JP2023142987A - リーン車両 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はリーン車両に関する。
従来から、走行のための駆動力を発生させる駆動源と、駆動源を支持する車体フレームとを備えたリーン車両が知られている。リーン車両とは、左折時または右折時に車体を傾ける車両のことである。例えば特許文献1には、車体フレームと、車体フレームに支持された内燃機関(以下、エンジンという)とを備えた自動二輪車が記載されている。特許文献1に記載された自動二輪車では、車体フレームに懸架プレートが固定され、その懸架プレートにエンジンがボルトにより固定されている。
ところで、エンジンは重量物である。エンジンを安定して支持する観点からは、エンジンを車体フレームに対して強固に固定することが好ましい。エンジンが車体フレームに対して強固に固定されている場合、車体フレームとエンジンとの一体性が高くなる。一方、自動二輪車等のリーン車両は乗員が跨がって乗車する車両であるため、車体フレームの挙動が乗員の乗車感に与える影響が大きい。車体フレームとエンジンとの一体性が極めて高い場合、必ずしも良好な乗車感が得られるとは限らなかった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動源が車体フレームに安定して支持されると共に、良好な乗車感が得られるリーン車両を提供することである。
リーン車両が急加速または急減速を行う場合、駆動源の慣性により、車体フレームは駆動源から後向きまたは前向きの力を受ける。また、リーン車両では、路面の凹凸等により、車体フレームが比較的大きく上方または下方に動く傾向がある。車体フレームが上方または下方に動くときに、駆動源の慣性により、車体フレームは駆動源から下向きまたは上向きの力を受ける。そのため、車体フレームと駆動源とを接続する懸架プレートには、ピッチ方向について高い剛性が求められる。
一方、リーン車両が左折または右折するときに、車体フレームは左方または右方に傾倒する。その後、リーン車両が直進するときには、車体フレームは傾倒した状態から直立した状態に戻る。このようなコーナリング時に、駆動源の慣性により、車体フレームは駆動源から左向きまたは右向きの力を受ける。ところが、車体フレームと駆動源との一体性が高すぎると、コーナリング時の乗車感が低下する傾向がある。本願発明者は鋭意研究の結果、このような知見を得て、下記の発明をなすに至った。
ここに開示されるリーン車両は、ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びるフレーム部材と、を有する車体フレームを備える。前記リーン車両は、前記フレーム部材に取り付けられた懸架プレートと、前記懸架プレートに取り付けられた駆動源と、を備える。前記懸架プレートは、車両左右方向の寸法が車両前後方向の寸法および車両上下方向の寸法のいずれよりも小さい第1プレートと、車両左右方向の寸法が車両前後方向の寸法および車両上下方向の寸法のいずれよりも小さく、前記第1プレートに左右に重ねられた第2プレートと、を有する。前記第1プレートと前記第2プレートとは、互いに摺動可能に接触している。
上記リーン車両によれば、懸架プレートは、車両前後方向および車両上下方向の寸法が車両左右方向の寸法よりも大きな第1プレートおよび第2プレートを有している。そのため、懸架プレートのピッチ方向の剛性が確保される。第1プレートおよび第2プレートは左右に重ねられているので、懸架プレートが一枚のプレートにより形成されている場合に比べて、懸架プレートの車両左右方向の曲げ剛性が低くなる。そのため、コーナリング時に車体フレームが傾くとき、および、傾いた状態から直立した状態に戻るときに、車体フレームと駆動源との一体性が緩和される。これにより、乗員の操作に対する車体フレームの挙動の変化が穏やかになるので、コーナリング時の乗車感を向上させることができる。更に、上記リーン車両によれば、第1プレートと第2プレートとは互いに摺動可能に接触している。そのため、コーナリング時に車体フレームが傾くとき、および、傾いた状態から直立した状態に戻るときに、第1プレートと第2プレートとの間に摩擦が生じる。このことによっても、乗員の操作に対する車体フレームの挙動の変化が穏やかになる。よって、コーナリング時の乗車感を更に向上させることができる。
