの状態をパーキンソン病と区別する論文を発表した1964年に初めて明確な障害として説明された。PSPは、この障害を定義した科学者らの名前の組み合わせを反映してSteele-Richardson-Olszewski症候群と呼ばれることがある。PSPは漸進的に悪化するが、PSP自体で死亡する者はいない。
L.運動失調。運動失調を有する人々は、神経系のうち運動及びバランスを制御する部分が影響を受けるため、協調性の問題を有する。運動失調は、指、手、腕、脚、身体、発話、及び眼球運動に影響し得る。運動失調という言葉は、感染、傷害、他の疾患、または中枢神経系の変性変化に関連し得る協調不能の症状を説明するために使用されることが多い。運動失調は、National Ataxia Foundationの主な重点である遺伝性運動失調及び孤発性運動失調と呼ばれる神経系の特定の変性疾患群を表すためにも使用される。
M.多系統萎縮症。多系統萎縮症(MSA)は、神経変性障害である。MSAは、脳の特定の領域内の神経細胞の変性に関連付けられる。この細胞変性は、運動、バランス、及び身体の他の自律神経機能、例えば膀胱制御または血圧調節に関する問題を引き起こす。
MSAの原因は分かっておらず、特定のリスク因子は識別されていない。症例の約55%は男性において発生し、一般的な発病年齢は50代後半から60代前半である。MSAは多くの場合、パーキンソン病と同じ症状の一部を提示する。しかしながら、MSA患者は、パーキンソン病のために使用されるドーパミン薬に応答するにしてもわずかな応答しか示さないことが一般的である。
N.虚弱。虚弱症候群(「虚弱」)は、可動性の減少、筋衰弱、身体の緩慢さ、持久力不足、低い身体活動性、栄養不良、及び不随意性の体重減少を含む、機能及び身体の衰えを特徴とする老年症候群である。このような衰えには、多くの場合、認知機能不全及びがんなどの疾患の帰結が付随する。しかしながら、虚弱は疾患がなくとも起こり得る。虚弱状態の個体は、骨折、転倒事故、能力障害、併存症、及び若年死亡による予後不良のリスクが高い(C.Buigues,et al.Effect of a Prebiotic Formulation on Frailty Syndrome:A Randomized,Double-Blind Clinical Trial,Int.J.Mol.Sci.2016,17,932)。更に、虚弱状態の個体では、高額な医療費の発生率が上昇する(同上)。
虚弱の一般的な症状は、ある特定の種類の試験によって判定することができる。例えば、意図的でない体重減少は、少なくとも10lbsまたは前年の体重の5%超の減少を伴い、筋衰弱は、ベースラインにおける(性別及びBMIに合わせて調節した)下位20%以内の低い握力によって判定することができ、身体の緩慢さは、15フィートの距離を歩く際に要する時間に基づいてもよく、持久力不足は、個体の疲弊の自己申告によって判定することができ、低い身体活動性は、標準化された質問表を使用して測定することができる(Z.Palace et al.,The Frailty Syndrome,Today’s Geriatric Medicine 7(1),at 18(2014))。
一部の実施形態では、本方法及び組成物は、加齢性認知機能障害の進行を減速させるために役立つ。言い換えると、個体の認知能力は、本開示の方法による処置後に、本開示の方法による処置の前またはそれを用いない場合よりもゆっくりと低下する。一部のそのような事例では、本処置方法は、処置後の認知低下の進行を測定することと、認知低下の進行が低減していることを判定することとを含む。一部のそのような事例では、この判定は、参照対象、例えば、処置前の個体における認知低下の速度、例えば、本血液産物の投与前の2つ以上の時点で認知を事前に測定することによって判定されたものと比較することによって行われる。
本方法及び組成物は、個体、例えば、加齢性認知低下を患う個体、または加齢性認知低下を患うリスクがある個体の、認知能力を安定化させるためにも役立つ。例えば、個体は、何らかの加齢性認知機能障害を示す場合があり、本開示の方法による処置前に観察された認知機能障害の進行は、本開示の方法による処置後に停止する。別の例として、個体は、加齢性認知低下を発症するリスクがある場合があり(例えば、個体は、50歳以上である場合があるか、または加齢性障害と診断されている場合があり)、個体の認知能力は、本開示の方法による処置後に、本開示の方法による処置前と比較して実質的に変化していない。すなわち、認知低下を検出することができない。
本方法及び組成物は、加齢性認知機能障害を患う個体の認知機能障害を低減させるためにも役立つ。言い換えると、本方法による処置後の個体の認知能力が改善する。例えば、個体の認知能力は、本方法による処置後に、本方法による処置前の個体において観察される認知能力と比べて、例えば、2倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、30倍以上、または40倍以上、例えば50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上改善する。一部の事例では、本方法及び組成物による処置は、加齢性認知低下を患う個体の認知能力を、例えば、その個体が約40歳以下であったときのレベルまで回復させる。言い換えると、認知機能障害が抑止される。
14.神経認知関連疾患を診断し、その改善をモニタリングする方法
