JP2023128117A - テルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス及び磁気光学デバイス - Google Patents

テルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス及び磁気光学デバイス Download PDF

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Masanori Ikari
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Abstract

【課題】波長1064nmで低吸収率であると共に、屈折率の温度係数が既存のTGG結晶の半分以下であるテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスを提供する。【解決手段】テルビウムとイットリウムとアルミニウムとを含み、該テルビウムの含有体積モル濃度がイットリウムの含有体積モル濃度以上である複合酸化物の焼結体であり、波長1064nmにおけるベルデ定数が30rad/(T・m)以上であり、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveが9.0×10-6(K-1)以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、テルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスに関し、より詳細には、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適なテルビウムを含むガーネット型透明セラミックス、及び該ガーネット型透明セラミックスを磁気光学材料として用いた磁気光学デバイスに関する。
近年、ファイバーレーザーの高出力化が可能となってきたこともあり、該ファイバーレーザーを用いたレーザー加工機の普及が目覚しい。ところで、レーザー加工機に組み込まれるレーザー光源は、外部からの光が入射すると共振状態が不安定化し、発振状態が乱れる現象が起こる。特に発振された光が途中の光学系で反射されて光源に戻ってくると、発振状態は大きく撹乱される。これを防止するために、通常光アイソレータがレーザー光源と光ファイバーの間など光源の光出射側に設けられる。
光アイソレータは、ファラデー回転子と、ファラデー回転子の光入射側に配置された偏光子と、ファラデー回転子の光出射側に配置された検光子とからなる。また、ファラデー回転子は、光の進行方向に平行に磁界を加えて利用する。このとき、光の偏波線分はファラデー回転子中を前進しても後進しても一定方向にしか回転しなくなる。更に、ファラデー回転子は光の偏波線分が丁度45度回転される長さに調整される。ここで、偏光子と検光子の偏波面を前進する光の回転方向に45度ずらしておくと、前進する光の偏波は偏光子位置と検光子位置で一致するため透過する。他方、後進する光の偏波は検光子位置から45度ずれている偏光子の偏波面のずれ角方向とは逆回転に45度回転することになる。すると、偏光子位置における戻り光の偏波面は偏光子の偏波面に対して45度-(-45度)=90度のずれとなり、偏光子を透過できない。こうして前進する光は透過、出射させ、後進する戻り光は遮断する光アイソレータとして機能する。
上記光アイソレータを構成するファラデー回転子として用いられる材料では、従来からTGG結晶(Tb3Ga512)とTSAG結晶((Tb(3-x)Scx)Sc2Al312)が知られている(特開2011-213552号公報(特許文献1)、特開2002-293693号公報(特許文献2))。TGG結晶は現在標準的なファイバーレーザー装置用として広く搭載されている。他方TSAG結晶のベルデ定数はTGG結晶の1.3倍程度あるとされており、こちらもファイバーレーザー装置に搭載されてもおかしくない材料であるが、Scが極めて高価な原料であるため、製造コストの面から採用が進んでいない。
TGG結晶(Tb3Ga512)は製造が比較的容易なため直径4インチ結晶まで引き上げることができ、供給力、コスト力ともに高く、現在もファイバーレーザー装置用のファラデー回転子として広く利用されている。しかしながら、幾つかの問題が顕在化してきており、特にハイパワー帯のファイバーレーザー装置用としての利用が難しいことが明らかとなってきた。具体的には、材料固有の吸収率が高く(波長1064nmにおける吸収係数~0.16%/cm)、かつ屈折率の温度係数dn/dtが大きい点(室温25℃におけるdn/dt=18×10-6(K-1))がネックとなっている。
そのため、TSAG結晶ほど高額ではなく、かつTGG結晶よりも低吸収で屈折率の温度係数dn/dtが小さな新規材料が強く希求されている。そのような候補材料のひとつにTAG結晶(Tb3Al512)が知られているが、これまで高品質な単結晶TAGの製造は発明されていない。
このような制約がある中で、最近、組成が(Tbx1-x3Al512(x=0.5~1.0)である緻密なセラミックス焼結体が既存のTGG結晶に比べて消光比が高く(既存の35dBが39.5dB以上に改善し)、挿入損失も低減できる(既存の0.05dBが0.01~0.05dBに改善する)ことが開示された(Yan Lin Aung,Akio Ikesue, Development of optical grade (Tbx1-x3Al512 ceramics as Faraday rotator material, J.Am.Ceram.Soc.,(2017),100(9),4081-4087(非特許文献1))。この非特許文献1で開示された材料は、TAG結晶と類似の材料であるが、これまでの単結晶材料とは異なりセラミックスで作製している点が特徴である。これにより、これまで実現できなかった良質なイットリウム置換型のTAG結晶が得られることになった。
