WO2022054593A1 - 常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法、常磁性ガーネット型透明セラミックス、磁気光学材料及び磁気光学デバイス - Google Patents
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Abstract
少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いて成形体を成形した後、該成形体を予備焼結して相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体とし、その光学端面を光学研磨して仕上げる常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法であり、散乱源を抑制し高出力のレーザー光を透過させたときのビーム品質の改善が可能である。
Description
本発明は、可視及び/又は近赤外域において透光性を有する常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法に関し、より詳細には、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適なテルビウム及びアルミニウムを含む常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法、該製造方法で製造された常磁性ガーネット型透明セラミックスからなる磁気光学材料、並びに該磁気光学材料を用いた磁気光学デバイスに関する。
産業用レーザー加工機には反射光などの光の逆戻りを防ぐ目的で光アイソレータが設けられており、その内部はテルビウム添加ガラスやテルビウムガリウムガーネット結晶(TGG結晶)がファラデー回転子として搭載されている(例えば、特開2011-213552号公報(特許文献1))。ファラデー効果の大きさはベルデ定数で定量化され、TGG結晶のベルデ定数は40rad/(T・m)(0.13min/(Oe・cm))、テルビウム添加ガラスでは0.098min/(Oe・cm)であり、TGG結晶のベルデ定数は比較的大きいことから、標準的なファラデー回転子として広く使用されている。その他に、テルビウムアルミニウムガーネット結晶(TAG結晶)があり、TAG結晶のベルデ定数はTGG結晶の1.3倍程度であることから、ファラデー回転子の長さを短くできるため、ファイバーレーザーに使用可能かつ良好な結晶である(例えば、特開2002-293693号公報(特許文献2)、特許第4107292号公報(特許文献3))。
近年、TAGを透明セラミックスで作製する方法が開示されている(例えば、国際公開第2017/033618号(特許文献4)、非特許文献1)。またテルビウムの一部をイットリウムで置換したイットリウムテルビウムアルミニウムガーネット(YTAG、(TbxY1-x)3Al5O12(0.2≦x≦0.8、または0.5≦x≦1.0またはx=0.6))の透明セラミックスの作製方法も報告されている(例えば、非特許文献2~4)。これらのTbを含有する希土類アルミニウムガーネットはTGGと比較して高い熱伝導率を示すため、熱レンズ効果が小さいファラデー素子になると期待されている。
上記のように、近年のTbを含有する希土類アルミニウムガーネットの報告はセラミックスによるものが多い。これはTAGがインコングルーエントな組成のため、単結晶作製が困難であることに由来する。しかし一般的にセラミックスは系内に気泡や異相、異物、マイクロクラックなど多くの散乱源を含む。そのためファラデー回転子を想定した高度に透明なセラミックスを得るためには気泡や異物などの散乱源を徹底的に排除する試みが必要である。
セラミックス内部の気泡や、マイクロクラックを減らす方法として熱間等方圧プレス(HIP)処理(加圧焼結)がある。HIP処理は予め相対密度94%以上まで緻密化させておいた焼結体(予備焼結体)を、高温・高圧処理によりセラミックスの塑性流動を起こして欠陥を圧縮、除去することができる。HIP処理の際、多くの気泡は系外に排出されて除去されるが、一部の気泡は圧縮されたまま系内に残っていることが多い。そのためHIP体(加圧焼結体)を高温で常圧以下にさらすと、圧縮されて隠れていた気泡が再膨張し、散乱強度が増す現象が観測される。
HIP処理で排出できなかったセラミックス内部の気泡や異相を更に減らす方法としてHIP処理後に再焼結を行い粒成長により系外に排出する方法がある。池末らはYAGセラミックスに対し真空下1,600℃で3時間予備焼結し、1,500~1,700℃で3時間HIP処理した透明セラミックスに対し、HIP処理温度より高い1,750℃で20時間再焼結する方法を示している(非特許文献5)。また、特許第2638669号公報(特許文献5)には、適切な形状と組成を有する生圧粉体を形成し、予備焼結工程を1,350~1,650℃の温度範囲で行い、HIP処理工程を1,350~1,700℃の温度で行い、そして再焼結工程を、1,650℃を超える温度で行うセラミックス体の製造方法が開示されており、これにより気孔を除去する方法が開示されている。
ところで産業用レーザー加工機はその加工精度を高めるために高いビーム品質が要求される。レーザービーム品質の指標の一例としてM2値が挙げられる。M2値はビームの集光性を表す値であり理論上のガウシアンビームはM2=1となるが実際のレーザービームはM2>1となる。M2=1の時、ビームは焦点において最小のスポットが得られ、M2値が大きくなるにつれて焦点でビームを絞ることができなくなる。そのため光アイソレータは、その透過光のM2値が入射光のM2値に対して極力大きくならないことが好ましい。
"High Verdet constant of Ti-doped terbium alminium garnet (TAG) ceramics", Optical Materials Express, Vol. 6, No.1 191-196 (2016)
"Fabrication and properties of (TbxY1-x)3Al5O12 transparent ceramics by hot isostatic pressing", Optical Materials, 72 58-62 (2017)
"Development of optical grade (TbxY1-x)3Al5O12 ceramics as Faraday rotator material", Journal of American Ceramics Society, 100, 4081-4087 (2017)
"Effect of (Tb+Y)/Al ratio on Microstructure Evolution and Densification Process of (Tb0.6Y0.4)3Al5O12 Transparent Ceramics", Materials, 12, 300 (2019)
"Microstructure and Optical Properties of Hot Isostatic Pressed Nd:YAG Ceramics", Journal of American Ceramics Society, 79, 1927-1933 (1996)
以上のように、パルスレーザー加工機の加工の微細化に伴い、レーザー光の高いビーム品質が求められている。上記のような状況の中で、最近、組成が(TbxY1-x)3Al5O12(x=0.5~1.0)である緻密なセラミックス焼結体が既存のTGG結晶に比べて消光比が高く(既存の35dBが39.5dB以上に改善)、挿入損失も低減できる(既存の0.05dBが0.01~0.05dBに改善)ことが開示された(非特許文献3)。この非特許文献3で開示された材料は、まずセラミックスであるため、TGG結晶で問題となっていたペロブスカイト異相の析出もなく、更にTbイオンの一部をYイオンで置換することで、更なる低損失化が可能になったものであり、きわめて高品質のガーネット型ファラデー回転子を得ることのできる材料である。ところが、本発明者らが実際に追試をしてみると、確かにTGG結晶よりも挿入損失が小さい高品質なセラミックス焼結体が得られることは確認できたものの、再現性に乏しい点、たとえTGG結晶より低挿入損失であっても、100W以上のハイパワーレーザー光を透過するとビーム品質が劣化する問題などが判明し、さらなる課題の解決が必要であることが確認された。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、散乱源を抑制し高出力のレーザー光を透過させたときのビーム品質の改善が可能な常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法、常磁性ガーネット型透明セラミックス、磁気光学材料及び磁気光学デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らが上記課題に対し検討を行った結果、予備焼結、HIP、再焼結の一連のプロセスを施す際に処理ごとでの焼結粒径を規定の範囲内に管理し、更に必要に応じてイットリウムやスカンジウム等を添加することにより、セラミックス焼結体内部の気泡、異相、異物、マイクロクラック等の散乱源を抑制できる、即ちこれらの散乱源のうち、粗大なものの発生を抑制し、かつそれよりも小さなものの数を一定の量まで減らせることが明らかとなった。更にセラミックス焼結体内部の気泡、異相、異物等の散乱源を抑制すると、光学有効領域面内全面において消光比をすべて40dB以上とすることができ、そして光学有効領域面内全面において挿入損失変動を0.02dB以下に抑制できることを突き止めた。更にセラミックス焼結体内部の気泡、異相、異物等の散乱源を抑制した当該焼結体を透過するレーザービーム(レーザー光)のビーム品質も一定レベル以上に維持可能であることを発見した。本発明者らはこれらの知見を基に鋭意検討を行い、本発明を成したものである。
即ち、本発明は、下記の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法、常磁性ガーネット型透明セラミックス、磁気光学材料及び磁気光学デバイスを提供する。
1.
少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いて成形体を成形した後、該成形体を予備焼結して相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体とし、その光学端面を光学研磨して仕上げる常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
2.
上記ガーネット型複合酸化物が、更にイットリウム、ルテチウム、ガリウム及びセリウムから選ばれる少なくとも1種を含む1に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
3.
上記ガーネット型複合酸化物が下記式(1)で表されるものである1又は2に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
(Tb1-x-yYxScy)3(Al1-zScz)5O12 (1)
(式中、0≦x<0.45、0≦y<0.1、0≦z<0.2、0.001<y+z≦0.2である。)
4.
上記予備焼結が、減圧下で1,450~1,650℃に加熱するものである1~3のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
5.
上記加圧焼結が、1,100~1,700℃に加熱するものである1~4のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
6.
上記再焼結が、減圧下で1,650~1,800℃に加熱するものである1~5のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
7.
更に、上記再焼結体について酸化アニール処理し、その後に光学研磨する1~6のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
8.
少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物の焼結体であって、焼結助剤としてSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有し、平均焼結粒径が15μm以上であって、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域における入射光の散乱源として、XYZ直交座標系においてその最大となる長さLをX軸方向とした場合、その最大長さLが30μm以上のものが含まれず、かつその最大長さLが20μm以上30μm未満であって、Y軸方向の幅Wと、Z軸方向の厚さTがいずれも30μm未満であるものが2個以下である常磁性ガーネット型透明セラミックス。
9.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが10μm以上20μm未満で、残りが20μm未満であるものが5個以下である8に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
10.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるものが10個以下である8又は9に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
11.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるものが500個以下である8~10のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
12.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるものが1,000個以下である8~11のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
13.
光学的に有効な内部領域における焼結粒子内部に残存する粒内気泡の存在割合が10万粒子に1個以下である8~12のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
14.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたとき、これにレーザー強度120W、ビーム品質M2値がm(1<m≦1.2)である波長1,070nmのレーザー光を入射させ、その透過光のビーム品質M2値をnとした場合のn/mが1.05以下である8~13のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
15.
光路長25mmでの波長1,064nmにおける全光線透過率が、光学端面への反射防止コート無しの場合で84.4%以上であり、光学端面への反射防止コート有りの場合で99.9%以上である8~14のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
16.
8~15のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスからなる磁気光学材料。
17.
16に記載の磁気光学材料を用いて構成される磁気光学デバイス。
18.
上記常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである17に記載の磁気光学デバイス。
1.
少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いて成形体を成形した後、該成形体を予備焼結して相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体とし、その光学端面を光学研磨して仕上げる常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
2.
上記ガーネット型複合酸化物が、更にイットリウム、ルテチウム、ガリウム及びセリウムから選ばれる少なくとも1種を含む1に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
3.
上記ガーネット型複合酸化物が下記式(1)で表されるものである1又は2に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
(Tb1-x-yYxScy)3(Al1-zScz)5O12 (1)
(式中、0≦x<0.45、0≦y<0.1、0≦z<0.2、0.001<y+z≦0.2である。)
4.
上記予備焼結が、減圧下で1,450~1,650℃に加熱するものである1~3のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
5.
上記加圧焼結が、1,100~1,700℃に加熱するものである1~4のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
6.
