JP2023117721A - 変性エポキシ樹脂、樹脂組成物、硬化物、電気・電子回路用積層板、及び変性エポキシ樹脂の製造方法 - Google Patents

変性エポキシ樹脂、樹脂組成物、硬化物、電気・電子回路用積層板、及び変性エポキシ樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶剤溶解性、樹脂相溶性及び接着性に優れた変性エポキシ樹脂、この変性エポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物、誘電特性、耐熱性及び難燃性に優れたその硬化物、並びに該樹脂組成物からなる電気・電子回路用積層板を提供する。【解決手段】特定のビスフェノール型エポキシ樹脂であり、エポキシ当量が280~50,000g/eq.である変性エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、溶剤溶解性、樹脂相溶性及び接着性に優れた変性エポキシ樹脂、この変性エポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物、誘電特性、耐熱性及び難燃性に優れたその硬化物、並びに該樹脂組成物からなる電気・電子回路用積層板に関するものである。
エポキシ樹脂は耐熱性、接着性、耐薬品性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、塗料、土木、接着、電気材料用途等の分野で広く使用されている。そして種々の方法で高分子量化することで製膜性が付与される。その高分子量化されたエポキシ樹脂はフェノキシ樹脂と称される。特にビスフェノールA型のフェノキシ樹脂は、主に塗料用ワニスのベース樹脂、フィルム成形用のベース樹脂としてや、エポキシ樹脂ワニスに添加して流動性の調整や硬化物としたときの靭性改良、接着性改良の目的に使用される。また、リン原子や臭素原子を骨格中に有するものは、エポキシ樹脂組成物や熱可塑性樹脂に配合される難燃剤として使用されている。
電気・電子回路用積層板等の電気材料用途となるエポキシ樹脂には、耐熱性等に加えて、溶剤溶解性、樹脂相溶性、接着性及び難燃性も要求される。近年、情報機器の小型化、高性能化が急速に進んでおり、それに伴い、半導体や電子部品の分野で用いられる材料に対し、これまでよりも高い性能が要求され、特に基板の薄型化と高機能化に伴う低誘電特性も求められている。
このような要求に対して、硫黄原子を構造中に導入することで接着性や難燃性を向上させる方法が提案されている。特許文献1には、硫黄原子を構造中に有するビスフェノール化合物と2官能エポキシ樹脂を反応させたフェノキシ樹脂が開示されている。しかし、この方法ではフェノキシ樹脂及びその硬化物に対して優れた接着性や難燃性を付与できるものの、誘電特性は改善されないという問題がある。
一方、フェノキシ樹脂の側鎖に存在する水酸基をアセチル基やベンゾイル基を用いてエステルに変換することで誘電特性を向上させる方法が提案されている。特許文献2では、2官能エポキシ樹脂とジエステル系化合物を反応させて得られたフェノキシ樹脂及びその硬化物が優れた誘電特性を有することを開示するが、耐熱性や難燃性が未だ不十分という問題がある。
特開2017-115055号公報 特開2016-089165号公報
本発明の課題は、溶剤溶解性、樹脂相溶性及び接着性に優れたエポキシ樹脂を提供することである。また、これを含む樹脂組成物を硬化して、誘電特性、耐熱性及び難燃性に優れた硬化物を提供することである。
上記の課題を解決するために、本発明者はエポキシ樹脂について鋭意検討した結果、特定の構造を有するエポキシ樹脂が、溶剤溶解性、樹脂相溶性及び接着性に優れることを見出し、更にこれを含む樹脂組成物を硬化させた硬化物が誘電特性、耐熱性及び難燃性に優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表され、エポキシ当量が280~50,000g/eq.である変性エポキシ樹脂である。
Figure 2023117721000001

式中、Xは2価の基であり、上記式(2)で表される2価の基を少なくとも有する。Yは独立に、水素原子、炭素数2~20のアシル基、又はグリシジル基である。Zは炭素数2~20のアシル基又は水素原子であり、5モル%以上は上記アシル基である。nは繰り返し数の平均値であり、1以上500以下である。Aは-S-、-SO-、-SO-、-S-S-から選ばれる基であり、R~Rは独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基から選ばれる。
また、本発明は上記の変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物である。
上記樹脂組成物は、変性エポキシ樹脂の固形分100質量部に対し、硬化剤を固形分として0.1~100質量部を含むことがよい。
上記樹脂組成物は、上記の変性エポキシ樹脂と、他のエポキシ樹脂及び硬化剤を含み、変性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の固形分の質量比が、99/1~1/99であることができる。
この樹脂組成物は、変性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の固形分の合計100質量部に対し、硬化剤を固形分として0.1~100質量部を含むことがよい。
上記の樹脂組成物に配合される硬化剤としては、アクリル酸エステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物及び活性エステル系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種がある。
また本発明は、上記の樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
更に本発明は、上記の樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板である。
また本発明は、下記一般式(3)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させることを特徴とする請求項1に記載の変性エポキシ樹脂の製造方法である。
Figure 2023117721000002

式中、X、Xは2価の基であり、X及び/又はXは上記式(2)で表される2価の基を含む。Gはグリシジル基である。Qは炭素数2~20のアシル基又は水素原子であり、5モル%以上は上記アシル基である。ここで、一般式(4)で表される化合物は、Qの両者がアシル基である化合物、一方がアシル基である化合物、及び両方が水素原子である化合物から選ばれる2種以上の混合物であってもよい。mは繰り返し数の平均値であり、0以上6以下である。
下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂のアルコール性水酸基当量1モルに対して、下記一般式(6)で表される酸無水物を0.05モル以上2.0モル以下で反応させることを特徴とする請求項1に記載の変性エポキシ樹脂の製造方法である。
Figure 2023117721000003

式中、Xは2価の基であり、上記式(2)で表される2価の基を含む。Lは独立に、水素原子又はグリシジル基である。Tは炭素数2~20のアシル基である。nは繰り返し数の平均値であり、1以上500以下である。
本発明によれば、溶剤溶解性、樹脂相溶性及び接着性に優れた変性エポキシ樹脂を提供することができる。また、この変性エポキシ樹脂を用いた樹脂組成物で、誘電特性及び接着性に優れた硬化物を提供することができる。このため、本発明の変性エポキシ樹脂及び樹脂組成物は、接着剤、塗料、土木用建築材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のフェノキシ樹脂及びそれを含む樹脂組成物は、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D-LSI用インターチップフィル材料、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等に好適に使用することができる。
実施例1の変性エポキシ樹脂のGPCチャートである。 実施例1の変性エポキシ樹脂のIRチャートである。 実施例8の変性エポキシ樹脂のGPCチャートである。 実施例8の変性エポキシ樹脂のIRチャートである。 実施例9の変性エポキシ樹脂のGPCチャートである。 実施例9の変性エポキシ樹脂のIRチャートである。
本発明の変性エポキシ樹脂は一般式(1)で表され、エポキシ当量(g/eq.)が280~50,000であるエポキシ樹脂であり、式(2)で表される構造を有し、更に水酸基中の水素原子の一部又は全部がアシル基(Z)で置換(変性)された構造を有する。
Figure 2023117721000004
エポキシ当量が上記範囲であれば、変性エポキシ樹脂が硬化反応に関与し、架橋構造に組み込まれることが可能である。エポキシ当量は、500~40,000が好ましく、600~30,000がより好ましく、700~20,000が更に好ましい。
フィルム用途では、成膜性が要求されることから、エポキシ当量は、より高いことが望ましく、5,000~50,000、より好ましくは10,000~50,000、更に好ましくは20,000~50,000である。
一方、基材に含浸させて使用する基板用途等では、良好な含浸性等が要求されることから、エポキシ当量は、むしろ低いことが望ましく、280~10,000、より好ましくは280~5,000、更に好ましくは280~3,000である。
本発明の変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は500以上200,000以下が好ましい。ここで、Mwが500より小さいと、誘電特性を向上させる構造の導入が少なくなる恐れがあり好ましくない。Mwが200,000より大きいと相溶性の低下や樹脂の取り扱いが困難となる場合があり好ましくない。また、変性エポキシ樹脂の製膜性を向上させる観点では、Mwは5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上が更に好ましい。相溶性や取り扱い性を向上させる観点から、Mwは、160,000以下がより好ましく、120,000以下が更に好ましく、80,000以下が特に好ましい。基材に含浸させて使用する基板用途等では、Mwは10,000以下、より好ましくは5,000以下であってもよい。
なお、変性エポキシ樹脂のMwは実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。
本発明の変性エポキシ樹脂は、水酸基中の水素原子がアシル基で置換(変性)された構造を有することにより、低極性となり、誘電特性に優れる効果が得られ、低吸湿性や溶剤溶解性、樹脂相溶性が良好になる。また、式(2)で表される硫黄原子含有ジフェニレン構造を有することにより、接着性に優れた効果が得られる。
上記一般式(1)において、Xは独立に上記式(2)で表される硫黄原子含有ジフェニレン基(Xa基)を含む2価の基あることが望ましい。Xは独立に、Xa基と、これ以外の他の2価の基(Xb基)のいずれかであるが、全体として、Xa基を必ず含む。また、Xa基は、X全体のモル数に対して、1モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が特に好ましい。この範囲を外れると接着性及び難燃性が悪化する恐れがある。
これらの基は2官能エポキシ樹脂(ジグリシジルエーテル化合物)から2つのグリシジルオキシ基を除いた残骨格、ジエステル系化合物から2つのエステル構造(アシルオキシ基)を除いた残骨格、2官能フェノール化合物から2つの水酸基を除いた残骨格に由来する。
