JP2023142115A - 三次元造形用フィラメント、及びこれを用いた造形物 - Google Patents

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Mikimasa Mitsuhayashi
孝広 横山
Takahiro Yokoyama
邦彦 有田
Kunihiko Arita
政良 白石
Masayoshi Shiraishi
幸一 佐藤
Koichi Sato
洋康 白藤
Hiroyasu Shirafuji
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Abstract

【課題】柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とする三次元造形用フィラメントを提供する。【解決手段】エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)を含有する三次元造形用フィラメントであって、前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)は、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)とを含み、前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(重量%)は、前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上であり、前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量が6~11重量%である三次元造形用フィラメント。【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン-プロピレンランダム共重合体を含有する三次元造形用フィラメント、及びこれを用いた造形物に関する。
従来、熱融解積層方式による熱可塑性樹脂の造形として、三次元プリンターを用いた三次元造形が行われている。三次元造形は、金型内に溶融した熱可塑性樹脂を射出し、冷却固化して成形品を得る射出成形と比較して、造形の自由度が高く、形状が種々異なる造形物を作成するのに有用であることから、医療用途をはじめとして各種用途で注目されている。
この種の三次元造形においては、造形材料としてABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)やPLA樹脂(ポリ乳酸樹脂)等が幅広く使用されており、さらに近年、ABS樹脂やPLA樹脂よりも臭気が少なく、耐薬品性に優れ、造形物が柔軟性に優れるといった利点から、ポリプロピレン系樹脂からなる三次元造形用フィラメントが提案されている。
例えばメルトフローレート、結晶化ピーク温度、及び融解熱量を特定の範囲に規定したポリプロピレン系樹脂組成物からなるストランド(三次元造形用フィラメント)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、プロピレンから導かれる構成単位と、プロピレン以外のα-オレフィンから導かれる構成単位とを有し、極限粘度、重量平均分子量、融点、及び密度を特定の範囲に規定したプロピレン系共重合体からなる3次元プリンター用フィラメント(三次元造形用フィラメント)が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
さらに、エチレン誘導単位の含有量、メルトフローレート、及びキシレン可溶物の含有量を特定の範囲に規定したプロピレンエチレンコポリマーを含む消耗性フィラメント(三次元造形用フィラメント)が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
特開2017-197627号公報 特開2018-158451号公報 特表2019-513913号公報
特許文献1~3の三次元造形用フィラメントは、これを用いた造形品が十分な柔軟性を有するとはいい難く、また、高い造形速度で造形すると、造形不良が発生する虞がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とする三次元造形用フィラメント、及びこれを用いた造形物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る三次元造形用フィラメントの特徴構成は、
エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)を含有する三次元造形用フィラメントであって、
前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)は、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)とを含み、
前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(重量%)は、前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上であり、
前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量が6~11重量%であることにある。
本構成の三次元造形用フィラメントによれば、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)が、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)とを含むものとし、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(重量%)が、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上となるように選択することで、各エチレンの含有量に起因して融点、及び流動性が異なる2種類の共重合体を含むことになる。ここで、プロピレンホモポリマー(単独重合体)は結晶性を有するが、プロピレンとエチレンとの共重合体は、エチレンの含有量が大きくなる程、非晶性(アモルファス)の程度が大きくなり、これに伴って融点が低下し、ひいては融点が消失する。また、非晶性の程度が大きくなる程、加熱時の流動性が小さくなり、柔らかい樹脂となる。そして、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(x)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(y)との間に5倍以上の差異がある(y≧5x)ことにより、これら2種類の共重合体は、夫々エチレンの含有量に応じた融点、及び流動性を有することになる。また、当該三次元造形用フィラメントにおけるエチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量が6~11重量%であることにより、上記2種類の共重合体の流動性が適度な範囲に収まることになる。このように、上記2種類の共重合体の流動性の差異に起因して、これらの混合物としてのエチレン-プロピレンランダム共重合体(A)を含む当該三次元造形用フィラメントは、適度に溶融及び固化し易いものとなり、しかも、これを用いた造形物は、適度に柔らかいものとなる。これにより、当該三次元造形用フィラメントは、柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とするものとなる。
本発明に係る三次元造形用フィラメントにおいて、
JIS K7210に準拠して230℃/2.16kg荷重の条件で測定されるMFR値が30~60g/10分であることが好ましい。
本構成の三次元造形用フィラメントによれば、当該三次元造形用フィラメントのMFR値を上記の範囲とすることにより、当該三次元造形用フィラメントは、柔軟性に優れる造形物を高速で造形するのにより適した流動性を有するものとなる。これにより、当該三次元造形用フィラメントは、高いレベルで柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とするものとなる。
本発明に係る三次元造形用フィラメントにおいて、
前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)のJIS K7210に準拠して230℃/2.16kg荷重の条件で測定されるMFR値が10~60g/10分であり、
