JP7028018B2 - 水性ポリウレタン樹脂分散体及びその使用 - Google Patents

水性ポリウレタン樹脂分散体及びその使用 Download PDF

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Description

本発明は、粒子安定性及び水系洗浄液に対する再溶解性に優れ、低温で加熱処理を行った場合においても、耐溶剤性に優れる複合樹脂水性分散体及びそれを含有する組成物に関する。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、従来の溶剤系ポリウレタンと比較して揮発性有機物を減少できる環境対応材料であることから、溶剤系ポリウレタンからの置き換えが進んでいる材料である。
水性ポリウレタン樹脂分散体は、基材への密着性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐溶剤性等に優れていることから、塗料、インク、接着剤、各種コーティング剤として、紙、プラスチックス、フィルム、金属、ゴム、エラストマー、繊維製品等に幅広く使用される。
これらの水性ポリウレタン樹脂分散体をバインダーとして使用した塗料は、塗布対象等に応じ様々な手法で塗装される。一般的に、刷毛塗り、ローラー塗り、エアスプレイ塗装、エアレススプレイ塗装、ロールコーター塗装、流し塗り、ディッピング塗装、電着塗装、液体静電塗装等の塗装方法が用いられる。
自動車外装用途では、車体を着色する上塗り塗料を塗装する前に、車体表面を均一に均し、上塗り塗装の仕上がりを向上させるために、下塗り塗装及び中塗り塗装が行われ、中塗り塗装において水性ポリウレタン樹脂分散体が使用されている。中塗り塗装においては、被塗装物の形状が平面でない場合が多いこと、仕上がり外観が重視されること等から、エアスプレイ塗装方式や、これを発展させたベル塗装方式、静電塗装方式による塗装が一般的である。しかしながら、水性塗料で上記塗装方式を用いる場合、溶剤系塗料と比較して、塗装ラインにおいて付着した塗料を再溶解させ、洗浄することが困難であり、ノズルの閉塞や、高固形分化した塗料による外観不良を起こす場合がある。
そのため、このような用途で、水性ポリウレタン樹脂分散体を含有する塗料の皮膜の再溶解性を上げるための様々な工夫が施されている。例えば、特許文献1では、ポリウレタン樹脂において、水酸基を有する有機ジアミンを含む有機ジアミンを鎖延長剤として、更にアルカノールアミンを反応停止剤として使用し、更にポリウレタン樹脂の水酸基価と、有機ジアミンとアルカノールアミンのモル比を制御することで、水等に対する再溶解性を付与している。
また、特許文献2では、80~180℃で解離するイソシアナト基のブロック化剤を反応させて末端イソシアナト基をブロック化したポリウレタンプレポリマーと、鎖延長剤とを反応させて得られるポリウレタン樹脂を用い、かつ、ウレタン結合とウレア結合の含有割合等を制御した水性ポリウレタン樹脂分散体とすることにより、塗膜の水への再分散性を付与するとともに、加熱処理により耐水性及び耐溶剤性に優れた塗膜が得られることが開示されている。
更に、特許文献3では、水分散型ポリウレタン組成物、水分散型アクリル樹脂、及び硬化剤を含有する塗料組成物とすることで、塗装ガン等の良好な洗浄性を実現している。
特開2013-249401号公報 国際公開第2010/098316号 国際公開第2005/075587号
しかしながら、特許文献1のポリウレタン樹脂は、耐溶剤性に劣る等、塗膜化した際の膜物性が十分ではなかった。
特許文献2では、ブロック化剤の解離温度を下回る温度での加熱処理では架橋が進行せず、十分な膜物性が得られない問題があり、例えば加熱処理に高温が付与できない樹脂基材への適用においては性能が不十分となる。
特許文献3の実施例に開示された水分散型ポリウレタン組成物を含有する塗料組成物は、塗装ガン等の良好な洗浄性を達成しているが、水酸基を含有する水分散型アクリル樹脂を併用しており、アクリル樹脂を分散させるために使用される乳化剤等の影響で、塗膜化した際の耐水性、耐溶剤性等が低下する問題があった。
それゆえ、本発明は、粒子安定性及び水系洗浄液に対する再溶解性に優れ、低温で加熱処理を行った場合においても、耐溶剤性に優れる複合樹脂水性分散体及びそれを含有する組成物を提供することを課題とする。
本発明は前記の課題を解決するためになされた発明であり、具体的には、以下の構成を有する。
[1]ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが水性媒体中に分散されてなる複合樹脂水性分散体において、前記ポリウレタン樹脂(A)が、(a1)ポリイソシアネート由来の構造と、(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造と、(a3)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造とを有する、複合樹脂水性分散体。
[2]前記(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造が、3,5-ジアミノベンジルアルコール、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、2、2’-(エチレンビスイミノ)ビスエタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(2-アミノエチル)エチレンジアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エタノール、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ-2-プロパノール、N、N-ビス(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N1、N4-ビス(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N1-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、N4-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、及び2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールからなる群より選ばれる1種以上の水酸基含有ポリアミン由来の構造である、[1]に記載の複合樹脂水性分散体。
[3]前記(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造が、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール由来の構造である、[1]に記載の複合樹脂水性分散体。
[4]前記(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造が、ポリエーテルポリオ―ル、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオール由来の構造である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体。
[5]前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、200,000以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体。
[6]前記アクリル系重合体(B)の酸価が、10mgKOH/g未満である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体。
[7]前記アクリル系重合体(B)の水酸基価が、40mgKOH/g未満である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体。
[8]前記アクリル系重合体(B)が、前記ポリウレタン樹脂(A)に内包されて水性媒体中に分散されている、[1]~[7]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体。
[9]複合樹脂水性分散体が、自己乳化型である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体。
[10][1]~[9]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体を含有する、塗料組成物。
[11][1]~[9]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体を含有する、コーティング剤組成物。
[12][1]~[9]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体を含有する、自動車外装中塗り用組成物。
[13][1]~[9]のいずれか1つに記載の複合樹脂水性分散体を含む組成物を乾燥及び硬化させて得られる複合樹脂フィルム。
本発明により、粒子安定性及び水系洗浄液に対する再溶解性に優れ、低温で加熱処理を行った場合においても、耐溶剤性に優れる複合樹脂水性分散体及びそれを含有する組成物が提供される。
以下、本発明の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明のような高分子化合物は、複数種類の原料化合物の反応により多数の構造を有する生成物が得られるものである。そのため、高分子化合物は、包含される多数の構造を一般式で記載することができてもその構造により一義的に示されない。また、その物性について、機器分析等により直接的に測定し、特定することや既存の化合物と区別することは困難である。よって、本発明においては「水性ポリウレタン樹脂分散体」をはじめとした高分子化合物を、必要に応じ製造方法により特定することがある。
[複合樹脂水性分散体]
複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが水性媒体中に分散されてなり、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、(a1)ポリイソシアネート由来の構造と、(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造と、(a3)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造とを有する。ポリウレタン樹脂(A)は、更に、(a5)鎖延長剤由来の構造を含むことができる。
複合樹脂水性分散体を水に分散させる方法については特に限定されないが、加熱処理後の塗膜の耐溶剤性が良好である点で、低分子量の乳化剤成分を使用しない、自己乳化型とすることが好ましい。乳化剤成分を使用しないことにより、塗膜の耐水性、耐薬品性及び塗膜強度等が向上するため、加熱処理後の耐溶剤性が良好になるものと考えられる。
本発明の「複合樹脂水性分散体」においては、ポリウレタン樹脂(A)がアクリル系重合体(B)を内包する形で分散されていてもよく、それぞれ別々の粒子として水性媒体中に分散されていてもよい。ただし、本願発明においては、アクリル系重合体(B)の酸価・水酸基価がより低く、疎水的である方が好ましく、更に前述のように乳化剤を使用しないことが好ましいため、アクリル系重合体(B)単独で分散させることが困難となる場合がある。そのため、分散体の貯蔵安定性を確保する点から、複合樹脂水性分散体中に含まれる複合樹脂粒子の少なくとも一部は、ポリウレタン樹脂(A)がアクリル系重合体(B)を内包する形で分散されていることが好ましい。前記複合樹脂粒子において、ポリウレタン樹脂(A)がアクリル系重合体(B)を内包する形で分散されている複合樹脂粒子の割合は、前記複合樹脂粒子の全固形分に対し30質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは70質量%以上である。
ここで、「内包」とは、ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが完全に分離・独立して水性媒体中に分散している状態以外を広く意味する。具体的には、アクリル系重合体(B)の一部又はほとんどがポリウレタン樹脂(A)に包含されている状態を意味し、より具体的には、複合樹脂水性分散体に分散している複合樹脂粒子において、ポリウレタン樹脂(A)の中にアクリル系重合体(B)の一部又はほとんどが存在していることを意味する。このとき、複合樹脂粒子中のアクリル系重合体(B)の存在位置は、特に限定されず、中心付近又は中心付近からずれた任意の位置に、単一又は複数に分離して存在していても構わない。