更にまた、特開2019-199386号公報(特許文献3)には、(Tb1-x-yxScy3(Al1-zScz512(式中、0.05≦x<0.45、0<y<0.1、0.5<1-x-y<0.95、0.004<z<0.2である。)という組成の常磁性ガーネット型透明セラミックスが開示されている。この材料は非特許文献1と類似の組成の材料であるが、Scが有意に添加されている点が異なる。当該材料を用いると、消光比が40dB以上と非特許文献1より更に改善され、100Wレーザーを照射しても熱レンズによる焦点位置の変化量が小さく、実用に耐えうるレベルの光アイソレータとして用いることができ、セラミックス製のためスケールアップも容易な、真に実用的な常磁性ガーネット型透明セラミックスを提供できるとしている。
ところで、これら非特許文献1及び特許文献3に開示された公知例では、確かに期待通りTGG結晶に比べて損失が低減でき、またハイパワー照射してもビーム品質の劣化が抑制できた事例が公開されている。おそらくこれらの知見は、材料固有の吸収率がTGG結晶に比べて低くなることに基づいた効果を示しているものと思われる。実際、材料固有の吸収率が低い材料をファラデー回転子として用いることができると、ファイバーレーザー装置の更なる高出力化が可能となるため好ましい。他方、いずれの公知例においても屈折率の温度係数dn/dtについての知見は一切なく、更に問題となるのは、該新規材料が従来のTGG結晶の屈折率の温度係数dn/dt=18×10-6(K-1)に比べてどのような位置づけなのかが全く不明な点である。
高出力なファイバーレーザー装置への適用が可能なファラデー回転子としての必要条件は、低吸収率と屈折率の温度係数dn/dtの小ささとの掛け合わせ(即ち、これらの要件2つがともに必要)であるが、こうした知見や先行開示例は存在しない。
特開2011-213552号公報 特開2002-293693号公報 特開2019-199386号公報
Yan Lin Aung,Akio Ikesue, Development of optical grade (TbxY1-x)3Al5O12 ceramics as Faraday rotator material, J.Am.Ceram.Soc.,(2017),100(9),4081-4087
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、テルビウムとイットリウムとアルミニウムとを含み、該テルビウムの含有体積モル濃度がイットリウムの含有体積モル濃度以上である複合酸化物の焼結体であって、波長1064nmで低吸収率であると共に、その屈折率の温度係数が既存のTGG結晶の半分以下であるテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス及びそれを用いた磁気光学デバイスを提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、下記のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス及び磁気光学デバイスを提供する。
1.
テルビウムとイットリウムとアルミニウムとを含み、該テルビウムの含有体積モル濃度がイットリウムの含有体積モル濃度以上である複合酸化物の焼結体であり、波長1064nmにおけるベルデ定数が30rad/(T・m)以上であり、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveが9.0×10-6(K-1)以下であることを特徴とするテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス。
2.
下記式(1)で表される複合酸化物の焼結体である1に記載のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス。
(Tb1-x-yxScy3(Al1-zScz512 (1)
(式中、0.05≦x≦0.4、0≦y<0.08、0.52<1-x-y<0.95、0≦z<0.15、0.001<y+z<0.2である。)
3.
更に、焼結助剤としてSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有する1又は2に記載のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス。
4.
1~3のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスを磁気光学材料として用いて構成される磁気光学デバイス。
5.
上記テルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである4に記載の磁気光学デバイス。
本発明のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスによれば、屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtの平均値(dn(1064)/dt)aveが9.0×10-6(K-1)以下と、従来のTGG結晶のそれに比べて略半減以下であるため本発明のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスをレーザー装置に適用した場合、当該材料の屈折率変化に起因する熱レンズ発生量も半減する。即ち、既存TGG結晶に比べて最低でも2倍の高出力レーザー装置への適用が可能となる。
本発明に係るテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子として用いた光アイソレータの構成例を示す断面模式図である。
<テルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス>
以下、本発明に係るテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス(単に、透明セラミックスということがある)について説明する。
