JP2023124810A - R-t-b系焼結磁石 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023124810000001
【課題】Gaを添加したR-T-B系焼結磁石として、高い保磁力を有するとともに、高い残留磁束密度および角形性も同時に備えたものを提供する。
【解決手段】希土類元素Rと、FeまたはFeの一部をCoで置換したものよりなる金属元素Tと、Bと、Gaとを含有し、R14B相、R17相、R相の合計に占めるR14B相およびR17相の存在割合を、%を単位として、それぞれ{R14B}および{R17}とし、質量%を単位としたGaの含有量を、[Ga]として、0.05≦[Ga]/{R17}≦0.20、かつ{R14B}≧94.0である、R-T-B系焼結磁石とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、R-T-B系焼結磁石に関し、さらに詳しくは、Gaが添加されたR-T-B系焼結磁石に関するものである。
高い磁気特性を有する希土類磁石の1種として、R-T-B系焼結磁石が用いられている(Rは希土類元素、TはFeまたはFeの一部をCoで置換したもの)。R-T-B系焼結磁石において、保磁力を向上させる手段の1つとして、Gaが添加される場合がある。Gaの添加により、粒界相中に、R13Gaなる物質が生成し、保磁力の向上に寄与する。また、R-T-B系焼結磁石の保磁力を向上させる一般的な手段として、希土類元素Rの一部をTbやDy等の重希土類元素に置換する方法もある。さらに、TbやDy等の重希土類元素を粒界拡散(GBD:Grain Boundary Diffusion)処理によって行うことで、保磁力向上に高い効果が得られる。例えば、下記の特許文献1に、R-T-B系永久磁石にGaを添加するとともに、GBD処理によってTbを添加した例が開示されている。
特開2019-102708号公報
上記のように、R-T-B系焼結磁石において、Gaを添加すると、保磁力の向上を達成することができるが、従来、Gaを添加したR-T-B系焼結磁石においては、残留磁束密度や角形性(減磁曲線の角形性)は、低い水準に留まっていた。一方、Tb等の重希土類の添加も、保磁力の向上には高い効果を示すが、残留磁束密度や角形性の向上にはそれほど高い効果を示さないうえ、さらに、重希土類元素の添加をGBD処理によって行う場合には、重希土類元素を含む化合物を塗布して900℃以上で数時間以上加熱する工程が追加されるため、コスト増になる。
R-T-B系焼結磁石は、本来的に、高い残留磁束密度や角形性を示すものであり、Gaの添加による保磁力の向上を適切に実施すれば、重希土類を使用する場合のGBD処理のようなコスト増となる工程を避けながら、Ga添加の効果による高保磁力化の効果と、R-T-B系焼結磁石が本来有する残留磁束密度や角形性の高さとを両立できる可能性がある。そこで、本発明においては、Gaを添加したR-T-B系焼結磁石として、高い保磁力を有するとともに、高い残留磁束密度および角形性も同時に備えたものを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明にかかるR-T-B系焼結磁石は、以下の構成を有する。
[1]本発明のR-T-B系焼結磁石は、希土類元素Rと、FeまたはFeの一部をCoで置換したものよりなる金属元素Tと、Bと、Gaとを含有し、R14B相、R17相、R相の合計に占めるR14B相およびR17相の存在割合を、%を単位として、それぞれ{R14B}および{R17}とし、質量%を単位としたGaの含有量を、[Ga]として、0.05≦[Ga]/{R17}≦0.20、かつ{R14B}≧94.0である。
[2]上記[1]の態様において、前記希土類元素Rは、TbおよびDyの少なくとも一方を含むとよい。
