JP2023150695A - 改質金属材の製造方法 - Google Patents

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大樹 勝野
Daiki Katsuno
翔生 桂
Shoo Katsura
慎太郎 山本
Shintaro Yamamoto
陽子 村田
Yoko Murata
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Abstract

【課題】従来の表面処理鋼材と同等以上の特性を有し、かつ表面粗度の小さい改質金属材の製造方法を提供する。【解決手段】金属基材の少なくとも表面に、SiとCoのうちの1以上を含む拡散元素を拡散させて改質金属材を製造する方法であって、800℃以上1,200℃以下で、焼結せずかつ水素ガスおよび前記拡散元素のハロゲン化ガスと反応しない、メジアン径が0.1μm以上100μm以下のバリア層形成用不活性粒子を、前記金属基材の表面に供給してバリア層を形成し、第1中間体を得る工程、前記バリア層上に、前記拡散元素を含む粉末と、水素含有雰囲気下800℃以上1,200℃以下で熱分解して、前記拡散元素のハロゲン化ガスを形成する活性種とを含む混合粉末を供給して混合粉末層を形成し、第2中間体を得る工程、および前記第2中間体を水素含有雰囲気下にて800℃以上1,200℃以下で熱処理する工程を含む、改質金属材の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、改質金属材の製造方法に関する。
従来から、例えば鋼材等の金属基材の表面から種々の元素を拡散浸透させ、鋼材の表面特性を向上させることが行われており、該技術は、クロマイジング(Chromizing)、シリコナイジング(Siliconizing)、アルミナイジング(Aluminizing)等の呼称により広く活用されている。これらの技術は、金属基材と、拡散元素粉末、ハロゲン系活性種などを混合した粉末とを、例えば、密閉容器中で埋没させ、水素雰囲気中にて長時間の熱処理を行うことで、発生した金属ハロゲン化ガスと金属基材の表面との反応拡散を生じさせ、金属基材の表面に拡散元素を浸透させる技術である。
例えば非特許文献1には、オーステナイト系耐熱合金のクロマイズ処理法の検討について示されている。また特許文献1には、基板に隣接する少なくとも1つの元素金属を含む少なくとも1つの層を形成するためのスラリーであって、以下の(a)~(d)を含むスラリーが開示されている。(a)溶媒、(b)前記合金剤が前記少なくとも1つの元素金属を含み、前記合金剤が前記基板に拡散するように構成されている合金剤、(c)前記少なくとも1つの元素金属の前記基板への拡散を促進するハロゲン化物活性剤、(d)前記合金剤を前記溶媒に分散させるのを助ける不活性種であって、前記不活性種は、約200メッシュ以下の粒子サイズを有する。また、特許文献2には、金属含有部分を形成するための方法であって、(a)X線光電子分光法(XPS)によって測定される場合、少なくとも約0.001重量%の濃度の炭素と、ケイ素、マンガン、チタン、バナジウム、アルミニウムおよび窒素の1つ以上とを含む基材を提供する工程;(b)前記基材に隣接して金属を含む第1の層を堆積させる工程;および(c)前記基材に隣接する前記第1の層から第2の層を生成するのに十分な条件下で前記第1の層および前記基材をアニールに供し、それによって前記第2の層および前記基材を含む前記金属含有部分を形成する工程を含み、前記第2の層は、金属炭化物としての前記炭素および前記金属を含む方法が示されている。
米国特許出願公開第2016/230284号明細書 特表2019-513187号公報
帆足ら,「オーステナイト系耐熱合金のクロマイズ処理法の検討」,鉄と鋼,第56年(1970),第14号,第1880頁~第1890頁
上記特許文献1と非特許文献1に記載の方法で表面処理を行うと、得られた表面処理鋼材の表面粗度が大きくなりやすい。近年では、例えばモータ等の電磁部品は、より小型化される傾向にある。限られた空間に、例えば複数の表面処理鋼材をより多く積載するには、鋼材間に形成される空隙をより小さくするため、鋼材の表面粗度を抑えることが有効である。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来の表面処理鋼材と同等以上の特性を有しつつ、表面粗度の小さい改質金属材を製造する方法を提供することにある。
本発明の態様1は、
金属基材の少なくとも表面に、SiとCoのうちの少なくとも1種を含む拡散元素を拡散させて、改質金属材を製造する方法であって、
800℃以上1,200℃以下で焼結せずかつ800℃以上1,200℃以下で水素ガスおよび前記拡散元素のハロゲン化ガスと反応しない、メジアン径が0.1μm以上100μm以下のバリア層形成用不活性粒子を、前記金属基材の表面に供給してバリア層を形成し、第1中間体を得る工程、
前記第1中間体のバリア層の上に、前記拡散元素を含む粉末と、水素含有雰囲気下800℃以上1,200℃以下で熱分解して前記拡散元素のハロゲン化ガスを形成する活性種とを含む混合粉末を、供給して混合粉末層を形成し、第2中間体を得る工程、および
前記第2中間体を、水素含有雰囲気下にて、800℃以上1,200℃以下で熱処理する工程
を含む、改質金属材の製造方法である。
本発明の態様2は、
