JP2023141038A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーダ装置における物標の検知精度を向上する。【解決手段】レーダ装置は、第1の直線偏波を放射する第1の送信アンテナ、及び、第1の送信アンテナに隣り合い、第1の直線偏波と異なる第2の直線偏波を放射する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、各送信周期における第1の送信アンテナと第2の送信アンテナとの間の位相がξ又は-ξ異なる位相回転量が付与された送信信号を複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備する【選択図】図1

Description

本開示は、レーダ装置に関する。
近年、高分解能が得られるマイクロ波又はミリ波を含む波長の短いレーダ送信信号を用いたレーダ装置の検討が進められている。また、屋外での安全性を向上させるために、車両以外にも、歩行者といった小物体を広角範囲で検知するレーダ装置(例えば、広角レーダ装置と呼ぶ)の開発が求められている。
広角な検知範囲を有するレーダ装置の構成として、例えば、複数のアンテナ(又は、アンテナ素子とも呼ぶ)で構成されるアレーアンテナによってターゲットからの反射波を受信し、素子間隔(アンテナ間隔)に対する受信位相差に基づく信号処理アルゴリズムによって反射波の到来する方向(又は、到来角と呼ぶ)を推定する手法(到来角推定手法。Direction of Arrival (DOA) estimation)を用いる構成がある。例えば、到来角推定手法には、フーリエ法(Fourier法)、又は、高い分解能が得られる手法としてCapon法、MUSIC(Multiple Signal Classification)及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)が挙げられる。
また、レーダ装置として、例えば、受信部に加え、送信部にも複数のアンテナ(アレーアンテナ)を備え、送受信アレーアンテナを用いた信号処理によりビーム走査を行う構成(MIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダと呼ぶこともある)が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
特表2011-526371号公報 米国特許第9,541,638号明細書 米国特許公開第2019/0064337号明細書 米国特許公開第2020/0363497号明細書 特開2020-148754号公報
J. Li, and P. Stoica, "MIMO Radar with Colocated Antennas", Signal Processing Magazine, IEEE Vol. 24, Issue: 5, pp. 106-114, 2007 M. Kronauge, H.Rohling,"Fast two-dimensional CFAR procedure", IEEE Trans. Aerosp. Electron. Syst., 2013, 49, (3), pp. 1817-1823 Direction-of-arrival estimation using signal subspace modeling Cadzow, J.A.; Aerospace and Electronic Systems, IEEE Transactions on Volume: 28 , Issue: 1 Publication Year: 1992 , Page(s): 64 - 79
しかしながら、レーダ装置(例えば、MIMOレーダ)において物標(又はターゲット)を検知する方法について十分に検討されていない。
本開示の非限定的な実施例は、物標の検知精度を向上するレーダ装置の提供に資する。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1の直線偏波を放射する第1の送信アンテナ、及び、前記第1の送信アンテナに隣り合い、前記第1の直線偏波と異なる第2の直線偏波を放射する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、各送信周期における前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の位相がφ又は-φ異なる位相回転量が付与された送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備する。
なお、これらの包括的または具体的な実施例は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示の一実施例によれば、レーダ装置における物標の検知精度を向上できる。
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
レーダ装置の構成例を示すブロック図 チャープパルスを用いた場合の送信信号の一例を示す図 ドップラシフト量及び直交符号の割り当て例を示す図 ドップラシフト量及び直交符号の割り当て例を示す図 ドップラシフト量及び直交符号の割り当て例を示す図 送信アンテナの一例を示す図 送信アンテナの一例を示す図 送信アンテナの一例を示す図 左旋円偏波の指向性の一例を示す図 右旋円偏波の指向性の一例を示す図 チャープパルスを用いた場合の送信信号及び受信信号の一例を示す図 ドップラ領域圧縮処理の一例を示す図 ドップラシフト量及び直交符号の割り当て例を示す図 ドップラ折り返し判定の一例を示す図 アンテナの配置例を示す図 アンテナの配置例を示す図 アンテナの配置例を示す図 アンテナの配置例を示す図 レーダ装置の構成例を示すブロック図 アンテナの配置例を示す図 レーダ装置の構成例を示すブロック図 送信信号の切替制御の一例を示す図 送信信号の切替制御の一例を示す図 送信切替制御テーブルの一例を示す図 レーダ装置の構成例を示すブロック図 ドップラ多重割り当てテーブルの一例を示す図 ドップラ多重割り当てテーブルの一例を示す図 ドップラ多重割り当てテーブルの一例を示す図
MIMOレーダは、例えば、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重した信号(レーダ送信波)を複数の送信アンテナ(又は送信アレーアンテナと呼ぶ)から送信し、周辺物体において反射された信号(レーダ反射波)を複数の受信アンテナ(又は受信アレーアンテナと呼ぶ)を用いて受信し、それぞれの受信信号から、多重された送信信号を分離して受信する。このような処理により、MIMOレーダは、これらの受信信号を、仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。
また、MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおける素子間隔を適切に配置することにより、仮想受信アレーのアンテナ開口を拡大し、角度分解能の向上を図ることができる。あるいは、MIMOレーダでは、仮想受信アレーのアンテナ間隔をより密に配置することで、サイドローブ又はグレーティングローブの抑圧が可能となる。
例えば、特許文献1には、MIMOレーダの多重送信方法として、送信アンテナ毎に送信時間をシフトして信号を送信する時分割多重送信を用いたMIMOレーダ(以下、「時分割多重MIMOレーダ」と呼ぶ)が開示されている。時分割多重MIMOレーダは、送信アンテナを規定された周期で逐次的に切り替えながら、送信信号の一例である送信パルスを出力する。時分割多重MIMOレーダは、送信パルスが物体で反射された信号を複数の受信アンテナで受信し、受信信号と送信パルスとの相関処理後に、例えば、空間的なFFT(Fast Fourier Transforma)処理(反射波の到来方向推定処理)を行う。
時分割多重MIMOレーダは、送信信号(例えば送信パルス又はレーダ送信波)を送信する送信アンテナを、規定された周期で逐次的に切り替えていく。これにより、時分割多重MIMOレーダは、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積(=Nt×Na)で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの(Nt×Na)個の受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。例えば、時分割で切り替えて送信信号を多重する送信アンテナ数(例えば、時分割多重数)を超える送信アンテナの利用は困難である。例えば、レーダ装置が、Nt個の送信アンテナを用いて時分割多重数Ntで送信信号を送信する場合、(Nt×Na)個を超える伝搬路応答を取り出すことは困難である。そのため、レーダ装置のコスト又は設置場所といった制約によって、アンテナ数が制約される場合には角度分解能又はサイドローブ抑圧効果が限定され測角性能を高められない可能性がある。
次に、一例として、複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する方法に着目する。
複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する方法として、例えば、受信部においてドップラ周波数領域において複数の送信信号を分離できるように信号を送信する方法(以下、「ドップラ多重送信」と呼ぶ)がある(例えば、非特許文献2を参照)。
ドップラ多重送信において、送信部では、例えば、基準となる送信アンテナから送信される送信信号に対して、基準となる送信アンテナと異なる送信アンテナから送信される送信信号に、それぞれ異なるドップラシフト量が与えられ、複数(例えば、Nt個)の送信アンテナから送信信号が同時に送信される。ドップラ多重送信において、複数(例えば、Na個)の受信アンテナを用いて受信した信号は、それぞれドップラ周波数領域においてフィルタリングすることにより、各送信アンテナから送信された送信信号が分離して受信される。これにより、ドップラ多重送信を用いたMIMOレーダ(以下、「ドップラ多重MIMOレーダ」と呼ぶ)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積(=Nt×Na)で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの(Nt×Na)個の受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。例えば、ドップラ多重送信する送信アンテナ数(例えば、ドップラ多重数)を超える送信アンテナの利用は困難である。例えば、レーダ装置が、Nt個の送信アンテナを用いてドップラ多重数Ntで送信信号を送信する場合、(Nt×Na)個を超える伝搬路応答を取り出すことは困難である。
また、複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する他の方法として、符号多重送信がある(例えば、特許文献2を参照)。例えば、符号多重送信を用いたMIMOレーダ(以下、「符号多重MIMOレーダ」と呼ぶ)は、送信信号(例えば、チャープ信号)の繰り返し送信毎に、送信アンテナ毎に異なる符号列(以下、符号又は符号系列とも呼ぶ)に基づく位相変調を繰り返し付与して、複数(例えば、Nt個)の送信アンテナから符号多重送信する。また、符号多重MIMOレーダは、例えば、複数(例えば、Na個)の受信アンテナを用いて受信した信号を検波処理することにより、符号多重された受信信号の距離情報を抽出する。また、符号多重MIMOレーダは、例えば、送信信号の繰り返し送信毎に得られた距離情報に対して、M個に分割して速度方向のフーリエ変換処理を行う(Mは例えば、符号列の符号長を用いる)。符号多重MIMOレーダは、M個の速度方向のフーリエ変換処理結果に、検出された速度成分に基づく位相補正を加え、送信アンテナ毎に付与した符号列を分離する逆符号列を乗算することにより、符号多重された受信信号を分離する。
このような符号多重MIMOレーダの構成により、例えば、ターゲットと符号多重MIMOレーダとの間の相対速度がゼロではない場合でも、符号多重MIMOレーダは、符号多重された受信信号間の相互干渉を抑え、符号多重された受信信号を分離できる。これにより、符号多重MIMOレーダは、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積(=Nt×Na)で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの(Nt×Na)個の受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。例えば、符号多重送信する送信アンテナ数(例えば、符号多重数)を超える送信アンテナの利用は困難である。例えば、レーダ装置が、Nt個の送信アンテナを用いて符号多重数Ntで送信信号を送信する場合、(Nt×Na)個を超える伝搬路応答を取り出すことは困難である。
また、例えば、異なる偏波の電波を放射するアンテナ、あるいは異なる偏波の電波を受信するアンテナの使用により、レーダ検出性能又は識別性能を向上させる技術がある(例えば、特許文献3又は4を参照)。複数の偏波を用いるレーダ装置は、例えば、「偏波レーダ(Polarimetric radar)」とも呼ばれる。
例えば、特許文献3又は特許文献4には、垂直偏波あるいは水平偏波を用いるアンテナで送信信号を送信し、垂直偏波あるいは水平偏波を用いるアンテナで受信した信号を用いて、物体を検出し識別する方法が開示されている。また、特許文献4には、例えば、左旋円偏波あるいは右旋円偏波を用いるアンテナで送信信号を送信し、左旋円偏波あるいは右旋円偏波を用いるアンテナで受信した信号を用いて、物体を検出し識別する方法が開示されている。なお、垂直偏波又は水平偏波といった直線偏波、あるいは、左旋円偏波又は右旋円偏波といった円偏波を用いるアンテナを「偏波アンテナ」とも呼ぶ。
このような偏波レーダは、レーダの検出性能又は識別性能を向上させる一方で、複数の異なる種類の偏波アンテナを用いる。例えば、垂直及び水平偏波に加え、左旋円偏波及び右旋円偏波4種類の偏波を送信するには、4個の送信アンテナを用いる。さらに、偏波毎にMIMOレーダを構成する場合は、より多くの送信アンテナを用いる。例えば、4偏波毎にNt個の送信アンテナを用いてMIMO多重送信を行うためには、4×Nt個の送信アンテナを用いる。例えば、本開示に係る一実施例では、レーダ装置(例えば、偏波レーダ装置、又は、偏波MIMOレーダとも呼ぶ)は、偏波アンテナの組み合わせによって新たな偏波(例えば、円偏波)を生成することにより、少ない送信アンテナを用いてより多くの偏波を用いた多重送信を行う。これにより、本開示に係る一実施例のレーダ装置は、送信アンテナの増加を抑制し、より多くの仮想受信アンテナを利用することにより、レーダ装置の測角性能の向上を図り、物標の検知精度を向上できる。
以下、本開示の一実施例に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
以下では、レーダ装置において、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから同時に多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成(例えば、MIMOレーダ構成)について説明する。
また、以下では、一例として、チャープ(chirp)パルスのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式(例えば、チャープパルス送信(fast chirp modulation)とも呼ぶ)の構成について説明する。ただし、変調方式は、周波数変調に限定されない。例えば、本開示の一実施例は、パルス列を位相変調又は振幅変調して送信するパルス圧縮レーダを用いたレーダ方式についても適用可能である。
また、レーダ装置は、例えば、ドップラ多重送信を行う。更に、レーダ装置は、例えば、ドップラ多重送信においてドップラ多重数分の異なる位相回転(例えば、位相シフト)を付与した信号(以下、「ドップラ多重送信信号」と呼ぶ)を、符号化(例えば、CDM(Code Division Multiplexing))して、多重送信する(以下、「符号化ドップラ多重(Coded Doppler Multiplexing)」と呼ぶ)。
[レーダ装置の構成]
図1のレーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、測位出力部300とを有する。
レーダ送信部100は、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、複数の送信アンテナ109(例えば、Nt個)によって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期(以下、「レーダ送信周期」と呼ぶ)にて送信する。
レーダ受信部200は、物標(ターゲット。図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202-1~202-Naを含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、例えば、物標の有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(例えば相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(例えば、測位情報)を出力する。
測位出力部300は、レーダ受信部200から入力される到来方向の推定結果に関する情報に基づいて、測位出力処理を行う。
なお、レーダ装置10は、例えば、車両といった移動体に搭載されてよく、測位出力部300からの測位出力(例えば、推定結果に関する情報)は、例えば、衝突安全性を高める先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)又は自動運転システムといったの制御装置ECU(Electronic Control Unit)(図示なし)に接続され、車両駆動制御又は警報発呼制御に利用されてもよい。
また、レーダ装置10は、例えば、路側の電柱又は信号機といった比較的高所の構造物(図示なし)に取り付けられてよい。また、レーダ装置10は、例えば、通行する車両又は歩行者の安全性を高める支援システム又は不審者の侵入防止システム(図示なし)におけるセンサとして利用されてもよい。また、レーダ受信部200の測位出力は、例えば、安全性を高める支援システム又は不審者侵入防止システムにおける制御装置(図示なし)に接続され、警報発呼制御又は異常検出制御に利用されてもよい。なお、レーダ装置10の用途はこれらに限定されず、他の用途に利用されてもよい。
また、物標はレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石などを含む。
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101と、位相回転量設定部105と、位相回転部108と、送信アンテナ109と、を有する。
レーダ送信信号生成部101は、レーダ送信信号を生成する。レーダ送信信号生成部101は、例えば、送信信号生成制御部102、変調信号発生部103及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)104を有する。以下、レーダ送信信号生成部101における各構成部について説明する。
送信信号生成制御部102は、例えば、レーダ送信周期毎の送信信号発生タイミングを設定し、設定した送信信号発生タイミングに関する情報を、変調信号発生部103及び位相回転量設定部105(例えば、ドップラシフト設定部106)に出力する。ここで、レーダ送信周期を「Tr」とする。
変調信号発生部103は、送信信号生成制御部102から入力されるレーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、例えば、のこぎり歯形状の変調信号を周期的に発生させる。
VCO104は、変調信号発生部103から入力される変調信号に基づいて、例えば、図2に示すようなレーダ送信信号(レーダ送信波)として、周波数変調信号(以下、例えば、周波数チャープ信号又はチャープ信号と呼ぶ)を位相回転部108、及び、レーダ受信部200(後述するミキサ部204)へ出力する。
位相回転量設定部105は、送信信号生成制御部102から入力されるレーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、位相回転部108におけるレーダ送信周期Tr毎にレーダ信号に付与する位相回転量(例えば、符号化ドップラ多重送信に対応する位相回転量)を設定する。位相回転量設定部105は、例えば、ドップラシフト設定部106と、符号化部107と、を有する。
ドップラシフト設定部106は、例えば、レーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、レーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して付与するドップラシフト量に対応する位相回転量を設定する。
符号化部107は、例えば、レーダ送信周期Tr毎の送信信号発生タイミングに関する情報に基づいて、符号化に対応する位相回転量を設定する。符号化部107は、例えば、ドップラシフト設定部106から入力される位相回転量と符号化に対応する位相回転量とに基づいて、位相回転部108に対する位相回転量を算出し、位相回転部108に出力する。また、符号化部107は、例えば、符号化に用いる符号系列(例えば、直交符号系列の各要素)に関する情報をレーダ受信部200(例えば、出力切替部209)に出力する。
なお、符号化部107で設定されるドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数は、位相回転部108が設定する各送信アンテナ109の位相回転量(ドップラシフト量)に依存しなくてもよい。例えば、位相回転部108が隣り合う送信アンテナ109のペアの位相回転量(ドップラシフト量)を同一に設定しても、符号化部107は、符号化ドップラ多重数を同一にしてもよいし、異なる値にしてもよい。
位相回転部108は、VCO104から入力されるチャープ信号に対して、符号化部107から入力される位相回転量を付与し、位相回転後の信号を送信アンテナ109に出力する。例えば、位相回転部108は、位相器及び位相変調器等を含む(図示せず)。
位相回転部108の出力信号は、規定された送信電力に増幅され各送信アンテナ109から空間に放射される。例えば、レーダ送信信号は、ドップラシフト量と直交符号系列とに対応する位相回転量が付与されることによって、複数の送信アンテナ109から多重送信される。
次に、位相回転量設定部105における位相回転量の設定方法の一例について説明する。
ドップラシフト設定部106は、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmを設定して、符号化部107へ出力する。ここで、ndm=1,~, NDMである。NDMは、異なるドップラシフト量の設定数であり、以下では、「ドップラ多重数」と呼ぶ。
レーダ装置10では、符号化部107による符号化を併用するため、ドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナ109の数Ntよりも少なく設定してよい。なお、ドップラ多重数NDMは2以上とする。
ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPN_DM(「N_DM」は「NDM」とも表される)としては、例えば、等間隔のドップラシフト量が設定されてもよく、或いは、不等間隔のドップラシフト量が設定されてもよい。各ドップラシフト量DOP1、DOP2, ~,DOPN_DMは、後述する符号化部107による符号化を併用するため、例えば、0≦DOP1、DOP2,~,DOPN_DM<1/(TrLoc)を満たすように設定されてよい。あるいは、ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPN_DMは、例えば、式(1)を満たすように設定されてもよい。
Figure 2023141038000002
また、例えば、ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPN_DM間において最小のドップラシフト間隔ΔfMinIntervalは次式(2)を満たしてよい。なお、ドップラシフト間隔は、ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPN_DMのうちの任意の2つのドップラシフト量の差分の絶対値で定義されてよい。ここで、Locは符号要素数を表す。例えば、Locは、符号化部107において用いられる符号の符号長を表す。以下では、一例として、Loc=2を用いる(一例については後述する)。
Figure 2023141038000003
また、各ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPN_DMを付与するための位相回転量φndmは、例えば、次式(3)のように割り当てられてよい。
Figure 2023141038000004
なお、間隔が等間隔でΔfMinIntervalとなるドップラシフト量が設定される場合(以下、「等間隔ドップラシフト量設定」と呼ぶ)、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、例えば、次式(4)のように割り当てられる。
Figure 2023141038000005
なお、最小ドップラシフト間隔ΔfMinIntervalが狭いほど、ドップラ多重信号間の干渉が発生しやすくなり、ターゲット検出精度が低減(例えば、劣化)する可能性が高くなるため、式(2)の制約条件を満たす範囲において、ドップラシフト量の間隔をより拡げることが好適になる。例えば、式(2)において等号が成り立つ場合(例えば、ΔfMinInterval=1/(TrNDMLOC))は、ドップラ多重信号間のドップラ領域における間隔を最大限に拡げることができる(以下、「最大等間隔ドップラシフト量設定」と呼ぶ)。この場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPN_DMは、0以上2π未満の位相回転範囲をNDM個に等分割して、それぞれ異なる位相回転量が割り当てられる。例えば、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、次式(5)のように割り当てられる。なお、以下では、角度はラジアン単位で示している。
Figure 2023141038000006
式(5)において、例えば、ドップラ多重数NDM=2の場合、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=0、及び、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=πとなる。同様に、式(5)において、例えば、ドップラ多重数NDM=4の場合、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=0、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=π/2、ドップラシフト量DOP3を付与する位相回転量φ3=π、ドップラシフト量DOP4を付与する位相回転量φ4=3π/2となる。例えば、各ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmは等間隔である。
なお、ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPN_DMを付与する位相回転量の割り当ては、このような割り当て方法に限定されない。例えば、式(5)に示す位相回転量の割り当てをシフトさせてもよい。例えば、φndm=2π(ndm)/NDMのように位相回転量を割り当ててもよい。または、位相回転量の割り当てテーブルを用いて、ドップラシフト量DOP1、DOP2,~,DOPNDMに対して位相回転量φ1、φ2,~, φN_DM(ただし、「N_DM」はNDMに相当する)をランダム的に割り当ててもよい。
また、等間隔ドップラシフト量設定において、式(4)に示す位相回転量φndmの分母が整数に設定され、Degree単位で位相回転量が整数値に設定されると、位相回転量の設定が容易になる。例えば、ΔfMinInterval=1/(Tr(NDM+Nint)LOC)に設定されることにより、式(4)に示す位相回転量φndmは、次式(6)のように分母が整数値に設定される。また、式(6)の分母の値(NDM+Nint)が360の約数となるようにNintが設定されると、位相回転量が整数値に設定され、位相回転量の設定が容易となる。
Figure 2023141038000007
ここで、Nintは0以上の整数値をとる。例えば、NDM=7の場合に、Nint=1が設定されると、φndm=2π(ndm-1)/(NDM+Nint)=π(ndm-1)/4となり、φ1、φ2,.., φN_DMはそれぞれ0°,45°,90°,135°, …, 270°といったDegree単位の整数値となり、位相回転量の設定が容易となる。
なお、式(6)においてNint=0の場合は、最大等間隔ドップラシフト量設定となる。
符号化部107は、ドップラシフト設定部106から入力されるNDM個のドップラシフト量を付与する位相回転量φ1,~,φN_DMのそれぞれに対して、1個、又は、NCM個以下の複数の直交符号系列に基づく位相回転量を設定する。また、符号化部107は、ドップラシフト量及び直交符号系列の双方に基づく位相回転量、例えば、符号化したドップラ多重信号を生成する「符号化ドップラ位相回転量」を設定し、位相回転部108に出力する。
以下、符号化部107における動作の一例について説明する。
例えば、符号化部107は、符号長Locからなる符号数(例えば、符号多重数)NCM個の直交符号系列を用いる。
以下では、符号長LocからなるNCM個の直交符号系列をCodencm={OCncm(1), OCncm(2),~, OCncm(Loc)}と表記する。OCncm(noc)は第ncm番目の直交符号系列Codencmにおけるnoc番目の符号要素を表す。ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1,~,Locである。
本実施の形態では、例えば、符号長Loc=2からなる符号数(例えば、符号多重数)NCM=2の直交符号系列を用いてよい。例えば、符号長Loc=2からなるNCM=2の直交符号系列として、Code={OC(1), OC(2)}、Code={OC(1), OC(2)}を用いてよい。各符号要素は、実数又は複素値をとる。また、例えば、第1番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)を基準とした場合、第2番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)は、noc=1の場合に+90°、noc=2の場合に‐90°の位相が異なる符号要素を用いてよい。又は、noc=1の場合に‐90°、noc=2の場合に+90°の位相が異なる符号要素を用いてよい。
例えば、符号長Loc=2からなるNCM=2の直交符号系列として、Code={1, 1}とCode={j, -j}とは、上述した関係(又は、条件)を満たす符号であり、これらは互いに直交関係にある符号である。上述した条件を満たす符号として、例えば、{1, 1}と{-j,j}とがある。または、上述した条件を満たす符号として、{1, j}と{j, 1}とが挙げられる。ここで、jは虚数単位である(j2=-1)。
本実施の形態において用いる直交符号系列を一般的に表記すると、第1番目の符号Code={A, B}に対して、第2番目の符号をCode={j×A, -j×B}又はCode={-j×A, j×B}と表してよい。これらの符号は互いに直交関係にあり、第1番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)を基準とした場合、第2番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)は、noc=1の場合に+90°、noc=2の場合に‐90°の位相が異なる、あるいは、noc=1の場合に‐90°、noc=2の場合に+90°の位相が異なる符号要素となる。ここで、A,Bは実数あるいは複素数であり、A,Bの絶対値は等しい、例えば、|A|=|B|となる。
なお、ここでは、第1番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)を基準とした場合、第2番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)は、noc=1の場合に+90°、noc=2の場合に‐90°の位相が異なる、あるいは、noc=1の場合に‐90°、noc=2の場合に+90°の位相が異なる符号要素としたが、位相差は±90°の位相差に限定されない。
例えば、第1番目の符号及び第2番目の符号におけるnoc番目の符号要素において、±ξの位相差が付与されてもよい。ξは、π/6~5π/6ラジアン(=30°~150°)の範囲であってもよい。例えば、送信アンテナ109間の位相偏差が予め補正される場合、後述するビーム送信によって、ξに依存して送信ビームの主ビーム方向が変化した円偏波が生成される。例えば、ビーム送信する送信アンテナ間隔がλ/2で、ξ=90°の場合、主ビーム方向は正面0°方向となる円偏波が生成される。また、例えば、ξ=30°の場合、主ビーム方向は正面方向から-15°程度シフトした方向に円偏波が生成される。また、例えば、ξ=150°の場合、主ビーム方向は正面方向から+15°程度シフトした方向に円偏波が生成される。ここで、λは送信アンテナ109から出力される高周波信号の波長(チャープ信号を用いる場合は、チャープ信号の中心周波数における波長)である。
例えば、主ビーム方向が正面方向と異なる方向でもよい場合(あるいは円偏波として軸比の良い角度を正面方向とする場合)には、第1番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)を基準とした場合、第2番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)は、noc=1の場合に+ξ、noc=2の場合に‐ξの位相が異なる、あるいは、noc=1の場合に‐ξ、noc=2の場合に+ξの位相が異なる符号要素としてよい。ここで、例えば、ξはπ/6~5π/6ラジアン(=30°~150°)の範囲を用いてよい。
