MIMOレーダは、例えば、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重した信号(レーダ送信波)を複数の送信アンテナ(又は送信アレーアンテナと呼ぶ)から送信し、周辺物体において反射された信号(レーダ反射波)を複数の受信アンテナ(又は受信アレーアンテナと呼ぶ)を用いて受信し、それぞれの受信信号から、多重された送信信号を分離して受信する。このような処理により、MIMOレーダは、送信アンテナ数と受信アンテナ数との積で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。
また、MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおける素子間隔を適切に配置することにより、仮想的にアンテナ開口を拡大し、角度分解能の向上を図ることができる。
例えば、特許文献1には、MIMOレーダの多重送信方法として、送信アンテナ毎に送信時間をずらして信号を送信する時分割多重送信を用いたMIMOレーダ(以下、「時分割多重MIMOレーダ」と呼ぶ)が開示されている。時分割多重送信は、周波数多重送信又は符号多重送信と比較し、簡易な構成で実現できる。また、時分割多重送信は、送信時間の間隔を十分に広げることにより、送信信号間の直交性を良好に保つことができる。時分割多重MIMOレーダは、送信アンテナを規定された周期で逐次的に切り替えながら、送信信号の一例である送信パルスを出力する。時分割多重MIMOレーダは、送信パルスが物体で反射された信号を複数の受信アンテナで受信し、受信信号と送信パルスとの相関処理後に、例えば、空間的なFFT(Fast Fourier Transforma)処理(反射波の到来方向推定処理)を行う。
時分割多重MIMOレーダは、送信信号(例えば送信パルス又はレーダ送信波)を送信する送信アンテナを、規定された周期で逐次的に切り替えていく。したがって、時分割多重送信は、周波数分割送信又は符号分割送信と比較し、全ての送信アンテナから送信信号を送信し終えるまでに要する時間が長くなり得る。このため、例えば、特許文献2のように、各送信アンテナから送信信号を送信し、それらの受信位相変化からドップラ周波数(つまり、ターゲットの相対速度)の検出を行う場合、ドップラ周波数を検出するためにフーリエ周波数解析を適用するにあたり、受信位相変化の観測の時間間隔(例えば、サンプリング間隔)が長くなる。よって、折り返しなしでドップラ周波数を検出できるドップラ周波数範囲(つまり、検出できるターゲットの相対速度範囲)が低減する。
また、折り返しなしでドップラ周波数を検出できるドップラ周波数範囲(換言すると、相対速度範囲)を超えるターゲットからの反射波信号が想定される場合、レーダ装置は、反射波信号が折り返し成分か否かを特定できず、ドップラ周波数(換言すると、ターゲットの相対速度)の曖昧性(不確定性、Ambiguity)が生じる。
例えば、レーダ装置が、Nt個の送信アンテナを周期Trで逐次的に切り替えながら送信信号(送信パルス)を送信する場合、全ての送信アンテナから送信信号を送信し終えるまでにTr×Ntの送信時間が必要となる。このような時分割多重送信をNc回繰り返して、ドップラ周波数の検出のためにフーリエ周波数解析を適用すると、折り返しなしでドップラ周波数を検出できるドップラ周波数範囲は、サンプリング定理より、±1/(2Tr×Nt)となる。したがって、折り返しなしでドップラ周波数を検出できるドップラ周波数範囲は、送信アンテナ数Ntが増大するほど低減し、より低速な相対速度でもドップラ周波数の曖昧性が生じやすくなる。
時分割多重MIMOレーダには上述したようなドップラ周波数の曖昧性が、より低速な相対速度で生じる恐れがあるため、以下では、一例として、複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する方法に着目する。
複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する方法として、例えば、受信側においてドップラ周波数領域において複数の送信信号を分離できるように信号を送信する方法(以下、ドップラ多重送信と呼ぶ)がある(例えば、非特許文献3を参照)。
ドップラ多重送信において、送信側では、例えば、基準となる送信アンテナから送信される送信信号に対して、基準となる送信アンテナと異なる送信アンテナから送信される送信信号に、受信信号のドップラ周波数帯域幅よりも大きなドップラシフト量が与えられ、複数の送信アンテナから送信信号が同時に送信される。ドップラ多重送信において、受信側では、ドップラ周波数領域においてフィルタリングすることにより、各送信アンテナから送信された送信信号が分離して受信される。
ドップラ多重送信では、複数の送信アンテナから送信信号を同時に送信することにより、時分割多重送信と比較して、ドップラ周波数(又は、相対速度)の検出のためにフーリエ周波数解析を適用する際の受信位相変化を観測する時間間隔を短縮できる。しかし、ドップラ多重送信では、ドップラ周波数領域においてフィルタリングすることにより各送信アンテナの送信信号を分離するため、送信信号あたりの実効的なドップラ周波数帯域幅が制限されてしまう。
例えば、ドップラ多重送信において、レーダ装置が、Nt個の送信アンテナから周期Trで送信信号を送信する場合について説明する。このようなドップラ多重送信をNc回繰り返して、ドップラ周波数(又は、相対速度)の検出のためにフーリエ周波数解析を適用すると、折り返しなしでドップラ周波数を検出できるドップラ周波数範囲は、サンプリング定理より±1/(2×Tr)となる。つまり、ドップラ多重送信において折り返しなしでドップラ周波数を検出できるドップラ周波数範囲は、時分割多重送信の場合(例えば、±1/(2Tr×Nt))と比較してNt倍に拡大される。
ただし、ドップラ多重送信では、上述したように、ドップラ周波数領域においてフィルタリングすることによって送信信号が分離される。そのため、送信信号あたりの実効的なドップラ周波数帯域幅は、1/(Tr×Nt)に制限されるので、時分割多重送信を行った場合と同様なドップラ周波数範囲となる。また、ドップラ多重送信において、送信信号あたりの実効的なドップラ周波数範囲を超えたドップラ周波数帯域では、当該送信信号と異なる他の送信信号のドップラ周波数帯域の信号と混在するため、送信信号を正しく分離できない可能性がある。
そこで、本開示に係る一実施例では、ドップラ多重送信において、曖昧性が生じないドップラ周波数の範囲を拡大させる方法について説明する。これにより、本開示に係る一実施例のレーダ装置は、より広いドップラ周波数範囲において、物標の検知精度を向上できる。
以下、本開示の一実施例に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
以下では、レーダ装置において、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから同時に多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成(換言すると、MIMOレーダ構成)について説明する。
また、以下では、一例として、チャープ(chirp)パルスのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式(例えば、チャープパルス送信(fast chirp modulation)とも呼ぶ)の構成について説明する。ただし、変調方式は、周波数変調に限定されない。例えば、本開示の一実施例は、パルス列を位相変調又は振幅変調して送信するパルス圧縮レーダを用いたレーダ方式についても適用可能である。
また、レーダ装置は、ドップラ多重送信を行う。更に、レーダ装置は、ドップラ多重送信においてドップラ多重数分の異なる位相回転(換言すると、位相シフト)を付与した信号(以下、「ドップラ多重送信信号」と呼ぶ)を、符号化(例えば、CDM(Code Division Multiplexing))して、多重送信する(以下、「符号化ドップラ多重(Coded Doppler Multiplexing)」と呼ぶ)。
[レーダ装置の構成]
図1は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成例を示すブロック図である。
レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、を有する。
レーダ送信部100は、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、複数の送信アンテナ108(例えば、Nt個)によって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期にて送信する。
レーダ受信部200は、物標(ターゲット。図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202−1〜202−Naを含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、例えば、物標の有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(換言すると相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(換言すると、測位情報)を出力する。
なお、物標はレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石などを含む。
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101と、位相回転量設定部104と、位相回転部107と、送信アンテナ108と、を有する。
レーダ送信信号生成部101は、レーダ送信信号を生成する。レーダ送信信号生成部101は、例えば、変調信号発生部102及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)103を有する。以下、レーダ送信信号生成部101における各構成部について説明する。
変調信号発生部102は、例えば、図2に示すように、のこぎり歯形状の変調信号を周期的に発生させる。ここで、レーダ送信周期をTrとする。
VCO103は、変調信号発生部102から出力されるレーダ送信信号(変調信号)に基づいて、周波数変調信号(以下、例えば、周波数チャープ信号又はチャープ信号と呼ぶ)を位相回転部107、及び、レーダ受信部200(後述するミキサ部204)へ出力する。
位相回転量設定部104は、位相回転部107における位相回転量(換言すると、符号化ドップラ多重送信に対応する位相回転量)を設定する。位相回転量設定部104は、例えば、ドップラシフト設定部105と、符号化部106と、を有する。
ドップラシフト設定部105は、例えば、レーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して付与するドップラシフト量に対応する位相回転量を設定する。
符号化部106は、符号化に対応する位相回転量を設定する。符号化部106は、例えば、ドップラシフト設定部105から出力される位相回転量と符号化に対応する位相回転量とに基づいて、位相回転部107に対する位相回転量を算出し、位相回転部107に出力する。また、符号化部106は、例えば、符号化に用いる符号系列(例えば、直交符号系列の各要素)に関する情報をレーダ受信部200(例えば、出力切替部209)に出力する。
位相回転部107は、VCO103から入力されるチャープ信号に対して、符号化部106から入力される位相回転量を付与し、位相回転後の信号を送信アンテナ108に出力する。例えば、位相回転部107は、位相器及び位相変調器等を含む(図示せず)。位相回転部107の出力信号は、規定された送信電力に増幅され各送信アンテナ108から空間に放射される。換言すると、レーダ送信信号は、ドップラシフト量と直交符号系列とに対応する位相回転量が付与されることによって、複数の送信アンテナ108から多重送信される。
次に、位相回転量設定部104における位相回転量の設定方法の一例について説明する。
ドップラシフト設定部105は、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmを設定して、符号化部106へ出力する。ここで、ndm=1,…, NDMである。NDMは、異なるドップラシフト量の設定数であり、以下では、「ドップラ多重数」と呼ぶ。
レーダ装置10では、符号化部106による符号化を併用するため、ドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナ108の数Ntよりも少なく設定してよい。なお、ドップラ多重数NDMは2以上とする。
ドップラシフト量DOP
1、DOP
2,..,DOP
DMには、例えば、0以上2π未満の位相回転範囲を分割して、それぞれ異なる位相回転量が割り当てられる。例えば、ドップラシフト量DOP
ndmを付与するための位相回転量φ
ndmは、次式(1)のように割り当てられる。なお、以下では、角度はラジアン単位で示している。
式(1)において、例えば、ドップラ多重数NDM=2の場合、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=0、及び、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=πとなる。同様に、式(1)において、例えば、ドップラ多重数NDM=4の場合、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=0、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=π/2、ドップラシフト量DOP3を付与する位相回転量φ3=π、ドップラシフト量DOP4を付与する位相回転量φ4=3π/2となる。換言すると、各ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmは等間隔である。
なお、ドップラシフト量DOP1、DOP2,..,DOPDMを付与する位相回転量の割り当ては、このような割り当て方法に限定されない。例えば、式(1)に示す位相回転量の割り当てをシフトさせてもよい。例えば、φndm=2π(ndm)/NDMのように位相回転量を割り当ててもよい。または、位相回転量の割り当てテーブルを用いて、ドップラシフト量DOP1、DOP2,..,DOPDMに対して位相回転量φ1、φ2,.., φDMをランダム的に割り当ててもよい。
符号化部106は、ドップラシフト設定部105から出力されるNDM個のドップラシフト量を付与する位相回転量φ1,…,φNDMのそれぞれに対して、1個、又は、NCM個以下の複数の直交符号系列に基づく位相回転量を設定する。また、符号化部106は、ドップラシフト量及び直交符号系列の双方に基づく位相回転量、すなわち、符号化したドップラ多重信号を生成する「符号化ドップラ位相回転量」を設定し、位相回転部107に出力する。
以下、符号化部106における動作の一例について説明する。
例えば、符号化部106は、符号長Locからなる符号数(換言すると、符号多重数)NCM個の直交符号系列を用いる。
以下では、符号長LocからなるNCM個の直交符号系列をCodencm={OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc) }と表記する。OCncm(noc)は第ncm番目の直交符号系列Codencmにおけるnoc番目の符号要素を表す。ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1,…,Locである。
符号化部106において用いる直交符号系列は、例えば、互いに直交する(無相関となる)符号である。例えば、直交符号系列は、Walsh-Hadamard-符号でもよい。この場合、符号数N
CM個の直交符号系列を生成する符号長L
OCは、次式(2)で表される。
ここで、ceil[x]は実数x以上の最小の整数を出力する演算子(天井関数)である。
例えば、NCM=2の場合、Walsh-Hadamard-符号の符号長Loc=2であり、直交符号系列は、Code1={1,1}、Code2={1,-1}となる。なお、直交符号系列を構成する符号要素が1の場合、1=exp(j0)より、その位相は0である。また、直交符号系列を構成する符号要素が-1の場合、-1=exp(jπ)より、その位相はπである。
また、例えば、NCM=4の場合、符号長Loc=4であり、直交符号系列は、Code1={1,1, 1, 1}、Code2={1,-1, 1, -1}, Code3={1,1, -1, -1}、及び、Code4={1,-1, -1, 1}となる。
なお、直交符号系列を構成する符号要素には、実数に限らず、複素数値が含まれてもよい。例えば、次式(3)のような直交符号系列Code
ncmが用いられてもよい。ここで、ncm=1,…, N
CMである。この場合、符号数N
CM個の直交符号系列を生成する符号長はLoc=N
CMとなる。
例えば、NCM=3の場合、符号長Loc=3(=NCM)であり、符号化部106は、Code1={1,1,1}、Code2={1, exp(j2π/3) ,exp(j4π/3)}, Code3={1, exp(-j2π/3) ,exp(-j4π/3)}となる直交符号系列を生成する。
また、例えば、NCM=4の場合、符号長Loc=4(=NCM)であり、符号化部106は、Code1={1,1,1, 1}、Code2={1, j,-1 ,-j}, Code3={1,-1,1,-1}, Code4={1, -j,-1 , j}となる直交符号系列を生成する。ここで、jは虚数単位である。
符号化部106において、ドップラシフト設定部105から出力されるndm番目のドップラシフト量DOPndmを用いたドップラ多重信号を符号化する際の符号多重数(以下、符号化ドップラ多重数と呼ぶ)を「NDOP_CODE(ndm)」と表記する。ここで、ndm=1,…, NDMである。
符号化部106は、例えば、ドップラ多重信号を符号化する際の符号化ドップラ多重数N
DOP_CODE(1), N
DOP_CODE(2),…, 及びN
DOP_CODE(N
DM)の総和が、多重送信に用いる送信アンテナ108の数Ntと等しくなるように符号化ドップラ多重数N
DOP_CODE(ndm)を設定する。換言すると、符号化部106は、次式(4)を満たすように、符号化ドップラ多重数N
DOP_CODE(ndm)を設定する。これにより、レーダ装置10は、Nt個の送信アンテナ108を用いてドップラ領域及び符号領域における多重送信(以下、符号化ドップラ多重送信と呼ぶ)が可能となる。
ここで、符号化部106は、例えば、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),…, NDOP_CODE(NDM)に関して、1以上NCM個以下の範囲において異なる符号化ドップラ多重数を含むように設定する。例えば、符号化部106は、符号化ドップラ多重数の全てにおいて符号数NCM個とせずに、少なくとも1つの符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定する。換言すると、符号化部106は、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数を不均一に設定する。この設定により、レーダ装置10は、例えば、後述する受信処理によって、複数の送信アンテナ108から符号化ドップラ多重送信された信号を個別に分離して受信できる。
符号化部106は、第m番目の送信周期Trにおいて、第ndm番目のドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量φ
ndmに対して、次式(5)に示す符号化ドップラ位相回転量ψ
ndop_code(ndm), ndm(m)を設定して、位相回転部107に出力する。
ここで、下付き添え字の「ndop_code(ndm)」は、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmに対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)以下のインデックスを表す。例えば、ndop_code(ndm)=1,…, NDOP_CODE(ndm)である。また、angle[x]は実数xのラジアン位相を出力する演算子であり、例えば、angle[1]=0、angle[-1]=π、angle[j]=π/2、angle[-j]=-π/2である。また、floor[x]は実数xを超えない最大の整数を出力する演算子である。jは虚数単位である。
例えば、式(5)に示すように、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)は、符号化に用いる符号長Loc回の送信周期の期間においてドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量を一定(例えば、式(5)の第1項)にし、符号化で用いる符号Code ndop_code(ndm)のLoc個の各符号要素OCndop_code(ndm)(1),…,OCndop_code(ndm)(Loc)の各々に対応する位相回転量を付与する(式(5)の第2項目)。
また、符号化部106は、送信周期(Tr)毎に、直交符号要素インデックスOC_INDEXをレーダ受信部200(後述する出力切替部209)に出力する。OC_INDEXは、直交符号系列Code
ndop_code(ndm)の要素を指示する直交符号要素インデックスであり、送信周期(Tr)毎に、次式(6)のように、1からLocの範囲で巡回的に可変する。
ここで、mod(x, y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。また、m=1, …,Ncである。Ncはレーダ測位に用いる送信周期数(以下では、「レーダ送信信号送信回数」と呼ぶ)である。また、レーダ送信信号送信回数Ncは、Locの整数倍(Ncode倍)となるように設定される。例えば、Nc=Loc×Ncodeである。
次に、符号化部106において、ドップラ多重信号に対する符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を不均一に設定する方法の一例について説明する。
例えば、符号化部106は、下記の条件を満たす直交符号系列数(換言すると、符号多重数又は符号数)NCMを設定する。例えば、直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナ108の数Ntに対して、以下の関係を満たす。
(直交符号系列数NCM)×(ドップラ多重数NDM)>多重送信に用いる送信アンテナ数Nt
例えば、上記条件を満たす直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMのうち、積(NCM×NDM)の値がより小さい組み合わせを用いることが、特性的にも、回路構成の複雑度的にもより好適である。ただし、上記条件を満たす直交符号系列数NCM及びドップラ多重数NDMのうち、積(NCM×NDM)の値がより小さい組み合わせに限定されず、他の組み合わせも適用が可能である。
例えば、Nt=3の場合、NDM=2及びNCM=2の組み合わせが好適である。
この場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2及び直交符号Code1、Code2の割り当ては、例えば、図3に示すように、NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2)の設定に応じて決定される。なお、図3において、「〇」は使用されるドップラシフト量と直交符号を表し、「×」は使用されないドップラシフト量と直交符号を表す(以下の説明においても同様である)。
例えば、図3(a)は、NDOP_CODE(1)=2、NDOP_CODE(2)=1の例を示し、図3(b)は、NDOP_CODE(1)=1、NDOP_CODE(2)=2の例を示す。
なお、図3では、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)=1に対応するドップラシフト量(例えば、図3(a)ではDOP2、図3(b)ではDOP1)においてCode1が使用されるが、これに限定されない。例えば、NDOP_CODE(1)<NCM、又は、NDOP_CODE(2)<NCMの場合、図4に示すように、NDOP_CODE(ndm)=1に対応するドップラシフト量(例えば、図4(a)ではDOP2、図4(b)ではDOP1)において、Code1の代わりにCode2が使用されてもよい。
また、例えば、Nt=4又は5の場合、NDM=3とNCM=2の組み合わせ、又は、NDM=2とNCM=3の組み合わせが好適である。
図5は、一例として、Nt=4、NDM=3、NCM=2の場合を示す。例えば、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3、及び、直交符号Code1及びCode2の割り当ては、図5に示すように、NDOP_CODE(1)、NDOP_CODE(2)及びNDOP_CODE(3)の設定に応じて決定される。
例えば、図5(a)は、NDOP_CODE(1)=2、NDOP_CODE(2)=1、NDOP_CODE(3)=1の例を示し、図5(b)は、NDOP_CODE(1)=1、NDOP_CODE(2)=2、NDOP_CODE(3)=1の例を示し、図5(c)は、NDOP_CODE(1)=1、NDOP_CODE(2)=1、NDOP_CODE(3)=2の例を示す。
なお、図5では、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)=1に対応するドップラシフト量においてCode1が使用されるが、これに限定されない。例えば、符号化ドップラ多重数がNCMより小さい設定の場合、図6(a)に示すように、Code1の代わりにCode2が使用されてもよく、図6(b)又は図6(c)に示すように、Code1及びCode2を混在させてもよい。
図7は、他の例として、Nt=4、NDM=2、NCM=3の場合を示す。例えば、ドップラシフト量DOP1、DOP2、及び、直交符号Code1、Code2、Code3の割り当ては、図7に示すように、NDOP_CODE(1)、NDOP_CODE(2)の設定に応じて決定される。
例えば、図7(a)は、NDOP_CODE(1)=3、NDOP_CODE(2)=1の例を示し、図7(b)は、NDOP_CODE(1)=1、NDOP_CODE(2)=3の例を示す。
なお、図7では、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)=1に対応するドップラシフト量においてCode1が使用されるが、これに限定されない。例えば、NDOP_CODE(1)<NCM又はNDOP_CODE(2)<NCMの場合、図8(a)に示すように、Code1の代わりにCode2が使用されてもよく、図8(b)に示すように、Code1の代わりにCode3が使用されもよい。
なお、例えば、Nt=4、NDM=2、NCM=3の場合に、仮に、図9に示すようにNDOP_CODE(1)=2、NDOP_CODE(2)=2に設定されると、各ドップラシフト量DOP1及びDOP2において符号化ドップラ多重数NDOP_CODEが均一となる。このような設定の場合、例えば、図9(a)に示すように各ドップラシフト量DOP1、DOP2に対して同一の符号(例えば、Code1及びCode2)を割り当てる場合、又は、図9(b)に示すように各ドップラシフト量DOP1、DOP2に対して異なる符号を割り当てる場合が想定される。図9(a)及び図9(b)の何れにおいても、ドップラ周波数範囲が1アンテナ送信時における最大ドップラ速度と比較して、1/NCMの範囲内のドップラ周波数範囲であれば、レーダ装置10は、複数の送信アンテナ108から符号化ドップラ多重送信された信号を識別できる。
一方、本実施の形態では、例えば、Nt=4、NDM=2、NCM=3の場合に、図7に示すようにNDOP_CODE(1)=3とNDOP_CODE(2)=1、又は、NDOP_CODE(1)=1とNDOP_CODE(2)=3のように、各ドップラシフト量DOP1及びDOP2において符号化ドップラ多重数NDOP_CODEが不均一に設定される。このような設定の場合、ドップラ周波数範囲は、例えば、1アンテナ送信時における最大ドップラ速度と同等とすることができる(詳細は後述する)。
また、例えば、Nt=6又は7の場合、NDM=4とNCM=2の組み合わせ、又は、NDM=2とNCM=4の組み合わせが好適である。
図10は、一例として、Nt=6、NDM=4、NCM=2の場合を示す。例えば、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3、DOP4、及び、直交符号Code1及びCode2の割り当ては、図10に示すように、NDOP_CODE(1)、NDOP_CODE(2)、NDOP_CODE(3)及びNDOP_CODE(4)の設定に応じて決定される。
例えば、図10(a)は、NDOP_CODE(1)=NDOP_CODE(2)=2、NDOP_CODE(3)=NDOP_CODE(4)=1の例を示し、図10(b)は、NDOP_CODE(1)=NDOP_CODE(3)=2、NDOP_CODE(2)=NDOP_CODE(4)=1の例を示す。
なお、図10では、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)=1に対応するドップラシフト量においてCode1が使用されるが、これに限定されない。例えば、符号化ドップラ多重数がNCMより小さい設定の場合、図11(a)に示すように、Code1の代わりにCode2が使用されてもよく、図11(b)に示すように、Code1及びCode2を混在させてもよい。
また、例えば、図10に示すように、Nt=6、NDM=4、NCM=2の場合、全ての符号を用いないドップラシフト量は2つある。また、例えば、NDM=4のうち、全ての符号を用いないドップラシフト量の組み合わせについて、4つのドップラシフト量から2つのドップラシフト量を選択する組み合わせは6通り(=4C2)あり、それぞれの組み合わせにおいて、使用する符号の組み合わせは4通り(=NCM×NCM)ある。このため、Nt=6、NDM=4、NCM=2の場合、ドップラシフト量DOP及び直交符号Codeの割り当ての組み合わせは、全24通りとなる。