上記式(2)において、Aは-S-、-SO-、-SO-、-S-S-から選ばれる基である。
上記式(2)におけるR~Rは独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基から選ばれる。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
炭素数1~12のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、t-ペントキシ基、シクロペントキシ基、n-ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、シクロヘキシロキシ基、n-ヘプトキシ基、シクロヘプトキシ基、メチルシクロヘキシロキシ基、n-オクチロキシ基、シクロオクチロキシ基、n-ノニロキシ基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシロキシ基、n-デシロキシ基、シクロデシロキシ基、n-ウンデシロキシ基、n-ドデシロキシ基、シクロドデシロキシ基、ベンジロキシ基、メチルベンジロキシ基、ジメチルベンジロキシ基、トリメチルベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基、フェネチロキシ基、2-フェニルイソプロポキシ基等が挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、エチルフェニル基、スチリル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、エチニルフェニル基、ナフチル基、ビニルナフチル基等が挙げられる。
炭素数2~12のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルビニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シンナミル基、ナフチルビニル基等が挙げられる。
炭素数2~12のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1,3-ブタンジエニル基、フェニルエチニル基、ナフチルエチニル基等が挙げられる。
Xa基としては、4,4’-スルホニルジフェニレン基、4,4’-チオジフェニレン基、4,4’-ジチオジフェニレン基、4,4’-スルフィニルジフェニレン基のいずれかであり、これらのXa基は、未置換であってもよいし、置換基として、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~12のアルケニル基、又は炭素数2~12のアルキニル基を有してもよい。例えば、下記式(2a)~(2n)で表される2価の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの2価の基のうち、式(2a)、式(2b)、式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2g)、式(2i)、式(2j)、式(2k)、式(2m)、式(2n)が好ましく、式(2a)、式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2g)、式(2i)、式(2j)、式(2k)、式(2m)がより好ましい。
Figure 2023117721000005
上記硫黄原子含有ジフェニレン基(Xa基)の由来となる硫黄原子含有ジフェノール化合物、硫黄原子含有ジエステル化合物、又は硫黄原子含有ジエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールS、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペルスルフィド、又はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシドの無置換又は置換基として炭素数1~12の炭化水素基(炭素数1~12アルキル基、炭素数6~12のアリール、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基)もしくは炭素数1~12のアルコキシ基を有する硫黄原子含有ジフェノール化合物や、これら硫黄原子含有ジフェノール化合物をアシル化したジエステル化合物や、これら硫黄原子含有ジフェノール化合物を原料とするジエポキシ化合物が挙げられる。
好ましくは、ビスフェノールS、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペルスルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、4,4’-スルホニルビス(2-メチルフェノール)、4,4’-スルホニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-スルホニルビス(2-アリルフェノール)、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)スルフィド、4,4’-スルフィニルビス(2-メチルフェノール)や、好ましいこれら硫黄原子含有ジフェノール化合物をアシル化したジエステル化合物や、これら硫黄原子含有ジフェノール化合物を原料とするジエポキシ化合物が挙げられる。特に好ましくは、ビスフェノールS、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペルスルフィド、4,4’-スルホニルビス(2-メチルフェノール)、4,4’-スルホニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-スルホニルビス(2-アリルフェノール)、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)スルフィドや、特に好ましいこれら硫黄原子含有ジフェノール化合物をアシル化したジエステル化合物や、これら硫黄原子含有ジフェノール化合物を原料とするジエポキシ化合物が挙げられる。
Xb基としては、例えば、2価の炭化水素基又は炭化水素鎖中に-O-、-CO-、-COO-等の基を有してもよい炭化水素基である。これらの2価の基としては、例えば、芳香族ジオール化合物から水酸基を2個除いた残骨格を表す芳香族骨格(Xb1)、脂肪族ジオール化合物から水酸基を2個除いた残骨格を表す脂肪族骨格(Xb2)、脂環ジオール化合物から水酸基を2個除いた残骨格を表す脂環式骨格(Xb3)、芳香族ジエステル化合物からアシルオキシ基を2個除いた残骨格を表す芳香族骨格(Xb1)、脂肪族ジエステル化合物からアシルオキシ基を2個除いた残骨格を表す脂肪族骨格(Xb2)、脂環ジエステル化合物からアシルオキシ基を2個除いた残骨格を表す脂環式骨格(Xb3)、芳香族ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物からグリシジルオキシ基を2個除いた残骨格を表す芳香族骨格(Xb1)、脂肪族ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物からグリシジルオキシ基を2個除いた残骨格を表す脂肪族骨格(Xb2)、脂環ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物からグリシジルオキシ基を2個除いた残骨格を表す脂環式骨格(Xb3)、シクロアルカジエンのエポキシ化反応により生成したシクロアルカジエポキシ化合物から酸素原子を2個除いた残骨格を表す脂環式骨格(Xb4)が挙げられる。
上記芳香族骨格(Xb1)の由来となる芳香族ジオール化合物、芳香族ジエステル化合物、又は芳香族ジエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールAF、ビスフェノールAD、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールPH,ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン及びビスフェノールシクロヘキサン等の無置換又は炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいビスフェノール型や、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール等の無置換又は炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいジヒドロキシフェニル類等のベンゼン型や、無置換又は炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいジヒドロキシナフタレン類等のナフタレン型や、無置換又は炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいジヒドロキシビフェニル類等のビフェニル型や、ビスフェノールフルオレン及びビスクレゾールフルオレン等の無置換又は炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいビスフェノールフルオレン類やビスナフトールフルオレン類等のフルオレン型や、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-HQ)、10-(2,7-ジヒドロキシナフチル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-NQ)、10-(1,4-ジヒドロキシ-2-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフィニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等の無置換又は炭素原子数1~10のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を置換基として有していてもよいリン含有フェノール型等や、これら芳香族ジオール化合物をアシル化したジエステル化合物や、これら芳香族ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物が挙げられる。
好ましくは、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールAF、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールシクロヘキサン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールフタレイン、フェノールフタレインアニリド及びフルオレセインの無置換体又は炭素原子数1~10のアルキル基置換体や、ジヒドロキシビフェニルの無置換体又は炭素原子数1~10のアルキル基置換体や、ビスフェノールフルオレンの無置換体又は炭素原子数1~10のアルキル基置換体や、ビスナフトールフルオレンの無置換体又は炭素原子数1~10のアルキル基置換体や、DOPO-HQ、DOPO-NQの無置換体又は炭素原子数1~10のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基置換体や、好ましい芳香族ジオール化合物をアシル化したジエステル化合物や、好ましい芳香族ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物である。特に好ましくは、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールAF、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールシクロヘキサン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールフタレインや、ジヒドロキシビフェニルや、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾーフルオレン、ビスナフトールフルオレンや、DOPO-HQ、DOPO-NQや、特に好ましい芳香族ジオール化合物をアシル化したジエステル化合物や、特に好ましい芳香族ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物である。