一部の事例では、神経認知関連疾患を診断し、その進行及び改善をモニタリングするための種々の方法の中でも、以下の種類の鑑定が、単独で、または所望により神経変性疾患を患う個体と組み合わせて使用される。以下の種類の方法は例として提示されるものであり、列挙される方法に限定されない。所望により、疾患をモニタリングするための任意の簡便な方法を本発明の実践に使用してもよい。これらの方法も本発明の方法により想定される。
A.全体的認知
本発明の方法の実施形態は、認知機能障害及び/または加齢性認知症の処置に関する、対象に対する薬物または処置の影響をモニタリングする方法であって、処置の前及び後の認知機能を比較することを含む方法を更に含む。当業者は、認知機能を評価する周知の方法があることを認識している。限定としてではなく、例えば、本法は、診療歴、家族歴、認知症及び認知機能を専門にする臨床医による身体検査及び神経学的検査、臨床検査、ならびに神経心理学的鑑定に基づく認知機能の評価を含み得る。本発明により想定される更なる実施形態には、例えばGlasgow昏睡尺度(EMV)を使用した意識状態の鑑定、簡易メンタルテストスコア(AMTS)またはミニメンタルステート検査(MMSE)(Folstein et al.,J.Psychiatr.Res 1975;12:1289-198)を含む精神状態の検査、高次機能の包括的評価、眼底検査などによる頭蓋内圧の推定が含まれる。
一実施形態では、末梢神経系の検査を使用して、嗅覚、視野及び視力、眼球運動及び瞳孔(交感神経性及び副交感神経性)、顔の感覚機能、顔及び肩帯の筋肉の強度、聴覚、味覚、咽頭の運動及び反射、舌運動[これらは個々に試験することができる(例えば、視力はSnellen視力表によって試験することができ、反射ハンマーの使用により、咬筋、二頭筋、及び三頭筋の腱、膝の腱、アキレス腱反射及び足底反射(すなわちBabinski兆候)を含む反射が試験される)]、高頻度でMRCスケール1~5の筋力、筋緊張及び固縮の兆候のうちのいずれか1つを含む認知機能を評価することができる。
15.試薬、デバイス、及びキット
上記の方法のうちの1つ以上を実践するための試薬、デバイス、及びそのキットも提供される。本試薬、デバイス、及びそのキットは、大きく異なる場合がある。
目的の試薬及びデバイスには、例えば、抗凝固薬、凍結保存剤、緩衝液、等張液など、それを必要とする対象に輸血するための血漿を含む血液産物を調製する方法に関して上述したものが含まれる。
キットは、採血バッグ、管類、針、遠心分離管なども備え得る。更に他の実施形態では、本明細書に記載のキットは、血漿タンパク質画分などの血漿産物の容器を2つ以上、例えば、血漿産物の容器を3つ以上、4つ以上、5つ以上、例えば6つ以上含む。一部の事例では、キット内の血漿産物の個別容器の数は、9つ以上、12個以上、15個以上、18個以上、21個以上、24個以上、30個以上、例えば36個以上、例えば、48個以上であり得る。各容器は、その中に含まれる血漿産物に関する様々なデータを含む識別情報と関連付けられていてもよく、この識別情報は、血漿産物のドナーの年齢、血漿産物に関する処理の詳細、例えば、平均分子量を超えるタンパク質(例えば上記のもの)を除去するために血漿産物が処理されたか否か、血液型の詳細などのうちの1つ以上を含み得る。一部の事例では、キット内の各容器は、その中に含まれる血漿に関する識別情報を含み、識別情報は、血漿産物のドナー年齢に関する情報を含み、例えば、識別情報により、血漿産物ドナーの年齢に関するデータ(そのような識別情報が採取時のドナーの年齢であり得る場合)の確認が行われる。一部の事例では、キットの各容器は、実質的に同じ年齢のドナーに由来する血漿産物を含む。すなわち、容器の全てが、全く同じでないにしても実質的に同じ年齢のドナーに由来する産物を含む。実質的に同じ年齢とは、キットの血漿産物の取得元となる様々なドナーが、一部の事例では、5年以下、例えば4年以下、例えば、3年以下、例えば2年以下、例えば1年以下、例えば、9か月以下、6か月以下、3か月以下、例えば1か月以下だけ、各々異なることを意味する。識別情報は、任意の簡便な容器構成要素、例えばラベル、RFIDチップなどに存在してもよい。識別情報は、所望により、人間が読める情報、コンピュータ可読情報などであり得る。容器は、任意の簡便な構成を有していてもよい。容器の容積は様々であり得るが、一部の事例ではこの容積は、10mL~5000mL、例えば25mL~2500mL、例えば、50mL~1000mL、例えば100mL~500mLの範囲である。容器は剛性でも可撓性でもよく、任意の簡便な材料、例えば、医療グレードのプラスチック材料を含むポリマー材料から製作されていてもよい。一部の事例では、容器は、バッグまたはパウチ構成を有する。このようなキットは、容器に加えて、例えば上記のような投与デバイスを更に含んでいてもよい。このようなキットの構成要素は、任意の好適なパッケージ、例えば、容器及び他のキット構成要素が入るように構成された箱または類似構造の中に用意されていてもよい。
上記の構成要素に加えて、本キットは、本方法を実践するための説明書を更に含む。こうした説明書は、本キット内に種々の形態で存在してもよく、そのうち1つ以上はキット内に存在してもよい。こうした説明書が存在し得る1つの形態は、好適な媒体または基板に印刷された情報、例えば、情報が印刷された一枚または複数枚の紙として、キットのパッケージにおいて、添付文書においてなどである。更に別の手段は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、CD、携帯式フラッシュドライブなどである。存在し得る更に別の手段は、インターネットを介して離れたサイト上の情報にアクセスするために使用され得るウェブサイトアドレスである。任意の簡便な手段がキット内に存在してもよい。