[3]上記[1]または[2]の態様において、前記{R14B}および{R17}の値は、前記R-T-B系焼結磁石におけるR,T,Bの含有量比より見積もられるものであるとよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つの態様において、前記R-T-B系焼結磁石において、保磁力が19.5kOe以上、残留磁束密度が13.9kG以上、角形性が88%以上であるとよい。
[5]上記[1]から[4]のいずれか1つの態様において、前記R-T-B系焼結磁石は、重希土類元素の粒界拡散処理を経ずに製造されてもよい。
[6]上記[1]から[5]のいずれか1つの態様において、炭素の含有量が500ppm以下であるとよい。
[1]上記発明にかかるR-T-B系焼結磁石においては、Gaの含有量が、R17相の存在割合との比率で、0.05≦[Ga]/{R17}≦0.20の範囲に規定されている。Gaは、粒界相において、R17と反応してR13Gaを形成することで、保磁力の向上に寄与する。R17はソフト磁性を有し、粒界に存在すると保磁力の低下要因となる。したがって、R17からR13Gaを形成するのに十分なGaが存在すれば、高い保磁力向上効果が得られる。[Ga]/{R17}が0.05より低いと残留するR17によって保磁力が低下する。さらに[Ga]/{R17}が0.20より高いと、粒界相の体積比が増加するため、主相の割合が低下し残留磁束密度が低下する。主相を構成するR14B相の存在割合が{R14B}≧94.0となっていることも、高い残留磁束密度および角形性の確保に効果を有する。それらの結果、R-T-B系焼結磁石が、高い保磁力と、高い残留磁束密度および角形性とを同時に備えるものとなる。
[2]希土類元素Rが、TbおよびDyの少なくとも一方を含む場合には、保磁力の向上に高い効果が得られる。TbやDyの添加は、焼結原料への含有によって行えばよいが、さらなる保磁力向上のためにTbやDy等の重希土類を粒界拡散することもできる。
[3]{R14B}および{R17}の値が、R-T-B系焼結磁石におけるR,T,Bの含有量比より見積もられる場合には、R,T,BおよびGaの含有量比を調整し、0.05≦[Ga]/{R17}≦0.20、かつ{R14B}≧94.0となるように成分組成を設定することで、簡便に、高い保磁力と、高い残留磁束密度および角形性を兼ね備えたR-T-B系焼結磁石を設計することができる。R,T,Bの含有量比からの各相の存在割合の見積もりは、Nd-Fe-B三成分系等、R-T-B三成分系状態図を用いて行うことができる。
[4]R-T-B系焼結磁石において、保磁力が19.5kOe以上、残留磁束密度が13.9kG以上、角形性が88%以上である場合には、保磁力、残留磁束密度、角形性のいずれにおいても、R-T-B系焼結磁石として、十分に優れた磁気特性を有するものとなる。本発明にかかるR-T-B系焼結磁石は、[Ga]/{R17}および{R14B}が所定の範囲をとるように成分組成が制御されていることで、保磁力、残留磁束密度、角形性のいずれもが上記の下限以上の値をとる、高い磁気特性を備えたものとなりうる。
[5]R-T-B系焼結磁石が、粒界拡散処理を経ずに製造される場合には、R-T-B系焼結磁石を簡便に製造することができる。本発明にかかるR-T-B系焼結磁石においては、[Ga]/{R17}および{R14B}が所定の範囲をとるように、R,T,BおよびGaの含有量のバランスが制御され、さらに任意にTbやDy等の重希土類元素が添加された成分組成を有することにより、TbやDy等の重希土類元素を粒界拡散処理によって添加する工程を経なくても、保磁力等の磁気特性に優れた焼結磁石となる。
[6]R-T-B系焼結磁石における炭素の含有量が500ppm以下である場合には、保磁力の向上に高い効果が得られる。炭素の含有量は、R-T-B系焼結磁石の焼結に不活性ガス雰囲気を用いることで、効果的に低減することができる。
