JP2023128947A - 半導体装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体素子の変位を抑制するループ形状のワイヤを備えた半導体装置とその製造方法を提供する。【解決手段】パッケージ基板1から分離して半導体素子3を、変位を抑制するワイヤ4a~4dで保持する。ワイヤ4a~4dは、平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部7を頂部として、チップ電極5との接合点とパッケージ電極6との接合点との間に上方に凸であるループを形成している。また屈曲部7の平面視における屈曲方向がワイヤ間で相互に異なるように形成してすることで、半導体素子3の変位を抑制することができる。屈曲部7は、チップ電極5とパッケージ電極6の一方の電極に接合した後、ワイヤを変形して屈曲部を形成して他方の電極に接合することで、簡便に形成することができる。【選択図】図1
Description
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特にパッケージ基材から分離されている半導体素子をワイヤのみで保持する中空パッケージ構造の半導体装置およびその製造方法に関する。
電子機器に搭載される半導体装置の増加に伴い、多様なパッケージ形状や過酷な使用環境に耐える半導体装置が求められている。例えば、電子機器の使用状態によっては、300℃を超える高温環境下での使用に耐える半導体装置が求められている。そこで、本出願人は、高温環境下で使用可能な半導体装置を提案した(特許文献1)。
図8は、本出願人が先に提案した半導体装置の製造方法を説明する断面模式図である。図8に示すように、まず、セラミックス等からなるパッケージ基材21に樹脂22で半導体素子23を接着し、半導体素子23の電極(図示せず)とパッケージ基材21の電極(図示せず)とをワイヤ24で接続する(図8(a))。この状態の平面図を図8(b)に示す。平面視におけるワイヤ24の軌道は直線状であることがわかる。その後、350℃に昇温し、室温に降温することで、樹脂22が分解して半導体素子23の底面とパッケージ基材21の上面との間が破断し、樹脂22に間隙Sが形成される。この間隙Sが形成されることで、半導体素子23はパッケージ基材21から分離され、ワイヤ24のみで保持される構造となる。その後、パッケージ基材21上に蓋25を金属ペースト26で接着することで半導体装置が完成する(図8(c))。
ところで、本出願人が先に提案した半導体装置は、半導体素子23がパッケージ基材21から分離しているため、ワイヤ24とともに半導体素子23が変位し、半導体素子23の破損、ワイヤ24の切断や短絡等の不具合が発生するという問題があった。そこで、本発明は、半導体素子がワイヤのみで保持される構造であっても半導体素子の変位を抑制することのできる半導体装置とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明の半導体装置は、上面にパッケージ電極を備えたパッケージ基材と、前記パッケージ基材と組み合わせて中空パッケージを構成する蓋部と、上面にチップ電極を備え、複数のワイヤのみにより前記パッケージ電極と前記チップ電極とを接続して前記中空パッケージ内に前記パッケージ基材から分離して保持された半導体素子とを備え、前記複数のワイヤが、平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部を頂部として前記チップ電極との接合点と前記パッケージ電極との接合点との間に上方に凸であるループを形成するワイヤを少なくとも2つ含み、前記屈曲部の平面視における屈曲方向が前記ワイヤ間で互いに異なる構成としている。
本発明の半導体装置の製造方法は、パッケージ基材上に接着されている半導体素子上のチップ電極とパッケージ基材上のパッケージ電極とを複数のワイヤで接続するワイヤ接続工程と、前記パッケージ基材から前記半導体素子を分離する工程と、前記パッケージ基材上に蓋を接合し、中空パッケージを形成する工程とを含み、前記ワイヤ接続工程において、前記ワイヤの少なくとも2つが、前記チップ電極または前記パッケージ電極のいずれか一方の電極にワイヤを接合した後、前記ワイヤに平面視で前記ワイヤの軌道を変更するように屈曲部を形成し、前記屈曲部を頂部とした上方に凸であるループを形成するように前記チップ電極または前記パッケージ電極のいずれか他方の電極に前記ワイヤを接合する工程により形成され、かつ前記屈曲部の平面視における屈曲方向が前記ワイヤ間で互いに異なるように配置される構成としている。
