JP2023151199A - 水性ウレタン樹脂分散体及びコーティング材料組成物並びにその塗膜。 - Google Patents

水性ウレタン樹脂分散体及びコーティング材料組成物並びにその塗膜。 Download PDF

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Abstract

【課題】 20~100℃での低温乾燥において、十分な硬度を有する塗膜を形成する組成物に用いられる、水性ウレタン樹脂分散体を提供する。【解決手段】 本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリウレタン樹脂及び水系媒体を含む水性ポリウレタン樹脂分散体であって、前記ポリウレタン樹脂が、ポリオール(Aa)とジカルボン酸(Ab)とを反応させてなるポリエステルポリオール(A)由来の構成単位、及びポリイソシアネート(B)由来の構成単位を有し、前記ポリオール(Aa)全量中に、分岐鎖を有するポリオール(Aa1)を80質量%以上含み、 前記ジカルボン酸(Ab)全量中に、芳香族ジカルボン酸(Ab1)を80質量%以上含む本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体は、SDGs(Sustainable Development Goals)に貢献することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、水性ウレタン樹脂分散体に関する。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、接着性、耐摩耗性、ゴム的性質を有する塗膜を得ることができ、従来の溶剤系ポリウレタンと比較して揮発性有機物を減少できることから環境対応材料として溶剤系ポリウレタンからの置き換えが進んでいる材料である。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、たとえば、自動車の外装において中塗りに使用する耐破壊特性材料として使用されている。水性ポリウレタン樹脂分散体は、フィルム、塗料又はコーティング材料、耐破壊特性材料として用いる際には、バーコーター、ロールコーター、エアスプレー等の塗布装置を用いて基材等への塗布が行われる。塗布された水性ポリウレタン樹脂分散体を加熱乾燥することで基材上に塗膜が形成される。
ポリカーボネートポリオールを原料とした水性ウレタン樹脂分散体を塗布して得られる塗膜において、耐光性、耐熱性、耐加水分解性、耐油性に優れることが知られている(特許文献1参照)。
一方、ポリエステルポリオールを用いた水性ウレタン樹脂分散体から得られる塗膜は多種基材への密着性に優れることで知られている(特許文献2~4)。特許文献2には、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸と分岐グリコールとを構成成分とするポリエステルグリコールと水酸基数が3個以上のポリオールと有機ジイソシアネートと遊離のカルボキシル基を有する鎖伸長剤とを構成成分とする末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを水で架橋させたポリウレタン樹脂水分散体が、幅広い種類の樹脂への密着性に優れ、透明性・均一性の高い塗膜が得られると記載されている。
特許文献3には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸と分岐グリコールを構成成分とするポリエステルポリオールと水酸基を3つ以上有するポリオールから構成される水性ポリウレタン樹脂分散体において、幅広いプラスチック基材への高い密着性と優れた耐水性及び耐ブロッキング性を有することが記載されている。
特許文献4には、特殊な乳化方法によって、硬化物の極性溶媒に対する耐溶剤性、密着性及び屈曲性に優れたポリウレタン樹脂組成物が得られることが記載されている。
特開平10-120757号公報 特開2016-084415号公報 特開2002-234931号公報 特開2013-155335号公報
特許文献2~4のポリエステルポリオールを用いたポリウレタン樹脂組成物は、種々の樹脂に対して高い密着性を有することが示されているが、低温(例えば80℃)で短時間(例えば10分間)乾燥させた塗膜において、十分な密着性や十分な硬度が得られるものではなかった。
また、耐破壊特性材料用途においては、従来の水性ポリウレタン樹脂分散体では、メラミン架橋剤を有するため140℃以上の乾燥工程が必要であった。
地球温暖化ガス排出の観点で、この乾燥温度を従来の140℃以上から20~100℃に下げて塗膜を作成することができれば、エネルギーコスト削減や環境への負荷の低減が期待される。さらに、耐破壊特性材料用途においては、作成された塗膜が十分な硬度を有する必要がある。
そこで、本発明の課題は、20~100℃での低温乾燥において、十分な硬度を有する塗膜を形成する組成物に用いられる、水性ウレタン樹脂分散体を提供することである。
本発明者らは、特殊なポリエステルポリオールを使用することで低温短時間の乾燥で高硬度の塗膜を与える水性ウレタン樹脂分散体が得られることを見出した。また好ましい態様においては、低温短時間乾燥で、弾性率が高く、基材への密着性に優れ、破断エネルギーの高い塗膜を与える水性ウレタン樹脂分散体を提供できることを見出した。低温短時間の処理を可能したことで、SDGs(Sustainable Development Goals)のGoal7等の達成に貢献することができる。
本発明は、具体的には以下のとおりである。
[1]ポリウレタン樹脂及び水系媒体を含む水性ポリウレタン樹脂分散体であって、
前記ポリウレタン樹脂が、ポリオール(Aa)とジカルボン酸(Ab)とを構成成分とするポリエステルポリオール(A)由来の構成単位、及びポリイソシアネート(B)由来の構成単位を有し、
前記ポリオール(Aa)全量中に、分岐鎖を有するポリオール(Aa1)を80質量%以上含み、
前記ジカルボン酸(Ab)全量中に、芳香族ジカルボン酸(Ab1)を80質量%以上含む、水性ポリウレタン樹脂分散体。
[2]前記ポリウレタン樹脂が、酸性基含有ポリオール(C)由来の構成単位及び鎖延長剤(E)由来の構成単位をさらに有する、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[3]前記ジカルボン酸(Ab)中の芳香族ジカルボン酸における2つのカルボキシル基が、ベンゼン環上のパラ位の関係である、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[4]前記分岐鎖を有するポリオール(Aa1)が、4級の炭素原子を有するジオールである、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[5]前記鎖延長剤(E)が、ポリアミンである、[2]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[6]前記ポリウレタン樹脂が、ポリエステルポリオール(A)及び酸性基含有ポリオール以外のポリオール(F)由来の構成単位を有する、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[7]前記ポリオール(F)がポリエーテルポリオール及び/またはポリカーボネートポリオールである、[6]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[8]前記ポリオール(F)の水酸基数が2である、[6]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[9]前記ポリエステルポリオール(A)と前記ポリオール(F)との質量比が50:50~90:10である、[6]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[10]前記ポリイソシアネート(B)全量中、脂環式ポリイソシアネートを50~100質量%含む、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[11]前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が100,000以上である、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[12]前記ポリエステルポリオール(A)の水酸基価が55~140mgKOH/gである、[1]の水性ポリウレタン樹脂分散体。
[13][1]の水性ポリウレタン樹脂分散体を含むコーティング材料組成物。
[14][13]のコーティング材料組成物を塗布後に乾燥させて得られる、塗膜。
[15]前記コーティング材料組成物を80℃、10分間で乾燥させることで得られる13~15μmの塗膜のケーニッヒ硬度が120超である、[14]の塗膜。