R-T-B三成分系状態図において、成分組成と各相の存在割合の関係を説明する図である。(a)は状態図全体を示しており、(b)は着目している成分組成が位置する領域Sを拡大して示している。 実施例1~5および比較例1~6について、保磁力と残留磁束密度の測定値を示す図である。
以下に、本発明の一実施形態にかかるR-T-B系焼結磁石(以下単に、焼結磁石と称する場合がある)について、詳細に説明する。本明細書において、各種特性は、室温(23℃)、大気中にて測定される値を指すものとする。
[R-T-B系焼結磁石の概略]
本発明の一実施形態にかかるR-T-B系焼結磁石は、希土類元素Rと、金属元素Tと、B(ホウ素)と、Gaと、を含む磁石材料が焼結されたものよりなる。金属元素Tは、Fe、またはFeの一部をCoで置換したものよりなる。希土類元素Rは、1種のみよりなっても、複数種が含まれてもよい。後に説明するように、希土類元素Rとしては、Nd,Pr等の軽希土類元素に加え、重希土類元素であるTbおよびDyの少なくとも一方を含むことが好ましい。焼結磁石は、不可避的不純物を除いて、R,T,B,Gaのみより構成されても、他の元素を適宜含んでいてもよい。
本実施形態にかかる焼結磁石においては、主にR14Bより構成される主相と、主相結晶粒の間の粒界を占める粒界相とを有している。粒界相は、R17(Nd-Fe-Bの状態図上ではNdFe17)が含んでいる。希土類元素Rのうち、R14B相およびR17相を構成しなかったものは、希土類元素のみ、あるいは希土類リッチな合金よりなるR相を構成している。Gaは、最終的に粒界相に取り込まれ、R17と反応して、NdFe13GaをはじめとするR13Gaなる合金を形成する。
本実施形態にかかる焼結磁石においては、後に詳細に説明するように、R14B相、R17相、R相の3つの相に占めるR17相の存在割合に対して、Gaの含有量が所定の範囲に規定されている。また、R14B相の存在割合が、所定の範囲に規定されている。
[各相の存在割合]
ここで、各相の存在割合の見積もりについて説明する。R14B相、R17相、R相のそれぞれについて、%を単位とした存在割合を{R14B}、{R17}、{R}と表記する。各相の存在割合は、これら3種の相の合計に占める存在割合を示し、3種以外の相が存在していたとしても、考慮しないものとする。これらの存在割合は、Nd-Fe-B三元状態図から算出することができる。
上記各相の存在割合は、電子顕微鏡像等、焼結磁石に形成された各相の占有率を実際に計測した実測結果より見積もることも可能であるが、本件の占有率は、R,T,Bの含有量比より見積もることとする。つまり、R,T,Bそれぞれについて、R14B相、R17相、R相の3相に含まれる含有量の合計し、それら合計量の比率が、焼結磁石全体としてのR,T,Bの含有量比と等しくなるように、3相の存在比率を見積もればよい。この際、Nd-Fe-B三成分系等、R-T-B三成分系状態図を利用すると、簡便に見積もりを行うことができる。なお、見積もりに際し、Gaやその他の金属元素等、R,T,B以外の成分元素(他成分元素)については、除外して原子比を計算する。それら他成分元素が、R14B相、R17相、R相の構成原子の一部を置換している場合や、各相に取り込まれている場合には、それら他成分元素を含んだ相も、R14B相、R17相、R相とみなせばよい。また、焼結磁石に含有されるR,T,Bの各元素が全て、R14B相、R17相、R相のいずれかの相を形成した状態で存在しているものとする。
図1(a)に、R-T-B三成分系状態図を示す。これは例えばNd-Fe-B三成分系状態図に相当する。状態図において、各頂点が、Bのみ、Tのみ、Rのみ(つまりR相)の組成に対応する。また、R14B相およびR17相の成分組成に対応する点を、図中に表示している。本実施形態にかかる焼結磁石は、R14B相、R17相、R相の3相を含んでおり、それら3つの相に対応する点を頂点とする三角形、つまり図中に太線で表示した三角形の領域Sの中に、成分組成を有する。例として、その領域Sの中の点Aで示される成分組成を想定する。点Aは、焼結磁石の組成全体としてのR,T,Bの含有量を、原子数比で表現した座標としてプロットされる。点Aは、領域Sの中であれば、任意の組成に設定することができる。図1(b)に、領域Sを拡大して表示している。