16.実験手順
以下の実施例は、本発明を作製し利用する方法に関する完全な開示及び説明を当業者に提供するために記述されるものであり、以下の実験が行われた全てまたは唯一の実験であることを表明する意図はない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを確保するように努力したが、いくらかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特記なき限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセ氏温度であり、圧力は大気圧付近である。
分子生化学及び細胞生化学における一般的方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,HaRBor Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons 1999)、Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley&Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999)、Viral Vectors(Kaplift&Loewy eds.,Academic Press 1995、Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997)、及びCell and Tissue Culture:Laboratory Precedures in Biotechnology(Doyle&Griffiths,John Wiley&Sons 1998)などの標準的教本に見出すことができ、これらの開示内容は参照により本明細書に援用されている。本開示で参照される遺伝子操作のための試薬、クローニングベクター、及びキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma-Aldrich、及びClontechなどの商業的供給業者から入手可能である。
A.材料及び試薬
USP食塩水はHospira(Lake Forest,IL)から購入した。注射は、27.5G針または30G針を用い、注射1回あたり150μLの体積で行った。5%溶液中の上記の商業的PPF調製物などの市販のPPF(「PPF1」)を4℃で保管した。5%溶液中の上記の商業用HAS調製物などの市販のHAS(「HAS1」)を4℃で保管した。
B.動物の供給及び飼育
マウス系統NOD.CB17-Prkdcscid/NcrCrl(「NODscid」、系統コード394、Charles River,MA)(Bosma,M.et al.,The scid mouse mutant.137 Curr Top Microbiol Immunol 197(1988))及びNODscidガンマ(「NSG」、系統コード005557、The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)を使用した。各マウスに耳パンチを行って固有の識別番号を割り当てた。全てのマウスは、12時間明、12時間暗サイクル下で、特定病原体除去条件下で個々に収容し、全ての動物の取り扱い及び使用は、IACUCが認可した標準的ガイドラインに従った。
C.投与
以下に別途の記載がない限り、NSG及びNODscidマウスには、USP食塩水、5%PPF1、または5%HAS1を最長6か月にわたって1週間に2回、尾静脈注射(注射1回あたり150μL)によって静脈内注射した。
D.オープンフィールド
オープンフィールド試験を利用して、対象マウスの探索行動を判定した。オープンフィールド試験は、通常は円形または四角形の、空の試験アリーナである。マウスを50cm×50cmのオープンフィールドアリーナに15分間入れ、マウスの活動のレベルを測定する。前肢が箱の壁部に接していた持続時間を追跡することにより、立ち上がり時間を測定した。カバーされた全距離及び速度も試験期間を通して測定した。CleverSys TopScan V3.0(Reston,VA)を使用して、オープンフィールドにおけるマウスの行動を追跡した。オープンフィールドチャンバはCleverSysによって構築された。
E.Y迷路
マウスには、Y迷路の2つのアーム(開始+非新奇)を5分間探索させた。1時間後、マウスが3つ全てのアームを探索できるようにし、これらのアームに入った合計時間及び回数を記録した。
F.Barnes迷路
改変されたBarnes迷路においてマウスを4日連続で訓練し、出口穴を見つけるために最大で120秒間与えた(Barnes,C.A.,Memory deficits associated with senescence:A neurophysiological and behavioral study in the rat,J.COMPARATIVE AND PHYSIOLOGICAL PSYCHOLOGY,93(1):74-104(1979)、また改変された迷路については、Faizi,M.et al.,Thy1-hAPP(Lond/Swe+)mouse model of Alzheimer’s disease displays broad behavioral deficits in sensorimotor,cognitive and social function.,BRAIN BEHAV.2(2):142-54,(2012)を参照されたい)。出口穴は、訓練日の4回の試行では同じままにしたが、訓練日の間で変更した。4日間の訓練日それぞれで、各マウスコホートについて出口穴までの所要時間を記録した。