このような直交符号系列を一般的に表記すると、第1番目の符号Code={A, B}に対して、第2番目の符号をCode={exp(jξ)×A, - exp(jξ)×B}又はCode={- exp(jξ)×A, exp(jξ)×B}と表してよい。これらの符号は互いに直交関係にあり、第1番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)を基準とした場合、第2番目の符号におけるnoc番目の符号要素OC(noc)は、noc=1の場合に+ξ、noc=2の場合に‐ξの位相が異なる、あるいは、noc=1の場合に‐ξ、noc=2の場合に+ξのラジアン位相が異なる符号要素となる。ここで、A,Bは実数あるいは複素数であり、A,Bの絶対値は等しい、例えば、|A|=|B|となる。
以下の説明では、Code={1, 1}とCode={j, -j}とを主に用いる例を示すが、これに限定されず、Code={A, B}、Code={j×A, -j×B}又はCode={-j×A, j×B}の符号、あるいは、Code={A, B}、Code={exp(jξ)×A, - exp(jξ)×B}又はCode={- exp(jξ)×A, exp(jξ)×B}の符号を用いてもよく、同様な効果が得られる。
また、本実施の形態の他にも、以降で説明する実施の形態1の変形例1、及び変形例2においても、Code={1, 1}とCode={j, -j}とを主に用いる例を示すが、これに限定されず、Code={A, B}、Code={j×A, -j×B}又はCode={-j×A, j×B}の符号、あるいは、Code={A, B}、Code={exp(jξ)×A, - exp(jξ)×B}又はCode={- exp(jξ)×A, exp(jξ)×B}の符号を用いてもよく、同様な効果が得られる。ここで、例えば、ξはπ/6~5π/6ラジアン(=30°~150°)の範囲を用いてよい。
符号化部107において、ドップラシフト設定部106から入力されるndm番目のドップラシフト量DOPndmを用いたドップラ多重信号を符号化する際の符号多重数(以下、符号化ドップラ多重数と呼ぶ)を「NDOP_CODE(ndm)」と表記する。ここで、ndm=1,~, NDMである。
符号化部107は、例えば、ドップラ多重信号を符号化する際の符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),~, 及びNDOP_CODE(NDM)の総和が、多重送信に用いる送信アンテナ109の数Ntと等しくなるように符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を設定する。例えば、符号化部107は、次式(7)を満たすように、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を設定する。これにより、レーダ装置10は、Nt個の送信アンテナ109を用いてドップラ領域及び符号領域における多重送信(以下、符号化ドップラ多重送信と呼ぶ)が可能となる。
Figure 2023141038000008
さらに、符号化部107は、例えば、最大等間隔ドップラシフト量設定を含む等間隔ドップラシフト量設定を用いて、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),~, NDOP_CODE(NDM)に関して、1以上NCM個以下の範囲の異なる符号化ドップラ多重数を含むように設定してもよい。例えば、符号化部107は、符号化ドップラ多重数の全てにおいて符号数NCM個とせずに、少なくとも1つのドップラシフト量DOPndmに対応する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)をNCM個より小さく設定する。よって、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列との複数の組み合わせにおいて、少なくとも1つのドップラシフト量DOPndmに対応付けられる直交符号系列による多重数(符号化ドップラ多重数)NDOP_CODE(ndm)は、他のドップラシフト量に対応付けられる符号化ドップラ多重数と異なってよい。例えば、符号化部107は、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一に設定する。この設定により、レーダ装置10は、例えば、後述する受信処理における折り返し判定処理によって、±1/2Trのドップラ範囲に亘って、複数の送信アンテナ109から符号化ドップラ多重送信された信号を個別に分離して受信できる。
または、符号化部107は、例えば、最大等間隔ドップラシフト量設定よりも狭い間隔の等間隔ドップラシフト量設定を用いて、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),~, NDOP_CODE(NDM)に関して、1以上NCM個以下の範囲において全て同数の符号化ドップラ多重数を含むように設定してもよい。例えば、符号化部107は、符号化ドップラ多重数の全てにおいて符号数NCM個を設定してよい。よって、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列との複数の組み合わせにおいて、ドップラシフト量DOPndmそれぞれに対応付けられる直交符号系列による多重数(符号化ドップラ多重数)NDOP_CODE(ndm)は同一でよい。例えば、符号化部107は、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数を均一に設定する。この設定により、レーダ装置10は、例えば、後述する受信処理における折り返し判定処理よって、±1/(2×Loc×Tr)のドップラ範囲に亘って、複数の送信アンテナ109から符号化ドップラ多重送信された信号を個別に分離して受信できる。
または、符号化部107は、例えば、最大等間隔ドップラシフト量設定を用いて、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),~, NDOP_CODE(NDM)に関して、1以上NCM個以下の範囲において全て同数の符号化ドップラ多重数を含むように設定してもよい。例えば、符号化部107は、符号化ドップラ多重数の全てにおいて符号数NCM個を設定してよい。例えば、符号化部107は、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数を均一に設定する。この設定の場合、例えば、後述する受信処理における折り返し判定処理が適用されない。また、レーダ装置10は、例えば、±1/(2Loc×NDM×Tr)のドップラ範囲に亘って、複数の送信アンテナ109から符号化ドップラ多重送信された信号を個別に分離して受信できる。
符号化部107は、第m番目の送信周期Trにおいて、第ndm番目のドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmに対して、次式(8)に示す符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)を設定して、位相回転部108に出力する。
Figure 2023141038000009
ここで、下付き添え字の「ndop_code(ndm)」は、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmに対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)以下のインデックスを表す。例えば、ndop_code(ndm)=1,…, NDOP_CODE(ndm)である。また、angle[x]は実数xのラジアン位相を出力する演算子であり、例えば、angle[1]=0、angle[-1]=π、angle[j]=π/2、angle[-j]=-π/2である。また、floor[x]は実数xを超えない最大の整数を出力する演算子である。jは虚数単位である。
例えば、式(8)に示すように、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)は、符号化に用いる符号長Loc回の送信周期の期間においてドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量を一定(例えば、式(8)の第1項)にし、符号化で用いる符号Code ndop_code(ndm)のLoc個の各符号要素OCndop_code(ndm)(1),…,OCndop_code(ndm)(Loc)の各々に対応する位相回転量を付与する(式(8)の第2項目)。
また、符号化部107は、送信周期(Tr)毎に、直交符号要素インデックスOC_INDEXをレーダ受信部200(後述する出力切替部209)に出力する。OC_INDEXは、直交符号系列Codendop_code(ndm)の要素を指示する直交符号要素インデックスであり、送信周期(Tr)毎に、次式(9)のように、1からLocの範囲で巡回的に可変する。
Figure 2023141038000010
ここで、mod(x, y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。また、m=1, ~,Ncである。Ncはレーダ測位に用いる送信周期数(以下では、「レーダ送信信号送信回数」と呼ぶ)である。また、レーダ送信信号送信回数Ncは、Locの整数倍(Ncode倍)となるように設定される。例えば、Nc=Loc×Ncodeである。
次に、符号化部107において、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を不均一に設定する方法の一例について説明する。
例えば、符号化部107は、下記の条件を満たす直交符号系列数(例えば、符号多重数又は符号数)NCMを設定する。例えば、直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナ109の数Ntに対して、以下の関係を満たす。
(直交符号系列数NCM)×(ドップラ多重数NDM)>多重送信に用いる送信アンテナ数Nt
例えば、上記条件を満たす直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMのうち、積(NCM×NDM)の値がより小さい組み合わせを用いることが、特性的にも、回路構成の複雑度的にもより好適である。ただし、上記条件を満たす直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMのうち、積(NCM×NDM)の値がより小さい組み合わせに限定されず、他の組み合わせも適用が可能である。
なお、本実施の形態では、一例として、符号長Loc=2からなる符号数(例えば、符号多重数)NCM=2の直交符号系列を用いる。
例えば、Nt=5の場合、NDM=3とNCM=2の組み合わせが好適である。
図3は、一例として、Nt=5、NDM=3、NCM=2の場合を示す。例えば、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3、及び、直交符号Code1及びCode2の割り当ては、図3に示すように、NDOP_CODE(1)、NDOP_CODE(2)及びNDOP_CODE(3)の設定に応じて決定される。
例えば、図3の(a)は、NDOP_CODE(1)=2、NDOP_CODE(2)=2、NDOP_CODE(3)=1の例を示し、図3の(b)は、NDOP_CODE(1)=1、NDOP_CODE(2)=2、NDOP_CODE(3)=2の例を示し、図3の(c)は、NDOP_CODE(1)=2、NDOP_CODE(2)=1、NDOP_CODE(3)=2の例を示す。
なお、図3の(a)及び(b)では、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)=1に対応するドップラシフト量においてCodeが使用されるが、これに限定されない。例えば、符号化ドップラ多重数がNCMより小さい設定の場合、図3の(c)に示すように、Code1の代わりにCode2が使用されてもよい。
図3の(a)に示すようにNDOP_CODE(1)=NDOP_CODE(2)=2、NDOP_CODE(3)=1であり、NDOP_CODE(1)=NDOP_CODE(2)≠NDOP_CODE(2)のように、各ドップラシフト量DOP1、DOP2及びDOP3において符号化ドップラ多重数NDOP_CODEが不均一に設定される。このような設定の場合、ドップラ周波数範囲は、例えば、1アンテナ送信時における最大ドップラ速度と同等とすることができる(詳細は後述する)。
また、例えば、Nt=6又は7の場合、NDM=4とNCM=2の組み合わせが好適である。
図4は、一例として、Nt=6、NDM=4、NCM=2の場合を示す。例えば、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3、DOP4、及び、直交符号Code1及びCode2の割り当ては、図4に示すように、NDOP_CODE(1)、NDOP_CODE(2)、NDOP_CODE(3)及びNDOP_CODE(4)の設定に応じて決定される。
例えば、図4の(a)は、NDOP_CODE(1)=NDOP_CODE(2)=2、NDOP_CODE(3)=NDOP_CODE(4)=1の例を示し、図4の(b)は、NDOP_CODE(1)=NDOP_CODE(3)=2、NDOP_CODE(2)=NDOP_CODE(4)=1の例を示す。
なお、図4では、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)=1に対応するドップラシフト量においてCodeが使用されるが、これに限定されない。例えば、符号化ドップラ多重数がNCMより小さい設定の場合、図4の(a)に示すように、Code1の代わりにCode2が使用されてもよく、図4の(b)に示すように、Code1及びCode2を混在させてもよい。
また、例えば、図4に示すように、Nt=6、NDM=4、NCM=2の場合、全ての符号を用いないドップラシフト量は2つある。また、例えば、NDM=4のうち、全ての符号を用いないドップラシフト量の組み合わせについて、4つのドップラシフト量から2つのドップラシフト量を選択する組み合わせは6通り(=4C2)あり、それぞれの組み合わせにおいて、使用する符号の組み合わせは4通り(=NCM×NCM)ある。このため、Nt=6、NDM=4、NCM=2の場合、ドップラシフト量DOP及び直交符号Codeの割り当ての組み合わせは、全24通りとなる。
以下、同様に、例えば、Nt=8の場合、NDM=5とNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=9の場合、NDM=5とNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=10の場合、NDM=6とNCM=2の組み合わせが好適である。なお、送信アンテナ109の数Ntは、上記例に限定されず、Nt=11以上についても本開示の一実施例を適用できる。
次に、符号化部107において、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を均一に設定する方法の一例について説明する。
なお、符号化部107において、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を均一に設定する方法は、以下の条件を満たす直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMのうち、積(NCM×NDM)の値がより小さい組み合わせを用いることが、特性的にも、回路構成の複雑度的にもより好適である。ただし、積(NCM×NDM)の値がより小さい組み合わせに限定されず、他の組み合わせも適用が可能である。
例えば、符号化部107は、下記の条件を満たす直交符号系列数(例えば、符号多重数又は符号数)NCMを設定する。例えば、直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナ109の数Ntに対して、以下の関係を満たす。
(直交符号系列数NCM)×(ドップラ多重数NDM)=多重送信に用いる送信アンテナ数Nt
例えば、Nt=4の場合、NDM=2及びNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=6の場合、NDM=3及びNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=8の場合、NDM=4及びNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=10の場合、NDM=5及びNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=12の場合、NDM=6及びNCM=2の組み合わせが好適である。
なお、送信アンテナ109の数Ntは、上記例に限定されず、本開示の一実施例を適用できる。この場合、直交符号系列数NCM>1、ドップラ多重数NDM>1となる整数の組み合わせ、かつ、(直交符号系列数NCM)×(ドップラ多重数NDM)=多重送信に用いる送信アンテナ数Ntを満たすために、多重送信に用いる送信アンテナ数Ntは4以上、かつ、上記条件を満たすNtに設定されてよい。
次に、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)の設定例について説明する。
例えば、符号化部107において、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=4、ドップラ多重数NDM=2、符号多重数NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={j,-j}を用いる場合について説明する。この場合、例えば、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=2、NDOP_CODE(2)=2とすると、符号化部107は、次式(10)~(13)のような符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ2, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)を設定して、位相回転部108に出力する。
Figure 2023141038000011
Figure 2023141038000012
Figure 2023141038000013
Figure 2023141038000014
ここで、一例として、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量を式(5)のφndm=2π(ndm-1)/NDMとし、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=0、及び、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=πを用いる場合、符号化部107は、次式(14)~(17)のような符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ2, 1(m),ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)を設定して、位相回転部108に出力する。ここで、m=1, ~, Ncである。なお、ここでは、2πによるモジュロ演算を行い、0以上2π未満のラジアンの範囲で記載している(以降の説明についても同様である)。
Figure 2023141038000015
Figure 2023141038000016
Figure 2023141038000017
Figure 2023141038000018
式(14)~(17)に示すように、位相回転量が、2πを等分割したφndm=2π(ndm-1)/NDMに設定される場合、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ2, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)は、NDM×NCM=2×2=4の送信周期で変化する。
または、他の例として、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量をφndm=2π(ndm)/NDMとし、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ=π、及び、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=0としてもよい。この場合、符号化部107は、次式(18)~(21)のような符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ2, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)を設定して、位相回転部108に出力する。ここで、m=1, ~, Ncである。
Figure 2023141038000019
Figure 2023141038000020
Figure 2023141038000021
Figure 2023141038000022
また、式(14)~(17)又は式(18)~(21)に示すように、位相回転量(例えば、ドップラシフト量を付与する位相回転量)に用いる位相数(例えば、0及びπの2つ)は、多重送信に用いる送信アンテナ109の数Nt=4よりも少ない。例えば、式(14)~(17)又は式(18)~(21)に示すように、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数(例えば、0及びπの2つ)は、多重送信に用いるドップラシフト量の数(例えば、ドップラ多重数)NDM=2に等しい。
また、例えば、符号化部107において、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=6、ドップラ多重数NDM=4、符号多重数NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={j,-j}を用いる場合について説明する。この場合、例えば、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=1、NDOP_CODE(2)=1、NDOP_CODE(3)=2、NDOP_CODE(4)=2とすると、符号化部107は、次式(22)~(27)のような符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ1, 3(m) , ψ2, 3(m) , ψ1, 4(m) , ψ2, 4(m)を設定して、位相回転部108に出力する。ここで、m=1, ~, Ncである。
Figure 2023141038000023
Figure 2023141038000024
Figure 2023141038000025
Figure 2023141038000026
Figure 2023141038000027
Figure 2023141038000028
ここで、一例として、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量をφndm=2π(ndm-1) /NDMとし、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=0、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=π/2、ドップラシフト量DOP3を付与する位相回転量φ3=π、ドップラシフト量DOP4を付与する位相回転量φ4=3π/2を用いる場合、符号化部107は、次式(28)~(33)のような符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ1, 3(m) , ψ2, 3(m) , ψ1, 4(m) , ψ2, 4(m)を設定して、位相回転部108に出力する。ここで、m=1, ~, Ncである。
Figure 2023141038000029
Figure 2023141038000030
Figure 2023141038000031
Figure 2023141038000032
Figure 2023141038000033
Figure 2023141038000034
式(28)~式(33)に示すように、位相回転量が、2πを等分割したφndm=2π(ndm-1)/NDMに設定される場合、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ1, 3(m) , ψ2, 3(m) , ψ1, 4(m) , ψ2, 4(m)は、NDM×NCM=4×2=8の送信周期で変化する。
また、式(28)~(33)に示すように、位相回転量(例えば、ドップラシフト量を付与する位相回転量)に用いる位相数(例えば、0、π/2、π、及び、3π/2の4つ)は、多重送信に用いる送信アンテナ109の数Nt=6よりも少ない。例えば、式(28)~(33)に示すように、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数(例えば、0、π/2、π、及び、3π/2の4つ)は、多重送信に用いるドップラシフト量の数(例えば、ドップラ多重数)NDM=4に等しい。
なお、ここでは、一例として、送信アンテナ109の数Nt=4、ドップラ多重数NDM=2の場合、及び、送信アンテナ109の数Nt=6、ドップラ多重数NDM=4の場合における位相回転量の設定についてそれぞれ説明したが、送信アンテナ109の数Nt及びドップラ多重数NDMは、これらの値に限定されない。例えば、送信アンテナ109の数Ntが何れの値でも、位相回転量に用いる位相数は、多重送信に用いる送信アンテナ109の数Ntよりも少なく設定されてよい。また、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数は、多重送信に用いるドップラシフト量の数NDMに等しくしてよい。
また、上記の例のように、位相回転量の設定には、最大等間隔ドップラシフト量設定で示した位相回転量の設定を用いてもよく、あるいは、等間隔ドップラシフト量設定で示した位相回転量の設定、例えば、式(6)を用いてもよい。
以上、位相回転量設定部105における位相回転量の設定方法について説明した。
図1において、位相回転部108は、位相回転量設定部105において設定された符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)に基づいて、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に位相回転量を付与する。ここで、ndm=1,~, NDMであり、ndop_code(ndm)=1,~, NDOP_CODE(ndm)である。
符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),~,NDOP_CODE(NDM)の総和は、送信アンテナ109の数Ntに等しく設定され、Nt個の符号化ドップラ位相回転量はNt個の位相回転部108にそれぞれ入力される。
Nt個の位相回転部108は、送信周期Tr毎に、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、入力された符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)をそれぞれ付与する。Nt個の位相回転部108からの出力(例えば、符号化ドップラ多重信号と呼ぶ)は、規定された送信電力に増幅後に、送信アレーアンテナ部のNt個の送信アンテナ109から空間に放射される。
なお、以下では、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)を付与する位相回転部108を、「位相回転部PROT#[ndop_code(ndm), ndm]」と表記する。同様に、位相回転部PROT#[ndop_code(ndm), ndm]の出力を空間に放射する送信アンテナ109を、「送信アンテナTx#[ndop_code(ndm), ndm]」と表記する。ここで、ndm=1,~, NDMであり、ndop_code(ndm)=1,~, NDOP_CODE(ndm)である。
本実施の形態において、符号長Loc=2からなる符号数(例えば、符号多重数)NCM=2の直交符号系列を用いる。従って、NDOP_CODE(ndm)=1あるいは2であり、ndop_code(ndm)≦2である。
例えば、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=4の場合に、ドップラ多重数NDM=2、符号多重数NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code={1,1}、Code2={j,-j}とし、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=2, NDOP_CODE(2)=2とする場合について説明する。この場合、符号化部107から位相回転部108に対して、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ2, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)が送信周期毎に入力される。
例えば、位相回転部PROT#[1, 1]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に次式(34)のように位相回転量ψ1, 1(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[1, 1]の出力は、送信アンテナTx#[1, 1]から出力される。ここでcp(t)は送信周期毎のチャープ信号を表す。
Figure 2023141038000035
同様に、位相回転部PROT#[2, 1]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に次式(35)のように位相回転量ψ2, 1(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[2, 1]の出力は、送信アンテナTx#[2, 1]から出力される。
Figure 2023141038000036
同様に、位相回転部PROT#[1, 2]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に次式(36)のように位相回転量ψ1, 2(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[1, 2]の出力は、送信アンテナTx#[1, 2]から出力される。
Figure 2023141038000037
同様に、位相回転部PROT#[2, 2]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に次式(37)のように位相回転量ψ2, 2(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[2, 2]の出力は、送信アンテナTx#[2, 2]から出力される。
Figure 2023141038000038
以上、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)の設定例について説明した。
また、本実施の形態では、例えば、送信アンテナ109の偏波及び送信アンテナ109の配置と、符号化ドップラ位相回転量の割り当てとを、以下のように関連付ける。この関連付けにより、レーダ装置10は、レーダ処理において、多重送信する送信アンテナ109に加え、多重送信する送信アンテナの偏波(例えば、水平偏波及び垂直偏波)と異なる偏波の送信アンテナ(例えば、円偏波)を利用可能となる(例については後述する)。
例えば、少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109は、互いに異なる直交偏波(例えば、水平偏波及び垂直偏波)を放出(又は、放射)するアンテナであり、同一のドップラ多重(例えば、ドップラシフト量)を用いたレーダ送信信号を送信する。
本実施の形態では、符号長Loc=2からなる符号数(例えば、符号多重数)NCM=2の直交符号系列を用いるため、NDOP_CODE(ndm_BF)=2である。
例えば、隣接するNDOP_CODE(ndm_BF)=2個の送信アンテナ109には、位相回転部PROT#[1, ndm_BF]、位相回転部PROT#[2, ndm_BF]が割り当てられた送信アンテナTx#[1, ndm_BF]、送信アンテナTx#[2, ndm_BF]が含まれる。ここで、ndm_BFは、1,~, NDMの何れかの値であり得る。例えば、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列との複数の組み合わせのうち、複数の送信アンテナ109において隣り合う送信アンテナ109は、互いに異なる直交偏波を放出するアンテナであり、それぞれのアンテナに対応付けられる組み合わせでは、ドップラシフト量が同一(例えば、ndm=ndm_BF)である。
例えば、上述した符号化ドップラ位相回転量の割り当てと、送信アンテナ109の偏波及び配置との関連付けを満たす組み合わせ(例えば、ペア)が1組以上含まれてもよい。
一例として、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=4の場合に、ドップラ多重数NDM=2、符号多重数NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code={1,1}、Code2={j,-j}とし、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=2, NDOP_CODE(2)=2とする場合について説明する。なお、ビーム送信アンテナ数NBF=2とし、ビーム送信アンテナに用いるドップラ多重信号のインデックスとしてndm_BF=1及び2を用いる。