前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)の前記MFR値が1~60g/10分であることが好ましい。
本構成の三次元造形用フィラメントによれば、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)、及びエチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)のMFR値を夫々上記の範囲とすることにより、これら2種類の共重合体が夫々特定の流動性を有するものとなり、これら2種類の共重合体を含む当該三次元造形用フィラメントは、柔軟性に優れる造形物を高速で造形するのにより適した流動性を有するものとなる。これにより、当該三次元造形用フィラメントは、高いレベルで柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とするものとなる。
本発明に係る三次元造形用フィラメントにおいて、
ポリプロピレンホモポリマーをさらに含有することが好ましい。
本構成の三次元造形用フィラメントは、ポリプロピレンホモポリマーをさらに含有することにより、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)、及びポリプロピレンホモポリマーという結晶性が異なる3種類の成分を含有することになるため、結晶性の調整の幅が広がる。これにより、融点や流動性と相関のある結晶性を詳細に調整することができるため、当該三次元造形用フィラメントは、高精度で柔軟性に優れる造形物を高速で造形することが可能となる。
上記課題を解決するための本発明に係る造形物は、
前記三次元造形用フィラメントを用いたことにある。
本構成の造形物によれば、当該造形物は、上述した当該三次元造形用フィラメントを用いたものであることにより、柔軟性に優れ、かつ高速で造形されたものとなる。
本発明の三次元造形用フィラメント、及びこれを用いた造形物について、以下に説明する。
<三次元造形用フィラメント>
本実施形態の三次元造形用フィラメントは、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)を含有する三次元造形用フィラメントである。エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)は、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)とを含み、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(重量%)は、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上である。
本明細書において、「エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量」とは、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)に含まれるエチレン単位(-CH-CH-)の合計重量を、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)の全体(全構成単位)の重量に対する百分率で表したものであり、重量%で表される。「エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量」も、同義である。また、「エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量」とは、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に含まれる全てのエチレン-プロピレンランダム共重合体に含まれるエチレン単位(-CH-CH-)の合計重量を、三次元造形用フィラメントの全体の重量に対する百分率で表したものであり、重量%で表される。各エチレン-プロピレンランダム共重合体に含まれるエチレンの含有量(重量%)は、赤外全反射吸収測定法を用いてエチレン-プロピレンランダム共重合体中のエチレン単位(-CH-CH-)と、プロピレン単位(-CH(CH)-CH-)との重量比を得た後、この重量比から、エチレン単位及びプロピレン単位の全体の重量に対するエチレン単位の重量の百分率を算出することによって得ることができる。また、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量(重量%)は、三次元造形用フィラメントに含まれる各エチレン-プロピレンランダム共重合体の配合量(重量)と、各エチレン-プロピレンランダム共重合体におけるエチレンの含有量(重量%)とにより、三次元造形用フィラメントに含まれるエチレンの総重量を算出し、三次元造形用フィラメントの全体の重量に対するエチレンの総重量の百分率を算出することによって得ることができる。なお、本明細書において、「重量%」は、「質量%」に置き換えてもよい。
当該三次元造形用フィラメントによれば、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)が、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)とを含むものとし、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(重量%)が、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上となるように選択することで、各エチレンの含有量に起因して融点、及び流動性が異なる2種類の共重合体を含むことになる。ここで、プロピレンホモポリマー(単独重合体)は結晶性を有するが、プロピレンとエチレンとの共重合体は、エチレンの含有量が大きくなる程、非晶性(アモルファス)の程度が大きくなり、これに伴って融点が低下し、ひいては融点が消失する。また、非晶性の程度が大きくなる程、加熱時の流動性が小さくなり、柔らかい樹脂となる。そして、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(x)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(y)との間に5倍以上の差異がある(y≧5x)ことにより、これら2種類の共重合体は、夫々エチレンの含有量に応じた融点、及び流動性を有することになる。また、当該三次元造形用フィラメントにおけるエチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量が6~11重量%であることにより、上記2種類の共重合体の流動性が適度な範囲に収まることになる。このように、上記2種類の共重合体の流動性の差異に起因して、これらの混合物としてのエチレン-プロピレンランダム共重合体(A)を含む当該三次元造形用フィラメントは、適度に溶融及び固化し易いものとなり、しかも、これを用いた造形物は、適度に柔らかいものとなる。これにより、当該三次元造形用フィラメントは、柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とするものとなる。
当該三次元造形用フィラメントは、上述したように、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量が6~11重量%であり、さらに7~10重量%が好ましい。共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量は、得られる造形物の柔軟性と相関を有するものであり、6重量%以上であることにより、造形物の柔軟性を高めることができ、11重量%以下であることにより、造形物の柔軟性を高め過ぎることを抑制することができる。
以下、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)、及びエチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)を、夫々「共重合体(A)」、「共重合体(A1)」、及び「共重合体(A2)」ともいう。
<エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)>