更に、本発明では、前述のように、酸価及び/又は水酸基価が低減された、より疎水的なアクリル系重合体(B)との複合樹脂水性分散体とすることで、ポリウレタン樹脂(A)単独の水性分散体、及びポリウレタン樹脂(A)と酸価が高いアクリル系重合体との複合樹脂水性分散体と比較して、ウレタン会合型の増粘剤を使用した場合の粘度経時変化が軽微であり、塗料化した際の貯蔵安定性が向上するため、好ましい。
<<ポリウレタン樹脂(A)>>
本発明のポリウレタン樹脂(A)は、(a1)ポリイソシアネート由来の構造と、(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造と、(a3)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造とを有する。更に、任意の構造として、(a5)鎖延長剤由来の構造及び/又は(a3)酸性基含有ポリオールの中和剤の部分が対イオンとして存在していてもよい。
(a1)ポリイソシアネート由来の構造とは、(a1)ポリイソシアネートの分子構造のうち、ポリウレタン化反応に寄与する基以外の部分構造を意味する。(a1)ポリイソシアネート由来の構造は、ポリイソシネートによってポリウレタン樹脂(A)に導入される。(a2)~(a3)についても同様である。
また、(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造とは、水酸基含有ポリアミンの分子構造のうち、ウレア結合の生成反応に寄与する基以外の部分構造を意味する。(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造は、水酸基含有ポリアミンによってポリウレタン樹脂(A)に導入される。(a5)についても同様である。
<(a1)ポリイソシアネート由来の構造>
ポリイソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、1分子当たりイソシアナト基を2個有するものを使用することができるが、ポリウレタン樹脂(A)又はその合成中間体であるポリウレタンプレポリマーがゲル化をしない範囲で、トリフェニルメタントリイソシアネートのような、1分子当たりイソシアナト基を3個以上有するポリイソシアネートも使用することができる。
ポリイソシアネートの中でも、塗膜の耐久性が上がる点で、脂環式ポリイソシアネートが好ましく、反応の制御が行いやすいという点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)が特に好ましい。
ポリイソシアネートは、複数種を組み合わせてもよい。
ポリウレタン樹脂(A)において、ポリイソシアネートの配合量は、ポリウレタン樹脂(A)の合成中間体であるポリウレタンプレポリマーが遊離イソシアナト基を含有するように選択される。
<(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造>
酸性基を含まないポリオールには、高分子量ポリオール又は低分子量ポリオールを用いることができる。酸性基を含まないポリオールは、分子中に酸性基を有しておらず、1分子中に2つ以上の水酸基を有していれば、その種類に特に制限はない。なお、酸性基を含まないポリオールとは、後述の酸性基含有ポリオール以外のポリオールである。
高分子量ポリオールは、特に制限されないが、数平均分子量が400~8,000であることが好ましい。数平均分子量がこの範囲であれば、適切な粘度及び良好な取り扱い性が得られる。また、ソフトセグメントとしての性能の確保が容易である。更に、ポリイソシアネートと酸性基を含まないポリオールとの反応性が充分なものとなり、(a1)ポリイソシアネート由来の構造と、(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造と、(a3)酸性基含有ポリオール由来の構造とを有するポリウレタンプレポリマーの製造を効率的に行うこともできる。高分子量ポリオールは、数平均分子量が400~4,000であることがより好ましい。
本明細書において、数平均分子量は、JIS K 1557-1に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1,000×価数)/水酸基価 [mgKOH/g]で算出する。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。水性ポリウレタン樹脂分散体、及び該分散体から得られる塗膜の耐光性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性及び耐油性の点から、ポリカーボネートポリオールが好ましい。また、得られる塗膜の密着性がより優れるという点から、ポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリカーボネートポリオールは、分子内に少なくとも1つのカーボネート結合(-O-(C=O)-O-)及び2つ以上の水酸基を有する化合物である。ポリカーボネートポリオールは、通常、1種以上のポリオールモノマーと、炭酸エステル又はホスゲンとを反応させることにより得られる。製造が容易な点及び末端塩素化物の副生成がない点から、1種以上のポリオールモノマーと、1種以上の炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールが好ましい。
本発明でいうポリカーボネートポリオールは、その分子中に、ポリカーボネートポリオールの特性を損なわない範囲で、1分子中の平均のカーボネート結合の数と同じ又はそれ以下の数のエーテル結合やエステル結合を含有していてもよい。
ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリオールモノマー、脂環構造を有するポリオールモノマー、芳香族ポリオールモノマー、ポリエステルポリオールモノマー、ポリエーテルポリオールモノマーが挙げられる。
脂肪族ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール等の分岐鎖状脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の多価アルコールが挙げられる。
脂環構造を有するポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,7-ノルボルナンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン等の主鎖に脂環式構造を有するジオールが挙げられる。
芳香族ポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,2-ベンゼンジメタノール、4,4’-ビフェニルジメタノール、2,3-ナフタレンジメタノールが挙げられる。
ポリエステルポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、6-ヒドロキシカプロン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオール、アジピン酸とヘキサンジオールとのポリエステルポリオール等のジカルボン酸とジオールとのポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。
炭酸エステルとしては、特に制限されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の脂肪族炭酸エステル、ジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸エステル、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステルが挙げられる。その他に、ポリカーボネートポリオールを生成することができるホスゲン等も使用できる。中でも、ポリカーボネートポリオールの製造のしやすさから、脂肪族炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
ポリオールモノマー及び炭酸エステルからポリカーボネートポリオールを製造する方法としては、例えば、反応器中に炭酸エステルと、この炭酸エステルのモル数に対して過剰のモル数のポリオールモノマーとを加え、温度160~200℃、圧力50mmHg程度で5~6時間反応させた後、更に数mmHg以下の圧力において200~220℃で数時間反応させる方法が挙げられる。上記反応においては副生するアルコールを系外に抜き出しながら反応させることが好ましい。その際、炭酸エステルが副生するアルコールと共沸することにより系外へ抜け出る場合には、過剰量の炭酸エステルを加えてもよい。また、上記反応において、チタニウムテトラブトキシド等の触媒を使用してもよい。
高分子量ポリオールとして使用されるポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールとしては、それぞれポリエステルポリオールモノマー及びポリエーテルポリオールモノマーで例示した化合物を使用することができる。
また高分子量ポリオールには、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造の容易さから、高分子量ジオールを用いることが好ましい。高分子量ジオールとしては、例えば、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール等が挙げられる。水性ポリウレタン樹脂分散体、及び該分散体から得られる塗膜の耐光性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性及び耐油性の点から、ポリカーボネートジオールが好ましい。得られる塗膜の密着性がより優れるという点から、ポリエーテルジオールが好ましい。
ポリカーボネートジオールの中でも、その原料であるポリオールモノマーは、脂肪族ジオール及び/又は脂環族ジオールであることが好ましく、得られるポリウレタン樹脂(A)の合成中間体であるポリウレタンプレポリマーの粘度が低く、取り扱いが容易な点、水性媒体への分散性が良好な点、塗膜作成時の乾燥性が高い点等から、ポリオールモノマーは、脂環構造を有さない脂肪族ジオールであることがより好ましい。
ポリカーボネートジオールとしては、特に制限されないが、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,4-ブタンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,7-ヘプタンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,8-オクタンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,9-ノナンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,4-ブタンジオールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオールが挙げられるが、好ましくは2-メチル-1,3-プロパンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,4-ブタンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,4-ブタンジオールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオールであり、より好ましくは1,6-ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオールの混合物と炭酸エステルとを反応させて得られたポリカーボネートジオールである。
なお、ポリカーボネートジオールは複数種を組み合わせてもよい。
ポリエステルジオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリへキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール、1,6-へキサンジオールとダイマー酸の重縮合物等が挙げられる。