G.DCX陽性細胞及びKi67陽性細胞
ダブルコルチン(DCX)は、神経前駆細胞によって発現される微小管関連タンパク質であり、胚及び成体の皮質構造内の未成熟ニューロンによっても発現される。神経前駆細胞は、活発に分裂しているとき、DCXを発現する。このタンパク質は2週間後に下方調節される。この関連のため、これは神経発生のマーカーとして有用である。
十分に説明されている技術により、脳組織の処理及び免疫組織化学的検査を浮遊切片に行った(Luo,J.et al.Glia-dependent TGF-b signaling,acting independently of the TH17 pathway,is critical for initiation of murine autoimmune encephalomyelitis.J.CLIN.INVEST.117,3306-3315(2007))。マウスを麻酔し、0.9%食塩水を灌流した。脳を取り出し、その後、pH7.4で4℃の4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液で固定してから、凍結保護のために30%スクロースに沈めた。その後、-22℃のクライオミクロトームを用い、脳を30μmで薄切した。切片を凍結保護培地で保管した。使用した一次抗体は、ヤギ抗Dcx(Santa Cruz Biotechnology、1週間に2回の投薬実験では1:500、または1週間につき3回の投薬実験では1:200)、またはウサギ抗Ki67(1:500 Abcam)であった。ジアミノベンジジン(DAB、Sigma-Aldrich)または蛍光共役二次抗体を用い、ビオチン化二次抗体及びABCkit(Vector)を使用して、一次抗体染色を明らかにした。歯状回あたりのDcx陽性細胞の総数を推定するため、海馬を通る3つの冠状脳切片において、歯状回の顆粒細胞及び顆粒細胞下層内の免疫陽性細胞を計数して、平均を取った。
H.若年血漿、流出液I、または流出液II/IIIで処置した老齢NSGマウスのBarnes迷路試験
老齢NSGマウス(12か月齢)をいくつかの群(全てn=14)に分け、行動試験の開始前に尾静脈注射によって150μLの食塩水、若年血漿、流出液I、または流出液II/IIIを与えた。別個の各群を3つのコホートに分け、各コホートで異なる週に行動試験を開始した。
I.若年血漿またはPPF1で1週間に3回処置した老齢NSGマウスのBarnes迷路及び細胞生存率(BrdU染色)
老齢(12か月)の雄NSGマウスに、4週間にわたって1週間に3回、尾静脈注射により、150μLの浄化した若年ヒト血漿(若年血漿)、PPF1、または食塩水を静脈内処置した。行動試験の週であった第5週及び第6週の間は、このレジメンを1週間に2回に変更した。
処置の前に、各々マウス13~15匹の3つのコホートにマウスを分けた。各コホートには、上記の若年血漿、PPF1、または食塩水の処置開始前に、5日間のBrdU注射を腹腔内(i.p.)に施した。
第5週及び第6週の間、行動試験を行い、Barnes迷路試験において各マウスの標的の穴までの所要時間を測定した。各試験セッションは最長120秒間続けた。標的の穴と定義された領域にマウスの鼻が入ったときを判定するソフトウェアを使用して、標的の穴を見つける事象を記録した。
行動試験の最後に動物を殺処分し、歯状回の顆粒細胞層内にあるBrdU陽性細胞の存在を判定するため、明視野顕微鏡を使用し、海馬あたり6つの切片を数量化した。BrdU陽性細胞の総数の推定値を求めるため、海馬の様々な領域全体の代表的な切片として、BrdU陽性細胞の平均数に、各動物の海馬に対する切片の総数である72を乗じた。
J.神経球及び皮質の培養アッセイ
1.Tuj1及びDAPI染色
B27、2mM Glutamax(Sigma-Aldrich)を補充した12mLの神経基本培地に、マウスC57 E14,15の皮質(Lonza:M-CX-300)を懸濁した。コラーゲンI(Corning,Inc.)で予めコーティングされた96ウェルプレートの各ウェルに200μLを加えた。16時間後、播種培地を、予熱した(37℃)対照培地(B27、2mM Glutamax(Gibco)を加えた神経基本培地)に置き換えた。インビトロでの培養4日目(「days in vitro」すなわち「DIV」)に、培養培地を、新鮮な対照培地、対照培地及び10%PPF1、対照培地及び10%HAS1、ビヒクル及び10%PPF1、またはビヒクル及び10%HAS1に置き換えた。3日おきに培地の75%を新鮮培地に変えながら、21日間にわたって培養物を維持した。21DIVに培養物をPBSで3回洗浄し、次に、室温(RT)で20分間にわたって4%パラホルムアルデヒドで固定した。固定後、培養物をPBSで2回洗浄し、次に、0.1%のTriton X100で5~20分間透過処理した。透過処理後、RTで60分間にわたり、3%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich)を用い、培養物のブロッキングを行った。60分後、ブロッキング溶液を吸引し、4℃で一晩かけて培養物を抗Tuj1抗体(AbCam-1:500)で標識した。標識後、培養物をPBS+0.1%BSAで3回洗浄し、次に、4℃で一晩かけてA647共役ロバ抗マウス抗体で染色した(1:1000)。次に、培養物をPBSで2回洗浄し、Hoechst 33342(1:1000)で20分間標識した。Hoechst標識の後、試料をPBSで3回洗浄した。GE InCell Analyzer 2000(GE Healthcare Life Sciences)を使用し、10倍拡大率を使用して、各ウェルで25個のフィールドを獲得した。結果は図19に示してある。