本発明の半導体装置によれば、半導体素子のチップ電極とパッケージ基材上のパッケージ電極とを接続するワイヤに平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部を有し当該屈曲部を頂部として上方に凸であるループを形成するワイヤを備えるため、半導体素子の変位が抑制される。また本発明の半導体装置の製造方法によれば、通常のワイヤボンディング工程に平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部を形成する工程を付加するのみで、簡便に半導体素子の変位を抑制する半導体装置を製造することができる。
次に、図面を参照しながら本発明の半導体装置の実施形態およびその製造方法の実施態様を説明するが、本発明はこれらの実施形態や実施態様に限定されるものではなく、以下に説明する部材、材料等は、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また図面において同一符号は同等あるいは同一のものを示し、各構成要素間の大きさや位置関係などは便宜上のものであり、実態を反映したものではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の半導体装置の一実施形態(実施形態1)の説明図であり、図1(a)は平板状のパッケージ基材1上に半導体素子3が配置され、4本のワイヤ4a~4dが、それぞれ半導体素子3上のチップ電極5とパッケージ基材1上のパッケージ電極6に接続されている状態を示す平面模式図を、図1(b)は、図1(a)のA-A線に相当する断面の模式図であって、パッケージ基材1上に蓋2が接合された状態を示す。図1(a)においては、蓋2は省略されており、蓋2が接合される領域を二点鎖線で示している。
図1は、本発明の半導体装置の一実施形態(実施形態1)の説明図であり、図1(a)は平板状のパッケージ基材1上に半導体素子3が配置され、4本のワイヤ4a~4dが、それぞれ半導体素子3上のチップ電極5とパッケージ基材1上のパッケージ電極6に接続されている状態を示す平面模式図を、図1(b)は、図1(a)のA-A線に相当する断面の模式図であって、パッケージ基材1上に蓋2が接合された状態を示す。図1(a)においては、蓋2は省略されており、蓋2が接合される領域を二点鎖線で示している。
本実施形態の半導体装置10では、ワイヤ4a~4dが変位を抑制するワイヤとなる。図1(a)に示すように4本のワイヤ4a~4dには、それぞれ平面視でワイヤの軌道を変更する屈曲部7が形成されている。ワイヤ4a~4dが接続する半導体素子3のチップ電極5は、半導体素子3に搭載されている機能素子の入力端子、出力端子または制御端子等に接続するチップ電極であってもよいし、半導体素子3の動作とは無関係な変位を抑制するワイヤを接続するための接続ポイントを提供するチップ電極であってもよい。パッケージ電極6についても、半導体素子3に搭載されている機能素子の入力端子、出力端子または制御端子等に接続するパッケージ電極であってもよいし、変位を抑制するワイヤに接続するための接続ポイントを提供するパッケージ電極であってもよい。
さらに図1(b)に示すようにワイヤ4a、4dは、一端が半導体素子3上面のチップ電極5に接合し、この接合点から立ち上がり、屈曲部7を頂部として上方に凸となるループを形成して他端がパッケージ基材1上面のパッケージ電極6に接合する。ワイヤ4b、4cも同様である。
半導体素子3は、パッケージ基材1から分離しており、ワイヤ4a~4dのみで保持された状態で、パッケージ基材1と蓋2で囲まれた中空パッケージ内に配置される。
このような構造の半導体装置10は、以下のように半導体素子3の変位を抑制する。まずワイヤの形状について説明すると、図1に示すワイヤ4aは、半導体素子3上面のチップ電極5に一端を接合し、チップ電極5から図1(a)の図面下方向に所定の高さまで立ち上がり、屈曲部7を頂部として他端をパッケージ電極6に接合している。図1(a)のチップ電極5から延出するワイヤ4aは、平面視においてチップ電極5から図面下方向に延出し、屈曲部7において図面下方向への屈曲前のワイヤの延在方向(図中二点鎖線で示す)から図面右下方向に反時計回りにθ度(本図においては45度)曲がって延出している。ワイヤ4bは、平面視において半導体素子3の長辺の中点を通る線に対してワイヤ4aと対称の形状となる。ワイヤ4cとワイヤ4dは、半導体素子3の短辺の中点を通る線に対して、それぞれワイヤ4bとワイヤ4aと対称の形状となる。このようにワイヤ4a~4dは、いずれもチップ電極5との接合点から立ち上がり、屈曲部7により平面視でワイヤの延在方向が変わりパッケージ電極6と接合し、チップ電極との接合点とパッケージ電極との接合点との間に上方に凸であるループが形成されている。さらにワイヤ4a~4dの屈曲部7は、平面視における屈曲方向が相互に異なる配置とされている。