上記脂肪族骨格(Xb2)の由来となる脂肪族ジオール化合物、脂肪族ジエステル化合物、又は脂肪族ジエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール及びブチレングリコール等のアルキレングリコール骨格等や、これら脂肪族ジオール化合物をアシル化したジエステル化合物や、これら脂肪族ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物が挙げられる。
上記脂環式骨格(Xb3)の由来となる脂環ジオール化合物、脂環ジエステル化合物、又は脂環ジエポキシ化合物としては、例えば、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、及び水素化ビスフェノールアセトフェノン等の水素化ビスフェノール骨格等や、これら脂環ジオール化合物をアシル化したジエステル化合物や、これら脂環ジオール化合物を原料とするジエポキシ化合物が挙げられる。
脂環式骨格(Xb4)の由来となるシクロアルカジエポキシ化合物としては、例えば、シクロヘキシルメチルシクロヘキサンカルボキシレート、テトラヒドロインデン、及び水素化トリシクロペンタジエン等のジエポキシ化物が挙げられる。好ましくは、シクロヘキシルメチルシクロヘキサンカルボキシレートのジエポキシ化物である。
一般式(1)において、Yは独立に、水素原子、炭素数2~20のアシル基、又はグリシジル基である。Yが水素原子である場合は末端に水酸基を与え、アシル基である場合は末端にエステル基を与え、グリシジル基である場合は末端にエポキシ基を与える。アシル基はR-CO-で表され、Rは炭素数1~19の炭化水素基である。これらの末端基は、用途に応じてその割合を制御することがよい。
アシル基(R-CO-)において、Rで示される炭素数1~19の炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基が好ましい。
炭素数1~12のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基等が挙げられる。
炭素数7~13のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、炭素数1~7の炭化水素基を有するアシル基がより好ましく、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、メチルベンゾイル基が更に好ましく、アセチル基、ベンゾイル基が特に好ましい。
一般式(1)において、Zは炭素数2~20のアシル基又は水素原子である。Zの5モル%以上はアシル基であり、残りは水素原子である。Zの10モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上がアシル基である。一方、上限は100%であるが、反応として実質的には95%程度でもよい。上記アシル基は、上記Yで例示したものと同様であり、好ましいアシル基も同様である。
Zが全て(100モル%)がアシル基の場合、本発明の変性エポキシ樹脂は二級水酸基を含まないものとなり、誘電特性や耐湿性を更に改良することができる。一方、例えば、金属に対する接着性を微調整する際に、Zの一部を水素原子として残すことで、耐湿性を始めとする他の物性に大きな影響を及ぼさない範囲で、本発明の変性エポキシ樹脂中に敢えて適量の二級水酸基を存在させることもできる。
一般式(1)において、nは繰り返し数であり、平均値である。その値の範囲は1以上500以下である。成形性及び取り扱い性の観点から好ましくは1以上400以下であり、より好ましくは1以上300以下である。成膜性の観点から好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上である。n数はGPC法により得られた数平均分子量(Mn)より算出することができる。
本発明の変性エポキシ樹脂は、二級水酸基の一部又は全部がアシル化したものであり、様々な方法で得ることができる。好ましい製造方法としては、例えば、次のような製造方法がある。
(A);上記一般式(3)で表される2官能エポキシ樹脂と、上記一般式(4)で表されるジエステル系化合物及び/又は2官能フェノール化合物とを反応させる製造方法。以下、製造方法(A)と称することがある。
(B);上記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂(本発明の変性エポキシ樹脂と区別するために、エポキシ樹脂(a)と称することがある。)と、有機酸の酸無水物、有機酸のハロゲン化物、有機酸のエステル化物等の酸成分(アシル化剤)とを反応させる製造方法。以下、製造方法(B)と称することがある。
製造方法(A)及び(B)で得られる変性エポキシ樹脂は、本発明の変性エポキシ樹脂であり、同じ一般式(1)で表される。
上記製造方法(A)は、一般式(3)で表される2官能エポキシ樹脂と、一般式(4)で表される化合物とを反応させる方法である。
Figure 2023117721000006
上記一般式(3)において、Gはグリシジル基であり、mは繰り返し数であり、その平均値は0以上6以下であり、0以上3以下が好ましい。
一般式(4)において、Qは炭素数2~20のアシル基である。
一般式(4)において、Qの5モル%以上、好ましくは20~70モル%は炭素数2~20のアシル基で、残りは水素原子である。ここで、一般式(4)で表される化合物は、Qの両者がアシル基であるジエステル系化合物、一方がアシル基で他方が水素原子であるモノエステル化合物、及び両方が水素原子であるジフェノール化合物から選ばれる2種以上の混合物であってもよい。一般式(4)で表される化合物をジエステル系化合物という。ジエステル系化合物は、Qの両者がアシル基であるジエステル系化合物又は主成分(50%以上)が該化合物である化合物(混合物)であることがよい。
一般式(3)におけるX及び一般式(4)におけるXは、一般式(1)のXを与えるように選択される。従って、一般式(3)で表されるエポキシ樹脂又は一般式(4)で表される化合物のいずれか一方、又は双方に式(2)で表される硫黄原子含有ジフェニレン基(Xa基)を含み、この基はX及びXの合計モル数に対して1~100モル%含まれていることが好ましい。式(2)で表される2価の基に起因する接着性及び難燃性を十分に発現させるという観点からは、より好ましくは式(2)で表される2価の基が10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは40モル%以上である。
本発明の変性エポキシ樹脂には、Xa基が必ず含まれるものであり、これを満たす限り、Xa基が、原料の一般式(3)で表される2官能エポキシ樹脂及び/又は一般式(4)で表される化合物のいずれに含まれるものであってもよく、またその割合も制限されるものではない。また、上記一般式(3)におけるX又は一般式(4)におけるXとして、Xa基を含まない場合には、X又はXには他の2価の基(Xb基)を導入することができる。
本発明の製造方法(A)に用いられる2官能エポキシ樹脂は、上記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂であり、例えば、HO-X-OHで表される2官能フェノール化合物と、エピハロヒドリンとを、アルカリ金属化合物存在下で反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、Xは上記一般式(3)のXと同様である。
一般式(3)で表される原料エポキシ樹脂は、エポキシ当量が好ましくは100~400g/eq.、より好ましくは300g/eq.以下である。一般式(3)のm値は、好ましくは0~1、より好ましくは0.3以下である。
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロルヒドリンやエピブロモヒドリン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシドや、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩や、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等が挙げられる。
原料エポキシ樹脂を得るための2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応には、2官能フェノール化合物中の官能基に対して0.80~1.20倍モル、好ましくは0.85~1.05倍モルのアルカリ金属化合物が用いられる。これより少ないと残存する加水分解性塩素の量が多くなり好ましくない。アルカリ金属化合物としては、水溶液、アルコール溶液又は固体の状態で使用される。
エポキシ化反応に際しては、2官能フェノール化合物に対しては過剰量のエピハロヒドリンが使用される。通常、2官能フェノール化合物中の官能基1モルに対して、1.5~15倍モルのエピハロヒドリンが使用されるが、好ましくは2~10倍モル、より好ましく5~8倍モルである。これより多いと生産効率が低下し、これより少ないとエポキシ樹脂の高分子量体の生成量が増え、原料に適さなくなる。
エポキシ化反応は、通常、120℃以下の温度で行われる。反応の際、温度が高いと、いわゆる難加水分解性塩素量が多くなり高純度化が困難になる。好ましくは100℃以下であり、更に好ましくは85℃以下の温度である。
上記2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンを反応させると、mは0より大きくなるのが通常である。mを0とするためには、公知の方法で製造したエポキシ樹脂を蒸留、晶析等の手法で高度に精製するか、又は上記2官能フェノール化合物をアリル化した後に、オレフィン部分を酸化することでエポキシ化する方法がある。
また、本発明の製造方法(A)に用いられるジエステル系化合物は、例えば、上記Xa基及びXb1基由来で例示した2官能フェノール化合物を、後述の製造方法(B)で使用するアシル化剤と同様の有機酸の酸無水物、有機酸のハロゲン化物、又は有機酸との縮合反応でアシル化して得られる。
一般式(3)におけるmが0のエポキシ樹脂を原料にすることで、本発明の変性エポキシ樹脂は二級水酸基を含まないものとなり、誘電特性や耐湿性を更に改良することができる。また、例えば、金属に対する接着性を微調整する際に、適当なm数のエポキシ樹脂を使用することで、耐湿性を始めとする他の物性に大きな影響を及ぼさない範囲で、本発明の変性エポキシ樹脂中に敢えて適量の二級水酸基を存在させることもできる。
上記の2官能エポキシ樹脂とジエステル系化合物の使用量は、目的とする変性エポキシ樹脂のエポキシ当量によって適宜変更する必要はあるが、エポキシ基1当量に対し、エステル基は0.3~1.0当量が好ましい。この当量比であると、分子末端にエポキシ基を有する状態で高分子量化を進行させやすくなる。また、ジエステル系化合物の一部を、上記2官能フェノール化合物に置き換えることも可能である。これにより前述のように、本発明の変性エポキシ樹脂中に敢えて適量の二級水酸基を存在させることで物性の微調整ができる。
製造方法(A)では、重合反応と2級水酸基のエステル化反応が生じ、分子量が増加して変性エポキシ樹脂が生成する。
