JP2022019246A - 磁気光学材料及び磁気光学デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】 波長帯0.9μm~1.1μmの光を透過し、ベルデ定数はTGG結晶やTSAG結晶よりも大きく、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適で透明である磁気光学材料及び磁気光学デバイスを提供する。【解決手段】 本発明の磁気光学材料は、下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含むセラミックスからなり、上記複合酸化物の結晶構造の空間群はFm-3mである。Tb2RO5(1)(式中、Rはハフニウム及びジルコニウムからなる群から選択された少なくとも1つの元素である。)本発明の磁気光学デバイスは、上記磁気光学材料をファラデー回転子110として備え、ファラデー回転子の光学軸102上の前後に偏光子120と検光子130を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである。【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気光学材料及び磁気光学デバイスに関し、より詳細には、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適な複合酸化物を含む透明セラミックスからなる磁気光学材料、及びこの磁気光学材料を用いた磁気光学デバイスに関する。
近年、高出力化が可能となってきたこともあり、ファイバーレーザーを用いたレーザー加工機の普及が目覚しい。ところで、レーザー加工機に組み込まれるレーザー光源は、外部からの光が入射すると共振状態が不安定化し、発振状態が乱れる現象が起こる。特に発振された光が途中の光学系で反射されて光源に戻ってくると、発振状態は大きく撹乱される。これを防止するために、通常光アイソレータが光源の手前等に設けられる。
光アイソレータは、ファラデー回転子と、ファラデー回転子の光入射側に配置された偏光子と、ファラデー回転子の光出射側に配置された検光子とからなる。また、ファラデー回転子は、光の進行方向に平行に磁界を加えて利用する。この時、光の偏波線分はファラデー回転子中を前進しても後進しても一定方向にしか回転しなくなる。更に、ファラデー回転子は光の偏波線分が丁度45度回転される長さに調整される。ここで偏光子と検光子の偏波面を、前進する光の回転方向に45度ずらしておくと、前進する光の偏波は、偏光子位置と検光子位置で一致するため透過する。他方、後進する光の偏波は、検光子位置から、45度ずれている偏光子の偏波面のずれ角方向とは逆回転に45度回転することになる。すると偏光子位置における戻り光の偏波面は、偏光子の偏波面に対して45度-(-45度)=90度のずれとなり、偏光子を透過できない。こうして前進する光は透過、出射させ、後進する戻り光は遮断する光アイソレータとして機能する。
光アイソレータを構成するファラデー回転子として用いられる材料では、従来からTGG結晶(TbGa12)やTSAG結晶((Tb(3-x)Sc)ScAl12)が知られている(特開2011-213552号公報(特許文献1)、特開2002-293693号公報(特許文献2))。TGG結晶のベルデ定数は比較的大きく、40rad/(T・m)(即ち、0.14min/(Oe・cm))であり、現在標準的なファイバーレーザー装置用として広く搭載されている。TSAG結晶のベルデ定数はTGG結晶の1.3倍程度あるとされており(即ち、0.18min/(Oe・cm)程度)、こちらもファイバーレーザー装置に搭載される材料である。ベルデ定数の大きな光アイソレータが得られると、45度回転するために必要な全長を短くすることができ、光アイソレータの小型化につながり好ましい。
単位長さあたりのベルデ定数が非常に大きな材料として、鉄(Fe)を含むイットリウム鉄ガーネット(通称:YIG)単結晶がある(特開2000-266947号公報(特許文献3))。ただし、鉄(Fe)は波長0.9μmに大きな光吸収があり、波長0.9~1.1μm帯の光アイソレータにはこの光吸収の影響が出る。そのため、このイットリウム鉄ガーネット単結晶を用いた光アイソレータは、高出力化傾向の著しいファイバーレーザー装置での利用は極めて困難となっている。
一方、国際公開第2015/037649号(特許文献4)では、これらの既存材料の代替として、パイロクロア型の結晶構造を主成分として含むテルビウム含有金属酸化物Tb(Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム及びジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く))が、ファラデーローテータとして機能することを開示している。