このような構造の半導体装置10において、半導体素子3がパッケージ基材1の表面に対して垂直方向に変位しようとする場合、チップ電極5から立ち上がるワイヤ4a~4dに押し上げる力、または引き下げる力が加わる。ワイヤ4a~4dは、平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部7を有し当該屈曲部7を頂部とする上方に凸であるループ形状であるため湾曲した一般的なループ形状を有するワイヤと比較して、半導体素子3がワイヤ4a~4dを押し上げる力、または引き下げる力に対し、ワイヤ4a~4dが全体として半導体素子3を押し下げる力、または引き上げる力が強くなる。その結果、半導体素子3の変位が抑制される。
また、屈曲部7がチップ電極5の近傍に配置されれば、ワイヤ4a~4dは、チップ電極5からの立ち上がり角度がより急角度となり半導体素子3から屈曲部7までの距離が短くなり半導体素子3の変位に対するワイヤの抑制効果がより効果的に発揮される。特に、屈曲部7を平面視で半導体素子3上に配置させることで、ワイヤ4a~4dはチップ電極5から垂直に近い形状で立ち上がることとなり、半導体素子3の変位を抑制する効果は大きくなり好ましい。
また、半導体素子3がパッケージ基材1の表面に対して水平方向に変位しようとする場合、チップ電極5から立ち上がるワイヤ4a~4dに水平方向に押す力が加わる。ワイヤ4a~4dは、平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部7を備える形状であり、屈曲方向が相互に異なる配置とすることで、屈曲部7の平面視において凸となる方向からワイヤ4a~4dを押す力に対し、ワイヤ4a~4dが半導体素子3を押し返す力が強くなる。また4本のワイヤ4a~4dは、図1(a)に示すように、2本のワイヤ4aとワイヤ4cとで屈曲部7の平面視において凸となる方向が相反し、ワイヤ4bとワイヤ4dとで屈曲部7の平面視において凸となる方向が相反して配置されている。半導体素子3の変位に際し、その変位を促す力のうち、特定のワイヤの屈曲部7の平面視において凸となる方向から加わる力は、当該特定のワイヤに受け止められ、逆に半導体素子3を押し返すこととなる。そして、半導体素子3の変位の方向は特定のワイヤの屈曲部7の平面視において凸となる方向と一致するとは限らないが、そのような場合であっても、ワイヤ4a~4dの屈曲部7の平面視における屈曲方向をワイヤ間で互いに異なるものとすることにより、いずれかのワイヤまたは複数のワイヤが水平に移動する半導体素子3を押し返すことになる。このように半導体素子3を保持するワイヤを平面視でワイヤの軌道を変更する屈曲部7を備える形状とすることで、平面視において屈曲部のない一般的な直線状の軌道を有するワイヤの場合と比較して、半導体素子3がワイヤ4a~4dを押す力に対してワイヤ4a~4dが全体として半導体素子3を押し返す力が強くなる。その結果、半導体素子3の変位が抑制される。
(実施形態2)
次に、本発明の半導体装置の別の実施形態(実施形態2)について説明する。図2は、本発明の半導体装置の別の実施形態(実施形態2)の説明図であり、先に説明した図1(a)に相当する平面模式図である。本実施形態の半導体装置20は、パッケージ基材となる平板状のパッケージ基材1上に半導体素子3が配置され、6本のワイヤ4a~4fが、それぞれ半導体素子3上のチップ電極5とパッケージ基材1上のパッケージ電極6に接合されている状態を示している。
次に、本発明の半導体装置の別の実施形態(実施形態2)について説明する。図2は、本発明の半導体装置の別の実施形態(実施形態2)の説明図であり、先に説明した図1(a)に相当する平面模式図である。本実施形態の半導体装置20は、パッケージ基材となる平板状のパッケージ基材1上に半導体素子3が配置され、6本のワイヤ4a~4fが、それぞれ半導体素子3上のチップ電極5とパッケージ基材1上のパッケージ電極6に接合されている状態を示している。
本実施形態の半導体装置20は、半導体装置10と比較して、変位を抑制するワイヤ4a~4dを備える点で同一であり、ワイヤ4e、4fとこれらと接続するチップ電極5およびパッケージ電極6が付加されている点で相違している。本実施形態で付加したワイヤ4e、4fは、半導体素子3上に形成されている機能素子入力端子、出力端子または制御端子等に接続するチップ電極5およびパッケージ基材1のパッケージ電極6を接続している。
