JP2023147050A - 既設地中構造物の補強構造、既設地中構造物の補強方法及び地中構造物の施工方法 - Google Patents

既設地中構造物の補強構造、既設地中構造物の補強方法及び地中構造物の施工方法 Download PDF

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Yukio Abe
剛男 原田
Takeo Harada
範寛 大高
Norihiro Otaka
雄充 藤本
Yuji Fujimoto
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Abstract

【課題】施工を容易に行うことが可能となる既設地中構造物の補強方法を提供する。【解決手段】実施形態における既設地中構造物の補強方法は、側壁部材1の短手方向の両端部に形成される継手部11、12同士を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を、既設地中構造物8の周囲に構築する筒状壁体構築工程を備える。筒状壁体構築工程は、側壁部材1を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した側壁部材1の一方の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材1の他方の継手部12と、を接続し、筒状壁体10を地上に立設する筒状壁体立設工程と、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、既設地下構造物8の周囲に筒状壁体10を設置する打設工程と、を有することが好ましい。【選択図】図5

Description

本発明は、既設地中構造物の補強構造、既設地中構造物の補強方法及び地中構造物の施工方法に関する。
集水井、深礎杭、水中仮締切、橋脚等の地中構造物を施工する際、土留めとして主にライナープレートが用いられる。ライナープレートを用いた地中構造物は、経年に伴う腐食等の劣化が生じることから、地中構造物の補強や取り替えが必要となる。例えばライナープレートを用いた集水井を補修する技術として、特許文献1、2の開示技術が開示されている。
特許文献1の集水井の補修方法は、腐食した補強リングの上方または下方の少なくともいずれか一方に位置する前記ライナープレートを軸方向に連結する軸方向連結フランジに連結アングルを取り付ける工程と、前記連結アングルの内周側に内巻きリングを取り付ける補強工程と、を有する。
特許文献2の既設集水坑の補修工法は、組立後の形状が既設集水坑の内壁よりわずかに小さい外径となる円筒を周方向と軸方向に複数に分割した鋼製セグメントと、該セグメントを円筒ユニットに形成して設置する際に使用するセット部材(位置決め支承部材)を準備しておき、これら部材を地上にてセット部材が上側になるように円筒ユニットに形成して、順次吊り降ろし、鋼板製の円筒を設置して補修する。
特開2021-161626号公報 特開2000-282479号公報
特許文献1の開示技術は、ライナープレートの軸方向連結フランジに連結アングルを取り付け、その連結アングルに補強用の内巻きリングを取り付ける。しかしながら、ライナープレートの軸方向連結フランジそのものが腐食している場合が多い。このため、内巻きリングによる施工ができないおそれがある。
特許文献2の開示技術は、既設集水坑を補強するための円筒を構築するために、円筒を周方向と軸方向に分割した複数の鋼製セグメント、並びに、これら円筒ユニットを設置する際に使用するセット部材が必要である。このため、部材点数が多く、製作手間、施工手間が掛かる問題点があった。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、施工を容易に行うことが可能となる既設地中構造物の補強構造、既設地中構造物の補強方法及び地中構造物の施工方法を提供することにある。
第1発明に係る既設地中構造物の補強構造は、既設地中構造物を補強する既設地中構造物の補強構造であって、既設地中構造物の周囲に構築される筒状の筒状壁体を備え、前記筒状壁体は、短手方向の両端部に継手部が形成される側壁部材の前記継手部同士が接続されて筒状に形成されることを特徴とする。
第2発明に係る既設地中構造物の補強構造は、第1発明において、前記側壁部材は、鋼矢板であることを特徴とする。
第3発明に係る既設地中構造物の補強構造は、第1発明又は第2発明において、前記側壁部材は、板厚10mm以下の鋼矢板であることを特徴とする。
第4発明に係る既設地中構造物の補強構造は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、前記側壁部材は、ステンレス製の鋼矢板であることを特徴とする。
第5発明に係る既設地中構造物の補強方法は、既設地中構造物を補強する既設地中構造物の補強方法であって、側壁部材の短手方向の両端部に形成される継手部同士を接続し、複数の側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を、前記既設地中構造物の周囲に構築する筒状壁体構築工程を備えることを特徴とする。
第6発明に係る既設地中構造物の補強方法は、第5発明において、前記筒状壁体構築工程は、前記側壁部材を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した前記側壁部材の一方の継手部と、当該側壁部材とは異なる他の側壁部材の他方の継手部と、を接続し、前記筒状壁体を地上に立設する筒状壁体立設工程と、前記筒状壁体を構成する複数の前記側壁部材を順次地中に打設し、前記既設地下構造物の周囲に前記筒状壁体を設置する打設工程と、を有することを特徴とする。
第7発明に係る既設地中構造物の補強方法は、第6発明において、前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材の長手方向の一端部を地中に埋設して地盤に対して起立した状態を保持することを特徴とする。
第8発明に係る既設地中構造物の補強方法は、第6発明又は第7発明において、前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材を打設する際のガイドとなるガイド部材を地盤に設置し、前記打設工程では、前記ガイド部材により前記側壁部材をガイドさせて前記側壁部材を打設することを特徴とする。