本発明の透明セラミックスは、テルビウムとイットリウムとアルミニウムとを含み、該テルビウムの含有体積モル濃度がイットリウムの含有体積モル濃度以上である複合酸化物の焼結体であり、波長1064nmにおけるベルデ定数が30rad/(T・m)以上であり、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveが9.0×10-6(K-1)以下であることを特徴とするものである。
ここで、本発明の透明セラミックスの波長1064nmでのベルデ定数が30rad/(T・m)以上であり、好ましくは32rad/(T・m)以上である。ガーネット型酸化物焼結体を構成する組成においてテルビウムの含有体積モル濃度がイットリウムの含有体積モル濃度以上となるように管理され、透明セラミックスの製造方法として後述するように各工程において適切な条件で製造されることにより、上記ベルデ定数が得られる。
また、本発明の透明セラミックスの波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtの平均値(dn(1064)/dt)aveが9.0×10-6(K-1)以下であり、好ましくは8.9×10-6(K-1)以下である。本発明の透明セラミックスの組成を後述する式(1)で示される組成範囲とし、透明セラミックスの製造方法として後述するように各工程において適切な条件で製造されることにより、上記屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveが得られる。
ここでいう、屈折率の温度係数dn(λ,T)/dtは、対象の透明セラミックスの波長λ(nm)、温度T(℃)における屈折率の温度係数であり、JIS B7071-2(光学ガラスの屈折率測定方法-第2部:Vブロック法)に準拠した方法により求められるものである。本発明で規定する波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveは、以下のようにして求められる。
まず、所定の屈折率Nを有するVブロックプリズム上に測定対象の透明セラミックスの底面の2面が直角二等辺三角形の三角柱形状のブロックサンプルを載せ、プリズムの壁面法線上から波長の異なる4種の標準レーザー光(例えば、波長785.4nm、830.5nm、1310nm、1550nmのレーザー光)を入射して、このときの透過するVブロックプリズムとブロックサンプルとで屈折され、プリズムの反対側の壁面から出射した光の角度(偏角i*)から下記式を用いて、波長ごとの測定対象のブロックサンプルの屈折率nを算出する。このとき、Vブロックプリズムとブロックサンプルの温度(試料温度)を20℃、30℃、40℃としておき、それぞれの試料温度における4波長ごとの屈折率を測定する。

n={N2+sini*・(N2-sin2*1/21/2

次いで、試料温度20℃、30℃、40℃ごとの算出された4波長での屈折率の値からセルマイヤーの分散公式を元に波長1064nmでの試料温度20℃、30℃、40℃ごとの屈折率を導出し、それぞれ波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtとし、それらの平均値を測定対象の透明セラミックスの波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtの平均値(dn(1064)/dt)aveとする。
このような測定は精密屈折計(例えば、(株)島津製作所製、カルニュー精密屈折計KPR-3000型)を使用して、該装置の全自動測定モードにて測定するとよい。
なお、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtの平均値(dn(1064)/dt)aveを9.0×10-6(K-1)以下に管理することができると、TGG結晶についての波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtの平均値(18×10-6(K-1))の半分の値以下となるため、本発明の透明セラミックス中に波長1064nmのハイパワーレーザーを照射させた場合の屈折率変化に起因する熱レンズ発生量がTGG結晶の場合の半分以下となって、ハイパワー適用耐性が実質2倍以上となり好ましい。
更に、本発明の透明セラミックスの詳細な組成としては下記式(1)で示されるものであることが好ましい。
(Tb1-x-yxScy3(Al1-zScz512 (1)
(式中、0.05≦x≦0.4、0≦y<0.08、0.52<1-x-y<0.95、0≦z<0.15、0.001<y+z<0.2である。)
ここで、式(1)で表される濃度範囲でテルビウム(Tb)を添加することで十分なベルデ定数を担保し、式(1)で表される濃度範囲でイットリウム(Y)を添加することで異相の抑制と内部歪みの極小化を担保できる。また、スカンジウム(Sc)を式(1)で表される濃度範囲で添加することで異相の完全消滅を達成している。
更に、アルミニウム(Al)を式(1)で表される濃度範囲で添加することで十分なベルデ定数の担保、並びに比較的高い熱伝導率を付与させている。
なお、式(1)におけるx、y、zに関する数値範囲は詳しくは以下のとおりである。
式(1)中、xの範囲は0.05≦x≦0.4であり、0.1≦x≦0.4が好ましく、0.2≦x≦0.4が更に好ましい。xがこの範囲にあると、ペロブスカイト型異相をX線回折(XRD)分析で検出されないレベルまで減少させることができる。
xが0.05未満の場合、イットリウムでテルビウムの一部を置換する効果が得られず実質TAGを作製する条件と変わらなくなり、そのため低散乱、低吸収の高品質なセラミックス焼結体を安定製造することが困難となるため好ましくない。また、xが0.4よりも大きい場合、波長1064nmでのベルデ定数が32rad/(T・m)未満となるため好ましくない。更にテルビウムの相対濃度が過剰に薄まると、波長1064nmのレーザー光を45度回転させるのに必要な全長が25mmを超えて長くなり、製造が難しくなるため好ましくない。