前記第1プレートと前記第2プレートとは、ボルトまたはリベットにより結合されていてもよい。
このことにより、簡易な構成により、第1プレートと第2プレートとを互いに結合することができ、かつ、摺動可能に接触させることができる。
前記フレーム部材と前記第1プレートと前記第2プレートとは、ボルトまたはリベットにより結合されていてもよい。
このことにより、懸架プレートとフレーム部材とを結合する部材と、第1プレートと第2プレートとを結合する部材とを共通化することができる。よって、部品点数を削減することができる。また、簡易な構成により、第1プレートと第2プレートとフレーム部材とを互いに結合することができ、かつ、第1プレートと第2プレートとを互いに摺動可能に接触させることができる。
前記第1プレートの材料と前記第2プレートの材料とが異なっていてもよい。
このように第1プレートの材料と第2プレートの材料とを適宜に異ならせることにより、懸架プレートの特性を調整することができる。
前記懸架プレートは、前記フレーム部材に対して車幅方向の外方に配置されていてもよい。
このことにより、懸架プレートを車幅方向の外方から車体フレームに取り付けることができる。
前記フレーム部材には、それぞれ側方に開口した第1取付孔および第2取付孔が形成されていてもよい。前記駆動源には、側方に開口した第3取付孔が形成されていてもよい。前記第1プレートおよび前記第2プレートのそれぞれには、それぞれ左右に貫通した第1貫通孔、第2貫通孔、および第3貫通孔が形成されていてもよい。前記リーン車両は、前記第1プレートの前記第1貫通孔と、前記第2プレートの前記第1貫通孔と、前記フレーム部材の前記第1取付孔とに挿入され、前記第1プレートおよび前記第2プレートを前記フレーム部材に固定する第1ボルトを備えていてもよい。前記リーン車両は、前記第1プレートの前記第2貫通孔と、前記第2プレートの前記第2貫通孔と、前記フレーム部材の前記第2取付孔とに挿入され、前記第1プレートおよび前記第2プレートを前記フレーム部材に固定する第2ボルトを備えていてもよい。前記リーン車両は、前記第1プレートの前記第3貫通孔と、前記第2プレートの前記第3貫通孔と、前記駆動源の前記第3取付孔とに挿入され、前記駆動源を前記第1プレートおよび前記第2プレートに固定する第3ボルトを備えていてもよい。
このことにより、前述の効果を得ながら、駆動源をフレーム部材に容易に組み付けることができる。
車両側面視において、前記第1貫通孔の中心と前記第2貫通孔の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、前記第2貫通孔の中心と前記第3貫通孔の中心とを結ぶ直線を第2直線とし、前記第3貫通孔の中心と前記第1貫通孔の中心とを結ぶ直線を第3直線とし、前記第1貫通孔の中心と前記第2貫通孔の中心と前記第3貫通孔の中心とを結ぶ三角形の重心をプレート中心とする。前記第1プレートおよび前記第2プレートは、車両側面視において、前記第1直線に対して前記プレート中心と反対側に位置し、かつ、前記第1直線に向かって凹状の第1の辺と、前記第2直線に対して前記プレート中心と反対側に位置し、かつ、前記第2直線に向かって凹状の第2の辺と、前記第3直線に対して前記プレート中心と反対側に位置し、かつ、前記第3直線に向かって凹状の第3の辺と、を有していてもよい。
このことにより、第1プレートおよび第2プレートを軽量化することができる。
前記駆動源は、車両左右方向に延びるクランク軸を有する内燃機関であってもよい。前記懸架プレートは、車両側面視において、前記クランク軸よりも車両前後方向の前方に配置されていてもよい。前記懸架プレートは、車両側面視において、前記クランク軸よりも車両上下方向の上方に配置されていてもよい。
前記車体フレームは、前記ヘッドパイプから後方に延びるメインフレームと、前記ヘッドパイプから下方に延びるダウンフレームと、前記ダウンフレームの下端部から後方に延びるロアフレームと、を有していてもよい。前記フレーム部材は、前記メインフレーム、前記ダウンフレーム、または前記ロアフレームであってもよい。
本発明によれば、駆動源が車体フレームに安定して支持されると共に、良好な乗車感が得られるリーン車両を提供することができる。
以下、リーン車両の一実施形態について説明する。図1に示すように、以下に説明するリーン車両の実施形態は、オフロード型の自動二輪車1である。