[16][13]のコーティング材料組成物を20℃~100℃で乾燥させる工程を含む、塗膜の製造方法。
[17]金属の外装用プライマー又はベースコート用の、[13]のコーティング材料組成物。
[18]耐破壊特性材料用の、[13]のコーティング材料組成物。
[19]フロアコート、プラスチックまたはゴムのコート用の[13]のコーティング材料組成物。
[20][13]のコーティング材料組成物を含有する、鋼板処理剤。
本発明の水性ウレタン樹脂分散体を含む組成物は、20~100℃での低温乾燥において、十分な硬度を有する塗膜を形成する。
本発明は、ポリウレタン樹脂及び水系媒体を含む水性ポリウレタン樹脂分散体であって、
前記ポリウレタン樹脂が、ポリオール(Aa)とジカルボン酸(Ab)とを構成成分とするポリエステルポリオール(A)由来の構成単位、及びポリイソシアネート(B)由来の構成単位を有し、
前記ポリオール(Aa)全量中に、分岐鎖を有するポリオール(Aa1)を80質量%以上含み、
前記ジカルボン酸(Ab)全量中に、芳香族ジカルボン酸を80質量%以上含む、水性ポリウレタン樹脂分散体である。
前記ポリウレタン樹脂は、さらに、酸性基含有ポリオール(C)由来の構成単位、鎖延長剤(E)由来の構成単位及び(A)成分及び(C)成分以外のポリオール(F)由来の構成単位を有することが好ましい。
また、水性ポリウレタン樹脂分散体は、上記ポリウレタン樹脂が、中和剤(D)によって中和されていることが好ましい。
すなわち、ポリウレタン樹脂において、ポリイソシアネート(B)と反応してポリウレタン樹脂を構成する成分としてのポリオール(X)には、ポリエステルポリオール(A)、任意に酸性基含有ポリオール(C)並びに任意にポリオール(F)が含まれる。一方、ジカルボン酸(Ab)と反応してポリエステルポリオール(A)を構成するポリオール(Aa)には、分岐鎖を有するポリオール(Aa1)及び任意に直鎖のポリオール(Aa2)が含まれる。また、ジカルボン酸(Ab)には、芳香族ジカルボン酸(Ab1)及び任意に脂肪族ジカルボン酸(Ab2)が含まれる。
本明細書において、「実質的に100質量%」とは、水性ポリウレタン樹脂分散体の特性や水性ポリウレタン樹脂分散体から得られる塗膜の機能や特性に変化を及ぼす程度のその他の成分は含まないという意味であり、機能や特性を損なわない程度に含まれることを排除するものではない。
<ポリエステルポリオール(A)>
ポリエステルポリオール(A)は、ポリオール(Aa)とジカルボン酸(Ab)とを構成成分とするポリオールである。
ポリエステルポリオール(A)は、ポリオール(Aa)とジカルボン酸(Ab)とを脱水縮合せしめる公知のポリエステル製造方法と同様の方法で得られる。
ポリエステルポリオール(A)は、低温短時間の乾燥で高硬度の塗膜を得る観点から、ポリウレタン樹脂を構成する全ポリオール(X)中、40質量%以上が好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、80質量以上が特に好ましい。この範囲では、低温短時間の乾燥で高弾性率の塗膜を得ることもできる。また、ポリエステルポリオール(A)は、低温短時間の乾燥で高密着性の塗膜を得る観点から、ポリウレタン樹脂を構成する全ポリオール(X)中、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
ポリエステルポリオール(A)の水酸基数は2であることが好ましい。すなわちポリエステルジオールであることが好ましい。水性ポリウレタン樹脂分散体は、架橋をすることなく、硬度及び密着性に優れた塗膜を形成可能であるから、必ずしも架橋は必要でないからである。
ポリエステルポリオール(A)の酸価は、0.01~5.0mgKOH/gであることが好ましい。この範囲であれば、これを原料として、特に良好な物性のポリウレタン樹脂が得られる。酸価は、より好ましくは、0.01~1.0mgKOH/gであり、さらに好ましくは、0.01~0.5mgKOH/gである。この範囲とすることで、水性ウレタン樹脂分散体を乾燥させることで得られる塗膜の硬度や電着塗面への密着性を向上することができる。
本明細書において、酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定した値とする。
ポリエステルポリオール(A)の水酸基価は、22.5~280mgKOH/gであることが好ましく、35~225mgKOH/gであることがより好ましく、55~140mgKOH/gであることがさらに好ましく、55~125mgKOH/gであることが特に好ましい。この範囲であれば、水性ウレタン樹脂分散体を乾燥させることで得られる塗膜の硬度や電着塗面への密着性を向上することができる。
本明細書において、水酸基価は、JIS K 1557のB法に準拠して測定した値とする。
ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量Mnは、400~5000であることが好ましい。この範囲であれば、加温下(例えば、75℃)で流動性(例えば、粘度500~10000cP)を容易に得ることができ、取扱い性に優れる。数平均分子量Mnは、より好ましくは、500~3000であり、さらに好ましくは、800~2000であり、特に好ましくは、900~2000である。本明細書において、数平均分子量Mnは、JIS K 1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1000×価数)/水酸基価を用いて算出する(この式において、水酸基価の単位は[mgKOH/g]である)。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
<ポリオール(Aa)>
本発明で使用するポリオール(Aa)は、後述のジカルボン酸(Ab)と反応し、ポリエステルポリオール(A)を形成する。
前記ポリオール(Aa)中に分岐鎖を有するポリオール(Aa1)が含まれ、その含有量は、ポリオール(Aa)全量中に、80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%であり、さらに好ましくは実質的に100質量%である。
分岐鎖を有するポリオール(Aa1)としては、一分子中に3級の炭素原子又は4級の炭素原子を有するポリオールを示し、例えば、1,2-プロピレングリコール、1-メチル-1,3-ブチレングリコール、2-メチル-1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1-メチル-1,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,4-ペンタンジオール、1-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ジメチルブチレングリコール、1,3-ジメチルブチレングリコール、2,3-ジメチルブチレングリコール、1,4-ジメチルブチレングリコール等を挙げることができるが、得られる塗膜の硬度や密着性を向上させる観点から、これらの中でも、4級の炭素原子を有するジオールであることが好ましく、ネオペンチルグリコールであることがより好ましい。また、分岐鎖を有するポリオールは、炭素数4~8であることが好ましく、その分岐鎖は、炭化水素基を示し、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~2のアルキル基であることがより好ましい。
これらの分岐鎖を有するポリオール(Aa1)は単独でまたは2種以上併用して用いることができる。
ポリオール(Aa)は、分岐鎖を有するポリオール(Aa1)以外に直鎖のポリオール(Aa2)を含んでいてもよい。
直鎖のポリオール(Aa2)としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、等の短鎖脂肪族ジオールを用いることができ、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。直鎖のポリオール(Aa2)の含有量は、ポリオール(Aa)全量中に、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下あり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは実質的に0質量%である。
これらの直鎖のポリオール(Aa2)は単独でまたは2種以上併用して用いることができる。
<ジカルボン酸(Ab)>
本発明で使用するポリオール(Aa)は、ジカルボン酸(Ab)と反応し、ポリエステルポリオール(A)を形成する。