式(1)中、yの範囲は0≦y<0.08であり、0.001<y<0.004が好ましく、0.002<y<0.004がより好ましい。yがこの範囲にあると、ペロブスカイト型異相をX線回折(XRD)分析で検出されないレベルまで減少させることができるため好ましい。更にまた、焼結体の均質性や粒界散乱に起因する熱伝導率の過度な低下を防止できるため好ましい。
yが0.08以上の場合、ペロブスカイト型異相、ないしはアルミナ異相の析出抑制効果が飽和して変わらない中、スカンジウムの焼結抑制効果が過度に効くことに起因する焼結ムラや焼結歪みの残存、ないしは粒界散乱の残存が生じ、その結果、消光比の局所低下や熱伝導率の平均値の低下が生じるため好ましくない。
式(1)中、1-x-yの範囲は0.52<1-x-y<0.95であり、0.6≦1-x-y<0.8がより好ましい。1-x-yがこの範囲にあると大きなベルデ定数を確保できると共に波長1064nmにおいて高い透明性が得られる。
(1)式中、zの範囲は0≦z<0.15であり、0.001<z<0.004が好ましく、0.02≦z<0.004がより好ましい。zがこの範囲にあると、ペロブスカイト型異相をX線回折(XRD)分析で検出されないレベルまで減少させることができるため好ましい。更にまた、焼結体の均質性や粒界散乱に起因する熱伝導率の過度な低下を防止できるため好ましい。
zが0.15以上の場合、ペロブスカイト型異相、ないしはアルミナ異相の析出抑制効果が飽和して変わらない中、スカンジウムの焼結抑制効果が過度に効くことに起因する焼結ムラや焼結歪みの残存、ないしは粒界散乱の残存が生じ、その結果、消光比の局所低下や熱伝導率の平均値の低下が生じるため好ましくない。
本発明の透明セラミックスでは、スカンジウム(Sc)を上記式(1)のy、zの範囲内で添加することができる。スカンジウムの添加量y及びzはそれぞれ片方だけでみれば範囲として0を含む。但し、常磁性ガーネット型透明セラミックス全体の組成としてみた場合には、y+zは0.001を超えて式(1)の範囲内で添加することで、高度に透明な焼結体を安定して製造することが可能となるため好ましい。
即ち、(1)式中、y+zの範囲は0.001<y+z<0.2であり、0.002<y+z<0.005がより好ましく、0.003<z<0.005が更に好ましい。y+zがこの範囲にあると、ペロブスカイト型異相をX線回折(XRD)分析で検出されないレベルまで減少させることができるため好ましい。更にまた、焼結体の均質性や粒界散乱に起因する熱伝導率の過度な低下を防止できるため好ましい。
y+zが0.001以下の場合、ペロブスカイト型の異相やアルミナ異相が析出するリスクが高まるため好ましくない。またy+zが0.2以上の場合、ペロブスカイト型異相、ないしはアルミナ異相の析出抑制効果が飽和して変わらない中、スカンジウムの焼結抑制効果が過度に効くことに起因する焼結ムラや焼結歪みの残存、ないしは粒界散乱の残存が生じ、その結果、消光比の局所低下や熱伝導率の平均値の低下が生じるため好ましくない。
なお、本発明の透明セラミックスでは、ガーネット構造中の6配位サイトと4配位サイトの主成分をアルミニウム(Al)とすることが好ましい。これらのサイトの主成分をアルミニウム(Al)で構成できると、結晶の結合性が向上し、ひいては波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveを小さくできる。特に、上記式(1)のように、このアルミニウム(Al)の6配位サイトと4配位サイトとを占める割合が1-z(0≦z<0.15)であると、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveを9.0×10-6(K-1)以下に管理することができる。
また、本発明の透明セラミックスでは8配位サイトの主成分としてテルビウム(Tb)とイットリウム(Y)を選定し、且つテルビウムの濃度を1-x-y(0.52<1-x-y<0.95)、イットリウムの濃度をx(0.05≦x≦0.4)の範囲で管理することが好ましい。テルビウムの濃度がこの範囲で管理されていると、波長1064nmでのベルデ定数が32rad/(T・m)以上確保可能となる。テルビウムの濃度が当該範囲にあり、且つイットリウムの濃度を前記の範囲で管理すると、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveを9.0×10-6(K-1)以下に管理可能となる。
なお、この2つの成分Tb、Yはそれぞれが同時に前記の範囲を満たした際に、該2つの特性(ベルデ定数、上記屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)ave)を同時に満たすことが可能となる。
ところで本発明で得られる常磁性ガーネット型透明セラミックスは、式(1)で表される範囲の組成の成分を主成分として含有し、副成分として、焼結助剤の役割をはたすSiO2を0.1質量%を限度として、それ以下の範囲で含有する(即ち、含有量0質量%超0.1質量%以下である)ことが好ましい。焼結助剤としてSiO2がこの範囲で含有されていると、得られる常磁性ガーネット型セラミックスの透明性が実用に耐えるレベルまで向上し、且つ安定するため好ましい。
ここで、「主成分として含有する」とは、上記式(1)で表される複合酸化物を90質量%以上含有することを意味する。式(1)で表される複合酸化物の含有量は99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.99質量%以上であることが更に好ましく、99.999質量%以上であることが特に好ましい。