2.正味の神経突起長
前項に記載の培養物から正味の神経突起長を判定した。GE InCell Investigator Developer Toolboxにより作成されたカスタムアルゴリズムを使用して、神経突起の解析を行った。対照及びビヒクル処置試料からの結果はほぼ同一であったため、統計解析のために組み合わせた。結果は図20に示してある。
3.皮質培養球の数及びサイズ、突起の長さ及び分岐
B27、2mM Glutamax(Sigma-Aldrich)を補充した12mLの神経基本培地に、マウスC57 E14,15の皮質(Lonza:M-CX-300)を懸濁した。ポリリジン及びラミニンで予めコーティングされた96ウェルプレートの各ウェルに200μLを加えた。4日後、培地の50%を新鮮培地と交換し、試験品(ビヒクル、PPF1、またはHAS1)で処置して10%の最終濃度とした。これを3日後に繰り返した。処置7日目にIncuCyte(Ann Arbor,MI)を用いて10倍拡大率で細胞の位相差画像を撮り、標準的な「Neurite and Cell-Body」アルゴリズムを用いて解析した。6つの複製物を解析し、複製物1つあたり4つの画像を撮った。標準誤差を示している。有意は、両側T検定でP<0.5として示してある。結果は図21及び図22に示してある。
4.Sox2による神経球の染色
B27、2mM Glutamax(Sigma-Aldrich)を補充した神経基本培地に、マウスC57 E14,15の皮質ニューロン(Lonza:M-CX-300)を100~200K細胞/mLで懸濁した。コラーゲンI(Corning,Inc.)で予めコーティングされた96ウェルプレートの各ウェルに200μLを加えた。16時間後、播種培地を、予熱した(37℃)対照培地(B27、2mM Glutamax(Gibco)を加えた神経基本培地)に置き換えた。インビトロでの培養4日目(「days in vitro」すなわち「DIV」)に、培養培地を、新鮮な対照培地、HASビヒクル(ビヒクル)を含む対照培地、対照培地及び10%PPF1、対照培地及び10%HAS1に置き換えた。3~4日おきに培地の75%を新鮮培地に変えながら、21日間にわたって培養物を維持した。21DIVに培養物をPBSで3回洗浄し、次に、室温(RT)で20分間にわたって4%パラホルムアルデヒドで固定した。固定後、培養物をPBSで2回洗浄し、次に、0.1%のTriton 100Xで5~20分間透過処理した。透過処理後、RTで60分間にわたり、3%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich)を用い、培養物のブロッキングを行った。60分後、ブロッキング溶液を吸引し、4℃で一晩かけて培養物を抗Tuj1抗体(AbCam-1:500)及びウサギ抗SOX2(AbCam:1:5000)で標識した。標識後、培養物をPBS+0.1%BSAで3回洗浄し、次に、4℃で一晩かけてロバ抗マウス647(AbCam)及びヒツジ抗ウサギTexas Redで染色した(1:1000)。次に、培養物をPBSで2回洗浄し、Hoechst(1:1000)で20分間標識した。Hoechst標識の後、試料をPBSで3回洗浄した。InCell Analyzer 2000(GE Healthcare Life Sciences)の10倍拡大率を使用し、各ウェルで20または25個のフィールドを獲得した。GE InCell Investigator Developer Toolboxにより作成されたカスタムアルゴリズムを使用して、神経球及び神経突起の解析を行った。対照及びビヒクル処置試料からの結果はほぼ同一であったため、統計解析のために組み合わせた。結果は図23に示してある。
K.インビボ実験の結果
1.3か月齢及び13か月齢のNSGマウスを用いたオープンフィールド試験
3か月齢(若年)または13か月齢(高齢)のNSGマウスをオープンフィールドチャンバに15分間入れた。立ち上がり時間(図1)、速度(図2)、及び距離(図3)を測定した。図1は、13か月齢のマウスは3か月齢のマウスよりも立ち上がり時間が少なかったが、PPF1処置マウス及びHAS1処置マウスには若年マウスとの有意差がなかったことを示す。図2は、13か月齢の食塩水処置マウス(対照)及びPPF1処置マウスが3か月齢のマウスよりも有意に緩慢であったことを示す。しかしながら、HAS1処置マウスは食塩水処置マウスよりも有意に速く、若年マウスとの有意差はなかった。図3は、高齢の食塩水処置マウス(対照)及びHAS1処置マウスは若年マウスよりも低い自発運動活性を有し、PPF1処置マウスは食塩水処置マウスよりも長い距離をカバーしたことを示す。示されているデータは全て、平均±s.e.m.であって、 *P<0.05、**P<0.01、 ***P<0.001、t検定、n=20、18、18、19(SAL=食塩水)である。