ジカルボン酸(Ab)には、芳香族ジカルボン酸(Ab1)が含まれ、その含有量は、ジカルボン酸(Ab)全量中に、80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%であり、さらに好ましくは実質的に100質量%である。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等、又はこれらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライド等の反応性誘導体などを挙げることができ、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、これらの芳香族ジカルボン酸はその芳香族環上に、炭素数1~4のアルキル基及び/又は炭素数1~4のアルコキシ基を有していてよい。これらの芳香族ジカルボン酸は単独または2種以上併用して用いることができる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸としては、得られる塗膜の硬度を高くする観点から芳香族ジカルボン酸における2つのカルボキシル基が、ベンゼン環上のパラ位の関係であることが好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
ジカルボン酸(Ab)は、芳香族ジカルボン酸(Ab1)以外に脂肪族ジカルボン酸(Ab2)を含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、マロン酸、琥珀酸、酒石酸、蓚酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等、又はこれらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライド等の反応性誘導体などを挙げることができる。これらの脂肪族ジカルボン酸は単独または2種以上併用して用いることができる。脂肪族ジカルボン酸の含有量は、ジカルボン酸(Ab)全量中に20質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは実質的に0質量%である。
<(A)成分及び(C)成分以外のポリオール(F)>
ポリウレタン樹脂は、後述のポリイソシアネート(B)と反応させてポリウレタン樹脂を構成することができる成分としてのポリオール(X)中に、ポリエステルポリオール(A)及び後述の酸性基含有ポリオール(C)以外に、ポリオール(F)を含有していてもよい。
このような、ポリオール(F)は、ポリウレタン樹脂を構成する全ポリオール(X)中、70質量%未満の量で含まれていることが好ましく、60質量%未満の量で含まれていることがより好ましく、10~50質量%の量で含まれていることがさらに好ましく、10~40質量%の量で含まれていることが特に好ましい。本発明の効果を損なわない範囲であれば、ポリオール(F)の種類、量はともに当業者であれば適宜調整することができる。その他のポリオール(F)は、ポリオール中に含まれていなくてもよい。
ポリオール(F)としては、公知のものを使用することができる。例えば、ポリカーボネートポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;といった高分子量ポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等の短鎖脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ハイドロキノン、ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよびそれらのアルキレンオキシド付加体等のジオール等が挙げられる。ポリオール(F)は単独または2種以上併用して用いることができる。これらの中でも、基材密着性並びに破断エネルギーの観点から、高分子量ポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオール及び/またはポリカーボネートポリオールがより好ましい。
上記のようなポリオール(F)は、市販のものを用いてもよいし、個別に調製したものを用いてもよい。
ポリオール(F)の水酸基数は2であることが好ましい。すなわちジオールであることが好ましい。水性ポリウレタン樹脂分散体は、架橋をすることなく、硬度及び密着性に優れた塗膜を形成可能であるから、必ずしも架橋は必要でないからである。密着性の観点で架橋を持たせない方が好ましい。
高分子量ポリオールの数平均分子量は、500~10000であることが好ましく、650~5000であることがより好ましく、900~3000であることがさらに好ましい。
高分子量ポリオールの水酸基価は、10~225であることが好ましく、22~175であることがより好ましく、37~125であることがさらに好ましい。
ポリオール(F)として使用されるポリカーボネートポリオールは、1種以上のポリオール成分と、炭酸エステルやホスゲンとを反応させることにより得られる。安全性や試薬の取扱等の観点から製造が容易であること、末端塩素化物の副生成がない点から、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
ポリカーボネートポリオールのポリオール成分としては、公知のものを使用することができる。例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、等の分岐鎖状脂肪族ジオールといった脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、等の主鎖に脂環式構造を有するジオール;1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、ポリエステルポリオールポリエーテルポリオールが挙げられる
ポリカーボネートポリオールのポリオール成分は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールは、その分子中に、ポリカーボネートポリオールの特性を損なわない範囲で、1分子中の平均のカーボネート結合の数未満の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
ポリエステルポリオール(A)とポリオール(F)との質量比は、50:50~90:10であることが好ましく、55:45~80:20であることがより好ましく、60:40~70:30であることがさらに好ましい。上記質量比が上記範囲であると80℃で10分間という低温・短時間乾燥で高いケーニッヒ硬度を維持したまま、電着塗面への密着性及び破断エネルギーを高めることができる 点で好ましい。
<ポリイソシアネート(B)>
ポリイソシアネート(B)としては、公知のものを使用することができる。例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-ジクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネート(B)は、その構造の一部又は全部がイソシアヌレート化、カルボジイミド化、又はビウレット化など誘導化されていてもよい。ポリイソシアネート(B)は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
上記のポリイソシアネート(B)の中でも、基材密着性の観点から、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、硬度と破断エネルギーの観点から、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)がより好ましい。 ポリイソシアネート(B)中、脂環式ポリイソシアネートは、50~100質量%が好ましく、70~100がより好ましく、90~100がさらに好ましい。
ポリイソシアネート(B)は、単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
ポリイソシアネート(B)は、ブロックイソシアネートを含まないことが好ましい。水性ポリウレタン樹脂分散体は、塗膜として使用される際、低温で硬化されるため、高温でブロックを外してイソシアネートを活性化させるブロックイソシアネートは、適さないからである。
ポリイソシアネート(B)の使用量は、ポリイソシアネート(Ab)のイソシアネート基と全ポリオール(ポリエステルポリオール(A)と、ポリオール(F)と、酸性基含有ポリオール(C)との合計)の水酸基との比(イソシアネート基/水酸基(モル比))が、1.6~2.3であることが好ましく、1.65~2.05であることが特に好ましい。
<酸性基含有ポリオール(C)>
酸性基含有ポリオール(C)とは、一分子中に2個以上の水酸基と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基含有ポリオール(C)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
