JP2023137826A - 多層プラスチック容器 - Google Patents

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沙耶 杉岡
Saya Sugioka
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Abstract

【課題】流動性物質が収容される多層プラスチック容器に関して、該流動性物質に対する潤滑性を示す油性液体の液膜が表面に形成されたとき、該液膜の容器壁中への浸透拡散が防止され、該液膜の消耗を有効に抑制することが可能な油性液体バリア材の層を備えている多層プラスチック容器を提供する。【解決手段】流動性物質が収容される多層プラスチック容器において、前記容器の壁は、オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂とのブレンド物により形成された層を含むことを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、流動性物質を収容する用途に使用される多層プラスチック容器に関するものである。
プラスチックは、成形が容易であり、種々の形態に容易に成形できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成されたオレフィン系樹脂ボトルは、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の流動物を収容するための容器として好適に使用されている。
また、粘稠な流動物を収容するダイレクトブローボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な流動物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
このような要求を満足するために、粘稠な流動物に対して潤滑性を示す油性液体の液膜を容器の内面に形成することにより、粘稠な流動物の容器からの排出性を高めるという技術が知られている。従来は、容器の内面に脂肪族アミド等の滑剤の粒子をブリードさせることに流動物の排出性を高めていたのであるが、上記のような液膜を形成したときには、流動物の排出性が格段と向上するため、現在では、このような液膜形成に関する技術が多く提案されている。
例えば、特許文献1には、液膜の下地となる容器内面層(下地層)の下側にガラス転移点(Tg)が35℃以上の樹脂、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる液拡散防止層が設けられている多層容器が、本出願人により提案されている。
即ち、潤滑液の液膜を形成する方法としては、容器の内面を形成する樹脂層(内面層)に潤滑液をブレンドしておき、該内面層の表面への潤滑液の経時的なブリードを利用して液膜を形成するという手段が代表的である。また、容器成形後、容器の内面に潤滑液をスプレーすることにより液膜を形成する手段もある。何れの方法により液膜を形成するにしろ、容器の内面を形成する樹脂としては、包装容器の分野で広く使用されているポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂やPETなどのエステル系樹脂が使用され、特に油性液体との馴染みがよいオレフィン系樹脂、特にエチレン系樹脂が好適に使用される。従って、容器内面に形成されている液膜(潤滑液)が容器の内面層から容器の外面側に浸透拡散して消耗し、潤滑性が低下していくという問題がある。上記特許文献1の技術は、この問題を解決したものであり、容器内面層の下側に、液拡散防止層を設けることにより、潤滑液の外面側への浸透拡散を防止し、容器内面に形成されている液膜の経時的な消耗を防止し、長期にわたって、粘稠な内容物に対する排出性を発揮させるというものである。
しかしながら、上記の手段において、液拡散防止層の形成に用いる樹脂として代表的なエチレン・ビニルアルコール共重合体は、容器の内面層を形成するオレフィン系樹脂やエステル系樹脂に対して接着性を示さないため、内面層と液拡散防止層との間に接着剤層が必要なり、容器を構成する樹脂層の数が多くなってしまうという問題がある。このため、油性液体の浸透拡散を防止する新たな油性液体バリア材が求められている。
また、特許文献2,3には、水素化石油樹脂を含む層構造の包装材が開示されているが、これらはプレススルーバック包装に使用されるものであり、粘稠な流動性物質を収容するために用いるものではないことから理解されるように、油性液体バリア材として水素化石油樹脂を使用するものではない。
特許5673905号公報 特開平6-30509号公報 特開2003-41072号公報
本発明の目的は、流動性物質が収容される多層プラスチック容器に関して、該流動性物質に対する潤滑性を示す油性液体の液膜が表面に形成されたとき、該液膜の容器壁中への浸透拡散が防止され、該液膜の消耗を有効に抑制することが可能な油性液体バリア材の層を備えている多層プラスチック容器を提供することにある。
本発明の他の目的は、従来公知の油性液体バリア材を用いた場合よりも少ない層数で油性液体の液膜の容器壁中への浸透拡散が防止することが可能な新規な油性液体バリア材を提供することにある。
本発明者等は、油性液体のバリア材として機能し得る材料について検討した結果、水素化石油樹脂とオレフィン系樹脂とのブレンド物が、油性液体のバリア材としての機能が高いという新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、流動性物質が収容される多層プラスチック容器において、