共重合体(A)は、共重合体(A1)と、共重合体(A2)とを含むものである。これら各共重合体は、チーグラー・ナッタ触媒や、メタロセン触媒等を用いて、原料であるエチレンとプロピレンとを重合して得られる。各共重合体の重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中でエチレンとプロピレンとを重合する方法、液状のエチレン、及びプロピレン中でこれらを重合する方法、気体であるエチレン及びプロピレン中に触媒を添加し、気相状態で重合する方法、又はこれらを組み合わせて重合する方法が挙げられる。
共重合体(A)におけるエチレンの総含有量は、6~11重量%であることが好ましい。共重合体(A)におけるエチレンの総含有量が6重量%以上であることにより、造形物の柔軟性を高めることができ、11重量%以下であることにより、造形物の柔軟性を高め過ぎることを抑制することができる。
<エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)及び(A2)>
共重合体(A)に含まれる共重合体(A1)、及び共重合体(A2)は、共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(重量%)が、共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上であるように構成される。
共重合体(A1)は、エチレンの含有量が0.1~4重量%であることが好ましい。共重合体(A1)におけるエチレンの含有量が0.1重量%以上であることにより、この共重合体(A1)を含む共重合体(A)、ひいては当該三次元造形用フィラメントが溶融するのに要する時間が短縮され、また、高速で造形した造形品の表面における吐出不良の発生を抑制し得る。共重合体(A1)におけるエチレンの含有量が4重量%以下であることにより、この共重合体(A1)を含む共重合体(A)、ひいては当該三次元造形用フィラメントが溶融後、固化し難くなることを抑制し得るため、高速で造形した造形物における糸引き、変形(捻じれ等)等の造形不良の発生を抑制し得る。
共重合体(A)における共重合体(A1)の含有量は、15~65重量%であることが好ましく、20~60重量%がより好ましい。共重合体(A1)の含有量を上記範囲とすることにより、その含有量が、柔軟性に優れた造形物を高速で造形するのにより適したものとなる。
共重合体(A1)は、市販品を使用することができ、サンアロマー(登録商標)PM921M(サンアロマー株式会社製)、サンアロマー(登録商標)PMA20V(サンアロマー株式会社製)等が挙られる。共重合体(A1)は、一種を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
共重合体(A2)は、エチレンの含有量(重量%)が、重量ベースで、共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上であるように構成される。共重合体(A2)は、エチレンの含有量が0.5~20重量%であることが好ましい。共重合体(A2)におけるエチレンの含有量が0.5重量%以上であることにより、この共重合体(A2)を含む共重合体(A)、ひいては当該三次元造形用フィラメントが溶融するのに要する時間が短縮され、また、高速で造形した造形品の表面における吐出不良の発生を抑制し得る。共重合体(A2)におけるエチレンの含有量が20重量%以下であることにより、この共重合体(A2)を含む共重合体(A)、ひいては当該三次元造形用フィラメントが溶融後、固化し難くなることを抑制し得るため、高速で造形した造形物における糸引き、変形(捻じれ等)等の造形不良の発生を抑制し得る。
共重合体(A)における共重合体(A2)の含有量は、35~85重量%であることが好ましく、40~80重量%がより好ましい。共重合体(A2)の含有量を上記範囲とすることにより、その含有量が、柔軟性に優れた造形物を高速で造形するのにより適したものとなる。
共重合体(A2)は、市販品を使用することができ、Vistamaxx Performance Polymer 6102(ExxonMobil社製)、Vistamaxx Performance Polymer 6502(ExxonMobil社製)等が挙げられる。共重合体(A2)は、一種を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
共重合体(A1)と共重合体(A2)との配合比率(A1/A2)は、重量比で15/85~65/35に設定されていることが好ましく、25/75~55/45がより好ましく、25/75~45/55がさらに好ましい。配合比率(A1/A2)を重量比で15/85以上とすることにより、配合比率(A1/A2)が適度に大きくなり、これらの共重合体(A1)及び(A2)を含む共重合体(A)が加熱時に固化し難くなることを抑制し得るため、高速で造形した造形物における糸引き、捻じれ等の造形不良の発生を抑制し得る。配合比率(A1/A2)を重量比で65/35以下とすることにより、配合比率(A1/A2)が適度に小さくなり、これら共重合体(A1)及び(A2)を含む共重合体(A)が加熱時に溶融するのに要する時間が短くなり、高速で造形した造形品の表面における吐出不良の発生を抑制し得る。
共重合体(A)における共重合体(A1)と共重合体(A2)との合計含有量は、95重量%以上が好ましく、99重量%以上がより好ましい。なお、共重合体(A1)と共重合体(A2)との合計含有量は、100重量%であってもよい。
当該三次元造形用フィラメントにおける共重合体(A)の含有量は、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。なお、共重合体(A)の含有量は、100重量%であってもよい。
共重合体(A1)のJIS K7210に準拠して230℃/2.16kg荷重の条件で測定されるMFR値(以下、単に「MFR値」ともいう)は、10~60g/10分であることが好ましく、25~45g/10分がより好ましい。共重合体(A1)のMFR値を上記範囲とすることにより、その流動性が、柔軟性に優れた造形物を高速で造形するのにより適したものとなる。
共重合体(A2)のMFR値は、1~60g/10分であることが好ましく、3~45g/10分がより好ましい。共重合体(A2)のMFR値を上記範囲とすることにより、その流動性が、柔軟性に優れた造形物を高速で造形するのにより適したものとなる。
また、共重合体(A1)及び(A2)のMFR値を夫々上記範囲とすることにより、これら2種類の共重合体(A1)及び(A2)が夫々特定の流動性を有するものとなり、これら2種類の共重合体(A1)及び(A2)を含む当該三次元造形用フィラメントは、柔軟性に優れる造形物を高速で造形するのにより適した流動性を有するものとなる。これにより、当該三次元造形用フィラメントは、高いレベルで柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とするものとなる。
<任意成分>
当該三次元造形用フィラメントは、上述した共重合体(A)のみを含むことが好ましい。しかし、当該三次元造形用フィラメントは、本発明の目的を損なわない範囲で、任意成分として、例えば共重合体(A)以外の樹脂成分、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、加工助剤等の任意成分を含むことができる。
<共重合体(A)以外の樹脂成分>
共重合体(A)以外の樹脂成分としては、例えばポリプロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらのうち、当該三次元造形用フィラメントは、上述した共重合体(A)に加えて、ポリプロピレンホモポリマーをさらに含有することが好ましい。ポリプロピレンホモポリマーは、プロピレンの単独重合体である。当該三次元造形用フィラメントは、ポリプロピレンホモポリマーをさらに含有することにより、共重合体(A1)、共重合体(A2)、及びポリプロピレンホモポリマーという結晶性が異なる3種類の成分を含有することになるため、結晶性の調整の幅が広がる。これにより、融点や流動性と相関のある結晶性を詳細に調整することができるため、当該三次元造形用フィラメントは、高精度で柔軟性に優れる造形物を高速で造形することが可能となる。
当該三次元造形用フィラメントにおけるポリプロピレンホモポリマーの含有量は、1~10重量%であることが好ましく、1~5重量%がより好ましい。ポリプロピレンホモポリマーの含有量を上記範囲とすることにより、当該三次元造形用フィラメントは、ポリプロピレンホモポリマーに由来する結晶性が適度に付与され、これにより、柔軟性に優れる造形物を高速で造形するのにより適した流動性を有するものとなる。