上記再焼結が、減圧下で1,650~1,800℃に加熱するものである1~5のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
7.
更に、上記再焼結体について酸化アニール処理し、その後に光学研磨する1~6のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
8.
少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物の焼結体であって、焼結助剤としてSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有し、平均焼結粒径が15μm以上であって、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域における入射光の散乱源として、XYZ直交座標系においてその最大となる長さLをX軸方向とした場合、その最大長さLが30μm以上のものが含まれず、かつその最大長さLが20μm以上30μm未満であって、Y軸方向の幅Wと、Z軸方向の厚さTがいずれも30μm未満であるものが2個以下である常磁性ガーネット型透明セラミックス。
9.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが10μm以上20μm未満で、残りが20μm未満であるものが5個以下である8に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
10.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるものが10個以下である8又は9に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
11.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるものが500個以下である8~10のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
12.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるものが1,000個以下である8~11のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
13.
光学的に有効な内部領域における焼結粒子内部に残存する粒内気泡の存在割合が10万粒子に1個以下である8~12のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
14.
直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたとき、これにレーザー強度120W、ビーム品質M2値がm(1<m≦1.2)である波長1,070nmのレーザー光を入射させ、その透過光のビーム品質M2値をnとした場合のn/mが1.05以下である8~13のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
15.
光路長25mmでの波長1,064nmにおける全光線透過率が、光学端面への反射防止コート無しの場合で84.4%以上であり、光学端面への反射防止コート有りの場合で99.9%以上である8~14のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
16.
8~15のいずれかに記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスからなる磁気光学材料。
17.
16に記載の磁気光学材料を用いて構成される磁気光学デバイス。
18.
上記常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである17に記載の磁気光学デバイス。
本発明によれば、少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含有した常磁性ガーネット型複合酸化物の焼結体であって、散乱源を抑制し(これらの散乱源のうち、粗大なものの発生を抑制し、かつそれよりも小さい散乱源の数を低減し)高出力のレーザー光を透過させたときのビーム品質が改善される常磁性ガーネット型透明セラミックスが得られる。また、この常磁性ガーネット型透明セラミックスによれば、特に100W以上のハイパワーレーザーシステムへの搭載も可能であり、ビーム品質に優れた磁気光学材料として利用でき、更にセラミックス焼結体のためスケールアップも容易な、真に実用的な常磁性ガーネット型の酸化物透明セラミックス材料として提供できる。
<常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法>
以下、本発明に係る常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法について説明する。
本発明に係る常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法は、少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いて成形体を成形した後、該成形体を予備焼結して相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体とし、その光学端面を光学研磨して仕上げるものである。
以下、本発明に係る常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法について説明する。
本発明に係る常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法は、少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いて成形体を成形した後、該成形体を予備焼結して相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体とし、その光学端面を光学研磨して仕上げるものである。
ここで、本発明では、少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムとを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いる。
[組成]
上記複合酸化物粉末には主成分として少なくともテルビウム(Tb)とアルミニウム(Al)とスカンジウム(Sc)を含むガーネット型複合酸化物が含まれる。ここで、「主成分として」含まれるとは、特定の元素群から構成されるガーネット型複合酸化物を99質量%以上含有することを意味する。なお、このときの含有量は99.9質量%以上であることが好ましく、99.95質量%以上であることがより好ましい。また、上記複合酸化物粉末には副成分(残りの必須成分)としてSiO2等の焼結助剤が含まれる。
上記複合酸化物粉末には主成分として少なくともテルビウム(Tb)とアルミニウム(Al)とスカンジウム(Sc)を含むガーネット型複合酸化物が含まれる。ここで、「主成分として」含まれるとは、特定の元素群から構成されるガーネット型複合酸化物を99質量%以上含有することを意味する。なお、このときの含有量は99.9質量%以上であることが好ましく、99.95質量%以上であることがより好ましい。また、上記複合酸化物粉末には副成分(残りの必須成分)としてSiO2等の焼結助剤が含まれる。
一般にガーネット構造の酸化物中ではテルビウムイオンが3価の状態で安定に存在し易いため、吸収の小さな高透明性の常磁性ガーネット型透明セラミックスが作製できるため好ましい。またアルミニウムイオンを含有したガーネット構造はガリウム(Ga)イオンを含有したガーネット構造(例えばTGG)と比較すると、ベルデ定数を大きくすることができるため好ましい。更に上記複合酸化物粉末にSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有させて焼結すると、緻密化が促進されて高透明性の焼結体が得られるため好ましい。更にペロブスカイト相などの異相発生を抑制する効果もSiO2には含まれるため、積極的に添加することが好ましい。
なお、SiO2を0.1質量%超添加すると、製造した長さ(光路長)25mmの常磁性ガーネット型透明セラミックスに波長1,070nmの120Wレーザー光線を照射した際に熱レンズ効果が発生することにより、上記入射光のビーム品質M2の値をm、該透明セラミックスを透過したレーザー光のビーム品質M2の値をnとした場合のn/mが1.05より大きくなるため好ましくない。
本発明にあっては、上記ガーネット型複合酸化物が、更にイットリウム(Y)、ルテチウム(Lu)、ガリウム(Ga)及びセリウム(Ce)から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、イットリウム(Y)及びスカンジウム(Sc)、スカンジウム(Sc)及びガリウム(Ga)、又はスカンジウム(Sc)を含むことがより好ましい。
テルビウムのサイトの一部をイットリウム、ルテチウムで置換するとガーネット構造がより安定化して欠陥が低減するため好ましい。特にイットリウムはテルビウムとイオン半径が近く、テルビウムサイトの一部を置換しても結晶構造があまり歪まず好ましい。ただしあまり大量にこれらの元素でテルビウムを置換してしまうと得られる焼結体のベルデ定数が不必要に低下するため好ましくない。典型的にはテルビウムを100モル%としたときに、0モル%以上40モル%以下の範囲で置換することが好ましく、5モル%以上35モル%以下の範囲で置換することが更に好ましい。
スカンジウムはガーネット構造を有する酸化物中でテルビウムのサイトにもアルミニウムの一部のサイトにも固溶することのできる中間的なイオン半径を有する材料であり、例えば各種出発原料の秤量時のばらつきによって、得られる組成が化学量論比からずれた場合に、ちょうど化学量論比に合うように、そしてこれにより結晶子の生成エネルギーを最小にするように、自らテルビウム及びイットリウムからなる希土類サイトとアルミニウムサイトへの分配比を調整して固溶することのできるバッファ材料である。即ち安定してガーネット単相を得ることのできる元素であるため、好適に添加することができる。
ただしあまり大量にスカンジウムを添加すると、それに連動してテルビウムの置換割合も高まってしまうため、結果的にテルビウムの固溶濃度が不必要に低下してしまう。するとベルデ定数が小さくなるため好ましくない。更にまたスカンジウムは原料代が高額なため、スカンジウムを不必要に過剰ドープすることは製造コスト上からも好ましくない。典型的にはアルミニウムを100モル%としたときに0モル%以上20モル%以下の範囲で置換することが好ましく、0.001モル%以上10モル%以下の範囲で置換することが更に好ましい。
セリウムはテルビウム酸化物中に固溶存在することにより、488nmよりも長波長側まで吸収範囲を広げ、かつ対称性の縮退を解いてスピン軌道相互作用分裂を大きくさせることのできる材料であり、これにより波長1,064nm(又は波長1,070nm)のレーザー光を入射させた場合のベルデ定数を大きくすることができる。ゆえに本発明においては添加することが好ましい元素である。ただしあまり大量に置換固溶させると、波長1,064nm(又は波長1,070nm)での吸収の影響が無視できなくなるため好ましくない。典型的にはテルビウムを100モル%としたときに、0モル%以上1モル%以下の範囲で置換することが好ましく、0モル%以上0.5モル%以下の範囲で置換することが更に好ましい。
例えば、ファラデー回転子用として常磁性ガーネット型透明セラミックスを製造する場合、下記式(1)で表される複合酸化物が例示される。
(Tb1-x-yYxScy)3(Al1-zScz)5O12 (1)
(式中、0≦x<0.45、0≦y<0.1、0≦z<0.2、0.001<y+z≦0.2である。)
(Tb1-x-yYxScy)3(Al1-zScz)5O12 (1)
(式中、0≦x<0.45、0≦y<0.1、0≦z<0.2、0.001<y+z≦0.2である。)
式(1)中、xの範囲は0≦x<0.45であり、0.05≦x<0.45が好ましく、0.1≦x≦0.4がより好ましく、0.2≦x≦0.35が更に好ましい。xがこの範囲にあると、ペロブスカイト型異相をX線回折(XRD)分析で検出されないレベルまで減少させることができる。更に光学顕微鏡観察で150μm×150μmの視野におけるペロブスカイト型の異相(典型的なサイズが直径1~1.5μmで、薄茶色に着色して見える粒状のもの)の存在量が1個以下になるため好ましい。このときのペロブスカイト型の異相のガーネット母相に対する存在割合は1ppm以下となっている。同様にxが上記の範囲にあると、セラミックス焼結体中に残存する気孔(典型的なサイズが直径0.5~2.0μmで、HIP処理した場合球状の空隙となるもの)の量が、光学顕微鏡観察で150μm×150μmの視野における存在量1個以下になるため好ましい。このときの気孔のガーネット母相に対する存在割合は1ppm以下となっている。
xが0.45以上の場合、波長1,064nmでのベルデ定数が30rad/(T・m)未満となるため好ましくない。更にテルビウムの相対濃度が過剰に薄まると、波長1,064nmのレーザー光を45度回転させるのに必要な全長が25mmを超えて長くなり、製造が難しくなるため好ましくない。なお、波長1,070nmのレーザー光においても同様である。
式(1)中、yの範囲は0≦y<0.1であり、0<y<0.1が好ましく、0<y<0.08がより好ましく、0.002≦y≦0.07が更に好ましく、0.003≦y≦0.06が特に好ましい。yがこの範囲にあると、ペロブスカイト型異相をXRD分析で検出されないレベルまで減少させることができる。更に光学顕微鏡観察で150μm×150μmの視野におけるペロブスカイト型の異相(典型的なサイズが直径1~1.5μmで、薄茶色に着色して見える粒状のもの)の存在量が1個以下になるため好ましい。このときのペロブスカイト型の異相のガーネット母相に対する存在割合は1ppm以下となっている。