前記容器の壁は、オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂とのブレンド物により形成された層を含むことを特徴とする多層プラスチック容器が提供される。
本発明の多層プラスチック容器においては、次の態様が好適に採用される。
(1)オレフィン系樹脂により内面層が形成され、前記ブレンド物層が該内面層よりも外面側に設けられていること。
(2)前記ブレンド物層が前記内面層に隣接して設けられていること。
(3)前記オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂のブレンド物により内面が形成されていること。
(4)前記内面層の表面に油性液体による液膜が形成されていること。
(5)前記内面層は、油性液体を含有していること。
(6)前記ブレンド物層の形成に使用されるオレフィン系樹脂がプロピレン系樹脂であること。
(7)前記内面層の形成に使用されるオレフィン系樹脂が、エチレン系樹脂とプロピレン系樹脂とを含んでいること。
(8)前記油性液体が、植物油、脂肪酸トリグリセライド、フッ素系界面活性剤或いはシリコーンオイルであること。
(9)前記ブレンド物層において、前記水素化石油樹脂は、オレフィン系樹脂100質量部当り、10~100質量部の量で使用されていること。
本発明によれば、また、オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂とのブレンド物からなる油性液体バリア材が提供される。
かかる液体バリア材においては、前記オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂であることが好適である。
尚、本発明において、容器に収容される流動性物質とは、所謂粘性を示す液体或いは液体に微細な粒子が分散されたペーストなどを意味するものであり、固体や固体の粒状物などの固形物質は含まない。固形物質は、油性液体の液膜形成により容器から排出し易くなるというものではないからである。
本発明において、オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂とのブレンド物は、油性液体に対するバリア材として機能する。即ち、このようなブレンド物の層が容器壁に形成されている本発明の多層プラスチック容器では、容器内面に油性液体の液膜が形成される場合、該液膜を形成している油性液体の容器壁中への浸透拡散が防止されるため、該液膜の消耗が有効に抑制され、該液膜の内容物(流動性物質)に対する潤滑性が長期にわたって安定に発揮される。このようなバリア効果は、後述する実施例に明確に示されている。
しかも重要なことは、このブレンド物(油性液体バリア材)は、オレフィン系樹脂を含有しているため、オレフィン系樹脂に対して高い接着性を示すということである。即ち、本発明の多層プラスチック容器において、容器の内面層を油性液体に対して高い保持性を示すオレフィン系樹脂で形成した場合、上記のブレンド物の層を、接着剤層を挟まずに、直接、容器内面層の下側に隣接して設けることもできるのである。例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体のような極性基を有する樹脂では、油性液体に対して高いバリア材としての機能を示すが、容器内面層のオレフィン系樹脂に対して接着性を示さないため、接着剤層を設けることが必要となってしまう。本発明で用いるブレンド物(油性液体バリア材)の層は、接着剤層を介さずに設けることもできるため、容器内面層がオレフィン系樹脂により形成されている場合、容器壁を構成する樹脂層の数を少なくすることが可能となり、これは、押出機の数を増やさず、既存の設備で容器を製造することができ、工業的に極めて有利となる。
<本発明の原理>
本発明は、油性液体の高分子中での透過を遮断するバリア技術に関するものであり、以下の原理に基づいて、油性液体のバリア性向上を図ったものである。
即ち、オレフィン系樹脂やポリエステル樹脂をはじめとする高分子材料には、結晶領域と非晶領域が存在する。油性液体は、結晶領域を透過できず、非晶領域を透過する。従って、本発明では、油性液体に対するバリア性を向上させるために、非晶領域を油性液体が透過しにくい構造とし、さらに、結晶領域を増やすことで非晶領域を減らすという手段を採用しているものである。また、オレフィン系樹脂に結晶核剤を添加することで結晶化度を高めたり、立体規則性の良い高結晶化度のオレフィン系樹脂を採用したりすることで、非晶領域が狭くなり、より液体バリア性が高くなる。
<油性液体バリア材>
本発明において使用される油性液体バリア材は、オレフィン系樹脂に水素化石油樹脂が配合されたブレンド物であり、水素化石油樹脂の配合により、オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)が大きく上昇し、この結果、ガラス転移点以下の温度では、このブレンド物層がガラス質のがっちりとした状態で存在することとなり、この層を油性液体の透過を遮断するバリア材として機能するのである。
水素化石油樹脂は、石油の分解もしくは改質により得られた留分から気体オレフィンを分離した残りの液体留分(ジオレフィンやオレフィンに加えて芳香族オレフィンやパラフィン含む)が共重合して得られる石油樹脂を水素化して得られるものである。即ち、モノマー成分の種類や量が多岐にわたり、その組成を一概に特定することはできないが、共通していることは、C5~C9の脂肪族環を含んでおり、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂よりも高いガラス転移点を有しており、しかも、オレフィン系樹脂(特にプロピレン系樹脂)との親和性が高い。本発明において使用される水素化石油樹脂は、当然、オレフィン系樹脂と混合してフィルム形成可能なものであり、例えば、荒川化学工業(株)よりアルコンの商品名で種々のグレードのものが市販されている。また、ENEOS(株)よりT-REZシリーズとしても市販されている。