更に、特開2016-169115号公報(特許文献5)では、テルビウムイオンの濃度を高めたパイロクロア型の結晶構造を主成分として含むテルビウム含有酸化物Tb2x2(2-x)8-x(1<x<1.3、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム及びジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く))が、特許文献4よりも大きなベルデ定数を有するファラデーローテータとして機能することを開示している。
特開2011-213552号公報 特開2002-293693号公報 特開2000-266947号公報 国際公開第2015/037649号 特開2016-169115号公報
特許文献5に記載されたテルビウム含有酸化物の式において、テルビウムイオンの含有率を高くしてx≧1.3とした組成は、ベルデ定数をTGG結晶やTSAG結晶よりも高くできることが期待されるものの、混晶となりやすく、透過率が低下するという問題がある。
そこで本発明は、上記事情に鑑み、波長帯0.9μm~1.1μmの光を透過し、ベルデ定数はTGG結晶やTSAG結晶よりも大きく、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適で透明である磁気光学材料及び磁気光学デバイスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、その一態様として、下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含むセラミックスからなる磁気光学材料であって、上記複合酸化物の結晶構造の空間群がFm-3mであるものである。
TbRO (1)
(式中、Rはハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された少なくとも1つの元素である。)
上記磁気光学材料は、波長1064nmでのベルデ定数が0.26min/(Oe・cm)以上であってよい。
上記磁気光学材料は、光路長1cm当たりの波長1064nmの光の直線透過率が95%以上であってよい。
また、本発明は、別の態様として、磁気光学デバイスであって、上記磁気光学材料を用いて構成されるものである。
上記磁気光学デバイスは、上記磁気光学材料をファラデー回転子として備え、上記ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えてよく、波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータであってよい。
上記ファラデー回転子は、その光学面に反射防止膜を備えてもよい。
特許文献5で記載するテルビウム含有酸化物の式において、更にテルビウムイオンの含有量を多くしてTbROとしても(即ち、x=1.33に相当)、Rをハフニウム及びジルコニウムからなる群から選択された少なくとも1つの元素とすることで、立方晶である蛍石型構造に帰属される結晶相(空間群はFm-3m)が存在し、透光性に優れたセラミックスが得られることが見出された。よって、本発明によれば、波長帯0.9μm~1.1μmのファイバーレーザー装置に搭載してもビーム品質を劣化させることなく、ベルデ定数が大きく、小型化が可能で、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適で透明な磁気光学材料を提供することができる。
本発明に係る磁気光学材料をファラデー回転子として用いた光アイソレータの構成例を模式的に示す断面図である。 実施例1-1のセラミックス焼結体(TbHfO)のX線回折パターンの実験値と計算値を示すグラフである。
[1.磁気光学材料]
先ず、本発明に係る磁気光学材料の一実施形態について説明する。本発明に係る磁気光学材料は、下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含むセラミックスからなり、この複合酸化物の結晶構造の空間群はFm-3mである。
TbRO (1)
(式中、Rはハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された少なくとも1つの元素である。)