ここで、図1の状態図において、点Aに対応する成分組成におけるR14B相、R17相、R相のそれぞれの存在割合、つまり{R14B}、{R17}、{R}を見積もる。3種の相のうち1つをP相として、そのP相の存在割合は、以下のように表現される。つまり、領域Sの三角形において、P相に対応する頂点Pと点Aを結ぶ直線が、頂点Pに対向する辺と交差する点を点Qとして、直線P-Qの長さ(y)に対する直線A-Qの長さ(x)の割合(x/y)×100%が、P相の存在割合、つまり{P}%となる。例えば、図1(b)中に示すように、点Aの成分組成におけるR17相の存在割合は以下のようになる。つまり、R17の頂点と点Aを結ぶ直線が、R17の頂点と対向する辺、つまりR14Bの頂点とRの頂点とを結ぶ辺と交差する点を点Q1とし、さらに、直線R17-Q1の長さをy1、直線A-Q1の長さをx1とすると、(x1/y1)×100%として得られる値が、R17相の存在割合、つまり{R17}%となる。なお、各層の存在割合は、各相の構成単位、つまりそれぞれR14B、R17、Rとの構成単位の存在数の比率を示すものである。
[R-T-B系焼結磁石の成分組成]
本実施形態にかかる焼結磁石においては、上記のようにして求められた各相の存在割合、および質量%を単位としたGaの含有量[Ga]が、以下の式(1)および式(2)をともに満たしている。
0.05≦[Ga]/{R17}≦0.20 (1)
{R14B}≧94.0 (2)
式(1)は、R17相の存在割合に対する、Gaの添加量の比率を示すものであり、その値が大きいほど、R17相に対して、多くのGaが含有されることになる。つまり、R17相のうち、Gaと反応するものの割合が増えることになる。R17とGaが反応すると、NdFe13Ga等、R13Gaなる物質が生じる。R13Gaは非磁性であり、粒界相に形成されることで、主相結晶粒の磁化反転を抑制し、焼結磁石の保磁力を向上させる。一方で、R13Gaは、残留磁束密度を低下させるものとなる。
[Ga]/{R17}の値が、0.05以上かつ0.20以下の範囲に収まっていることで、焼結磁石が、高い保磁力と、高い残留磁束密度および角形性を兼ね備えるものとなる。[Ga]/{R17}が0.05より低いと残留するR17によって保磁力が低下する。一方、[Ga]/{R17}が0.20より高いと、粒界相の体積比が増加するため、主相の割合が低下し残留磁束密度が低下する。好ましくは、[Ga]/{R17}は、0.07以上、さらに0.08以上であるとよく、また0.15以下、さらに0.12以下であるとよい。
17相の存在割合とGaの含有量の比率である[Ga]/{R17}が、上記式(1)の範囲を満たしていれば、Gaの含有量[Ga]自体、またR17相の存在割合{R17}自体の値は、特に限定されるものではない。しかし、Gaの含有量が0.21質量%以上、さらには0.23質量%以上であり、また0.35質量%以下、さらには0.29質量%以下であれば、式(1)の範囲を満たしやすい。一方、R17相の存在割合は、2.4%以上、さらには2.6%以上であり、また3.9%以下、さらには3.3%以下であれば、式(1)の範囲を満たしやすい。なお、式(1)を成立させる観点、またGaと反応しうるR17相を確保する観点から、R17相の存在割合がゼロである場合は除かれる。