図2に示すように、ワイヤ4e、4fには屈曲部が形成されておらず、半導体素子3の変位を抑制する効果は小さい。しかしながら、半導体素子3の四隅に配置したチップ電極5に接合する変位を抑制するワイヤ4a~4dは、実施形態1で説明した通り、半導体素子3の変位を抑制することになる。
なお、図2に示す例では、半導体素子3が大きく半導体素子3の変位を4本のワイヤのみで抑制できない場合には、ワイヤ4e、4fを変位を抑制するワイヤに変更することもできる。その場合、例えばワイヤ4eをワイヤ4aと同様の構造とし、ワイヤ4fをワイヤ4cと同様の構造とすることができる。またはワイヤ4eをワイヤ4bと同様の構造し、ワイヤ4fをワイヤ4dと同様の構造とすることもできる。このようにワイヤ4e、4fを変位を抑制するためのワイヤに変更する場合、それぞれのワイヤの接触を避けるため、接触が生じない位置にチップ電極5を移動させればよい。屈曲部7を備えたワイヤの数や配置、屈曲部を備えないワイヤの数や配置等は、変位を抑制したい半導体素子3に応じて適宜設定すればよい。
(半導体装置の製造方法)
次に、本発明の半導体装置の製造方法の実施態様について説明する。
次に、本発明の半導体装置の製造方法の実施態様について説明する。
図3は本発明の半導体装置の製造方法の一実施態様の説明図である。まず、パッケージ基材としてシリコン基板等から構成される平板状のパッケージ基材1を用意する。パッケージ基材1上にはパッケージ電極6が形成されている。パッケージ基材1の半導体素子搭載予定領域に硬化物が水溶性である硬化性樹脂組成物を塗布する。硬化性樹脂組成物上に半導体素子3を載置し、硬化性樹脂組成物を硬化させる(図3(a)、図中、符号8は硬化性樹脂組成物が硬化して得られた水溶性樹脂を指す)。この硬化により、半導体素子3はパッケージ基材1上に接着し、後述するワイヤボンディングを行うことが可能となる。硬化性樹脂組成物8としては、例えば、種々の部材の仮固定のためにディスペンサーや各種印刷法によって塗布することができ、紫外線等のエネルギー線の照射によって硬化し、さらにその硬化物が水に溶解する光硬化性樹脂組成物などを使用することができる。半導体素子3はシリコンやニオブ酸リチウム等で構成されており、紫外線を透過しないため、半導体素子3の表面に対して斜め方向もしくは横方向から紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させることで、ワイヤボンドが可能となる。
その後、アルミニウム、銅または金で構成されるワイヤ4によって半導体素子3上のチップ電極5とパッケージ基材1上のパッケージ電極6をワイヤボンディングする。ここで本発明におけるワイヤ4は、一般的な平面視で直線状の軌道の湾曲したループ形状ではなく、平面視でワイヤの軌道を変更する屈曲部7を備えた所望のループ形状とすることで変位を抑制するワイヤとして形成することができる(図3b)。ワイヤ4について、屈曲部7を備えるループ形状とするワイヤボンディング工程の詳細は、後述する。
半導体素子3を接着したパッケージ基材1を水に浸漬し、硬化した水溶性樹脂8を溶解除去する。水溶性樹脂8を除去することで、半導体素子3はパッケージ基材1から分離される(図3c)。水溶性樹脂8を溶解する溶媒は、水の代わりに、水と界面活性剤の混合溶媒、水と親水性有機溶媒との混合溶媒等を用いることもできる。必要に応じて、溶媒に浸漬させた状態で超音波を印加してもよい。この水溶性樹脂8を除去する際、屈曲部7が形成されたワイヤ4の変形や破損が生じない条件を選択する必要がある。また、ワイヤ4とチップ電極5との接続、ワイヤ4とパッケージ電極6との接続、半導体素子3上に形成されている電極や配線等も変形や破損が生じない条件を選択する必要がある。例えば25℃の水に浸漬し、超音波を印加すると3~10分程度で水溶性樹脂8を溶解除去することができる。
パッケージ基材1上に蓋2を所望の接着材を用いて接着することで中空パッケージ構造の半導体装置が完成する(図3d)。蓋2は、例えばガラスやセラミック等で構成することができる。
次に、ワイヤボンディング工程の一例について説明する。使用するワイヤ4は直径200μmのアルミニウム線とし、ウェッジボンディング法により、図1および図2に示すワイヤ4aのループ形状を形成するワイヤボンディング工程を例にとり説明する。