図6では、例えば、水平方向に隣接したNt=4個の送信アンテナ109は、左側のアンテナから、送信アンテナTx#[1, 1]、送信アンテナTx#[2, 1]、送信アンテナTx#[1, 2]、送信アンテナTx#[2, 2]である。
図6では、左側から2(=NDOP_CODE(1))個の隣り合う送信アンテナTx#[1, 1]及びTx#[2, 1]は、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP1)を用いてレーダ送信信号を送信する。また、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP1)を用いてレーダ送信信号を送信する送信アンテナTx#[1, 1]及びTx#[2, 1]は、それぞれ互いに直交する直線偏波の電波を放射するアンテナを用いる。例えば、図6に示す例では、送信アンテナTx#[1, 1]には水平偏波となる電波を放射するアンテナ(例えば、「水平偏波アンテナ」)を用いてよく、送信アンテナTx#[2, 1]には垂直偏波となる電波を放射するアンテナ(例えば、「垂直偏波アンテナ」)を用いてよい。なお、これに限定されず、送信アンテナTx#[1, 1]には垂直偏波アンテナを用いて、送信アンテナTx#[2, 1]には水平偏波アンテナを用いてもよい。なお、図6における黒丸印(●)は各送信アンテナの位相中心を示す。
また、図6では、右側から2(=NDOP_CODE(2))個の隣り合う送信アンテナTx#[1, 2]及びTx#[2, 2]は、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP2)を用いてレーダ送信信号を送信する。また、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP2)を用いてレーダ送信信号を送信する送信アンテナTx#[1, 2]及びTx#[2, 2]は、それぞれ互いに直交する直線偏波の電波を放射するアンテナを用いる。例えば、図6に示す例では、送信アンテナTx#[1, 2]には水平偏波アンテナを用いて、送信アンテナTx#[2, 2]には垂直偏波アンテナを用いてよい。なお、これに限定されず、送信アンテナTx#[1, 2]には垂直偏波アンテナを用いて、送信アンテナTx#[2, 2]には水平偏波アンテナを用いてもよい。
また、他の例として、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=5の場合に、ドップラ多重数NDM=3、符号多重数NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code={1,1}、Code2={j,-j}とし、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=2, NDOP_CODE(2)=2とする場合について説明する。なお、ビーム送信アンテナ数NBF=2とし、ビーム送信アンテナに用いるドップラ多重信号のインデックスとしてndm_BF1=1、及びndm_BF2=2を用いる。
図7では、例えば、水平方向に隣接したNt=5個の送信アンテナ109は、左側のアンテナから、送信アンテナTx#[1, 1]、送信アンテナTx#[2, 1]、送信アンテナTx#[1, 2]、送信アンテナTx#[2, 2] 、送信アンテナTx#[1, 3]である。なお、図7における黒丸印(●)は各送信アンテナの位相中心を示す。
図7では、左側から2(=NDOP_CODE(1))個の隣り合う送信アンテナTx#[1, 1]及びTx#[2, 1]は、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP1)を用いてレーダ送信信号を送信する。また、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP1)を用いてレーダ送信信号を送信する送信アンテナTx#[1, 1]及びTx#[2, 1]は、それぞれ互いに直交する直線偏波の電波を放射するアンテナを用いる。例えば、図7に示す例では、送信アンテナTx#[1, 1]には水平偏波アンテナを用いて、送信アンテナTx#[2, 1]には垂直偏波アンテナを用いてよい。なお、これに限定されず、送信アンテナTx#[1, 1]には垂直偏波アンテナを用いて、送信アンテナTx#[2, 1]には水平偏波アンテナを用いてもよい。
また、送信アンテナTx#[1, 1]及びTx#[2, 1]の右側にある2(=NDOP_CODE(2))個の隣り合う送信アンテナTx#[1, 2]及びTx#[2, 2]は、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP2)を用いてレーダ送信信号を送信する。また、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP2)を用いてレーダ送信信号を送信する送信アンテナTx#[1, 2]及びTx#[2, 2]は、それぞれ互いに直交する直線偏波の電波を放射するアンテナを用いる。例えば、図7に示す例では、送信アンテナTx#[1, 2]には水平偏波アンテナを用いて、送信アンテナTx#[2, 2]には垂直偏波アンテナを用いてよい。なお、これに限定されず、送信アンテナTx#[1, 2]には垂直偏波アンテナを用いて、送信アンテナTx#[2, 2]には水平偏波アンテナを用いてもよい。なお、送信アンテナTx#[1, 3]は任意の偏波アンテナを用いてもよい。
また、例えば、上述した隣り合う水平偏波アンテナ及び垂直偏波アンテナの組(又は、ペア)が複数含まれる場合、レーダ装置10は、複数の組のそれぞれに異なるドップラシフト量を設定してよい。例えば、図6及び図7において、送信アンテナTx#[1, 1]及びTx#[2, 1]の組と、送信アンテナTx#[1, 2]及びTx#[2, 2]の組とで、設定されるドップラシフト量が異なってよい。
これらのように、少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109(例えば、第1の送信アンテナに対応)は、水平偏波を放射する送信アンテナ109、及び、垂直偏波を放射する送信アンテナ109(例えば、第2の送信アンテナに対応)を含む。また、少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109には、同一のドップラシフト量が設定され、同一のドップラ多重を用いてレーダ送信信号が送信される。例えば、少なくとも一組の隣接する送信アンテナ109は、同一のドップラ多重を用いて符号多重送信し、異なる偏波アンテナを用いてレーダ送信信号を空間に放射する。
ここで、同一のドップラ多重を用いて符号多重送信されたレーダ送信信号に対応する送信周期毎の受信信号は、複数の送信アンテナ109によるビーム送信に対応する受信信号とみなすことができる。例えば、上述した少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109の送信は、当該隣り合う送信アンテナ109によって構成されるサブアレーによるビーム送信と等価となる。レーダ装置10は、例えば、上述した少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109からレーダ送信信号を等電力で送信する場合、当該送信を、隣り合う送信アンテナ109の中点位置をサブアレーの位相中心とした新たな送信アンテナ(以下、「ビーム送信アンテナ」と呼ぶ)による送信として扱うことができる(詳細は受信処理において後述する)。なお、図6及び図7における白丸印(〇)は、各ビーム送信アンテナの位相中心を示す。
また、上述した少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109に、例えば、水平偏波アンテナ及び垂直偏波アンテナのように互いに直交する直線偏波の電波を放射する偏波アンテナを用いてよい。これにより、同一のドップラ多重を用いて符号多重送信されたレーダ送信信号に対応する送信周期毎の受信信号は、少なくとも一組の隣り合う複数の送信アンテナ109から、円偏波となる電波が放射された送信アンテナからの送信に対応する受信信号とみなすことができる。以下、この原理に関して計算機シミュレーションを用いて説明する。
2種類の直交する直線偏波アンテナ(例えば、水平偏波アンテナ及び垂直偏波アンテナ)を組み合わせて、異なる偏波(右旋円偏波又は左旋円偏波)を生成する計算機シミュレーションについて説明する。
例えば、図8に示すように、水平偏波アンテナ(ANT#1)及び垂直偏波アンテナ(ANT#2)への給電位相を、ANT#1を基準(例えば、0度)として、ANT#2の位相を90度あるいは-90度とし、同時に信号を送信する場合の計算機シミュレーションの結果について説明する。ここでは、一例として、水平偏波アンテナ(ANT#1)及び垂直偏波アンテナ(ANT#2)の素子間隔は0.5波長に設定される。
なお、素子間隔は、0.5波長に限らず、より間隔を拡げてもよい。素子間隔を拡げた場合、2アンテナで構成される主ビームのビーム幅が狭くなり、軸比が確保できる視野角が狭まる。また、素子間隔を1波長程度以上拡げた間隔とすると、2アンテナで構成される主ビーム方向と異なる方向にグレーティングローブが発生し、主ビーム方向及びグレーティングローブ方向で円偏波となる電波が放射される。
なお、図8では、1点給電の平面パッチアンテナを用いた直線偏波アンテナの例を示したが、これに限定されず、平面パッチアンテナに対し2点給電するタイプのアンテナ素子を用いてもよい。また複数のアンテナ素子を用いてアレーを構成したアンテナ素子を用いてもよい。
例えば、ANT#1を基準として、ANT#2の位相を90度ずらした場合、図9に示す指向性の左旋円偏波が放射される。図9の(a)は、水平面の指向性を示し、図9の(b)は、垂直面の指向性を示す。また、ANT#1を基準として、ANT#2の位相を-90度ずらした場合、図10に示す指向性の右旋円偏波が放射される。図10の(a)は、水平面の指向性を示し、図10の(b)は、垂直面の指向性を示す。
ここで、ANT#1及びANT#2を用いて左旋円偏波あるいは右旋円偏波を生成する2種類の位相[0°, 90°]及び[0°,-90°]は、符号化部107において、符号長Loc=2からなるNCM=2の直交符号系列として、Code={1, 1}、Code={j, -j}を用いた場合に相当する。例えば、これらの互いに直交関係にあり、第1番目の符号のnoc番目の符号要素OCncm(noc)を基準とした場合、第2の符号のnoc番目の符号要素OCncm(noc)は+90°あるいは‐90°の位相が異なる符号要素となる。ここでnoc=1あるいは2である。例えば、複数の直交符号のうち、ANT#1から送信されるレーダ送信信号に対する第1番目の符号Code1={1, 1}と、ANT#2から送信されるレーダ送信信号に対する第2番目の符号Code2={j, -j}との間において、各送信周期に対応する符号要素OCの位相は90°異なる。
このような符号化部107において符号化された信号を、同一のドップラ多重を用いて符号多重送信されるレーダ送信信号は、複数の送信アンテナ109から、それぞれの位相差+90°あるいは‐90°の位相が異なったまま送信される関係が保持される。このため、これらのレーダ送信信号に対応する受信信号は、円偏波となる電波が放射された送信アンテナからの送信に対応する受信信号とみなすことができる。
例えば、Code={1, 1}、Code={j, -j}を用いる場合、第1の送信周期では、ANT#1から送信されるレーダ送信信号に対して、Codeの第1番目の符号要素”1”に対応する位相回転量が付与され、ANT#2から送信されるレーダ送信信号に対して、Code2の第1番目の符号要素”j”に対応する位相回転量が付与されてよい。これにより、第1の送信周期では、ANT#1及びANT#2によって、左旋円偏波となる電波が放射される。また、例えば、第1の送信周期に続く第2の送信周期では、ANT#1から送信されるレーダ送信信号に対して、Codeの第2番目の符号要素”1”に対応する位相回転量が付与され、ANT#2から送信されるレーダ送信信号に対して、Code2の第2番目の符号要素”-j”に対応する位相回転量が付与されてよい。これにより、第2の送信周期では、ANT#1及びANT#2によって、右旋円偏波となる電波が放射される。
以上のように、例えば、レーダ装置10(レーダ送信部100)は、各送信周期におけるANT#1とANT#2との間の位相が90°異なる位相回転量を送信信号に付与することにより、レーダ送信信号をANT#1及びANT#2から多重送信する。このような送信方法によって、レーダ装置10は、多重送信する送信アンテナ数Ntを超える送信アンテナを利用可能となり、送信アンテナ109の偏波(例えば、水平偏波及び垂直偏波)と異なる偏波(例えば、円偏波)の送信アンテナを利用可能となる。
なお、図6及び図7では、水平方向に配置された送信アンテナ109を例に説明したが、送信アンテナ109の配置方法はこれに限定されない。例えば、送信アンテナ109は、垂直方向に配置されてもよく、水平方向及び垂直方向の面的に配置されてもよい。また、送信アンテナ109を構成するアンテナは、水平方向に配置された複数のサブアレー素子、垂直方向に配置された複数のサブアレー素子、あるいは、水平及び垂直の面的に配置された複数のサブアレー素子から構成されてもよい。また、図6及び図7に示したアンテナは、レーダ装置10が有する複数のアンテナのうちの一部であってよい。
このように、本実施の形態では、複数の送信アンテナ109に対して、ドップラシフト量DOPndm及び直交符号系列Codencmの少なくとも一方が異なる、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列Codencmとの組み合わせ(例えば、割り当て)がそれぞれ対応付けられる。
また、本実施の形態では、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を不均一に設定する場合、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列Codencmとの組み合わせにおいて、各ドップラシフト量DOPndmに対応する直交符号系列Codencmの多重数(例えば、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm))は異なってよい。一例として、図3に示すように、Nt個の送信アンテナ109には、少なくとも、異なる直交符号系列によって符号多重される送信信号がそれぞれ送信される複数(例えば、2つ)の送信アンテナ109と、符号多重されない送信信号が送信される少なくとも1つの送信アンテナ109と、が含まれてよい。例えば、レーダ送信部100から送信されるレーダ送信信号には、少なくとも、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を符号数NCMに設定した符号化ドップラ多重信号と、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を符号数NCMより小さく設定した符号化ドップラ多重信号と、が含まれる。
また、本実施の形態では、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を均一に設定する場合、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列Codencmとの組み合わせにおいて、ドップラシフト量DOPndmそれぞれに対応する直交符号系列Codencmの多重数(例えば、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm))は同一でよい。
[レーダ受信部200の構成]
図1において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナ202を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR(Constant False Alarm Rate)部211と、符号化ドップラ多重分離部212と、ドップラ多重分離部213と、方向推定部214と、を有する。
各受信アンテナ202は、物標(ターゲット)に反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206とを有する。
受信無線部203は、ミキサ部204と、LPF(low pass filter)205と、を有する。受信無線部203は、ミキサ部204において、受信した反射波信号に対して、レーダ送信信号生成部101から入力される、送信信号であるチャープ信号をミキシングし、LPF205を通過させる。これにより、反射波信号の遅延時間に応じた周波数となるビート信号が取り出される。例えば、図11に示すように、送信チャープ信号(送信周波数変調波)の周波数と、受信チャープ信号(受信周波数変調波)の周波数との差分周波数がビート周波数として得られる。
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206は、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、出力切替部209と、ドップラ解析部210と、を有する。
LPF205から出力された信号(例えば、ビート信号)は、信号処理部206において、AD変換部207によって、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換される。
ビート周波数解析部208は、送信周期Tr毎に、規定された時間範囲(レンジゲート)において得られたNdata個の離散サンプルデータをFFT処理する。これにより、信号処理部206では、反射波信号(レーダ反射波)の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。なお、FFT処理の際、ビート周波数解析部208は、例えば、Han窓又はHamming窓等の窓関数係数を乗算してもよい。窓関数係数を用いることにより、ビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
ここで、第m番目のチャープパルス送信によって得られる第z番目の信号処理部206におけるビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答をRFT(fb, m)で表す。ここで、fbはビート周波数インデックスを表し、FFTのインデックス(ビン番号)に対応する。例えば、fb=0,~,Ndata/2-1であり、z=1,~,Naであり、m=1,~,NCである。ビート周波数インデックスfbが小さいほど、反射波信号の遅延時間が小さい(例えば、物標との距離が近い)ビート周波数を示す。
また、ビート周波数インデックスfbは、次式(38)を用いて距離情報R(fb)に変換できる。そのため、以下では、ビート周波数インデックスfbを「距離インデックスfb」と呼ぶ。
Figure 2023141038000039
ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。
出力切替部209は、位相回転量設定部105の符号化部107から入力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Loc個のドップラ解析部210のうち、OC_INDEX番目のドップラ解析部210に選択的に切り替えて出力する。例えば、出力切替部209は、第m番目の送信周期Trにおいて、式(9)により得られるOC_INDEX番目のドップラ解析部210を選択する。
信号処理部206は、Loc個(ここでは、一例として、Loc=2)のドップラ解析部210-1~210-Locを有する。例えば、第noc番目のドップラ解析部210には、出力切替部209によってLoc回の送信周期(Loc×Tr)毎にデータが入力される。このため、第noc番目のドップラ解析部210は、Nc回の送信周期のうち、Ncode回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から入力されるビート周波数応答RFT(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1, ~, Locである。
例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用できる。この場合、FFTサイズはNcodeであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ncode/2, ~, 0, ~, Ncode/2-1である。
以下では、一例として、Ncodeが2のべき乗値である場合について説明する。なお、Ncodeが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理が可能である。また、ドップラ解析部210は、FFT処理の際に、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することでドップラ周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
例えば、第z番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT noc(fb, fs)は、次式(39)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
Figure 2023141038000040
以上、信号処理部206の各構成部における処理について説明した。
図1において、CFAR部211は、第1~第Na番目の信号処理部206それぞれのLoc個のドップラ解析部210の出力を用いて、CFAR処理(例えば、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部211は、例えば、次式(40)のように、第1~第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFTz noc(fb, fs)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理又は1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば、非特許文献2に開示された処理が適用されてよい。
Figure 2023141038000041
CFAR部211は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を符号化ドップラ多重分離部212に出力する。
なお、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmとして、例えば、式(5)を用いる場合、ドップラ解析部210の出力におけるドップラ周波数領域のドップラシフト量の間隔は等間隔となり、ドップラ周波数インデックスの間隔でドップラシフト量の間隔ΔFDを表すと、ΔFD=Ncode/NDMとなる。そのため、ドップラ解析部210の出力において、ドップラ周波数領域では、ドップラシフト多重される各信号に対して、ΔFDの間隔でピークがそれぞれ検出される。なお、位相回転量φndmとして、式(5)を用いる場合、Ncode及びNDMによってはΔFDが整数とならない場合がある。そのようなの場合には、後述する式(59)を用いることにより、ΔFDを整数値とすることができる。以下ではΔFDが整数値として受信処理動作の説明を行う。
図12の(a)は、NDM=2の場合に3つのターゲットの反射波が存在する距離におけるドップラ解析部210の出力の一例を示す。例えば、図12の(a)に示すように、3つのターゲットの反射波がドップラ周波数インデックスf1、f2及びf3で観測される場合、当該反射波は、f1、f2及びf3それぞれに対して、ΔFDの間隔のドップラ周波数インデックス(例えば、f1-ΔFD、f2-ΔFD、f3-ΔFD+Ncode)においても観測される。
したがって、CFAR部211は、ドップラ解析部210の各出力に対して、ドップラシフト量の間隔ΔFDの範囲で分割し、分割した各範囲に対して、次式(41)に示すように、ドップラシフト多重した各信号ピーク位置を合わせて電力加算(例えば、「ドップラ領域圧縮」と呼ぶ)した後に、CFAR処理(例えば、「ドップラ領域圧縮CFAR処理」と呼ぶ)を行ってよい。ここで、fs_comp=-ΔFD/2,~,- ΔFD/2-1である。例えば、ΔFD=Ncode/NDMの場合は、fs_comp =Ncode/(2NDM),~,Ncode/(2NDM)-1である。
Figure 2023141038000042
ただし、式(41)において、
Figure 2023141038000043
の場合は、Ncodeを加えたドップラ周波数インデックスを用いる。
同様に、式(41)において、
Figure 2023141038000044
の場合は、更に、Ncodeを減算したドップラ周波数インデックスを用いる。
これにより、CFAR処理のドップラ周波数範囲を1/NDMに圧縮でき、CFAR処理量を削減でき、かつ、回路構成の簡易化を図ることができる。また、CFAR部211では、NDM個のドップラシフト多重した各信号を電力加算できるため、SNR(Signal to Noise Ratio)を(NDM1/2程度改善でき、レーダ装置10におけるレーダ検知性能を向上できる。
図12の(b)は、図12の(a)で示したドップラ解析部210の出力に対して、式(41)に示すドップラ領域圧縮処理を適用後の出力例を示す。図12の(b)に示すように、NDM=2の場合、CFAR部211は、ドップラ領域圧縮処理によって、ドップラ周波数インデックスf1の電力成分と、f1-ΔFDの電力成分とを加算して出力する。同様に、図12の(b)に示すように、CFAR部211は、ドップラ周波数インデックスf2の電力成分と、f2-ΔFDの電力成分とを加算して出力する。また、ドップラ周波数インデックスf3の電力成分について、f3-ΔFDが-Ncode/2よりも小さいため、CFAR部211は、ドップラ周波数インデックスf3の電力成分と、f3-ΔFD+Ncode(例えば、NDM=2の場合はf3+ΔFD)の電力成分とを加算して出力する。
ドップラ領域圧縮の結果、ドップラ周波数領域においてドップラ周波数インデックスfs_compの範囲は、-ΔFD/2以上,~, ΔFD/2-1以下(ΔFD=Ncode/NDM の場合、-Ncode/(2NDM)以上,~,Ncode/(2NDM)-1以下)に削減され、CFAR処理の範囲が圧縮されるので、CFAR処理の演算量を低減できる。また、図12において、例えば、3つのターゲットからの反射波は電力加算されるため信号成分のSNRが向上する。なお、ノイズ成分も電力合成されるため、SNRの改善効果は、例えば、(NDM1/2程度の改善となる。
ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いたCFAR部211は、例えば、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar、及び、NDM個のドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfar+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)、nfd=1,…,NDMを符号化ドップラ多重分離部212に出力する。
また、CFAR部211は、例えば、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarをドップラ多重分離部213に出力する。
なお、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、式(5)に限定されない。例えば、ドップラシフト多重した各信号が、ドップラ解析部210から出力されるドップラ周波数領域において一定の間隔でそれぞれピークが検出される位相回転量φndmであれば、CFAR部211は、ドップラ領域圧縮CFAR処理を適用できる。
例えば、等間隔ドップラシフト量設定を用いて、ΔfMinInterval=1/(Tr(NDM+Nint)LOC)が設定される場合、位相回転量φndmは、式(6)に従って設定され、ドップラシフト多重された各信号が、ドップラ解析部210から出力されるドップラ周波数領域においてΔFD=Ncode/(NDM+Nint)の間隔でそれぞれピークとして検出される。このような場合においても、CFAR部211は、ドップラ領域圧縮CFAR処理を適用できる。
次に、図1に示す符号化ドップラ多重分離部212の動作例について説明する。符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、第1のドップラ解析部210の出力及び第2のドップラ解析部210の出力の双方を用いて、直線偏波(例えば、水平偏波及び垂直偏波)の信号を分離する。
なお、以下では、CFAR部211において、ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いた場合の符号化ドップラ多重分離部212の処理の一例について説明する。
符号化ドップラ多重分離部212は、CFAR部211の出力である距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar、及び、NDM個のドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfar+(nfd-ceil(NDM/2)-1)×ΔFD)、nfd=1,~,NDMに基づいて、ドップラ解析部210の出力を用いて、符号化ドップラ多重送信された信号を分離し、送信アンテナ109の判別(例えば、判定又は識別とも呼ぶ)、及び、ドップラ周波数(例えば、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。
上述したように、位相回転量設定部105の符号化部107は、最大等間隔ドップラシフト量設定を含む等間隔ドップラシフト量設定を用いた場合、例えば、NDM個の符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),…, NDOP_CODE(NDM)の全てをNCM個に設定せず、少なくとも1つの符号化ドップラ多重数をNCM個より小さい値に設定してよい。例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、(1)符号分離処理を行い、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号を検出し(例えば、多重送信に用いない未使用の符号化ドップラ多重信号を検出し)、折り返し判定を行う。その後、符号化ドップラ多重分離部212は、(2)折り返し判定結果に基づいて、多重送信に用いた符号化ドップラ多重信号のドップラ符号分離処理を行う。
以下、上述した符号化ドップラ多重分離部212における処理(1)及び(2)についてそれぞれ説明する。
<(1)折り返し判定処理(未使用の符号化ドップラ多重信号の検出処理)>
符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、想定するターゲットのドップラ範囲を±1/(2Tr)としてドップラ折り返し判定処理を行う。
ここで、例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析部210は、符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。このため、ドップラ解析部210においてサンプリング定理によって折り返しが発生しないドップラ範囲は±1/(2Loc×Tr)である。このドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)を、さらにドップラ多重数NDMを用いてドップラ多重を行う。このため、符号化ドップラ多重分離部212は、ドップラ多重による折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×NDM×Tr)に対して、Loc×NDM倍のドップラ範囲±1/(2Tr)までを想定して折り返し判定処理を行う。
ここでは、一例として、Nt=3とし、ドップラ多重数NDM=2、符号多重数NCM=2を用いる場合について説明する。ここで、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、一例として、最大等間隔ドップラシフト量設定に基づく式(5)のように割り当てられる。この場合、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=0、及び、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=πとなる。また、符号化部107は、符号長Loc=2の2個の直交符号Code1={1,1}、Code2={j,-j}を用いる。また、図13の(a)に示すように、NDOP_CODE(1)=2、NDOP_CODE(2)=1を用いる。
この場合、符号化ドップラ多重分離部212は、符号化ドップラ多重による折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×NDM×Tr)=±1/(8Tr)に対し、4倍(=Loc×NDM倍)のドップラ範囲±1/(2Tr)までを想定して折り返し判定処理を行う。
ここで、CFAR部211において抽出される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarに対応するドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFT noc(fb_cfar,fs_comp_cfar)には、例えば、±1/(2Tr)のドップラ範囲において、図14における(a)及び(b)に示すような折り返しを含むドップラ成分が含まれる可能性がある。
例えば、図14における(a)に示すように、fs_comp_cfar<0の場合、±1/(2Tr)のドップラ範囲において、fs_comp_cfar-Ncode/NDM、fs_comp_cfar、fs_comp_cfar+Ncode/NDM、及びfs_comp_cfar +2Ncode/NDMの4(=Loc×NDM)通りのドップラ成分の可能性がある(ΔFD=Ncode/NDMを用いて、それぞれfs_comp_cfar-ΔFD、fs_comp_cfar、fs_comp_cfar+ΔFD、及びfs_comp_cfar +2ΔFDとも表すことができる。)。