上記の説明から理解されるように、水素化石油樹脂をオレフィン系樹脂に配合すると、オレフィン系樹脂と相溶または部分相容し、オレフィン系樹脂のガラス転移点を高め、これにより、油性液体バリア材としての機能が発揮されるわけである。
しかも、本発明における油性液体バリア材は、オレフィン系樹脂成分を含んでいるから、オレフィン系樹脂により形成される層に対して高い接着性を示す。従って、接着剤層を介さずに、オレフィン系樹脂に対する層(例えば、後述する容器内層)に隣接して設けることができるという特性も有している。
上記のオレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂が好適に使用され、エチレン系樹脂とプロピレン系樹脂とを混合して使用することもできる。
エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、及びエチレンとエチレン以外の他のαーオレフィン(プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等)を例示することができる。
また、プロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外の他のαーオレフィン(エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等)を挙げることができる。
本発明において、高いガラス転移点を発現させ、油性液体に対するバリア効果を最大限に発揮させるという点では、所謂ホモポリプロピレンや、共重合成分として少量のエチレンを含むランダムポリプロピレンが最も好適である。また、耐衝撃性を必要とされる用途においては、エラストマー成分を含むブロックポリプロピレンも使用することができる。
上述したオレフィン系樹脂と水素化石油樹脂との量比は、ブレンド物のガラス転移点(Tg)が25℃以上、特に40℃以上となるように設定される。即ち、このような範囲にガラス転移点を示すことにより、容器の保存環境下での油性液体の拡散透過が有効に防止され、油性液体バリアとしての性能を十分に発揮できることとなる。なお、ガラス転移点(Tg)が過度に高くなる時は、成形性が損なわれるので、通常は、71℃以下となるようにする。
油性液体バリア材のガラス転移点は、該バリア材の形状や状態に応じて、温度変調DSCや後述の動的粘弾性測定により確認することができる。
従って、オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂との量比は、用いる水素化石油樹脂が有するガラス転移点(Tg)によっても異なるが、これら樹脂が有する通常Tgの範囲から考えて、オレフィン系樹脂100質量部当り、水素化石油樹脂を10~100質量部、特に12~80質量部の範囲となるのが一般的である。
尚、オレフィン系樹脂の結晶化度や水素化石油樹脂のガラス転移点(Tg)は、示差熱分析(DSC)により測定できるが、両者のブレンド物でのガラス転移点(Tg)は、該ブレンド物により成形されたフィルムについての動的粘弾性試験(DMS)によっても測定することができる。また、ブレンド物中での水素化石油樹脂の存在は、ラマン測定を行うことで確認出来る。例えば、波長532nmのレーザーを用いてラマン測定を行い得られたスペクトルのピークの内、772~782cm-1もしくは912~922cm-1に存在するピークは一般的なオレフィン樹脂には無い水素化石油樹脂由来のピークであることから、ブレンド物中に水素化石油樹脂が存在していることがわかる。
本発明において、上述した油性液体バリア材は、例えば溶融押出によりフィルムとし、必要に応じてドライラミネート接着剤を用いて、パウチ形成用のフィルムに積層し、パウチ用のラミネートフィルムとして使用に供することができる。この場合、パウチの内面となる層(ヒートシールフィルムには、内容物に対して潤滑性を示す油性液体が分散されており、経時により、パウチの内面に油性液体がブリードして液膜を形成するようになる。かかる液膜のパウチ外面側への浸透拡散による消耗は、上記油性液体バリア材のフィルムにより有効に防止されている。
しかるに、本発明の油性液体バリア材は、ダイレクトブロー容器(多層容器)の壁の形成に使用することにより、その特性を最大限に活かすことができる。
<多層容器の層構成>
上述した油性液体バリア材を用いた本発明の多層容器は、油性液体バリア材により形成される層をOBARで表して、以下の基本層構造を有する。
(液膜)内層/OBAR/外層
液膜;
上記の液膜は、この多層容器に収容される内容物(流動性物質)を速やかに排出するための潤滑液であり、この内容物の種類に応じて種々の油性液体により形成されるが、何れにしろ、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体により液膜が形成される。即ち、油性液体の揮散により消失を回避するためである。
油性液体の具体例としては、上記のような高沸点液体であることを条件として、種々のものを挙げることができるが、特に、水や水を含む親水性物質に対する撥水性や滑り性を付与することができることから、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、脂肪酸トリグリセライド、各種の植物油などが代表的である。植物油としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油などが挙げられる。