具体的には、このワイヤボンディング工程は、一般的なウェッジボンディング装置を使用する。図4は、一般的なウェッジボンディング装置の説明図である。半導体素子3上に形成されているチップ電極5にワイヤ4を接合する場合、ワイヤ4はガイド10を通して供給され(図4(a))、超音波振動が印加されたボンディングツール9に所定の荷重を加えてワイヤ4を加圧することで、ワイヤ4はチップ電極5に接合する。図4(b)はボンディングツール9の先端の図4(a)に示す断面と直交する断面を示している。図4(b)に示すようにボンディングツール9の先端にはV溝13が形成されており、このV溝13内にワイヤ4を配置してボンディングツール9で加圧すると、ワイヤ4がつぶれチップ電極5に接合される。図4(a)中、符号11はワイヤ4をクランプするクランパーで、例えばワイヤ4をカッター12で切断する際に、ワイヤ4をクランプするために使用される。
このワイヤボンディング工程は、ウェッジボンディング法によるためチップ電極5に第1ボンドを形成し、パッケージ電極6に第2ボンドを形成する。ワイヤ4の切断の際、カッター12が半導体素子3およびチップ電極5に接触し、半導体素子3等が破損することを防止するためである。
ワイヤ4aは次のように形成される。まず、チップ電極5上に第1ボンドを形成するため、半導体素子3のチップ電極5上にボンディングツール9を移動させる(図5(a))。超音波振動が印加されたボンディングツール9に所定の荷重を加えてワイヤ4を加圧すると、ワイヤ4がつぶれチップ電極5にワイヤ4の一端が接合される。図5(b)は、チップ電極5上にワイヤ4がつぶれて形成される接合部(第1ボンド)を模式的に示している。
その後、ワイヤ4を送り出しながらボンディングツール9を上昇させるとともに図5(b)の下方向に移動させ、所定の高さ、かつ所定の位置に達したところでワイヤ4をクランパー11でクランプする。屈曲部形成予定部でワイヤ4はボンディングツール9のV溝13内に配置、固定される(図6(a))。図6(b)の下方向にボンディングツール9を水平方向に移動させることでV溝13内にワイヤ4を確実に配置、固定できる。この状態でボンディングツール9を反時計回りに45度回転させる。このボンディングツール9の回転によってワイヤ4が変形する。
クランパー11によるワイヤ4のクランプを解除し、ワイヤ4を送り出しながらボンディングツール9を下降させるとともにワイヤ4が変形(回転)した方向(図7の右下斜め方向)に移動させる。パッケージ電極6上の所定の位置で、超音波振動が印加されたボンディングツール9に所定の荷重を加えてワイヤ4を加圧すると、パッケージ電極6上にワイヤ4がつぶれて形成される接合部(第2ボンド)が形成される(図7a)。図7(b)は、第2ボンドを形成した後、ワイヤを切断して形成されたワイヤ4(4a)を示している。ワイヤ4がチップ電極5およびパッケージ電極6に接続されることで、屈曲部形成予定領域に形成されたワイヤ4の変形が屈曲部7となる。
このように形成されたワイヤ4は、チップ電極5との接合点とパッケージ電極6との接合点との間に上方に凸のループ構造であり、平面視におけるワイヤの軌道が屈曲部7で変更される構造となる。上記のようにボンディングツール9を移動、回転させることで図1および図2に示すワイヤ4aを形成することができる。同様にボンディングツール9の移動方向、回転方向を適宜変更することでワイヤ4b~4dを形成することができる。なお、図2に示すワイヤ4e、4fは屈曲部7を形成しない通常のワイヤボンディング方法により同時に形成することができる。
上記の製造方法により形成する変位を抑制するワイヤ4は、通常の半導体装置の製造方法において形成されるワイヤ同様、ワイヤ間の接触、ワイヤと半導体素子との接触等の不具合が生じない条件とする必要がある。そのため、チップ電極5とパッケージ電極6の配置や大きさ、ワイヤ4の長さ等は適宜設定すればよい。また屈曲部7の形状により変わるワイヤ4の延在方向も適宜設定すればよい。なお、ワイヤ4が太いほど変位を抑制する効果は大きくなることが期待されるため、屈曲部7を形成可能な範囲で、太いワイヤ4を使用するのが好ましい。
以上本発明の半導体装置の製造方法の一実施態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、半導体素子3をパッケージ基材1に接着し、その後半導体素子3をパッケージ基材1から分離する方法は、水溶性樹脂による接着と、水溶性樹脂の溶解除去による分離に限定されず、本出願人が先に開示した樹脂による接続と樹脂の分解による分離としてもよい。