yが0.1以上の場合、ペロブスカイト型異相の析出抑制効果は飽和して変わらない中、テルビウムの一部をイットリウムで置換することに加えて、更にスカンジウムでもテルビウムの一部を置換してしまうため、結果的にテルビウムの固溶濃度が不必要に低下してしまうため、ベルデ定数が小さくなり好ましくない。また、スカンジウムは原料代が高額なため、スカンジウムを不必要に過剰ドープすることは製造コスト上からも好ましくない。
式(1)中、0.05≦x<0.45かつ0<y<0.1である場合、1-x-yの範囲は0.5<1-x-y<0.95が好ましく、0.55≦1-x-y<0.95がより好ましく、0.6≦1-x-y<0.95が更に好ましい。1-x-yがこの範囲にあると大きなベルデ定数を確保できると共に波長1,064nmにおいて高い透明性が得られる。なお、波長1,070nmのレーザー光においても同様である。
式(1)中、zの範囲は0≦z<0.2であり、0.001<z<0.2が好ましく、0.004<z<0.16がより好ましく、0.01≦z≦0.15が更に好ましく、0.03≦z≦0.15が特に好ましい。zがこの範囲にあると、ペロブスカイト型異相がXRD分析で検出されない。更に光学顕微鏡観察で150μm×150μmの視野におけるペロブスカイト型の異相(典型的なサイズが直径1~1.5μmで、薄茶色に着色して見える粒状のもの)の存在量が1個以下になるため好ましい。このときのペロブスカイト型の異相のガーネット母相に対する存在割合は1ppm以下となっている。
zが0.2以上の場合、ペロブスカイト型異相の析出抑制効果は飽和して変わらない中、zの値の増加に連動してyの値、即ちスカンジウムによるテルビウムの置換割合も高まってしまうため、結果的にテルビウムの固溶濃度が不必要に低下してしまうため、ベルデ定数が小さくなり好ましくない。更にまたスカンジウムは原料代が高額なため、スカンジウムを不必要に過剰ドープすることは製造コスト上からも好ましくない。
なお、式(1)中、y+zの範囲は0.001<y+z≦0.20である。yもzも共に0である場合、スカンジウムの添加効果もゼロとなってしまうため好ましくない。またy+zが0.2を超えてしまうと、ペロブスカイト型異相の析出抑制効果は飽和して変わらない中、スカンジウムによるテルビウムの置換割合も高まってしまうため、結果的にテルビウムの固溶濃度が不必要に低下してしまうため、ベルデ定数が小さくなり好ましくない。更にまたスカンジウムは原料代が高額なため、スカンジウムを不必要に過剰ドープすることは製造コスト上からも好ましくない。
また、上記複合酸化物粉末には、焼結助剤として更にマグネシウム(Mg)又はカルシウム(Ca)の酸化物を添加することができる。
マグネシウム及びカルシウムは共に2価のイオンであり、4価であるSiO2添加に伴うガーネット構造内部のチャージバランスのずれを補償することのできる元素であるため、好適に添加することができる。その添加量はSiO2添加量に合わせるように調整することが好ましい。
マグネシウム及びカルシウムは共に2価のイオンであり、4価であるSiO2添加に伴うガーネット構造内部のチャージバランスのずれを補償することのできる元素であるため、好適に添加することができる。その添加量はSiO2添加量に合わせるように調整することが好ましい。
上記複合酸化物粉末には、上記主成分の他にも更に別の元素を含有していてもよい。典型的な他の元素としては、不純物として混入し易い、ナトリウム(Na)、燐(P)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等が例示できる。
その他の元素の含有量は、テルビウムの全量を100質量部としたとき、10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましく、0.001質量部以下(実質的にゼロ)であることが特に好ましい。
[複合酸化物粉末]
本発明で用いる原料としては、上記組成に対応して少なくともテルビウム、アルミニウム、スカンジウムを含み、更に場合によっては、イットリウム、ルテチウム、ガリウム、セリウム、マグネシウム、カルシウムなども加えたそれぞれの金属粉末、あるいは上記元素の酸化物粉末等が好適に利用できる。また、上記原料の純度は99.9質量%以上が好ましく、99.99質量%以上が特に好ましい。
本発明で用いる原料としては、上記組成に対応して少なくともテルビウム、アルミニウム、スカンジウムを含み、更に場合によっては、イットリウム、ルテチウム、ガリウム、セリウム、マグネシウム、カルシウムなども加えたそれぞれの金属粉末、あるいは上記元素の酸化物粉末等が好適に利用できる。また、上記原料の純度は99.9質量%以上が好ましく、99.99質量%以上が特に好ましい。
更に本発明に用いるSiO2原料として、シリコンの酸化物粉末、ないしはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)が好適に利用できる。また、上記原料の純度は99.9質量%以上が好ましく、99.99質量%以上が特に好ましい。
それらの元素を含む原料粉末を上記組成(例えば、式(1)に対応する組成)となるように所定量秤量し、更にSiO2原料(SiO2の含有量が0質量%超0.1質量%以下となる量)等焼結助剤となる原料と共に混合並びに粉砕し、焼成して所望の構成の立方晶ガーネット型複合酸化物を主成分とする焼成原料(複合酸化物粉末)を得る。あるいは、上記元素を含む原料粉末を上記組成(例えば、式(1)に対応する組成)となるように所定量秤量し、焼成して所望の構成の立方晶ガーネット型複合酸化物を形成し、これにSiO2原料(SiO2の含有量が0質量%超0.1質量%以下となる量)等焼結助剤となる原料を添加して混合並びに粉砕し、焼成原料(複合酸化物粉末)を得るようにしてもよい。
このときの焼成温度は、900℃以上、かつこの後に行われる焼結温度よりも低い温度が好ましく、1,000℃以上1,300℃以下がより好ましい。焼成温度がこの範囲内であると、焼成原料(複合酸化物粉末)が過度に(典型的には成形体粒子径1.5μm以上)粒成長することなく、得られる原料粉末の焼結性を損なわずに済むため好ましい。なお、焼成された原料は少なからず凝集している場合が多いため、焼成後の原料を改めて粉砕処理することが更に好ましい。このとき、粉砕された原料粉末の平均粒子径が1μm以下であると、該粉末を用いて焼結体を作製する際の焼結性が良好となるため特に好ましい。
なお、最終的には所望の構成の複合酸化物粉末を用いてセラミックス製造をすることになるが、その際の粉末形状については特に限定されず、例えば角状、球状、板状の粉末が好適に利用できる。また、二次凝集している粉末であっても好適に利用できるし、スプレードライ処理等の造粒処理によって造粒された顆粒状粉末であっても好適に利用できる。更に、これらの原料粉末の調製工程についても特に限定されない。共沈法、粉砕法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、アルコキシド加水分解法、その他あらゆる合成方法で作製された原料粉末が好適に利用できる。また、得られた原料粉末を適宜湿式ボールミル、ビーズミル、ジェットミルや乾式ジェットミル、ハンマーミル等によって処理してもよい。
ただし、本発明においては異相、異物、汚れなどのサイズや量を規定の範囲内に管理できるようにするために、混合、粉砕メディア、容器、並びにるつぼ等は十分に洗浄、乾燥された清浄な専用のものを使用し、かつ粉末原料を取扱う環境はクラス10000以下のクリーン空間であることが好ましい。
本発明で用いる原料粉末中には、その後のセラミックス製造工程での品質安定性や歩留り向上の目的で、各種の有機添加剤が添加される場合がある。本発明においては、これらについても特に限定されない。即ち、各種の分散剤、結合剤、潤滑剤、可塑剤等が好適に利用できる。ただし、これらの有機添加剤としては、不要な金属イオンが含有されない、高純度のタイプを選定することが好ましい。
[製造工程]
本発明では、上記焼成原料(複合酸化物粉末)を用いて、所定形状にプレス成形した後に脱脂を行い、次いで予備焼結を行って相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結(熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理)し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体を得る。
本発明では、上記焼成原料(複合酸化物粉末)を用いて、所定形状にプレス成形した後に脱脂を行い、次いで予備焼結を行って相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結(熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理)し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体を得る。
なお、焼結粒子の平均粒径(平均焼結粒径)は、対象焼結体の焼結粒子の粒径を金属顕微鏡で測定して求められるものであり、詳しくは以下のようにして求められる。
即ち、予備焼結体については金属顕微鏡を使用し、反射モードを用いて、50倍の対物レンズを使用して焼結体表面の反射像を撮影する。詳しくは、対物レンズの有効画像サイズを考慮して対象焼結体の光学有効領域の全領域を撮影し、その撮影した画像について解析処理を行う。このとき、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義する。更に解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均焼結粒径とする(以下、当該常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法及び実施例における予備焼結体について同じ)。
また、再焼結体については金属顕微鏡の透過モードを用いて、50倍の対物レンズを使用して両端面が研磨された焼結体サンプルの透過オープンニコル像を撮影する。詳しくは、対物レンズの有効画像サイズと有効焦点深度を考慮して対象焼結体の光学有効領域の全領域を撮影し、その撮影した画像について解析処理を行う。このとき、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義する。更に解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均焼結粒径とする(以下、当該常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法における再焼結体、製造された常磁性ガーネット型透明セラミックス、及び実施例における再焼結体について同じ)。
即ち、予備焼結体については金属顕微鏡を使用し、反射モードを用いて、50倍の対物レンズを使用して焼結体表面の反射像を撮影する。詳しくは、対物レンズの有効画像サイズを考慮して対象焼結体の光学有効領域の全領域を撮影し、その撮影した画像について解析処理を行う。このとき、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義する。更に解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均焼結粒径とする(以下、当該常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法及び実施例における予備焼結体について同じ)。
また、再焼結体については金属顕微鏡の透過モードを用いて、50倍の対物レンズを使用して両端面が研磨された焼結体サンプルの透過オープンニコル像を撮影する。詳しくは、対物レンズの有効画像サイズと有効焦点深度を考慮して対象焼結体の光学有効領域の全領域を撮影し、その撮影した画像について解析処理を行う。このとき、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義する。更に解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均焼結粒径とする(以下、当該常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法における再焼結体、製造された常磁性ガーネット型透明セラミックス、及び実施例における再焼結体について同じ)。
(成形)
本発明の製造方法においては、通常のプレス成形工程を好適に利用できる。即ち、ごく一般的な、型に充填して一定方向から加圧する一軸プレス工程や変形可能な防水容器に密閉収納して静水圧で加圧する冷間静水圧加圧(CIP(Cold Isostatic Pressing))工程や温間静水圧加圧(WIP(Warm Isostatic Pressing))工程が好適に利用できる。なお、印加圧力は得られる成形体の相対密度を確認しながら適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば市販のCIP装置やWIP装置で対応可能な300MPa以下程度の圧力範囲で管理すると製造コストが抑えられてよい。更にプレス成形法ではなく、鋳込み成形法による成形体の作製も可能である。加圧鋳込み成形や遠心鋳込み成形、押出し成形等の成形法も、出発原料である複合酸化物粉末の形状やサイズと各種の有機添加剤との組み合わせを最適化することで、採用可能である。
本発明の製造方法においては、通常のプレス成形工程を好適に利用できる。即ち、ごく一般的な、型に充填して一定方向から加圧する一軸プレス工程や変形可能な防水容器に密閉収納して静水圧で加圧する冷間静水圧加圧(CIP(Cold Isostatic Pressing))工程や温間静水圧加圧(WIP(Warm Isostatic Pressing))工程が好適に利用できる。なお、印加圧力は得られる成形体の相対密度を確認しながら適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば市販のCIP装置やWIP装置で対応可能な300MPa以下程度の圧力範囲で管理すると製造コストが抑えられてよい。更にプレス成形法ではなく、鋳込み成形法による成形体の作製も可能である。加圧鋳込み成形や遠心鋳込み成形、押出し成形等の成形法も、出発原料である複合酸化物粉末の形状やサイズと各種の有機添加剤との組み合わせを最適化することで、採用可能である。
