JP2023154164A - 連鎖移動剤及び重合体の製造方法 - Google Patents

連鎖移動剤及び重合体の製造方法 Download PDF

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諒 川谷
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大典 松▲崎▼
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Abstract

【課題】メルカプタン化合物以外の連鎖移動剤であって、充分に分子量の制御をすることができる連鎖移動剤を提供する。【解決手段】具体的には、例えば下記構造式で表される連鎖移動剤が提供される。JPEG2023154164000022.jpg57153【選択図】なし

Description

本発明は、連鎖移動剤及び重合体の製造方法に関する。
メチルメタクリレート等のラジカル重合性化合物を重合させる際、重合体の分子量を調節する等の目的で連鎖移動剤が用いられ、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン化合物が従来から使用されている。
特許文献1には、マレイミド基及びメルカプト基を有する化合物からなる連鎖移動剤が開示されている。また、特許文献2には、特定の構造を有するチオール化合物が開示されており、該化合物を連鎖移動剤として用いることが開示されている。
特開2003-321506号公報 特開2004-292428号公報
メルカプタン化合物は重合体の分子量を効率よく制御できる利点がある。一方で、メルカプタン化合物は、特有の臭気を有する、メルカプタン化合物を連鎖移動剤として用いて重合した重合体は適用箇所によっては使用が好まれない等の問題があった。また、メルカプタン化合物以外の連鎖移動剤の開発も行われているが、これらは、充分に分子量の制御をすることができなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、メルカプタン化合物以外の連鎖移動剤であって、充分に分子量の制御をすることができる連鎖移動剤を提供するものである。
本発明によれば、下記式(1)で示される連鎖移動剤が提供される。
式(1)中、Xは、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、Y、Zは、それぞれ、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、OR、OC(O)R、N(H)C(O)R及びハロゲンから選ばれる基であるか、又は、YとZが結合して任意に置換された炭素環式構造もしくは任意に置換された複素環式構造を形成しており、X、Y、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは、炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基であり、Qは水素、又は、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基であり、R及びRは、水素、炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基であり、RとRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい(但し、RとRが何れも水素である場合は除く)。
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、上記式(1)で表される化合物を連鎖移動剤として用いて単量体を重合させて重合体を得ると、得られる重合体の分子量を充分に制御することができることを見出し、本発明の完成に至った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
(1)下記式(1)で示される連鎖移動剤。
(式(1)中、Xは、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、Y、Zは、それぞれ、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、OR、OC(O)R、N(H)C(O)R及びハロゲンから選ばれる基であるか、又は、YとZが結合して任意に置換された炭素環式構造もしくは任意に置換された複素環式構造を形成しており、X、Y、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは、炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基であり、
Qは水素、又は、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基であり、
及びRは、水素、炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基であり、RとRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい(但し、RとRが何れも水素である場合は除く。)。)
(2)前記RとRの少なくとも一方が、水素である、(1)に記載の連鎖移動剤。
(3)前記RとRの少なくとも一方が、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基である、(1)又は(2)に記載の連鎖移動剤。