また、例えば、図14における(b)に示すように、fs_comp_cfar>0の場合、±1/(2Tr)のドップラ範囲において、fs_comp_cfar -2Ncode/NDM、fs_comp_cfar -Ncode/NDM、fs_comp_cfar、及び、fs_comp_cfar +Ncode/NDM、の4(=Loc×NDM)通りのドップラ成分の可能性がある(ΔFD=Ncode/NDM を用いて、それぞれfs_comp_cfar-2ΔFD、fs_comp_cfar-ΔFD、fs_comp_cfar、及びfs_comp_cfar +ΔFDとも表すことができる。)。fs_comp_cfarに対し、これらの可能性のあるドップラ成分(4(=Loc×NDM)通り)をfs_comp_cfarに対する「ドップラ成分候補」と呼ぶ。以下では、このような4(=Loc×NDM)通りのドップラ成分候補が存在する各ドップラ領域に対し、図14に示すようなドップラ折り返し範囲を示すインデックス「Dr」を用いて表記する。Drはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、例えば、Dr∈{-ceil(Loc×NDM/2),…, ceil(Loc×NDM/2)-1}の範囲の整数値を用いる。図14において、Dr=-2,~,1である。なお、Dr=0の領域はドップラ折り返しがない領域であり、Dr≠0の領域はドップラ折り返しが発生する領域であることを示す。また、Drの絶対値が大きいほどDr=0で示すドップラ領域から離れたドップラ領域であることを示す。
符号化ドップラ多重分離部212は、図14に示すような±1/(2Tr)のドップラ範囲において、折り返しを含む4(=Loc×NDM)通りのドップラ成分に対応した位相変化を補正して、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号(例えば未使用の符号化ドップラ多重信号)の符号化ドップラ多重分離処理を行う。
そして、符号化ドップラ多重分離部212は、未使用の符号化ドップラ多重信号を符号化ドップラ多重分離処理して得られた成分の受信電力に基づいて、各ドップラ成分候補について真のドップラ成分か否かを判定する。
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、fs_comp_cfarに対するドップラ成分候補のうち、未使用の符号化ドップラ多重信号に基づいて符号化ドップラ多重分離処理して得られた成分の受信電力が最小のドップラ成分を検出し、検出したドップラ成分を真のドップラ成分と判定してよい。例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、fs_comp_cfarに対するドップラ成分候補のうち、最小の受信電力と異なる他の受信電力のドップラ成分を偽のドップラ成分と判定してよい。
この折り返し判定処理により、±1/(2Tr)のドップラ範囲における曖昧性を解決できる。また、この折り返し判定処理により、ドップラ多重による折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×NDM×Tr)=±1/(8Tr)と比較して、曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲を、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満の範囲に拡大できる。
これは、未使用の符号化ドップラ多重信号に基づいて符号化ドップラ多重分離することにより、例えば、真のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が正しく補正され、多重送信に用いた符号化ドップラ多重信号と未使用の符号化ドップラ多重信号との間の直交性が維持される。よって、多重送信に用いた符号化ドップラ多重信号符号と未使用の符号化ドップラ多重信号とは無相関となり、受信電力はノイズレベル程度となる。
一方、例えば、偽のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が誤って補正され、多重送信に用いた符号化ドップラ多重信号と未使用の符号化ドップラ多重信号との間の直交性は維持されない。よって、多重送信に用いた符号化ドップラ多重信号符号と未使用の符号化ドップラ多重信号と相関成分(干渉成分)が発生し、例えば、ノイズレベルよりも大きい受信電力が検出され得る。よって、上述したように、符号化ドップラ多重分離部212は、未使用の符号化ドップラ多重信号に基づいて符号化ドップラ多重分離されたfs_comp_cfarに対するドップラ成分候補のうち、受信電力が最小のドップラ成分を真のドップラ成分と判定し、最小の受信電力と異なる受信電力の他のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定してよい。
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、各アンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に基づいて、fs_comp_cfarに対するドップラ成分候補の各ドップラ成分に応じた位相変化を補正し、未使用の符号化ドップラ多重信号を用いた符号分離後の受信電力PDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr, nuc,nud)を、式(42)に従って算出する。
ここで、nuc,nudは未使用の符号化ドップラ多重信号となる直交符号のインデックスとドップラ多重信号のインデックスを表す。例えば、図13の(b)の場合は、未使用の符号化ドップラ多重信号は、図中の×印で示されており、Code2が符号割り当てられ、DOP1のドップラシフト量が割り当てられている。従って、未使用の符号化ドップラ多重信号が割り当てられている直交符号のインデックスnuc=2, nud=1となる。
以下では、符号化ドップラ多重信号に用いられる直交符号のインデックスとドップラ多重信号のインデックスの組を「DCI(直交符号のインデックス, ドップラ多重信号のインデックス)」として記載する。DCI(nuc,nud)は、例えば、未使用の符号化ドップラ多重信号が割り当てられる直交符号のインデックスとドップラ多重信号のインデックスを表す。例えば、図13の(b)の場合、未使用の符号化ドップラ多重信号は、DCI(2,1)に割り当てられる。同様に、例えば、図4の(a)の場合、未使用の符号化ドップラ多重信号は、DCI(2, 3)とDCI(2,4)に割り当てられる。
Figure 2023141038000045
ここで、Yz(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr, nuc,nud)は、次式(43)のようにz番目のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に基づいて、fs_comp_cfarに対するドップラ成分候補の各ドップラ成分に応じた位相変化を補正し、DCI(nuc,nud)が割り当てられている未使用の符号化ドップラ多重信号を分離した後の受信信号である。
Figure 2023141038000046
式(42)及び式(43)では、DCI(nuc,nud)が割り当てられた未使用の符号化ドップラ多重信号を分離するため、z番目のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力VFTALLz(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr, nud)に対して、未使用直交符号Codenucを用いた符号分離後の受信電力が算出され、全てのアンテナ系統処理部201に対し、それらの電力の総和が算出される。これにより、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定精度を向上できる。ただし、式(42)の代わりに、一部のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に対して、未使用の符号化ドップラ多重信号分離後の受信電力が算出されてもよい。この場合でも、例えば、受信信号レベルが十分高い範囲では、折り返し判定の精度を保ちつつ、演算処理量を削減できる。
なお、式(42)及び式(43)において、Drはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、例えば、Dr∈{-ceil(Loc×NDM/2),~, ceil(Loc×NDM/2)-1}の範囲の整数値をとる。
また、式(43)において、
Figure 2023141038000047
は、要素数が等しいベクトル同士の要素毎の積を表す。例えば、n次ベクトルA=[a1,..,an]及びB=[b1,..,bn]に対して、要素毎の積は以下の式(44)で表される。
Figure 2023141038000048
また、式(43)において、上付き添え字Tはベクトル転置を表し、上付き添え字*(アスタリスク)は複素共役演算子を表す。
式(43)において、α(fs_comp_cfar,Dr)は「ドップラ位相補正ベクトル」を表す。ドップラ位相補正ベクトルα(fs_comp_cfar,Dr)は、例えば、CFAR部211において抽出されたドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarが、ドップラ折り返しを含まないドップラ解析部210の出力範囲(例えば、ドップラ範囲)とする場合に、ドップラ折り返し範囲DrでのLoc個のドップラ解析部210間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転を補正する。
例えば、ドップラ位相補正ベクトルα(fs_comp_cfar,Dr)は、次式(45)のように表される。式(45)に示すドップラ位相補正ベクトルα(fs_comp_cfar,Dr)は、例えば、第1番のドップラ解析部210の出力VFT 1(fb_cfar, fs_comp_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部210の出力VFT 2(fb_cfar, fs_comp_cfar)から第Loc番のドップラ解析部VFT Loc(fb_cfar, fs_comp_cfar)のそれぞれにおけるTr,2Tr,~,(Loc-1)Trの時間遅れにより生じるドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarのドップラ折り返し範囲Drにおけるドップラ成分での位相回転を補正するドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。なお、式(45)における、DrNcode/NDMの項は、ΔFD=Ncode/NDMを用いて、DrΔFDとも表記できる。従って、ΔFD=Ncode/NDMに限らず適用できる。
Figure 2023141038000049
このようなドップラ位相補正ベクトルα(fs_comp_cfar, Dr)による位相補正は、fs_comp_cfarに対するドップラ成分候補における各ドップラ成分に応じた位相変化を補正することに対応している。
また、式(43)において、VFTALLz(fb_cfar, fs_comp_cfar, D,nud)は、例えば、次式(46)のように、第z番のアンテナ系統処理部201におけるLoc個のドップラ解析部210の出力VFT noc(fb, fs)のうち、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarに対応して、ドップラ折り返し範囲Drにおいて、DCI(nuc,ndu)が割り当てられている未使用の符号化ドップラ多重信号のドップラ多重信号を抽出した成分をベクトル形式で表したものである。ただし、noc=1,~,Locであり、Dr={-ceil(Loc×NDM/2),~, ceil(Loc×NDM/2)-1}の範囲の整数値をとる。
Figure 2023141038000050
式(46)において、NcodeFR(Dr, nud)/NDMは、ドップラ折り返し範囲Drにおいて、nud番目のドップラ多重信号の、fs_comp_cfarに対するドップラインデックスのオフセット値を表す。なお、式(46)における、NcodeFR(Dr, nud)/NDMの項は、ΔFD=Ncode/NDM を用いて、FR(Dr, nud) ΔFDとも表記できる。従って、ΔFD=Ncode/NDMに限らず適用できる。ここで、ndm=1,~, NDMである。
FR(Dr, nud)は、ドップラ折り返し範囲Drと、ドップラシフト量DOP1 、DOP、~、 DOPN_DMを付与する位相回転量φ1、φ、~、φN_DMが定まれば予め設定可能である。そのため、例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、ドップラ折り返し範囲Dr及び位相回転量と、FR(Dr, nud)との対応関係をテーブル化し、ドップラ折り返し範囲Dr及び位相回転量に基づいて、FR(Dr, nud)を読み出してもよい。また、例えば、ドップラシフト量DOP1 、DOP、~、 DOPN_DMを付与する位相回転量φ1、φ、~、φN_DMが-π≦φ12<…<φN_DM<πを満たす場合、FR(Dr, nud)を次式(47)のように表すことができる。
Figure 2023141038000051
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、式(42),式(43)に従って、DCI(nuc,nud)が割り当てられる未使用の符号化ドップラ多重信号を用いた符号分離後の受信電力PDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr, nuc,nud)を、各Dr∈{-ceil(Loc×NDM/2),…, ceil(Loc×NDM/2)-1}の範囲においてそれぞれ算出する。
そして、符号化ドップラ多重分離部212は、各Drの範囲のうち、受信電力PDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr, nuc,nud)が最小となるDrを検出する。以下では、次式(48)に示すように、各Drの範囲のうち、受信電力PDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr, nuc,nud)が最小となるDrを「Drmin」と表す。
Figure 2023141038000052
なお、未使用の符号化ドップラ多重信号が複数ある場合、符号化ドップラ多重分離部212は、受信電力PDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr, nuc,nud)の代わりに、次式(49)のように、全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力PallDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr)を用いてもよい。
Figure 2023141038000053
全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し処理の精度を向上できる。
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、各Dr∈{-ceil(Loc×NDM/2),~, ceil(Loc×NDM/2)-1}の範囲においてPallDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr)を算出し、PallDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Dr)が最小となるDr(例えば、Drmin)を検出する。例えば、式(49)を用いる場合、以下では、次式(50)に示すように、各Drの範囲において最小となる受信電力を与えるDrを「Drmin」と表す。
Figure 2023141038000054
また、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、DCI(nuc,nud)が割り当てられる未使用の符号化ドップラ多重信号を用いた符号分離後の最小受信電力PallDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Drmin)と、CFAR部211においてドップラシフト多重した各信号ピーク位置を合わせて電力加算した式(41)の受信電力PowerFT_comp(fb_cfar,fs_comp_cfar)とを比較して、折り返し判定の確からしさを判定(例えば、測定)する処理を行ってもよい。この場合、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、次式(51)及び式(52)に従って、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。
Figure 2023141038000055
Figure 2023141038000056
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarにおけるPowerFT_comp(fb,fs_comp_cfar)に所定値ThresholdDRを乗算した値よりも、DCI(nuc,nud)が割り当てられている未使用の符号化ドップラ多重信号を用いた符号分離後の最小受信電力PallDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Drmin)が小さい場合(例えば、式(51))、折り返し判定が十分に確からしいと判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行ってもよい。
一方、例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、PowerFT_comp(fb,fs_comp_cfar)に、ThresholdDRを乗算した値よりも、DCI(nuc,nud)が割り当てられている未使用の符号化ドップラ多重信号を用いた符号分離後の最小受信電力PallDAR(fb_cfar,fs_comp_cfar,Drmin)が等しい又は大きい場合(例えば、式(52))、折り返し判定の精度が十分ではなく、折り返し判定の信頼性が低い(例えば、ノイズ成分)と判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行わなくてもよい。
このような処理により、折り返し判定の判定誤りを低減でき、また、ノイズ成分を除去できる。なお、所定値ThresholdDRは、例えば、0から1未満の範囲に設定されてよい。一例として、ノイズ成分が含まれることを考慮すると、ThresholdDRは、0.1~0.5程度の範囲で設定されてもよい。
以上、折り返し処理の動作例について説明した。
<(2)多重送信に用いた符号化ドップラ多重信号のドップラ符号分離処理>
符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し判定結果に基づいて、多重送信に用いた符号化ドップラ多重信号の符号化ドップラ多重分離処理を行う。
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、次式(53)のように、折り返し判定処理における折り返し判定結果であるDrminに基づいて、式(43)を適用することにより、多重送信に用いたDCI(ncm,ndm)が割り当てられた符号化ドップラ多重信号の分離受信を行う。例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、次式(53)を用いた分離処理を行うことにより、多重送信に用いたDCI(ncm,ndm)が割り当てられた符号化ドップラ多重信号の分離受信を行う。折り返し判定処理にて、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、真のドップラ折り返し範囲であるインデックス(Drtrue)を判定できることから(例えば、Drmin=Drtrueとなるように判定できることから)、符号化ドップラ多重分離部212においては、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、符号多重に使用された直交符号間の相関値をゼロとすることができ、符号多重信号間の干渉を抑圧した分離処理が可能となる。
Figure 2023141038000057
ここで、Yz(fb_cfar,fs_comp_cfar,Drmin, ncm,ndm)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarの出力において、ドップラ範囲Drminのndm番目の符号化ドップラ多重信号VFTALLz(fb_cfar,fs_comp_cfar,Drmin, ndm)に対して、直交符号Codencmを用いて符号多重信号を符号分離した出力(例えば、符号化ドップラ多重分離結果)であり、多重送信に用いたDCI(ncm,ndm)が割り当てられた符号化ドップラ多重信号を分離することができる。なお、z=1,~,Naであり、ncm=1,~,NCMである。
以上のような符号分離処理によって、レーダ装置10は、ドップラ解析部210の折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)のLoc倍のドップラ範囲±1/(2Tr)までを想定した折り返し判定結果に基づいて、多重送信に用いたDCI(ncm,ndm)が割り当てられた符号化ドップラ多重信号を分離受信できる。
また、DCI(ncm,ndm)が割り当てられた符号化ドップラ多重信号は、送信アンテナTx#[ncm,ndm]から送信されるため、送信アンテナ109の判定も可能となる。例えば、レーダ装置10は、送信アンテナTx#[ncm,ndm]から送信されたDCI(ncm,ndm)が割り当てられている符号化ドップラ多重信号を分離受信できる。
また、レーダ装置10は、例えば、符号化ドップラ多重分離処理時に、符号要素毎のドップラ解析部210の出力に対して、ドップラ折り返しを含めたドップラ位相補正(例えば、ドップラ位相補正ベクトルα(fs_comp_cfar, Dr)による位相補正を行う。これらの位相補正は、fs_comp_cfarに対するドップラ成分候補における各ドップラ成分に応じた位相変化を補正することに対応している。このため、符号多重信号間における相互干渉は、例えば、ノイズレベル程度にまで低減可能である。例えば、レーダ装置10では、符号間干渉を低減でき、レーダ装置10における検出性能の劣化への影響を抑制できる。
以上、符号化ドップラ多重分離部212の動作例について説明した。
図1において、ドップラ多重分離部213は、例えば、Loc個のドップラ解析部210の出力にそれぞれ対応するドップラ多重分離部213-1~213-Locを有する。図1に示す例では、Loc=2であり、第1のドップラ多重分離部213(又は、ドップラ多重分離部213-1と表す)及び第2のドップラ多重分離部213(又は、ドップラ多重分離部213-2と表す)を備えてよい。
第1のドップラ多重分離部213は、CFAR部211から入力される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarに対する第1のドップラ解析部210(又は、ドップラ解析部210-1と表す)の出力を、方向推定部214に出力する。この際、第1のドップラ多重分離部213は、例えば、符号化ドップラ多重分離部212から入力されるドップラ折り返し判定結果であるDrminを用いてよい。
例えば、図1に示す例では、第1のドップラ多重分離部213は、第1番目のドップラ解析部210(ドップラ解析部210-1)の出力VFT 1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(NcodeFR(Drmin, ndm_BF)/NDM))を方向推定部214へ出力する。ここで、ndm_BFは、1,~, NDMの何れかであり、ndm_BF番目のドップラ多重信号が割り当てられた複数の送信アンテナ109は、例えば、上述した隣り合う配置の条件を満たす送信アンテナ109の組み合わせである。
第1のドップラ多重分離部213は、例えば、第1のドップラ解析部210の出力を用いて、円偏波の信号を分離する。これにより、第1のドップラ多重分離部213では、円偏波となる送信信号による反射波の受信信号が得られる。なお、z=1~Naである。
また、図1において、第2のドップラ多重分離部213は、CFAR部211から入力される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarに対する第2のドップラ解析部210(又は、ドップラ解析部210-2と表す)の出力を、方向推定部214に出力する。この際、第2のドップラ多重分離部213は、例えば、符号化ドップラ多重分離部212から入力されるドップラ折り返し判定結果であるDrminを用いてよい。
例えば、図1に示す例では、第2のドップラ多重分離部213は、第2番目のドップラ解析部210(ドップラ解析部210-2)の出力VFT 2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(NcodeFR(Drmin, ndm_BF)/NDM))を方向推定部214へ出力する。ここで、ndm_BFは、1,…, NDMの何れかであり、ndm_BF番目のドップラ多重信号が割り当てられた複数の送信アンテナ109は、例えば、上述した隣り合う配置の条件を満たす送信アンテナ109の組み合わせである。
第2のドップラ多重分離部213は、例えば、第2のドップラ解析部210の出力を用いて、円偏波の信号を分離する。これにより、第2のドップラ多重分離部213では、円偏波となる送信信号による反射波の受信信号が得られる。なお、z=1~Naである。
また、第1のドップラ多重分離部213の出力である、円偏波となる送信信号による反射波の受信信号に対し、第2のドップラ多重分離部213では、第1のドップラ多重分離部213の出力に対応する円偏波の旋回方向と異なる旋回方向の円偏波となる送信信号に対応する反射波の受信信号となる。例えば、第1のドップラ多重分離部213の出力に対応する円偏波が左旋の円偏波である場合、第2のドップラ多重分離部213の出力に対応する円偏波は右旋の円偏波となる。また、例えば、第1のドップラ多重分離部213の出力に対応する円偏波が右旋の円偏波である場合、第2のドップラ多重分離部213の出力に対応する円偏波は左旋の円偏波となる。
以下、第1のドップラ多重分離部213の出力に対応する円偏波の旋回を基準とし、当該円偏波を「正旋の円偏波」と呼ぶ。第2のドップラ多重分離部213の出力に対応する円偏波は、正旋の円偏波の逆旋となることから、「逆旋の円偏波」と呼ぶ。
図1において、方向推定部214は、符号化ドップラ多重分離部212から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarに対するドップラ折り返し判定結果Drminに基づいて、送信アンテナTx#[ncm,ndm]から送信された、DCI(ncm,ndm)が割り当てられた符号化ドップラ多重信号の分離受信信号Yz(fb_cfar,fs_comp_cfar,Drmin, ncm,ndm)に基づいて、ターゲットの方向推定処理(以下、「直線偏波に対する方向推定処理」と呼ぶ)を行う。
また、方向推定部214は、第1のドップラ多重分離部213から入力される第1のドップラ解析部210(図1では、ドップラ解析部210-1)からの出力に基づいて、ターゲットの方向推定処理(以下、「正旋円偏波に対する方向推定処理」と呼ぶ)を行う。
また、方向推定部214は、第2のドップラ多重分離部213から入力される第2のドップラ解析部210(図1では、ドップラ解析部210-2)からの出力に基づいて、ターゲットの方向推定処理(以下、「逆旋円偏波に対する方向推定処理」と呼ぶ)を行う。
方向推定部214における方向推定処理は、例えば、直線偏波に対する方向推定処理、正旋円偏波に対する方向推定処理、及び、逆旋円偏波に対する方向推定処理を含んでよい。以下、それぞれの方向推定処理について説明する。
<直線偏波に対する方向推定処理>
例えば、方向推定部214は、符号化ドップラ多重分離部212の出力に基づいて、次式(54)に示すような仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。
Figure 2023141038000058
方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理を行う。
ここで、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、異なる直線偏波アンテナ(例えば、垂直偏波アンテナ及び水平偏波アンテナ)から送信された信号の反射波受信信号を含む。そのため、方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)から、所定の送信アンテナ109の偏波と受信アンテナ202の偏波との組み合わせとなる要素を抽出し、抽出した要素からなる仮想受信アレー相関ベクトルを用いて方向推定処理を行ってもよい。これにより、所定の送信アンテナ109の偏波及び受信アンテナ202の偏波毎の方向推定の結果を得ることができる。
<正旋円偏波に対する方向推定処理>
方向推定部214は、第1のドップラ多重分離部213から入力される第1のドップラ解析部210の出力に基づいて、次式(55)に示すような正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_comp_cfar)を生成し、ターゲットの正旋円偏波に対する方向推定処理を行う。
ここで、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、第1のドップラ解析部210の出力(例えば、VFT 1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(NcodeFR(Drmin, ndm_BF)/NDM)))に基づく、同一のドップラ多重を用いて符号多重送信され、隣り合う異なる直線偏波の送信アンテナ109によってビーム送信され、円偏波送信された信号の反射波受信信号を含む。例えば、ビーム送信アンテナがNBF個ある場合(例えば、ndm_BF=1,~, NBFの場合)、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、NBF×Na個の要素を含む。方向推定部214は、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理を行ってよい。
Figure 2023141038000059
<逆旋円偏波に対する方向推定処理>
方向推定部214は、第2のドップラ多重分離部213から入力される第2のドップラ解析部210の出力に基づいて、ターゲットの逆旋円偏波に対する方向推定処理を行う。方向推定部214は、例えば、次式(56)に示すような逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_comp_cfar)を生成し、ターゲットの逆旋円偏波に対する方向推定処理を行う。
ここで、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、第2のドップラ解析部210の出力(例えば、VFT 2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(NcodeFR(Drmin, ndm_BF)/NDM)))に基づく、同一のドップラ多重を用いて符号多重送信され、隣り合う異なる直線偏波の送信アンテナ109によってビーム送信され、円偏波送信された信号の反射波受信信号を含む。例えば、ビーム送信アンテナがNBF個ある場合(例えば、ndm_BF=1,~, NBFの場合)、逆旋仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、NBF×Na個の要素を含む。
方向推定部214は、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。
Figure 2023141038000060
[アンテナの配置例1]
以下、アンテナ配置例を用いて、方向推定部214における、直線偏波に対する方向推定処理、正旋円偏波に対する方向推定処理及び逆旋円偏波に対する方向推定処理の例について説明する。
例えば、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=4の場合に、ドップラ多重数NDM=2、符号多重数NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code={1,1}、Code2={j,-j}とし、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=2, NDOP_CODE(2)=2とする場合について説明する。なお、ビーム送信アンテナ数NBF=2とし、ビーム送信アンテナに用いるドップラ多重信号のインデックスとしてndm_BF=1及びndm_BF=2を用いる。
図15では、例えば、レーダ装置10において、水平方向に配置される4個の送信アンテナ109(Tx#1、Tx#2、Tx#3及びTx#4)は、左側のアンテナから、水平偏波(「H」と表す)の送信アンテナTx#[1, 1]、垂直偏波(「V」と表す)の送信アンテナTx#[2, 1]、水平偏波の送信アンテナTx#[1, 2]、垂直偏波の送信アンテナTx#[2, 2]である。
図15では、左側から2つの隣り合う送信アンテナTx#1(Tx#[1, 1])及びTx#2(Tx#[2, 1])は、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP1)を用いてレーダ送信信号を符号多重送信する。よって、図15では、Tx#1及びTx#2によってビーム送信アンテナが形成され、円偏波が送信される。また、送信アンテナTx#1(Tx#[1, 1])及びTx#2(Tx#[2, 1])に対し、符号多重送信する際の符号間の位相差に応じて、送信周期毎に正旋円偏波あるいは逆旋の円偏波が切り替わり送信されてよい。