<熱安定剤>
熱安定剤は、当該三次元造形用フィラメントの製造時、造形物の造形時等の熱安定性を向上するためのものである。
熱安定剤としては、リン系安定剤及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、これらの併用がより好ましい。
当該三次元造形用フィラメントにおけるリン系安定剤及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合量は、特に限定されるものではなく、適宜設定し得る。熱安定性の向上効果が確実に得られ、かつ、共重合体(A1)及び(A2)の配合量に影響を与えないという観点から、当該三次元造形用フィラメントにおけるリン系安定剤及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、0.01~1重量%であることが好ましく、0.01~0.6重量%がより好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、これらのエステル、第3級ホスフィン等が挙げられる。
亜リン酸エステル(ホスファイト化合物)としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス[2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
亜リン酸エステル(ホスファイト化合物)としては、上記の他、二価フェノール類と反応し、環状構造を有するものも使用することができ、例えば、2,2´-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2´-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
リン酸エステル(ホスフェート化合物)としては、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート等が挙げられる。
亜ホスホン酸エステル(ホスホナイト化合物)としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニルホスホナイト等が挙げられる。ホスホナイト化合物は、アルキル基を2以上置換したアリール基を有する上記のホスファイト化合物との併用が可能であるとの観点から、好ましい。
ホスホン酸エステル(ホスホネイト化合物)としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記リン系安定剤の中でも、ホスホナイト化合物、又は下記一般式(1)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
Figure 2023142115000001
式(1)中、R及びR´は、炭素数6~30のアルキル基、又は炭素数6~30のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
上述したように、ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。
上記式(1)で表されるホスファイト化合物のうち、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス[2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
当該三次元造形用フィラメントは、リン系安定剤及び/又はヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の熱安定剤を含むことができる。
他の熱安定剤としては、3-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤(特開平7-233160号公報を参照)が挙げられる。
ラクトン系安定剤としては、Irganox HP-136(登録商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)等が挙げられる。
ラクトン系安定剤、リン系安定剤としてのホスファイト化合物、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を混合した熱安定剤として、Irganox HP-2921(登録商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)等が挙げられる。
当該三次元造形用フィラメントにおけるラクトン系安定剤の含有量は、0.0005~0.05重量%であることが好ましく、0.001~0.03重量%がより好ましい。
その他の熱安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール-3-ステアリルチオプロピオネート等のイオウ含有安定剤が挙げられる。熱安定剤は、単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
当該三次元造形用フィラメントにおける熱安定剤の配合量は、0.0005~0.1重量%であることが好ましく、0.001~0.08重量%がより好ましく、0.001~0.05重量%がさらに好ましい。
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、当該三次元造形用フィラメントの劣化を抑制し、耐候性を高めるためのものである。
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2´-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2´,4,4´-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2´-ジヒドロキシ-4,4´-ジメトキシベンゾフェノン、2,2´-ジヒドロキシ-4,4´-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2´-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2´-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2´-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、さらには、2-(2´-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールとビニル系モノマーとの共重合体、2-(2´-ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールとビニル系モノマーとの共重合体といった2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体等が挙げられる。
ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノール等が挙げられ、さらには、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールといった、上記例示した化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基とされた化合物等が挙げられる。
環状イミノエステル系の紫外線吸収剤としては、2,2´-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2´-(4,4´-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2´-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)等が挙げられる。
シアノアクリレート系の紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2´-シアノ-3´,3´-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン、1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物であっても、紫外線吸収性単量体及び/又はヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体であるポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、又はシアノアクリレート骨格を含有する化合物が挙げられる。