また、ポリエステルポリオールの機能を損なわない範囲で、エーテル結合及び/又はカーボネート結合を含むポリエステルポリオールを用いてもよい。
ポリエーテルジオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、エチレンオキシドとブチレンオキシドとのランダム共重合体やブロック共重合体等が挙げられるが、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールであり、より好ましくはポリテトラメチレングリコールである。
また、ポリエーテルポリオールの特性を損なわない範囲で、エステル結合及び/又はカーボネート結合を含むポリエーテルポリオールを用いてもよい。
低分子量ポリオールとしては、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造の容易さから、低分子量ジオールを用いることもできる。低分子量ジオールとしては、特に制限されないが、例えば、数平均分子量が60以上400未満のものが挙げられる。低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の炭素数2~9の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン等の炭素数6~12の環式構造を有するジオールを挙げることができる。また、前記低分子量ポリオールとして、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコールを用いることもできる。
酸性基を含まないポリオールは、複数種を組み合わせてもよい。
<(a3)酸性基含有ポリオール由来の構造>
酸性基含有ポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基(フェノール性水酸基は除く)と、1個以上の酸性基を含有するものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等が挙げられる。酸性基含有ポリオールとして、1分子中に2個の水酸基と1個のカルボキシ基を有する化合物が好ましい。
酸性基含有ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、N,N-ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N-ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6-ジヒドロキシ-2-トルエンスルホン酸が挙げられる。中でも入手の容易さの観点から、2個のメチロール基を含む炭素数4~12のジメチルロールアルカン酸が好ましく、2,2-ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。酸性基含有ポリオールは、複数種を組み合わせてもよい。
本発明において、酸性基を含まないポリオールと、酸性基含有ポリオールとの合計の水酸基当量数は、120~1,000であることが好ましい。水酸基当量数が、この範囲であれば、乾燥性、増粘性が上がりやすく、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造が容易であり、硬度の点で優れた塗膜が得られやすい。水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性、乾燥性と塗布して得られる塗膜の硬度の観点から、水酸基当量数は、好ましくは200~1,000、より好ましくは400~800、特に好ましくは600~700である。
酸性基を含まないポリオールと酸性基含有ポリオールとの合計の水酸基当量数は、以下の式(1)及び(2)で算出することができる。
各ポリオール化合物の水酸基当量数=各ポリオールの分子量/各ポリオールの水酸基の数(フェノール性水酸基は除く)・・・(1)
ポリオールの合計の水酸基当量数=M/(酸性基を含まないポリオールと酸性基含有ポリオールの合計モル数)・・・(2)
ポリウレタン樹脂の場合、式(2)において、Mは、[〔酸性基を含まないポリオールの水酸基当量数×酸性基を含まないポリオールのモル数〕+〔酸性基含有ポリオールの水酸基当量数×酸性基含有ポリオールのモル数〕]を示す。なお、酸性基を含まないポリオール及び/又は酸性基含有ポリオールが2種以上から構成される場合、上記Mは、ポリオール毎に〔水酸基当量数×モル数〕の値を算出し、該値を全てのポリオールについて合計することにより算出する。
ポリウレタン樹脂(A)において、ポリイソシアネート、酸性基を含まないポリオール、酸性基含有ポリオール、水酸基含有ポリアミン及び場合による鎖延長剤の全量を100質量部とした場合に、前記酸性基を含まないポリオールの割合は、好ましくは30~80質量部、より好ましくは40~75質量部、特に好ましくは50~70質量部である。同様に、前記酸性基含有ポリオールの割合は、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは3~7質量部である。
前記酸性基を含まないポリオールの割合を30質量部以上とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性をより高くすることができる傾向があり、80質量部以下とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体の貯蔵安定性が向上する傾向がある。
前記酸性基含有ポリオールの割合を0.5質量部以上とすることで、ポリウレタン樹脂(A)の水性媒体中への分散性が良好になる傾向があり、10質量部以下とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性がより高くなる傾向がある。また、水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た塗膜の耐水性を高くすることができ、得られるフィルムの柔軟性も良好になる傾向がある。
酸性基含有ポリオールは、複数種を組み合わせてもよい。
<(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造>
ポリウレタン樹脂(A)に水酸基を付与し、その分子量を増大させることを目的として、水酸基含有ポリアミンを配合する。水酸基含有ポリアミンは、1分子中に1個以上の水酸基(フェノール性水酸基は除く)と、アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上含有するものである。このような化合物としては、3級アミンを除くアルカノールポリアミン類が好ましく、具体的には、3,5-ジアミノベンジルアルコールなどの芳香族アルカノールジアミン類、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、2、2’-(エチレンビスイミノ)ビスエタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(2-アミノエチル)エチレンジアミン、N-(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エタノール、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ-2-プロパノール、N、N-ビス(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N1、N4-ビス(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N1-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、N4-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)トリエチレンテトラアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール等の脂肪族アルカノールポリアミン類が挙げられる。中でも、再溶解性及び耐溶剤性の観点から、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールが好ましい。
水酸基含有ポリアミンは、複数種を組み合わせてもよく、(a5)鎖延長剤由来の構造を有する鎖延長剤と組み合わせても良い。
<(a5)鎖延長剤由来の構造>
本発明では、分子量を増大させることを目的として、鎖延長剤を使用してもよい。鎖延長剤は、酸性基を含まないポリオール、酸性基含有ポリオール及び水酸基含有ポリアミン以外の化合物である。鎖延長剤は、1分子中に2つ以上の、イソシアナト基に対して反応性を有する官能基を有する化合物が挙げられる。例えば、エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,4-ヘキサメチレンジアミン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、水が挙げられる。
水酸基含有ポリアミン及び鎖延長剤の配合量は、ポリウレタン樹脂(A)の合成中間体であるポリウレタンプレポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましく、より好ましくはイソシアナト基の0.7~0.99当量である。イソシアナト基の当量以下の量で、水酸基含有ポリアミン及び鎖延長剤を添加することで、鎖延長されたポリウレタン樹脂(A)の分子量を低下させず、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体を塗布して得た塗膜の強度を高くすることができる傾向がある。
水酸基含有ポリアミンの配合量は、ポリイソシアネート、酸性基を含まないポリオール及び酸性基含有ポリオールの全固形分に対し、0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0~7.0質量%であり、更に好ましくは2.0~5.0質量%である。
鎖延長剤の配合量は、ポリイソシアネート、酸性基を含まないポリオール及び酸性基含有ポリオールの全固形分に対し、0~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0~5.0質量%である。
鎖延長剤は、複数種を組み合わせてもよい。
<<アクリル系重合体(B)>>
アクリル系重合体(B)は、分子内に、1又は複数種の「(メタ)アクリロイル基」を有する「(メタ)アクリルモノマー」由来の重合単位を有する化合物である。アクリル系重合体(B)は、通常、1種以上の(メタ)アクリルモノマーを重合させることにより得られる。
ここで、(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリル酸から水酸基を除いた原子団を指し、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の総称である。
なお、アクリル系重合体(B)は、本発明の目的を損なわない範囲で、「(メタ)アクリロイル基を有さない重合性モノマー」(以下、重合性モノマーと称する。)由来の重合単位を含んでいてもよく、(メタ)アクリルモノマーと重合性モノマーとが共重合していてもよい。
<(メタ)アクリルモノマー>
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、