式(2)は、主相を構成する物質であるR14Bの存在割合が94.0%以上であり、十分な量で存在することを示している。これにより、R14Bより構成される主相を有したR-T-B系焼結磁石が本来的に有する、高い残留磁束密度や角形性が、Gaの添加を経ても、十分に維持されることになる。好ましくは、R14Bの存在割合は、94.2%以上、さらには94.5%以上であるとよい。R14Bの存在割合に特に上限は設定されないが、R17相を十分に確保する等の観点から、97.0%以下、さらには96.0%以下であるとよい。
本実施形態にかかる焼結磁石の成分組成は、上記の式(1)および式(2)を満たすかぎりにおいて、特に限定されるものではない。希土類元素Rについても、特に限定されるものではなく、Nd,Pr,Dy,Tb,La,Ce等を例示することができる。希土類元素Rは、保磁力向上等の観点から、重希土類元素、特にTbおよびDyの少なくとも一方を含有することが好ましい。希土類元素Rに含まれる重希土類元素が全てTbであると、特に好ましい。保磁力向上の効果を特に高く得る観点から、焼結磁石における重希土類元素の含有量、またTbの含有量は、0.4質量%以上、さらには0.5質量%以上、0.8質量%以上であるとよい。一方、材料コストの抑制等の観点から、それらの含有量は、2.0質量%以下であるとよい。希土類元素Rに含まれる軽希土類元素としては、NdおよびPr、特にNdを好適に用いることができる。
また、本実施形態にかかる焼結磁石は、R,T,B,Ga以外の成分元素を含有してもよい。R,T,B,Ga以外の成分元素としては、Al,Cu,Zr等を挙げることができる。
焼結磁石の成分組成の一例として、以下の各元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるものを挙げることができる。ここで、各成分元素の含有量は、質量%を単位として表示している。
・28%≦TRE≦32%(TREは、全希土類元素Rの合計含有量を示す)
・0.4%≦HRE≦2.0%(HREは重希土類元素の含有量を示す。特にHREがTbであるとよい)
・0%≦Co≦1.0%
・0.8%≦B≦1.0%、より好ましくは0.91%≦B≦0.98%
・0.21%≦Ga≦0.35%
・0%≦Al≦0.3%
・0%≦Cu≦0.1%
・0%≦Zr≦0.2%
ここで、Co,Al,Cu,Zrについては、それぞれ、含有されない形態も含むものとする。また、HREは含有されなくてもよい。原料合金の粉末を焼結して焼結磁石を製造する場合に、原料合金中における上記各成分元素の含有量比は、焼結を経ても実質的に変化しない。
本実施形態にかかる焼結磁石は、不可避的不純物として、炭素(C)を含む場合があるが、炭素の含有量は、500ppm以下であることが好ましい。炭素含有量を低減することで、焼結磁石の保磁力を効果的に高めることができる。これは、希土類元素が粒界での炭化物の形成に費やされにくくなるためと考えられる。焼結磁石における炭素の含有量を低減するためには、例えば、後述するように、焼結に不活性ガス雰囲気を用いればよい。なお、焼結磁石には、炭素に加えて、酸素(O)および窒素(N)も不可避的不純物として含有されうるが、それらの元素は、炭素と比較すると、保磁力への影響は小さい。ただし、酸素の含有量を800ppm以下、Nの含有量を200ppm以下に抑えておくことが好ましい。
[R-T-B系焼結磁石の製造方法]
本実施形態にかかる焼結磁石は、各成分元素を所定の比率で含有する原料合金を粉砕したうえで焼結することで、製造することができる。所定の成分組成を有する合金塊を例えばストリップキャスト法にて作製し、好ましくは、水素ガスに接触させて水素分子を吸蔵させ、合金塊を脆化させたうえで、機械的に粉砕すればよい。そして、得られた磁石粉末を所定の形状に成形して、焼結を行えばよい。焼結時の温度としては、980℃以上、1020℃以下の範囲を例示することができる。