テルビウム(Tb)イオンは、大きなベルデ定数をもつイオンであり、且つ波長11.06μmにおいて透明(光路長1mmにおける光の直線透過率が80%以上)であるため、この波長域の光アイソレータに使用するには最も適した元素である。ただし、この透明性を活かすためにはテルビウムが金属結合状態であってはならず、安定な化合物状態に仕上げる必要がある。
ここで、安定な化合物を形成する最も典型的な形態として金属酸化物が挙げられる。その中でも立方晶の金属酸化物焼結体は異方性散乱のない高度に透明な化合物が得られる。純粋な酸化テルビウム(III)はC型希土類構造をとるが、4価の金属イオンを含む金属酸化物を添加することで、酸化物イオンが欠損した蛍石(以下、欠陥蛍石という)型構造をもつ複合酸化物が得られる。欠陥蛍石型構造をとるための4価の金属イオンは、上記式(1)に示すように、ハフニウム(Hf)イオン、ジルコニウム(Zr)イオンが好適である。ハフニウムイオンとジルコニウムイオンはそれぞれ単独で配合してもよく、ハフニウムイオンとジルコニウムイオンを任意の割合で組み合わせて配合してもよい。組み合わせる場合、例えば、Hf:Zrのモル比をx:100-xとした場合、xは10、20、30、40、50、60、70、80、90のいずれかの値以上としてよく、また、xは10、20、30、40、50、60、70、80、90のいずれかの値以下としてよい。
本発明に係る磁気光学材料は、このように大きなベルデ定数を有するテルビウムにハフニウム、ジルコニウムを組み合わせて欠陥蛍石型構造を有する複合酸化物を主成分として含むことで、波長1064nmでのベルデ定数を0.26min/(Oe・cm)以上とし得るものである。
また、本発明に係る磁気光学材料は、光路長10mm当たりの波長1064nmでの光透過における直線透過率を95%以上にし得るものである。なお、本発明において、「直線透過率」とは、測定光路中にサンプルを置かずにブランク(空間)状態で測定した光強度を100%とし、測定光路中に反射防止膜を成膜した磁気光学材料を置いた状態で測定した透過光強度の割合を意味する。
上記式(1)で表される複合酸化物は、欠陥蛍石型構造を有する立方晶が主相となったものが好ましく、欠陥蛍石型構造のみからなるものがより好ましい。なお、「主相となった」とは、結晶構造として欠陥蛍石型構造が全体の90体積%以上、好ましくは95体積%以上を占めることをいう。
上記式(1)は、テルビウムとR(Rはハフニウム及びジルコニウムからなる群から選択された少なくとも1つの元素)とを含むもので構成されているが、更にその他の元素を含有する複合酸化物であってもよい。その他の元素としては、希土類元素であれば、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、ツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)、ディスプロシウム(Dy)が例示でき、様々な不純物群として、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、リン(P)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等が典型的に例示できる。
その他の元素の含有量は、テルビウムの全量を100質量部としたとき、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましく、0.001質量部以下であることが特に好ましい。
本発明の磁気光学材料は、上記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含有するものであり、よって、上記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含有していればよく、その他の成分を副成分として意図的に又は不可避的に含有していてもよい。
本明細書において「主成分として含有する」とは、磁気光学材料中に上記式(1)で表される複合酸化物を50質量%以上含有することを意味する。上記式(1)で表される複合酸化物の含有量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましい。
その他の副成分(主成分以外の成分)としては、一般的な例示として、発光を目的としたセリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の賦活剤や、セラミックス製造の際に焼結を安定化させたり、促進または抑制させたりする目的で添加される焼結助剤(例えば、シリコン(Si)の酸化物やマグネシウム(Mg)の酸化物、アルミニウム(Al)の酸化物、イットリウム(Y)の酸化物)などがある。