上記の化合物の中でも紫外線吸収性能の観点から、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、及びヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましく、耐熱性や色相(透明性)の観点から、環状イミノエステル系の紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系の紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤は、単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
当該三次元造形用フィラメントにおける紫外線吸収剤の含有量は、0.01~2重量%であることが好ましく、0.02~2重量%がより好ましく、0.03~1重量%がさらに好ましく、0.05~0.5重量%が一層好ましい。
<光安定剤>
光安定剤は、当該三次元造形用フィラメントの暗所での変色(黄変)による劣化を抑制するためのものである。
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)が挙げられる。ヒンダードアミン光安定剤は、下記一般式(2)~(5)で表される化合物、及びこれら化合物の2種以上の組み合わせである。
Figure 2023142115000002
式(2)~(5)中、R~Rは、夫々独立して、水素原子、エーテル基、エステル基、アミン基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基であり、これらの基は、アルコール基、ケトン基、イミン基、シロキサン基、エーテル基、カルボキシ基、アルデヒド基、エステル基、アミド基、イミド基、アミン基、ニトリル基、ウレタン基、又はこれらの組み合わせによって置換されていてもよく、無水物であってもよい。
ヒンダードアミン光安定剤としては、置換ピペリジン化合物から誘導された化合物が好ましく、アルキルで置換されたピペリジル、ピペリジニルあるいはピペラジノン化合物、又はアルコキシ基で置換されたピペリジニル化合物から誘導された化合物がより好ましい。
ヒンダードアミン光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)-(3´,5´-ジ-tert-ブチル-4´-ヒドロキシベンジル)ブチルマロネート、ジ-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、N-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとコハク酸とのオリゴマー、シアヌル酸とN,N-ジ(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンとのオリゴマー、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)スクシネート、ビス-(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタン-テトラカルボキシレート、N,N´-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサン-1,6-ジアミン、N-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン、2,2´-[(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル)-イミノ]-ビス-[エタノール]、ポリ((6-モルホリン-S-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノヘキサメチレン-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノ)、5-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-2-シクロ-ウンデシル-オキサゾール、1,1´-(1,2-エタン-ジ-イル)-ビス-(3,3´,5,5´-テトラメチルピペラジノン)、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン、ポリメチルプロピル-3-オキシ-[4(2,2,6,6-テトラメチル)-ピペリジニル]シロキサン、1,2,3,4-ブタン-テトラカルボン酸-1,2,3-トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-4-トリデシルエステル、α-メチルスチレン-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)マレイミドとN-ステアリルマレイミドとのコポリマー、1,2,3,4-ブタン-テトラカルボン酸とβ,β,β´,β´-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールと1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルエステルとのポリマー、2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールと1,2,3,4-ブタン-テトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニルエステルとのβ,β,β´,β´-テトラメチル-ポリマー、D-グルシトールと1,3:2,4-ビス-o-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニルイデン)-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ[5.1.11.2]-ヘンエイコサン-21-オン-2,2,4,4-テトラメチル-20-(オキシラニルメチル)とのオリゴマー、プロパン二酸と[(4-メトキシフェニル)メチレン]-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)とのエステル、N,N´-1,6-ヘキサンジイルビス[N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ホルムアミド]、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン,N,N´´´-[1,2-エタンジイルビス[[[4,6-ビス[ブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2-イル]イミノ]-3,1-プロパンジイル]]-ビス[N´,N´´-ジブチル-N´,N´´-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)]、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]]、1,5-ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン3,3-ジカルボン酸とビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)とのエステル、1,5-ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン3,3-ジカルボン酸とビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)とのエステル、N-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-N-アミノ-オキサミド、4-アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジン、1,5,8,12-テトラキス[2´,4´-ビス(1´´,2´´,2´´,6´´,6´´-ペンタメチル-4´´-ピペリジニル(ブチル)アミノ)-1´,3´,5´-トリアジン-6´-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ピロリジン-2,5-ジオン、1,1´-(1,2-エタン-ジ-イル)-ビス-(3,3´,5,5´-テトラメチルピペラジノン)、1,1´1´´-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ)-2,1-エタンジイル))トリス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、1,1´,1´´-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ)-2,1-エタンジイル))トリス(3,3,4,5-テトラメチルピペラジノン)が挙げられる。