第9発明に係る既設地中構造物の補強方法は、第6発明~第8発明の何れかにおいて、前記既設地中構造物は、既設集水井であり、前記打設工程は、前記側壁部材を打設し、前記既設集水井の周囲に設置された既設集水管を前記側壁部材により切断することを特徴とする。
第10発明に係る既設地中構造物の補強方法は、第5発明~第8発明の何れかにおいて、前記既設地中構造物は、既設集水井であり、前記筒状壁体構築工程の前に、前記既設集水井の周囲に設置された既設集水管を撤去する既設集水管撤去工程を更に備えることを特徴とする。
第11発明に係る既設地中構造物の補強方法は、第5発明~第10発明の何れかにおいて、前記既設地中構造物は、既設集水井であり、前記筒状壁体構築工程の前に、前記既設集水井の周囲に設置された既設排水管を撤去する既設排水管撤去工程を更に備えることを特徴とする。
第12発明に係る既設地中構造物の補強方法は、第5発明~第11発明の何れかにおいて、前記既設地中構造物は、既設集水井であり、前記筒状壁体構築工程の後に、前記既設集水井の周囲に前記筒状壁体を貫通する集水管を設置する集水管設置工程と、前記筒状壁体構築工程の後に、前記既設集水井の周囲に前記筒状壁体を貫通する排水管を設置する排水管設置工程と、を更に備えることを特徴とする。
第13発明に係る地中構造物の施工方法は、地中構造物を施工する地中構造物の施工方法であって、側壁部材の短手方向の両端部に形成される継手部同士を接続し、複数の側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を、既設地下構造物の周囲に構築する筒状壁体構築工程と、前記既設地中構造物を撤去する既設地中構造物撤去工程と、を備えることを特徴とする。
第1発明~第4発明によれば、既設地中構造物の周囲に構築される筒状の筒状壁体を備え、筒状壁体は、短手方向の両端部に継手部が形成される側壁部材の継手部同士が接続され、複数の側壁部材により筒状に形成される。これにより、従来のように、既設地中構造物の内側に補強部材を取り付ける必要がない。また、側壁部材の継手部を接続して筒状壁体を構築できるため、従来よりも部材点数を少なくすることができる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
また、第1発明~第4発明によれば、既設地中構造物が筒状壁体に囲まれることから、既設地中構造物に作用する土圧等を筒状壁体に負担させることができる。また、地震等の横揺れが作用しても、筒状壁体による拘束効果により、地中構造物の耐力や靭性を向上させることができる。このため、既設地中構造物が腐食していた場合であっても、既設地中構造物を確実に補強することが可能となる。
特に、第2発明によれば、側壁部材は、鋼矢板である。一般に流通している鋼矢板を用いることにより、品質や断面性能が安定した部材で筒状壁体を構築することが可能となる。
特に、第3発明によれば、側壁部材は、板厚10mm以下の軽量鋼矢板である。これにより、板厚が10mmを超えるU形鋼矢板等に比べて、板厚が10mm以下の軽量鋼矢板は、継手部に余裕があり、継手部の回転可能角度が大きい。このため、平面視で閉断面となる筒状壁体を構築する際、組み立てやすくなる。また、側壁部材の板厚が薄いため、集水管設置工程、及び、排水管設置工程において、地盤をボーリングする際、筒状壁体に孔を開け易くできる。
特に、第4発明によれば、側壁部材は、ステンレス製の鋼矢板である。これにより、耐食性が向上し、地中構造物のライフサイクルコストを抑えることが可能となる。
第5発明~第13発明によれば、側壁部材の短手方向の両端部に形成される継手部同士を接続し、複数の側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を、既設地中構造物8の周囲に構築する筒状壁体構築工程を備える。これにより、従来のように、既設地中構造物の内側に補強部材を取り付ける必要がない。また、側壁部材の継手部を接続して筒状壁体を構築できるため、従来よりも部材点数を少なくすることができる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
また、第5発明~第13発明によれば、既設地中構造物が筒状壁体に囲まれることから、既設地中構造物に作用する土圧等を筒状壁体に負担させることができる。また、地震等の横揺れが作用しても、筒状壁体による拘束効果により、地中構造物の耐力や靭性を向上させることができる。このため、既設地中構造物が腐食していた場合であっても、既設地中構造物を確実に補強することが可能となる。
特に、第6発明によれば、側壁部材を地盤に対して起立した状態で保持し、保持した側壁部材の一方の継手部と、当該側壁部材とは異なる他の側壁部材の他方の継手部と、を接続し、複数の側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を地上に立設する筒状壁体立設工程を備える。これにより、側壁部材の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体が平面視で閉断面とならない場合でも、保持した側壁部材を再度位置合わせし、筒状壁体を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
また、第6発明によれば、筒状壁体立設工程は、筒状の筒状壁体を地上に立設するため、地上で予め筒状壁体の出来形が確認できる。
また、第6発明によれば、筒状壁体を構成する複数の側壁部材を順次地中に打設し、既設地中構造物の周囲に筒状壁体を設置する打設工程を備える。これにより、振動式杭打機により、側壁部材を迅速に地中に打設することができる。このため、従来のようなライナープレートを人力で連結する作業を省略することができる。また、振動式杭打機による打設のため、作業者への負荷が軽減でき、省力化を図ることができる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
また、第6発明によれば、筒状壁体立設工程の後に、筒状壁体を構成する複数の側壁部材を順次地中に打設し、既設地下構造物の周囲に筒状壁体を設置する打設工程を備える。これにより、一の側壁部材を打設する際に、両側に配置される他の側壁部材の継手部にスライドさせながら一の側壁部材を打設することができる。このため、確実に所定形状の筒状壁体を地中に施工することが可能となる。