2.3か月齢及び13か月齢のNSGマウスを用いたY迷路試験
若年(3か月齢)及び高齢(13か月齢)のNSGマウスを、記憶の試験として手がかり付きY迷路において試験した。図4は、全てのマウスが非新奇(F)アームよりも新奇(N)アームにおいて有意に長い時間をかけたことを示す。図5は、HAS1処置した高齢マウスは若年マウスと比較して非新奇アームに関する記憶が有意に損なわれていたが、一方でPPF1処置マウスは、非新奇アームに関する記憶が改善している傾向にあったことを示す。図6は、高齢の食塩水処置マウス及びPPF1処置マウスは若年マウスよりも有意に緩慢であったが、HAS1処置マウスには若年マウスとの有意差がなかったことを示す。図7は、高齢の食塩水処置マウス及びPPF1処置マウスは若年マウスよりも短い距離をカバーしたが、HAS1処置マウスには若年マウスとの有意差がなかったことを示す。示されているデータは全て、平均±s.e.m.であって、 *P<0.05、**P<0.01、 ***P<0.001、対応t検定、n=20、18、18、19(SAL=食塩水)である。
3.3か月齢及び13か月齢のNSGマウスを用いた記憶に関する恐怖条件付け試験
若年(3か月齢)及び高齢(13か月齢)のNSGマウスを、記憶に関する恐怖条件付け試験において試験した。図8Aは、13か月齢のマウスは3か月齢のマウスよりもすくむ時間が短い傾向にあったが、一方でHAS1処置マウスがすくむ時間は3か月齢のマウスとほぼ同じ時間であったことを示す。図8Bは、聴覚的手がかりの記憶に関する手がかり試験において、13か月齢の対照処置マウスが最低の成績を示し、最も短い時間すくんだことを示す。HAS1処置マウスは、より長い時間すくむ傾向にあり、音に対する記憶の改善を示している。図9は、記憶に関する手がかり試験の最後の90秒間の数量化を示し、HAS1処置マウスはより長い時間すくむ傾向にあることを示し、記憶の改善を示している。n=20、16、17、19(SAL=食塩水)である。
4.3か月齢及び13か月齢のNSGマウスを用いた空間記憶に関するBarnes迷路試験
若年(3か月齢)及び高齢(13か月齢)のNSGマウスを、空間記憶に関するBarnes迷路試験において試験した。図10Aは、3か月齢のマウスが最良の成績を示し、最後の試行までで標的の穴に達するまでの所要時間が最も短かったことを示す。図10Bには、高齢の食塩水処置マウス及びHAS1処置マウスにおける標的の穴の記憶が若年マウスと比較して有意に損なわれていたが、PPF1処置マウスには若年マウスとの有意差がなかったことを示す、最後の3回の試行の平均の数量化が示されている。**P<0.01、 ***P<0.001、独立t検定、n=20、18、18、19(SAL=食塩水)である。
5.3か月齢及び13か月齢のNSGマウスを用いた免疫染色
食塩水、PPF1、またはHAS1で1週間に2回処置した3か月齢及び13か月齢のNSGマウスにおいて、新生ニューロンのマーカーであるダブルコルチン(Dcx)について、または増殖性細胞のマーカーであるKi67について、脳切片を染色した。若年マウス及び高齢NSGマウスの歯状回において、Dcx陽性細胞及びKi67陽性細胞を計数した。図11A及び図11Bは、それぞれ、全ての高齢マウスが劇的に低い数のDcx陽性細胞またはKi67陽性細胞を有したことを示す。PPF1処置マウス及びHAS1処置マウスは、食塩水処置マウスと比較してDcx陽性細胞及びKi67陽性細胞の数が増加する傾向にあった。
6.PPF1及びHAS1で1週間に3回処置した3か月齢及び13か月齢のNSGマウスを用いた免疫染色
13か月齢のマウスにおいて、新生ニューロンのマーカーであるダブルコルチン(Dcx)について、または増殖性細胞のマーカーであるKi67について、脳切片を染色した。マウスは、食塩水、PPF1、1倍濃縮HAS1、または5倍濃縮HAS1で1週間に3回処置した。歯状回においてDcx陽性細胞及びKi67陽性細胞を計数した。図12は、PPF1で処置したマウスは食塩水処置した対照動物と比較して神経発生(Dcx染色により示される)が増加する傾向にあったことを示す。また、より濃縮されたHAS1は、食塩水処置動物と比較して神経発生を増加させる傾向にあったことも示されている。
図13は、PPF1で処置したマウスでは食塩水処置した対照動物と比較して細胞増殖(Ki67染色により示される)が有意に増加したことを示す。また、より濃縮されたHAS1は、食塩水処置動物と比較して神経発生を増加させる傾向にあったことも示されている。 *P<0.05、食塩水群に対する独立t検定であって、示されているデータは全て、平均±s.e.m.である。
7.NODscidマウスを用いたオープンフィールド試験
NODscidマウスに、6か月齢から開始して1週間に2回、尾静脈注射により食塩水またはPPF1のいずれかを静脈内処置した。開始時のマウス数は各群で20であった。マウスをオープンフィールドチャンバに15分間入れ、自発運動活性を記録した。図14Aは、PPF1処置マウスは食塩水処置マウスと比較して立ち上がり活動が増加する傾向にあることを示す。図14B及び図14Cは、それぞれ、PPF1処置マウスは食塩水処置マウスと比較して速度及びカバーする距離も改善する傾向にあることを示す。
8.若年血漿、流出液I、及び流出液II/IIIで処置した老齢(12か月齢)NSGマウスを用いたBarnes迷路