また、変位を抑制するワイヤを形成する際、ウェッジボンディング法の代わりにボールボンディング法とすることもできる。その場合、第1ボンドをパッケージ電極とし第2ボンドをチップ電極とすることができる。屈曲部の形成方法は、ボンディングツールにワイヤを固定してボンディングツールの回転により変形させる代わりに、ワイヤを通すキャピラリを移動させることでワイヤに曲げ癖を形成して屈曲部とすることができる。
(まとめ)
(1)本発明の半導体装置の一実施形態は、上面にパッケージ電極を備えたパッケージ基材と、前記パッケージ基材と組み合わせて中空パッケージを構成する蓋部と、上面にチップ電極を備え、複数のワイヤのみにより前記パッケージ電極と前記チップ電極とを接続して前記中空パッケージ内に前記パッケージ基材から分離して保持された半導体素子とを備え、前記複数のワイヤは、平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部を頂部として前記チップ電極との接合点と前記パッケージ電極との接合点との間に上方に凸であるループを形成するワイヤを少なくとも2つ含み、前記屈曲部の平面視における屈曲方向は前記ワイヤ間で互いに異なる構成とすることができる。
(1)本発明の半導体装置の一実施形態は、上面にパッケージ電極を備えたパッケージ基材と、前記パッケージ基材と組み合わせて中空パッケージを構成する蓋部と、上面にチップ電極を備え、複数のワイヤのみにより前記パッケージ電極と前記チップ電極とを接続して前記中空パッケージ内に前記パッケージ基材から分離して保持された半導体素子とを備え、前記複数のワイヤは、平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部を頂部として前記チップ電極との接合点と前記パッケージ電極との接合点との間に上方に凸であるループを形成するワイヤを少なくとも2つ含み、前記屈曲部の平面視における屈曲方向は前記ワイヤ間で互いに異なる構成とすることができる。
本発明の半導体装置によれば、半導体素子のチップ電極とパッケージ基材上のパッケージ電極とを接続するワイヤに平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部を設け、当該屈曲部を頂部として上方に凸であるループを形成するワイヤにより半導体素子の変位を抑制することができる。
(2)前記屈曲部は、平面視で前記半導体素子上に配置されることで、半導体素子上のチップ電極からのワイヤの立ち上がり角度がより急角度となり垂直に近い形状で立ち上がり、半導体素子から屈曲部までの距離が短くなり半導体素子の変位をより効果的に抑制することができる。
(3)本発明の半導体装置の製造方法の一実施態様では、パッケージ基材上に接着されている半導体素子上のチップ電極とパッケージ基材上のパッケージ電極とを複数のワイヤで接続するワイヤ接続工程と、前記パッケージ基材から前記半導体素子を分離する工程と、前記パッケージ基材上に蓋を接合し、中空パッケージを形成する工程とを含み、前記ワイヤ接続工程において、前記ワイヤの少なくとも2つは、前記チップ電極または前記パッケージ電極のいずれか一方の電極にワイヤを接合した後、前記ワイヤに平面視で前記ワイヤの軌道を変更するように屈曲部を形成し、前記屈曲部を頂部とした上方に凸であるループを形成するように前記チップ電極または前記パッケージ電極のいずれか他方の電極に前記ワイヤを接合する工程により形成され、かつ前記屈曲部の平面視における屈曲方向が前記ワイヤ間で互いに異なるように配置されている構成とすることができる。
(4)前記ワイヤ接続工程は、前記チップ電極にワイヤを接合し、前記ワイヤの屈曲部形成予定部で、ボンディングツールのV溝内にクランプされた前記ワイヤを配置し、前記ボンディングツールを回転させて前記屈曲部を形成した後、前記ワイヤのクランプを解除して前記ボンディングツールを下降させ、前記パッケージ電極に前記ワイヤを接合する工程とすることで、簡便に屈曲部を形成することができる。
(5)前記ワイヤ接続工程は、平面視で前記半導体素子上に配置される前記屈曲部を形成する工程とすることで、半導体素子の変位をより効果的に抑制することができる。
(6)前記パッケージ基材から前記半導体素子を分離する工程は、前記パッケージ基材に水溶性樹脂により接着された前記半導体素子の前記チップ電極と前記パッケージ電極とを前記ワイヤで接続した後、前記水溶性樹脂を溶解除去する工程とすることで、屈曲部に影響を与えることなく半導体素子をパッケージ基材から簡便に分離することができる。
1 パッケージ基材
2 蓋
3 半導体素子
4 ワイヤ
5 チップ電極
6 パッケージ電極
7 屈曲部
8 水溶性樹脂