酸性基含有ポリオール(C)としては、公知のものを使用することができる。例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸;N,N-ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N-ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6-ジヒドロキシ-2-トルエンスルホン酸等が挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4~12のジメチルロールアルカン酸が好ましく、ジメチロールアルカン酸の中でも、2,2-ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。
酸性基含有ポリオール(C)は、樹脂の分散性の観点から、ポリウレタン樹脂を構成する全ポリオール(X)中、4~20質量%の量で含まれていることが好ましく、8~18質量%の量で含まれていることがより好ましく、10~16質量%の量で含まれていることがさらに好ましく、12~15質量%の量で含まれていることが特に好ましい。
水性ポリウレタン樹脂分散体において、ポリエステルポリオール(A)と、酸性基含有ポリオール(C)とポリオール(F)との合計の水酸基当量数は、50~4000であることが好ましい。水酸基当量数がこの範囲であれば、得られたポリウレタン樹脂を含む水性ポリウレタン樹脂分散体の製造が容易である。得られる水性ポリウレタン樹脂分散体から得られる塗膜の破断エネルギーの観点から、水酸基当量数は、好ましくは100~2500、より好ましくは120~1500、特に好ましくは150~1000である。
水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオール成分の水酸基当量数=各ポリオール成分の分子量/各ポリオール成分の水酸基の数・・・(1)
ポリオール成分の合計の水酸基当量数=M/ポリオール成分の合計モル数・・・(2)
式(2)において、Mは、[〔ポリエステルポリオール(A)の水酸基当量数×ポリエステルポリオール(A)のモル数〕+〔酸性基含有ポリオール(C)の水酸基当量数×酸性基含有ポリオール(C)のモル数〕+〔ポリオール(F)の水酸基当量数×ポリオール(F)のモル数〕]を示す。
<中和剤(D)>
中和剤(D)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
中和剤(D)としては、公知のものを使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の二級アミン;エチレンジアミン、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等の一級アミン;アンモニア等を用いることができる。
上記中和剤(D)としては、コーティング材料組成物中の水系媒体を乾燥する際の温度(通常は50~180℃)で揮発してポリウレタン皮膜から消失し、より一層高い硬度が得られる点から、その沸点が200℃以下であることが好ましく、-50~180℃の範囲であることがより好ましい。100℃以下の低温下で数秒間~1時間の短時間に乾燥塗膜を得る際には、その沸点が130℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましい。
上記中和剤(D)を用いる場合の使用量としては、上記水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれる酸性基含有ポリオール(C)の酸性基のモル数に対して0.8~1.2倍の範囲であることが好ましい。前記中和剤(D)の使用量が上記水性ポリウレタン樹脂分散体に含まれる上記酸性基のモル数に対して0.8倍以上であると、得られる分散体の安定性が高く、1.2倍以下であると、100℃以下の低温乾燥下で数秒間~10分間の短時間で硬度、基材密着性と破断エネルギーが全て高い塗膜を得ることができる。
<鎖延長剤(E)>
鎖延長剤(E)は、ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する化合物である。鎖延長剤(E)は、一種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
本明細書においては、鎖延長剤としても機能するポリオールは、鎖延長剤(E)には含めず、ポリオール(X)に含める。
鎖延長剤(E)としては、公知のものを使用することができる。例えば、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、アミノエチルエタノールアミン等のアミン;水等が挙げられ、アミンが好ましい。
上記鎖延長剤(E)のうち、数平均分子量(Mn)が300以下のジアミンが好ましい。Mnが300以下であることは、ポリウレタン樹脂の凝集力を高くするために必要であり、ジアミンを使用することは、ポリウレタン樹脂のMnを高くし、耐久性を向上させるためのみならず、破断エネルギーの観点からも好ましい。
上記鎖延長剤(E)の添加量は、得られるウレタンポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましい。イソシアナト基の当量を超えて鎖延長剤(E)を添加した場合には、鎖延長されたウレタンポリマーの分子量が低下して凝集力が低下することがあり、破断エネルギーが低くなる可能性がある。
また、鎖延長剤(E)としては、上記例示のほか、イソシアナト基と反応性を有する官能基を3つ以上有する化合物を併用してもよい。そのような化合物を併用することで、N(C=O)NH基の含有量をより制御しやすくなる。その結果、塗膜とする際の乾燥速度をより制御しやすくなる。そのような化合物の例としては、1分子中にアミノ基及び/又はイミノ基を合計で3つ以上有するポリアミンが挙げられ、ジエチレントリアミンのような化合物を用いることができる。
<ポリウレタン樹脂>
本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂は、好ましくは、以下のような特徴を有するものである。
ポリウレタン樹脂の数平均分子量(Mn)は、低温乾燥塗膜の破断エネルギーの観点から、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。数平均分子量を50,000以上とすることで、組成物を100℃以下の温度で乾燥して得られる塗膜がより優れた破断エネルギーを示す。合成することができ、水分散体として取り扱いが可能な粘度であれば、上限は特に制限されない。数平均分子量の上限は通常は2,000,000以下であり、1,000,000以下であることが好ましい。
ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は100,000以上であることが好ましく、40,0000以上であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲であると塗膜の破断エネルギーの点から好ましい。
ポリウレタン樹脂の酸価は、特に制限されないが、固形分基準で18~40mgKOH/gであることが好ましく、20~35mgKOH/gであることがより好ましい。ポリウレタン樹脂の酸価が固形分基準で40mgKOH/gより大きくなると、水系媒体中への分散性が悪くなる傾向がある。酸価が固形分基準で18mgKOH/gより小さくなると、基材密着性が低下する傾向にある。酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定することができる。測定においては、酸性基を中和するために使用した中和剤を取り除いて測定することとする。例えば、有機アミン類を中和剤として用いた場合には、水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に塗布し、温度60℃、20mmHgの減圧下で24時間乾燥して得られた塗膜をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させて、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して酸価を測定することができる。
<水性ポリウレタン樹脂分散体>
水性ポリウレタン樹脂分散体は、前記ポリウレタン樹脂及び水系媒体を含み、ポリウレタン樹脂が水系媒体中に分散している。
水系媒体としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水などの水や、水と親水性有機溶媒との混合媒体などが挙げられる。