2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコールーテトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子の1,6-ヘキサンジオールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA-212」)、2分子のエポキシ(メタ)アクリル酸と1分子のネオペンチルグリコールジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のビスフェノールAジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA-250」)、2分子の(メタ)アクリル酸とビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジグリシジル体との反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のフタル酸ジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DA-721」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリエチレングリコールジグリシジルとの反応生成物(例えばナガセケムテック社製「DM-811」、「DM-832」及び「DM-851」)、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリプロピレングリコールジグリシジルとの反応生成物等の(メタ)アクリル酸とポリオールジグリシジルとの反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の付加物等のジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(6モル)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(BASF社製Laromer(登録商標) LR8863)等のアルキレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(4モル)変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(ダイセル・サイテック社、Ebecryl 40)等のアルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリル酸エステル;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリル酸エステル;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリル酸エステルが使用される。
なお、これらの(メタ)アクリルモノマーは、複数種を組み合わせてもよい。
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーを使用することもできる。水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
前記「重合性モノマー」としては、例えば、プロピレン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン等の不飽和炭化水素化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の不飽和基を有する芳香族化合物;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化不飽和炭化水素化合物;酢酸ビニル、酢酸アリル、安息香酸ビニル等のカルボン酸不飽和エステル類;N-ビニルピロリドン等の不飽和基を有するアミド類;アリルアルコール等の水酸基含有不飽和炭化水素化合物が挙げられる。
なお、これらの重合性モノマーは、複数種を組み合わせても良い。
前記(メタ)アクリルモノマーとして、酸基を有する(メタ)アクリル酸や、水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等を用いても良いが、得られるアクリル系重合体(B)の酸価が10mgKOH/g未満、かつ水酸基価が40mgKOH/g未満となるようにすることが好ましい。アクリル系重合体(B)の酸価及び水酸基価が上記範囲内であると、得られる塗膜の耐水性及びウレタン会合型増粘剤を用いた場合の粒子安定性が向上しやすくなる。アクリル系重合体(B)の酸価は、より好ましくは5.0mgKOH/g未満であり、更に好ましくは0.5mgKOH/g未満である。アクリル系重合体(B)の水酸基価は、より好ましくは10mgKOH/g未満であり、更に好ましくは0.5mgKOH/g未満である。アクリル系重合体(B)の酸価及び水酸基価は小さいほど好ましく、その下限は特に限定されないが、いずれも0mgKOH/g以上である。
<アクリル系重合体(B)のガラス転移温度>
アクリル系重合体(B)の「ガラス転移温度(Tg)」は、下記のFoxの式に従い、アクリル系重合体の(メタ)アクリルモノマーの質量比率により算出することができる。
[Foxの式]
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)
(式中、Wmは各(メタ)アクリルモノマーの質量比率を、Tgmは各(メタ)アクリルモノマーのガラス転移温度を、mは(メタ)アクリルモノマーの種類数を示す。)
<<水性媒体>>
本発明の複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)、アクリル系重合体(B)及び水性媒体を含むものである。水性媒体としては、水、水と有機溶剤との混合物等が挙げられる。
前記水としては、例えば、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられる。中でも入手の容易さや塩の影響で粒子が不安定になること等を考慮して、イオン交換水を用いることが好ましい。
また前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル等のエーテル溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤、出光興産社製「エクアミド」に代表されるβ-アルコキシプロピオンアミド等のアミド溶剤等が挙げられる。
前記水性媒体は、複合樹脂水性分散体全量中に、10質量%~90質量%の範囲で含まれることが好ましく、20質量%~80質量%の範囲で含まれることがより好ましい。また、水性媒体中の前記有機溶媒の量としては、好ましくは0~20質量%である。
<<水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法>>
次に、水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法について説明する。水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリウレタン樹脂(A)が水性媒体中に分散されている。水性ポリウレタン樹脂分散体の製造方法は、
前記ポリイソシアネートと、酸性基を含まないポリオールと、酸性基含有ポリオールとを反応させてポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)、
前記ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和する工程(β)、
前記ポリウレタンプレポリマーを水性媒体中に分散させる工程(γ)、
前記ポリウレタンプレポリマーと、前記ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する水酸基含有ポリアミン、及び場合によって鎖延長剤とを反応させる工程(δ)を含む。
<ポリウレタンプレポリマー>
前記工程(α)において、ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート、酸性基を含まないポリオール及び酸性基含有ポリオールを反応させて得られる。したがって、ポリウレタンプレポリマーは、(a1)ポリイソシアネート由来の構造、(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造及び(a3)酸性基含有ポリオ―ル由来の構造を有する。
ポリウレタンプレポリマーの製造方法としては、特に制限されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。
ウレタン化触媒存在下又は不存在下で、ポリイソシアネートと、酸性基を含まないポリオールと、酸性基含有ポリオールとを混合して、ポリウレタン化反応を経由して末端イソシアナト基の一部がブロック化されたポリウレタンプレポリマーを合成する方法である。酸性基を含まないポリオール及び酸性基含有ポリオールを順不同でポリイソシアネートと反応させてもよいし、同時にポリイソシアネートと反応させてもよい。場合によっては、ブロック化剤やヒドロキシアルカン酸を用いて末端封止を行っても良い。
ウレタン化触媒は、特に制限されず、スズ系触媒(トリメチルスズラウレート、ジブチルスズジラウレート等)、鉛系触媒(オクチル酸鉛等)等の金属と有機及び無機酸の塩、有機金属誘導体、アミン系触媒(トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等)、ジアザビシクロウンデセン系触媒等が挙げられる。ウレタン化触媒は、反応性の観点から、ジブチルスズジラウレートが好ましい。ブロック化触媒は、特に制限されず、ジブチルスズジラウレート等の金属と有機及び無機酸の塩、ナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒が挙げられる。ポリウレタン化反応の条件及びブロック化反応の条件は、特に制限されず、用いる成分の反応性等に応じて適宜選択できる。例えば、ポリウレタン化反応の条件は、50~100℃の温度で、3~15時間とすることができる。ブロック化反応の条件は、50~100℃の温度で、1~5時間とすることができる。ポリウレタン化反応及びブロック化反応は、それぞれ独立に行ってもよく、連続して行ってもよい。
ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも1以上のイソシアナト基を有する。ポリイソシアネート、酸性基を含まないポリオール及び酸性基含有ポリオールの使用量は、遊離イソシアナト基を含有するように選択される。
ポリウレタンプレポリマーを得る場合において、酸性基を含まないポリオール及び酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数に対する、ポリイソシアネートのイソシアナト基のモル数の比は、1.05~2.5が好ましい。前記酸性基を含まないポリオール及び前記酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数に対する、前記ポリイソシアネートのイソシアナト基のモル数の比を1.05以上とすることで、分子末端にイソシアナト基を有しないポリウレタンプレポリマーの量が少なくなり、水酸基含有ポリアミン及び場合による鎖延長剤と反応しない分子が少なくなるため、水性ポリウレタン樹脂分散体を乾燥した後に、フィルムを形成しやすくなる。また、前記酸性基を含まないポリオール及び前記酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数に対する、前記ポリイソシアネートのイソシアナト基のモル数の比を2.5以下とすることで、反応系内に残る未反応の前記ポリイソシアネートの量が少なくなり、ポリウレタンプレポリマー中のイソシアナト基と水酸基含有ポリアミン及び場合による鎖延長剤が効率的に反応し、水との反応による望まない分子伸長を起こしにくくなるため、水性ポリウレタン樹脂分散体の調製を適切に行うことができ、貯蔵安定性も向上する。また、水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性が高くなり、得られるポリウレタンフィルムの弾性率が低くなる傾向がある。前記酸性基を含まないポリオール及び前記酸性基含有ポリオールの全水酸基のモル数に対する、前記ポリイソシアネートのイソシアナト基のモル数の比は、好ましくは1.1~2.0、特に好ましくは1.3~1.8である。
ポリウレタンプレポリマーは、ポリウレタンプレポリマーの固形分基準で、遊離イソシアナト基の含有割合が0.5~5.0質量%となる範囲内で選択されると、水に対する分散性が良好となる点で好ましい。
ポリウレタンプレポリマーの酸価(AV)は、4~40mgKOH/gが好ましく、より好ましくは6~32mgKOH/gであり、特に好ましくは8~29mgKOH/gである。ポリウレタンプレポリマーの酸価を4mgKOH/g以上とすることで、水性媒体への分散性、貯蔵安定性を良くすることができる傾向がある。また、ポリウレタンプレポリマーの酸価を40mgKOH/g以下とすることで、ポリウレタン樹脂の塗膜の耐水性を高め、得られるフィルムの柔軟性を高くすることができる傾向がある。また、塗膜作製時の乾燥性を上げることができる傾向がある。
なお、「ポリウレタンプレポリマーの酸価」とは、ポリウレタンプレポリマーを製造するにあたって用いられる溶媒及びポリウレタンプレポリマーを水性媒体中に分散させるための中和剤を除く、いわゆる固形分の酸価である。