以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下とは、乗員が乗車せずかつ荷物が載せられていない自動二輪車1が水平面上に直立した状態で停止している場合に、シート6に着座する仮想的な乗員から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図中のF、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
自動二輪車1は、ヘッドパイプ11を有する車体フレーム10と、ハンドル2と、前輪3と、後輪4と、車体フレーム10に支持されたシート6と、車体フレーム10に支持された内燃機関(以下、エンジンという)5と、を備えている。
ヘッドパイプ11には、図示しないステアリングシャフトが左右に回転可能に挿入されている。ハンドル2はステアリングシャフトの上部に接続されている。ステアリングシャフトの下部には、フロントフォーク2Aが接続されている。前輪3はフロントフォーク2Aの下端部に接続されている。車体フレーム10には、ピボット軸7が接続されている。ピボット軸7はリアアーム8に接続されている。リアアーム8はピボット軸7を介して、車体フレーム10に上下に揺動可能に支持されている。後輪4はリアアーム8の後端部に接続されている。後輪4はチェーン9を介してエンジン5に接続されている。チェーン9は、エンジン5の駆動力を後輪4に伝達する動力伝達部材である。ただし、動力伝達部材はチェーン9に限らず、伝動ベルト、ドライブシャフト等であってもよい。後輪4はエンジン5によって駆動される駆動輪である。
図2は、車体フレーム10およびエンジン5の左側面図である。図3は、車体フレーム10およびエンジン5の部分正面図である。図2に示すように、車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11から後方に延びる左右のメインフレーム12と、ヘッドパイプ11から下方に延びるダウンフレーム14と、ダウンフレーム14の下端から後方に延びる左右のロアフレーム15と、メインフレーム12から後方かつ上方に延びる左右のシートフレーム16と、メインフレーム12から後方かつ上方に延びる他のフレーム17,18とを備えている。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11の第1部分11aから後方かつ下方に延びている。ダウンフレーム14は、ヘッドパイプ11の第1部分11aよりも下方の第2部分11bから後方かつ下方に延びている。ロアフレーム15の後端部とメインフレーム12の下端部とは接続されている。フレーム17はシートフレーム16の下方に配置され、フレーム18はフレーム17の下方に配置されている。
メインフレーム12には、ピボット軸7が挿入される孔25が形成されている。ピボット軸7はメインフレーム12に支持される。ダウンフレーム14には、後述する懸架プレート40を取り付けるためのボルト71,72が挿入される取付孔21,22が形成されている。取付孔21,22は側方に開口している。取付孔21,22は、左方および右方に開口している。
エンジン5は、クランク軸55と、出力軸56と、クランク軸55を支持するクランクケース51と、クランクケース51から上方に延びるシリンダボディ57と、シリンダボディ57から上方に延びるシリンダヘッド58と、シリンダヘッド58から上方に延びるシリンダヘッドカバー58Aとを備えている。本実施形態では、シリンダボディ57は上方かつ後方に延びている。しかし、特に限定される訳ではなく、シリンダボディ57は鉛直線に沿って上方に延びていてもよく、上方かつ前方に延びていてもよい。クランク軸55は車両左右方向に延びている。出力軸56には、図示しないスプロケットを介してチェーン9(図1参照)が巻き掛けられる。
メインフレーム12には、ブラケット30が固定されている。ブラケット30はメインフレーム12に溶接されていてもよいが、ここではボルト50Aによりメインフレーム12に固定されている。エンジン5のシリンダヘッド58は、ボルト50Bによりブラケット30に固定されている。
ロアフレーム15にはブラケット32が固定されている。ブラケット32はロアフレーム15にボルトにより固定されていてもよいが、ここではロアフレーム15に溶接されている。エンジン5のクランクケース51の下部は、ボルト50Cによりブラケット32に固定されている。