(4)重合体の製造方法であって、(1)~(3)の何れか1項に記載の連鎖移動剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む、重合体の製造方法。
本発明に係る連鎖移動剤を用いて単量体を重合させて重合体を製造すると、分子量が制御された重合体を効率的に得ることができる。また、本発明に係る製造方法によれば、充分に分子量が制御された重合体を得ることができる。さらに、本発明に係る連鎖移動剤は、メルカプタン化合物である連鎖移動剤と比べ、臭気が少ない。また、本発明に係る連鎖移動剤を用いて重合した重合体は、メルカプタン化合物を連鎖移動剤として用いて重合された重合体に比べて、用途が限定されない。
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
1.連鎖移動剤
本発明に係る連鎖移動剤は、下記式(1)で表される構造を有する。
式(1)中、Xは、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基である。
式(1)で表される化合物がラジカル重合の連鎖移動剤として機能する際の反応機構は、以下の用に説明できる。まず、ビニリデン基がラジカル種の攻撃を受容する付加反応が生じ、次いで二重結合の組換えと、アリル置換基、すなわち、Q、Y、Zで置換されたメチル基の脱離を伴う開裂反応が続いて、Q、Y、Zで置換されたメチルラジカルを生成する。一連の反応機構は付加-開裂反応と呼称され、Xが付加反応の起こりやすさを、Y、Zと、RならびにRが開裂反応の起こりやすさを決定する。また、想定するモノマーに合わせて最適なXを選択することが好ましい。連鎖移動反応により遊離するラジカル種からの再開始反応を期待する場合は、想定するモノマーに合わせて最適なQ、Y、Zを選択することが好ましい。以下、X、Y、Z、R、Rの形態と、その動作原理を述べる。
本発明の一実施形態において、Xは、シアノ基とできる。Xがシアノ基である場合、窒素原子の誘起効果と、シアノ基とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。さらに、ビニリデン基にラジカルが付加すると新たなラジカル種が生成するが、シアノ基はこのラジカルの不対電子を共鳴効果により非局在化し、ラジカル種を安定化させる機能も持つ。つまり、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、Xがシアノ基である場合は格段にラジカル付加が起こりやすくなる。
本発明の一実施形態において、Xは、任意に置換されたアリール基とできる。アリール基は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。アリール基を構成する芳香環の炭素数は、6~18とすることができ、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、及び4-ビフェニル基を挙げることができ、アリール基は、フェニル基であることが好ましい。アリール基は置換基を有することができ、置換基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基等を挙げることができる。
Xが任意に置換されたアリール基である場合、アリール基とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。さらに、ビニリデン基にラジカルが付加すると新たなラジカル種が生成するが、アリール基はこのラジカルの不対電子を共鳴効果により非局在化し、ラジカル種を安定化させる機能も持つ。さらに、アリール基がアルキル基やシアノ基、カルボキシ基で置換されている場合、これらの置換基を含めた、大きな共鳴効果や、超共役効果が働き、無置換のアリール基と比べてラジカルがさらに安定化される。以上から、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、Xが任意に置換されたアリール基である場合は格段にラジカル付加が起こりやすくなる。
本発明の一実施形態において、Xは、アシル基(C(=O)R)、カルボキシ基、COOR、アミド基(C(O)NH、C(O)NHR、又はC(O)NR )、スルホン基含有置換基SOR、SO、SOとできる。アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基を挙げることができる。COOR、すなわち、アルコキシカルボニル基(ROC(=O))としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基が挙げられる。アミド基のうち、N-置換アミド基(C(O)NHR、又はC(O)NR )としては、例えばR1がメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基であるN-置換アミド基が挙げられる。Xがアシル基(C(=O)R)、カルボキシ基、COOR、アミド基(C(O)NH、C(O)NHR、又はC(O)NR )、スルホン基含有置換基SOR、SO、SOである場合、カルボニル/スルホン基の酸素原子による誘起効果と、カルボニル基/スルホン基とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。さらに、ビニリデン基にラジカルが付加すると新たなラジカル種が生成するが、カルボニル基/スルホン基はこのラジカルの不対電子を共鳴効果により非局在化し、ラジカル種を安定化させる機能も持つ。つまり、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、Xがアシル基(C(=O)R)、カルボキシ基、COOR、アミド基(C(O)NH、C(O)NHR、又はC(O)NR )、スルホン基含有置換基SOR、SO、SOである場合は格段にラジカル付加が起こりやすくなる。