製造方法(A)において、原料の一般式(4)で表される化合物として、2官能フェノール化合物を使用することもできる。上述したジエステル系化合物と併用してもよい。HO-X-OHで表される2官能フェノール化合物である。
が式(2)で表される硫黄原子含有基である場合、2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールS、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペルスルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、4,4’-スルホニルビス(2-メチルフェノール)、4,4’-スルホニルビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-スルホニルビス(2-アリルフェノール)、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)スルフィド、4,4’-スルフィニルビス(2-メチルフェノール)等が挙げられる。
が式(2)で表される硫黄原子含有基ではない2価の基である場合、2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールC、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニルエーテル等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、2,4’-ビフェノール等のビフェノール類、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、1,1-ビ-2-ナフトール、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-HQ)、10-(2,7-ジヒドロキシナフチル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-NQ)等が挙げられる。
2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物の使用量についても、目的とする変性エポキシ樹脂のエポキシ当量によって適宜変更する必要はあるが、エポキシ基1当量に対し、水酸基は0.3~1.0当量が好ましい。
2官能フェノール化合物を使用した場合はエポキシ樹脂との重合反応が生じ、分子量が増加するが、アシル基の生成は起こらないため、ジエステル系化合物との併用が必要である。
製造方法(A)において、触媒を用いてもよく、その触媒としては、エポキシ基とエステル基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、第3級アミン、環状アミン類、イミダゾール系化合物、有機リン化合物、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、これらの触媒は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
環状アミン類としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、N-メチルモルホリン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等が挙げられるが、これらに限定されない。
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されない。
有機リン化合物としては、例えば、トリ-n-プロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、パラメチルホスフィン、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィン類や、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨージド、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロリド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリメチルベンジルホスホニウムクロリド、トリメチルベンジルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルエチルホスホニウムクロリド、トリフェニルエチルホスホニウムブロミド、トリフェニルエチルホスホニウムヨージド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩類等が挙げられるが、これらに限定されない。
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。
以上に挙げた触媒の中でも、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィンが好ましく、特に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、2-エチル-4-メチルイミダゾールが好ましい。
触媒の使用量は、反応固形分中、通常0.001~1質量%であるが、これらの化合物を触媒として使用した場合、得られる変性エポキシ樹脂中にこれらの触媒が残渣として残留し、プリント配線板の絶縁特性を悪化させたり、組成物のポットライフを短縮させたりする恐れがある。
製造方法(A)において、反応用の溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、変性エポキシ樹脂を溶解するものであればどのようなものでもよい。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。また、これらの溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサン、ジイソブチルケトン、イソホロン、メチルシクロへキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類や、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類や、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類や、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類や、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類や、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類や、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類や、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類や、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類や、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、バレロラクトン、ブチロラクトン等が挙げられる。
等が挙げられる。
また、その他の溶媒としては、例えば、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる
製造方法(A)において、反応時の固形分濃度は35~100質量%が好ましい。より好ましくは50~90質量%、更に好ましくは70~90質量%である。反応途中で高粘性生成物が生じたときは溶媒を追加添加して反応を続けることもできる。反応終了後、溶媒は必要に応じて、除去することもできるし、更に追加することもできる。
反応温度は、使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度が高すぎると触媒が分解して反応が停止したり、生成する変性エポキシ樹脂が劣化したりする恐れがある。反応温度が低すぎると反応が十分に進まずに目的の分子量にならない恐れがある。そのため反応温度は、好ましくは50~230℃、より好ましくは120~200℃である。また、反応時間は通常1~12時間、好ましくは3~10時間である。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱による使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
次に、本発明の製造方法(B)について説明する。
製造方法(B)は、一般式(5)で表されるエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂のアルコール性水酸基当量1モルに対して、一般式(6)で表される酸無水物を0.05モル以上2.0モル以下で反応させて、エポキシ当量が280~50,000g/eq.である一般式(1)で表される変性エポキシ樹脂、すなわち本発明の変性エポキシ樹脂を得る方法である。
Figure 2023117721000007
ここで、X、nは、一般式(1)におけるものと同義である。Lは独立に、水素原子又はグリシジル基である。Tは炭素数2~20のアシル基である。
原料の一般式(5)で表されるエポキシ樹脂(a)は、上記一般式(5)のX中に上記式(2)で表される2価の基(Xa基)を必須として含む。
このエポキシ樹脂(a)は従来知られている方法で得ることができる。例えば、上記式(2)で表される構造を有する2官能フェノール化合物(「2官能フェノール化合物(a)」と称することがある)とエピハロヒドリンとをアルカリ金属化合物存在下で反応させて製造する方法(以下、「一段法」と称する)や、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物のうち少なくとも一方に、上記式(2)で表される構造を有し、これら2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを触媒存在下で反応させて製造する方法(以下、「二段法」と称する)が挙げられる。エポキシ樹脂(a)はいずれの製造方法により得られるものであってもよい。
エポキシ樹脂(a)の重量平均分子量やエポキシ当量は、一段法ではエピハロヒドリンと2官能フェノール化合物の仕込みモル比を、二段法では2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物の仕込みモル比を適宜調整することで、目的の範囲のものを製造することができる。
一段法及び二段法の製造で使用される2官能フェノール化合物(a)としては、例えば、上記式(2)で表される2価の基を含むビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドやビスフェノールS等が挙げられる。
また、本発明の目的を損なわない限り、これ以外の2官能フェノール化合物を併用してもよい。併用してもよい2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールC、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニルエーテル等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、2,4’-ビフェノール等のビフェノール類、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、1,1-ビ-2-ナフトール、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-HQ)、10-(2,7-ジヒドロキシナフチル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-NQ)等が挙げられる。