老齢NSGマウス(12か月齢)をいくつかの群(全てn=14のサイズ)に分け、行動試験の開始前に尾静脈注射によって150μLの食塩水、若年血漿、流出液I、または流出液II/IIIを与えた。別個の各群を3つのコホートに更に分け、各コホートで異なる週に行動試験を開始した。改変されたBarnes迷路(上記の通り)においてマウスを試験し、空間学習及び記憶を鑑定した。図15は、若年血漿、流出液I、または流出液II/IIIでの処置により、老齢NSGマウスが標的の穴に達するまでの所要時間が有意に改善する傾向にあったことを示す。
9.若年血漿及びPPF1で処置した老齢NSGマウスを用いたBarnes迷路及び細胞生存率
上記のように、老齢の雄NSGマウス(12か月齢)を、4週間にわたって1週間に3回(i.v.)、そして報告されている試験が行われた週である第5週及び第6週の間は1週間に2回、150μLの浄化した若年ヒト血漿(若年血漿)、PPF1、または食塩水で処置した。
図16は、各処置コホートに関するBarnes迷路の穴に達するまでの所要時間を示す。PPF1での処置により、対照と比較して老齢マウスの空間記憶が有意に改善し、若年血漿による処置では、対照と比較して空間記憶が改善する傾向にあった(n:食塩水=12、PPF1=14、若年血漿=11)。 *P<0.05、平均±s.e.m.、独立T検定である。
図17は、各試験日の最後の3回の試行において標的の穴を見つけるまでの平均所要時間を示す。ここでも、PPF1での処置により、対照と比較して老齢マウスの空間記憶が有意に改善し、若年血漿による処置では、対照と比較して空間記憶が改善する傾向にあった。 *P<0.05、平均±s.e.m.、独立T検定である。
図18は、老齢(12か月)のNSGマウスの歯状回の顆粒層内にあるBrdU陽性標識細胞(すなわち増殖性細胞)の数により判定される細胞生存率に対する、若年ヒト血漿及びPPF1の影響を示す。上記のように、若年血漿、PPF1、または食塩水対照の静脈内注射を開始する前に、5日間にわたってBrdUを投与した(i.p.)。食塩水対照と比較して、若年ヒト血漿処置マウスとPPF1処置マウスとの両方で、細胞生存率の有意な増加が観察された。統計有意は、一元配置ANOVAを使用し、食塩水処置と比較したPPF1と若年ヒト血漿との間でDunnettの多重比較事後解析を用いて判定した(n:食塩水=13、PPF1=13、若年血漿=11、****P>0.0001、PPF1または若年ヒト血漿と食塩水処置との間の独立T検定)。
L.インビトロでの神経球及び皮質の培養アッセイの結果
図19は、PPF1とHAS1とが皮質培養物中の神経球増殖を差次的に調整することを示す。コラーゲンIでコーティングされた96ウェルプレート上で、ビヒクル単独、PPF1(10%)、またはHAS1(10%)を含む培養培地において、E14-15 C57マウスの皮質を培養した。Tuj1(ニューロン特異的クラスIIIベータチューブリン)、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)、またはTuJ1とDAPIとの両方に関して画像化した、21日間のインビトロ培養後の皮質培養物における神経球の画像例が示されている。図19は、PPF1により、Tuj1またはDAPIのいずれかを発現する神経球の量が増加することを示す。Tuj1発現の増加は、PPF1処置した皮質培養物が、よりニューロン様の表現型に分化した神経球をより多く産生することを示す。
図20は、ビヒクル、PPF1(10%)、またはHAS1(10%)を含む培養培地中の、コラーゲンIでコーティングされた96ウェルプレートにコーティングした、B27、2mM Glutamax(Sigma-Aldrich)を補充した神経基本培地に100~200K細胞/mLで懸濁した、C57マウスE14-15の皮質ニューロン(Lonza:M-CX-300)の3つの培養物を示す。神経発生を示す正味の神経突起長は、対照またはHAS1処置培養物と比較して、PPF1処置培養物において生じた。
図21は、ビヒクル、PPF1(10%)、またはHAS1(10%)を含む培養培地中の、コラーゲンIでコーティングされた96ウェルプレートにコーティングした、B27、2mM Glutamax(Sigma-Aldrich)を補充した神経基本培地に100~200K細胞/mLで懸濁した、C57マウスE14-15の皮質ニューロン(Lonza:M-CX-300)の3つの培養物を示す。Essen BioSciences(Ann Arbor,MI)から入手可能なIncuCyteソフトウェアアルゴリズムは、皮質培養球(黄色でハイライトされている)及び突起(ピンク色でハイライトされている)を検出した。より多くの球体及び突起がPPF1処置培養物において観察され、PPF1処置培養物では、増加した球体のサイズ及び突起の分岐も観察された。スケールバーは各々300μmである。