また、本発明の透明セラミックスは、上記の主成分と副成分とで構成されるが、更に他の元素を含有していてもよい。その他の元素としては、ルテチウム(Lu)、セリウム(Ce)等の希土類元素、あるいは様々な不純物群として、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、燐(P)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等が典型的に例示できる。
その他の元素の含有量は、Tb及びYの全量を100質量部としたとき、10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましく、0.001質量部以下(実質的にゼロ)であることが特に好ましい。
本発明の透明セラミックスは、前述の条件の組成で製造することにより熱伝導率を4.8W/m・K以上に仕上げることができる。熱伝導率の測定はJIS R1611に準拠し、レーザーフラッシュ法にて評価できる。
<テルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法>
[原料]
本発明で用いる原料としては、テルビウム、イットリウム、スカンジウム、アルミニウムの各酸化物粉末を出発原料として利用する。この時の原料純度は99.9質量%以上が好ましく、99.99質量%以上が特に好ましい。
それらの元素を所定量秤量し、更に酸化シリコン(SiO2)を0質量%超0.1質量%以下含有して、適宜湿式ボールミル、乃至はビーズミルによって処理する。
本発明で用いるガーネット型酸化物粉末原料中には、その後のセラミック(ス挿入?)製造工程での品質安定性や歩留り向上の目的で、各種の有機添加剤が添加される場合がある。本発明においては、これらについても特に限定されない。即ち、各種の分散剤、結合剤、潤滑剤、可塑剤等が好適に利用できる。ただし、これらの有機添加剤としては、不要な金属イオンが含有されない、高純度のタイプを選定することが好ましい。また、それぞれの有機添加剤の添加順序は、製造しようとする原料の性状(粒度分布等)を管理することを阻害しないよう、適切に設計される必要がある。
[製造工程]
本発明では、上記原料粉末を用いて所定形状にプレス成形するか、あるいは湿式スラリーをそのまま鋳込み成形処理して成形体を作製することができる。得られた成形体について十分に脱脂を行い、次いで焼結して、相対密度が最低でも94%以上に緻密化した焼結体を作製する。その後工程として熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理を行うことが好ましい。なお熱間等方圧プレス(HIP)処理をそのまま施すと、常磁性ガーネット型透明セラミックスが還元されて若干の酸素欠損を生じてしまう。そのため微酸化HIP処理、ないしはHIP処理後に酸化雰囲気でのアニール処理(酸化アニール処理)を施すことにより酸素欠損を回復させることが好ましい。これにより、欠陥吸収のない透明なガーネット型酸化物セラミックスを得ることができる。
(成形)
本発明においては、通常のプレス成形工程を好適に利用できる。即ち、ごく一般的な、型に充填して一定方向から加圧する一軸プレス工程や変形可能な防水容器に密閉収納して静水圧で加圧する冷間静水圧加圧(CIP(Cold Isostatic Pressing))工程や温間静水圧加圧(WIP(Warm Isostatic Pressing))工程が好適に利用できる。なお、印加圧力は得られる成形体の相対密度を確認しながら適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば市販のCIP装置やWIP装置で対応可能な300MPa以下程度の圧力範囲で管理すると製造コストが抑えられてよい。あるいはまた、成形時に成形工程のみでなく一気に焼結まで実施してしまうホットプレス工程や放電プラズマ焼結工程、マイクロ波加熱工程なども好適に利用できる。更にプレス成形法ではなく、鋳込み成形法による成形体の作製も可能である。加圧鋳込み成形や遠心鋳込み成形、押出し成形等の成形法も、出発原料である酸化物粉末の形状やサイズと各種の有機添加剤との組合せを最適化することで、採用可能である。
(脱脂)
本発明においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解除去できる温度まで昇温することが好ましい。
(焼結)
本発明においては、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されず、不活性ガス、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス等の各種雰囲気、あるいはまた、減圧下(真空中)での焼結も可能である。ただし、最終的に酸素欠損の発生を防止することが好ましいため、より好ましい雰囲気としては、酸素ガス、減圧酸素ガス雰囲気が例示される。
本発明の焼結工程における焼結温度は、1440~1780℃が好ましく、1470~1730℃が特に好ましい。焼結温度がこの範囲にあると、異相析出を抑制しつつ緻密化が促進されるため好ましい。
本発明の焼結工程における焼結保持時間は数時間程度で十分だが、焼結体の相対密度は最低でも94%以上に緻密化させなければいけない。また10時間以上長く保持させて焼結体の相対密度を99%以上に緻密化させておくと、最終的な透明性が向上するため、更に好ましい。
(熱間等方圧プレス(HIP))
本発明においては、焼結工程を経た後に更に追加で熱間等方圧プレス(HIP)処理を行う工程を設けることができる。
なお、このときの加圧ガス媒体種類は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、又はAr-O2が好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50~300MPaが好ましく、100~300MPaがより好ましい。圧力50MPa未満では透明性改善効果が得られない場合があり、300MPa超では圧力を増加させてもそれ以上の透明性改善が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。