同様に、図15では、右側から2つの隣り合う送信アンテナTx#3(Tx#[1, 2])及びTx#4(Tx#[2, 2])は、同一のドップラ多重(ドップラシフト量=DOP2)を用いてレーダ送信信号を符号多重送信する。よって、図15では、Tx#3及びTx#4によってビーム送信アンテナが形成され、円偏波が送信される。また、送信アンテナTx#1(Tx#[1, 2])及びTx#2(Tx#[2, 2])に対し、符号多重送信する際の符号間の位相差に応じて、送信周期毎に正旋円偏波あるいは逆旋の円偏波が切り替わり送信されてよい。
図15では、ビーム送信アンテナ数NBF=2である。以下では、図15におけるTx#1及びTx#2によるビーム送信アンテナを「Tx#5」と表記することもある。また、図15におけるTx#3及びTx#4によるビーム送信アンテナを「Tx#6」と表記することもある。例えば、Tx#5及びTx#6は、送信周期毎に正旋円偏波あるいは逆旋の円偏波が切り替わり送信されるアンテナと等価的に扱うことができる。
なお、ここでは、Tx#5及びTx#6は、送信周期毎に正旋あるいは逆旋の同じ旋回方向の円偏波を送信する符号を用いる場合について説明するが、これに限定されず、Tx#5及びTx#6は、異なる旋回方向の円偏波を用いてもよい。
また、図15に示ように、受信アンテナ数Naは8個(例えば、Rx#1~Rx#8)であり、4種類の異なる偏波のアンテナを含む。図15に示す例では、Rx#1及びRx#2は水平偏波(H)の受信アンテナであり、Rx#3及びRx#4は垂直偏波(V)の受信アンテナであり、Rx#5及びRx#6は正旋円偏波(C)の受信アンテナであり、Rx#7及びRx#8は逆旋円偏波(R)の受信アンテナを用いる。
なお、受信アンテナ数Naは、8個に限定されず、例えば、他の個数でもよい。また、受信アンテナ202に用いる偏波の種類も4種類に限定されず、3種類、2種類又は1種類でもよい。また、水平偏波及び垂直偏波に限らず、斜め方向に傾いた直線偏波、例えば±45°方向に傾いた偏波を用いてもよい。
例えば、隣り合うTx#1(Tx#[1, 1])とTx#2(Tx#[2, 1])とから等電力でレーダ送信信号が送信される場合、Tx#1及びTx#2の中点位置がビーム送信アンテナTx#5の位相中心となる(図15の(a)に示す×印)。同様に、例えば、隣り合うTx#3(Tx#[1, 2])とTx#4(Tx#[2, 2])とから等電力でレーダ送信信号が送信される場合、Tx#3及びTx#4の中点位置がビーム送信アンテナTx#6の位相中心となる(図15の(a)に示す×印)。
なお、ビーム送信アンテナを構成する送信アンテナ109から、レーダ送信信号を等電力で送信しない場合は、ビーム送信アンテナを構成する各送信アンテナ109の送信電力の比に応じた位置(各送信アンテナからの送信電力の重心位置)をサブアレーの位相中心としたビーム送信アンテナによる送信として扱うことができる。
図15の(a)に示すような送信アンテナTx#1~Tx#4(例えば、Ntの送信アンテナ109)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8(例えば、Na個の受信アンテナ202)の配置から、図15の(b)に示すような仮想受信アンテナ(又は、MIMO仮想アンテナ)の配置VA#1~VA#32が構成される。
また、図15の(a)において、正旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図15の(c)に示すような正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16が構成される。正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16は、例えば、VA#33~VA#48とも表される。
また、図15の(a)において、逆旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図15の(d)に示すような逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16が構成される逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16は、例えば、VA#33~VA#48とも表される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16は、それぞれ正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16の配置と同じ配置となる。
ここで、仮想受信アンテナ(仮想受信アレー)の配置は、例えば、送信アレーアンテナを構成する送信アンテナ109の位置(例えば、給電点の位置)及び受信アレーアンテナを構成する受信アンテナ202の位置(例えば、給電点の位置)に基づいて、次式(57)のように表されてよい。
Figure 2023141038000061
ここで、送信アレーアンテナを構成する送信アンテナ109(例えば、Tx#n)の位置座標を(XT_#n,YT_#n)(例えば、n=1,~, Nt+NBF)と表し、受信アレーアンテナを構成する受信アンテナ202(例えば、Rx#m)の位置座標を(XR_#m,YR_#m)(例えば、m=1,~, Na)と表し、仮想受信アレーアンテナを構成する仮想アンテナVA#kの位置座標を(XV_#k,YV_#k)(例えば、k=1,~, (Nt+NBF)×Na)と表す。
なお、式(57)では、例えば、VA#1を仮想受信アレーの位置基準(0,0)として表す。
図15の(b)は、図15の(a)に示すTx#1~#4、及び、Rx#1~#8の配置を用いた場合の仮想受信アンテナ配置の例を示す。仮想受信アンテナは32アンテナ素子を含み、それぞれの配置をVA#1~VA#32として示す。
なお、各仮想受信アンテナにおける送信アンテナ偏波(例えば、H又はV)と受信アンテナ偏波(例えば、H、V、C又はR)との組み合わせはアンテナ毎に異なるため、「(送信アンテナ偏波/受信アンテナ偏波)」と記載する。例えば、水平偏波送信され、水平偏波受信された場合の仮想受信アンテナは、「H/H」と記載する。図15の(c)及び(d)も同様に表記する。また、以降の表記もこれに準ずる。
図15の(a)のTx#1~#4及び、Rx#1~#8の配置は、X軸上(図15では横方向)の1次元配置であるため、仮想受信アンテナもそれぞれX軸上に配置される。なお、X軸上で重複する配置を含むため、図15の(b)では、縦方向にずらして記載するが、それぞれX軸上の位置に1次元的に配置される。図15の(c)及び(d)も同様に表記する。また、以降の表記もこれに準ずる。
図15の(c)は、正旋円偏波送信されたビーム送信アンテナTx#5及び#6とRx#1~#8とを用いた場合の仮想受信アンテナ配置を示す。仮想受信アンテナは16アンテナ素子(例えば、CA#1~CA#16)のアレー配置となる。なお、CA#1~CA#16はそれぞれVA#33~VA#48に対応する。
また、図15の(d)は、逆旋円偏波送信されたビーム送信アンテナTx#5及び#6とRx#1~#8とを用いた場合の仮想受信アンテナ配置を示す。仮想受信アンテナは、図15の(c)と同様の16アンテナ素子(例えば、RA#1~RA#16)のアンテナ配置となる。なお、RA#1~RA#16はそれぞれVA#33~VA#48に対応する。
このように、ビーム送信アンテナを用いた仮想受信アンテナ配置により、レーダ装置10は、より多くの偏波を用いた送信が可能となる。また、送信アンテナ109の偏波と受信アンテナ202の偏波とを組み合わせることにより、同一偏波の送受信アンテナの組み合わせに加え、直交する偏波(「交差偏波」ともいう)の組み合わせ(例えば、水平偏波と垂直偏波の組み合わせ、あるいは左旋円偏波と右旋円偏波の組み合わせ)による受信信号を得ることができる。レーダ装置10では、送受信の偏波の組み合わせにより、ターゲットの反射波の受信特性が変化することを利用して検出性能又は識別性能を向上できる。
<直線偏波に対する方向推定処理>
例えば、送受信とも水平偏波アンテナ(H)を用いた方向推定処理を行う場合、方向推定部214は、VA#1,VA#2,VA#17,VA#18からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、方向推定処理を行う。
仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)は列ベクトルであり、これに含まれる第1番目の要素から第Nt×Na番目の要素は、仮想アンテナVA#1からVA#(Nt×Na)の受信信号を表す。例えば、方向推定部214は、VA#1,VA#2,VA#17,VA#18の受信信号に相当する仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)の第1、第2、第17、第18の要素を抽出した部分的なアレー相関ベクトルを用いて到来方向推定を行う。抽出した部分的なアレー相関ベクトルをhsub(fb_cfar, fs_comp_cfar)と表記する。また、hsub(fb_cfar, fs_comp_cfar)の次元数をNsubとする。
方向推定部214は、例えば、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部214は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、ビームフォーマ法は次式(58)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
Figure 2023141038000062
ここで、式(58)において、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、asubu)は、方位方向θuの到来波に対する抽出した部分的な仮想受信アレーVA#1、VA#2、VA#17、VA#18の方向ベクトルを示す。例えば、VA#1,#2,#17,#18からなる仮想受信アンテナが等間隔DHで直線状に配置される場合、仮想受信アレーVA#1、VA#2、VA#17、VA#18の方向ベクトルは、次式(59)のように表すことができる。
Figure 2023141038000063
また、方位方向θuは到来方向推定を行う方位範囲内を方位間隔β1で変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定される。
θu=θmin + uβ1、u=0,…, NU
NU=floor[(θmax-θmin)/β1]+1
ここでfloor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
また、式(58)において、Dcalは、部分的な仮想受信アレーVA#1,#2,#17,#18のアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数、及び、アンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含むNsub次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、Dcalは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
また、例えば、送受信とも垂直偏波アンテナを用いる場合の方向推定処理を行う場合、方向推定部214は、VA#11,VA#12,VA#27,VA#28からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、上述した処理と同様の方向推定処理を行う。
また、例えば、方向推定部214は、交差偏波を用いる方向推定処理を行ってもよい。例えば、送信には垂直偏波アンテナを用いて、受信には水平偏波アンテナを用いる場合の方向推定処理を行う場合、方向推定部214は、VA#9,VA#10,VA#25,VA#26からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、上述した処理と同様の方向推定処理を行う。
以上のような送信の偏波アンテナと受信の偏波アンテナとの組み合わせに限らず、異なる組み合わせの送受偏波アンテナを組み合わせてもよい。
例えば、方向推定部214は、送信及び受信の偏波アンテナの組み合わせが同種である仮想受信アレーを用いる方向推定処理に限らず、送信及び受信の偏波アンテナの組み合わせが異なる仮想受信アレーを用いる方向推定処理を行ってもよい。例えば、方向推定部214は、VA#1~VA#32からなる符号化ドップラ多重分離部212の出力から得られるすべての仮想受信アンテナを抽出し、上述した処理と同様の方向推定処理を行ってもよい。この場合、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせ(例えば、H/V、H/C等)が含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行うことにより、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られる。また、方向推定部214は、すべての仮想受信アンテナを用いて方向推定処理を行うため、受信SNRが向上し、レーダ装置10における検出性能を向上できる。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。
方向推定部214は、例えば、上記のような送信及び受信とも同種の偏波アンテナを用いた方向推定処理と、異なる種類の偏波を組み合わせた方向推定処理とを行い、これら両方の方向推定結果を方向推定処理結果としてもよい。これにより、偏波に依存度の高い方向推定処理結果と、偏波の依存性が低い方向推定処理結果が得られる。このような方向推定処理の結果を、図に示していない物標識別処理部に入力し、物標の識別処理を行ってもよい。
<正旋円偏波に対する方向推定処理>
例えば、送受信とも正旋円偏波アンテナ(C)を用いる方向推定処理を行う場合、方向推定部214は、CA#5,CA#6,CA#13,CA#14からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、方向推定処理を行う。
正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_comp_cfar)は列ベクトルであり、これに含まれる第1番目の要素から第NBF×Na番目の要素は、仮想アンテナVA#(Nt×Na+1)からVA#(Nt+NBF)×Naの受信信号、あるいは、CA#1~CA#(NBF×Na)の受信信号を表す。例えば、方向推定部214は、CA#5,CA#6,CA#13,CA#14の受信信号に相当する正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_comp_cfar)の第5、第6、第13、第14の要素を抽出した部分的なアレー相関ベクトルを用いて到来方向推定を行う。抽出した部分的なアレー相関ベクトルをhc1sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)と表記する。また、hc1sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)の次元数をN c1subとする。
方向推定部214は、例えば、方向推定評価関数値PHc1(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部214は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PHc1(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、ビームフォーマ法は次式(60)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
Figure 2023141038000064
また、ac1subu)は、方位方向θuの到来波に対する抽出した部分的な仮想受信アレーCA#5,CA#6,CA#13,CA#14の方向ベクトルを示す。
また、Dc1calは、部分的な仮想受信アレーCA#5,CA#6,CA#13,CA#14のアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含むN c1sub次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、D c1calは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
また、例えば、方向推定部214は、交差偏波を用いる方向推定処理を行ってもよい。例えば、送信には正旋円偏波アンテナを用いて、受信には逆旋円偏波アンテナを用いる場合の方向推定処理を行う場合、方向推定部214は、CA#7,CA#8,CA#15,CA#16からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、上述した処理と同様の方向推定処理を行う。
例えば、方向推定部214は、送信及び受信の偏波アンテナの組み合わせが同種である仮想受信アレーを用いる方向推定処理に限らず、送信及び受信の偏波アンテナの組み合わせが異なる仮想受信アレーを用いる方向推定処理を行ってもよい。例えば、方向推定部214は、CA#1~CA#16からなる第1のドップラ多重分離部213の出力から得られるすべての仮想受信アンテナを抽出し、上述した処理と同様の方向推定処理を行ってもよい。この場合、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせ(例えば、C/H、C/V等)が含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行うことにより、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られる。また、方向推定部214は、すべての仮想受信アンテナを用いて方向推定処理を行うため、受信SNRが向上し、レーダ装置10における検出性能を向上できる。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。
方向推定部214は、例えば、上記のような送信及び受信とも同種の偏波アンテナを用いる方向推定処理と、異なる種類の偏波を組み合わせた方向推定処理とを行い、これら両方の方向推定結果を方向推定処理結果としてもよい。これにより、偏波に依存度の高い方向推定処理結果と、偏波の依存性が低い方向推定処理結果が得られる。このような方向推定処理の結果を、図に示していない物標識別処理部に入力し、物標の識別処理を行ってもよい。
<逆旋円偏波に対する方向推定処理>
例えば、送受信とも逆旋円偏波アンテナを用いる方向推定処理を行う場合、方向推定部214は、RA#7,RA#8,RA#15,RA#16からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、方向推定処理を行う。
逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_comp_cfar)は列ベクトルであり、これに含まれる第1番目の要素から第NBF×Na番目の要素は、仮想アンテナVA#(Nt×Na+1)からVA#(Nt+NBF)×Naの受信信号、あるいは、RA#1~RA#(NBF×Na)の受信信号を表す。例えば、方向推定部214は、RA#7,RA#8,RA#15,RA#16の受信信号に相当する逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_comp_cfar)の第7、第8、第15、第16の要素を抽出した部分的なアレー相関ベクトルを用いて到来方向推定を行う。抽出した部分的なアレー相関ベクトルをhc2sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)と表記する。また、hc2sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)の次元数をNc2subとする。
方向推定部214は、例えば、方向推定評価関数値PHc2(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部214は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PHc2(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、ビームフォーマ法は次式(61)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
Figure 2023141038000065
また、ac2subu)は、方位方向θuの到来波に対する抽出した部分的な仮想受信アレーRA#7,RA#8,RA#15,RA#16の方向ベクトルを示す。
また、Dc2calは、部分的な仮想受信アレーRA#7,RA#8,RA#15,RA#16のアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含むN c2sub次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、D c2calは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
また、例えば、方向推定部214は、交差偏波を用いた方向推定処理を行ってもよい。例えば、送信には逆旋円偏波アンテナを用いて、受信には正旋円偏波アンテナを用いる場合の方向推定処理を行う場合、方向推定部214は、RA#5,RA#6,RA#13,RA#14からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、上述した処理と同様の方向推定処理を行う。
例えば、方向推定部214は、送信及び受信の偏波アンテナの組み合わせが同種である仮想受信アレーを用いる方向推定処理に限らず、送信及び受信の偏波アンテナの組み合わせが異なる仮想受信アレーを用いる方向推定処理を行ってもよい。例えば、方向推定部214は、RA#1~RA#16からなる第2のドップラ多重分離部213の出力から得られるすべての仮想受信アンテナを抽出し、上述した処理と同様の方向推定処理を行ってもよい。この場合、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせ(例えば、R/H、R/V等)が含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行うことにより、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られる。また、方向推定部214は、すべての仮想受信アンテナを用いて方向推定処理を行うため、受信SNRが向上し、レーダ装置10における検出性能を向上できる。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。
方向推定部214は、例えば、上記のような送信及び受信とも同種の偏波アンテナを用いる方向推定処理と、異なる種類の偏波を組み合わせた方向推定処理とを行い、これら両方の方向推定結果を方向推定処理結果としてもよい。これにより、偏波に依存度の高い方向推定処理結果と、偏波の依存性が低い方向推定処理結果が得られる。このような方向推定処理の結果を、図に示していない物標識別処理部に入力し、物標の識別処理を行ってもよい。
以上、逆旋円偏波に対する方向推定処理の例について説明した。
また、方向推定部214は、例えば、第1及び第2のドップラ多重分離部213の出力を用いて、方向推定処理を行ってもよい。
例えば、送受信とも正円偏波アンテナ(例えば、C/C)、及び、送受信とも逆旋円偏波アンテナ(例えば、R/R)を用いる場合、方向推定部214は、第1のドップラ多重分離部213の出力からCA#5,CA#6,CA#13,CA#14からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、第2のドップラ多重分離部213の出力からRA#7,RA#8,RA#15,RA#16からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、抽出したそれぞれの部分的なアレー相関ベクトルをhc1sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)及びhc2sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて方向推定処理を行う。
方向推定部214は、例えば、方向推定評価関数値PHc12(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部214は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PHc12(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、ビームフォーマ法は次式(62)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
Figure 2023141038000066
また、例えば、方向推定部214は、送受信が交差偏波となる円偏波アンテナの組み合わせ(例えば、C/R及びR/C)を用いる場合、第1のドップラ多重分離部213の出力からCA#7,CA#8,CA#15,CA#16からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、第2のドップラ多重分離部213の出力からRA#5,RA#6,RA#13,RA#14からなる4つの仮想受信アンテナを抽出し、抽出したそれぞれの部分的なアレー相関ベクトルをhc1sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)及ぶhc2sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて、同様な方向推定処理を行う。
このように、方向推定部214は、第1及び第2のドップラ多重分離部213の出力を用いて、方向推定処理する場合、より多くの仮想アンテナを用いることができ、受信SNRが改善し、レーダ装置10における物標の検出性能を向上できる。
また、方向推定部214は、符号化ドップラ多重分離部212の出力、及び、第1及び第2のドップラ多重分離部213の何れかあるいは両者の出力を用いて、方向推定処理を行ってもよい。
例えば、方向推定部214は、VA#1~#32からなる符号化ドップラ多重分離部212の出力から得られるすべての仮想受信アンテナを抽出し、CA#1~CA#16からなる第1のドップラ多重分離部の出力から得られるすべての仮想受信アンテナを抽出し、RA#1~RA#16からなる第2のドップラ多重分離部213の出力から得られるすべての仮想受信アンテナを抽出し、抽出したそれぞれの部分的なアレー相関ベクトルをhsub(fb_cfar, fs_comp_cfar)、hc1sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)及ぶhc2sub(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて方向推定処理を行う。
方向推定部214は、例えば、方向推定評価関数値PHall(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部214は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PHall(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、ビームフォーマ法は次式(63)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
Figure 2023141038000067
上記の場合、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせを含む受信信号を用いて方向推定処理を行うことにより、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られる。また、方向推定部214は、すべての仮想受信アンテナを用いて方向推定処理を行うため、受信SNRが向上し、レーダ装置10における検出性能を向上できる。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。より多くの仮想アンテナを用いることができ、受信SNRが改善し、物標の検出性能を高めることができる。
ここで、例えば、水平偏波、垂直偏波、正旋円偏波及び逆旋円偏波の4偏波に対して、それぞれ2送信MIMOを構成するには、既存の方法では8個の送信アンテナを用いる。これに対して、本実施の形態では、4偏波に対してそれぞれ2送信MIMOを構成するには、4個の送信アンテナ109を用いることで実現でき、送信アンテナ数を削減する効果が得られる。また、本実施の形態において、ドップラ多重信号に対して符号多重送信するため、送信時間の短縮が図れる。例えば、4個の送信アンテナを時分割で切り替える場合と比較して、送信時間を半減する効果も得られる。
また、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行ってもよい。この場合、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られ、より多くの仮想アンテナを用いた方向推定処理を行うことで、受信SNRが向上するため、レーダ装置10における検出性能を向上できる。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。例えば、すべての仮想受信アンテナを用いて方向推定処理を行う場合、最大(Nt×Na+2×NBF×Na)個の仮想受信アンテナを利用することができ、Nt×Na個よりも多くの仮想受信アンテナを利用することができる。
また、方向推定部214は、例えば、上記のような送信及び受信とも同種の偏波アンテナを用いた方向推定処理と、異なる種類の偏波を組み合わせた方向推定処理とを行い、これら両方の方向推定結果を方向推定処理結果としてもよい。これにより、偏波に依存度の高い方向推定処理結果と、偏波の依存性が低い方向推定処理結果が得られる。このような方向推定処理の結果を、図に示していない物標識別処理部に入力し、物標の識別処理を行ってもよい。
方向推定部214は、例えば、各偏波の組み合わせ毎の方向推定結果とともに、測位結果として、距離インデックスfb_cfarに基づく距離情報、及び、ターゲットのドップラ周波数判定結果(符号化ドップラ多重分離部212におけるドップラ折り返し判定処理結果)に基づくターゲットのドップラ速度情報を出力してもよい。
なお、位相回転量として、例えば、式(5)を用いる場合、ドップラ周波数情報は、符号化ドップラ多重分離部212におけるドップラ折り返し判定処理結果であるDrminを用いて、次式(64)のように拡張した範囲で算出可能となる。
Figure 2023141038000068
また、位相回転量として、例えば、式(6)を用いる場合、ドップラ周波数情報は、ドップラ折り返し判定処理結果であるDrminを用いて、次式(65)のように拡張した範囲で算出可能となる。
Figure 2023141038000069
なお、ドップラ周波数情報は相対速度成分に変換して出力されてもよい。ターゲットのドップラ折り返し判定結果であるDrminを用いてドップラ周波数インデックスfoutを相対速度成分vd(fout)に変換するには、次式(66)を用いてもよい。ここで、λは送信無線部(図示せず)から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長(チャープ信号を用いる場合は、チャープ信号の中心周波数における波長を用いる。)である。また、Δfは、ドップラ解析部210におけるFFT処理でのドップラ周波数間隔である。例えば、本実施の形態では、Δf=1/{Ncode×Loc×Tr}である。
Figure 2023141038000070
なお、上述したアンテナの配置例において、4種類の偏波受信アンテナを用いた配置例を示したが、これに限定されず、例えば、2種類の偏波受信アンテナを用いてもよい。この場合、例えば、円偏波(右旋偏波、左旋偏波)あるいは異なる直線偏波(例えば、水平あるいは、垂直偏波)のうち、2種類の偏波受信アンテナを含む。
または、1種類の偏波受信アンテナを用いてもよい。この場合、例えば、円偏波(右旋偏波、左旋偏波)あるいは異なる直線偏波(例えば、水平あるいは、垂直偏波)のうち、1種類の偏波受信アンテナを含む。
以下、受信アンテナ202の偏波を2種類とした場合、及び1種類とした場合の配置例について説明する。
[アンテナの配置例2]
図16は、受信アンテナ202の偏波を2種類(例えば、C及びR)とする場合のアンテナ配置例を示す。
図16の(a)に示すように、送信アンテナTx#1~Tx#4(例えば、Nt個の送信アンテナ109)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8(例えば、Na個の受信アンテナ)の配置から、図16の(b)に示すような仮想受信アンテナ(又は、MIMO仮想アンテナ)の配置VA#1~VA#32が構成される。
また、図16の(a)において、正旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図16の(c)に示すような正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16が構成される。正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16は、例えば、VA#33~VA#48とも表される。