本発明の一実施形態において、Xは、ORとすることができる。XがORである場合、酸素原子の誘起効果と、酸素原子とビニリデン基の共鳴効果が働き、ビニリデン基を構成する2つの炭素原子の間に電子密度の偏り(分極)が生じる。この結果、ビニリデン基はラジカル種の付加を受け入れやすくなる。つまり、Xが水素原子やアルキル基である非共役オレフィンと比べて、XがORである場合はラジカル付加が起こりやすくなる。
は、炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。炭素数が1~8のアルキル基の炭素数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。炭素数が1~8のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。アルキル基は、メチル基、エチル基、又はプロピル基であることが好ましい。Rは、任意で置換されていてもよく、置換基としては、ヒドロキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、アルコキシシリル基を挙げることができる。炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基は、無置換のアルキル基、(CH)nOH、(CH)nNCO、(CH)nCOOH、(CH)nNH、(CH)nSOH、(CH)nOSi(ORから選ばれる基とできる。ここで、nは1~8の自然数とでき、Rは炭素数1~8のアルキル基とできる。
上記したXはそれぞれビニリデン基へのラジカル付加を促す効果を持っているが、これに加えて、使用するモノマー(例えば、ラジカル重合性化合物)との相性を考えて選択することが好ましい。モノマーとXの相性は、モノマーと、CH=C(H)Xで記載される置換エチレン化合物の共重合性から判断することができる。モノマーをM、置換エチレン化合物をMとした際に、Mayo-Lewisの式で表されるモノマー反応性比rが0.1~5であることが好ましく、0.3~2であることがより好ましく、0.5~1.5であることがさらに好ましい。例えば、Xがアセトキシ基である場合、上記の置換エチレン化合物は酢酸ビニルである。スチレンと酢酸ビニルの反応性比はr=22であるので、Xがアセトキシ基である連鎖移動剤は、スチレンの重合系ではほとんど機能せず、好ましくない。一方、XがCOOCHである場合、上記の置換エチレン化合物はアクリル酸メチルである。スチレンとアクリル酸メチルの反応性比はr=0.75であるので、XがCOOCH基である連鎖移動剤は、スチレンの重合系では好適である。CH=C(H)Xで記載される置換エチレン化合物をモノマーとする場合、モノマーMと、比較する置換エチレン化合物Mが同一になるので、r=1である。すなわち、使用するモノマーの置換基と同一のXを選択することが最も好ましい。例えば、アクリル酸メチルの重合系で使用する連鎖移動剤は、X=COOCHであることが最も好ましい。本発明の一実施形態に係る連鎖移動剤は、モノマーMの重合時に用いる連鎖移動剤であって、モノマーMがXを置換基として含むことが好ましい。
Y、Zは、それぞれ、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、OR、及びハロゲンから選ばれる基であるか、又は、YとZが結合して任意に置換された炭素環式構造もしくは任意に置換された複素環式構造を形成していてもよい。アリール基、アシル基の具体例としては、Xの説明において列挙して具体例と同様のものを挙げることができる。
本発明の一実施形態において、Y及び/又はZは、ビニリデン基に付加したラジカルによる、開裂反応の起こりやすさを決定する基である。Y及び/又はZに、これらが結合した炭素原子上のラジカルを安定化させる効果があるほど、開裂反応が起こりやすい。したがって、Y及び/又はZによる共鳴効果による不対電子の非局在化が期待できる基が好ましく、それぞれ、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、OC(O)R、N(H)C(O)R及びハロゲンから選ばれる基が好ましい。
本発明の一実施形態において、Y及び/又はZはまた、開裂反応により遊離したラジカル種による、再開始反応の起こりやすさも決定する。再開始反応の起こりやすさは、CH=C(Y)Zで表されるモノマーをM、重合に使用するモノマーをMとしたときの共重合における、Mayo-Lewisの式で表されるモノマー反応性比rが0~5であると起こりやすく、0~2であるとさらに起こりやすく、0~1であると特に起こりやすい。しかしながら、再開始反応が全く生じない、いわゆる破壊的連鎖移動反応であっても、分子量を調整する目的は問題なく達せられる。したがって、Y及び/又はZは第一に、前項記載の開裂反応の起こりやすさから選択することが好ましく、再開始反応の有無によって選択範囲に制約が生じるものではない。