また、その際の処理温度(所定保持温度)は1100~1780℃、好ましくは1200~1730℃の範囲で設定される。熱処理温度が1780℃超では酸素欠損発生リスクが増大するため好ましくない。また、熱処理温度が1100℃未満では焼結体の透明性改善効果がほとんど得られない。なお、熱処理温度の保持時間については特に制限されないが、あまり長時間保持すると酸素欠損発生リスクが増大するため好ましくない。典型的には1~3時間の範囲で好ましく設定される。
なお、HIP処理するヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、グラファイト、ないしはモリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)が好適に利用でき、処理容器として更に酸化イットリウム、酸化ガドリニウムも好適に利用できる。特に処理温度が1500℃以下である場合、ヒーター材、断熱材、処理容器として白金(Pt)が使用でき、かつ加圧ガス媒体をAr-O2とすることができるため、HIP処理中の酸素欠損の発生を防止できるため好ましい。処理温度が1500℃を超える場合にはヒーター材、断熱材としてグラファイトが好ましいが、この場合は処理容器としてグラファイト、モリブデン(Mo)、タングステン(W)のいずれかを選定し、更にその内側に二重容器として酸化イットリウム、酸化ガドリニウムのいずれかを選定したうえで、容器内に酸素放出材を充填しておくと、HIP処理中の酸素欠損発生量を極力少なく抑えられるため好ましい。
(アニール)
本発明においては、HIP処理を終えた後に、得られた透明セラミックス焼結体中に酸素欠損が生じてしまい、かすかに薄灰色の外観を呈する場合がある。その場合には、前記HIP処理温度以下、典型的には1000~1500℃にて、好ましくは1400℃以上、より好ましくは1,450℃以上1,500℃以下で、酸素雰囲気ないしは大気下で酸化アニール処理(酸素欠損回復処理)を施すことが好ましい。この場合の保持時間は特に制限されないが、酸素欠損が回復するのに十分な時間以上で、かつ無駄に長時間処理して電気代を消耗しない時間内で選択されることが好ましい。該酸素アニール処理により、たとえHIP処理工程でかすかに薄灰色の外観を呈してしまった透明セラミックス焼結体であっても、すべて無色透明の欠陥吸収のない常磁性ガーネット型透明セラミックス体とすることができる。
(光学研磨)
本発明の製造方法においては、上記一連の製造工程を経た常磁性ガーネット型透明セラミックスについて、その光学的に利用する軸上にある両端面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度は測定波長λ=633nmの場合、λ/2以下が好ましく、λ/8以下が特に好ましい。なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜を成膜することで光学損失を更に低減させることも可能である。
以上のようにして、本発明のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスを提供することができる。該透明セラミックスは波長帯0.9μm以上1.1μm以下で動作可能なファラデー回転子として利用できる。
[磁気光学デバイス]
更に、本発明のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスは磁気光学材料として利用することを想定しているため、該透明セラミックスにその光学軸と平行に磁場を印加したうえで、偏光子、検光子とを互いにその光軸が45度ずれるようにセットして磁気光学デバイスを構成利用することが好ましい。即ち、本発明の透明セラミックス料は、磁気光学デバイス用途に好適であり、特に波長0.9~1.1μmの光アイソレータのファラデー回転子として好適に使用される。
図1は、本発明のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスからなるファラデー回転子を光学素子として有する光学デバイスである光アイソレータの一例を示す断面模式図である。図1において、光アイソレータ100は、本発明のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスからなるファラデー回転子110を備え、該ファラデー回転子110の前後には、偏光材料である偏光子120及び検光子130が備えられている。また、光アイソレータ100は、偏光子120、ファラデー回転子110、検光子130の順序で配置され、それらの側面のうちの少なくとも1面に磁石140が載置されていることが好ましい。
また、上記光アイソレータ100は産業用ファイバーレーザー装置に好適に利用できる。即ち、レーザー光源から発したレーザー光の反射光が光源に戻り、発振が不安定になるのを防止するのに好適である。
以下に、実施例、比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[実施例1~6、比較例1~6]
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化イットリウム粉末、酸化スカンジウム粉末、及び大明化学(株)製の酸化アルミニウム粉末を入手した。更にキシダ化学(株)製のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の液体を入手した。純度は粉末原料がいずれも99.95質量%以上、液体原料が99.999質量%以上であった。
上記原料を用いて、混合比率を調整して表1に示す12種類の最終組成となる複合酸化物原料を作製した。
混合比率の調整方法としては、テルビウム、イットリウム、アルミニウム及びスカンジウムのモル数がそれぞれ表1の各組成のモル比率となるよう各々の酸化物粉末を秤量して混合した。続いてTEOSを、その添加量がSiO2換算で表1の質量%(wt%)になるように秤量して各原料に加えた。