焼結時の雰囲気は特に限定されるものではなく、例えば、不活性ガス雰囲気中、あるいは真空中で焼結を行えばよい。しかし、焼結磁石における炭素含有量を低減するためには、Arガス等の不活性ガス雰囲気を用いることが好ましい。粉砕後の磁石材料には水素分子が残存しており、焼結に伴って、その水素分子が、磁石材料中に不純物として存在する炭素原子と反応してガス化し、磁石粉末から炭素が除去されるが、不活性ガス雰囲気下で加熱を行うことで、この水素分子との反応に伴う炭素の除去が進行しやすいからである。不活性ガスが存在することで、焼結を真空中で行う場合と比較して、水素分子が磁石粉末から脱離しにくくなり、炭素原子との反応に寄与しやすくなるものと考えられる。成形した磁石粉末を焼結温度まで昇温する間の所定の温度(例えば450℃)までは不活性ガス雰囲気とし、その後、真空雰囲気中で焼結温度まで昇温し、焼結を進めることが好ましい。途中で真空雰囲気に変更することで、水素分子と炭素が反応することで生成されるガスを、効果的に除去することができる。
得られた焼結体に対しては、適宜、時効処理を施すことが好ましい。時効温度としては、460℃以上、540℃以下の範囲を例示することができる。
[R-T-B系焼結磁石の特性]
本実施形態にかかる焼結磁石は、上記式(1)および式(2)を満たすことにより、高い保磁力と、高い残留磁束密度および角形性を同時に備えるものとなる。保磁力(Hcj)としては、15.0kOeを超える値が得られる。Cの含有量を500ppm以下に低減すれば、18.5kOe以上の保磁力を得ることができる。また、重希土類の添加等により、19.5kOe以上を得ることもできる。さらに、20.5kOe以上、また21.0kOe以上を得ることもできる。残留磁束密度(Br)としては、13.9kG以上を得ることができる。さらに、14.0kG以上、また14.1kG以上を得ることができる。角形性(SQ)としては、88%以上を得ることができる。さらに、92%以上、また94%以上を得ることもできる。ここで、角形性の値については、減磁曲線において、磁束密度Bの値が残留磁束密度Brの90%となる時の磁場Hの値をHk90とし、保磁力をHcjとして、Hk90/Hcjの値が角形性となる。
本実施形態にかかる焼結磁石は、R,T,B,Gaの含有量のバランス、特にGaの含有量が適切に設定されていることにより、高い保磁力と、高い残留磁束密度および角形性の各特性を、同時に兼ね備えるものとなっている。焼結磁石全体としての成分組成に基づき、それら高い磁気特性を兼ね備えた焼結磁石を簡便に設計することができる。つまり、R-T-B三成分系状態図を利用することなどにより、式(1)および式(2)を満たすように、R,T,B,Gaの含有量比を設定すればよい。
また、本実施形態にかかる焼結磁石においては、R,T,B,Gaの含有量のバランスの効果により、保磁力、残留磁束密度、角形性に優れたものとなるので、保磁力等、磁気特性の向上を目的として、Tbをはじめとする重希土類等、特定の成分の粒界拡散(GBD)のように、コスト増となる工程を製造時に経なくてもよい。上記のとおり、各成分元素を所定の比率で含有する原料合金を粉砕したうえで焼結することで、本実施形態にかかる焼結磁石を製造することができるが、Tb等の重希土類元素を添加する場合には、それらの重希土類元素も原料合金中に、他の成分とともに含有させておけばよい。ただし重希土類の添加を、GBD処理によって行ってもよく、その場合には、保磁力向上等、重希土類添加による効果を高めやすくなる。
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
<1>成分組成と磁気特性の関係
まず、Tbを含む焼結磁石を例として、焼結磁石の成分組成と磁気特性との関係を検証した。
[試料の作製]
下の表1に示すとおり、実施例1~5および比較例1~6のそれぞれの成分組成を有する原料合金を準備した。原料合金を水素ガスに接触させて水素分子を吸蔵させ、原料合金を脆化させた後に、粉末状に粉砕した。得られた磁石粉末を、980~1020℃にて焼結した。この際、室温から焼結温度まで昇温する間、450℃まではArガス雰囲気とし、その後は真空中にて昇温と焼結を行った。得られた焼結体を、800℃にて30分保持後急冷し、460~540℃にて30分保持後急冷の時効処理を行った。