親水性有機溶媒としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどのピロリドン類;ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;KJケミカル社製「KJCMPA(R)-100」に代表されるβ-アルコキシプロピオンアミドなどのアミド類;2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール(DMAP)などの水酸基含有三級アミンが挙げられる。
水系媒体中の親水性有機溶媒の量は、0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~10質量%であることがさらに好ましい。
水性ポリウレタン樹脂分散体のpHは、5.0~10.0であることが好ましく、6.0~9.5であることがより好ましく、6.5~9.0であることがさらに好ましい。
水性分散体中におけるポリウレタン樹脂の割合は、好ましくは5~60質量%、より好ましくは20~50質量%である。
<水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法>
国際公開第2016/039396号公報等に記載の公知の方法により、水性ポリウレタン樹脂分散体を製造することができる。例えば、以下のような製造方法が挙げられる。
第1の製造方法は、原料を全て混合し、反応させて、水系媒体中に分散させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
第2の製造方法は、全ポリオール成分とポリイソシアネートとを反応させて、プレポリマーを製造し、前記プレポリマーの酸性基を中和した後、水系媒体中に分散させ、鎖延長剤を反応させることにより水性ポリウレタン樹脂分散体を得る方法である。
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法としては、分子量の制御が行いやすいため、上記の第2の製造方法が好ましい。
特に、本発明においては、以下の(I)~(IV)及び場合により(V)を含む方法により水性ポリウレタン樹脂分散体を製造することができる。
(I)ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、任意の酸性基含有ポリオール(C)及び任意のポリオール(F)を、有機溶剤の存在下、または非存在下で反応させてポリウレタンプレポリマーを得る工程、
(II)前記ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和剤(D)で中和する工程、
(III)前記ポリウレタンプレポリマーを水系媒体に分散させる工程、
(IV)前記ポリウレタンプレポリマーを鎖延長剤(E)で高分子量化する工程、及び場合により、
(V)有機溶剤を除去する工程。
<コーティング材料組成物>
前記水性ポリウレタン樹脂分散体は、コーティング材料組成物に用いられる。
本明細書では、コーティング材料組成物とは、電着塗面、鋼板、木材、プラスチック基材にスプレー、ハケ、アプリケーター、バーコーターなどで塗布して塗膜を形成する材料をいう。
コーティング材料組成物は、前記水性ポリウレタン樹脂分散体を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の樹脂及び/又はその他の添加剤を含有してもよい。以下、本明細書において単に「コーティング材料組成物」というときは、その他の樹脂、添加剤等を含有させた組成物のみならず、前記水性ポリウレタン樹脂分散体のみからなる組成物も包含する。
前記その他の樹脂としては、エマルジョンの状態のアクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン樹脂が挙げられる。中でも、アクリルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンが好ましく、任意成分として、これらの中から選ばれる少なくとも1種を混合して得られるコーティング材料組成物が好ましい形態である。
前記その他の添加剤としては、例えば、造膜助剤、硬化剤、架橋剤、表面調整剤、乳化剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、発泡剤、顔料、染料、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
表面調整剤としては、一般に高分子量化に伴う粘性の変化、表面張力の変化、泡の発生に起因して生じる塗膜の欠陥を解消し得る性能を有する、表面調整剤、レベリング剤、濡れ剤、消泡剤等と称されるものであれば、特に制限なく使用することができ、例えば、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系、セルロース系、天然ワックス系、水溶性有機溶媒等の各種表面調整剤、レベリング剤、濡れ剤、消泡剤等の他、界面活性剤も好ましく挙げられ、中でも濡れ剤が好ましい。
造膜助剤としては、グリコールエーテルが挙げられる。
コーティング材料組成物の製造方法は、特に制限されないが、公知の製造方法を用いることができる。例えば、前記水性ポリウレタン樹脂分散体、任意成分として、上述したその他樹脂及び各種添加剤を攪拌混合することにより製造される。
コーティング材料組成物において、前記水性ポリウレタン樹脂分散体とその他樹脂との混合割合は、基材密着性及び破断エネルギーの観点から、100/0~10/90(固形分質量比)が好ましく、100/0~15/85がより好ましく、90/10~20/80が更に好ましく、80/20~30/70が特に好ましい。
<硬化方法>
コーティング材料組成物は、通常20℃以上、かつ好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下の温度に加熱することにより、硬化させ、塗膜を得ることができる。
具体的には、コーティング材料組成物を電着塗面、鋼板、木材、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂などの各種プラスチック基材に、スプレー、ハケ、アプリケーター、バーコーター等を用いて塗布し、100℃以下、好ましくは80℃のオーブン、加熱槽等に通常1~120分間、好ましくは、1~60分間、より好ましくは1~45分間、さらに好ましくは1~20分間保持する方法により硬化させることができる。塗膜の乾燥膜厚は、0.5~200μmに調整することが好ましく、1~100μmに調整することがより好ましく、5~50μmに調整することがさらに好ましく、10~40μmに調整することが特に好ましい。複層塗膜の中のプライマー、ベースコート等として用いる場合には、前述の各種基材に塗布後、例えば、室温~80℃で1~30分間、好ましくは、1~10分間、より好ましくは、2~6分間保持して、任意成分として、さらにもう1種のベースコートを塗布して、同様の乾燥温度、乾燥時間で乾燥させた後に、トップコート(用途によっては、クリアコートという)を塗布して、100℃以下、好ましくは、80℃以下で10~120分間、好ましくは、20~90分間、より好ましくは、30~60分間加熱硬化させることができる。
コーティング材料組成物を20℃~100℃で乾燥させることによって、塗膜が得られる。
<塗膜の物性>
コーティング材料組成物は、塗布後に乾燥させて塗膜を得ることができる。
コーティング材料組成物から得られる塗膜の、実施例記載の方法で測定した破断エネルギーは100MPa以上が好ましく、110MPa以上がより好ましく、120MPa以上がさらに好ましい。上記値は、例えば、ポリオール(F)を使用し、ポリエステルポリオール(A)とポリオール(F)を特定の範囲とした態様において、達成することができる。
コーティング材料組成物から得られる塗膜の、実施例記載の方法で測定した電着塗面との密着性は80/100以上が好ましく、100/100がより好ましい。ここで、本発明において塗膜の密着性の評価は「n/100」のように記載する。nは下記試験条件で少なくとも1のマス目が剥離したときに残っていたマス目の数を意味する。密着性試験の条件は、実施例の項で詳細に説明している。上記値は、例えば、ポリオール(F)を使用し、ポリエステルポリオール(A)とポリオール(F)を特定の範囲とした態様において、達成することができる。
コーティング材料組成物から得られる塗膜の、実施例記載の方法で80℃にて10分間乾燥して得られた13~15μmの塗膜の測定したケーニッヒ硬度は、120超であることが好ましく、123以上であることがより好ましい。
本発明のコーティング材料組成物から得られる塗膜の、実施例記載の方法で測定した弾性率は、1400MPa以上であることが好ましく、1500MPa以上であることがより好ましく、2000MPa以上であることがさらに好ましい。
<用途>
コーティング材料組成物は、プライマー材料、ベースコート材料、及び耐破壊特性材料として好適に用いることができる。