前記混合粉末層は、800℃以上1,200℃以下で焼結せずかつ800℃以上1,200℃以下で水素ガスおよび前記拡散元素のハロゲン化ガスと反応しない、混合粉末層形成用不活性粒子を含む、態様1に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様3は、
前記バリア層に占めるバリア層形成用不活性粒子の体積割合は、1%以上70%以下である、態様1または2に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様4は、
前記バリア層の厚さは、1~5000μmである、態様1~3のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様5は、
前記バリア層形成用不活性粒子は、Al、SiO,MgO,TiO,MnO,VおよびCaOよりなる群から選択される1以上である、態様1~4のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様6は、
前記第1中間体を得る工程で、前記バリア層形成用不活性粒子と分散媒を含むバリア層形成用不活性粒子分散液を、金属基材の表面に塗布してバリア層を形成する、態様1~5のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様7は、
前記バリア層形成用不活性粒子分散液は、増粘剤とバインダのうちの1以上を更に含む、態様6に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様8は、
前記増粘剤とバインダのうちの1以上が、PVAである、態様7に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様9は、
前記PVAの含有量は3質量%以上20質量%以下である、態様8に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様10は、
前記第1中間体を得る工程で、前記バリア層形成用不活性粒子中に金属基材を埋没させてから引き上げてバリア層を形成する、態様1~5のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様11は、
前記第2中間体を得る工程で、前記混合粉末と分散媒を含む混合粉末分散液を、第1中間体のバリア層の表面に塗布して混合粉末層を形成する、態様1~10のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様12は、
前記混合粉末分散液は、増粘剤とバインダのうちの1以上を更に含む、態様11に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様13は、
前記増粘剤とバインダのうちの1以上が、PVAである、態様12に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様14は、
前記PVAの含有量は3質量%以上20質量%以下である、態様13に記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様15は、
前記第2中間体を得る工程で、混合粉末中に前記第1中間体を埋没させ、その状態で熱処理を行う、態様1~10のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様16は、
前記金属基材は鉄または鋼である、態様1~15のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明の態様17は、
前記活性種は、MgCl,NHCl,NHBr,NHI,NHF,NaCl,BrCl,およびBrIよりなる群から選択される1以上である、態様1~16のいずれかに記載の改質金属材の製造方法である。
本発明によれば、従来の表面処理鋼材と同等以上の特性を有しつつ、表面粗度の小さい改質金属材を製造する方法を提供できる。
上記特許文献1等に記載された方法のように、被処理材を混合粉末に埋め込む、または被処理材に混合粉末のスラリーを直接塗布し乾燥させてから拡散表面処理を実施するなど、被処理材と混合粉末とが直接接触する状態で、拡散処理を行った場合、処理材の表面の粗度が高くなった。この点について本発明者らは次の通りさらに検討した。拡散元素として例えばSiを用いた拡散プロセスでは、例えば(a)Si粉末、(b)MgCl粉末、および(c)Al粉末からなる混合粉末を、被処理材に近接させ、水素含有雰囲気中で熱処理を行うと、MgClと雰囲気中のHガスとの反応によりHClが生じ、さらにSi粉末との反応によってSiClガスが生じる。このSiClガスが金属基材表面において、(i)熱分解、(ii)水素還元、(iii)置換反応のうちの1以上を生じさせることによって、金属基材の表面にSiを供給させる反応が繰り返され、それによりSiが金属基材の内部に拡散していく。
しかしながら、混合粉末中のSi粉末が金属基材の表面に直接接触している場合、上記反応に加えて(iv)Si粉末と金属基材表面との直接反応(相互拡散)が生じる場合があり、これに起因する表面の粗化が発生すると考えられる。特に、相互拡散によって生じた表面粗化は、上記(iii)置換反応によるエッチングに起因する表面粗化よりも激しい。よって、この(iv)Si粉末と金属基材表面との直接反応(相互拡散)を抑制することで、表面粗度を抑制できると考えた。