Y及び/又はZが含みうるRは炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基である。炭素数が1~8のアルキル基の炭素数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。炭素数が1~8のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。アルキル基は、メチル基、エチル基、又はプロピル基であることが好ましい。Rは、任意で置換されていてもよく、置換基としては、ヒドロキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、アルコキシシリル基を挙げることができる。炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基は、無置換のアルキル基、(CH)nOH、(CH)nNCO、(CH)nCOOH、(CH)nNH、(CH)nSOH、(CH)nOSi(ORから選ばれる基とできる。ここで、nは1~8の自然数とでき、Rは炭素数1~8のアルキル基とできる。
Y、Zは、YとZが結合して任意に置換された炭素環式構造もしくは任意に置換された複素環式構造を形成してもよい。
炭素環式構造は、炭素数3~8のシクロアルキル基とすることができる。
複素環式構造は、3~8員の複素環とすることができる。複素環は、N、O、Sから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、2つ以上のヘテロ原子を有することができる。また、複素環は、少なくとも1つのOを有することが好ましい。
炭素環式構造及び複素環式構造は、置換基を有することができ、置換基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基、オキソ基、ハロゲン等を挙げることができる。置換基は、オキソ基を含むことが好ましい。
本発明の一実施形態では、Y、Zは、YとZが結合してメルドラム酸又はメルドラム酸誘導体を形成してもよい。
X、Y、Zは、それぞれ異なっていてもよい。
また、X、Y、Zは、X、Y、Zのうち少なくとも2つが同一であってもよく、YとZが同一であってもよく、YとZが同一で、Xは異なっていても良い。
X、Y、Zは、すべて同一であってもよい。
Qは水素、又は、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基である。
Qは任意に置換された炭素数1~6のアルキル基とすることができ、置換基としては、例えば、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基等を挙げることができる。
Qは水素であることが好ましい。
及びRは、水素、炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基で、RとRが何れも水素である場合は除く。R及びRが何れも水素の場合、連鎖移動反応により末端オレフィンが生じる。一方、R及びRの少なくとも一方が炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基である場合は、連鎖移動反応により内部オレフィンが生じる。内部オレフィンは置換基からの超共役効果あるいは共鳴効果が働くため、末端オレフィンと比べて安定である。このため、末端オレフィンと生じる、RとRが何れも水素である連鎖移動剤と比べて、より安定な内部オレフィンを生じる、R及びRの少なくとも一方が炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基である連鎖移動剤の方が、連鎖移動反応を起こしやすい。また、R又はRによる、オレフィンの安定化と、オレフィン近傍の立体障害の増大は、それぞれ熱力学的、速度論的にラジカル種の再攻撃を抑制する。この結果、連鎖移動反応を不可逆反応とする効果や、生じたオレフィン末端を起点とする分岐・架橋構造の生成の抑制効果が現れる。このように、R及びRの効果は、連鎖移動反応の促進と、連鎖移動後に生じるオレフィン末端が引き起こす副反応の抑制の効果がある。
及び/又はRは、炭素数2~6のアルキル基とできる。アルキル基の炭素数は、例えば、2、3、4、5、6であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。炭素数が2~6のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基等を挙げることができる。R及び/又はRがメチル基の場合も内部オレフィンが生じるので、連鎖移動反応の促進の面ではエチル基などの炭素数2~6のアルキル基と同等の効果が期待できる。しかしながら、連鎖移動後に生じるオレフィン末端へのラジカルの攻撃を抑制する意味では、メチル基では立体障害が充分でない。このことは、アクリル酸メチルのβ位にメチル基を置換した内部オレフィン、クロトン酸メチルが他のビニルモノマーとラジカル共重合することから推定することができる。したがって、R及び/又はRは、よりかさ高い炭素数2~6のアルキル基が好ましく、特に、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソプロピル基であることが好ましい。