ダウンフレーム14には、左右の懸架プレート40が固定されている。左右の懸架プレート40は、ボルト71,72およびナット71N,72N(図3参照)により、ダウンフレーム14に固定されている。図4は、図2のIV-IV線断面図である。エンジン5のクランクケース51には、取付孔53が形成されている。取付孔53は側方に開口している。クランクケース51は、取付孔53に挿入されたボルト73およびナット73Nにより、左右の懸架プレート40に固定されている。
次に、懸架プレート40の詳細について説明する。
図5に示すように、懸架プレート40は第1プレート41および第2プレート42を備えている。懸架プレート40は3枚以上のプレートからなっていてもよいが、ここでは2枚のプレート41,42によって構成されている。第1プレート41および第2プレート42の形状または寸法は互いに異なっていてもよいが、ここでは第1プレート41および第2プレート42の形状および寸法は互いに等しい。また、第1プレート41および第2プレート42の材料は互いに異なっていてもよいが、ここでは互いに等しい。第1プレート41の車両左右方向の寸法W41は、第1プレート41の車両前後方向の寸法L41よりも小さく、車両上下方向の寸法H41よりも小さい。第2プレート42の車両左右方向の寸法W42は、第2プレート42の車両前後方向の寸法L42よりも小さく、車両上下方向の寸法H42よりも小さい。
第1プレート41には、それぞれ車両左右方向に貫通した第1貫通孔61、第2貫通孔62、および第3貫通孔63が形成されている。図6に示すように、第1プレート41は、車両側面視において略三角形状に形成されている。ただし、第1プレート41の各辺は凹状に曲がっている。詳しくは以下の通りである。
図6に示すように車両側面視において、第1貫通孔61の中心61cと第2貫通孔62の中心62cとを結ぶ直線を第1直線L1とし、第2貫通孔62の中心62cと第3貫通孔63の中心63cとを結ぶ直線を第2直線L2とし、第3貫通孔63の中心63cと第1貫通孔61の中心61cとを結ぶ直線を第3直線L3とし、第1貫通孔61の中心61cと第2貫通孔62の中心62cと第3貫通孔63の中心63cとを結ぶ三角形の重心をプレート中心Pcとする。なお、ここでいう三角形の重心とは、幾何学において定義される三角形の重心のことである。すなわち、三角形では、各頂点とその対辺の中点とを結ぶ線(中線)が3本形成されるが、三角形の重心とは、それら3本の中線が交わる点のことである。第1プレート41は、車両側面視において、第1の辺81と、第2の辺82と、第3の辺83とを有している。第1の辺81は、第1直線L1に対してプレート中心Pcと反対側に位置しており、かつ、第1直線L1に向かって凹状に湾曲している。第2の辺82は、第2直線L2に対してプレート中心Pcと反対側に位置しており、かつ、第2直線L2に向かって凹状に湾曲している。第3の辺83は、第3直線L3に対してプレート中心Pcと反対側に位置しており、かつ、第3直線L3に向かって凹状に湾曲している。
前述したように、第2プレート42の形状は第1プレート41の形状と等しい。そのため、第1プレート41と同様の部分には同様の符号を付し、第2プレート42の形状の説明は省略することとする。
図5に示すように、第1プレート41と第2プレート42とは、車両左右方向に重ねられている。第1プレート41と第2プレート42とは、ボルト71~73によって互いに結合されるが、互いに溶接されてはいない。第1プレート41と第2プレート42とは、それらの対向面の全体が溶接されている訳ではなく、スポット溶接されている訳でもない。第1プレート41と第2プレート42とは、互いに摺動可能に接触している。なお、第1プレート41と第2プレート42との摺動は、容易に視認できない程度の微小なものである。第1プレート41と第2プレート42とが摺動するときに、懸架プレート40には視認可能な大きな変形は生じない。第2プレート42の第1プレート41との接触面は、第2プレート42の第1プレート41との対向面42Sの全体であってもよく、一部であってもよい。第2プレート42の第1プレート41との接触面積は特に限定されない。
第1プレート41と第2プレート42とを互いに摺動可能なように結合する構成は特に限定されない。例えば、第1プレート41と第2プレート42とは、リベットにより結合されていてもよい。本実施形態では、第1プレート41と第2プレート42とは、懸架プレート40を車体フレーム10に固定するボルト71,72と、エンジン5を懸架プレート40に固定するボルト73とによって結合されている。