ただし、本発明においては異相、異物、汚れ、マイクロクラックなどの散乱源のサイズや量を規定の範囲内に管理するために、成形用治具、並びに成形機は十分に洗浄、乾燥された清浄な専用のものを使用し、かつ成形作業を行う環境はクラス1000以下のクリーン空間であることが好ましい。
(脱脂)
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解消去できる温度まで昇温することが好ましい。
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解消去できる温度まで昇温することが好ましい。
(予備焼結)
本工程において相対密度94%以上に緻密化した平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体を作製する。この際、焼結粒径が所望の範囲内に収まるように温度と保持時間の条件を詰める必要がある。
本工程において相対密度94%以上に緻密化した平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体を作製する。この際、焼結粒径が所望の範囲内に収まるように温度と保持時間の条件を詰める必要がある。
ここでは、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。このときの雰囲気は特に制限されず、大気、不活性ガス、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス等の各種雰囲気が好適に利用できるが、より好ましくは減圧下(真空中)での焼結が利用できる。予備焼結の真空度は1×10-1Pa未満が好ましく、1×10-2Pa未満がより好ましく、1×10-3Pa未満が特に好ましい。
本発明の予備焼結工程における焼結温度は、1,450~1,650℃が好ましく、1,470~1,600℃が特に好ましい。焼結温度がこの範囲にあると、異相析出並びに粒成長を抑制しつつ緻密化が促進されるため好ましい。本発明の予備焼結工程における焼結保持時間は数時間程度で十分だが、予備焼結体の相対密度は94%以上に緻密化させなければならない。
本発明の予備焼結体の焼結粒の平均粒径は3μm以下であり、2.5μm以下が好ましい。該焼結粒の平均粒径は原料種、雰囲気、焼結温度、保持時間との兼ね合いで調整可能である。焼結粒径が3μmより大きいと続くHIP処理工程で塑性変形が起こりにくくなり、予備焼結体内に残留した気泡の除去が困難となる。
(加圧焼結(熱間等方圧プレス(HIP)))
本発明の製造方法においては、予備焼結工程を経た後に予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結する(HIP処理を行う)工程を設ける。なお、このときの加圧ガス媒体種類は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、又はAr-O2が好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50~300MPaであり、100~300MPaが好ましい。圧力50MPa未満では透明性改善効果が得られず、300MPa超では圧力を増加させてもそれ以上の透明性改善が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。また、その際の処理温度(所定保持温度)は1,000~1,780℃、好ましくは1,100~1,700℃の範囲で設定される。処理温度が1,780℃より高い温度ではHIP処理中に粒成長が生じ気泡の除去が困難となるため好ましくない。また、処理温度が1,000℃未満では焼結体の透明性改善効果がほとんど得られない。なお、処理温度の保持時間については特に制限されないが、あまり長時間保持すると酸素欠損の発生するリスクが増大するため好ましくない。典型的には1~3時間の範囲で好ましく設定される。なお、HIP処理するヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、グラファイト、ないしはモリブデン、タングステン、白金(Pt)が好適に利用でき、処理容器として更に酸化イットリウム、酸化ガドリニウムも好適に利用できる。処理温度が1,500℃以上である場合にはヒーター材、断熱材としてグラファイトが好ましいが、この場合は処理容器としてグラファイト、モリブデン、タングステンのいずれかを選定し、更にその内側に二重容器として酸化イットリウム、酸化ガドリニウムのいずれかを選定したうえで、容器内に酸素放出材を充填しておくと、HIP処理中の酸素欠損発生量を極力少なく抑えられるため好ましい。
本発明の製造方法においては、予備焼結工程を経た後に予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結する(HIP処理を行う)工程を設ける。なお、このときの加圧ガス媒体種類は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、又はAr-O2が好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50~300MPaであり、100~300MPaが好ましい。圧力50MPa未満では透明性改善効果が得られず、300MPa超では圧力を増加させてもそれ以上の透明性改善が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。また、その際の処理温度(所定保持温度)は1,000~1,780℃、好ましくは1,100~1,700℃の範囲で設定される。処理温度が1,780℃より高い温度ではHIP処理中に粒成長が生じ気泡の除去が困難となるため好ましくない。また、処理温度が1,000℃未満では焼結体の透明性改善効果がほとんど得られない。なお、処理温度の保持時間については特に制限されないが、あまり長時間保持すると酸素欠損の発生するリスクが増大するため好ましくない。典型的には1~3時間の範囲で好ましく設定される。なお、HIP処理するヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、グラファイト、ないしはモリブデン、タングステン、白金(Pt)が好適に利用でき、処理容器として更に酸化イットリウム、酸化ガドリニウムも好適に利用できる。処理温度が1,500℃以上である場合にはヒーター材、断熱材としてグラファイトが好ましいが、この場合は処理容器としてグラファイト、モリブデン、タングステンのいずれかを選定し、更にその内側に二重容器として酸化イットリウム、酸化ガドリニウムのいずれかを選定したうえで、容器内に酸素放出材を充填しておくと、HIP処理中の酸素欠損発生量を極力少なく抑えられるため好ましい。
(再焼結)
本発明の製造方法においては、HIP処理を終えた後に、加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して粒成長させて平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体を得る。この際、最終的に得られる焼結粒径が所望の範囲内に収まるように温度と保持時間の条件を詰める必要がある。
本発明の製造方法においては、HIP処理を終えた後に、加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して粒成長させて平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体を得る。この際、最終的に得られる焼結粒径が所望の範囲内に収まるように温度と保持時間の条件を詰める必要がある。
このときの雰囲気ガスの種類は特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できるが、減圧下(1×10-2Pa未満の真空下)で処理することがより好ましい。再焼結の温度は1,650℃以上1,800℃以下が好ましく、1,700℃以上1,800℃以下がより好ましい。1,650℃未満では粒成長が生じないため好ましくない。再焼結による焼結粒子の平均粒径は15μm以上であり、35μm以下が好ましい。再焼結工程の保持時間は特に制限されないが5時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましい。一般的に保持時間を延ばせば延ばすほど焼結体の粒成長が進む。再焼結工程の温度と保持時間は平均焼結粒径を確認して適宜調整してよい。
(酸化アニール)
以上の一連の処理を経た再焼結体は、特にHIP処理工程などにおいて還元されるため、若干の酸素欠損を生じてしまい、灰色~濃紺の外観を呈する場合がある。その場合には、1,000~1,500℃にて、大気中などの含酸素雰囲気下でアニール処理(酸素欠損回復処理)を施すことが好ましい。この場合の保持時間は特に制限されないが、酸素欠損が回復するのに十分な時間以上で、かつ無駄に長時間処理して電気代を消耗しない時間内で選択されることが好ましい。また、微酸化HIP処理を施してもよい。これらの処理により、たとえ着色してしまった再焼結体であっても、酸素欠損を回復させることができることから散乱源(散乱コントラスト源)のサイズや数量を規定の範囲内に管理でき、かつ酸素欠陥由来の吸収の少ない常磁性ガーネット型透明セラミックスとすることができる。勿論、機能を付与するためのドーパントや不純物等の有色の元素が添加されたことによる材料の本質的な着色(吸収)は除去することができない。
以上の一連の処理を経た再焼結体は、特にHIP処理工程などにおいて還元されるため、若干の酸素欠損を生じてしまい、灰色~濃紺の外観を呈する場合がある。その場合には、1,000~1,500℃にて、大気中などの含酸素雰囲気下でアニール処理(酸素欠損回復処理)を施すことが好ましい。この場合の保持時間は特に制限されないが、酸素欠損が回復するのに十分な時間以上で、かつ無駄に長時間処理して電気代を消耗しない時間内で選択されることが好ましい。また、微酸化HIP処理を施してもよい。これらの処理により、たとえ着色してしまった再焼結体であっても、酸素欠損を回復させることができることから散乱源(散乱コントラスト源)のサイズや数量を規定の範囲内に管理でき、かつ酸素欠陥由来の吸収の少ない常磁性ガーネット型透明セラミックスとすることができる。勿論、機能を付与するためのドーパントや不純物等の有色の元素が添加されたことによる材料の本質的な着色(吸収)は除去することができない。
このように、上記成形体について所定条件で予備焼結-加圧焼結-再焼結の処理を施した後、酸化アニール処理すると、光路長25mmでの波長1,064nmにおける全光線透過率が、光学端面への反射防止コート無しの場合で84.4%以上、光学端面への反射防止コート有りの場合で99.9%以上とすることが可能となる。
なお、当該酸化アニール工程においてあまりに高温長時間処理をしてしまうと、焼結体内部の残存気泡のサイズや量が増加する場合がある。すると最終的な焼結体内部に残る気泡やマイクロクラックなどのサイズや量を規定の範囲内に管理することができなくなるため好ましくない。この場合には、当該焼結体に再度HIP処理を施したうえで、改めて酸素雰囲気アニール処理を施すと、焼結体内部に残る気泡やマイクロクラックなどのサイズや量を規定の範囲内に管理することができるため好ましい。
(光学研磨)
本発明の製造方法においては、上記一連の製造工程を経た常磁性ガーネット型透明セラミックスについて、その形状が円柱状又は角柱状であることが好ましく、その光学的に利用する軸上にある両端面(光学端面)を光学研磨して仕上げる。このときの光学面精度は測定波長λ=633nmの場合、λ/2以下が好ましく、λ/8以下が特に好ましい。そのためには、光学研磨工程の最終段階において必ずポリッシュ仕上げ処理を施すことが好ましい。また、その面精度(反射波面精度)はP-V値で0.16μm以下が好ましい。これにより、その光学的に利用する軸方向において無色透明の外観を呈する。
なお、この光学研磨は、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスにおいて後述する粗大な散乱源のうち表面粗さに起因する成分を抑制し、それよりも小さな散乱源のうち表面粗さに起因する成分を低減する上で必須の処理である。
本発明の製造方法においては、上記一連の製造工程を経た常磁性ガーネット型透明セラミックスについて、その形状が円柱状又は角柱状であることが好ましく、その光学的に利用する軸上にある両端面(光学端面)を光学研磨して仕上げる。このときの光学面精度は測定波長λ=633nmの場合、λ/2以下が好ましく、λ/8以下が特に好ましい。そのためには、光学研磨工程の最終段階において必ずポリッシュ仕上げ処理を施すことが好ましい。また、その面精度(反射波面精度)はP-V値で0.16μm以下が好ましい。これにより、その光学的に利用する軸方向において無色透明の外観を呈する。
なお、この光学研磨は、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスにおいて後述する粗大な散乱源のうち表面粗さに起因する成分を抑制し、それよりも小さな散乱源のうち表面粗さに起因する成分を低減する上で必須の処理である。
なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜(ARコート)を成膜することで光学損失を更に低減させることが好ましい。この際、光学両端面上に汚れが残らないよう、反射防止膜処理を施す前に入念に光学面を清浄に拭き洗浄し、実体鏡や顕微鏡などで清浄度を検査することが好ましい。更に当該拭き洗浄工程で光学面にキズをつけたり、汚れをこすり付けたりすることのないよう、取扱い治具は柔らかい材質でできているものを、拭くものは低発塵性のものを選定することが好ましい。