及び/又はRは、任意に置換されたアリール基とすることができる。アリール基は連鎖移動反応によって内部オレフィンが生じた際に、オレフィンと共鳴することができる。長く安定な共役系の形成は連鎖移動反応を促すとともに、逆反応を抑制する効果がある。共鳴効果によるオレフィンの安定化は、アルキル基の超共役効果による安定かと比べて遙かに高い作用があるため、R及び/又はRは、アリール基であることが好ましい。アリール基は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。アリール基を構成する芳香環の炭素数は、6~18とすることができ、6~12であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、及び4-ビフェニル基を挙げることができ、アリール基は、フェニル基であることが好ましい。アリール基は置換基を有することができ、置換基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲン等を挙げることができる。特に、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲン等は芳香環と共鳴することで、連鎖移動反応により生じる共役系をさらに延長する効果があるため、連鎖移動反応を強く促すことから、特に好ましい。
及びRは、任意に置換された複素環式構造とできる。
複素環式構造は、3~8員の複素環とすることができる。複素環は、N、O、Sから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、2つ以上のヘテロ原子を有することができる。複素環式構造は、置換基を有することができ、置換基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、シアノ基、カルボキシ基、ハロゲン等を挙げることができる。複素環が脂肪族の場合は、アルキル基と同様に、超共役による内部オレフィンの安定化に由来する、連鎖移動反応の促進効果と、分岐・架橋構造生成の抑制効果を期待することができる。複素環が芳香族の場合は、アリール基と同様に、共鳴効果による内部オレフィン安定化に基づく、連鎖移動反応の促進効果と、分岐・架橋構造生成の抑制効果を期待することができる。
また、本発明の一実施形態において、RとRの立体障害が大き過ぎると、ビニリデン基へのラジカル付加を抑制され、連鎖移動定数が低下することから、適切な反応性を得る観点で、RとRのうち、少なくとも一方は、水素であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る連鎖移動剤は、式(1)において、重合で使用するモノマーの構造や再開始反応の可否から適切なX、Y、Z、Q、R、Rを選択して設計されることが好ましい。例えばアクリル酸エステル類のラジカル重合系において、再開始反応を含む連鎖移動剤を設計する場合は、Xが、シアノ基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びフェニル基から選ばれる基であり、Y、Zが、それぞれ、シアノ基、カルボキシ基、COOR、C(O)R、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びフェニル基から選ばれる基であり、X、Y、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基であり、
Qは水素またはメチル基であり、
及びRは、一方が水素、他方が炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基とできる。
このうち、連鎖移動の起こりやすさやモノマー、ポリマーとの相溶性、溶解性の観点から、Xが、シアノ基、COOR及びフェニル基から選ばれる基であり、Y、Zが、それぞれ、シアノ基、COOR、及びフェニル基から選ばれる基であり、X、Y、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基であり、
Qは水素またはメチル基であり、
及びRは、一方が水素、他方が炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基であることが好ましい。
さらに、合成上の観点から、Xが、シアノ基、COORから選ばれる基であり、Y、Zが、それぞれ、シアノ基、COOR、及びフェニル基から選ばれる基であり、X、Y、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、前記Rは炭素数が1~8のアルキル基であり、
Qはメチル基であり、
及びRは、一方が水素、他方がフェニル基であることが特に好ましい。
本発明に係る連鎖移動剤は、ラジカル重合性化合物を重合させる際に用いることができ、得られる重合体の重量平均分子量を例えば、5000~200万に調整することができる。重合体の重量平均分子量は例えば、5000、1万、3万、5万、10万、20万、50万、100万、150万、200万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
2.連鎖移動剤の製造方法
本発明に係る連鎖移動剤の製造方法は特に限定されず、上記の式(1)で表される構造を有するものが得られればよい。
一例として、本発明に係る連鎖移動剤は、下記式(2)で表される化合物と、式(3)で表されるハロゲン化合物(一例として、臭素化合物を示す)とを溶媒及び塩基の存在下で反応させて得ることができる。
上記式(2)及び(3)において、X、Y、Z、Q、R、Rはそれぞれ、上記した式(1)中のX、Y、Z、Q、R、Rと同様のものとすることができる。
溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、2-ブタノン、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール等を用いることができる。
塩基としては、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、ピリジン等を用いることができる。