上記式(1)で表される複合酸化物の結晶構造は、上述した通り、欠陥蛍石型構造であり、その空間群はFm-3mであるが、実際にこの複合酸化物の結晶を得るには、融点が2000℃を超えると見積もられるため、融液からの単結晶育成法では極めて困難である。よって、上記式(1)で表される複合酸化物はセラミックス製造法により得ることが好ましい。また、実際に得られる結晶が透光性を発現するためには、所定の結晶構造を有するとともに、セラミックス内部の気泡や異相などの散乱源を十分に取り除く必要もある。セラミックス製造法により透明セラミックスとして上記式(1)で表される複合酸化物を含む磁気光学材料の製造方法の一例を次に示す。
[2.磁気光学材料の製造方法]
本発明に係る磁気光学材料の製造方法は、その一実施形態として、原料粉末を所定形状に成形する工程と、成形体を脱脂する工程と、脱脂した成形体を焼結する工程とを含む。これにより、相対密度が最低でも95%以上に級密化した焼結体を得る。また、本製造方法は、必要により、焼結体を熱間等方圧プレス(HIP)処理する工程を更に含んでもよい。原料粉末および各工程について、以下に説明する。
[原料粉末]
原料粉末を調製するために用いる原材料としては、本発明の磁気光学材料の構成元素であるテルビウム及びR(Rはハフニウム及びジルコニウムからなる群から選択された少なくとも1つの元素)のそれぞれの金属粉末、酸化物粉末、又は硝酸、硫酸もしくは尿酸等の水溶液などが好適に利用できる。なお、原材料の純度は99.9質量%以上が好ましい。
これら原材料を用いてテルビウム及びRをそれぞれ所定量秤量し、混合して、混合物を焼成することで、所望の構成の立方晶欠損蛍石型酸化物の焼成原料を得ることができる。このときの焼成温度は、1100℃以上が好ましく、1300℃以上がより好ましい。なお、焼成温度の上限は、この後に行われる焼結温度よりも低い温度が好ましい。そして、得られた焼成原料を粉砕して原料粉末とする。
原料粉末の形状については特に限定されず、例えば、角状、球状、板状の粉末が好適に利用できるし、二次凝集している粉末であっても好適に利用でき、例えば、スプレードライ処理等の造粒処理によって造粒された顆粒状であっても好適に利用できる。顆粒状原料粉末の平均粒径は、例えば、500μm以下にすることが好ましく、100μm以下にすることがより好ましく、50μm以下にすることが更に好ましい。原料粉末の調製については上記に特に限定されず、例えば、共沈法、粉砕法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、アルコキシド加水分解法、錯体重合法その他あらゆる合成方法で作製された原料粉末が好適に利用できる。また、得られた原料粉末を適宜、湿式ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、乾式ジェットミル、ハンマーミル等によって処理してもよい。更に、上記のように焼成原料を粉砕して原料粉末としてもよいし、先に粉末状にしてから焼成して原料粉末を得てもよい。
本発明で用いる欠損蛍石型酸化物の原料粉末には、適宜、上述した賦活剤や、焼結助剤を添加してもよい。特に高い透明性を得るためには、当該酸化物に見合った焼結助剤を添加することが好ましい。賦活剤、焼結助剤の純度はいずれも99.9質量%以上が好ましい。なお、焼結助剤を添加しない場合には、使用する原料粉末についてその一次粒子の粒径がナノオーダーのサイズのものや、形状が球形または立方体に近いものを選定するとよい。粒径が細かく、異方性が小さい粒子であれば、焼結性がよく、成形密度が高くなるため、透光性の高い複合酸化物が得られやすくなるため好ましい。一次粒子の平均粒径は、例えば、1000nm以下にすることが好ましく、500nm以下にすることがより好ましい。
更に、製造工程での品質安定性や歩留り向上の目的で、各種の有機添加剤が添加される場合がある。本発明においては、これらについても特に限定されない。すなわち、各種の分散剤、結合剤、潤滑剤、可塑剤等が好適に利用できる。
[成形工程]
本発明の製造方法においては、セラミックス製造における通常のプレス成形工程を好適に利用できる。即ち、ごく一般的な、原料粉末を型に充填して一定方向から加圧するプレス工程や、変形可能な防水容器に密閉収納して静水圧で加圧する冷間静水圧プレス(Cold Isostatic Pressing。以下、CIPと略す)工程が利用できる。なお、印加圧力は、得られる成形体の相対密度を確認しながら適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば市販のCIP装置で対応可能な300MPa以下程度の圧力範囲で管理すると製造コストが抑えられてよい。