具体的には、ポリウレタンプレポリマーの酸価は、下記式(3)によって導き出すことができる。
〔ポリウレタンプレポリマーの酸価〕=〔(酸性基含有ポリオールのミリモル数)×(酸性基含有ポリオール1分子中の酸性基の数)+(ヒドロキシアルカン酸のミリモル数)×(ヒドロキシアルカン酸1分子中の酸性基の数)〕×56.1/〔ポリイソシアネート、酸性基含有ポリオール、ヒドロキシアルカン酸、ブロック化剤、及び酸性基を含まないポリオールの合計の質量〕・・・(3)
ポリウレタンプレポリマーを得る工程(α)は、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、大気雰囲気下で行ってもよい。ポリウレタンプレポリマーを調製する方法は、先に記載したとおりである。
前記ポリウレタンプレポリマーの酸性基を中和する工程(β)において、中和剤として、当業者に公知の塩基を、特に制限されず使用することができる。中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール、ジエチルエタノールアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ、アンモニアが挙げられる。好ましくは有機アミン類を用いることができ、より好ましくは3級アミンを用いることができる。分散安定性が向上する点で、トリエチルアミンがより好ましい。ここで、ポリウレタンプレポリマーの酸性基とは、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等をいう。
前記ポリウレタンプレポリマーを水性媒体中に分散させる工程(γ)において、水性媒体中にポリウレタンプレポリマーを分散させる方法としては特に制限されないが、例えば、ホモミキサーやホモジナイザー等によって撹拌されている水性媒体中に、ポリウレタンプレポリマーを添加する方法、ホモミキサーやホモジナイザー等によって撹拌されているポリウレタンプレポリマーに水性媒体を添加する方法等がある。
前記ポリウレタンプレポリマーと、前記ポリウレタンプレポリマーのイソシアナト基と反応性を有する水酸基含有ポリアミン、及び場合によって鎖延長剤とを反応させる工程(δ)は、ポリウレタンプレポリマー同士を架橋し、ポリウレタン樹脂(A)の分子量を目的の範囲に調整する工程である。前記工程(δ)において、鎖延長剤の代わりに、水酸基含有ポリアミンとともに、酸性基を含まないポリオール及び/又は酸性基含有ポリオールを使用することもできる。これらのポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類が挙げられる。
前記工程(δ)は冷却下でゆっくりと行ってもよく、また場合によっては60℃以下の加熱条件下で反応を促進して行ってもよい。冷却下における反応時間は、例えば0.5~24時間とすることができ、60℃以下の加熱条件下における反応時間は、例えば0.1~6時間とすることができる。
前記工程(δ)において、水酸基含有ポリアミンは、前記ポリウレタンプレポリマーに対し、60℃以下で反応させることが好ましい。具体的には、ポリウレタンプレポリマーを水に分散させた後、60℃以下で反応させることが好ましい。60℃を超える温度で反応を行った場合、水酸基含有ポリアミンの水酸基がイソシアナト基と反応し、意図した量の水酸基を付与できない場合がある。
水酸基含有ポリアミン及び鎖延長剤の添加量は、得られるポリウレタンプレポリマー中の鎖延長起点となるイソシアナト基の当量以下であることが好ましく、より好ましくはイソシアナト基の0.7~0.99当量である。イソシアナト基の当量以下の量で、水酸基含有ポリアミン及び鎖延長剤を添加することで、鎖延長されたポリウレタン樹脂(A)の分子量を低下させず、得られた水性ポリウレタン樹脂分散体を塗布して得た塗膜の強度を高くすることができる傾向がある。水酸基含有ポリアミン及び鎖延長剤は、ポリウレタンプレポリマーの水性媒体への分散後に添加してもよく、分散中に添加してもよい。鎖延長は水によっても行うことができる。この場合は分散媒としての水が鎖延長剤を兼ねることになる。
水性ポリウレタン樹脂分散体の製造において、前記工程(β)と前記工程(δ)とは、どちらを先に行ってもよいし、同時に行うこともできる。前記工程(β)と、前記工程(γ)は、同時に行ってもよい。更に、前記工程(β)、前記工程(γ)及び前記工程(δ)は、同時に行ってもよい。
<<水性ポリウレタン樹脂分散体>>
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)の割合は、5~60質量%が好ましく、より好ましくは15~50質量%である。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、200,000~10,000,000であることが好ましい。より好ましくは、300,000~5,000,000であり、更に好ましくは、400,000~1,000,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を使用することができる。重量平均分子量を200,000以上とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥により、良好なフィルムを得ることができる傾向がある。重量平均分子量を10,000,000以下とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体の乾燥性をより高くすることができる傾向がある。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)において、ウレタン結合及びウレア結合の含有割合は、固形分基準で7~18質量%であることが好ましく、8~15質量%であることが特に好ましい。
前記ウレタン結合及びウレア結合の含有割合を7質量%以上とすることで、塗膜乾燥後の塗膜表面のベタツキを低減できる場合がある。また、前記ウレタン結合及びウレア結合の含有割合を18質量%以下とすることで、水性ポリウレタン樹脂分散体から形成される塗膜と基材の密着性が高くなる場合がある。
ウレタン結合及びウレア結合の含有割合は、ポリイソシアネート、酸性基を含まないポリオール、酸性基含有ポリオール及び水酸基含有ポリアミン、並びに場合によってブロック化剤及び鎖延長剤の、それぞれの分子量、1分子中における水酸基、イソシアナト基及びアミノ基の数並びに水性ポリウレタン樹脂分散体における固形分基準での各原料の使用割合によって制御することができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体から形成される塗膜と基材の密着性の観点から、水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)において、カーボネート結合の含有割合は、固形分基準で0質量%以上30質量%未満であることが好ましく、0質量%以上15質量%未満であることがより好ましく、0質量%以上5質量%未満であることが特に好ましい。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)において、ブロック化剤でブロック化されているイソシアナト基の含有割合は、固形分基準かつイソシアナト基換算で0~5.0質量%であることが好ましく、0.2~3.0質量%であることがより好ましく、0.5~2.0質量%であることが特に好ましい。
前記ブロック化されているイソシアナト基の含有割合を0.2質量%以上とすることで、得られる塗膜の電着塗装板表面への密着性が上がる傾向がある。また、前記ブロック化されているイソシアナト基の含有割合を3.0質量%以下とすることで、得られる塗膜の破断点伸度が上がる傾向がある。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)の水酸基価は、特に制限されないが、固形分基準で0.1~100mgKOH/gであることが好ましく、1.0~50mgKOH/gであることがより好ましく、5.0~20mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂(A)の水酸基価を上記範囲とすることで、貯蔵安定性が向上する傾向がある。ポリウレタン樹脂(A)の水酸基価は、水酸基含有ポリアミンの配合量によって調整することができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)の酸価は、特に制限されないが、固形分基準で10~40mgKOH/gであることが好ましく、15~32mgKOH/gであることがより好ましく、15~25mgKOH/gであることが特に好ましい。前記ポリウレタン樹脂(A)の酸価を固形分基準で10~40mgKOH/gの範囲とすることで、貯蔵安定性が向上する傾向がある。酸価は、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して測定することができる。測定においては、酸性基を中和するために使用した中和剤を取り除いて測定する。例えば、有機アミン類を中和剤として用いた場合には、水性ポリウレタン樹脂分散体をガラス板上に塗布し、温度60℃、20mmHgの減圧下で24時間乾燥して得られた塗膜をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させて、JIS K 1557の指示薬滴定法に準拠して酸価を測定することができる。
水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂(A)において、脂環構造の含有割合は、特に制限されないが、固形分基準で5~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることが特に好ましい。ポリウレタン樹脂(A)の脂環構造の含有割合を上記範囲とすることで、得られる塗膜の弾性率を上げ、且つ、塗膜と基材の密着性を確保できる傾向がある。
<<アクリル系重合体(B)の合成>>
前記アクリル系重合体(B)は、1又は複数種の(メタ)アクリルモノマーを(必要ならば他の重合性モノマーを存在させる)、重合開始剤の存在下又は非存在下で、光、熱等により重合させることによって製造することができる。
<<複合樹脂水性分散体の製造>>
複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体及びアクリル系重合体(B)の水性分散体をそれぞれ別々に製造した後、両者を混合する方法;ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体中、ポリウレタン樹脂(A)の存在下で(メタ)アクリルモノマーを重合させる方法;等により製造することができるが、ポリウレタン樹脂(A)がアクリル系重合体(B)を内包するように、後者の方法により製造することが好ましい。
後者の方法において、複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体及び(メタ)アクリルモノマーを混合した後、重合開始剤及び光並びにそれらを併用して(メタ)アクリルモノマーを重合させ、アクリル系重合体(B)を生成させることによって製造することができる。
その際の反応温度は、好ましくは30~100℃である。
<重合開始剤>
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウオイルパーオキサイド等の過酸化物が使用される。
なお、これらの重合開始剤は、複数種を併用でき、水溶液や有機溶媒溶液として使用することもできる。
また、前記重合開始剤と、還元剤とを併用することでレドックス系開始剤として使用することもでき、還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酒石酸、L又はD-アスコルビン酸等を使用できる。
なお、これらの還元剤は、複数種を併用することができ、水溶液や有機溶媒溶液として使用することもできる。
前記、重合開始剤や還元剤の使用量は、必要な反応速度(重合速度)や重合時の発熱の状況に応じて適宜調整すれば良く、複合樹脂水性分散体の機能や特性を損なわない程度において、重合開始剤や還元剤、それらの分解物が存在していても良い。
また、急激な重合反応を抑制するために、適宜、乳化剤を存在させても良いが、加熱処理後の塗膜の耐溶剤性の点で、乳化剤を存在させないことが好ましい。