当該三次元造形用フィラメントにおけるヒンダードアミン光安定剤の含有量は、0.01~5重量%であることが好ましく、0.05~3重量%がより好ましく、0.1~1重量%がさらに好ましい。ヒンダードアミン光安定剤は、単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
<抗菌剤>
抗菌剤としては、酸化亜鉛、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属、又はこれら抗菌性金属を結晶性アルミノケイ酸塩、無定形アルミノケイ酸塩、シリカゲル、活性アルミナ、珪藻土、活性炭、リン酸ジルコニウム、ヒドロキシアパタイト、酸化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、ガラス等に担持させたもの等の無機系抗菌剤が好ましい。無機系抗菌剤としては、酸化亜鉛が好ましい。
無機系抗菌剤としての酸化亜鉛は、市販品であってもよいし、金属亜鉛を熱して気化させ、空気中で燃焼させて得られた酸化亜鉛や、硫酸亜鉛又は硝酸亜鉛を加熱して調製して得られた酸化亜鉛であってもよい。酸化亜鉛は、各種形状のものが使用でき、形状としては、繊維状、板状、粒子状、テトラポッド状等が挙げられる。酸化亜鉛は、酸化ケイ素、シリコーンオイル、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物等で表面処理されたものであってもよい。
市販品である酸化亜鉛としては、JIS K-1410で区分される「1種酸化亜鉛」、「2種酸化亜鉛」、「3種酸化亜鉛」や、日本薬局方に規定された局方酸化亜鉛、水熱合成工程を経て調製した異方性(柱状、板状、又はテトラポッド状)を有する酸化亜鉛(形状異方性を有する酸化亜鉛)等が挙げられる。これらの酸化亜鉛は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置によって測定して得られた粒度分布において、積算重量分布が50%となる粒径で示される平均粒子径が50~200nmである粒子状酸化亜鉛が好ましく、特に平均粒子径が100~150nmの粒子状酸化亜鉛が好ましい。
当該三次元造形用フィラメントにおける抗菌剤の含有量は、0.01~1重量%であることが好ましく、0.05~0.5重量%がより好ましく、0.1~0.3重量%がさらに好ましい。
<加工助剤>
加工助剤としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(6)で示される長鎖脂肪酸金属塩が挙げられる。
M(OH)(R-COO) ・・・(6)
式(6)中、Rは、炭素数6~40のアルキル基、又はアルケニル基であり、Mは、金属元素である。x+yは、Mの価数であり(x+y=M)、yは、0からM-1までの整数である。
金属元素Mは、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、リチウム、及びバリウムから選択される金属元素であることが好ましく、亜鉛、又はアルミニウムがより好ましい。
長鎖脂肪酸としては、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられ、ステアリン酸、ベヘン酸、又はモンタン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
長鎖脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、トリステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸(ジヒドロキシ)アルミニウム、ジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、2-エチルヘキサン酸アルミニウム等が挙げられ、ステアリン酸亜鉛、トリステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸(ジヒドロキシ)アルミニウム、又はジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウムが好ましく、ジステアリン酸(ヒドロキシ)アルミニウムがより好ましい。
当該三次元造形用フィラメントにおける加工助剤の含有量は、0.1~5重量%であることが好ましく、1~4重量%がより好ましく、2~4重量%がさらに好ましい。加工助剤の含有量を上記範囲にすることにより、加工助剤の効果を十分に発揮させることができる。加工助剤は、単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
上記以外の任意成分として、着色のための染料及び顔料、帯電防止剤、離型剤、充填材、難燃剤等が挙げられる。
<三次元造形用フィラメントの製造方法>
当該三次元造形用フィラメントは、例えば共重合体(A1)と共重合体(A2)とを含む共重合体(A)、及び任意成分を混合し、得られた混合物(いわゆるドライブレンド物)を押出機等で溶融混練することにより、ペレット化した後、得られたペレットを押出機で押出成形することによって得ることができる。また、ペレット化することなく混合物を押出機で押出成形することによって得ることもできる。なお、配合成分として液状成分を用いる場合には、押出機への供給にいわゆる液注装置、又は液添装置を用いることができる。溶融混練の加熱温度は、通常180~220℃の範囲で設定することができる。
<三次元造形用フィラメントの特性>
当該三次元造形用フィラメントは、JIS K7210に準拠して230℃/2.16kg荷重の条件で測定されるMFR値が30~60g/10分であることが好ましく、35~60g/10分がより好ましく、45~60g/10分がさらに好ましい。当該三次元造形用フィラメントのMFR値を上記の範囲とすることにより、当該三次元造形用フィラメントは、柔軟性に優れる造形物を高速で造形するのにより適した流動性を有するものとなる。これにより、当該三次元造形用フィラメントは、高いレベルで柔軟性に優れる造形物を高速で造形することを可能とするものとなる。具体的には、MFR値が30g/10分以上であることにより、造形時の造形装置に吐出不良が発生することをより抑制することができるため、高速での造形が容易となる。MFR値が60g/10分以下であることにより、当該三次元造形用フィラメントの流動性を無駄に高める必要がなくなる。
当該三次元造形用フィラメントの柔軟性は、造形物の柔軟性に繋がる。このため、当該三次元造形用フィラメントは、適度な柔軟性、例えば造形物に使用者が身体を保持させたとき、心地良く感じる程度の柔軟性を有することが好ましい。この柔軟性は、弾性率等の微小な線形領域の評価によっては評価することが困難である。このため、例えば当該三次元造形用フィラメントを用いて作製した板状の造形物の一方の先端を固定して突出長さが100mm、幅が10mm、厚さが4mmである片持ち梁とし、この片持ち梁の先端に50gの荷重を付加したときの先端の変形量を測定し、得られた変形量を柔軟性の指標とすることができる。この変形量が小さ過ぎる場合、柔軟性が不足する(すなわち、硬過ぎる)傾向にあり、変形量が大き過ぎる場合、柔軟性が過剰である(すなわち、柔らか過ぎる)傾向にある。この観点を考慮し、上記変形量は、10~50mmであることが好ましく、10~40mmがより好ましい。上記変形量を上記範囲とすることにより、当該三次元造形用フィラメントは、適度な柔軟性を有するものとなる。上記変形量は、後述する測定方法によって測定される。