3.連鎖移動剤を用いた重合体の製造方法
本発明に係る重合体の製造方法は、上記に記載の連鎖移動剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む。
本発明に係る製造方法によれば、分子量が制御された重合体を得ることができる。
ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有してもよい。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ビニルアミド、スチレン、アクリルニトリル及びその誘導体などが挙げられる。(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
重合工程では、重合開始剤を用いても良い。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤及び光重合開始剤などが挙げられる。熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、及びアゾ系化合物等が挙げられる。光重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン化合物、及びベンゾイン化合物などが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る重合工程では、アゾ系開始剤を用いることができる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1'-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート(MAIB)、及び4,4'-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)等が挙げられる。
本発明の一実施形態に係る重合工程における連鎖移動剤の使用量は、用いるラジカル重合性化合物の種類等並びに他の重合条件に応じて適宜調整すればよい。特に限定されるものではないが、ラジカル重合性化合物100質量部に対し、0.001質量部~10質量部とすることができる。連鎖移動剤の使用量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対し、例えば、0.001質量部、0.002質量部、0.005質量部、0.01質量部、0.02質量部、0.05質量部、0.1質量部、0.2質量部、0.5質量部、1.0質量部、5.0質量部、10.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
上記の製造方法で得られる重合体の重量平均分子量は、例えば、5000~200万とすることができる。重合体の重量平均分子量は例えば、5000、1万、3万、5万、10万、20万、50万、100万、150万、200万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
以下の手順で連鎖移動剤CTA1~4を合成した。
・CTA1の合成(比較例1の連鎖移動剤)
200mlの2口ナスフラスコにナトリウムエトキシド20wt%溶液(東京化成工業製)27.58ml(74.9mmol)及びエタノール(純正化学製)100mlを加え氷浴に浸し、攪拌しながら化合物(4)(富士フイルム和光純薬工業製)11.3ml(74.9mmol)を滴下により加え、溶液(1)を得た。別の500mlの2口ナスフラスコにエタノール20mlと化合物(5)(東京化成工業製)14.38g(74.9mmol)を加え氷浴に浸し、フラスコ内の温度を10℃以下に保ちながら溶液(1)を滴下により加え、滴下終了後3時間攪拌した。その後、水100ml及びジクロロメタン(米山薬品工業製)200mlを加えて有機層を抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで2回洗浄した。その後、硫酸マグネシウム(米山薬品工業製)を用いて脱水し、溶媒を減圧留去することで、式(6)で表されるCTA1を得た。
・CTA2の合成(比較例2の連鎖移動剤)
200mlの2口ナスフラスコにナトリウムエトキシド20wt%溶液7.73ml(21mmol)及びエタノール10mlを加え氷浴に浸し、攪拌しながら化合物(7)(東京化成工業製)3.58ml(21mmol)を滴下により加え、溶液(2)を得た。別の200mlの2口ナスフラスコにエタノール20mlと化合物(5)2.92ml(21mmol)を加え氷浴に浸し、フラスコ内の温度を10℃以下に保ちながら溶液(2)を滴下により加え、滴下終了後4時間攪拌した。その後、水100ml及びジクロロメタン100mlを加えて有機層を抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで2回洗浄した。その後、硫酸ナトリウムを用いて脱水し、溶媒を減圧留去することでCTA2の粗生成物を回収した。CTA2の粗生成物をヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(富士フイルム和光純薬工業製ワコーゲルC400-HG)で精製し、式(8)で表されるCTA2を得た。
・CTA3の合成(実施例1の連鎖移動剤)
<化合物(11)の合成>