9 ボンディングツール
10 ガイド
11 クランパー
12 カッター
13 V溝
21 パッケージ基材
22 樹脂
23 半導体素子
24 ワイヤ
25 蓋
26 金属ペースト
2 蓋
3 半導体素子
4 ワイヤ
5 チップ電極
6 パッケージ電極
7 屈曲部
8 水溶性樹脂
9 ボンディングツール
10 ガイド
11 クランパー
12 カッター
13 V溝
21 パッケージ基材
22 樹脂
23 半導体素子
24 ワイヤ
25 蓋
26 金属ペースト
Claims (6)
- 上面にパッケージ電極を備えたパッケージ基材と、
前記パッケージ基材と組み合わせて中空パッケージを構成する蓋部と、
上面にチップ電極を備え、複数のワイヤのみにより前記パッケージ電極と前記チップ電極とを接続して前記中空パッケージ内に前記パッケージ基材から分離して保持された半導体素子と
を備え、
前記複数のワイヤは、平面視におけるワイヤの軌道を変更する屈曲部を頂部として前記チップ電極との接合点と前記パッケージ電極との接合点との間に上方に凸であるループを形成するワイヤを少なくとも2つ含み、
前記屈曲部の平面視における屈曲方向は前記ワイヤ間で互いに異なる
半導体装置。 - 前記屈曲部は、平面視で前記半導体素子上に配置されている、
請求項1記載の半導体装置。 - パッケージ基材上に接着されている半導体素子上のチップ電極とパッケージ基材上のパッケージ電極とを複数のワイヤで接続するワイヤ接続工程と、
前記パッケージ基材から前記半導体素子を分離する工程と、
前記パッケージ基材上に蓋を接合し、中空パッケージを形成する工程と
を含み、
前記ワイヤ接続工程において、前記ワイヤの少なくとも2つは、前記チップ電極または前記パッケージ電極のいずれか一方の電極にワイヤを接合した後、前記ワイヤに平面視で前記ワイヤの軌道を変更するように屈曲部を形成し、前記屈曲部を頂部とした上方に凸であるループを形成するように前記チップ電極または前記パッケージ電極のいずれか他方の電極に前記ワイヤを接合する工程により形成され、かつ前記屈曲部の平面視における屈曲方向が前記ワイヤ間で互いに異なるように配置される
半導体装置の製造方法。 - 前記ワイヤ接続工程は、
前記チップ電極にワイヤを接合し、前記ワイヤの屈曲部形成予定部で、ボンディングツールのV溝内にクランプされた前記ワイヤを配置し、前記ボンディングツールを回転させて前記屈曲部を形成した後、前記ワイヤのクランプを解除して前記ボンディングツールを下降させ、前記パッケージ電極に前記ワイヤを接合する工程である、
請求項3記載の半導体装置の製造方法。 - 前記ワイヤ接続工程は、
平面視で前記半導体素子上に配置される前記屈曲部を形成する工程を含む、
請求項3または4記載の半導体装置の製造方法。 - 前記パッケージ基材から前記半導体素子を分離する工程は、
前記パッケージ基材に水溶性樹脂により接着された前記半導体素子の前記チップ電極と前記パッケージ電極とを前記ワイヤで接続した後、前記水溶性樹脂を溶解除去する工程である、
請求項3~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022033645A JP2023128947A (ja) | 2022-03-04 | 2022-03-04 | 半導体装置およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022033645A JP2023128947A (ja) | 2022-03-04 | 2022-03-04 | 半導体装置およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023128947A true JP2023128947A (ja) | 2023-09-14 |
Family
ID=87972644
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022033645A Pending JP2023128947A (ja) | 2022-03-04 | 2022-03-04 | 半導体装置およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2023128947A (ja) |
-
2022
- 2022-03-04 JP JP2022033645A patent/JP2023128947A/ja active Pending
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