また、図16の(a)において、逆旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図16の(d)に示すような逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16が構成される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16は、例えば、VA#33~VA#48とも表される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16は、それぞれ正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16の配置と同じ配置となる。
なお、図16の(b)~(d)は、X軸上(図16では横方向)で重複する配置を含むため、図16の(b)~(d)では、縦方向にずらして記載するが、それぞれX軸上の位置に1次元的に配置される。また、各仮想受信アンテナにおける送信アンテナ偏波と受信アンテナ偏波との組み合わせはアンテナ毎に異なるため、(送信アンテナ偏波/受信アンテナ偏波)と記載している。例えば、水平偏波送信され、正旋円偏波偏波受信される場合の仮想受信アンテナは、「H/C」と記載する。
また、図16の(a)では、一例として、受信アンテナ202に正旋円偏波アンテナ及び逆旋円偏波アンテナが含まれる場合について説明したが、受信アンテナ202に含まれる偏波アンテナの種類、及び、組み合わせは、これに限定されず、他の偏波アンテナの種類、及び、組み合わせが適用されてもよい。
[アンテナの配置例3]
図17は、受信アンテナ202の偏波を1種類(例えば、C)とする場合のアンテナ配置例を示す。
図17の(a)に示すように、送信アンテナTx#1~Tx#4(例えば、Nt個の送信アンテナ109)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8(例えば、Na個の受信アンテナ)の配置から、図17の(b)に示すような仮想受信アンテナ(又は、MIMO仮想アンテナ)の配置VA#1~VA#32が構成される。
また、図17の(a)において、正旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図17の(c)に示すような正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16が構成される。正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16は、例えば、VA#33~VA#48とも表される。
また、図17の(a)において、逆旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図17の(d)に示すような逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16が構成される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16は、例えば、VA#33~VA#48とも表される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#16は、それぞれ正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#16の配置と同じ配置となる。
なお、図17の(b)は、X軸上(図17では横方向)で重複する配置を含むため、図17の(b)では縦方向にずらして記載するが、それぞれX軸上の位置に1次元的に配置される。また、各仮想受信アンテナにおける送信アンテナ偏波と受信アンテナ偏波との組み合わせはアンテナ毎に異なるため、(送信アンテナ偏波/受信アンテナ偏波)と記載する。例えば、水平偏波送信され、垂直偏波受信された場合の仮想受信アンテナは、「H/V」と記載する。
なお、図17の(a)では、一例として、受信アンテナ202に正旋円偏波アンテナが含まれる場合について説明したが、受信アンテナ202に含まれる偏波アンテナの種類は、これに限定されず、他の偏波アンテナの種類が適用されてもよい。
ここで、上述したアンテナ配置例1~3は、送受信アンテナの偏波が同一となる仮想受信アンテナが均一間隔D(例えばD=0.5波長間隔)で配置される例について説明した。しかし、このような配置に限定されず、送受信アンテナの偏波が同一となる仮想受信アンテナの配置の一部に、間隔D(例えばD=0.5波長間隔)が含まれるように配置してもよい。このような配置となるアンテナ配置例について、以下、説明をする。
[アンテナの配置例4]
図18は、送受信アンテナの偏波が同一となる仮想受信アンテナの配置の一部に、間隔D(例えばD=0.5波長間隔)が含まれる配置を示す。
図18の(a)に示すように、送信アンテナTx#1~Tx#4(例えば、Nt個の送信アンテナ109)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#4(例えば、Na個の受信アンテナ)の配置から、図18の(b)に示すように仮想受信アンテナ(又は、MIMO仮想アンテナ)の配置VA#1~VA#16が構成される。
また、図18の(a)において、正旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図18の(c)に示すような正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#8が構成される。正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA8#は、例えば、VA#17~VA#24とも表される。
また、図18の(a)において、逆旋円偏波ビーム送信アンテナTx#5及びTx#6(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#8の配置から、図18の(d)に示すような逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#8が構成される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#8は、例えば、VA#17~VA#24とも表される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#8は、それぞれ正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#8の配置と同じ配置となる。
なお、図18の(b)は、X軸上(図18では横方向)で重複する配置を含むため、図18の(b)では縦方向にずらして記載するが、それぞれX軸上の位置に1次元的に配置される。また、各仮想受信アンテナにおける送信アンテナ偏波と受信アンテナ偏波との組み合わせはアンテナ毎に異なるため、(送信アンテナ偏波/受信アンテナ偏波)と記載する。例えば、水平偏波送信され、垂直偏波受信された場合の仮想受信アンテナは、「H/V」と記載する。
図18の(a)に示すようにビーム送信アンテナTx#5,Tx#6の間隔は間隔2D(例えばD=0.5波長間隔の場合、1波長)に設定され、受信アンテナRx#1~Rx#4の間隔は間隔3D(例えばD=0.5波長間隔の場合、1.5波長)に設定される。これにより、図18の(c)に示す正旋円偏波仮想受信アンテナ配置、及び、図18の(d)に示す逆旋円偏波仮想受信アンテナ配置には、間隔D及び間隔2Dを含む仮想受信アンテナ配置が得られる。これにより、正旋円偏波及び逆旋円偏に対する方向推定は、間隔2Dを含む仮想受信アンテナ配置となり開口長を拡大しつつ、間隔Dを含むことから、角度分解能を高めつつ、グレーティングローブの抑圧も可能な配置となる。
アンテナ配置例4では、ビーム送信アンテナTx#5,Tx#6は、複数の送信アンテナ109を用いてビーム送信するため、1波長程度以上の間隔となる。このため、ビーム送信アンテナの間隔に対して、受信アンテナ202の間隔の差分が間隔Dとなるアンテナ配置により、正旋円偏波仮想受信アンテナ配置及び逆旋円偏波仮想受信アンテナ配置には間隔Dを含み間隔Dよりも広い間隔を含む仮想受信アンテナ配置が得られる。これにより、正旋円偏波及び逆旋円偏に対する方向推定では、開口長を拡大し、また、間隔Dを含むことから、角度分解能を向上でき、グレーティングローブを抑圧できる。
なお、上述した配置例は、仮想受信アンテナが、例えば、水平方向に一次元的に並ぶ配置としたが、このような配置に限定されず、水平方向及び垂直方向を含む2次元平面上に配置される送受信アンテナを用いてもよい。このような配置を用いることで、物標の方向推定処理として、例えば、水平方向及び垂直方向の2次元的な方向推定結果を得ることができる。
また、Dは、0.5波長に限らず、例えば、0.45波長~0.8波長程度(例えば、0.45λ~0.8λの範囲の何れかの値)に設定されてよい。
以上、アンテナ配置例について説明した。
以上のように、本実施の形態では、レーダ装置10は、各送信周期において、複数の送信アンテナ109のうち少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109である水平偏波アンテナと垂直偏波アンテナとの間の位相が90°又は-90°異なる位相回転量(例えば、直交符号系列に対応する位相回転量)が付与されたレーダ送信信号を複数の送信アンテナ109から多重送信する。
これにより、少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109から送信された信号に対応する、送信周期毎の受信信号は、各送信アンテナ109に対応する直線偏波(例えば、水平偏波又は垂直偏波)と異なる円偏波(例えば、正旋円偏波又は逆旋円偏波)で送信されたレーダ送信信号に対応する受信信号とみなすことができる。このため、レーダ装置10は、例えば、直線偏波アンテナである複数の送信アンテナ109を用いて、直線偏波に加え、円偏波を用いた多重送信が可能となる。
よって、本実施の形態によれば、例えば、垂直偏波及び水平偏波に加え、左旋円偏波及び右旋円偏波4種類の偏波を送信する場合でも、使用する送信アンテナ109の増加を抑えて、レーダ装置10における物標の検知精度を向上できる。
なお、本実施の形態において用いる符号Code及びCodeは、送信アンテナ109間の位相偏差が予め補正される場合の符号を表している。従って、各送信アンテナ109の給電点における位相差は、各送信アンテナ109に付与された符号Code及びCodeの符号要素間の位相差となる。ここで、レーダ装置10がCode={OC(1), OC(2)}、Code={OC(1), OC(2)}を用いて送信を行う場合、各符号要素間の位相差は、angle[OC2(1)]-angle[OC(1)]及びangle[OC2(2)]-angle[OC(2)]で与えられる。従って、本実施の形態において、レーダ装置10が、2個の送信アンテナ109から同一のドップラ多重信号を用いて、符号長Loc=2からなるNCM=2の直交符号系列として、例えば、Code={1, 1}とCode={j, -j}を用いて送信する場合、2個の送信アンテナ109の給電点間の位相差は、angle[OC2(1)]-angle[OC(1)]=90°及び、angle[OC2(2)]-angle[OC(2)]=-90°となり、送信周期毎に2個の送信アンテナ109の給電点間の位相差は、90°あるいは-90°となる。
同様に、本実施の形態において、レーダ装置10が、2個の送信アンテナ109から同一のドップラ多重信号を用いて、符号長Loc=2からなるNCM=2の直交符号系列として、例えば、Code={A, B}、Code={-j×A, j×B}を用いて送信する場合、2個の送信アンテナ109の給電点間の位相差は、angle[OC2(1)]-angle[OC(1)]=-90°及び、angle[OC2(2)]-angle[OC(2)]=90°となり、送信周期毎に2個の送信アンテナ109の給電点間の位相差は、90°あるいは-90°となる。
同様に、本実施の形態において、レーダ装置10が、2個の送信アンテナ109から同一のドップラ多重信号を用いて、符号長Loc=2からなるNCM=2の直交符号系列として、例えば、Code={A, B}、Code={exp(jξ)×A, - exp(jξ)×B}を用いて送信する場合、2個の送信アンテナ109の給電点間の位相差は、angle[OC2(1)]-angle[OC(1)]=ξ及び、angle[OC2(2)]-angle[OC(2)]=-ξとなり、送信周期毎に2個の送信アンテナの給電点間の位相差は、ξあるいは-ξとなる。ここで、例えば、ξはπ/6~5π/6ラジアン(=30°~150°)の範囲を用いてよい。以降の変形例1及び変形2おいても同様である。
(実施の形態1の変形例1)
実施の形態1において、ドップラ多重数NDM=1とし、ドップラ多重を用いずに、符号多重を用いてMIMO多重送信を行ってもよい。
図19は、実施の形態1の変形例1に係るレーダ装置10aの構成例を示す。実施の形態1の変形例1では、ドップラ多重を用いない構成であるため、図1のレーダ装置10の構成から、ドップラ多重の送信動作及び受信動作に関する構成(例えば、ドップラシフト設定部106、符号化ドップラ多重分離部212)を除き、符号化ドップラ多重分離部212の代わりに、符号多重分離部215を備える構成となる。
また、図19の例では、レーダ装置10aにおいて、ドップラ多重数NDM=1とし、符号長2の符号で符号多重を行う。このため、図19では、送信アンテナ数Nt=2の構成となる。送信アンテナ109は、例えば、異なる直線偏波アンテナ(例えば、水平偏波及び垂直偏波アンテナ)を用いることにより、実施の形態1と同様に、符号多重送信してよい。これにより、レーダ装置10aは、異なる直線偏波アンテナ(例えば、水平偏波及び垂直偏波アンテナ)の受信信号に加え、符号多重時のビーム送信では、正旋円偏波及び逆旋円偏波となる送信が可能となり、正旋円偏波及び逆旋円偏波の受信信号を得られる。
この場合、レーダ装置10aでは、異なる直線偏波アンテナ(例えば、水平偏波及び垂直偏波アンテナ)、正旋円偏波及び逆旋円偏波となるビーム送信アンテナの構成となり、それぞれの偏波毎に1個の送信アンテナの構成となり、受信アンテナ202を複数Na個備える場合、それぞれの偏波毎に1×Na個の仮想受信アンテナが得られるSIMO(Single in multiple output)構成となる。
以下、図19に示すレーダ装置10aの各構成部の動作例について説明する。
図19に示すレーダ装置10aにおいて、レーダ送信部100aの動作は、ドップラ多重数NDM=1、第1番目のドップラシフト量DOPを付与する位相回転量φ1 =0、NDOP_CODE(1)=NCM=2,送信アンテナ数Nt=2とした場合の実施の形態1の動作と同様であるため、その動作の説明を省略する。
次に、図19に示すレーダ装置10aのレーダ受信部200aの動作例について説明する。
受信アンテナ202からアンテナ系統処理部201までの各構成部の動作は、実施の形態1の動作と同様であるため、その動作の説明を省略する。
CFAR部211は、ドップラ多重送信されないため(例えば、ドップラ多重数NDM=1)、ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いない場合の動作を行う。
符号多重分離部215は、CFAR部211の出力(ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いない場合の出力)である距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、ドップラ解析部210の出力を用いて、符号多重送信された信号を分離する。符号多重分離部215は、符号多重信号の分離受信信号を、方向推定部214に出力する。
例えば、符号多重分離部215は、次式(67)のように、多重送信に用いる符号の複素共役を乗算することで符号多重信号の分離受信を行う。符号多重信号の分離受信信号Yz(fb_cfar,fs_cfar,ncm)は、方向推定部214に出力される。
Figure 2023141038000071
ここで、Yz(fb_cfar,fs_cfar,ncm)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの出力であるVFTALLz(fb_cfar,fs_cfar)に対して、送信時に直交符号Codencmを用いて符号多重信号を分離した出力である。なお、z=1,~,Naであり、ncm=1,~,NCMである。
ここで、ドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)は、次式(68)のように表される。式(68)に示すドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)は、例えば、第1番のドップラ解析部210の出力VFT 1(fb_cfar, fs_comp_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部210の出力VFT 2(fb_cfar, fs_comp_cfar)におけるTrの時間遅れにより生じるドップラ周波数インデックスfs_cfarのドップラ成分での位相回転を補正するドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。
Figure 2023141038000072
また、式(67)に示すVFTALLz(fb_cfar, fs_cfar)は、例えば、次式(69)のように、第z番のアンテナ系統処理部201における2個のドップラ解析部210の出力VFT noc(fb, fs)のうち、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに基づいて抽出した成分をベクトル形式で表した値である。ただし、noc=1,2である。
Figure 2023141038000073
図19において、方向推定部214は、符号多重分離部215から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfarに対する符号多重信号の分離受信信号Yz(fb_cfar,fs_cfar,ncm)に基づいてターゲットの方向推定処理(以下、直線偏波に対する方向推定処理と呼ぶ)を行う。
また、方向推定部214は、第1のドップラ解析部210(図19では、ドップラ解析部210-1)からの出力に基づいて、ターゲットの方向推定処理(以下、正旋円偏波に対する方向推定処理と呼ぶ)を行う。
また、方向推定部214は、第2のドップラ解析部210(図19では、ドップラ解析部210-2)からの出力に基づいて、ターゲットの方向推定処理(以下、逆旋円偏波に対する方向推定処理と呼ぶ)を行う。
方向推定部214における方向推定処理は、例えば、直線偏波に対する方向推定処理、正旋円偏波に対する方向推定処理、及び、逆旋円偏波に対する方向推定処理を含んでよい。以下、それぞれの方向推定処理について説明する。
<直線偏波に対する方向推定処理>
例えば、方向推定部214は、符号多重分離部215の出力に基づいて、次式(70)に示すような仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。
Figure 2023141038000074
方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定処理を行う。
ここで、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)は、異なる直線偏波アンテナ(例えば、垂直偏波アンテナ及び水平偏波アンテナ)から送信された信号の反射波受信信号を含む。そのため、方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)から、所定の送信アンテナ109の偏波と受信アンテナ202の偏波との組み合わせとなる要素を抽出し、抽出した要素からなる仮想受信アレー相関ベクトルを用いて方向推定処理を行ってもよい。これにより、所定の送信アンテナ109の偏波及び受信アンテナ202の偏波毎の方向推定の結果を得ることができる。
<正旋円偏波に対する方向推定処理>
方向推定部214は、第1のドップラ解析部210の出力に基づいて、次式(71)に示すような正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、ターゲットの正旋円偏波に対する方向推定処理を行う。
ここで、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)は、第1のドップラ解析部210の出力(例えば、VFT 1(fb_cfar, fs_cfar)に基づく、符号多重送信され、隣り合う異なる直線偏波の送信アンテナ109によってビーム送信され、円偏波送信された信号の反射波受信信号を含む。例えば、ビーム送信アンテナが1個ある場合、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)は、1×Na個の要素を含む。方向推定部214は、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。
Figure 2023141038000075
<逆旋円偏波に対する方向推定処理>
方向推定部214は、第2のドップラ解析部210の出力に基づいて、ターゲットの逆旋円偏波に対する方向推定処理を行う。方向推定部214は、例えば、次式(72)に示すような逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、ターゲットの逆旋円偏波に対する方向推定処理を行う。
ここで、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)は、第2のドップラ解析部210の出力(例えば、VFT 2(fb_cfar, fs_ cfar)に基づく、符号多重送信され、隣り合う異なる直線偏波の送信アンテナ109によってビーム送信され、円偏波送信された信号の反射波受信信号を含む。例えば、ビーム送信アンテナが1個ある場合、逆旋仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)は、1×Na個の要素を含む。
方向推定部214は、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う。
Figure 2023141038000076
以下、方向推定部214における、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を用いた直線偏波に対する方向推定処理、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)を用いた正旋円偏波に対する方向推定処理、及び、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)を用いた逆旋円偏波に対する方向推定処理ついての動作は実施の形態1と同様であるため、その動作の説明を省略する。
なお、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行ってもよい。この場合、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られる。また、より多くの仮想アンテナを用いた方向推定処理を行うことで、受信SNRが向上し、レーダ装置10aにおける検出性能を向上できる。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。例えば、すべての仮想受信アンテナを用いて方向推定処理を行う場合、ここでは、Nt=2,NBF=1より、最大(Nt×Na+2×NBF×Na)=4Na個の仮想受信アンテナを利用でき、2Na(=Nt×Na)個よりも多くの仮想受信アンテナを利用できる。
また、方向推定部214は、上記のような送信及び受信とも同種の偏波アンテナを用いた方向推定処理と、送信及び受信とで異なる種類の偏波を組み合わせた方向推定処理とを行い、これら両方の方向推定結果を方向推定処理結果としてもよい。これにより、偏波に依存度の高い方向推定処理結果と、偏波の依存性が低い方向推定処理結果が得られる。このような方向推定処理の結果を、図に示していない物標識別処理部に入力し、物標の識別処理を行ってもよい。
ここで、4種類の偏波(異なる直線偏波アンテナ(例えば、垂直偏波アンテナ及び水平偏波アンテナ)及び正旋/逆旋円偏波)に対して、それぞれ1送信SIMOを構成するには、既存の方法では4個の送信アンテナを用いる。これに対して、図19の構成では、4偏波に対してそれぞれ1送信SIMOを構成するには、2個の送信アンテナ109を用いることで実現でき、送信アンテナ数を削減する効果が得られる。また、レーダ装置10aは、符号多重送信するため、送信時間の短縮が図れる。例えば、4個の送信アンテナ109を時分割で切り替える場合と比較して、送信時間を半減する効果も得られる。
また、実施の形態1と比較して、送信アンテナ数が少ない構成となるが、実施の形態1と同様な効果が得られる。以下、アンテナ配置の具体例を示す。
[アンテナの配置例5]
図20は、受信アンテナ202の偏波を1種類(例えば、V)とする場合のアンテナ配置例を示す。図20の(a)に示すように、送信アンテナTx#1~Tx#2(例えば、Nt個の送信アンテナ109)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3(例えば、Na個の受信アンテナ)の配置から、図20の(b)に示すような仮想受信アンテナ(又は、MIMO仮想アンテナ)の配置VA#1~VA#6が構成される。また、図20の(a)において、正旋円偏波ビーム送信アンテナTx#3(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3の配置から、図20の(c)に示すような正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#3が構成される。正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#3は、例えば、VA#7~VA#9とも表される。
また、図20の(a)において、逆旋円偏波ビーム送信アンテナTx#3(例えば、NBF個の送信アンテナ)、及び、受信アンテナRx#1~Rx#3配置から、図20の(d)に示すような逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#3が構成される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#3は、VA#7~VA#9とも表される。逆旋円偏波仮想受信アンテナの配置RA#1~RA#3は、それぞれ正旋円偏波仮想受信アンテナの配置CA#1~CA#3の配置と同じ配置となる。
また、各仮想受信アンテナにおける送信アンテナ偏波と受信アンテナ偏波との組み合わせはアンテナ毎に異なるため、(送信アンテナ偏波/受信アンテナ偏波)と記載する。例えば、水平偏波送信され、垂直偏波受信された場合の仮想受信アンテナは、「H/V」と記載する。
なお、図20の(a)では、一例として、受信アンテナ202に垂直偏波アンテナが含まれる場合について説明したが、受信アンテナ202に含まれる偏波アンテナの種類は、これに限定されず、他の偏波アンテナの種類が適用されてもよい。例えば、水平偏波アンテナや円偏波アンテナを適用してもよい。あるいは、複数の種類の偏波アンテナをRx#1~Rx#3のいずれかに適用してもよい。
ここで、図20の(a)に示す配置は、ビーム送信アンテナTx#3を構成する異なる直線偏波の送信アンテナTx#1及びTx#2のアンテナ間隔DHに対し、受信アンテナRx#1,Rx#3,Rx#2(隣り合う受信アンテナ202)は、X軸方向(例えば、水平方向)にアンテナ間隔2DHで配置され、受信アンテナRx#1,Rx#3,Rx#2の一部のアンテナは、他のアンテナに対して、Y軸方向(例えば、垂直方向に)にアンテナ間隔Dvでオフセットされて配置される。このような配置とすることで、以下のような効果が得られる。
例えば、図20の(a)に示すように、受信アンテナ202の配置は、X軸方向(例えば、水平方向)の線状に並ぶ受信アンテナRx#1とRx#2に対し、直交するY軸方向(例えば、垂直方向)に間隔DVでオフセットした配置となるRx#3を含むため、X軸方向及びY軸方向(例えば、垂直方向と水平方向)の2次元の方向推定が可能となる。例えば、DVを半波長間隔とすることで、垂直方向±90°範囲の測角処理において、グレーティングローブの発生を抑圧することができる。
なお、DVは半波長間隔に限らず、レーダ送信信号の波長(λ)より短い間隔で設定してよい。例えば、DVは、それぞれ0.45λ~0.8λ程度(例えば、0.45λ~0.8λの範囲の何れかの値)に設定されてよい。なお、λはレーダ送信信号のキャリア周波数の波長を表す。例えば、レーダ送信信号としてチャープ信号を用いる場合、λは、チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数の波長である。
また、図20の(a)に示すように、送信アンテナTx#1とTx#2はX軸方向の線状にアンテナ間隔DHで並ぶことから、図20の(b)に示す仮想受信アンテナの配置に示すように、VA#1とVA#4、VA#2とVA#5、及びVA#3とVA#6のそれぞれのアンテナ間隔はDHとなる。
また、図20の(a)に示すように、受信アンテナRx#1、Rx#3及びRx#2の配置は、X軸方向(例えば水平方向)に、アンテナ間隔2DHで並ぶため、送信アンテナTx#1とTx#2との間隔(例えば、DH)に対して、受信アンテナ202の間隔の差分が間隔DHとなり、仮想受信アンテナ配置には間隔DHが含まれる。例えば、図20の(b)に示す仮想受信アンテナの配置に示すように、VA#1,VA#4、VA#3、VA#6、VA#2及びVA#5はそれぞれのアンテナ間隔はDHとなる(ただし、VA#3、VA#6はY軸方向(例えば垂直方向)に間隔DVでオフセットした配置)。
例えば、DHを半波長間隔とすることで、水平方向±90°範囲の測角処理において、グレーティングローブの発生を抑圧することができる。また、等アンテナ間隔DHで配置されることから測角処理におけるサイドローブ抑圧することができ、複数物標の検出性能の向上を図れる。
なお、DHは半波長間隔に限らず、レーダ送信信号の波長(λ)より短い間隔で設定してよい。例えば、DHは、それぞれ0.45λ~0.8λ程度(例えば、0.45λ~0.8λの範囲の何れかの値)に設定されてよい。なお、λはレーダ送信信号のキャリア周波数の波長を表す。例えば、レーダ送信信号としてチャープ信号を用いる場合、λは、チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数の波長である。以下の配置例においても同様である。
また、方向推定部214の直線偏波に対する方向推定処理において、レーダ装置10aが、所定の送信アンテナ109の偏波と受信アンテナ202の偏波との組み合わせとなる要素を抽出し、抽出した要素からなる仮想受信アレー相関ベクトルを用いて方向推定処理を行う場合、例えば、交差偏波の組み合わせとして、水平偏波の送信アンテナと垂直偏波アンテナとの組み合わせとする場合は、仮想受信アンテナVA#1,VA#2,VA3を用いて方向推定処理を行うことになり、交差偏波アンテナ間の送受信特性に依存した方向推定結果が得られる。
また、例えば、同種の偏波の組み合わせとして、垂直偏波の送信アンテナと垂直偏波アンテナとの組み合わせを用いる場合、レーダ装置10aは、仮想受信アンテナVA#4,VA#5,VA#6を用いて方向推定処理を行うことになり、同種偏波の送受信特性に依存した方向推定結果を得ることができる。前者の送信アンテナと受信アンテナの組み合わせと、後者の組み合わせの方向推定結果を用いることで、検出識別性能の向上を図ることができる。
なお、レーダ装置10aがこのような所定の送信アンテナ109の偏波と受信アンテナ202の偏波との組み合わせとなる要素を抽出し、抽出した要素からなる仮想受信アレー相関ベクトルを用いて方向推定処理を行う場合、アンテナ間隔DHを半波長とすると、X軸方向(例えば水平方向)の素子間隔はアンテナ間隔2DHとなり1波長となるため、水平方向±90°範囲の測角処理において、グレーティングローブが発生する。
このため、レーダ装置10aで想定する検知角範囲が、グレーティングローブの発生する角度以上に広い場合には、レーダ装置は、検知角度範囲内において、グレーティングローブに起因する偽のピークを誤ってターゲット(物標)として検出する確率が増加し、レーダ装置10aの検出性能が劣化する場合がある。
しかしながら、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行うことで、グレーティングローブの抑圧が可能である。この場合、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれる受信信号として、例えば、仮想受信アンテナVA#1~VA#6を用いて方向推定処理を行う。これにより、X軸方向(例えば水平方向)の素子間隔はアンテナ間隔DHを含む配置となり、水平方向±90°範囲の測角処理において、グレーティングローブを抑圧することができる。
また、方向推定部214は、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。また、方向推定部214は、利用可能な仮想受信アンテナのすべてを用いて方向推定処理するため、受信SNRも向上する。
また、方向推定部214は、正旋円偏波に対する方向推定処理において、CA#1,CA#2,CA#3を用いて方向推定処理する。同様に、方向推定部214は、逆旋円偏波に対する方向推定処理において、RA#1,RA#2,RA#3を用いて方向推定処理する。これにより、正旋あるいは逆旋の円偏波の送信アンテナと垂直偏波アンテナとの組み合わせを用いることになり、偏波の送受信特性に依存した方向推定結果を得ることができ、検出識別性能の向上を図ることができる。
なお、CA#1,CA#2,CA#3を用いた方向推定処理あるいは、RA#1,RA#2,RA#3を用いた方向推定処理において、アンテナ間隔DHを半波長とすると、X軸方向(例えば水平方向)の素子間隔はアンテナ間隔2DHとなり1波長となるため、水平方向±90°範囲の測角処理において、グレーティングローブが発生することになるが、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行うことで、グレーティングローブの抑圧も可能である。