当該三次元造形用フィラメントを用いて造形する際、通常、造形装置においては、当該三次元造形用フィラメントの適切な送り込み量が、送り込み長さとして設定される。造形装置に当該三次元造形用フィラメントを送り込むことができない場合、送り込み長さの設定値と、実際に送り込まれた長さ(実際の送り込み長さ)との間に差異が生じ、その分、ノズルからの吐出量が変動し、その結果、造形不良が発生する虞がある。このため、送り込み長さにおける設定値と実測値との差異は、ノズルからの吐出量の変動率である吐出率の指標とすることができる。当該三次元造形用フィラメントは、造形装置において設定された送り込み長さ(L1)と、実際の送り込み長さ(L2)との比率(L2/L1)が、80%以上であることが好ましい。上記比率(L2/L1)を上記範囲とすることにより、造形装置のノズルからの吐出量の変動を抑制することができるため、造形不良の発生を抑制することができる。上記比率(L2/L1)は、後述する測定方法によって、吐出率として測定される。
<三次元造形用フィラメントを用いた造形>
当該三次元造形用フィラメントを用いて、以下のようにして造形物を造形することができる。すなわち、当該三次元造形用フィラメントを溶融する溶融部と、この溶融部で溶融された当該三次元造形用フィラメントを吐出可能な可動式ノズルとを備え、押出積層によって造形物を作製することが可能な任意の造形装置を使用して、当該三次元造形用フィラメントを所定の溶融押出温度で可動式ノズルから溶融押出し、積層造形することによって造形物を得ることができる。溶融押出温度は、通常200±60℃(140~260℃)の範囲で設定することができる。溶融押出温度が140℃以上であることにより、溶融部での当該三次元造形用フィラメントの溶融性を高めることができるため、可動式ノズルからの吐出不良による造形品の外観の悪化を抑制することができる。溶融押出温度が260℃以下であることにより、変色や焦げ付きなどの造形品への悪影響や、糸引き不良の発生を抑制することができる。
<造形物>
本実施形態の造形物は、上述した本実施形態の三次元造形用フィラメントを用いたものである。当該造形物は、当該三次元造形用フィラメントを用いたものであることにより、柔軟性に優れ、かつ高速で造形されたものとなる。
本発明について、以下、実施例を示しつつさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本発明の特徴構成を有する三次元造形用フィラメント(実施例1~12)を作製し、各種測定及び評価を行った。また、比較のため、本発明の特徴構成を有しない三次元造形用フィラメント(比較例1~10)を作製し、同様の測定及び評価を行った。結果を表1~5に示す。
[使用原料]
・エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)
共重合体(A1)として、以下のようにして得られた共重合体(A1-1)、及び(A1-2)を用いた。
(A1-1)チーグラー・ナッタ型触媒を用いて気相中でプロピレンとエチレンとを共重合して中間体としての共重合体(中間共重合体)を得た。得られた中間共重合体にイルガノックス1010(商品名:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量部、及びイルガフォス168(商品名:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.1重量部を加えて溶融混練することにより、共重合体(A1-1)を得た。得られた共重合体(A1-1)におけるエチレンの含有量は2.0重量%であった。得られた共重合体(A1-1)の230℃/2.16kgの条件でのMFR値は25g/10分、融点(Tm)は152℃、結晶化温度(Tc)は119℃であった。
(A1-2)エチレンの含有量が1.5重量%となるようにプロピレン及びエチレンの配合量を変更したこと以外は、上述した共重合体(A1-1)の製造と同様にして、共重合体(A1-2)を得た。得られた共重合体(A1-2)におけるエチレンの含有量は1.5重量%であった。得られた共重合体(A1-2)の230℃/2.16kgの条件でのMFR値は45g/10分、融点(Tm)は154℃、結晶化温度(Tc)は121℃であった。
・エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)
共重合体(A2)として、以下に示す共重合体(A2-1)、(A2-2)、及び(A2-3)を用いた。
(A2-1)Vistamaxx Performance Polymer 6102(ExxonMobil社製)を、共重合体(A2-1)として用いた。この共重合体(A2-1)におけるエチレンの含有量は16.0重量%であった。この共重合体(A2-1)の230℃/2.16kgの条件でのMFR値は3g/10分であり、融点(Tm)及び結晶化温度(Tc)は認められなかった。
(A2-2)Vistamaxx Performance Polymer 6502(ExxonMobil社製)を、共重合体(A2-2)として用いた。この共重合体(A2-2)におけるエチレンの含有量は13.0重量%であった。この共重合体(A2-2)の230℃/2.16kgの条件でのMFR値は45g/10分、融点(Tm)は61℃、結晶化温度(Tc)は21℃であった。
(A2-3)Vistamaxx Performance Polymer 3980FL(ExxonMobil社製)を、共重合体(A2-3)として用いた。この共重合体(A2-3)におけるエチレンの含有量は9.0重量%であった。この共重合体(A2-3)の230℃/2.16kgの条件でのMFR値は8g/10分、融点(Tm)は76℃、結晶化温度(Tc)は27℃であった。
・ポリプロピレンホモポリマー(PP)
サンアロマー(登録商標) PLB00A(サンアロマー株式会社製)を、ポリプロピレンホモポリマー(PP)として用いた。このプロピレンホモポリマーの230℃/2.16kgの条件でのMFR値は70g/10分、融点(Tm)は167℃、結晶化温度(Tc)は128℃であった。
[実施例1~12、比較例1~10]
直径30mmφの押出機(株式会社池貝FS30)を使用し、表1~5に示す配合で、各配合成分を押出機に投入し、スクリュー回転数を100rpm、溶融押出温度を200℃に設定して溶融押出することにより、直径が0.75mmである、実施例1~12、及び比較例1~10の三次元造形用フィラメントを得た。なお、表1~5に示す成分において、「-」は配合しなかったことを示す。また、実施例1~12においては、共重合体(A)として、共重合体(A1)、及び共重合体(A2)を配合した。
実施例1~12、及び比較例1~10の三次元造形用フィラメントにおける測定及び評価項目は、MFR、融点(Tm)、結晶化温度(Tc)、柔軟性、高速造形性(表面の滑らかさ)、高速造形性(外観形状)、及び高速造形性(吐出率)である。各項目について、以下、説明する。なお、表4~5の評価において、「-」は測定しなかったことを示す。
[MFR値]
得られた三次元造形用フィラメントを用い、JIS K7210に準拠して230℃/2.16kgの条件でMFRを測定した。
[融点(Tm)]
得られた三次元造形用フィラメントについて、示差走査熱分析装置(DSC)を用い、200℃まで加熱後、10℃/分の降温速度で-10℃まで降温し、再度、10℃/分の昇温速度で昇温したときの融点(Tm)を測定した。
[結晶化温度(Tc)]
得られた三次元造形用フィラメントについて、示差走査熱分析装置(DSC)を用い、200℃まで加熱後、10℃/分の降温速度で降温したときの結晶化温度(Tc)を測定した。
[柔軟性(変形量)]
得られた三次元造形用フィラメントを用い、3Dプリンター(造形装置)としての株式会社ムトーエンジニアリング製 Value 3D Magix MF-2000によって、溶融押出温度を250℃、積層ピッチを0.4mm、造形速度を1000mm/分に設定し、基板上に一層ずつ積層することにより、長さ150mm、幅10mm、及び厚さ4mm(150mm×10mm×4mm)の板状の造形物を、試験片として得た。得られた試験片を用いて突出長さ100mmの片持ち梁を作製し、先端に50gの荷重を負荷し、負荷による変形量(鉛直方向の変位量)を、柔軟性の指標として測定した。得られた変形量について、下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:変形量が10mm以上40mm以下(非常に良好)
B:変形量が40mm超50mm以下(良好)
C:変形量が10mm未満、又は50mm超(不良)
[高速造形性(表面の滑らかさ)]