以下、同様に、例えば、Nt=8の場合、NDM=3とNCM=3の組み合わせ、又は、NDM=5とNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=9の場合、NDM=5とNCM=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=10の場合、NDM=6とNCM=2、又は、NDM=4とNCM=3の組み合わせが好適である。なお、送信アンテナ108の数Ntは、上記例に限定されず、Nt=11以上についても本開示の一実施例を適用できる。
次に、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)の設定例について説明する。
例えば、符号化部106において、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3、ドップラ多重数N
DM=2、N
CM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code
1={1,1}、Code
2={1,-1}を用いる場合について説明する。この場合、例えば、符号化ドップラ多重数をN
DOP_CODE(1)=1、N
DOP_CODE(2)=2とすると、符号化部106は、次式(7)〜(9)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
2, 2(m)を設定して、位相回転部107に出力する。
ここで、一例として、ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量を式(1)のφ
ndm=2π(ndm-1)/N
DMとし、ドップラシフト量DOP
1を付与する位相回転量φ
1=0、及び、ドップラシフト量DOP
2を付与する位相回転量φ
2=πを用いる場合、符号化部106は、次式(10)〜(12)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
2, 2(m)を設定して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1, …, Ncである。なお、ここでは、2πによるモジュロ演算を行い、0以上2π未満のラジアンの範囲で記載している(以降の説明についても同様である)。
式(10)〜(12)に示すように、位相回転量が、2πを等分割したφndm=2π(ndm-1)/NDMに設定される場合、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)は、NDM×NCM=2×2=4の送信周期で変化する。
または、他の例として、ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量をφ
ndm=2π(ndm)/N
DMとし、ドップラシフト量DOP
1を付与する位相回転量φ
1=π、及び、ドップラシフト量DOP
2を付与する位相回転量φ
2=0としてもよい。この場合、符号化部106は、次式(13)〜(15)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
2, 2(m)を設定して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1, …, Ncである。
また、式(10)〜(12)又は式(13)〜(15)に示すように、位相回転量(例えば、ドップラシフト量を付与する位相回転量)に用いる位相数(例えば、0及びπの2つ)は、多重送信に用いる送信アンテナ108の数Nt=3よりも少ない。換言すると、式(10)〜(12)又は式(13)〜(15)に示すように、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数(例えば、0及びπの2つ)は、多重送信に用いるドップラシフト量の数(換言すると、ドップラ多重数)NDM=2に等しい。
また、例えば、符号化部106において、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=6、ドップラ多重数N
DM=4、N
CM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code
1={1,1}、Code
2={1,-1}を用いる場合について説明する。この場合、例えば、符号化ドップラ多重数をN
DOP_CODE(1)=1、N
DOP_CODE(2)=1、N
DOP_CODE(3)=2、N
DOP_CODE(4)=2とすると、符号化部106は、次式(16)〜(21)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
1, 3(m) , ψ
2, 3(m) , ψ
1, 4(m) , ψ
2, 4(m)を設定して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1, …, Ncである。
ここで、一例として、ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量をφ
ndm=2π(ndm-1) /N
DMとし、ドップラシフト量DOP
1を付与する位相回転量φ
1=0、ドップラシフト量DOP
2を付与する位相回転量φ
2=π/2、ドップラシフト量DOP
3を付与する位相回転量φ
3=π、ドップラシフト量DOP
4を付与する位相回転量φ
4=3π/2を用いる場合、符号化部106は、次式(22)〜(27)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
1, 3(m) , ψ
2, 3(m) , ψ
1, 4(m) , ψ
2, 4(m)を設定して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1, …, Ncである。
式(22)〜式(27)に示すように、位相回転量が、2πを等分割したφndm=2π(ndm-1)/NDMに設定される場合、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ1, 3(m) , ψ2, 3(m) , ψ1, 4(m) , ψ2, 4(m)は、NDM×NCM=4×2=8の送信周期で変化する。
また、式(22)〜(27)に示すように、位相回転量(例えば、ドップラシフト量を付与する位相回転量)に用いる位相数(例えば、0、π/2、π、及び、3π/2の4つ)は、多重送信に用いる送信アンテナ108の数Nt=6よりも少ない。換言すると、式(22)〜(27)に示すように、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数(例えば、0、π/2、π、及び、3π/2の4つ)は、多重送信に用いるドップラシフト量の数(換言すると、ドップラ多重数)NDM=4に等しい。
なお、ここでは、一例として、送信アンテナ108の数Nt=3、ドップラ多重数NDM=2の場合、及び、送信アンテナ108の数Nt=6、ドップラ多重数NDM=4の場合における位相回転量の設定についてそれぞれ説明したが、送信アンテナ108の数Nt及びドップラ多重数NDMは、これらの値に限定されない。例えば、送信アンテナ108の数Ntが何れの値でも、位相回転量に用いる位相数は、多重送信に用いる送信アンテナ108の数Ntよりも少なく設定されてよい。また、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数は、多重送信に用いるドップラシフト量の数NDMに等しくしてよい。
以上、位相回転量設定部104における位相回転量の設定方法について説明した。
図1において、位相回転部107は、位相回転量設定部104において設定された符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)に基づいて、レーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に位相回転量を付与する。ここで、ndm=1,…, NDMであり、ndop_code(ndm)=1,…, NDOP_CODE(ndm)である。
符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),…,NDOP_CODE(NDM)の総和は、送信アンテナ108の数Ntに等しく設定され、Nt個の符号化ドップラ位相回転量はNt個の位相回転部107にそれぞれ入力される。
Nt個の位相回転部107は、送信周期Tr毎に、レーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号に対して、入力された符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)をそれぞれ付与する。Nt個の位相回転部107からの出力(例えば、符号化ドップラ多重信号と呼ぶ)は、規定された送信電力に増幅後に、送信アレーアンテナ部のNt個の送信アンテナ108から空間に放射される。
なお、以下では、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)を付与する位相回転部107を、「位相回転部PROT#[ndop_code(ndm), ndm]」と表記する。同様に、位相回転部PROT#[ndop_code(ndm), ndm]の出力を空間に放射する送信アンテナ108を、「送信アンテナTx#[ndop_code(ndm), ndm]」と表記する。ここで、ndm=1,…, NDMであり、ndop_code(ndm)=1,…, NDOP_CODE(ndm)である。
例えば、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3の場合に、ドップラ多重数NDM=2、NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={1,-1}とし、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=1, NDOP_CODE(2)=2とする場合について説明する。この場合、符号化部106から位相回転部107に対して、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)が送信周期毎に出力される。
例えば、位相回転部PROT#[1, 1]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に次式(28)のように位相回転量ψ
1, 1(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[1, 1]の出力は、送信アンテナTx#[1, 1]から出力される。ここでcp(t)は送信周期毎のチャープ信号を表す。
同様に、位相回転部PROT#[1, 2]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に次式(29)のように位相回転量ψ
1, 2(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[1, 2]の出力は、送信アンテナTx#[1, 2]から出力される。
同様に、位相回転部PROT#[2, 2]は、レーダ送信信号生成部101で送信周期毎に生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に次式(30)のように位相回転量ψ
2, 2(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[2, 2]の出力は、送信アンテナTx#[2, 2]から出力される。
以上、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)の設定例について説明した。
このように、本実施の形態では、複数の送信アンテナ108に対して、ドップラシフト量DOPndm及び直交符号系列Codencmの少なくとも一方が異なる組み合わせ(換言すると、割り当て)がそれぞれ対応付けられる。また、本実施の形態では、ドップラシフト量DOPndmと直交符号系列Codencmとの組み合わせにおける各ドップラシフト量DOPndmに対応する直交符号系列Codencmの多重数(換言すると、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm))は異なる。
例えば、本実施の形態では、Nt個の送信アンテナ108には、図3に示すように、少なくとも、異なる直交符号系列によって符号多重される送信信号がそれぞれ送信される複数の送信アンテナ108と、符号多重されない送信信号が送信される少なくとも1つの送信アンテナ108と、が含まれる。換言すると、レーダ送信部100から送信されるレーダ送信信号には、少なくとも、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を符号数NCMに設定した符号化ドップラ多重信号と、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(ndm)を符号数NCMより小さく設定した符号化ドップラ多重信号と、が含まれる。
[レーダ受信部200の構成]
図1において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナ202を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201−1〜201−Naと、CFAR(Constant False Alarm Rate)部211と、符号化ドップラ多重分離部212と、方向推定部213と、を有する。
各受信アンテナ202は、物標(ターゲット)に反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206とを有する。
受信無線部203は、ミキサ部204と、LPF(low pass filter)205と、を有する。受信無線部203は、ミキサ部204において、受信した反射波信号に対して、レーダ送信信号生成部101から入力される、送信信号であるチャープ信号をミキシングし、LPF205を通過させる。これにより、反射波信号の遅延時間に応じた周波数となるビート信号が取り出される。例えば、図2に示すように、送信チャープ信号(送信周波数変調波)の周波数と、受信チャープ信号(受信周波数変調波)の周波数との差分周波数がビート周波数として得られる。
各アンテナ系統処理部201−z(ただし、z=1〜Naの何れか)の信号処理部206は、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、出力切替部209と、ドップラ解析部210と、を有する。
LPF205から出力された信号(例えば、ビート信号)は、信号処理部206において、AD変換部207によって、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換される。
ビート周波数解析部208は、送信周期Tr毎に、規定された時間範囲(レンジゲート)において得られたNdata個の離散サンプルデータをFFT処理する。これにより、信号処理部206では、反射波信号(レーダ反射波)の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。なお、FFT処理の際、ビート周波数解析部208は、例えば、Han窓又はHamming窓等の窓関数係数を乗算してもよい。窓関数係数を用いることにより、ビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
ここで、第m番目のチャープパルス送信によって得られる第z番目の信号処理部206におけるビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答をRFTz(fb, m)で表す。ここで、fbはビート周波数インデックスを表し、FFTのインデックス(ビン番号)に対応する。例えば、fb=0,…,Ndata/2であり、z=0,…,Naであり、m=1,…,NCである。ビート周波数インデックスfbが小さいほど、反射波信号の遅延時間が小さい(換言すると、物標との距離が近い)ビート周波数を示す。
また、ビート周波数インデックスf
bは、次式(31)を用いて距離情報R(f
b)に変換できる。そのため、以下では、ビート周波数インデックスf
bを「距離インデックスf
b」と呼ぶ。
ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。
出力切替部209は、位相回転量設定部104の符号化部106から出力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Loc個のドップラ解析部210のうち、OC_INDEX番目のドップラ解析部210に選択的に切り替えて出力する。換言すると、出力切替部209は、第m番目の送信周期Trにおいて、OC_INDEX番目のドップラ解析部210を選択する。
信号処理部206は、Loc個のドップラ解析部210−1〜210−Locを有する。例えば、第noc番目のドップラ解析部210には、出力切替部209によってLoc回の送信周期(Loc×Tr)毎にデータが入力される。このため、第noc番目のドップラ解析部210は、Nc回の送信周期のうち、Ncode回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答RFTz(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1, …, Locである。
例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用できる。この場合、FFTサイズはNcodeであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ncode/2, …, 0, …, Ncode/2−1である。
以下では、一例として、Ncodeが2のべき乗値である場合について説明する。なお、Ncodeが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理が可能である。また、ドップラ解析部210は、FFT処理の際に、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
例えば、第z番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT
z noc(f
b, f
s)は、次式(32)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1〜Naである。
以上、信号処理部206の各構成部における処理について説明した。
図1において、CFAR部211は、第1〜第Na番目の信号処理部206それぞれのLoc個のドップラ解析部210の出力を用いて、CFAR処理(換言すると、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部211は、例えば、次式(33)のように、第1〜第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT
z noc(f
b, f
s)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理又は1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば、非特許文献2に開示された処理が適用されてよい。
CFAR部211は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を符号化ドップラ多重分離部212に出力する。
なお、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmとして、例えば、式(1)を用いる場合、ドップラ解析部210からの出力におけるドップラ周波数領域のドップラシフト量の間隔ΔFDは等間隔となり、ΔFD=Ncode/NDMとなる。そのため、ドップラ解析部210からの出力において、ドップラ周波数領域では、ドップラシフト多重される各信号に対して、ΔFDの間隔でピークがそれぞれ検出される。なお、位相回転量φndmとして、式(1)を用いる場合、Ncode及びNDMによってはΔFDが整数とならない場合がある。そのようなの場合には、後述する式(50)を用いることにより、ΔFDを整数値とすることができる。以下ではΔFDが整数値として受信処理動作の説明を行う。
図12(a)は、NDM=2の場合に3つのターゲットの反射波が存在する距離におけるドップラ解析部210の出力の一例を示す。例えば、図12(a)に示すように、3つのターゲットの反射波がドップラ周波数インデックスf1、f2及びf3で観測される場合、当該反射波は、f1、f2及びf3それぞれに対して、ΔFDの間隔のドップラ周波数インデックス(例えば、f1+ΔFD、f2+ΔFD、f3+ΔFD)においても観測される。
したがって、CFAR部211は、ドップラ解析部210の各出力に対して、ドップラシフト量の間隔ΔFDの範囲で分割し、分割した各範囲に対して、次式(34)に示すように、ドップラシフト多重した各信号ピーク位置を合わせて電力加算(例えば、「ドップラ領域圧縮」と呼ぶ)した後に、CFAR処理(例えば、「ドップラ領域圧縮CFAR処理」と呼ぶ)を行ってよい。ここで、f
s_comp=-Ncode/2,…,-Ncode/2+ΔFD-1である。
これにより、CFAR処理のドップラ周波数範囲を1/NDMに圧縮でき、CFAR処理量を削減でき、かつ、回路構成の簡易化を図ることができる。また、CFAR部211では、NDM個のドップラシフト多重した各信号を電力加算できるため、SNR(Signal to Noise Ratio)を(NDM)1/2程度改善でき、レーダ装置10におけるレーダ検知性能を向上できる。
図12(b)は、図12(a)で示したドップラ解析部210の出力に対して、式(34)に示すドップラ領域圧縮処理を適用後の出力例を示す。図12(b)に示すように、NDM=2の場合、ドップラ領域圧縮処理によって、ドップラ周波数インデックスf1の電力成分と、f1+ΔFDの電力成分とが加算されて出力される。同様に、図12(b)に示すように、ドップラ周波数インデックスf2の電力成分と、f2+ΔFDの電力成分とが加算されて出力され、ドップラ周波数インデックスf2の電力成分とf3+ΔFDの電力成分とが加算されて出力される。
ドップラ領域圧縮の結果、ドップラ周波数領域においてドップラ周波数インデックスfs_compの範囲は、-Ncode/2以上,…,-Ncode/2+ΔFD-1以下に削減され、CFAR処理の範囲が圧縮されるので、CFAR処理の演算量を低減できる。また、図12において、例えば、3つのターゲットからの反射波は電力加算されるため信号成分のSNRが向上する。なお、ノイズ成分も電力合成されるため、SNRの改善効果は、例えば、(NDM)1/2程度の改善となる。
ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いたCFAR部211は、例えば、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar、及び、NDM個のドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)、nfd=1,…,NDMを符号化ドップラ多重分離部212に出力する。
なお、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、式(1)に限定されない。例えば、ドップラシフト多重した各信号が、ドップラ解析部210から出力されるドップラ周波数領域において一定の間隔でそれぞれピークが検出される位相回転量φndmであれば、CFAR部211は、ドップラ領域圧縮CFAR処理を適用できる。
次に、図1に示す符号化ドップラ多重分離部212の動作例について説明する。なお、以下では、CFAR部211において、ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いた場合の符号化ドップラ多重分離部212の処理の一例について説明する。
符号化ドップラ多重分離部212は、CFAR部211の出力である距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar、及び、NDM個のドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)、nfd=1,…,NDMに基づいて、ドップラ解析部210の出力を用いて、符号化ドップラ多重送信された信号を分離し、送信アンテナ108の判別(換言すると、判定又は識別とも呼ぶ)、及び、ドップラ周波数(換言すると、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。
上述したように、位相回転量設定部104の符号化部106は、例えば、NDM個の符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),…, NDOP_CODE(NDM)の全てをNCM個に設定せず、少なくとも1つの符号化ドップラ多重数をNCM個より小さい値に設定する。例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、(1)符号分離処理を行い、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号を検出し、(2)符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号の検出結果に基づいて、送信アンテナ108の判別及びターゲットのドップラ周波数の判別を行う。
以下、上述した符号化ドップラ多重分離部212における処理(1)及び(2)についてそれぞれ説明する。
<(1)符号分離処理(符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号の検出処理)>
CFAR部211の出力である距離インデックスfb_cfarにおけるNDM個の符号化ドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar)、(fs_comp_cfar+ΔFD)、(fs_comp_cfar+2ΔFD), …, (fs_comp_cfar+(NDM-1)ΔFD)のそれぞれのドップラ解析部210の出力に対して、NDM個の符号化ドップラ多重信号との対応関係の候補はNDM通りある。
例えば、ドップラシフト設定部105において設定されたドップラシフト量DOPndmを、DOP1<DOP2<….<DOPDM-1<DOPDMとした場合、ドップラの折り返しを考慮すると、巡回的に対応関係をシフトした下記のNDM通りの候補がある。ここでは、各対応関係の候補のパターンをDopCase=1からNDMで番号付けている。
DopCase=1 : {DOP1, DOP2, …, DOPDM-1, DOPDM}
DopCase=2 : {DOPDM, DOP1, DOP2, …, DOPDM-1}
…、
DopCase=NDM: {DOP2, …, DOPDM-1, DOPDM, DOP1}
例えば、DopCase=1は初期状態(ターゲットとの相対速度がゼロ)の場合のドップラシフト量の対応関係である。例えば、ターゲットの相対速度が近接する方向に高速になるにつれて、折り返す成分が含まれるようになり、これらをそれぞれDopCase=2、3、…、NDMに対応付ける。換言すると、ターゲットの相対速度が離れる方向に高速になるにつれて、DopCase=NDM、NDM-1、…、2が対応付けられる関係となる。
ここで、各DopCaseにおいて、DOPndmが先頭から何番目にあるか(DopCaseにおけるDOPndmの位置(又は順番))については、ドップラシフト設定部105において設定されたドップラシフト量に基づいて、予めテーブル化できる。以下では、DOPposi(DOPndm、DopCase)を、DopCaseにおいてDOPndmが先頭から何番目にあるかを出力する演算子とする。例えば、上記DopCaseの例では、DOPposi(DOP1、1)=1, DOPposi(DOP1、2)=2, DOPposi(DOP1、NDM)= NDM、DOPposi(DOP2、1)=2, DOPposi(DOP2、2)=3, DOPposi(DOP2、NDM)=1になる。
図13は、一例として、NDM=4、NCM=2、Loc=2とし、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量をφndm=2π(ndm+1)/NDMとし、ドップラシフト量DOP1を付与する位相回転量φ1=π、ドップラシフト量DOP2を付与する位相回転量φ2=3π/2、ドップラシフト量DOP3を付与する位相回転量φ3=0、ドップラシフト量DOP4を付与する位相回転量φ4=π/2を用いて、ドップラシフト量を、DOP1<DOP2<DOP3<DOP4とした場合のドップラ解析部210の出力の一例を示す。図13において、横軸はターゲットドップラ周波数(fTARGET)を示し、縦軸はドップラ解析部210の出力を示す。
ドップラ解析部210において、折り返しが発生しないドップラ周波数の範囲は、-1/( 2×Loc×Tr)以上、1/(2×Loc×Tr)未満であり、この範囲を超えるとドップラ折り返しが発生する。例えば、Loc=2の場合、ドップラ解析部210の出力において、折り返しが発生しないドップラ周波数の範囲は、1/(4×Tr)以上、1/(4×Tr)未満である。
したがって、図13において、ターゲットのドップラ周波数fTARGETによって符号化ドップラ多重信号の順番は、下記のように巡回的に変化する関係となる。
DopCase=1: -1/(2×Tr)≦fTARGET<-3/(8×Tr)の場合、DOP1<DOP2<DOP3<DOP4
DopCase=2: -3/(8×Tr)≦fTARGET<-1/(4×Tr)の場合、DOP4<DOP1<DOP2<DOP3
DopCase=3: -1/(4×Tr)≦fTARGET<-1/(8×Tr)の場合、DOP3<DOP4<DOP1<DOP2
DopCase=4: -1/(8×Tr)≦fTARGET<0の場合、DOP2<DOP3<DOP4<DOP1