詳しくは図2に示すように、ボルト71は、第1プレート41の第1貫通孔61と、第2プレート42の第1貫通孔61と、ダウンフレーム14の取付孔21とに挿入されている。ボルト71およびナット71N(図3参照)は、第1プレート41と第2プレート42とを摺動可能に結合するとともに、第1プレート41および第2プレート42をダウンフレーム14に固定している。
ボルト72は、第1プレート41の第2貫通孔62と、第2プレート42の第2貫通孔62と、ダウンフレーム14の取付孔22とに挿入されている。ボルト72およびナット72Nは、第1プレート41と第2プレート42とを摺動可能に結合するとともに、第1プレート41および第2プレート42をダウンフレーム14に固定している。
ボルト73は、第1プレート41の第3貫通孔63と、第2プレート42の第3貫通孔63と、エンジン5の取付孔53とに挿入されている。ボルト73およびナット73Nは、第1プレート41と第2プレート42とを摺動可能に結合するとともに、エンジン5を第1プレート41および第2プレート42に固定している。
本実施形態では、懸架プレート40はダウンフレーム14に対して車幅方向の外方に配置されている。詳しくは、左の懸架プレート40はダウンフレーム14の左方に配置され、右の懸架プレート40はダウンフレーム14の右方に配置されている。
本実施形態では、懸架プレート40は、車両側面視においてクランク軸55よりも車両前後方向の前方に配置されている。また、懸架プレート40は、車両側面視においてクランク軸55よりも車両上下方向の上方に配置されている。ただし、懸架プレート40の位置は特に限定されない。車体フレーム10において懸架プレート40が取り付けられる部位は、ダウンフレーム14に限定されない。懸架プレート40は、メインフレーム12またはロアフレーム15に取り付けられていてもよい。
以上が自動二輪車1の構成である。次に、本実施形態に係る自動二輪車1によってもたらされる様々な効果について説明する。
走行の駆動源であるエンジン5は重量物である。自動二輪車1が急加速または急減速するときに、エンジン5には慣性力が発生する。そのため、自動二輪車1が急加速するときに、車体フレーム10はエンジン5から後向きの力を受ける。自動二輪車1が急減速するときに、車体フレーム10はエンジン5から前向きの力を受ける。また、自動二輪車1は、凹凸のある路面上を走行する。路面の凹凸が大きい場合、車体フレーム10は上方または下方に大きく動く。車体フレーム10が上方に動くときに、エンジン5には慣性力が発生するため、車体フレーム10はエンジン5から下向きの力を受ける。車体フレーム10が下方に動くときに、エンジン5には慣性力が発生するため、車体フレーム10はエンジン5から上向きの力を受ける。このように、車体フレーム10はエンジン5から、前向き、後向き、上向き、および下向きの力を受ける。そのため、車体フレーム10とエンジン5とを接続する懸架プレート40には、ピッチ方向について高い剛性が求められる。懸架プレート40のピッチ方向の剛性が高いほど、ピッチ方向に関して車体フレーム10とエンジン5との一体性が高まり、安定感を得ることができる。特に、荒れた路面を走行するオフロード型の自動二輪車1において、優れた安定性を得ることができる。
一方、自動二輪車1はリーン車両であるため、左折または右折するときに、車体フレーム10は左方または右方に倒される。左折後または右折後、自動二輪車1が直進するときに、車体フレーム10は傾倒した状態から直立した状態に戻される。エンジン5には慣性力が発生するため、コーナリング時に、車体フレーム10はエンジン5から左向きまたは右向きの力を受ける。ところが、コーナリング時における車体フレーム10を倒す動作および起こす動作は、乗員によって行われる。車体フレーム10とエンジン5との一体性が高すぎると、乗員は車体フレーム10を倒す動作および起こす動作を軽快に行いにくい。エンジン5の安定性を高める観点からは、エンジン5を車体フレーム10に強固に固定することが望ましい。しかし、単にエンジン5を車体フレーム10に対して強固に固定しただけでは、コーナリング時に乗員が堅い感覚を感じてしまい、乗車感が低下してしまう。