また、これらの2官能フェノール化合物は複数種を併用してもよい。
まず、一段法について説明する。
一段法の場合は、2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンを、アルカリ金属化合物の存在下、非反応性溶媒中で反応させ、エピハロヒドリンが消費され、縮合反応させることにより、エポキシ樹脂(a)を得ることができる。なお、反応終了後に、副生した塩を濾別又は水洗により除去する必要がある。アルカリ金属化合物としては、本発明の製造方法(A)に用いられる上記一般式(3)で表わされる2官能エポキシ樹脂の製造時に使用されるアルカリ金属化合物と同様のものが例示される。
エポキシ樹脂(a)の分子量やエポキシ当量は、2官能フェノール化合物とエピハロヒドリンとの仕込みモル比を適宜調整することで、目的の範囲にすることができる。
例えば、エポキシ樹脂(a)の重量平均分子量を10,000以上にする場合は、2官能フェノール化合物1モルに対して、エピハロヒドリンを0.985~1.015モル、好ましくは0.99~1.012モル、より好ましくは0.995~1.01モルに調整すればよい。また、エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量を5,000g/eq.以下にする場合、2官能フェノール化合物1モルに対して、エピハロヒドリンを1.015~8モル、好ましくは1.05~6モル、より好ましくは1.1~5モルに調整すればよい。
原料として用いられる2官能フェノール化合物(a)のモル数は、全2官能フェノール化合物中に、1モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上が更に好ましく、40モル%以上が特に好ましい。この範囲を外れると、本発明の変性エポキシ樹脂にしたときに耐熱性が悪化する恐れがある。
この反応は常圧下又は減圧下で行うことができる。反応温度は通常、常圧下の反応の場合は20~200℃が好ましく、30~170℃がより好ましく、40~150℃が更に好ましく、50~100℃が特に好ましい。減圧下の反応の場合は20~100℃が好ましく、30~90℃がより好ましく、35~80℃が更に好ましい。反応温度がこの範囲内であれば、副反応が起こしにくく反応を進行させやすい。反応圧力は通常、常圧である。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱により使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
反応性溶媒としては、本発明の製造方法(A)で例示した反応用の溶媒の他、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類も使用できる。1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
次に、二段法について説明する。
二段法の原料エポキシ樹脂となる2官能エポキシ樹脂としては、本発明の製造方法(A)に用いられる上記一般式(3)で表わされる2官能エポキシ樹脂と同様のものを使用する。
二段法の原料となる2官能エポキシ樹脂としては、上記一般式(3)で表わされる2官能エポキシ樹脂が好ましいが、本発明の目的を損なわない限りこれ以外の2官能エポキシ樹脂を併用してよい。併用できる2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はアルキル基、アリール基等の悪影響のない置換基で置換されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は複数種を併用してもよい。
二段法の場合は、触媒を使用することができ、エポキシ基とフェノール性水酸基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。例えば、本発明の製造方法(A)の例示した触媒と同様のものが挙げられる。また、上記一般式(3)で表わされる2官能エポキシ樹脂の製造時に使用されるアルカリ金属化合物も使用可能である。これらの触媒は単独でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、使用量も本発明の製造方法(A)で例示した使用量と同様である。
二段法の場合、溶媒を用いてもよく、その溶媒としてはエポキシ樹脂を溶解し、反応に悪影響のないものであればどのようなものでもよい。例えば、本発明の製造方法(A)で例示した溶媒と同様のものが例示される。これらの溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
使用する溶媒の量は反応条件に応じて適宜選択することができるが、例えば、二段法の場合は固形分濃度が35~95質量%が好ましい。また、反応中に高粘性生成物が生じる場合は反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて蒸留等により除去することもできるし、更に追加することもできる。
反応温度は、使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度が高すぎると触媒が分解して反応が停止したり、生成するエポキシ樹脂が劣化したりする恐れがある。反応温度が低すぎると反応が十分に進まずに目的の分子量にならない恐れがある。そのため反応温度は、50~230℃が好ましく、100~210℃がより好ましく、120~200℃が更に好ましい。また、反応時間は通常1~12時間であり、3~10時間が好ましい。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱による使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
このようにして得られた上記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂(a)中の水酸基をアシル化剤にてアシル化することにより、本発明の変性エポキシ樹脂が得られる。アシル化は直接エステル化するだけでなくエステル交換等の方法を用いてもよい。
上記アシル化に使用する酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、オクタン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸、t-ブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸、フェノキシ酢酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸や、有機酸の酸無水物や、有機酸のハロゲン化物や、有機酸のエステル化物等を使用することができる。
有機酸の酸無水物としては、例えば、無水酢酸、安息香酸無水物、フェノキシ酢酸無水物等が挙げられる。
有機酸のエステル化物としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル等が挙げられる。有機酸のハロゲン化物としては、例えば、酢酸クロリド、安息香酸クロリド、フェノキシ酢酸クロリド等が挙げられる。
エステル化に使用する化合物としては、酢酸クロリド、安息香酸クロリド、フェノキシ酢酸クロリド等の有機酸のハロゲン化物や無水酢酸、安息香酸無水物、フェノキシ酢酸無水物等の酸ハロゲン化物や有機酸の酸無水物が好ましく、エステル化の後水洗が不要で、電材用途で嫌われるハロゲンの混入を避ける意味で、無水酢酸や安息香酸無水物等の酸無水物がより好ましい。
エポキシ樹脂(a)が有する水酸基のエステル化に使用する上記有機酸、有機酸の酸無水物、有機酸のハロゲン化物、有機酸のエステル化物等の酸成分とエポキシ樹脂(a)とを反応させる際の仕込み割合は、目的のエステル化比率と同様の仕込み比率でもよいし、反応性が低い場合には水酸基に対し過剰に上記酸成分を仕込み、目的のエステル化率まで反応させた後、未反応の酸成分を除去してもよい。
ここで、原料のエポキシ樹脂(a)に対するアシル化剤の使用量は、エポキシ樹脂(a)のアルコール性水酸基1モルに対して、アシル化剤のアシル基が0.05モル以上2.0モル以下、好ましくは0.1~1.0モル、より好ましくは0.2~0.8モルである。そして、アシル化剤が式(6)で表される酸無水物である場合は、アシル化剤1モルに対し、アシル基を2モル有すると解される。
酸成分により直接エステル化する場合、例えば、パラトルエンスルホン酸、リン酸等の酸触媒やテトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、塩化亜鉛等の金属触媒等の種々のエステル化触媒を用い脱水しながら行うことができる。通常、窒素雰囲気下で100~250℃で行うのが好ましく、より好ましくは130~230℃である。
エステル化に酸ハロゲン化物や酸無水物を使用する場合、生じた酸を除去するには、塩基性化合物を使用し中和後に塩を濾過する方法、塩基性化合物を使用し中和後水洗する方法、中和せずに水洗する方法、蒸留や吸着等で除去する方法のいずれの方法を用いてもよく、併用しても構わない。反応溶媒よりも低沸点の酸を除く場合には、蒸留し除くことが好ましい。
エポキシ樹脂(a)をエステル交換によりエステル化する場合は、通常窒素雰囲気下で、例えば、ジブチル錫オキシドやジオクチル錫オキシド、スタノキサン触媒、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン等の有機金属触媒や塩酸、硫酸、リン酸、スルホン酸等の酸触媒、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等の塩基性触媒等公知のエステル化触媒を用いて脱アルコールしながら行うことが望ましい。
本発明の製造方法(B)において、反応用の溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、エポキシ樹脂を溶解するものであればどのようなものでもよい。例えば、本発明の製造方法(A)で例示した溶媒等が挙げられる。これらの溶媒はエポキシ樹脂(a)の調製で用いたものと同じものでもよいし、異なるものでもよい。また、1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。反応時の固形分濃度についても、製造方法(A)と同様であり、好ましくは35~95質量%、より好ましくは50~90質量%、更に好ましくは70~90質量%である。
本発明の樹脂組成物は、少なくとも本発明の変性エポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物である。また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂、無機フィラー、カップリング剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合することができる。本発明の樹脂組成物は、各種用途に要求される諸物性を十分に満たす硬化物を与えるものである。
本発明の変性エポキシ樹脂に硬化剤を配合して樹脂組成物とすることができる。本発明において硬化剤とは、変性エポキシ樹脂と架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質を示す。なお、本発明においては、通常「硬化促進剤」と呼ばれるものであっても変性エポキシ樹脂の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