あるいはまた、成形時に成形工程のみでなく一気に焼結まで実施してしまうホットプレス工程や、放電プラズマ焼結工程、マイクロ波加熱工程なども好適に利用できる。更に、プレス成形法ではなく、鋳込み成形法による成形体の作製も可能である。加圧鋳込み成形や、遠心鋳込み成形、押出し成形等の成形法も、出発原料である酸化物粉末の形状やサイズと各種の有機添加剤との組合せを最適化することで採用可能である。
[脱脂工程]
本発明の製造方法においては、セラミックス製造における通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解消去できる温度まで昇温することが好ましい。
[焼結工程]
本発明の製造方法においては、セラミックス製造における一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス、酸素ガス、水素ガス等が好適に利用できる。また、減圧下(真空中)で焼結してもよい。
焼結工程における焼結温度は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には選択された出発原料を用いて、製造しようとするテルビウム含有欠陥蛍石型酸化物焼結体の融点よりも数十℃から100℃乃至は200℃程度、低温側の温度が好適に選定される。また、選定される温度の近傍に立方晶以外の相に相変化する温度帯が存在するテルビウム含有欠陥蛍石型酸化物焼結体を製造しようとする際には、厳密にその温度帯を外した条件となるよう管理して焼結すると、立方晶以外の相の混入を抑制でき、複屈折性の散乱を低減できるメリットがある。
焼結工程における焼結保持時間は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には数時間程度で十分な場合が多い。ただし、テルビウム含有欠陥蛍石型酸化物焼結体の相対密度は最低でも95%以上に緻密化されていなければならない。
[熱間等方圧プレス(HIP)処理工程]
本発明の製造方法においては、焼結工程を経た後に更に追加で、熱間等方圧プレス(Hot Isostatic Pressing。以下、HIPと略す)処理を行う工程を設けてもよい。なお、このときの加圧ガス媒体の種類としては、アルゴン、窒素等の不活性ガスが好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50~300MPaが好ましく、100~300MPaがより好ましい。圧力50MPa未満では透明性の改善効果が得られない場合がある。また、300MPa超に圧力を増加させても、それ以上の透明性改善が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は、市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。
HIPの処理温度(保持温度)は、材料の種類及び/又は焼結状態により適宜設定すればよく、例えば1000~2000℃、好ましくは1300~1800℃の範囲で設定される。このとき、焼結工程の場合と同様に、焼結体を構成するテルビウム含有欠陥蛍石型酸化物の融点以下及び/又は相転移点以下とすることが必須であり、熱処理温度が2000℃超では本発明で想定しているテルビウム含有欠陥蛍石型酸化物焼結体が融点を超えてしまい、適正なHIP処理を行うことが困難となる。また、処理温度が1000℃未満では、焼結体の透明性の改善効果が得られない。なお、HIP処理の保持時間については特に制限されないが、焼結体を構成するテルビウム含有欠陥蛍石型酸化物の特性を見極めながら適宜調整するとよい。
HIP処理に用いるヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、ヒーター材としては、例えば、グラファイト、モリブデン(Mo)、タングステン(W)が好適に利用できる。
なお、テルビウムを含む金属酸化物は、テルビウム4価イオンが存在することによる茶色を呈することがしばしばある。このような茶色着色は還元雰囲気、例えば水素下で、アニーリングすることで無色にすることができる。このようなアニーリングによる色調整は適宜なされてよい。
[光学研磨]
本発明の製造方法においては、上記一連の製造工程を経たテルビウム含有欠陥蛍石型酸化物焼結体(即ち、透明セラミックス)について、その光学的に利用する軸上にある両端面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度は、測定波長λ=633nmの場合、λ/8以下が好ましく、λ/10以下が特に好ましい。なお、光学研磨された面に適宜、反射防止膜を成膜することで光学損失をさらに低減させることも可能である。