ところで、左右方向の寸法がb、上下方向の寸法がhのプレートの鉛直軸に関する断面二次モーメントI1は、I1=(1/12)hb3である。そのため、図7(a)に示すように、左右方向の寸法がb、上下方向の寸法がhのプレートを左右に2枚重ねた場合、鉛直軸に関する断面二次モーメントは2×I1=(1/6)hb3となる。一方、図7(b)に示すように、左右方向の寸法が2b、上下方向の寸法がhのプレートの鉛直軸に関する断面二次モーメントI2は、I2=h(2b)3/12=(3/4)hb3である。そのため、2×I1<I2である。左右方向の寸法が同一の場合、2枚のプレートを左右に重ねることによって構成されたプレート(図7(a)参照)の方が、単一のプレート(図7(b)参照)よりも、鉛直軸に関する断面二次モーメントは小さくなる。
本実施形態によれば、エンジン5と車体フレーム10とを接続する懸架プレート40は、1枚のプレートではなく、左右に重ねられた第1プレート41および第2プレート42によって構成されている。そのため、懸架プレート40が1枚のプレートによって構成される場合に比べて、ピッチ方向の剛性を同等に確保しながら、左右方向の曲げに対する剛性が低減されている。車体フレーム10およびエンジン5の左右方向の挙動に関しては、車体フレーム10とエンジン5との一体性が緩和される。これにより、乗員は、コーナリング時に車体フレーム10を倒す動作および起こす動作をより軽快に行うことができる。
加えて、本実施形態によれば、第1プレート41と第2プレート42とは、互いに摺動可能に接触している。第1プレート41と第2プレート42とは、互いに溶接されていない。乗員が車体フレーム10を倒す動作および起こす動作を行うときに、懸架プレート40は車体フレーム10およびエンジン5から左右方向の力を受ける。そのため、懸架プレート40には曲げモーメントが作用し、懸架プレート40は一時的に微小な弾性変形を行う。すなわち、懸架プレート40は一時的に左右に撓み、その後、復元する。本実施形態では第1プレート41と第2プレート42とが摺動可能に接触しているので、懸架プレート40に左右方向の曲げモーメントが加わった場合、第1プレート41と第2プレート42との間で摩擦が生じる。この摩擦によりエネルギー損失が生じるため、懸架プレート40の弾性変形にはヒステリシスが生じる。このことにより、車体フレーム10およびエンジン5の左右方向の挙動に関して、挙動変化の吸収力を高めることができる。乗員は、車体フレーム10を倒す動作および起こす動作を、つながり良く行うことができる。
このように、本実施形態によれば、凹凸の大きな路面上を走行するときにも十分な安定感を得ることができるとともに、コーナリング時に車体フレーム10を倒す動作および起こす動作を軽快に行うことができる。よって、乗員は良好な乗車感を得ることができる。
本実施形態によれば、第1プレート41と第2プレート42とは、ボルト71~73により結合されている。本実施形態によれば、簡易な構成により、第1プレート41と第2プレート42とを互いに結合することができ、かつ、摺動可能に接触させることができる。
第1プレート41と第2プレート42とを結合するボルトと、懸架プレート40を車体フレーム10に結合するボルトとは、互いに異なっていてもよい。しかし、本実施形態では、車体フレーム10と第1プレート41と第2プレート42とは、共通のボルト71~73により結合されている。そのため、部品点数を削減することができる。また、簡易な構成により、第1プレート41と第2プレート42と車体フレーム10とを互いに結合することができ、かつ、第1プレート41と第2プレート42とを互いに摺動可能に接触させることができる。
本実施形態では、第1プレート41の材料と第2プレート42の材料とは等しい。しかし、第1プレート41の材料と第2プレート42の材料とは異なっていてもよい。例えば、第1プレート41および第2プレート42の一方の材料が鉄であり、他方の材料がアルミニウムであってもよい。第1プレート41の材料と第2プレート42の材料とを適宜に異ならせることにより、懸架プレート40の特性(例えば、ピッチ方向の剛性、左右の曲げに対する剛性、ヒステリシスの特性など)を調整することが可能となる。
なお、本実施形態では、第1プレート41の左右方向の寸法W41と第2プレート42の左右方向の寸法W42とは等しいが、それらは互いに異なっていてもよい。第1プレート41の左右方向の寸法W41と第2プレート42の左右方向の寸法W42とを適宜に異ならせることによっても、懸架プレート40の特性を調整することができる。