このような液体から形成される液膜は、目的とする表面特性や液体の種類によっても異なるが、一般に、液量が0.1乃至50g/m、好ましくは0.3乃至30g/m、さらに好ましくは0.5至30g/mの範囲となるように形成される。即ち、液量が少ないと、十分な表面特性を付与することができず、一方、液量が過度に多いと、液の脱落などを生じ易くなり、液量の変動が大きくなり、安定した表面特性を確保することができなくなるおそれがあるからである。
本発明においては、上記の液膜は、容器成形後には形成されておらず、特許文献1に開示されているように、容器成形後、内容物の充填に先立って潤滑液のスプレー噴霧や浸漬等の塗布により形成してもよく、また、容器内層を形成する樹脂に配合され、その後の経時により内層の表面にブリードして液膜が形成されるようにしてもよい。
潤滑液の塗布により液膜を形成する場合には、内層の表面に凹凸を形成し、液膜の保持性を高めておくことが好ましい。凹凸を形成する手段としては、内層の表面に、粗面化剤の微粒子(金属酸化物微粒子やポリマー微粒子)や多孔質体、結晶性添加剤などをコートして凹凸を形成することもできるし、このような粗面化剤の微粒子を、内層を形成する樹脂に練り込み等により混合して内層を成形することにより凹凸面を形成することもできる。
また、内層を形成する樹脂に油性液体をブレンドしておく場合には、内面層の外面側には、前述したOBAR層が形成されているために、内層にブレンドされている油性液体は、内層の表面(容器内面)に滲出し、これにより、液膜が形成されることとなる。内層を形成する樹脂にブレンドする油性液体の量は、既に述べたが、表面に滲出して液膜を形成する油性液体の量が0.1乃至10g/m、好ましくは0.3乃至8g/m、さらに好ましくは0.5至5g/m、格段に好ましくは1至3g/mの範囲に維持されるように設定しておけばよい。
内層/OBAR層;
本発明において、容器内面を形成する内層は、表面に形成される液膜の下地となり、該液膜が脱落しないように保持することが必要である。即ち、OBAR層の上に直接液膜を形成してしまうと、液膜を形成する油性液体が浸透しないため、液膜の脱落を生じ易くなってしまい、液膜による内容物の排出性向上効果が短時間で消失してしまう。このため、OBAR層は、内層の外面側に形成されることが好ましい。
このように、内層は、液膜からの油性液体の浸透をある程度許容し、油性液体の液膜に対してアンカー効果を示すものであり、例えば、包装容器の分野で多用されているオレフィン系樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるエステル系樹脂を使用することができるが、本発明においては、オレフィン系樹脂、特にOBAR層(油性液体バリア材)に存在するオレフィン系樹脂と同種のものが好適に使用される。即ち、エステル系樹脂により内層を形成した場合には、内層とOBAR層との間に接着剤層を設けることが必要となるが、オレフィン系樹脂により内層を形成した場合には、OBAR層がオレフィン系樹脂を含む層であるため、接着剤層を設けることなく、内層の下側に直接OBAR層を設けることができるからである。
なお、内層を形成するオレフィン系樹脂とOBAR層中のオレフィン系樹脂とが異なる場合には、接着力が弱いので、間に接着剤層を介在させることもできる。
本発明において、内層を形成するオレフィン系樹脂としては、OBAR層の形成に使用されるオレフィン系樹脂と同様のものを例示することができ、例えば、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂及びこれらのブレンド物が好適に使用される。エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、及びエチレンとエチレン以外の他のαーオレフィン(プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等)を例示することができ、プロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外の他のαーオレフィン(エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等)を挙げることができる。
油性液体に対して最も高いアンカー効果を示すのは、エチレン系樹脂である。
また、本発明においては、内層とOBAR層との間に高い接着性を確保するためには、内層を形成するオレフィン樹脂を、OBAR層の形成に用いるオレフィン系樹脂に応じて、同種の樹脂を選択すればよい。
しかるに、内層における油性液体に対するアンカー効果が高くするにはエチレン系樹脂が最適であり、BAAR層における油性液体に対するバリア効果(Tg向上効果)を高めるという点では、プロピレン系樹脂が最適である。
従って、本発明では、アンカー効果とバリア効果とを同時に満足させるためには、内層をエチレン系樹脂とプロピレン系樹脂とのブレンド物により形成し、OBAR層の形成に用いるオレフィン系樹脂(即ち、水素化石油樹脂とブレンドするオレフィン系樹脂)として、ホモポリプロピレン或いはランダムポリプロピレンを用いるのが最適である。
この場合、内層を形成するエチレン系樹脂(PE)とプロピレン系樹脂(PP)との質量比は、PE/PP=97/3~60/40の範囲とするのがよい。
また、十分なアンカー効果を確保し且つ油性液体に対するバリア効果を十分に確保するためには、内層の厚み比率は5%~30%程度とし、OBAR層の厚み比率は1%~15%程度とすればよい。
外層(基材);