Figure 2023128117000002
そして、それぞれ互いの混入を防止するよう注意しながらエタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は15時間とした。
その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。得られた12種類の各酸化物原料につき、それぞれ一軸プレス成形、198MPaの圧力での静水圧プレス処理を施してCIP成形体を得た。なお、製造安定性を確認するため、各々の条件でロッド状サンプルを3個ずつ用意し、これとは別にブロック状サンプルについても1個ずつ成形した。得られた成形体をすべてマッフル炉中で1000℃、3時間の条件にて脱脂処理して脱脂済成形体を得た。
続いて当該脱脂済成形体を真空焼結炉に仕込み、1.0×10-3Pa未満の減圧下で1500~1600℃で3時間処理して12種類(各々ロッド状3個、ブロック状1個ずつ)の焼結体を得た。この時、サンプルの焼結相対密度がいずれも94~98%の範囲に収まるように処理温度を調整した。
得られた各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar中、200MPa、1600℃、2時間の条件でHIP処理した。得られたHIP体(加圧焼結体)はいずれも外見上ほとんど灰色化(酸素欠損吸収)は確認されなかった。ただし念のため、得られた各HIP体(加圧焼結体)について、各々のロット管理をしながら大気加熱炉にて、1450℃で30時間アニール処理して、酸素欠損を十分に回復させる処置を施した。こうして実施例と比較例の合計12種類のセラミックスサンプルを用意した。
続いて、得られた各セラミックスサンプルのうち、まずロッド状サンプルについて、更に直径5mm、長さ25mmの揃ったロッド形状となるように各々研削及び研磨処理し、更にそれぞれのサンプルの光学両端面を光学面精度λ/8(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。
上記のようにして得られた各サンプルについて、全光線透過率、前方散乱率をそれぞれ以下のように測定した。
(全光線透過率、及び前方散乱率の測定方法)
全光線透過率、並びに前方散乱率はJIS K7105(ISO 13468-2:1999)及びJIS K7136(ISO 14782:1999)を参考に測定した。
日本分光(株)製の分光光度計V-670を用いて、波長1064nmについて測定した。まず全光線透過率の測定は、該分光光度計V-670にワーク(サンプル)をセットせずに分光器で分光させた光を照射し、該光を予め装置にセットされている積分球で受けて、集光された光を検知器で受光する。得られた照度をI0とし、続いてワークを装置にセットして、今度は分光させた光をワークに入射し、透過してきた光を再度積分球で集めて検知器で受光する。得られた照度をIとして次式により求めた。

全光線透過率(%/25mm)=I/I0×100

次に前方散乱率の測定は、前記のワークがセットされた状態から積分球裏面の反射板を取り除いた以外はすべて同じ測定系で、再び分光された光をワークに入射し、透過してきた光を再度積分球で集めて検知器で受光する。得られた照度は直線透過成分以外の散乱成分を表し、これをISとして次式により求めた。

前方散乱率(%/25mm)=IS/I0×100
なお、再現性やバラツキの影響を考慮するため、すべての条件につき各々3個ずつ測定し、その平均値を算出して各々のサンプルの全光線透過率、並びに前方散乱率の値とした。また、ビーム径を3mmφより太くすると、直径5mmφのサンプルの外周でビームの裾が蹴られはじめるため、このビーム径3mmφを事実上のワーク全面に光を入射させた状態と定義した。
前記の要領で最終光学研磨して作製した実施例、比較例の各条件のロッド状サンプル(各々3セット)につき、その光学両端面に中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜(ARコート)をコートした。得られた各ロッド状サンプルにつき以下の要領でベルデ定数を測定した。
(ベルデ定数の測定方法)
ベルデ定数Vは、以下の式に基づいて求めた。なお、サンプルに印加される磁界の大きさ(H)は、上記測定系の寸法、残留磁束密度(Br)及び保持力(Hc)からシミュレーションにより算出した値を用いた。

θ=V×H×L
(式中、θはファラデー回転角(rad)、Vはベルデ定数(rad/(T・m))、Hは磁界の大きさ(T)、Lはファラデー回転子の長さ(この場合、0.025m)である。)
なお、各々の条件で作製したサンプル3個のベルデ定数の平均値を、それぞれの条件でのベルデ定数とした。
続いて、先ほど用意しておいた実施例、比較例の各条件のブロック状サンプルについて切断並びに研削加工して、一辺の長さ20mm、厚み10mmで底面の2面が直角二等辺三角形の三角柱のサンプルを作製した。このとき、三角柱の直角部の角度を90度±0.1度となるよう管理した。その後、三角柱の直角部を構成する2つの面をラップ研磨して平坦面とした。
こうして得られた実施例、比較例の各条件の直角二等辺三角柱ブロック状サンプルを用いて、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveの値を以下の要領で測定した。
((dn(1064)/dt)aveの測定方法)
テルビウム含有常磁性ガーネット透明セラミックスの波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveは、JIS B7071-2(光学ガラスの屈折率測定方法-第2部:Vブロック法)に準拠して測定した。