複合樹脂水性分散体においては、ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)との総質量に対し、ポリウレタン樹脂(A)が10~90質量%であり、より好ましくは30~70質量%であり、更に好ましくは40~60質量%である。
この範囲とすることで、好適な塗膜の耐溶剤性を確保するとともに、ウレタン会合型増粘剤を用いた場合の粒子安定性及び水系洗浄液に対する再溶解性を確保することができる。
以上により、複合樹脂水性分散体が得られるが、目的に応じて、増粘剤、光増感剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、熱安定剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコーンオイル、発泡剤、難燃剤等の添加剤を存在させることができる。前記添加剤は、複数種を併用してもよい。また、これらの添加剤の種類は当業者に公知であり、一般に用いられる範囲の量で使用することができる。
また、複合樹脂水性分散体は、人工皮革や合成皮革、断熱材、クッション材、接着剤、塗料、コーティング剤、フィルム等の成形体等に加工することができる。
<<塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物>>
本発明は、複合樹脂水性分散体を含有する塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物にも関する。
塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物には、複合樹脂水性分散体に含まれる複合樹脂粒子以外の樹脂の水性分散液及び/又は水溶液を添加することができる。このような他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。他の樹脂は、1種以上の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、ポリエチレングリコール基等が挙げられる。
他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコ-ル成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を使用することができる。
ポリエステル樹脂の水酸基価は、10~300mgKOH/g程度が好ましく、50~250mgKOH/g程度がより好ましく、80~180mgKOH/g程度が更に好ましい。前記ポリエステル樹脂の酸価は、1~200mgKOH/g程度が好ましく、15~100mgKOH/g程度がより好ましく、25~60mgKOH/g程度が更に好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500~500,000が好ましく、1,000~300,000がより好ましく、1,500~200,000が更に好ましい。
ポリエーテル樹脂としては、エーテル結合を有する重合体又は共重合体が挙げられ、例えばポリオキシエチレン系ポリエーテル、ポリオキシプロピレン系ポリエーテル、ポリオキシブチレン系ポリエーテル、ビスフェノールA又はビスフェノールF等の芳香族ポリヒドロキシ化合物から誘導されるポリエーテル等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール化合物から製造された重合体が挙げられ、例えばビスフェノールA・ポリカーボネート等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の各種ポリオール成分とポリイソシアネートとの反応によって得られるウレタン結合を有する樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンの反応によって得られる樹脂等が挙げられる。ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFが挙げられる。
アルキド樹脂としては、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等の多塩基酸と多価アルコールに、更に油脂・油脂脂肪酸(大豆油、アマニ油、ヤシ油、ステアリン酸等)、天然樹脂(ロジン、コハク等)等の変性剤を反応させて得られたアルキド樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、オレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと通常の重合法に従って重合又は共重合することにより得られるポリオレフィン樹脂を、乳化剤を用いて水分散するか、あるいはオレフィン系モノマーを適宜他のモノマーと共に乳化重合することにより得られる樹脂が挙げられる。また、場合により、前記のポリオレフィン樹脂が塩素化されたいわゆる塩素化ポリオレフィン変性樹脂を用いてもよい。
オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ドデセン等のα-オレフィン;ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン等の共役ジエン又は非共役ジエンが挙げられ、これらのモノマーは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
オレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸が挙げられ、これらのモノマーは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物は、硬化剤を含むことができ、これにより、塗料組成物、コーティング剤組成物又は自動車外装中塗り用組成物を用いて得られる塗膜又は複層塗膜、コーティング膜や印刷物の耐水性等を向上させることができる。
硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、メラミン樹脂、カルボジイミド等を用いることできる。硬化剤は、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。
アミノ樹脂としては、例えば、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分又は完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。前記アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアナト基を有する化合物が挙げられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
ブロック化ポリイソシアネートとしては、前述のポリイソシアネートのイソシアナト基にブロック化剤を付加することによって得られるものが挙げられ、ブロック化剤としては、フェノール、クレゾール等のフェノール系、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール系、マロン酸ジメチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム等のラクタム系、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系等のブロック化剤が挙げられる。
メラミン樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン等のメチロールメラミン;これらのメチロールメラミンのアルキルエーテル化物又は縮合物;メチロールメラミンのアルキルエーテル化物の縮合物が挙げられる。
塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物には、着色顔料や体質顔料、光輝性顔料を添加することができる。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられる。これらは、単独であってもよいし、複数種を併用してもよい。特に、着色顔料として、酸化チタン及び/又はカーボンブラックを使用することが好ましい。
体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトが挙げられる。これらは、複数種を併用してもよい。特に、体質顔料として、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましく、硫酸バリウムを使用することがより好ましい。
光輝性顔料は、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を使用することができる。
塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物には、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の添加剤を含有することができる。これらは、複数種を併用してもよい。
塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物の製造方法は、特に制限されないが、公知の製造方法を用いることができる。一般的には、塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物は、上記複合樹脂水性分散体と上述した他の樹脂及び/又は各種添加剤を混合し、更に水性媒体を添加し、適用方法に応じた粘度に調整することにより製造される。
塗料組成物の被塗装材質、コーティング剤組成物の被コーティング材質又は自動車外装中塗り用組成物の被適用材質としては、金属、プラスチック、無機物、木材等が挙げられ、電着塗装板にも好適に挙げることができる。
電着塗装板とは、被塗物を水溶性塗料中に浸積してその被塗物を陰極(又は陽極)として、そして塗料を被塗物の反対電極として直流電圧を印加し、被塗物に塗膜を形成させた積層板である。電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体等の大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として好ましい。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として好ましい。例えば、カチオン電着塗装は、陽イオン性を有するカチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬し、電圧を印加することにより行われる。
塗料組成物の塗装方法又はコーティング剤組成物のコーティング方法としては、例えば、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装が挙げられる。自動車外装中塗り用組成物の適用方法としては、例えば、インクジェット印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、反転オフセット印刷方法、枚葉スクリーン印刷方法、ロータリースクリーン印刷方法、エアスプレイ塗装方式、ベル塗装方式及び静電塗装方式式が挙げられる。
塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物を被適用材質に適用した後、加熱硬化させて塗膜、コーティングを得ることが好ましい。
前記加熱方法としては、自己の反応熱による加熱方法と、塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物と被適用材質とを積極加熱する加熱方法等が挙げられる。積極加熱は、塗料組成物、コーティング剤組成物及び自動車外装中塗り用組成物と被適用材質を熱風オーブンや電気炉、赤外線誘導加熱炉に入れて加熱する方法が挙げられる。
前記加熱温度は、40~200℃であることが好ましく、より好ましくは60~160℃である。このような温度で加熱することにより、より効率的に乾燥を行うことができる。前記加熱時間は、0.0001~20時間が好ましく、より好ましくは1~10時間である。このような加熱時間とすることにより、より硬度の高い複合樹脂フィルムを得ることができる。複合樹脂フィルムを得るための乾燥条件は、例えば、120℃で3~10秒での加熱が挙げられる。
特に本発明では、80~90℃程度の比較的低温で基材への密着性の高い塗膜を形成することができる。