上述した内層の外側に隣接して設けられるOBAR層は、これにより外面を形成することもできるが、通常は、その外側にさらに外層が設けられる。この外層を「基材」と呼ぶが、この基材は、単層であってもよいし、複数の層から形成されていてもよく、隣接する層との間の接着性が不十分な場合には、適宜接着剤層が使用される。この接着剤層は、例えば、内層がOBAR層との接着性に乏しい樹脂(例えばPET)により形成されていた場合にも使用されるものである。
このような基材として、最もポピュラーなものは、内層と同種のオレフィン系樹脂で形成される層であり、この場合は、OBAR層との間に接着剤層を設ける必要はない。また、この場合、この容器を成形する際に生じるバリ等の廃材をバージンのオレフィン系樹脂と配合したリグラインドの層を中間層として、OBAR層に隣接して設けることもできる。
また、上記基材は、ガスバリア性樹脂の層を含む多層構造とし、酸素バリア性を確保することもできる。このガスバリア性樹脂の層は、OBAR層やオレフィン系樹脂の層との接着性が乏しいため、接着剤層を介在させることが必要となる。
上記のガスバリア性樹脂は、特許文献1にも記載されているように、油性液体バリア材としての機能をも有している。
このようなガスバリア性樹脂としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物)、芳香族ポリアミド及び環状ポリオレフィンなどが代表的であり、油性液体バリア効果をさらに向上させると同時に、ガス遮断性をも付与することができ、内容物の酸化劣化を防止することができる。中でもエチレン・ビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、最も好適である。このようなガスバリア性樹脂の層の厚みは、一般的には、0.5乃至20μm程度であり、要求される酸素バリア性の程度に応じて適宜の厚みに設定される。
さらに、ガスバリア性樹脂層の層を導入するために必要な接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン系樹脂;エチレン-アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。このような接着剤樹脂層の厚みは、適宜の接着力が得られる程度でよい。
尚、このような接着剤樹脂層は、前述した内層とOBAR層との接着力が弱い場合には、両層の間に介在させることもできる。
本発明においては、一般的には、最外層がオレフィン系樹脂層となり、リグラインド層やガスバリア性樹脂層が中間層となるようにして基材の層構造が設定される。
上述した層構造を有する多層容器は、各種層を形成する樹脂若しくは樹脂組成物を用いての共押出により、チューブ状のパリソンを形成し、その一端をピンチオフにより閉じ、この状態で他端からブロー流体を供給してダイレクトブロー成形により得られる。この場合、内層を形成する樹脂に、油性液体が配合されていない場合には、得られた容器の内面に油性液体を塗布し、その後、内容物が充填されることになる。
上述した本発明の多層容器には、粘稠な流動性物質、例えば、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、マスタード、ドレッシング、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス等が充填されるが、容器を傾斜或いは倒立させ、適宜スクイズすることにより、これらの内容物が容器内壁に付着することなく、速やかに排出できる。
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び多層構造体(容器)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
<油性液体>
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:28.8mN/m(23℃)
粘度:33.8mPa・s(23℃)
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
<油性液体バリア材用樹脂>
ベース樹脂(オレフィン系樹脂);
ホモポリプロピレンA(h-PPA)
MFR:2.0g/10min(230℃、2.16kgf)
ランダムポリプロピレンA(r-PPA)
MFR:1.2g/10min(230℃、2.16kgf)
水素化石油樹脂;
P-140(荒川化学工業(株)製)
軟化点:140℃(参考値)
ガラス転移温度(Tg):90℃(後述DSC測定値)
HA125(ENEOS(株)製)
軟化点:124.5℃(参考値)
ガラス転移温度(Tg):69℃(後述DSC測定値))
<内層形成樹脂>
ランダムポリプロピレンA(r-PPA)
MFR:1.2g/10min(230℃、2.16kgf)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)
MFR:1.3g/10min(190℃、2.16kgf)
<基材(外層)>
ランダムポリプロピレンB(r-PPB)
MFR:1.7g/10min(230℃、2.16kgf)
<熱物性測定>
水素化石油樹脂については、示差走査熱量計(DSC、PERKIN ELMER社製Diamond DSC)を用いて、下記条件で測定を行い、ガラス転移温度を求めた。
樹脂約2.5mgの試料に対し、窒素雰囲気下、25℃から-50℃まで降温速度100℃/minで走査し、-50℃にて3分間保持し、-50℃から150℃まで昇温速度10℃/minで走査し、150℃で3分間保持した後、150℃から-50℃まで降温速度10℃/minで走査した。
その後、-50℃から150℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから、樹脂のガラス転移温度を求めた。