本実施形態によれば、懸架プレート40は車体フレーム10に対して車幅方向の外方に配置されている。そのため、懸架プレート40を車幅方向の外方から車体フレーム10に取り付けることができる。なお、車幅方向の外方とは、車両左右方向に関して車両中心線から遠ざかる方をいう。車幅方向の内方とは、車両左右方向に関して車両中心線に近づく方をいう。
本実施形態によれば、第1プレート41および第2プレート42には、それぞれ3つの貫通孔が形成されている。すなわち、第1プレート41および第2プレート42には、第1貫通孔61、第2貫通孔62、および第3貫通孔63が形成されている。懸架プレート40は、第1貫通孔61に挿入されたボルト71と第2貫通孔62に挿入されたボルト72とにより、車体フレーム10に固定されている。エンジン5は、第3貫通孔63に挿入されたボルト73により、懸架プレート40に固定されている。本実施形態によれば、前述の効果を得ながら、エンジン5を車体フレーム10に容易に組み付けることができる。
本実施形態によれば、車両側面視において、第1プレート41および第2プレート42の第1~第3の辺81~83は、プレート中心Pcに向かって凹状に形成されている。そのため、前述の効果を得ながら、第1プレート41および第2プレート42を軽量化することができる。前述の効果を得ながら、懸架プレート40を軽量化することができる。
以上、一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。
前述したように、第1プレート41と第2プレート42とを摺動可能に結合する結合部材はボルトに限られない。例えば、図8に示すように、第1プレート41と第2プレート42とは、リベット75によって結合されていてもよい。ボルト71~73に加え、第1プレート41と第2プレート42とをリベット75により結合することにより、第1プレート41と第2プレート42との密着力を高めることができる。なお、リベット75の本数は1本に限らず、2本以上であってもよい。
前記実施形態では、懸架プレート40は車体フレーム10の左側および右側に設けられていたが、左側のみに設けられていてもよく、右側のみに設けられていてもよい。懸架プレート40の枚数は2枚に限られず、1枚でもよく、3枚以上であってもよい。エンジン5の3箇所以上が懸架プレート40に固定されていてもよい。
第1プレート41および第2プレート42の貫通孔の数は3つに限定されない。貫通孔の数は2つでもよく、4つ以上であってもよい。
第1プレート41および第2プレート42の第1~第3の辺81~83のうちの少なくとも一つは、車両側面視においてプレート中心Pcに向かって凹状に形成されていなくてもよい。
懸架プレート40は、必ずしも車体フレーム10に対して車幅方向の外方に配置されていなくてもよい。懸架プレート40は、車体フレーム10に対して車幅方向の内方に配置されていてもよい。
懸架プレート40は、車両側面視においてクランク軸55よりも車両前後方向の前方に配置されていなくてもよい。懸架プレート40は、車両側面視においてクランク軸55よりも車両前後方向の後方に配置されていてもよい。
懸架プレート40は、車両側面視においてクランク軸55よりも車両上下方向の上方に配置されていなくてもよい。懸架プレート40は、車両側面視においてクランク軸55よりも車両上下方向の下方に配置されていてもよい。
前記実施形態の車体フレーム10の構成は一例に過ぎない。車体フレーム10の構成は特に限定されない。
リーン車両はオフロード型の自動二輪車に限らず、オンロード型の自動二輪車であってもよい。また、リーン車両は自動二輪車に限らず、自動三輪車等であってもよい。懸架プレート40に取り付けられる駆動源はエンジン5に限らず、電動モータ等であってもよい。リーン車両は電動車であってもよい。
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
1…自動二輪車(リーン車両)、5…内燃機関(駆動源)、21…取付孔(第1取付孔)、22…取付孔(第2取付孔)、10…車体フレーム、11…ヘッドパイプ、12…メインフレーム、14…ダウンフレーム、15…ロアフレーム、40…懸架プレート、41…第1プレート、42…第2プレート、53…取付孔(第3取付孔)、55…クランク軸、61…第1貫通孔、62…第2貫通孔、63…第3貫通孔、71…ボルト(第1ボルト)、72…ボルト(第2ボルト)、73…ボルト(第3ボルト)、75…リベット、81…第1の辺、82…第2の辺、83…第3の辺、L1…第1直線、L2…第2直線、L3…第3直線、Pc…プレート中心