特に、第7発明によれば、筒状壁体立設工程は、側壁部材の一端部を地中に埋設して側壁部材を起立した状態に保持する。これにより、側壁部材が地盤に対して起立した状態を安定化させることができる。このため、側壁部材の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体が平面視で閉断面とならない場合であっても、側壁部材を地中から引き抜いて再度位置合わせし、筒状壁体を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
特に、第8発明によれば、筒状壁体立設工程では、側壁部材を打設する際のガイドとなるガイド部材を地盤に設置し、打設工程では、ガイド部材により側壁部材をガイドさせて側壁部材を打設する。これにより、側壁部材を所定位置に打設することが容易となる。このため、地中構造物の形状の精度が向上する。
特に、第9発明によれば、既設地中構造物は、既設集水井であり、打設工程は、側壁部材を打設し、既設地中構造物の周囲に設置された既設集水管を側壁部材により切断する。これにより、既設集水管を地中から撤去する作業を省略できる。このため、施工を更に容易に行うことが可能となる。
特に、第10発明によれば、既設地中構造物は、既設集水井であり、筒状壁体構築工程の前に、既設集水井の周囲に設置された既設集水管を撤去する既設集水管撤去工程を更に備える。これにより、既設集水管に阻害されることなく、既設地中構造物の周囲に筒状壁体を構築できる。このため、筒状壁体を確実に施工することが可能となる。
特に、第11発明によれば、既設地中構造物は、既設集水井であり、筒状壁体構築工程の前に、既設集水井の周囲に設置された既設排水管を撤去する既設排水管撤去工程を備える。これにより、既設排水管に阻害されることなく、既設地中構造物の周囲に筒状壁体を構築できる。このため、筒状壁体を確実に施工することが可能となる。
特に、第12発明によれば、既設地中構造物は、既設集水井であり、筒状壁体構築工程の後に、既設集水井の周囲に筒状壁体を貫通する集水管を設置する集水管設置工程と、筒状壁体構築工程の後に、既設集水井の周囲に筒状壁体を貫通する排水管を設置する排水管設置工程と、を更に備える。これにより、地中構造物100を集水井として構築できる。
特に、第13発明によれば、筒状壁体構築工程の後に、既設地中構造物を撤去する既設地中構造物撤去工程を備える。これにより、既設地中構造物を撤去する際に、地盤の側面が露出されずに、地盤の崩壊を抑制することができる。このため、既設地中構造物8を安全に撤去することが可能となる。
図1は、第1実施形態における地中構造物の一例を示す一部破断正面図である。 図2は、第1実施形態における地中構造物の一例を示す平面図である。 図3は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の既設排水管撤去工程を示す正面図である。 図4は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す正面図である。 図5は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す斜視図である。 図6は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す正面図である。 図7は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す正面図である。 図8は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す一部破断正面図である。 図9は、第1実施形態における地中構造物の施工方法の一例の集水管設置工程と排水管設置工程を示す一部破断正面図である。 図10は、第2実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体立設工程を示す側面図である。 図11は、第3実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す正面図である。 図12は、第3実施形態における地中構造物の施工方法の一例の打設工程を示す正面図である。 図13は、第4実施形態における地中構造物の施工方法の一例の既設集水管撤去工程と既設排水管撤去工程とを示す正面図である。 図14は、第5実施形態における地中構造物の施工方法の一例の筒状壁体構築工程を示す一部破断正面図である。 図15は、第5実施形態における地中構造物の施工方法の一例の既設地中構造物撤去工程を示す一部破断正面図である。 図16は、第5実施形態における地中構造物の施工方法の一例の集水管設置工程と排水管設置工程とを示す一部破断正面図である。
以下、本発明を適用した既設地中構造物の補強構造、既設地中構造物の補強方法、地中構造物の施工方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態:地中構造物100、既設地中構造物の補強構造200)
図1は、第1実施形態に係る地中構造物100の一例を示す一部破断正面図である。図2は、第1実施形態における地中構造物100の一例を示す平面図である。
地中構造物100は、地中に埋設される既設地中構造物8と、既設地中構造物8を補強する既設地中構造物の補強構造200を備える。地中構造物100は、例えば集水井として用いられる。地中構造物100は、深礎杭、水中仮締切、橋脚等として用いられてもよい。以下、既設地中構造物の補強構造200を単に補強構造200ともいう。
既設地中構造物8は、例えば集水井として用いられる。既設地中構造物8は、複数のライナープレートが周方向と上下方向に複数連結され、筒状に形成される。既設地中構造物8は、既設集水管83が設けられる。
既設集水管83は、既設地中構造物8から外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。既設集水管83は、例えば塩化ビニル管等の公知の配管材である。既設集水管83は、既設地中構造物8に近づくにつれて下方に傾斜するように配置される。既設集水管83は、後述する側壁部材1の打設に伴って切断されることにより、筒状壁体10の内側と外側とで分断される。