DopCase=1: 0≦fTARGET<1/(8×Tr)の場合、DOP1<DOP2<DOP3<DOP4
DopCase=2: 1/(8×Tr)≦fTARGET<1/(4×Tr)の場合、DOP4<DOP1<DOP2<DOP3
DopCase=3: 1/(4×Tr)≦fTARGET<3/(8×Tr)の場合、DOP3<DOP4<DOP1<DOP2
DopCase=4: 3/(8×Tr)≦fTARGET<1/(2×Tr)の場合、DOP2<DOP3<DOP4<DOP1
ここでは、-1/(2×Tr)≦fTARGET<1/(2×Tr)の範囲のターゲットのドップラ周波数fTARGETに対して、符号化ドップラ多重信号の順序の候補パターンをDopCase=1から4(=NDM)によって番号付けて示している。符号化ドップラ多重信号の順序と対応付けられる候補パターンは4(=NDM)通りとなる。
また、ドップラ解析部210の出力において、折り返しが発生しないドップラ周波数の範囲は、-1/(2×Loc×Tr)以上、1/(2×Loc×Tr)未満である。このため、-1/(2×Tr)≦fTARGET<1/(2×Tr)のターゲットのドップラ周波数fTARGETの範囲に対して、ドップラ解析部210の出力には、(Loc-1)回の折り返しが含まれる。よって、例えば、図13の例(Loc=2)では、各DopCase=1〜4(=NDM)に対応するドップラ解析部210の出力は、折り返しが有る場合と折り返しが無い場合とを含めて、2(=Loc)回出力される。したがって、符号化ドップラ多重分離部212は、-1/(2×Tr)≦fTARGET<1/(2×Tr)の範囲のターゲットのドップラ周波数fTARGETを検出するために、例えば、DopCaseを判定し、更に折り返しの有無を判定する処理を行う(なお、処理の一例は後述する)。
符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、CFAR部211の出力である距離インデックスfb_cfarにおけるNDM個の符号化ドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)で指示される第z番目の信号処理部206におけるドップラ解析部210の出力に対し、符号分離処理を行う。
符号分離処理は、例えば、全てのnfd=1,…,N
DMに対して、全てのDopCase=1,…,N
DMの候補に渡って行われてもよい。ただし、符号化ドップラ多重分離部212は、符号化ドップラ多重数をN
CM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号を検出し、送信アンテナ108の判別、及び、ターゲットドップラ周波数の判定を行う。このことから、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、次式(35)のような符号分離処理を行うことにより、分離処理の演算量を低減できる。
なお、上付き添え字のアスタリスク(*)は複素共役演算子を表す。また、nfd=1,…,NDMであり、ncm=1,…, NCMであり、DopCase=1,…,NDMである。
例えば、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号がドップラシフト量「DOPndm1」である場合、符号化ドップラ多重分離部212は、各DopCaseのうち、ドップラシフト量DOPndm1が含まれる候補DOPposi(DOPndm1, DopCase)を用いて符号分離処理を行う。
ここで、式(35)において得られる符号分離信号DeMULz ncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)は、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力に対して、第ncm番目の直交符号系列Codencmを用いた符号分離信号を表す。
また、式(35)に示すexpの項では、符号要素OCncm(noc)毎のドップラ解析部210の出力間においてサンプリング時間がずれているため、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DopCase-1)×ΔFD-DOP1)に応じた位相補正が行われている。
また、ドップラシフト設定部105において設定されたドップラシフト量DOPndmは、DOP1<DOP2<….<DOPDM-1<DOPDMであり、初期状態(ターゲットとの相対速度がゼロ)の場合、DOP1はfs_comp=-Ncode/2,…,-Ncode/2+ΔFD-1の範囲内にある。このため、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、DOP1を基準とし、位相補正量を算出する。
符号化ドップラ多重数をN
CM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号がドップラシフト量DOP
ndm1である場合、式(35)により、DopCase=1,…,N
DMにおいて、ドップラシフト量DOP
ndm1が含まれる候補DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)に対して、N
CM個の直交符号に基づいて分離した信号がそれぞれ得られる。これにより、符号化ドップラ多重分離部212では、合計N
DM×N
CM個の符号分離信号の出力が得られる。例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、式(35)に従って、全ての受信アンテナz=1,…,Naに対して符号分離信号を算出し、符号分離信号電力和Pow_DeMUL
ncm(f
b_cfar, f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1, DopCase)-1)×ΔFD)を次式(36)のように算出する。
ここで、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号は、全てのNCM個の直交符号を用いていない。換言すると、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号は、一部の直交符号(例えば、一つの直交符号)を用いている。このため、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号(ドップラシフト量:DOPndm1)に対応する符号分離信号電力和Pow_DeMULncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)、ncm=1,…, NCM、DopCase=1,…,NDMには、受信電力がノイズレベル程度に低い電力値となる成分が含まれる。
一例として、DOPndm1を用いた符号化ドップラ多重信号のみが、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく(NCM-1)に設定された場合(例えば、図3及び図4に示すドップラシフト量及び直交符号の割り当て例を参照)について説明する。
この場合、符号化ドップラ多重分離部212は、Pow_DeMULncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)、ncm=1,…, NCM、DopCase=1,…,NDMのうち、最小の受信電力となるPow_DeMULncm_min(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase_min)-1)×ΔFD)を検出する。ここで、「ncm_min」及び「DopCase_min」は、Pow_DeMULncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)が最小の受信電力となるncm及びDopCaseのインデックス番号を表す。
また、他の例として、DOPndm1を用いた符号化ドップラ多重信号のみが、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく(NCM-2)に設定された場合(例えば、図7及び図8に示すドップラシフト量及び直交符号の割り当て例を参照)について説明する。
この場合、Pow_DeMUL ncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)、ncm=1,…, NCM、DopCase=1,…,NDMのうち、あるDopCaseでは、NCM個の直交符号のうち2つの符号(例えば、図7及び図8において「×」に対応する直交符号)が用いられていないため、受信電力がノイズレベル程度に低い電力値となる成分が2つ含まれる。
そこで、符号化ドップラ多重分離部212は、NCM個の直交符号のうち、異なる2つの直交符号の組み合わせCodencm1,及びCodencm2(ただし、ncm1≠ncm2)において、電力和Pow_DeMULncm1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)+Pow_DeMULncm2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)が最小の受信電力となるPow_DeMULncm_min1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase_min)-1)×ΔFD) +Pow_DeMULncm_min2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)を検出する。ここで、「ncm_min1」、「ncm_min2」及び「DopCase_min」は、Pow_DeMULncm1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)+Pow_DeMULncm2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)が最小の受信電力となるncm1、ncm2及びDopCaseのインデックス番号を表す。
また、符号化ドップラ多重数を(NCM-2)より小さく設定した場合についても、同様に、符号化ドップラ多重分離部212は、NCM個の直交符号のうち使用していない符号の候補の組み合わせにおいて、符号分離信号電力和が最小となる組み合わせを検出することにより、DopCase_min及び符号の組み合わせ(ncm_min1、ncm_min2,…)を検出できる。
符号化ドップラ多重分離部212は、このような検出結果に基づいて、CFAR部211の出力である距離インデックスfb_cfarのNDM個の符号化ドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar)、(fs_comp_cfar+ΔFD)、(fs_comp_cfar+2ΔFD)、…、(fs_comp_cfar+(NDM-1)ΔFD)のそれぞれのドップラ解析部210の出力に対して、NDM個の符号化ドップラ多重信号との対応関係となるパターンが、DopCase=1〜NDMのうち、DopCase_minであると判定する。
また、符号化ドップラ多重分離部212は、DopCase_minに対応するパターンのうち、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定したDOPndm1を用いて送信した符号化ドップラ多重信号が、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase_min)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力であると判定する。
なお、反射波の受信信号のSNRが低下すると信号電力レベルとノイズ電力レベルとを判別しにくくなる。このため、符号化ドップラ多重分離部212は、判定条件を導入し、例えば、判定条件を満たす場合の判定結果(換言すると、検出結果)を採用し、判定条件を満たさない場合の判定結果を除去する(換言すると、採用しない)処理を行ってもよい。これにより、ノイズ成分等を誤って検出する確率を低減できる。例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、最小の受信電力の検出値PMINが、PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfa)>LEVDETECT×PMINを満たす場合、判定結果として採用してよい。ここで、LEVDETECTは判定閾値である。LEVDETECTは、0<LEVDE0TECT<1の実数である。
<(2)送信アンテナ108の判別及びターゲットのドップラ周波数の判別処理>
符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、-1/(2×Tr)≦fTARGET<1/(2×Tr)の範囲のターゲットのドップラ周波数fTARGETを検出する。
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、DopCaseの判定結果(例えば、DopCase_min)及び受信電力が最小となる符号の判定結果(例えば、ncm_min)に基づいて、以下のケース(a)及びケース(b)のように折り返しの有無を判定する。そして、符号化ドップラ多重分離部212は、送信アンテナ108及びターゲットのドップラ周波数を判別する。
なお、受信電力が最小となる符号が、複数の符号の組み合わせである場合(例えば、ncm_min1、ncm_min2,…)、以下の説明のncm_minを(ncm_min1、ncm_min2,…)と読み替えることにより、同様に適用できる。
[ケース(a):折り返し無しのケース]
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、ncm_minが、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定したDOPndm1において、符号化ドップラ多重に使用していない(割り当てていない)直交符号系列のインデックスに一致する場合、ドップラ折り返しが無いと判定する。換言すると、符号化ドップラ多重分離部212は、DOPndm1に対応する符号化ドップラ多重信号に対して直交符号系列Codencm_minを用いて符号化していない場合、ドップラ折り返しが無いと判定する。
符号化ドップラ多重分離部212は、ドップラ折り返しが無いと判定した場合、以下のようにターゲットのドップラ周波数、及び、送信アンテナを判定する。
ターゲットのドップラ周波数判定:
符号化ドップラ多重分離部212は、ターゲットのドップラ周波数インデックスを(fs_comp_cfar+(DopCase_min-1)×ΔFD-DOP1)と判定する。例えば、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)である。よって、符号化ドップラ多重分離部212は、ターゲットのドップラ周波数fTARGETを(fs_comp_cfar+(DopCase_min-1)×ΔFD-DOP1)/(Ncode×Loc×Tr)と判定する。
送信アンテナ判定:
符号化ドップラ多重分離部212は、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力に対して、Codencmを用いた符号分離信号DeMULz ncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[ncm, ndm]に対応する受信信号であると判定する。
[ケース(b):折り返し有りのケース]
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、ncm_minが、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定したDOPndm1において、符号化ドップラ多重に使用していない直交符号系列のインデックスに一致しない場合、ドップラ折り返しが有ると判定する。換言すると、符号化ドップラ多重分離部212は、DOPndm1に対応する符号化ドップラ多重信号に、直交符号系列Codencm_minを用いた符号化を用いた多重信号が含まれる場合、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力が、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数の範囲を超えたと判定する。
符号化ドップラ多重分離部212は、ドップラ折り返しが有ると判定した場合、以下のようにターゲットのドップラ周波数インデックス、及び、送信アンテナを決定(換言すると、確定)する。
ターゲットのドップラ周波数判定:
符号化ドップラ多重分離部212は、ターゲットのドップラ周波数インデックスを(fs_comp_cfar+(DopCase_min-1)×ΔFD)-DOP1-Ncode×Sign(fs_comp_cfar+(DopCase_min-1)×ΔFD-DOP1))と判定する。例えば、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)である。よって、符号化ドップラ多重分離部212は、ターゲットのドップラ周波数fTARGETを(fs_comp_cfar+(DopCase_min-1)×ΔFD-DOP1-Ncode×Sign(fs_comp_cfar+(DopCase_min-1)×ΔFD‐DOP1))/(Ncode×Loc×Tr)と判定する。なお、Sign(x)は符号関数であり、実数xに対し、x>0のときは1、x=0のときは0、x<0のときは−1を出力する関数である。
このように、ドップラ解析部210の出力にドップラ折り返しが有る場合、符号化ドップラ多重分離部212は、折り返し成分(例えば、Ncode×Sign(fs_comp_cfar+(DopCase_min-1)×ΔFD-DOP1))を考慮して、ターゲットのドップラ周波数を判定する。
送信アンテナ判定:
ドップラ解析部210の出力にドップラ折り返しが有る場合、符号分離処理において用いた位相補正(例えば、式(35)のexpの項)では誤った位相補正が行われることになる。これは、等価的に、符号分離処理に用いる直交符号系列を構成する要素が、次式(37)及び式(38)に示すような符号要素である場合の符号分離処理が行われると見なせる。
例えば、N
CM=2、符号長Loc=2の直交符号系列Code
1={1,1}を用いた場合、Sign(f
est)に依らず、次式(39)のように、Code
2={1,-1}を用いた分離処理と等価となる。
一方、Code
2={1,-1}を用いた場合、Sign(f
est)に依らず、次式(40)のように、Code
1={1,1}を用いた分離処理と等価になる。
したがって、NCM=2、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={1,-1}を用いた場合、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力に対して、符号化ドップラ多重分離部212は、Code1を用いた符号分離信号DeMULz 1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[2, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定し、Code2を用いた符号分離信号DeMULz 2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[1, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定する。
また、例えば、NCM=3、符号長Loc=3(=NCM)の直交符号系列Code1={1,1,1}、Code2={1, exp(j2π/3),exp(j4π/3)}, Code3={1, exp(-j2π/3),exp(-j4π/3)}を用いる場合、以下のようになる。
例えば、Code
1={1,1,1}が用いられる場合、次式(41)のように、Sign(f
est)の正負により、Code
3又はCode
2を用いた分離処理と等価になる。
また、例えば、Code
2={1, exp(j2π/3),exp(j4π/3)}が用いられる場合、次式(42)のように、Sign(f
est)の正負により、Code
1又はCode
3を用いた分離処理と等価になる。
また、例えば、Code
3={1, exp(-j2π/3),exp(-j4π/3)}が用いられる場合、次式(43)のように、Sign(f
est)の正負により、Code
2又はCode
1を用いた分離処理と等価になる。
したがって、NCM=3、符号長Loc=3(=NCM)の直交符号系列Code1={1,1,1}、Code2={1, exp(j2π/3),exp(j4π/3)}、Code3={1, exp(-j2π/3),exp(-j4π/3)}を用いる場合、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm,DopCase_min)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力に対して、符号化ドップラ多重分離部212は、以下のように送信アンテナ108を判定する。
Sign(fest)>0の場合:
符号化ドップラ多重分離部212は、Code1を用いた符号分離信号DeMULz 1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[3, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定し、Code2を用いた符号分離信号DeMULz 2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[1, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定し、Code3を用いた符号分離信号DeMULz 3(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[2, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定する。
Sign(fest)<0の場合:
符号化ドップラ多重分離部212は、Code1を用いた符号分離信号DeMULz 1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[2, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定し、Code2を用いた符号分離信号DeMULz 2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[3, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定し、Code3を用いた符号分離信号DeMULz 3(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[1, ndm]から送信された反射波の受信信号であると判定する。
上記のように、送信時に符号化に用いた符号と、折り返し判定時に符号分離処理によって分離される符号との対応関係は、直交符号系列Codencm(ncm=1,…, NCM)とSign(fest)とに基づいて予め決定される。このため、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、符号変換関数AliasConv[ncm, Sign(fest)]=Tx_ncm(折り返し時にCodencmを用いて符号分離処理した際に分離される直交符号系列CodeTx_ncmインデックスTx_ncmを出力)を用いることができる。
また、符号変換関数の逆関数AliasConv-1[Tx_ncm, Sign(fest)]=ncm(折り返し時に符号分離処理した際に分離される直交符号系列のインデックスがTx_ncmとなる、符号分離処理した際に用いた符号系列Codencmのインデックスncmを出力)も同様に定義できる。
例えば、NCM=2、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={1,-1}を用いる場合、符号変換関数AliasConv[ncm, Sign(fest)]は、AliasConv[1, Sign(fest)]=2、AliasConv[2, Sign(fest]=1のように予め決定される。また、符号変換関数の逆関数は、AliasConv-1[1, Sign(fest)]=2、AliasConv-1[2, Sign(fest)]=1のように予め決定される。
また、例えば、NCM=3、符号長Loc=3(=NCM)の直交符号系列Code1={1,1,1}、Code2={1, exp(j2π/3),exp(j4π/3)}, Code3={1, exp(-j2π/3),exp(-j4π/3)}を用いる場合、符号変換関数AliasConv[ncm, Sign(fest)]は、以下のように予め決定される。
Sign(fest)>0の場合:
AliasConv[1, Sign(fest)]=3、AliasConv[2, Sign(fest)]=1、AliasConv[3, Sign(fest)]=2のように予め決定される。また、符号変換関数の逆関数は、AliasConv-1[1, Sign(fest)]=2、AliasConv-1[2, Sign(fest)]=3、AliasConv-1[3, Sign(fest)]=1のように予め決定される。
Sign(fest)<0の場合:
AliasConv[1, Sign(fest)]=2、AliasConv[2, Sign(fest)]=3、AliasConv[3, Sign(fest)]=1のように予め決定される。また、符号変換関数の逆関数は、AliasConv-1[1, Sign(fest)]=3、AliasConv-1[2, Sign(fest)]=1、AliasConv-1[3, Sign(fest)]=2のように予め決定される。
したがって、例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、符号変換関数AliasConv[ncm, Sign(fest)]を用いることにより、折り返し時の送信アンテナ判定を以下のように行う。例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力に対して、Codencmを用いた符号分離信号DeMULz ncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm,DopCase_min)-1)×ΔFD)が、送信アンテナTx#[AliasConv[ncm, Sign(fest)], ndm]に対応する受信信号であると判定する。
または、符号化ドップラ多重分離部212は、送信アンテナTx#[Tx_ncm, ndm]に対応する受信信号が、Code
ncm(ただし、ncm=AliasConv
-1[Tx_ncm, Sign(fest)])を用いた、次式(44)に示す符号分離信号であると判定してもよい。
なお、NCM>3の場合についても、符号変換関数及び符号変換関数の逆関数は予め決定でき、同様に送信アンテナの判定が可能である。
このように、本実施の形態では、レーダ受信部200は、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号の符号分離結果に基づいて、折り返しの判定(例えば、折り返しの有無、及び、対応関係DopCase等の判定)を行うことができる。これにより、レーダ装置10は、折り返しが発生する場合でも、符号化ドップラ多重信号にそれぞれ対応する送信アンテナ108を判別し、ターゲットのドップラ周波数を判別できる。よって、本実施の形態によれば、例えば、曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲を、-1/(2Tr)以上で1/(2Tr)未満の範囲に拡大できる。
例えば、1つの送信アンテナ108において送信した場合に曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲は、-1/(2Tr)以上で1/(2Tr)未満の範囲である。これにより、本実施の形態では、複数の送信アンテナ108を用いても1アンテナで送信した場合と同様に曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲とすることができる。
次に、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号が複数ある場合(例えば、図5、図6、図10及び図11等を参照)の処理について説明する。
例えば、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号がドップラシフト量DOPndm1のみでなく、複数ある場合、符号化ドップラ多重分離部212は、以下のようにncm_min1、ncm_min2及びDopCase_minを検出する。
例えば、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく(NCM-1)に設定した符号化ドップラ多重信号がドップラシフト量DOPndm1及びDOPndm2の場合、符号化ドップラ多重分離部212は、式(36)に基づいて符号分離信号電力和Pow_DeMULncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)及びPow_DeMULncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm2, DopCase)-1)×ΔFD)を算出する。ここでncm=1,…, NCM、DopCase=1,…,NDMである。
ここで、ドップラシフト量DOPndm1を用いた符号化ドップラ多重信号おいて、符号化ドップラ多重に使用されていない直交符号をCodencm1とし、ドップラシフト量DOPndm2を用いた符号化ドップラ多重信号おいて、符号化ドップラ多重に使用されていない直交符号をCodencm2とする。