硬化後の塗膜の厚さは、特に制限されないが、1~100μmの厚さが好ましい。3~50μmの厚さの塗膜を形成することがより好ましい。
<<複合樹脂フィルム>>
本発明は、更に、複合樹脂水性分散体を含む組成物を乾燥及び硬化させて得られる複合樹脂フィルムにも関する。
複合樹脂水性分散体を用いて、複合樹脂フィルムを得る方法としては、例えば、複合樹脂水性分散体を離形性基材に適用し、加熱等の手段により乾燥、硬化させ、続いて複合樹脂の硬化物を離形性基材から剥離させる方法が挙げられる。
前記加熱方法としては、自己の反応熱による加熱方法と、前記反応熱と複合樹脂水性分散体を含む組成物を積層した離形製基材の積極加熱とを併用する加熱方法等が挙げられる。積極加熱は、複合樹脂水性分散体を含む組成物を積層した離形性基材ごと熱風オーブンや電気炉、赤外線誘導加熱炉に入れて加熱する方法が挙げられる。
前記加熱温度は、40~200℃であることが好ましく、より好ましくは60~160℃である。このような温度で加熱することにより、より効率的に乾燥を行うことができる。前記加熱時間は、0.0001~20時間が好ましく、より好ましくは1~10時間である。このような加熱時間とすることにより、より硬度の高い複合樹脂フィルムを得ることができる。複合樹脂フィルムを得るための乾燥条件は、例えば、120℃で3~10秒での加熱が挙げられる。
物性の測定は以下のように行った。
(1)水酸基価:JIS K 1557-1のB法に準拠して測定した。
(2)遊離NCO基含量:ポリウレタン化反応終了後の反応混合物を0.5gサンプリングして、0.1モル/L(リットル)のジブチルアミン-テトラヒドロフラン(THF)溶液10mLとTHF20mLの混合溶液に加えて、0.1モル/Lの塩酸で未消費のジブチルアミンを滴定した。この滴定値とブランク実験との差より反応混合物中に残存するNCO基のモル濃度を算出した。モル濃度をイソシアナト基の質量分率に換算して遊離NCO基含量とした。なお、滴定に使用した指示薬はブロモフェノールブルーである。
(3)酸価:水性ポリウレタン樹脂分散体を厚さ0.2mmでガラス板上に塗布し、温度60℃、20mmHgの減圧下で24時間乾燥して塗膜を得た。得られた塗膜をN?メチルピロリドン(NMP)に溶解させて、JIS K 1557-5の指示薬滴定法に準拠して固形分基準の酸価を測定した。
(4)水性ポリウレタン樹脂分散体中のポリウレタン樹脂の重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したものであり、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から求めた換算値を記した。
(5)複合樹脂水性分散体の粒子安定性:複合樹脂水性分散体に対して、ウレタン会合型増粘剤(製品名:BYK-415、ビックケミー社製)を5質量%添加し、40℃で3日間経過後の粘度変化率を測定した。粘度変化が100%未満の場合を「○」、粘度変化が100%以上の場合を「×」と評価した。
(6)乾燥塗膜の水系洗浄液への再溶解性:ブチルセルソルブ、イソプロパノール、ジメチルエタノールアミン及びイオン交換水をそれぞれ質量基準で5%、4%、1%及び90%含有する水系洗浄液を調整した。ガラス板上に複合樹脂水性分散体0.3mLを厚さ0.2mmで塗布し、塗膜の固形分濃度が90%になるまで40℃で加熱乾燥した。この塗膜を27℃の水系洗浄液に15秒間浸漬し、浸漬後の外観から再溶解性を評価した。塗膜の一部が溶解する場合を「〇」、シワ等外観の変化がある場合を「△」、塗膜外観に変化が見られない場合を「×」と評価した。
(7)耐溶剤性:ガラス板に複合樹脂水性分散体を厚さ0.2mmで塗布し、80℃で1時間乾燥した後、得られた塗膜上に、パスツールピペットでトルエンを1滴滴下し、25℃で1分静置後、塗膜上のトルエンを拭き取った。トルエンを拭き取った後に、塗膜上にトルエンが存在していた跡が残っているかを目視で確認し、跡が残っていない場合を「〇」、白化又はシワ等の跡が認められる場合を「△」、膜が溶解する場合を「×」と評価した。
〔実施例1〕
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体の合成1)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL UH-300(登録商標);宇部興産株式会社製;数平均分子量2976;水酸基価37.7mgKOH/g、218g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.7g)と、IPDI(66.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(98.6g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、3.18質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(10.9g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、360gを抜き出し、強撹拌しながら水(517g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(27.3g)を加え、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(1)を得た。
(複合樹脂水性分散体の合成1)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(1)(325g)、水(237g)、過硫酸アンモニウム(0.2g)を混合し、50℃に加温した。次いで、ブチルアクリレート(45.8g)とメチルメタアクリレート(52.5g)を加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(1)を得た。
〔実施例2〕
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体の合成2)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL UH-200(登録商標);宇部興産株式会社製;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g、446g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(28.8g)と、IPDI(66.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(205g)中、ジブチルスズジラウレート(0.5g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、2.94質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(22.9g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、378gを抜き出し、強撹拌しながら水(555g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(26.6g)を加え、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(2)を得た。
(複合樹脂水性分散体の合成2)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(2)(325g)、水(241g)、過硫酸アンモニウム(0.2g)を混合し、50℃に加温した。次いで、ブチルアクリレート(45.7g)とメチルメタアクリレート(52.7g)を加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(2)を得た。
〔実施例3〕
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体の合成3)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(製品名:PTMG2000;三菱ケミカル株式会社製;数平均分子量1955;水酸基価57.4mgKOH/g、120g)と、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(製品名:PTMG1000;三菱ケミカル株式会社製;数平均分子量982;水酸基価114mgKOH/g、59.7g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.9g)と、水素添加MDI(99.4g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(64.1g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、4.24質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(11.0g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、341gを抜き出し、強撹拌しながら水(566g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(37.5g)を加え、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(3)を得た。
(複合樹脂水性分散体の合成3)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(3)(300g)、水(224g)、過硫酸アンモニウム(0.2g)を混合し、50℃に加温した。次いで、ブチルアクリレート(42.0g)とメチルメタアクリレート(48.3g)を加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(3)を得た。
〔実施例4〕
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体の合成4)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL UH-200(登録商標);宇部興産株式会社製;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g、200g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.8g)と、IPDI(82.7g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(63.0g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、4.58質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(11.7g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、340gを抜き出し、強撹拌しながら水(564g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(38.7g)を加え、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(4)を得た。
(複合樹脂水性分散体の合成4)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(4)(324g)、水(232g)、過硫酸アンモニウム(0.2g)を混合し、55℃に加温した。次いで、ブチルアクリレート(45.4g)とメチルメタアクリレート(50.9g)を加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(4)を得た。
〔実施例5〕