補強構造200は、地中に埋設される筒状壁体10を備える。補強構造200は、更に、集水管3と、排水管4と、を備えてもよい。筒状壁体10は、既設地中構造物8の周囲に構築される。筒状壁体10と既設地中構造物8との間には土砂が存在する。
筒状壁体10は、複数の側壁部材1が周方向に接続されて円筒状等の筒状に形成される。筒状壁体10は、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される側壁部材1の継手部11、12同士が接続され、複数の側壁部材1により筒状に形成される。
筒状壁体10の上下方向の長さは、既設地中構造物8の上下方向の長さよりも長い。これにより、筒状壁体10の下端部は、既設地中構造物8の下端部8aよりも深い位置に配置される。この場合、筒状壁体10は、既設地中構造物8の高さ方向全長を囲うように拘置される。
側壁部材1は、例えばハット形の鋼矢板が用いられる。側壁部材1は、正面側から見て矩形状に形成される。側壁部材1は、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される。
側壁部材1は、板厚10mm以下の鋼矢板であることが好ましい。また、側壁部材1は、ステンレス製の鋼矢板であることが好ましい。
集水管3は、既設地中構造物8の外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。集水管3は、例えば塩化ビニル管等の公知の配管材である。集水管3は、既設地中構造物8に近づくにつれて下方に傾斜するように配置される。集水管3は、既設地中構造物8の外側の地中の雨水、地下水等を、既設地中構造物8の内側に集水する。集水管3は、筒状壁体10を貫通する。
排水管4は、既設地中構造物8の外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。排水管4は、既設地中構造物8の下端部8aに設けられる。排水管4は、例えば鋼管等の公知の配管材である。排水管4は、既設地中構造物8の内側に集水された水を、既設地中構造物8の外側に排水する。排水管4は、筒状壁体10を貫通する。
(第1実施形態:既設地中構造物の補強方法)
次に、第1実施形態における既設地中構造物の補強方法の一例について説明する。
既設地中構造物の補強方法は、既設地中構造物8を補強する方法であって、筒状壁体構築工程を備える。既設地中構造物の補強方法は、既設集水管撤去工程と、既設排水管撤去工程と、集水管設置工程と、排水管設置工程と、を更に備えてもよい。
<既設排水管撤去工程>
図3に示すように、既設地中構造物8は、既設集水管83と、既設排水管84と、が設けられる。既設排水管84は、既設地中構造物8から外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。既設排水管84は、既設地中構造物8の下端部8aに設けられる。既設排水管84は、例えば鋼管等の公知の配管材である。既設排水管84は、既設地中構造物8の内側に集水された水を、既設地中構造物8の外側に排水する。
既設排水管撤去工程は、筒状壁体構築工程の前に、既設排水管84を撤去する。
なお、本実施形態では、既設集水管83を残置しておくが、後述する実施形態のように、筒状壁体構築工程の前に、既設集水管83を撤去する既設集水管撤去工程を有してもよい。
<筒状壁体構築工程>
筒状壁体構築工程は、矩形状の側壁部材1の短手方向の両端部に形成される継手部11、12同士を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を、既設地中構造物8の周囲に構築する。筒状壁体構築工程は、筒状壁体立設工程と、打設工程と、を有する。
<<筒状壁体立設工程>>
筒状壁体立設工程は、図4に示すように、地盤に側壁部材1を打設する際のガイドとなるガイド部材5を地盤に載置する。ガイド部材5は、鋼板が用いられ、開口部51が形成される。ガイド部材5は、既設地中構造物8の上方の地盤に載置する。開口部51の径は、既設地中構造物8の径よりも大きい。
筒状壁体立設工程では、図5及び図6に示すように、ガイド部材5の開口部51の内面に側壁部材1の外面を接触させながら、図示しないクレーンに吊り下げられた振動式杭打機により側壁部材1の下端部1aを埋設する。振動式杭打機を側壁部材1から離し、側壁部材1を地盤の上面に対して起立した状態で保持する。このとき、側壁部材1の下端部1aと側壁部材1の上端部1bとの中央部は、地上に露出される。
筒状壁体立設工程では、下端部1aを地盤に埋設して保持した側壁部材1の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材1の継手部12とを接続し、他の側壁部材1の下端部1aを埋設して地盤に保持する。側壁部材1の保持と、保持した一の側壁部材1の継手部11と他の側壁部材1の継手部12との接続と、を繰り返し行い、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を地上に立設する。
このように、筒状壁体立設工程では、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される側壁部材1を地盤に対して起立した状態で保持し、保持した側壁部材1の一方の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材1の他方の継手部12と、を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を地上に立設する。筒状壁体10は、側壁部材1の下端部1aが地中に埋設されるため、地盤に対して起立した状態となる。筒状壁体10は、既設地中構造物8の外側の上方の地盤に立設される。
これにより、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合に、保持した側壁部材1を引き抜いて再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。
<<打設工程>>