この場合、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれる受信信号として、例えば仮想受信アンテナVA#1~VA#6,CA#1,CA#2,CA#3,RA#1,RA#2,RA#3を用いて方向推定処理を行う。これにより、X軸方向(例えば水平方向)の素子間隔はアンテナ間隔DHを含む配置となり、水平方向±90°範囲の測角処理において、グレーティングローブを抑圧することができる。また、方向推定部214は、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。また、利用可能な仮想受信アンテナのすべてを用いて方向推定処理するため、受信SNRも向上する。
(実施の形態1の変形例2)
実施の形態1の変形例1における図19の構成は、送信アンテナ数Nt=2とし、4種類の偏波(異なる直線偏波アンテナ(例えば、垂直偏波アンテナ及び水平偏波アンテナ)及び正旋/逆旋円偏波)に対し、それぞれ1送信SIMOとなる構成を示したが、さらに、時分割多重を組み合わせて、符号多重する送信アンテナ109を時分割で切り替えることで、4種類の偏波のそれぞれに対してMIMO構成とすることも可能である。
例えば、図21は、実施の形態1の変形例2に係るレーダ装置10bの構成例を示す。レーダ装置10bでは、例えば、送信アンテナ数Nt=4とし、符号多重する2個の送信アンテナ109のペアを時分割で切り替える構成を備え、4種類の偏波に対して、それぞれ2送信MIMOとする構成例を示す。
図21に示すレーダ装置10bでは、図19に示すレーダ装置10aの構成に、送信切替制御部110、及び、送信切替部111が追加される。
以下、図21に示すレーダ装置10bのうち、図19に示すレーダ装置10aの構成と異なる部分の動作について主に説明する。
図21に示すレーダ装置10bのレーダ送信部100bにおけるレーダ送信信号生成部101、位相回転量設定部105、位相回転部108の各部の動作は、ドップラ多重数NDM=1、第1番目のドップラシフト量DOPを付与する位相回転量φ1 =0、NDOP_CODE(1)=NCM=2,送信アンテナ数Nt=2とした場合の実施の形態1の動作と同様であるため、その動作の説明を省略する。
送信切替制御部110は、所定の送信周期毎に送信切替部111から出力する2個の送信アンテナ109を切り替える制御を行う。送信切替制御部110は、例えば、図22に示すように、符号化部107で付与される符号長Loc=2の送信周期である2送信周期毎に送信切替部111から出力される2個の送信アンテナ109を切り替える制御を行う。なお、図22では、符号化部107において符号Code1=[1 1]及びCode2=[j -j]が付与される例を示す。
ここで、切り替えの単位となる2個の送信アンテナ109は、異なる直線偏波(例えば水平偏波及び垂直偏波)となる隣接する配置の送信アンテナ109をペアとする。送信切替制御部110は、これらのペアを2送信周期毎に切り替える動作を行う。
以下、異なる直線偏波となる隣接する配置の送信アンテナ109のペア数を「Nsw」と表記する。また、Nt個の送信アンテナ109において、最初に送信を行う送信アンテナ109のペアを「第1の送信ペア」と呼び、続く2送信周期で切り替える送信アンテナ109のペアを「第2の送信ペア」と呼ぶ。以下、Nt個の送信アンテナ109に対して、Nt/2の送信ペアが含まれる場合、各送信ペアを表す送信ペアのインデックス「nsw」で表記する。ここでnsw=1,~,Nt/2である。また、送信切替制御部110は、送信周期毎に、送信ペアのインデックスnswを出力切替部209に出力する。
また、図21及び図22において、第nsw番目の送信ペアのうち、位相回転部PROT#[1, 1]の出力を空間に放射する送信アンテナ109を「送信アンテナTx#[1, nsw]」と表記する。また、位相回転部PROT#[ndop_code(1), 1]= PROT#[2, 1]の出力を空間に放射する送信アンテナ109を「送信アンテナTx#[ndop_code(ndm), nsw]= Tx#[2, nsw]」と表記する。図21及び図22において、Nt=4であり、4個の送信アンテナ109に対して、Tx#[1, 1]、Tx#[ndop_code(1), 1](=Tx#[2, 1])、Tx#[1, 2]、Tx#[ndop_code(1), 2] (=Tx#[2, 2])が割り当てられる。また、ndop_code(1)=2である。
送信切替部111は、上述した送信切替制御部110による制御に基づいて、異なる直線偏波となる隣接する配置の送信アンテナをペアとして、これらのペアを2送信周期毎に切り替える動作を行う。例えば、図22に示すように、レーダ装置10bは、送信アンテナ109の複数のペアのそれぞれから、レーダ送信信号を時分割多重送信する。
次に、図21に示すレーダ装置10bのレーダ受信部200bの動作例について説明する。
受信アンテナ202からアンテナ系統処理部201までの各構成部の動作は、実施の形態1の動作と同様であるため、その動作の説明を省略する。
出力切替部209は、位相回転量設定部105の符号化部107から入力される直交符号要素インデックスOC_INDEXと、送信切替制御部110から入力される送信ペアのインデックスnswとに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Loc×Nsw個(図21では、Loc=2)のドップラ解析部210のうち、(nsw-1)×Loc+OC_INDEX番目のドップラ解析部210に選択的に切り替えて出力する。例えば、出力切替部209は、第m番目の送信周期Trにおいて、次式(73)により得られるドップラ解析部210を選択する。ここで、Loc=2である。
Figure 2023141038000077
信号処理部206は、Loc×Nsw個のドップラ解析部210-1~210-Loc×Nswを有する。例えば、第ncsw番目のドップラ解析部210には、出力切替部209によってLoc×Nsw回の送信周期(Loc×Nsw×Tr)毎にデータが入力される。ここで、ncsw=1,~,Loc×Nswである。このため、第ncsw番目のドップラ解析部210は、Nc回の送信周期のうち、Ncsub=Nc/(Loc×Nsw)回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から入力されるビート周波数応答RFT(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。なお、Ncは(Loc×Nsw)の整数倍に設定される。
例えば、Ncsubが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用できる。この場合、FFTサイズはNcsubであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2 Loc×Nsw×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Loc×Nsw×Ncsub×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs= -Ncsub/2, ~, 0, ~, Ncsub/2-1である。ncsw=1,~, (Loc×Nsw)である
例えば、第z番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT ncsw(fb, fs)は、式(39)において、NcodeをNcsubに置き換え、Locを(Loc×Nsw)に置き換え、nocをncswに置き換えた式で表され、これら以外は実施の形態1と同様な動作である。
図21において、CFAR部211は、第1~第Na番目の信号処理部206それぞれの(Loc×Nsw)個のドップラ解析部210の出力を用いて、CFAR処理(例えば、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部211は、例えば、次式(74)のように、第1~第Na番目の信号処理部206における第1~Nsw×Loc番目のドップラ解析部210の出力VFTz 1(fb, fs)~VFTz Nsw×Loc(fb, fs)を電力加算したPowerFT (fb, fs)を用いて、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。
CFAR部211は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を符号多重分離部215に出力する。なお、CFAR部211は、ドップラ多重送信されないため(ドップラ多重数NDM=1)、ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いない場合の動作を行う。
Figure 2023141038000078
符号多重分離部215は、CFAR部211の出力(ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いない場合の出力)である距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、ドップラ解析部210の出力を用いて、符号多重送信された信号を分離する。符号多重分離部215は、符号多重信号の分離受信信号を、方向推定部214に出力する。
例えば、符号多重分離部215は、次式(75)のように、多重送信に用いた符号の複素共役を乗算することで符号多重信号の分離受信を行う。符号多重信号の分離受信信号Yz(fb_cfar,fs_cfar,ncm, nsw)は、方向推定部214に出力される。
Figure 2023141038000079
ここで、Yz(fb_cfar,fs_cfar,ncm, nsw)は、nsw番目の送信ペアとなる送信アンテナ109で送信された際に、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの出力であるVFTALLz(fb_cfar,fs_cfar、nsw)に対して、送信時に直交符号Codencmを用いた符号多重信号を分離した出力である。なお、z=1,~,Naであり、ncm=1,~,NCM 、nsw=1,~,NSWである。
ここで、ドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)は、次式(76)のように表される。式(76)に示すドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)は、例えば、第1番のドップラ解析部210の出力VFT 1(fb_cfar, fs_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第ncsw番のドップラ解析部210の出力VFT ncsw(fb_cfar, fs_cfar)における送信時間遅れ(ncsw-1)×Tr /(Loc×NSW)により生じるドップラ周波数インデックスfs_cfarのドップラ成分での位相回転を補正するドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。
Figure 2023141038000080
また、式(75)において、VFTALLz(fb_cfar, fs_cfar,nsw)は、例えば、次式(77)のように、第z番のアンテナ系統処理部201における2個のドップラ解析部210の出力VFT ncsw(fb, fs)のうち、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに基づいて抽出した成分をベクトル形式で表した値である。ただし、noc=1,2である。
Figure 2023141038000081
図21において、方向推定部214は、符号多重分離部215から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfarに対する符号多重信号の分離受信信号Yz(fb_cfar,fs_cfar,ncm,nsw)に基づいてターゲットの方向推定処理(以下、直線偏波に対する方向推定処理と呼ぶ)を行う。
また、方向推定部214は、第1~2Nswのドップラ解析部210(図21では、ドップラ解析部210-1~2Nsw)の出力のうち、正旋円偏波となる送信の受信信号となる出力を用いて、ターゲットの方向推定処理(以下、正旋円偏波に対する方向推定処理と呼ぶ)を行う。
また、方向推定部214は、第1~2Nswのドップラ解析部210(図21では、ドップラ解析部210-1~2Nsw)の出力のうち、逆旋円偏波となる送信の受信信号となる出力を用いて、ターゲットの方向推定処理(以下、逆旋円偏波に対する方向推定処理と呼ぶ)を行う。
方向推定部214における方向推定処理は、直線偏波に対する方向推定処理、正旋円偏波に対する方向推定処理、及び、逆旋円偏波に対する方向推定処理を含んでよい。以下、それぞれの方向推定処理についての動作の説明を行う。
<直線偏波に対する方向推定処理>
例えば、方向推定部214は、符号多重分離部215の出力に基づいて、次式(78)に示すような仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。
Figure 2023141038000082
ここで、hswnsw(fb_cfar, fs_cfar)は、nsw番目の送信ペアとなる送信アンテナ109で送信された際に、符号分離される受信信号の受信ベクトルであり、次式(79)のように、送信アンテナ数2と受信アンテナ数Naとの積である2Na個の要素を含む。
Figure 2023141038000083
方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定処理を行う。
ここで、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)は、異なる直線偏波アンテナ(例えば、垂直偏波アンテナ及び水平偏波アンテナ)から送信された信号の反射波受信信号を含む。そのため、方向推定部214は、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)から、所定の送信アンテナ109の偏波と受信アンテナ202の偏波との組み合わせとなる要素を抽出し、抽出した要素からなる仮想受信アレー相関ベクトルを用いて方向推定処理を行ってもよい。これにより、所定の送信アンテナ109の偏波及び受信アンテナ202の偏波毎の方向推定の結果を得ることができる。
<正旋円偏波に対する方向推定処理>
方向推定部214は、第1~2Nswのドップラ解析部210の出力のうち、正旋円偏波となる送信の受信信号となる出力を用いて、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、ターゲットの正旋円偏波に対する方向推定処理を行う。
ここで、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)は、Nsw×Na個の要素を含む。方向推定部214は、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定処理を行う。
例えば、図22のように、Tx#[1,1]が水平偏波アンテナ、Tx#[2,1]が垂直偏波アンテナ、Tx#[1,2]が水平偏波アンテナ、Tx#[2,2]が垂直偏波アンテナであり、符号多重においてCode1=[1, 1], Code2=[j -j] を用いる場合、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)は、次式(80)のように表すことができる。
Figure 2023141038000084
<逆旋円偏波に対する方向推定処理>
方向推定部214は、第1~2Nswのドップラ解析部210の出力のうち、逆旋円偏波となる送信の受信信号となる出力を用いて、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、ターゲットの逆旋円偏波に対する方向推定処理を行う。
ここで、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)は、Nsw×Na個の要素を含む。方向推定部214は、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定処理を行う。
例えば、図22のように、Tx#[1,1]が水平偏波アンテナ、Tx#[2,1]が垂直偏波アンテナ、Tx#[1,2]が水平偏波アンテナ、Tx#[2,2]が垂直偏波アンテナであり、符号多重においてCode1=[1, 1], Code2=[j -j]を用いる場合、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)は、次式(81)のように表すことができる。
Figure 2023141038000085
以下、方向推定部214における、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を用いた直線偏波に対する方向推定処理、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)を用いた正旋円偏波に対する方向推定処理、及び、逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)を用いた逆旋円偏波に対する方向推定処理ついての動作は実施の形態1と同様であるため、その動作の説明を省略する。
なお、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれる受信信号を用いて方向推定処理を行ってもよい。この場合、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られる。また、より多くの仮想アンテナを用いた方向推定処理を行うことで、受信SNRが向上し、レーダ装置10bの検出性能を向上できる。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。例えば、すべての仮想受信アンテナを用いて方向推定処理を行う場合、最大(Nt×Na+2×NBF×Na)個の仮想受信アンテナを利用することができ、Nt×Na個よりも多くの仮想受信アンテナを利用できる。
また、方向推定部214は、上記のような送信及び受信とも同種の偏波アンテナを用いた方向推定処理と、異なる種類の偏波を組み合わせた方向推定処理とを行い、これら両方の方向推定結果を方向推定処理結果としてもよい。これにより、偏波に依存度の高い方向推定処理結果と、偏波の依存性が低い方向推定処理結果が得られる。このような方向推定処理の結果を、図に示していない物標識別処理部に入力し、物標の識別処理を行ってもよい。
以上のように、実施の形態1の変形例2において、隣接する異なる直線偏波アンテナのペア(例えば、水平(H),垂直(V)偏波アンテナ)は、90°位相が異なり、直交関係となる直交符号(例えば、直交符号[0°, 90°]及び[0°,-90°])を用いた符号多重を行う。また、このようなペアとなる送信アンテナ109が複数ある場合、レーダ装置10bは、ペア毎の送信時間を切り替えて時分割多重送信する。
このような動作によって、異なる直線偏波アンテナからの送信に加え、2種類の円偏波(例えば、右旋及び左旋の相互に逆方向となる旋回方向の円偏波)による送信による反射波の受信信号が得られ、ターゲットの検出性能又は識別性能を向上できる。
なお、送信ペア間において、一部の送信アンテナ109が重複してもよい。例えば、図23に示すように、送信切替制御部110は、符号化部107において付与される符号長Loc=2の送信周期である2送信周期毎に送信切替部111から出力する2個の送信アンテナを切り替える制御を行う。また、符号化部107では、符号Code1=[1 1]及びCode2=[j -j]が付与される例を示す。
ここで、送信切替制御部110は、図24に示す送信切替制御に関する情報(例えば、「送信切替制御テーブル」)を保持してよい。送信切替制御部110は、送信切替制御テーブルに基づいて、送信アンテナ#1~#4に対する符号の割り当て及び切替制御を行ってもよい。例えば、送信切替制御部110は、送信ペアのインデックスnsw=1では、送信アンテナTx#1、Tx#2を用い、それぞれ符号Code1=[1 1] 及びCode2=[j -j] を付与する。送信切替制御部110は、送信ペアのインデックスnsw=2では、送信アンテナTx#2、Tx#3を用い、それぞれ符号Code1=[1 1] 及びCode2=[j -j] を付与する。また、送信切替制御部110は、送信ペアのインデックスnsw=3では、送信アンテナTx#3、Tx#4を用い、それぞれ符号Code1=[1 1] 及びCode2=[j -j] を付与する。この例では、送信ペアのインデックスnsw=1及び2で、送信ペア間で一部アンテナ(Tx#2)が重複する。また、送信ペアのインデックスnsw=3及び4で、送信ペア間で一部アンテナ(Tx#3)が重複する。
このような送信切替制御部110の制御に基づいて、符号化部107、位相回転部108、及び送信切替部111を同様に制御してよい。
また、レーダ受信部200bにおいても、図21において説明した動作と同様の動作を行う。
以上のように送信ペア間で一部アンテナを重複させることで、方向推定部214において、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc1(fb_cfar, fs_cfar)及び逆旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhc2(fb_cfar, fs_cfar)の要素数を増加でき、正旋円偏波に対する方向推定処理及び、逆旋円偏波に対する方向推定処理の受信SNRを向上できる。また、例えば、アンテナ配置を工夫することで、方向推定時のグレーティングローブ又はサイドローブを低減できる。また、アンテナ配置を工夫することで、開口長を増大し、角度分解能を向上できる。
(実施の形態2)
実施の形態1において、ドップラ多重と符号多重とを組み合わせたMIMO多重送信を用いる動作について説明した。実施の形態1において、異なる直線偏波アンテナが隣接するアンテナ配置となるペア(例えば、水平偏波アンテナ及び垂直偏波アンテナのペア)では、共通のドップラ多重信号(例えば、同一ドップラシフト量)を用いて、符号多重送信が行われる。また、符号多重に用いる符号には、符号要素間で90°位相が異なり、直交関係となる直交符号(例えば、直交符号 [1 1], [j -j])が用いられる。また、異なる直線偏波アンテナが隣接するアンテナ配置となるペアが複数ある場合、それらのペアでは、異なるドップラ多重信号(例えば、異なるドップラシフト量)を用いて符号多重送信が行われる。
これらの動作により、異なる直線偏波アンテナからの送信に加え、2種類の円偏波(例えば、右旋及び左旋の相互に逆方向となる旋回方向の円偏波)による送信による反射波の受信信号が得られ、送信アンテナ109の偏波の種類よりも多い種類の偏波による送信ができ、少ない送信アンテナで、多くの偏波による送信が可能となる。更に、送信アンテナ109の偏波と受信アンテナ202の偏波とを組み合わせることにより、より多くの送受偏波の組み合わせが得られる。また、それぞれの送受信アンテナの偏波の組み合わせ毎に方向推定部214において方向推定処理を行うことで、例えば、物標毎に特徴的な偏波の反射波が得られる場合に、ターゲットの検出性能又は識別性能を向上できる。また、ドップラ多重と符号多重とを組み合わせたMIMO多重送信を用いることで、時分割的にアンテナを遂次切り替えて送信するより送信時間が短縮する効果も得られる。
このような実施の形態1に示したMIMO多重送信を用いた動作に限定されず、別のMIMO多重送信を用いる動作にも同様な効果が得られる。
例えば、本実施の形態では、ドップラ多重送信するMIMO多重送信において、複数の直線偏波アンテナを用いてドップラ多重する送信処理(例えば、異なるドップラシフト料を適用して多重送信する処理)と、隣接するアンテナ配置の異なる直線偏波アンテナを用いたビーム送信をドップラ多重する送信処理とを、時間的に切り替えて送信する動作について説明する。
このような動作でも、異なる直線偏波アンテナからの送信に加え、少なくとも1種類の円偏波(例えば、右旋及び左旋の相互に逆方向となる旋回方向の円偏波のうち、一方の円偏波)による送信による反射波の受信信号が得られる。例えば、送信アンテナの偏波の種類よりも多い種類の偏波による送信ができ、少ない送信アンテナで、多くの偏波による送信が可能となり、実施の形態1に示した効果と同様な効果が得られる。
図25は、本実施の形態におけるレーダ装置10cの構成例を示す。
実施の形態1の構成(図1)に対して、図25では、複数の直線偏波アンテナを用いてドップラ多重する送信と、隣接するアンテナ配置の異なる直線偏波アンテナを用いたビーム送信をドップラ多重する送信とを、時間的に切り替えて制御する送信切替制御部112が追加される。また、図25では、符号化部107の代わりに、隣接するアンテナ配置の異なる直線偏波アンテナに対し円偏波となるウエイト係数乗算、又は、送信しないアンテナに対して送信オフとするためゼロ振幅のウェイト(送信オフ制御と等価な動作)の設定及び乗算を行う送信ウエイト生成部113及び送信ウエイト乗算部114を有する。
以下、実施の形態1と異なる動作を行う部分を主に説明する。
[レーダ送信部100cの構成]
レーダ送信信号生成部101の動作は、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
送信切替制御部112は、送信アンテナTx#1~#Ntと、ビーム送信アンテナNum_BF=1~NBFに対して、ドップラシフト可変設定周期Nswで周期的に割り当てるドップラシフト量に関する情報(以下、一例として「ドップラ多重割り当てテーブル」と呼ぶ)を保持する。送信切替制御部112は、例えば、ドップラ多重割り当てテーブルに基づいて、位相回転量設定部105の各構成部を制御する。また、送信切替制御部112は、ドップラシフト可変設定周期に関する情報(例えば、後述する送信切替インデックスnsw)を出力切替部209に出力する。
図26は、ドップラ多重割り当てテーブルの一例を示す。図26に示すテーブルは、図25に示すアンテナ配置でTx#1~#4(送信アンテナ数Nt=4)、及び、ビーム送信アンテナ数NBF=2で、ドップラシフト可変設定周期Nsw=2の場合のドップラ多重割り当てテーブルである。
図26に示す例では、nsw=1の送信周期において、2つのビーム送信アンテナTx#5(Tx#1及びTx#2を用いて正旋円偏波となるビーム送信)、Tx#6(Tx#3及びTx#4を用いて正旋円偏波となるビーム送信)からドップラ多重数NDM(1)=2でドップラシフト量(DOP1及びDOP)が付与される。
また、図26に示す例では、nsw=2の送信周期において、4つの送信アンテナTx#1~#4からドップラ多重数NDM(2)=4でドップラシフトが付与される。
ここで、nsw=1の送信周期は、mod(m-1,Nsw)+1=1を満たす送信周期である。また、nsw=2の送信周期は、mod(m-1,Nsw)+1=2を満たす送信周期である。ここで、mは送信周期の送信回数を示すインデックスであり、m=1,~,Ncである。以下、nswを「送信切替インデックス」と呼ぶ。
なお、以下では、nswの送信周期におけるドップラ多重数をNDM(nsw)と表記する。ここでは、NDM(1)=2、NDM(2)=4に設定されるが、これに限定されず、以下の条件を満たす設定であればよい。
<ドップラシフト可変設定周期Nswにおけるドップラ多重数の設定条件>
ドップラシフト可変設定周期Nswにおけるドップラ多重数の総和は、次式(82)で示すように、送信アンテナ数Nt及びビーム送信数NBFの和(Nt+NBF)以上となるように設定する。
Figure 2023141038000086
また、送信アンテナ数Nt及びビーム送信数NBFの各送信アンテナから少なくとも1回以上は送信が行われるように設定されてよい。また、各ドップラシフト可変設定周期において、送信アンテナ109と、ビーム送信に用いる送信アンテナとは重複しないように設定されてよい。
なお、各nswの送信周期におけるドップラ多重数NDM(nsw)は、Nt≧NDM(nsw)≧1となるように設定されてよい。ここで、nsw=1,~,Nswである。
例えば、Nsw=3として、3送信周期のドップラシフト可変設定周期としてもよい。例えば、送信切替インデックスnsw=1ではビーム送信アンテナによる正旋円偏波の送信、nsw=2ではビーム送信アンテナによる逆旋円偏波の送信、送信切替インデックスnsw=3では各送信アンテナ109(水平偏波あるいは垂直偏波)から送信、のように設定されてもよい。
図27は、ドップラ多重割り当てテーブルの一例を示す。図27に示すテーブルは、図25に示すアンテナ配置でTx#1~#4(送信アンテナ数Nt=4)、及び、ビーム送信アンテナ数NBF=2で、ドップラシフト可変設定周期Nsw=3の場合のドップラ多重割り当てテーブルである。図27に示す例では、nsw=1の送信周期において、2つのビーム送信アンテナTx#5(Tx#1及びTx#2を用いて正旋円偏波となるビーム送信)、Tx#6(Tx#3及びTx#4を用いて正旋円偏波となるビーム送信)からドップラ多重数NDM(1)=2でドップラシフト量(DOP1及びDOP)が付与される。
また、図27に示す例では、nsw=2の送信周期において、2つのビーム送信アンテナTx#5(Tx#1及びTx#2を用いて逆旋円偏波となるビーム送信)、Tx#6(Tx#3及びTx#4を用いて逆旋円偏波となるビーム送信)からドップラ多重数NDM(1)=2でドップラシフト量(DOP1及びDOP)が付与される。また、図27に示す例では、nsw=3の送信周期において、4つの送信アンテナからドップラ多重数NDM(3)=4でドップラシフトが付与される。
また、例えば、各ドップラシフト可変設定周期で、ビーム送信アンテナによる正旋あるいは逆旋円偏波の送信と、ビーム送信アンテナと異なる送信アンテナ(水平偏波あるいは垂直偏波)から送信のように、円偏波と直線偏波の送信を混在させて送信するように設定されてもよい。例えば、レーダ送信部100cは、少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109からの送信の際に、同一のドップラシフト量、及び、位相が90°異なる送信ウエイトを適用してレーダ送信信号を多重送信する送信処理と、異なるドップラシフト量を適用してレーダ送信信号を多重送信する送信処理と、同一送信周期において行ってもよい。
図28は、ドップラ多重割り当てテーブルの一例を示す。図28に示すテーブルは、図25に示すアンテナ配置でTx#1~#4(送信アンテナ数Nt=4)、及び、ビーム送信アンテナ数NBF=2で、ドップラシフト可変設定周期Nsw=2の場合のドップラ多重割り当てテーブルである。図28に示す例では、nsw=1の送信周期において、一方のビーム送信アンテナTx#5(Tx#1及びTx#2からドップラシフト量DOP1を用いて、正旋円偏波となるビーム送信)と、2つの送信アンテナTx#3及びTx#4(それぞれドップラシフト量DOP2、DOP3を用いた送信)から、ドップラ多重数NDM(2)=3でドップラシフトが付与される。
また、図28に示す例では、nsw=2の送信周期において、他方のビーム送信アンテナTx#6(Tx#3及びTx#4からドップラシフト量DOP3を用いて、正旋円偏波となるビーム送信)と、2つの送信アンテナTx#1及びTx#2(それぞれドップラシフト量DOP1、DOP2を用いた送信)から、ドップラ多重数NDM(2)=3でドップラシフトが付与される。
送信切替制御部112は、例えば、上述したドップラ多重割り当てテーブルに基づいて、ドップラシフト設定部106に対して、以下の制御を行う。
ドップラシフト設定部106は、送信切替制御部112からの制御に基づき、nswの送信周期におけるドップラ多重数NDM(nsw)を用いて、ドップラシフト量DOPndm(nsw)を付与するための位相回転量φndm(nsw)を設定し、送信ウエイト生成部113へ出力する。なお、nswの送信周期において送信しないアンテナ(送信オフのアンテナ)を含めてもよい。ここで、ndm=1,~, NDM(nsw)であり、nsw=1,~,Nswである。
位相回転量設定部105におけるドップラ多重数NDM(nsw)を用いたドップラシフト量DOPndm(nsw)を付与するための位相回転量φndmの設定は、実施の形態1と同様の動作であり、等間隔のドップラシフト量が設定されてもよく、或いは、不等間隔のドップラシフト量が設定されてもよい。
例えば、等間隔のドップラシフト量として、次式(83)を用いてもよい。
Figure 2023141038000087
また、例えば、不等間隔のドップラシフト量として、次式(84)を用いてもよい。
Figure 2023141038000088
ここで、Nint(nsw)は0以上の整数値をとる。
送信ウエイト生成部113は、送信切替制御部112の制御に従って、送信アンテナTx#1から#Nt(送信アンテナ数Nt)に対する振幅及び位相からなる送信ウエイトWntx(nsw)を、以下のように設定する。ここで、ntx=1~Ntである。
(1)ビーム送信アンテナがオンの場合、送信ウエイト生成部113は、送信オンとなるビーム送信アンテナを構成する送信アンテナ109に対して、異なる直線偏波アンテナを利用した円偏波となるウエイト係数を設定する。
異なる直線偏波アンテナを利用した円偏波となる送信ウエイト係数は、例えば、一方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[jη]の送信ウエイトを設定した場合、他方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[j(η+π/2)]あるいはAmp×exp[j(η-π/2)]となる送信ウエイトである。例えば、異なる直線偏波アンテナを利用した円偏波となる送信ウエイトの位相差は+90°あるいは-90°である。このような送信ウエイトの乗算により、右旋あるいは左旋の円偏波となる送信信号が送信される。以下、何れかの円偏波方向を正旋とした場合、もう一方の円偏波方向を逆旋と呼ぶことがある。ここでξは、任意の位相である。
(2)送信オンとなるビーム送信アンテナに含まれず、送信オンとする送信アンテナは、ゼロでない所定の振幅値Ampを付与する。
(1)あるいは(2)に含まれない送信オフとなる送信アンテナは、送信オフとするためゼロ振幅のウェイト(送信オフ制御と等価な動作)が設定される。
送信ウエイト生成部113は、例えば、送信切替制御部112が図26に示すドップラ多重割り当てテーブルに基づいて制御する場合、下記のような送信ウエイトを設定してよい。
nsw=1の場合、
W1(1)=Amp×exp[jη], W2(1)=Amp×exp[j(η+π/2)],
W3(1)=Amp×exp[jη], W4(1)= Amp×exp[j(η+π/2)]
あるいは