測定装置は(株)島津製作所製の精密屈折計カルニューKPR-3000型を選定し、該装置の全自動測定モードにて測定した。具体的には高屈折率サンプル用の既知の屈折率Nを有する硝材Vブロックプリズムを選定して装置にセットし、その上に前記のようにして作製した各ブロック状サンプルを載せ、プリズムの壁面法線上から下記の波長の異なる4種の標準レーザー光(波長785.4nm、830.5nm、1310nm、1550nmのレーザー光(装置標準装備))を入射して、このときの透過するVブロックプリズムとブロック状サンプルとで屈折され、プリズムの反対側の壁面から出射された光の角度(偏角i*)から下記式を用いて、波長ごとの測定対象のブロック状サンプルの屈折率nを算出した。このとき、Vブロックプリズムとブロックサンプルの温度(試料温度)を20℃、30℃、40℃としておき、それぞれの試料温度における4波長ごとの屈折率を測定した。なお、試料温度はプリズム及びブロック状サンプルを載置した試料台を20℃、30℃、40℃に温度制御し、この状態で試料そのものの温度をモニターしながら静置し、更に温度が安定して5分経過した後の試料表面温度をそれぞれ20℃、30℃、40℃とカウントした。

n={N2+sini*・(N2-sin2*1/21/2

次いで、試料温度20℃、30℃、40℃ごとの算出された4波長での屈折率の値からセルマイヤーの分散公式を元に波長1064nmでの試料温度20℃、30℃、40℃ごとの屈折率を導出し、それぞれ波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtとし、それらの平均値を測定対象の透明セラミックスの波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数dn(1064,20)/dt、dn(1064,30)/dt、dn(1064,40)/dtの平均値(dn(1064)/dt)aveとした。
以上の結果をまとめて表2に示す。
Figure 2023128117000003
(N/A:測定不能)
表2の結果から、本発明の透明セラミックスを作製するにあたり、まずイットリウムをまったく含まない比較例1と比較例4では、全光線透過率が84%を下回っており、且つ前方散乱率の値も1.0%を超えていた。これは透明セラミックス中に多数の散乱源が生じてしまったことを意味しており、ハイパワーレーザーを入射した場合に熱レンズ効果が強まり産業用途として利用が困難であることを示している。
逆に、イットリウムの比率(式(1)におけるx)が0.59よりも多い(即ち、テルビウムの比率1-x-yが0.4以下の)比較例2、3、5、6の各サンプルではベルデ定数が32rad/(T・m)を下回っていた。この場合、従来のファラデー回転子材料であるTGG結晶を用いた光アイソレータよりもサイズをより大きくする必要があるため、小型化を進めたい今後のハイパワーレーザーシステムに搭載できず問題となる。
実施例1~6については、いずれも全光線透過率が84%以上、前方散乱率が1.0%以下、ベルデ定数が32rad/(T・m)以上が確保されており、ハイパワーレーザーシステムに搭載可能である。更に、これら実施例1~6のサンプルはいずれも波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveが9.0×10-6(K-1)以下となっており、従来材料であるTGG結晶の(dn(1064)/dt)aveの略半分であることが確認された。
波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveが既存材料の半分以下となる本発明のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスをハイパワーレーザーシステムに搭載すると、ハイパワー適用耐性が実質2倍以上に向上するため、従来は実現できなかったより高密度なハイパワーレーザーシステムを提供することが可能となる。
なお、これまで本発明を上述した実施形態をもって説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
100 光アイソレータ
110 ファラデー回転子
120 偏光子
130 検光子
140 磁石

Claims (5)

  1. テルビウムとイットリウムとアルミニウムとを含み、該テルビウムの含有体積モル濃度がイットリウムの含有体積モル濃度以上である複合酸化物の焼結体であり、波長1064nmにおけるベルデ定数が30rad/(T・m)以上であり、波長1064nm、温度20、30、40℃における屈折率の温度係数の平均値(dn(1064)/dt)aveが9.0×10-6(K-1)以下であることを特徴とするテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス。
  2. 下記式(1)で表される複合酸化物の焼結体である請求項1に記載のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス。
    (Tb1-x-yxScy3(Al1-zScz512 (1)
    (式中、0.05≦x≦0.4、0≦y<0.08、0.52<1-x-y<0.95、0≦z<0.15、0.001<y+z<0.2である。)
  3. 更に、焼結助剤としてSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有する請求項1又は2に記載のテルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックス。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスを磁気光学材料として用いて構成される磁気光学デバイス。
  5. 上記テルビウム含有常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである請求項4に記載の磁気光学デバイス。
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