本発明者らは、上記(iv)の反応(相互拡散)を抑制して表面粗度の小さい改質金属材を得る方法について検討したところ、一定範囲内のサイズの粒子を含む多孔性のバリア層を、金属基材と混合粉末層との間に設けることによって、(iv)の反応(相互拡散)を抑制しつつ、(i)~(iii)の反応を継続させて、被処理材である金属基材の表面へ、反応性ガス(SiCl)を供給でき、金属基材表面での反応によって、拡散元素を被処理材(金属基材)の内部へ浸透できることを見いだした。
本実施形態に係る改質金属材の製造方法は、
金属基材の少なくとも表面に、SiとCoのうちの少なくとも1種を含む拡散元素を拡散させて、改質金属材を製造する方法であって、
800℃以上1,200℃以下で焼結せずかつ800℃以上1,200℃以下で水素ガスおよび前記拡散元素のハロゲン化ガスと反応しない、メジアン径が0.1μm以上100μm以下のバリア層形成用不活性粒子を、前記金属基材の表面に供給してバリア層を形成し、第1中間体を得る工程、
前記第1中間体のバリア層の上に、前記拡散元素を含む粉末と、水素含有雰囲気下800℃以上1,200℃以下で熱分解して前記拡散元素のハロゲン化ガスを形成する活性種とを含む混合粉末を、供給して混合粉末層を形成し、第2中間体を得る工程、および
前記第2中間体を、水素含有雰囲気下にて、800℃以上1,200℃以下で熱処理する工程
を含む。以下、各工程について説明する。
[バリア層の形成された第1中間体を得る工程]
(金属基材)
金属基材の表面にまずバリア層を形成する。金属基材としては、SiとCoのうちの少なくとも1種を含む拡散元素を表面から拡散させることにより、新たな特性が得られるものであって、かつ拡散元素を拡散させる過程で表面に粗化が生じるとの問題を有するものであれば特に限定されない。例えば、鉄、鋼、アルミニウム、銅、またはこれらが50質量%以上含まれる合金が挙げられる。特には鉄または鋼である。後述する実施例に示す通り、粉末を利用したSi元素、Co元素の拡散熱処理プロセスにおける表面粗化は、加熱・拡散工程において、基材となる鋼材の表面に直接接触したSi粒子、Co粒子が、鋼材との間で生じる相互拡散により表面に固着することで生じる。例えば上記アルミニウム、銅、またはこれらが50質量%以上含まれる合金が基材であって、類似のメカニズムにより拡散元素の粒子が基材の表面に固着して表面粗化が生じる場合も、本実施形態に係る方法を利用して表面粗化を抑制することが可能である。
(バリア層)
バリア層の形成により、後述する混合粉末層、特には混合粉末層中のSi,Coなどの拡散元素粉末と、金属基材(被処理材)との直接接触を防ぎ、熱処理後の表面粗化を抑える。バリア層は、熱処理時に、混合粉末中の拡散元素粉末と金属基材(被処理材)との直接接触を防止できる形態であればよい。バリア層は、例えば、バリア層の一方の面から他方の面へ連通した空孔を複数有する多孔性層でありうる。
バリア層の形成には、800℃以上1,200℃以下で焼結せず、かつ800℃以上1,200℃以下で、水素ガスおよび処理過程で発生する前記拡散元素のハロゲン化ガス(金属ハロゲン化物ガス)との反応も生じない、メジアン径が0.1μm以上100μm以下のバリア層形成用不活性粒子を用いる。前記水素ガスと反応しないとは、H分圧/HO分圧>10となる雰囲気にて還元性の雰囲気ガス(H)で還元(反応)しないことをいう。前記バリア層形成用不活性粒子として、具体的にはセラミックスが挙げられる。好ましくは酸化物系セラミックスである。酸化物系セラミックスとして、好ましくは、Al、SiO,MgO,TiO,MnO,VおよびCaOなどが挙げられ、これらのうちの1以上を使用することができる。より好ましくは、AlとSiOのうちの1以上、更に好ましくはAlである。
前記バリア層形成用不活性粒子は、メジアン径(頻度の累積が50%になる粒子径であり、「d50」とも示される)が0.1μm以上100μm以下である。バリア層は、熱処理時に発生する活性ガスが被処理材(金属基材)へ到達できるように、多孔性であって、ガス透過性を有することが求められる。バリア層形成用不活性粒子のメジアン径が0.1μmよりも小さい場合、形成されたバリア層の緻密度が高く、上記熱処理時に発生する活性ガスの被処理材(金属基材)への到達が阻害されうる。メジアン径は、好ましくは1.0μm以上である。一方で、メジアン径が100μmよりも大きい場合、バリア層の形成に例えばスラリー塗工、スプレーコート法などを用いたときに塗工性の悪化を招く他、バリア層内に形成される空孔が過剰に大きくなることで、この空孔内に拡散元素粒子が入り込み、結果として拡散元素と被処理材の直接接触を防止する効果が小さくなる恐れがある。メジアン径は、好ましくは50μm以下である。前記メジアン径はレーザー回折/散乱法により求められる。
金属基材の表面に凹凸が形成されている場合、前記バリア層形成用不活性粒子で金属基材の表面の凹み部を充填し、かつ凸部を前記バリア層形成用不活性粒子で覆い、バリア層の表面を均一にすることができる。さらに後工程で、混合粉末層を均一に塗工できる。その結果、金属基材と混合粉末層の直接接触を防止し、金属基材中に拡散元素を均一に拡散させることができる。