本発明の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、本発明の変性エポキシ樹脂の固形分100質量部に対して、好ましくは固形分で0.1~100質量部である。また、より好ましくは80質量部以下であり、更に好ましくは60質量部以下である。
本発明の樹脂組成物において、後述する他のエポキシ樹脂が含まれる場合には、本発明の変性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂との固形分の重量比が99/1~1/99である。本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体の変性エポキシ樹脂や他のエポキシ樹脂のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。また、「樹脂成分」とは、本発明の変性エポキシ樹脂と後述する他のエポキシ樹脂との合計を意味する。
本発明の樹脂組成物に使用する硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。耐熱性を高める観点から好ましいものとして、フェノール樹脂、アミド系化合物、イミダゾール系化合物、及び活性エステル系硬化剤等が挙げられる。これらの硬化性剤は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
フェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o-クレゾールノボラック、m-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t-ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシナフタレン、2,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,8-ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が挙げられる。
アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール系化合物との付加体等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は触媒能を有するため、一般的には後述する硬化促進剤にも分類されうるが、本発明においては硬化剤として分類するものとする。
活性エステル系硬化剤としては、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく、中でも、カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたフェノールエステル類がより好ましい。カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、カテコール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物に使用することのできるその他の硬化剤として、例えば、アミン系化合物、酸無水物、第3級アミン、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。これらのその他の硬化剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
本発明の樹脂組成物は、本発明の変性エポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂を含むことができる。他のエポキシ樹脂を使用することで、不足する物性を補ったり、種々の物性を向上させたりすることができる。エポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましく、3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより好ましい。例えば、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、同一系のエポキシ樹脂を2種類以上併用してもよく、また、異なる系のエポキシ樹脂を組み合わせて使用してもよい。
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂を使用することができる。
ポリグリシジルアミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ポリグリシジルエステル化合物としては、例えば、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、トリメリット酸型エポキシ樹脂等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物としては、セロキサイド2021(ダイセル化学工業株式会社製)等の脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。
その他の変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体、カルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)変性エポキシ樹脂、ポリビニルアレーンポリオキシド(例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、トリビニルナフタレントリオキシド等)、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、本発明の変性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂とを使用する場合、固形分としての変性エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の全成分中、変性エポキシ樹脂の配合量は、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。
本発明の樹脂組成物には、塗膜形成時の取り扱い時に、樹脂組成物の粘度を適度に調整するために溶剤又は反応性希釈剤を配合してもよい。本発明の樹脂組成物において、溶剤又は反応性希釈剤は、樹脂組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、本発明においては「溶剤」という語と前述の「溶媒」という語をその使用形態により区別して使用するが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
本発明の樹脂組成物が含み得る溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。以上に挙げた溶剤は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
反応性希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類が挙げられる。
これらの溶剤又は反応性希釈剤は、不揮発分として90質量%以下で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1-メトキシ-2-プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40~80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を使用することが好ましく、その使用量は不揮発分で30~60質量%が好ましい。
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤又は触媒を使用することができる。硬化促進剤又は触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、第3級アミン類、ホスフィン類等のリン化合物、金属化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
硬化促進剤又は触媒の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.01~15質量部が必要に応じて使用される。好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~8質量部、更に好ましいは0.1~5質量部、特に好ましくは0.1~1.0質量部である。硬化促進剤又は触媒を使用することにより、硬化温度を下げることや、硬化時間を短縮することができる。
本発明の樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、信頼性を低下させない範囲で、公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は単独で使用してもよく、同一系の難燃剤を2種類以上併用してもよく、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて使用してもよい。
本発明の樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分(本発明において「その他の成分」と称することがある。)を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、充填材、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、紫外線防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、フラックス、揺変性付与剤、平滑剤、着色剤、顔料、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、離型剤、消泡剤、イオントラップ剤等が挙げられる。
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填剤や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填剤や、微粒子ゴム等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物には、本発明の変性エポキシ樹脂以外の熱可塑性樹脂を併用してもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、本発明以外の変性エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられる。相溶性の面からは本発明以外の変性エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂が好ましく、低誘電特性面からはポリフェニレンエーテル樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
その他の成分としては、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の成分の配合量は、樹脂組成物中の全固形分に対して、0.01~20質量%の範囲が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の変性エポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により各種成分の配合された樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。この硬化物は、低吸湿性、誘電特性、耐熱性、密着性等のバランスに優れ、良好な硬化物性を示すものである。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等により樹脂組成物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。進行の程度は完全硬化であっても、半硬化の状態であってもよく、特に制限されないが、エポキシ基と硬化剤の硬化反応の反応率として通常5~95%である。