[磁気特性の評価]
上記で得られた各試料について、磁化曲線の測定を行った。測定は、パルス励磁型磁気特性測定装置を用いて行った。そして、保磁力Hcjおよび残留磁束密度Brの値を記録した。また、減磁曲線の形状から、角形性SQを評価した。ここで、減磁曲線において、磁束密度の値が残留磁束密度Brの90%となる時の磁場Hの値をHk90とし、保磁力をHcjとして、角形性SQは、Hk90/Hcj×100%として求められる。
[試験結果]
実施例1~5および比較例1~6の各試料について、表1に原料合金の成分組成を示す。ここで、成分組成は、作製した各焼結磁石について、分析を行って得たものである。表中の単位は、C,O,N以外については質量%であり、C,O,Nについてはppmである。C,O,Nの含有量については、一部の試料についてのみ分析を行っており、それら以外の試料については、各元素の欄に「-」を表示し、「残部」の欄の不可避的不純物とみなしている。
また、表2に、各相の存在割合{R14B}、{R17}、{R}、Gaの含有量[Ga]、および[Ga]/{R17}の値とともに、磁気測定の結果(Br、Hcj、SQ)を示す。ここで、各相の存在割合は、上で図1を参照して説明したとおり、R,T,Bの含有量比に基づいて、Nd-Fe-B三成分系状態図から見積もったものである。
さらに、図2に、各試料について得られた、HcjおよびBrの値をプロットしている。丸印は実施例を示し、三角印は比較例を示している。各プロット点の近傍に表示した数字は、実施例番号および比較例番号を示している。表中には、太線にて、Hcj≧19.5kOe、かつBr≧13.9kGとなる範囲を表示している。
Figure 2023124810000002
Figure 2023124810000003
表1,2および図2によると、式(1)の0.05≦[Ga]/{R17}≦0.20と、式(2)の{R14B}≧94.0をともに満たしている実施例1~5においては、Hcj≧19.5kOeの高保磁力と、Br≧13.9kGの高残留磁束密度が得られている。また、角形性も、SQ≧88%となっている。
比較例1~6は、式(1)と式(2)のいずれか一方を満たさないことに対応して、Hcj≧19.5kOe、Br≧13.9kG、SQ≧88%の少なくとも1つの特性が得られていない。比較例1,2,4~6は、式(1)の関係を満たしていない。比較例1ではGaが含有されず、比較例6ではGaが含有されているものの、その含有量が少なく、[Ga]/{R17}が0.05に満たない。また、比較例2ではGaと反応できるR17相が存在せず、[Ga]/{R17}の値が規定できない。これら比較例1,2,6では、十分な量のR13Gaが粒界相に形成されないことと対応して、Hcj<19.5kOeとなっている。一方、比較例4,5では、R17相に対してGaが過剰に含有されており、[Ga]/{R17}が0.20を超えている。これら比較例4,5では、Gaが過剰に添加されていることにより粒界相の割合が上がり、主相の割合が減少するために、Br<13.9kG、またSQ<88%となっている。
比較例3では、式(2)が満たされず、{R14B}<94.0となっている。この比較例3では、主相を構成するR14Bが十分な量で含有されないことと対応して、Br<13.9kG、またSQ<88%となっている。
以上の試験結果から、R-T-B系焼結磁石にGaを添加し、式(1)および式(2)の関係を満たすように、各成分元素の含有量を設定することで、高い保磁力と、高い残留磁束密度および角形性を兼ね備えたR-T-B系焼結磁石を得られることが分かる。高保磁力は、粒界に十分な量のR13Gaが形成されることで得られ、高残留磁束密度および高角形性は、十分な量のR17相がGaと反応せずに残され、かつR14Bが十分に存在することで得られると解釈される。