この工程では、前記バリア層形成用不活性粒子を、前記金属基材の表面に供給してバリア層を形成する。前記バリア層形成用不活性粒子を、前記金属基材の表面に供給する方法は限定されない。バリア層形成用不活性粒子のみを前記金属基材の表面に供給する他、バリア層形成用不活性粒子を、希釈、分散等を目的とした液状または固体状の媒体と共に供給してもよい。好ましくは、前記バリア層形成用不活性粒子と、液状の媒体である分散媒を含むバリア層形成用不活性粒子分散液を、金属基材の表面に塗布してバリア層を形成することである。該方法によれば、金属基材をバリア層形成用不活性粒子のみで覆う場合よりも、層を薄く均一に形成でき、特に、金属基材の表面に凹凸が存在する場合であっても、薄く均一に層を形成できる。その結果、バリア層の剥離を抑制でき、バリア機能を十分に発揮させることができる。また、例えば鉄のコイルなど非常に長い材料に対し、バリア層形成用不活性粒子分散液を、例えば吹き付けること、該分散液中に浸漬させる等して、連続的にバリア層を形成することができる。
前記分散媒として、水系分散媒と有機系分散媒のうちの1以上を使用できる。前記分散液の形態として、例えばスラリー、クレイなどが挙げられる。塗布方法として、例えば、ノズルを用いたスプレー塗布、ロールコーター・バーコーター等を用いたスラリー塗工、スラリーに浸漬させてから引き上げる(ドブ漬け)手法、スクリーン印刷、メタルマスク印刷等の方法等が挙げられる。特に金属基材が複雑形状である場合、刷毛塗り、スプレーコート、およびスラリーに浸漬させてから引き上げる(ドブ漬け)手法が好ましく用いられる。好ましくは、スラリーを塗布する方法である。スラリーを塗布する方法によれば、長尺の板材に対して連続して拡散表面処理を施すことができるため好ましい。また、従来用いられていた板状のバリア層では、凹凸を有する被処理材の表面に追従することができず、拡散処理が不十分となる可能性があったが、スラリーを塗布する方法によれば、この問題を解消することができる。
前記分散媒を用いた場合、例えばスラリー塗工により混合粉末層を形成した場合、スラリー塗工後は、室温~200℃に加熱して乾燥させることが挙げられる。
前記バリア層形成用不活性粒子の分散液には、前記バリア層形成用不活性粒子以外に、塗工性の確保や乾燥時の剥離を抑制する等の観点から、増粘剤及びバインダのうちの1以上が含まれていてもよい。一般的に、前記「増粘剤」とは添加対象の粘度を上げる物質をいい、「バインダ」とは添加対象の物質間で最終的に固化し、それら物質同士を間接的に結合するものをいう。これらを、分散液に含まれる含有量で好ましくは3質量%以上20質量%以下加えることによって、熱処理時に活性ガスの透過性が良好なバリア層を形成することが可能である。前記増粘剤、バインダを構成する材料として、周知のものを適宜使用できる。好ましくはPVA(ポリビニルアルコール)、寒天、CMC、ポリエチレングリコール等の物質を使用できる。より好ましくはPVAである。好ましくは有機系バインダを上記範囲の含有量で含有、より好ましくはPVAを上記範囲の含有量で含有させることによって、熱処理時に活性ガスの透過性がより良好なバリア層を形成できる。詳細にはPVAを用いる場合、塗工後の乾燥でのバリア層の剥離防止と、バリア層の厚さを均一にする観点から、分散液に含まれるPVAの含有量は3質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは5質量%以上である。一方、分散液を容易に形成する観点から、PVAの含有量は20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下である。なお前記増粘剤、バインダは、いずれも熱処理時に熱分解して消失する。
バリア層の厚さは、混合粉末中のSi等の拡散元素が金属基材と直接接触せず、かつ、例えばSiClガスなどの拡散元素のハロゲン化ガスがバリア層内を通過でき、更に、バリア層の塗布・乾燥過程で剥離や亀裂が生じなければ限定されない。その厚み(第1中間体の乾燥状態での厚み)は、例えば、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは100μm以上であって、好ましくは5000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは300μm以下でありうる。
バリア層を形成し乾燥させた後に占める、バリア層形成用不活性粒子(以下「不活性粒子」ということがある)の体積割合(固形分割合)も、混合粉末中のSi等の拡散元素が金属基材と直接接触せず、かつ、例えばSiClガスなどの拡散元素のハロゲン化ガスがバリア層内を通過でき、更に、バリア層の塗布・乾燥過程で剥離や亀裂が生じなければ限定されない。乾燥後にバリア層内に存在する物質は、不活性粒子と空気と、任意成分として例えばPVA等が挙げられる。この場合、バリア層(乾燥後)の不活性粒子の固形分の体積割合を「不活性粒子の体積/(不活性粒子+空気+任意成分(PVA等)の体積)」と定義したとき、該不活性粒子の固形分の体積割合は、好ましくは1%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上であって、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、60%以下とすればよい。
[混合粉末層の形成された第2中間体を形成する工程]
前記第1中間体のバリア層の上に、前記拡散元素を含む粉末と、水素含有雰囲気下800℃以上1,200℃以下で熱分解して前記拡散元素のハロゲン化ガスを形成する活性種とを含む混合粉末を、供給して混合粉末層を形成し、第2中間体を得る。