本発明の樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによって硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファ一成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に用いられる。その際の硬化温度は通常、80~300℃の範囲であり、硬化時間は通常、硬化時間は10~360分間程度である。この加熱は80~180℃で10~90分の一次加熱と、120~200℃で60~150分の二次加熱との二段処理で行うことが好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)が二次加熱の温度を超える配合系においては、更に150~280℃で60~120分の三次加熱を行うことが好ましい。このような二次加熱、三次加熱を行うことで硬化不良を低減することができる。樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の樹脂半硬化物を作製する際には、通常、加熱等により形状が保てる程度に樹脂組成物の硬化反応を進行させる。樹脂組成物が溶媒を含んでいる場合には、通常、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶媒を除去するが、樹脂半硬化物中に5質量%以下の溶媒を残量させてもよい。
本発明の樹脂組成物を用いて得られるプリプレグについて説明する。シート状基材としては、ガラス等の無機繊維や、ポリエステル等、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー、セルロース等の有機質繊維の織布又は不織布を使用することができるが、これに限定されるものではない。本発明の樹脂組成物及び基材からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、上記の基材を、上記の樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば、100~200℃で1~40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30~80質量%とすることが好ましい。
プリプレグや絶縁接着シートを用いて積層板を製造する方法を説明する。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一枚又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を使用することができる。積層物を加熱加圧する条件としては、樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。例えば、温度を160~220℃、圧力を49~490N/cm(5~50kgf/cm)、加熱時間を40~240分間にそれぞれ設定することができる。
更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。
絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを使用することができる。
また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。積層板に樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面樹脂を上記の樹脂組成物を好ましくは5~100μmの厚みに塗布した後、100~200℃で1~90分加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5~80μmに形成することが望ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。
また更にこのプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の積層板を形成することができるものである。
またプリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。
ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを使用することもできる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。
また更にこのプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができる。
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物や電気・電子回路用積層板は、優れた誘電特性及び接着性を有する。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断りがない限り、部は「質量部」を表し、%は「質量%」を表す。分析方法、測定方法を以下に示す。また、各種当量の単位は全て「g/eq.」である。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn):
GPC測定により求めた。具体的には、本体HLC8320GPC(東ソー株式会社製)にカラム(TSKgel SuperH-H、SuperH2000、SuperHM-H、SuperHM-H、以上東ソー株式会社製)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液はテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1.0mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料は固形分で0.1gを10mLのTHFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを50μL使用した。なお、データ処理は東ソー株式会社製GPC8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
(2)IR(赤外吸光スペクトル):
フーリエ変換型赤外分光光度計(Perkin Elmer Precisely製、Spectrum One FT-IR Spectrometer 1760X)を用い、セルには塩化ナトリウムを使用し、クロロホルムに溶解させたサンプルをセル上に塗布、乾燥させた後、波数400~4000cm-1の透過率を測定した。
(3)エポキシ当量:
JIS K7236規格に準拠して測定を行った。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてクロロホルムを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いた。なお、溶媒希釈品(樹脂ワニス)は、不揮発分から固形分換算値としての数値を算出した。
(4)不揮発分:
JIS K7235規格に準拠して測定した。乾燥温度は200℃で、乾燥時間は60分間とした。
(5)溶剤溶解性:
変性エポキシ樹脂を、メチルエチルケトン(MEK)で溶解し、樹脂分40%の樹脂ワニスとし、25℃の恒温槽に24時間保持した後の状態を目視にて判断した。
透明:○、 濁りあり:△、 分離:×
(6)樹脂相溶性:
変性エポキシ樹脂をビスフェノールA型液状エポキシ樹脂であるA2と加熱混合し、25℃の恒温槽に24時間保持した後の状態を目視にて判断した。変性エポキシ樹脂/A2=50/50(質量比)の割合で混合した。
透明:○、 濁りあり:△、 分離:×
(7)接着性:
銅箔(三井金属鉱業製 3EC 35#)に変性エポキシ樹脂溶液を塗布し、オーブンを使用して150℃30分間乾燥させた。得られた変性エポキシ樹脂付き銅箔に軟鋼板(日本テストパネル社製、JIS G3141 SPCC-SB、0.8mm厚、サンドブラスト処理)をのせ、200℃、2.7MPaでホットプレスし、JIS C6481引き剥がし強さの測定を行った。
(8)誘電特性:
フィルム状サンプルは空洞共振器摂動法で、板状サンプルは容量法で測定を行った。
実施例14~16及び比較例4は、空洞共振器摂動法にて1GHzで測定した際の誘電正接で評価した。具体的には、PNAネットワークアナライザN5230A(アジレント・テクノロジー株式会社製)及び空洞共振器CP431(関東電子応用開発株式会社製)を使用して、室温23℃、湿度50%RHの測定環境下、幅1.5mm×長さ80mm×厚み150μmの試験片を用いて測定を行った。
実施例17~18及び比較例5~7は、容量法にて1GHzで測定した際の誘電正接で評価した。具体的には、IPC-TM-650 2.5.5.9規格に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を使用して、室温23℃、湿度50%RHの測定環境下、30mm角×1mm厚の試験片を用いて測定を行った。
(9)ガラス転移温度(Tg):
IPC-TM-650 2.4.25.c規格に準拠して測定した。具体的には、厚さ4mm、直径3mmの試料を、示差走査熱量測定装置EXSTAR6000 DSC6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて、10℃/分の昇温条件で、20~280℃の範囲で2サイクル測定し、得られたセカンドスキャンの測定チャートの中間点ガラス転移温度(Tmg)で表した。
(10)難燃性:
UL94V(Underwriters Laboratories Inc.)のV試験にて評価した。試験片は下記記載の方法より、UL94-Vに準拠し作製した。5本の試験片について試験を行い、1回目と2回目の接炎(5本それぞれ2回ずつで計10回の接炎)後の有炎燃焼持続時間の合計時間より同規格の判定基準である、V-0、V-1、V-2で判定した。難燃性はV-0が最も優れており、V-1、V-2の順に劣っていく。但し、完全に燃焼したものは、Xと記した。
また、樹脂フィルムの場合は、UL94VTMに準じ、垂直法により評価した。評価はVTM-0、VTM-1、VTM-2で判定した。難燃性はVTM-0が最も優れており、VTM-1、VTM-2の順に劣っていく。但し、完全に燃焼したものは、Xと記した。
実施例、比較例の使用する略号を以下の通りである。
[2官能エポキシ樹脂]
A1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YD-128、エポキシ当量186、m≒0.09)
A2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YX-4000、エポキシ当量196、融点105℃、m≒0.11)
A3:ナフタレン型液状エポキシ樹脂(DIC株式会社製、エピクロンHP4032D、エポキシ当量142、m≒0.04)
Figure 2023117721000008

A4:チオエーテル型固形エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YSLV-120TE、エポキシ当量246、m≒0.05)
Figure 2023117721000009

A5:ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YD-901、エポキシ当量410、m≒1.7)