500mlナスフラスコにアセトニトリル(米山薬品工業製)40ml及びエタノール10mlを加え、次いで、化合物(9)(東京化成工業製)60ml(564mmol)、化合物(10)(富士フイルム和光純薬工業製)31.6ml(314mmol)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(東京化成工業製)17.6g(157mmol)を溶解させた。ナスフラスコを70℃のオイルバスに浸し、24時間攪拌した。その後、50℃で減圧濃縮し、ジクロロメタン200mlと水100mlを加えて有機層を抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液300mlで2回洗浄した。その後、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、溶媒を減圧留去することで化合物(11)の粗生成物を回収した。回収した粗生成物をヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(富士フイルム和光純薬工業製ワコーゲルC400-HG)で精製し化合物(11)を得た。
<化合物(12)の合成>
500mlの2口ナスフラスコにジクロロメタン150ml及び化合物(11)15g(75mmol)を加え、氷浴に浸した。トリブロモホスフィン(富士フイルム和光純薬工業製)8.5ml(90mmol)を滴下により加え、滴下終了後フラスコ内の温度を15℃以下に保ち1時間攪拌した。その後、水50mlを滴下して加え、フラスコ内の温度を15℃以下に保ちながら、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlを注ぎ入れ有機層を抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで2回洗浄した。その後、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、溶媒を減圧留去することで化合物(12)を得た。
<CTA3の合成>
100mlの2口ナスフラスコにTHF(超脱水グレード、関東化学製)40ml及びナトリウムヒドリド(富士フイルム和光純薬工業製)(60wt%in oil)1.52g(38.1mmol)を加え氷浴に浸した。次いで、フラスコ内の温度を10℃以下に保ちながら化合物(4)を滴下により加えた。滴下終了後、フラスコの温度を25℃とした後30分攪拌し、溶液(3)を得た。別の200mlの2口ナスフラスコにTHF40ml及び化合物(12)10g(37.1mmol)を加え撹拌し、さらにDABCO1.5g(44.6mmol)を加え氷浴に浸し、フラスコ内の温度を10℃以下に保ちながら溶液(3)を滴下により加え、滴下終了後3時間攪拌した。その後、ジクロロメタン200ml、水50ml及び飽和塩化ナトリウム水100mlを加えて有機層を抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで2回洗浄した。その後、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、溶媒を減圧留去することでCTA3の粗生成物を得た。CTA3の粗生成物をヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(富士フイルム和光純薬工業製ワコーゲルC400-HG)で精製し、式(13)で表されるCTA3を得た。
<CTA4の合成>
<化合物(15)の合成>
300mlの2口ナスフラスコにアセトニトリル20ml及び化合物(14)(東京化成工業製)16.38ml(250mmol)、化合物(10)20.0ml(198mmol)及びDABCO22.43g(200mmol)を溶解させた。ナスフラスコを50℃のオイルバスに浸し13時間攪拌した。その後、50℃で減圧濃縮し、ジクロロメタン150mlと水80mlを加えて有機層を抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液150mlで2回洗浄した。その後、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、溶媒を減圧留去することで化合物(15)の粗生成物を回収した。化合物(15)の粗生成物ヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(富士フイルム和光純薬工業製ワコーゲルC400-HG)で精製し、化合物(15)を得た。
<化合物(16)の合成>
500mlの2口ナスフラスコにジクロロメタン150ml及び化合物(14)5.0g(31.4mmol)を加え、氷浴に浸した。トリブロモホスフィン3.32ml(35mmol)を滴下により加え、滴下終了後フラスコ内の温度を15℃以下に保ち1時間攪拌した。その後、水30mlを滴下して加え、フラスコ内の温度を15℃以下に保ちながら、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlを注ぎ入れ有機層を抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液70mlで2回洗浄した。その後、硫酸マグネシウムを用いて脱水した後、溶媒を減圧留去することで化合物(16)を得た。
<CTA4の合成>