混合粉末層を構成する拡散元素を含む粉末、活性種、更には必要に応じて含まれる混合粉末層形成用不活性粒子について、以下説明する。
(拡散元素を含む粉末)
本実施形態では、拡散後に表面粗化の確認されるSiとCoのうちの少なくとも1種を含む拡散元素を用いる。Al,Cr,Tiなどでは粗化は発生せず、そもそも本発明が解決しようとしている課題(表面粗化)そのものが存在しない。一方、SiとCoのうちの少なくとも1種は、金属基材表面、特には鉄または鋼である金属基材の表面で、相互拡散による表面粗化が発生し得、例えばAl+Si,Cr+Coなどの、SiとCoのうちの少なくとも1種と、上記Al,Cr,Tiなどの他の元素との混合物も、これらの混合物に含まれるSi,Coと金属基材との接触で、相互拡散による表面粗化が発生しうる。SiとCoのうちの1以上と混合する元素種として、Fe、Cr、Ni、V、Ti、B、W、Al、Mo、Mn、Zr、Nb、またはそれらの組み合わせが挙げられる。これらの元素は、金属基材に拡散させる観点から、上記元素と非金属元素の化合物である例えば炭化物、窒化物等の非常に安定な化合物よりも、純金属、合金として供給、例えば純金属粒子と合金粒子のうちの1以上として供給することが好ましい。
(活性種)
活性種として、水素含有雰囲気下800℃以上1,200℃以下で熱分解して前記拡散元素のハロゲン化ガスを形成する化合物を用いる。前記拡散元素のハロゲン化ガスが発生し、金属表面において「熱分解」、「水素還元」、「置換反応」等の反応が生じることで、拡散元素が金属基材に拡散し、所望の機能が付与された改質金属材を得ることができる。前記活性種として、MgCl,NHCl,NHBr,NHI,NHF,NaCl,BrCl,およびBrIよりなる群から選択される1以上を用いることができる。これらのうち、発生ガスの処理および入手の容易性の観点から、塩化物が好ましく、特にはMgClが好ましい。
(混合粉末層形成用不活性粒子)
拡散元素粉末同士の接触を防止すること、熱処理後に金属基材上から混合粉末層を容易に除去すること等を目的として、混合粉末層形成用不活性粒子を含有させることが好ましい。混合粉末層形成用不活性粒子は、熱処理時、すなわち800℃以上1,200℃以下で焼結せず、かつ800℃以上1,200℃以下で水素ガスおよび処理過程で発生する前記拡散元素のハロゲン化ガス(金属ハロゲン化物ガス)と反応もしないことが好ましい。前記水素ガスと反応しないとは、H分圧/HO分圧>10となる雰囲気にて還元性の雰囲気ガス(H)で還元(反応)しないことをいう。
混合粉末層形成用不活性粒子として、具体的には、バリア層形成用不活性粒子と同様に、セラミックスが挙げられる。好ましくは酸化物系セラミックスである。酸化物系セラミックスとして、好ましくは、Al、SiO,MgO,TiO,MnO,VおよびCaOなどが挙げられ、これらのうちの1以上を使用することができる。より好ましくは、AlとSiOのうちの1以上、更に好ましくはSiOである。混合粉末層形成用不活性粒子とバリア層形成用不活性粒子は、材質が同じであってもよいし異なっていてもよい。
混合粉末層形成用不活性粒子のサイズは、メジアン径が0.1μm以上100μm以下でありうる。前記メジアン径は、好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下である。混合粉末層形成用不活性粒子のサイズは、バリア層形成用不活性粒子のサイズと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
活性種と拡散元素の混合割合は、拡散元素のハロゲン化ガスを十分に発生させることができればよく特に限定されない。例えば、活性種と拡散元素とのモル比は、約0.0001:1~10:1、更には0.001:1~5:1であってもよい。
(混合粉末層の形成方法)
第1中間体のバリア層の上に、混合粉末層を形成する方法として、例えば下記(1)(2)の方法が挙げられる。
(1)混合粉末と、分散媒として水または水+PVAとを混合して得られた塗布用分散液を、金属基材の表面に供給する方法
(2)第1中間体を、混合粉末中に埋没させる(埋没させたまま後述の熱処理を行う)方法
前記(1)の方法によれば、比較的面積の大きい部材に対し、拡散元素を表面から拡散浸透させる場合に有効である。また前記(2)の方法によれば、例えば小型の機械部品などのように、比較的小型の基材を対象に、拡散元素を表面から拡散浸透させる場合に有効である。いずれの方法でも、例えばあらかじめ金属基材の一部をマスキングする等により、金属基材の一部のみに拡散処理を施すことも可能である。また、例えば金属基材の一部が最終的にトリム(除去)を行う等の不必要な部分である場合、該部位には、混合粉末層の形成を含む本実施形態の製造工程を実施しないこともありうる。
前記(1)の方法で混合粉末層を形成する場合、混合粉末を、分散媒として、水系分散媒、有機系分散媒のうちの1以上と混合して、混合粉末の分散液(例えばスラリー)を用意し、第1中間体のバリア層の上に供給することが挙げられる。供給方法として、例えば、塗布が挙げられ、塗布方法として、例えば、ノズルを用いたスプレー塗布、ロールコーター・バーコーター等を用いたスラリー塗工、スラリーに浸漬させてから引き上げる(ドブ漬け)手法、スクリーン印刷、メタルマスク印刷等の方法等が挙げられる。特に第1中間体が複雑形状である場合、刷毛塗り、スプレーコート、スラリーに浸漬させてから引き上げる(ドブ漬け)手法が好ましく用いられる。好ましくは、スラリーを塗布する方法である。