油性液体バリア材については、後述の方法でフィルムを作製し、水素化石油樹脂と同様にDSCを用いて、下記条件で測定を行い、結晶化度を求めた。
樹脂約3.5mgの試料に対し、窒素雰囲気下、25℃から-50℃まで降温速度100℃/minで走査し、-50℃にて3分間保持した。その後、-50℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから、昇温の過程で最も高温側に観測された融解ピークのピーク面積と充填した試料中に含まれるマトリックス樹脂の重量からマトリックス樹脂の融解エンタルピーΔH(J/g)を求め、結晶化度を次式により算出した。
結晶化度(%)=(ΔH/ΔH0)×100
ΔH0はマトリックス樹脂の完全結晶の融解エンタルピーであるが、比較例1においてはΔH0をプロピレン系樹脂の完全結晶の融解エンタルピーとし、実施例1~7においてはΔH0をプロピレン系樹脂の完全融解エンタルピーに重量分率を乗じた値とした。
ここで、プロピレン系樹脂の完全結晶の融解エンタルピーを207J/gとした。
<油性液体バリア材中の水素化石油樹脂の有無の確認(ラマン分光測定)>
後述の方法で作製した容器からサンプルフィルム(10mm×10mm)を入手し、顕微ラマン分光測定(Thermo社製DXR Raman Microscope)を行った。
測定条件は以下のとおりである。
対物レンズ:LMplan 50xBD
レーザー波長:532nm
レーザー出力:1mW
露光時間:4秒
露光回数:4回
<油性液体バリア材の動的粘弾性測定>
後述の方法で作製した容器からサンプルフィルム(20mm×10mm)を入手し、動的粘弾性測定(セイコーインスツルメント株式会社製:DMS6100)を行った。
測定条件は以下のとおりである。
歪振幅:10μm
最小張力:50mN
張力/圧縮力ゲイン:1.2
力振幅初期値:50mN
周波数:10Hz
昇温速度:-50℃~130℃まで3℃/分
測定により得られた損失弾性率のピーク位置からガラス転移温度を算出した。
<多層容器における各層の厚み、および全体厚みの測定>
後述の方法で成形した多層容器の底から高さ60mmの位置での胴部水平断面における層構成を偏光顕微鏡にて観察し、多層容器中における各層の厚み、および全体厚みを求めた。断面に対し、0°、90°、180°、270°の位置での構成を観察し、4方向での平均値を多層容器中における各層の厚み、および全体厚みとした。
<液膜量の測定>
後述の方法で作製した内容量150mLの多層容器を22℃-60%RH(大気圧下)または40℃で所定の期間保管した。
所定の時間経過した多層容器を用いて、容器内面に形成された油性液体による液膜を、液膜と混和性の溶剤(エタノール)10mLで回収し、110℃ホットプレートで溶剤を蒸発させて残留物(液層成分)の重さを求めた。
得られた重さを容器内面の面積で除し、多層容器内面における液膜量(g/m)とした。
この値が初期区から月日が経っても変化が少ない場合、油性液体バリアが機能して液膜を維持出来ていることを示している。
一方、月日が経つにつれて減少していく場合、油性液体バリアの機能が不十分であり、時間経過で液層被膜が薄くなっていることを示している。
<実施例1>
油性液体バリア材の作製;
油性液体バリア材用のベース樹脂(オレフィン系樹脂)としてホモポリプロピレンA(h-PPA)を、水素化石油樹脂としてP-140をそれぞれ用いて、ホモポリプロピレンA:P-140=95:5(重量比)となるように、二軸混練押出機(株式会社テクノベル製 KZW20TW)を用い、シリンダー温度210℃の条件下で溶融混練し、油性液体バリア材を作製した。
油性液体バリア材の評価;
ラマン分光測定および動的粘弾性測定を実施するためのフィルムを以下の様に作製した。
ホモポリプロピレンAとP-140とが前記重量比(95:5)で溶融混練されて調製された前記樹脂組成物を内層材として、30mm押出機Aに供給した。また、30mm押出機Bに剥離剤(中間層)としてエチレン-ビニルアルコール共重合体を供給し、50mm押出機には、基材(外層材)としてランダムポリプロピレンBをそれぞれ供給した。このようにして、温度210℃の多層ダイヘッドより各組成物(溶融パリソン)を押し出し、ダイレクトブロー成形を行い、内容量150mL、重量11.1gの多層容器を作製した。
作製した多層容器から油性液体バリア材層を剥離させ、100μmのフィルムを得た。
当該フィルムを用い、前述のラマン分光測定を行い、ラマンシフトの値が777±5cm-1および917±5cm-1の範囲でのピークの有無を確認した。また前述の動的粘弾性測定を行い、損失弾性率からガラス転移温度を測定した。その結果は、表1の通りである。
多層容器の製造;
前述した油性液体バリア材を使用し、以下の様に多層容器を作製した。
30mm押出機Aに、ランダムポリプロピレンA(r-PPA)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び中鎖脂肪酸トリグリセライド(油性液体;MCT)を、内層形成樹脂として供給した。重量比は、r-PPA:LLDPE:MCT=28:64:8である。
また、30mm押出機Bに、前述した油性液体バリア材(h-PPA:P-140=95:5(重量比))を供給した。
さらに、50mm押出機に、基材(外層材)として、ランダムポリプロピレンB(r-PPB)を供給した。