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体の合成5)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL UH-200(登録商標);宇部興産株式会社製;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g、302g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(31.5g)と、IPDI(133.0g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(154g)中、ジブチルスズジラウレート(0.4g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、3.57質量%であった。反応混合物を80℃にした後、275gを抜き出し、強撹拌しながら2質量%の2-ジメチルアミノエタノール水溶液(413g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(23.5g)を加え、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(5)を得た。
(複合樹脂水性分散体の合成5)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(5)(321g)、水(221g)、過硫酸アンモニウム(0.2g)を混合し、55℃に加温した。次いで、ブチルアクリレート(45.2g)とメチルメタアクリレート(50.3g)を加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(5)を得た。
〔実施例6〕
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体の合成6)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL UH-200(登録商標);宇部興産株式会社製;数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g、302g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(31.5g)と、IPDI(133.0g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(154g)中、ジブチルスズジラウレート(0.4g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、3.57質量%であった。反応混合物を80℃にした後、275gを抜き出し、強撹拌しながら3質量%の2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール水溶液(413g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(23.6g)を加え、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(6)を得た。
(複合樹脂水性分散体の合成6)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(6)(325g)、水(226g)、過硫酸アンモニウム(0.2g)を混合し、55℃に加温した。次いで、ブチルアクリレート(45.4g)とメチルメタアクリレート(50.5g)を加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(6)を得た。
〔比較例1〕
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体の合成7)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリカーボネートジオール(製品名:ETERNACOLL UH-300(登録商標);宇部興産株式会社製;数平均分子量2976;水酸基価37.7mgKOH/g、218g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(13.7g)と、IPDI(66.3g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(98.6g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、3.18質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(10.9g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、360gを抜き出し、強撹拌しながら水(517g)に入れた後、35質量%の2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液(27.3g)を加え、ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体(7)を得た。
〔比較例2〕
(水性ポリウレタン樹脂分散体の合成8)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(製品名:PTMG3000;三菱ケミカル株式会社製;数平均分子量2839;水酸基価39.5mgKOH/g、200g)と、2,2-ジメチロールプロピオン酸(6.3g)と、水素添加MDI(56.7g)と、12-ヒドロキシステアリン酸(25.1g)とを、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(57.7g)中、ジブチルスズジラウレート(0.2g)存在下、窒素雰囲気下で、80~90℃で4時間加熱した。ポリウレタン化反応終了時のNCO基含量は、1.74質量%であった。反応混合物を80℃にした後、トリエチルアミン(13.1g)を加え、30分撹拌した。反応混合物のうち、338gを抜き出し、強撹拌しながら水(570g)に入れた後、鎖延長剤として、35質量%のジエチレントリアミン水溶液(10.1g)を加え、水性ポリウレタン樹脂分散体(8)を得た。
(複合樹脂水性分散体の合成8)
撹拌機及び加熱器を備えた反応装置で、水性ポリウレタン樹脂分散体(8)(500g)、水(139g)、過硫酸アンモニウム(0.1g)を混合し、50℃に加温した。次いで、2-エチルヘキシルメタアクリレート(49.8g)とメチルメタアクリレート(14.9g)を加え、4時間撹拌し、重合することにより、複合樹脂水性分散体(8)を得た。
表1に、実施例1~6並びに比較例1及び2におけるポリウレタン樹脂の配合及びその物性並びにアクリル系重合体を構成するモノマー成分を示す。また、表2に、実施例1~6並びに比較例1及び2の粒子安定性、再溶解性及び耐溶剤性の評価結果を示す。
Figure 0007028018000001
Figure 0007028018000002
表中の略号及び略記は、以下の通りである。
H12-MDI: 4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)
IPDI: イソホロンジイソシアネート
PTMG1000: 数平均分子量982、水酸基価114mgKOH/gのポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製)
PTMG2000: 数平均分子量1955、水酸基価57.4mgKOH/gのポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製)
PTMG3000: 数平均分子量2839、水酸基価39.5mgKOH/gのポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製)
UH-200: ETERNACOLL UH-200(登録商標)(宇部興産株式会社製、ポリカーボネートジオール、数平均分子量2000;水酸基価56.1mgKOH/g)
UH-300: ETERNACOLL UH-300(登録商標)(宇部興産株式会社製、ポリカーボネートジオール、数平均分子量2976;水酸基価37.7mgKOH/g)
HS: 12-ヒドロキシステアリン酸
AEEA: 2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール
DETA: ジエチレントリアミン
DMAE: 2-ジメチルアミノエタノール
DMAMP: 2-(ジメチルアミノ)-2-メチル-1-プロパノール
TEA: トリエチルアミン
BA: ブチルアクリレート
MMA: メチルメタアクリレート
EHMA: 2-エチルヘキシルメタアクリレート
実施例1~3と比較例1との比較から、ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが水性媒体中に分散されてなり、ポリウレタン樹脂(A)が、(a1)ポリイソシアネート由来の構造と、(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造と、(a3)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(a4)水酸基含有ポリアミン由来の構造とを有する実施例1~3の複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)単独である比較例1の水性分散体と比較して、ウレタン会合型増粘剤を使用した際の粒子安定性が向上していることがわかる。また、ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが水性媒体中に分散されてなり、ポリウレタン樹脂(A)が上記(a1)~(a4)の構造を有する実施例1~6の複合樹脂水性分散体は、ポリウレタン樹脂(A)が(a4)の構造を有さない比較例2の複合樹脂水性分散体に比べ、再溶解性及び耐溶剤性が向上していることがわかる。
本発明の複合樹脂水性分散体は、塗料、コーティング剤、プライマー、接着剤、インク、フィルム等の原料として広く利用できる。

Claims (11)

  1. ポリウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが水性媒体中に分散されてなる複合樹脂水性分散体において、
    前記ポリウレタン樹脂(A)が、(a1)ポリイソシアネート由来の構造と、(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造と、(a3)酸性基含有ポリオール由来の構造と、(a4)2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール由来の構造とを有する、複合樹脂水性分散体。
  2. 前記(a2)酸性基を含まないポリオール由来の構造が、ポリエーテルポリオ―ル、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオール由来の構造である、請求項1に記載の複合樹脂水性分散体。
  3. 前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、200,000以上である、請求項1又は2に記載の複合樹脂水性分散体。
  4. 前記アクリル系重合体(B)の酸価が、10mgKOH/g未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体。
  5. 前記アクリル系重合体(B)の水酸基価が、40mgKOH/g未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体。
  6. 前記アクリル系重合体(B)が、前記ポリウレタン樹脂(A)に内包されて水性媒体中に分散されている、請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体。
  7. 複合樹脂水性分散体が、自己乳化型である、請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体を含有する、塗料組成物。
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体を含有する、コーティング剤組成物。
  10. 請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体を含有する、自動車外装中塗り用組成物。
  11. 請求項1~のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散体を含む組成物を乾燥及び硬化させて得られる複合樹脂フィルム。
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