この場合、符号分離信号電力和Pow_DeMULncm1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)+Pow_DeMULncm2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm2, DopCase)-1)×ΔFD)、又は、ドップラ折り返し時の符号分離信号電力和Pow_DeMULAliasConv[ncm1, Sign(fest)] (fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)+Pow_DeMULAliasConv[ncm2, Sign(fest)] (fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm2, DopCase)-1)×ΔFD)において、符号化ドップラ多重分離部212は、DopCase=1,…,NDMの何れかにおいて、受信電力が最小となるPow_DeMULncm_min1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase_min)-1)×ΔFD)+Pow_DeMULncm_min2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm2, DopCase_min)-1)×ΔFD)を検出する。
ここで、「ncm_min1」、「ncm_min2」及び「DopCase_min」は、符号分離信号電力和Pow_DeMULncm1(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)+Pow_DeMULncm2(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm2, DopCase)-1)×ΔFD)が最小の受信電力となるncm1、ncm2及びDopCaseのインデックス番号を表す。
なお、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号は、2個に限らず、3個以上でもよい。
以上、符号化ドップラ多重分離部212の動作例について説明した。
図1において、方向推定部213は、符号化ドップラ多重分離部212から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm, DopCase_min)-1)×ΔFD)のドップラ解析部210の出力、ターゲットのドップラ周波数判定結果、及び、送信アンテナ判定結果(又は、ドップラ折り返し判定結果)に基づいて、ターゲットの方向推定処理を行う。
例えば、方向推定部213は、符号化ドップラ多重分離部212の出力に基づいて、次式(45)又は式(46)に示すような仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_comp_cfar)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_comp_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,Naである。
折り返し無しの場合:
折り返し有りの場合:
方向推定部213は、例えば、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部213は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_comp_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献3に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、Nt×Na個の仮想受信アレーが等間隔d
Hで直線状に配置される場合、ビームフォーマ法は次式(47)及び式(48)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
ここで、式(47)において、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、a(θu)は、方位方向θuの到来波に対する仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。
また、方位方向θuは到来方向推定を行う方位範囲内を方位間隔β1で変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定される。
θu=θmin + uβ1、u=0,…, NU
NU=floor[(θmax-θmin)/β1]+1
ここでfloor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
また、式(47)において、Dcalは、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含む(Nt×Na)次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、Dcalは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
方向推定部213は、例えば、方向推定結果とともに、測位結果として、距離インデックスfb_cfarに基づく距離情報、及び、ターゲットのドップラ周波数判定結果に基づくターゲットのドップラ速度情報を出力してもよい。
なお、ドップラ周波数情報は相対速度成分に変換して出力されてもよい。ターゲットのドップラ周波数判定結果のドップラ周波数インデックスf
outを相対速度成分v
d(f
out)に変換するには、次式(49)を用いて変換することができる。ここで、λは送信無線部(図示せず)から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長である。また、Δ
fは、ドップラ解析部210におけるFFT処理でのドップラ周波数間隔である。例えば、本実施の形態では、Δ
f=1/{N
code×Loc ×T
r}である。
以上のように、本実施の形態では、レーダ装置10は、レーダ送信信号に対してドップラシフト量と直交符号系列とに対応する位相回転量を付与することにより、レーダ送信信号(換言すると、符号化ドップラ多重信号)を複数の送信アンテナ108から多重送信する。本実施の形態では、複数の送信アンテナ108それぞれに対して、ドップラシフト量(DOPndm)及び直交符号系列(DOPncm)の少なくとも一方が異なる組み合わせが対応付けられる。また、本実施の形態では、ドップラシフト量と直交符号系列との組み合わせにおける各ドップラシフト量に対応する直交符号系列の多重数(換言すると、符号数)は異なる。換言すると、ドップラ多重送信信号毎の符号化ドップラ多重数は不均一に設定される。
レーダ装置10は、例えば、各符号化ドップラ多重信号に対して符号分離した信号の受信電力に基づいて、各符号化ドップラ多重信号(換言すると、ドップラシフト量及び直交符号系列の組み合わせ)に対応付けられた送信アンテナ108、及び、ドップラ折り返しの有無(例えば、DopCase等)を判定できる。これにより、レーダ装置10は、ドップラ折り返しが有る場合でも、ターゲットのドップラ周波数を適切に判定できる。
よって、本実施の形態によれば、レーダ装置10は、実効的なドップラ周波数帯域幅を1/(Tr)に拡大でき、曖昧性(Ambiguity)が生じないドップラ周波数(相対速度)の検出範囲を拡大できる。これにより、レーダ装置10は、より広いドップラ周波数範囲において、物標の検知精度を向上できる。
また、本実施の形態では、符号化ドップラ多重は、ドップラ多重と符号化とを併用するので、多重送信において、ドップラ多重のみを用いる場合と比較して、ドップラ多重数を低減できる。そのため、ドップラシフトを付与する位相回転量の間隔を広くできるので、例えば、位相器の精度要件(位相変調精度)を緩和でき、位相器の調整の工数も含めてRF部のコスト低減効果も得られる。
また、本実施の形態では、符号化ドップラ多重は、ドップラ多重と符号化とを併用するので、レーダ装置10は、符号要素毎にドップラ周波数検出(相対速度検出)のためのフーリエ周波数解析(FFT処理)を行う。これにより、例えば、多重送信において、ドップラ多重のみを用いたドップラ周波数検出(相対速度検出)のためのフーリエ周波数解析(FFT処理)と比較して、FFTサイズは、(1/符号長分)となり、FFTの処理回数は、(符号長)倍となる。例えば、FFTサイズNcのFFT演算量を、概算Nc×log2(Nc)として見積もる場合、ドップラ多重のみのFFT演算に対して、本実施の形態に係る符号化ドップラ多重は{Loc×Nc/Loc×log2(Nc/Loc)}/ {Nc×log2(Nc)}=1- log2(Loc)/ log2(Nc)程度の演算量比となる。例えば、Loc=2,Nc=1024の場合、演算量比は0.9となり、FFT処理の演算低減効果が得られ、回路構成の簡易化及び低コスト化の効果も得られる。
(実施の形態1のバリエーション1)
ドップラシフト量DOP
ndmを付与するための位相回転量φ
ndmは、例えば、式(1)等に示した値に限定されない。例えば、位相回転量φ
ndmは、次式(50)に示す値でもよい。ここで、round(x)は実数値xに対し、四捨五入した整数値を出力するラウンド関数である。なお、round(N
code/N
DM)の項は、位相回転量を、ドップラ解析部210におけるドップラ周波数間隔の整数倍とする目的で導入している。また、式(50)では、角度はラジアン単位で示している。
(実施の形態1のバリエーション2)
実施の形態1では、位相回転量設定部104の符号化部106において、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),…, NDOP_CODE(NDM)は、1以上、かつ、NCM個以下の範囲において異なるように(換言すると、不均一に)設定される場合について説明した。しかし、これに限定されず、例えば、符号化ドップラ多重数NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2),…, NDOP_CODE(NDM)のうち、少なくとも1つが1以上、かつ、NCM個よりも少なければよく、値が0の符号化ドップラ多重数を含むように設定されてもよい。
例えば、符号化ドップラ多重分離部212は、NCM個の直交符号のうち使用していない符号の候補の組み合わせについて、符号分離信号電力和が最小となる組み合わせを検出することにより、DopCase_min及び符号の組み合わせ(ncm_min1、ncm_min2,…)を検出できる。また、符号化ドップラ多重分離部212は、符号化ドップラ多重数が1以上、かつ、NCM個より小さく設定したDOPndm1が少なくとも1つ含まれることを利用して、ドップラ折り返し判定を行う。
これにより、レーダ装置10は、-1/(2×Tr)≦fTARGET<1/(2×Tr)の範囲のターゲットのドップラ周波数fTARGET を検出でき、送信アンテナ108の判別、及び、ターゲットのドップラ周波数の判別を行うことができる。
例えば、図14(a)は、Nt=3、NDM=3、NCM=2とし、ドップラシフト量DOP1、DOP2及び、DOP3に対して、直交符号Code1及びCode2の割り当て数(換言すると、符号化ドップラ多重数)がNDOP_CODE(1)=0, NDOP_CODE(2)=1、NDOP_CODE(3)=2に設定された場合を示す。図14(a)の場合でも、実施の形態1と同様な効果が得られる。
また、図14(b)は、Nt=5、NDM=4、NCM=2とし、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3及び、DOP4に対して、直交符号Code1及びCode2の割り当て数(換言すると、符号化ドップラ多重数)がNDOP_CODE(1)=2, NDOP_CODE(2)=0、NDOP_CODE(3)=2、NDOP_CODE(4)=1に設定された場合を示す。図14(b)の場合でも、実施の形態1と同様な効果が得られる。
(実施の形態1のバリエーション3)
バリエーション3では、レーダ装置の送信アンテナがサブアレー構成である場合について説明する。
送信アンテナのうちのいくつかを組み合わせてサブアレーとして用いることにより、送信指向性ビームパターンのビーム幅を狭めて、送信指向性利得を向上できる。これにより、検知可能な角度範囲は狭まるが、検知可能な距離範囲を増加できる。また、指向性ビームを生成するビームウェイト係数を可変にすることにより、ビーム方向を可変制御できる。
図15は、バリエーション3に係るレーダ送信部100aの構成例を示すブロック図である。なお、図15において、図1に示すレーダ送信部100と同様の動作を行う構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、バリエーション3に係るレーダ受信部は、図1に示すレーダ受信部200と基本構成が共通するので、図1を援用して説明する。
図15では、例えば、Nt個の位相回転部107それぞれの出力に対して、NSA個の送信アンテナ108を用いたサブアレー(例えば、Nt組のサブアレー)が構成される。なお、送信アンテナ108のサブアレー構成は、図15に示す例に限定されない。例えば、各位相回転部107の出力に対するサブアレーに含まれる送信アンテナ数(換言すると、NSA)は、位相回転部107間で同数でなくてもよく、異なってよい。ここで、NSAは1以上の整数である。なお、NSA=1の場合は、図1と同様になる。
図15において、ビームウェイト生成部109は、サブアレーを用いて送信ビームの主ビーム方向を所定方向に向けるビームウェイトを生成する。例えば、N
SA個の送信アンテナを用いたサブアレーが、素子間隔d
SAで直線配置される場合の送信ビーム方向をθ
TxBFと表す。この場合、ビームウェイト生成部109は、例えば、次式(51)のようなビームウェイトW
Tx(Index_TxSubArray, θ
TxBF)を生成する。
ここで、Index_TxSubArrayは、サブアレーの要素インデックスを示し、Index_TxSubArray =1,…, NSAである。また、λはレーダ送信信号の波長を示し、dSAはサブアレーアンテナ間隔を示す。
各ビームウェイト乗算部110は、対応する位相回転部107からの出力に対して、ビームウェイト生成部109から入力されるビームウェイト係数WTx(Index_TxSubArray, θTxBF)を乗算する。ビームウェイトWTx(Index_TxSubArray, θTxBF)が乗算された送信信号は、NSA個のサブアレーアンテナから送信される。ここで、Index_TxSubArray =1,…, NSAである。
以上の動作により、レーダ送信部100aは、位相回転部107からの出力に対して、サブアレーを用いて所定方向に送信指向性ビームを向ける送信が可能となる。これにより、所定方向の送信指向性利得を向上でき、検知可能な距離範囲を拡大できる。また、SNRを向上できる。
また、レーダ送信部100aは、送信指向性ビームを生成するビームウェイト係数を可変に設定することにより、ビーム方向を可変制御できる。
なお、バリエーション3において説明したサブアレー送信を行う構成は、他のバリエーション又は実施の形態においても同様に適用できる。
また、図15では、位相回転部107による位相回転と、ビームウェイト乗算部110によるビームウェイト乗算とを別々に行う構成を示したが、この構成に限定されない。例えば、ビームウェイト乗算部110は、位相回転部107による位相回転ψndop_code(ndm), ndm(m)を、ビームウェイト係数WTx(Index_TxSubArray, θTxBF)に含めて乗算してもよい。すなわち、ビームウェイト乗算部110は、レーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号に対して、WTx(Index_TxSubArray, θTxBF)×exp(jψndop_code(ndm), ndm(m))を乗算してもよい。このような構成とすることで、位相回転部の位相器及び位相変調器を省くことができ、回路構成を簡易化することができる。
(実施の形態1のバリエーション4)
バリエーション4では、送信フレーム毎にドップラシフト量(又は、送信周期Tr)を可変にする場合について説明する。換言すると、符号化ドップラ多重送信に使用されるドップラシフト量の各間隔は、レーダ送信信号が送信されるフレーム毎(例えば、Nc回の送信周期毎(Nc×Tr)毎)に可変に設定される。
例えば、同一の距離インデックスfb_cfarにおいて、受信レベルのほぼ等しい複数ターゲットが存在する場合、複数のターゲットのドップラピークの間隔が、ドップラ多重におけるドップラシフト量の間隔に一致すると、符号化ドップラ多重分離部212は、送信アンテナ108及びターゲットのドップラ周波数を判別できない可能性がある。
一方で、複数のターゲット間のドップラ周波数は異なり得ることから、ターゲットとレーダ装置10との間の相対移動速度は異なり得る。そのため、レーダ装置10において、レーダ観測を続けて行うことにより、或る時点のレーダ測位出力において送信アンテナ108及びターゲットのドップラ周波数を判別ができない場合でも、続く時点のレーダ測位出力では、複数のターゲット間の距離が異なって測定される可能性が高くなり得る。よって、複数のターゲットそれぞれを分離した出力を得る確率が高いことが想定される。
更に、複数のターゲットに対応する信号をより確実に分離するため、例えば、レーダ装置10は、レーダ測位を継続的に行う場合、レーダ測位毎(例えば、Nc回の送信周期(Nc×Tr)毎)に、送信周期Tr及びドップラシフト量の少なくとも一方の間隔を可変に設定してもよい。
これにより、例えば、同一の距離インデックスfb_cfarにおいて、複数のターゲットのドップラピークの受信レベルがほぼ等しく、ドップラピークの間隔がドップラシフト量の間隔に一致して、符号化ドップラ多重分離部212において送信アンテナ108の判別及びターゲットのドップラ周波数の判別ができない場合でも、次のレーダ測位においてはドップラシフト量の間隔が異なる可能性をより高めることができる。よって、レーダ装置10は、複数のターゲットに対応する信号をより確実に分離できる。
例えば、ドップラシフト量DOP
ndmを付与するための位相回転量φ
ndmは、次式(52)のように設定されてもよい(角度はラジアン単位で示している)。
例えば、式(52)において、レーダ装置10は、レーダ測位毎にδを可変することにより、ドップラシフト量の間隔を可変に設定できる。例えば、レーダ装置10は、レーダ測位毎にδを0、1、0、1,…,となるように周期的に可変してもよい。
また、レーダ装置10は、例えば、レーダ測位毎に送信周期Trを可変に設定することで、ドップラシフト量の間隔が変化し、ドップラシフト量を可変に設定する場合と同等の効果が得られる。
(実施の形態1のバリエーション5)
バリエーション5では、例えば、同一又は一部の周波数帯が重複する複数のレーダ装置からの干渉の影響を低減する方法について説明する。
図16は、バリエーション5に係るレーダ装置10bの構成例を示すブロック図である。なお、図16において、図1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。例えば、図16に示すレーダ装置10bは、図1に示すレーダ装置10に対して、レーダ送信部100bの位相回転量設定部104bにおいてランダム符号付与部111を追加し、レーダ受信部200bの信号処理部206bにおいてランダム符号乗算部214を追加した構成である。
図16において、ランダム符号付与部111は、例えば、符号化部106の出力である符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)に対して、疑似ランダム符号系列RCodeの符号要素RC(RC_INDEX(m))を乗算して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1, …, Ncであり、mdn=1,…, NDMであり、ndop_code(ndm)=1,…, NDOP_CODE(ndm)である。
例えば、擬似ランダムな符号には、PN(pseudo random noise)符号、M系列符号、又は、Gold符号を用いてよい。また、擬似ランダムな符号系列RCodeは、例えば、次式(53)のようにLRC個の符号要素からなる。
RCode={RC(1),RC(2),…,RC(NLRC)} (53)
擬似ランダム符号系列の符号要素は、例えば、1から−1の値を含み、1の場合は0の位相回転を付与し、−1の場合はπの位相回転を付与する。擬似ランダムな符号系列の符号長N
LRCは、N
c以下である。また、例えば、ランダム符号付与部111は、第m番目の送信周期毎に擬似ランダムな符号系列の符号要素インデックスRC_INDEX(m)を次式(54)のように巡回的に可変にする。
また、ランダム符号付与部111は、擬似ランダムな符号系列RCodeのランダム符号要素RC(RC_INDEX(m))をランダム符号乗算部214に出力する。
レーダ送信部100bのNt個の位相回転部107は、送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号に対して、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)に擬似ランダム符号系列RCodeの符号要素RC(RC_INDEX(m))を付与した位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)+angle[RC(RC_INDEX(m))]をそれぞれ付与する。
例えば、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3の場合、ドップラ多重数NDM=2、NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={1,-1}を用い、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=1, NDOP_CODE(2)=2とする場合について説明する。
この場合、ランダム符号付与部111は、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)にランダム符号RC(RC_INDEX(m))を付与した位相回転量を、送信周期毎に位相回転部107に出力する。
位相回転部PROT#[1, 1]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に、次式(55)のように位相回転を付与する。位相回転部PROT#[1, 1]の出力は、送信アンテナTx#[1, 1]から出力される。ここでcp(t)は送信周期毎のチャープ信号を表す。
同様に、位相回転部PROT#[1, 2]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に、次式(56)のように位相回転を付与する。位相回転部PROT#[1, 2]の出力は、送信アンテナTx#[1, 2]から出力される。
同様に、位相回転部PROT#[2, 2]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に、次式(57)のように位相回転を付与する。位相回転部PROT#[2, 2]の出力は、送信アンテナTx#[2, 2]から出力される。
レーダ受信部200bのランダム符号乗算部214は、送信周期mにおけるビート周波数解析部208の出力信号RFTz(fb, m)に対して、ランダム符号付与部111から入力されるランダム符号要素RC(RC_INDEX(m))を乗算する。ランダム符号乗算部214は、RC(RC_INDEX(m))×RFTz(fb, m)で表される信号を出力切替部209に出力する。ここで、z=1, …, Naである。
以上のような動作により、同一又は一部の周波数帯が重複する複数のレーダ装置からの干渉が存在する場合でも、レーダ装置10bにおいて、干渉信号は、ドップラ解析部210に入力される前にランダム符号乗算部214によって擬似ランダムな信号に変換できる。これにより、ドップラ解析部210の出力において、干渉波の信号電力をドップラ周波数領域に拡散する効果が得られる。例えば、擬似ランダムな符号系列の乗算によって、干渉波のピーク電力を1/Ncode程度に低減できる。したがって、後段のCFAR部211において、干渉波のピークが誤って検出される確率を大幅に低減できる。
なお、位相回転部107の位相回転精度が十分でない場合には、直交符号の送信周期中にランダム符号を付与することによって位相回転誤差が発生すると、直交符号間の干渉が発生する可能性がある。この干渉発生に対する対策として、例えば、擬似ランダム符号系列の符号長N
LRCは、Ncode以下とし、ランダム符号付与部111は、直交符号長Locの送信周期中には同一のランダム符号要素を付与してもよい。例えば、ランダム符号付与部111は、次式(58)のように、擬似ランダム符号要素インデックスRC_INDEX(m)を送信周期m毎に設定してもよい。
これにより、直交符号の送信周期中には同一のランダム符号要素が付与されるので、位相回転部107の位相回転精度が十分でない場合でも、ランダム符号による位相回転誤差は一定となり、直交符号間の干渉を低減できる。
例えば、式(58)に示すRC_INDEX(m)を用いる場合に、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3、ドップラ多重数NDM=2、NCM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code1={1,1}、Code2={1,-1}とし、符号化ドップラ多重数をNDOP_CODE(1)=1, NDOP_CODE(2)=2とする場合について説明する。
この場合、ランダム符号付与部111は、符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)にランダム符号RC(RC_INDEX(m))を付与した位相回転量を、送信周期毎に位相回転部107に出力する。
位相回転部PROT#[1, 1]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に、次式(59)のように位相回転を付与する。位相回転部PROT#[1, 1]の出力は、送信アンテナTx#[1, 1]から出力される。ここでcp(t)は送信周期毎のチャープ信号を表す。
同様に、位相回転部PROT#[1, 2]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に、次式(60)のように位相回転を付与する。位相回転部PROT#[1, 2]の出力は、送信アンテナTx#[1, 2]から出力される。
同様に、位相回転部PROT#[2, 2]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に、次式(61)のように位相回転を付与する。位相回転部PROT#[2, 2]の出力は、送信アンテナTx#[2, 2]から出力される。
(実施の形態1のバリエーション6)
実施の形態1では、位相回転部PROT#[ndop_code(ndm), ndm]の出力は、送信アンテナTx#[ndop_code(ndm), ndm]から送信される場合について説明したが、これに限定されない。
例えば、複数の送信アンテナ108それぞれと、符号化ドップラ多重信号の割り当て(換言すると、ドップラシフト量及び符号系列の組み合わせ)と、の対応付けは、レーダ送信信号が送信されるフレーム毎に可変に設定されてよい。
例えば、レーダ測位を継続的に行う場合、レーダ装置10は、レーダ測位毎(例えば、Nc回の送信周期(Nc×Tr)毎)に、位相回転部PROT#[ndop_code(ndm), ndm]の出力を送信する送信アンテナ108を可変にしてもよい。ここで、ndm=1,…, NDMであり、ndop_code(ndm)=1,…, NDOP_CODE(ndm)である。
レーダ装置10は、例えば、Nt個の位相回転部PROT#[ndop_code(ndm), ndm]の出力を、Nt個の送信アンテナ#1,…,#Ntの何れから送信するかについて割り当てる割当テーブルを複数保持してもよい。例えば、レーダ装置10は、レーダ測位毎(例えば、Nc回の送信周期(Nc×Tr)毎)に割当テーブルを変更することにより、レーダ測位毎に送信する送信アンテナ108を可変に設定できる。
このように、レーダ装置10は、レーダ測位を継続的に行う場合に、レーダ測位毎にNt個の位相回転部107の出力に対して、対応する送信アンテナ108を可変に設定する。これにより、送信アンテナ108毎に異なる干渉(例えば、符号間干渉)の影響を受けて信号を受信する場合等に、送信アンテナ108を可変にすることで、干渉の影響のランダマイズ効果を得ることができる。
(実施の形態1のバリエーション7)
実施の形態1では、符号化部106は、ドップラシフト設定部105から出力されるNDM個のドップラシフト量を付与する位相回転量φ1,…,φNDMのそれぞれに対して、1個又はNCM個以下の複数の直交符号系列に基づく位相回転を付与することにより、符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)を設定し、位相回転部107に出力する。しかし、符号化部106の処理は、これに限定されない。
バリエーション7では、送信周期毎に、送信アンテナ108とドップラ多重信号との対応付けが可変に設定される場合について説明する。
例えば、符号化ドップラ多重送信に使用されるドップラ多重数は同じままで、送信アンテナ108に対する、ドップラ多重(換言すると、ドップラシフト量)の割り当てを送信周期毎に可変にしてよい。
例えば、符号化部106は、直交符号系列の符号要素毎(例えば、送信周期Tr毎)に、異なるドップラシフト量を付与する位相回転量を用いて符号化ドップラ位相回転量を設定する。換言すると、符号化部106は、各送信アンテナ108から送信されるレーダ送信信号に付与される符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)において、直交符号系列の符号要素毎(例えば、送信周期Tr毎)に、ドップラシフト量DOPndmの値を異ならせてよい。
このような符号化ドップラ位相回転量の設定により、実施の形態1と同様な効果が得られる。また、例えば、送信アンテナ108毎に異なる干渉(例えば、符号間干渉)の影響を受けて信号を受信する場合等に、送信アンテナ108を可変にすることで、干渉の影響のランダマイズ効果を得ることができる。