上記のようにして各押出機から溶融物を、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融押し出してパリソンを得、ピンチオフ及びブローエアの吹込み、ダイレクトブロー成形を行い、内容量150mL、重量13.8gの多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。また、各層の厚み及び全体厚みを測定したところ、以下のとおりであった。なお、括弧内の値は、各層の厚み(μm)を示す。また、油性液体バリア層は、OBARで示した。
基材(外層;541)/OBAR(62)/内層(110)/液膜
全体厚み:713μm
<実施例2>
油性液体バリア材の作製及び評価;
ベース樹脂(h-PPA)と水素化石油樹脂(P-140)との重量比を、h-PPA:P-140=90:10に変更した以外は、実施例1と同様に、油性液体バリア材を作製し且つその評価を行い、結果を表1に示した。
多層容器の製造;
30mm押出機Bに供給する油性液体バリア材を上記で作製されたもの(h-PPA:P-140=90:10)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ダイレクトブローにより多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。
<実施例3>
油性液体バリア材の作製及び評価;
ベース樹脂(h-PPA)と水素化石油樹脂(P-140)との重量比を、h-PPA:P-140=80:20に変更した以外は、実施例1と同様に、油性液体バリア材を作製し且つその評価を行い、結果を表1に示した。
多層容器の製造;
30mm押出機Bに供給する油性液体バリア材を上記で作製されたもの(h-PPA:P-140=80:20)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ダイレクトブローにより多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。
<実施例4>
油性液体バリア材の作製及び評価;
ベース樹脂(h-PPA)と水素化石油樹脂(P-140)との重量比を、h-PPA:P-140=75:25に変更した以外は、実施例1と同様に、油性液体バリア材を作製し且つその評価を行い、結果を表1に示した。
多層容器の製造;
30mm押出機Bに供給する油性液体バリア材を上記で作製されたもの(h-PPA:P-140=75:25)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ダイレクトブローにより多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。
<実施例5>
油性液体バリア材の作製及び評価;
ベース樹脂(h-PPA)と水素化石油樹脂(P-140)との重量比を、h-PPA:P-140=50:50に変更した以外は、実施例1と同様に、油性液体バリア材を作製し且つその評価を行い、結果を表1に示した。
多層容器の製造;
30mm押出機Bに供給する油性液体バリア材を上記で作製されたもの(h-PPA:P-140=50:50)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ダイレクトブローにより多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。
以外は、実施例1と同様に作製・評価した。
<実施例6>
油性液体バリア材の作製及び評価;
ベース樹脂(h-PPA)と水素化石油樹脂(P-140)との重量比を、h-PPA:P-140=25:75に変更し且つシリンダー温度を170℃に変更した以外は、実施例1と同様に、油性液体バリア材を作製し且つその評価を行い、結果を表1に示した。
多層容器の製造;
30mm押出機Bに供給する油性液体バリア材を上記で作製されたもの(h-PPA:P-140=25:75、シリンダー温度:170℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ダイレクトブローにより多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。
<実施例7>
油性液体バリア材の作製及び評価;
水素化石油樹脂をHA125に変更し、ベース樹脂(h-PPA)と水素化石油樹脂(HA125)との重量比を、h-PPA:HA125=85:15に変更した以外は、実施例1と同様に、油性液体バリア材を作製し且つその評価を行い、結果を表1に示した。
多層容器の製造;
30mm押出機Bに供給する油性液体バリア材を上記で作製されたもの(h-PPA:HA125=85:15)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ダイレクトブローにより多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。
<実施例8>
油性液体バリア材の作製及び評価;
ベース樹脂をランダムポリプロピレンA(r-PPA)に変更し、ベース樹脂(r-PPA)と水素化石油樹脂(P-140)との重量比を、r-PPA:P-140=75:25に変更した以外は、実施例1と同様に、油性液体バリア材を作製し且つその評価を行い、結果を表1に示した。
多層容器の製造;
30mm押出機Bに供給する油性液体バリア材を上記で作製されたもの(r-PPA:P-140=75:25)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ダイレクトブローにより多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。
<比較例1>
ホモポリプロピレンAの評価用フィルムの作製及び評価;