本明細書において耐破壊特性材料とは、基材の保護剤として用いられ、かつそれ自身も衝突、石跳ね、落下などの物理的衝撃に対して破壊されにくい特性を有する材料をいう。本発明の水性ポリウレタン樹脂分散体を含むコーティング材料組成物を耐破壊特性材料に好適に使用することができる。
プライマー材料、ベースコート材料、及び耐破壊特性材料は、フロアコーティング、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂などの各種プラスチック基材またはゴムへのコート、鋼板処理剤、自動車、トラック、電車などの車両のような、金属の外装用プライマー又はベースコートなどに広範囲に用いることができ有用であり、特に、金属の外装用プライマー又はベースコートに用いられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、物性測定は以下の通り行った。
(1)水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を記した。
(2)酸価はJIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定した。
(3)分散性は粒度分布において、1μm以上の粒子が存在しないことにより確認した。粒度分布は堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2により測定した。
(4)塗膜のケーニッヒ硬度は、次のようにして評価した。各水性ポリウレタン樹脂分散体に造膜助剤としてジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(安藤パラケミー製ダワノール(登録商標)DPnB)を全体の2質量%、及びシリコン系界面活性剤(ビックケミー社製、BYK-345)を全体の0.5質量%になるように添加して混合したコーティング材料組成物を、日本テストパネル製自動車用カチオン電着塗装板上にバーコーター#20を使って均一に塗布した。次いで、80℃にて10分間乾燥した。得られる塗膜の膜厚は、13~15μmであった。上記で得られた電着塗板とポリウレタン樹脂塗膜との積層体において、前記ポリウレタン樹脂塗膜のケーニッヒ硬度をISO 1522に準拠した方法で測定した。
(5)塗膜の電着層表面への密着性は、次のようにして評価した。水性ポリウレタン樹脂分散体に造膜助剤としてダワノール(登録商標)DPnBを全体の2質量%、及びシリコン系界面活性剤(ビックケミー社製、BYK-345)を全体の0.5質量%になるように添加して混合したコーティング材料組成物を、自動車鋼板カチオン電着塗板(日本テストパネル社製)上にバーコーター#20で塗布し、80℃で10分間加熱乾燥し、得られた塗膜を用いて碁盤目剥離試験を行った。塗膜に10mm×10mmの面積に縦横1mm間隔で切り目を入れ、粘着テープを貼った後、剥がしたときに電着層表面に残っているマスの数を目視で数えて評価した。例えば剥離試験で100個中15個が残っていた場合を15/100と記載した。
(6)塗膜の引張特性は、以下のようにして評価した。水性ポリウレタン樹脂分散体に造膜助剤としてダワノール(登録商標)DPnBを全体の4.7質量%と、及びシリコン系界面活性剤(ビックケミー社製、BYK-345)を全体の0.5質量%になるように添加して混合したコーティング材料組成物を、PETフィルム上に乾燥膜厚が70μmとなるように塗布した。次いで、室温にて15時間放置後、60℃で2時間、更に120℃で2時間乾燥させて塗膜を作成した。ポリウレタン樹脂フィルムの弾性率は、JIS K 7311に準拠する方法で測定した。塗膜の破断エネルギーは、伸度-応力曲線の伸度ゼロから破断点伸度までの応力を積分して求めた。なお、測定条件は、測定温度23℃、湿度50%、引張速度100mm/分で行った。
(7)原料の数平均分子量、水酸基価はカタログ値である。
[実施例1]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(1)の製造 >
ポリエステルポリオール HS(登録商標)2F-136P(豊国製油製;LOT.GL7832;数平均分子量1079;水酸基価104.0mgKOH/g;ネオペンチルグリコール(以下、「NPG」とも記載。)とテレフタル酸(以下、「TPA」とも記載。)を脱水縮合して得られたポリエステルポリオール、152g)と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG2000、三菱化学製;数平均分子量1955;水酸基価57.4mgKOH/g、38.0g)(以下、「PTMG2000」とも記載。)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.0g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「H12MDI」とも記載。)(181.6g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(以下、「DMM」とも記載。)(102.2g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.0606g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で4時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.1g)を添加・混合したもののうち、362.7gを、強撹拌のもと水(569.6g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(以下、「MPMD」とも記載。)(60.6g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(以下、「AEEA」とも記載。)(8.0g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(1)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量460000、酸価27.0)を得た。
[実施例2]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(2)の製造 >
ポリエステルポリオール HS(登録商標)2F-136P(豊国製油製;LOT.GL7832;数平均分子量1079;水酸基価104.0mgKOH/g;ネオペンチルグリコールとテレフタル酸を脱水縮合して得られたポリエステルポリオール、117.0g)と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG2000、三菱化学製;数平均分子量1955;水酸基価57.4mgKOH/g、78.2g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(27.8g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(175.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(101.1g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.0817g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(20.6g)を添加・混合したもののうち、364.5gを、強撹拌のもと水(572.5g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(56.0g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(8.0g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(2)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量790000、酸価27.0)を得た。
[実施例3]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(3)の製造>