得られた三次元造形用フィラメントを用い、3Dプリンター(造形装置)としてのニッポー株式会社製 Smart-3D Printer NF-700Dによって、溶融押出温度を250℃、積層ピッチを0.4mm、造形速度を2000mm/分に設定し、基板上に一層ずつ積層することにより、直径100mm×高さ100mm×壁厚4mmの円筒状の造形物を、試験体として得た。得られた試験体の表面を目視により確認し、下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:表面の荒れが全く観察されず、表面の滑らかさに問題が認められなかった(非常に良好)
B:表面の荒れが僅かに観察されたが、表面の滑らかさに問題が認められなかった(良好)
C:表面の荒れが明確に観察され、表面の滑らかさに問題が認められた(不良)
[高速造形性(外観形状)]
得られた三次元造形用フィラメントを用い、3Dプリンター(造形装置)としてのニッポー株式会社製 Smart-3D Printer NF-700Dによって、溶融押出温度を250℃、積層ピッチを0.4mm、造形速度を2000mm/分に設定し、基板上に一層ずつ積層することにより、直径50mm×高さ50mm×壁厚4mmの円筒状の造形物を、試験体として得た。得られた試験体の外観形状(糸引き、変形)を目視し、下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:糸引き、及び変形が観察されず、外観形状に問題が認められない(非常に良好)
B:糸引き、及び変形が僅かに観察されたが、外観形状に問題が認められない(良好)
C:糸引き、又は変形が観察され、外観形状に問題が認められた(不良)
[高速造形性(吐出率)]
得られた三次元造形用フィラメントを用い、3Dプリンター(造形装置)としてのニッポー株式会社製 Smart-3D Printer NF-6100Sによって、溶融押出温度を250℃、積層ピッチを0.4mm、造形速度を3600mm/分に設定し、フィラメントを押出し、高速造形性(吐出率)の評価を行った。具体的には、三次元造形用フィラメントの押出時において、実際の三次元造形用フィラメントの送り込み長さ(実測送り込み長さ(L1))を測定し、下記の数式のように、予め設定された三次元造形用フィラメントの送り込み長さ(設定送り込み長さ(L2))に対するL1の比率を三次元造形用フィラメントの吐出率として得た。
吐出率(%)=L1/L2 × 100
Figure 2023142115000003
Figure 2023142115000004
Figure 2023142115000005
Figure 2023142115000006
Figure 2023142115000007
共重合体(A1)、及び共重合体(A2)を含み、エチレンの総含有量が6~11重量%である実施例1~12の三次元造形用フィラメントは、柔軟性、並びに高速造形性(表面の滑らかさ)、高速造形性(外観形状)、及び高速造形性(吐出率)の3つの高速造形性の全てにおいて優れるものであることが示された。
実施例1~12の三次元造形用フィラメントの結果から、MFR値が30~60g/10分であることにより、三次元造形用フィラメントが、柔軟性に優れる造形物を高速で造形するのにより適した流動性を有するものとなることが示された。また、共重合体(A1)のMFR値が10~60g/10分であり、共重合体(A2)のMFR値が1~60g/10分であることにより、これら2種類の共重合体を含む三次元造形用フィラメントが、柔軟性に優れる造形物を高速で造形するのにより適した流動性を有するものとなることが示された。
実施例11~12の結果から、三次元造形用フィラメントが、ポリプロピレンホモポリマーをさらに含有することにより、共重合体(A1)、共重合体(A2)、及びポリプロピレンホモポリマーという結晶性が異なる3種類の成分を含有することになるため、結晶性の調整の幅が広がり、これにより、融点や流動性と相関のある結晶性を詳細に調整することができるため、高精度で柔軟性に優れる造形物を高速で造形することが可能となることが示された。
これに対し、共重合体(A2)を含まず、エチレンの総含有量が6重量%未満である比較例1~2の三次元造形用フィラメントは、硬すぎることから柔軟性に劣り、また、表面の荒れが認められたことから高速造形性(表面の滑らかさ)にも劣るものであることが示された。
共重合体(A1)を含まず、エチレンの総含有量が11重量%超である比較例3~4の三次元造形用フィラメントは、柔らか過ぎることから柔軟性に劣り、また、高速造形時に糸引き、及び変形が認められ、高速造形性(外観形状)にも劣るものであることが示された。また、比較例3~4を比較すると、共重合体(A2)としてMFR値が小さいものを用いた場合(比較例3)には、高速安定性(表面の滑らかさ)が低下する傾向にあることが示された。
共重合体(A1)を含まず、エチレンの総含有量が6~11重量%である比較例5の三次元造形用フィラメントは、柔軟性に優れるものの、高速造形時に表面の荒れ、並びに糸引き、及び変形が認められ、高速造形性(表面の滑らかさ、外観形状)に劣るものであることが示された。すなわち、エチレンの総含有量が6~11重量%を満たしても、2種類の共重合体(A1)及び(A2)のうち、1種類しか含まないものは、高速造形性に劣ることが示された。
共重合体(A1)及び(A2)を含まず、ポリプロピレンホモポリマーを含む比較例6の三次元造形用フィラメントは、硬過ぎることから柔軟性に劣るうえ、高速造形時に表面の荒れが認められ、高速造形性(表面の滑らかさ)にも劣るものであることが示された。
共重合体(A1)及び(A2)を含むものの、エチレンの総含有量が6重量%未満である比較例7、及び9の三次元造形用フィラメントは、硬過ぎることから柔軟性に劣るうえ、高速造形時に表面の荒れが認められ、高速造形性(表面の滑らかさ)にも劣るものであることが示された。
共重合体(A1)及び(A2)を含むものの、エチレンの総含有量が11重量%超である比較例8、及び10の三次元造形用フィラメントは、柔らか過ぎることから柔軟性に劣るうえ、高速造形時に糸引き、及び変形が認められ、高速造形性(外観形状)に劣るものであることが示された。
本発明の三次元造形用フィラメントは、押出積層システムによる三次元の造形物を造形するのに有用であり、当該三次元造形用フィラメントを使用して押出積層により造形した造形品は、高い造形速度でも良好な外観の造形物を得ることができる。従って、本発明は、各種アクセサリー、人形等の雑貨類、照明カバー等のインテリア器具類、カメラ、時計、計測器、表示器械等の精密機器等のケース及びカバー類、身体を保持する医療用部材等に好適であり、本発明が奏する工業的効果は極めて大きなものである。

Claims (5)

  1. エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)を含有する三次元造形用フィラメントであって、
    前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)は、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)と、エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)とを含み、
    前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)におけるエチレンの含有量(重量%)は、前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)におけるエチレンの含有量(重量%)の5倍以上であり、
    前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A)に由来するエチレンの総含有量が6~11重量%である三次元造形用フィラメント。
  2. JIS K7210に準拠して230℃/2.16kg荷重の条件で測定されるMFR値が30~60g/10分である請求項1に記載の三次元造形用フィラメント。
  3. 前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A1)のJIS K7210に準拠して230℃/2.16kg荷重の条件で測定されるMFR値が10~60g/10分であり、
    前記エチレン-プロピレンランダム共重合体(A2)の前記MFR値が1~60g/10分である請求項1又は2に記載の三次元造形用フィラメント。
  4. ポリプロピレンホモポリマーをさらに含有する請求項1~3の何れか一項に記載の三次元造形用フィラメント。
  5. 請求項1~4の何れか一項に記載の三次元造形用フィラメントを用いた造形物。
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