例えば、符号化部106は、式(5)の代わりに、次式(62)を用いて符号化ドップラ位相回転量ψ
ndop_code(ndm), ndm(m)を設定してもよい。
式(62)に示す符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)において、符号化に用いる符号長Loc回の送信周期の期間において、ドップラシフト量を付与する位相回転量をφmod(ndm+OC_INDEX-2,NDM)+1となるように送信周期に可変に設定し(式(62)の第1項)、符号化で用いる符号Codendop_code(ndm)のLoc個の各符号要素OCndop_code(ndm)(1),…,OCndop_code(ndm)(Loc)の位相回転量を付与している(式(62)の第2項目)。式(62)において、ドップラシフト量を付与する位相回転量をφmod(ndm+OC_INDEX-2,NDM)+1は、符号要素(例えば、OC_INDEX)毎に可変に設定される。
一例として、Nt=3、NDM=2、NCM=2の場合に、式(62)の符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm1(m)を設定する場合について説明する。
この場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2及び直交符号Code1、Code2の割り当ては、例えば、図17に示すように、NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2)の設定に応じて決定される。図17において、横軸は、1番目の符号要素(例えば、OC_INDEX=1)に対して用いるドップラシフト量と、2番目の符号要素(例えば、OC_INDEX=2)に対して用いるドップラシフト量との組み合わせを表している。
図17に示すように、例えば、NCM=2の符号長の符号系列において、1番目の符号要素に対応するドップラシフト量と、2番目の符号要素に対応するドップラシフト量とが異なる。
例えば、符号化部106において、式(62)を用いた場合、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3、ドップラ多重数N
DM=2、N
CM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code
1={1,1}、Code
2={1,-1}を用いる場合に、符号化ドップラ多重数をN
DOP_CODE(1)=1, N
DOP_CODE(2)=2とする場合(例えば、図17(b)を参照)について説明する。この場合、符号化部106は、以下の式(63)〜(65)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
2, 2(m)を設定して位相回転部107に出力する。
式(63)〜(65)の符号化ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)のそれぞれにおいて、ドップラシフト量DOP1、DOP2を付与する位相回転量φ1、φ2が、符号長Loc=2の周期で交互に用いられている。
また、式(64)及び式(65)に示すψ1, 2(m), ψ2, 2(m)では、ドップラシフト量DOP1、DOP2を付与する位相回転量φ1、φ2を符号長Loc=2の周期で同じ位相回転量となる関係を保ちつつ、直交符号系列Code1、Code2による位相回転がそれぞれ付与される。換言すると、ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)では、符号長Locの周期において、ドップラシフト量を付与する位相回転量を同様に変化させて、複数の直交符号系列を用いて符号多重が行われる。
また、式(63)及び式(64)に示すψ1, 1(m)とψ1, 2(m)とでは、ドップラシフト量DOP1、DOP2を付与する位相回転量φ1、φ2を符号長Loc=2の周期で異なる位相回転量とする。式(63)及び式(65)に示すψ1, 1(m)とψ2, 2(m)とも、同様に、ドップラシフト量DOP1、DOP2を付与する位相回転量φ1、φ2を符号長Loc=2の周期で異なる位相回転量とする。
ここで、例えば、ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量を式(1)のφ
ndm=2π(ndm-1)/N
DMとし、ドップラシフト量DOP
1を付与する位相回転量φ
1=0、ドップラシフト量DOP
2を付与する位相回転量φ
2=πを用いた場合について説明する。この場合、符号化部106は、以下の式(66)〜(68)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
2, 2(m)を設定して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1、…、Ncである。
また、他の例として、Nt=6、NDM=4、NCM=2の場合に、式(62)の符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm1(m)を設定する場合について説明する。
この場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3、DOP4、及び、直交符号Code1、Code2の割り当ては、例えば、図18に示すように、NDOP_CODE(1), NDOP_CODE(2)、NDOP_CODE(3),NDOP_CODE(4)の設定に応じて決定される。図18において、横軸は、1番目の符号要素(例えば、OC_INDEX=1)に対して用いるドップラシフト量と、2番目の符号要素(例えば、OC_INDEX=2)に対して用いるドップラシフト量との組み合わせを表している。
図18に示すように、例えば、NCM=2の符号長の符号系列において、1番目の符号要素に対応するドップラシフト量と、2番目の符号要素に対応するドップラシフト量とが異なる。
例えば、符号化部106において、式(62)を用いた場合、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=6、ドップラ多重数N
DM=4、N
CM=2とし、符号長Loc=2の直交符号系列Code
1={1,1}、Code
2={1,-1}を用いる場合に、符号化ドップラ多重数をN
DOP_CODE(1)=1, N
DOP_CODE(2)=1, N
DOP_CODE(3)=2, N
DOP_CODE(4)=2とする場合について説明する。この場合、符号化部106は、以下の式(69)〜(74)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
1, 3(m) , ψ
2, 3(m) , ψ
1, 4(m) , ψ
2, 4(m)を設定して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1、…、Ncである。
式(69)〜(74)の符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)のそれぞれにおいて、ドップラシフト量DOPndm、DOPmod(ndm, NDM)+1を付与する位相回転量φndm、φmod(ndm, NDM)+1が、符号長Loc=2の周期で用いられている。また、異なるndmの符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm(m)間では、ドップラシフト量を付与する位相回転量は互いに異なる。
また、符号化ドップラ位相回転量ψ1, ndm(m), …, ψn2dop_code(ndm), ndm(m)では、ドップラシフト量DOPndm、DOPmod(ndm, NDM)+1を付与する位相回転量φndm、φmod(ndm, NDM)+1を符号長Loc=2の周期で同じ位相回転量となる関係を保ちつつ、直交符号系列Code1,…,Codendop_code(ndm)による位相回転が付与される。
ここで、例えば、ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量を式(1)のφ
ndm=2π(ndm-1)/N
DMとし、ドップラシフト量DOP
1を付与する位相回転量φ
1=0、ドップラシフト量DOP
2を付与する位相回転量φ
2=π/2、ドップラシフト量DOP
3を付与する位相回転量φ
3=π、ドップラシフト量DOP
4を付与する位相回転量φ
4=3π/2を用いた場合について説明する。この場合、符号化部106は、以下の式(75)〜(80)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
1, 3(m) , ψ
2, 3(m) , ψ
1, 4(m) , ψ
2, 4(m)を設定して、位相回転部107に出力する。ここで、m=1、…、Ncである。
次に、上述した符号化部106において符号化ドップラ位相回転量を設定した場合のレーダ受信部200の動作例について説明する。レーダ受信部200では、符号化ドップラ多重分離部212における符号分離処理が実施の形態1と異なる。
符号化ドップラ多重分離部212は、CFAR部211の出力である距離インデックスfb_cfarのNDM個の符号化ドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)で指示される第z番目の信号処理部206におけるドップラ解析部210の出力に対して符号分離処理を行う。
符号分離処理は、例えば、全てのnfd=1,…,N
DMに対して、全てのDopCase=1,…,N
DMの候補に渡って行われてもよい。ただし、符号化ドップラ多重分離部212は、符号化ドップラ多重数をN
CM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号を検出し、送信アンテナ108の判別、及び、ターゲットドップラ周波数の判定を行う。このことから、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、次式(81)のような符号分離処理を行うことにより、分離処理の演算量を低減できる。
なお、上付き添え字のアスタリスク(*)は複素共役演算子を表す。また、nfd=1,…,NDM 、ncm=1,…, NCMでありDopCase=1,…,NDMである。
例えば、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定した符号化ドップラ多重信号が、式(62)の符号化ドップラ位相回転量ψndop_code(ndm), ndm1(m)を用いた場合、符号化ドップラ多重分離部212は、noc番目の符号要素におけるドップラシフト量として、DOPmod(ndm1+noc-2, NDM)+1を用いることを考慮して、式(81)に示す符号分離処理を行う。
式(81)において、符号化ドップラ多重分離部212は、各DopCaseのうち、noc番目の符号要素毎のドップラ解析部210の出力に対して、ドップラシフト量DOPmod(ndm1+noc-2, NDM)+1が含まれる候補DOPposi(DOPmod(ndm1+noc-2, NDM)+1,DopCase)を用いて符号分離処理を行う。ここで、式(81)で得られる符号分離信号DeMULz ncm(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)は、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)に対し、Codencmを用いた符号分離信号を表す。なお、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1, DopCase)-1)×ΔFD)は、式(62)の符号化ドップラ位相回転量を用いる場合、1番目の符号要素のドップラ解析部210の出力におけるドップラ周波数インデックスを表す。
また、式(81)において、expの項では、符号要素毎のドップラ解析部210の出力間においてサンプリング時間がずれているため、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DopCase-1)×ΔFD-DOP1)に応じた位相補正が行われている。
また、ドップラシフト設定部105において設定されたドップラシフト量DOPndmは、DOP1<DOP2<….<DOPDM-1<DOPDMであり、初期状態(ターゲットとの相対速度がゼロ)の場合、DOP1はfs_comp=-Ncode/2,…,-Ncode/2+ΔFD-1の範囲内にある。このため、符号化ドップラ多重分離部212は、例えば、DOP1を基準とし、位相補正量を算出する。
レーダ受信部200における以降の処理は、実施の形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
(実施の形態1のバリエーション8)
実施の形態1では、レーダ装置10において、レーダ送信信号として、チャープパルスを繰り返しNc回送信する際に、チャープ信号の中心周波数を一定にする場合(例えば、図2を参照)について説明した。しかし、チャープ信号の中心周波数は、一定である場合に限定されない。
バリエーション8では、チャープ信号の中心周波数が可変に設定される場合について説明する。
[レーダ装置の構成]
図19は、バリエーション8に係るレーダ装置10cの構成例を示すブロック図である。なお、図19において、実施の形態1(図1)と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
以下では、例えば、レーダ装置10cは、チャープ信号の中心周波数fcを送信周期Tr毎にΔf変化(例えば、Δf>0の場合には増加、Δf<の場合には減少)させたレーダ送信信号を送信する。
レーダ送信部100cにおけるレーダ送信信号生成部101cは、変調信号発生部102と、VCO103cと、送信周波数制御部112とを備える。
例えば、変調信号発生部102は、のこぎり歯形状のVCO制御用の変調信号を周期的に発生させる。ここで、送信周期をTrとする。
送信周波数制御部112は、VCO103cから出力される周波数変調信号(チャープ信号)の中心周波数fcを送信周期Tr毎に制御する。例えば、送信周波数制御部112は、周波数変調信号の中心周波数fcを送信周期Tr毎にΔf変化させてもよい。
VCO103cは、送信周波数制御部112及び変調信号発生部102の出力に基づいて、周波数変調信号を位相回転部107及びレーダ受信部200c(例えば、ミキサ部204)へ出力する。
図20は、周波数変調された周波数変調信号(以下、チャープ信号)の一例を示す。
図20では、例えば、VCO103cは、第1の送信周期Tr#1において、中心周波数fc(1)がf0のチャープ信号を出力する。また、図20に示すように、VCO103cは、第2の送信周期Tr#2において、中心周波数fc(2)がf0+Δfのチャープ信号を出力する。同様に、図20では、VCO103cは、第mの送信周期Tr#mにおいて、中心周波数fc(m)がf0+(m-1)Δfのチャープ信号を出力する。このように、VCO103cは、送信周期Tr毎にチャープ信号の中心周波数をΔf変化させる。
すなわち、図20では、Nc番目の送信周期Tr#Ncにおけるチャープ信号の中心周波数fc(Nc)は、f0+Δf×(Nc-1)となる。
なお、各チャープ信号には、例えば、レンジゲートの時間幅TAにおける周波数変調帯域幅Bwが同一となるチャープ信号が用いられてよい。また、図20に示す例では、Δf>0の場合(換言すると、中心周波数fcが増加する場合)について示すが、Δf<0の場合(換言すると、中心周波数fcが減少する場合)についても同様である。
図19に示すレーダ送信部100cにおける他の動作は実施の形態1と同様でもよい。
次に、レーダ装置10cのレーダ受信部200cにおける動作例について説明する。
レーダ受信部200cにおいて、受信アンテナ202において受信した信号に対する各アンテナ系統処理部201の処理、後続するCFAR部211、及び、符号化ドップラ多重分離部212における動作は実施の形態1の動作と同様である。また、レーダ受信部200cにおいて、方向推定部213cにおける符号化ドップラ多重分離部212の出力を用いた方向推定処理も実施の形態1の動作と同様である。
レーダ受信部200cでは、例えば、方向推定部213cにおける、ターゲットのドップラ周波数判定結果(例えば、ターゲットのドップラ周波数fTARGET)に基づくターゲットのドップラ速度情報に関する変換処理が実施の形態1と異なる。
なお、ビート周波数インデックスに基づく距離情報R(fb)の変換は、実施の形態1と同様であり、方向推定部213cは、例えば、式(31)に基づいて、ビート周波数インデックス(又は、距離インデックス)fbを用いて距離情報R(fb)を出力してもよい。
方向推定部213cは、例えば、ターゲットのドップラ周波数fTARGETと距離インデックスfb_cfarを用いて、以下のように検出したターゲットのドップラ速度情報vdを出力してもよい。
例えば、チャープ信号の中心周波数fcを送信周期Tr毎にΔf変化させたレーダ送信信号を用いる場合、ターゲットの相対速度がゼロの場合でも、送信周期Tr毎にチャープ信号の中心周波数fcが変化している。このため、レーダ装置10cの受信信号には、送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
ターゲット距離R
targetに対する第m番の送信周期Trにおける中心周波数fcは、第1番の中心周波数を基準として(m-1)Δf変化する。この中心周波数fcの変化に伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/C
o)を考慮すると式(81-1)で示される。なお、式(81-1)は、第1の送信周期Trの位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。
よって、次式(81-2)に示すように、方向推定部213cは、送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数fcの変化量であるΔfを考慮した変換式に基づいて、ドップラ速度情報v
d(f
TARGET, f
b_cfar)を算出する。
式(81-2)における第1項は、式(49)に相当するもので、ドップラ周波数fTARGETで示される相対ドップラ速度成分である。式(81-2)における第2項は、チャープ信号の中心周波数fcを、送信周期Tr毎にΔf変化させることで生じるドップラ速度成分である。方向推定部213cは、例えば、式(81-2)に示すように第1項から第2項のドップラ成分を除くことで本来のターゲットの相対ドップラ速度vd(fTARGET, fb_cfar)を算出できる。ここで、R(fb_cfar)は、式(31)に従ってビート周波数インデックスfb_cfarから算出される距離情報(距離推定値)である。
なお、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
d(f
TARGET, f
b_cfar)が、v
d(f
TARGET, f
b_cfar) < -C
0/(4f
0 Tr)となる場合、方向推定部213cは、次式(81-3)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
TARGET, f
b_cfar)を出力してもよい。
同様に、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
d(f
TARGET, f
b_cfar)が、v
d(f
TARGET, f
b_cfar) > C
0/(4f
0 Tr)となる場合、方向推定部213cは、次式(81-4)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
TARGET, f
b_cfar)を出力してもよい。
以上のように、バリエーション8では、レーダ装置10cにおいて、チャープ信号の中心周波数fcは、レーダ送信信号の送信周期Trに基づいて変化する。例えば、レーダ装置10cは、レーダ送信信号として、チャープ信号の中心周波数fcを、送信周期Tr毎にΔf変化(例えば、Δf>0の場合には増加、Δf<の場合には減少)させて送信する。この場合でも、レーダ装置10c(例えば、MIMOレーダ)は、実施の形態1と同様、実効的なドップラ周波数帯域幅を1/(Tr)に拡大でき、曖昧性(Ambiguity)が生じないドップラ周波数(相対速度)の検出範囲を拡大できる。また、レーダ装置10cは、多重信号間の相互干渉をほぼノイズレベル程度に抑えることができる。よって、バリエーション8によれば、レーダ装置10cは、より広いドップラ周波数範囲において、物標の検知精度を向上できる。
なお、バリエーション8は、実施の形態1に限らず、実施の形態1のバリエーション1〜7にも同様に適用でき、それぞれ同様の効果を得ることができる。例えば、実施の形態1のバリエーション1〜7の何れかにおいて、図20に示すように中心周波数fcが変化するチャープ信号を含むレーダ送信信号が用いられてもよい。
また、バリエーション8では、レーダ装置10cは、例えば、レーダ送信信号において、チャープ信号の中心周波数fcを送信周期Tr毎にΔf変化させて送信するので、チャープ信号の中心周波数の変化幅によって距離分解能を向上できる(例えば、非特許文献4を参照)。バリエーション8によれば、チャープ信号の中心周波数の変化幅によって距離分解能を向上できるため、チャープ信号の中心周波数を一定として送信する場合と比較して、チャープ掃引帯域(例えば、Bw)を低減できる。チャープ掃引帯域の低減により、例えば、距離分解能を向上しつつ、送信周期Trの短縮が可能であるので、符号多重送信において、曖昧性なく検出可能なドップラ範囲をさらに拡大できる。
(実施の形態1のバリエーション9)
チャープ信号の中心周波数を変更する周期は、バリエーション8のような送信周期Trに限定されない。バリエーション9では、チャープ信号の中心周波数が、複数のチャープ信号の送信周期毎に可変に設定される場合について説明する。
例えば、バリエーション9では、ドップラ多重送信に用いる1つの直交符号の符号長Loc回の送信周期(Loc×Tr)毎(換言すると、直交符号系列の送信周期。以下、「符号送信周期」と呼ぶ)に可変に設定される場合について説明する。
[レーダ装置の構成]
図21は、バリエーション9に係るレーダ装置10dの構成例を示すブロック図である。なお、図21において、実施の形態1(図1)又はバリエーション8(図19)と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
バリエーション9では、例えば、レーダ装置10dは、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔf変化(例えば、Δf>0の場合には増加、Δf<の場合には減少)させたレーダ送信信号を送信する。
レーダ送信部100dにおけるレーダ送信信号生成部101dは、変調信号発生部102と、VCO103dと、送信周波数制御部112dとを備える。また、レーダ送信部100dにおける位相回転量設定部104dは、ドップラシフト設定部105と、符号化部106dとを備える。
例えば、レーダ送信信号生成部101dにおいて、変調信号発生部102は、のこぎり歯形状のVCO制御用の変調信号を周期的に発生させる。ここで、送信周期をTrとする。
送信周波数制御部112dは、符号化部106dから出力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、VCO103dから出力される周波数変調信号(チャープ信号)の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎に制御する。
例えば、送信周波数制御部112dは、OC_INDEX=1となる送信周期Trにおいて、VCO103dから出力される周波数変調信号の中心周波数fcをΔf変化させてもよい。換言すると、送信周波数制御部112dは、OC_INDEX≠1となる送信周期Trにおいて、VCO103dから出力される周波数変調信号の中心周波数fcを、前回の送信周期Trにおける中心周波数fcと同一に制御する。この制御により、送信周波数制御部112dは、符号送信周期(Loc×Tr)毎に中心周波数fcがΔf変化するように制御できる。
VCO103dは、送信周波数制御部112d及び変調信号発生部102の出力に基づいて、周波数変調信号を位相回転部107及びレーダ受信部200d(例えば、ミキサ部204)へ出力する。
図22は、周波数変調された周波数変調信号(以下、チャープ信号)の一例を示す。
図22では、例えば、VCO103dは、第1の送信周期Tr#1(例えば、OC_INDEX=1)において、中心周波数fc(1)がf0のチャープ信号を出力する。また、図22に示すように、VCO103dは、第2の送信周期Tr#2(例えば、OC_INDEX=2)において、中心周波数fc(2)がf0のチャープ信号を出力する。同様に、VCO103dは、第3の送信周期(例えば、OC_INDEX=3。図示せず)から第Locの送信周期Tr#Loc(例えば、OC_INDEX=Loc)それぞれにおいて、中心周波数fc(3)〜fc(Loc)がf0のチャープ信号を出力する。
VCO103dは、第(Loc+1)の送信周期Tr#(Loc+1)において、中心周波数fc(Loc+1)がf0+Δfのチャープ信号を出力する。また、VCO103dは、第(Loc+2)の送信周期Tr#(Loc+2)から第(2Loc)の送信周期Tr#(2Loc)それぞれにおいて、中心周波数fc(Loc+2)〜fc(2Loc)がf0+Δfのチャープ信号を出力する。
同様に、VCO103dは、第mの送信周期Tr#mにおいて、中心周波数fc(m)がf0+floor[(m-1)/Loc]Δfのチャープ信号を出力する。
すなわち、図22では、Nc番目の送信周期Tr#Ncにおけるチャープ信号の中心周波数fc(Nc)は、f0+(Ncode-1)Δfとなる。ここで、Ncode=Nc/Locである。
なお、各チャープ信号には、例えば、レンジゲートの時間幅TAにおける周波数変調帯域幅Bwが同一となるチャープ信号が用いられてよい。また、図22に示す例では、Δf>0の場合(換言すると、中心周波数fcが増加する場合)について示すが、Δf<0の場合(換言すると、中心周波数fcが減少する場合)についても同様である。
図21に示すレーダ送信部100dにおける他の動作は実施の形態1と同様でもよい。
次に、レーダ装置10dのレーダ受信部200dにおける動作例について説明する。
レーダ受信部200dにおいて、受信アンテナ202において受信した信号に対する各アンテナ系統処理部201の処理、及び、後続するCFAR部211における動作は実施の形態1の動作と同様である。また、レーダ受信部200dにおいて、方向推定部213dにおける符号化ドップラ多重分離部212dの出力を用いた方向推定処理も実施の形態1の動作と同様である。
レーダ受信部200dでは、例えば、符号化ドップラ多重分離部212dの動作、及び、方向推定部213dにおけるターゲットのドップラ速度情報に関する変換処理が実施の形態1と異なる。
なお、ビート周波数インデックスに基づく距離情報R(fb)の変換は、実施の形態1と同様であり、方向推定部213dは、例えば、式(31)に基づいて、ビート周波数インデックス(又は、距離インデックス)fbを用いて距離情報R(fb)を出力してもよい。
以下、符号化ドップラ多重分離部212dにおいて実施の形態1と異なる動作例について説明する。
例えば、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔf変化させたレーダ送信信号を用いる場合、ターゲットの相対速度がゼロの場合でも、符号送信周期(Loc×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcが変化している。このため、レーダ装置10dのLoc個の各ドップラ解析部210の出力には、符号送信周期(Loc×Tr)毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
例えば、ターゲット距離R
targetに対する第m番目の送信周期Trにおける中心周波数fcは、第1番の送信周期Trにおける中心周波数fcを基準として、floor[(m-1)/Loc]Δf変化する。このため、中心周波数の変化に伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/C
0)を考慮すると式(81-5)で示される。なお、式(81-5)は、第1番の送信周期Trの位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。
Loc個の各ドップラ解析部210は、式(81-5)に示す位相回転を考慮したドップラ解析を行う。なお、ここでは、チャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させる符号送信周期(Loc×Tr)と、Loc個の符号要素毎のドップラ解析部210への切り替え周期とは一致する。このため、Loc個のドップラ解析部210間でのドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転を補正して符号多重信号を分離するには、符号化ドップラ多重分離部212dは、実施の形態1における<(1)符号分離処理>において説明した式(35)の代わりに次式(81-6)を用いる。
式(81-6)において、中心周波数変化に伴う位相回転を補正する項
が追加されている点が式(35)と異なる。
ここで、R(fb_cfar)は、式(31)に従ってビート周波数インデックスfb_cfarから算出される距離推定値である。
式(81-6)において、R(fb_cfar)からの反射波到来時間(2R(fb_cfar)/Co)でのΔf変化により、位相回転量は、符号送信周期(Loc×Tr)内において、2πΔf×(2R(fb_cfar)/Co)となる。よって、Loc個のドップラ解析部210間でのドップラ解析の時間差に起因する位相回転が、例えば、第1のドップラ解析部210を基準として、第nocのドップラ解析部210において(noc-1)/Loc倍となる。式(81-6)は、これらのことから導出されている。なお、noc=1,…,Locである。