次に、打設工程では、図7及び図8に示すように、図示しないクレーンに吊り下げられた振動式杭打機により、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、筒状壁体10を地中に埋設する。
図7に示すように、地中に打設される一の側壁部材1の継手部11は、当該一の側壁部材1に隣接する他の側壁部材1の継手部12に接続される。また、地中に打設される一の側壁部材1の継手部12は、当該一の側壁部材1に隣接する他の側壁部材1の継手部11に接続される。すなわち、地中に打設される一の側壁部材1は、両側の他の側壁部材1の継手部11、12にスライドさせながら、地中に埋設される。このとき、側壁部材1の下端部1aと側壁部材1の上端部1bとの中央部は、地中に埋設される。側壁部材1の上端部1bは、地中に埋設されてもよいし、わずかに地上に露出されてもよい。
打設工程では、ガイド部材5により側壁部材1をガイドさせて側壁部材1を地中に打設する。打設工程では、開口部51の内周面に側壁部材1の外面を接触させながら、側壁部材1を打設する。
そして、図8に示すように、打設工程では、筒状壁体10を構成する全ての側壁部材1を地中に埋設する。打設工程では、既設地中構造物8の周囲に筒状壁体10を設置する。
また、打設工程では、側壁部材1を打設し、既設地中構造物8としての既設集水井の周囲に設置された既設集水管83を側壁部材1により切断する。これにより、既設集水管83は、側壁部材1の内側と外側とで分断されて配置される。
打設工程では、筒状壁体10を地中に埋設した後、ガイド部材5を撤去する。
<集水管設置工程>
次に、図9に示すように、集水管設置工程では、既設地中構造物8の外側に向けて延びる集水管3を設置する。集水管設置工程では、ボーリング等により既設地中構造物8及び地中に孔を形成し、形成した孔に集水管3を設置する。集水管設置工程では、既設集水井の周囲に筒状壁体10を貫通する集水管3を設置する。
<排水管設置工程>
次に、排水管設置工程では、既設地中構造物8の下端部8aに、筒状壁体10の外側に向けて延びる排水管4を設置する。排水管設置工程では、ボーリング等により既設地中構造物8及び地中に孔を形成し、形成した孔に排水管4を設置する。排水管設置工程では、既設集水井の周囲に筒状壁体10を貫通する排水管4を設置する。
以上により、地中構造物の施工方法の一例が完了する。
本実施形態によれば、既設地中構造物8の周囲に構築される筒状の筒状壁体10を備え、筒状壁体10は、短手方向の両端部に継手部11、12が形成される側壁部材1の継手部11、12同士が接続され、複数の側壁部材1により筒状に形成される。これにより、従来のように、既設地中構造物の内側に補強部材を取り付ける必要がない。また、側壁部材1の継手部11、12を接続して筒状壁体10を構築できるため、従来よりも部材点数を少なくすることができる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、既設地中構造物8が筒状壁体10に囲まれることから、既設地中構造物8に作用する土圧等を筒状壁体10に負担させることができる。また、地震等の横揺れが作用しても、筒状壁体10による拘束効果により、地中構造物100の耐力や靭性を向上させることができる。このため、既設地中構造物8が腐食していた場合であっても、既設地中構造物8を確実に補強することが可能となる。
本実施形態によれば、側壁部材1の短手方向の両端部に形成される継手部11、12同士を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を、既設地中構造物8の周囲に構築する筒状壁体構築工程を備える。これにより、従来のように、既設地中構造物の内側に補強部材を取り付ける必要がない。また、側壁部材1の継手部11、12を接続して筒状壁体10を構築できるため、従来よりも部材点数を少なくすることができる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
本実施形態によれば、側壁部材1を地盤に対して起立した状態で保持し、保持した側壁部材1の一方の継手部11と、当該側壁部材1とは異なる他の側壁部材1の他方の継手部12と、を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を地上に立設する筒状壁体立設工程を備える。これにより、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合でも、保持した側壁部材1を再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、筒状壁体立設工程は、筒状の筒状壁体10を地上に立設するため、地上で予め筒状壁体10の出来形が確認できる。
また、本実施形態によれば、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、既設地中構造物8の周囲に筒状壁体10を設置する打設工程を備える。これにより、振動式杭打機により、側壁部材1を迅速に地中に打設することができる。このため、従来のようなライナープレートを人力で連結する作業を省略することができる。また、振動式杭打機による打設のため、作業者への負荷が軽減でき、省力化を図ることができる。このため、施工を容易に行うことが可能となる。
また、本実施形態によれば、クレーン、振動式杭打機とも、一般に入手できるものであり、サイレントパイラー等の特殊な装置でなくても施工ができる。このため、施工時の制約が少なく、施工の汎用性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態によれば、筒状壁体立設工程の後に、筒状壁体10を構成する複数の側壁部材1を順次地中に打設し、既設地中構造物8の周囲に筒状壁体10を設置する打設工程を備える。これにより、一の側壁部材1を打設する際に、両側に配置される他の側壁部材1の継手部11、12にスライドさせながら一の側壁部材1を打設することができる。このため、確実に所定形状の筒状壁体10を地中に施工することが可能となる。