ポリエステルポリオール HS(登録商標)2F-136P(豊国製油製;LOT.GL7832;数平均分子量1079;水酸基価104.0mgKOH/g;ネオペンチルグリコールとテレフタル酸を脱水縮合して得られたポリエステルポリオール、180.2g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(27.5g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(184.7g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(142.3g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.1512g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で4.5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(20.4g)を添加・混合したもののうち、392.4gを、強撹拌のもと水(541.5g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(59.7g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(8.0g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(3)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量690000、酸価27.2)を得た。
[実施例4]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(4)の製造>
ポリエステルポリオール HS(登録商標)2F-136P(豊国製油製;LOT.GL7832;数平均分子量959;水酸基価117.0mgKOH/g;ネオペンチルグリコールとテレフタル酸を脱水縮合して得られたポリエステルポリオール、102.5g)と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG650、三菱化学製;数平均分子量650;水酸基価172.7mgKOH/g、68.0g)(以下、「PTMG650」とも記載。)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.9g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(210.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(105.0g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.1373g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で5.5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.6g)を添加・混合したもののうち、361.6gを、強撹拌のもと水(567.3g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(58.2g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(15.9g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(4)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量750000、酸価27.2)を得た。
[実施例5]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(5)の製造>
ポリエステルポリオール HS(登録商標) 2F-136P(豊国製油製;LOT.GL7832;数平均分子量959;水酸基価117.0mgKOH/g;ネオペンチルグリコールとテレフタル酸を脱水縮合して得られたポリエステルポリオール、114.4g)と、ポリカーボネートポリオール ETERNACOLL(登録商標) UH200(以下、「UH200」とも記載。)(;宇部興産株式会社製;数平均分子量1952;水酸基価57.5mgKOH/g;1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートポリオール、76.0g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.2g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(181.9g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(101.0g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.1821g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で5.0時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.1g)を添加・混合したもののうち、370.2gを、強撹拌のもと水(572.9g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(51.4g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(15.9g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(5)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量670000、酸価27.0)を得た。
[比較例1]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(6)の製造>
ヘキサンジオール(以下、「HD」とも記載。)とテレフタル酸(以下、「TPA」とも記載。)を脱水縮合して得られたポリエステルポリオール(数平均分子量1013;水酸基価110.8mgKOH/g、180.2g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(192.7g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(145.1g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.1174g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で8.0時間加熱したがウレタンか反応が進行しなかった。
[比較例2]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(7)の製造>
ヘキサンジオールとイソフタル酸(以下、「IPA」とも記載。)を脱水縮合して得られたポリエステルポリオール(数平均分子量1000;水酸基価112.2mgKOH/g、180.1g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.7g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(192.4g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(145.0g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.1348g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で4.5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.4g)を添加・混合したもののうち、392.5gを、強撹拌のもと水(539.9g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(62.7g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(8.0g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(7)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量660000、酸価27.5)を得た。
[比較例3]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(8)の製造>