このように、チャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させる周期を、符号送信周期(Loc×Tr)(又は、Locの約数となる回数の送信周期でもよい)とすることで、チャープ信号の中心周波数を変化させる周期と符号要素毎のドップラ解析部210への切り替え周期とが一致する。例えば、チャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させる周期が、符号要素毎のドップラ解析部210への切り替え周期と一致することで、符号化ドップラ多重分離部212dは、Loc個の各ドップラ解析部210における位相補正値を一意に決定できる。これにより、符号化ドップラ多重分離部212dは、(1)符号分離処理における位相補正を容易に行うことができる。よって、符号化ドップラ多重分離部212dは、符号分離処理を容易に行うことができる。
次に、方向推定部213dにおいて実施の形態1と異なる動作例(例えば、ターゲットのドップラ速度情報に関する変換処理)について説明する。
方向推定部213dは、例えば、ターゲットのドップラ周波数fTARGETと距離インデックスfb_cfarを用いて、以下のように検出したターゲットのドップラ速度情報vdを出力してもよい。
符号送信周期(Loc×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させたレーダ送信信号を用いる場合、ターゲットの相対速度がゼロとなっている場合でも、符号送信周期(Loc×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcが変化している。このため、レーダ装置10dの受信信号には、符号送信周期(Loc×Tr)毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
ターゲット距離R
targetに対する第m番目の送信周期Trにおける中心周波数fcは、第1番の中心周波数を基準としてfloor[(m-1)/Loc]Δf変化する。この中心周波数fcの変化に伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/C
o)を考慮すると式(81-7)で示される。なお、式(81-7)は、第1の送信周期Trの位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。
よって、次式(81-8)に示すように、方向推定部213dは、符号送信周期(Loc×Tr)毎のチャープ信号における中心周波数fcの変化量であるΔfを考慮した変換式に基づいて、ドップラ速度情報v
d(f
TARGET, f
b_cfar)を算出する。
式(81-8)における第1項は、式(49)に相当するもので、ドップラ周波数fTARGETで示される相対ドップラ速度成分である。式(81-8)における第2項は、チャープ信号の中心周波数fcを、符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔf変化させることで生じるドップラ速度成分である。方向推定部213dは、例えば、式(81-8)に示すように第1項から第2項のドップラ成分を除くことで本来のターゲットの相対ドップラ速度vd(fTARGET, fb_cfar)を算出できる。ここで、R(fb_cfar)は、式(31)に従ってビート周波数インデックスfb_cfarから算出される距離情報(距離推定値)である。
なお、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
d(f
TARGET, f
b_cfar)が、v
d(f
TARGET, f
b_cfar) < -C
0/(4f
0 Tr)となる場合、方向推定部213dは、次式(81-9)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
TARGET, f
b_cfar)を出力してもよい。
同様に、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
d(f
TARGET, f
b_cfar)が、v
d(f
TARGET, f
b_cfar) > C
0/(4f
0 Tr)となる場合、方向推定部213dは、次式(81-10)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
TARGET, f
b_cfar)を出力してもよい。
以上のように、バリエーション9では、レーダ装置10dにおいて、チャープ信号の中心周波数fcは、符号送信周期(Loc×Tr)に基づいて変化する。例えば、レーダ装置10dは、レーダ送信信号として、チャープ信号の中心周波数fcを、符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔf変化(例えば、Δf>0の場合には増加、Δf<の場合には減少)させて送信する。この場合でも、レーダ装置10d(例えば、MIMOレーダ)は、実施の形態1と同様、実効的なドップラ周波数帯域幅を1/(Tr)に拡大でき、曖昧性(Ambiguity)が生じないドップラ周波数(相対速度)の検出範囲を拡大できる。また、レーダ装置10dは、符号多重信号間の相互干渉をほぼノイズレベル程度に抑えることができる。よって、バリエーション9によれば、レーダ装置10dは、より広いドップラ周波数範囲において、物標の検知精度を向上できる。
なお、バリエーション9は、実施の形態1に限らず、実施の形態1のバリエーション1〜7にも同様に適用でき、それぞれ同様の効果を得ることができる。例えば、実施の形態1のバリエーション1〜7の何れかにおいて、図22に示すように中心周波数fcが変化するチャープ信号を含むレーダ送信信号が用いられてもよい。
また、バリエーション9によれば、チャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させる周期を複数の送信周期Trにする場合、例えば、チャープ信号の中心周波数fcを変化させる周期と符号送信周期(Loc×Tr)とを一致させることにより、チャープ信号の中心周波数fcを変化させる周期は符号要素毎のドップラ解析部210への切り替え周期(換言すると、符号多重に用いる符号の送信周期)とも一致する。よって、符号化ドップラ多重分離部212dは、符号多重分離処理における位相補正を容易に行うことができる。
また、バリエーション9では、レーダ装置10dは、例えば、レーダ送信信号において、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔf変化させて送信するので、チャープ信号の中心周波数の変化幅は、Δf×Ncodeとなり、距離分解能は、0.5C0/(Δf×Ncode)となる。例えば、Δf×Ncodeが大きいほど、チャープ信号の中心周波数の変化幅によって距離分解能をより向上できる。バリエーション9によれば、チャープ信号の中心周波数の変化幅によって距離分解能を向上できるため、チャープ信号の中心周波数を一定として送信する場合と比較して、チャープ掃引帯域(例えば、Bw)を低減できる。チャープ掃引帯域の低減により、例えば、距離分解能を向上しつつ、送信周期Trの短縮が可能であるので、符号多重送信において、曖昧性なく検出可能なドップラ範囲をさらに拡大できる。
なお、バリエーション9では、符号送信周期(Loc×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させたレーダ送信信号を用いる場合について説明したが、チャープ信号の中心周波数fcを変化させる周期はこれに限定されない。例えば、レーダ装置10dは、符号長Locの約数回となる送信周期(Locの約数×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させたレーダ送信信号を用いてもよい。なお、符号長Locの約数のうち、1を用いる場合はバリエーション8と同様に、送信周期Tr毎に中心周波数fcをΔf変化させることになる。
符号長Locの約数εとなる送信周期毎、すなわち、ε回の送信周期(ε×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcをΔf変化させたレーダ送信信号を用いる場合、符号送信周期(Loc×Tr)毎に、Δf×Loc/ε分のチャープ信号の中心周波数fcが変化することになる。このため、この場合、式(81-8),(81-9),(81-10)におけるΔfを、Δf×Loc/εと置き換えてよい。また、符号化ドップラ多重分離部212dは、符号分離処理において、式(81-6)の代わりに、次式(81-11)を用いる。ここで、εはLocの約数である。
(実施の形態1のバリエーション10)
周波数変調信号(チャープ信号)の中心周波数fcの制御方法は、バリエーション8(図20)及びバリエーション9(図22)に係る方法に限定されない。バリエーション10では、周波数変調信号(チャープ信号)の中心周波数fcの他の制御方法について説明する。
なお、バリエーション10に係るレーダ装置の構成は、例えば、バリエーション9に係るレーダ装置10dの構成と同様でもよい。
バリエーション10では、例えば、レーダ装置10dは、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)内において、複数の送信周期にわたり周期的に可変する。この場合、レーダ装置10dは、チャープ信号の中心周波数fcの変化が一巡するタイミングを符号送信周期(Loc×Tr)に一致させることで、符号化ドップラ多重分離部212dにおける信号処理量を低減できる(詳細は後述する)。
例えば、レーダ送信部100dにおいて、変調信号発生部102は、のこぎり歯形状のVCO制御用の変調信号を周期的に発生させる。ここで、送信周期をTrとする。
送信周波数制御部112dは、位相回転量設定部104dの符号化部106dから出力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、VCO103dから出力される周波数変調信号(チャープ信号)の中心周波数fcを送信周期Tr毎に制御する。
例えば、送信周波数制御部112dは、OC_INDEX=1となる送信周期Trにおいて、VCO103dから出力される周波数変調信号の中心周波数fcをf0に設定する。また、送信周波数制御部112dは、OC_INDEX=2となる送信周期Trにおいて、VCO103dから出力される周波数変調信号の中心周波数fcをf0+Δfに設定する。同様にして、送信周波数制御部112dは、OC_INDEX=3〜Locの各々となる送信周期Trにおいて、VCO103dから出力される周波数変調信号の中心周波数fcを、(f0+2Δf)〜(f0+(Loc-1)Δf)にそれぞれ設定する。
この制御により、送信周波数制御部112dは、例えば、各符号送信周期(Loc×Tr)にわたりチャープ信号の中心周波数fcが周期的に変化するように制御できる。
VCO103dは、送信周波数制御部112d及び変調信号発生部102の出力に基づいて、周波数変調信号を位相回転部107及びレーダ受信部200d(例えば、ミキサ部204)へ出力する。
図23は、周波数変調された周波数変調信号(以下、チャープ信号)の一例を示す。
図23では、例えば、VCO103dは、第1の送信周期Tr#1において、中心周波数fc(1)がf0のチャープ信号を出力する。また、例えば、VCO103dは、第2の送信周期Tr#2において、中心周波数fc(2)がf0+Δfのチャープ信号を出力する。同様に、VCO103dは、第3の送信周期Tr#3から第Locの送信周期Tr#Locそれぞれにおいて、中心周波数fc(3)〜fc(Loc)が(f0+2Δf)〜(f0+(Loc−1)Δf)のチャープ信号を出力する。
また、VCO103dは、第(Loc+1)の送信周期Tr#(Loc+1)において、中心周波数fc(Loc+1)がf0のチャープ信号を出力する。同様に、VCO103dは、第(Loc+2)の送信周期Tr#(Loc+2)から第(2Loc)の送信周期Tr#(2Loc)それぞれにおいて、中心周波数fc(Loc+2)〜fc(2Loc)が(f0+Δf)〜(f0+(Loc−1)Δf)のチャープ信号を出力する。
同様に、VCO103dは、第mの送信周期Tr#mにおいて、チャープ信号の中心周波数fc(m)がf0+mod(m-1, Loc)Δfのチャープ信号を出力する。
すなわち、図23では、Nc番目の送信周期Tr#Ncにおけるチャープ信号の中心周波数fc(Nc)は、f0+(Loc-1)Δfとなる。
このように、図23では、チャープ信号の中心周波数fcの変化は、レーダ送信信号の送信周期に対して符号系列(例えば、直交符号)の符号長の約数倍の周期で一巡する。換言すると、例えば、図23では、同一のOC_INDEXとなる送信周期Trでは、チャープ信号の中心周波数fcは同一になる。
なお、各チャープ信号には、例えば、レンジゲートの時間幅TAにおける周波数変調帯域幅Bwが同一となるチャープ信号が用いられてよい。また、図23に示す例では、Δf>0の場合(換言すると、中心周波数fcが増加する場合)について示すが、Δf<0の場合(換言すると、中心周波数fcが減少する場合)についても同様である。
図21に示すレーダ送信部100dにおける他の動作は実施の形態1と同様でもよい。
次に、レーダ装置10dのレーダ受信部200dにおける動作例について説明する。
レーダ受信部200dにおいて、受信アンテナ202において受信した信号に対する各アンテナ系統処理部201の処理、及び、後続するCFAR部211における動作は実施の形態1の動作と同様である。また、レーダ受信部200dにおいて、方向推定部213dにおける符号化ドップラ多重分離部212dの出力を用いた方向推定処理も実施の形態1の動作と同様である。
レーダ受信部200dでは、例えば、符号化ドップラ多重分離部212dの動作、及び、方向推定部213dにおけるターゲットのドップラ速度情報に関する変換処理が実施の形態1と異なる。
なお、ビート周波数インデックスに基づく距離情報R(fb)の変換は、実施の形態1と同様であり、方向推定部213dは、例えば、式(31)に基づいて、ビート周波数インデックス(又は、距離インデックス)fbを用いて距離情報R(fb)を出力してもよい。
以下、符号化ドップラ多重分離部212dにおいて実施の形態1と異なる動作例について説明する。
例えば、チャープ信号の中心周波数fcを、各符号送信周期(Loc×Tr)において、送信周期Tr毎にf0、f0+Δf、…、f0+(Loc-1)Δfと変化させたレーダ送信信号を用いる場合、第1,2, …, Loc番のドップラ解析部210には、中心周波数fcがそれぞれf0、f0+Δf、…, f0+(Loc-1)Δfのチャープ信号を送信した際のレーダ反射波が受信信号として入力される。
このため、Loc個のドップラ解析部210のそれぞれにおいて入力されるレーダ反射波の中心周波数は同一である。よって、Loc個の各ドップラ解析部210は、中心周波数fcが同一のチャープ信号を送信した際のレーダ反射波である受信信号に対してドップラ解析を行う。
一方、Loc個のドップラ解析部210間ではチャープ信号の中心周波数fcは異なる。このため、Loc個のドップラ解析部210間でのドップラ解析の時間差に起因する位相回転を補正して符号多重信号を分離するには、符号化ドップラ多重分離部212dは、実施の形態1における<(1)符号分離処理>において説明した式(35)の代わりに、次式(81-12)を用いる。
式(81-12)において、中心周波数変化に伴う位相回転を補正する項
が追加されている点が式(35)と異なる。
ここで、R(fb_cfar)は、式(31)に従ってビート周波数インデックスfb_cfarから算出される距離推定値である。
式(81-12)は、以下のことから導出される。例えば、第1番のドップラ解析部210での送信チャープ信号の中心周波数を基準とする場合、第2番から第Loc番のドップラ解析部210での送信チャープ信号の中心周波数がそれぞれΔf、…, (Loc-1)Δf異なるので、R(fb_cfar)からの反射波到来時間(2R(fb_cfar)/Co)内の位相回転量はそれぞれ異なる。
すなわち、第1番のドップラ解析部210の出力を位相基準としたときの第noc番のドップラ解析部210における位相回転量は、2π(noc-1)Δf×(2R(f
b_cfar)/C
o)となる。このような位相回転を打ち消すように式(81-12)における
の項が導出されている。ここで、noc=1,…,Locである。
このように、チャープ信号の中心周波数fcを、符号送信周期(Loc×Tr)(又は、Locの約数となる回数の送信周期)内において、複数のチャープ送信周期にわたり周期的に可変する場合、符号要素毎のドップラ解析部210への切り替え周期と、チャープ信号の中心周波数fcの変化が一巡するタイミングとが一致する。例えば、チャープ信号の中心周波数fcを複数のチャープ送信周期にわたり周期的に可変する際の周期が、符号要素毎のドップラ解析部210への切り替え周期と一致することで、符号化ドップラ多重分離部212dは、各Loc個のドップラ解析部210における位相補正値を一意に決定できる。これにより、符号化ドップラ多重分離部212dは、(1)符号分離処理における位相補正を容易に行うことができる。よって、符号化ドップラ多重分離部212dは、符号分離処理を容易に行うことができる。
次に、方向推定部213dにおいて実施の形態1と異なる動作例(例えば、ターゲットのドップラ速度情報に関する変換処理)について説明する。
例えば、方向推定部213dは、測位結果として、符号化ドップラ多重分離部212dにおいて判定したターゲットのドップラ周波数f
TARGETに基づいて検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
TARGET)を次式(81-13)に従って算出し、出力してもよい。
以上のように、バリエーション10では、レーダ装置10dにおいて、チャープ信号の中心周波数fcは、複数の送信周期にわたり周期的に変化する。この場合でも、レーダ装置10d(例えば、MIMOレーダ)は、実施の形態1と同様、実効的なドップラ周波数帯域幅を1/(Tr)に拡大でき、曖昧性(Ambiguity)が生じないドップラ周波数(相対速度)の検出範囲を拡大できる。また、レーダ装置10dは、符号多重信号間の相互干渉をほぼノイズレベル程度に抑えることができる。よって、バリエーション10によれば、レーダ装置10dは、より広いドップラ周波数範囲において、物標の検知精度を向上できる。
なお、バリエーション10は、実施の形態1に限らず、実施の形態1のバリエーション1〜7にも同様に適用でき、それぞれ同様の効果を得ることができる。例えば、実施の形態1のバリエーション1〜7の何れかにおいて、図23に示すように中心周波数fcが変化するチャープ信号を含むレーダ送信信号が用いられてもよい。
また、バリエーション10によれば、チャープ信号の中心周波数fcの変化が一巡するタイミングを、符号送信周期(Loc×Tr)とすることで、例えば、チャープ信号の中心周波数fcの変化が一巡するタイミングと、符号要素毎のドップラ解析部210への切り替え周期(換言すると、符号多重に用いる符号の送信周期)とを一致できる。これにより、符号化ドップラ多重分離部212dにおける位相補正を容易に行うことができる。
また、バリエーション10では、チャープ信号の中心周波数fcの変化が一巡するタイミングを、符号送信周期(Loc×Tr)とする場合について説明したが、チャープ信号の中心周波数fcの変化が一巡するタイミングは(Locの約数×Tr)としてもよい。チャープ信号の中心周波数fcの変化が一巡するタイミングを(Locの約数ε×Tr)となる周期、すなわち、ε回の送信周期(ε×Tr)とする場合、符号化ドップラ多重分離部212dは、式(81-12)の代わりに、式(81-14)を用いてもよい。ただし、εはLocの約数で、かつε>1である。
また、バリエーション10では、チャープ信号の中心周波数fcを、符号送信周期(Loc×Tr)において、送信周期Tr毎にf0、f0+Δf、…、f0+(Loc-1)Δfとして、Δfの整数倍で変化させたレーダ送信信号を用いる場合について説明したが、中心周波数fcの変化幅はΔfの整数倍の周波数に限定されず、任意で周波数で可変に設定されてもよい。
例えば、チャープ信号の中心周波数fcを、符号送信周期(Loc×Tr)の送信周期Tr毎にf
0、f
0+Δf
1、f
0+Δf
2、…、f
0+Δf
Loc-1と変化させたレーダ送信信号を用いてもよい。ここで、Δf
1、Δf
2、…、Δf
Loc-1は、符号送信周期(Loc×Tr)それぞれの送信周期Trにおけるチャープ信号の中心周波数fcの周波数可変値である。この場合、符号化ドップラ多重分離部212dは、符号分離処理において式(81-12)の代わりに次式(81-15)を用いてもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1では、ドップラ多重送信と符号化とを併用する場合について説明した。これに対して、本実施の形態では、ドップラ多重送信と、時間多重とを併用する場合について説明する。
本実施の形態では、例えば、ドップラ多重送信信号に時間多重を併用して多重送信(以下、「時間ドップラ多重(Time-Doppler Multiplexing)」と呼ぶ)する際に、ドップラ多重送信信号毎の時間多重数を不均一にする。これにより、レーダ装置は、時間ドップラ多重信号の受信信号に基づいて、送信アンテナの識別と、ドップラ折り返し有無の判定を可能とする。その結果、実効的なドップラ周波数帯域幅を1/(Tr)に拡大することができ、曖昧性(Ambiguity)が生じないドップラ周波数(相対速度)の検出範囲を拡大することができる。
[レーダ装置の構成]
図24は、本実施の形態に係るレーダ装置20の構成例を示すブロック図である。なお、図24において、実施の形態1(図1)と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
以下では、一例として、チャープ(chirp)パルスのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式(例えば、チャープパルス送信(fast chirp modulation)とも呼ぶ)の構成について説明する。ただし、変調方式は、周波数変調に限定されない。例えば、本開示の一実施例は、パルス列を位相変調又は振幅変調して送信するパルス圧縮レーダを用いたレーダ方式についても適用可能である。
レーダ装置20は、レーダ送信部(送信ブランチ)300と、レーダ受信部(受信ブランチ)400と、を有する。
[レーダ送信部300の構成]
レーダ送信部300は、レーダ送信信号生成部101と、位相回転量設定部301と、位相回転部304と、送信制御部305と、送信アンテナ306と、を有する。
位相回転量設定部301は、位相回転部304における位相回転量(換言すると、ドップラ多重に用いる位相回転量)を設定する。位相回転量設定部301は、例えば、ドップラシフト設定部302、及び、時間多重部303を有する。
ドップラシフト設定部302は、例えば、レーダ送信信号(例えば、チャープ信号)に対して付与するドップラシフト量DOPndmに対応する位相回転量φndmを設定し、時間多重部303に出力する。ここで、ndm=1,…, NDMである。NDMは、ドップラ多重数(換言すると、異なるドップラシフト数)である。
レーダ装置20では、時間多重部303による時間多重を併用するため、ドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナ306の数Ntよりも少なく設定してよい。なお、ドップラ多重数NDMは例えば2以上とする。
ドップラシフト量DOP1、DOP2,..,DOPDMには、例えば、0以上2π未満の位相回転範囲を分割して、それぞれ異なる位相回転量が割り当てられる。例えば、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、式(1)のように割り当てる(角度はラジアン単位で示している)。
なお、ドップラシフト量DOP1、DOP2,..,DOPDMを付与する位相回転量の割り当ては、このような割り当て方法に限定されない。例えば、式(1)に示す位相回転量の割り当てをシフトさせてもよい。例えば、φndm=2π(ndm)/NDMのように位相回転量を割り当ててもよい。または、位相回転量の割り当てテーブルを用いて、ドップラシフト量DOP1、DOP2,..,DOPDMに対して位相回転量φ1、φ2,.., φDMをランダム的に割り当ててもよい。
時間多重部303は、ドップラシフト設定部302から出力されるNDM個のドップラシフト量を付与する位相回転量φ1,…,φNDMのそれぞれに対して、時間多重数NTD個に基づく「時間多重ドップラ位相回転量」を設定し、位相回転部304に出力する。
なお、時間多重部303において、ドップラシフト設定部302から出力されるndm番目のドップラシフト量DOPndmを用いたドップラ多重信号を時間多重する際の時間多重数(以下、時間ドップラ多重数と呼ぶ)を「NDOP_TD(ndm)」と表記する。ここで、ndm=1,…, NDMである。
以下、時間多重部303における動作の一例について説明する。
時間多重部303は、例えば、ドップラ多重信号のそれぞれに対して時間多重する際の時間ドップラ多重数N
DOP_TD(1), N
DOP_TD(2),…, 及びN
DOP_TD(N
DM)の総和が、多重送信に用いる送信アンテナ306の数Ntと等しくなるように時間ドップラ多重数N
DOP_TD(ndm)を設定する。換言すると、時間多重部303は、次式(82)を満たすように、時間ドップラ多重数N
DOP_TD(ndm)を設定する。これにより、レーダ装置20は、Nt個の送信アンテナ306を用いてドップラ周波数領域及び時間領域における多重送信(以下、時間ドップラ多重送信と呼ぶ)が可能となる。
ここで、時間多重部303は、例えば、時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2),…, NDOP_TD(NDM)に関して、1以上NTD個以下の範囲において異なる時間ドップラ多重数を含むように設定する。例えば、時間多重部303は、時間ドップラ多重数の全てにおいて時間多重数NTD個とせずに、少なくとも1つの時間ドップラ多重数を1(換言すると、多重無し)に設定する。換言すると、時間多重部303は、ドップラ多重信号に対する時間ドップラ多重数を不均一に設定する。この設定により、レーダ装置20は、例えば、後述する受信処理によって、複数の送信アンテナ306から時間ドップラ多重送信された信号を個別に分離して受信できる。
時間多重部303は、第m番目の送信周期Trにおいて、第ndm番目のドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量φ
ndmに対して、次式(83)に示す時間多重ドップラ位相回転量ψ
ndop_td(ndm), ndm(m)を設定して、位相回転部304に出力する。
ここで、下付き添え字の「ndop_td(ndm)」は、ドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量φndmに対する時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)以下のインデックスを表す。例えば、ndop_td(ndm)=1,…, NDOP_TD(ndm)である。
例えば、式(83)に示すように、時間多重ドップラ位相回転量ψndop_td(ndm), ndm(m)は、時間多重に用いる時間多重数NTD回分の送信周期の期間(例えば、NTD×Tr)においてドップラシフト量DOPndmを付与する位相回転量を一定にする。
また、時間多重部303は、送信周期(Tr)毎に、時間多重インデックスTD_INDEXをレーダ受信部400(後述する出力切替部401)に出力する。また、時間多重部303は、送信周期Tr毎に時間多重インデックスTD_INDEX、及び、時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)を送信制御部305に出力する。
TD_INDEXは、時間多重数N
TD回分の送信周期の期間(N
TD×Tr)において何番目の送信周期(換言すると、時間多重における送信期間又は送信タイミング)であるかを指示する時間多重インデックスであり、送信周期(Tr)毎に、次式(84)のように、1からN
TDの範囲で巡回的に可変する。
ここで、mod(x, y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。また、m=1、…、Ncである。Ncはレーダ測位に用いる送信周期数(レーダ送信信号送信回数)である。また、レーダ送信信号送信回数Ncは、NTDの整数倍(Ntdslot倍)となるように設定される。例えば、Nc=NTD×Ntdslotである。
次に、時間多重部303において、ドップラ多重信号に対する時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)を不均一に設定する方法の一例について説明する。
例えば、時間多重部303は、下記の条件を満たす時間多重数NTDを設定する。例えば、時間多重数NTD及びドップラ多重数NDMは、多重送信に用いる送信アンテナ306の数Ntに対して、以下の関係を満たす。
(時間多重数NTD)×(ドップラ多重数NDM)>多重送信に用いる送信アンテナ数Nt
例えば、上記条件を満たす時間多重数NTD及びドップラ多重数NDMのうち、積(NTD×NDM)の値がより小さい組み合わせを用いることが、特性的にも、回路構成の複雑度的にもより好適である。ただし、上記条件を満たす時間多重数NTD及びドップラ多重数NDMのうち、積(NTD×NDM)の値がより小さい組み合わせに限定されず、他の組み合わせも適用が可能である。
例えば、Nt=3の場合、NDM=2、NTD=2の組み合わせが好適である。
この場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2及び時間多重の割り当てにおいて、時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2)の設定には、NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=1、又は、NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=2の2通りがある。
また、例えば、Nt=4の場合、NDM=3、NTD=2、又は、NDM=2、NTD=3の組み合わせが好適である。