前記分散媒を用いた場合、例えばスラリー塗工により混合粉末層を形成した場合、スラリー塗工後は、室温~200℃に加熱して乾燥させることが挙げられる。
前記混合粉末の分散液には、前記混合粉末以外に、塗工性の確保や乾燥時の剥離を抑制する等の観点から、増粘剤及びバインダのうちの1以上が含まれていてもよい。増粘剤及びバインダとして、前述したバリア層形成用不活性粒子の分散液の形成と同じものを用いることができる。混合粉末の分散液においても、熱処理時の剥離を抑制する観点から、増粘剤、バインダとして、PVAを含めることが好ましい。
「バリア層の上に」混合粉末層を形成するとは、バリア層の表面に直接、混合粉末層を形成することに限定されない。熱処理時に、混合粉末層で生じた反応ガスがバリア層に到達できる形態であればよく、バリア層と混合粉末層の積層形態は、上記直接接触させる他、一部のみが接触していてもよい。または、バリア層と混合粉末層が全く接触せず、スペーサーを介して対峙し、スペーサーによりバリア層と混合粉末層の間に隙間が存在してもよい。好ましくは、前記バリア層と前記混合粉末層は、直接接触していることである。
[第2中間体の熱処理工程]
第2中間体の熱処理を行って、拡散元素を金属基材の表面から拡散浸透させる。熱処理は800℃以上1,200℃以下の温度で行う。熱処理における加熱温度は、混合粉末からの活性ガスの発生の促進、および金属基材の表面から侵入した元素の、内部への拡散浸透速度に影響する。適切な熱処理温度は、用いる金属基材の種類により、例えば金属基材を鉄、鋼とする場合、上述した拡散反応の進行および金属基材への影響の観点から、上記温度範囲で熱処理を行う。熱処理温度が800℃未満では、混合粉末からの活性ガスの発生が生じにくく、また金属基材中への拡散元素の拡散も生じにくいため、拡散反応を有効に進行させることが難しい。好ましくは850℃以上である。一方、熱処理温度が1,200℃を超えると、金属基材の材料組織の粗大化・軟化・変形を招く他、熱処理を行う炉体を特別な耐熱仕様とする必要が生じる等の不都合を招く。よって熱処理温度は1,200℃以下とする。好ましくは1,150℃以下、より好ましくは1,100℃未満である。
熱処理時間は、混合粉末から活性ガスを発生させ、金属基材との表面反応を介して金属基材中に元素を拡散浸透させる観点から、1~120時間で行うことが好ましい。1時間以上とすることで、混合粉末および金属基材の温度上昇を均一とし、また拡散反応が進行する時間を十分確保して、拡散元素の拡散した反応層を効果的に形成できる。熱処理時間は、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上である。また、120時間以下とすることで、長時間の熱処理による生産性の低下が抑えられる。熱処理時間は、好ましくは96時間以下、より好ましくは72時間以下である。
熱処理は水素含有雰囲気で行う。金属基材の表面と拡散元素粉末の表面に形成される自然酸化被膜を還元することで、前記金属基材と拡散元素粉末の表面を活性化し、活性ガスの発生および基材への拡散浸透を促進させる観点から、還元性の雰囲気とする。具体的には、酸化を防ぐ目的で1.0~100体積%の水素を含む雰囲気下で熱処理するのがよい。
また、熱処理時に発生する、例えばSiCl等の拡散元素のハロゲン化ガスの逃散を防止し、金属基材の表面に十分供給させる観点から、第2中間体は、密閉状態で熱処理されることが好ましい。第2中間体が密閉されていればよく、その具体的な態様は問わない。例えば、第2中間体をフォイルで包むこと、第2中間体を第2中間体よりもやや大きな容器に配置して密閉すること等が挙げられる。前記フォイル、容器等を形成する材料は、熱処理に耐えうる材料であればよく、例えば、SUS、チタン、セラミックス等が挙げられる。
熱処理後、すなわち拡散反応後、混合粉末層とバリア層は、金属基材の表面に塊状に残存しうる。本実施形態に係る改質金属材の製造方法は、前述した工程以外に、この拡散反応後の塊状の混合粉末層とバリア層を、拡散処理後の金属基材から除去する工程を含んでいてもよい。除去する方法として、例えば、ブラシロール等でこすり落とす、水やアルコール等を当てて水圧で除去する、風を当てて風圧で除去する等が挙げられる。なお、除去したことの確認は、例えば後述する実施例に示す通り、レーザー顕微鏡で確認することができる。
本実施形態の改質金属材の製造方法によれば、得られた改質金属材は、金属基材の表面が処理され、少なくとも表面に拡散元素が存在した形態であればよい。本実施形態の改質金属材の製造方法によれば、例えば熱処理の温度と時間を変更することで、拡散元素が金属基材の表面にのみ拡散した改質金属材だけでなく、拡散元素が金属基材の内部にまで拡散した改質金属材を得ることができる。いずれの場合であっても、表面粗度の抑制された改質金属材を得ることができる。