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程は、側壁部材1の下端部1aを地中に埋設して側壁部材1を起立した状態に保持する。これにより、側壁部材1が地盤に対して起立した状態を安定化させることができる。このため、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合であっても、側壁部材1を地中から引き抜いて再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程では、側壁部材1を打設する際のガイドとなるガイド部材5を設置し、打設工程では、ガイド部材5により側壁部材1をガイドさせて側壁部材1を打設する。これにより、側壁部材1を所定位置に打設することが容易となる。このため、地中構造物100の形状の精度が向上する。
本実施形態によれば、既設地中構造物8は、既設集水井であり、打設工程は、側壁部材1を打設し、既設地中構造物8の周囲に設置された既設集水管83を側壁部材1により切断する。これにより、既設集水管83を地中から撤去する作業を省略できる。このため、施工を更に容易に行うことが可能となる。
本実施形態によれば、既設地中構造物8は、既設集水井であり、筒状壁体構築工程の後に、既設集水井の周囲に筒状壁体10を貫通する集水管3を設置する集水管設置工程と、筒状壁体構築工程の後に、既設集水井の周囲に筒状壁体10を貫通する排水管4を設置する排水管設置工程と、を更に備える。これにより、地中構造物100を集水井として構築できる。
本実施形態によれば、既設地中構造物8は、既設集水井であり、筒状壁体構築工程の前に、既設集水井の周囲に設置された既設排水管84を撤去する既設排水管撤去工程を備える。これにより、既設排水管84に阻害されることなく、既設地中構造物8の周囲に筒状壁体10を構築できる。このため、筒状壁体10を確実に施工することが可能となる。
本実施形態によれば、側壁部材1は、鋼矢板である。一般に流通している鋼矢板を用いることにより、品質や断面性能が安定した部材で地中構造物100を構築することが可能となる。
本実施形態によれば、側壁部材1は、板厚10mm以下の軽量鋼矢板である。これにより、板厚が10mmを超えるU形鋼矢板等に比べて、板厚が10mm以下の軽量鋼矢板は、継手部に余裕があり、継手部の回転可能角度が大きい。このため、平面視で閉断面となる筒状壁体10を構築する際、組み立てやすくなる。また、側壁部材1の板厚が薄いため、集水管設置工程、及び、排水管設置工程において、地盤をボーリングする際、筒状壁体10に孔を開け易くできる。
本実施形態によれば、側壁部材1は、ステンレス製の鋼矢板である。これにより、耐食性が向上し、地中構造物100のライフサイクルコストを抑えることが可能となる。
(第2実施形態:既設地中構造物の補強方法)
次に、第2実施形態における既設地中構造物の補強方法の一例について説明する。第1実施形態と同様の構成については、以下での詳細な説明を省略する。
既設地中構造物の補強方法は、既設地中構造物8を補強する方法であって、筒状壁体構築工程を備える。筒状壁体構築工程は、筒状壁体立設工程と、打設工程と、を有する。
<<筒状壁体立設工程>>
筒状壁体立設工程は、先ず、図10に示すように、側壁部材1の起立した状態を保持するための保持部材6を地盤に載置する。保持部材6は、例えば断面L字状に形成され、地盤に沿って延びる底板部61と、底板部61から起立した板状のガイド部材62と、を有する。
筒状壁体立設工程では、一対の保持部材6を互いに離間して地盤に載置する。そして、筒状壁体立設工程では、一対の保持部材6の間に側壁部材1を配置して、一対の保持部材6により側壁部材1を地盤に対して起立した状態を保持する。このとき、側壁部材1の下端部1aは、地盤に載置されてもよいし、地中に埋設されてもよい。また、保持した側壁部材1は、下端部1aと側壁部材1の上端部1bとの中央部が地上に露出される。
そして、筒状壁体立設工程では、複数の側壁部材1により筒状壁体10を地上に立設する。
<<打設工程>>
打設工程では、保持部材6のガイド部材62により側壁部材1をガイドさせて側壁部材1を地中に打設する。打設工程では、一対のガイド部材62に側壁部材1の内面と外面とを接触させながら、側壁部材1を打設する。
そして、打設工程では、筒状壁体10を構成する全ての側壁部材1を地中に埋設する。打設工程では、筒状壁体10を地中に埋設した後、保持部材6を撤去する。
その後、第1実施形態と同様に、集水管設置工程と、排水管設置工程と、を行って、既設地中構造物の補強方法の一例が完了する。
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程では、保持部材6を地盤に設置し、保持部材6により側壁部材1を地盤に対して起立した状態を保持する。これにより、側壁部材1が起立した状態を安定化させることができる。このため、側壁部材1の配置位置の誤差、製作誤差等により、筒状壁体10が平面視で閉断面とならない場合でも、保持した側壁部材1を保持部材6から取り外して再度位置合わせし、筒状壁体10を平面視で閉断面に修正することができる。その結果、施工を容易に行うことが可能となる。
本実施形態によれば、筒状壁体立設工程では、互いに離間して一対の保持部材6を設置し、一対の保持部材6により側壁部材1を挟んで地盤に対して起立した状態に保持する。これにより、側壁部材1が起立した状態を更に安定化させることができる。
本実施形態によれば、打設工程では、一対のガイド部材62に側壁部材1の内面と外面とを接触させながら、側壁部材1を打設する。これにより、側壁部材1を所定位置に打設することが更に容易となる。このため、地中構造物100の形状の精度が更に向上する。
(第3実施形態:既設地中構造物の補強方法)
次に、第3実施形態における既設地中構造物の補強方法の一例について説明する。
既設地中構造物の補強方法は、既設地中構造物8を補強する方法であって、筒状壁体構築工程を備える。筒状壁体構築工程は、筒状壁体立設工程と、打設工程と、を有する。既設地中構造物の補強方法では、第1実施形態と同様に、筒状壁体立設工程を行う。
<<打設工程>>
打設工程では、図11に示すように、一の側壁部材1を打設した後に、当該一の側壁部材1の上方に縦継用側壁部材1’を配置する。縦継用側壁部材1’は、側壁部材1と同様のものが用いられる。縦継用側壁部材1’は、例えばハット形の鋼矢板が用いられる。縦継用側壁部材1’は、正面側から見て矩形状に形成される。縦継用側壁部材1’は、上下方向を長手方向とし、短手方向の両端部に継手部11’、12’が形成される。