30mm押出機AにホモポリプロピレンA(h-PPA)、30mm押出機Bにエチレン-ビニルアルコール共重合体(剥離剤)、50mm押出機にランダムポリプロピレンB(基材)をそれぞれ供給した。温度210℃の多層ダイヘッドより、各押出機からの溶融押出しを行い、パリソンを得、このパリソンについてピンチオフを行い、次いでブローエアを供給してダイレクトブロー成形を行い、内容量150mL、重量11.4gの多層容器を作製した。この容器からホモポリプロピレンA層を剥離させ、100μmのフィルム(動的粘弾性測定を実施するためのフィルム)を得た。
当該フィルムを用いて前述のラマン分光測定を行い、ラマンシフトの値が777±5cm-1および917±5cm-1の範囲でのピークの有無を確認した。また、前述の動的粘弾性測定を行い、損失弾性率からガラス転移温度を測定した。その結果は、表1の通りである。
多層容器の製造;
実施例1で使用されているベース樹脂(h-PPA)と水素化石油樹脂(P-140)との混合物(油性液体バリア材)の代わりに、上記のホモポリプロピレンA(h-PPA)のみを使用し、以下の様に多層容器を作製した。
30mm押出機Aに、ランダムポリプロピレンA(r-PPA)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及び中鎖脂肪酸トリグリセライド(油性液体;MCT)を、内層形成樹脂として供給した。重量比は、r-PPA:LLDPE:MCT=28:64:8である。
また、30mm押出機Bに、前述したホモポリプロピレンA(h-PPA)のみを供給した。
さらに、50mm押出機に、基材(外層材)として、ランダムポリプロピレンB(r-PPB)を供給した。
上記のようにして各押出機から溶融物を、温度210℃の多層ダイヘッドより溶融押し出してパリソンを得、ピンチオフ及びブローエアの吹込み、ダイレクトブロー成形を行い、内容量150mL、重量12.1gの多層容器を作製した。
この容器について、液膜量を測定し、結果を表1に示した。また、各層の厚み及び全体厚みを測定したところ、以下のとおりであった。なお、括弧内の値は、各層の厚み(μm)を示す。
基材(外層;560)/(h-PPA)(53)/内層/(114)液膜
全体厚み:727μm
Figure 2023137826000001
表1より、水素化石油樹脂を使用せず、ホモポリプロピレンAのみを使用した比較例1の多層容器は、22℃-60%RHで1ヶ月保管すると、同条件で1週間保管した多層容器よりも液膜量が低下していることが分かる。さらに、40℃で1ヶ月保管した多層容器の液膜量が消失してしまった。
一方で、ホモポリプロピレンAに水素化石油樹脂を溶融混練りした実施例1~7の多層容器は、液膜量が22℃-60%RHで1ヶ月保管すると、同条件で1週間保管した多層容器と同等または増加していることが読み取れる。特に、水素化石油樹脂を20%以上溶融混練りした多層容器においては、40℃で1ヶ月保管したものにおいても液膜量が存在していることが分かる。
これらの結果から、水素化石油樹脂の配合により、油性液体バリア性が大きく向上していることが判る。
また、ランダムポリプロピレンAに水素化石油樹脂を溶融混練りした実施例8においても油性液体バリア性が発現した。実施例4であるホモポリプロピレンAに水素化石油樹脂を25%溶融混練りした油性液体バリア材と実施例8であるランダムポリプロピレンAに水素化石油樹脂を25%溶融混練りした油性液体バリア材の結果を比較すると液膜量の結果から実施例4の方が優れた油性液体バリア性能を示している。結晶は油性液体をバリアできるので、フィルムの結晶化度の差が油性液体バリア性能に寄与していると考えられる。
これらのことから、本発明により長期間にわたり油性液体の液膜量を維持することが可能と言える。

Claims (12)

  1. 流動性物質が収容される多層プラスチック容器において、
    前記容器の壁は、オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂とのブレンド物により形成された層を含むことを特徴とする多層プラスチック容器。
  2. オレフィン系樹脂により内面層が形成され、前記ブレンド物層が該内面層よりも外面側に設けられている請求項1に記載の多層プラスチック容器。
  3. 前記ブレンド物層が前記内面層に隣接して設けられている請求項2に記載の多層プラスチック容器。
  4. 前記オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂のブレンド物により内面が形成されている請求項1に記載の多層プラスチック容器。
  5. 前記内面層の表面に油性液体による液膜が形成されている請求項2に記載の多層プラスチック容器。
  6. 前記内面層は、油性液体を含有している請求項5に記載の多層プラスチック容器。
  7. 前記ブレンド物層の形成に使用されるオレフィン系樹脂がプロピレン系樹脂である請求項1に記載の多層プラスチック容器。
  8. 前記内面層の形成に使用されるオレフィン系樹脂が、エチレン系樹脂とプロピレン系樹脂とを含んでいる請求項1に記載の多層プラスチック容器。
  9. 前記油性液体が、植物油、脂肪酸トリグリセライド、フッ素系界面活性剤或いはシリコーンオイルである請求項5に記載の多層プラスチック容器。
  10. 前記ブレンド物層において、前記水素化石油樹脂は、オレフィン系樹脂100質量部当り、10~100質量部の量で使用されている請求項1に記載の多層プラスチック容器。
  11. オレフィン系樹脂と水素化石油樹脂とのブレンド物からなる油性液体バリア材。
  12. 前記オレフィン系樹脂が、プロピレン系樹脂である請求項11記載の油性液体バリア材。
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