得られた改質金属材は、例えば金属基材が鉄または鋼であって、SiとCoのうちの少なくとも1種を含む拡散元素、好ましくはSiとCoのうちの少なくとも1種を拡散させた場合、電磁鋼板として用いることができる。鋼材にSiとCoのうちの少なくとも1種が含まれることで磁気特性が向上することは古くから知られている。しかし、例えば鋼中のこれらの元素の含有量が高いと、材料の脆性が顕著になるため、これらの元素の含有量が高い鋼に対して圧延を施し、板厚の薄い電磁鋼板を製造することは非常に困難である。よって、加工性に優れる純Fe系の材料を予め圧延加工し、得られた薄鋼板を金属基材として、この薄鋼板にSiとCoのうちの少なくとも1種を拡散させることで、これらの元素の含有量が高くかつ板厚の薄い電磁鋼板が得られると考えられる。また、本実施形態の改質金属材の製造方法によれば、拡散元素としてSiとCoのうちの少なくとも1種を用いた場合に、材料の表面硬度、耐酸化性・耐摩耗性等を向上させた、改質金属材を得ることができる。前記電磁鋼板を用いた更なる用途として、具体的に、モータ、トランス、リアクトル、変成器(CT)等の製品が挙げられる。拡散元素としてCoを拡散させた鋼は、燃料電池用のセパレータとしても用いることができる。これらの製品の小型化のためには該製品を構成する金属の占積率を高める必要があり、そのためには、表面粗度の小さい本実施形態に係る改質金属材が好ましく使用され得る。また、表面粗度が小さいことから、伝熱のために接触させる用途、摺動部材のように摩擦の抑制が求められる用途に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1~3のサンプルは次の通り作成した。金属基材として、厚さ0.3mmの純Fe板(株式会社神戸製鋼所製、製品名:ELCH2)を用いた。水:PVAを9:1の体積比で混合した分散媒に、バリア層形成用不活性粒子として、Al粉末(株式会社高純度化学研究所製、純度99.99%、メジアン径(d50)4μmを約50質量%含んだバリア層形成用スラリーを準備した。前記メジアン径(d50)の測定には、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式の粒度分布測定装置、測定機種:LA-920を用いた。
上記PVAを含有させることで、形成された層の剥離を防止できる。なお、1050℃の熱処理で有機化合物であるPVAは完全に気化するため、表面粗化には影響しないと考えられる。純Fe板の表面に、前記スラリーを、フィルムアプリケーターを用いて一定の膜厚となるように塗布、すなわち、スラリーを純Fe板上に乗せた後、フィルムアプリケーターの平滑な表面を有する器具と、前記純Fe板の表面との隙間を一定としてスラリーを均して、厚さが均一となるよう塗布し、次いで40℃で1時間加熱して乾燥させ、厚さが約200μmのバリア層を形成し、第1中間体を得た。
バリア層(乾燥後)のバリア層形成用不活性粒子の固形分の体積割合は約30~45%の範囲内であった。バリア層を形成すると、混合粉末層中のSi割合と混合粉末層の厚さが同じである場合、反応ガス発生場所が、バリア層の厚さ分だけ金属基材から遠くなり、結果として反応ガスが逃散しやすくなり金属基材へ反応ガスが到達し難く、バリア層を形成しない比較例よりも、金属基材へのSi拡散量が小さくなることが考えられる。そこで本実施例では、本発明例(バリア層を形成した場合)に、金属基材へのSi拡散量がバリア層を設けていない比較例と同じとなるように、混合粉末層の厚さを大きく、すなわち、混合粉末層中のSi量を多くした。
混合粉末層の形成のために、表1に示す、拡散元素の粉末、活性種の粉末、および混合粉末層形成用不活性粒子と、水:PVAを9:1の質量比で混合した分散媒とを、分散媒がスラリー全体の50質量%含まれるように混合した混合粉末層形成用スラリーを準備した。本実施例で使用した拡散元素として、Si粉末(株式会社高純度化学研究所製、純度99.9%、メジアン径13μm)、活性種として、MgCl・6HO(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級)、混合粉末層形成用不活性粒子として、SiO(株式会社高純度化学研究所製、純度99.9%、メジアン径0.7μm)を用いた。そして、バリア層の表面に、前記スラリーを上記第1中間体の形成と同様にフィルムアプリケーターで均一な厚さとなるよう塗布し、第2中間体を得た。
拡散反応の促進を目的に、熱処理時に生じる反応ガス(本実施例ではSiCl)の逃散を抑制するため、前記第2中間体をSUSフォイルで包んでから、100%水素フロー雰囲気中、1050℃で12時間の熱処理を行った。その後、熱処理材の表面を日本製紙クレシア株式会社製キムタオルで擦り、反応後のバリア層と混合粉末層を除去してサンプルを得た。なお、本実施例では、後述する表面粗度の測定の前に、レーザー顕微鏡で、表面粗度に影響を与えうるような粒状物が残っていないことを確認した。
また、比較例1~3のサンプルは、サンプル形成の条件を表1の通りとし、かつバリア層を形成せず、かつ、混合粉末層の形成で使用した分散媒を水のみとした以外は、実施例1~3と同様にして作成した。
Figure 2023150695000001
[表面粗度の測定]
サンプルの表面粗度を、装置として、KEYENCEの形状解析レーザー顕微鏡VK-X160を用いて測定した。測定では、純Fe板の圧延方向の算術平均粗さRa、純Fe板の前記圧延方向に対してほぼ直角の方向である幅方向の算術平均粗さRaを、JIS B 0601に従い測定するとともに、算術平均高さSaをISO 25178に従い測定した。Raは1mmの範囲、Saは1mm×1mmの範囲で測定した。各サンプルでランダムに3ヶ所を測定し、圧延方向Ra、幅方向Ra、Saそれぞれの平均値を算出した。測定結果を表2に示す。
[拡散元素の濃度の測定]