ポリカーボネートジオール ETERNACOLL(登録商標) UM90(1/3)(宇部興産製;数平均分子量873;水酸基価128.5mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で1:3)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、179.9g)(以下、「UM90(1/3)」とも記載。)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(29.5g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(208.5g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(76.0g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.2930g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(21.9g)を添加・混合したもののうち、340.7gを、強撹拌のもと水(587.9g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(65.5g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(8.0g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(8)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量660000、酸価27.5)を得た。
[比較例4]
<水性ポリウレタン樹脂分散体(9)の製造>
ポリカーボネートジオール ETERNACOLL(登録商標) UM90(3/1)(宇部興産製;数平均分子量903;水酸基価124.3mgKOH/g;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール(モル比で3:1)と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、170.0g)(以下、「UM90(3/1)」とも記載。)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(27.5g)と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(194.6g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(、143.0g)中、ジブチル錫ジラウリレート(0.1950g)存在下、窒素雰囲気下で、80~85℃で5時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン(20.5g)を添加・混合したもののうち、390.0gを、強撹拌のもと水(539.0g)の中に加えた。ついで、35質量%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液(63.6g)と、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(8.0g)を加えて、水性ポリウレタン樹脂分散体(9)(ポリウレタン樹脂の重量平均分子量690000、酸価27.0)を得た。
Figure 2023151199000001
Figure 2023151199000002
Figure 2023151199000003
表2の実施例1~5に示されるように、本発明の水性ウレタン樹脂分散体を、塗布・加熱処理して得られる塗膜は、80℃で10分間という低温・短時間乾燥で高いケーニッヒ硬度を発現する。ポリエステルポリオール(A)の他に、その他ポリオール(F)として、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールを使用すると、80℃で10分間という低温・短時間乾燥で高いケーニッヒ硬度を維持したまま、電着塗面への密着性及び破断エネルギーを高めることができる(実施例2,4,5参照)。
分岐鎖を有するポリオールがポリエステルポリオール(A)の成分に含まれていない場合、ポリエステルポリオール(A)の構成成分として、分岐鎖を有しないポリオールを用いると、80℃で10分間乾燥した際の塗膜のケーニッヒ硬度が低い(比較例2参照)。
ポリエステルポリオール(A)をポリカーボネートポリオールに置き換えると、80℃で10分間乾燥させた塗膜のケーニッヒ硬度が低い(比較例3,4参照)。
本発明の水性ウレタン樹脂分散体を含む組成物は、100℃以下の低温・短時間で乾燥した塗膜の硬度が高いことから、フロアコート、プラスチック基材またはゴムへのコート、鋼板処理剤、車両のプライマー層などの低温乾燥化による地球温暖化ガス排出抑制への貢献に期待される。

Claims (20)

  1. ポリウレタン樹脂及び水系媒体を含む水性ポリウレタン樹脂分散体であって、
    前記ポリウレタン樹脂が、ポリオール(Aa)とジカルボン酸(Ab)とを構成成分とするポリエステルポリオール(A)由来の構成単位、及びポリイソシアネート(B)由来の構成単位を有し、
    前記ポリオール(Aa)全量中に、分岐鎖を有するポリオール(Aa1)を80質量%以上含み、
    前記ジカルボン酸(Ab)全量中に、芳香族ジカルボン酸(Ab1)を80質量%以上含む、水性ポリウレタン樹脂分散体。
  2. 前記ポリウレタン樹脂が、酸性基含有ポリオール(C)由来の構成単位及び鎖延長剤(E)由来の構成単位をさらに有する、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  3. 前記ジカルボン酸(Ab)中の芳香族ジカルボン酸における2つのカルボキシル基が、ベンゼン環上のパラ位の関係である、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  4. 前記分岐鎖を有するポリオール(Aa1)が、4級の炭素原子を有するジオールである、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  5. 前記鎖延長剤(E)が、ポリアミンである、請求項2に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  6. 前記ポリウレタン樹脂が、ポリエステルポリオール(A)及び酸性基含有ポリオール以外のポリオール(F)由来の構成単位を有する、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  7. 前記ポリオール(F)がポリエーテルポリオール及び/またはポリカーボネートポリオールである、請求項6に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  8. 前記ポリオール(F)の水酸基数が2である、請求項6に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  9. 前記ポリエステルポリオール(A)と前記ポリオール(F)との質量比が50:50~90:10である、請求項6記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  10. 前記ポリイソシアネート(B)全量中、脂環式ポリイソシアネートを50~100質量%含む、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  11. 前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が100,000以上である、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  12. 前記ポリエステルポリオール(A)の水酸基価が55~140mgKOH/gである、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体。
  13. 請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂分散体を含むコーティング材料組成物。
  14. 請求項13に記載のコーティング材料組成物を塗布後に乾燥させて得られる、塗膜。
  15. 前記コーティング材料組成物を80℃、10分間で乾燥させることで得られる13~15μmの塗膜のケーニッヒ硬度が120超である、請求項14に記載の塗膜。
  16. 請求項13に記載のコーティング材料組成物を20℃~100℃で乾燥させる工程を含む、塗膜の製造方法。
  17. 金属の外装用プライマー又はベースコート用の、請求項13に記載のコーティング材料組成物。
  18. 耐破壊特性材料用の、請求項13に記載のコーティング材料組成物。
  19. フロアコート、プラスチックまたはゴムのコート用の請求項13に記載のコーティング材料組成物。
  20. 請求項13に記載のコーティング材料組成物を含有する、鋼板処理剤。
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