本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法によれば、製造する常磁性ガーネット型透明セラミックスを直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、光学有効径内であって、表面から焼結体内部にわたるすべての3次元領域(光学的に有効な内部領域)に残存する気泡、異相、異物、マイクロクラック、その他の散乱源として、後述するように粗大散乱源を含まない、即ちX軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも30μm以下であって、最大長さLが20μm以上30μm未満で、幅Wと厚さTがいずれも30μm未満であるものが多くても2個であるもの、好ましくは最大長さLと、幅W及び厚さTのいずれか1つが10μm以上20μm未満で、残りが20μm未満であるものが多くても5個であるものとすることが可能となる。
また本発明の製造方法によれば後述するように上記に加えて、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、光学的に有効な内部領域において、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満である大型散乱源(凹み、汚れ、気泡、異相、異物)の合計数が10個以下となるように管理することも可能となる。更に、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、光学的に有効な内部領域において、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満である中型散乱源(凹み、汚れ、気泡、異相、異物)の合計数が500個以下となるように管理することも可能となる。更にまた、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、光学的に有効な内部領域において、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満である小型散乱源(凹み、汚れ、気泡、異相、異物)の合計数が1,000個以下となるように管理することも同様に可能となる。
以上のようにして、少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含有した常磁性ガーネット型複合酸化物の焼結体であって、散乱源のサイズを小さくすると共にその数を低減し高出力のレーザー光を透過させたときのビーム品質が改善される常磁性ガーネット型透明セラミックスが得られる。詳しくは、以下の通りである。
<常磁性ガーネット型透明セラミックス>
本発明に係る常磁性ガーネット型透明セラミックスは、上述した本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法により製造されるものであり、少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物の焼結体であって、焼結助剤としてSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有し、平均焼結粒径が15μm以上であって、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域における入射光の散乱源として、XYZ直交座標系においてその最大となる長さLをX軸方向とした場合、その最大長さLが30μm以上のものが含まれず、かつその最大長さLが20μm以上30μm未満であって、Y軸方向の幅Wと、Z軸方向の厚さTがいずれも30μm未満であるものが2個以下であることを特徴とするものである。
本発明に係る常磁性ガーネット型透明セラミックスは、上述した本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法により製造されるものであり、少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物の焼結体であって、焼結助剤としてSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有し、平均焼結粒径が15μm以上であって、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域における入射光の散乱源として、XYZ直交座標系においてその最大となる長さLをX軸方向とした場合、その最大長さLが30μm以上のものが含まれず、かつその最大長さLが20μm以上30μm未満であって、Y軸方向の幅Wと、Z軸方向の厚さTがいずれも30μm未満であるものが2個以下であることを特徴とするものである。
ここで、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つが10μm以上20μm未満で、残りが20μm未満であるものが5個以下であることが好ましい。
また、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるものが10個以下であることがより好ましい。
また、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるものが10個以下であることがより好ましい。
更にまた、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるものが500個以下であることが好ましい。
更に、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるものが1,000個以下であることが好ましい。
なお、「光学的に有効な内部領域」とは、常磁性ガーネット型透明セラミックス内部において入射光が透過して出射するときに磁気光学材料として有効に機能する領域を意味するものであり、該常磁性ガーネット型透明セラミックスの3次元的な光学有効径内部(即ち、その深さ方向(長手方向)のすべての位置において光学有効径内であること)をいう(以下、光学有効領域内部というときがある)。また、「光学有効径」とは、透明セラミックスの光学面において光学的に有効な領域(光学有効領域)のことをいい、詳しくは、円柱形状の常磁性ガーネット型透明セラミックスの場合、その光学的に利用する軸上にある光学面(円形面)において光学的に利用できない端面外縁部を除いた領域をいい、ここでは光学面の面積率にして10%に相当する光学面外縁部を除いた領域、つまり光学面の外縁から内側に入った面積率にして90%の領域のことをいう。
「散乱源」とは、常磁性ガーネット型透明セラミックス内部に含まれる気泡、異相、異物、マイクロクラック等、及び該透明セラミックスの光学端面表層に含まれる凹み、汚れ等の入射レーザー光を散乱させる原因となるものであり、金属顕微鏡の透過モードでコントラスト像として観察されるものである。
この散乱源の形態やサイズは、気泡、異相、異物、マイクロクラック等の種類により異なっており、ここでは散乱源をそのサイズ(形態を加味したサイズ)により以下の6種類に分類する。この場合、対象の散乱源をXYZ直交座標系においてその最大長さLとなる方向をX軸方向に配置し、このときのY軸方向を幅Wとし、Z軸方向を厚さTとする。
・超粗大(NG粗大)散乱源:その最大長さLが30μm以上のもの、
・上限粗大(許容粗大)散乱源:その最大長さLが20μm以上30μm未満で、幅Wと厚さTがいずれも30μm未満のもの、
・粗大散乱源:その最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つとが10μm以上20μm未満で、残りが20μm未満のもの、
・大型散乱源:X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つとが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるもの、
・中型散乱源:X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるもの、
・小型散乱源:X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるもの。
なお、「1μm未満であるもの」は、金属顕微鏡で観察可能な大きさのものであり、その大きさの下限は一辺が500nm程度である。
・超粗大(NG粗大)散乱源:その最大長さLが30μm以上のもの、
・上限粗大(許容粗大)散乱源:その最大長さLが20μm以上30μm未満で、幅Wと厚さTがいずれも30μm未満のもの、
・粗大散乱源:その最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つとが10μm以上20μm未満で、残りが20μm未満のもの、
・大型散乱源:X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つとが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるもの、
・中型散乱源:X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるもの、
・小型散乱源:X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるもの。
なお、「1μm未満であるもの」は、金属顕微鏡で観察可能な大きさのものであり、その大きさの下限は一辺が500nm程度である。
本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスにあっては、光学的に有効な内部領域に残存する各種散乱源が上記範囲内で管理されていると、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としレーザー加工機内部に搭載されるファラデー回転子として利用した際に、これにレーザー強度120W、ビーム品質M2値がm(1<m≦1.2)である波長1,070nmのレーザー光を入射させ、その透過光のビーム品質M2値をnとした場合のn/mが1.05以下となるため好ましい。
また、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスにあっては、その平均焼結粒径が15μm以上であり、35μm以下が好ましい。平均焼結粒径が15μm未満であるとセラミックス内部の散乱量が多くなり、結果として直径5mm、長さ25mmの円柱形状としレーザー加工機内部に搭載されるファラデー回転子として利用した際に、これにレーザー強度120W、ビーム品質M2値がm(1<m≦1.2)である波長1,070nmのレーザー光を入射させ、その透過光のビーム品質M2値をnとした場合のn/mが1.05を超えてしまう。
また、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、光学的に有効な内部領域における焼結粒子内部に残存する粒内気泡の存在割合が10万粒子に1個以下であることが好ましい。
本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、光路長25mmでの波長1,064nmにおける全光線透過率が、光学端面への反射防止コート無しの場合で84.4%以上であり、光学端面への反射防止コート有りの場合で99.9%以上であることが好ましい。このように高い全光線透過率を有する常磁性ガーネット型透明セラミックスによれば、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたとき、これにレーザー強度120W、ビーム品質M2値がm(1<m≦1.2)である波長1,070nmのレーザー光を入射させ、その透過光のビーム品質M2値をnとした場合のn/mが1.05以下とすることが可能となる。
ここで、「全光線透過率」とは、積分球が設置された測定光路中にサンプルを置かずにブランク(空間)状態で測定した対象波長の透過スペクトル(光の強度)を100%とした場合における透明セラミックスサンプルを透過させた後の積分球で集光される対象波長のすべての光の合計強度の比率(全光線透過率)を意味する。即ち、ブランク状態で測定した対象波長の光の強度(入射光強度)をI0、透明セラミックスサンプルを透過させた後の積分球による集光光の強度をIとした場合、I/I0×100(%)で表すことができる。
また、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたとき、光学有効領域内の光路長25mmでの波長1,064nmにおける挿入損失変動が0.02dB以下となることが好ましい。これにより、そのレーザー光を透過させた場合、高いビーム品質M2が得られる。
なお、ここでいう挿入損失は、波長1,064nmの10~20mWのレーザー光をビーム径200~350μmに集束させた状態で対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面に対して垂直に(光学的に利用する軸方向に)入射して半導体受光器で光強度を測定し、このときの該セラミックスを挿入しない場合の光強度(入射光強度)を基準として、それに対する光強度の低下をdB単位で表現したものである。また、挿入損失変動は、対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面の光学有効領域(光学有効径)内の全域でレーザー光を入射する位置を移動しながら測定した挿入損失の最大値と最小値の差である。このときのレーザー光の位置移動量はビーム径の半分程度(100μm)が好ましい。
なお、ここでいう挿入損失は、波長1,064nmの10~20mWのレーザー光をビーム径200~350μmに集束させた状態で対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面に対して垂直に(光学的に利用する軸方向に)入射して半導体受光器で光強度を測定し、このときの該セラミックスを挿入しない場合の光強度(入射光強度)を基準として、それに対する光強度の低下をdB単位で表現したものである。また、挿入損失変動は、対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面の光学有効領域(光学有効径)内の全域でレーザー光を入射する位置を移動しながら測定した挿入損失の最大値と最小値の差である。このときのレーザー光の位置移動量はビーム径の半分程度(100μm)が好ましい。