<2>重希土類元素の添加および炭素含有量低減の効果
次に、焼結磁石における希土類元素の添加および炭素含有量の低下が、磁気特性にどのような影響を及ぼすのかを確認した。
[試料の作製]
下の表3に示す成分組成を有する実施例6,7の焼結磁石を作製した。実施例6の試料の作製方法は、上に説明した実施例1~5と同様とした。つまり、磁石材料の焼結に際し、Arガス雰囲気中での昇温を行った。一方で、実施例7については、磁石材料の焼結に際し、Arガス雰囲気は用いず、室温から焼結温度まで昇温し、さらに焼結を進める間、常に真空に保持した。
[磁気特性の評価]
試料6,7について、上に説明した実施例1~5と同様の方法で、磁気特性の評価を行った。
[試験結果]
上でも掲載した実施例1と合わせて、実施例6,7について、表3に原料合金の成分組成を示す。また、表4に、各相の存在割合等とともに、磁気測定の結果を示す。表3,4の表示形態は、上の表1,2と同様である。
Figure 2023124810000004
Figure 2023124810000005
実施例1と実施例6の成分組成は、不可避的不純物であるC,N,Oの含有量を除くと、Tbの含有の有無においてのみ相違している。しかし、保磁力Hcj、残留磁束密度Br、角形性SQのいずれの特性も、実施例1の方で高くなっている。特に、保磁力Hcjについては、実施例1において顕著に大きくなっている。このことから、重希土類の添加により、保磁力をはじめとする焼結磁石の磁気特性が向上することが確認される。
実施例6と実施例7は同じ原料合金を用いて作製した試料であるが、実施例6では、焼結時にArガス雰囲気を用いたのに対し、実施例7の試料は焼結を真空中で行って製造されたものである。この製法の差異に対応して、実施例6では炭素含有量が500ppm以下となっているのに対し、実施例7では炭素含有量が500ppmを超えている。そして、実施例6の保磁力Hcjが、実施例7の値に対して約1.2倍に大きくなっている。このことから、焼結時に不活性ガス雰囲気を用いることで、焼結磁石中の炭素含有量を少なく抑えることができ、その結果として、保磁力を向上させられることが確認される。
以上、本発明の実施形態について説明した。本発明は、これらの実施形態に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。

Claims (6)

  1. 希土類元素Rと、FeまたはFeの一部をCoで置換したものよりなる金属元素Tと、Bと、Gaとを含有し、
    14B相、R17相、R相の合計に占めるR14B相およびR17相の存在割合を、%を単位として、それぞれ{R14B}および{R17}とし、
    質量%を単位としたGaの含有量を、[Ga]として、
    0.05≦[Ga]/{R17}≦0.20、かつ
    {R14B}≧94.0である、R-T-B系焼結磁石。
  2. 前記希土類元素Rは、TbおよびDyの少なくとも一方を含む、請求項1に記載のR-T-B系焼結磁石。
  3. 前記{R14B}および{R17}の値は、前記R-T-B系焼結磁石におけるR,T,Bの含有量比より見積もられるものである、請求項1または請求項2に記載のR-T-B系焼結磁石。
  4. 保磁力が19.5kOe以上、残留磁束密度が13.9kG以上、角形性が88%以上である、請求項1または請求項2に記載のR-T-B系焼結磁石。
  5. 重希土類元素の粒界拡散処理を経ずに製造される、請求項1または請求項2に記載のR-T-B系焼結磁石。
  6. 炭素の含有量が500ppm以下である、請求項1または請求項2に記載のR-T-B系焼結磁石。
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