W1(1)=Amp×exp[jη], W2(1)=Amp×exp[j(η-π/2)],
W3(1)=Amp×exp[jη], W4(1)= Amp×exp[j(η-π/2)]
nsw=2の場合、W1(2)=W2(2)=W3(2)=W4(2)= Amp
なお、ビーム送信アンテナがオンの場合、送信ウエイト生成部113は、送信オンとなるビーム送信アンテナを構成する送信アンテナ109に対して、異なる直線偏波アンテナを利用した円偏波となる送信ウエイト係数を設定してよい。送信ウエイト生成部113は、例えば、一方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[jη]の送信ウエイトを設定した場合、他方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[j(η+ξ)]あるいはAmp×exp[j(η-ξ)]となる送信ウエイトを設定してもよい。
ここで、ξは、π/6~5π/6ラジアン(=30°~150°)の範囲であってもよい。例えば、送信アンテナ109間の位相偏差が予め補正される場合、ビーム送信によって、ξに依存して送信ビームの主ビーム方向が変化した円偏波が生成される。例えば、ビーム送信する送信アンテナ間隔がλ/2で、ξ=90°の場合、主ビーム方向は正面0°方向となる円偏波が生成される。
また、例えば、ξ=30°の場合、主ビーム方向は正面方向から-15°程度シフトした方向に円偏波が生成される。また、例えば、ξ=150°の場合、主ビーム方向は正面方向から+15°程度シフトした方向に円偏波が生成される。ここで、λは送信アンテナから出力される高周波信号の波長(チャープ信号を用いる場合は、チャープ信号の中心周波数における波長を用いる。)である。
送信ウエイト生成部113は、設定した送信ウエイトにドップラ位相回転量を含めた送信ウエイト(以下、「ドップラ多重送信ウエイト」と呼ぶ)WDntxを設定し、送信ウエイト乗算部114に出力する。
次式(85)は、第m番目の送信周期Trにおける第ntx番目の送信アンテナに対するドップラ多重送信ウエイトWDntxを示す。ここで、ntx=1,~,Ntである。
Figure 2023141038000089
なお、floor[x]は実数xを超えない最大の整数を出力する演算子である。jは虚数単位である。
Nt個の送信ウエイト乗算部114は、送信周期Tr毎に、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号cp(t)に対して、Nt個の送信アンテナ109毎のドップラ多重送信ウエイトWDntx(m)をそれぞれ乗算する。なお、ntx=1,~,Ntである。Nt個の送信ウエイト乗算部114からの出力は、規定された送信電力に増幅後に、送信アレーアンテナ部のNt個の送信アンテナ109から空間に放射される。
例えば、第ntx番目の送信ウエイト乗算部114は、レーダ送信信号生成部101で生成された第m番目のチャープ信号cp(t)に対して、ドップラ多重送信ウエイトWDntx(m)を乗算し、第ntx番目の送信アンテナ109に出力する。例えば、第ntx番目の送信ウエイト乗算部114は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたNc個のチャープ信号cp(t)に対して、ドップラ多重送信ウエイトWDntx(nsw)を、次式(86)のように乗算して、第ntx番目の送信アンテナに出力する。
Figure 2023141038000090
このように、レーダ送信部100cは、少なくとも一組の隣り合う送信アンテナ109(例えば、水平偏波アンテナ及び垂直偏波アンテナのペア)からの送信の際に、同一のドップラシフト量、及び、位相が90°異なる送信ウエイトを適用してレーダ送信信号を多重送信する送信処理と、異なるドップラシフト量を適用してレーダ送信信号を多重送信する送信処理と、を時間的に切り替える。例えば、位相が90°異なる送信ウエイトの使用により、実施の形態1と同様、レーダ装置10cは、多重送信する送信アンテナ数Ntを超える送信アンテナを利用可能となり、送信アンテナ109の偏波(例えば、水平偏波及び垂直偏波)と異なる偏波(例えば、円偏波)の送信アンテナを利用可能となる。
[レーダ受信部200cの構成]
図25において、レーダ受信部200cの動作は、ミキサ部204からビート周波数解析部208までの動作は、実施の形態1と同様である。
出力切替部209は、送信切替制御部112から入力される送信切替インデックスnswに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Nsw個のドップラ解析部210のうち、nsw番目のドップラ解析部210に選択的に切り替えて出力する。例えば、出力切替部209は、第m番目の送信周期Trにおいて、mod(m-1, Nsw)+1番目のドップラ解析部210を選択する。ここで、nsw=1,~,Nswである。
信号処理部206は、Nsw個のドップラ解析部210-1~210-Nsw(又は、第1~第Nswのドップラ解析部210と呼ぶ)を有する。例えば、第nsw番目のドップラ解析部210には、出力切替部209によってNsw回の送信周期(Nsw×Tr)毎にデータが入力される。第nsw番目のドップラ解析部210は、Nc回の送信周期のうち、Ncsub=Nc/Nsw回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から入力されるビート周波数応答RFT(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。なお、NcはNswの整数倍に設定する。
例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用できる。この場合、FFTサイズはNcsubであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Nsw×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Nsw×Ncsub×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ncsub/2,~, 0,~, Ncsub/2-1である。
例えば、第z番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT nsw(fb, fs)は、式(39)において、NcodeをNcsubに置き換え、LocをNswに置き換え、nocをnswに置き換えた式で表され、これら以外は、実施の形態1と同様な動作である。
図25において、CFAR部211は、第1~第Na番目の信号処理部206それぞれのNsw個のドップラ解析部210の出力を用いて、CFAR処理(例えば、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部211は、例えば、次式(87)のように、第1~第Na番目の信号処理部206におけるnsw番目のドップラ解析部210の出力VFTz nsw(fb, fs)毎に、電力加算したPowerFTnsw(fb, fs)、を用いて、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。CFAR部211は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar(nsw)、ドップラ周波数インデックスfs_cfar(nsw)、及び、受信電力情報PowerFTnsw(fb_cfar(nsw), fs_cfar(nsw))をドップラ多重分離部216に出力する。
Figure 2023141038000091
又は、各nswにおけるドップラ多重数が同一(NDM(1)=…=NDM(Nsw))で、各nswにおけるドップラシフト量も同一である場合、CFAR部211は、次式(88)のように、各nswのドップラ解析部210の出力をすべて電力加算したPowerFT(fb, fs)を出力して、CFAR処理を共通に行ってもよい。CFAR部211は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT (fb_cfar, fs_cfar)をドップラ多重分離部に出力する。
Figure 2023141038000092
なお、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmとして、例えば、式(83)を用いる場合、ドップラ解析部210の出力におけるドップラ周波数領域のドップラシフト量の間隔は等間隔となり、ドップラ周波数インデックスの間隔でドップラシフト量の間隔ΔFD(nsw)を表すと、ΔFD(nsw)=Ncsub/NDM(nsw)となる。そのため、ドップラ解析部210の出力において、ドップラ周波数領域では、ドップラシフト多重される各信号に対して、ΔFDの間隔でピークがそれぞれ検出され、実施の形態1におけるCFAR部211の処理として説明したドップラ領域圧縮CFAR処理を適用できる。この場合、fs_comp=-ΔFD(nsw)/2,~,- ΔFD(nsw)/2-1である。また、CFAR部211は、例えば、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar(nsw)をドップラ多重分離部216に出力する。
また、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmとして、例えば、式(84)を用いる場合、ドップラ解析部210の出力におけるドップラ周波数領域のドップラシフト量の間隔は不等間隔となり、ドップラ周波数インデックスの間隔でドップラシフト量の間隔ΔFD(nsw)の整数倍となる。ここで、ΔFD(nsw)=Ncsub/(NDM(nsw)+Nint(nsw))である。そのため、ドップラ解析部210の出力において、ドップラ周波数領域では、ドップラシフト多重される各信号に対して、ΔFD(nsw)の間隔あるいはΔFD(nsw)の整数倍の間隔でピークがそれぞれ検出され、実施の形態1におけるCFAR部211の処理として説明したドップラ領域圧縮CFAR処理を適用できる。この場合、fs_comp=-ΔFD(nsw)/2,~,- ΔFD(nsw)/2-1である。また、CFAR部211は、例えば、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar(nsw)をドップラ多重分離部216に出力する。
以下では、ドップラ領域圧縮CFAR処理を適用した場合の動作を説明する。
図25において、第nsw番目のドップラ多重分離部216は、CFAR部211から入力される距離インデックスfb_cfar(nsw)及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar(nsw)、及び第nsw番目のドップラ解析部210の出力に基づいて、ドップラ多重信号を分離する。
例えば、式(84)を用いた不等間隔ドップラ多重信号の分離は、特許文献5に記載されており詳細な説明は省略する。また、ドップラ多重分離部216は、距離インデックスfb_cfar(nsw)及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar(nsw)におけるnsw番目のドップラ解析部210の出力VFT nsw(fb_cfar, fs_comp_cfar(nsw))及びVFT nsw(fb_cfar, fs_comp_cfar(nsw)+ΔFD(nsw)×(整数倍))となるドップラ周波数インデックスの電力情報を用いることで、ドップラ多重信号DOPndm(nsw)を特定する。また、ドップラ多重分離部216は、ドップラ多重割り当てテーブルに基づいて、ドップラ多重信号に割り当てた送信アンテナ109の検出が可能となる。また、ドップラ多重分離部216は、物標のドップラ周波数を±1/(2Nsw×Tr)の範囲で検出できる。
また、例えば、式(83)を用いた等間隔ドップラ多重信号の分離において、ドップラ多重分離部216は、物標のドップラ周波数を±1/(2Nsw×NDM(nsw)×Tr)の範囲とし、距離インデックスfb_cfar(nsw)及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar(nsw)におけるnsw番目のドップラ解析部210の出力VFT nsw(fb_cfar, fs_comp_cfar(nsw))及びVFT nsw(fb_cfar, fs_comp_cfar(nsw)+ΔFD(nsw)×(整数倍))となるドップラ周波数インデックスを用いて、ドップラ多重信号DOPndm(nsw)を特定する。また、ドップラ多重分離部216は、ドップラ多重割り当てテーブルに基づいて、ドップラ多重信号に割り当てた送信アンテナ109の検出が可能となる。
以下では、CFAR部211から入力される距離インデックスfb_cfar(nsw)及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar(nsw)に対して、検出した物標のndm番目のドップラ多重信号のドップラ周波数をFDP(ndm, fs_comp_cfar(nsw))と表記する。
以上のような動作により、第nsw番目のドップラ多重分離部216は、CFAR部211から入力される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar及び第nsw番目のドップラ解析部210の出力に基づいてドップラ多重分離を行う。そして、第nsw番目のドップラ多重分離部216は、距離インデックスfb_cfar及びNDM(nsw)個のドップラ多重信号のドップラ周波数成分の第nsw番目のドップラ解析部210の出力VFT nsw(fb_cfar, FDP(1,fs_comp_cfar)), VFT nsw(fb_cfar, FDP(2,fs_comp_cfar)),~, VFT nsw(fb_cfar, FDP(NDM(nsw),fs_comp_cfar)を、ドップラ多重信号の分離受信信号として方向推定部214に出力する。ここで、z=1,~,Naであり、nsw=1,~,Nswである。
図25において、方向推定部214は、ドップラ多重分離部216から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarに対するドップラ多重信号の分離受信信号に基づいてターゲットの方向推定処理を行う。
方向推定部214は、ドップラ多重信号の分離受信信号である各nsw番目のドップラ解析部210の出力VFT nsw(fb_cfar, FDP(1,fs_comp_cfar)), VFT nsw(fb_cfar, FDP(2,fs_comp_cfar)),~, VFT nsw(fb_cfar, FDP(NDM(nsw),fs_comp_cfar)毎に、各仮想受信アレー相関ベクトルhsnsw(b_cfar, fs_comp_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。式(89)に示すように、各仮想受信アレー相関ベクトルhsnsw(b_cfar, fs_comp_cfar)は、NDM(nsw)×Na個の要素を含む。方向推定部214は、Nsw個の仮想受信アレー相関ベクトルhs1(fb_cfar, fs_comp_cfar)~hsNsw(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定処理を行う。
Figure 2023141038000093
方向推定部214は、Nsw個の仮想受信アレー相関ベクトルhs1(fb_cfar, fs_comp_cfar)~hsNsw(fb_cfar, fs_comp_cfar)から、所定の送信アンテナの偏波と受信アンテナの偏波との組み合わせとなる要素を抽出し、抽出した要素からなる仮想受信アレー相関ベクトルを用いて方向推定処理を行ってもよい。これにより、所定の送信アンテナの偏波及び受信アンテナの偏波毎の方向推定の結果を得ることができる。
例えば、送信切替制御部112が上述した図26のドップラ多重割り当てテーブルに基づいて制御を行う場合、Nsw=2個の仮想受信アレー相関ベクトルhs1(fb_cfar, fs_comp_cfar)及びhs(fb_cfar, fs_comp_cfar)が得られる。
ここで、nsw=1となる仮想受信アレー相関ベクトルhs1(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、次式(90)のような要素を含み、ドップラ多重数NDM(1)=2である。また、DOP1及びDOP2を用いてドップラ多重した信号は正旋円偏波の送信信号に対する反射受信信号であるため、方向推定部214は、正旋円偏波に対する方向推定処理において、仮想受信アレー相関ベクトルhs1(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて方向推定処理を行う。
Figure 2023141038000094
また、nsw=2 となる仮想受信アレー相関ベクトルhs2(fb_cfar, fs_comp_cfar)は、次式(91)のような要素を含み、ドップラ多重数NDM(1)=4である。また、DOP1、DOP2、DOP3及びDOP4を用いてドップラ多重した信号は水平偏波あるいは垂直偏波の送信信号に対する反射受信信号であるため、方向推定部214は、直線偏波に対する方向推定処理において、仮想受信アレー相関ベクトルhs(fb_cfar, fs_comp_cfar)を用いて方向推定処理を行う。
Figure 2023141038000095
以下、方向推定部214における、仮想受信アレー相関ベクトルhs2(fb_cfar, fs_cfar)を用いた直線偏波に対する方向推定処理、正旋円偏波仮想受信アレー相関ベクトルhs2(fb_cfar, fs_cfar)を用いた正旋円偏波に対する方向推定処理は実施の形態1と同様であり、その動作の説明を省略する。
なお、方向推定部214は、異なる種類の偏波の組み合わせが含まれた受信信号を用いて方向推定処理を行ってもよい。この場合、偏波に依存性が低い方向推定結果が得られ、より多くの仮想アンテナを用いた方向推定処理を行うことで、受信SNRが向上するため、レーダ装置10cの検出性能が向上する。また、利用可能な仮想受信アンテナの最大限の開口長を用いた方向推定処理を行うため、角度分解能も向上する。
また、方向推定部214は、上述した送信及び受信とも同種の偏波アンテナを用いた方向推定処理と、異なる種類の偏波を組み合わせた方向推定処理とを行い、これら両方の方向推定結果を方向推定処理結果としてもよい。これにより、偏波に依存度の高い方向推定処理結果と、偏波の依存性が低い方向推定処理結果とが得られる。このような方向推定処理の結果を、図に示していない物標識別処理部に入力し、物標の識別処理を行ってもよい。
なお、本実施の形態2において用いる送信ウエイトWntx(nsw)は、送信アンテナ109間の位相偏差が予め補正される場合の符号を表している。従って、ビーム送信アンテナがオンの場合、送信ウエイト生成部113は、ビーム送信アンテナを構成する2個の送信アンテナの各給電点における位相差は、各送信アンテナに付与された送信ウエイト間の位相差となる。
ここで、ビーム送信アンテナを構成する2個の送信アンテナに付与する送信ウエイトとして、一方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[jη]の送信ウエイトを設定し、他方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[j(η+π/2)]あるいはAmp×exp[j(η-π/2)]となる送信ウエイトを付与する場合、送信周期毎に2個の送信アンテナの給電点間の位相差は、90°あるいは-90°となる。
同様に、ビーム送信アンテナを構成する2個の送信アンテナに付与する送信ウエイトとして、一方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[jη]の送信ウエイトを設定し、他方の送信アンテナ109に対し、Amp×exp[j(η+ξ)]あるいはAmp×exp[j(η-ξ)]となる送信ウエイトを付与する場合、送信周期毎に2個の送信アンテナの給電点間の位相差は、ξあるいは-ξとなる。ここで、例えば、ξはπ/6~5π/6ラジアン(=30°~150°)の範囲を用いてよい。
以上、本開示の各実施の形態について説明した。
[他の実施の形態]
(1)図15~図18に示すアンテナ配置例では、一例として、送信アンテナ109の偏波の種類が左から「H」、「V」、「H」、「V」の並びについて説明したが、送信アンテナ109の配置は、これに限定されず、隣り合う送信アンテナ109が水平偏波アンテナ(H)と垂直偏波アンテナ(V)とのペアとなる配置であればよい。
例えば、図15~図18に示すアンテナ配置において、送信アンテナ109の偏波の種類が左から「H」、「V」、「V」、「H」の並びでもよい。この並びの場合、例えば、アイソレーションが高くなる。また、例えば、図15~図18に示すアンテナ配置において、送信アンテナ109の偏波の種類が左から「V」、「H」、「H」、「V」の並びでもよい。
(2)本開示の一実施例に係るレーダ装置において、レーダ送信部及びレーダ受信部は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。また、本開示の一実施例に係るレーダ受信部において、方向推定部と、他の構成部とは、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
(3)本開示の一実施例において用いた、送信アンテナ数Nt、受信アンテナ数Na、ドップラ多重数NDM、符号数NCM、ビーム送信アンテナ数NBF、送信アンテナのペア数、ドップラシフト可変設定周期といったパラメータの数値は一例であり、それらの値に限定されない。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
<本開示のまとめ>
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、第1の直線偏波を放射する第1の送信アンテナ、及び、前記第1の送信アンテナに隣り合い、前記第1の直線偏波と異なる第2の直線偏波を放射する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、各送信周期における前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の位相がξ又は-ξ異なる位相回転量が付与された送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備する。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、複数の直交符号を用いて、前記送信信号を符号多重送信し、前記複数の直交符号のうち、前記第1の送信アンテナから送信される前記送信信号に対する第1の直交符号と、前記第2の送信アンテナから送信される前記送信信号に対する第2の直交符号との間において、各送信周期に対応する符号要素の位相はξ又は-ξ異なる。
本開示の一実施例において、前記ξは、30°から150°の範囲の何れかの値である。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナに同一のドップラシフト量を設定する。
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれる場合、前記送信回路は、前記複数のペアのそれぞれに異なるドップラシフト量を設定する。
本開示の一実施例において、奇数番目及び偶数番目の何れか一方の送信周期において、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナから送信される前記送信信号がターゲットに反射した反射波信号を用いてドップラ解析を行う第1のドップラ解析回路と、奇数番目及び偶数番目の何れか他方の送信周期において、前記反射波信号を用いてドップラ解析を行う第2のドップラ解析回路と、前記第1のドップラ解析回路の出力及び前記第2のドップラ解析回路の出力の何れか一方を用いて、円偏波の信号を分離する第1の分離回路と、前記第1のドップラ解析回路の出力及び前記第2のドップラ解析回路の出力の双方を用いて、前記第1の直線偏波及び前記第2の直線偏波の少なくとも一つの信号を分離する第2の分離回路と、を更に具備する。
本開示の一実施例において、複数の受信アンテナ、を更に具備し、前記複数の受信アンテナは、前記第1の直線偏波、前記第2の直線偏波、第1の方向の円偏波、及び、前記第1の方向と逆の第2の方向の円偏波の少なくとも一つの偏波を受信するアンテナを含む。
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれる場合、前記送信回路は、前記複数のペアのそれぞれから前記送信信号を時分割多重送信する。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナのそれぞれからの送信の際に、同一のドップラシフト量、及び、位相がξ又は-ξ異なる送信ウエイトを適用して前記送信信号を多重送信する第1送信処理と、異なるドップラシフト量を適用して前記送信信号を多重送信する第2送信処理と、を時間的に切り替える。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナのそれぞれからの送信の際に、同一のドップラシフト量、及び、位相がξ又は-ξ異なる送信ウエイトを適用して前記送信信号を多重送信する第1送信処理と、異なるドップラシフト量を適用して前記送信信号を多重送信する第2送信処理と、を同一送信周期において行う。
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれる場合、前記送信回路は、前記第1送信処理において、前記複数のペアのそれぞれに異なるドップラシフト量を設定する。
本開示の一実施例において、複数の受信アンテナ、を更に具備し、前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれ、前記複数のペアのそれぞれの位相中心の間隔と、前記複数の受信アンテナのうちの隣り合う受信アンテナ間の間隔との差は、前記送信信号の波長に基づく規定値である。
本開示の一実施例において、前記規定値は、前記波長の0.45倍から0.8倍の範囲の何れかの値である。
本開示の一実施例において、複数の受信アンテナ、を更に具備し、第1の方向において、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間隔と、前記複数の受信アンテナのうちの隣り合う受信アンテナ間の間隔と、は前記送信信号の波長に基づく第1の規定値であり、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記複数の受信アンテナのうち、一部の受信アンテナと、他の受信アンテナとの間隔は、前記送信信号の波長に基づく第2の規定値である。
本開示の一実施例において、前記第1の規定値及び前記第2の規定値のそれぞれは、前記波長の0.45倍から0.8倍の範囲の何れかの値である。
本開示は、広角範囲を検知するレーダ装置として好適である。
10,10a,10b,10c レーダ装置
100,100a,100b,100c レーダ送信部
101 レーダ送信信号生成部
102 送信信号生成制御部
103 変調信号発生部
104 VCO
105 位相回転量設定部
106 ドップラシフト設定部
107 符号化部
108 位相回転部
109 送信アンテナ
110,112 送信切替制御部
111 送信切替部
113 送信ウエイト生成部
114 送信ウエイト乗算部
200 レーダ受信部
201 アンテナ系統処理部
202 受信アンテナ
203 受信無線部
204 ミキサ部
205 LPF
206 信号処理部
207 AD変換部
208 ビート周波数解析部
209 出力切替部
210 ドップラ解析部
211 CFAR部
212 符号化ドップラ多重分離部
213,216 ドップラ多重分離部
214 方向推定部
215 符号多重分離部
300 測位出力部

Claims (15)

  1. 第1の直線偏波を放射する第1の送信アンテナ、及び、前記第1の送信アンテナに隣り合い、前記第1の直線偏波と異なる第2の直線偏波を放射する第2の送信アンテナを含む複数の送信アンテナと、
    各送信周期における前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間の位相がξ又は-ξ異なる位相回転量が付与された送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、
    を具備するレーダ装置。
  2. 前記送信回路は、複数の直交符号を用いて、前記送信信号を符号多重送信し、
    前記複数の直交符号のうち、前記第1の送信アンテナから送信される前記送信信号に対する第1の直交符号と、前記第2の送信アンテナから送信される前記送信信号に対する第2の直交符号との間において、各送信周期に対応する符号要素の位相はξ又は-ξ異なる、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  3. 前記ξは、30°から150°の範囲の何れかの値である、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  4. 前記送信回路は、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナに同一のドップラシフト量を設定する、
    請求項2に記載のレーダ装置。
  5. 前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれる場合、前記送信回路は、前記複数のペアのそれぞれに異なるドップラシフト量を設定する、
    請求項2に記載のレーダ装置。
  6. 奇数番目及び偶数番目の何れか一方の送信周期において、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナから送信される前記送信信号がターゲットに反射した反射波信号を用いてドップラ解析を行う第1のドップラ解析回路と、
    奇数番目及び偶数番目の何れか他方の送信周期において、前記反射波信号を用いてドップラ解析を行う第2のドップラ解析回路と、
    前記第1のドップラ解析回路の出力及び前記第2のドップラ解析回路の出力の何れか一方を用いて、円偏波の信号を分離する第1の分離回路と、
    前記第1のドップラ解析回路の出力及び前記第2のドップラ解析回路の出力の双方を用いて、前記第1の直線偏波及び前記第2の直線偏波の少なくとも一つの信号を分離する第2の分離回路と、を更に具備する、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  7. 複数の受信アンテナ、を更に具備し、
    前記複数の受信アンテナは、前記第1の直線偏波、前記第2の直線偏波、第1の方向の円偏波、及び、前記第1の方向と逆の第2の方向の円偏波の少なくとも一つの偏波を受信するアンテナを含む、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  8. 前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれる場合、前記送信回路は、前記複数のペアのそれぞれから前記送信信号を時分割多重送信する、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  9. 前記送信回路は、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナのそれぞれからの送信の際に、
    同一のドップラシフト量、及び、位相がξ又は-ξ異なる送信ウエイトを適用して前記送信信号を多重送信する第1送信処理と、
    異なるドップラシフト量を適用して前記送信信号を多重送信する第2送信処理と、
    を時間的に切り替える、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  10. 前記送信回路は、前記第1の送信アンテナ及び前記第2の送信アンテナのそれぞれからの送信の際に、
    同一のドップラシフト量、及び、位相がξ又は-ξ異なる送信ウエイトを適用して前記送信信号を多重送信する第1送信処理と、
    異なるドップラシフト量を適用して前記送信信号を多重送信する第2送信処理と、
    を同一送信周期において行う、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  11. 前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれる場合、前記送信回路は、前記第1送信処理において、前記複数のペアのそれぞれに異なるドップラシフト量を設定する、
    請求項8に記載のレーダ装置。
  12. 複数の受信アンテナ、を更に具備し、
    前記複数の送信アンテナに、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとのペアが複数含まれ、
    前記複数のペアのそれぞれの位相中心の間隔と、前記複数の受信アンテナのうちの隣り合う受信アンテナ間の間隔との差は、前記送信信号の波長に基づく規定値である、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  13. 前記規定値は、前記波長の0.45倍から0.8倍の範囲の何れかの値である、
    請求項12に記載のレーダ装置。
  14. 複数の受信アンテナ、を更に具備し、
    第1の方向において、前記第1の送信アンテナと前記第2の送信アンテナとの間隔と、前記複数の受信アンテナのうちの隣り合う受信アンテナ間の間隔と、は前記送信信号の波長に基づく第1の規定値であり、
    前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記複数の受信アンテナのうち、一部の受信アンテナと、他の受信アンテナとの間隔は、前記送信信号の波長に基づく第2の規定値である、
    請求項1に記載のレーダ装置。
  15. 前記第1の規定値及び前記第2の規定値のそれぞれは、前記波長の0.45倍から0.8倍の範囲の何れかの値である、
    請求項14に記載のレーダ装置。
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