図22A~Dは、それぞれ、球体数、突起長、突起分岐点、及び球体サイズを示す。数量化は、Essen BioSciences(Ann Arbor,MI)から入手可能なIncuCyteソフトウェアアルゴリズムを使用して行った。標準誤差を示している。両側T検定を使用した有意を示している。図22Aは、PPF1処置培養物がビヒクルまたはHAS1処置培養物と比較して増加した数の球体を有することを示す(P=0.0006、PPF1対ビヒクル、P=0.0007、PPF1対HAS1)。図22Bは、PPF1処置培養物がビヒクルまたはHAS1処置培養物と比較して増加した突起長を提示することを示す(P=4e-8、PPF1対ビヒクル、P=0.002、PPF1対HAS1、及びP=0.018、HAS1対ビヒクル)。図22Cは、PPF1処置培養物がビヒクルまたはHAS1処置培養物と比較してより多くの突起分岐点をもたらすことを示す(P=0.002、PPF1対ビヒクル、P=0.004、PPF1対HAS1)。図22Dは、PPF1処置培養物がビヒクルまたはHAS1処置培養物と比較して増加した球体サイズに関連することを示す(P=0.002、PPF1対ビヒクル、P=0.004、PPF1対HAS1)。まとめると、このデータの結果は、PPF1による処置が(また、それほど有意ではないがHAS1による処置も)、皮質培養物における細胞成長及び突起形成の増加を示す特徴に関連することを示す。
図23は、胚性幹細胞及び神経幹細胞の維持において重要な役割を果たす転写因子であるSox2に対して陽性に染色する神経球の数を示している。数量化は、GE InCell Investigator Toolboxのアルゴリズムを使用して行った。PPF1処置培養物は、Sox2に対して陽性に染色する神経球の数を有意に増加させ、PPF1処置が、神経発生の可能性がある細胞の数の増加と関連付けられることを示している。
前述の内容は本発明の原理を例示するものに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載または提示されていなくとも、本発明の原理を具現し、その趣旨及び範囲内に含まれる、様々な構成を考案できることが察知される。更に、本明細書で列挙される全ての例及び条件付きの文言は、当技術分野を発展させるために本発明者らが寄与する本発明の原理及び概念を読者が理解する助けとなることを主な目的とするものであり、そのような具体的に列挙された例及び条件に限定されないものと解釈されるものとする。更に、本発明の原理、各態様、及び各実施形態、ならびにその具体例を列挙する本明細書の記述は全て、その構造的同等物及び機能的同等物の両方を包含するように意図されている。更に、そのような同等物には、現在公知の同等物と、将来開発される同等物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を行うように開発される任意の要素との両方が含まれることが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書において提示及び記載される例示的な実施形態に限定されないことが意図される。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現される。
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に従い、2016年10月24日に出願された米国仮特許出願第62/412,258号の出願日に基づく優先権を主張する。この米国仮特許出願の開示内容は、参照により本明細書に援用されている。

Claims (15)

  1. 認知障害と診断された対象に有効量の血漿画分を投与することを含む、認知障害を処置する方法。
  2. 前記血漿画分は、血漿タンパク質画分である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記血漿タンパク質画分は、市販の血漿タンパク質画分である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記血漿画分は、ヒトアルブミン溶液である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記ヒトアルブミン溶液は、市販のヒトアルブミン溶液である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記血漿画分は、タンパク質濃縮血漿タンパク質産物である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記血漿画分は、流出液Iである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記血漿画分は、流出液II/IIIである、請求項1に記載の方法。
  9. 前記対象を認知機能の改善についてモニタリングすることを更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記血漿画分は、若年個体のプールからの血漿に由来する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記血漿画分が、哺乳動物の血液産物から生成される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記哺乳動物の血液産物は、ヒトの血液産物である、請求項11に記載の方法。
  13. 前記対象は哺乳動物である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記哺乳動物はヒトである、請求項13に記載の方法。
  15. 対象の認知障害を処置するために使用するためのキットであって、
    請求項1~12のいずれか1項に記載の血漿画分を含む容器を含む、キット。
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