サンプル(拡散処理後基板)の厚さ方向が断面となるように切断し、日本電子製X線アナライザー JXA-8800RLを用いて、サンプルの最表面(深さ0)の位置のSiの濃度を測定した。その測定結果を表2に「サンプル表面のSi濃度」として示す。
Figure 2023150695000002
表2の結果から、本実施形態に係る製造方法によれば、従来、拡散処理後に生じていた著しい表面粗化を抑制できることがわかる。また、バリア層を設けずに作製した比較例のサンプルと比較して、表面のSi量が同じであり、拡散元素が従来と同程度またはそれ以上に拡散され、同等以上の特性を期待できる改質金属材が得られていることがわかる。
本発明に係る改質金属材は、任意の適切な用途に利用され得る。改質金属材として、例えば拡散元素としてSiとCoのうちの少なくとも1種を拡散させた鋼は、電磁鋼板として用いることができる。具体的には、前記電磁鋼板をモータ、トランス、リアクトル、変成器(CT)等の製品に好ましく使用され得る。拡散元素としてCoを拡散させた鋼は、燃料電池用のセパレータとして用いることもできる。

Claims (17)

  1. 金属基材の少なくとも表面に、SiとCoのうちの少なくとも1種を含む拡散元素を拡散させて、改質金属材を製造する方法であって、
    800℃以上1,200℃以下で焼結せずかつ800℃以上1,200℃以下で水素ガスおよび前記拡散元素のハロゲン化ガスと反応しない、メジアン径が0.1μm以上100μm以下のバリア層形成用不活性粒子を、前記金属基材の表面に供給してバリア層を形成し、第1中間体を得る工程、
    前記第1中間体のバリア層の上に、前記拡散元素を含む粉末と、水素含有雰囲気下800℃以上1,200℃以下で熱分解して前記拡散元素のハロゲン化ガスを形成する活性種とを含む混合粉末を、供給して混合粉末層を形成し、第2中間体を得る工程、および
    前記第2中間体を、水素含有雰囲気下にて、800℃以上1,200℃以下で熱処理する工程
    を含む、改質金属材の製造方法。
  2. 前記混合粉末層は、800℃以上1,200℃以下で焼結せずかつ800℃以上1,200℃以下で水素ガスおよび前記拡散元素のハロゲン化ガスと反応しない、混合粉末層形成用不活性粒子を含む、請求項1に記載の改質金属材の製造方法。
  3. 前記バリア層に占めるバリア層形成用不活性粒子の体積割合は、1%以上70%以下である、請求項1または2に記載の改質金属材の製造方法。
  4. 前記バリア層の厚さは、1~5000μmである、請求項1~3のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
  5. 前記バリア層形成用不活性粒子は、Al、SiO,MgO,TiO,MnO,VおよびCaOよりなる群から選択される1以上である、請求項1~4のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
  6. 前記第1中間体を得る工程で、前記バリア層形成用不活性粒子と分散媒を含むバリア層形成用不活性粒子分散液を、金属基材の表面に塗布してバリア層を形成する、請求項1~5のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
  7. 前記バリア層形成用不活性粒子分散液は、増粘剤とバインダのうちの1以上を更に含む、請求項6に記載の改質金属材の製造方法。
  8. 前記増粘剤とバインダのうちの1以上が、PVAである、請求項7に記載の改質金属材の製造方法。
  9. 前記PVAの含有量は3質量%以上20質量%以下である、請求項8に記載の改質金属材の製造方法。
  10. 前記第1中間体を得る工程で、前記バリア層形成用不活性粒子中に金属基材を埋没させてから引き上げてバリア層を形成する、請求項1~5のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
  11. 前記第2中間体を得る工程で、前記混合粉末と分散媒を含む混合粉末分散液を、第1中間体のバリア層の表面に塗布して混合粉末層を形成する、請求項1~10のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
  12. 前記混合粉末分散液は、増粘剤とバインダのうちの1以上を更に含む、請求項11に記載の改質金属材の製造方法。
  13. 前記増粘剤とバインダのうちの1以上が、PVAである、請求項12に記載の改質金属材の製造方法。
  14. 前記PVAの含有量は3質量%以上20質量%以下である、請求項13に記載の改質金属材の製造方法。
  15. 前記第2中間体を得る工程で、混合粉末中に前記第1中間体を埋没させ、その状態で熱処理を行う、請求項1~10のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
  16. 前記金属基材は鉄または鋼である、請求項1~15のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
  17. 前記活性種は、MgCl,NHCl,NHBr,NHI,NHF,NaCl,BrCl,およびBrIよりなる群から選択される1以上である、請求項1~16のいずれかに記載の改質金属材の製造方法。
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