更にまた、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたとき、光路長25mmでの波長1,064nmにおける消光比が光学有効領域内の全面にわたり40dB以上が好ましく、42dB以上がより好ましく、44dB以上が更に好ましく、48dB以上が特に好ましい。
なお、ここでいう消光比は、波長1,064nmの10~20mWのレーザー光をビーム径200~350μmに集束させた状態で0~90度に偏光して対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面に対して垂直に(光学的に利用する軸方向に)入射し、その出射光を偏光子を通して受光器に入射して、受光器で光の強度を測定し、最大値(I0’)と最小値(I’)より、消光比を下記式で計算して求め、これを対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面の光学有効領域(光学有効径)内の全域でレーザー光を入射する位置を移動しながら繰り返して得られる消光比の最小値である。このときのレーザー光の位置移動量はビーム径の半分程度(100μm)が好ましい。
消光比(dB/25mm)=-10×log10(I’/I0’)
なお、ここでいう消光比は、波長1,064nmの10~20mWのレーザー光をビーム径200~350μmに集束させた状態で0~90度に偏光して対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面に対して垂直に(光学的に利用する軸方向に)入射し、その出射光を偏光子を通して受光器に入射して、受光器で光の強度を測定し、最大値(I0’)と最小値(I’)より、消光比を下記式で計算して求め、これを対象の常磁性ガーネット型透明セラミックスの光学面の光学有効領域(光学有効径)内の全域でレーザー光を入射する位置を移動しながら繰り返して得られる消光比の最小値である。このときのレーザー光の位置移動量はビーム径の半分程度(100μm)が好ましい。
消光比(dB/25mm)=-10×log10(I’/I0’)
本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスによれば、真に透明で、ハイパワーレーザーを入射しても光学品質が良好であることから、磁気光学材料として好適である。
[磁気光学デバイス]
更に、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは磁気光学材料として利用することを想定しているため、該常磁性ガーネット型透明セラミックスにその光学軸と平行に磁場を印加したうえで、偏光子、検光子とを互いにその光学軸が45度ずれるようにセットして磁気光学デバイスを構成利用することが好ましい。即ち、本発明の磁気光学材料は、磁気光学デバイス用途に好適であり、特に波長0.9~1.1μmの光アイソレータのファラデー回転子として好適に使用される。
更に、本発明の常磁性ガーネット型透明セラミックスは磁気光学材料として利用することを想定しているため、該常磁性ガーネット型透明セラミックスにその光学軸と平行に磁場を印加したうえで、偏光子、検光子とを互いにその光学軸が45度ずれるようにセットして磁気光学デバイスを構成利用することが好ましい。即ち、本発明の磁気光学材料は、磁気光学デバイス用途に好適であり、特に波長0.9~1.1μmの光アイソレータのファラデー回転子として好適に使用される。
図1は、本発明の磁気光学材料からなるファラデー回転子を光学素子として有する光学デバイスである光アイソレータの一例を示す断面模式図である。
図1において、光アイソレータ100は、本発明の磁気光学材料からなるファラデー回転子110を備え、該ファラデー回転子110の前後には、偏光材料である偏光子120及び検光子130が備えられている。また、光アイソレータ100は、偏光子120、ファラデー回転子110、検光子130の順序で配置され、それらの側面のうちの少なくとも1面に磁石140が載置されていることが好ましい。
図1において、光アイソレータ100は、本発明の磁気光学材料からなるファラデー回転子110を備え、該ファラデー回転子110の前後には、偏光材料である偏光子120及び検光子130が備えられている。また、光アイソレータ100は、偏光子120、ファラデー回転子110、検光子130の順序で配置され、それらの側面のうちの少なくとも1面に磁石140が載置されていることが好ましい。
また、上記光アイソレータ100は、波長1,064nm(又は波長1,070nm)における出力が200W等の高出力の産業用ファイバーレーザー装置に好適に利用できる。即ち、レーザー光源から発したレーザー光の反射光が光源に戻り、発振が不安定になる等のレーザー発振器の誤作動を防止するのに好適である。
以下に、実施例、比較例、参考例及び参考比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[実施例1~5、比較例1~5、参考例1~3、参考比較例1~3]
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化イットリウム粉末、酸化スカンジウム粉末、及び大明化学(株)製の酸化アルミニウム粉末、更にヤマナカヒューテク(株)製の酸化ガリウム、並びに宇部マテリアルズ(株)製の酸化マグネシウムを入手した。更にキシダ化学(株)製のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の液体を入手した。純度は粉末原料がいずれも99.95質量%以上、液体原料が99.999質量%以上であった。上記原料を用いて、混合比率を調整して表1に示す最終組成となる計12種類の酸化物原料を作製した。即ち、テルビウムとアルミニウムのモル数、テルビウム、イットリウム及びアルミニウムのモル数、テルビウム、スカンジウム及びアルミニウムのモル数、テルビウム、スカンジウム、アルミニウム及びガリウムのモル数、及びテルビウム、イットリウム、スカンジウム及びアルミニウムのモル数がそれぞれ表1の各複合酸化物組成のモル比率となるよう秤量した混合粉末を用意した。続いてTEOSを、その添加量がSiO2換算で表1の質量%(wt%)になるように秤量して各原料に加えた。更に酸化マグネシウムを表1の質量%(wt%)になるように秤量して各原料に加えた。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、酸化イットリウム粉末、酸化スカンジウム粉末、及び大明化学(株)製の酸化アルミニウム粉末、更にヤマナカヒューテク(株)製の酸化ガリウム、並びに宇部マテリアルズ(株)製の酸化マグネシウムを入手した。更にキシダ化学(株)製のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の液体を入手した。純度は粉末原料がいずれも99.95質量%以上、液体原料が99.999質量%以上であった。上記原料を用いて、混合比率を調整して表1に示す最終組成となる計12種類の酸化物原料を作製した。即ち、テルビウムとアルミニウムのモル数、テルビウム、イットリウム及びアルミニウムのモル数、テルビウム、スカンジウム及びアルミニウムのモル数、テルビウム、スカンジウム、アルミニウム及びガリウムのモル数、及びテルビウム、イットリウム、スカンジウム及びアルミニウムのモル数がそれぞれ表1の各複合酸化物組成のモル比率となるよう秤量した混合粉末を用意した。続いてTEOSを、その添加量がSiO2換算で表1の質量%(wt%)になるように秤量して各原料に加えた。更に酸化マグネシウムを表1の質量%(wt%)になるように秤量して各原料に加えた。
そして、それぞれ互いの混入を防止するよう注意しながらエタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は10時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
続いて、これらの粉末をイットリアるつぼに入れ高温マッフル炉にて1,100℃、保持時間1時間で仮焼成処理した。得られた各酸化物原料につき、それぞれ互いの混入を防止するよう注意しながら再度エタノール中でアルミナ製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間はいずれも20時間であった。その後、再びスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。得られた12種類の粉末原料につき、それぞれ一軸プレス成形、198MPaの圧力での静水圧プレス処理を施してCIP成形体を得た。得られた成形体をマッフル炉中で1,000℃、2時間の条件にて脱脂処理して各成形体を準備した。
続いて脱脂成形体を真空加熱炉に仕込み、1.0×10-3Pa未満の減圧下で1,600℃、2時間処理(予備焼結)して計11種類の予備焼結体を得た。このとき、サンプルの焼結相対密度はいずれも94%以上であった。また、同じ条件で作製した予備焼結体サンプルのうち、酸化物原料No.1A以外のもの、即ち焼結助剤を含む予備焼結体における平均焼結粒径はいずれも3.0μm以下であった。
なお、予備焼結体における平均焼結粒径は、ツァイス社製金属顕微鏡の反射モードを使用し、対物レンズを有効画像サイズが100μm×130μmの50倍対物レンズを用いて、場所を水平にずらして各々600枚撮影することで、最表層での直径5mmサンプルの光学有効領域全面の反射像を撮影し、その撮影した画像について解析処理を行った結果である。このとき、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義した。そして解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均焼結粒径とした。
なお、予備焼結体における平均焼結粒径は、ツァイス社製金属顕微鏡の反射モードを使用し、対物レンズを有効画像サイズが100μm×130μmの50倍対物レンズを用いて、場所を水平にずらして各々600枚撮影することで、最表層での直径5mmサンプルの光学有効領域全面の反射像を撮影し、その撮影した画像について解析処理を行った結果である。このとき、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義した。そして解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均焼結粒径とした。
得られた各予備焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar中、190MPa、1,600℃、3時間の条件でHIP処理(加圧焼結)した。HIP体(加圧焼結体)の外観は全て透明だった。特許文献3、非特許文献3及び非特許文献4を参考に、比較例として12種類のHIP体の一部を続く再焼結工程に投入せずに保管した。
実施例として残りの上記12種類のHIP体(加圧焼結体)を再度真空加熱炉に仕込み、1.0×10-3Pa未満の減圧下で1,700℃、20時間処理(再焼結)して計24種類の再焼結体を得た。再焼結体の外観は全て透明だった。
こうして得られたHIP体(加圧焼結体)12種類及び再焼結体12種類を直径5mmにそれぞれ円柱研削を行った。その後、大気下1,450℃で30時間処理することで酸化アニール処理を行った。酸化アニール処理後のセラミックス焼結体を観察したところ、比較例であるHIP体12種類は上記酸化アニール処理により散乱強度が増していることが確認された。
続いて、得られた各セラミックス焼結体を、長さ25mmとなるように光学両端面を光学面精度λ/8(測定波長λ=633nmの場合)となるように最終研磨した。この場合、ここで各組成及び焼結条件のサンプルを更に2つのグループに分け、一方のグループの最終研磨については、わざと硬くて隙間のない、ポリッシュ研磨と相性の悪いバフ研磨を行った。他方のグループは事前に条件出しを済ませた最適なポリッシュ条件で光学研磨を行った。このようにして、合計48種類のセラミックスサンプルを用意した。なお、サンプルのn数は1(即ち、1種類ごとに1個ずつ)である。
以上の焼結条件及び研磨条件を表2~4に示す。表2は酸化物原料No.1A、1B、1Cを用いたTAG系のもの(参考例1及び参考比較例1)であり、表3は酸化物原料No.2A、2B、3A、3Bを用いたTYAG系のもの(参考例2、3及び参考比較例2、3)であり、表4は酸化物原料No.4~8を用いたTSAG系、TSAGG系、TYSAG系のもの(実施例1~5及び比較例1~5)である。
続いて、得られた各セラミックス焼結体を、長さ25mmとなるように光学両端面を光学面精度λ/8(測定波長λ=633nmの場合)となるように最終研磨した。この場合、ここで各組成及び焼結条件のサンプルを更に2つのグループに分け、一方のグループの最終研磨については、わざと硬くて隙間のない、ポリッシュ研磨と相性の悪いバフ研磨を行った。他方のグループは事前に条件出しを済ませた最適なポリッシュ条件で光学研磨を行った。このようにして、合計48種類のセラミックスサンプルを用意した。なお、サンプルのn数は1(即ち、1種類ごとに1個ずつ)である。
以上の焼結条件及び研磨条件を表2~4に示す。表2は酸化物原料No.1A、1B、1Cを用いたTAG系のもの(参考例1及び参考比較例1)であり、表3は酸化物原料No.2A、2B、3A、3Bを用いたTYAG系のもの(参考例2、3及び参考比較例2、3)であり、表4は酸化物原料No.4~8を用いたTSAG系、TSAGG系、TYSAG系のもの(実施例1~5及び比較例1~5)である。
上記のようにして得られた各焼結体サンプルについて全光線透過率、並びに光学有効領域内部(3次元的な光学有効径内)の気泡、異相、異物、マイクロクラック等の散乱源の数量につき以下のように測定した。
(全光線透過率の測定方法)