以上の製造方法によって、欠陥蛍石型構造を有し、空間群がFm-3mである上記式(1)で表される複合酸化物の結晶が得られ、且つ内部の気泡や異相などの散乱源がなく緻密であることから、波長1064nmでのベルデ定数が0.26min/(Oe・cm)以上の光学磁気材料を得ることができる。このような磁気光学材料は、磁気光学デバイス用途に好適である。
[3.磁気光学デバイス]
次に、本発明に係る磁気光学デバイスの一実施形態について説明する。本発明に係る磁気光学デバイスは、上記の磁気光学材料を用いて構成されるものであり、特に波長0.9~1.1μmの光アイソレータのファラデー回転子として好適に使用される。
図1は、本発明の磁気光学材料からなるファラデー回転子を光学素子として備える磁気光学デバイスである光アイソレータの一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、光アイソレータ100は、その筐体102の内部に、上記の磁気光学材料からなるファラデー回転子110と、偏光材料からなる偏光子120及び検光子130とを備える。これらは、ファラデー回転子の光学軸104に沿って、偏光子120、ファラデー回転子110、検光子130の順序で配置されている。偏光子120の偏光振動面と検光子130の偏光振動面は、相対角度が45°になるよう配置される。また、光アイソレータ100は、筐体102内のファラデー回転子110の周囲に、ファラデー回転子110に磁界を印加するための磁石140を備える。
このような光アイソレータ100は産業用ファイバーレーザー装置(図示省略)に好適に利用できる。レーザー光源から発したレーザー光の反射光が光源に戻り、発振が不安定になるのを光アイソレータによって防止することができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
上記式(1)で表される複合酸化物において、Rがハフニウム100%、ハフニウム対ジルコニウムのモル比が80対20、50対50、20対80、ジルコニウム100%とした磁気光学材料(実施例1-1から1-5)について説明する。
[磁気光学材料のサンプルの作製]
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、中国製の酸化ハフニウム粉末、及び第一稀元素化学工業(株)製の酸化ジルコニウム粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。上記原料を用いて、表1のような最終組成となる混合比率の計5種類の混合酸化物原料を作製した。即ち、テルビウムのモル数と、ハフニウム、ジルコニウムのモル数比とがTb:Hf:Zr=2.0:1.0:0、2.0:0.8:0.2、2.0:0.5:0.5、2.0:0.2:0.8および2.0:0:1.0となるように秤量した混合粉末をそれぞれ用意した。続いて、それぞれ互いの混入を防止するよう注意しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
続いて、これらの顆粒状原料をイリジウムるつぼに入れ、高温マッフル炉にて1300℃にて保持時間3時間で焼成処理し、それぞれの組成での焼成原料を得た。
こうして得られた焼成原料につき、それぞれ一軸プレス成形、198MPaの圧力での冷間静水圧プレス処理を施してCIP成形体を得た。得られたCIP成形体をマッフル炉中で1000℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて、この脱脂した成形体を真空加熱炉に仕込み、2.0×10-3Pa以下の減圧下、1580℃±20℃で3時間処理して計5種の焼結体を得た。このとき、すべてのサンプルの焼結相対密度が95%以上になるように焼結温度を微調整した。
そして、得られた各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar中、200MPa、1650℃、3時間の条件でHIP処理した。
こうして得られたセラミックス焼成体を、(株)リガク製粉末X線回折装置(Smart Lab)を用いてOut-of-plane XRD法によりX線回折パターンを測定した。また、X線回折パターンから空間群を決定した。一例として、実施例1-1のセラミックス焼結体(TbHfO)のX線回折パターンの実験値、及び空間群Fm-3m、格子定数a=5.27Åとした場合のX線回折パターンの計算値を図2に示す。
各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ1cmになるように研削及び研磨処理し、次いで、それぞれのサンプルの光学両端面を光学面精度λ/8(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。