例えば、Nt=4、NDM=3、NTD=2の場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2及び、DOP3及び時間多重の割り当てにおいて、時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2) , NDOP_TD(3)の設定には、NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=1, NDOP_TD(3)=1と、NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=1と、NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=1, NDOP_TD(3)=2との3通りがある。
例えば、Nt=4、NDM=2、NTD=3の場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2及び時間多重の割り当てにおいて、時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2)の設定には、NDOP_TD(1)=3, NDOP_TD(2)=1、及び、NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=3の2通りがある。
また、例えば、Nt=5の場合、NDM=3、NTD=2の組み合わせが好適である。
例えば、Nt=5、NDM=3、NTD=2の場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3、及び時間多重の割り当てにおいて、時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2), NDOP_TD(3)の設定には、NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=1と、NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=1, NDOP_TD(3)=2と、NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=2との3通りがある。
また、例えば、Nt=6又は7の場合、NDM=4、NTD=2の組み合わせが好適である。
例えば、Nt=6、NDM=4、NTD=2の場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3及びDOP4と、時間多重の割り当てにおいて、時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2), NDOP_TD(3), NDOP_TD(4)の設定には以下の6通りがある。
NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=1, NDOP_TD(4)=1
NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=1, NDOP_TD(3)=2, NDOP_TD(4)=1
NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=1, NDOP_TD(3)=1, NDOP_TD(4)=2
NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=2, NDOP_TD(4)=1
NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=1, NDOP_TD(4)=2
NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=1, NDOP_TD(3)=2, NDOP_TD(4)=2
例えば、Nt=7、NDM=4、NTD=2の場合、ドップラシフト量DOP1、DOP2、DOP3及びとDOP4と、時間多重の割り当てにおいて、時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2), NDOP_TD(3), NDOP_TD(4)の設定には以下の4通りがある。
NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=2, NDOP_TD(4)=1
NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=1, NDOP_TD(4)=2
NDOP_TD(1)=2, NDOP_TD(2)=1, NDOP_TD(3)=2, NDOP_TD(4)=2
NDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=2, NDOP_TD(3)=2, NDOP_TD(4)=1
以下、同様に、例えば、Nt=8又は9の場合、NDM=5、NTD=2の組み合わせが好適である。また、例えば、Nt=10の場合、NDM=6、NTD=2の組み合わせが好適である。なお、送信アンテナ306の数Ntは、上記例に限定されず、Nt=11以上についても本開示の一実施例を適用できる。
次に、時間多重ドップラ位相回転量ψndop_td(ndm), ndm(m)の設定例について説明する。
例えば、時間多重部303において、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3、ドップラ多重数N
DM=2、N
TD=2とする場合について説明する。この場合、例えば、時間ドップラ多重数をN
DOP_TD (1)=1, N
DOP_TD (2)=2とすると、時間多重部303は、次式(85)〜(87)のような時間多重ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
2, 2(m)を設定して、位相回転部304に出力する。ここで、m=1, …, Ncである。
なお、式(86)及び式(87)において、時間多重ドップラ位相回転量ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)は同じ位相回転量となるが、これらに対応する信号には、例えば、後述する送信制御部305において送信タイミングを時間的にずらず(時間多重)動作が行われる。
ここで、一例として、ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量を式(1)のφ
ndm=2π(ndm-1)/N
DMとし、ドップラシフト量DOP
1を付与する位相回転量φ
1=0、及び、ドップラシフト量DOP
2を付与する位相回転量φ
2=πを用いる場合について説明する。すなわち、各ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量φ
ndmは等間隔である。この場合、時間多重部303は、次式(88)〜(90)のような符号化ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
2, 2(m)を設定して、位相回転部304に出力する。ここで、m=1,…,Ncである。なお、ここでは、2πによるモジュロ演算を行い、0以上2π未満のラジアンの範囲で記載している(以降の説明についても同様である)。
式(88)〜(90)に示すように、位相回転量が、2πを等分割したφndm=2π(ndm-1) /NDMに設定される場合、時間多重ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)は、NDM×NTD=2×2=4の送信周期で変化する。
また、式(88)〜(90)に示すように、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数(例えば、0及びπの2つ)は、多重送信に用いるドップラシフト量の数(換言すると、ドップラ多重数)NDM=2に等しい。
また、例えば、時間多重部303において、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=6、ドップラ多重数N
DM=4、N
TD=2とする場合について説明する。この場合、例えば、時間ドップラ多重数をN
DOP_TD (1)=1, N
DOP_TD (2)=1, N
DOP_TD(3)=2, N
DOP_TD (4)=2とすると、時間多重部303は、次式(91)〜(96)のような時間多重ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
1, 3(m) , ψ
2, 3(m) , ψ
1, 4(m) , ψ
2, 4(m)を設定して、位相回転部304に出力する。ここで、m=1,…,Ncである。
なお、式(93)及び式(94)において、時間多重ドップラ位相回転量ψ1, 3(m), ψ2, 3(m)は同じ位相回転量となるが、これらに対応する信号には、後述する送信制御部305において送信タイミングを時間的にずらず(時間多重)動作が行われる。同様に、式(95)及び式(96)において、時間多重ドップラ位相回転量ψ1, 4(m), ψ2, 4(m)は同じ位相回転量となるが、これらに対応する信号には、後述する送信制御部305において送信タイミングを時間的にずらず(時間多重)動作が行われる。
ここで、一例として、ドップラシフト量DOP
ndmを付与する位相回転量をφ
ndm=2π(ndm-1) /N
DMとし、ドップラシフト量DOP
1を付与する位相回転量φ
1=0、ドップラシフト量DOP
2を付与する位相回転量φ
2=π/2、ドップラシフト量DOP
3を付与する位相回転量φ
3=π、ドップラシフト量DOP
4を付与する位相回転量φ
4=3π/2を用いる場合、時間多重部303は、次式(97)〜(102)のような時間多重ドップラ位相回転量ψ
1, 1(m), ψ
1, 2(m), ψ
1, 3(m) , ψ
2, 3(m) , ψ
1, 4(m) , ψ
2, 4(m)を設定して、位相回転部304に出力する。ここで、m=1, …, Ncである。
式(97)〜式(102)に示すように、位相回転量が、2πを等分割したφndm=2π(ndm-1) /NDMに設定される場合、時間多重ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ1, 3(m) , ψ2, 3(m) , ψ1, 4(m) , ψ2, 4(m)は、NDM×NTD=4×2=8の送信周期で変化する。
また、式(97)〜(102)に示すように、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数(例えば、0、π/2、π、及び、3π/2の4つ)は、多重送信に用いるドップラシフト量の数(換言すると、ドップラ多重数)NDM=4に等しい。
なお、ここでは、一例として、送信アンテナ306の数Nt=3、ドップラ多重数NDM=2の場合、及び、送信アンテナ306の数Nt=6、ドップラ多重数NDM=4の場合における位相回転量の設定についてそれぞれ説明したが、送信アンテナ306の数Nt及びドップラ多重数NDMは、これらの値に限定されない。例えば、ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数は、多重送信に用いるドップラシフト量の数NDMに等しくしてよい。
以上、時間多重部303における位相回転量の設定方法について説明した。
図24において、位相回転部304は、位相回転量設定部301において設定された時間多重ドップラ位相回転量ψndop_td(ndm), ndm(m)に基づいて、レーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に位相回転量を付与する。ここで、ndm=1,…, NDMであり、ndop_td(ndm)=1,…, NDOP_TD(ndm)である。
時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2),…, 及びNDOP_TD(NDM)の総和は、送信アンテナ306の数Ntに等しく設定され、Nt個の時間多重ドップラ位相回転量はNt個の位相回転部304にそれぞれ入力される。
Nt個の位相回転部304は、送信周期Tr毎に、レーダ送信信号生成部101から出力されるチャープ信号に対して、入力された時間多重ドップラ位相回転量ψndop_td(ndm), ndm(m)をそれぞれ付与する。なお、以下では、時間多重ドップラ位相回転量ψndop_td(ndm), ndm(m)を付与する位相回転部304を、「位相回転部PROT#[ndop_td(ndm), ndm]」と表記する。
Nt個の位相回転部304からの出力は、Nt個の送信制御部305に出力される。例えば、位相回転部PROT#[ndop_td(ndm), ndm]からの出力は、送信制御部TXCTRL#[ndop_td(ndm), ndm]に出力される。ここで、ndm=1,…, NDMであり、ndop_td(ndm)=1,…, NDOP_TD(ndm)である。
図24において、Nt個の送信制御部305のうち、送信制御部TXCTRL#[ndop_td(ndm), ndm]は、時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)及び時間多重インデックスTD_INDEXに基づいて、位相回転部304から入力される送信信号の送信(換言すると、出力)を制御する。例えば、送信制御部305は、送信信号の送信ON及び送信OFFを制御する。
以下では、送信制御部TXCTRL#[ndop_td(ndm), ndm]における時間多重インデックスTD_INDEX毎の送信ON及び送信OFFの何れの状態であるかを、「送信制御部応答STATE_TXCTRL#[ ndop_td(ndm), ndm]=[state(1), state(2),…, state(NTD)]」を用いて表示する。
STATE_TXCTRL#[ndop_td(ndm), ndm]の要素であるstate(TD_INDEX)は、TD_INDEX=1、…、NTDにおける送信ON及び送信OFFの何れの状態であるかを表す。例えば、送信ONの場合には、state(TD_INDEX)は1を示し、送信OFFの場合にはstate(TD_INDEX)は0を示してよい。
例えば、ドップラシフト量DOPndmを用いたドップラ多重信号の時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)=1の場合、ndop_td(ndm)=1のみであり、時間多重数は1である。このため、送信制御部TXCTRL#[1, ndm]は、時間多重インデックスTD_INDEX=1,…,NTDに渡って全て送信信号を出力する(送信ON)。したがって、ドップラシフト量DOPndmを用いたドップラ多重信号の時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)=1の場合の送信制御部応答は、STATE_TXCTRL#[1, ndm]=[1, 1,…, 1]となる。
一方、例えば、ドップラシフト量DOPndmを用いたドップラ多重信号の時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)=NTDの場合、ndop_td(ndm)=1、…、NTDであり、時間多重数はNTDである。このため、送信制御部TXCTRL#[ndop_td(ndm), ndm]は、時間多重インデックスTD_INDEX=ndop_td(ndm)の場合、送信信号を出力する(送信ON)。したがって、ドップラシフト量DOPndmを用いたドップラ多重信号の時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)=NDOP_TD(ndm)=NTDの場合の送信制御部応答STATE_TXCTRL#[ndop_td(ndm), ndm]は、TD_INDEX=ndop_td(ndm)のときに1となり(送信ON)、TD_INDEX=ndop_td(ndm)でないときに0(送信OFF)となる。
例えば、ドップラシフト量DOP1を用いたドップラ多重信号の時間ドップラ多重数NDOP_TD(1)=4(=NTD)の場合、送信制御部TXCTRL#[1, 1]の送信制御部応答はSTATE_TXCTRL#[1, 1]=[1,0,0,0]となり、送信制御部TXCTRL#[2, 1]の送信制御部応答はSTATE_TXCTRL#[2, 1]=[0,1,0,0]となり、送信制御部TXCTRL#[3, 1]の送信制御部応答はSTATE_TXCTRL#[3, 1]=[0,0,1,0]となり、送信制御部TXCTRL#[4, 1]の送信制御部応答はSTATE_TXCTRL#[4, 1]=[0,0,0,1]となる。
送信制御部305からの出力(例えば、時間ドップラ多重信号と呼ぶ)は、規定された送信電力に増幅後に、送信アレーアンテナ部のNt個の送信アンテナ306から空間に放射される。換言すると、レーダ送信信号は、ドップラシフト量に対応する位相回転量が付与され、かつ、時間多重されることによって、複数の送信アンテナ306から送信される。
なお、以下では、送信制御部TXCTRL#[ndop_td(ndm), ndm]の出力を空間に放射する送信アンテナ306を、「送信アンテナTx#[ndop_td(ndm), ndm]」と表記する。ここで、ndm=1,…, NDMであり、ndop_code(ndm)=1,…, NDOP_CODE(ndm)である。
例えば、多重送信に用いる送信アンテナ数Nt=3の場合に、ドップラ多重数NDM=2、NTD=2とし、時間ドップラ多重数をNDOP_TD(1)=1, NDOP_TD(2)=2とする場合、時間多重部303から位相回転部304に対して、時間多重ドップラ位相回転量ψ1, 1(m), ψ1, 2(m), ψ2, 2(m)が送信周期毎に出力される。
例えば、位相回転部PROT#[1, 1]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に位相回転量ψ
1, 1(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[1, 1]の出力は、送信制御部TXCTRL#[1, 1]において送信制御部応答STATE_TXCTRL#[1, 1]=[1,1]に基づいて、次式(103)のように出力され、送信アンテナTx#[1, 1]から送信される。ここで、cp(t)は送信周期毎のチャープ信号を表す。
同様に、位相回転部PROT#[1, 2]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に位相回転量ψ
1, 2(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[1, 2]の出力は、送信制御部TXCTRL#[1, 2]において送信制御部応答STATE_TXCTRL#[1, 2]=[1,0]に基づいて、次式(104)のように出力され、送信アンテナTx#[1, 2]から送信される。
同様に、位相回転部PROT#[2, 2]は、送信周期毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期毎に位相回転量ψ
2, 2(m)を付与する。また、位相回転部PROT#[2, 2]の出力は、送信制御部TXCTRL#[2, 2]において送信制御部応答STATE_TXCTRL#[2, 2]=[0,1]に基づいて、次式(105)のように出力され、送信アンテナTx#[2, 2]から送信される。
以上、時間多重ドップラ位相回転量ψndop_td(ndm), ndm(m)の設定例について説明した。
このように、本実施の形態では、複数の送信アンテナ306それぞれに対して、ドップラシフト量DOPndm及び時間多重における送信期間(例えば、TD_INDEX)の少なくとも一方が異なる組み合わせ(換言すると、割り当て)が対応付けられる。また、本実施の形態では、ドップラシフト量DOPndmと送信期間との組み合わせにおける各ドップラシフト量DOPndmに対応する時間多重数(換言すると、時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm))は異なる。
例えば、本実施の形態では、Nt個の送信アンテナ306には、少なくとも、時間多重される送信信号がそれぞれ送信される複数の送信アンテナ306と、時間多重されない送信信号が送信される少なくとも1つの送信アンテナ306と、が含まれる。換言すると、レーダ送信部300から送信されるレーダ送信信号には、少なくとも、時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)を時間多重数NTDに設定した時間ドップラ多重信号と、時間ドップラ多重数NDOP_TD(ndm)を符号数NTDより小さく設定した時間ドップラ多重信号と、が含まれる。
[レーダ受信部400の構成]
図24において、第z番目の信号処理部206における出力切替部401は、位相回転量設定部301の時間多重部303から出力される時間多重インデックスTD_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、NTD個のドップラ解析部402のうち、TD _INDEX番目のドップラ解析部402に選択的に切り替えて出力する。換言すると、出力切替部401は、第m番目の送信周期Trにおいて、TD_INDEX番目のドップラ解析部402を選択する。
第z番目の信号処理部206は、NTD個のドップラ解析部402−1〜402−NTDを有する。例えば、第z番目の信号処理部206における第ntd番目のドップラ解析部402は、出力切替部401によってNTD回の送信周期(NTD×Tr)毎にデータが入力される。このため、第ntd番目のドップラ解析部402は、Nc回の送信周期のうち、Ntdslot回の送信周期のデータを用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、ntdは時間多重のインデックスであり、ntd=1,…, NTDである。
例えば、Ntdslotが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用できる。この場合、FFTサイズはNtdslotであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2NTD×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ntdslot×NTD×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ntdslot/2,…, 0, …, Ntdslot/2−1である。
以下では、一例として、Ntdslotが2のべき乗値である場合について説明する。なお、Ntdslotが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理が可能である。また、ドップラ解析部402は、FFT処理の際に、Han窓又はHamming窓などの窓関数係数を乗算してもよい。窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
例えば、第z番目の信号処理部206のドップラ解析部402の出力VFT
z ntd(f
b, f
s)は、次式(106)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1〜Naである。
図24において、CFAR部403は、第1〜第Na番目の信号処理部206それぞれのNTD個のドップラ解析部402の出力を用いて、CFAR処理(換言すると、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部403は、例えば、次式(107)のように、第1〜第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部402の出力VFT
z ntd(f
b, f
s)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理又は1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば、非特許文献2に開示されている処理が適用されてよい。
CFAR部403は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報をPowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を時間ドップラ多重分離部404に出力する。
なお、ドップラシフト量DOP
ndmを付与するための位相回転量φ
ndmとして、例えば、式(1)を用いる場合、ドップラ解析部402からの出力におけるドップラ周波数領域のドップラシフト量の間隔ΔFDは等間隔となり、ΔFD=Ntdslot/N
DMとなる。そのため、ドップラ解析部402からの出力において、ドップラ周波数領域では、ドップラシフト多重される各信号に対して、ΔFDの間隔でピークがそれぞれ検出される。なお、位相回転量φ
ndmとして、式(1)を用いる場合、Ntdslot及びN
DMによってはΔFDが整数とならない場合がある。そのようなの場合には、次式(108)を用いることにより、ΔFDを整数値とすることができる。以下ではΔFDが整数値として受信処理動作の説明を行う。
また、CFAR部403は、ドップラ解析部402の各出力に対して、ドップラシフト量の間隔ΔFDの範囲で分割し、分割した各範囲に対して、次式(109)に示すように、ドップラシフト多重した各信号ピーク位置を合わせて電力加算(例えば、ドップラ領域圧縮)した後に、CFAR処理(例えば、ドップラ領域圧縮CFAR処理)を行ってよい。ここで、f
s_comp=-Ntdslot/2,…,-Ntdslot/2+ΔFD-1である。
これにより、CFAR処理のドップラ周波数範囲を1/NDMに圧縮でき、CFAR処理量を削減でき、かつ、回路構成の簡易化を図ることができる。また、CFAR部403では、NDM個のドップラシフト多重した各信号を電力加算できるため、SNRを(NDM)1/2程度改善でき、レーダ装置20におけるレーダ検知性能を向上できる。
このように、ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いたCFAR部403は、例えば、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar、及び、NDM個のドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)、nfd=1,…,NDMを時間ドップラ多重分離部404に出力する。
なお、ドップラシフト量DOPndmを付与するための位相回転量φndmは、式(1)に限定されない。例えば、ドップラシフト多重した各信号が、ドップラ解析部402から出力されるドップラ周波数領域において一定の間隔でそれぞれピークが検出される位相回転量φndmであれば、CFAR部403は、ドップラ領域圧縮CFAR処理を適用できる。
次に、図24に示す時間ドップラ多重分離部404の動作例について説明する。なお、以下では、CFAR部403において、ドップラ領域圧縮CFAR処理を用いた場合の時間ドップラ多重分離部404の処理の一例について説明する。
時間ドップラ多重分離部404は、CFAR部403の出力である距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfar、及び、NDM個のドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)における受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)、nfd=1,…,NDMに基づいて、ドップラ解析部402の出力を用いて、時間ドップラ多重送信された信号を分離し、送信アンテナ306の判別、及び、ドップラ周波数(又は、ドップラ速度又は相対速度)の判別を行う。
上述したように、位相回転量設定部301の時間多重部303は、例えば、NDM個の時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2),…, NDOP_TD(NDM)の全てをNTD個に設定せずに、少なくとも1つのドップラ多重数を1に設定する。例えば、時間ドップラ多重分離部404は、(1)時間ドップラ多重数を1に設定したドップラ多重信号を検出し、(2)時間ドップラ多重数を1に設定したドップラ多重信号の検出結果に基づいて、送信アンテナ306の判別及びターゲットのドップラ周波数の判別を行う。
以下、上述した時間ドップラ多重分離部404における処理(1)及び(2)についてそれぞれ説明する。
<(1)時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号の検出処理>
CFAR部403の出力である距離インデックスfb_cfarにおけるNDM個の時間ドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar)、(fs_comp_cfar+ΔFD)、(fs_comp_cfar+2ΔFD)、…、(fs_comp_cfar+(NDM-1)ΔFD)のそれぞれのドップラ解析部402の出力に対して、NDM個の時間ドップラ多重信号との対応関係の候補はNDM通りある。
例えば、ドップラシフト設定部302において設定されたドップラシフト量DOPndmを、DOP1<DOP2<….<DOPDM-1<DOPDMとした場合、ドップラの折り返しを考慮すると、巡回的に対応関係をシフトした下記のNDM通りの候補がある。ここでは、各対応関係の候補のパターンをDopCase=1からNDMで番号付けている。
DopCase=1 : {DOP1、DOP2、….、DOPDM-1、DOPDM}
DopCase=2 : {DOPDM、 DOP1 、DOP2、….、DOPDM-1}
…、
DopCase=NDM: {DOP2、….、DOPDM-1、DOPDM、DOP1}
例えば、DopCase=1は初期状態(ターゲットとの相対速度がゼロ)の場合のドップラシフト量の対応関係である。例えば、ターゲットの相対速度が近接する方向に高速になるにつれて、折り返す成分が含まれるようになり、これらをそれぞれDopCase=2、3、…、NDMに対応付ける。換言すると、ターゲットの相対速度が離れる方向に高速になるにつれて、DopCase=NDM、NDM-1、…、2が対応付けられる関係となる。