50mlの2口ナスフラスコにTHF(超脱水グレード、関東化学製)10ml及びナトリウムヒドリド(60wt% in oil)0.72g(18.0mmol)を加え氷浴に浸した。次いで、フラスコ内の温度を10℃以下に保ちながら化合物(7)3.01ml(17.6mmol)を滴下により加えた。滴下終了後、フラスコの温度を25℃とした後30分攪拌し、溶液(4)を得た。別の300mlの2口ナスフラスコにアセトニトリル190ml及び化合物(16)3.9g(17.6mmol)を加え撹拌し、さらにDABCO1.974g(17.6mmol)を加え氷浴に浸し、フラスコ内の温度を10℃以下に保ちながら溶液(4)を滴下により加え、滴下終了後3時間攪拌した。その後、ジクロロメタン200ml、水250ml及び飽和塩化ナトリウム水溶液100mlを加えて有機層を抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液200mlで2回洗浄した。その後、硫酸マグネシウムを用いて脱水し、溶媒を減圧留去することでCTA4の粗生成物を得た。CTA4の粗生成物をヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、式(17)で表されるCTA4を得た。
上記で得られた連鎖移動剤CTA1~4を用いて、重合体を製造した。
<重合体の製造>
(実施例1-1)
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)100質量部(0.78mol)、CTA3を0.32質量部(0.87mmol)、酢酸エチル130質量部仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、窒素雰囲気下、70℃で3時間重合反応を行い、重合体を得た。
(実施例1-2)
CTA3の代わりにCTA4を0.28質量部(0.87mmol)使用したこと以外は実施例1-1と同様にして重合体を得た。
(実施例2-1)
CTA3を0.04質量部(0.12mmol)としたこと以外は実施例1-1と同様にして重合体を得た。
(実施例2-2)
CTA3の代わりにCTA4を0.01質量部(0.03mmol)としたこと以外は実施例1-1と同様にして重合体を得た。
(比較例1)
CTA3の代わりにCTA1を0.24質量部(0.87mmol)使用したこと以外は実施例1-1と同様にして重合体を得た。
(比較例2)
CTA3の代わりにCTA2を0.25質量部(0.87mmol)使用したこと以外は実施例1-1と同様にして重合体を得た。
(参考例1)
連鎖移動剤を使用しなかったこと以外は実施例1-1と同様にして重合体を得た。
以下の評価を行った。
〔重量平均分子量(Mw)〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で重合体のMwを求めた。結果を表1に示す。
・測定装置:HLC-8320GPC(東ソー製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー製)
(1)TSKgel HxL-H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
〔重合率〕
ガスクロマトグラフィーを用いた内部標準法により、下記条件で残存モノマー量を測定した。また、残存モノマー量を、反応装置に添加したブチルアクリレートの量で除し、重合率を算出した。結果を表1に示す。
測定装置:GC-2010Plus(島津製作所製)
カラム:Rxi-5ms 15m, 0.25mmID 0.25μm
カラム温度:50℃
昇温プログラム:50℃(5min)→20℃/min→250℃(5min)
FID温度:250℃
キャリアガス:He
実施例1-1、1-2と、比較例1、2の比較より、本発明の連載移動剤を使用した場合、効率よく重合体の分子量を制御できる結果が得られた。また、実施例2-1、2-2と比較例1、2の比較より、同程度の分子量の重合体を製造するにあたり、本発明の連鎖移動剤は使用量が少ないという結果が得られた。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で示される連鎖移動剤。
    (式(1)中、Xは、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、及びORから選ばれる基であり、Y、Zは、それぞれ、シアノ基、任意に置換されたアリール基、アシル基、カルボキシ基、COOR、C(O)NH、C(O)NHR、C(O)NR 、SOR、SO、SO、OR、OC(O)R、N(H)C(O)R及びハロゲンから選ばれる基であるか、又は、YとZが結合して任意に置換された炭素環式構造もしくは任意に置換された複素環式構造を形成しており、X、Y、Zはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、Rは、炭素数が1~8のアルキル基を任意に置換した基であり、
    Qは水素、又は、任意に置換された炭素数1~6のアルキル基であり、
    及びRは、水素、炭素数2~6のアルキル基、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基であり、RとRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい(但し、RとRが何れも水素である場合は除く。)。)
  2. 前記RとRの少なくとも一方が、水素である、請求項1に記載の連鎖移動剤。
  3. 前記RとRの少なくとも一方が、任意に置換されたアリール基、及び任意に置換された複素環式構造から選ばれる基である、請求項1又は請求項2に記載の連鎖移動剤。
  4. 重合体の製造方法であって、
    請求項1又は請求項2に記載の連鎖移動剤の存在下で、ラジカル重合性化合物を重合する重合工程を含む、重合体の製造方法。
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