上記光学研磨したサンプルについて中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜をコートした。ここで得られたサンプルの光学外観をチェックした。その結果を表1に示す。
[直線透過率の測定]
直線透過率は、NKT Photonics社製の光源、並びにGentec社製のパワーメータ及びGeフォトデイテクタを用いて内製した光学系を用いて、波長1064nmの光を、ビーム径を1~3mmφでの大きさで透過させたときの光の強度により測定し、以下の式に基づき、JIS K7361及びJIS K7136に準拠して求めた。その結果を表1に示す。
直線透過率(%/cm)=I/I×100
(式中、Iは透過光強度(長さ1cmの試料を直線透過した光の強度)、Iは入射光強度を示す。)
[直線透過率の測定]
図1に示す光アイソレータにおいて、外径32mm、内径6mm、長さ40mmのネオジム-鉄-ボロン磁石の中心に、得られた各セラミックスサンプルをファラデー回転子として挿入し、その両端に偏光子、検光子として偏光素子をセットし、IPGフォトニクスジャパン(株)製ハイパワーレーザー(ビーム径1.6mm)を用いて、両端面から、波長1064nmのハイパワーレーザー光線を入射して、ベルデ定数を測定した。
ベルデ定数Vは、以下の式に基づいて求めた。なお、サンプルに印加される磁界の大きさ(H)は、上記測定系の寸法、残留磁束密度(Br)及び保持力(Hc)からシミュレーションにより算出した値を用いた。その結果を表1に示す。
θ=V×H×L
(式中、θはファラデー回転角(min)、Vはベルデ定数、Hは磁界の大きさ(Oe)、Lはファラデー回転子の長さ(この場合、1cm)である。)
なお、比較のため、参考例1-1から1-3の直線透過率およびベルデ定数を表1に併記した。参考例1-1のTb1.86HfO4.79は特開2016-169115号公報(特許文献5)を参照した。また、参考例1-2のTGG結晶(TbGa12)及び参考例1-3のTSAG結晶((Tb(1-x)Sc)ScAl12)は特開2011-213552号公報(特許文献1)を参照した文献値である。
Figure 2022019246000002
表1に示すように、実施例1-1から1-5ではいずれも透明なセラミックスが得られた。参考例1-1は混晶であり、試料長さ1cmにおける直線透過率は25%であったのに対し、実施例1-1から1-5では、いずれのX線回析パターンも空間群Fm-3mに帰属されるパターンであり、異相ピークは観測されなかった。また、実施例1-1から1-5の試料長さ1cmにおける直線透過率は95%以上であった。更に、参考例1-2であるTGG結晶および参考例1-3であるTSAG結晶のベルデ定数はそれぞれ0.14min/(Oe・cm)および0.18min/(Oe・cm)であるのに対し、実施例1-1から1-5のベルデ定数は0.26min/(Oe・cm)以上だった。即ち、本実施例によれば、TGG結晶やTSAG結晶よりもベルデ定数が大きい磁気光学材料を作製できることが確認された。
なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
100 光アイソレータ
102 筐体
104 光学軸
110 ファラデー回転子
120 偏光子
130 検光子
140 磁石

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含むセラミックスからなる磁気光学材料であって、上記複合酸化物の結晶構造の空間群がFm-3mである磁気光学材料。
    TbRO (1)
    (式中、Rはハフニウム及びジルコニウムからなる群から選択された少なくとも1つの元素である。)
  2. 波長1064nmでのベルデ定数が0.26min/(Oe・cm)以上である請求項1記載の磁気光学材料。
  3. 光路長1cm当たりの波長1064nmの光の直線透過率が95%以上である請求項1又は2記載の磁気光学材料。
  4. 請求項1~3のいずれか1項記載の磁気光学材料を用いて構成される磁気光学デバイス。
  5. 上記磁気光学材料をファラデー回転子として備え、上記ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである請求項4記載の磁気光学デバイス。
  6. 上記ファラデー回転子は、その光学面に反射防止膜を備える請求項5記載の磁気光学デバイス。
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