そして、打設工程では、図12に示すように、側壁部材1と縦継用側壁部材1’とに当て板13を溶接することにより縦継する。打設工程では、側壁部材1と縦継用側壁部材1’とを縦継した後、必要に応じて、縦継用側壁部材1’を振動式杭打機により打設してもよい。
本実施形態によれば、打設工程では、一の側壁部材1を打設した後に、一の側壁部材1の上方に縦継用側壁部材1’を縦継する。これにより、側壁部材1の長さが地中構造物100の設計深さに対して短い場合に、縦継用側壁部材1’により地中への根入れ長を確保することができる。また、縦継用側壁部材1’の継手部11’、12’は、両側に隣接する他の側壁部材1の継手部11、12にスライドさせることができる。このため、縦継用側壁部材1’を側壁部材1の上方に配置する際にふら付くことがなく、縦継する下側の側壁部材1と位置を合わせやすい。
(第4実施形態:既設地中構造物の補強方法)
次に、第4実施形態における既設地中構造物の補強方法の一例について説明する。
既設地中構造物の補強方法は、既設地中構造物8を補強する方法であって、筒状壁体構築工程を備える。既設地中構造物の補強方法は、既設集水管撤去工程と、既設排水管撤去工程と、集水管設置工程と、排水管設置工程と、を更に備えてもよい。
<既設集水管撤去工程>
図3に示すように、既設地中構造物8は、既設集水管83と、既設排水管84と、が設けられる。
図13に示すように、既設集水管撤去工程は、筒状壁体構築工程の前に、既設集水管83を撤去する。これにより、既設地中構造物8の周囲に筒状壁体10を構築する際に、既設集水管83に阻害されることなく、側壁部材1を打設することができる。
その後、第1実施形態と同様に、既設排水管撤去工程と、筒状壁体構築工程と、集水管設置工程と、排水管設置工程と、を行い、既設地中構造物の補強方法の一例が完了する。
本実施形態によれば、筒状壁体構築工程の前に、既設地中構造物8の周囲に設置された既設集水管83を撤去する既設集水管撤去工程を備える。これにより、既設集水管83に阻害されることなく、既設地中構造物8の周囲に筒状壁体10を構築できる。このため、筒状壁体10を確実に施工することが可能となる。
(第5実施形態:地中構造物100)
次に、第5実施形態における地中構造物100の一例について説明する。
図16に示すように、地中構造物100は、地中に埋設される筒状壁体10を備える。地中構造物100は、更に、梁材2と、集水管3と、排水管4と、を備えてもよい。
梁材2は、例えばH形鋼が用いられる。梁材2は、筒状壁体10を補強するものであり、筒状壁体10の内側に設けられる。梁材2は、筒状壁体10の内周面に沿って配置される。梁材2は、角形鋼管等が用いられてもよい。
集水管3は、筒状壁体10の外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。集水管3は、例えば塩化ビニル管等の公知の配管材である。集水管3は、筒状壁体10に近づくにつれて下方に傾斜するように配置される。集水管3は、筒状壁体10の外側の地中の雨水、地下水等を、筒状壁体10の内側に集水する。集水管3は、上下方向に離間して複数配置される。
排水管4は、筒状壁体10の外側に向けて延びて形成され、地中に埋設される。排水管4は、筒状壁体10の下端部に設けられる。排水管4は、例えば鋼管等の公知の配管材である。排水管4は、筒状壁体10の内側に集水された水を、筒状壁体10の外側に排水する。
(第5実施形態:地中構造物の施工方法)
次に、第5実施形態における地中構造物の施工方法の一例について説明する。
地中構造物の施工方法は、既設地中構造物8を撤去して新たな地中構造物100を設置する方法である。地中構造物の施工方法は、筒状壁体構築工程と、既設地中構造物撤去工程と、を備える。地中構造物の施工方法は、更に既設排水管撤去工程と、集水管設置工程と、排水管設置工程と、を備えてもよい。
<既設排水管撤去工程>
既設排水管撤去工程は、第1実施形態と同様に、既設排水管84を撤去する。
<筒状壁体構築工程>
図14に示すように、筒状壁体構築工程は、第1実施形態と同様に、矩形状の側壁部材1の短手方向の両端部に形成される継手部11、12同士を接続し、複数の側壁部材1により筒状に形成される筒状壁体10を、既設地中構造物8の周囲に構築する。
<既設地中構造物撤去工程>
既設地中構造物撤去工程は、筒状壁体10の内側の既設地中構造物8と、筒状壁体10の内側の土砂と、を撤去する。既設地中構造物撤去工程は、筒状壁体10の内側の既設集水管83を撤去し、筒状壁体10の外側の既設集水管83を地中に残置する。既設地中構造物撤去工程は、梁材設置工程を有する。
<<梁材設置工程>>
図15に示すように、既設地中構造物撤去工程は、既設地中構造物8を所定の深さ撤去した後に、筒状壁体10の内側に梁材2を設置する梁材設置工程を有する。これにより、筒状壁体10を補強することができる。なお、既設地中構造物撤去工程は、全ての既設地中構造物8を撤去した後に、筒状壁体10の内側に梁材2を設置する梁材設置工程を有してもよい。
<集水管設置工程>
図16に示すように、集水管設置工程は、既設地中構造物8を所定の深さ撤去した後に、又は、既設地中構造物8の撤去が完了した後に、筒状壁体10の外側に向けて延びる集水管3を設置する。集水管設置工程は、ボーリング等により筒状壁体10及び地中に孔を形成し、形成した孔に集水管3を設置する。
<排水管設置工程>
排水管設置工程は、既設地中構造物8の撤去が完了した後に、筒状壁体10の下端部の周囲に、筒状壁体10の外側に向けて延びる排水管4を設置する排水管設置工程を有する。排水管設置工程は、ボーリング等により筒状壁体10及び地中に孔を形成し、形成した孔に排水管4を設置する。
以上により、地中構造物の施工方法の一例が完了する。
本実施形態によれば、筒状壁体構築工程の後に、既設地中構造物8を撤去する既設地中構造物撤去工程を備える。これにより、既設地中構造物8を撤去する際に、既設地中構造物8が筒状壁体10に囲われることから、地盤の側面が露出されずに、地盤の崩壊を抑制することができる。このため、既設地中構造物8を安全に撤去することが可能となる。
本実施形態によれば、既設地中構造物撤去工程は、既設地中構造物8を所定の深さ撤去した後に、筒状壁体10の内側に梁材2を設置する梁材設置工程を有する。これにより、筒状壁体10の所定位置に梁材2を設置しながら掘削を進めることで、筒状壁体10を適宜補強できるため、更に安全に施工を行うことが可能となる。