ここで、各DopCaseにおいて、DOPndmが先頭から何番目にあるか(DopCaseにおけるDOPndmの位置(又は順番))については、ドップラシフト設定部302において設定されたドップラシフト量に基づいて、予めテーブル化できる。以下では、DOPposi(DOPndm、DopCase)を、DopCaseにおいてDOPndmが先頭から何番目にあるかを出力する演算子とする。例えば、上記のDopCaseの例では、DOPposi(DOP1、1)=1, DOPposi(DOP1、2)=2, DOPposi(DOP1、NDM)= NDM、DOPposi(DOP2、1)=2, DOPposi(DOP2、2)=3, DOPposi(DOP2、NDM)=1になる。
時間ドップラ多重分離部404は、例えば、CFAR部403の出力である距離インデックスfb_cfarにおけるNDM個の時間ドップラ多重信号のドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(nfd-1)×ΔFD)で指示される第z番目の信号処理部206におけるドップラ解析部402の出力に対して、時間ドップラ多重数を1に設定したドップラ多重信号の検出処理を行う。
ここで、時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号は、送信に使用される送信アンテナ306が同一であり、時間ドップラ多重数をNTDに設定した時間ドップラ多重信号は、送信に使用される送信アンテナ306がそれぞれ異なる。
時間ドップラ多重分離部404は、例えば、時間多重インデックスTD_INDEX毎のドップラ解析部402の出力に対して、DopCaseをパラメータとして折り返し有無を考慮して同相加算処理を行う。時間ドップラ多重分離部404は、例えば、最大電力となる同相加算値が得られるDopCaseを、最も確からしいドップラシフト量のパターンとして、送信アンテナの識別に利用する。
なお、検出処理は、全てのnfd=1,…,NDMに対して、全てのDopCase=1,…,NDMの候補に渡って行われてもよい。ただし、各DopCaseにおいて時間ドップラ多重数を1に設定したドップラ多重信号が何番目にあるかについてはドップラシフト設定部302において設定され、レーダ装置20は既知である。このため、時間ドップラ多重分離部404は、以下のような検出処理を行うことにより、分離処理の演算量を削減できる。
例えば、時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号がドップラシフト量DOPndm1である場合、時間ドップラ多重分離部404は、各DopCaseのうち、ドップラシフト量DOPndm1が含まれる候補DOPposi(DOPndm1,DopCase)を用いて、ドップラ解析部402の出力に対して、ドップラ折り返し有無を考慮して同相加算処理を行う。そして、時間ドップラ多重分離部404は、ドップラ折り返し有無を考慮した同相加算処理結果に基づいて、最大電力を与えるDopCaseの検出を以下のように行う。
(a)ドップラ解析部402の出力にドップラ折り返しが無い場合の同相加算処理
次式(110)によって得られる同相加算信号ADDCOH
z(f
b_cfar, f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)は、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスf
b_cfar、ドップラ周波数インデックス(f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)のドップラ解析部402の出力に対する同相加算値を表す。
式(110)において、expの項では、時間多重インデックス毎のドップラ解析部402の出力間においてサンプリング時間がずれているため、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DopCase-1)×ΔFD-DOP1)に応じた位相補正が行われている。また、式(110)において、DopCase=1,…,NDMである。また、ドップラシフト設定部302において設定されたドップラシフト量DOPndmは、DOP1<DOP2<….<DOPDM-1<DOPDMであり、初期状態(ターゲットとの相対速度がゼロ)の場合、DOP1はfs_comp=-Ncode/2,…,-Ncode/2+ΔFD-1の範囲内にある。このため、時間ドップラ多重分離部404は、式(110)において、例えば、DOP1を基準とし、位相補正量を算出する。
時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号がドップラシフト量「DOP
ndm1」である場合、式(110)により、DopCase=1,…,N
DMにおいて、ドップラシフト量DOP
ndm1が含まれる候補DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)に対する同相加算信号がそれぞれ得られる。これにより、時間ドップラ多重分離部404では、合計N
DM個の同相加算信号の出力が得られる。例えば、時間ドップラ多重分離部404は、式(110)に従って、全ての受信アンテナz=1,…,Naに対して同相加算信号を算出し、時間分離信号電力和Pow_ADDCOH(f
b_cfar, f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)を次式(111)のように算出する。
(b)ドップラ解析部402の出力にドップラ折り返しが有る場合の同相加算処理
時間ドップラ多重分離部404は、ドップラ解析部402の出力にドップラ折り返しが有る場合、同相加算処理において用いる位相補正(expの項)を、ドップラ折り返しを考慮した位相補正として、同相加算処理を行う。
例えば、N
TD=2の場合、次式(112)で得られる同相加算信号ADDALIAS
z(f
b_cfar, f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)は、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスf
b_cfar、ドップラ周波数インデックス(f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)のドップラ解析部402の出力に対して、ドップラ折り返しを考慮した同相加算値を表す。
式(112)において、expの項では、時間多重インデックス毎のドップラ解析部402の出力間においてサンプリング時間がずれているため、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DopCase-1)×ΔFD-DOP1)に応じた位相補正、及び、折り返しによる位相補正(exp{-j2π(ntd-1)/NTD})が行われている。また、式(112)において、DopCase=1,…,NDMである。また、ドップラシフト設定部302において設定されたドップラシフト量DOPndmは、DOP1<DOP2<….<DOPDM-1<DOPDMであり、初期状態(ターゲットとの相対速度がゼロ)の場合、DOP1はfs_comp=-Ncode/2,…,-Ncode/2+ΔFD-1の範囲内にある。このため、時間ドップラ多重分離部404は、式(112)において、DOP1を基準とし、位相補正量を算出する。
式(112)により、時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号がドップラシフト量DOP
ndm1である場合、DopCase=1,…,N
DMにおいて、ドップラシフト量DOP
ndm1が含まれる候補DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)に対する、ドップラ折り返しを考慮した同相加算信号がそれぞれ得られる。これにより、時間ドップラ多重分離部404では、合計N
DM個の同相加算信号の出力が得られる。例えば、時間ドップラ多重分離部404は、全ての受信アンテナz=1,…,Naに対して、式(112)を用いて、同相加算信号を算出し、ドップラ折り返しを考慮した同相加算電力和Pow_ADDALIAS(f
b_cfar, f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)を次式(113)のように算出する。
また、例えば、N
TD=3の場合、次式(114)及び(115)で得られる同相加算信号ADDALIAS
z(f
b_cfar, f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)は、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスf
b_cfar、ドップラ周波数インデックス(f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1, DopCase)-1)×ΔFD)のドップラ解析部402の出力に対して、ドップラ折り返しを考慮した同相加算値を表す。
式(114)において、expの項では、時間多重インデックス毎のドップラ解析部402の出力間においてサンプリング時間がずれているため、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DopCase-1)×ΔFD-DOP1)に応じた位相補正、及び、折り返しによる位相補正(exp{-j2πSign(fest)(ntd-1)/NTD})が行われている。また、式(114)において、DopCase=1,…,NDMである。また、ドップラシフト設定部302において設定されたドップラシフト量DOPndmは、DOP1<DOP2<….<DOPDM-1<DOPDMであり、初期状態(ターゲットとの相対速度がゼロ)の場合、DOP1はfs_comp=-Ncode/2,…,-Ncode/2+ΔFD-1の範囲内にある。このため、時間ドップラ多重分離部404は、式(114)において、DOP1を基準とし、位相補正量を算出する。
式(114)により、時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号がドップラシフト量DOP
ndm1である場合、DopCase=1,…,N
DMにおいて、ドップラシフト量DOP
ndm1が含まれる候補DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)に対する、ドップラ折り返しを考慮した同相加算信号がそれぞれ得られる。これにより、時間ドップラ多重分離部404では、合計N
DM個の同相加算信号の出力が得られる。例えば、時間ドップラ多重分離部404は、全ての受信アンテナz=1,…,Naに対して、式(114)を用いて、同相加算信号を算出し、ドップラ折り返しを考慮した同相加算電力和Pow_ADDALIAS(f
b_cfar, f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm1,DopCase)-1)×ΔFD)を次式(116)のように算出する。
なお、NTD=3では、多重の折り返し判定も考慮した同相加算値が算出される。
また、NTD>3の場合についても同様に、同相加算値Pow_ADDCOH(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)及びドップラ折り返しを考慮した同相加算値Pow_ADDALIAS(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)が算出される。
以上のように、時間ドップラ多重分離部404は、ドップラ解析部402の出力に対して、ドップラ折り返し有無を考慮して同相加算処理を行う。
時間ドップラ多重分離部404は、同相加算値Pow_ADDCOH(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)、及び、ドップラ折り返しを考慮した同相加算値Pow_ADDALIAS(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase)-1)×ΔFD)に基づいて、DopCase=1、…、NDMについて最大電力となる同相加算値を検出する。以下では、最大電力となる同相加算値を与えるDopCaseのインデックス番号を「DopCase_max」と表す。
例えば、時間ドップラ多重分離部404は、同相加算値Pow_ADDCOH(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase_max)-1)×ΔFD)が最大電力の場合、「折り返し無し」と判定する。
また、例えば、時間ドップラ多重分離部404は、ドップラ折り返しを考慮した同相加算値Pow_ADDALIAS(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase_max)-1)×ΔFD)が最大電力の場合、「折り返し有り」と判定する。
なお、反射波の受信信号のSNRが低下すると同相加算電力レベルが最大となるものの検出がノイズの影響により判別しにくくなる。このため、時間ドップラ多重分離部404は、判定条件を導入し、例えば、判定条件を満たす場合の判定結果(換言すると、検出結果)を採用し、判定条件を満たさない判定結果を除去する(換言すると、採用しない)処理を行ってもよい。これにより、ノイズ成分等を誤って検出する確率を低減できる。例えば、時間ドップラ多重分離部404は、ドップラ折り返しの有無の同相加算値が最大となる受信電力の検出値PMAXが、PMAX >LEVDETECT×PowerFT(fb_cfar, fs_comp_cfar)を満たす場合、判定結果として採用してよい。LEVDETECTは判定閾値である。LEVDETECTは、0<LEVDE0TECT<1の実数である。
<(2)送信アンテナ306の判別及びターゲットのドップラ周波数の判別処理>
時間ドップラ多重分離部404は、例えば、-1/(2×Tr)≦fTARGET<1/(2×Tr)の範囲のターゲットのドップラ周波数fTARGETを検出する。
例えば、時間ドップラ多重分離部404は、DopCaseの判定結果(例えば、DopCase_max)及び折り返しの有無の判定結果に基づいて、送信アンテナ306及びターゲットのドップラ周波数を判別する。
[ケース(a):折り返しの無しのケース]
ターゲットのドップラ周波数判定:
時間ドップラ多重分離部404は、ターゲットのドップラ周波数インデックスを(fs_comp_cfar+(DopCase_max -1)×ΔFD-DOP1)と判定する。例えば、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarのドップラ周波数間隔は1/(Ntdslot×NTD×Tr)である。よって、時間ドップラ多重分離部404は、ターゲットのドップラ周波数fTARGETを、(fs_comp_cfar+(DopCase_max -1)×ΔFD-DOP1)/(Ntdslot×NTD×Tr)と判定する。
送信アンテナ判定:
時間ドップラ多重分離部404は、時間ドップラ多重数が1である送信アンテナ306について、例えば、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase_max)-1)×ΔFD)の同相加算信号ADDCOHz(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase_max)-1)×ΔFD)を、送信アンテナTx#[1, ndm1]に対する受信信号と判定する。
また、時間ドップラ多重分離部404は、時間ドップラ多重数がN
TDである送信アンテナ306について、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスf
b_cfar、ドップラ周波数インデックス(f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm,DopCase_max)-1)×ΔFD)のドップラ解析部402の出力(例えば、次式(117)及び(118)を参照)を、送信アンテナTx#[ntd, ndm]に対する受信信号と判定する。なお、式(117)のexp項は時間多重に起因するドップラ位相を補正する項である。また、ndmはndm=1,…,N
DM であり、ndm1を除く。また、ntd=1,…,N
TDである。
[ケース(b):折り返し有りのケース]
ターゲットのドップラ周波数判定:
時間ドップラ多重分離部404は、ターゲットのドップラ周波数インデックスをfs_comp_cfar+(DopCase_max-1)×ΔFD)-DOP1-Ncode×Sign(fs_comp_cfar+(DopCase_max-1)×ΔFD-DOP1)と判定する。例えば、ドップラ周波数インデックスfs_comp_cfarのドップラ周波数間隔は1/(Ntdslot×NTD×Tr)である。よって、時間ドップラ多重分離部404は、ターゲットのドップラ周波数fTARGETを(fs_comp_cfar+(DopCase_max-1)×ΔFD-DOP1-Ntdslot×Sign(fs_comp_cfar+(DopCase_max-1)×ΔFD-DOP1))/(Ntdslot×NTD×Tr)と判定する。なお、Sign(x)は符号関数であり、実数xに対し、x>0のときは1、x=0のときは0、x<0のときはー1を出力する関数である。
このように、ドップラ解析部402の出力にドップラ折り返しが有る場合、時間ドップラ多重分離部404は、折り返し成分(例えば、Ntdslot×Sign(fs_comp_cfar+(DopCase_max-1)×ΔFD-DOP1))を考慮して、ターゲットのドップラ周波数を判定する。
送信アンテナ判定:
時間ドップラ多重分離部404は、時間ドップラ多重数が1である送信アンテナ306について、例えば、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase_max)-1)×ΔFD)の折り返しを考慮した同相加算信号ADDALIASz(fb_cfar, fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm1,DopCase_max)-1)×ΔFD)を、送信アンテナTx#[1, ndm1]に対する受信信号と判定する。
また、時間ドップラ多重分離部404は、時間ドップラ多重数がN
TDである送信アンテナ306について、例えば、第z番目の信号処理部206における、距離インデックスf
b_cfar、ドップラ周波数インデックス(f
s_comp_cfar+(DOPposi(DOP
ndm,DopCase_max)-1)×ΔFD)のドップラ解析部402の出力(例えば、次式(119)及び(120)を参照)を、送信アンテナTx#[ntd, ndm]に対する受信信号と判定する。なお、式(119)のexp項は時間多重に起因するドップラ位相を補正する項である。また、ndmはndm=1,…,N
DMであり、ndm1を除く。また、ntd=1,…,N
TDである。
以上のように、レーダ装置20は、NDM個の時間ドップラ多重数NDOP_TD(1), NDOP_TD(2),…, NDOP_TD(NDM)のうち全てをNTD個とせずに、少なくとも1つを1(換言すると、時間多重無し)に設定する。この設定により、例えば、時間ドップラ多重数をNTDに設定した時間ドップラ多重信号は、設定される送信タイミング(例えば、送信onのタイミング)で送信されるのに対して、時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号は、例えば、送信周期毎に送信される。よって、時間ドップラ多重数を1に設定した時間ドップラ多重信号の受信信号は、ドップラ折り返しの有無を考慮した同相加算値において最大値となる。時間ドップラ多重分離部404は、この性質を利用して、送信アンテナ306を判別でき、折り返しの有無を含めたターゲットのドップラ周波数を判定できる。
これにより、本実施の形態では、曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲を、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満の範囲に拡大できる。例えば、1アンテナで送信した場合に曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲は-1/(2Tr)以上かつ1/(2Tr)未満の範囲である。これにより、本実施の形態では、レーダ装置20は、複数の送信アンテナ306を用いる場合でも、1アンテナで送信する場合と同様に曖昧性なくドップラ周波数を検出できる。
以上、時間ドップラ多重分離部404の動作例について説明した。
図24において、方向推定部405は、時間ドップラ多重分離部404から入力されるターゲットのドップラ周波数判定結果、送信アンテナ判定結果(ドップラ折り返し判定結果)、及び、距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックス(fs_comp_cfar+(DOPposi(DOPndm,DopCase_max)-1)×ΔFD)のドップラ解析部402の出力、及び、最大値となる同相加算値に基づいて、ターゲットの方向推定処理を行う。
方向推定部405は、例えば、ターゲットのドップラ周波数判定結果、及び、送信アンテナ判定結果に基づいて、仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_comp_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
以上のように、本実施の形態では、レーダ装置20は、レーダ送信信号に対してドップラシフト量に対応する位相回転量を付与し、レーダ送信信号(例えば、ドップラ多重信号)を時間多重することにより、レーダ送信信号(例えば、時間ドップラ多重信号)を複数の送信アンテナ108から多重送信する。本実施の形態では、複数の送信アンテナ108それぞれに対して、ドップラシフト量(DOPndm)及び時間多重における送信期間(例えば、送信タイミング)の少なくとも一方が異なる組み合わせが対応付けられる。また、本実施の形態では、ドップラシフト量と時間多重における送信期間との組み合わせにおける各ドップラシフト量に対応する前記時間多重数は異なる。換言すると、ドップラ多重送信信号毎の時間多重数は不均一に設定される。
レーダ装置20は、例えば、時間ドップラ多重信号の受信信号(例えば、同相加算信号)に基づいて、各時間ドップラ多重信号(換言すると、ドップラシフト量及び送信期間の組み合わせ)に対応付けられた送信アンテナ306、及び、ドップラ折り返し有無(例えば、DopCase等)を判定できる。これにより、レーダ装置20は、ドップラ折り返しが有る場合でも、ターゲットのドップラ周波数を適切に判定できる。
よって、本実施の形態によれば、レーダ装置20は、実効的なドップラ周波数帯域幅を1/(Tr)に拡大でき、曖昧性(Ambiguity)が生じないドップラ周波数(相対速度)の検出範囲を拡大できる。これにより、レーダ装置20は、より広いドップラ周波数範囲において、物標の検知精度を向上できる。
また、本実施の形態では、時間ドップラ多重は、ドップラ多重と時間多重とを併用するので、多重送信において、ドップラ多重のみを用いる場合と比較して、ドップラ多重数を低減できる。そのため、ドップラシフトを付与する位相回転量の間隔を広くできるので、例えば、位相器の精度要件(位相変調精度)を緩和でき、位相器の調整の工数も含めてRF部のコスト低減効果も得られる。
また、本実施の形態では、時間ドップラ多重は、ドップラ多重と時間多重とを併用するので、レーダ装置20は、時間多重インデックス毎にドップラ周波数検出(相対速度検出)のためのフーリエ周波数解析(FFT処理)を行う。これにより、例えば、多重送信において、ドップラ多重のみを用いたドップラ周波数検出(相対速度検出)のためのフーリエ周波数解析(FFT処理)と比較して、FFTサイズは(1/時間多重数NTD)となり、FFT数は(時間多重数NTD)倍となる。このように、本実施の形態によれば、FFT処理の演算低減効果が得られ、回路構成の簡易化及び低コスト化の効果も得られる。
以上、本開示に係る一実施例について説明した。
[他の実施の形態]
例えば、実施の形態1では、符号多重数をNCM個より小さく設定する例に、符号化ドップラ多重数を1(換言すると、符号多重無し)とする場合について説明した。しかし、本開示の一実施例は、例えば、符号化ドップラ多重数をNCM個より小さく設定する際、符号化ドップラ多重数を2以上に設定してもよい。
本開示の一実施例に係るレーダ装置において、レーダ送信部及びレーダ受信部は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。また、本開示の一実施例に係るレーダ受信部において、方向推定部と、他の構成部とは、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
また、本開示の一実施例において用いた数値(例えば、送信アンテナ数Nt、受信アンテナ数Na、ドップラ多重数NDM、符号数NCM、時間多重数NTD等は一例であり、それらの値に限定されない。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
<本開示のまとめ>
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、送信信号を送信する複数の送信アンテナと、前記送信信号に対してドップラシフト量と符号系列とに対応する位相回転量を付与することにより、前記送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記複数の送信アンテナに対して、前記ドップラシフト量及び前記符号系列の少なくとも一方が異なる組み合わせがそれぞれ対応付けられ、前記組み合わせにおける各ドップラシフト量に対応する前記符号系列による多重数は異なる。
本開示の一実施例において、前記ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数は、前記複数の送信アンテナの数よりも少ない。
本開示の一実施例において、前記各ドップラシフト量を付与する位相回転量は等間隔である。
本開示の一実施例において、前記ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数は、前記多重送信に用いる前記ドップラシフト量の数に等しい。
本開示の一実施例において、前記送信信号がターゲットに反射した反射波信号を受信する複数の受信アンテナと、前記反射波信号に対して前記符号系列で符号分離した信号に基づいて、前記反射波信号に対応する前記送信アンテナの判定、及び、前記反射波信号におけるドップラ周波数領域での折り返しの判定を行う受信回路と、を更に具備する。
本開示の一実施例において、前記送信アンテナは、サブアレー構成である。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記各ドップラシフト量の間隔を、前記送信信号が送信されるフレーム毎に可変に設定する。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記送信信号の送信周期を、前記送信信号が送信されるフレーム毎に可変に設定する。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記送信信号に、疑似ランダムな符号系列を乗算する。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記複数の送信アンテナそれぞれと、前記ドップラシフト量及び前記符号系列の組み合わせと、の対応付けを、前記送信信号が送信されるフレーム毎に可変に設定する。
本開示の一実施例において、前記送信回路は、前記複数の送信アンテナそれぞれと、前記ドップラシフト量と、の対応付けを、前記送信信号の送信周期毎に可変に設定する。
本開示の一実施例において、レーダ装置は、送信信号を送信する複数の送信アンテナと、前記送信信号に対して位相回転量を付与することにより、前記送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記位相回転量に用いる位相数は、前記送信アンテナの数よりも少ない。
本開示の一実施例において、前記送信アンテナの数は、3、6及び7本の何れかである。
本開示の一実施例において、レーダ装置は、送信信号を送信する複数の送信アンテナと、前記送信信号に対してドップラシフト量に対応する位相回転量を付与し、前記送信信号を時間多重することにより、前記送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記複数の送信アンテナに対して、前記ドップラシフト量及び前記時間多重における送信期間の少なくとも一方が異なる組み合わせがそれぞれ対応付けられ、前記組み合わせにおける各ドップラシフト量に対応する前記時間多重による多重数は異なる。
本開示の一実施例において、前記ドップラシフト量を付与する位相回転量に用いる位相数は、前記多重送信に用いる前記ドップラシフト量の数に等しい。
本開示の一実施例において、前記各ドップラシフト量を付与する位相回転量は等間隔である。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、送信信号を送信する複数の送信アンテナと、前記送信信号に対してドップラシフト量と符号系列とに対応する位相回転量を付与することにより、前記送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記送信信号はチャープ信号であり、前記チャープ信号の中心周波数は、前記送信信号の送信周期毎、又は前記符号系列の送信周期毎に変化する。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、送信信号を送信する複数の送信アンテナと、前記送信信号に対してドップラシフト量と符号系列とに対応する位相回転量を付与することにより、前記送信信号を前記複数の送信アンテナから多重送信する送信回路と、を具備し、前記送信信号はチャープ信号であり、前記チャープ信号の中心周波数の変化は、前記送信信号の送信周期に対して前記符号系列の符号長の約数倍の周期で一巡する。