Claims (10)
- ヘッドパイプと、前記ヘッドパイプから後方に延びるフレーム部材と、を有する車体フレームと、
前記フレーム部材に取り付けられた懸架プレートと、
前記懸架プレートに取り付けられた駆動源と、を備え、
前記懸架プレートは、車両左右方向の寸法が車両前後方向の寸法および車両上下方向の寸法のいずれよりも小さい第1プレートと、車両左右方向の寸法が車両前後方向の寸法および車両上下方向の寸法のいずれよりも小さく、前記第1プレートに左右に重ねられた第2プレートと、を有し、
前記第1プレートと前記第2プレートとは、互いに摺動可能に接触している、リーン車両。 - 前記第1プレートと前記第2プレートとは、ボルトまたはリベットにより結合されている、請求項1に記載のリーン車両。
- 前記フレーム部材と前記第1プレートと前記第2プレートとは、ボルトまたはリベットにより結合されている、請求項1に記載のリーン車両。
- 前記第1プレートの材料と前記第2プレートの材料とが異なっている、請求項1~3のいずれか一つに記載のリーン車両。
- 前記懸架プレートは、前記フレーム部材に対して車幅方向の外方に配置されている、請求項1~4のいずれか一つに記載のリーン車両。
- 前記フレーム部材には、それぞれ側方に開口した第1取付孔および第2取付孔が形成され、
前記駆動源には、側方に開口した第3取付孔が形成され、
前記第1プレートおよび前記第2プレートのそれぞれには、それぞれ左右に貫通した第1貫通孔、第2貫通孔、および第3貫通孔が形成され、
前記第1プレートの前記第1貫通孔と、前記第2プレートの前記第1貫通孔と、前記フレーム部材の前記第1取付孔とに挿入され、前記第1プレートおよび前記第2プレートを前記フレーム部材に固定する第1ボルトと、
前記第1プレートの前記第2貫通孔と、前記第2プレートの前記第2貫通孔と、前記フレーム部材の前記第2取付孔とに挿入され、前記第1プレートおよび前記第2プレートを前記フレーム部材に固定する第2ボルトと、
前記第1プレートの前記第3貫通孔と、前記第2プレートの前記第3貫通孔と、前記駆動源の前記第3取付孔とに挿入され、前記駆動源を前記第1プレートおよび前記第2プレートに固定する第3ボルトと、
を備えた、請求項1~5のいずれか一つに記載のリーン車両。 - 車両側面視において、前記第1貫通孔の中心と前記第2貫通孔の中心とを結ぶ直線を第1直線とし、前記第2貫通孔の中心と前記第3貫通孔の中心とを結ぶ直線を第2直線とし、前記第3貫通孔の中心と前記第1貫通孔の中心とを結ぶ直線を第3直線とし、前記第1貫通孔の中心と前記第2貫通孔の中心と前記第3貫通孔の中心とを結ぶ三角形の重心をプレート中心としたときに、
前記第1プレートおよび前記第2プレートは、車両側面視において、
前記第1直線に対して前記プレート中心と反対側に位置し、かつ、前記第1直線に向かって凹状の第1の辺と、
前記第2直線に対して前記プレート中心と反対側に位置し、かつ、前記第2直線に向かって凹状の第2の辺と、
前記第3直線に対して前記プレート中心と反対側に位置し、かつ、前記第3直線に向かって凹状の第3の辺と、を有している、請求項6に記載のリーン車両。 - 前記駆動源は、車両左右方向に延びるクランク軸を有する内燃機関であり、
前記懸架プレートは、車両側面視において、前記クランク軸よりも車両前後方向の前方に配置されている、請求項1~7のいずれか一つに記載のリーン車両。 - 前記駆動源は、車両左右方向に延びるクランク軸を有する内燃機関であり、
前記懸架プレートは、車両側面視において、前記クランク軸よりも車両上下方向の上方に配置されている、請求項1~7のいずれか一つに記載のリーン車両。 - 前記車体フレームは、前記ヘッドパイプから後方に延びるメインフレームと、前記ヘッドパイプから下方に延びるダウンフレームと、前記ダウンフレームの下端部から後方に延びるロアフレームと、を有し、
前記フレーム部材は、前記メインフレーム、前記ダウンフレーム、または前記ロアフレームである、請求項1~9のいずれか一つに記載のリーン車両。
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