本実施形態によれば、既設地中構造物8を所定の深さ撤去した後に、又は、既設地中構造物8の撤去が完了した後に、筒状壁体10の外側に向けて延びる集水管3を設置する集水管設置工程と、既設地中構造物8の撤去が完了した後に、筒状壁体10の下端部に、筒状壁体10の外側に向けて延びる排水管4を設置する排水管設置工程と、を備える。これにより、地中構造物100を集水井として構築できる。
上述したいくつかの実施形態では、集水井等の地盤の上面から下方に向けて延びる既設地中構造物を例示して説明したが、既設地中構造物は、トンネルや隧道等の地盤の側面から横方向に延びる構造物であってもよい。この場合、側壁部材1の長手方向を横方向に向けて、地盤の側面に対して打設してもよい。筒状壁体10は、横方向に延びるトンネルや隧道等の既設地中構造物の周囲に構築されることとなる。
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これら実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。例えば、上記の実施形態において、筒状壁体10は平面視で円形としているが、小判形や馬蹄形、矩形など、その形状は限定しない。また、側壁部材1は既設地中構造物8の高さ方向全長に亘って設置しているが、側壁部材1を既設地中構造物8の下方のみ、又は、上方のみのように、部分的に設置してもよい。この場合、筒状壁体10は、既設地中構造物8の一部を囲うように構築される。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
100 :地中構造物
200 :補強構造
10 :筒状壁体
1 :側壁部材
1a :下端部
1b :上端部
11 :継手部
12 :継手部
1’ :縦継用側壁部材
11’ :継手部
12’ :継手部
13 :当て板
2 :梁材
3 :集水管
4 :排水管
5 :ガイド部材
51 :開口部
6 :保持部材
61 :底板部
62 :ガイド部材
8 :既設地中構造物
8a :下端部
83 :既設集水管
84 :既設排水管

Claims (13)

  1. 既設地中構造物を補強する既設地中構造物の補強構造であって、
    既設地中構造物の周囲に構築される筒状の筒状壁体を備え、
    前記筒状壁体は、
    短手方向の両端部に継手部が形成される側壁部材の前記継手部同士が接続されて筒状に形成されること
    を特徴とする既設地中構造物の補強構造。
  2. 前記側壁部材は、鋼矢板であること
    を特徴とする請求項1記載の既設地中構造物の補強構造。
  3. 前記側壁部材は、板厚10mm以下の鋼矢板であること
    を特徴とする請求項1又は2記載の既設地中構造物の補強構造。
  4. 前記側壁部材は、ステンレス製の鋼矢板であること
    を特徴とする請求項は1~3の何れか1項記載の既設地中構造物の補強構造。
  5. 既設地中構造物を補強する既設地中構造物の補強方法であって、
    側壁部材の短手方向の両端部に形成される継手部同士を接続し、複数の側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を、前記既設地中構造物の周囲に構築する筒状壁体構築工程を備えること
    を特徴とする既設地中構造物の補強方法。
  6. 前記筒状壁体構築工程は、
    前記側壁部材を地盤に対して起立した状態に保持し、保持した前記側壁部材の一方の継手部と、当該側壁部材とは異なる他の側壁部材の他方の継手部と、を接続し、前記筒状壁体を地上に立設する筒状壁体立設工程と、
    前記筒状壁体を構成する複数の前記側壁部材を順次地中に打設し、前記既設地下構造物の周囲に前記筒状壁体を設置する打設工程と、を有すること
    を特徴とする請求項5記載の既設地中構造物の補強方法。
  7. 前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材の長手方向の一端部を地中に埋設して地盤に対して起立した状態を保持すること
    を特徴とする請求項6記載の既設地中構造物の補強方法。
  8. 前記筒状壁体立設工程では、前記側壁部材を打設する際のガイドとなるガイド部材を地盤に設置し、
    前記打設工程では、前記ガイド部材により前記側壁部材をガイドさせて前記側壁部材を打設すること
    を特徴とする請求項6又は7記載の既設地中構造物の補強方法。
  9. 前記既設地中構造物は、既設集水井であり、
    前記打設工程は、前記側壁部材を打設し、前記既設集水井の周囲に設置された既設集水管を前記側壁部材により切断すること
    を特徴とする請求項6~8の何れか1項記載の既設地中構造物の補強方法。
  10. 前記既設地中構造物は、既設集水井であり、
    前記筒状壁体構築工程の前に、前記既設集水井の周囲に設置された既設集水管を撤去する既設集水管撤去工程を更に備えること
    を特徴とする請求項5~8の何れか1項記載の既設地中構造物の補強方法。
  11. 前記既設地中構造物は、既設集水井であり、
    前記筒状壁体構築工程の前に、前記既設集水井の周囲に設置された既設排水管を撤去する既設排水管撤去工程を更に備えること
    を特徴とする請求項5~10の何れか1項記載の既設地中構造物の補強方法。
  12. 前記既設地中構造物は、既設集水井であり、
    前記筒状壁体構築工程の後に、前記既設集水井の周囲に前記筒状壁体を貫通する集水管を設置する集水管設置工程と、
    前記筒状壁体構築工程の後に、前記既設集水井の周囲に前記筒状壁体を貫通する排水管を設置する排水管設置工程と、
    を更に備えること
    を特徴とする請求項5~11の何れか1項記載の既設地中構造物の補強方法。
  13. 地中構造物を施工する地中構造物の施工方法であって、
    側壁部材の短手方向の両端部に形成される継手部同士を接続し、複数の側壁部材により筒状に形成される筒状壁体を、既設地中構造物の周囲に構築する筒状壁体構築工程と、
    前記既設地中構造物を撤去する既設地中構造物撤去工程と、を備えること
    を特徴とする地中構造物の施工方法。
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