A6:ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、YD-7910、エポキシ当量2500、m≒16)
ここで、mは上記一般式(3)におけるmと同様の意味を有する。
[ジエステル系化合物]
B1:合成例1で得た、ジアセトキシビスフェノールS(活性当量=167)
Figure 2023117721000010

B2:合成例2で得た、ビス(4-アセトキシフェニル)スルフィド(活性当量=151)
Figure 2023117721000011

B3:4,4’-ジアセトキシビフェニル(東京化成工業株式会社製、活性当量=135)
Figure 2023117721000012
[2官能フェノール化合物]
C1:ビスフェノールS(東京化成工業株式会社製、水酸基当量125)
C2:ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(東京化成工業株式会社製、水酸基当量109)
[触媒]
D1:N,N’-ジメチルアミノピリジン(東京化成工業株式会社製)
D2:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
[溶媒・溶剤]
S1:シクロヘキサノン
S2:メチルエチルケトン(MEK)
[酸無水物]
E1:無水酢酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)
E2:無水安息香酸(東京化成工業株式会社製)
[硬化剤]
H1:フェノールノボラック樹脂(アイカ工業株式会社製、ショウノールBRG-557、水酸基当量105)
H2:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
合成例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、及び滴下装置を備えたガラス製反応容器に、室温下で、2官能フェノール化合物C1を100部、酸無水物E1を82部、ピリジンを63部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら60℃まで昇温し、2時間反応を行った。その後、150℃、1.3kPa(10torr)の条件で2時間減圧乾燥を行い、ジエステル系化合物B1を120部得た。
合成例2
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、及び滴下装置を備えたガラス製反応容器に、室温下で、2官能フェノール化合物C2を100部、酸無水物E1を94部、ピリジンを58部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら60℃まで昇温し、2時間反応を行った。その後、150℃、1.3kPa(710torr)の条件で2時間減圧乾燥を行い、ジエステル系化合物B2を125部得た。
実施例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、及び滴下装置を備えたガラス製反応容器に、室温下で、2官能エポキシ樹脂A1を100部、ジエステル系化合物B1を86部、反応溶媒S1を46部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら130℃まで昇温し、触媒D1を0.1部添加した後、145℃まで昇温し、同温度で7時間反応を行った。希釈溶剤S1を46部、S2を186部使用して希釈混合して、不揮発分40%の変性エポキシ樹脂の樹脂ワニス(R1)を得た。
実施例2~10、比較例1~3
表1に示す各原料の仕込み量(部)に従い、実施例1と同様操作を行い、樹脂ワニスを得た。なお、表中の「モル比」は、ジエステル系化合物及び2官能フェノール化合物に対する2官能エポキシ樹脂のモル比を表す。
Figure 2023117721000013
実施例11
比較例2で得られた樹脂ワニス(RH2、水酸基当量311)を40部(固形分値;ワニスで100部)、反応溶媒S1を600部配合し、100℃まで昇温後、酸無水物E1を3部加えて4時間反応を行った。得られた樹脂ワニスをメタノールに加え、析出した不溶解分を濾別した後、濾液を真空乾燥器にて150℃、0.4kPa(3torr)の条件で1時間乾燥させ、変性エポキシ樹脂を得た。得られた変性エポキシ樹脂に対して、希釈溶剤S1を21部、S2を42部加えて、均一に溶解させて不揮発分40%の樹脂ワニス(R11)を得た。
実施例12
酸無水物E1を13部、希釈溶媒S1を26部、S2を52部とした以外、実施例11と同様操作を行い、樹脂ワニス(R12)を得た。
実施例13
酸無水物E1の代わりにE2を29部、希釈溶S1を30部、S2を61部とした以外、実施例11と同様操作を行い、樹脂ワニス(R13)を得た。
表2に各原料の仕込み量(部)をまとめて示す。なお、表中の「モル比」は、エポキシ樹脂のアルコール性水酸基当量1モルに対する酸無水物のモル比を表す。
Figure 2023117721000014
実施例1~13及び比較例1~3で得た樹脂ワニスR1~R13及びRH1~RH3を、乾燥後の膜厚が100μmとなるよう鉄板に塗布し、乾燥機を用いて150℃、1時間乾燥して樹脂フィルムを得た。
樹脂ワニスでエポキシ当量、Mw、樹脂相溶性、及び接着性を、樹脂フィルムで溶剤溶解性をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。なお、表中の「アシル化率」は全Z中のアシル基の含有率(モル%)を、「式(2)率」は全X中の式(2)の含有率(モル%)をそれぞれ表す。また、樹脂ワニスRH1~RH3を使用した例は比較例である。
Figure 2023117721000015
実施例14~16、比較例4
実施例1、2、4及び比較例1で得られた変性エポキシ樹脂ワニス(R1、R2、R46、RH1)を12部(固形分値;ワニスで30部)、他のエポキシ樹脂A1を2部、硬化剤H1を50%MEK溶液で2.5部、及びH2を20%MEK溶液で0.6部を配合して、樹脂組成物を得た。更にこれらを乾燥後の膜厚が150μmとなるよう鉄板に塗布し、乾燥機を用いて150℃、1時間乾燥して、高分子フィルム状の硬化物を得た。誘電特性、Tg及び難燃性をそれぞれ測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2023117721000016
実施例17
変性エポキシ樹脂ワニスR8を100部(固形分値;ワニスで250部)、硬化剤H1を36.2部、及びH2を0.3部配合し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドで調整した混合溶媒に溶解して樹脂組成物ワニスを得た。得られた樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA 7628 XS13、0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環オーブン中で9分間乾燥してプリプレグを得た。
得られたプリプレグをほぐし、篩で100メッシュパスの粉状のプリプレグパウダーとした。得られたプリプレグパウダーをフッ素樹脂製の型に入れて、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、30mm角×1mm厚の試験片を得た。試験片の誘電特性、Tg及び難燃性をそれぞれ測定した。その結果を表5に示す。
実施例18、比較例5~7
表5の配合量(部)で配合し、実施例17と同様の操作を行い、樹脂組成物ワニス、プリプレグ、及び試験片を得た。実施例17と同様の試験を行い、その結果を表5に示す。
Figure 2023117721000017
表3からわかるように、本発明の変性エポキシ樹脂は溶剤溶解性、樹脂相溶性、及び接着性に優れることがわかる。また、表4及び表5からわかるように、本発明の樹脂組成物からなる硬化物は誘電特性、耐熱性及び難燃性に優れることがわかる。

Claims (10)

  1. 下記一般式(1)で表され、エポキシ当量が280~50,000g/eq.であることを特徴とする変性エポキシ樹脂。
    Figure 2023117721000018

    (式中、Xは2価の基であり、上記式(2)で表される2価の基を少なくとも有する。Yは独立に、水素原子、炭素数2~20のアシル基、又はグリシジル基である。Zは炭素数2~20のアシル基又は水素原子であり、5モル%以上は上記アシル基である。nは繰り返し数の平均値であり、1以上500以下である。Aは-S-、-SO-、-SO-、-S-S-から選ばれる基であり、R~Rは独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基から選ばれる。)
  2. 請求項1に記載の変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
  3. エポキシ樹脂の固形分100質量部に対し、硬化剤を固形分として0.1~100質量部を含む請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 請求項1に記載の変性エポキシ樹脂と、他のエポキシ樹脂及び硬化剤を含み、変性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の固形分の質量比が、99/1~1/99である樹脂組成物。
  5. 変性エポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂の固形分の合計100質量部に対し、硬化剤を固形分として0.1~100質量部を含む請求項4に記載の樹脂組成物。
  6. 硬化剤が、アクリル酸エステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤、有機ホスフィン類、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物及び活性エステル系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項2~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
  8. 請求項2~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板。
  9. 下記一般式(3)で表される2官能エポキシ樹脂と、下記一般式(4)で表される化合物とを反応させることを特徴とする請求項1に記載の変性エポキシ樹脂の製造方法。
    Figure 2023117721000019

    (ここで、X、Xは2価の基であり、X及び/又はXは上記式(2)で表される2価の基を含む。Gはグリシジル基であり、Qは炭素数2~20のアシル基又は水素原子であり、5モル%以上は上記アシル基である。ここで、一般式(4)で表される化合物は、Qの両者がアシル基である化合物、一方がアシル基である化合物、及び両方が水素原子である化合物から選ばれる2種以上の混合物であってもよい。mは繰り返し数の平均値であり、0以上6以下である。)
  10. 下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂のアルコール性水酸基当量1モルに対して、下記一般式(6)で表される酸無水物を0.05モル以上2.0モル以下で反応させることを特徴とする請求項1に記載の変性エポキシ樹脂の製造方法。
    Figure 2023117721000020

    (ここで、X、nは一般式(1)と同義である。Lは独立に、水素原子又はグリシジル基である。Tは炭素数2~20のアシル基である。)
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