以上のようにして得られた合計48種類の研磨された焼結体サンプルについて、日本分光(株)製の分光光度計(型式:V-670)を用いて以下の要領で光路長25mmでの波長1,064nmにおける全光線透過率を測定した。
全光線透過率は、サンプルを透過した全光線を前方散乱成分まで含めて積算して評価する方法であり、具体的には積分球で光を集光して評価する。被測定物の光学有効領域内部に大きな散乱源(ミー散乱)がある場合には、全光線透過率の値が比較的大きくなってしまい、散乱源の多寡を評価するには不向きといえる。しかしながら、もしも高品質の透明焼結体を作製することができ、かつ光学有効領域内部に残存する散乱源のほとんどがその最大長さ、幅、厚さがいずれも2.5μm未満のものである場合には、散乱成分の約半分が後方散乱するため、たとえ積分球で集光して透過率を測定しても、その測定値は散乱源の多寡に依存して上下するため、評価データに一定の信頼性が担保される。更に全光線透過率の値には吸収の多寡も反映されるため、理論透過率に近い全光線透過率が得られれば、自動的に残存吸収のほとんど無い、高品質の光学素子であることが検証できるため、全光線透過率測定は好ましく選択される評価方法である。
以上のようにして得られた合計48種類の研磨された焼結体サンプルについて、日本分光(株)製の分光光度計(型式:V-670)を用いて以下の要領で光路長25mmでの波長1,064nmにおける全光線透過率を測定した。
全光線透過率は、サンプルを透過した全光線を前方散乱成分まで含めて積算して評価する方法であり、具体的には積分球で光を集光して評価する。被測定物の光学有効領域内部に大きな散乱源(ミー散乱)がある場合には、全光線透過率の値が比較的大きくなってしまい、散乱源の多寡を評価するには不向きといえる。しかしながら、もしも高品質の透明焼結体を作製することができ、かつ光学有効領域内部に残存する散乱源のほとんどがその最大長さ、幅、厚さがいずれも2.5μm未満のものである場合には、散乱成分の約半分が後方散乱するため、たとえ積分球で集光して透過率を測定しても、その測定値は散乱源の多寡に依存して上下するため、評価データに一定の信頼性が担保される。更に全光線透過率の値には吸収の多寡も反映されるため、理論透過率に近い全光線透過率が得られれば、自動的に残存吸収のほとんど無い、高品質の光学素子であることが検証できるため、全光線透過率測定は好ましく選択される評価方法である。
さて、その測定手順はJIS K7375を参考に測定した。光源はハロゲンランプ、検出器はPbS光電セルを用いて、ダブルビーム方式により測定を行った。まずサンプルを載せずにブランク状態で波長1,064nmにおけるブランク透過率を積分球で集光してベース光量;I0を取得する。続いて、光路中にサンプルを配置し、波長1,064nmでのサンプルを透過してきた全光線を積分球で集光して光量;Iの数値を取得する。このとき全光線透過率は以下の式で算出される。
全光線透過率(%)=I/I0×100
全光線透過率(%)=I/I0×100
(散乱源のサイズごとの数量カウント方法)
気泡、異相、異物、マイクロクラック等の散乱源のサイズごとの数量を次のように測定した。
気泡、異相、異物、マイクロクラック等の散乱源のサイズごとの数量を次のように測定した。
ツァイス社製金属顕微鏡の透過モードを使用し、2倍、10倍、50倍の各対物レンズを使用して前記の通り両端面が研磨された各焼結体サンプルの透過オープンニコル像を撮影した。
まず、2倍の対物レンズは有効画像サイズが2.4mm×3.2mmであるため、各深さにつき場所をずらして4枚ずつ撮影するとサンプルの光学有効領域全面が撮影できる。そして有効焦点深度が±91μmであるため、サンプル表層から順に182μmずつ高さを下げながら134層撮影すると長さ25mmのサンプルの表層を含めて内部全体の撮影ができる。この作業は自動ステッピングモータステージを搭載すると簡便である。そのうえで、画像解析処理を行い、上記散乱源の分類のうち、超粗大(NG粗大)散乱源、上限粗大(許容粗大)散乱源、粗大散乱源及び大型散乱源について以下のように判定を行った。
即ち、超粗大(NG粗大)散乱源(その最大長さLが30μm以上のもの)についてその存在の有無を判定した。
また、上限粗大(許容粗大)散乱源については、上記最大長さLが20μm以上30μm未満で上記幅W及び厚さTがいずれも30μm未満であるものを許容粗大散乱源としてその数をカウントし、2個以下を良好、3個以上を不良とした。
また、粗大散乱源については、上記最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが10μm以上20μm未満で残りが20μm未満であるものを粗大散乱源としてその数をカウントし、5個以下を良好、6個以上を不良とした。
さらに、大型散乱源については、上記X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つとが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるものを大型散乱源としてその数をカウントし、10個以下を良好、11個以上を不良とした。
まず、2倍の対物レンズは有効画像サイズが2.4mm×3.2mmであるため、各深さにつき場所をずらして4枚ずつ撮影するとサンプルの光学有効領域全面が撮影できる。そして有効焦点深度が±91μmであるため、サンプル表層から順に182μmずつ高さを下げながら134層撮影すると長さ25mmのサンプルの表層を含めて内部全体の撮影ができる。この作業は自動ステッピングモータステージを搭載すると簡便である。そのうえで、画像解析処理を行い、上記散乱源の分類のうち、超粗大(NG粗大)散乱源、上限粗大(許容粗大)散乱源、粗大散乱源及び大型散乱源について以下のように判定を行った。
即ち、超粗大(NG粗大)散乱源(その最大長さLが30μm以上のもの)についてその存在の有無を判定した。
また、上限粗大(許容粗大)散乱源については、上記最大長さLが20μm以上30μm未満で上記幅W及び厚さTがいずれも30μm未満であるものを許容粗大散乱源としてその数をカウントし、2個以下を良好、3個以上を不良とした。
また、粗大散乱源については、上記最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが10μm以上20μm未満で残りが20μm未満であるものを粗大散乱源としてその数をカウントし、5個以下を良好、6個以上を不良とした。
さらに、大型散乱源については、上記X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれか1つとが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるものを大型散乱源としてその数をカウントし、10個以下を良好、11個以上を不良とした。
次に対物レンズを有効画像サイズが0.43mm×0.64mmである10倍対物レンズに切替え、場所を水平にずらして84枚撮影することで、ある深さでの直径5mmサンプルの光学有効領域全面の画像を撮影した。ここで有効焦点深度が±3.5μmであるため、表層から順に7μmずつ高さを下げながら200層撮影すると深さ1.4mmのサンプル内部コントラスト像がすべて撮影できる。そのうえで、画像解析処理を行い、上記散乱源の分類のうち、中型散乱源について以下のように判定を行った。
即ち、中型散乱源(X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるもの)の数をカウントし、これに17.85を乗じて小数点第1位を四捨五入してその数を対象サンプルの光学有効領域全体における中型散乱源の数とし、500個以下を良好、501個以上を不良とした。
即ち、中型散乱源(X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるもの)の数をカウントし、これに17.85を乗じて小数点第1位を四捨五入してその数を対象サンプルの光学有効領域全体における中型散乱源の数とし、500個以下を良好、501個以上を不良とした。
続いて対物レンズを有効画像サイズが100μm×130μmであり、有効焦点深度が±0.9μmである50倍対物レンズに切替え、場所を水平にずらして各々600枚撮影することで、ある深さでの直径5mmサンプルの光学有効領域全面の画像を撮影した。この撮影を1.8μmずつ高さを下げて105層撮影した。そのうえで、これらすべての画像について解析処理を行い、上記散乱源の分類のうち、小型散乱源について以下のように判定を行った。
即ち、小型散乱源(X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるもの)の数をカウントし、これに132.27を乗じて小数点第1位を四捨五入してその数を対象サンプルの光学有効領域全体における小型散乱源の数とし、1,000個以下を良好、1,001個以上を不良とした。
即ち、小型散乱源(X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるもの)の数をカウントし、これに132.27を乗じて小数点第1位を四捨五入してその数を対象サンプルの光学有効領域全体における小型散乱源の数とし、1,000個以下を良好、1,001個以上を不良とした。
(平均焼結粒径の測定方法)
次に、前記の50倍対物レンズを用いて撮影した画像について、更に解析処理を行った。即ち、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長(この場合164nm)をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義した。更に解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均粒径daとして決定した。
次に、前記の50倍対物レンズを用いて撮影した画像について、更に解析処理を行った。即ち、まず各撮影像に対角線を描き、当該対角線が横切る焼結粒子の総数をカウントし、その上で対角線長(この場合164nm)をこのカウント総数で割った値をその画像中の焼結粒子の平均粒径と定義した。更に解析処理で読み取った各撮影画像の平均粒径を合算したうえで、撮影枚数で割った値を対象焼結体の平均粒径daとして決定した。
なお、散乱源の数として、許容粗大が2個以下、粗大が5個以下、大型が10個以下であり、中型の総数が500個以下であり、小型の総数が1,000個以下であって、かつ焼結体の平均焼結粒径が200μm以下である場合、比例計算により自動的に焼結粒子内部に残存する粒内気泡の存在割合は10万粒子に1個以下と判定できる。
続いて、測定済みのすべての焼結体サンプルにつき中心波長1,064nmの反射防止コート処理(AR処理)を施した。その上で、得られた各サンプルについて再度全光線透過率の測定と、光学有効領域内の挿入損失変動(挿入損失面内分布)並びに消光比面内分布を以下のように測定した。なお、全光線透過率の測定方法は前掲と同じである。
(挿入損失面内分布の測定方法)
挿入損失は、NKT Photonics社製の光源と、コリメータレンズ、ワークステージ、Gentec社製のパワーメータ並びにGeフォトディテクタを用いて内製した光学系を用い、波長1,064nmの光をビーム径200μmφの大きさに絞って透過させたときの光の強度により測定され、以下の式に基づき、測定した。
挿入損失(dB/25mm)=-10×log10(I/I0)
(式中、Iは透過光強度(長さ25mmのサンプルを直線透過した光の強度)、I0は入射光強度を示す。)
その上で、焼結体サンプルを載せるワークステージにオートステッピングモータで上下左右に動かせる機構を付与し、焼結体サンプルを光学有効領域内(光学有効径内)の端から端まで100μmピッチで動かしながら、前述の挿入損失測定を繰り返すことで、光学有効領域面内全体の挿入損失分布を測定した。またこのとき得られた挿入損失データの最大値と最小値を検出し、その差を挿入損失変動として読み取った。なお、測定時の室温は23℃であった。
挿入損失は、NKT Photonics社製の光源と、コリメータレンズ、ワークステージ、Gentec社製のパワーメータ並びにGeフォトディテクタを用いて内製した光学系を用い、波長1,064nmの光をビーム径200μmφの大きさに絞って透過させたときの光の強度により測定され、以下の式に基づき、測定した。
挿入損失(dB/25mm)=-10×log10(I/I0)
(式中、Iは透過光強度(長さ25mmのサンプルを直線透過した光の強度)、I0は入射光強度を示す。)
その上で、焼結体サンプルを載せるワークステージにオートステッピングモータで上下左右に動かせる機構を付与し、焼結体サンプルを光学有効領域内(光学有効径内)の端から端まで100μmピッチで動かしながら、前述の挿入損失測定を繰り返すことで、光学有効領域面内全体の挿入損失分布を測定した。またこのとき得られた挿入損失データの最大値と最小値を検出し、その差を挿入損失変動として読み取った。なお、測定時の室温は23℃であった。
(消光比の測定方法)
前述の挿入損失測定で用いた系に、JIS C5877-2:2012を参考にして偏光子と検光子ユニットを追加装填した状態で、消光比測定を以下の構成で行った。即ち、NKT Photonics社製の光源と、コリメータレンズ、偏光子、ワークステージ、検光子、Gentec社製のパワーメータ並びにGeフォトディテクタをこの順に光学軸上に並べて内製した光学系を用い、波長1,064nmの光をビーム径200μmφに絞った状態でサンプル中を透過させ、この状態で検光子の偏光面を偏光子の偏光面と一致させた際の光の強度I0’(レーザー光強度として最大値)を測定し、続いて検光子の偏光面を90度回転して偏光子の偏光面と直交させた状態で再度受光強度I’(レーザー光強度として最小値)を測定したうえで、以下の式に基づいて計算により求めた。
消光比(dB/25mm)=-10×log10(I’/I0’)
その上で、焼結体サンプルを載せるワークステージにオートステッピングモータで上下左右に動かせる機構を付与し、焼結体サンプルを光学有効領域内(光学有効径内)の端から端まで100μmピッチで動かしながら、該消光比測定を繰り返すことで、光学有効領域面内全体の消光比分布を測定した。このとき得られた消光比の最小値を消光比として読み取った。なお、測定時の室温は23℃であった。
前述の挿入損失測定で用いた系に、JIS C5877-2:2012を参考にして偏光子と検光子ユニットを追加装填した状態で、消光比測定を以下の構成で行った。即ち、NKT Photonics社製の光源と、コリメータレンズ、偏光子、ワークステージ、検光子、Gentec社製のパワーメータ並びにGeフォトディテクタをこの順に光学軸上に並べて内製した光学系を用い、波長1,064nmの光をビーム径200μmφに絞った状態でサンプル中を透過させ、この状態で検光子の偏光面を偏光子の偏光面と一致させた際の光の強度I0’(レーザー光強度として最大値)を測定し、続いて検光子の偏光面を90度回転して偏光子の偏光面と直交させた状態で再度受光強度I’(レーザー光強度として最小値)を測定したうえで、以下の式に基づいて計算により求めた。
消光比(dB/25mm)=-10×log10(I’/I0’)
その上で、焼結体サンプルを載せるワークステージにオートステッピングモータで上下左右に動かせる機構を付与し、焼結体サンプルを光学有効領域内(光学有効径内)の端から端まで100μmピッチで動かしながら、該消光比測定を繰り返すことで、光学有効領域面内全体の消光比分布を測定した。このとき得られた消光比の最小値を消光比として読み取った。なお、測定時の室温は23℃であった。
(ビーム品質(M2)変化量(n/m)評価)
ビーム品質の測定は、IPGフォトニクスジャパン(株)製のハイパワーレーザー装置を用いて、波長1,070nm、出射パワー120W、直径1.6mmのコリメートされたCWレーザー光を用いて測定した。このレーザー光をコヒーレント社製ModeMaster PC M2ビーム伝搬アナライザを用いてビーム品質M2値を測定した。まずオリジナルビーム(入射光)のM2値を測定し、この値をmとした。次に光路中に長さ25mmの各焼結体サンプルを配置し、それぞれの透過光のM2値を測定し、これをnとした。本発明におけるビーム品質変化量としてn/mを計算し、1.05以下を合格、1.05を超える場合は不合格と定義した。なお、ビームプロファイラの破壊を防ぐため、入射光並びにセラミックスの透過光強度はビームスプリッタを用いて1,000分の1程度に減衰させてからアナライザに導入した。また本光学系ではm=1.12であった。
ビーム品質の測定は、IPGフォトニクスジャパン(株)製のハイパワーレーザー装置を用いて、波長1,070nm、出射パワー120W、直径1.6mmのコリメートされたCWレーザー光を用いて測定した。このレーザー光をコヒーレント社製ModeMaster PC M2ビーム伝搬アナライザを用いてビーム品質M2値を測定した。まずオリジナルビーム(入射光)のM2値を測定し、この値をmとした。次に光路中に長さ25mmの各焼結体サンプルを配置し、それぞれの透過光のM2値を測定し、これをnとした。本発明におけるビーム品質変化量としてn/mを計算し、1.05以下を合格、1.05を超える場合は不合格と定義した。なお、ビームプロファイラの破壊を防ぐため、入射光並びにセラミックスの透過光強度はビームスプリッタを用いて1,000分の1程度に減衰させてからアナライザに導入した。また本光学系ではm=1.12であった。
以上のすべての結果を表2~4にまとめて示す。
以上の結果から、Tb、Al及びScを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いた成形体について、初めに予備焼結を実施し、その後HIP処理(加圧焼結)を行ってから、更に予備焼結温度以上の温度にて再焼結処理を施した焼結体であって、かつ光学研磨を行うことにより、光学表面の散乱源(凹み、汚れ、キズ)のサイズと個数を規定範囲に管理し、更にまた光学有効領域内部の散乱源(気泡、異相、異物、マイクロクラック)のサイズと個数を規定範囲に管理したすべての実施例群(実施例1~5)において、いずれも全光線透過率が84.4%以上(反射防止コートをつけた場合99.9%以上)で、かつ光学有効領域面内において挿入損失変動も0.02dB以下に抑えられ、更に消光比が40dB以上となった、高度に透明な常磁性ガーネット型透明セラミックス焼結体が得られることが確認された。更に出力120Wのレーザー光を入射した際の熱レンズによるビーム品質変化量n/mもすべて1.05以下に抑えられており、ハイパワーレーザーシステムに支障なく搭載可能であることが確かめられた。また前記実施例群はすべて粒内気泡の存在割合が10万粒子に1個以下と推定される。
また、参考例2-1のように、特にTbの一部をYで置換する割合が少ない組成(Tbの濃度が高い組成)で、且つ、Scを含んでいないと、上記と同様に、初めに予備焼結を実施し、その後HIP処理(加圧焼結)を行ってから、更に予備焼結温度以上の温度にて再焼結処理を施した焼結体であって、かつ光学研磨を行うことにより、光学表面の散乱源(凹み、汚れ、キズ)のサイズと個数を規定範囲に管理し、更にまた光学有効領域内部の散乱源(気泡、異相、異物、マイクロクラック)のサイズと個数を規定範囲に管理したすべての参考例群(参考例1~2)においては、出力120Wのレーザー光を入射した際の熱レンズによるビーム品質変化量n/mがわずかに1.05に届いていなかった。なお、参考例1-1、1-2や参考例2-1では、ビーム品質変化量n/mの測定値が1.05の値を示すこともあったが何回か測定して1.06であることを確認した。
逆に実施例1と参考例1とを比較したり、実施例5と参考例2とを比較してみると、たとえ少量でもScを添加すると、出力120Wのレーザー光を入射した際の熱レンズによるビーム品質変化量n/mを1.05以下に管理できる可能性が高まることが確認された。以上のことから、特にTbの一部をYで置換する割合が少ない組成に関しては、少量でもScを添加することの意義があると言える。
逆に実施例1と参考例1とを比較したり、実施例5と参考例2とを比較してみると、たとえ少量でもScを添加すると、出力120Wのレーザー光を入射した際の熱レンズによるビーム品質変化量n/mを1.05以下に管理できる可能性が高まることが確認された。以上のことから、特にTbの一部をYで置換する割合が少ない組成に関しては、少量でもScを添加することの意義があると言える。
他方、すべての比較例群(比較例1~5)においては、たとえ上記の実施例と同じ複合酸化物組成の粉末を用いても、その焼結条件や最終研磨条件により、光学表面の散乱源(凹み、汚れ、キズ)のサイズと個数が規定範囲外となり、かつ光学有効領域内部の散乱源(気泡、異相、異物、マイクロクラック)のサイズと個数も規定範囲外となり、いずれも全光線透過率が84.4%未満(反射防止コートをつけた場合99.9%未満)で、かつ光学有効領域面内において挿入損失変動も0.02dB超となり、更に消光比が40dB未満となった透明セラミックス焼結体しか得ることができなかった。更に出力120Wのレーザー光を入射した際の熱レンズによるビーム品質変化量n/mもすべて1.05より大きい値に悪化しており、ハイパワーレーザーシステムに搭載した際にレーザーによるアイソレータの損傷や加工精度に問題を起こす課題を抱えていることが確かめられた。
以上、本実施例の結果により、Tb、Al及びScを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いた成形体について施す焼結処理及び最終研磨処理を本発明の条件とすれば、散乱源が抑制された(これらの散乱源のうち、粗大なものの発生が抑制され、かつそれよりも小さい散乱源の数が低減された)常磁性ガーネット型透明セラミックスが得られる。そして、この常磁性ガーネット型透明セラミックスは、全光線透過率が84.4%以上(反射防止コートをつけた場合99.9%以上)で、かつ光学有効領域内で挿入損失変動が0.02dB以下に抑えられ、消光比が40dB以上となった、高度に透明なものとなる。更にこの透明セラミックスを磁気光学材料として用いた場合に出力120Wのレーザー光まで支障なく利用可能な高性能の磁気光学デバイスを提供できる。
なお、これまで本発明を上述した実施形態をもって説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
100 光アイソレータ
110 ファラデー回転子
120 偏光子
130 検光子
140 磁石
110 ファラデー回転子
120 偏光子
130 検光子
140 磁石
Claims (18)
- 少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物と、含有量0質量%超0.1質量%以下となる量のSiO2とを含む複合酸化物粉末を用いて成形体を成形した後、該成形体を予備焼結して相対密度94%以上、平均焼結粒径3μm以下の予備焼結体とし、次いでこの予備焼結体を圧力50MPa以上300MPa以下、温度1,000℃以上1,780℃以下で加圧焼結し、更にこの加圧焼結体を上記予備焼結の温度以上に加熱して再焼結して平均焼結粒径が15μm以上の再焼結体とし、その光学端面を光学研磨して仕上げる常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
- 上記ガーネット型複合酸化物が、更にイットリウム、ルテチウム、ガリウム及びセリウムから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
- 上記ガーネット型複合酸化物が下記式(1)で表されるものである請求項1又は2に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
(Tb1-x-yYxScy)3(Al1-zScz)5O12 (1)
(式中、0≦x<0.45、0≦y<0.1、0≦z<0.2、0.001<y+z≦0.2である。) - 上記予備焼結が、減圧下で1,450~1,650℃に加熱するものである請求項1~3のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
- 上記加圧焼結が、1,100~1,700℃に加熱するものである請求項1~4のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
- 上記再焼結が、減圧下で1,650~1,800℃に加熱するものである請求項1~5のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
- 更に、上記再焼結体について酸化アニール処理し、その後に光学研磨する請求項1~6のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスの製造方法。
- 少なくともテルビウムとアルミニウムとスカンジウムを含むガーネット型複合酸化物の焼結体であって、焼結助剤としてSiO2を0質量%超0.1質量%以下含有し、平均焼結粒径が15μm以上であって、直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域における入射光の散乱源として、XYZ直交座標系においてその最大となる長さLをX軸方向とした場合、その最大長さLが30μm以上のものが含まれず、かつその最大長さLが20μm以上30μm未満であって、Y軸方向の幅Wと、Z軸方向の厚さTがいずれも30μm未満であるものが2個以下である常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが10μm以上20μm未満で、残りが20μm未満であるものが5個以下である請求項8に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さLと、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTのいずれか1つとが2.5μm以上10μm未満で、残りが10μm未満であるものが10個以下である請求項8又は9に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm以上2.5μm未満であるものが500個以下である請求項8~10のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたときに、その光学的に有効な内部領域に含まれる入射光の散乱源の数として、X軸方向の最大長さL、Y軸方向の幅W及びZ軸方向の厚さTがいずれも1μm未満であるものが1,000個以下である請求項8~11のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 光学的に有効な内部領域における焼結粒子内部に残存する粒内気泡の存在割合が10万粒子に1個以下である請求項8~12のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 直径5mm、長さ25mmの円柱形状としたとき、これにレーザー強度120W、ビーム品質M2値がm(1<m≦1.2)である波長1,070nmのレーザー光を入射させ、その透過光のビーム品質M2値をnとした場合のn/mが1.05以下である請求項8~13のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 光路長25mmでの波長1,064nmにおける全光線透過率が、光学端面への反射防止コート無しの場合で84.4%以上であり、光学端面への反射防止コート有りの場合で99.9%以上である請求項8~14のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
- 請求項8~15のいずれか1項に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスからなる磁気光学材料。
- 請求項16に記載の磁気光学材料を用いて構成される磁気光学デバイス。
- 上記常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである請求項17に記載の磁気光学デバイス。
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